08/06/13 第12回研修・技能実習制度研究会議事録 第12回研修・技能実習制度研究会          日時 平成20年6月13日(金)            16:00〜          場所 中央労働委員会講堂労働委員会会館7階 ○今野座長 森永委員がまだいらしていませんが、時間ですので始めたいと思います。 今日は第12回の研究会を開催いたします。今回は、最終報告の取りまとめに向けた議論 を行いたいと思います。まず、事務局から内容について説明していただきまして、それ から議論をしたいと思います。それではよろしくお願いします。 ○外国人研修推進室長(藤枝) それではご説明いたします。お手元に「研修・技能実 習制度研究会報告(概要)(案)」という横置きのものと、縦置きの報告(案)をお配り しています。これまでの議論、あるいは先生方に個別にご意見をお聞きした内容を踏ま えまして、事務局でまとめてみたものです。特に、この概要(案)については、研究会 の取りまとめの骨格となるものとしてご用意しておりますので、これを中心に本日ご議 論いただいて、もしおまとめいただければ、これをもって最終報告につなげていきたい と思っています。よろしくお願いします。  それでは、1枚目からご説明をさせていただきます。まず、今回の報告の位置づけで すが、昨年5月に中間報告をおまとめいただきましたので、これを踏まえてさらに検討 すべき事項についての踏込みを行った内容という形で、あくまで中間報告を前提として、 さらにプラスアルファでという形で整理させていただいています。  上のほうが「中間報告」ですけれども、簡単にポイントを掲げて書いています。1点 目が、実務研修中の研修生の法的保護のあり方。2点目として、技能実習の実効性の確 保。3点目、受入れ団体の責任強化、あるいはブローカー対策等。4点目として、より高 度なレベルの技能実習。5点目として、チェック機能の強化というものでした。  下のほうには、まず今回の位置づけです。今回の報告は、制度の適正な運営と実効性 を確保するため、悪質な企業・団体を排除する一方で、優良な企業・団体を育成する。 そういう観点から、上記のその中間報告に加えまして、実習生あっせんシステムの適正 化、達成目標である技能検定3級レベル以上の取得に向けた実習の実効性確保、さらに は法令遵守・実習状況に係るチェックの強化等、という点を中心に検討の方向性を打ち 出すものと位置づけています   大きく5点項目立てをしています。1点目が「ブローカー対策等、実習生の需給調整 のあり方」で、後ほどそれぞれご説明をさせていただきますが、まずは実習生のあっせ んについて、あっせんシステムを適正化する観点から、受入れ団体に対する許可制の導 入等を検討してはどうかというものです。  2点目、「実習の実効性確保」です。技能検定3級レベル以上の技能修得に向けて、受 入れ団体が企業の実習を指導、支援する役割を担うとともに、3級レベル以上の受験の 義務づけ、及び合格率が高い企業に対する優遇措置等を導入してはどうか。また、受入 れ人数については、受入れ企業単位でストック面の制限を設定してはどうかという点で す。  3点目が「法令遵守・実習状況に係るチェックの強化」で、企業・団体の法令遵守、 実習実施状況のチェックの強化、指導・勧告等の実施について検討してはどうかという 点です。4点目が「制度運営に係る役割分担」の問題で、企業に対する専門的・技術的 支援は受入れ団体の役割として、一方で法令遵守・実習の監理的チェックは一定の公的 機関が担うこと等役割分担の明確化を検討してはどうかという点です。5点目は「その 他の課題」で、トータルな技能移転の推進、その他1年以内の研修の扱い等です。  2枚目から、各項目についてもう少し詳細な説明をします。まず、「ブローカー対策等 実習生の需給調整のあり方」です。何度もここでご議論いただきましたように、現行制 度においては、その受入れ団体が高額な管理費を徴収したり、不正行為の温床になって いるケース。あるいは、送出し機関が高額な保証金等を徴収するケースがあるというこ とで、以下、当面中間報告でご指摘いただいたような措置を実施していくことが必要で す。  しかしながら、前回のヒアリングでも実態がある程度おわかりいただけたように、研 修生・実習生のあっせんというのは国内外にわたっていて、例えば中国なら中国の現地 での募集から始まって、日本の企業に受け入れられるまで様々な手続、経路を経る形に なっています。実態としては、受入れ団体・送出し機関のほかに国内外のあっせん機関、 いわゆるブローカーといったものの介在、こういうものが実態としてあります。  こうした要因もあって、そのあっせん経路の各段階でいろいろな介在が起こることに よって、高額な管理費とか保証金の問題、あるいはその「落差」という言葉でヒアリン グでは話されていましたけれども、募集時の条件と入国後の実態の乖離、こういうもの を巡るトラブルとか、人権侵害が発生しています。  あっせんに係る諸問題の抜本的解決のためには、次のような点をポイントとして、国 内外を通じた実習生あっせんシステム全体を、適正にコントロールしていく仕組みを作 っていくことが必要ではないかという視点です。つまり、その受入れ団体だけの規制と か、送出し機関だけの規制ではなく、やはり送出しから受入れに係る、全体のプロセス を適正化していく、そういう視点に立って何ができるか検討すべきではないかという観 点です。  まず、そのあっせんに係る仕組みのポイントとして、1つの例として書かせていただ いています。(1)として、まず国内の受入れ団体については、中にはブローカー的にあっ せんによる営利のみを目的としたような団体も見られるということですので、実習に係 るその適正なマッチング、企業と実習生のマッチングの実施や受入れ企業に対する実習 支援、こういうものの実施を担保するような観点から、受入れ団体について許可制の導 入を図ってはどうかという視点です。  (2)は、国内外にわたる諸々のあっせん機関、ブローカーと呼ばれるものにつきまして も、届出制であるとか、受入れ団体を通じたコントロールであるとか、送出し国政府と の連携という手段を用いて、できるだけ適正化していく方法を検討すべきではないかと いう点です。  (3)として、送出し機関についても、これは中間報告でも指摘いただいておりますけれ ども、引き続き送出し国政府に対して、保証金等の適正化を要請していくべきではない かという、こういう視点を中心として、あっせんシステム全体の適正化を検討していく べきではないかという視点です。  次の頁が2「実習の実効性確保」です。これは中間報告でご指摘いただいたように、 実習の実効性を確保して、制度趣旨が形骸化しないよう、実習指導員の配置であるとか、 1年経過した時点での技能検定基礎2級レベルの受験、実習終了時の評価、こういうこ とによって実効性を上げていくことが必要であります。  この制度は3年間で3級レベルを取って帰っていただくことを、この制度の達成目標 としていますけれども、3級レベルの取得率は非常に低い状況であります。そもそも受 験率が1%を切っています。制度本来の趣旨に立ち返り、3年間で着実に3級レベル以上 を取得して帰国していただけるよう、3級取得に向けたインセンティブの付与であると か、企業の実施する実習を支援するための取組という点を、強化していくことが必要で はないかという観点です。  制度設計上のポイントとして、次のような点を視点として、今後検討していってはど うかということです。まず(1)、最初の1年経過時の基礎2級レベル試験、これにつきま しては中間報告でもご指摘いただいたとおり、この試験自体、もちろん技能レベルのチ ェックでありますし、併せて実習生活に必要な日本語であるとか、安全衛生教育の水準 を担保するためにも重要であることから、引き続き維持するとしております。  (2)として、今度は3級レベル以上の受験ですけれども、これについては現状では義務 づけにはなっていませんが、実習終了時までに受験を義務づけることとしたいというこ とです。その一方で、合格率の高い企業に対しては、受入れ枠の拡大等優遇措置を講じ ることとしてはどうかという観点です。  (3)は、受入れ団体の役割です。現状では研修中は受入れ団体に研修の管理責任があり ますが、実習移行後は、基本的には実習の実施は企業に任されていて、受入れ団体が企 業に対して、実習の実施の実効性を上げるという観点での指導というのが、どこまで行 われているのか疑問があるところですので、この点をやはり強化していく必要があると いう観点です。  受入れ団体は、実習期間を通じて定期的に企業を巡回して、実習内容・方法等につい て企業を指導、支援する役割を担うことを明確にしてはどうかということです。この場 合、受入れ団体において、個々の実習生の技能レベルを、例えば評価シート等によって チェックしたり、技術指導にあたっての専門家を企業に派遣してアドバイスをするなど という取組も、併せて促進していくべきではないかという視点です。  (4)は、本人の問題です。本人についても技能の修得意欲を向上させるという観点から、 例えば技能検定基礎1級を取ったら給料が上がるとか、3級を取ったら給料が上がると いうような、賃金のガイドラインの導入を奨励することが有効ではないか。併せて、帰 国後に3級取得が評価されるよう、送出し国における技能労働者の評価や環境改善とい う、技術協力を進めていく必要があるのではないかという点です。  (5)は、このほかとして、今の制度上、受入れ企業や受入れ団体を中心とする仕組みと なっていますけれども、やはり実習生個人に対する支援というものが必要であろうと。 実習生の生活面や仕事上の悩み、トラブル相談に専門的に対応する体制整備も進めてい く必要があるのではないかという点です。  いちばん最後ですが、これは中間報告でも課題となっていた実習指導体制の確保の観 点で、日本人従業員の体制を確保するという観点から、新規受入れの人数に加えて、ス トック面の制限、例えば実習生と日本人従業員について、一定の比率を設定するという ことが、必要ではないかという観点です。  3「法令遵守、実習状況に係るチェック機能の強化」の点です。現在、技能実習の適正 化を図るという観点で、JITCOが巡回指導の強化を図っています。平成20年度において は、年間1万件を目指して、巡回指導を実施しています。また、労働基準監督機関や入 管においても、その監督指導であるとか、実態調査を積極的に実施しているところです が、依然として、飛ばしであるとかパスポート取上げ等、不正行為や労働法違反が頻発 している状況です。引き続き、JITCOにおいては、巡回指導等の強化を図っています。  しかしながら、現状において、JITCOの巡回指導は、立入権限等を伴わない財団法人 ということで、指導・助言等のチェック機能にとどまっています。不正行為等の摘発に 対して、必ずしも十分なチェック機能の実効力を伴っていないのではないかという点が あります。  そこで受入れ企業・受入れ団体における法令遵守、あるいは実習実施についての適正 化を徹底するため、次のような点をポイントとして、チェック機能を強化することを検 討してはどうかという点です。  制度設計上のポイントとして、まず(1)は、適正な実習や雇用管理・労働条件等に係る ガイドラインを策定し、それに基づき一定の公的機関が受入れ企業に立入調査等を行い 助言・指導を実施する。悪質なケースに対しては、勧告等の措置をするというような仕 組みが必要ではないか。  (2)として、法令違反や指導等に応じない企業については、入管と連携して受入れ停止 等の措置を科してはどうか。  (3)は、受入れ団体の監理・指導が十分でないという場合については、団体に対しても 改善を指導して、悪質な場合については、先ほどの許可を取り消すといったような仕組 みを講じてはどうかという点です。  次の頁で、4「制度運営に係る役割分担」ということです。今までの説明と重なります けれども、それぞれの役割分担、責任を明確にした上で実効性を上げていってはどうか という視点です。繰り返しになりますけれども、現行制度では、受入れ団体は研修中の 企業に対する監理責任は負っています。一方で、JITCOは巡回指導を実施し、入管法令 や労働関係法令の遵守状況、実施計画の進捗状況等もチェックしています。  また、JITCOは、巡回指導という指導的な機能のほかに、本来サービス機関としての いろいろな支援をしていて、送出し国政府との定期的な協議であるとか、受入れに関す る企業向けの相談会・セミナーの開催であるとか、入国手続の援助、書類の事前点検も やっています。こういう形で、その受入れ団体の役割、JITCOの役割が曖昧になってい るところもあり、それぞれの責任が不明確な部分もあります。  今後、その企業の実習実施に係る監理面でのチェック機能の強化、あるいは先ほど申 し上げた、実習の内容についての専門的・技術的支援、そのようなそれぞれの機能の強 化を図っていく上で、関係機関の役割分担を明確にすることが必要ではないかという点 です。  具体的には、まず現在受入れ団体やJITCOが担っている各種の役割の中で、実習生と 企業のマッチング、それから実習実施に係る専門的・技術的支援の役割、こういう点に ついての部分と、法令遵守や実習に係る監理的チェックの役割、この2つについて明確 に切り分けた上で、前者については受入れ団体に、後者については一定の公的機関に担 わせることが適当ではないかとしています。  この他、送出し国政府との協議、入国手続の援助等については、中央レベルでの取組 が不可欠で、JITCOについては、こうした役割分担の検討の中で、そのあり方を抜本的 に見直すことが必要ではないかとしています。  役割分担のイメージとして、受入れ企業については、実習の適正実施、3級レベル以 上の受験。受入れ団体については、実習生と受入れ企業のマッチング、実習内容・方法 についての専門的・技術的支援等。一定の公的機関の役割としては、法令遵守、実習に 係る監理的なチェック。その他中央レベルでの送出し国政府との協議、入国手続の援助 等。それぞれの役割分担をいま一度整理して、明確にした上で機能の強化を図っていく べきではないかという視点です。  5番目の「その他の課題」ですが、中間報告で残された課題の中にいくつかあります。 研修のみで1年以内に帰国する場合の取扱いです。技能実習には移行せず、「研修」のみ で1年以内に帰国する場合についても、「実務研修中の研修生の法的保護を図る」べき必 要性に変わりはないということで、実務研修部分については、労働関係法令を適用する こととして、在留資格「研修」の取扱い等を整理することが適当であろうという点です。  また、先ほどの本人のインセンティブという話に関わるわけですけれども、トータル な技能移転の推進という観点です。途上国に技能移転を図るためには、技能実習だけで はなくて、トータルな技能移転を推進するという中で、適切に関連づけていく必要があ るのではないか。そういうことによって、本人の帰国して技能を発揮できる場が広がれ ば、日本における技能修得意欲もより高まるのではないかという視点です。このため、 送出し国における技能労働者の育成への協力とか、適正な評価制度の移転、あるいは処 遇の改善というものを並行して進めて、トータルな「人づくり」支援の中で実習生の意 欲を高めて、その能力を発揮できる環境整備を進めていくことが必要ではないか、とい う点を指摘しています。  最後に、産業構造等の問題です。これは中間報告でも若干触れたところですけれども、 実習生を受入れる動機・背景として、やはり産業構造上の問題とか労働環境等の状況か ら、日本人従業員を十分に確保できないという実態が存在します。こうした動機等を背 景とする受入れにおいて、もっぱら低賃金労働力としてのこの制度の活用が横行するこ とのないよう、制度の見直しを行うことが必要である。  他方、本報告書のテーマそのものではないですけれども、その背景となっている労働 力の問題については、産業構造の問題とか、ものづくり分野における人材育成・確保等 のあり方について、抜本的な議論が必要であって、政府全体として産業・経済政策、教 育政策等も含めた総合的な観点から、議論していくことが必要ではないかという形で触 れています。  以上、取りまとめに向けた骨格の案を事務局でお示ししておりますので、後ほどご議 論いただければと思います。  若干、報告の本文にも触れさせていただきます。1枚目「はじめに」から始まって、 中間報告の内容をポイントだけ提示した上で、2枚目のところで本報告の趣旨として、 中間報告で指摘した事項に加えて、さらに検討すべき事項についての検討の方向性を打 ち出すもの、と位置づけております。  2頁以下、最近の数字の状況あるいは不正事案の発生状況、それに対する行政関係機 関の取組の状況を述べた上で、8頁をご覧ください。8頁は「現行制度の評価と見直しの 方向性」という形で、基本的な考え方をここに書いてあります。ちょっとご説明させて いただきます。  現行制度については、不適正な運用実態が指摘されてきた。このため制度が形骸化し ているということで、これを一旦廃止した上で、産業・経済上の必要性を正面から認め て、新たな労働力の受入れの仕組みを創設すべきであるとの意見とか、移民の受入れを 推進すべきとの意見もある。  しかしながら、制度の実績を見ると、適正な研修・実習が行われて、研修生・実習生 が帰国後その経験を活かして活躍している例も少なからず報告されている。また近年の アジア諸国との経済連携が強まる中で、アジアの若者を単なる労働力として受け入れる のではなくて、技能を付与して帰国後その成果を活かしてもらって、人づくり、技術向 上に寄与するという現行制度の趣旨は、今後ますます重要になるものと考えられる。  したがって、こうした技能実習制度のメリットを考えると、現状において不適正な運 用実態が一部あることを認めつつも、逆に本来の制度理念に立ち帰って、技能実習とし ての性格を強化して、実効ある方向に改革していくことが適当である、としております。  次頁、「なお」としまして、現行制度は「技能移転を通じた国際協力」という目的ゆえ に、以下のような制度上の仕組みを設けており、そのことが上記のような実習成果のほ か、一定の労働条件・生活環境等の保障をする、在留管理を容易にする、帰国担保、失 踪率を低く抑える等の効果、メリットを生んでいると考えられるということで、この制 度の効果、メリットについて記載しています。これを、単に労働力確保のための制度と した場合については、以下の仕組みによる様々な対応が行われず、低賃金労働や失踪・ 不法残留が増えるおそれがあるとしております。  (1)は、これは中間報告でも触れておりますけれども、まず入国当初に日本語、日本の 生活習慣を教育する。あるいは研修施設・宿泊施設の確保、実習計画の作成と実習指導。 こういうことを義務づけておりまして、研修・実施中の生活面での管理・支援等を、受 入れ団体、それから企業が責任を持って行う体制になっている。また、職種については、 単純作業ではないことが条件となっていますし、実習生の労働条件については、日本人 と同等額以上の報酬を支払うことを条件としているということです。  (2)は、実習計画等の履行を確保するために、JITCOによる巡回指導が相当な頻度で行 われていまして、権限がないという問題はありますが、一定のチェック機能を果たして おります。実態が単純労働力として活用されているというケースについては、制度趣旨 に反するわけですので、巡回指導等によって是正を求めて、悪質な場合には受入れ停止 等の措置が取られるということで、実習生の活動内容も単純な使い捨て労働にならない ようにチェックが働く仕組みになっています。  (3)としては、技能を母国に移転するという目的がありますので、最長3年で帰国する 仕組みとなっていて、家族の帯同を認めていない。  (4)として、研修・実習という、まさに技能を学んでいただくという目的があるために、 研修施設、企業場所が特定されていて、本人に対するケアのほか、在留管理も容易とな っているという点があります。  以上を踏まえ、技能実習制度については、技能移転を通じた国際協力という目的は、 今後とも堅持した上で、現状を改め、制度の適正化と実習の実効性を高めるための措置 を徹底していくこととする、とまとめてみました。基本的な考え方として、こういうよ うな方向づけをしていきたいと思っています。  以下は、先ほど説明した各論に入っていて、後ほどご覧いただいてご指摘いただけれ ばと思います。私からは以上です。 ○今野座長 ありがとうございました。それでは今、案について説明をいただきました ので、ご意見、ご質問をお願いいたします。何かありますか。 ○樋口委員 全体的にはこれでいいかと思いますが、意見というよりも質問をちょっと したいと思います。このスケルトンのほうの5頁のところで、JITCOの扱いについてな されているかと思います。4つめの○で「JITCOについては、こうした役割分担の検討の 中で、そのあり方を抜本的に見直す」というような指摘がありますが、これはどのよう に見直すのかというのは書き込まないでよろしいのでしょうか。その上の中央レベルと いう言葉が出てくるのですが、これは国という意味ですか。自治体に対する中央という 意味ですか。 ○審議官(草野) JITCOという形態なのか、いわゆるJITCOが今やっている機能の面 で見ますと、例えば中央レベルの送出し国政府との協議、入国援助等の取組、これはま さにそういう機能は必要だろうし、おそらくJITCOをこれからどうしていくのかという 議論となりますが、通常ベースでいくと、JITCOあるいはその後の組織かもしれません が、そういうものが中心的な業務になっていくでしょう。  JITCOについては、一定の公的機関という表現がありますけれども、ここがまだ私ど もとしても、公的機関のイメージというのは行政機関のようなものであるとか、独立行 政法人、あるいはJITCOに法的権限を与えるとか、いろいろな可能性があると思ってい ます。  仮にJITCOに法的権限を与えるようなことですと、今の寄附金に依存している体質は 変えなければいけないかもしれないし、そういうことも含めて抜本的に見直さなければ いけないということです。この中でJITCOはこれだという決め方は今のところはちょっ とできない。ただ、可能性としては、中央レベルでの機能はかなり残る。それはJITCO 的なものがやっていくのだろう。  出先のところは、受入れ企業・受入れ団体がやるサービス的なもの、専門的能力を持 ってやる。それから一定の公的機関のチェックということになって、一定の公的機関に ついては、具体的なイメージをどうするかというのは今後の議論で、場合によってJITCO に代わるものかJITCOか、その辺も含めて抜本的な検討ということです。そこのところ はこれからの検討、裁量の幅を持ちながら検討していく必要があるということです。 ○今野座長 よろしいですか。どうぞ。 ○丹野委員 1頁目の下のほう、実習の実効性の確保に関わる事柄なのです。従来のフ ロー側のフローによる制限に加えて、ストック面の制限を新たに設定するというのは、 要するに基本的には日本人がトレーニーとしてやってきた外国人に教える、教える機能 が無くなったところについては、更なる受入れについては、少なくとも条件が確保でき るようになるまでは増やさないというか、入れさせないということと考えてよろしいの でしょうか。おおよその考え方でいいのですけれど。 ○外国人研修推進室長 基本的に、中間報告をご議論いただいたときもそういう議論が あったと思いますが、やはり実習を指導する立場の日本人がいないという状況であれば、 本来の制度は形骸化してしまうということです。やはり、実習生に対して教える日本人 がいること。そのためには、あまりに日本人に対して実習生の数のほうが多いというよ うな状況は、改善する必要があるだろうということから、今はフローといいますか、毎 年何人という新規の枠はありますが、日本人との比較で何人までという、いわゆるスト ック的な考え方はありませんので、そういうストック的な制限を盛り込むことによって、 実習の指導体制を適正な水準に維持する必要があるのではないか、という考え方を盛り 込んでいます。 ○今野座長 丹野委員、よろしいですか。ほかにありますか。どうぞ。  ○山川委員 この報告書(案)の11頁ですが、「落差をめぐるトラブル」というのが書 いてあります。前もどこかの会合のときに申し上げましたが、落差というのは入国前に 示されていた条件と現実の落差、これがトラブルの問題になるということです。それは なるべく研修ないし労働条件、実習の中身について、あらかじめ理解を図ることによっ てトラブルが防止されるであろうと思いますが、そのすぐ下のほうにあります「しかし ながら」以降の段落で、これに関係すると思われるのが(2)の「実習生・受入れ企業の双 方の条件を保障し、入国後のトラブルを防止する」に該当すると思います。  この条件の保障ということの趣旨が、実体的な条件の保障というと個別的にいろいろ あり得るわけですが、手続き的な条件の明示というのも含めたほうがいいのではないか。 いちばん簡単に追加するとすれば「保障・明示」とかです。落差トラブル防止というの は、実体的なものよりも、本人になるべく理解をしてもらうということが直結するのだ と思いますので、もしできましたら「明示」ということを入れていただければと思いま す。 ○外国人研修推進室長 ご趣旨はごもっともです。中間報告でも、最初から実習にする ことによって、労働条件の明示について労働基準法上の義務がかかっています。そこを しっかり担保できる仕組みにしなければいけないということは、ご指摘いただいていま す。その考え方は、当然踏襲して仕組みを考えていかなければいけないと考えています ので、ご趣旨は入れたいと思います。 ○渡邊委員 以前の研究会でも指摘があったかと思うのですが、今日配付の資料の概要 で言えば3頁目、(案)で言えば15頁になると思うのですが、どうしても実習生個人か らのトラブル、仕事上の悩み等にきちんと対応できる、できれば24時間365日対応でき るような、そういう制度を整えていくことを期待したいと思います。どうしてもチェッ クというのは常にできるわけではないので、個人から訴えるというか、そういう機会を 設けておくことが必要ではないかということで、将来の体制整備の上で留意していただ ければと思います。 ○今野座長 これは本文だとどこですか。15頁ですか。 ○渡邊委員 15頁の図の上のあたりでしょうか。 ○今野座長 「専門的に対応する体制を整備する」ということの中身ですね。 ○外国人研修推進室長 中間報告でも駆込み寺的な相談機能の強化、というご指摘をい ただきました。とりあえずできることとして、予算的なものも含めて、今年度からJITCO にお願いをして、ホットラインの拡充という形で、電話相談のホットラインを土曜日、 夜間にかけてフリーダイヤルで取り組むということで、これを5月末から開始すること ができました。こういう取組をさらに強化していきたいと思っています。  ここに書いてありますように、本人達も日本に志を持って来て、いろいろ悩むわけで すし、技術を学ぶ上での苦労もあるわけですので、どこまでやれるかこれから検討しま すけれども、いわゆるキャリア・コンサルティングというような機能を、日本人にも相 当普及してきておりますので、そういう機能をホットラインに加えて持たせて、実習生 個人個人がやる気を持って、3年間を終えられるような仕組みは非常に大事だと思いま すので、そのような観点は引き続き拡充に努めていきたいと思います。 ○今野座長 渡邊委員、この文面でいいですか。 ○渡邊委員 はい。 ○上林委員 皆さん、これを発表したあとで、興味をもつのは許可制の導入のときの許 可条件だろうと思うのです。イメージとしては、従来のように書類審査だけなのですか。 それともいろいろな法令に関する、例えば運転免許証みたいな簡単なテストが入るので しょうか。この辺りをどのようにイメージしたらよろしいでしょうか。 ○外国人研修推進室長 報告書の本文に、イメージを少し書かせていただいていて、12 頁のいちばん最後のなお書きのところです。許可制度の検討に当たっては、併せて、受 入れ団体のマッチング能力、実習生と受入れ企業をマッチングさせるための職業紹介を 超えた実習を適正に確保するためのマッチングの能力。それから実習支援のための専門 性、技術的な指導をできるような人材がいるかどうかといった点。その基準適合性につ いて、公正かつ専門的に評価する仕組み。  今の入管の審査も、当然書類上はしっかりと審査をしているわけですが、実際に書類 だけでは実態がなかなか把握できない部分もある。専門的に受入れ団体の状況とか、実 績等を評価できるような仕組み、例えば第三者的な委員会みたいなものに審査をお願い するとか、そのような仕組みを今後検討していきたいと考えています。 ○審議官 現在、受入れ団体の中に異業種組合のようなものが必ず入っているわけで、 その異業種組合の中には、通常の事業協同組合のようではなくて、専門的な能力とか技 術的能力、そういうものを持たないで、一種ブローカー的なものがにわか事業協同組合 になってきているというのもあるので、そういうものは排除していく必要がある。例え ば事業協同組合でも、専門性・技術性を持ってしっかりとその職種について指導してい けると、あるいは援助していけると、そういう能力を持ったものにできれば限定してい きたいと、そういう考え方です。  いわゆる、ブローカー的なものを排除していきたいというのが第一の狙いで、ちゃん としたものについてはこのように許可制を与えて、企業を支援していくということを徹 底してやっていただくと、そういう考え方で設けるという趣旨です。 ○上林委員 はい、わかりました。 ○北浦委員 今回の報告の中で、チェックを強化するという意味では、その入口のとこ ろのチェックという意味では、その許可制という問題が出てきている。そうすると、あ と事後については、先ほどもご説明がありましたように、これはどういう体制をとって いくのか、少し検討課題と。こんな形で整理されたのだろうと思うのです。  そのことは、大変よく明快になっていると思うのですが、そのときに、JITCOの取扱 いというのは、先ほども樋口委員がおっしゃいましたけれども、前回の中間報告の段階 では、JITCOのところが、巡回指導を強化すると共に役割体制を、という感じだったの です。今回のところでいきますと、例えば20頁のところでJITCOの性格はサービス機関 であると、このような感じに断じています。それからまた、今回の味噌であるところの 受入れ団体、これは許可制の下の受入れ団体となりますから、受入れ団体に相当責任を 持たせる。これもいいと思いますが、これも所詮底にあるものはサービス機能でしかな い。  そうすると、それ以外のどこかで考えるか、あるいは先ほどご説明があったように JITCOを変えるということであろうと思うので、そこのところは論理的には私もわかる のですが、ただ中間報告のところの気持であったのは、巡回指導というところがサービ スであるけれども、ややチェック機能を持っていたという要素があるわけです。いわゆ る、もう少しわかりやすく言えば、自主点検、つまり第三者的な点検だけではなくて、 自らも自制していく、コントロールしていく、このようなところを強めていく。  それを援助していくというやり方も一つあるだろうと思いますが、その点は当然とい うことで多分書かれているのだろうと思います。その辺のこの前の報告との間で、多少 変化が出てきていますので、その辺をどう考えたらいいのか。とりわけ今申し上げた自 主点検的な要素、そのようなものはどのように考えたらいいのか、それが1点です。  そのことと関連して、逆にサービスという部分も私は重要だろうと思うのです。これ はもう一つあったように、3級を取らせると言っているわけですから、そうすると、3 級までちゃんと取らせるための相当の手立てもしなければいけない。受入れ団体の許可 をして、ちゃんとやらせるということになりますと、受入れ団体がしっかりできる援助、 サービスの部分もあるのかという感じがするのです。今回そのようなサービス的な部分、 これも残っているのだろうと思うのですが、この辺はどういうお考えなのかということ です。全体としては整理できているので、修文ということではないのですが、その辺を どう読み取ったらいいのか教えていただきたい。 ○審議官 今、現実的にやっているのは、JITCOが現状の中で巡回指導を盛んにやって、 企業の自主点検を推進するという形でやっているわけです。ただ、最終的にはこれだけ で足りるのかと考えた場合、やはり一定のガイドラインに基づいて助言・勧告、場合に よっては入管と連携して取消し、そういう強い行政的権限を持ってやることが必要で、 今はそれが欠けているということで書き込んでいるわけです。  そのことと、自主点検とかサービス、これを否定するわけではなくて、むしろ3級取 得に向けては、その受入れ団体が、ちょっと曖昧ですが、専門性をもって企業を支援し ていく。企業が、3級を取れるようにやってもらう、というところに重点を置いてやっ ていただきたいというのがこの味噌です。インセンティブもそれに伴って、3級取った 企業には枠を広げるとか、技能実習生も3級を取れればガイドラインで賃金を高めてい ただくとか、そういう労使のインセンティブを付けながら、受入れ団体が一生懸命この 企業を支援する。そこは非常に強化していくところです。  その中で、おっしゃったような自主点検ということも非常に重要だろうと思いますの で、そこのところを受入れ団体が支援していく形になるのか、場合によってはJITCOの 一定の機能を残してそういう活動をやるのか、それは検討させていただきますが、やは りそういうものが重要だということは、おっしゃるように留意していく必要があると考 えています。 ○山川委員 これは修文ではないのですが、今の北浦委員のご発言との関係で、サービ スということの意味についてもう1つ。例えばコンプライアンス研修とか、そういうよ うなことをこれまでの問題状況に鑑みて、サービスの一環として考えてはいかがかと思 います。以上です。 ○外国人研修推進室長 中間報告を踏まえて、当面の措置は当然私どもも強化しなけれ ばいけないと思っていて、巡回指導については再三ご説明させていただきましたけれど も、今年度は1万件という数を目標に今一生懸命やっています。数だけではなくて、質 をいかに高めるかということで、JITCOの中でも一生懸命指導員の研修の強化とか、当 然、労働基準法上のチェックに当たっての留意点を、どのような点で留意すればそのよ うなチェックが機能するかという点も含めて、質の強化も図っていこうとしています。  また、これはJITCOの自主的な事業、国の予算に基づかない自主的な事業として、取 組を去年から始めていますが、その受入れ団体の担当者、技能実習の制度の担当者に対 して、少人数クラス、20人か30人ぐらい集めて、制度の概要から始まって、労働基準 法の内容、入管法の内容、いわゆるコンプライアンスについての研修事業をやっており まして、かなりの数の参加を集めています。そういうことは引き続き、JITCOのそうい うサービス、まさにコンプライアンスのためのサービスとしてやっている状況ですが、 そういうようなことは引き続きやっていきたいと思います。 ○今野座長 ほかにございますか。それではご議論いただいて、一部修文が入っていま すが、全体としてはこれでいいだろうということです。修文については、具体的には事 務局と私で検討して決めさせていただきます。そういう点も含めて、今回事務局から説 明していただいた内容をもって、最終報告としてまとめたいと思いますので、よろしく お願いします。よろしいですか。  今日で会議も12回となり、一杯やったなという感じがあるのですが、これまで何度も 研究会にお集まりいただいて、議論をしていただきまして大変ありがとうございます。 最後に事務局から一言ご挨拶をお願いします。 ○職業能力開発局長(新島) この研修技能実習の研究会、一昨年にスタートをして足 かけ2年になります。今ほど座長からもお話がありましたけれども、12回にわたり委員 の皆様方には非常に熱心な議論をいただきました。誠にありがとうございます。  私どもとしては、この報告を受けて制度の見直しにつきまして、関係省庁とこれから いろいろな具体的な検討、調整ということになろうかと思います。いずれにしても、私 どものスタンスとしては、技能実習そのものは、この技能移転を通じた国際協力という ところからスタートしているということで、このような制度本来の趣旨が、今後ともう まく機能するように、私どもとしても努力していきたいと思っています。  これからいろいろな意見がいろいろな場でまた出ているわけで、そういう関係との調 整ということもあります。また、委員の皆様方にはいろいろな意味でご指導いただけれ ばと思っています。どうも長い間、非常にありがとうございました。 ○今野座長 研究会を終了します。ありがとうございました。 (紹介先)  職業能力開発局海外協力課外国人研修推進室  TEL:03-5253-1111(内線5952)     03-3502-6804(夜間直通)  FAX:03-3502-8932