08/06/18 「安心と希望の医療確保ビジョン」第10回会議議事録 「安心と希望の医療確保ビジョン」第10回会議   日時 平成20年6月18日(水)      17:00〜   場所 厚労省専用第22会議室(18階) ○ 小野看護職員確保対策官  ただいまより、「安心と希望の医療確保ビジョン」第10回会議を開催いたします。本日は、ご多  忙のところご参集いただきまして、誠にありがとうございます。  冒頭、大臣、一言ご挨拶をよろしくお願いいたします。 ○ 舛添大臣  今日は、「安心と希望の医療確保ビジョン(案)」がお手元にありますが、こういう形で最終的  なまとめができると思います。この間、委員の先生方、各地を訪れたりヒアリングにご協力して  いただいた皆さん方に感謝を申し上げます。  ちょうどこのビジョンの会議と前後しまして、骨太の方針を決めるということで、来年度予算編  成に向けて、そういう政治的な段階になっておりましたので、この数日は、その点についての大  臣間の折衝、総理との話合いというようなことがありました。  いま、まだ最終案ではありませんが、骨太の方針の素案の中で、まず無駄を廃す、政策の手直し  をすることによって財源を生み出していく。それとともに、やはり社会保障については、必要な  財源はきちんと確保するのだということが書かれるような形で、一応の決着を見ています。  そういう中で、このビジョンがこれからの新しい医療体制の構築に向かって、一つの方向づけが  できるものと確信しておりますので、今日は、この最終案について意見をいただいて、広くそれ  を世に問い、最終的には予算の裏付けを得て、政策の形で実現したいと思っています。おそらく  今日は最終回になると思いますが、よろしくお願いいたしますとともに、これまでのご努力に感  謝申し上げます。どうもありがとうございます。 ○ 小野看護職員確保対策官  ありがとうございました。  議事に入らせていただきます。本日は、「安心と希望の医療確保ビジョン(案)」について議論  をお願いしたいと思います。事務局よりご説明を申し上げます。 ○ 二川総務課長  カラー刷りの「安心と希望の医療確保ビジョン(案)」についてご説明申し上げます。事前にお  読みいただいているかと思いますので、概略だけご説明申し上げます。  1頁をお開きいただきますと、「はじめに」ということです。ここには今回のビジョンの原則を  2つ掲げています。段落が少し落ちているところで、1つ目が「政府・厚生労働省に権限を拡大  せず、現場・地域のイニシアチブを第一とする」ということで、今回のビジョンの作成において  も、現場の方々からのヒアリングを中心に行ってきました。2つ目が「改革努力を怠らない」と  いうことです。  2頁の中ほどの段落で、「医療は、生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし」といったところが  あります。「治療(「治す」)のみならず」「人々の生活を『支える』」ということについても、  「はじめに」のところで述べています。また、下のほうの緑色で囲んだところがありますが、5  本柱だったのですが、5本よりも3本に集約したほうがよいというご意見でしたので3本にさせ  ていただきました。1つ目が「医療従事者等の数と役割」、2つ目が「地域で支える医療の推進」  3つ目が「医療従事者と患者・家族の協働の推進」としています。  3頁が「具体的な政策」で、「医療従事者等の数と役割」です。その中の1番目が医師数の増加  で、医師数について、「医師養成数の増加」と最初に書いてあります。この点については、いち  ばん下の段落、「医学部の定員については」とありますとおり、平成9年の閣議決定では、医学  部定員の削減に取り組むとされていたわけです。既に一昨年、昨年と医師養成を増やしているわ  けですが、これはあくまで前倒しという方針の下での増員が可能になっています。今回、現下の  医師不足の状況にかんがみ、従来の閣議決定に代えて、医師養成数を増化させるとしています。  3頁のいちばん下から、コメディカルの雇用数の増加に触れています。4頁に、医師の中でも、  総合的な診療能力を持つ医師の育成を支援すると書いてあります。エのところに、臨床研修制度  の見直しということで、医師不足問題がより深刻な診療科や地域医療への貢献を行う臨床研修病  院等を積極的に評価するとともに卒前教育や専門医制度との連携を深める。また、研修医の受入  れ数の適正化を図るとしています。歯科医師の養成についても、適正な需給について検討し、歯  科医師の活用策についても検討するとしています。  4頁の下のほうで、医師の数ではなくて勤務環境について、まず女性医師の問題です。5頁の6  行目あたりですが、「具体的には」ということで、「短時間正社員制度」の導入・普及を打ち出  しています。併せて、従来からの延長上になりますが、院内保育所の整備や充実、復職研修の充  実といった記載をしています。医師の多様な勤務形態ということで、医師のワーク・ライフ・バ  ランス等に配慮して、2行目ですが、例えば、公務員である医師を含めて、週のうち数日は地方  の医療機関で勤務するなど、そういった多様な勤務形態を導入していこうと書いてあります。そ  れと併せて、チーム医療の徹底、交替勤務制の導入促進も書いてあります。  (3)「診療科のバランスの改善等」ですが、この点については、医師の職業選択の自由に配慮  しつつ、産科・小児科・救急科・外科等について、現場・地域の意見を重視し、増員のための方  策を自治体とともに検討するとしています。最後の行に、麻酔科のことが書いてありますが、麻  酔科については、現在、国が許可制という形にしていますが、6頁の最初の行にありますように、  「規制緩和を行う」と書いています。医療法標準についても、実態をもう少し合わせていきたい  ということで見直すことを打ち出しています。  6頁の(4)で、職種間の協働、いろいろな職種の方が共に働いてチーム医療を充実させていく  点です。その1点目が、医師と看護職との協働の充実で、まず最初に、「役割分担」で、各職種  に認められている業務範囲の下での業務をきちっとやっていただく。できることをちゃんとやっ  ていただくというようなことです。それと併せて、専門看護師、認定看護師の取得を促進する施  策を講じると書いてあります。6頁の下のほうに、看護基礎教育の内容、就労後の研修の充実と  いったことも書いてあります。  6頁の下から3行目、助産師ですが、助産師については、医師との連携の下で正常産を自ら行う  ように院内助産所・助産師外来の普及等を図るということが書いてあります。7頁の1行目、助  産師業務に従事する助産師の数を増やすと書いてあります。  それ以外に、医師と歯科医師、薬剤師等ということで、歯科医師、薬剤師とのチーム医療の徹底  といったことが書いてあります。「医師とコメディカルの協働の充実」で、その他の臨床検査技  師、工学技士等のチーム医療についても触れています。  7頁のエですが、「医師・看護職と看護補助・メディカルクラーク等との協働の充実」で、看護  職、介護職との協働を進める。また、メディカルクラークについても、役割分担を推進するとと  もに、資質向上の方策について検討するとしています。いちばん下の段で、医師等と患者側のコ  ミュニケーションの仲立ちをし、十分な話合いの機会を確保するといった人材、そういった育成  も必要だとしています。  8頁、大きな2点目、「地域で支える医療の推進」で、この項目は、1点目が救急医療、2点目  が地域完結型医療、3点目が在宅医療の推進、4点目が地域医療と遠隔医療、これは地域医療と  僻地のことを想定したわけですが、一応この4点が書いてあります。  1点目が「救急医療」ですが、8頁の最初の段落にありますように、地域全体でトリアージを行  うことができるように効率的に振り分ける体制を整備する。カッコ書きで、(管制塔機能を担う  医療機関の整備・人材の育成)と書いてあります。2つ目の段落の最後のほうに、「各医療機関  においては、通常業務に加え救急業務を担うことによる医師等の疲弊を防ぐため、交代勤務制を  整備する」。こういった救急医療機関においては、交代勤務制を整備していくと書いてあります。  救急医療のところは、情報開示とかコーディネーターの配置、メディカルコントロール協議会の  開示などが書いてあります。  9頁のイで、夜間・救急利用の適正化で、夜間の軽症患者の適正化についても、普及、啓発に努  めるとか、電話相談事業の拡充などを書いています。  「地域で支える医療」の2点目、「地域完結型医療」の推進ですが、「地域完結型医療」に対す  る言葉としては、「医療機関完結型医療」ですが、一つの医療機関ですべてやるのではなくて、  地域全体の中で医療機関が役割分担をして、患者中心の医療を行っていく、といった考え方です。  10頁は、そういった観点に立って、すでに医療計画が作られつつあるわけですが、そういった観  点を一層進めるということです。  10頁の「在宅医療の推進」ですが、1つ上の医療計画と関連していますが、切れ目のない医療連  携の確保を図る。それと併せて、介護との連携を図るといったことです。具体的な内容で申しま  すと、訪問看護ステーションの規模の拡大、訪問看護ステーションの専門性の深化、居住系施設  における医療ニーズを満たすことを進めるといったことが書いてあります。下から2行目、薬局  の夜間・休日の対応その他と、薬局の地域における役割も書いてあります。歯科医療についても、  11頁に触れています。  11頁の(4)、僻地を想定したわけですが、「地域医療の充実・遠隔医療の推進」で、医師等が  地域医療に自ら進んで従事するための方策の検討を進めるとしています。ただ、遠隔医療につい  ても、情報通信機器の整備等を行って、一層の推進を図ると書いてあります。  11頁、大きな3点目、「医療者と患者・家族の協働の推進」では、相互理解の必要性が1点目で、  12頁に、医療側もプロフェッショナリズムとして、そういった説明をきちっとしていくとともに、  患者側は、リスクや不確実性が伴うといった医療の限界への理解などをしていくことが必要だと  しています。  2点目として、「医療の公共性に関する認識」で、医療は、医療従事者は、自身が公共性の高い  存在であることを自覚し、地域の医療ニーズを把握して、生涯通して医師としての水準の向上に  努めると。医療従事者側の公共性に対する認識と、一方、患者サイドにおいても、自身の健康管  理に努めるとともに、安易な時間外受診(いわゆる「コンビニ受診」)などを行うと医療機関の  負担を不必要に増加させるということを書いて、そういったことについての意識を高めていくこ  とが必要だと書いてあります。  最後になりますが、患者や家族の医療に関する理解の支援」で、13頁の最後の段、医療の公共性  や不確実性に関する認識の普及、医療従事者と患者・家族等国民との間の相互理解の推進等を行  うと。そういう例として、例えば、辻本先生の所で実際にやっておられるところを活用させてい  ただきましたが、「患者塾」とか「病院探検隊」など、とにかく病院職員との懇談会の開催を行  う市民活動等への積極的な支援、あるいは市民への情報提供を行うといったことを書いています。  最後の3行は、学校教育における医療に関する教育の必要性、普及の必要性が書いてあります。  最後の14頁は、「医療のこれからの方向性」で、これまでは病気を治すことに主眼を置く「治す  医療」が中心でしたが、今後においては、家族の生活を医療を通じて支援していく「支える医療」  という発想が一層求められると書いてあります。最後の段落に、「治す医療」をやめるわけでは  ありませんので、「治す医療」から「治し支える医療」というふうな形にしていくということを、  最後の方向性のところに述べています。  簡単ですが、以上です。 ○小野看護職員確保対策官  それではディスカッションに入らせていただきます。どなたからでもご発言をお願いできたらと  思います。よろしくお願いします。 ○西川副大臣  先生方、どうぞ。 ○ 野中委員  昨日からだいぶ医師数のことが脚光を浴びています。私の現場での感覚では医師数だけではなく  て、医療あるいは介護に携わる人々の数が確保できない。そのため医療や介護を必要とする人へ  のサービスの質を担保することが困難と認識しております。その提供されるサービスの質を評価  する部分が、不足していたと思います。当然それらの評価は現場に任されていることと認識をし  ておりますが、今まで医療や介護に関わってきた私としては、課題と思っています。  やはり患者さんに提供される介護とか医療の質を担保する大事な方法として、私は前回からずっ  と話していますが、やはり連携が大事です。つまり現場で多職種が連携して、多くの人の目が入  るから、実は医療や介護の質が評価されます。そのためにも、やはり現場に多職種の人々が適切  に配置される必要があります。つまり医師だけではなくて、多職種の人たちの配置も必要と思い  ます。現状では医療費や介護費用があまりに抑制された結果、現場に医師をはじめとするそうい  う多職種の人々がいない状況があると思います。  このような現場の多職種の人々が減らされること、あるいはその費用が減らされることは、やむ  なく病気や障害を抱えた人たちの療養生活が阻害されるとの認識をもって、是非これらの費用を  考えていただきたいと思います。  少し細かい話になりますが、介護保険では要介護認定が必要です。この要介護認定が再びいろい  ろ変更される予定のようですが、その要介護度によって費用の上限額が設定されるわけです。そ  して、その費用で適切なサービスが提供されるためにはいわゆるケアマネージメントが大事なの  ですが、そのケアマネージメントに対しての評価が低い。そのケアマネジメントにおいても、実  は多職種連携が大事なのです。是非そういう視点でもう一回医師数とか、医療従事者数や介護従  事者数を検討していただきたい。特に後期高齢者も含めて、医療を必要とする人たちに対して提  供されるサービスの質の担保につながることを改めて認識する必要があります。是非、この報告  書から、そういうことを感じ取っていただけたらと思います。 ○西川副大臣  矢崎先生、いいですか。医師数のほうは、ちょっと先生の。 ○ 矢崎委員  養成数の増加ですが、私も前から閣議見直しの時期にきているということで、それについて養成  数を増加するということに関しては、反対ではなくて、慎重論を言ったわけです。ただ、医師養  成数の増加については、大臣が、これは政治的に決着をつける問題である、というご発言があっ  たので、私はこれ以上申し上げることはございませんが、医学部の大幅定員増によって、医学教  育の環境が崩壊して、現場が混乱してしまわないよう格段のご配慮をよろしくお願いします、と  いうことをまた申し上げたいと思います。  それから、数だけでなくて、地方の病院勤務医が増えるような方向の工夫も必要ではないかと思  いますが、その点もよろしくお願いしたい。  それから、野中委員が言われたように、少子高齢化に向けて、私は看護師不足も将来は深刻にな  るのではないかと存じますので、この点についても、ご留意くださるようにお願いしたいと思っ  ております。 ○ 辻本委員  お医者さんが増えるということで、私たち患者、国民が安全で安心、納得に近づける、非常にあ  りがたいことと思っているその一方で、数が増えることで、もしや質の低下というような、あっ  てはならないことが起きては悲しいと思います。やはり、私たちは尊敬に値するお医者さんとの  出会いということを1人ひとりが心から願っておりますので、そこに値するというような倫理観  というのでしょうか、人間的な成長ということも含めて、教育者の方々は改めて身を引き締める  思いで、考えていただきたいと思います。  こうしたビジョンの議論をしているこの間にも、国民、患者を不安におとしめるような悲しい医  療に関するニュースも入ってきております。そういった意味においては、ここで理想だけを語っ  ていても、しょうがない。やはり現実の現場の1人ひとり向き合うところに、確かな安全と安心  と納得というものが確立できることを、国を挙げ、そして国民の私たちみんなも協働するという  ことを、改めてその必要性を感じています。  そういう意味で、患者教育はもちろん、医療者教育というところをしっかりと踏まえていただき  たい、ということを改めてお願いしたいという思いでございます。 ○西川副大臣  ありがとうございます。いいですか、政務官。 ○ 松浪政務官  先生方、本当にありがとうございました。また、医政局の担当者の皆さんも大変なご努力をいた  だいたことに感謝を申し上げます。が、先生方のいまのお話を聞いていて、最終日なのに高揚し  たものがないなというのが私の実感であります。正直申し上げて、我々政治家は、酒の席以外は  何でも政策はずばずば語れということで、歯に衣着せずに申し上げますが、やはり議論不足の部  分があると思います。決して、今回の医師数の問題について、アドバイザーの先生方と、そして  私ども副大臣、政務官、それから大臣の間にも様々な考えの違いというのが収斂されていないの  ではないか、というのが私の感想であります。今後、私が必要だと思いますのは、もっとシミュ  レーションというか、将来の展望というのが必要だろうと思います。  これからの年齢構成がこれだけ少子高齢化で変わってくる、そうなったときに疾病にはどういう  傾向があり、その疾病の傾向に合わせてどれだけの分野でお医者さんが要るか、また病院と診療  所がいまのままであれば、どのような数でいけばいいのか、そしてまた、これは要綱ですが、面  積的に地理的な要件というものも加味しながら、我々は本当はそれをシミュレーションして、考  えていくべきではなかったかというような思いがございます。先生方は様々な思いがあるでしょ  うが、私が代弁をさせていただいた次第であります。以上です。 ○ 西川副大臣  ありがとうございます。何か偉そうに「まとめ」というような形で申し上げるつもりはないので  すが、やはり途中欠席したり、いろいろなことがあって、先生たちにお越しいただいた中で大変  失礼なこともあったかもしれません。その中で、一貫して、先生方がおっしゃっていたことをず  っとお聞きした中で、ある意味では漠然と整理できないで医療現場の崩壊とか、あらゆるものが  一緒くたにマスコミを通じて報導されてきたきらいがあるのですね。そういう中では、一定の整  理が一応できたのではないかと思います。皆さんの頭の中で、一応、こういう問題、こういう問  題といくつかの柱もありますが、整理はできたのではないかという気がしています。  その中で、整理の仕方も含めた中で、ちょっと意見の違い、それぞれ先生方の思いも、もちろん  大臣の思いも違いがあるなというのは、私自身も少々感じました。その中で、当然これは最後の  政治決着という問題もありますから、その中で私は正直申し上げて、財政の問題をきちんと言わ  ない限り解決しないという思いをずっと持っていました。その中で、最終的に、やや社会保障の  分野ということで、「医療制度は」というお話もいま活字の中では出ていますが、これは我々が  これから本当に戦って、頑張っていかなければいけない分野だと思います。  やはり、全体の国の方向としての地方分権の流れ、それと医療制度というのも無関係ではないと  思います。厚生労働省という省が本当にスタンダードで決めて、それを地域に当てはめると、い  まは以前と違って、都市部と田舎との状況の違いというのはものすごくあるわけです。やはり、  その地域に即した医療が実はいちばん考えられなければいけないのではないかということも、ま  た明確になったような気がしまして、そういう意味では、総合病院ではなくて、地域で当事者の  まさに医師会から、病院から、そして行政のトップが、この問題に真剣に前向きに向き合ったと  いうことが私は大事だと思います。  それを入れた中で、地域で、本当に全体のネットワークの構築と、これはいちばん大事なことだ  と思いまして、そういう方向性がきちんと一応書けたような気はいたしております。その辺がち  ょっと、私自身としては、今回の成果なのではないかという思いがあります。  それともう1つ、これはどうかなという思いも持ちながら、ちょっとNHKの中国の医療の現場のド  キュメンタリーなんかを見ますと、日本の医療はやはり第2ステージにきているところの議論な  のではないかと思います。いまは要望に応えて、とにかく病気に対応して治す、それだけをとに  かく一生懸命量を増してやってきた。量は一応確保した中で、財政問題もいろいろな問題があり、  いかに質を高めて、本当に患者と医師が信頼関係を持って、これからのより理想的な医療を構築  していくかという、いわば第2ステージの第一歩となる議論のような、私はそういう気がいたし  まして、自分ではそんな整理の仕方をしています。  以上でございますが、またいろいろせっかくですから、ご感想なり何なり、もっとどんどん言っ  てください。大臣がご不在、緊急事態でちょっと恐縮ですが、いろいろおっしゃっていただきた  いと思います。 ○ 辻本委員  私たちが18年前に、「患者と医療者の協働の重要性」、あるいは「受身の患者から選択できる患  者へ−主体的な医療参加するかしこい患者になりましょう」、そんなことを謳って活動を始めた  頃に、随分批判をいただいたのです。例えば、「君が太刀打ちできる問題じゃない」「君なんか、  受け入れてもらえる世界じゃない」と善意の忠告をいただきながら、それでもささやかに活動を  続けてきました。私たちが思い描き、小さな声ながら叫び続けてきたことが、全部このビジョン  の、この度のまとめの報告の中に網羅されているということを実感し、嬉しく思います。先ほど  もっと夢を、もうちょっとワクワクと語ってほしいと舛添さんがおっしゃってくださったのです  が、もうワクワクする以上に、私は涙が出るほど感動して、この度のすばらしくまとめてくださ  った中身を拝見いたしました。  18年前にかしこい患者と言ったときに、実はお医者さんから「そんな扱いにくい患者は増えても  らっては困るんだ」と批判された、それがいままさにかしこい患者になりましょうと、このビジ  ョンにまとまったわけです。すると単純に考えて、18年後には、このまとまったビジョンは「18  年前はそんなこと言ってたの」というぐらいに古いものになり、もっともっと進んでいくものに  きっとなるだろうと、私は新たな期待で胸をふくらませています。  何より医療の中で、医療者だけを国が守り、育て、何とかしようという議論をしてきましたが、  今度はその思いの中に加えて、患者の自立ということをしっかりと地に足を着けた形で支えてい  こうという、この決意が表われているビジョン、これは何よりも国民の私たちがワクワクと受け  止めなければならない、また受け止められる内容であるということで、大変大きな喜びを感じて  います。決して、ワクワクしていないわけではないので、一言申し上げたいと思いました。本当  にありがとうございました。 ○西川副大臣  ありがとうございます。 ○ 野中委員  中国の話がありましたが、社会保障は様々な国民の危機に対して保障するということがあります。  今回の中国の地震や阪神大震災などの天災には、多くの犠牲となられた方がおられました。一時  期に突然の災害ではある面では、いたし方がないと思われますが、医療を必要とする疾病や障害  は個々の人々が時期を同じくしないで受ける危機です。ですから、その1人ひとりに対して、ど  うやって援助して救うかどうかは、災害の救助とは全く違う。医療の原点は1人ひとりに対して、  いわゆる医療サービス、あるいは介護サービスを提供するというところに本来の難しさがありま  す。そのため、医師数とか、医療や介護の従事者数は、やはり地域の実情から積み上げて、国の  医療制度として考える必要があります。  いままでは、どうも地域からの積み上げがなくて、むしろ国から指令によって地域はただ単にそ  れに従っている様な状況です。今回は医師や多職種の人数に関しましても、地域の計画から積み  上げていくと記載していただいたので、従来よりも一歩前進と感謝しています。 ○ 辻本委員  いま野中委員のお言葉の中で、サーピスという言葉が出て、ちょっと触れてみたいと思いました。  いちばん最初のビジョンの会議のときに、私は舛添大臣に、医療と看護は本当にサービスとお思  いですかと直球を投げて、いやサービスですというお答えをいただきました。それ以後、そこの  ところが全く議論にならずに今日に至りました。このまとめの中には、「サービス」という表現  があまり多くは見受けられませんでした。そして、「患者中心の医療」だとか、「患者が医療の  主人公」と歯の浮いたような患者をおだてるような言葉もほとんど中に入っておりません。そう  いう意味でも、非常に冷静にというか、医療というものを多角的に見詰めて、あるべき論という  ことをここにまとめていただけたということで、大変ありがたいと思っています。  やはりサービスという言葉がまだまだ成熟していないのかもしれませんが、少なくとも患者の私  たちは誤解をしてしまったり、そのことで思い違いをするような悪しき受け止め方をいまだにし  ています。そして、医療サイドにおいても、「医療サービス」と言われることに、いまだ強い違  和感をお感じになっているドクターも非常に多いように私はお見受けしております。ですから、  別にサービスという言葉にこだわるわって本文から一掃してほしいというわけではないのですが、  このビジョンの中で重要なポイントして挙げている「協働」ということで、患者と医療者がとも  に作り上げるものだというその思いをもっともっと共有していけるようなアピールをしていただ  きたいということをお願いいたします。 ○小野看護職員確保対策官  大体皆様、1ラウンド、2ラウンドぐらいご発言されたと思います。 ○西川副大臣  もう、だいぶ言いました。 ○ 舛添大臣  ちょっと、どうしても私が決裁しないといけない緊急案件が起こったものですから、失礼いたし  ました。基本的に、この中に書いてあることをどういう形でこれから政策にしていくかというこ  とが非常に大きくございますし、場合によっては、実際に政策化するときに現実的でなかったり  するようなこともあると思いますから、それは軌道修正もやっていくということです。先般、経  済財政諮問会議に出ていましたら、とにかく効率化で対応するんだと。例えば、ジェネリックを  もっと増やせばいいじゃないかと言うんですね。そうすると、片一方でお医者さんの中に、本当  にジェネリックだけでいいんですか、やはりジェネリックに問題のある薬もありますよという意  見をくださる方がいたりします。  それから、新たなお金を付けないでもできますよということで、例示の中にコメディカルがたく  さん出ていたのです。それに対して、私からはちょっと待ってくださいと。看護師さんの数も増  やさないといけない。例えば、その看護師さんの水準を上げないと、お医者さんの機能の一部を  代替できない。これはスキルミックス。スキルミックスというのは1円もお金がかからないでで  きるという前提で、民間委員の方々がペーパーを出してきたので、「それは違いますよ、人を増  やすのにはお金がかかります」というようなことを申し上げたわけであります。  ただ、何でも予算要求すればいいというのではありませんが、それこそ兵庫の県立柏原病院のよ  うに「小児科を守るお母さんの会」というのが一生懸命頑張っていただいて、これで相当改善し  た。これが地域の人たちの協力によって、そんなにお金をかけずに、こちらから予算は出ていま  せんから、それでうまくいった例もあります。しかし、やはり国の予算としてきちんと付けない  と、これは実現しない政策もあります。だから、その両面をやっていくというのが非常に重要だ  というように思いますので、これからの政策づくりに、そういう観点で取り組んでいきたいとい  うふうに思っております。私のほうからは、以上です。 ○ 矢崎委員  どうもありがとうございました。このビジョンが、医師数を増やせばそれで終りというふうにな  ってしまわないかと思って心配していたのですが、いろいろなビジョンの中に提案がされて、こ  の問題は、非常に複合的な問題であって、いろいろな切り口から課題を解決しなければいけない  ということをよく触れていただいたと思います。ただ、いま大臣がおっしゃったように、ビジョ  ンにある提案が実現するためには、新聞紙上では、財源として消費税、あるいは道路特定財源の  一般財源化などが見出しに出ていますが、それは無理としても、やはりこの際、厚労大臣として、  大臣がリーダーシップと論陣を張ってくださって、ビジョンに盛り込んだ、いろいろな施策につ  いて、実現するように格段のご配慮をいただきたいと思います。  1つは医師の養成数で、先ほどちょっと申し上げたのですが、是非大臣には、医学部定員の大幅  な増員によって、医学教育の環境が壊れて、現場が混乱したり、先ほど、野中委員も辻本委員も  言われたのですが、質の担保がしっかりできるようなことをしていただけないかということと、  それから地方の病院に勤務医が増えるような仕組が必要ではないかと先ほど申し上げました。  これから、少子高齢化に向けて看護師不足も深刻になるので、是非対策もお願いします。それか  ら、いま大臣に触れていただいて、私、この会議で重点的に申し上げた医師と看護職を中心とし  た協働の充実、即ちスキルミックスについて、しっかり書いていただいて、どうもありがとうご  ざいました。私は医師法や保助看法などの法令の見直しは、いま直ちには無理にしても、できれ  ば拡大解釈を進めて、もちろん医療安全などの視点から高度な技術を必要としますが、例えば歯  科医師などによる麻酔管理とか、そういう可能性もちょっと探っていただければと思います。  いずれにしろ、先ほど大臣にコメントいただいたスキルミックスを推進するには、看護職を中心  とした、更なる高度な人材育成が不可欠ですので、これを支援するための予算措置というものを、  是非大臣にお願いしたいというふうに申し上げます。続いて、よろしいでしょうか。それ以外で  もよろしいでしょうか。 ○舛添大臣  いまの点でお答えいたしますと、現実的に文部科学省と相談をし、現実にその受入れ態勢がすぐ  整わないところには行けないわけですから、その現実性を持ちながら、例えば今年400人を増やし  ても、しかし現実にそれができるかどうかということなので、いま矢崎委員がおっしゃったこと  は、質の低下がないように、これは十分に配慮してやるとともに、勤務医の問題、スキルミック  スの問題、そういう点についてもきちんと予算措置ができるように頑張っていきたいと思ってい  ます。以上です。 ○ 矢崎委員  ありがとうございます。第2章のほうに入ってしまっていいですか。もう1つ、私が重点項目に  挙げました本当に安心と希望に必要な救急医療の充実ですが、これは会議の前半のほうで救急医  療の崩壊というのが大きなテーマになりましたが、2節の「地域で支える医療の推進」の中で、  取り挙げていただきましてありがとうございました。私としましては、安心と希望の医療確保ビ  ジョンとして、第1節にあってもよかったのではないかと思ったのです。しかしよく考えてみま  すと、救急医療は病院医療であるばかりではなく、地域完結型医療を構築するための在宅医療と  の2本柱になりますので、「地域で支える医療の推進」の中で取り上げられても結構ではなかっ  たかといま、これを見ながら思っています。  しかし、地域での救急医療体制の整備には、ネットワークシステムの構築とともに、病院におけ  る救急部、特に24時間体制のERの整備、これは専属のスタッフが、医師が交代勤務でサポートし  ないと、なかなか無理なので、それが喫緊の課題になると思いますので、お願いばかりで申し訳  ございませんが、これにも財政支援が欠かせないものですので、大臣のお力添えで、是非救急医  療の整備について、格段のご配慮をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○舛添大臣  それはしっかりとやりたいと思います。 ○ 西川副大臣  細かい話でいいですか。いまの先生のお話に触発されるのですが、その救急医療のときに急性期  の人を受け入れるのと、ちょっと安定したときの後方支援というか、そこの整備というのはもの  すごく大事で、それは本当に現場の先生たちと話すといちばん言われるのですね。その辺のとこ  ろをちょっと一言入れてほしいという気が正直します。それと、救急消防体制の問題もそうなの  ですが、いま道路財源の問題も含めて、なかなか救急に対する道路の整備というのが非常に出来  ていないところに対して説明するのが厳しい環境があります。  そういう中で、ドクターヘリの問題辺りは、もうちょっと積極的に入れてもいいような気もしま  す。個別の話で恐縮ですが。 ○ 矢崎委員  受け皿につきましては、8頁の最後から次の上に、救急を出た患者を入れる病床を確保するとい  うのは、これはもう欠かせないことだと思うのです。もう1つは、一次救急というか、ここに初  期救急ということが書かれていますが、やはりそれは地域のお医者さんにサポートしていただか  ないと、病院全部でできませんので、これは野中先生の領域ですが、地域完結型医療の推進の中  には、中核となる救急医療と同時に、やはり一次救急をとりあえずするようなシステムが必要だ  と思います。  10頁で、私が野中先生に、1人で診療所をやるのはなかなか無理ではないかということで、複数  の医師等がグループで診療を行う体制というのをこの中に入れていただいて、大変ありがたいと  思うのですが、先ほど野中先生から、尾道の医師会では、開業の内科系の先生方が1つのチーム  ワークを作って、24時間体制で対応するということですが、これは地域では救急医療だけでなく  て、在宅医療もやはり24時間休日対応を要求されます。  これについてもやはり我が国の診療所体制が、主に1人医師で診療所を運営しているのが多いの  で、これからは診療所もチームワークを作って、連絡をよくして、一人診療所に休日も夜間も時  間外もお願いしますというのは、なかなか難しいので、そこは十分構築していく必要があるので  はないかということで、これも在宅医療の必要ですね。そこは少し強調していただければと思い  ます。 ○小野看護職員確保対策官  わかりました。ありがとうございました。 ○ 野中委員  6頁には助産師のことが書いてあります。確かに個々の看護師さんとか、いろいろな職種の人の  スキルアップをすることは大切です。そして、資格をつけることもある面では大切です。しかし、  なぜ家庭でお産がされなくて、病院でされるようになったかと考えると、やはり安全体制が脆弱  だったからと思います。でも、助産師さんは資格を持って、従来から活動されていたはずですか  ら、そこにはいまの医療の体制において医療機関とどのように連携するかが重要です。そういう  体制がきちっとできていれば、安心して家でもお産ができる状況になると思います。つまり、医  療との連携が十分でないと、個人の資格が一人歩きするだけと思います。  個々の職種がそれぞれスキルアップをすることは大事ですが、最終的にはみんなが連携して協力  することが、住民の安心と安全を確保することであり、そして質を担保することと思います。で  すから、個々の職種のスキルアップだけではなくて、連携をすることの大事さを認識することが  大切です。そのようなその橋渡しは地区の医師会がもっと担うべきと思いますが、一方で行政に  も連携の重要性を啓蒙していただくことも大事と思います。  細かい話ですが、現場におりますと、保健師があまり私たち医師に連絡してこない。保健師に何  故連絡してこないのかその理由を聞くと、看護師は医師の指示を受けなければいけないが、保健  師は医師の指示を受けなくてもいいと返答される方が多い。保健師による保健指導においても、  やはり連携が大切です。患者の家を訪問して指導するめに、あらかじめ疾病を抱えているようで  あれば主治医から、疾病の状態を把握することが必要です。それが適切な保健指導に繋がる筈で  す。このような説明を地域で保健所との会合で何回も行うのですが、なかなか理解されません。  ですから、助産師とか、そうやって資格をスキルアップすることは大事ですが、連携の大事さを  もう少し現場の中で認識していただけたらと思います。以上です。 ○ 松浪政務官  どうも、野中先生のおっしゃるとおりだと思います。私、これ全体を見まして、やはり今回いち  ばん肝は何かということを考えますと、私も元記者的な立場から言いますと、やはり辻本さんに  もお越しをいただいた、3つ目のパラグラフ、患者との協働というものを盛り込んだということ  は、これは厚生労働省のこうした報告の中では、初めてのことではないかと思います。私の思い  としては、これは本当にいちばん前でもいいのではないかと思うぐらい、本当にすばらしいこと  であると思います。  その一方で、我々行政、政治に求められているのは、やはりぶれないことではないかと思います。  今回の後期高齢者の医療制度なんかでも、2か月で様々な見直し案が出て、私は大変異論を唱え  たほうでありますが、そうした中で、こんな医療いいな、こんな最期を遂げられたらいいなと。  まさにいま大臣が進めていらっしゃいます「人生85年プラン」にかかる部分もあろうかと思いま  すが、幸い、この「方向性」の第2段落に「希望する生き方を選択し、希望すれば、在宅での看  取りが選べる」など、まさにこれは終末期を終末期という言葉を使わずに大変前向きに書いてい  ただいた大事な行だと思います。ですから、我々はこれからの方向性というものは、ぶれずに守  っていくということがいちばんの必須条件だと思います。以上です。 ○舛添大臣  すみません、まだあると思いますが、記者会見の時間になりますので、矢崎先生、野中先生、辻  本先生、こちらにいらしていただいて、ということで、あと締めていただければ。 ○ 小野看護職員確保対策官  私どもとしては特にございません。これをもちまして、安心と希望の医療確保ビジョン会議は終  了させていただきたいと思います。10回にわたりまして、非常に活発なご意見、ご議論をどうも  ありがとうございました。以上でございます。 (照会先)  厚生労働省医政局総務課  松淵、加藤(憲) (代)03−5253−1111(内線2516、2517)