08/06/30 厚生科学審議会科学技術部会ヒト胚研究に関する専門委員会 第18回議事録 第17回 科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会「生殖補助医療研究専門委員会」 第18回 厚生科学審議会科学技術部会「ヒト胚研究に関する専門委員会」 議事録 日時:平成20年6月30日(月) 15:00〜17:30 場所:経済産業省別館 1042号会議室(10階) 出席者:  (委 員)笹月座長、安達委員、石原委員、奥山委員、小澤委員、小幡委員、       加藤委員、木下委員、後藤委員、鈴木委員、高木委員、中辻委員、       秦委員、星委員、吉村委員  (事務局)厚生労働省:千村母子保健課長、梅澤母子保健課長補佐、小林母子保健課長補佐       文部科学省:長野対策官、高橋室長補佐、 議事: ○笹月座長  それでは、時間になりましたので、第17回「生殖補助医療研究専門委員会」と第18回「ヒト 胚研究に関する専門委員会」を開催します。大変お暑いところ、お集まりいただきありがとう ございます。それでは、資料の確認を事務局からお願いします。 ○小林母子保健課長補佐  お手元にお配りいたしました資料について確認させていただきます。議事次第をめくってい ただきますと、配布資料の一覧があります。本日の資料ですが、資料1、2、3、4、5、6-1〜4まで、 それから参考資料1、2で委員の名簿、参考資料3、それから緑色のファイルを用意させていただ いております。過不足等がありましたら、事務局までお申し付けください。 ○笹月座長  よろしいでしょうか。今の資料1に前回の委員会の議事録がありますが、これは事前に各委員 からご意見をいただいて訂正、修正されたものでありますが、これでよろしいですか。それでは、 お認めいただいたものといたします。  それでは早速本日の議題に入りたいと思います。まず、前回の委員会で合意した事項につき まして事務局よりご説明をお願いいたします。 ○高橋室長補佐  それでは前回に合意した事項につきまして説明させていただきます。資料2をご覧ください。 資料2一番後ろのページなのですけれども、4.「研究実施の要件について」、箱の中にあります 一番最後の黒マル「研究終了後のヒト受精胚の取扱い」についてご議論いただきました。具体 的には資料3の27ページをお開きください。資料3の27ページの黒マルの部分です。研究終了後 のヒト受精胚について、基本的には「ヒト授精胚の作成は当該研究に必要とされる最小限にと どめることとし、当該研究終了後は作成したヒト受精胚をすべて速やかに滅失させることとす る」ということで合意いただいております。  資料4に進みまして「研究実施の手続きについて」の研究計画書に記載する事項についてご 議論いただきましたけれども、こちらは国の関与のあり方ですとか、今後の審査の手続きによっ て内容が変わってくるということで、また別途、後ほどご議論いただくことにしております。 12ページの共同研究の場合につきましても、研究計画書に記載する事項ですので、こちらも全 体の審査の手続き等が決まりましてから、もう一度戻ってくることにいたしました。以上でご ざいます。 ○笹月座長  どうもありがとうございます。それでは本日の議事は「ヒト受精胚の作成・利用のための配 偶子入手のあり方について」ということで、前回の続きということでありますが、こちらの資 料につきましても事務局からご説明をよろしくお願いいたします。 ○小林母子保健課長補佐  資料5に基づきまして、「配偶子の入手方法」について前回の続きになりますけれど、説明 させていただきます。資料5の1枚目です。「配偶子の入手のあり方について」です。「卵子の 採取は、精子の採取よりも肉体的、精神的負担が大きく、一度に採取できる数などに違いがあ ると考えることから、その提供の際には、より慎重な配慮が必要であると考えられる」という ことを前提としています。  次に、めくっていただきまして、2ページですが、「卵子の入手について、未受精卵の提供 が認められる要件」ということを整理させていただいております。総合科学技術会議の意見書 におきまして、未受精卵の入手にはここに(1)から(4)まで書いてあります。(1)といたしまして 「生殖補助医療目的で採取された未受精卵の一部利用」、(2)といたしまして「手術等で摘出さ れた卵巣や卵巣切片からの採取」、(3)といたしまして「媒精したものの受精に至らなかった非 受精卵の利用」、(4)といたしまして「卵子保存の目的で作成された凍結未受精卵の不要化に伴 う利用等」があり得るということを整理されております。  「ヒト受精胚の作成を伴う研究へ提供が認められる未受精卵は、i)以後、生殖補助医療に 用いる予定がなく、ii)本人の自由意思によるインフォームド・コンセントが適切に得られた ものと考えられ、(1)〜(4)がそれに当てはまるかどうかということをまずご議論いただきたいと 考えております。  なお、この(1)の「生殖補助医療目的で採取された未受精卵の一部利用」ということにつきま しては、(1)-1〜3に挙げていますように、(1)-1「形態学的異常により、生殖補助医療に用いら れなかった未受精卵を研究に利用する場合」、(1)-2といたしまして「形態学的な異常はないが、 精子等の理由で生殖補助医療に用いられなかった未受精卵を研究に利用する場合」、(1)-3とい たしまして「生殖補助医療目的で採取する未受精卵の一部を、自発的な申し出により、生殖補 助医療に用いず、研究に利用する場合」が含まれております。(1)-1及び(1)-2は、上の(3)に準ず るものと考えられております。(1)-3につきましては、「本人の自発的な申し出」により、生殖 補助医療目的で採取された未受精卵の一部を生殖補助医療に用いないことが確認されることか ら、上記のi)、ii)を満たすと考えられます。  なお、この「本人の自発的な申し出」がある場合とは、主治医らが関与することなく、一般 的に入手し得る情報に基づき、自らの判断により提供を申し出る場合を意味するということで 整理させていただいております。これは(1)-3の場合です。未受精卵の一部を自発的な申し出に より研究に用いる場合ということですが、採取された未受精のうち、研究に利用するものの選 別については、グレードの低いものから順に研究に利用するなどの配慮が必要であるかどうか ということをご議論いただきたいと考えております。  それから、総合科学技術会議の同意見におきましては、「未受精卵の入手には、提供する女 性に精神的・肉体的負担が生じることも考えられるため、その利用は個々の研究において必要 最小限の範囲に制限されるべきであり、そのための枠組みの整備が必要である」とされており ます。また、同意見においては、「通常、未受精卵を提供する女性は、患者という自分の権利 を主張しにくい弱い立場にあることから、自由意思によるインフォームド・コンセントの徹底、 不必要な侵襲の防止等、その女性の保護を図る枠組みの整備が必要である」としております。 以上を整理いたしますと、未受精卵の提供を受ける際には、「自由意思によるインフォームド・ コンセントを徹底すること」、「未受精卵の採取は必要最小限の範囲とし、肉体的侵襲や精神 的負担は最小限にすること」、「個人情報の保護」を確保することが必要であるとするかとい うことについて、ご議論いただきたいと考えております。また、総合科学技術会議の意見書に おきましては、「ヒト受精胚の取扱いのための具体的遵守事項として、未受精卵の無償提供等 を定める必要がある」としておりまして、これは既にこの委員会でご了解いただいている事項 ですけれど、上記の考え方に基づきまして、未受精卵の研究のための提供については無償とす ることと整理されているところです。  取りあえず、ここまでの点についてご議論いただきたいと思います。 ○笹月座長  ありがとうございました。2ページの上から「卵子の入手について」ということで、まず総合 科学技術会議の受精卵の提供が認められる要件、その中で(1)〜(4)までありますが、実際にここ で議論すべきことは(1)-1〜3までありますということで、次のページの(1)-3の場合、「採取され た未受精卵のうち研究に利用するものの選別については、グレードの低いものから順に研究に 利用するなどの配慮が必要か」は、これまでも何度も出てきた文言でありますが、当然のこと として認めてよかろうということだと思いますが、よろしいでしょうか。  その下の白丸です。以上を整理すると、未受精卵の提供を受ける際には、「自由意思による インフォームド・コンセント」、それから「採取は必要最小限度の範囲」とする、「負担を最 小限にする」、「個人情報の保護をする」ことが必要であるということで、この「未受精卵の 提供」ということに関して、使用されなかった、使用される予定のない未受精卵については、 このような三つの条件を確保するということでお認めいただくということで、これはよろしい ですね。  それから、次の黒丸の「未受精卵の研究の提供については無償とする」ということは前回既 に議論して、合意された事項であります。  ここまでのところで「自由意思によるインフォームド・コンセントを徹底すること」と、 「自発的な申し出」があった場合にそれを利用してよかろうと、条件が整えば利用してよかろ うということでありますが、これもさんざん議論をしたところですが、本当に生殖補助医療を 受ける女性、こういう研究が行われていることすら知らない女性から自発的意思で「研究にど うぞ使ってください」と申し出るというようなことがあり得るのかどうか。それに対しては、 こういう診療が行われる場にポスターなどを貼っておいて、何も言わずに貼っておいて患者さ んがそれを見て自発意思で申し出ることがあるのかなどというような批判が、これまでに出さ れたと思いますが、そういうことが本当にあればそれは認めてよろしいと。ところが一方では もう一つ踏み込んで、直接の主治医からは無理だと思いますが、コーディネーター、第三者か ら生殖補助医療に資する研究というものが実際に行われていて、生殖補助医療そのものがいま だ完成したものではないので、その生殖補助医療に資する研究が必要であり、そういう研究を 通して医療というものが進歩するものであるという話をして、もしどうしても使わず破棄する ような場合には、これは利用してよろしいかどうかということを、こちらが医療側から患者に 働きかけて、考えてもらって同意を得るというようなやり方も可能性としてあるだろうと。そ うしますとそういうものは認められるのかどうかということですが、いかがでしょうか。 ○安達委員  ポスターを貼っておいて自発的にそれを見て申し出るということは、ほとんどあり得ないの ではないかと思うのです。臨床の現場では、体外受精・胚移植をするときに、余った受精胚を 凍結するというお話をして、そういうことの同意を得るわけですけれども、その受精胚をどれ ぐらい凍結するかというのは、実際には各施設に任されていることなのです。ある施設では1年 ごとに凍結に必要な費用を払えば何年でも、凍結受精卵を本人の生殖年齢が過ぎるまで、或い は本人が「廃棄してください」と言うまでは、凍結するという所もありますし、私が所属して いた施設は一応1年間までの凍結というシステムになっています。つまり凍結は1年間しかしな いということで、その間に胚移植するか、或いは妊娠した場合は1年経ったら廃棄します。何年 も保存していますと煩雑になりますので、そのようにしています。胚の凍結のことをお話しす るときには、当然凍結受精胚を廃棄するときに研究利用ということの可能性もお話ししたりす るのです。ですから、例えば未受精卵がたくさん採取されたときに、未受精卵を使っての研究 もありますが、このようなものもありますよと紹介することは、あまり本人の自由意思をねじ 曲げるものではないと思います。ただポスターを貼っておいて自分で見るということは非常に 難しいことですから、そのようなことが自由意思ではないとされてしまいますと、なかなか現 場としては無理ではないかと思います。体外受精・胚移植などのときに、一緒にお話をするこ とは別に構わないのではないかと思います。 ○笹月座長  ありがとうございました。他の委員の方、いかがでしょうか。その自発的意思が、どの程度 自発的かとか、自由意思に基づくかと問われると、それは非常に難しくて、例えば血液を使っ てゲノム解析をする、何も言わないのに患者さんが自分の血液を解析に使ってくださいと言う はずはないので、必ず主治医あるいはそれに代わる第三者が、こういう研究が必要でこの研究 によって病気の原因も解明され、予防・診断・治療に将来益するであろうという話をして、本 人の了解を得て採血し、ゲノム解析をするというステップになるわけです。ですからそのとき に、医療行為の途中で医療側が説明をしたから、それが自由意思に反すると言われると、そう いう研究は一切成り立たないことになるわけで、安達委員がおっしゃったように、そのステッ プを認めるかどうかというところを決めていただきたいのです。 ○加藤委員  一般的にある人が意思を表明したときに、それは本当に自発的であるか、自発的ではないか ということは誰も決定することはできないのです。例えば私が誰かに「結婚してください」と 言ったときに、電話で申し込めば自由意思を尊重しているけれども、押しかけて行って深夜に 申し込んだら、自由意思を尊重しないことになるとかという、そういう判断基準はないですね。 一般的にはその申し出に対して、理由なく断っても不利益な処分を受けないということを確認 する必要はあると思います。つまり、例えばいったん承諾した人が土壇場になって「私、嫌で す」と言っても不利益な扱いを受けないということを明示し、それを確認する必要があると思 います。 ○笹月座長  ありがとうございます。それはいわゆるインフォームド・コンセントの撤回ということです ね。いつでも撤回できますといった。 ○加藤委員  ですから、医師としてみれば、懇切丁寧に説明するわけですから、提供する側としては何の 理由もなしに断るというのは、とても気が引けて気分は嫌だと思うのです。けれども、理由な しに断っても構わないということを相手にきちんと伝えておくことだと思います。 ○笹月座長  他の委員の方々、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。そうしますと、これまでのとこ ろで合意したところは、自発的意思による、自発的申し出による場合には認めますということ でありましたけれども、それをさらに一歩踏み込んで医療側からその必要性を説明して患者さ んの同意を得れば、それはいただいて研究に使ってよろしいというところについてご意見、い かがでしょうか。それでよろしいでしょうか。 ○高木委員  クローン胚のときは、そういうことはいけないということになっているのですけれど。クロー ン胚のときの未受精卵の入手においては、それは認められていないのですが、クローン胚のと きとこちらは別に違っても構わないのですか。未受精卵の入手法というものが、クローン胚の ときとこちらの研究で違っていても、それは問題ないのですか。 ○長野対策官  同じクローン胚の研究に用いるための未受精卵の入手方法と、生殖補助医療研究に用いるた めの未受精卵の入手方法が、考え方として生殖補助医療の過程で行われる入手方法という点で は同じなのですけれども、研究の目的なり、それに使われる、例えば必要となる卵子の数です とか、いろいろな研究目的そのものの条件が違うということで異なることがあっても、それは よかろうと思います。そこは逆に、それはどうこう違うからこうなのですということは説明す る必要があると思いますけれども、そこは異なることがあっても構わないと。  先ほど来、「自由意思」という言葉と「自発的な申し出」というのは、言葉上は使い分けて おります。「自由意思」というのは、例えば主治医なり他の方からお話があって、その上での お答えというのは自由な意思に基づいての「自由意思」ですし、そうではなくて「自発的な申 し出」というのはどなたからも持ちかけられなかったにしても、ご自身からの発意でおっしゃ る場合ですので、そこは言葉遣いを使い分けていることと、もう一つは形態学的な異常がない 形で未受精卵を一部利用され、あらかじめたくさん採卵されて一部利用される場合については、 クローン胚研究の医療にはそのような方法での入手は認めないという結論になっています。以 上です。 ○笹月座長  ありがとうございます。 ○小幡委員  少し確認したいのですが、総合科学技術会議の方で自発的な申し出でなければいけないとい うようにされているのですか。 ○長野対策官  総合科学技術会議で具体的に自発的な申し出に限るとはなっていません。ここの卵子の入手 方法の(1)で総合科学技術会議意見の方で書かれていると引用されておりますけれども、総合 科学技術会議意見の中で生殖補助医療研究のための未受精卵の入手というのはこういった場合 はあり得るということを言い切っております。実は入手方法の書きぶりとしましては、クロー ン胚研究の目的の中ではこの(1)のような書きぶりはなかったのです。生殖補助医療研究の場合 には未受精卵の一部利用という書き方がなされていて、それは少し幅広く入手方法について検 討ができるということを示されるのではないかということで、選択肢を幅広にこちらでは述べ ているということですので、若干もともとCSTP(総合科学技術会議)での書きぶりもクローン 胚の場合はこちらとは違うということです。 ○笹月座長  ありがとうございました。よろしいですか。 ○小幡委員  そうすると、こちらの方でも、必ずしも自発的な申し出ということにこだわらなくてもよい ということでよろしいですね。 ○長野対策官  自発的申し出に限るというのはCSTP(総合科学技術会議)から言われているそのものではな くて、恐らく1年前ぐらいになりますか、こちらの委員会の方でご検討いただいたときに、 「自発的申し出でない場合は認めないこととしましょう」という合意がなされたことで、ここ では「自発的な申し出に限る」とさせていただいています。 ○笹月座長  よろしいでしょうか。自発的ということと自由意思、本当に自由意思かどうかを詮索しても 答えは出ないと思いますので、プロセスがきちんとなされていれば、そしてインフォームド・ コンセントにサインをしてもらっていれば、自由意思ということで。ただし、加藤委員がおっ しゃったように撤回が可能であるとか、そのことによって不利益を被らないとか、いろいろな ことは考えるべきと思います。 ○高木委員  それは他ではないのですけれども、これは生殖補助医療の研究に用いるわけですから、生殖 補助医療の医療費一部負担などにおいての未受精卵の一部を提供するということは話し合う必 要はないのですか。もうそれは「なし」ですか。 ○小林母子保健課長補佐  少し趣旨が十分に理解できないのですが、費用負担というのは。 ○笹月座長  医療費用を支払っていて、手にした受精卵か未受精卵を研究に使用するということで、そこ のところの何か整理が必要かどうかというそういう質問ですね。 ○高木委員  そうです。それは話さないのか、最初から「なし」なのか、「あり」と言って話すのかとい うことです。 ○小林母子保健課長補佐  確認ですが、それは自発的なというのが自由意志を確認された上で、費用負担の軽減という 観点からのファクターを考慮するかどうかということですか。  そこは整理になるかと思いますが、3ページに書かせていただいておりますように、未受精 卵の研究への提供については無償という原則がありまして、要するに医療費の軽減というのも 見方によれば、有償提供に該当するという解釈が成り立つのかと思います。 ○笹月座長  一応費用のことはテーマが別になりますので、今の費用のことは置いておいて、今のように 医療側から説明して了解を得て自由意思によって提供される場合には、それは受けてよろしい ということについてはご賛同いただけますか。よろしいですね。それでは、そういうことにさ せていただきます。  そういうことで3ページの(2)の上の所までは、もうこれでよろしい、一応合意をいただいた ということで。その次にこの間、いわゆるボランティアということで大変議論が沸騰いたしま したが、(2)「無償ボランティアからの研究目的での未受精卵の採取について」というところを、 事務局からもう一度ご確認をお願いします。 ○小林母子保健課長補佐  3ページの(2)の「無償ボランティアからの研究目的での未受精卵の採取について」を説明さ せていただきます。これは実は前回ボランティアの解釈で無償ボランティアのボランティアと 言った場合に、いわゆる先ほど(1)-3に該当するような本人の自発的な提供、医療の過程でのボ ランタリーな提供についても、ある意味無償ボランティアではないかという、若干その言葉の 定義をめぐっての混同というか議論もあったわけですけれども、最初の「ここで議論する無償 ボランティアとは、生殖補助医療、その他の治療の過程で得られた未受精卵を提供者が自発的 意思で提供する場合は該当せず、治療目的ではなく専ら生殖補助医療研究での使用のみを目的 とした未受精卵の採取に応じる者」を無償ボランティアということで定義して議論を進めてい ただきたいと考えています。  総合科学技術会議の考え方におきましては、「いわゆる未受精卵の採取については、自発的 な提供を望む気持ちは尊いものとして尊重するとしても、一方で、関係者等である女性に未受 精卵の提供が過大に期待される環境が形成され、本当の意味での自由意思からの提供とならな い場合も考えられるため、原則、認めるべきではない」との見解が示されています。これにつ きましては前回の先生方に議論をいただいたわけですが、この委員会においては「無償ボラン ティアからの研究目的での未受精卵の採取については、これを認めるべきという意見と、認め るべきではない、あるいは慎重に対応すべき」という両論が前回出されたところです。  その両論の片方の無償ボランティアからの研究目的での未受精卵の採取を認める意見につき ましては、前回の議論を整理すると次のような点が指摘されたと考えています。一つ目は、肉 体的侵襲や精神的負担について十分に理解した上で自発的に申し出る純然たる無償ボランティ アであれば、研究目的での未受精卵の採取は認めるべきではないかという考え方です。  それから総合科学技術会議の先ほどのところで触れられています「関係者等である女性に未 受精卵の提供が過大に期待される環境が形成され、本当の意味での自由意思からの提供となら ない場合も考えられる」という見解につきましては、無償ボランティアからの採取を認めない ことを裏付ける明確な根拠とはならないのではないかという指摘もされています。  それから、ヒト受精胚の作成を伴う研究を進める上では、比較的状態の良い未受精卵を一定 量確保することが望まれるが、これまでに提供が認められた未受精卵では、入手自体が非常に 困難であり、入手できたとしても未受精卵の状態が良いとは限らないため、無償ボランティア からの研究目的での未受精卵の採取を認めた方が、研究によって得られる社会的便益は大きく なるのではないかというところが未受精卵の提供を求めるべきだという意見の背景として指摘 された事項です。  一方で、無償ボランティアからの未受精卵の採取を認めるべきではない、あるいは慎重に対 応すべきという意見としては、次のような指摘がなされていたところです。「本人が肉体的侵 襲や精神的負担について十分に理解した上で、自発的に未受精卵の提供を申し出る純然たる無 償ボランティアの自由意思は尊重されるべきである」ということは前提としてありますが、韓 国の人クローン胚研究に見られるように、現時点において未受精卵を提供するように心理的圧 力を受ける女性が存在するという可能性や、純然たる無償ボランティアの自由意思であるか否 かを確認することが困難であること等の問題があることから、無償ボランティアからの研究目 的での未受精卵の採取は認めるべきではないのではないかという意見が説明されています。  また、未受精卵を採取するための穿刺、あるいは排卵誘発剤投与等による副作用として、個 人差はあるものの、かなり強い肉体的侵襲や精神的負担が生じる可能性があることに鑑みれば、 治療の過程ではない専ら研究目的での未受精卵の採取は慎重であるべきではないか。  また、無償提供を原則としつつ交通費や日当等の実費を支払うとすると、無償か有償かの区 別が困難な状況も想定される。このような問題もあることから、無償ボランティアからの採取 は慎重であるべきではないかということが指摘されていたところです。  なお、未受精卵の採取には大きな肉体的・精神的・経済的負担が伴うことから、ボランティ アを募るのであれば、無償ではなく、有償でなければ現実的ではないという意見も提示されて います。  このように、無償ボランティアからの研究目的での未受精卵の採取については、これを認め るべきという意見と、認めるべきではない(慎重に対応すべき)とする両論が存在する状況にあ るが、提供者の保護等に係るさまざまな問題が指摘されていること、生殖補助医療目的で採取 する未受精卵の一部を、自発的な申し出により、研究に利用する、先ほどの(1)-3などの方法に より、研究の実施に必要な未受精卵の確保が可能であると考えられることに鑑みまして、当面 は、無償ボランティアからの研究目的での未受精卵の採取は認めずに、他の入手方法で得られ た未受精卵を用いてヒト受精胚の作成を伴う研究を実施することとしてはどうかということで 整理をしています。  いずれにしましても、長期的には今後の幅広い国民的な議論によって、最終的な結論が出さ れるべきものではないかということも併せて書いています。よろしくお願いします。 ○笹月座長  どうもありがとうございます。それでは、前回の続きとしましてこの「無償ボランティアか らの研究目的での未受精卵の採取」ということをご議論いただいて結論を出したいと思います が、認める意見としての最初のポツを十分に理解しているのであれば、本人の申し出で採取を 認めてよいのではないかということ。それから、認めるべきではないというのは2番目のポツ ですね。未受精卵を採取するための穿刺、卵誘発剤投与等による副作用、肉体的侵襲、精神的 負担ということに鑑みれば研究目的でのみ受精卵の採取は慎重であるべきである。認める場合 の意見と認めない場合の理由については、それぞれ一つずつもっともと思われるポツがありま すが、委員の方々からのご意見を頂きたいと思います。  まず、先ほど生殖補助医療の過程で医療側から説明して、もし自由意思で提供してもらえる 場合であればそれは受けてよろしいということをお認めいただいたので、そこまでの入手の方 法が確立、許されるなら、生殖補助医療に資する研究を遂行する上で当面十分な有精卵が手に できるのかどうかというところを産科・婦人科の先生方、現場の先生方のご意見を伺いたいの ですが。 ○石原委員  今、一つ困ったなと思いましたのは、ここの「関係者等である女性に未受精卵の提供が過大 に期待される環境」というのは、今までは生殖補助医療研究に資するための未受精卵の提供を、 生殖補助医療を受けていらっしゃる患者さんにいただくという話をしていたわけですね。先ほ どの治療の過程というのはまさしく関係者等である女性なので、もしこのロジックで無償ボラ ンティアの採卵・採取を認めないというロジックであるとすると、先ほどの生殖補助医療を受 けている女性からの提供を求めるというのは、ますますまずいのではないかという気がしてし まうのです。ですから、「無償ボランティアから未受精卵の採取を認めるべきではない」とい うことをもし通すのだとすると、その理屈ではないようにしていただく必要があると思います。 ○笹月座長  ですから、私が申しましたように、「未受精卵をボランティアから採取するのは認めるべき ではない」というリーズニングの中ではこの4ページの二つ目のポツですね。 ○石原委員  副作用うんぬんのところですね。 ○笹月座長  副作用の問題に尽きるのではないかと思うのです。その他のことは憲法としてまずありきで、 そしてうんぬんするのではなくて、理由はこれに尽きるのではないですか。 ○石原委員  笹月座長のおっしゃる通りだと思います。ただ、いつも申し上げていますように、今、卵巣 刺激あるいは卵巣穿刺して卵子を採取するという過程の安全性は、10年前と全然違いますし、 そもそもたくさん採るということを、無償ボランティアの場合に、クローン胚研究の場合はそ うかもしれませんが、今はしておりませんが、もし私どもが研究をするとすれば、可能なので あれば、あるべき自然周期に近い状況で卵子を採るような、なるべく自然周期で育ってきた卵 子の方が研究に資する部分が大きい可能性があると思いますので。そうだとすると、何もせず 卵胞の発育を観察しながら排卵の直前まで見て、そこで難易性のLHサージが出るのを待ってさ らに採卵するということになりますと、1回刺すだけという負担はあまり大きくない場合が多そ うな気がしてしまうのですが、いかがでしょうか。 ○安達委員  私は石原委員とは意見が異なりまして、無償ボランティアはあまり認める必要がないのでは ないかという考えです。その一つは先ほど「本人の自由意思で」というところが入りましたこ とと、それと卵巣の良性腫瘍のために一方の卵巣をすべて取る手術をしたときに得られる卵巣 の一部からの卵胞がありますので。きちんとした周期で排卵直前などに合わせられるわけでは ないですが、いろいろな研究もあるかと思いますので、そういうものや、そのうち卵子を保存 しておきたいという方で、卵巣切片あるいは卵子を実際に保存しておいた方が要らないとおっ しゃるときも来るかもしれませんので、そういうものでできるのではないかと思います。  無償ボランティアで実際にこういうものを設けても、石原委員も賛成されると思いますが、 まずいないと思っているのです。先ほどおっしゃいました自然周期の排卵の時期とか適切な時 期に取ろうともし考えると、その方は恐らく何回か超音波検査や血液検査等をして、しかもそ のタイミングにぴったり合わせて採卵をする。もしかして採れないかもしれない。そういうこ とが起こり得ますので、恐らく何らかの排卵誘発剤の経口薬にするか注射薬にするかはわかり ませんが、そういう負担のもとに、別に20個、30個採ろうという意思ではないにしても、そう いう侵襲的な排卵誘発ということをします。それでもなおかつ排卵日にちょうどよい未受精卵 を採ろうと思いますと、何回かの検査やいろいろなことがありまして、実際には少ない可能性 ではあっても、それによる出血や感染等の可能性がもしリスクとしてあるのであれば、これに 関してどのような観点からこの方たちから責任を持って研究のためにいただくかが極めて難し い。ですから、侵襲をできるかぎり少なくするという点におきましては、必要があって卵を採 る、あるいは卵巣の一部を取るという手技の治療経過の中で卵を採るのであれば、その方にか かわる侵襲は治療のためにかかわっている侵襲ですので、肉体的・精神的な負担は少なくなる のではないかと考えます。  こちらに韓国の例が出ていますが、これはそういう配慮もあるべきなのかもしれませんが、 あまりこれを強調しなくてもよいと思います。ですからほとんど可能性のない無償ボランティ アというものを入れると、またそれをどういう方法でやるかという規制までいろいろ考えなく てはいけない。しかも、ほとんど該当者はいないであろうということになりますので、これは 入れなくてもよいのではないかと思います。 ○笹月座長  ありがとうございます。現実的に先ほど医療行為として排卵誘発剤を使って採取して一部利 用を認めるかどうかというときの議論にもありましたように、壁に貼っておいても自発的に申 し出る人はいません。そうであればますます一般の集団ではそういう生殖補助医療ということ 自体も知らない。それに対する研究ということも知らないという人の中からボランティアが出 てくるとはとても思えないですね。ですから、そういう点では一つ。  それからもう一つは先ほど「自由意思による提供は認める」ということをここで認めていた だいたので、そのことによって入手方法の幅が広がって当面は研究するに十分な量を手に出来 るのなら、あえてそこにもう一つボランティアを募るという必然性も随分少なくなってきたと 思います。  先ほどの肉体的・精神的侵襲ということに鑑みれば、現時点としてはボランティアは認めな い。また時期が来て本当に生殖補助医療に参入する研究者がたくさん増えてきて、あるいはそ の成果が上がってますますそういう研究が推奨されるようになったときに卵が足りないという ようなことがあれば、そういう議論も出てくるかもしれませんが、現時点ではそこまで必要が ないのではないかという感じがします。それでよろしいでしょうか。 ○中辻委員  一つ確認なのですけれど、私は不妊治療の現場は知らないのですが、話を聞くと不妊治療の 成功率が高くなって、胚を1個だけ移植するとなってきて採卵自体も少数だけ採卵するように なってきて、体外受精でつくる受精胚も少数になってくる。治療のことを考えればそういうこ とが望ましいのですが、そうすると実際研究に使わせていただけるかもしれない卵子もそうで すし、受精胚にしても今後非常に少なくなるということを言う方がいらっしゃるのですが、実 際上無償ボランティアをなくすということは妥当かもしれませんが、実際にそうした場合研究 ができるのかどうかということを、現場を知っておられる専門の方にお伺いしたいのですが。 ○笹月座長  何かご意見、あるいは。 ○石原委員  2007年の日本産科婦人科学会の登録調査委員会にオンライン登録されましたデータの暫定値 ですが、新鮮胚の移植胚周期で約40%の周期は単胚移植です。凍結胚移植の場合は50%が単胚 移植です。基本的には1個採卵した周期で戻して、残ったものは凍結してその次周期以降です、 その感じでいきますと恐らくできている受精卵は数個の周期である採卵がかなり多い。そうし ますと、多分妊娠率が二十数%ありますので、5個以上採卵する必要性は平均的にはあまりない と思います。ただ、これは施設によって差がありますので。要するに自然周期であるとか、ク ロミフェンにより1個か2個しか卵が育たないようなやり方を基本的として卵巣刺激をしている 施設における周期数が多いためにそうなっているに過ぎないという言い方はできるかもしれま せん。ただ、全体の流れとして卵巣刺激法というのはどんどんマイルドになって獲得しようと する卵子数の総数も減ってきているとお考えいただいてよろしいと思います。 ○笹月座長  そうすると、中辻委員の懸念のように将来だんだんそういうアベーラブルなもののサイズは だんだん小さくなるというのは事実でしょうということですね。 ○吉村委員  おっしゃる通りだと思います。未受精卵が少なくなるからといって、無償ボランティアに依 存するというのは難しい。韓国の例が問題なのは無償ボランティアでやったということがそも そも問題なのであって、そこに無理があったということだと思います。その辺を我々が気付か なければいけない。要するに有償ボランティアと無償ボランティアというと、無償ボランティ アの方が聞こえは良いのですが現実的ではないということです。ですから、研究のために無償 で卵をいただけますかというと、これは非現実的な議論をしているということになります。で すから、ボランティアであれば有償であるしかないと思います。入手する未受精卵は少なくなっ たとしても生殖補助医療で先ほどの(1)-3の「自由意思によって」ということで許されたならば、 まずそこでやってみるというのが一番社会からも受け入れられる方法ではないかという感じが します。 ○笹月座長  ありがとうございます。 ○星委員  未受精卵の採り方が非常に難しいのはよくわかりました。もしも体外成熟がきちんと出来る という前提があれば、例えば開腹手術の時、卵巣から未熟卵子を採ることは可能です。帝王切 開の時でも、卵子を沢山採るということは出来ます。それらの未成熟卵をin vitroで成熟させ 成熟未受精卵にすることは出来ないことではありません。こういったケースもボランティアと 規定できるのかどうか考えておいてもよいのではないかという気がいたします。 ○笹月座長  いわゆるここで今、議論しているボランティアも本当に狭義のボランティアで、全く何とも ない必要のない人たちからということです。一応現時点では現場としても量的には当面はやれ るでしょうということですので、あえてそのボランティアはここでは認めない。ただ将来に向 けてはそれを全く閉じてしまうと具合が悪いのかもしれませんので、どういう文言になるのか はわかりませんが、当面は認めないという形でよろしゅうございますか。 ○鈴木委員  今のまとめで、私も良いかと思っています。それから、考えていたのは以前吉村委員ともご 一緒に卵子胚を提供して他のご夫婦の子どもをつくるためにそれら配偶子を提供するという議 論を別の委員会でしてきたのですが、そのときにも、この配偶子に値段というのでしょうか、 無償なのか有償なのか排卵誘発剤等を使ってこんな大変なことを無償でお願いできるのか。そ んなことで提供してくれる女性がどこにいるのかという議論を随分やってきました。そのとき に、だからこそ卵子のシェアリングということも問題になっていたのですが、今の時点では何 となく卵子を買う、卵子に対価を付けるという卵子の採り出しについて、私自身を含めて道徳 的な抵抗感が社会にもあるのではないかという気がするのです。ですから、現実には私も頭の 中では吉村委員がおっしゃったように有償ボランティアでなければ現実的ではないと理解して いますが、そういった反発感等も踏まえると、今の段階では無償でまず出発するというのが一 番よかろうと思っているのです。以上です。 ○笹月座長  これは卵子に限らず何度も申しますが、血液にしてもかつては買血が行われましたが、それ は認めない。臓器移植のときの臓器のそれももちろん認めないということで、無償であるとい うことは前回お認めいただいたところです。ですからただ今のようにボランティアは当面認め ません。ただし5ページの最後に書かれていますように、今後の幅広い国民的な議論によって、 最終的な結論が出されるべき、将来には少し含みがあるでしょうということでよろしいでしょ うか。  それでは、卵子については以上のようなところを今日の結論とさせていただきます。続きま して6ページ「精子の入手について」を事務局から説明をお願いします。 ○小林母子保健課長補佐  それでは6ページの「精子の入手について」を説明します。総合科学技術会議の意見におきま しては、精子の入手のあり方について特に意見は示されていませんが、これまでの議論を含め てですが精子の提供を受ける際には、卵子の場合と同様に自由意思によるインフォームド・コ ンセントを徹底すること。それから個人情報の保護、無償提供を確保することが必要であると いうことを条件にするかをご議論いただきたいと思います。  精子の入手について6ページの下の四角で囲っているところで、これまで議論をいただいたと ころですが、それを踏まえて整理をさせていただき、入手の方法を(1)から(6)に分けて書いてい ます。(1)として「生殖補助医療に用いられる予定であったが、結果的に用いられなかった精子」 (2)として「生殖補助医療において凍結保存されていた精子のうち不要となったもの」(3)「泌尿 器疾患等の手術により摘出された精巣又は精巣切片」(4)「他の疾患のため治療のため精子を保 存する目的で摘出・保存されていた精子、精巣又は精巣切片で不要となったもの」(5)「外来検 査受診の後、不要となった精子」(6)「無償ボランティアから提供を受けた精子」を利用するこ とが考えられるとするかということで議論をお願いしたいと考えています。  なお、先ほど卵子につきまして無償ボランティアを認めないということで整理いただいてい ましたが、6ページの四角で囲っている下から二つ目のところで、既にご議論いただいています が、「無償ボランティアからの精子の提供については、自発的な提供の申し出がある場合は認 めることとする」また、「研究の実施に当たって必要不可欠である場合には、その科学的理性 及び社会的妥当性について十分検討を行った上で、特定の者に精子の提供を依頼することを認 めることとする」ということで既に合意をいただいています。よろしくお願いします。 ○笹月座長  ありがとうございました。もうこの6ページの四角で囲ったところで大体片は付いていると思 いますが、最初の上の丸の精子の提供を受ける際には、自由意思によるインフォームド・コン セントを徹底すること、個人情報の保護、無償提供であると、これまで議論したところでよろ しいかと思います。精子の入手については(1)〜(6)ですが、どなたかご意見はありますか。 ○奥山委員  (6)番の「無償ボランティアから提供を受けた精子を利用することが考えられるとするか」は、 先ほどの卵と違って少し微妙というか精子というのは侵襲を加えなくても取れるのです。いわ ゆる患者さん側から申し入れ、自由なボランティアとしての申し入れは受けなくても日々の診 療の中で余った精子は使えることは使える。使うわけですね。ですから、これは恐らく比較的 状況の良い精子をコントロールのようなスタディーに用いるということになると思うのです。 これは婦人科の先生方も我々以上に現場をよくご存じなので。これは恐らく科学者そのものが ご自分たちのものを提供されるというものであれば、どうなのでしょうか。先ほどの卵とは違っ てあり得ると思いながら先ほど聞いていたのですが。 ○笹月座長  ですから、これでよろしいかどうかということなのですが。(1)(2)(3)(4)(5)(6)、(5)までは問題は ないかと思います。最後の(6)の無償ボランティアこれもよかろうということでよろしいですか。 ○小林母子保健課長補佐  確認でございますけれども、(1)〜(6)のいずれの場合にも一つ上の丸にありますように、自由 意思によるインフォームド・コンセントをまず原則徹底すること、個人情報を保護する、無償 提供その三つを(1)〜(6)のいずれの場合も原則として、これを前提として。 ○笹月座長  もちろんです。原則というよりも、もちろんです。よろしいですね。 ○鈴木委員  一つだけ質問をよろしいですか。多分、奥山委員のおっしゃった通りだと思います。多分現 場の男性の方々が協力することがほとんどだという気がするのですが、そうするとその場合は、 先ほどの単語の使い方として「自発的な申し出」という単語でよいのかそれとも「自由意思」 くらいにしておいた方がよいのか。今、引っ掛かったのですが。つまり倫理委員会などに研究 の精子はどこから持ってくるのですかと候補者を書くときに、これは「自発的な申し出」の人 たちとは違うのではないかと突っ込まれないかと思ったりもしたのですが、いかがでしょうか。 つまり、周辺にいる研究者たちも可とするのであれば、そのようなことも含まれるような文面 の方が、そこで審査からはねられることもあり得ませんかという余計な心配をしたのですけれ ども。 ○笹月座長  無償ボランティアを認めるということであれば、周辺の人であれ何であれ構わないのではな いですか。どこが問題なのですか。 ○鈴木委員  「自発的な提供の申し出」という単語で良いかという話です。先ほどの単語の使い分けとい うことでいうと、「自由意思」の方が広い意味かと。 ○中辻委員  ちょっと違うことになるかもしれませんけれど、いくら侵襲が少ないとはいえ、例えば教授 が学生に「おまえのをよこせ」と言うのは避けなければいけないのではないですか。実際に、 現実にどういうものがあるにしろ。 ○笹月座長  それは上の丸の「精子の提供を受ける際には」の三つのポツが大前提になる。 ○中辻委員  ですから「自発的」としておく方が、それは担保されるのではないかと思います。 ○笹月座長  自発的。何度も言いますが、例えば患者さんの病気を解明しようと思って、患者さんのゲノ ムを解析したときに、自発意思では出てこないのです。やはり医師なり第三者の医療側に立つ 人が説明して、そしてその患者さんが判断する。まさに「自由意思」によって提供されるわけ だから、すべてが自発的でなければいけないとなると非常に限られる。ですから、説明して納 得してもらえればそれでよろしい。ただし、そのときに「自由意思によるインフォームド・コ ンセントを徹底すること」というものでくくれれば、それでよろしいのではないですか。 ○後藤委員  説明が加わるということで「自由意思」ということになると思います。研究仲間で教授およ び目上の人から説明されて、要求されてそれに応ずるというのは、「自由意思」ということに なりますけれども、患者さんの場合は、例えばご主人であれ誰であれ、その研究の成果が自分 たちの病気の予後とか治療に役立つことがあると思うのです。精子を採り、提供するという場 合には、提供者への利益がないわけですからですから「自発的」と言う方が私は良いと思います。 ○笹月座長  同じ例で恐縮ですが、例えばゲノム解析をするときに患者さんの血液をもらってゲノムを解 析するだけではどうにもならないので、健康人の血液をコントロールとして使います。そうす ると、その人はその病気でも何でもない、まさに一般集団です。けれども、その人たちにもや はり説明をしないことには募りようがない。ただじっとしていて、血液を提供するからどうぞ ゲノム解析してくださいという人はまずいないと思います。 ○中辻委員  この場合の精子提供にそういう事例がある、つまり研究者の側から、ある特定の人にアプロー チして、できれば提供していただきたいということが想定されるのであれば「自発的」ではい けないということは、わかります。 ○笹月座長  特定の病気の例は、ここに書かれていて、それは病気の場合ですよね。そうではなくて「健 康人の」という場合です。 ○奥山委員  患者さんの場合、いわゆる不妊カップルのような患者の立場で来られる方というのは、その 精子の数をカウントして、一部、医療に伴う、例えばイクシーのような医療に伴う分だけ採っ た後は、これは簡単に廃棄するのです。普通はルーチンに廃棄しています。我々は尿も採るの ですが、そういうものも含めて廃棄することは、もちろん病院全体として了解を得ているので す。そういう方が、これは病的な方で、残ったものをこういう研究に使わせて欲しいというこ とで、これが上の人なのです。ただ例外的に、学生のような方を対象にするのは、これは非常 に具合が悪いのですけども、一つのグループの中で比較的若い方でコントロールして参加して いただくことはよくあるのです。そういうものを否定することになると具合が悪いので、この 最後の項目(6)がないとそういうこともできなくなっていくと私は思うのですが、どうでしょうか。 ○千村母子保健課長  ちょっと、よろしいですか。 ○小林母子保健課長補佐  6ページの囲みの中の一番下の黒丸と一つ上の黒丸の二つには、違いがあります。下から二つ 目の黒丸の「自発的な提供の申し出がある場合」というのは、一般的にはいわゆる狭義の自発 的一般ボランティアです。それに対して一番下の「研究実施にあたって必要不可欠である場合 には」「特定の者に精子の提供を依頼すること」ができると。今、中辻委員からご指摘があっ た点は、一般的なボランティアではなくて、研究者の周辺の人などの場合には「科学的合理性 及び社会的妥当性」があればそれを認めるということは、すでに合意されていると理解してい ます。 ○笹月座長  これはむしろ特定の疾患の患者をターゲットにした話であって、一般の健康人にこの網をか けるのはおかしいと思う。一般健康人については、公募なり何でもよいから募集して「提供し てください」と言って提供してもらう。そういう働きかけがない限りは手にできませんから。 そして「自由意思」で参加してくれる人から採るわけですから、「自由意思」で良いと思います。 ○加藤委員  「自由意思」と「自発的な」という言葉が使い分けされているということは、我々は文書を 読んでもわからない。本当に使い分けをするのであれば、各ページに「使い分けしています」 と書いておいてもらわないと、後でこの文章を読んだときに全くわからなくなると思うのです。 そういった意味では、特に自発的な方法でと書かなくてはいけない理由がない限りは、自由意 思に基づいてというように、統一していただかないといけないと思います。 ○笹月座長  いかがでしょうか。 ○加藤委員  一般にこの審議だけではなくて、仲間同士だけで通用することも作らないということ、<ジャ ンル>を作ってはいけないということが、こういう審議の場合には、もう少し徹底して守られ るべきではないかと思っています。 ○高木委員  「特定の者」というのが一体誰を指すのかを、もう少しはっきりさせた方が良いと思う。 ○笹月座長  特定の疾患ではないですか、吉村委員。以前そういう議論をしましたが、これは患者の場合 を指しているのであって、健康人で自分の大学院生を「特定の者」というわけではない。 ○安達委員  紛らわしい表現ですね。 ○笹月座長  だから、「特定の疾患を有する者」と。 ○星委員  そういう疾患の場合もあるし、全く健康人というか、要するに妊孕力がきちんと認められて いる精子を使いたいということもあります。ですから、「特定」というのはいろいろあるので はないでしょうか。 ○笹月座長  健康な人というのは特定しなくても。 ○星委員  妊孕力が確認されているか確認されていないかというのは、結構大きな問題だと思います。 ○千村母子保健課長  この「特定の者」に関する私たちの理解としては、要するに今何人かの委員からご議論があ りましたように、例えばそれぞれの研究で、その研究の必要性に応じてこの特定の人あの特定 の人、あるいは疾患を持っている人ということを、言葉は悪いかもしれませんが「指さす」と いう意味での「特定」とここでは使っているのではないかと理解しています。 ○高木委員  それは、コントロールの疾病の人を使うのですか。 ○千村母子保健課長  と、なり得るのではないでしょうか。 ○笹月座長  ですから、それで良いのかどうか。私は健康人の場合にはそこまで言う必要はないのではな いかと思います。 ○石原委員  最近見ないですけれど、たしか札幌医大の泌尿器科の先生だと思いますが、自衛隊員の精子 数を経年的に調べていて、年次的にその精子濃度が変化していたという発表を続けられていた グループがありました。そういうのは「特定の者」というか特定の集団です。自衛隊員という 枠組みでその中の精子数の変化を見ていたという研究が確かあったと思うのですが、そういう ものはこれに入るのですか。 ○笹月座長  入らないでしょう。たまたま自衛隊員であったので、自衛隊員である必然性はないわけです よね。どこかの会社なり何なりで、あるいは学生なり。ここは「無償ボランティアは認めます」 ということでお認めいただければと思いますが、よろしいですか。 ○鈴木委員  すみません。二番目の黒ポツの文章は変ではないですか。 ○笹月座長  どれですか。 ○鈴木委員  四角の中の二番目の黒ポツです。 ○笹月座長  文章を読んでください。 ○鈴木委員  「生殖補助医療目的で採取された精子の一部利用については、生殖補助医療研究における利 用は、医療や検査で不要となった精子の提供を受けることで十分であることから、敢えて利用 する合理性がないため、認めないこととする」と。これはだから「生殖補助医療目的で採取さ れた精子の一部利用は認めないこととする」という文章になっているのですよね。今のお話と 全然違うのではないかという気がするのですが。 ○笹月座長  例えば、検査をしてたくさん余りますと。それは捨てています。それは利用してよいのでは ないかという話が出てきましたから、確かにそういう意味では、ここで認めないと言う必要は ないですね。 ○鈴木委員  このポツ自体がいらないということですね。 ○笹月座長  この黒丸でしょう。2番目の黒丸。 ○鈴木委員  あえて言うなら、4番目の黒丸も入れなくて良い気もするのですが。3番目の「無償ボランティ ア」という中に包括はされないのでしょうか。この辺は委員の皆さまにお伺いします。 ○小林母子保健課長補佐  二つ目の黒丸の文章が変ではないかというご指摘なのですが、次に資料6−1でご議論いただ くことになっているのですが、当初、念頭に置いておりましたのは、結局卵子の場合でいつも 議論になるのですけれども、生殖医療に利用されないことを決定して廃棄することが決まった 精子であれば認められるということなのですが、廃棄しないと決定される以前の段階で治療目 的で採取したものを無条件に使うことは認められないという趣旨でこれを「認めない」と書い たわけでございます。ご指摘の点を踏まえて、修正させていただきます。 ○石原委員  でもこの最初の「自由意思によるインフォームド・コンセント」というのは、全部に係って くるわけでしょう。 ○小林母子保健課長補佐  ご指摘を踏まえ、もう一度事務局で検討してみます。 ○笹月座長  指摘されたように生殖補助医療を目的で採取された中には、「医療」や「検査」というのは 確かに入ってくるはずですからね。ですから少し矛盾があります。これはもう一回事務局で検 討してください。  それでは、先へ進みたいと思いますが、次は。 ○小林母子保健課長補佐  資料6−1です。 ○笹月座長  資料6−1というのは、何ですか。 ○小林母子保健課長補佐  「インフォームド・コンセントのあり方について」ご議論をいただければと考えております。 資料6−1「インフォームド・コンセントのあり方について」説明させていただきます。  1ページ目の「インフォームド・コンセントのあり方についての基本的考え方」です。読み 上げさせていただきます。   ・ 総合科学技術会議意見におけるヒト受精胚の取扱いのための具体的な留意事項のう     ち、インフォームド・コンセントあり方に関する事項としては、ヒト受精胚や未受精     卵の提供の際の適切なインフォームド・コンセントの実施があげられている。   ・ このうち特に、未受精卵の入手については、提供する女性への不必要な侵襲を防止す     るとともに、提供への同意に心理的圧力がかかることがないよう、女性の保護を図る     必要があるため、個々の研究において必要最小限の範囲に入手を制限するとともに、     自由意思によるインフォームド・コンセントの徹底等を義務づける必要があるとして     いる。   ・ この意見を踏まえたうえで、ヒト受精胚の作成を伴う生殖補助医療研究を実施する場     合の配偶子の提供に係るインフォームド・コンセントのあり方について、総論的事項     として、インフォームド・コンセントにあたっての説明内容、インフォームド・コン     セントの撤回、インフォームド・コンセントの授受者、説明者について検討する。  さらに、各論的事項として、提供を受ける入手経路ごとに、「インフォームド・コンセント の同意権者、インフォームド・コンセントを受ける時期、その他配慮事項等について」この後 ご議論いただきたいと考えております。  2ページ目に入ります。まず「総論的事項」です。   ・ ヒト受精胚の作成を伴う生殖補助医療研究を実施する場合の配偶子の提供等に係るイ     ンフォームド・コンセントのあり方について、原則的な考え方を総論的事項において     検討する。   ・ ヒト受精胚の作成に必要な配偶子である卵子、精子について、概念的には区別すべき     ではないが、実際には採取における身体的、精神的負担や、一度に採取できる数など     に違いがあることから、具体的なインフォームド・コンセントの手続きについては、     提供される配偶子の種類ごとに各論的事項において検討することとする。   ・ また、配偶子が提供される場合によって、考えるべき例外的事項があれば、各論的事     項があれば、各論的事項において検討するこことする。  (1)の3ページに入ります。(1)「インフォームド・コンセントにあたっての説明内容(基本的 事項)」です。      ヒト受精胚の作成を伴う生殖補助医療研究を実施する場合について、当該ヒト受精      胚の作成に必要な配偶子の提供者のインフォームド・コンセントを文書により受け      るものとする。  これは既に合意いただいている内容です。本日ご議論いただきたいのは、次の点で、      提供医療機関及び研究実施機関では、それぞれ提供の方法等や研究の内容等につい      て説明する際、自由意思による適切なインフォームド・コンセントを確保するため、      以下の説明内容を説明書に明示することするか。 ということです。具体的に文書に明示すべき事項として、(1)〜(15)まで挙げさせていただいてお ります。これを順番に読み上げさせていただきます。      (1)研究の目的、方法及び期間      (2)提供される配偶子の取扱い及び研究終了後の胚及び試料の取扱い      (3)予想される研究の成果      (4)研究実施機関名、研究責任者の氏名及び職名      (5)個人情報の保護の具体的な方法      (6)提供が無償であること及び提供者が将来にわたり報酬を受けることのないこと      (7)提供者等に対して予測される危険や不利益      (8)提供される配偶子又は提供される配偶子を用いて作成されるヒト受精胚の遺伝子       の解析が行われる可能性のあること及びその遺伝子の解析が特定の個人を識別す       る目的で行われるものではないこと      (9)提供者を特定できないようにした上で、研究の成果が公開される可能性のあるこ       と      (10)提供される配偶子を用いて作成されるヒト受精胚の取扱期間については、受精後       14日以内であり、14日以内であっても原始線条が形成された場合には利用しな       いこと、ただし凍結している期間についてはヒト受精胚の取扱期間に算入しない       こと      (11)研究の成果から特許権、著作権その他無体財産権または経済的利益が生ずる可能       性があること及びこれらが提供者に帰属しないこと      (12)提供することまたは提供しないことが提供者に対して何らの利益または不利益を       もたらすものではないこと      (13)原則としていつでも不利益を受けることなく同意の撤回が可能であること及び撤       回が不可能となる場合にはその具体的条件      (14)問い合わせの連絡先等に関する情報      (15)その他必要な事項  これらの内容ついて、説明に明示するかどうかということについて、ご議論いただきたいと 考えております。  次に4ページでございますけれども、総合科学技術会議の基本的考え方におきましては、    ・ 具体的なガイドラインの内容としては、本報告書の基本的考え方に基づいて基準を      設け、これに基づいて個別の研究について審査した上で実施を認める枠組みが必要      であるとされている。   ○ヒト受精胚の作成を伴う生殖補助医療研究を実施するにあたっては、研究目的での胚の    作成は必要最小限にとどめるべきであり、個別の研究について審査をした上で研究実施    を認めることとなっている。従って、インフォームド・コンセントを受ける時点では具    体的な研究計画が確定しておらず、どのような研究に利用されるか分からないが、将来    的に何らかの研究に利用できるよう、あらかじめ「研究に利用する」といった内容で同    意を得ることは認めないこととするか。  ということについても、ご議論いただきたいと考えております。具体的な手続きについては、 各論的事項でこの後また議論いただきたいと考えております。 ○笹月座長  どうもありがとうございました。それでは、配偶子の入手方法は先ほどのところまでで結論 を出しましたので、これに際してのインフォームド・コンセントのあり方についてご議論いた だきたいと思います。ここに(1)〜(15)まで出されていますが、これは一般的なものと、それから 生殖補助医療、配偶子ということに特徴的なものが混在しておりますが、(2)、(8)、(10)が配偶子 あるいは生殖補助医療研究ということに特徴があろうかと思います。 ○高木委員  (8)で「遺伝子の解析が行われる可能性のあること及びその遺伝子の解析が特定の個人を識別 する目的で行われるものではないこと」というのだけれど、識別される可能性もあるというこ とを言わなければいけないのではないですか。 ○笹月座長  識別しようとすれば。 ○高木委員  そうです。すればできるということを、きちんと明記しておかなければいけないのではない でしょうか。 ○笹月座長  普通、ゲノム解析のときに「特定の個人を識別する目的で行われるもの」でもないし、逆に 言えば「識別しようとすれば識別できます」などということは、ゲノム解析のガイドラインに そういうことまで言及していませんから。 ○高木委員  「目的ではない」と言ったら。 ○笹月座長  ですから、目的でないということも言う必要があるかどうかということです。むしろ問題な のは、「遺伝子の解析が行われる可能性がある」というと、どの遺伝子と特定せずに何でもやっ てよいというようなことで、これはゲノム解析のときには非常に重要な問題で、ある特定の病 気の人に、その病気に関連する遺伝子を解析したいと。この他、何でもかんでも知能に関する 遺伝子まで調べますというようなことは認めませんというのが、ゲノム解析のガイドラインで すけれども。これだともうこう言っておけば何をやってもよろしいという包括的同意というこ とになりますが、それでよろしいかどうかということがむしろ問題だと思います。 ○小幡委員  この(8)は、常にあるということではないですよね。 ○小林母子保健課長補佐  常にあるというわけではなくて、その遺伝子解析を行う場合は、そのようにするということ です。 ○小幡委員  その場合は特定しなくてよいかということですね、そうすると。 ○笹月座長  遺伝子解析をするとすれば、今度はこのガイドラインではなくて、もう一つ遺伝子解析のガ イドラインの許可も得なくてはいけない。 ○小林母子保健課長補佐  むしろ別途、遺伝子解析に関するガイドラインを、当然適用の範囲に。 ○笹月座長  ですから、そちらでまた面倒をみてもらうということになる。ですから、解析が行われる可 能性があると。 ○小幡委員  書き方として、このように羅列するとミスリードされるので、(8)については遺伝子解析を行 う場合についてのインフォームド・コンセントの付加ですから、通常は、別に要らないわけで す。※印などにして最後に書くとか、少し工夫をした方がよろしいのではないでしょうか。 ○小林母子保健課長補佐  わかりました。(8)については、若干修正をさせていただきます。 ○笹月座長  これは、なくてもよいかもしれませんね。逆に遺伝子解析をする場合には遺伝子解析のガイ ドラインに従うということに当然なるわけですからね。その他には。 ○加藤委員  (7)の提供者等の「等」というのは、どういう意味で(7)にだけ「等」が付いているのですか。 ○小林母子保健課長補佐  これは提供者本人だけでなく、その配偶者などに、いわゆる医学的な意味でない危険とか不 利益とか、そういったものが発生することがあり得るかどうかということで「等」を付けてい ますけれども。要らなければ取ってしまってもよいと思いますが。考えられる、想定し得る不 利益というところで。 ○笹月座長  これは、どうですか。「等」は要らないですか。 ○加藤委員  説明する相手に対して責任者が説明する、いわば提供の当事者ですよね。当事者の場合に 「等」を入れない方が、この当事者に対してリスクとコスト等を説明しなければならないとい うのがインフォームド・コンセントの一番基本原則だと思うのです。こういうときに、「等」 を入れない方が、本当は正しいのではないか。もちろん「予測される危険や不利益」の中に提 供者の関係者も含むと考えれば、それでよいのではないかと思います。 ○笹月座長  中身は同じことになるかもしれませんが、「提供者等に対して」よりも、「提供者やその家 族」あるいは、「関係者」とか。それは「等」と同じことですけれども、「等」というよりは そちらの方が具体性、具現性がある気がします。それでよろしいですか。加藤委員、どうぞ。 ○加藤委員  いいですよ。 ○奥山委員  一つ、(3)の。 ○笹月座長  今は(8)です。この結論を出す。失礼しました、(7)です。 ○小林母子保健課長補佐  (8)は「等」を抜いて、「提供者に対して」ということにして、後は各論の事項でまた別途、 提供者本人以外に何か留意すべき点がありましたら。 ○加藤委員  本当は、これについては「危険や不利益」について過小表現をしてはならないという趣旨が もっと大事だと思うのです。今までのインフォームド・コンセントの判例では、非常に大きな 侵襲があるのに過小表現したということが一番大きな不正の原因だと見なされてきたことが あったと思います。ですから、過大に表現する必要はないないのですけれども、どうしても心 理的には、小さく言いたくなってしまう。 ○小林母子保健課長補佐  文章は後で修正させていただきますけれども、例えば、「提供者に対して予測される危険や 不利益について過小評価せずに記載すること」というような趣旨で修文をさせていただきたい と思います。 ○笹月座長  一応、今の(7)は。 ○小林母子保健課長補佐  そういう意味合いで修正を考えさせていただきます。 ○笹月座長  奥山委員、どうぞ。 ○奥山委員  (3)ですが、最近は研究成果という言葉で表すと、これは包括的かもしれませんけれども、あ る程度、提供者に対して開示する必要があるのです。我々の学会でも同じような対応をしてい ます。ですから「要求があれば研究成果を開示する」という文言が(3)にあった方が良いのでは ないでしょうか。 ○加藤委員  提供者に開示するということですか。 ○後藤委員  研究成果のみならず、研究方法もある程度開示するという、つまり、プロシージャですね、 研究プロシージャを開示することも最近はあると思うのですが。 ○千村母子保健課長  成果というのは、成果が出た上で開示することという意味ですか。あるいは予測される成果 を事前に予測をした上で正確に開示をするということですか。どちらですか。 ○奥山委員  成果が、一応目的が達成された場合もされなかった場合も、あるプロセスが一つ誕生した時 点で、そのことを提供者が求めれば、その情報が提供されるということです。 ○千村母子保健課長  私が申し上げていますのは、事前に予測されるものということでよいのですね。「予想され る」と書いてありますから、ここは。予想される研究成果ですから。研究成果というものを、 どういう形で明示するかということは、もう少し細かく議論してもよいと思います。ただ、こ こでもし、インフォームド・コンセントの時点で、すでに得られた成果を開示するということ になれば、それはできないことですので。その時点でまだ研究は始まっていませんから。 ○後藤委員  先ほども申し上げたのですが、研究方法およびサンプルをどのように使ってどのように解析 するかを知りたければ、それを開示するということも含まれると。 ○千村母子保健課長  ですから、私が申し上げていますのは、 ○笹月座長  少し待ってください。今のことは、ここに入っているわけですよね。今おっしゃったことは すでに。 ○千村母子保健課長  はい。そう思います。 ○後藤委員  研究の成果ではなくて、研究プロシージャ。 ○笹月座長  いや、(1)に出ています。 ○小林母子保健課長補佐  (1)の「研究の目的、方法」に含まれていると考えますけれども。 ○奥山委員  そうですね、これは(1)ですね。 ○鈴木委員  奥山委員がおっしゃったのは、例えば「これで私の検査結果が出ますからその分を教えてく ださい」と、要求することがあり得ると思うのです。それからもう一つ、例えば「では学会に 発表する前に何かデータをくださいね」という話なのか。前者の話はあり得ると思うのですが、 後者の話も含めてのことですか。どのような要求であっても、ある程度開示できるものは開示 するという含みの話ですか。 ○奥山委員  後の方です。 ○鈴木委員  では例えば今言ったように、私がとても詳しい例えば別の研究者で、ローデータをください といった要求が通ることもあるのでしょうか。ローデータというか例えば半年時点で読ませて くださいというお願いも通るものですか。「応、相談」という感じでしょうか。 ○笹月座長  そこまで細かく決める必要はないと思います。この研究の成果を知りたければ提示しますと いうことで。あとはこの順番ですね。先ほど申しましたように(2)番、(8)番、(10)番というのが配 偶子を提供する人から見れば自分にかかわり合いのあるところですので、配偶子ということに 関して順番を整理した方が良いのではないですか。 ○小幡委員  あと1点ですが、この凍結の期間についてですが、これは難しいところだと思うのですが、 大体どれぐらいというのはなかなか決まらないですかね。つまり、凍結する場合にどれぐらい の期間ということは研究方法のところで言っておくということで、含めてよろしいですか。そ れはそういう理解で。 ○笹月座長  そうですね。そうだと思います。 ○小林母子保健課長補佐  (10)番のことですか。 ○小幡委員  凍結の場合も(1)の研究方法のところで期間が決められるという含みでよろしいですね。 ○中辻委員  少し戻ってしまいますが、研究の成果というのは何らかの形で公表するようにまとまったと きには、協力してくれた方に知らせるのはよいのですが、それ以前に知らせるということを約 束してしまって大丈夫なのかと。 ○笹月座長  それは例えば知的資材とかそういう意味ですか。そういうことではなくて。 ○中辻委員  きちんとまとまって自信を持って公表できる段階になっていないのに誰かに話すということ は、普通はあり得ない話ですね。 ○笹月座長  ですから、開示できるものを開示するということ。それは開示する側の判断に委ねる。 ○中辻委員  一般に知らせるという段階になってから知らせるということでもよいわけですね。そういう 意味ですね。 ○後藤委員  前に申し上げたかもしれませんが、わかりやすい課題名、研究課題名と研究費の出処、どう いう研究費を使うかということと、研究代表者のみということになっていますが、研究者組織 はある程度開示するほうがよいのではないかと思います。 ○笹月座長  ありがとうございます。そういえば、確かに課題名がないですね。研究課題名。よろしいで すか。他に加えるべきことがあれば。 ○小幡委員  今の研究成果の話は、結構書き方が難しいかと思うのです。新たに付け加わることになりま すよね。研究の成果が公開される可能性は、完全に公表の段階になれば常にあるわけですから、 それ以前に自分のかかわった研究の進捗状況について問い合わせがあったときにできるだけ答 えるという程度のことを入れればよいということですか。そういうことであれば「研究に支障 のない範囲で」ということですね。 ○笹月座長  それは研究者の判断で開示できるところは開示してもらう。  他に付け加えることがありましたら。一応は網羅されていると思います。よろしいですね。 また何かお気づきの点があれば、後でご連絡ください。 ○小林母子保健課長補佐  ご指摘を踏まえて、修正させていただきます。また順番の並べ換えについては再度整理をさ せていただきます。 ○笹月座長  次に、4ページの総合科学技術会議における考え方。 ○小林母子保健課長補佐  4ページのところは以前に一度ご議論いただいたところですが、先ほどの「研究の目的・方 法について」は個別・具体的に記載することとして、今後何らかの研究に利用するということ は認めずに研究課題というところを個別・具体的に書いていただくことを条件付けるかどうか という点の確認です。 ○笹月座長  この点は再確認ですが、いかがでしょうか。とにかく余って、放っておけば破棄されるべき 未受精卵・精子そういうものを、将来何らかの生殖補助医療に資する研究に使いたいので凍結 保存をしておきたいということを認めるかどうか。そういうことですね。以前に一度「それは よくない」という議論がありましたので、卵子を手にすることが非常に難しいということが将 来起これば、どうせ破棄するものであれば何に使うかは現時点ではわからないけれども、とい うようなことになるのかどうか。これは、どうですか。そういう不特定の研究に資するという ことでは認めない、破棄すべきであるということでよろしいですか。 ○後藤委員  凍結させていただくということについて、現在普通行っていることでは、このような疾患に ついて「生殖補助医療の研究に資するためにストックさせていただきます。将来、特定の研究 をスタートする場合はさらにもう一度倫理委員会にかけて使わせていただきます」という文言 を加えれば、そういう包括的な同意にもとづいての採取が認められると思います。 ○笹月座長  他の委員の方は、いかがでしょうか。 ○安達委員  私も全くそれに賛成です。例えば先ほど言った卵子を生殖補助医療の目的ではなくて、とっ ておいて後で使わないという場合もあるわけです。例えば何年間か保存しているという可能性 があるわけで、その時点では何の研究かということが具体的にできているということはない可 能性がありますので、今の後藤委員のおっしゃったようなことを入れて、要するに「包括的な」 という言い方は悪いのですが、またその研究が決まった時点で改めて本人の同意を取るという ものを入れれば、ここでインフォームド・コンセントをとることは問題がないと思います。そ うしないと、なかなか卵子は集まりにくいと思います。 ○小林母子保健課長補佐  今の点でございますけれども、先ほど最初に確認しました前回の資料3の27ページの「研究が 終わった後の胚の扱い」との考え方が関係してくる部分で、資料3の27ページの一番下のところ ですが、「生殖補助医療研究目的でのヒト受精胚の作成は、ヒト受精胚尊重の原則の例外とし て、特定の研究のために容認されたものである」と。特定の研究のために容認されたというこ とですので、当該研究に必要とされる最小限にとどめると。研究終了後は作成された受精胚を すべて速やかに滅失させるという点について同意をいただいておりますので、そこの点と他の 研究利用での道を残すことについて、若干齟齬が生じるのではないかということを懸念します が、そこをもう一度ご確認いただければと考えています。包括的な何らかの研究に利用すると いう形での包括的な同意は認めないということころで前回議論をいただいたかと考えているの ですが。 ○中辻委員  ただ、受精胚の作成は最小限にとどめよと。卵子の凍結保存は受精胚の作成ではない研究も あり得るわけですし、卵子は配偶子にしか過ぎないというので、配偶子の段階で凍結保存とい うのはあり得るのではないかと思います。 ○笹月座長  今、事務局から説明があったのは作成した受精胚の話であって、今議論しているのは配偶子 の話ですね。ですから、これと一緒にはならないと思います。けれども前回というか随分前に、 とにかく研究課題が特定されていないもののための配偶子の入手、さらには保存というものは 認めないということであったのですが、逆に言えばなぜここでもう1回それが出てきたかとい うことです。 ○秦委員  最初の3ページのところに「研究の目的・方法及び期間」を必ず入れなければいけない。それ と抵触するのではないですか。要するにインフォームド・コンセントを受け入れる時点で何も 具体的な研究結果がないという。 ○笹月座長  ですから、それはこういうことを想定していないから今まできたわけですが、これを認める ならインフォームド・コンセントの書き方も、この場合には別の書き方があり得るわけです。 ですから、先ほど決めたインフォームド・コンセントがこうだからこれはこちらは認めません とはならないと思います。具体的な例として、例えば生殖補助医療のために凍結していた未受 精卵がもう何度も媒精して患者さんに戻して子どもが何人か生まれて、もうこれで終わりです と本人が言って、後は破棄してくださいといった場合に、その未受精卵を今すぐ課題はないけ れども、患者さんからそういう提供があった時点ですでに課題があればもちろんそれはそれで よいのですが、課題はないけれども生殖補助医療に資する研究に使わせていただきたい。けれ ども、いつそれがスタートするか。どのような研究であるかはわかりませんということで、凍 結保存を継続して将来課題が出てきたときに改めてインフォームド・コンセントを取って使っ てよろしいかと。そういうことだったのですね。改めてインフォームド・コンセントを取ると きには、先ほど決めたような項目についてきちんと説明をしてインフォームド・コンセントを する。最初の段階ではまた別の種類のインフォームド・コンセントで保存を許可してよろしい かどうかの確認です。 ○鈴木委員  例えばそういう場合に使うことが、こういう研究になりましたという時点でインフォームド・ コンセントというか説明をその方にするわけですね。そのときは通常面接で説明になるのでしょ うか。例えば郵送で済ませてしまうという、例えばそれこそ。 ○笹月座長  それはまた議論すべきことで、最初に認めるかどうかをまず決める。それは方法ですから。 インフォームド・コンセントの取り方であって、まず前段を。 ○鈴木委員  逆にきちんとそこでインフォームド・コンセントが例えば面接なりで取れるということであ るならば、それもありかなと思ったものです。逆に、郵送等で簡略に済ませるのでは、少しど うかなと思ったのです。引っ越しでインフォームド・コンセントが取れなかったものについて は滅失するという条件も一つ加わるというように。 ○笹月座長  まず前段としてそういうものを、将来何があるかわからないけれどもというところでイン フォームド・コンセントをとって保存して良いかどうかをまず決めていただく。 ○秦委員  (2)番のところに「研究終了後の胚及び試料の取扱い」とあります。そのときに、将来的に何 の研究に使うかはわからないけれども、それを包括的に使うように継続して受精胚を凍結する なり何なりすることを、要するにインフォームド・コンセントを受けた人が認めれば、それは それでよいのではないでしょうか。 ○笹月座長  今は受精胚ではなくて、配偶子のことを言っているのですが、秦委員は受精胚もそれでよか ろうと。 ○千村母子保健課長  私自身が、この場のご議論を明確に理解していないかも知れない発言で大変申し訳ないので すが、この4ページの四角の中の2の(1)「基本的考え方」のところで、既に同意をいただいてい ると思いますが、「配偶子の提供を受ける際に、あらかじめ個別の研究について具体的な研究 計画が確定していることを条件とする」という考え方。それから今回インフォームド・コンセン トは具体的に研究内容が明らかにされた上でインフォームド・コンセントを受けるべきという 考え方。それと、例えば保存であるにせよ将来的に何かの研究で使うので保存をしますあるい はさせてくださいという考え方を認めるという考え方。この三つの間で若干整理が必要なので はなかろうかと思います。  といいますのは、例えば目的が明確になっていない時点で、しかもご本人の医療の必要性の なくなったものを凍結保存するということは、将来何に使うかわからないものが凍結保存され ているということになろうかと思います。それは善意に解釈すれば当然何らかの研究目的がで きたときにそれをしかるべき研究に使うということも考えられましょうし、そこがどう第三者 に対して担保されているかということを考えた場合に、諸手を挙げて問題なしというのも、こ れまたなかなか難しいのではないかと思うのですが。その辺のところはいかがでしょうか。 ○笹月座長  ですから、一応ここの黒丸があるように、確定していることを条件とするとかつて決めたわ けです。けれども、その上でもう一度出てきたので、それは卵の入手がやはり困難であるとい う最近の議論を踏まえてもう1回出てきたのか。これはかつて実は1回決めたことなのです。け れどもどうも卵の入手に関して。 ○千村母子保健課長  これはあくまでも改めてもう一度ご確認という意味で、事務局としてはなかば黒丸ではなか ろうかと思いつつお出ししたというのが正直な話です。 ○笹月座長  しかし、先ほどから卵の入手が非常に難しい、将来はボランティアを認めなければいけない ような事態が生じるかもしれないという議論が出てきたので、もう1回これを議論しようという。 もう1回確認で駄目ですよというなら駄目でよいのですが。 ○安達委員  二つの場合が卵を取るときにあるのです。今まさに自分の生殖補助医療のために採卵したと いうようなときに、その一部を研究に使ってよいかというのが未受精卵で先ほどあったと思う のです。この場合には、研究目的がきちんと決まっていなければいけないということで皆さん 同意されていたと思うのです。  もう一つは、とりあえず卵巣の一部を保存しておくとか、未受精卵を保存しておきたいとい うことがあった場合に、それを保存しておく必要がなくなったときに廃棄になるのです。廃棄 のときに使わせていただいてよいかということを、あらかじめ研究目的を言っておくことは不 可能なわけですね。凍結するときに、いずれ要らなくなったときに研究に使ってよいでしょう かという漠然としたインフォームド・コンセントをとるかということなのです。廃棄のときに 改めてきちんと取るかということはもちろん必要なのですが、そこの二つにかかわるのではな いかと思います。今そのまま生殖補助医療に使う卵の一部を研究に提供していただくときは、 これは目的が決まっていなければいけないというのは、 ○笹月座長  この前、それを議論したのです。 ○安達委員  それでよいと思うのです。私が先ほど言ったことで入れてほしかったことの一つは、今すぐ に受精胚を使って不妊治療に使おうと思っているわけではなくて、何か大きな白血病その他の 病気などで卵巣を保存しておきたいとか、未受精卵を凍結しておいてほしいということがあっ たときに、もしかしたら要らなくなってしまったり使わなかったりすることがあるわけですが、 そのときにその段階でインフォームド・コンセントをとることにするのか、初めにもし廃棄を するときには研究に使わせていただけるのかというものを一段階とっておくのかという、それ がそのインフォームド・コンセントは廃棄すると決まったときにお話すればよいことだという ことであれば、これは要らないという形になると思います。 ○笹月座長  研究の現場の実態との絡みも非常に大きいと思うのです。そんなものまで使わなくても卵は あるので、そこまで要求する必要はありませんといわれるのか。やはり卵は非常に貴重なもの で、簡単に破棄するよりは生殖補助医療に資する研究に使った方がご本人も納得できるのか。 ○高木委員  今おっしゃったことで少し引っ掛かったのは、白血病などの病気で取っておいて「不要になっ たとき」というのは、ある意味亡くなったときということですね。 ○安達委員  そういう意味ではなくて、生殖補助医療の要するに自分の生殖年齢を超えてしまって子ども は持たない人生を選択したいと考えたとき、あるいはいろいろな治療をして、凍結しておいた ものを使わなくても自分の卵巣の方でできるようになったということがあった場合には、別に 白血病は一つの例として出したので、卵巣がんでもよいのですが。 ○高木委員  白血病で不要になったときというと、最初に亡くなったときを想定したのかと。 ○安達委員  そういうことではありません。私は生きていることを想定して必要がなくなったときという つもりで。亡くなったときが必要であれば、別途考えなくてはいけないのかもしれませんが。 ○小幡委員  総合科学技術会議の方の「個別の研究について審査した上で実施を認める枠組み」というの は、今の議論で大丈夫なのですね。問題は、こちらの基本的考え方で書いた配偶子の提供を受 ける際に、あらかじめ個別の研究というのがきつすぎる書き方になっていて、これであると今 の要請に合わなくなるのですね。ですから、とったものがあまり無駄になってもいけませんの である程度の合理的に認めた方がよいと思うのです。そうすると、基本的考え方を若干フレキ シブルな形に書き変えるということが必要ではないかと思います。このままにしておくと動き が取れないですね。 ○笹月座長  いかがでしょうか。今のようなご意見をいただきましたが。 ○千村母子保健課長  そうしましたら、先生方の議論を踏まえて、先ほど私が申し上げましたような論点を多分考 えなければいけないと思いますので、もう一度議論を整理させていただきたいと思います。そ の上で、できましたら次回にでもお示しさせていただければと思います。 ○笹月座長  先ほどの課長の論点とは。 ○千村母子保健課長  先生方のここでの議論は、ご本人の医療のための用途は既になくなっている。ただし将来的 に何らかの研究に活用する可能性があるというものについて保存させてください、保存するこ とを考えてご本人に対して「保存させてください」とインフォームド・コンセントをとるとい う議論だと思います。一般論として言った場合に、あらかじめ研究の目的が明確でないイン フォームド・コンセントというのが、今のご議論を認めるとすれば一般論として研究目的が明 確でないインフォームド・コンセントを認めるかどうかということにも議論が波及してきます し、そこのところをどう考えるかもあると思いますので、それとの整合性も含めて、もう一度 整理をしてみなければいけないと思います。 ○笹月座長  よろしいですか。 ○小幡委員  要するに、具体的な研究のときにはもう一度取るということが条件になっています。たくさ んあるものについて保存させていただけないかということで、それも嫌だと言われればそれは 捨てるわけですから、それほどおかしい話ではないと思います。 ○千村母子保健課長  ご主張は十分理解しています。ですから、基本的に別の議論として、医療が終了した時点で 保存はしない、廃棄をすることが原則であるという考え方も別途ありますので、そことの考え 方の整理等も含めてやろうと思います。 ○笹月座長  ですから、破棄を決めたものについて、なお保存を要請してよろしいかどうかということです。  それでは、5ページインフォームド・コンセントの撤回。 ○小林母子保健課長補佐  続きまして、5ページの「インフォームド・コンセントの撤回」についての考え方を説明し ます。以前若干ご議論いただいたことを踏まえての、もう一度議論ですが「世界医師会による 『ヘルシンキ宣言』は、全ての医学研究関係者が遵守すべき国際的な倫理原則とされており、 医学研究に係る指針は概ねこのヘルシンキ宣言の考え方に則って作成されてきた」という経緯 があります。「ヘルシンキ宣言において、ヒトを対象とする(2000年のエジンバラ改定により、 個人を特定できるヒト由来の材料及び個人を特定できるデータの研究を含むこととなっている) において、対象者はいつでも報復なしに、この研究への参加を取りやめ、または参加の同意を 撤回する権利を有することを知らされなければならない」とされているところです。 「上記の観点を踏まえ、自由意思によるインフォームド・コンセントを徹底し、適切な提供者 保護のあり方を考える必要がある」ということで、以下の点について整理をしています。   ○インフォームド・コンセントは、いつでも撤回可能とするか。   ○提供者からインフォームド・コンセントの撤回があった場合には、原則として配偶子又    は胚を廃棄し、その旨を提供者に文書により通知しなければならないとするか。   ○提供者の保護は最大限に考慮されるべきであるが、現実的に撤回による廃棄が困難であ    る場合、あるいは撤回によって研究に多大な不利益が生じる場合があることから、以下    の要件のいずれかを満たす場合に、同意の撤回があった場合でも、提供された配偶子又    は提供される配偶子を用いて作成されるヒト受精胚を研究に利用できることとするか。 具体的な場合ですが、   ア) 提供される配偶子又は提供される配偶子を用いて作成されるヒト受精胚が連結不可能    匿名化されている場合   イ) 研究が既に開始されており、研究を続行することが適当であると研究実施機関の機関    内倫理審査委員会において承認され、研究実施機関の長に許可された場合   ウ) 研究成果が既に公表されている場合   ○提供者保護の観点から、可能な限り、インフォームド・コンセントを受けてから研究を    開始するまで一定の期間を確保することとするか。 ○笹月座長  どうもありがとうございました。「インフォーム・ド・コンセントの撤回」ということで丸 が四つありますが、インフォームド・コンセントはいつでも撤回可能である。2番目の丸は、 撤回の要請があった場合は、実際に破棄して、その旨を文書により通知しなければいけない。 そこまではよろしいですか。三つ目の丸のア、イ、ウですが、連結不可能匿名化されている場 合はもちろん不可能ですが、これはどうしようもない。イはもう既に研究が開始されておりうん ぬんということ。それからウは、既に公表されていれば撤回も何も研究は終了しているわけで すから破棄されていますし、問題はないと思います。イのところはいかがですか。 ○加藤委員  もっと常識的に「インフォームド・コンセントというのは研究が開始される前に撤回でき る」という、そのくらいの書き方をしたのではいけないのですか。 ○笹月座長  そういうことも含めて、ご議論いただければと思います。現実的にといいますか常識的には 研究が開始されているのに撤回してくれということ自体が、あまり意味がない。すりつぶして いるかもしれませんし。 ○小幡委員  凍結されている状態の場合は、まだ研究開始していないということでよろしいのですね。 ○笹月座長  どうですか。研究が開始された場合は撤回は不可能です。これでよろしいですか。いかがで しょうか。 ○小幡委員  それでよろしいと思うのですが、私が今疑問をはさんだように、研究開始の意味がわかりに くいのです。例えば初めの研究の目的・方法のところで凍結卵にしておくときには、そういう ふうに研究の目的としますよね。常識的に、具体的な研究で個々の実験が開始されたら…とい うのは非常に理解しやすいのですが、例えば凍結卵の場合、研究開始はいつなのかなど多少そ のようなことをいわれるといけないと思いますので。 ○笹月座長  だから実験がまだスタートしていない凍結卵についてはご本人が破棄してくれと言わなくて も破棄せざるを得ないと思います。よろしいでしょうか。 ○後藤委員  個人の疾患について分析するような場合は、イの場合でも撤回されたらそこで研究は中止さ れるようなことになると思うのですが、どうなのでしょうか。個人の試料についてずっと分析 すると、混合しないで個人のサンプルであることがずっと確認できる状態であれば撤回しなけ ればいけないと思います。研究を中止しなければいけないのではないかと思います。 ○笹月座長  イの所ですか。それは匿名化されていないけれども、もう研究はスタートしているので受精 卵、胚を作ったとしてもその胚はもうすりつぶして蛋白やDNAを解析している段階、いろいろな ことがあるでしょうけれども、もはや撤回ということ自体の意味がなくなっているのではない かと。 ○千村母子保健課長  これももう少し議論が必要かと思います。そこは必ずしも他の、例えば同じような研究に対 する指針との整合性を図るべきことばかりではないと思いますが、一方その他の同じような研 究の倫理的な観点から指針を見た場合に、研究開始以降で撤回可能としているものもあります。 それから、具体的な手立てとしては確かに連結不可能匿名化されたということをどの試料が誰 のものかわからないですし、試料がいろいろな人のものが一緒になっていれば結果的に誰のも のかわかりませんが、そうでないものに関して、例えばどなたのものであるかがわかるような 研究に関しては、研究が開始した後でも撤回可能と考えている他の倫理指針等もありますので、 恐らくそれらと比べた場合に、この研究がもし研究開始後は撤回不可能とするのであれば、ど のような特殊性があるのでこの場合には不可能とするかという議論の整理がなければ、なかな か難しいと思います。 ○笹月座長  逆に、実験をスタートした後でも撤回可能とする理由はどうなのでしょうか。 ○千村母子保健課長  それは試料を提供された個人の保護です。要するに試料を提供された個人の保護。私は試料 を提供したけれども、やはり私の試料を使ったデータを世に出してほしくないとおっしゃった ときに、その方の権利を保護するというのが原則の一つになると思います。  それともう一方で、研究を実施していく社会的な正当性などと比較して検討した上で、この 研究の場合にはどの程度特殊なのかということの議論が必要かもしれないということです。 ○石原委員  私が想定していたというか、これを読んで考えていたものと全然違うケースで、これは恐ら く多くのものは先ほどの議論の(1)の3の生殖医療を受けている患者さんから卵子の一部を自発 的な申し出によりいただくというものを想定しているとすると、自発的な申し出のもとに自ら の卵子を研究目的として提供することにいったん同意したのだけれども、結局受精卵があまり できないからやはり嫌だと。自分の治療に使いたいというケースの方があり得るとしたら、そ ちらの方がはるかにあり得るのではないかと思っていたのです。今課長が想定していたことと 全然違うのですが、そうだとするとそれを認めるか認めないかという話はどのような段階で申 し出があったかによってかなり違うのではないか。つまり、インフォームド・コンセントをい つ取るかという議論と分けて考えられない議論になるという気がします。例えば、先ほど撤回 期間をどれくらい認めるかということが書いてありましたよね。そういう話とつながってくる のではないかと思います。 ○千村母子保健課長  もちろんそうですが、原則として要するに撤回は研究を始めたら全く可能ではないという考 え方の整理をすることはまずできないのではないかというのが私が申し上げたことです。そこ で、例えばどのようなタイミングなり、どのような状況であれば撤回が可能であるかをお考え いただきたいと我々は考えまして今日資料を示したということですので、もし、そうではなく て原則として撤回は研究が始まったら全く不可能という議論であれば、それはまた私が先ほど 申し上げましたような議論の整理が必要ではないかと申し上げました。 ○小幡委員  よろしいですか。私も他の倫理委員会とか他の倫理指針策定にかかわっているのですが、大 体は研究開始後も撤回可能にしているのです。それは結局研究という意味合い、言葉の使い方 だと思うのです。研究は大きなプロジェクトで非常に広い、長い期間のスパンで研究している ので、その研究が始まってからでも嫌だといったら撤回できると。ただ、そういう場合でも作 業に入っていてとても無理だという場合は倫理委員会の承認を得よと。大体そういう感じになっ ているものが多いのですが、ここのイで言っている研究というのは、先ほど凍結卵のことでお 聞きしましたが、もう少し非常に物理的な作業のようなイメージだと思うのです。ですから、 それは先ほどから議論がありますように時期やタイミングとの問題で常識的に理解できること でもあるのですが、広く「研究」という言葉を使ってしまうと他の倫理指針と違うのではない かという感じを受けるかもしれません。ですから、ここで研究という言葉をもう少し限定的に しますか。 ○千村母子保健課長  言葉の使い方は別として、要するに原則として研究が開始された以降は撤回が不可能である という考え方に立つのか。あるいは原則可能であって、ただこういう事態の場合にはすでに研 究の条件が撤回可能ではなくなっているので、その場合には不可能であると判断しますという 整理をするのか。恐らく、そのどちらかだと思いますが。 ○小澤委員  何となく言葉の問題のような気がしまして、提供者にはいつでも撤回できると言っていて、 ここでは研究を続行することが適当であると研究機関が判断する場合は撤回できませんよとい うのは何となく合わないので、ここの文章を「その研究を中止することが事実上不可能ないし 無意味であると判断した場合」と変えて、一方であまり個別的なものを挙げなさいといわれる と、それもまたあまりこういうものには適切ではないと思います。 ○高木委員  ここに「ヒト受精胚が連結不可能匿名化されている場合」と書いてあるのですが、ヒト受精 胚ができた段階で提供した配偶子を返してくれといっても無理なわけですよね。 ○笹月座長  配偶子を撤回というのは、返してくれというよりも研究をやめてくれということですよ。 ○高木委員  でも、先ほど石原委員がおっしゃった場合は、ある意味で返してくれですよね。 ○笹月座長  石原委員が言われたような意味での撤回は、研究がスタートしたらあり得ないわけですから。 ところが、そうではなくて提供した人の心理としてその研究が続行されること、あるいは成果 が世に出ることが嫌だから撤回したいと言われれば、それは研究の途中であってもということ になるのですね。 ○吉村委員  アとイとウを実際に考えてみますと、アはこれでよいと思うのですが、イの場合は「研究が 既に開始されており」というのは漠然としているところがあって、これは胚の作成のための研 究が既に開始されているということは、受精をさせてしまった・受精をさせている。そうすれ ば、これは撤回不可能。そしてウはあってもなくてもよいのですが、ただし個人を特定できる 場合には、個人保護の観点から撤回ができるという文言にすればよいのではないかと思います。 ○笹月座長  アはもうやりようがないので当然でしょう。イは受精胚を作ったからもう駄目だというので は先ほど私が申した患者・提供者の心理をおもんばかる場合には、いくら胚ができていてもも うやめてくださいということになろうかと思いますので。 ○吉村委員  ですから、「ただし」と入れるわけです。ただし個人を特定できる場合には同意を撤回する ことができると。要するにできないものを撤回してくれと言われてもできませんから、個人を 特定できればよろしいとすれば同意を撤回できるとすれば矛盾はあまりないのではないでしょ うか。 ○小幡委員  個人を特定できるというのは、アにいくということですか。 ○笹月座長  いいえ。連結可能な匿名化の場合は。 ○吉村委員  この配偶子、この卵子はAさんからいただいたと。そのAさんが嫌だと言った場合、このAの 卵子だということがわかっていれば、同意を撤回するということでもよい。 ○星委員  精子を提供したBさんは研究続行を望んでいる、その場合はどうなるのでしょうか。 ○吉村委員  それは、ちょっとわかりませんが。 ○笹月座長  Bさんが。 ○吉村委員  やってくださいと言ったときです。 ○笹月座長  せっかく提供したのだから実験をきちんとやれよという。 ○吉村委員  やはり、一方が同意を撤回すればできない。 ○笹月座長  理論的には、提供者を保護するという意味では全くそれで問題はないのですが、何か現実か ら離れたような議論のような気もします。いったん十分考えてインフォームド・コンセントに サインした人が、途中になって撤回する。これも随分前の話ですが東北大学の法律の水野先生 がインフォームド・コンセントというものはサインしたのですからもう終わりですと。 ○小幡委員  このイで書いてあるのは個別に承認ということを考えておられるのですか。そうであれば、 それほど他の倫理指針と整合的でないということにもならないですね。 ○小林母子保健課長補佐  ここでお示ししている考え方というのは、その辺も配慮して作らせていただいているのです。 ○木下委員  もしもこのような話ですと、インフォームド・コンセントをとった後にア、イ、ウのような 条件があったときにはやめるかもしれないということですと、凍結卵であっても本当の実験を やる前にもう1回インフォームド・コンセントをとらなければ、いつやっているかわからない。 ○加藤委員  取ってもまた撤回されてしまって。 ○木下委員  それもあるしそういう意味から、非常に言葉だけではいろいろな可能性がありますが、現実 的にはとても。では逆にやってしまった後に文句を言ってきたらどうなるのですか。やってし まったと。しかし私は本当はインフォームド・コンセントをとったのだけれどもやってしまっ て本当は撤回したかったのだということになったらどうするのかという問題が出てきます。そ うなってきたら、これは法的にどうなのかわかりませんが現実的にはインフォームド・コンセ ントを取った段階では特殊な状況以外はもう現実にできないということとして、乱暴かもしれ ませんが、その方が現実的だと思います。我々でやれるようにしようとすれば、きちんと説明 してこういう内容もするのですといった段階で状況が変わるかもしれませんが、そうだとする と常に本当の実験をするときに毎回「実際に始めますけれど、どうですか」という話になって いって現実的に非常に煩雑になる。ですから本当のやりやすい方でお認めいただきたいと思い ます。 ○小幡委員  別にそこでまた取る必要はなくて、撤回を言ってこなければそのままでいけるわけです。い ちいち確認をするということではない。私も常識的には皆さんがおっしゃることは非常によく わかりますが、要するにヘルシンキ宣言とかそういう国際的な宣言があるので、そこからきて いるのです。インフォームド・コンセントをした人が、研究が始まってからもいつでも撤回で きて、それを保障せよということが原則になってしまっているものですから、事務局が言われ たように、そのために非現実的でないようなことになると困るというのはわかるのですが、ど れくらいの書きぶりをするかというところですね。このイは研究というところをもう少し変え ていただければ他のものと比べてそれほど整合的でないということにはならないし、多分物理 的にもう作ってしまってあれば承認を求めても許可されますから、撤回は認められないという ことになるでしょうから、現実には研究を続けるということになるのではないかと思うのですが。 ○千村母子保健課長  もう少しご議論いただいてもよろしいかと思いますが、今いろいろ深く委員の方々から幾つ かの考え方をお示しいただいているようなところでもありますので、それもまたもう一度よく 整理して原則的には事務局から示した考え方を修正する形で、もう一度委員の皆様にお示しす るやり方では、いかがでしょうか。 ○笹月座長  このヘルシンキ宣言というのは、初めは人体に介入する研究とか治療法に対しての話だった のです。そもそも。いつでも撤回可能というのは。 ○加藤委員  例えば実験などの前に私は途中で降りますと言ったならば、降りてよいという主義だったと 思うのです。もう一つは、細胞を培養して私の細胞の形の情報がずっと継続する場合は途中で 撤回権を認めた方がよいという考え方も出てきたと思うのです。ところが、これのように14日 経ったら必ず壊滅すると。たとえ凍結期間があっても必ず壊滅するというときまで撤回を無限 に認めると、毎日あなたは今日撤回しますかといわなければいけないことになって、同意とい うことの意味がなくなるのです。つまり同意というのはいったん同意したらそれ以上再確認し なくてもよいという意味でなければ。それこそ毎日確認しなければいけなくなると思います。 ○千村母子保健課長  まさに、先生方がおっしゃるような観点で。ただ原則としてはここに示したようにヘルシン キ宣言の考え方の下であり、原則としては撤回はいつでも可能だという考え方を示しながら、 ただ研究の進捗やそのときの条件、あるいは既に研究の成果がまさに公表されている場合には、 撤回も何もありませんので、そういった場合に原則は示しつつも、そうではない例外もここで 明確に、要するに撤回ができない条件ということで明確にさせていただくという形式で先生方 のいろいろなお考えを反映させていただくということになろうかと思います。  なお、これはまだこれからご議論をいただくところですが、先ほどインフォームド・コンセ ントに当たっての説明内容のところにも当然のごとく原則として不利益を受けることなく同意 の撤回が可能だということはインフォームド・コンセントをする段階でお示しいただくことに なりますので、そこのところで具体的にはどういうときにはもう駄目ですよということもお示 ししていただくのがよいのではないかと、これはまだ議論があると思いますが、とりあえず私 としては思っています。 ○安達委員  先ほど石原委員がおっしゃったことに関連するのですが、インフォームド・コンセントの撤 回の条件ですが、撤回をしたときに2番目の丸に「配偶子又は胚を廃棄し」とあるのですが、 撤回したときに廃棄だけではなくて個人のものがあったときに、戻してまた自分の生殖補助医 療に使いたいという可能性が、この材料が配偶子だけにそういうこともあり得るのです。むし ろその方が多いのかもしれないと思うのですが、これについてもただこれだけ書いていますと、 では戻せるのかとかそういうことも。インフォームド・コンセントの撤回というのは、提供し たものを廃棄するということだけなのだというようなことにするのか。 ○笹月座長  それは患者さん・提供者の意思により提供者に戻す、返すということも可能なわけです。返 してほしいと。 ○安達委員  可能なこともあり得るかもしれないし、それをすることが非常に問題になることがあるかも しれないですね。 ○千村母子保健課長  恐らく今ご指摘いただいた点は、私たちも原則的には、撤回の場合には使った試料なり何な りを廃棄するのが原則だという考え方のもとに表現していますが、もし例えば委員の先生方か らむしろもう一度ご本人のために使えるものがあるのだというご指摘があったと理解すれば、 ここでそれなりの表現の仕方にするという考え方に立つということも十分可能です。 ○笹月座長  それは全然問題ないと思います。 ○吉村委員  私が最後に「ただし、個人を特定できる場合には」と言ったのは、例えば卵子を若い頃に凍 結しておいて、40歳まで健康に生きられて子どもも二人できて、もう要らないといって提供し ました。その人が例えば離婚して48歳で子どもを産みたいということだってあり得ると思いま す。そういった場合に特定できる場合は戻してあげないと。同意を撤回させてあげないと、不 利益を被ると思います。こういった点があるのでただし書きは必要で、他の場合は、このア、 イ、ウは撤回できないということでよいのではないかと思います。 ○笹月座長  特にアとウは撤回しようも何も、できないわけですね。 ○千村母子保健課長  それでは、今いろいろいただいたご意見をもう一度整理をして、改めてお示しさせていただ きたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○笹月座長  ですから、ヘルシンキ宣言が人体に介入するという話だったのが、人の試料を使う場合にま で広げられたのが一番の根源です。広げる本当に必然性というか倫理的というかそういう必要 があったのかどうかを、常に我々は議論の対象としているわけで、その点はあれがあるからこ うだというのではなくて、あれ自体がどうかということもたまには考える必要があると思います。  それでは、ちょうど区切りもよくなりましたので、今日はこれまでにさせていただきたいと 思います。暑いところを長々と、暑さの我慢比べのようでした。ありがとうございました。 ○小林母子保健課長補佐  ありがとうございました。次回は7月18日金曜日の15時半から18時ということで予定していま す。また会場等が決まりましたら、ご連絡させていただきます。今日は暑い中をどうもありが とうございました。 ―― 了 ――  事務局:文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室       電話:03−6734−4113(直通)      厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課       電話:03−5253−1111(内線7938)