予防接種後健康状況調査集計報告書平成17年度後期分 I.総 論    予防接種の副反応調査は二つの方法で実施されている。則ち、「予防接種後・健康状況調査」と「予 防接種後・副反応調査」である。本報告は前者で、定期接種のワクチン個々について、あらかじめ各 都道府県単位で報告医を決めておき、それぞれのワクチンについて接種後の健康状況を前方視的に調 査したものである。ちなみに後者は、予防接種後の異常な副反応を後方視的調査に基づき報告のあっ たものをまとめたものである。  今回は、平成17年度分後期(平成17年10月〜平成18年3月)をまとめたものである。 1.本調査の目的は、国民が正しい理解の下に予防接種を受けることが出来るよう、接種前 に個々のワクチンの接種予定数を報告医毎に決め、接種後、それぞれのワクチン毎に一定 の観察期間を通じ、接種後の健康状況調査を実施することにより、その結果を広く国民に 提供し、有効かつ安全な予防接種の実施に資することである。 2.調査対象としたワクチンは、定期接種として実施されたジフテリア、百日せき、破傷風 三種混合ワクチン(DPT)、ジフテリア、破傷風二種混合ワクチン(DT)、麻しん、風 しん、日本脳炎、ポリオ、インフルエンザと結核予防法で実施されているBCGである。 3.健康状況調査の実施期間及び対象者数は、DPT(DT)、麻しん、風しん、日本脳炎については、 各四半期毎に都道府県、指定都市当たりそれぞれ40名を対象とし、接種後28日間を観察期間と した。   ポリオについては、第2期(10〜3月)は、各100名を対象として35日間観察、BCGは 接種数が年間一定でないことから第2期(10〜3月)は100名(乳幼児、3歳以下)を対象と し、観察期間は4カ月間とした。    インフルエンザについては、11〜12月の実施期間で40名を対象とし、接種後28日間を観 察期間とした。 4.報告の手順は、各都道府県・指定都市においてワクチン毎に報告定点を受諾した報告医が、各予 防接種の接種当日に保護者に対して、本事業の趣旨を十分説明の上、健康状況調査に協力する旨の 同意を得た後、台帳に登録する。    その後、保護者に健康状況調査表(ハガキ)を渡し、記入要領を説明し、保護者から返送された ものを、カルテと照合しまとめたものである。 5.本調査は、通常の副反応(発熱、発赤、発疹、腫脹)や、稀におこる副反応(アナフィラキシー、 脳炎、脳症等)に加えて、これまで予防接種の副反応として考えられていない接種後の症状につい ても報告できるように設定した。 また、予防接種後の健康状況という性質上、変化がない場合でも返送を依頼している。 6.本調査の性質上、登録者全数からの回答が必要であるため、調査表の返送の重要性について、本 人又は保護者へよく説明し、同意をいただくことが重要である。 7.報告医から提出された調査表は、厚生労働省結核感染症課で集計し、予防接種後副反応・健康状 況調査検討会において、医学的、疫学的見地から解析・評価を行った。 8.予防接種後健康状況の調査結果は、都道府県・指定都市、日本医師会、地域医師会及び報告医等 に還元するとともに、広く国民に公表することとしている。 9.集計にあたっては、各ワクチン毎の集計の場合、ワクチンによって少し内容は変わるものの、接 種例数、年齢、発熱、局所反応、けいれん、じんましん、嘔吐、下痢、せき、鼻水、リンパ節腫脹、 関節痛等について集計した。   製造会社毎の副反応については、接種ワクチン総数の差があるため、個々にまとめず全体のまと めを報告することとした。 II.各 論 DPT・DT                             1.DPT1期初回1回目   対象者数は、673人でこの内670人(99.5%)が生後3ヶ月から3歳代であった。 何らかの症状を呈したのは219人、316件であった。男女児間に差は認めなかった。症状 とその発現日、年齢の関係をみると次の通りである。   37.5℃以上38.5℃未満の発熱は合計24件(3.6%)であるが、接種後7日まで の小計は6件(0.9%)である。  38.5℃以上の発熱は合計30件(4.5%)であるが接種後7日までの小計では11件 (1.6%)である。  局所反応は合計77件(11.4%)であるが、接種後7日までの小計では58件(8.6%) である。接種後1日目の22件(3.1%)が最大である。年齢に有意の差は認めない。   けいれんは見られなかった。   嘔吐は合計16件(2.4%)であるが、接種後7日目までの小計では6件(0.9%)で ある。   下痢は合計37件(5.5%)であるが、接種後7日目までの小計では16件(2.4%) である。   せき、鼻水は合計132件(19.6%)であるが、接種後7日目までの小計では52件(7. 7%)である。  2.DPT1期初回2回目   対象者は570人で、この内567人(99.4%)が生後3ヶ月から3歳代であった。何 らかの症状を呈したのは223人、313件である。男女児間に差は認めなかった。症状とそ の発現日、年齢の関係をみると次の通りである。   37.5℃以上38.5℃未満の発熱は合計23件(4.0%)であるが、接種後7日目ま での小計は12件(2.1%)である。接種後1日目の5件(0.9%)が最大である。   38.5℃以上の発熱は合計32件(5.6%)であるが、接種後7日目までの小計は13 件(2.3%)である。接種後4日目の5件(0.9%)が最大である。年齢別に有意の差は ない。  局所反応は合計112件(19.6%)であるが、接種後7日目までの小計では107件(1 8.8%)である。接種後1日目の60件(18.8%)が最大である。   けいれんは見られなかった。   嘔吐は合計10件(1.8%)であるが、接種後7日目までの小計では4件(0.7%)で ある。  下痢は合計34件(6.0%)であるが、接種後7日目までの小計では19件(3.3%) である。接種後0、1日目の4件(0.7%)が最大である。   せき、鼻水は合計102件(17.9%)であるが、接種後7日目までの小計では48件(8. 4%)である。接種後1日目に12件(2.1%)が最大である。      3.DPT1期初回3回目   対象者は524人で、この内516人(98.1%)が生後3ヶ月から4歳代であった。何 らかの症状を呈したのは211人、301件であった。男女児間に差は認めない。症状とその 発現日、年齢の関係をみると次の通りであった。   37.5℃以上38.5℃未満の発熱は合計25件(4.8%)であるが、接種後7日目ま での小計は11件(2.1%)である。その中では接種6日目の3件(0.6%)が最大であ る。   38.5℃以上の発熱は合計36件(6.9%)であるが、接種後7日目までの小計は15 件(2.9%)で、接種後2日目と3日目に各4件ずつ(0.8%)が最大である。       局所反応は合計108件(20.6%)であり、接種後7日目までの小計では106件(2 0.2%)である。接種後1日目の63件(12.0%)が最大である。   けいれんはみられなかった。   嘔吐は合計9件(1.7%)であるが、接種後7日目までの小計では5件(1.0%)であ る。   下痢は合計27件(5.2%)であるが、接種後7日目までの小計では11件(2.1%) である。   せき、鼻水は合計96件(18.3%)であるが、接種後7日目迄の小計では39件(7. 4%)である。  4.DPT1期追加   対象者数は490人で、この内466人(95.1%)が1歳から4歳代であった。何らか の症状を呈したのは250人、359件であった。男女児間に有意の差は認めない。症状とそ の発現日、年齢の関係をみると次の通りであった。  37.5℃以上38.5℃未満の発現は合計18件(3.7%)であるが、接種後7日目ま での小計では9件(1.8%)である。接種後1日目に5件(1.0%)が最大である。   38.5℃以上の発熱は合計33件(6.7%)であるが、接種後7日目までの小計は9件 (1.8%)である。発現日は接種後3日目の3件(0.6%)が最大である。  局所反応は合計176人(35.9%)であるが、接種後7日目までの小計では172件(3 5.1%)である。接種後1日目の113件(23.1%)が最大である。   けいれんは接種後10,14,23日目に1件ずつでいずれも発熱を伴っていた。   嘔吐は合計12件(0.6%)であるが、接種後7日目までの小計では6件(1.2%)で ある。   下痢は合計20件(4.1%)であるが、接種後7日目までの小計では11件(2.2%) である。   せき、鼻水は合計97件(19.8%)であるが、接種後7日目の小計では43件(8.8%) である。接種後3日目の11件(2.2%)が最大である。  5.DT初回接種、追加接種は対象者が少ないので省略する。  6.DT2期   対象者は719人であった。なんらかの症状を呈したのは303人、343件であった。症 状と発現の関係をみると次の通りであった。   37.5℃以上38.5℃未満の発熱は、合計12件(1.7%)であるが、接種後7日目 までの小計は10件(1.4%)である。   38.5℃以上の発熱は合計6件(0.8%)であるが、接種後7日目までの小計では3件 (0.4%)である。   局所反応は、合計283件(39.4%)であるが、接種後7日目までの小計では283件 (39.4%)である。接種後1日目の169件(39.4%)が最大である。11歳と12 歳に有意の差は認められない。   嘔吐は合計3件(0.4%)であるが、接種後7日目までの小計では3件(0.4%)であ る。11歳と12歳での差は認めない。   下痢は合計13件(1.8%)であるが、接種後7日目までの小計では12件(1.7%) である。   せき、鼻水は合計26件(3.6%)であるが、接種後7日目までの小計で19件(2.6%) である。  ま と め   健康状況調査では各項目で従来の調査結果と大きな相異はみられなかった。  DPT接種後の特徴は初回1回接種の局所反応にみられる。すなわち今回の調査でも接種1 日後の局所反応は1回、2回、3回、追加接種で約3.1%から約23.1%の率で出現する が、1回目接種後に限っては接種後7日目に10件1.5%、8日目にも6件0.9%の局所 反応がみられる。即ち、1回目接種後0日〜1日目では3.2%の局所反応であるが、7日目 〜8日目でも計1.2%にみられる。一方、2回接種、3回接種、追加接種後は0〜1日目に 約13%から28%みられるものの7日目、8日目ではほとんど局所反応はみられない。けい れんは少数にみられたが全例に発熱がみられた。DPT・DT接種後の嘔吐、下痢、せき、鼻 水を観察しているのは紛れ込みの副反応を観察することが目的である。いずれの症状も接種1 日後にやや多く報告されるが28日を通して大きな発生率の相違はなく、このワクチンを接種 する年齢層の日常における症状の発生率と考えられる。 麻しん  対象者は、1歳児1,684人(男児855人、女児829人)、2歳児90人(男児25 人、女児34人)、3〜7歳児76人(男児46人、女児30人)の計1,850人であった。  観察期間中(0日〜28日)に初発した発熱は、390件(21.1%)であり、そのうち 最高体温が38.5℃以上であったものは、237件(12.8%)であった。そのうちで、 接種後6日までの発熱は132件(7.1%)、38.5℃以上は80件(4.3%)であっ た。接種後7〜13日の発熱者は162件(8.8%)、38.5℃以上は91件(4.9%) であった。0〜13日に初発した発熱を合わせると294人(15.9%)、38.5℃以上 は171人(9.2%)であり、発熱のほとんどは0〜13日に初発した。  観察期間中に発疹が出現した者は168件(9.1%)であった。そのうち6日以内に出現 した者は、46件(2.5%)、7〜13日に出現した者は101件(5.5%)であった。  局所反応は51件(2.8%)に認められた。そのうち、23件(1.2%)は3日以内の 局所反応であった。  けいれんが出た者は6人(0.3%)、発症日は0〜6日が2人、7〜13日が2人、14 〜20日が1人、21〜28日が1人であり、5人が37.5℃以上の発熱を伴っていた。け いれんとワクチン接種との因果関係は不明である。  蕁麻疹は、53人(2.9%)に認められ、発症日が前半の0日から13日までが、後半の 14から28日より多い傾向が認められた。1日以内の蕁麻疹を認めたものは6人(0.3%) であった。  ま と め  麻疹予防接種にともなう発熱には弱毒麻疹ウイルスの増殖に伴う発熱(通常7−13日にみ られる)、ワクチン液に含まれるその他の成分に対するアレルギー反応としての発熱(接種後 比較的早期に発現する)、そしてワクチンとは無関係の発熱がある。観察期間中の発熱は21. 1%、0〜13日に初発した発熱は15.9%と発熱日に集積性が認められた。したがって、 発熱の多くは麻疹ワクチンと関係あるものと推測される。   麻疹ワクチン接種に伴う発疹には弱毒麻疹ウイルスの増殖に伴うものと、アレルギー反応、 まぎれこみがある。発疹は9.1%に認められ、0〜13日に初発した発疹は7.9%と発熱 と同様発生日に集積性が認められた。  蕁麻疹が0〜13日に集中する傾向が認められた。  熱性けいれんの発生はあったが、脳炎・脳症の報告はなかった。 風しん  対象者数は2,292人(男児1,141人、女児1,146人、不明5人)で、内訳は6〜1 1カ月児1人(女児1人)、1歳児1,662人(男児825人、女児832人、不明5人)、2 歳児314人(男児153人、女児161人)、3歳児127人(男児64人、女児63人)、 4歳児65人(男児33人、女児32人)、5歳児50人(男児30人、女児20人)、6歳児 54人(男児26人、女児28人)、7歳児16人(男児8人、女児8人)12〜15歳児3 人(男児2人、女児1人)であった。  今期は38.5℃以上の発熱率は4歳児、1歳児次いで7歳児に高い傾向が認められた。け いれんがみられたのは1歳児のみに4人、そのうち3人は37.5℃以上の発熱をともなった。 蕁麻疹は年齢による差は明確ではなかった。発疹は2.1%に認められた。  リンパ節腫脹は7件(0.3%)にみられた。  関節痛は4件(0.2%)報告された。    ま と め  風しん予防接種は主として1歳次いで2歳児が受けている。風疹予防接種の主たる副反応は 発熱であるが、麻しんワクチン接種後のように最初の2週間に集積する傾向はなく、28日間 を通した合計で9.2%であった。年度によって発熱率ならびに年齢別発熱率がゆれる。すな わち、1歳児、4歳児、7歳児の発熱率がその間の年齢の児より高い傾向があった。発疹、局 所反応、蕁麻疹の発生率は1〜3%未満と少ない。今期のみ4歳児のリンパ節腫張が4.6% と通常より高かった。それを除けばリンパ節腫張、関節痛は2%未満と稀である。 日本脳炎    1.日本脳炎ワクチン1期初回1回目  報告された対象人数は40人で、接種された年齢は0歳〜7歳児である。発熱、局所反応、 けいれん、蕁麻疹、その他の発疹など何らかの健康異常を来した人数(発生件数)は合計2人 (3件)で対象者の5.0%を占め、男は0、女のみに3件認めた。  接種年齢をみると1歳未満1人、2歳2人、3歳29人、6歳5人で3歳児が29人と特に 多く、3〜6歳で全体の92.5%を占めた。  接種年齢別の健康異常発生者の割合をみると、健康異常は3歳女児の3件が見られた。  発現症状をみると、この3件は37.5℃以上の発熱、接種部位の局所反応、蕁麻疹の1件 ずつであり、けいれんはみられなかった。  症状の発現日を観察期間28日でみると局所反応は接種当日、発熱は1日目、蕁麻疹は2日 目に報告された。  2.日本脳炎ワクチン1期初回2回目  対象者数は0〜7歳児47人で3歳児が最も多く、接種後28日の観察期間中発熱、局所反 応、けいれん、蕁麻疹、その他の発疹など何らかの健康異常を来した者は5人(7件)で対象 者の10.6%を占めた。男女別では11.1%:10.3%で男女差は見られなかった。 接種年齢別の健康異常発生者の割合をみると、10.7%〜13.3%、平均10.6%で3、 4歳群のみにみられた。  発現症状をみると、3歳群は38.5℃以上の発熱2件、接種局所反応1件とその他の発疹 2件、また4歳群では38.5℃未満の発熱2件が報告されたがけいれんは見られなかった。  症状の発現日を観察期間28日でみると局所反応は接種後1日目に、その他の発疹は2日目 と22日目、発熱は微熱群が4日目、高熱群は26日目とやや接種時期から経ってからの報告 であった。 3.日本脳炎ワクチン1期追加  対象者数は0〜7歳児49人で4歳児が29人と最も多い。接種後28日の観察期間中、発 熱、局所反応、けいれん、蕁麻疹、その他の発疹など何らかの健康異常を来した者は13人(1 4件)で対象者の26.5%を占め、その接種年齢別の健康異常発生者の割合は17.2%〜 100%、平均26.5%で、男女の占める割合は125.0%:28.0%と女がやや多か った。  発現症状では、何れの年齢も発熱が目立って多く、6.9%〜50.0%、平均18.4% (38.5℃以上は平均12.2%)であった。ついでは接種部位の局所反応が、3歳群1件、 4歳群2件、蕁麻疹、その他の発疹は4歳群で1件ずつみられた。けいれんは見られなかった。  症状の発現日を観察期間28日でみると局所反応は接種後1日目6件、2日目1件と2日以 内に集中したが、発熱は全観察期間にわたってみられ、一定の傾向は見られなかった。蕁麻疹、 その他の発疹は1散発的に見られた。  4.日本脳炎ワクチン2期、3期の結果   2期、3期の結果はまとめて報告する。  対象者数は2期の9〜12歳児で15人、3期の14〜15歳児では0人あった。接種後2 8日の観察期間中、発熱、局所反応、けいれん、蕁麻疹、その他の発疹など何らかの健康異常 を来した者は2期の女の1件のみで、健康異常発生者の割合は6.7%であった。  発現症状と症状の発現日では、症状は38.5℃以上の発熱で、接種後24日目に見られた。  ま と め    今回の報告は厚労省による「日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨差し控え」通達後の報告で あり報告数は従来に比し極端に少ない。ここに報告された所見から考察すると今回も従来と同 様日本脳炎ワクチンの副反応の主なものは発熱、局所反応、発疹である。接種年齢が若い初回 接種では発熱、ついで局所反応が多いが、これらは接種回数を重ねるにつれ、また年齢が高く なるにつれ発熱は減少、局所反応が増加する傾向がある。局所反応をみると何れの接種も接種 翌日にピークがあり、約7日目まで集中する。一方発熱は観察28日間に渡って広く散在して いるが、これも年齢の若い群ほど全観察期間に渡ってみられる。このことは必ずしも発熱がワ クチンだけの副反応とは言い難く、むしろ発熱疾患の頻度など年齢因子を考えると紛れ込み野 熱性疾患の可能性を伺わせる。蕁麻疹やその他の発疹は一定の傾向がなく、頻度も低い。けい れんや脳炎・脳症などの重篤な中枢神経系合併症の報告はなかった。3期の報告はなかった。 ポリオ    1.ポリオ1回目   接種対象児数は1,300人(男623人、女670人、不明7人)で、内訳は3〜5カ月 414人(男192人、女221人、不明1人)、6〜8カ月540人(男263人、女27 2人、不明5人)、9〜11カ月200人(男94人、女106人)、1歳120人(男61人、 女58人、不明1人)、2歳以上26人(男13人、女13人)であった。このうち対象期間 中に健康異常の発生のなかった人は1,048人(80.6%)であった。同じく何らかの健 康の異常がみられた人は252人(19.4%)337件で、年齢別では、3〜5カ月65人 (83件)、6〜8カ月112人(152件)、9〜11カ月47人(62件)、1歳23人(3 2件)であった。接種数の比較的多い1歳以下では9〜11ヶ月児で何らかの健康異常がみら れる割合が若干高かった。   発熱は132/1,300人(10.2%)にみられ、そのうち1歳以下で発熱率の比較的高 いのは9〜11ヶ月児26/200人(13.0%)であった。38.5℃以上の発熱は52 /1,300人(4.0%)で、接種0日目1件、1日目13件、2日目12件、3日12件、 4日目5件、5日目3件で、その後1日あたり1〜5件程度、31〜35日目が11件であっ た。   けいれんを来した症例は1件で、接種21日目での発症、体温は37.5度以上であった。   嘔吐は47件(3.6%)に認められ、接種0〜4日目が2〜9件(0.2〜0.7%)、 で、その後1日あたり1〜3件程度となり、31〜35日目に5件(0.4%)であった。   下痢は157件(12.1%)に認められ、投与1日目をピーク(26件、2.0%)とし、 0〜4日目に多く認められた。下痢を来す率が高かったのは6〜8カ月児で71/152件 (13.1%)および9〜11ヶ月児で27/62件(13.5%)であった。  2.ポリオ2回目   接種対象児数は1,328人(男644人、女672人、不明12人)で、内訳は3〜5カ 月7人(男2人、女5人)、6〜8カ月50人(男19人、女31人)、9〜11カ月283人 (男143人、女140人)、1歳832人(男389人、女431人、不明12人)、2歳1 21人(男69人、女52人)、3歳以上35人(男22人、女13人)であった。  このうち対象期間中に健康異常の発生のなかった人は1,036人(78.0%)であった。 同じく何らかの健康異常がみられた人は292人(22%)420件であった。年齢別では3 〜5か月2人(3件)、6〜8カ月4人(8件)、9〜11カ月83人(125件)、1歳18 4人(258件)、2歳16人(21件)、3歳3人(5件)であった。   発熱は187件(14.1%)にみられた。そのうち発熱率が比較的高いのは9〜11ヶ月 児51人(18.0%)であった。38.5℃以上の発熱は121人(9.1%)で、接種2、 10日目各8件、3、4、9日目各7件、1、8、14日目各6件、その他がおおむね1〜5 件、31〜35日目が8件であった。   けいれんの報告は1件で、接種後5日目で発熱は37.5度未満であった。嘔吐は66件(5. 0%)であった。   下痢は165件(12.4%)で、下痢は投与1日目をピーク(2.0%)とし、0〜2日 目に多く認められた。下痢を来す率は、3〜5ヶ月児14.3%(1件)、6〜8ヶ月児6. 0%(3件)、9〜11ヶ月児18.4%(52件)、1歳児11.7%(97件)、2歳児8. 3%(10件)、3歳児10.0%(2件)であった。  ま と め  ポリオ1回目、2回目の接種後発症割合を見ると、発熱10.2%:14.1%(38.5℃ 以上4.0%:9.1%)、嘔吐3.6%:5.0%、下痢12.1%:12.4%、けいれ ん0.1%:0.2%、となっている。  発症までの期間を見ると、1回目の発熱のピークは接種後2、3日目(0.9%)、ついで 31〜35日目(0.8%)になっている。2回目は接種1日目がピークで(1.5%)、つ いで2日目(1.1%)、4日目(0.9%)、3日目、31〜35日目(0.8%)となって いる。  下痢については1回目接種後1日目(2.0%)、2回目接種後1日目(2.0%)がピー クとなっており、5日目後からほぼ横ばいとなっている。嘔吐については、第1回目0日目、 (0.7%)、2回目1日目(0.5%)に、発熱、下痢より小さいピークが見られるが、1 〜2日目以降はほぼ横ばいとなっている。  以上の結果は、昨年同期に比較し大きい変化はない。   1回目接種者と2回目接種者での健康状況変化の発生割合は、大きな差はみられない。  これらの健康状況の変化が、生ワクチンによるポリオの反応であるか否かの判断は難しいの はこれまでと同様であり、考察も同様である。しかしこれらの健康状況の変化はいずれも軽微 な自然回復性のものにとどまっており、現段階でポリオワクチンの重要性を妨げるものではな いと思われる。    B C G  0歳児総数2,417人について接種後観察が行われた。そのうち男は1,222人、女は1, 185人であった(性不明10人)。  これらの中から27人、1.1%に何らかの異常が見られた(延べ件数29件、被接種者10 0人あたり1.2件)。健康異常発生者割合は性別に見ると男1.3%、女0.8%と、男で多 かった。  異常の種別にみると、「局所の湿潤」が18件(被接種者の0.7%)、「リンパ節腫脹」が1 1件(0.5%)であった。  リンパ節腫脹は接種後15日〜5ヶ月に起こっていたが、とくに半数を超える6人が1ヶ月〜 5ヶ月に発生していた。  局所の湿潤は、接種後1ヶ月〜4ヶ月にわたって発生していた。  接種局所の針痕に関する観察は2,035人(被接種者総数の84.2%)について行われた。 全体では15〜18個(記載上19個異常とされている者を含む)の者が多く(60.7%)、 4個以下の者は0.5%とまれであった。平均個数は全体では15.5個で、健康以上の有無別 に見ると、「なんらかの異常あり」で15.9個、「異常なし」で15.4個であり、「異常あり」 でわずかに多かった。 ま と め   リンパ節腫大は被接種者の0.5%に発生している。一般にこのような腫大の大部分は単純な 腫大であるが、一部分(ある研究によれば2%)が化膿し、穿孔する。しかしいずれにせよ、数 ヶ月のうちに無治療のままで治癒する。  局所の湿潤は約3分の2が接種3ヶ月以内にみられたもので、正常反応が強調された例と考え られる。コッホ現象を思わせる早期(7日以内)の例はない。  針痕は今回の観察では全体で平均15.5個みられた。標準的な技術で接種した場合の平均値 に近い。ただし少数ながら針痕個数が9個以下のものもあり、接種技術の向上の余地がある。  インフルエンザ(表8−1〜3参照) 平成17年4月1日〜平成18年3月31日の間に、インフルエンザワクチン接種を行った1,2 37名についてワクチン接種後の健康状況について報告を求めた。性別、年齢別に、健康以上発生件数、 発生割合を表x1に示した。170人(13.7%)に190件の報告が見られた。男性7.4%、女 性17.3%と、大きな性差が見られている。年齢階層別にみると、健康異常発生率の高いのは、60 〜64歳の15/52人(28.8%)、低いのは、95歳以上で1/18人(5.6%)であり、い ずれも母集団の少ない群であった。他の年齢層では、10.4〜18.9%であった。  健康状況報告書に見られた症状のうち、150例(接種者の12.1%、異常健康状況の78.9% を占める)は注射局所の疼痛などの局所反応であった。全身反応としては、全身倦怠感が17例(1. 4%)、頭痛が14例(1.1%)、37.5℃以上の発熱が5例(0.4%)、嘔吐が3例(0.2%)、 蕁麻疹が1例(0.1%)に見られた。神経症状を呈した例や死亡例は報告されなかった。  ワクチン接種から異常健康状況発現までの日数は、3日以内が184例(96.8%)を占めた。7 〜19日目に報告されたものとして、発熱3例、蕁麻疹、嘔吐、頭痛が各1例見られた。                         照会先                         厚生労働省健康局結核感染症課                         TEL 03−5253−1111 内線2383