08/06/25 第5回今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会 議事録 第5回 今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会(議事録) 1.日 時:平成20年6月25日(水) 13:30〜16:00 2.場 所:厚生労働省9階 省議室 3.出席構成員:  樋口座長、伊澤構成員、上ノ山構成員、尾上構成員、小川構成員、門屋構成員、坂元 構成員、佐藤構成員、品川構成員、田尾構成員、谷畑構成員、寺谷構成員、長尾構成員、 中島構成員、長野構成員、広田構成員、町野構成員、三上構成員、安田構成員、山根構 成員、木太参考人、早川参考人、真壁参考人   厚生労働省:  中村社会・援護局長、中村障害保健福祉部長、川尻障害保健福祉部企画課長、蒲原障 害福祉課長、福島精神・障害保健課長、寺尾自立支援振興室長、北障害保健対策指導官、 塚本課長補佐、大重課長補佐、名越課長補佐、野崎課長補佐、江副課長補佐、矢田貝課 長補佐、成重こころの健康づくり対策官 4.議 事  (1) 「精神病床の利用状況に関する調査」報告について  (2) 諸外国の精神保健医療福祉の動向について  (3) その他  5.議事内容 ○樋口座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第5回の今後の精神保健 医療福祉のあり方等に関する検討会を開催させていただきます。  構成員の皆様におかれましては、御多忙のところ、また大変蒸し暑い今日、お集まり いただきまして誠にありがとうございます。  まず、本日の構成員の出欠状況について、事務局よりお願いいたします。 ○野崎課長補佐 本日の構成員の出欠状況について御報告いたします。  本日、大塚構成員、末安構成員、谷畑構成員及び良田構成員より御欠席との連絡をい ただいております。なお、事前に座長に御報告させていただきまして、大塚構成員の代 理として、日本精神保健福祉士協会副会長の木太参考人、末安構成員の代理として、日 本精神科看護技術協会常務理事の早川参考人、また良田構成員の代理として、全国精神 保健福祉会連合会理事の真壁参考人に御出席いただいております。  また、佐藤構成員、長野構成員におかれましては、少し遅れていらっしゃるようです が、いずれ来られると思いますので、議事の方を進めさせていただきたいと思います。  なお、本日、精神障害保健課長の福島が、急な所用が入りまして若干遅れております が、直に参ると思いますので、よろしくお願いいたします。  本日の出欠状況の報告は以上でございます。 ○樋口座長 それでは、今、事務局から報告がございましたように、木太参考人、早川 参考人及び真壁参考人の御出席については、構成員の皆様の御了承のほどよろしくお願 いいたしたいと思います。  では、早速議事に入りたいと思いますが、本日は、お手元の議事次第にありますよう に、大きく2つの議題がございます。  「『精神病床の利用状況に関する調査』の報告について」がその1つでございます。 2つ目は、「諸外国の精神保健福祉の動向について」というテーマで、事務局より資料 に沿って説明をしていただきまして、御議論、御検討をいただきたいと思っております。  まず、資料1「『精神病床の利用状況に関する調査』報告について」ということで、 事務局より説明をお願いいたします。 ○野崎課長補佐 それでは、資料1に沿って説明申し上げたいと思います。  今回、機能強化や精神障害者の方の地域移行に向けた議論に資するため、厚生労働科 学研究におきまして、精神科病院の入院の実態と患者の動態を把握する調査を実施させ ていただきました。この詳細な分析については、また別途行う予定としておりますが、 今回はその概要について速報という形で報告をさせていただきたいと思います。  まず、今回の調査自体の概要でございますが、1ぺージから4ぺージに記載させてい ただいております。若干駆け足となりますが、まとめて御説明いたします。今回の調査 は、国立病院機構、自治体病院、大学附属病院、公的病院、民間病院といった各設置主 体、計 1,542施設に調査票を送付し、各施設において入院患者の10分の1を無作為で 抽出していただくという設計とさせていただいております。回収率としては、民間病院 で70%を超える提出がありまして、全体では64.6%とかなり高い回収率となってござい ます。  調査内容といたしましては、今年の2月15日時点の入院患者さんの状況、例えば年 齢、病名、入院期間、疾患の状態等ですけれども、まずそれを調査いただきまして、そ れを3月15日時点でフォローアップしていただくということで、1ヶ月間の短い期間で ございますが、追跡調査という形をとらせていただいております。  調査の概要としては以上でございます。  6ぺージを御覧いただければと思います。6ぺージから12ぺージまでが調査結果の 概要、一番粗い概要でございますが、まず6ぺージを見ていただきますと、入院形態の 割合といたしましては、例えば措置入院で 0.7%程度ということで、私どもでやってお ります調査とほぼ同様の傾向が見てとれるということとなっております。ここで、F0、 F20としてございますが、F0につきましては主に認知症の患者、またF20につきまし ては統合失調症の患者でございます。ここで特記してございますのは、次のぺージで示 しますように、本調査で主診断が統合失調症の患者が約6割、認知症の患者が約2割。 その2つを合わせまして約8割とかなり多くなっているので、疾患別の分析ということ につきましては、この2疾患に焦点を絞って提示をさせていただいてございます。  7ぺージ、8ぺージでございますが、7ぺージの表をグラフにしたのが8ぺージにな りますが、まず7ぺージを御覧いただきますと、主診断の疾患別割合につきましては、 これまでの患者調査と概ね矛盾しないものとなってございます。 例えば統合失調症で見 ますと、患者調査では60.6%となってございますが、今回の調査ではF20の58.8とF2 1−29の 3.2を足したものでございますので、大体同様の傾向となっているということ でございます。このことは、この調査が国内の精神病床の医療状況というものを調査す るのに、一定の代表性というか、きちんと抽出が行われているということを示すものと なってございます。  9ぺージを御覧いただきますと、こちらは対象患者の年齢別の状況でございますが、 見ていただければわかりますように、比較的高齢の患者の割合が高くなってございます。 疾患別で見ますと、右でございますが、F20と書いてございます統合失調症で50歳か ら60歳あたりでピークがあるということで、それで3割弱であり、その一方で、60歳 以上を見ますと、これを足し上げていただきますと大体47.5%ぐらいですので、約半数 となっているということでございます。一方で、認知症を見ますと、75歳以上のみで6 割弱とかなり多くなっているというものでございます。  10ぺージを御覧いただきますと、こちらは入院期間の概要でございますが、全体では 約7割の方が1年以上の入院。 これは細かく分けておりますのでわかりにくいと思いま すが、1年6ヶ月未満と書いてある欄から、それから下を全部足し上げると7割ぐらい になるということでございます。また、4分の1強が10年以上の入院となってございま す。また、疾患別で見ますと、統合失調症では1年未満が21%、10年以上が36%強と、 これにつきましても患者調査とほぼ同様の傾向となってございます。  11ぺージ、12ぺージにつきましては、これはGAFと申しまして、英語で申します と The Global Assessment Functioningということで、心理的、社会的、職業的な機能 の状態というものを0から100のスケールをつけまして数値化したものでございます。 その詳細は12ぺージにつけておりますので、後ほど御覧いただければと思います。11 ぺージに戻っていただきますと、このGAFスケールにつきましては、中等度と重度と いうものが50ポイントで線引きがされてございまして、50ポイント未満の患者につい て見ますと、要は機能が比較的低いと考えられる患者でございますが、認知症で85%、 統合失調症で4分の3となってございまして、入院している患者全体といたしまして、 このGAFではかれるスケールで見ますと、GAFは総じて低い傾向が見られるという 状況でございます。  13ぺージから16ぺージにつきましては、入院期間について、より詳細な分析を行っ ているものでございます。それぞれ見ていきたいと思いますが、14ぺージを見ていただ きますと、こちらが主診断と入院期間というクロスをかけたものでございます。ここで は入院期間につきまして、大きく1年未満、1年以上という分け方をさせていただいて おりますが、このグラフは1年未満の患者の入院が多い順に上から並べているというも のでございますが、神経症性・ストレス関連・身体表現性障害といったF4であるとか、 あるいは気分障害のF3であるとか、 このあたりでは1年未満の患者の割合が多い。一 方で、下から2番目でございますが、F20の統合失調症の患者につきましては、1年以 上の患者の割合が約80%程度と多くなっているというものでございます。先ほど統合失 調症、認知症の患者につきましては、10ぺージで示しておりますので、詳しくは省略さ せていただきます。  また、15ぺージを見ていただきますと、こちらは年齢と入院期間につきましてクロス 集計を行ったものでございます。この表の形式が後ほども出てまいりますが、簡単に御 説明いたしますと、一番上の表が実数値でございます。真ん中の表が、縦で足すと割合 が 100%、つまり各入院期間別の患者さんの総数を 100として、各年齢区分がどれぐら いになっているのかというものを示したものでございます。また、一番下の表は、今度 は横で足すと 100%、つまり各年齢区分において、それぞれの入院期間がどのように分 布しているかというものを見たものでございまして、真ん中と下の表にそれぞれ割合と 書いてございますが、 100とする対象が違うということでございますので、その点を留 意いただければと思います。  それで、このクロスでは一番下の表を見ていただければと思いますが、若い世代では 入院期間が1年未満の方が多く、高齢になるほど1年以上の入院の割合が多くなってい るという状況にございます。  16ぺージにつきましては、入院期間と先ほどお示ししたGAFとの関係を示したもの でございますが、真ん中の表を見ていただきますと、1年未満の方が1年以上と比べて GAFのポイントの高い患者の割合が多いということとなってございます。例えば50 ポイント以上というところで見ると、真ん中の表の全体疾病というところですが、1年 未満の患者で35%、1年以上の患者で23%となってございまして、今申し上げたように、 1年未満の患者の方がGAFのスケールは高い傾向にあるということでございます。  17ぺージから23ぺージまででございますが、ここはこの検討会でも何度も御議論い ただいております、患者調査における受入条件が整えば退院可能な患者ということで、 その方の状況を追跡調査を行ったものはないのかといろいろ御指摘をいただきましたの で、そこについて詳しく見たデータでございます。  18ぺージを見ていただきますと、こちらが全体の数として受入条件が整えば退院可能 な方の割合を見たものでございますが、この一番左の真ん中の全体というところの割合 を見ていただきますと、そうした方は33.6%に上っています。第1回検討会でお示しし ました平成17年の患者調査に基づくデータでは23%程度となっておりますので、今回 の調査ではここの割合がかなり高くなっているということでございます。 その理由につ きましては一概に明らかではないのですが、後で見させていただきますが、いわゆる受 入条件が整えば退院可能な方と一口に言っても、疾病の治療の状況であるとか、あるい は受入条件というか、受け皿というか、必要な支援とか、その状況が細かく見ていくと 若干異なりますので、そこについてより詳細に見ていく必要があるだろうということで ございます。  続きまして、19ぺージを見ていただきますと、これは、いわゆる患者の状況を少し別 の尺度で見たものでございます。一番左の欄は患者の状態でございますが、見ていただ きますと、現在の状態でも居住先・支援が整えば退院可能というのが一番上で、2番目 が状態の改善が見込まれるので、居住先・支援などを新たに用意しなくても近い将来退 院可能。3つ目が、状態の改善が見込まれるので、居住先・支援が整えば近い将来退院 可能。つまり、患者の状態と、実際、退院先というか、居住先あるいは支援などが確保 されているかどうかというものを併せて見たのがこの指標ということになります。こち らで見ていただきますと、 現在の状態でも居住先・支援が整えば退院が可能な方という のは、全体の部分で見ると9%にすぎないということとなってございます。また、その 一方で、居住先・支援が整えばという前提である方、約46%、その2つ下の欄でござい ますが、それも含めまして、状態の改善が見込まれるので近い将退院可能とされている 方につきましては、 5.8と 45.6を足した約51%の割合で存在しているということとな ってございます。  それと、この一番下の欄でございますが、状態の改善が見込まれずというところでご ざいますが、近い将来の改善が見込まれない方につきましては約4割となっております が、逆に6割の方につきましては、近い将来退院の可能性があるという結果となってご ざいます。  これをより詳細に見たのが20ぺージでございます。これは、先ほどお見せした患者 調査ベースの質問と今見ていただいたものをクロスしたものでございますが、ここで下 の表の真ん中を見ていただきますと、受入条件が整えば退院可能とされた方で、かつ現 在の状態でも居住先支援が整えば退院可能な患者というのは、全体の 5.2%に過ぎない という状況となってございます。  一方で、受入条件が整えば退院可能な方の集団だけで見ると、現在の状態でも退院可 能な方、状態の回復を見込んで近い将来が退院可能となる方の割合は、 33.7分の上の 3つを足したもので大体95%となってございまして、今後、特にこういった方につきま して、どういった居住先とか支援が必要なのか、より詳細な分析が必要となってくるだ ろうというふうに思っております。  また一方で、下の表の左下の欄でございますが、 35.3と書いてあるところでござい ますが、生命の危険は少ないが入院治療を要するとされて、かつ状態の改善が見込まれ ず、居住先・支援を整えても近い将来退院の可能性がないという方につきましては、実 際どういった精神症状の状況にあるのか、そのあたりについてより詳細な分析が要るの でないか。特に長期入院の患者に対する適切な対応というのを考えていく上で、そこの 分析は欠かせないのではないか、そのように考えてございます。  少し駆け足で進ませていただきますが、続きまして、21ぺージを見ていただきますと、 こちらが年齢と入院の状況のクロスでございます。一番下の表で見ていただきますと、 受入条件が整えば退院可能な方というのは、全年齢階層において3割強存在していると いうことでございます。患者調査におきましても、年齢階級問わず、こうした方、割合 自体は数%と低くなっておりますが、一定程度存在するという傾向になってございまし て、この点につきましては、今回の調査と同様の傾向となっているということでござい ます。  22ぺージでございますが、こちらは入院期間と入院の状況のクロスでございます。こ この一番下の表を見ていただきますと、受入条件が整えば退院可能な方につきましては、 30%以上の割合でほぼすべての入院期間に見られるのですが、入院期間の短い方、特に 入院3ヶ月から1年あたりの部分でやや高い傾向が見られまして、入院の短期化という ことを進めることによって、この受入条件が整えば退院可能な方の割合が増えてくる可 能性があるのではないかというふうに考えてございます。  23ぺージでございますが、こちらはGAFと入院の状況のクロスでございます。ここ につきましては、真ん中の表を御覧ください。認知症では、受入条件が整えば退院可能 な者と言われた方につきましては、GAFのスケールで見ると低くつけられているとい う方の割合が高くなっています。また、一番下の表で見ますと、GAFが高い方が受入 条件が整えば退院可能な患者の割合というのは高くなるという傾向にあることが見てと れます。  24ぺージ以降になりますが、今回の調査では、短い期間ではありますが、先ほど申し ましたように、1ヶ月後の入院の状況をとっているということでございます。  25ぺージから26ぺージを見ていただきますと、まず25ぺージを見ていただければと 思いますが、主診断と1ヶ月後の在院の状況の関係を示したものでございます。右の表 を見ていただきますと、F20、統合失調症で1ヶ月たって退院された方というのは4% となってございます。一方で、認知症でも一番上のF00−03というところを見ていただ ければと思いますが、退院された方は7%という状況となってございます。  27ぺージに飛んでいただきますと、こちらは年齢と1ヶ月後の在院の状況を示したも のでございますが、先ほど見ていただきましたように、どの年齢階層でも受入条件が整 えば退院可能な方というのは一定程度いらっしゃいましたけれども、このぺージの一番 下の表で見ていただきますと、1ヶ月後に退院している方の割合は、若い世代で高い、 高齢になるほど退院しにくくなるという傾向が見てとれます。  28ぺージ、またこれとも関連するのですけれども、これは入院期間と1ヶ月後の在院 状況を見たものでございますが、これも一番下の表で見ていただければと思いますが、 1ヶ月後に退院している方の割合は短期の入院で高い傾向となっている、あるいは長期 では低い傾向となっている。先ほどの年齢と合わせまして、やはり長期化と高齢化とい うものが退院の可能性というか、実際に退院できるかどうかというところに少し影響し ているのかなという印象を持っております。  29ぺージを見ていただきますと、こちらはGAFと1ヶ月後の在院状況を見たもので ございますが、一番下の表で見てみると、疾患を問わず、GAFの高い方の方が1ヶ月 後に退院している割合が高い傾向にあるということでございます。  30ぺージを見ていただきますと、こちらは入院の状況と1ヶ月後の在院状況について 見たものでございますが、一番下の表で見ていただきますと、真ん中ですが、受入条件 が整えば退院可能とされた方が1ヶ月後にどれだけ退院されたかというのを見ますと、1 0%の方にすぎないという状況になってございます。  31ぺージ以降は、実際に退院した方の状況をもう少し子細に見ているものでございま す。32ぺージを見ていただきますと、退院までの期間で見ますと、これは足し上げてい ないのでわかりにくいのですが、全体のところの一番上から4つ目までを足し上げてい ただきますと85.7%に上っているということでございます。平成17年に我々が調査し た調査によりますと、退院患者の87%が1年未満の入院期間ということとなっておりま して、ほぼ同様の傾向となっているということでございます。  33ぺージは、退院後の医療状況を示したものでございますが、全体では自院への外来 通院というのが60%となってございます。一方で、認知症を見ていただきますと、自院 への外来通院というものにつきましては31%と低くなってございまして、他院精神科以 外への転入院や、あるいは死亡による退院というものが多くなっている。また、ここで 認知症のその他というのは、介護老人福祉施設等を含んでございますので若干高くなっ ているということでございます。  34ぺージを見ていただきますと、退院後の居住先を見たものでございますが、全体と しては、下の表を見ていただければと思いますけれども、自宅・独居に退院されたとい う方が80%以上となっておりますが、認知症ではそれ以外への居住というのが約半数と なっておりまして、介護保健施設への退院というものが影響しているのではないか。  一方で、35ぺージを見ていただきますと、こちらは退院前に想定していた退院先のデ ータを示したものでございますが、ここについても、真ん中の一番左を見ていただけれ ばと思いますけれども、自宅・独居が想定されるという患者さんは30%、それ以外が4 1%となってございます。要は、退院前においては、多くの患者さんについて自宅・独居 以外の退院先というものを想定していたということでございます。  この34ぺージと合わせますと、これはニーズとしては自宅・独居以外の退院先とい うものが強く望まれる一方で、実際に退院できているのは自宅・独居への退院が可能な 方が多い。言いかえれば、自宅・独居以外の資源というものがまだまだ不足している状 況にあるのかなと。そういった可能性を示唆していると我々としては考えているところ でございます。  資料1の説明は以上でございますが、今後、退院する場合、居住先・支援と書いてご ざいましたが、本当にどういったニーズが必要なのか。あるいは、ADLとかIADL といった、患者さんの状態をもう少し詳細に見ていかなければいけないのかなと、その ように考えてございますので、また御議論いただければと考えております。  説明の方は以上でございます。 ○樋口座長 ありがとうございました。今、かなりたくさんの資料について駆け足で御 説明をいただきましたので、皆様、全部をフォローされることができたどうかわかりま せんけれども、この後、小一時間をかけて皆様から、今わかりにくかったところの質問、 あるいは御意見等々いただければと思います。どなたからでもどうぞ御発言ください。 ○長尾構成員 詳細な御説明、どうもありがとうございました。この示されたデータの 中で20ぺージの資料が一番いろいろなことを物語っているのかなと思いますが、条件が 整えば退院可能な7万 2,000人という数字が、この20ぺージの表で、現在の状態です ぐに退院できるというのは 5.2%しかない。あとは、近い将来、状態が改善すればとい うような、やはり主治医のある程度の将来を見越した、そういう条件のもとでというこ とが入っていますので、この条件設定というのは、以前の病院調査というのは、ただ単 に条件が整えばという単なる主治医の主観に基づいたものであったということが言えま すので、7万人というのが即「社会的入院」だというふうに捉えられていたのは、やは り短絡的に結びつけられ、また、その分が病床の削減だというような、ちょっと短絡的 な結びつきがあったのは否めないのではないか。  この中で、退院可能なという中でも、状態の改善が見込まれず退院の可能性なしとい う中でも、やはり 1.8%受入条件が整えば退院可能ということが出ているということは、 どんなに悪い状態の人であっても、将来的な予測のもとで、よくなる可能もやはりある。 長期の状況を見れば、そういう可能性もあるという中で、そういう状況が出れば退院可 能であるというような予測に基づいた判断だったということが言えると思いますので、 この辺をはっきりさせておいた方がいいのではないかというふうに思います。 ○樋口座長 ありがとうございました。ほかに御意見は。 ○山根構成員 同じぺージで「状態の改善は見込まれず」という部分についてですが、 どのような内容で状態の改善は見込まれずとされているのか、そのあたりをきちんと見 ないと、例えば長期の入院によって生活機能が非常に低下して難しいのか、それとも病 理性の問題で難しいのかというところで、対処の仕方が変わってくるのではないかと思 います。 ○樋口座長 この点は、まだそこまでの詳細な中身は今回は出ていないんですね。 ○野崎課長補佐 まだそこの分析には至っておりませんので、本日、御議論いただけれ ば、いろいろ御意見をいただきまして、また更なる分析というものも考えていきたい、 そのように考えております。 ○樋口座長 そのあたりのデータとしては、この研究では収集はされているようですか。 ○野崎課長補佐 状態の改善は見込まれず、居住先・支援が整っても退院の可能性はな いとされた方につきましては、実際そう答えた理由は何ですかというデータを取ってご ざいます。ただ、1から3の部分で、状態の改善が見込まれるといった場合の「状態の 改善」につきましては、調査の対象となっておりませんが、ここで言うと、居住先・支 援がどういう内容なのか、そのあたりは取ってございますので、よく分析してまいりた いと思っております。 ○安田構成員 長尾先生から「社会的入院」という言葉のお話があったのですけれども、 これはずっと今まで私たちマスメディアが、受入条件が整えば退院可能ということで、 厚生労働省が公表した数字をイコール社会入院ということで書いてきました。私も、今 日までその言葉を使ってきたわけですけれども、このデータを見てちょっと思ったのが、 「状態の改善が見込まれるので」という人は、今時点はやはり治療の必要があるという ふうにも見られるんだなと思いました。社会的入院というのは、治療の必要がないのに 入っている状態というふうに考えると、今まで私たちが使ってきた「社会的入院」とい う言葉は再考の必要があるのかなという気がしました。例えば、状態の改善が見込まれ るので、居住先・支援などが整えば近い将来退院可能というのは「準社会的入院」とか、 少し仕分けをしないといけない段階というか、 そういうような感想を記事を書く立場と して持ちました。 ○田尾構成員 ただ、一方で、従来施設が受入問題が比較的整えば退院可能という数字 が33%、これは増えているという数字が出ているわけですから、この受入条件というの は、やはり本人の状態改善というよりは、それが要件だというふうに読めるかというふ うに思いますので、精神科病院というものは全く理由がないのに入院していいというふ うには入院させている側は思わないわけですから、ある程度の条件改善が必要だという 意識を当然するので、20ぺージ以降の文言もそういう意味合いを持っているのかなとい うふうに私は理解しました。33%というと11万人ですね。私は、病床率から言っても1 5万人の退院というふうに常々言っているのですけれども、そういう状況がやはりこの データからもあるのではないかというふうに思いました。それには、どうしたら地域に 出せるのかということを、もっと具体的な方策を考えていく時期じゃないかというふう に思っています。  このデータから、20ぺージもそうですし、退院と住まいの関係がかなりクローズアッ プされていますけれども、そうであるにもかかわらず、今の自立支援のグループホーム は、せんだって長尾委員のデータにもありましたように、今の報酬単価では経営が非常 に難しいという現状があります。単価が安過ぎるということですけれども、グループホ ームは微増しておりますけれども、この住まいを確保するという人数にはまだ十分に応 えられるような増加を見込む報酬ではないというふうに思っています。前回も申しまし たけれども、ここでもデータで、仮にどこかに住まいがあれば退院できるというふうに 考えている医療者が多いということを考えますと、グループホームを退院の条件にする 医療者が非常に多いんです。ですから、そういう意味で、グループホームの需要はまだ まだあるというふうに思いますので、その辺も考えていただきたいというふうに思いま す。以上です。 ○樋口座長 ちょっと今の確認だけ。18ぺージと20ぺージの数値のところで、全体と して、割合で見ているところが、18ぺージは上から62.6、 2.9、33.6というふうにず っと並んでいますね。これが、20ぺージは、一番下の段の計のところは、それを横に並 びかえているというふうに見ておいていいですか。ちょっと数値が違うけれども。 0.8% が 0.9%になっていたり、62.5%が62.6%になっているのですが。 ○野崎課長補佐 基本的にはそう考えていただいてよろしいですけれども、実際、2つ の調査項目をクロスをかけるときに、片方について回答はあったけれども片方はないと か、そういったものもあるので、そこには若干の誤差が生まれてくるものと考えており ます。 ○三上構成員 今いろいろなお話が出て少し混乱をしているようですが、18ぺージの入 院の状況の設問と、19ぺージの居住先・支援が整った場合の退院の可能性に関する設問 の中で、退院可能とか、あるいは入院治療を要するという、18ぺージの入院状況のもの と、19ぺージの整えば退院可能とか、整えても退院の可能性なしというふうなことが、 退院できるできないということがそれぞれにあるのですけれども、片方では退院可能な のに、絶対可能性がないというのが 1.8%あったりということで、設問の仕方が混乱す るので、先ほど実際に社会的入院が33.6%あるのか。あるいは、本当の社会的入院とい うのは5.2%しかないのかというようなことも少しあいまいになっているように思うの ですが、その辺もちょっと教えてください。 ○樋口座長 では、よろしくお願いします。 ○野崎課長補佐 「社会的入院」という言葉自体をどう定義するかということよりも、 この調査項目で、我々としても、11.8%の方が受入条件が整えば退院可能とされていな がら、退院の可能性なしとなっているというところについては、どういう理由でこれが 出てくるのかというのは正直わからないところがあるのですけれども、ただ、全体とし て、18ぺージと19ぺージ、あるいは20ぺージでお示しをしたかった部分というのは、 患者調査のデータで同様の項目をとっている18ぺージ、こちらは患者調査と全く同じで すけれども、それと19ぺージの、より細かく見た、実際の支援と状態の関係というのを 見比べてみると、必ずしもすべての方が今すぐ状態が整っているというわけではないし、 逆に言うと、20ぺージの下の表で、2つ目ですが、状態の改善が見込まれるので、居住 先・支援などを新たに用意しなくても退院可能と。要は、受入条件といった場合に、こ の2.0%につきましては、受入条件というのは治療ということになっている可能性があ る。  要は、患者調査というのは、調査の限界もありまして1項目しかとってございません が、やはりそこは、より症状の状況、あるいは居住先・支援の確保のものと、更に言え ば、その居住先・支援が一体どういう内容なのかというものを見る必要があると考えて おりまして、ここの問27というのは、実はこの前に幾つかいろいろな支援が必要ですか というのを聞いていて、それを踏まえて、そういった支援が整えば退院可能ですかと聞 いているという構成になっておりますので、その前段階のどういう支援が必要かという 部分につきましても、もう少し詳しく分析をしてみないと、実際、例えば24.6%の方に フォーカスを1つ置くとしても、では、実際どういう支援、あるいはどういうサービス を今後重点的に整備していかなければいけないのか、そのあたりが見えてこないと思い ますので、そのあたりはもう少し分析をさせていただきたいというように考えておりま す。 ○佐藤構成員 私、18ぺージで、20ぺージでもいいのですけれども、興味深く思ってい るのは、状態の改善が見込まれるので居住先・支援が整えば近い将来退院可能というの が45%強いるわけですね。その上の2つを合計しますと、現在のままで退院可能な人は 15%しかいないわけです。ですから、居住先とか支援体制を整えれば、逆にそれを合わ せると60%の人が退院可能だということになるわけです。ですから、今のままだと15% ですけれども、十分に施策とか社会復帰体制を整えれば6割の人は退院可能だというこ とですから、今の15%をいかに60%にするのかという施策を、どういう形で、グループ ホームというのが出ていましたけれども、そういう居住支援も含めた施策をこれから考 えていくと、今すぐということは難しいと思いますけれども、今後、私もその先のこと を考えれば6割ぐらいは退院可能だというふうに読めるんじゃないかと思うんです。事 実、欧米等を見ても、一般的に医者だけが判断すれば、退院不能だと思われる人も、い ろいろなサポートシステムを用意することによって、かなり重症な人まで地域に帰られ るということがありますから、これは、やり方によっては6割までは退院可能だという ふうに読めるのではないかと私は思います。 ○門屋構成員 今、佐藤委員からお話があったことを、私は数字を持っていませんけれ ども、実践者という意味で、私たちの地域のことを少しお話しさせていただければ、今、 佐藤構成員の話は現実のものであるというふうに実は思っておりまして、私たちのとこ ろは 970床のベッドが 540床になったわけですけれども、これは現に入院している方々 が条件が整えばという話がありますけれども、現実に個別に精神科医が判断するに加え て、地域がどんな生活を用意することによって可能かということを私たち自身も加えさ せていただいて判断しますと、実は病院で判断していることよりも、広い多くの方々が 地域で生活できる可能性がある。その可能性について現実に取り組むということができ た結果は、ベッドが本当に減ってしまうという、こういう現実だろうと思うんです。  問題は、数字のやりとりではなくて、この中身にまさにあるのだろうというふうに思 っておりまして、私たちの現実を見ていただければそのことは明白だというふうに私は 思っています。ただ、時間がかかること、なおかつ、いろいろな吟味が必要であること や、議論の積み重ねが必要であることは事実でして、そのことについて、むしろ共通の 認識というか、そういうものが、ここに御出席の方々に得られることを私は切に希望し ております。そんなことを加えさせていただきます。 ○小川構成員 私は、今の議論の流れからいくと、実は少し違和感を持っているんです。 というのも、この検討会の役割は、ビジョンの中間評価をして、その後の5年間の施策 を進めていくということです。今の厚生労働省の御説明だと、このデータの分析をしな ければ新たな施策に進むことができないかのようなニュアンスに受け取れるのですけれ ども、こういう実態は、当時、ビジョンを検討する中でも議論がされたというふうに私 は記憶をしております。その数字の妥当性がどうなのかといういろいろな議論はあるに しろ、何らかの支援をすれば退院できる方が、相当数の方がいらっしゃる。今、我々の 任務は、いわゆるビジョンのもとで進められてきた施策がどう進んできているのかとい うことを評価をして、それを今後の対策に活かしていくということが役割だと思ってい たのですけれども、まず、そこの確認をお願いしたい。その評価の仕方ですけれども、 現状はこうですということでいろいろな数字が出されてきておりますけれども、一番重 要なのは、なぜ、例えば当時は7万 2,000人という数字が出てきて、今現在は、都道府 県の皆様方から上がってきた数字で4万 9,000人という数字が出てきている。その数字 の妥当性は別にしても、今現状が施策が前に進んでいるのかどうか。あるいは、進んで いないのかどうか。もし進んでいるとしたら、その成功要因は何だったのか。 門屋さん の地域の取組も1つだと思いますし、あるいは、なぜ進まなかったのかということであ れば、その進まなかった理由をいろいろ検証していくのがこの検討会の役割だというふ うに私は思っているんです。  ちなみに、23ぺージにGAFと入院の状況をクロスしたものがございますけれども、 確かにGAFが低ければ退院する方は少ない。29ぺージの方では、例えばGAFの低い 方でも退院されている方もいらっしゃる。GAFが50未満の方でも退院されている方は いらっしゃるわけですね。いわゆるGAFの数字が低くてもなぜ退院に至ったのかとい うことをやはり見ていく必要性はあると思うんです。そこのいわゆる成功事例というも のをきちんと検証していくということは必要だと思うんです。だから、何が社会的入院 でとか、そういう言葉の問題はちょっと置いておいても、なぜ施策が進んでいくのか、 あるいはうまくいくのか、うまくいかなかったのかということを我々は議論をしていく 必要性があるのかなと思っています。恐らく高齢化の問題と長期入院というものが大き な要因になって退院を阻害しているということがわかると思います。  1つ、これは医学界の皆様方にお聞きした方がいいんでしょうけれども、いわゆる入 院治療の必要性というのはやはりきちんと議論をすべきではないかというふうに思うん です。いわゆる入院治療というのは、本当にどういう方にどれだけの期間必要なのか、 その議論というのはきちんと行われてきていたのでしょうか。例えば、ややもすると長 期になってしまう。そこのところの議論が恐らく不十分だったのではないかという印象 を私は受けるのですけれども、そこはどなたかお答えいただければと思いますが。 ○樋口座長 では、まず福島課長の方から。 ○福島課長 それでは、この会の目的というのは、一番最初に、この議論の出発のとこ ろで提示したように、確かにおっしゃるように、ビジョンの中間評価をし、今後の1年 間の中でいろいろなことをやっていきたいということを検討することだというように申 し上げました。それはそのとおりです。その際に、さっきも言った、5年前につくった ビジョンの形を、方向性はよいとしても、さて、どれぐらいまで本当に持っていくのか、 あるいは全体的指標も具体的には余り示していなかった。7万人問題だけがクローズア ップされているような状況にあったということで、もう少し精神医療福祉全体をどうい うふうに考えていくかということを踏まえながら議論をしていただきたいというのが今 回の目的である。そのときに、初回でも申し上げましたが、そういう面で、単に施策の 中身を厚くするだけではなくて、今後あるべき姿も踏まえながらそこは考えていただき たいというのが1つのお願いでございます。  その際に、具体的になぜうまくいかなかったのかというときに、うまくいっていない とか、うまくいっているとか、そういう評価もしなければいけない。実は、7万人とい いながら、たぶん既にある程度入れ替わっていれるわけですね。このデータで見ても、 1カ月間で数%入れ替わっている。ということは、1年間で入れ替わる可能性があるよ うな数字なわけです。ただ、個人に着目した場合、全体としてそういう人がそこにいる ということと少し議論を分けないといけないのかなという問題もあります。  更には、それぞれのターゲットをものすごく細かく決めて、例えば急性期はどうする のか、長くいる人をどうするのか、あるいは長期にしないためにどうするのか。そうい う今までやってきた方策ではないといいますか、よりそれを超えて充実させていく方向 性はないのかということについて、ここで議論していただきたいというのが今回の目的 です。ですから、データも、そういう感じでどういう施策ができるか。具体的に何をす るかというためのものと、その議論をするためのデータとして我々は捉えていて、ただ 数字が多い少ないとか、増えたとか減ったとかではなくて、細かく分けながら、この人 たちにどういうことをやればこれができるのか、変わっていくのか、そういうことを議 論したいと思っております。そういう面で、確かにビジョンの見直しではありますけれ ども、それを超えて、あるべき精神保健医療の姿というものを求めていきたいというこ とがありますので、そこを踏まえて議論していただければと思います。 ○門屋構成員 今のことに関連して、確認をさせてください。私も前回の検討会にも参 加させていただいていましたので、最終的には、あの計算式も含めて、基本的にはベッ ドが減るということの精査だったと思うんです。何万人かは退院した、それは入れ替わ ったかもしれない。ここの部分はよくわかります。しかし、その何万床か減るというこ とについては、どの程度進展したかというのは、もう既にこの検討会で現実のベッドの 数が示されていますので、それは決して進んではいない。それらについてはどのように お考えなのか。あるいは、これも当然ここで検討されるべきと理解していいのかどうか を御確認ください。 ○福島課長 第3回の入院医療に関する論点のところで案でお示ししたように、疾患に 要した入院機能のあり方、あるいは通院・在宅医療、あるいは介護・福祉等のほかのサ ービス、そういう機能を踏まえながら、現在、精神病床が果たしている機能をどういう ふうに評価して、あるいは人員・構造等の基準、あるいは機能ごとの必要量、病床の機 能強化度の方策などを考え、今後の精神医療のあり方を考えるということを論点の案と して御提示いたしました。これは、医療がどういうあり方になれば、これは数も含めて ですけれども、どういうふうな病床になるかということも中の議論としては含んでござ いまして、そういう面で、この会の全体の方向性として、先ほど全体の方向性が一致す ればいいと門屋構成員がおっしゃいましたけれども、そのとおりでありまして、全体と して我々はどういうあり様を目指していくのかということをみんなでコンセンサスをい ただきながら、そのために、そこへ向かっていくにはどういうふうにすればよいのかと いうことを御議論いただければと。その中で1つの論点としては、確かに病床数のこと は出てくるというふうに考えてございます。 ○樋口座長 よろしいでしょうか。  長尾構成員、先ほどの後半のところに関して、何か御説明、追加がありましたら。 ○長尾構成員 入院かどこまで必要かということですね。私は、絶対的な入院の必要性 というのをもつ場合は非常に精神症状が激しい状態や自傷他害のおそれがある場合を除 いては少ないと考えております。いわゆる精神症状、それから、いろいろな問題行動等 も含めながら、非常に症状の悪い人でも、家族の許容範囲が広ければ、それなりにお家 でも看られる場合がありますし、ですから、それは精神症状と、その受入の許容度との 相対的なものだというふうに考えております。  それと、先ほどから出ていますように、受入条件が整えばというのは、これは主治医 が、非常に大きな範囲のものを考えていると思うんです。ですから、どれだけの数がど れだけという話でなくて、やはり先ほどから出ているように、これだけの人にはどれだ けのサポートと居住支援と、さまざまな関わりがどれだけ手厚く、薄くやれる人もあれ ば、手厚くやれる人もあるし、どれだけそういう手がかけられるか、費用をかけられる かという、それにかかっていると思うんです。だから、絶対的な入院の可能性、我々か ら言えば、相当な精神症状があれば、できるだけ入院をして早く退院するという方向に はもちろん持っていくわけですけれども、これはやはり家族の許容度、社会の許容度、 そういったものとの相対的なものだろうというふうに私は思っていますから、絶対的な、 これだけあればここまでの入院というような決め方はできないことだろうと思っていま す。 ○中島構成員 同じことを。2、3、4回と欠席していましたので議論の仕方を忘れて しまいましたけれども、特に入院の必要性ということを真剣に学問的に議論したことが あるかといえば、一言で言えば、それはないと思います。今、長尾構成員がおっしゃっ たように、両方(家族、社会)の許容度というものもありますが、もう1つは、医療支 援というものをどう速やかに現場に届けられるかというシステムの問題です。そこを見 ないとはっきりしたことは言えないというか、では、欧米ではどうなっているかという ことをこのあと細かく見るようになりますが、その中でも、そこまでやれているという ことは、そこまでは可能だということを示しているというふうに思います。ですから、 この表を見るに当たっても、ここまでが限界だと読むよりは、ここまでは少なくともや らなければいけないわけで、これを提供していく、退院していただくのは国の責任だ、 我々の責任だという読み方をしていくことが必要だということですね。  それからもう1つ、受入条件が整えばというところを頭の中でイメージしたのは恐ら く精神科医ですよね。担当医ですから、今の日本の精神科医の平均的意識を反映してい るというふうにも読まなければいけないだろうと思います。特に医療観察保護等で多職 種のチーム医療で一人一人をアセスメントしていくようになりますと、今までは不可能 だと思ったことが次から次にできるようになっていくわけですね。そのあたりもちゃん と考えに入れるとしたら、これよりもっと高い希望のある数字で出てくるんじゃないか というふうに思います。以上です。 ○伊澤構成員 今お話しいただいたことと恐らく内容としては同じことなんですけれど も、結局、出口の問題で、退院に向けての方向づけをするときに、どういう場所であれ ばその方の生活、暮らしが立てられるのかというイメージがやはりお医者さんとしても 持ちづらいという状況は絶対あると思うんですよね。だから、「受入条件が整えば」と いう表現の中身や内容の精査というのは、第1回目に大塚構成員も発言されていました が、受入条件の中身の精査がとても大事ですというのは、まさにそのことだと思うんで す。ケアホームなのか、グループホームなのか、あるいは公営住宅で近隣の支えが少し あれば済むのか、ボランティアさんの何かサポートがあればいけるのかというようなこ とだったり、あるいは、ホームヘルプサービスとか、訪問看護とか、そういう支援サー ビスを、どのぐらいの量をどういう形で取りつければ可能なのかというところのやはり 中身だと思うんです。だから、受入条件を精査していくということをぜひこのあり方検 討会では盛り込んでいくということがすごく大事な視点だというふうに思っております。 この調査研究はとてもすごいなというふうに思って、更に深めていく。今申し上げたよ うな視点も入れて、ディープな世界に入っていくような、そういう継続的な研究という ふうになっているのでしょうか。もうここまで止まりなんでしょうか。その辺、今後の この研究の継続性というあたりは少しお聞きしたいというふうに思いました。 ○野崎課長補佐 それは時期的なものということでしょうか。分析でしょうか。 ○伊澤構成員 そうですね。昨年度行われたこの研究が、継続的に今年度も取り組まれ ているものなんですか。引き続きやっていこうという方向で動いている話しなのかどう かという確認でもありますけれども。 ○名越課長補佐 研究班の中では、これを継続すべきかどうかという議論をされておら れるというところは把握しておりますけれども、それが、いつやるかというような具体 的なものが決まったというところまではまだ伺っておりません。 ○広田構成員 前回、ヒアリングに社会的入院の方が来られて、とても感銘を受けるお 話を伺ったんですけど、伺っても、なお日精協の長尾委員は7万2,000人とか病床削減 にこだわっている。これは、絶えず日精協と広田和子が対立している構図です。本当に 日精協自身が変わっていただかないと、私、前々回の委員会で、日精協は謝る気がある のと話をしたら、謝らないと長尾先生はおっしゃって、謝ったら、あなたはクビになる わねと私は申し上げたんですけど、もう10年ぐらい前でしょうか、全家連が入院患者の 調査をかけたところ、施設症になっていると毎日新聞が一面で取り上げて、それを、た またま日精協の何かが開かれていて、日精協の皆さんがすごく怒ってということがあっ て、ここでは言えない週刊誌じみたような、そんなことまで日精協はやるのというよう なことをやったらしいんですけれど、そういう時代と違って、少なくとも国の委員会で、 大ぜいの傍聴人の前で、社会的入院の患者があれだけ立派な発言をして、そして、私も 自宅で駆け込み寺をやっていて、この間も、長年引きこもって、家庭内暴力の人をうち に泊めましたが、1人で暮らすという気持ちになって、家も探せました。そういう可能 性がある患者がたくさん、病院の経営上、入院させられている中で施設症になって、G AFとか何か意味がよくわからないのですが、そういう形でいろいろな脳力を削ぎ落と されていく中で、結果として「社会的入院」という言葉になっていると思うんです。患 者自身の力が衰えていったというよりも、そういうふうなところに長い間、自分以外の 問題のために入院させられている間に力を削ぎ取られた。それを、安田委員は「準社会 的」というふうな言い方をしたけれども、すぐ安易に言葉をつくってしまって、そこに 持っていかないでいただきたいということと、ぜひ日精協さんに変わっていただきたい。  それで、前回、私は、国が全部面倒をみて社会的入院を出してほしいと言ったんです けど、地域の受け皿にお金が足りないのだったら、日精協の経営者が身銭を切って寄附 をする。そのぐらいの気概がなくて、7万2,000にこだわり、病床削減にこだわってい たら、ここの委員会でいいものは出ませんよ。政治的に一番力があるのは日精協さんで すから。ぜひ日精協自らが反省し、新しい時代に入ったわけですから、変わっていただ きたいということ。この場でまた反論されると2人の話になりますから、日精協に持ち 帰って、よく御議論いただきたい。NPOとか、いろいろなところに寄附していただき たい。地域で立ち上がる社会資源に対してです。よろしくお願いします。 ○小川構成員 先ほどの続きの質問ですけれども、いわゆるGAFについてですけれど も、精神症状が大きく影響してGAFの数字が出てくるのか。あるいは、入院期間が長 いと、先ほど施設症の話も出ましたけれども、入院期間がGAFにどう影響しているの かということについて、少し御説明をいただければと思います。  場合によっては、GAFが低いから入院期間が長くなっているのか、入院期間が長い からGAFがそういう数字になって出てくるのか。その辺の理解を正しくしておかない と、GAFが低い数字になっているから退院できないというふうに見るのか。あるいは、 むしろ退院という形でアプローチをした方がきちんと社会復帰が進んでいくのかという ところがわかってくると思うのですけれども、その辺はいかがなんでしょうか。 ○佐藤構成員 基本的には、精神症状が悪ければGAFは低いわけですね。ですけれど も、長期間入院していれば社会的機能が落ちてくるわけですから、当然、GAFも高く ならないですね。私、先日も質問したんですけど、つまり入院期間は医学的な判断だけ で決めることは不可能ですね。 長尾先生もおっしゃっていましたけれども、私のところ の患者でも、幻覚・妄想がひどくなってきて家の中で走り回っているような患者さんで も、家族が、この患者は家にいていいんだというふうになると入院しなくて済むんです ね。 ですけれども、どう見てもこの人は家に帰れるだろうというふうに思っている人が、 家族は、この人が帰ってきてもらっては困るとなると、これは退院ができないというふ うになってきていますから、精神科の入院自体は、ほかの一般の身体疾患でもそういう 部分はあるのかもしれませんけれども、医学的な基準だけでは決められなくて、医学的 な判断と社会的な受け皿といいましょうか、その両者が掛け合わさったところで決まっ てくるんですね。我が国では、ほかの国と比べてみると、明らかにそこが違う。受入体 制が乏しいですから、そのことによって長期化しているという側面が大きいんじゃない でしょうか。そう思いますけれども。 ○長尾構成員 先ほどのGAFと入院期間がどちらがどうかという、卵が先か鶏が先か という話で、これは両者あると思うので、そのどちらかにこうだという話ではないと私 は思っていますので、やはり先ほどと同じような相対的なものだと考えてもらった方が いいんじゃないかと思います。 ○樋口座長 ほかにいかがでしょうか。 ○長野構成員 日本の端っこで一生懸命勉強中の精神科医として発言します。先ほどか らの議論ですが、ずっと「受け皿があれば退院可能」というやや抽象的で基準がはっき りしないまま、各主治医が判断をしているというようなところが本当に問題だと思って います。先週、プレゼンさせていただいたように、退院できないと思っていても、実際 は地域で暮せる方がたくさんいらっしゃるのも実感としてわかりながら、何が歯がゆい かというと、私たちの仲間の医者にこのことを伝えられない。非常に身近なところにも 伝えられない。医者によって非常に入院観がばらついているという現場の現実は、本当 に根強いものだろうとやはり思います。  そう考えたときに、この調査がずっと各主治医がつけているという問題を解決するに は、第三者評価的な調査の数字を一度出してみてもいいのかなと思います。やはり場合 によっては病院の中で一生終えてしまう方を作らずに、地域で幸せに暮していただくこ とが大事ですので、数字が必要であれば、標準化した第三者評価ができれば、もっと希 望のある数字が出てくるのかなということを現場で実感をしています。  あと、やはり入退院というのは、指定医をはじめとして、精神科医が医療側の最終的 な判断の権限も持ちますし、責任も持つということになってくるのだろうと思います。 そこに対する学問的議論もそうだと思うのですが、やはり医学教育現場、大学から始ま って、医局、臨床研修の中での研修体制の中でどんなものが培われているかということ をきちんと分析をするのも必要だと思いますし、臨床研修の中で、せっかく精神科が義 務づけられていますので、そこで地域移行に関する考え方を標準化できないかというこ とを常日ごろ思っております。  私たちは、全国的にはわかりませんが、少なくとも私の同年代から下5年ぐらいの先 生、上5年ぐらいの先生で、本当に往診の経験がある、日常的に往診している先生がど れぐらいいらっしゃるのだろうかと思います。 生活の場に行って医療を提供できるドク ターがどれぐらいいらっしゃるか。また、往診をきちんと組織としてバックアップでき るというか、病院がバックアップして往診に行きなさいというふうにしている病院がど れぐらいあるのかということを考えると、そこはやはり手を入れていかないと地域移行 というのは進まないのかなというふうに感じていますので、この2点発言させていただ きます。以上です。 ○坂元構成員 自治体側からの意見ですけれども、例えば、いろいろな退院促進に関す る退院促進事業、委員会等は都道府県ごとに設置が義務づけられている場合が多い。現 実に、都道府県と、その都道府県の中にある市町村の関係というのは、思った以上に複 雑な部分があって、なかなかうまく連携していない部分もあるのではないかと思われま す。例えば1つの例を言いますと、健康づくり計画を、都道府県には計画策定を義務化 する一方、市町村は努力義務であるとするように、こういう仕切りが非常に多い。市町 村も財政的ないろいろな問題を考えると、努力義務となると、やってもやらなくてもい いのかという意見もでてきてしまう。やはり基本自治体というのは住民に密接している 市町村だと思うのです。都道府県は確かにコーディネートという役目上大事ですけれど も、国の方から出てくる通知などは、都道府県には義務化、市町村は努力義務的なもの が多くて、これが大きな問題になってくることがあります。  例えば、何回も出てくるのですけれども、保健医療圏と障害福祉医療圏の違い、基本 自治体とのズレというのはどこにもあってうまく行かないこともあります。例えば都道 府県と政令指定都市とは場合によると施策の競合関係になることがよくあります。別に 競合関係にあるというわけではありませんが、京都府と京都市の関係などを例にとると、 京都府の人口は250万で、そのうち京都市が150万なんです。こういう関係のところで 都道府県だけに施策義務化の通知がいっても、なかなかそこがうまくいかないというこ とです。やはりこういう施策というのはきめの細かさが大事なので、市町村、基本自治 体にある程度の義務化を課すようなことがやはり施策上大事じゃないかというふうに私 は思いますので、意見を述べさせていただきたいと思います。以上でございます。 ○上ノ山構成員 社会的入院ということがよく言われますが、これは定義があいまいか なというふうに思っています。先ほど報道の方が、入院の必要がないのに入院されてい るというふうにおっしゃられたのは、逆に私にとっては非常にショッキングな発言でし たね。そのようなイメージがかなり振りまかれていて、そういうイメージの上に立って 今の施策などが成り立っているとしたら、それはちょっと問題があるかなというふうに 思います。  というのは、例えば退院促進事業というのが現在全国的に一気にやられていますけれ ども、その成果は必ずしも上がっていない。かなり安易に行われているような気がしま す。つまり、入院が必要でない人が入院しているのだから、自立支援員が地域から迎え に行ったらすぐにでも退院できるだろうというふうな安易な考え方があるのではないか。 その結果として失敗をしているのではないか。やはり長期入院には、それなりの長期に なってしまう、医療的な以外にも社会的な理由があるわけですから、そういうさまざま な要因を考えてやっていかないとうまくいかないというふうに思っています。  そもそも、いわゆる「社会的入院」をちゃんと定義することと、それから、例えば居 住先などの支援が整えば、これだけの退院が可能であるという支援策の定義の組み合わ せをきちんとしていかないと議論がかみ合わない。今のこの表の入院患者さんの年齢構 成を見てみますと、60歳以上がかなりの割合あるわけです。要するに、改革ビジョンの 10年間の前期5年間で何をしたかというと、結局ベッド数は削減されていなくて、年齢 層が上がっていって、そして、これによる死亡退院を待つみたいな、そういう印象があ る。これはちょっと変な言い方かもしれませんけれども、それが施策と言えるかどうか ということですよね。  もう1つ重要なのは、長期間の入院患者さんを退院させるためにも、かなりの工夫が 要りますが、短期間の入院の人にもかなりの工夫が要るということです。32ぺージでし たか、退院までの期間というのが出ましたが、1年未満の人が85.7%というふうにおっ しゃられましたね。だから、結局、現在の状況というのは、1年未満で退院される方々 が非常に多い。そして、その人に対してどういうふうな支援をしていくか。こういう人 たちは、単に居住をサポートしたら以前の社会生活がしていけるかというと、そうでは なくて、かなり手厚い医療的なサービスが必要であろうというふうに思うんです。だか ら、 90%に近い短期入院者に対して、どのような再入院を防いでいくようなシステムを つくっていくのかという、そういうような議論がないと、単に病棟にたまっている人を 減らしていくというだけの、そして、ただ死ぬのを待っていくかのような医療施策にな ってしまうというふうに思います。  もし可能なら、厚生労働省としては、適正病床を幾らと設定しているのか。そして、 そのために病院がどのような努力をしたら、それに向かって病棟転換、配置転換等して いけるのかという案を出していただかないと、結局、残った病棟に認知症の方がたくさ ん入っていて、その方々を加えて相変わらず30万人余りいて、そして、その方々を「社 会的入院」と呼んでしまう。認知症の人が何万人もいて、それが「社会的入院」と言え るかどうかというふうな、非常に大きな疑問を感じます。以上です。 ○樋口座長 ありがとうございました。そろそろ1時間の大よその時間が経過いたしま した。 ○門屋構成員 関連で。今、話された中の1点だけ。これは御質問させていただきたか ったのですが、1年未満で85.7%という退院の方、こういう研究の中では検討されてい るのかを聞きたかっただけですが、私は、回転ドアが少々見受けられるというふうに思 っている部分がありまして、そういうようなことは、この調査関連で出てくるもの、あ るいはほかの調査研究であるのかをお尋ねしたかったのですが。 ○樋口座長 いかがでしょうか。 ○福島課長 この研究は、1ヶ月ほどの調査であって、入退院を繰り返すパターンの場 合、たぶん数年間のスパンで追跡しなければ本当はわかってこないと考えています。入 退院を繰り返しても、入院期間が非常に短くて済んでいて、自宅で生活できる期間が長 くなっていれば、それはそれで評価されるべきでしょうけれども、どういう形態による かという点は議論しなければいけませんけれども、そのための研究はかなり長期にわた って追跡しなければいけない。そういう研究の必要性は私どもも認識いたしております けれども、残念ながら、ここの検討会の機会には間に合わないので、非常に短い状況で、 大きなのぞき穴からのぞいてみて全体を推察していただく以外ないのかなとは思ってお ります。そういう研究の必要性は、たぶん今後、我々がやる施策が進んでいくときに、 仮に入院退院の頻度が多くても、在宅期間が延びるということを例えば1つの指標にす るならば、そういうふうな研究なり、そういうような補足の仕方そのものが我々の計画 の中に組み込まれていかなければいけないというふうに考えております。 ○樋口座長 それでは、一応ここで精神病床の利用状況に関する調査ということでのデ ィスカッションは終えさせていただきまして、本日の第2の議題でございます「諸外国 の精神保健医療福祉の動向について」ということで、これもお手元の資料2についての 説明を事務局の方からしてもらった後、また御討論をいただきたいと思います。事務局、 よろしくお願いします。 ○野崎課長補佐 それでは、資料2に沿って簡単に御説明をさせていただきたいと思い ます。  我が国における精神保健医療福祉体系を見直していくに当たって、その参考とするた めに、諸外国の精神保健医療福祉の動向を、大きく地域移行に関連するものと普及啓発 に関連するものの2つに大別いたしまして整理させていただきました。  まず、2ぺージから14ぺージまでが諸外国の地域移行に関する取組について、厚生 労働科学研究の研究成果をもとにまとめさせていただいております。  3ぺージ、4ぺージ、5ぺージにつきましては、これまで第3回の検討会で提示させ ていただいた資料に若干時点修正を加えたものでございますので省略をさせていただけ ればというふうに思います。  6ぺージでございますが、地域移行の動向について、諸外国の取組を厚生労働科学研 究でまとめているわけですが、その類型といたしまして大きく2つのグループに分かれ ております。1つは、1グループと書かれているところですが、病床削減率が高い国、 これらは概ね65%以上、要は、最も多かった病床数の時点と最も下がったところを比べ て65%以上の削減率というものがグループ1。病床削減率が比較的緩やかな国につきま して、それは概ね40%以下ですが、グループ2としております。1グループにつきまし ては、更に2つのグループに分けておりまして、1Aグループとなっておりますのが60 〜70年代、比較的前に病床数の減少を大きく行った国。また、1Bグループというのが 80年代に病床数が減少した国ということで分けてございます。  ここで下線を引かせていただいている国につきまして、以下、詳細をつけております。 詳細を説明いたしますと時間がかなり足りなくなると思いますので、ほんの要点だけ説 明させていただければというふうに思います。  7ぺージ、8ぺージがオーストラリアに関する取組の例でございます。先ほどの類型 で申しますと、病床数を65%以上削減した国のうち、60年代から70年代にかけて取組 を行った国に当たります。こちらで下線を引いているところが基本的に私が説明で触れ るところなので、そこを見ていただければと思いますが、ちょっと飛ばしまして、改革 の概要のところを見ていただきますと、人口 1,000人当たり精神病床数は1960年の 3. 1から1990年には 0.5に減少している。それに引き続きまして、Australia’s Mental Health Strategyというものが1992年から採用され、これまで60年代以降、無計画に 進められてきた病床削減について、更に計画的に進めるということを内容としたプログ ラムが組まれているということでございます。  その成果でございますが、8ぺージを見ていただきますと、改革の成果といたしまし ては、まずは地域ケアへの支出の増加ということで、2003年時点で地域ケアといわゆる 入院医療の支出が半々の水準にまで変わってきているということでございます。  また、2つ目といたしまして、急性期病床の増加というのがございまして、急性期病 床については微増にとどまっておりますけれども、急性期以外の病床については、約 4, 500床から 2,000床へと減少させている。また、先ほどの支出の増加とも関連すると思 いますが、地域ケアに携わる人的資源についても増加をしている。あるいは、1993年か ら2003年にかけて、地域ケアに係る人員の配置というのは約2倍となっているという状 況にございます。一方で、下に書かせていただいているように、課題も幾つか見られる という状況でございます。  9ぺージ、10ぺージでございますが、こちらがフィンランドでございます。こちらは、 先ほどの病床削減率が高い国のうち、80年代に病床が減少した国となっております。改 革の概要のところを見ていただければと思いますが、1981年から87年に国家的統合失 調症プロジェクトを実施し、その目標としては、2年以上、精神科病院に入院継続をし ている長期在院群と、精神科病院に初回入院ですが、その初回の入院が1年以上継続し ているという入院長期化予備軍の統合失調症の患者さんにつきまして、それぞれ10年間 で半減させるという目標のプロジェクトを立てたということでございます。  その成果が10ぺージにございますが、人口 1,000人当たり精神病床数につきまして は、1980年に 4.0、1990年に 2.3、2000年には 1.0まで減少してきている。1992年に 行った評価によると、長期在院群と入院長期化予備軍、もともと半減の目標を掲げてい たものでございますが、こちらにつきましては、目標を上回る60%以上の減少を達成し たという状況でございます。一方で、先ほどのオーストラリアと同様、さまざまな幾つ かの課題が指摘されているという状況にございます。  11ぺージ、12ぺージがイギリスにおける取組でございます。こちらは、12ぺージを 御覧いただければと思いますけれども、イギリスにおいては、こちらは80年代に病床の 減少が見られた国でございますが、1977年に 3.2であった人口 1,000人当たり精神病 床数が、1998年には 1.0と3分の1まで減少しているということでございます。更に、 その取組に引き続きまして、1999年には精神保健施策10ヶ年計画ということでフレー ムワークとして発表いたしまして、以下の下に書かれております7つの基準に沿って対 策を行っているということでございます。  13ぺージ、14ぺージがドイツの取組の例になります。ドイツは、これまで挙げた3 つの例と違いまして、比較的緩やかな病床減少率を持っている国ということでございま す。改革の概要のところですが、ドイツでは、70年代に改革が始まり、まずは単科精神 科のベッド数の削減。次に、それ以外の一般精神病床も削減している。続いて、コミュ ニティケアの施設を充実させ、更には、総合病院の一部として小規模な精神科病院を増 やしてきているということでございます。  その成果でございますけれども、14ぺージを見ていただきますと、人口 1,000人当 たりの精神病床数は、1980には 2.0であったものが、90年に 1.8、更に2000年までの 10年間で 1.3にまで、緩やかではありますが減少してきているという状況にございます。  以上が諸外国における地域移行なり精神医療の分野での改革と関わるものでござい ます。  15ぺージ以降におきましては、今度は諸外国における普及啓発に関する取組を整理さ せていただいたものでございます。  16ぺージでございますけれども、諸外国におきまして、精神保健啓発活動が活発化し てきている背景としては、国際的な学会やWHOなどにおけるアンチテスィグマ(偏見 除去)運動であるとか、あるいは精神疾患への早期介入の重要性に対する認識が高まっ てきたことが挙げられているということでございます。  17ぺージでございますが、こうしたさまざまな諸外国での取組の1つのターゲットと して、若者とその周辺の支援者というのが挙げられているわけでございますが、その理 由は以下に書いてございますが、精神疾患の初回発症は、前回の検討会でも資料として お示しいたしましたように、比較的若い世代に多いということで、また、そういった若 い世代は精神保健的な介入、そういった支援を求めたがらない傾向にある。また、更に 言うと、低年齢ほど自らの精神疾患について認識しにくいとか、あるいは、そういった 周辺の支援者に対する支援活動は重要となるということで、若者とその周辺の支援者に ターゲットを特定してやっているということでございます。  18ぺージを見ていただきますと、こうした諸外国における普及啓発の活動を整理いた しますと、大きく分けて4つに分けられるのではないか。1つは、コミュニティ全体を 介入の対象とした啓発活動を行っている。また、2つ目といたしましては、特にコミュ ニティの中で若者を介入対象とした啓発活動を行っている。また、3つ目として、学校 に根ざしたというか、学校を基盤としてそういった啓発活動を行っている国。また、4 つ目といたしましては、若者の支援者にターゲットを更に絞って啓発を行っている国と いうふうに分けられるということでございます。  そのさまざまな取組を整理したのが19ぺージ以降となりますが、まずは、ノルウェ ーにおけるティプスプログラムというもので、コミュニティ全体を介入対象とした啓発 活動の概要をまとめさせていただいております。大きなところで、大まかに説明いたし ますと、2つ目の点でございますが、このプログラムの目的といたしましては、いわゆ る発症から治療に至るまでの未治療の期間について、それを短縮化するということを目 的として、3年間かけて実施したプログラムだということでございます。  20ぺージにその成果を整理させていただいておりますが、このプログラムの介入地区 の未治療期間の中央値というものは、介入を行わなかった地区に比べまして有意に短い。 そこに大体の期間が書いてございますが、介入地区では5週間であって、一方で、非介 入地区では未治療期間が16週間とかなり長くなって3倍以上になっている。  一方で、もう1つの成果としては、介入地区の初回受診患者の重症度について見ると、 非介入地区のそれに比べて有意に軽症であったという成果も見られている。  最後は、下線を引いてございませんが、実際のそのプログラムが終わった後、2年経 過してフォローアップをしたところ、かつての介入地区における未治療期間の中央値は、 結局、もとの水準、要は非介入地区のそれと同等程度に戻っているということでござい まして、継続的な介入が重要であるということが示されている部分でございます。  21ぺージ、22ぺージは、オーストラリアにおけるCompass Project、若者、コミュニ ティを対象としたものを整理させていただいております。  このプロジェクトでは、12歳から25歳までの若年者のコミュニティを対象といたし まして、 介入前後のアセスメントを厳密に設定した上で、実際にその成果をはかったと ころ、介入地区においてのみ若者のキャンペーンへの関心や、精神疾患の頻度、あるい は自殺のリスクといったことについての正確な知識、あるいは自分自身の抑うつの状態 についての認識であるとか、あるいは実際に支援を求める際の抵抗感といったもの、あ るいは、実際にうつ病状態になった場合の支援を求める実績というか、支援を求めるこ と自体が改善をされているということでございます。  22ぺージは、キャンペーンのメインメッセージの例を付しております。  23ぺージにつきましては、これはオーストラリアにおけるbeyond blueでSchool Re search Initiativeというものがございまして、これは学校を基盤とした啓発活動を実 施したものでございまして、 それを整理させていただいてございます。こちらのプロジ ェクト、Initiativeの目的は、中学生のメンタルヘルスに対する認識というか、知識を 向上させ、精神障害者との社会的距離を減らすことが目的として行われているものでご ざいます。これにつきましては、調査報告というか、研究結果がまだ出ておりませんけ れども、ただ、実際に学校を基盤としたものとしては、国際的に見て最も厳密な評価を 行っているものであるので、またその成果が出てまとまり次第、必要に応じてこの検討 会にもまた御報告をしたいと思います。  24ぺージでございますが、これはオーストラリアで導入され、またアジア、ヨーロッ パ諸国に広がりを見せているMental Health First Aid Trainingというものでござい ます。簡単に申しますと、保護者や学校の教職員など、若者が精神的不調を抱えた際の 支援者になる人々に対しまして、初期支援や初期介入に関するトレーニング講座を行っ ているということでございます。下から2つ目の点でございますが、実際にその成果と しては、精神病やうつ病を発見する能力の顕著な向上であるとか、あるいは適切な治療 法に関する考えが専門家と一致する傾向が強くなったといったものが見られている。ま た更に、偏見も改善されて、先ほどもありましたが、支援を実際に求める際の抵抗感と いうものについても改善が見られているということでございます。  資料2の説明は以上でございますが、今御覧いただきましたように、諸外国では、若 年層、あるいは支援者にターゲットを特定した普及啓発活動というのが行われていて、 前回の検討会でも少し我々としての考え方をお示ししたところでございますが、こうし た海外の動向も念頭に置いて、今後の普及啓発方策というものも検討していきたい、そ のように考えております。  説明は以上で終わります。ありがとうございました。 ○樋口座長 ありがとうございました。それでは、ただいまの資料の説明に対しての御 意見、御質問等ございましたらお願いいたします。 ○小川構成員 これは座長と事務局にお願いですけれども、資料を事前に送っていただ きますよね。せっかくいい資料があるのに、グラフがよくわからないとか、そういうこ ともあったり、直前に送られてくるのでなかなか見ることができなかったりするので、 もし差し支えなければEメールで添付して送っていただけると色つきで出ますので、グ ラフもよく見ることができるので、そういう形でやっていただけると、恐らく省資源化 にもなりますし、経費節減にもなるかと思いますので、よろしくお願いしたいと思いま す。  また、せっかく非常にいい資料があるのですが、例えば医療費の占める割合が50%と か、恐らく我が国の傾向もどうなっているのかというのは皆さん知りたいと思いますの で、そういう医療費全体に占める精神科医療にかかる費用とか、あるいは医療と福祉に 関する費用、それが経年的にわかるような資料をぜひ出していただけないかというふう に思っています。お願いでございます。 ○樋口座長 ありがとうございました。そのあたりはメール等で。 ○野崎課長補佐 Eメールにつきましては、そのようにさせていただきたいと思います。 また、我が国の医療費に関する資料につきましても、以前お出ししたものもあると思い ますが、もう一度整理させていただいて、また御要望があれば追加でそれこそメールで いただければと思いますけれども、お出しできるものはお出ししていきたいと思います ので、よろしくお願いします。 ○樋口座長 ほかにはいかがでしょうか。 ○坂元構成員 今、諸外国のいろいろな例をお示しいただいたのですが、わが国におい ても、退院促進というのは、例えば一定のノルマという言い方はおかしいですけれども、 ある一定の退院率などの基準を設けて促進していかないとなかなか難しいだろうという 気がします。意外と知られていない事実ですけれども、この4月から各保険者に特定検 診というものを被保険者に対して実施せよということが義務づけられております。例え ば自治体の場合、国民保険の対象者に特定検診を義務づけられておりますが、その目標 値を達成しない場合、ペナルティとして自治体に後期高齢者医療制度の方に余分な支出 を課せられるという仕組みになりました。例えば100万程度の都市で、健診率が達しな かった場合は大体100億円程度のペナルティがかかってくると言われております。退院 促進事業もやはりいわゆるスローガンではなくて、各自治体にどの程度の退院可能者が いて、それに対して一定の自治体の努力義務というものを自治体に課してやっていくと いうことも考えることが必要ではないかと思います。以上でございます。 ○門屋構成員 今のこととも多少関連があるのですが、私は今日の資料が送られてくる 以前から、このことについてはぜひ確認をしたいというふうに思っていたことを今日申 し上げたいというふうに思っておりました。 たまたま今回のテーマが、諸外国のことも 含めて、いわゆる病床が削減されてきたという事例が出てきましたので、大変時宜がよ かったかなというふうに思っているわけですが、それは何かといいますと、1つは、国 に対して質問が1点。それから、最も深い関係のある精神科病院協会、日精看、日精神 保健福祉協会、日本作業療法士協会の方に、御意見というか、御発言をいただければと いうふうに思って御質問をさせていただきます。  私は、1988年に精神保健法に変わったときに大変期待をした一人でありまして、それ は何かといいますと、人権擁護と社会復帰ということになったわけですから、社会復帰 ということは退院促進でありますので、基本的にはたくさんの人が退院し、なおかつベ ッドが減っていくということが始まるのかなと。それは人権ということですから、前回 の広田委員の発言にもありますように、まさに入院している方々の人権、人間性の回復 みたいなところを我々が望むこと、それにかけてきているんだろうというふうに思うわ けです。そこの部分に期待をしたわけですが、結果は御覧のとおりの、病床が増えたと いうことで終わっているわけですね。入院患者も増えたわけであります。  そこのところまで遡る必要はないのですが、実はそれに象徴的に、5年前の平成16 年に決まったこの精神医療の7万 2,000人、あるいは7万 2,000床のベッドの問題、こ れが今、坂元委員が言われましたように、我々からすれば、これが絶対にやるべき政策 というふうに実は思っていたのですけれども、そのことについて、なぜできないのかと いうことを国はどのようにお考えなのか。 あるいは、それぞれの団体はどのようにお考 えなのかを、もしあればお聞かせいただきたいというふうに思います。  実は私、個人的なことで申しわけないのですが、前回の検討会のときには、日本精神 保健福祉協会の会長でもありましたので、会を代表しているとなかなか発言できないと いう立場もあったりして、私自身が今回は個人で参加させていただいたということもあ って、ぜひこのことについて、それぞれの団体が、そういった政策が出てきたこととき に、それに向かって、さあ、行こうじゃないかという団体の中での合意が得られていた のかという程度のことでも構わないんですけれども、それにどんなふうに突き進んでき たかというようなことでも構わないんですが、そのようなことについて質問させていた だきたく思います。 ○樋口座長 それでは、どなたからでも結構です。 ○山根構成員 日本作業療法士協会の代表として参加しています。従来、作業療法は、 日本の精神科医療の中では、慢性で長期在院の患者さんたちの生活機能の維持という形 で、多くの処方がなされてきた歴史的な経過があります。近年の法改正で、入院中心か ら地域生活中心へという方針が出されましたが、皆さん御存じかどうかわかりませんが、 精神科医療における作業療法は、1人の作業療法士が1人以上の助手を伴って1単位25 人、1日に3単位、要するに1人の作業療法士が1日75名の患者さんにリハビリテーシ ョンと称して作業を提供できるとされてきました(1974年の基準)。  この基準では治療としての作業療法を提供できないため、実際には多くの施設で個別 作業療法や小グループ作業療法などが実施されていて、白書における調査などでも1人 の作業療法士が1日に担当している実数は、大体25〜26名から30名弱というのが実状 です。そうした実状に合わない基準の改正のため、早期の退院に向けての作業療法のあ り方など、厚労省にお願いをして、幾つかの改正はしていただきました。しかし、その 改正にむけた活動に際しても、本当にそれでいいのか、自分たちの職場がなくなるぞと いうようなことを、厚労省からではなくて、医療の中からの声ですけれども、言われも しました。  そして、3単位が2単位に、無資格の助手を伴わなくても有資格者だけで作業療法を 行ってよいという改正がなされました。それまでの不備な2点の改正でした。しかし、 改正された別課題であった2点をあわせて、1人の作業療法士は1日2単位、助手を伴 わなくていいと解釈する施設が出てきて、1日50人みなさいといわれるようになり、困 っているという現場からの声が上がっています。急性期で小グループや個別の作業療法 を行い、退院促進を進めている施設がある一方で、1日50人みることを業務として要求 する施設があるのです。1人以上の助手とともに3単位75人みていたのに比べ、改正の はずが解釈によって作業療法士の労働強化、治療の室を下げてしまう結果にもなるわけ ですね。  作業療法士協会としては、入院医療の改正をするとともに、「作業療法5・5(go! go!)計画」と称して、入院医療を充実させながら、今後増える作業療法士については、 できるだけ地域での生活支援に向けようということを組織を挙げてやっております。6 〜7割が医療機関で働いている作業療法士を、医療で5割、地域に5割という方向へと いうものです。 ○樋口座長 ほかにいかがでしょうか。 ○長尾構成員 恐らく日精協が一番の意見をというお話だろうと思うのですけれども、 日精協の立場というのは、これまでもいろいろな冊子として出してきております。現在 の入院に至る状況、長期在院になった理由というようなことについては、前回、第3回 のときに私がプレゼンテーションをさせていただいたとおりでございますので、ある程 度、そういう施策のもとに進んでいった、精神病床も増えていったということはあろう と思いますし、それから、ある面、これは私は一概に否定はしませんが、パターナリズ ムということがあったと思います。それがいいか悪いかということは別としても、そう いう面で、家族の方もなかなか受け入れられない中での精神科病院での入院が長期化し てきているという事実は否めないということは言えると思います。  そういった中で、我々の方も、14年だと思いますが、日精協の中でも、これからの精 神医療のあり方検討会という、似たような名前になっておりますけれども、そういうも のを委員会として立ち上げて、いろいろ検討をしております。その後、15年に基本計画 推進協議会の報告書も出しておりますけれども、第1点のあり方のときの、我々、日精 協の基本方針としても、入院から地域医療へという方向については、これはもちろん掲 げておりますし、適当なその人に応じた療養環境の提供を行っていくというようなこと。  それからもう1つは、これはやはり国・自治体が自らこういった社会復帰施設の類型 をきちんと整備することによって、それは我々は出せる人は出していきたいということ を掲げておるわけで、そういったことが基本として、我々は、その次の推進協議会の報 告書でも、ある程度のそういった類型、前回お示ししました2軸評価、ああいったもの をマスタープラン調査によっても行って、2軸評価のこれぐらいの人たちは現行の社会 復帰施設であれば退院できるであろうとか、もう少し手厚い24時間体制のケアがあれば 退院できるような人たちの施設類型であるとか、そういったものについてはお示しして きたとおりでございます。  その後の身体合併症とか、ADLの低下等々のことについての検討を今ある程度行っ て出してきています。それと、先ほど広田委員も若干言われましたけれども、社会復帰 施設の、今、社会復帰施設は新たにはできていない、精神保健福祉法上のものはなくな ったわけですけれども、社会復帰施設の約7割から8割近くは、恐らく日精協傘下の病 院の関係団体が大体提供しているというのが現実ですよね。これは、やはりそれだけの ことをやってきている部分はあります。ただ、前回もお示ししたように、それでは足り る状況では全くないというのが現状でしょうし、そういったものが本当にきちんと提供 される中で、ベッドがすべからく減るのであれば、我々はそれは何ら問題としていない です。  ただ、退院すれば、その部分はベッドが減るんだということ、これはまた余り短絡に なり過ぎる部分も逆にあるかと。ほかの要因で入院する人の部分も結構ありますから、 ある部分はもちろん減ってくるのは事実でしょうけれども、いろいろな要因がまたそれ にも関わってきますので、そういう日精協としての方向性、方針というものはこれまで も出しております。  それと、先ほど山根構成員が、民間病院では作業療法士が規定限度まで全部やられて いるということは、すべからくそういうふうにとられるようになると非常に困るのです が、例えば、うちの病院でも作業療法士が十数人おりますけれども、平均20人切ってお ります。 ○山根構成員 すべての病院とか、そういう意味じゃなくて、病院そのものも1つの法 のもとにとか、診療報酬の体制のもとにやっているわけですから、ボランティアとして 医療をやるわけじゃないですので、病院そのものの質は高めなければいけませんけれど も、つぶれてしまってはどうにもなりませんから、そういう意味では、どこが責任とい いますよりは、今どういう問題が起きているかということを考えた上で、病院も経営の 仕方、運営の仕方はピンからキリまでございますので、その中で必要なことをきちんと とやれば経営が成り立つし、患者側にとっても、いい入院治療ができるようにというこ とをやはりここでは考えていかなければいけないと思うんです。社会的入院にしろ、い ろいろなものがどこかに責任があるような論議になりかけるというのは、私は少し危な いなと思います。ずいぶんきちんとした医療をなさっているところもありますので、そ れで、我々の団体としても、白書をとりましたら、やはり平均でやると30人ぐらいにな っているんです。ただ、片方で無理なといいますか、不備な制度がありますので、でき るならそこまでやりなさいよという圧力が一部にはあるのも確かです。そういう不整合 なところを少し整備をするということが一番大事だろうと思っております。 ○樋口座長 ほかにはいかがでございましょうか。 ○早川参考人 門屋構成員の方から、1988年まで遡る必要はあるかというようなところ はありましたが、専門職能団体として退院促進が進まない状況をどう考えるかというよ うな御質問であったと思います。日精看としましてといいますか、私の個人的な意見も 入るのですが、やはり精神科看護師としましてはマンパワーの不足というのが一番大き な影響があったかなというふうに感じられます。精神科でいえば精神科特例、その時代 で言えば、一般科では認められていなかった6対1が認められていた時代でもありまし たし、そしてもう1つ、山根構成員の方から診療報酬の話が出ましたが、こういった診 療報酬的な誘導というのも、看護師が地域へなかなか目が向けられなかった。病棟内の ケアで精いっぱいで、なかなか外へ目が向けられなかった時代が長かったのかなという 気がします。  そういった意味では、単位制訪問指導というのが8年ほど前から認められてきまして、 そこから精神科看護師の方も地域へ目が向けられるようになったのかなというふうに感 じております。この単位制訪問指導も算定要件が徐々に緩和されてきておりまして、当 初は3ヶ月の入院を見込める人が1回に限りというのが、回数も増えて、今年度の診療 報酬の改正では、3ヶ月というのも取り払い、患者さんはすべて取れるといったように 算定基準が緩和されてきましたし、御存じのように地域移行の実施加算も今年度から認 められるようになってきました。  そういった流れの中で、当協会としましては、精神科の認定看護師制度というのも1 0年前から立ち上げてきまして、そして、今 150名と人数は少ないのですが、その中に 退院調整、その前まではディスチャージマネジメントというふうに呼んでおりましたが、 退院支援に特化する精神科の認定看護師の要請を今現在も続けている、そういった状況 です。以上です。 ○樋口座長 ほかにはいかがでしょう。 ○福島課長 行政側の立場から一言。第1回の検討会のときに、参考資料で事業の進捗 状況の資料をおつけしましたけれども、この中でも、特に医療に関して言うと、いろい ろな道具だてをそのとき書いてはいるものの、 実際にほとんど検討中という状況になっ てきて、現実的に有効性のある施策がとれてこなかったことは一つある。診療報酬で幾 つかの手当てで、今回の改正では、このビジョンも踏まえた方向性も出てきたとは思い ますけれども、なかなか十分でなっていない。  それから、地域生活を支援する仕組み、これは訪問治療、訪問看護もそうでし、福祉 の方の施策もそうですけれども、自立支援法ができまして、制度的枠組みとしては手当 てがされたわけでけれども、これについても、ほかの障害に比べると立ち遅れが否定で きない。そういう面で、医療に関しては、やはり道具立てをどうしていくのかという問 題が大きな問題になりますし、福祉に関して言うと、その供給量をどれだけ拡大してい けるかということだと思います。  もう1つは、一番大事なことは、全体として我々が本当にどこを目指していくのかと いう、一番目立つべきところのコンセンサスが本当にみんな持っていて、そこへ向かっ てどういう手順を踏んでやっていくかということが一番ポイントではないかと思ってい て、従来はまさに7万人問題だけがクローズアップされていて、 我々は精神保健全体の 本当の意味でのビジョン、それが目指すべきものが本当に持っていたのかというところ が一番の根底にあるんじゃないかと私は思っております。そういう意味で、この会でそ ういう我々が出すべきものをコンセンサスを得て、そこへ向かって、時間的なもの、お 金も相談をしながらやらないといけませんが、少なくとも、我々が目指すべきものがど こにあるのかということもコンセンコサスをぜひ皆さん方のお力をいただきながら、そ の議論を進めていきたいと思っております。 ○寺谷構成員 今の福島課長さんのお話に共感しております。やはり所属ですとか、職 業の異なりを超えて何か共通のビジョンをきちんと持って、そして、それぞれの置かれ た立場の中で、自分たちは一体何ができるかというようなことを出し合って、そして協 力し合うというようなところ、これが精神保健福祉の領域で働く者のすごく楽しいこと だったし、他の領域よりも自分にとっては、もう49年ほど働きましたけれども、すごく いい領域だなというふうに思いました。  ずっとお話を伺ってきまして、もう医療とか福祉とかということではなくて、段階的 に精神科リハビリテーションの中では、既に段階論を踏むというのは、むしろ否定的に 捉えられていまして、入院したらこういうふうにするとか、退院してからこうだではな くて、すべて医療のサービスも,福祉のサービスも両方そろっていて、そして、どちら も選べるようにしておくというようなことじゃなかったのでしょうか。それで精神保健 福祉法というのができたのだと私は解釈していました。だから、精神病院は、入院して から、そして入院後、治療が終わってから福祉のサービスを使うということではなくて。  そのようなところで、どこでも、どの段階でも、自分があるときにはこのサービスを 使って、あるときにはこっちを使ってというようなことで、選択肢を自由に、主体的に 選べるようなシステムをぜひ、精神保健福祉法になったからには、統合したよさを出し ていただきたい。出していただきたいと言ってはいけないんですけど、自分でも出した いと。ですから、地域の中で地域生活支援システムを引いていますけれども、この中に 住民も精神疾患を経験なさった人も、また、そうでない人も、みんなが自分たちの問題 として自分のまちをどうしていくかということを考えていかれるようにシステムを引い ていくというところが福祉に携わっている者の責務だというふうに思います。  だから、そんなところで、私、広田さんとも決して対立したり何かすることはないん ですけれども、よく学生を泊まりにやらせたり何かして御指導いただいていますけれど も、ときどき「謝りなさい」とかというような、そういうことではないと私は思うんで す。そういう私たち自身の社会を、私たちみんながどんなふうにしてつくってきたのか ということをもう一回振り返って、そして私たち自身が、 広田さんも私も長尾先生も一 緒になって、どういう私たち自身の社会をつくっていこうかというところがここのテー ブルだというふうに思っているんです。だから、そういう意味で、私はいろいろとオー ストラリアも、アメリカも、イギリスも、イギリスは1970年代に行きましたけれども、 現在のイギリスは国立のリングルトン病院が閉院になったり、そして、ソーシャルワー カーがコミュニティオフィスを開業するという時代を迎えています。かなりコミュニテ ィ・ソーシャルワーカーが力を持って人々の健康に貢献していくというようなシステム が引かれていますけれども、でも、ソーシャルワーカーが力があるのではなくて、みん なが、どのような生活と人生を送れるような我が町にしていこうかというようなことの コンセンサスがあるから、そこで自分がどういうふうにできるか。それで、 看護師さん が処方権を一定権限付与されるとか、いろいろなことがございますよね。そんなことを ここで考えて、そして提案していけば、国民の皆さんも、心のバリアフリーに関しては ものすごく関心があるんです。いろいろな層の人たちが。  ここでやっているのが、リハビリテーションの手法と、もう1つは、国民の理解促進、 啓発というふうに考えていますけれども、私は啓発という単なるそんなものじゃないと 私は思います。心のバリアフリーというのは、1つのシステムをつくることを訴えてい るのだし、そして、各々の職制にある者たちに必要な支援技能や支援概念を打ち立てろ ということを言っているのだと思うんです、心のバリアフリーの8本というのは。そう いうふうに見れば、あのバリアフリー宣言というのは、ものすごく国民が共通して持て る精神保健福祉、医療も含めて、そういう共通する目標概念だったり、地域生活支援シ ステムの構築への理念だというふうに私は思っているんですけど、この辺に関して意見 をいただきたい。私は、どのような意見があっても、これであと残った人生を全うした いなというふうに思っています。それには、ピアサポートですとかというふうにわざわ ざ今呼んでいますけれども、人間が自分の潜在する力を持って他者を支援するなんてい うのは当たり前の話なんですから、そういうことが誰も排除することなく自然に行える ようなシステム、地域というものができるといいなと思っております。 ○広田構成員 寺谷さん、ごめんなさいね。立場の違いだから。精神医療サバイバーだ から。精神医療の被害者だから、当事者はここに1人しかいないから。多くの仲間が精 神医療で人質になっているんです。私だからつぶれないで次回も来るけれども、人によ っては、そういう意見を言われると疲れちゃって来れなくなってしまう。寺谷さんのよ うな地域の支援者、長尾さんが私に後で言うならばわかるけど、寺谷さんのように仲間 であり、地域の支援者と、私、「支援者」という言葉は嫌いなんですけど、そういう人 までが言うと、本当に当事者は出れなくなってしまうということです。  それと、この前、安田委員が中村局長にお願いしていた、行政に対して1本通達を出 してくれと。私もそう思います。例えば神奈川県内でも、社会資源をつくろうとしたと きに、反対運動があって、新聞社は地域の中に1人の住民として精神障害者が住むのは 当たり前だと。だから、記事にしたい。広田さん、精神医療サバイバーとしてコメント が欲しいと。オーケーを出しました。そうしましたら、一番嫌がったのは実は行政なん です。  そういう意味で、私は5年前から御近所フォーラムというのをやって、今年は厚労省 の鎌倉君という人に来てもらって、八代英太さんにも漫談のような話をしてもらって、 殺人の方もサポートしていますし、留置所にも面会に行ったり、いろいろなことをやっ ています。それで、前回も言ったけれども、うちに来る人で世の中からいわゆる不審者 と思われるような人がうちの周りを歩いているけど、私自身が不審者ですから、みんな が「おたくに来ている人?」と言うと、「そうですよ。会ったら、やさしく声をかけて くださいね」ということで、私自身がまちを変えています。それで、安田委員が言った 行政に出していただきたいというのは、多くの民間病院の経営者にも会ってお話を伺っ ていますが、私、さっき長尾委員に間違えてもらって困るのは、何も民間病院が社会復 帰施設をつくってください、カンパしてくださいという話じゃないんです。民間がお金 がなくてつくりづらいから寄附をしてくださいという話で、間違っても、病院のある敷 地内とか、病棟転換はだめですよと前に話しているんですけど、そういうふうな民間病 院が敷地の中につくらざるを得ない状況が過去においてあった。いろいろな周辺の反対 などにあって、つくるエネルギーよりも、反対する人に対して説明するエネルギーの方 がたくさんあったという時代がありました。でも、これからは違うということで、前回 の通達を出していただきたいということです。寺谷さん、エイズだって、ハンセン病だ って、みんな謝罪してきたじゃないですか。そのときの謝罪というのは、私にお金をく ださいという謝罪ではなくて、今、人質に取られている人を一日も早く出していただき たい。そのために、国は退院するお金を出し、日精協や、または上ノ山さんみたいに、 日精協に昔入っていたかどうか知りませんけど、病院に勤めていたけれども、病院の勤 務医は疲れちゃうから、地域でいわゆる開院して、ちょっと楽になってクリニックや診 療所をやりたいという医者もたくさんいらっしゃるわけです。そういう人に寄附してい ただいて、地域でいろいろな社会資源ができてほしいということで、何もかも精神病院 にやっていただきたいと言ったわけではございませんので、よろしくお願いします。 ○寺谷構成員 座長さん、ちょっとよろしいですか。 ○樋口座長 では、手短に。 ○寺谷構成員 じゃ、30秒で。広田さんに申し上げますけど、2人のやりとりとして皆 さんにお聞していただきたいのではなくて、私は、広田さんが私以外の方たちに謝って くださいとおっしゃるたびに、自分に向けられたものとしてどうしても感じてしまうん です。自分も精神病院に勤めていましたし、そのときに、働きたいとか、大学へ戻りた いとか、結婚したい、子どもを育てたいという願いを叶えずにどれだけこられたのか、 きたのか。それで、ごめんねという人たちも数えられないぐらいあるんですよ。ですか ら、そういったようなことを一介のPSWであってもすごく思っているんです。そのこ とをどうぞ広田さんもちょっと感じて、そして今、捕らわれ人になっているということ は、精神病院の人たちが謝れば済むという、私、そんな小さなことじゃないと思うんで す。やはりどこかで私自身の社会をどんなふうにつくっていくのかということの将来の、 国民を代表して、ここの場だったらここの場でいいと思うんですけど、そのビジョンを 出していくということを抜きに謝ってもどうにもならないと私は思ってしまう。ごめん。 後でね。どうもありがとうございました。 ○広田構成員 謝ってビジョン。 ○真壁参考人 家族の立場からお話しします。退院促進の7万 2,000人のことがここで かなり話題になっていますけれども、私は、退院促進だけに目を向けていると、今、地 域で生活はしているけれども、ほとんど家族が面倒をみている人たちが、もし家族が高 齢とかで亡くなったりして支援できなくなったらどこにいくのかなと、そこもすごく心 配なんです。それで、先ほどから病床を少なくしようという話がありますけれども、や はり入院をする人を少なくする、入院しなくても何とか地域でやり過ごせるという、そ ういうふうにつくっていかなければいけないんじゃないかというふうに思うんです。  今週の日曜日、イギリスの方のお話を聞いたんですけれども、精神科医も臨床心理士 も看護師さんも、みんな家庭を訪問して医療をしたり相談をしたりするというお話を聞 いて、何とすばらしいんだろうというふうに私は感激してしまったんです。やはり今、 私たち家族が困っているのは、本当に状態が悪くなった家族をどうやって病院に連れて 行こうかと、それですごく悩んで、お金を使ったりして民間の移送の方にお願いしたり、 そういうことをしているんですけれども、やはり具合の悪い人たちのところに来てほし い、訪問してほしい。家族の話をちゃんと聞いてほしいということは、すごく家族の要 求なんです。だから、家族支援のことにもぜひ目を向けて、家族が引き取りたがらない とか、そういうことがありましたけれども、やはり家族に対する支援が全然ない中で、 もし具合が悪くなったら入院させる騒動をまたやるのかというふうに家族は引いてしま うんです。ですから、そういうところに地域の医療ということをぜひ考えてほしいし、 先ほど寺谷さんがおっしゃったように、精神の心の健康ということを本当に国民一人一 人が考えなければいけないんじゃないかと思うんです。だから、ただ退院を促進すれば いいかと、そういう問題じゃなくて、国民の心の健康をぜひ考えていく場にしていただ きたいと思います。以上です。 ○樋口座長 ありがとうございました。それでは、せっかく参考人が来ていらっしゃる ので、一言発言をしていただいて、その後、時間のところで。 ○木太参考人 精神保健福祉士協会の木太でございます。話が少し戻ってしまうかもし れませんが、先ほど門屋構成員から協会としての見解を求められておりましたので、元 会長から御指摘をいただいておりますけれども、協会自体が四半世紀前に協会の活動の 基本方針を提示しています。それは、精神障害者の社会的復権、それと福祉のための社 会的・専門的活動を進めていくというのが25年以上前に基本方針として示してきたもの です。その後、精神保健法が成立して、ちょうど10年後に精神保健福祉士の資格が誕生 しておりますけれども、その当時も、やはり精神障害者の社会復帰が喫緊の課題である ということで私たちの資格ができたわけですけれども、更に10年たちまして、現状でど うかというところを見てみますと、実際には資格者は増えて、現場で従事する精神保健 福祉士もずいぶん増えてきているとは思いますけれども、私たちが掲げた社会的復権と いうのは実際には果たせていない。そうである以上、なかなか基本方針を変更するとい うこともできずにいるのが現状だと思います。  新しい資格ができて、従事する人が増えて、結果として、やはり評価の対象にされて こなければいけない部分があると思いますので、資格をつくったことが悪いということ も決してないと思いますし、そこに従事した人が増えてきたことは喜ばしいことでもあ ると思うのですが、何せ結果が残念ながら今は出ていないというところは十分に考えて いかなければいけないことだろうと思います。  1つは、やはりシステムとして、例えば精神保健福祉士、ソーシャルワーカーが活躍 できる場が本当に提供されているのだろうかといったところ。私たちの協会の中でも、 医療機関に所属する精神保健福祉士が5割程度ということになっております。医療機関 の中での精神保健福祉士の役割は必ずあると思うのですけれども、果たして個々の医療 機関の中で、本来期待されている私たちの役割が果たせるような業務になっているのか といったあたりも点検をしていかなければいけないというふうに感じております。以上 です。 ○樋口座長 ありがとうございました。それでは、尾上構成員。 ○尾上構成員 門屋構成員の意見というのは、たぶん医療というところではあると思う のですが、私はその受け皿としての社会復帰施設という立場で、先ほど長尾構成員から も出ていたのですけれども、その立場から退院促進というところに関して、なぜ効果と して上がらなかったのかという、もう片一方は、効果として上がっている部分はあるけ れども、数値として出せなかったという声もあるんですけれども、1つは、社会復帰施 設は20年になって、今回の法改正で削除されたわけですけれども、社会復帰施設という のは、もともと医療と地域の中間的な役割を果たしてきたというところであります。こ の中間という役割は他の分野にはないような役割ではあったかなというふうに考えてお ります。  この社会復帰施設が果たしてきた中間という役割は、なかなか退院のイメージができ ない、退院する上でも、入院中からどうしていいのかわからない。その中で、前回、田 尾構成員からもあったように、入院中からの利用という形で、そこができたわけです。 入院中からの利用がなぜいいかというと、やはりイメージができる。それと、その中で 安心感が得られる。自分たちがどういう生活をしたら良いのか?ということを入院中か らイメージできるような場であるというところでございます。更に、ここもやはり必要 だなと思うのは、「安心して失敗が繰り返せる空間」であること。そういうものが提供 できるのが社会復帰施設である。我々が常に思っていたのは、安心感の提供というとこ ろであります。ただ、そもそも社会復帰施設は、先ほどの言葉の中でいろいろ議論にも ありましたように、入院中の方が社会参加をするための施設であった。ただ、ふたをあ けてみると、地域では中でも社会資源が本当に必要な方に行き届いておらず、私は、生 活支援センターにおりましたが、生活支援センターをオープンしてみると、実は制度を 知らない方が多かった。情報として全然知らなかった。年金の制度であれ、ホームヘル プの制度であれ、いろいろな周知はしているんだけれども、そういうものは知らなかっ た。そういう状況で情報提供という形が多かった。そういう方々が多い中で、やはりそ の方々に対してどうサービスを提供していくか。そこできめ細かなサービスが必要にな ってくるということであり、そういったところに時間をかけて丁寧に支援していくとい うことが必要なのではないかと考えます。  そこでやはり問題となったのは、マンパワー確保というところがやはり非常に問題で あったことと、やはりシステムですよね。実際のところ、社会復帰施設はあったんだけ れども、地域の中に地域生活支援という、地域生活をしていく上でのシステムがなかっ た。それに対して、今まさに必要なのがケアマネジメントの部分です。確かに今、導入 したとは言っているんですけれども、あくまであれはケアマネジメントとしての手法で あります。本来は地域生活支援は、ケアマネジメントがしっかりと確立されてくるべき ではないかと思います。その役割が社会復帰施設にはあったんだと思うんです。  その成果として、社会、いわゆる地域に出て、今まさに安心して生活をしている方々 というのはかなりいると思います。またこの調査の中では、入院されて、退院された後 の姿というか、後の生活はどうだったのかというところが出てきてはいないのですけれ ども、まさに生活が今はどうなのというところがやはり出ていないな。そこら辺をきち んと調査していくことも必要。入院し、退院し、そして生活がどうなのというところ、 今本当に安心なの、幸せなのかと。そもそも福祉というところは、先ほど寺谷構成員も 言われていたのですが、そもそも福祉というのは「幸せなり豊かに」なるということで あります。でも、それは誰のためというと、やはりそれを必要としている人たちのため であって、その制度が有効に活用されなければいけないというところがあるのかなと、 と思います。  社会復帰施設をやっていながら思うのは、やはり制度とか施策はできてくるんだけれ ども、その制度、施策がなかなか状況、場によって使えないことがあって、障壁になる ことがすごくあったりする。そういうことを改善していくことが必要であり、そこにケ アマネジメントという部分が改めて必要だろうと思います。我々のやってきた部分と本 当は数値に出さなければいけない。この場で、こういう形で出ますよと出さなければい けないところが出ないというところは我々の責任ではあるんですけれども、でも、そう いった部分を含めて、ここの中でそういう積み重ねをしていきたいと思っております。 以上です。 ○樋口座長 それでは、ちょっと時間が迫っておりますので、どうしても発言したいお 二方。では、今日一度も発言をされていない方から優先的にいきます。では、町野構成 員。 ○町野構成員 済みません、優先的な順位を与えてもらって大したことを言わなかった ら非常に具合が悪いんですが。5回にわたって実は一言も発言していなくて、皆さんの お話を全部聞かせいただいて、非常に重い話で、ありがとうございます。この問題はか なり前からあったので、私が一番知っていたのは精神衛生法の改正、精神保健福祉法で すが、あのとき、やはり患者の人権侵害にプラスしてもう1つ、日本は収容者列島であ るということを言われて、それでやはり開放及び地域精神医療へのソレというのがあっ たわけです。しかし、それがなかなか進まない。非常に覚えておりますのは、ICJの フォローアップミッションのうちの一人の法律家が私のところに来たときに、その後で、 どうして日本では閉じ込めておくのかとずっと言っていたのですけれども、最終的な彼 女のレポートというのは、 例えば彼女はアメリカ人ですが、アメリカでは入院させるの は悪だと思っている、日本人は入院させるのは善だと思っている、その相違がある。し かし、昔はアメリカが正しいと思っていたけれども、日本が必ずしも悪であるとまでは 言い切れないんじゃないかというようなレポートを出した記憶があります。  しかし、恐らくは、それももしかしたらあるのかもしれませんけれども、その背景に あるのは、やはり日本の場合は、何といってもパターナリスティックな医療があります し、私は、それは直ちに悪いこととは思わない。しかし、より問題なのは、失敗をする ということを多くの医療者とか、そういう人たちは恐れるわけですね。出してしまった ときに、患者の状態が悪くなったらどうなるのだろうかと。そして、どこかで事故を起 こしたときに誰が責任を負うのだろうか。やはりそのことが先行するということはある ように思います。外国等いろいろなところに行きますと、かなり大胆な運用の仕方をし ているというところがあるようです。もちろん、その中には、後は知らないというよう なものも少しあるのかもしれませんけれども、それ以上に、ある程度の冒険とか、やっ てみなければ物事は進まないという意識があるだろうと私は思いますから、やはり日本 も将来はそっちの方にいかなければいけないだろうとは思うわけです。  しかし、そうは言っても、今出したら危なくてしようがない。前のときに、つまり精 神衛生法の改正のときに、やはり多くの日本の医療者が心配したのは、アメリカのよう に非施設化運動を行って、そのために、とにかく後先なくみんな出してしまって、ああ いうことになってしまったじゃないか。 あの失敗は日本では絶対繰り返してはいけない と思った。私は、これは正しい結論だろうと思います。したがいまして、将来進めてい かなければいけないことはみんな一致しているのですけれども、そのために無理やり、 例えば精神病床を削減するとか、早く出した方が有利なとか、そういうようなやり方を やるのではなくて、まず出しても大丈夫だという安心感といいますか、地域精神医療の 体制を確立する、まずそれが先じゃないかと私は今まで伺っていてそのように思いまし た。  そこのところで今、何が一番必要とされているのかというのがまだ私はちょっとわか らないところがあります。先ほどの御意見の中にありましたとおり、家族への支援とい うのは昔から言われていたことで、これは恐らくはかなり大きな要因じゃないかと私は 思いますけれども、そういうものとか、そういうことについて幾つかの研究的なデータ というのを私は知りたいというふうに思います。どうも失礼いたしました。 ○樋口座長 それでは、最後に、まだ発言を一度もされていないのが品川構成員で、品 川構成員を最後にさせていただきます。 ○品川構成員 ありがとうございます。本当に皆さんの御意見に聞き入っていたんです けど、データ的に見て、条件が整えば50%の方が地域に出てこられるというふうなデー タを見て、地域の最終受け皿の福祉の従事者の私としては、なぜできないのかなと。地 域にない資源はないはずなんです。 ですから、病院側の方がいろいろ考えていらっしゃ ることと、受け入れ側の最終の福祉の地域が考えているところの相違というのがすごく あるように思いますので、門屋構成員がおっしゃったように、本当に医療と福祉の現場 とが話し合うような、そういった議論できるような場があれば、できないことはないと いうふうに、医療のことは本当に医療にお任せしないといけないんですけど、地域側と しては、できるんじゃないかというふうな思いがいたしました。ありがとうございます。 ○樋口座長 ありがとうございました。まだまだ議論は尽きない、御発言はたくさんい らっしゃるんですが。 ○門屋構成員 会の持ち方について。もう話が終わった後のこととして取り上げていた だければ、1点だけ申し上げたいと思っているのですが、先ほど私の質問で、福島課長 が、ここでは将来ビジョンについてのコンセンサスを得ていただければと。私は、その お話をいただいて大変ありがたく感じました。だとすると、今の話にもありましたが、 過去にもこういうデータは実はその時点その時点で調査が行われ、出されてきました。 私は、現状を把握する共通認識を持つという作業はもうそろそろよろしいのではないか というふうに実は思っておりまして、むしろ、こういう研究がたくさんあることは承知 しておりますし、それ全部を勉強しているわけではありませんが、むしろビジョンを、 我々は今までの現状の中でどのように描いているのかといったことについて、議論でき る会をできる限り早く立ち上げていただきたいというか、 進めていただきたいというの を希望として申し上げて発言を終わります。 ○樋口座長 ありがとうございます。その点につきましては、次回以降の会の進め方を これからまた御案内いたしますので、その中であると思います。 ○長尾構成員 1つだけ提案ですが、今、福祉の状況とか、医療のこととか、いろいろ 出ているのですが、やはり精神は医療も福祉も両方がきちんと両輪でそろっていかなけ ればいけないということは思っていますし、その面で、医療と福祉の両面にそういう見 識を持った人のヒアリングとか、意見を聞きたいということもありますので、ぜひそう いうこともお願いしたいと思います。 ○樋口座長 その点も事務局とこれから予定をさせていただきたいと思っております。  それでは、今後の進め方も含めて、事務局の方から、あるいは福島課長、何かござい ますか。 ○野崎課長補佐 門屋構成員の方から御意見がございました、これからのビジョンとい うことでございますが、実はこの検討会は4回までを中心に、これまでフォローアップ ということでさせていただいておりましたが、また後ほど御案内いたしますけれども、 次回、次々回にかけまして、今後の議論を進めていく上での論点整理ということで提示 をさせていただきたいと思っております。要は、これまで議論いただいたのは、論点整 理、あるいは年末の中間まとめを行うに当たって、一度フォローアップをして、それで いろいろな御意見をいただいて、目指すべき方向は、論点整理の段階でもできる限り我々 として思うところを、これまでの御意見も踏まえまして書いていきたいと思っておりま すので、次回以降のテーマとさせていただきたいと思います。  それと、長尾構成員から御意見がございましたヒアリングにつきましても、7月ぐら いまでは今日程調整をお願いしていますが、7月ぐらいまでは大体日程が決まっている のですが、8月以降どういうふうに持つのか。そのあたりもまだ整理しているところで ございますので、場合によっては、ヒアリングの機会を議論と並行して設けるとか、あ るいは別に設けるとか、そこもちょっと検討させていただきたいと思います。  引き続きまして、次回以降の検討会でございますが、次回につきましては、今申し上 げましたように、これまで第5回までの検討会でいただいた御意見を踏まえまして、論 点を事務局で整理をいたしまして御議論いただく予定としております。なお、日程につ きましては、7月16日、水曜時の15時からを予定しております。正式な御案内は後日 お送りさせていただきますので、よろしくお願いいたします。  事務局からは以上でございます。 ○樋口座長 ありがとうございました。 ○中島構成員 論点整理のところで一言だけ。今日の議題に出ていたのですけれども、 アンチスティグマ、特に偏見の除去活動をいかにやっていくかというところは今日はほ とんど議論されていませんが、実際には地域できちんとした医療・福祉・保健をやって いくのと偏見除去活動を有効に進めるということは表裏一体ですから、ぜひこれを甘く 軽くしないで、重みをもたせてまとめていただきたいと思います。よろしくお願いしま す。 ○樋口座長 もうこれでいっぱいいっぱいでございますので、次回以降またいろいろ御 意見をちょうだいさせていただこうということで、本日はこれで第5回目の検討会を終 了させていただきたいと思います。次回以降、論点整理ということで、いよいよ先に向 かってのディスカッションということになっていくと思います。  どうもお疲れさまでございました。 (了) 【照会先】  厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部  精神・障害保健課企画法令係  電話:03-5253-1111(内線3055、2297)