08/07/02 第10回社会保障審議会年金部会議事録 社会保障審議会年金部会(第10回)議事録 日  時:平成20年7月2日(水)10:00〜12:06 場  所:東海大学校友会館「阿蘇の間」 出席委員:稲上部会長、渡辺部会長代理、稲垣委員、今井委員、小島委員、権丈委員、 杉山委員、都村委員、中名生委員、西沢委員、林委員、樋口委員、宮武委 員、山口委員、山崎委員、米澤委員 ○総務課長 それでは、定刻になりましたので、これより「社会保障審議会年金部会」 を開催させていただきます。  委員の皆様方には、御多忙のところをお集まりいただきましてありがとうございます。  最初に、委員の出欠の状況でございます。江口委員と岡本委員が御欠席という連絡を 受けているということでございます。  それから、お手元の資料の御確認をさせていただきたいと思います。  最初に議事次第、座席表、委員の名簿、配付資料一覧ということで用意させていただ いておりますので、御参考いただければと思います。  資料1といたしまして「無年金・低年金等に関する関連資料」。  資料2といたしまして「子育て世帯の就労状況及び経済的負担に関する資料」。  資料3といたしまして「第3号被保険者制度とこれを巡るこれまでの議論の整理等」。  資料4といたしまして「年金部会におけるこれまでの議論の整理(案)」。  委員の先生方からお出しいただきました資料を資料5として整理させていただいてお ります。  資料6といたしまして、いわゆる骨太方針の関係の資料を用意させていただいており ます。落丁等ありましたら、御連絡いただければと思います。  それでは、部会長、よろしくお願いいたします。 ○稲上部会長 おはようございます。  ただいま総務課長から触れていただきましたけれども、お手元の資料6に「経済財政 改革の基本方針2008」というのがあるかと思います。いわゆる「骨太の方針2008」とい うものでございますが、先週の6月27日に閣議決定されているものでございまして、そ の方針に盛り込まれている年金関係の事項につきまして、議事に入ります前に事務局か ら簡潔に御説明をしていただきたいと思います。 ○総務課長 資料6をごらんいただければと思います。これは、いわゆる骨太方針とい うことでございますが、経済財政改革の基本方針2008でございまして、6月27日に閣 議決定されたものの年金関係の抜粋でございます。  最初に、成長力の強化という観点から、企業型確定拠出年金におけます個人拠出、現 在は企業が拠出するという形で制度が行われていますが、個人が企業の拠出に合わせて 拠出できるような仕組みの導入について検討して、20年度内に結論を得るということが 記載されております。  それから、公的年金基金の運用につきまして、国民の立場に立って幅広く検討を行う ということでございます。この点については、若干報道などでもごらんいただいたこと があろうかと思いますが、経済財政諮問会議におきましては、民間議員より、リスク資 産への分散が不十分で収益性が低い、そういった制約を外して金融専門人材を集めて収 益率を高める努力をしたらどうかというような提案がなされたところでございます。  これに対しまして、厚生労働大臣の方から、リスク資産の比率を引き上げることで大 きな損失を生じた場合の責任をどう取るのか、それから、積立金の原資は年金加入者か ら徴収された保険料でございますので、年金加入者の視点が必要だというような観点か ら、慎重な検討を求める指摘を行いまして、結果として、民間議員の提案するような特 定の方向を前提にすることなく、幅広く議論をしていただくべき課題だというようなこ とで、先ほど御説明したような記述として骨太方針に盛り込まれたという経緯がござい ます。  この問題につきましては、今後、保険料の拠出者であります労使双方も御参加いただ いています年金積立金運用管理の独立行政法人の運用委員会などにおいても運用の検討 が行われる予定でございます。  本年金部会におきましても、節目におきまして運用に関するいろんな報告を行うとと もに、議論の場を求めることを検討していきたいと思っております。  それから、成長力の強化については、同じように、企業型確定拠出年金につきます個 人のマッチング拠出についての検討が盛り込まれております。  第5章として、国民生活を支える社会保障制度の在り方ということで、(2)の(2)で ございますが、年金記録の問題、社会保険庁廃止後の日本年金機構の設立、被用者年金 制度の一元化や、パート労働者への社会保険適用拡大を実現する、基礎年金国庫負担に つきましては、所要の安定的な財源を確保する税制の抜本的改革を行った上で、平成21 年度までに2分の1に引き上げるということが盛り込まれているところでございます。  2ページ目は、この骨太方針に別紙として添付されています成長戦略ということで、 主に企業型確定拠出年金、それから、積立金運用について書かれているということでご ざいます。  以上でございます。 ○稲上部会長 どうもありがとうございました。  この件で何か御発言がございますか。小島委員、どうぞ。 ○小島委員 今の資料6の説明の第2章、グローバル戦略の(5)にあります国際競争力あ る成長分野の創出ということで、今、御説明がありました公的年金基金の運用について、 幅広く今後検討するということで、どこの場で検討するかと言いますと、運用独法の年 金運用委員会等で検討されるということですので、そこで十分その検討をしていただき たいと思っています。これについては、以前、この部会でも発言しましたけれども、公 的年金の拠出者であります労使、国民の、保険料負担者の意向を十分踏まえた運用であ るべきだと思います。基本的には公的年金でありますので、安全運用が基本であると思 っております。  これについては、経済財政諮問会議の下につくられておりますワーキンググループな どが中心になって検討されてきたものが、最終的にこういう文書になりましたけれども、 当初、ワーキンググループで検討されたのは、公的年金についてはもっと積極的な運用 を行うべきだという意向で報告にはまとめられております。これにつきましては、最終 まとめに当たりまして、私と、年金部会のメンバーであります西沢委員と、京都大学の 駒村先生の3名が呼ばれまして、それぞれ意見を述べたところであります。そのときに おいても、私としては、年金積立金の運用については、拠出者であります労使等の意見 が十分反映された、そういう場での検討が必要であるということと、運用については安 全運用を基本にすべきだということを改めて主張しましたので、今後とも議論に当たっ ては、そういうことに十分配慮した検討をお願いしたいと思っております。  以上でございます。 ○稲上部会長 ありがとうございました。ほかにございますか。  それでは、本日の議題に入りたいと思います。前回の部会に引き続きまして、平成16 年度改正後の残された課題を中心に御審議をお願いしたいと考えております。  前回の部会では、特に無年金・低年金者に関する対応につきまして多くの議論をして いただきましたけれども、その議論の前提になっております無年金・低年金者の現状等 につきまして、事務局から十分御説明いただく時間が取れなかったようにも思っており ますので、前回の部会でいただいておりました宿題も含めまして再整理をしていただき ました。事務局からその御説明をいただきたいと思います。 ○年金課長 年金課長でございます。資料1と2について御説明を申し上げたいと思い ます。着席して失礼いたします。  まず、無年金・低年金に関係する関連資料として資料1をごらんいただきたいと思い ます。資料1ページからが未納・未加入関係のデータでございます。  資料1ページ目をごらんいただきますと、これは現在の未納の状況で、これまでもご らんいただいているものでございます。  2ページ目が未加入のこれまでの変化でございまして、未加入者は未加入対策を講じ てきたことによって相当程度減ってきている。3ページにあるような未加入対策を講じ ていくことによって、更に減らしていきたいということでございます。  4、5ページ目が、現在、社会保険庁で行っております未納対策でございまして、未 納者の分類によって、それぞれ未納対策を講じているということでございます。  6ページからが滞納者の状況を見たものでございます。6ページが、滞納者と納付者 について、所得階級別の分布を見たものでございまして、滞納者も納付者も同じような 傾向にある。滞納者の方が低所得の方が多いということでございますけれども、滞納者 でも高所得の方がいらっしゃるというデータでございます。  7ページをごらんいただきますと、今度は所得階級ごとに滞納者の割合をグラフに取 ったものでございまして、所得の低い方の方が滞納者の率は高いということも見て取れ ますし、上に書いてございますように、その一方で、所得の多い方についても約1割程 度の滞納者がいらっしゃるというような状況が見て取れるということでございます。  8ページ目をごらんいただきますと、滞納者の就労状況でございます。常用雇用、あ るいは臨時パートの部分が若干滞納者の占める割合が高くなっているというデータでご ざいます。  9ページ目をごらんいただきますと、滞納者に納付しない理由を聞いたという資料で ございます。すべての年齢階級におきまして「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」 という割合が6割から7割というような状況でございます。右側をごらんいただきます と、その中で、一時的なものではなくて「元々所得が少ないから」と答えられていらっ しゃる方が多いということでございます。  ただ、次のページをごらんいただきますと、同じものを所得階級別に見たものでござ いまして、1,000万以上の所得の高い方についても、5割以上が保険料が高いからとい うことを納付をしない理由として挙げている。所得が下がるに従いまして、保険料が高 いからという理由を挙げていらっしゃる方は増えてございますけれども、ベースとして、 高所得でも半分以上の方が納付しない理由としてそれを挙げているという状況でござい ます。  11ページ目をごらんいただきますと、更に滞納者について、今後どうするかというこ とについての設問でございます。今後、生活にゆとりができれば保険料を納めたいと回 答していらっしゃる方が6割程度でございまして、これも所得階級によって大きな差は 出ていないという状況でございます。  参考として、12ページが納付率の変化を経年で取ったものでございます。  ここまでが未納・未加入関係の資料でございますが、13ページからが低年金、あるい は無年金の資料となってございます。  まず、13ページをごらんいただきますと、基本的には基礎年金額の分布を見たもので ございまして、厚生年金を含めて見ますと6万円〜7万円、基本的にはフルペンション の方が大きな山になっている。ただ、3万円〜4万円というところにも大きな山がある。 厚生年金でございますと、60歳〜65歳までの間、特別支給の老齢厚生年金が出ますので、 繰上げを選択する必要がない。あるいは選択すると特別支給の老齢厚生年金が出ないと いうことになりますので、繰上げ選択がないという状況がございますので、国民年金だ けの方を見たものが14ページでございます。  14ページをごらんいただきますと、先ほどの絵柄とは相当変わってまいりまして、3 万円〜4万円のところに大きな山があることがごらんいただけるかと思います。  次に、15ページが無年金者数の推計数字でございまして、65歳以上で42万人という ことでございます。ただ、ここは、注にございますように、過去のいわゆるから期間、 あるいは25年という支給要件の短縮措置などの要素は織り込んでございませんので、そ ういった数字としてごらんいただければと思ってございます。  16ページをお開きいただきますと、無年金、あるいは低年金の方が生じる要因を整理 してございます。納付済期間、すなわち保険料を払って基本的に満額につながる、この 期間が短いという要素と、あと、下にございますように、繰上げをすることによって減 額されているという要素と、大きく分ければ2つあるわけでございます。  1つ目のポイントについては、3つの要素に分かれると思ってございます。  1つ目は、例えば昭和60年改正までの制度では、被用者年金に加入しておられる方の 配偶者は任意加入ということでございましたので、任意加入という仕組みの中で任意加 入されなかった方について、年金額が低くなっている、その要素がございます。  ただ、後でも御説明申し上げますが、現行の制度においても、厚生年金にございまし た配偶者加給に変わるものとしての基礎年金への振替加算というものが行われておりま すので、昭和60年改正でそういう経過措置を講じてございますので、それによって若干 はこの影響は緩和されているということでございます。  2つ目が、年金が免除によって全額反映されるわけでございますので、免除による要 素ということと、最後に未納・未加入という部分がございます。  こうした要因によって、無年金、あるいは低年金が生ずるわけでございますけれども、 次のページから繰上げ減額の影響についての資料を付けてございます。17ページをごら んいただきますと、赤い線が年度末現在の繰上げ選択をした方の率でございまして、平 成元年の67.7%をピークにして下がってまいっておりますけれども、現在でも47%、半 分弱の方が過去に繰上げ選択をして、それによって年金額が低くなっている方でござい ます。  ただ、新規裁定で見ますと、青い線の方でございますけれども、繰上げ選択の率は7 割強あったものが、最近では2割程度ということで、相当程度下がってきているという 状況にございます。  18ページは、その繰上げ選択を行わなかった場合の平均年金額と、全体の今の平均年 金額です。全体平均で申しますと、繰上げ選択を行わなければ5,000円、あるいは右側 の基礎年金のみで言えば9,000円というような形で本来は上がっているんだろうという ことでございます。  19ページをごらんいただきますと、先ほど申し上げました国民年金だけ、すなわち基 礎年金のみの受給権者の年金分布を見ますと、黄色というか、白っぽいラインが全体を 混ぜたものでございます。繰上げをした人と、しなかった人を分けたものが橙色と灰色 でございます。繰上げをした方が3万円〜4万円の山をつくっていて、繰上げ選択をし なかった人が6万円〜7万円の山をつくっているという状況が見て取れるわけでござい ます。  次に、20ページをごらんいただきます。先ほど申し上げましたように、新規裁定につ いては、今、繰上げを選択されている方の割合が大幅に下がってきてございますので、 新規裁定だけで年金額の分布というものを見てみますと、ここにございますように、相 当絵柄は変わってきて、3万円〜4万円という山は基本的にはなくなってきているとい うのが、現在の、新たに受給される方の状況でございます。  これを過去と比較したものが21ページでございますし、更に22ページが、年金水準 が違いますので、正確には比較できませんが、昭和63年の状況と比較したものでござい ます。徐々に繰上げを選択される方が減ってきていることによって、低年金が減ってき ているという状況。世代別に見ますと、そういった状況が見て取れるということでござ います。  23ページをごらんいただきますと、ものすごい荒っぽいグラフをつくってございます。 今までのトレンドを踏まえて、新規裁定の人が20%程度の繰上げ選択率、当然もう少し 下がる可能性はあるわけでございますけれども、仮置きで20%程度の新規裁定が繰上げ 選択をされたと過程をして、全体の平均がどういうふうに落ちていくだろうかというの を見たものでございます。10年程度で3割を切るという状況にはなっていくのではない か。相当荒っぽい試算でございますが、そういう傾向としては見て取れるのではないか ということでございます。  24ページでございますけれども、これは先ほど申し上げました、昭和61年以前に任 意加入であった被用者年金制度の被保険者の配偶者の方に対する措置でございます。仮 に昭和61年3月以前に任意加入を全くされていなかったと仮定すると、赤い線が本来の 年金額でございますけれども、それに緑の線の振替加算というものをつけて下支えして ございますので、合計年金額、基礎年金の額は青い線で出るという構造になってござい ます。  今後の話を申し上げますと、昭和61年以降の期間が徐々に多くなってまいりますので、 合計年金額自身はフルペンションに向かって今後上がっていくということを見た資料で ございます。  それから、25ページ以降、低年金者に対する最低保障機能の強化という関係で、諸外 国の制度を見たものでございます。  まず、25ページは前回も資料として付けて御説明申し上げましたけれども、年金制度 とは別に、社会的な扶助制度を持っているものについて見たものでございます。こちら のタイプのものについて言うと、年金制度とのリンクは基本的にございませんので、受 給要件として年金の資格期間等々は問われていないということが1つございます。  それから、右側の欄を見ていただきたいと思いますけれども、扶養義務者の範囲とい うものは、諸外国においては、ドイツを除いて、こうした生活保護、あるいは高齢者の ために特別につくった社会的な扶助制度など、一般的に父母等に対する扶養義務という のはかかっていないということでございます。  また、ドイツにつきましては、扶養義務というのはあくまでも社会扶助法の中で求償 の対象になるという意味での扶養義務でございます。一般的には父母等も対象になって いるわけでございますが、基礎的保障、高齢者のための特別な制度の中では、子の両親 に対する求償というのは行われないということで特別な扱いをしているということでご ざいます。  27ページからが、今度は年金制度の中で最低保障的な仕組みを持っているものについ て、OECDレポートの中で、14か国がこういったものを持っているというふうに紹介 されているわけでございますけれども、当方で調べてわかる範囲でまとめた資料でござ います。見ていただきますと、年金制度の中でございますので、多くの国は年金制度の 最低資格期間を満たした方について加算なりの措置が行われているということでござい ます。  ただ、ここの中には2つのタイプがございまして、1つは、チェコとかフランスでご ざいますけれども、一定額に満たない場合に最低保障が行われるというタイプが1つで ございます。1ページ目に並んでいる国々はそういったものでございます。  それに対して、2ページ目、ルクセンブルグとか、あるいはスイスとか、そういった 国については、報酬比例の年金に定額部分をつけているというタイプと、2つのタイプ に分かれるんではないかと考えてございます。  日本の年金制度で言いますと、基礎年金という定額と報酬比例の年金が合わせて出る というのに比較的近いタイプと、最低保障額を決めているというタイプと、そういう2 つがあると見てございます。  29ページ以降、免除関係、いわゆる国民年金の中での所得比例的な扱いについての関 係資料ということで付けてございます。  まず、29ページが、国民年金だけではなくて、医療保険、あるいは介護保険でどうい う仕組みになっているかというのを見たものでございます。国民年金の場合には、申請 免除という形で、なおかつ、それが給付に反映される、免除されると年金額が減る、こ ういう構造にあるわけでございますけれども、国民健康保険、医療保険、あるいは介護 保険では、次のページに絵を描いてございますけれども、保険料の軽減措置がある。  これにつきましては、29ページの頭の1つ目の欄をごらんいただきますように、市町 村がまさに保険料として、これに該当される方は軽減保険料適用ということで決めてい る、申請によって決めているわけでないということと、基本的には医療保険、介護保険 につきましては、給付には反映されない。逆に給付に反映されなくて、本人にとって見 れば軽減されるというのはベネフィットだけということでございますので、減免に当た って申請を条件としているわけではないということでございます。  31ページ以降が所得比例年金の資料でございます。31ページをごらんいただきますと、 所得比例年金の導入というのは、国民年金の創設時からの課題であったということでご ざいます。昭和40年代に自営業者等も所得比例2階部分という要望もあった中で、昭和 44年金の改正で国民年金に付加年金を創設し、更に翌年に農業者年金基金制度を設けら れてございます。  32ページをごらんいただきますと、更に昭和60年金改正においても、これは課題と して認識をされていた。ただ、第1、第2、第3の理由と新年金法の記述を引いてござ いますけれども、こうした理由で60年改正では対応はなされなかったということでござ いますが、その次の平成元年改正におきまして、自営業者のための上乗せ年金制度とし て国民年金基金制度が整備をされたという状況にございます。  33ページは、現在の国民年金の状況を、低所得に対しては免除で対応するとともに、 より高い年金をというニーズについては、国民年金基金で対応しているという状況を見 たものでございます。  34ページでございますが、仮に国民年金に所得比例年金を導入するとした場合の制度 の類型分けと、それに関しての主な論点を整理してございます。  まず、1つ目が、1・2階を通じて所得再分配機能を付けた、現在で言うと、厚生年 金で言えば、定率の保険料を取って、定額の給付と所得比例の年金という状況になって ございますけれども、そういったタイプの所得再分配機能が付いた形での所得比例年金 に仮に再編成するとした場合の論点としては、再分配がございますので、所得捕捉の問 題がクリアできない。払った保険料に対するリターンは、所得が低いほどよくなります ので、所得を低くしようというインセンティブが働いて制度が維持困難になるんではな いかということでございます。  2つ目として、国民年金とは別立てで、2階部分だけ所得比例にする。すなわち、保 険料も所得比例でいただいて、給付も所得比例で出すというような仕組みにするという タイプがもう一つ考えられるわけでございますけれども、これにつきましても、仮に付 加方式にいたしますと、支え手の被保険者の変動、将来的にそれが縮小した場合には制 度が不安定になるということと、付加方式を前提にしますと、世代間で所得移転を行い ますので、所得捕捉がうまく行えないとすれば、所得を低く申告しようというインセン ティブも働き得るんではないかということでございます。人数的なもの、それから、保 険料のそれぞれの額という2つの面で、付加方式を前提とすると、制度が不安定になる んではないかということが書いてございます。  それから、積立方式にした場合を考えますと、現行の国民年金基金とどう違うのかと いうことがあるかと思ってございます。  3つ目として、現行の国民年金制度の中で、低所得者に対して軽減保険料を導入する というタイプがあるかと思っております。ただ、軽減保険料というのは、要は、保険料 は減額はするけれども、給付は基礎年金を保障するというような医療保険的なものにす るというのも1つの類型として考えられるわけでございます。これを保険料財源で行お うとしますと、軽減保険料対象になるということが最も有利でございますので、そちら に動くというインセンティブが働いてしまうのではないか。したがいまして、そういっ たものを受給しようとすると、財源は公費に求めるしかないと考えられますけれども、 それをどういうふうに確保するのかとか、あるいは保険料納付のインセンティブをどう 考えるのかということがあるかと思ってございます。  資料1の御説明は以上とさせていただきまして、資料2をごらんいただきたいと思い ます。育児期間の保険料免除の論点の関係で、なかなかいい資料がないのでございます けれども、ある限りでの資料を用意してございます。  まず、1ページ目をごらんいただきますと、今の1号被保険者の中での女性の就業状 況を見たものでございまして、自営業者グループは2割、無職の方が3分の1以上いら っしゃる、臨時パートの人が30%程度という状況にあるということでございます。  2ページ目が、子どもがいる世帯の母親の就労状況を見たものでございまして、子ど もの年齢が上がるに従って就労につながっている。その中でも自営業という割合も、全 体の中では小さい話でございますけれども、上がってきているという資料でございます。  更に、3ページ目でございますけれども、子育てコストについてのこども未来財団の 資料を付けてございます。  5ページ目につきましては、諸外国との比較というものを付けてございます。  また、6ページ目でございますけれども、結婚、出産、育児を実現するための社会的 コストの推計という資料を付けてございます。  私からは、以上でございます。 ○稲上部会長 どうもありがとうございました。ただいまの資料1と2の御説明につき まして、御質問、御意見をいただきたいと思います。  西沢さん、どうぞ。 ○西沢委員 資料1について、フルペンションになっていくということはよくわかりま した。第3号被保険者の制度などがつくられて20年ぐらいたっていますか、それも寄与 して立っていくということや、かつては繰上げ給付の方が多かったということも低年金 の背景になることも非常によくわかりました。  ただ、一方で注意する点もあると思うんです。1つは、基礎年金にもマクロ経済スラ イドが入っていきます。ですから、フルペンションの頭自体が抑えられていきますので、 基礎年金単独の所得代替率という数値は余りふだんの議論の中で上がってきませんけれ ども、仮に6万6,000円を30数万の可処分所得で割ると、大体、今、15%ぐらいでしょ うか。それ自体が抑えられて、13なり14に下がっていくということなので、所得代替 率全体で見た分布というのは、将来的には分布自体が下がっていくと思うんです。です から、フルペンションが増えるというのはいいことだと思いますが、そのことに対して も配慮が必要だと思います。  もう一つ、ここの統計はあくまで25年という加入期間を満たした方のみの数値になっ ていると思いますので、そのハードルをクリアできたという方ですから、その分、若干 高くなっているという気がします。  もう一つ、資料の本題から外れて恐縮なんですが、新聞等でも1.4%の厚生年金保険 料の記録の問題がありました。こういった制度論も確かに非常に重要で、地道にやって いく必要があると思いますが、今日、明日やらなくても生き死ににかかわる問題ではな いですけれども、記録の問題は、私なども厚生年金ですけれども、今、どういったアク ションを起こせばいいのか。例えば、大掃除しても給与明細を全部捨ててしまわないで 取っておいた方がいいのか、あるいは別に何もあわてる必要がなく淡々と構えていれば いいのか。どんなアクションを起こせばいいのかの方が直近の国民の関心事であり、ま た、非常に生き死にに関わる問題であって、それを若干意識した上で、制度論について も同時並行的に議論していくというのが、私の感覚から言うとしっくりくるところなん です。  今後、例えば、新聞で1960何年生まれの方は何も心配する必要はありませんと広報を 行うのか、あるいは社保庁のホームページを見れば、初期動作についてきちんと書いて あるのかとかも教えていただけるとありがたいと思います。 ○稲上部会長 それでは、社会保険庁の方、何か御説明いただけますか。 ○企画課長 社会保険庁の企画課長でございます。今、御指摘いただいた点であります けれども、いわゆる紙台帳とコンピュータ記録との食い違いの問題も含めまして、私ど もは基本的に国民の方々に御自分の記録をきちんと確認していただくということ、これ が対策の主軸であり、根本的な対策であると思っております。そういうことで、現在、 いわゆる特別便というものをお送りをいたしております。特に現役の加入者の方につい ては、先月6月から配付を開始しておりますので、この10月までにすべての6,200万人 の方々に年金の履歴をお送りし、確認をしていただくプロセスが現在進行中であるとい うことでございます。  きちんと御確認いただくためには、いろいろな媒体で確認をしていただく、確実に正 しいお答えをしていただく、そういったことの注意喚起を図っていかなければならない と思っておりまして、さまざまな媒体を活用した政府広報はもとより、社会保険庁のホ ームページ、あるいは現場の社会保険事務所等々でいろいろな掲示等も含めましてPR を展開させていただいている。また、必要に応じてテレビスポットなども活用してまい りたいと思っておりますので、お目通しをいただく機会があろうかと思っております。  その中で、1点、例えば、給与明細はどうかというお話もございました。現在送付を いたしております特別便の中には、加入履歴というものの確認でございますので、例え ば、御自分の給料がどうだったかと、標準報酬でございますけれども、その履歴につい ての情報が盛り込まれていないわけでございます。ただし、この点につきましては、21 年4月から「ねんきん定期便」というものの開始が予定されてございますので、その中 で、まずは御自分のすべての期間の標準報酬の履歴、これもお示しをしてまいりたいと 思っておりますので、こういったことを通じて御確認をいただく必要があるだろうと思 っております。  それから、それまで待てないという方につきましても、現在、IDパスワード方式を 活用いたしまして、御自分の年金記録の全容を知りたいという方についての対応をさせ ていただいておりますので、いつでも簡便にそれぞれの方が御自分の記録を確認できる 基盤整備も併せてしていきたいと思っておりまして、こういったさまざまな取組みを通 じて、とにかく御不安のないように、御自分の記録を確認していただき、仮に漏れとか 間違いがありましたら直ちに直していく、こういった取組みを徹底していきたいと、こ ういうふうに思っているところでございます。 ○稲上部会長 ほかにございますか。どうぞ。 ○樋口委員 教えていただきたいんですが、資料1の15ページに無年金者数の推計が載 っていまして、その注3のところに、時間短縮の特定については考慮しないという注意 書きがされているんですが、この特例とはどういうような人たちが入っているのかとい うことについて教えていただけますか。 ○稲上部会長 お願いいたします。 ○年金課長 まず1つは、国民年金制度が発足したのは昭和36年でございますので、昭 和36年時点で一定年齢よりも高かった方については、25年という資格期間を短くして ございます。10年とか、あるいは11年とか、そういうことで、25年入ることがある程 度余裕を持って可能になるところで初めて25年という資格期間を設けているというこ とが制度としてはございますけれども、あくまでもこれは年数で25年で整理をしている ので、そういった要素は考慮されていないということでございます。 ○樋口委員 それが大体、主なところということですか。例えば、日系人の場合、45歳 を過ぎて日本に日系二世、三世が入ってきています。そういった場合、25年に達しなく ても、これはどういう扱いになっていくんでしょうか。 ○年金課長 現在の制度ということで申し上げますと、外国人の方であっても、日本に 入ってくれば年金制度は適用になります。そういった方が外国に帰られるときには、脱 退一時金というものを支払うという仕組みを平成6年の改正で導入をしてございます。 ○樋口委員 帰国者についてはわかるんですが、永住というか、定住していく場合です ね。 ○年金課長 もう一つございますのが、いわゆるから期間、合算対象期間という仕組み がございまして、日本国籍を取得された方については、過去の20歳以降の期間はすべて 算入するということになってございます。更に、永住許可を取られた方についても同じ く、そういったから期間制度がございます。国際年金課長の方からお願いいたします。 ○国際年金課長 日系ブラジル人の方を含めまして、日本に来られて帰化される、ある いは定住するということを65歳に達する前までに申請をし、許可を得た場合におきまし ては、日本において国民年金制度が創設されましたのは昭和36年でございますので、そ の方々が20歳になってから、外国に住んでおられましても、その期間をすべて合算対象 期間、すなわちから期間と認めまして、受給権を確立しやすいようにする制度がござい ます。したがいまして、その方々につきましては、年金額が低くなるわけでございます けれども、基本的には受給権が保証される確率がかなり高くなるということでございま す。そういった形で、日系ブラジル人の方を含めまして、日本で定住される方につきま しては、そういった制度がございますので、受給権は非常に容易に確立されるといった 状況になっております。済みません、定住ではございません。永住でございます。申し 訳ございません。あるいは永住されるということでございます。 ○稲上部会長 社会保険庁から、今、御質問ありましたようなことについて何かござい ますか。 ○年金局長 今、樋口委員が御質問になっているのは、そういう法令上の特例にのっか っている人はこの25年の42万人にカウントしているのかということをお聞きになって いる。それに対するお答えは社会保険庁からさせたいと思います。 ○年金課長 私から申し上げます。この数字自身は、そういった特例を考慮せずに、25 年に達しない方をすべてカウントしたものでございますので、逆に言うと、この数字の 中に特例等があって、年金受給に結びつく方を含んだ数字でございます。ですから、そ ういう意味で言うと、この数字よりも、本当の無年金は少なくなるという要素があると いう数字でございます。 ○稲上部会長 ありがとうございました。どうぞ。 ○樋口委員 後での議論になってくるのかと思いますが、今、国際化が頻繁になってき て、出入りする人が、日本人であってもすごく増えているわけです。日本には25年、2 0歳以降住んでいないとかいう人たちも増えてきている中で、そういった扱いがどうな っているのかということを教えていただけたらと思います。 ○稲上部会長 年金課長、どうぞ。 ○年金課長 日本国籍を持っておられる方につきましては、海外にいらっしゃって年金 制度に入っていないという期間はすべて、この25年の資格期間にカウントする。つまり、 保険料を払っていなくても、25年外国にいれば、それだけで資格期間は満たすというよ うな扱いになってございます。ですので、日本人であれば、年金制度に入って、保険料 納付義務があるにもかかわらず払わなかったという滞納の期間以外の期間というのは、 外国にいた期間を含めて、25年の期間を見るときにはそこには入れ込んで判定をしてい るということでございます。 ○樋口委員 そうですか。わかりました。 ○稲上部会長 権丈委員、どうぞ。 ○権丈委員 私、この年金部会に出席し続けて、今日の資料が今までで一番意味がある んではないかと思っているんです。非常によくまとめられていて、世の中で誤解されて いるところがこの中にあります。しばしば、国民的議論というものに何の意味があるん だろうと思っていたんですけれども、国民的議論というのは国民に制度を勉強してもら うという意味があるんですね。そのことを国民会議の方で私は何となく理解したんです けれども、そういう意味で、これは非常に価値のある資料だと思います。  例えば、初めの方で、無年金者が低年金者に限らないということはやはり重要なこと でして、無年金者がそのまま生活保護の受給者になるかどうかということを考えていく 上では非常に重要なところで、その辺りのところも入っております。  あと、先ほど西沢委員の方から、基礎年金にマクロ経済スライドが適用されていくか ら、低年金とか、年金の水準、その辺りの議論というものはこの中には書かれていない のではないかという話がありました。私は以前、2004年改革後の制度的枠組みの中で、 あと議論すべきは保険料率の問題だという話をしておりまして、給付を高めたいんだっ たらば保険料率を上げる、保険料を上げる。マクロ経済スライドが適用されて給付が下 がっていくということは、保険料率が今の予定された状況で動くということであって、 もしも給付を上げたいのならば、保険料を上げるというような議論になっていくわけで して、制度論とはちょっと話が変わってくると思うんです。  そして、資料5の6ページに私のコメントがあります。この中で、無年金・低年金等 に関する関連資料に関連するところで、低年金者・無年金者に対して、どういう制度を つくっていけばいいかを考える際には、納付インセンティブという要因がものすごく重 要な意味を持つんです。労働経済学とか普通の経済学では、最低所得と就労インセンテ ィブというもののトレードオフの問題を考えますけれども、最低保障年金というものに なってくると、今度は就労インセンティブに代わって納付インセンティブというものが 重要なキーワードになってくるわけでして、この納付インセンティブを削がないように しながら、現在の低所得高齢者の保障を行うということは非常に難しい。難しい問題に ついては、よく報告書などでは検討すべきだとか考えるべきであるという言葉が使われ るのですけど、考えればどうにかなる問題と考えてもどうにもならない問題というのが 世の中にはあり、ここでの最低所得保障と就労インセンティブの問題は考えても解を見 出すのは不可能に近いという意味で、私たちは難しいと言っているわけです。現在の低 所得高齢者に加算を行う改革時に保険料をまじめに払ってきた人が不公平感を抱く、そ の不公平感という表現は、実は将来的に納付インセンティブを削ぐ制度につながってい くということになるわけです。  ただ、この前の議論のところでは、無年金・低年金者がなぜ発生するのかというよう な議論が余り詰められていなかったので、いろんな意見が出てきたと思います。ですか ら、この問題に答えを出す前に、第8回年金部会で配付された説明資料の無年金・低年 金の状況についての知識を国民が広く共有する必要があると思う。例えば、繰上げ受給 をしているために年金額が低くなっている人を低年金者と呼んでいいのかという問題と か、そういうものがあります。  社会保障の授業が大学にあるんですが、なぜ授業があるかというと、みんなが知らな いからなんですね。私は普通の人が知らないこと、世の中の人が誤解していることを、 専門家の視点から学生に教えているんですが、今日配布された資料の中には、わたくし が教えている授業の内容と重複するものが随分入っておりますので、私は今日の報告は 非常にためになるといいますか、意味があると同時に、私の授業の中身が消えていく話 になっていくんですけれども、そういう内容の濃さがあると思っております。  そして、資料1の34ページに「国民年金に所得比例制を導入する場合に考えられる制 度類型と主な論点」というのがあるんですが、ここは、いろんな人たちが言っているこ とを、この案はここに当てはまります、この案はここに当てはまりますと、全部網羅し ていると思いますので、そういう形で、いずれまた御検討いただければと思います。  そして、このデメリットみたいなところを、現在の国民年金が問題を持っていますと いう形で、1個だけを、例えばだれかが口にすると、そこだけを取り上げてメディアは 発していくんです。だけれども、ある研究者のその国民年金批判の発言は、3つぐらい の選択肢の中の、この中に位置しますよというふうに相体的に見ることができれば、メ リット、デメリットを相対的に見ることができれば、専門家でもない普通のひとでも研 究者たちの発言を比較検討することができるので、ここのページは私は非常に重要なペ ージだと思います。  私は、この前、今までの年金に対する制度の説明の仕方が余りにも下手過ぎた、それ が今の年金の大きな混乱をもたらしているというふうな文章を書いたんですけれども、 今日の報告を見まして、年金局の説明力、プレゼンテーション能力も随分改善されてき ているんではないかと思いました。どうもありがとうございました。 ○稲上部会長 今井委員。 ○今井委員 資料1のところで、繰上げ年金の新規の方がすごく減ってきているという 現状ですけれども、私の周りではまだまだ60歳になったらすぐもらいたいという声が非 常に多いし、実際もらっている方も、本当にこの表のとおり、3万円〜4万円の方がほ とんどというのが現状なんですが、新規の方が繰上げをしなくなった要因というのはど ういうふうにお考えか教えていただけますか。 ○稲上部会長 年金課長、どうぞ。 ○年金課長 正確なところはわからないのでございますけれども、繰上げをすると年金 額が一生減額される、面積を一定にするためにはそういう仕組みになっているわけでご ざいます。そういった仕組みであるということ、あるいは60年改正でフルペンションと いう概念を導入したわけでございます。今で言うと、月額6.6万円というのがフルペン ションであるんだという、それが3万円〜4万円になるんだということで、国民の皆さ ん方の繰上げ減額という仕組みに対する理解が深まったという要素が大きいんではない かと思っております。  また、そもそも年金の支給開始年齢自身が60歳ではなくて65歳なんだということの 理解も、もしかすると深まったのかもしれないと思っております。  ただ、確たるデータがあっての話ではございませんので、ぼわんとした感じではござ いますけれども、そんなことではないのかなというふうに見てございます。 ○今井委員 ありがとうございました。 ○稲上部会長 よろしければ、前回積み残しの資料3について御説明をいただきたいと 思います。 ○年金課長 それでは、資料3をごらんいただきたいと思います。前回お配りした資料 と変えてございませんので、ごらんいただいているかと思いますし、時間の制約もござ いますので、簡単に御説明申し上げたいと思います。  1ページ目をごらんいただきますと、先ほどの説明にも出てまいりましたけれども、 昭和60年改正の前は、配偶者、あるいは世帯単位の被用者年金制度だったということで、 給付自身が配偶者を含めての水準が設定されていたということもあり、国民年金制度が 創設されたときには、被用者年金の被保険者の妻と書いてございますけれども、正確に 言えば配偶者については、国民年金を強制適用ということではなくて、適用を外した上 で任意加入できる仕組みになってございました。  その結果、どういうことが起きていたかと言いますと、配偶者の方が任意加入してい ると、ここに書いてございますように、成熟時には厚生年金と合わせると代替率が109 %にまで上がるというような、いわゆる過剰給付という状況も想定されましたし、逆に 任意加入していない場合には、障害年金などが出ない、あるいは離婚すると配偶者名義 で出ている年金は回ってこないというような状況があったということで、昭和60年改正 で、いわゆる3号被保険者制度というものを入れたということでございます。  3号被保険者制度については、1ページ目の下に書いてあるような御指摘をいただい ているわけでございます。  この点につきましては、5ページ目以降、経緯を整理してございますけれども、平成 16年金改正に向けてさまざまな議論をいただいてございます。  まず、女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会で御議 論いただいて、6案を整理していただきましたのが平成13年12月。  その後、当年金部会で4つの案を基に御議論をいただいたわけでございますけれども、 厚生年金の適用を拡大すべきというところは一致したわけでございますが、その他の案 については、1つのものにはならなかったということでございまして、その辺は5ペー ジ目の下の方に書いてございます。  これを受けまして、6ページ目で、平成15年11月の厚生労働省案では、短時間労働 者に対する厚生年金の適用拡大による3号の縮小と、年金分割制度の導入という提案を したわけでございます。この時点では、特段離婚とかいう条件なく年金を分割するとい う提案をしたわけでございますけれども、与党の御議論の中で、離婚時など、分割が必 要な場合に分割できる制度にしてはどうかということで議論がございまして、それに基 づいて法制化をしたということでございます。  7ページ目をごらんいただきますと、現在の厚生年金保険法は今年の4月に施行され たわけでございますけれども、被扶養配偶者を有する被保険者が負担した保険料につい て、被扶養配偶者が共同して負担したものであるという基本認識も法律上明記をされて ございます。  こうしたことを踏まえて、2ページ目にお戻りいただきまして「検討に当たって考え られる論点」としては、1つ目でございますけれども、現在、こういう形での法律上の 整理がなされているということを踏まえて、どう議論を進めるのかということ。  次の○でございますけれども、現在でも3号被保険者は約1,100万人。資料としては 11ページをごらんいただければと思いますけれども、1,200万から減ってございますけ れども、1,100万人という数がいる。  それから、年金を受給している世帯で見ますと、資料は13ページでございますが、夫 の現役時代の経歴が正社員中心であった世帯の6割以上の世帯では、その配偶者、妻が 本格的には厚生年金に加入していなかったと見られるわけでございますけれども、そう いった実情をどう踏まえるのか。  あと、15ページ以降に平成16年改正に当たっての世論調査結果を付けてございます けれども、16ページをごらんいただきますと、専業主婦も別途保険料を負担する仕組み とか、あるいは給付を減額するということについての支持は余り多くなくて、おおむね 3分の1が分割、あるいは3分の1が現在のままでいいという結果になっている。こう いうことをどう踏まえるのかというようなことがあると思っております。  また、3ページをごらんいただきますと、3号被保険者の制度だけではなくて、年金 制度におきましては、遺族年金の配偶者、あるいは子の加算という、年金制度外で言い ますと、健康保険におきます家族療養費といった、生計維持という関係、扶養されてい る、扶養されていないと、そういった関係に着目した制度というのは、社会保障制度の 中では、現在も多く行われているわけでございまして、そうした基本にかかわる問題と いう中でどう考えていくのかというような論点があるかと思ってございます。  なお、4ページをごらんいただきますと、諸外国でどういった仕組みになっているか ということでございますが、フランスでは加給という形で処理がなされている。ドイツ、 スウェーデンはないわけでございますけれども、アメリカ、イギリスの場合には、配偶 者についても50%、あるいはイギリスで言うと60%の額を配偶者の独自の年金として支 給するというような仕組みもございますという資料でございます。  私からは、以上でございます。 ○稲上部会長 ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、御質問、御 意見をいただきたいと思います。  稲垣委員、どうぞ。 ○稲垣委員 この場で第3号の被保険者制度に関しまして議論していただく時間をつく っていただきまして、ありがとうございます。この制度というのは、かなり社会の中に も定着しておりまして、アンケートなどでも、このままでいいのではないかという意見 も多いというのは踏まえつつも、現状、特に若い方と女性の働き方というところから見 まして、非正規という働き方が増えているということをバックにして、雇用労働者であ りながら厚生年金には加入できないという方々が増えてしまったことの1つの原因とし て、この第3号制度というのがあるのではないか。そこで、今まで寝ていたのに、また 起こして申し訳ないんですけれども、是非議論いただきたいというのが一番の思いです。  もう一つは、女性のこれからの働き方とか生き方というところで、最低限は働き方、 生き方に中立的な制度をつくっていくべきだと思います。  また、女性の方が長生きをして年金を受け取る確率というか、年数も長いだろうとい うことで、これからは女性自身が年金制度をきちんと支えていくという立場に変わって いかなければならない。そういういろんな問題意識を持っておりまして、是非検討を加 えていただきたいと思っているところです。  前回の改正のときにある程度いろんな論点も出されておりますので、そこの部分を踏 まえながら、もう少し具体的な論議ということで議論していただけたらと思っておりま す。  最後にもう一つだけ申し上げますと、今、第3号被保険者の基礎年金保険料は2号全 体で払っているんですけれども、企業もその分は保険料としては払っている。できれば、 そういう分は、いわゆる非正規で厚生年金保険制度に今、入れない方々の方に是非回し ていただけたらなというのが気持ちとしてはあります。よろしくお願いいたします。 ○稲上部会長 杉山委員、どうぞ。 ○杉山委員 なぜかよくわからないんですけれども、この第3号被保険者の問題という のは沈んだり、ふっと出たりということがずっと続いていて、私なども、出てきたら、 ああという感じで受け止めたりしていたんですけれども、つくづく思うのは、本当はそ れではいけないんだと思うんです。先ほど稲垣委員がありがとうございますというふう におっしゃられたんですけれども、ありがとうではなくて、ちゃんとやってよ、いつも やってよ、ずっと継続してやっていこうよという内容のはずではなかったかなというこ とを思いました。稲垣委員が言ってくださらなければここに載らなかったのかもしれな いという意味で、私は前回も参加した委員として反省をしておるところです。  これだけのいきさつを見てもわかるように、ずっと議論をし続けてきて、前回やった よねと言って終わってしまって、お茶を濁したかったのか、事務局の態度が私はよくわ からない。やる気があるのかと言ってはあれなんですけれども、変えていこうと思って いらっしゃるのかどうなのかというところが、意気込みがやや見えなかったのが残念だ ったかなというふうに、印象として持ちました。  私は、若い世代の話からということで、資料2を使いながらお話をしたいなと思うん です。資料2の6ページを見ていただきたいんです。余り関係ないんですが、仕事と生 活の調和の実現と希望する結婚や出産・子育てを実現していこうということで、皆さん も御承知のようにワーク・ライフ・バランス憲章というのが、樋口先生たちの御尽力で 昨年の12月につくられたわけです。  そのときに合意として得られたのは、結婚や出産か、働き続けるかの二者択一になら ないようなバランスの取れた社会をつくっていこうよということのはずであったし、そ のときにはっきりしたのは、女性は子どもを育てるために一旦仕事を辞めて家庭に入る のではなくて、子どもも生み、仕事も続けてもらわないと、日本の労働力は維持できな いということが一致した見解となって出たわけだと私は認識をしております。女性のラ イフスタイルがここ30年ばかりの間に本当に大きく変わってきたということを理解し て、制度が足を引っ張らないようにしていくということが必要ではないかなと思うわけ です。だから、ワーク・ライフ・バランスを進めていくためにも、ここの第3号被保険 者制度の問題というのは見直しが必要なんではないかと私は思うわけです。  例えば、資料3の2ページに、第3号被保険者の数はずっと変わっていませんよとい うお話が出ていて、それのデータとしても、11ページに変わっていませんねというよう な数字が出ているかと思うんです。12ページをどういうふうに見ていいのか、このパー セントがわからなかったんですけれども、例えば、25−29歳、昭和63年のときは33% だった人が、18年度では19.2%になっているとか、とにかく若い世代の第3号は減って いると見ていいとすれば、若い人たちが、ライフスタイル、自分の生き方を選択しやす い制度に変えていく、いきなりではないかもしれないけれども、経過措置を取りながら 変えていくということをしていかなければ、若い人たちばかりが負担が増えてしまうよ うな状況になるんではないのかなと思ったりしています。  第3号というのは、専業主婦と言われている方で、家事の負担等を世帯内で見たとき にとおっしゃるんですが、働いている女性も家事の負担はやっているわけです。であれ ば、子育てとか、介護とか、この期間に何かしらのサポートをしなければ継続就労が難 しいねとか、そういうところに対しての支援を行っていくという考え方の方がより合理 的ではないかなと思います。  以上です。 ○稲上部会長 ありがとうございました。何かコメント、お答えがありますか。 ○年金課長 1点だけ、12ページでございますけれども、先生おっしゃるような年齢階 級別で見ますと、若いところの3号の比率は下がっている、逆に40歳代ぐらいのところ の3号の比率が上がっているという資料でございます。若い方の3号の比率が下がって いるというのは、勿論、1つはおっしゃられたような要素があると思います。もう一つ の要素は、晩婚化という要素がどうしても入っているんだろうとは思います。 ○稲上部会長 ありがとうございました。権丈委員、どうぞ。 ○権丈委員 年金問題の中で3号ほど政治家が全然やる気がない課題はないようでして、 彼らは医療従事者200万人は完全に相手にしていないんですけれども、この1,000万人 はすごく怖がっているみたいで、そこをどうやっていけばいいのかという話にはなるん だろうと思うんです。  ただ、この3号が問題だから租税方式にしようとか、パート労働のところが問題だか ら租税方式にしようという、租税方式を言う人たちの問題の指摘というのはものすごく 妥当で、そこから先、租税方式にどのように移っていくという細やかな思考は全部すっ 飛ばした形で、ここに問題があるから、これを全面解決してくれるよという形での租税 方式を言う、この論理の途中のところはどうでもいいんですけれども、入り口のところ の問題の指摘はものすごく説得力があるんです。  ですから、この3号の問題を放置しながら今の制度を続けていくというのは、このま ま今の制度に対する不満を延々と抱え続けていきながら、それを直すためには租税方式 があるんだという、私は無意味なと思うんですけれども、そういう議論を永遠に続けて いかなければいけないことと同じなんだということを、せめて年金局の方々は御理解い ただければと思います。  そして、この資料3の中で1つ視点がないなと思っていたのが、3号の人たちが実際 に就労時間を調整しているかどうかということは、そんなに数が多くないとか、いろい ろあるんですけれども、3号を雇用した方が得になるという雇用システムを企業側が選 択し、1号で自分は2号になりたいという人たちの生活を邪魔している、労働市場で悪 影響を与えている。企業側が就業形態を決めているわけです。彼女たちがいるから、そ こで需要を満たすことができるから、そういう就業形態を一般化させていくという、稲 垣先生がさっきおっしゃったことと重なるところなんですが、そういう目に見えない形 で影響を与えているという側面は私は許しがたい。1号がせめて厚生年金がある就業形 態を求めたいというところを雇用形態として抑えつけられてくるようなところで、労働 供給をある程度準備しているというようなことで働いているというのは許しがたい。労 働市場における負の外部性の1点です。  もう一つは、民主主義プロセスの中で若干私は憤りを感じるところがあって、パート 労働の厚生年金適用を支持しますかと問うと、支持しませんと答える人たちが大量に3 号の中にいたりして、企業側や思慮の足りないメディアなどがアンケート調査を持って きて、本人たちが希望していませんという状況で出してくるわけです。労働市場におけ る攪乱要因、そして民主主義的な意思決定における攪乱要因という形で3号というのが 機能しているところがある。  つまり、労働市場における攪乱要因、そして民主主義プロセスにおける攪乱要因とし て、1号、あるいは非正規の人たちの生活というものを足引っ張っているところがある。 そして、それを解決するために租税方式にした方がいいという議論を、社会保険の事業 主負担を減らしたい企業側が利用したりして、3号制度を強く問題視する労働経済学者 などの支持を得て、抜本的な改革が必要だというような雰囲気ができてしまったりする ことは、私たちは知っておいた方がいいと思います。 ○稲上部会長 小島委員、どうぞ。 ○小島委員 私は今、権丈委員が言われた租税方式の方なんですが、3号問題を解決す るために租税方式だという主張ではないんです。真の皆年金を実現するためには税方式 しかない、そういう観点から、税方式でやれば、結果的に3号問題が解決するという論 理です。そこはそういう理屈の世界ですので、そうは言っても、そう簡単に国民合意の 下に税方式に移行するということにはいきませんので、現実的な対応としてどう考える かということが必要だと思っております。  その際に、前回、16年の改正のときの年金分割の理屈、これは資料3の7ページにあ ります16年度の改正の厚生年金法に書いてある被扶養配偶者に対する保険給付に関し ては、ここに書いてあるのは、被扶養配偶者を有する被保険者が負担した保険料につい ては、共同で負担しているんだという理屈です。これについては、2階の報酬比例分に ついてはまさにこれで理屈は通るんだと思います。しかし、1階の基礎年金相当分の保 険料相当分については、この理屈では説明できない。そこの問題はどうしても残るんで す。これをどう解決するかということなんで、ここは真剣に議論すべきであると思って おります。  ここはどう考えるかということなんですけれども、今の3号制度については、子育て 期間中に対する支援という形で、全体で支援するんだという理屈も1つはありますので、 そこのところを強調するというような形で考えるという1つの方法があるんではないか と思います。  そういう意味では、現在の制度で学生納付特例制度というのがあります。10年間保険 料を免除といいますか、後に支払うという制度がありますので、そういうものを子育て 期間中に適用するとかいった形での検討も考えるのが必要ではないかと思っています。 その辺を含めて、3号問題をどう解消するか。いきなり月1万4,410円を徴収するとい うのは、現実的にはなかなか難しいとありましたけれども、そういうものをどう調整し ていくかというような観点から考えるということが必要ではないかと思います。  そういう意味では、もう一つ、3号問題と並んで、子育て支援という形で考えた場合 には、資料2の1ページにあります第1号被保険者の中の女性の就業状況ということに なります。無職、臨時パート、常用雇用という職業についている方にも、被扶養配偶者 がいるはずだと思います。その場合には、第1号の被扶養配偶者という方。そういう方 たちについては、現行の制度については、子育て支援に対する保険料免除等の支援はな いということなんで、先ほどの第3号の点を、子育て期間中に対する支援、保険料免除、 そういったものの特例制度を考えるというような考えをするとすれば、この1号の、女 性に限らずと思いますけれども、被扶養配偶者に対する子育て期間中の保険料免除とい ったものも併せて検討する必要が出てくるんではないか。そこはこれからの検討課題と して是非深めていく必要があるだろうと思っております。 ○稲上部会長 ありがとうございました。それでは、米澤委員、どうぞ。 ○米澤委員 この辺、私はわからない点もいろいろあるので、教えてもらいながら意見 を言いたいと思います。基本的に女性の働き方が変わったというのはまさにそのとおり で、1つ、大きくは、女性により働いていただきたいということと、加えて、子どもが もっと増えてほしいという一番基本的なところから、年金の財政を特に考えていくこと が必要かと思います。  今、小島委員がおっしゃった点に非常に賛成というか、そういう議論を主張されたか どうか確認する必要があるんですけれども、女性は基本的に国民年金に関しては負担を していく。同時に1号の方も含めて、子育て支援に関しては別途援助していくという制 度にしていくのが一番すっきりしているんではないかと思っています。それは、プラス マイナスどっちが女性が働くインセンティブが高まるかとか、定かではありませんけれ ども、基本的には女性により働いていただきたいということを念頭に置いて、それが適 当かなと思っています。  それから、子育て支援に関する財政的支援は、広く考えた場合には、私は個人的には、 国債を発行して資金を調達するというのが一番、経済理論的に適当かなと思っておりま す。こんなような状況で追加的な国債とは何事だと言うかもしれませんけれども、これ は別に悪しきケインズの有効利用政策とかではなくて、もっと基本的な、経済の生産力 を高めていくという意味で、是非考えていく必要があるかなと思っております。  年金特別会計の中で国債が発行できるかどうか、かなり疑問ですけれども、ちょっと 頭を切り替えると、積立金をそこに一部充当するということも、ほぼ同じような効果と して考えていっていいんではないだろうかなと思っています。  1点言い忘れましたけれども、先ほど小島委員は、税方式にするといろんな問題が解 決すると言いました。未納とかいう問題からいきますと、その点は非常にいいかと思う んですけれども、1度、年金に関して、消費税を中心とした税方式がいいのか、今みた いな保険料方式がいいのか、我々経済学者が明らかにしておく必要があるかと思います。 いわゆる長生きリスクに対して、どちらの方がリスクをヘッジできるかという点に関し て、理論的に戻る。そこのところがはっきりしないところで、便宜上で、こちらがやり やすいから税方式というのは、それはわかりますけれども、一旦根っこのところを押さ えておいて、セカンドベストとして税方式ですよというような理解も出てくるんではな いかと思います。  どちらがいいのか、文献があるかと思ったら、意外にないような感じなんで、私が拙 いあれでやってみますと、やはり保険料方式の方が長生きのリスクをヘッジするという 意味では非常に効率的だという感じがします。消費税というのは、リタイアしてから年 金でもって支出する際にも課税されるわけですので、長生きのリスクに関して完全にヘ ッジできないということで、そこのところからさかのぼってディストーションを起こす 可能性があるということなので、完全に保険料が徴収できるという前提の下では、保険 料方式の方が理論的には優れている。それベースとして、最初の問題の3号をどうする かというのも、できれば保険料で負担して、別途、子育てに関しては、そこから控除す るということを認めていく、広げていく、それは1号も含めて認めていくというのが正 論かなと思っています。  ちょっと長くなりましたけれども、以上です。 ○稲上部会長 ありがとうございます。山口委員、どうぞ。 ○山口委員 私は「委員からの意見書」ということで39ページに書かせていただいたん ですが、今、小島さんがおっしゃった話とも一部通ずるんですけれども、平成16年の前 回の改正のときに、被扶養配偶者に対する離婚時の受給権の分割ということがなされた わけですけれども、これは別に離婚しなくても、いつでも潜在的にそういう受給権があ るといったことだと思います。  しかも、それは、3号と2号という関係だけではなくて、2号と2号でもそういう関 係だろうということで、お互いに共同して所得を獲得したんだというふうに考えると、 すべてのケースにおいて所得を足して2で割るといった形で、いわゆる保険料納付用の 報酬と給付算定用の報酬を分割して管理していくといったような考え方を取ることによ って、整理することができるのではないかと考えているわけです。さっき小島さんは、 今は報酬比例の部分については説明できるというふうにおっしゃったんですが、もとも と厚生年金というのは定額部分と報酬比例部分があって、それらを報酬比例掛金で納め ていたという構造になっていたわけですから、現在の給付体系でいえば基礎年金と報酬 比例年金を報酬比例の保険料で払っているということになっているわけです。そういう 意味では、基礎年金部分についても、もともとの保険料の中に含まれているわけですか ら、その報酬を2つに分割することによって、夫が払っている報酬がすなわちそのまま 夫の報酬比例の給付に結びつくんではなくて、それも半分になってしまうというような 現象が見えると、保険料は2人分払っているんだということがよりはっきりするという ふうに私は考えております。  そういう意味で、3号問題だけではなくて、2号・2号の場合であっても、こういう 報酬の足し算をして、夫婦は均等に分割するという考え方を導入することによって、前 回の平成16年改正の考え方をより徹底することができるんではないかと考えておりま す。39ページに詳しく書いておりますので、ごらんいただければと思います。 ○稲上部会長 ありがとうございます。山崎委員、どうぞ。 ○山崎委員 私は基本的に、前回の制度見直し時に、6ページに書いてある「持続可能 な安心できる年金制度の構築に向けて」の2番目の○のところに「できる限り個人単位 での給付と負担の関係に向けて」という考え方が書かれていますけれども、その方向で 考えていくことでよいと思っております。どういうふうにいつから変えるかという問題 はありますが個人単位の年金という考え方に立つべきだろうと思います。世帯単位で見 てきた年金制度というのは、そういう社会の状態があった。それが一般的に受け入れや すい社会の実態があったので世帯単位での年金を考えた。ところが、現在は、そういう ものが大きく変わってきている。それは女性の就労の問題だけでなくて、豊かな社会が 実現して、女性も男と同等の権利が広く社会的に認められていく、機会均等というもの が行き渡っていく、女性の高学歴化が進み就業率が高まり、みんな自分の幸せを実現出 来るような社会になっていく。これが逆に言うと、出生率が下がっていく一つの要因だ ろうとも思いますが、しかしこれは先進国に共通した事象として出てきているとも言え ますし、この流れは、私は逆戻りはしないんではないかと思っております。つまり、今 のような、男も女も仕事を持つ、ともに働く、こういう社会が広く一般化していくので はないか。  そういうことを前提にして考えたときに、世帯単位で年金を考えていた年金制度から、 個人単位で考えていくということは、前回にも確認している事ですが、正しい方向では ないかと思います。  ただ、問題は1,100万人いる3号扶養者を一遍に切り替えられるか。そういうことは なかなか簡単にはできないので、少なくとも段階的に時間をかけて移行するということ を、今回のこの部会での具体的に議論にしていったらいいのではないでしょうか。具体 的に、こういうような形で切り替えていく、このぐらいの移行期間を設けるとか、そう いうふうに議論していけば、現実的な案になるんではないかと思います。以上です。 ○稲上部会長 ありがとうございました。樋口委員、どうぞ。 ○樋口委員 税にしろ、社会保障制度にしろ、善し悪しを議論するときには、1つは効 率的基準、もう一つは、公平性基準という両方から見ていくべきだろうと思います。皆 さんの御議論で出てきた効率性の方から考えれば、やはり企業行動を大分ゆがめている なということで、非正社員、特に第3号になる人たちをたくさん雇用していくというよ うな企業行動にやはりゆがみをもたらしている。そしてまた、個人の行動で考えれば、 年収調整に代表されるような、労働供給を制約するというようなゆがみをもたらしてい るんだろうと思います。  もう一つ、議論になってこなかったのが公平性の方でありまして、例えば、経済学で は、ダグラス・有沢法則というのか昔から言われてきたわけです。夫の所得が高い世帯 の方が妻は無業者が多いということでありまして、その無業者にある意味では第3号者 を適用していることになり、時には逆進的にこの制度が働いているんではないかと思っ ておりまして、そこのところについても是非考慮していってほしいなと思います。  例えば、資料1の13ページに、現在受給しているような夫婦において、どういうよう な現役世代の経歴の類型があるかということで、夫が正社員の63%ぐらいの人が恐らく 妻は第3号に当たるであろう比率であったということが出ているわけでありますが、こ の正社員の中を、例えば、現役世代の年収であるとか、そういったこと別に区分するこ とはできないんでしょうか。それであれば、例えば、高所得の方が63%の数字がもっと 高いということがあるわけであります。これは過去の実証分析で繰り返し検証されてき て、最近、ダグラス・有沢か少し弱まっているんではないかとかいう議論もありますの で、ここのところがどうなっているのか。公平性基準を考える上で、もしかしたら低所 得世帯が高所得世帯を逆に支えているというような逆進的な可能性が強く残っているん ではないかと思いますので、是非そこは検証していただきたいと思います。 ○稲上部会長 どうぞ。 ○渡辺部会長代理 手短にします。前回の議論でもこれは随分やったことで、御指摘と いうと、前回も加わっている方が何人もいらっしゃいますが、3号被保険者の解決とし て、さっきあったように4案、実質上3案、つまり、負担調整、給付調整、夫婦分割と いう問題があったときに、過去のことはある意味ではどうでもいいんだけれども、夫婦 分割が一番有力な案だったという気がしているわけです。そのときに、1つは、今、樋 口委員もちょっとお触れになったんですが、夫の収入が高い場合、果たして妻が働きに 出るだろうか。簡単に言うと、夫が60万円稼いでいれば、30万円が妻の所得とカウン トされるわけで、30万円の厚生年金、つまり2号になるというような議論があったと記 憶しております。  もう一点、この場合の夫婦、つまり、年金法における夫婦というのはあくまでも生計 維持関係であって、実際の婚姻関係は問わず、いわば生計維持関係があればいい。その 場合でも分割するのかといった議論が前回の年金部会で、この分割案が最終的に採用さ れたというか、結局、離婚分割ということに限定されたというふうに記憶しております ので、それについても改めて皆さんの御意見を聞いてみたいと思っています。  以上です。 ○稲上部会長 ありがとうございました。宮武委員、どうぞ。 ○宮武委員 3号の問題以外でも構いませんか。 ○稲上部会長 どうぞ。 ○宮武委員 「年金部会におけるこれまでの議論の整理(案)」の3ページ目でござい ますけれども、2番目の○で「基礎年金を全額税方式にし、消費税を財源とするならば、 それは逆進性で、生きている人間の中で大きな格差が生じる」という、この委員はどう も私ではないかと思うんですけれども、こんな言い方をしていないので、要するに、国 民全体の中で逆進性が強まって、別の格差が生じるという言い方をしたんだと思います ので、訂正をお願いできればと思います。  ついでに、余りたくさんは言いませんけれども、今日の議論の中でも、基礎年金の受 給資格の要件25年を短縮するという御意見が大変多かったので、実はびっくりいたしま した。私はアプリオリにそんなに簡単に短縮していいものかと思っていたので、一言だ け意見を申し上げます。  今の制度は、日本は皆年金でありますので、必ず入らなければいけないわけでありま すけれども、極端に言えば、払いたいけれども払えない人は、全額免除という申請をす れば、いわば保険料は1か月も払わなくても、25年たてば受給権があり、しかも国庫負 担分の給付を受けることができるという仕組みです。払いたいけれども、払いにくい方 の場合は半額免除があり、4分の1免除、4分の3免除もあるわけでありますので、そ ういう意味では楽々と25年の条件をクリアできる仕組みになっているはずなんですけ れども、実は、全額免除なり減額がPRが十分ではなく、手続を取る方も少ない。私は そちらの問題であると思うんです。そのことが、このまとめ方の中ではよく読み取れな いものですから、是非そのことを付け加えてほしいと思います。  もう一つ、先ほど樋口委員が御指摘の、外国で転々と暮らしている方の場合は、年金 の通算協定がないところでお働きになった場合は大変困るわけでありますので、これは また別途考えていかなければならない問題だと思っておりますので、是非御検討くださ い。 ○稲上部会長 今井委員、どうぞ。 ○今井委員 皆さん、お話上手で、私はどうも思いが伝えられないんですけれども、先 ほど私の気持ちを権丈委員がおっしゃってくれたので、すごくうれしく聞かせてもらい ました。私はずっと1号被保険者でした。本当に低収入でありながら保険料をこつこつ 納めてきた者としては、第3号被保険者は、我々以上に高収入という人がほとんどだっ たので不公平というか、中立ではないなということを感じてきました。  自分が今、2号になったときに、3号の保険料は2号の保険料で賄っているわけです けれども、先ほど樋口委員がおっしゃったように、逆進性というんでしょうか、低収入 の方が高収入の専業主婦の保険料を払っているというところもあるわけですので、その 辺のところを考えますと、個人単位化という方向もこれから検討していただきたいなと 思っています。 ○稲上部会長 権丈委員、どうぞ。 ○権丈委員 今の初めにありましたことなんですが、3号の制度はこれでいいのではな いかという人も世の中にはいらっしゃるわけで、3号に負担をさせるということは、応 能負担を原則とする社会保険を応益の方に持っていくことになるよという話になるんで す。だけれども、私はそれに対していつも言っているのは、3号に負担を求めることは 応能原則の徹底なんだ、彼らには支払い能力は、先ほどのダグラス・有沢みたいなとこ ろであるだろうし、基本的に我々は、そこに帰属計算で、所得があるというか、豊かさ がその中にあるというような形で、そういう意味で、これは応益負担の方に一歩近づけ るという話なんですということをしばしば言っております。  ですから、例えば、年収300万円稼いでいる女性がいて、年収300万円の男性と年収 600万円の男性がプロポーズしたときに、男性の魅力などの他の条件が一定だったらば、 女性は600万円の男性を好む。それはなぜかということを考えていくと、やはりそこに 豊かさがあるからなんです。自分が働かなくても600万円で暮らしていけるし、自分が 働いて600万円以上でクラスこともできる、そういうような中での豊かさがある。その 豊かさに着目して、負担を求めようという話になります。  それと、先ほど賃金分割といいますか、夫婦の中でいろいろ分割するというような形 で、さまざまな案があったというのも、昔も、第1案、第2案とか、ずっとあったんで すけれども、先ほど私が加えた1つは、企業が形成していく雇用形態に対して、攪乱要 因として働くかどうかというポイントと、とにかく1号の人たちが前向きに生きていき たいと思っているときの大きな壁、企業側の就業の壁みたいなものをつくっていくもの になるか、そして、民主主義過程において、パート労働の厚生年金適用に対して反対す る、支持するというようなアンケート調査を取ったら、反対するという人たちが大量に 出てきて、1号で本当はパート労働の厚生年金適用を支持したいという人たちが少数派 になるような状況というものは何かという2つの基準を入れたんです。  そうすると、この1案、2案、3案というようないろんな案の中で幾つかが消えるん です。賃金分割のような改革をやって、今の制度の納得の仕方を変えたからといって、 雇用形態は、企業側から見れば何も変わりませんよとか、民主主義プロセスにおいて、 彼女たちのビヘイビアは何も変わりませんよというような状況になっていくんで、幾つ かが消えていくような状況になってまいります。  だから、先ほどの民主主義プロセスにおいて、1号の人たち、あるいは非正規の人た ちが正規になりたいということを阻害しているかどうかというような基準に対して、企 業側の望んでいることに対してアシストしていないかという基準を加えていくと、1案、 2案、3案、4案という中で幾つかが消えていくということを付け加えさせていただき たいと思います。 ○稲上部会長 資料4について、既に何人かの委員が御自分の御発言に関連して触れて くださっておりますが、御説明をいただきます前に、こういうことをお願いできればと 思っております。  これをごらんになるとおわかりになりますが、前回お願い申し上げまして意見書を出 していただきました内容と、同時に、これまでの部会で御発言くださいましたことも入 れ込んでおります。ですから、今日、お話をいろいろいただきましたことに基づきまし て事務局に修文をしていただきます。  それから、委員の皆様にそれぞれ御発言についてお目通しをいただきます。なお、全 文を掲げるというのは誠に難しいことでございますので、先ほど宮武委員からも御指摘 ございましたけれども、文意が明らかに違うということがございましたら、それも是非 訂正をしていただく必要があるかと思います。  こうした論点整理をしている一番基本的なねらいと申しますのは、この年金部会での 議論の状況を少しでも多くの国民の方々にお知らせをしたい、知っていただきたいとい うことでございまして、時期的にも余り先に延ばさずに、できるだけ早く公開できれば いいのではないかと考えております。厚労省のホームページ、あるいはその他の方法で 公開をさせていただきたいと考えております。  今日の御発言を入れ込みまして、それをお送り申し上げますので、ごらんをいただき たいと思います。そして、最終調整は、恐れ入りますが、部会長の私にお任せをいただ きたいと考えております。  これから簡単に御説明いただきますが、時間が余りございませんので、項目を追って 御意見をと思っておりましたけれども、一括して御発言をいただければよろしいかと思 います。それでは、資料4の御説明を年金課長からお願いできますか。 ○年金課長 資料4でございます。まず、かぎ括弧で書いてございますように、資料の 性格として、部会としてのとりまとめということではないというのを明記させていただ いてございます。  あと、資料のつくり方としては、制度体系に関するものが1ページから4ページまで、 残された課題関係で22ページまで、23ページはその他という形になってございまして、 それぞれにつきまして、資料で出させていただいております各方面からの提案内容と、 論点と、それから、各先生方の御意見という形でまとめさせていただいてございます。 内容については、触れ出すと終わりませんので、資料のつくり方だけの御説明とさせて いただきたいと思います。 ○稲上部会長 既に内容的に御発言いただいているものもございますが、お約束の時間 はあと5分ほどなんですけれども、簡単な修文を後でしていただけるというところは特 に御指摘いただかなくてもよろしいかと思います。ごらんくださいますと「制度体系等」 という見出しから始まりまして、今日、大分御議論いただきましたものも内容としては 入っております。先ほども米澤委員がお触れになりましたような国庫負担の問題も含ま れておりますし、徴収期間の問題ですとか、老齢基礎年金の受給資格の期間にかかわり ますこと、あるいは低年金・低所得に対する対応の仕方、免除制度のことですとか、育 児期間中の保険料の免除等々について、区分けをして、皆様の御発言、御意見をいただ きましたものを書き込んでいるものでございます。  先ほど宮武委員が、私のMではないかとおっしゃいましたが、議事録をごらんになれ ば、だれの発言であるかはおわかりになります。開示する意味は、今、申しましたよう に、どういう意見がどういう形で出ているのだろうかということを国民の方々に知って いただくということです。固有名詞的な関心がおありの方もいらっしゃるのでしょうけ れども、それは二義的なことではないかと思いますので、イニシャルでこの表記をさせ ていただいております。強い御異論があれば再考させていただきますが、そうでなけれ ば、この形にさせていただけたらと思っております。  特に今、御発言がありますか。何度も申しますが、今日、御発言いただきましたこと を入れ込んで修文をいたしましてお送り申し上げますので、御発言の内容をチェックを していただきまして、最終調整は私にお任せしていただければありがたいと存じます。 余り遠くない時点で開示をさせていただければということでございます。小島委員、ど うぞ。 ○小島委員 これまでの検討課題に出てきていない課題で、2つほど意見書を出してお ります。それについては、資料4の最後の26ページの一番下にその他の意見ということ で出されております。E委員が私となっております。  下から3つ、課題は2つなんですけれども、1つは、前から主張しているんですけれ ども、厚生年金の被保険者が失業してしまうと厚生年金から退出しなければならないと いうことで、1号になってしまうんですけれども、失業中こそ、障害になった場合、あ るいは本人が亡くなった場合に、遺族厚生年金の問題ということが、本来は必要だろう と思っておりますので、そういう意味では、失業中についても一定期間、厚生年金に継 続加入できる、任意加入継続というような制度も是非検討すべきだと思っております。 医療保険にはそういう制度がありますので、厚生年金になぜないのかということになり ますので、是非そこは検討すべき課題だと思います。  もう一つ、遺族厚生年金の認定基準、年収要件、あるいは男女間の格差の問題もあり ますので、そういうことについても是非検討課題として挙げておく必要があろうと思っ ております。  以上でございます。 ○稲上部会長 ありがとうございました。  ほかにございますか。それでは、繰り返しお願い申し上げましたように、今日の御発 言を踏まえて事務局に修正していただいたものを委員の皆様にお送り申し上げますので、 チェックをしていただければありがたいと考えております。  最後になりましたが、年金局長から、これからの会の進め方などにつきまして御発言 がございますので、お願いいたします。 ○年金局長 終わり際に大変失礼いたします。これまで16年改正後の残された課題など について御議論いただいてまいりましたが、とりあえずの当部会における議論の整理、 とりまとめではないものとしての作業をおおむね峠を越させていただいて、あと、各委 員によくチェックしていただきたいと思っております。  今後の当部会の進め方につきましてですが、基礎年金国庫負担2分の1を実現するた めの法律案をどうするか。その前提となる税制抜本改革の動きと大きくかかわってまい りますが、正直、現時点におきましては、昨日、自民党の税制調査会の議論が始まった ばかりでございますし、私ども厚生労働省と財政当局、与党との間において、今後の進 め方については、これから詰めていくという入り口の段階にとどまっております。  なお、蛇足ですけれども、一部の報道等におきまして、2分の1国庫負担は平成21 年度までに行うことが法律で決まっているとの内容の報道などがございますが、必ずし も正確ではございません。21年度までに2分の1を実施するための立法を別途行うべき ことが法律上定められているのでありまして、立法府及び政府にそうした法的措置を講 ずる責任が生じているということにとどまるものでございます。したがって、その意味 においては、2分の1は必ずしも法律上決まっているわけではございません。  そこで、私どもといたしましては、何としても次期通常国会には、基礎年金国庫負担 2分の1を実現するための法案を提出すべきというふうに考えているところでございま す。その際、併せてその他の法律改正事項も法案に盛り込むことになるかどうか、この 点についても、現時点では必ずしも明らかになっておりません。  しかしながら、これも私どもの主観ではございますけれども、こうした2分の1実現 のための法的措置を講じる場合に、低年金・無年金問題その他といった、この場でさま ざまな御議論いただいたような現下の課題に対しまして、各方面からの具体的な御提案 もあるわけでございますから、それらを含めて十分検討し、可能な範囲で法案に盛り込 んでいくべきではないかというふうに私どもの立場としては考えておるわけであります。 恐らくそうしたことが求められることも十分予想されると思っておりますので、さまざ まな論点につきまして、委員の皆様に御議論をいただいてきたというところでございま す。  更に、蛇足になりますけれども、この中でも年来の課題でありますパートの厚生年金 適用拡大の問題、更には、そうした問題ともクロスいたします、今、御議論さまざまに いただきました第3号被保険者の問題など、制度固有の構造的な問題が常に存在してい るということを十分配慮してまいりたいと考えております。  加えて、余り多くを語るとよくないのですが、この3号被保険者問題につきまして、 先ほど権丈委員の方から年金局当局はどう考えているんだという御発言もございました ので、若干申し上げておきたいと思います。  今日の御議論の中でも多くの示唆をいただいたというふうに大変評価しております。 権丈委員がおっしゃるとおり、議論そのものの政治的な構造が今、どういう状況にある のかという点について、私どもは当局として冷静かつ慎重に考えなければいけないわけ でございます。  もう一点申し上げれば、今日の資料に十分出ておりませんけれども、40代以降の3号 被保険者が増えているというものの中に、無視できない要素といたしまして、本年、既 に男性3号が10万人を超えている状況にまで至っているということもございまして、先 ほどは若い子育て世代の問題ということで御議論がなされていたり、あるいは裕福な専 業主婦ということで御議論されていますが、これから男性も女性も雇用が流動化し、長 い雇用、キャリアの中で、雇用を中断する、先ほど小島委員がおっしゃったような無業 になるという期間も多々発生し得るわけでございます。  とりわけ、親の介護でというお話も先ほどございましたが、本人の体調、精神的な状 態、そういったものによって労働戦線を離脱しなければいけない、こういうような人々 も数多いことは、雇用の議論の中でも多くあるわけでございます。そういったところも 含めて、実情、実態というものを更に分析していく必要性を抱えている大きな課題であ ると思っております。  今日の資料3に書かせていただきましたように、年金制度自身につきましても、社会 保障制度全体の将来の方向性の中で、さまざまな課題へのさまざまな御提案、あるいは 対応というものがこれから進んでいく可能性を持っております。そうした制度的な環境 の変化というものも十分考えて、将来像というものを建設的に考えていかなければいけ ないんではないか。  一例を言えば、そもそも3号制度は何のために設けられたかという政策目的が、他の 政策手段によって、どの程度補われているのかということの評価がこれから必要になっ てくるんではないかというふうに考える次第でございます。  ちょっと余計なことを申し述べましたけれども、こうしたことから、今後の当部会の 進め方につきましては、私ども厚生労働省、財政当局、与党との間で、2分の1の問題 や、税制抜本改革につきまして、どのような議論が展開されるかということに大きくか かわっているものだということは避けて通れない認識だと思っております。  いずれにしても、今回の議論の整理を受けまして、事務当局におきまして、更なる議 論に資するデータや資料の準備などに一定の時間をいただいた上で、9月以降、更に御 議論を深めていただければと考えております。引き続き御理解、御協力賜りますよう、 よろしくお願いいたします。 ○稲上部会長 ありがとうございました。  特に何か御発言ございますか。それでは、ちょっと時間を過ごしておりますが、本日 の部会はこれで閉じさせていただきます。どうもありがとうございました。 (連絡先) 厚生労働省年金局総務課企画係 03-5253-1111(内線3316)