08/06/12 第3回薬剤師需給の将来動向に関する検討会議事録           第3回薬剤師需給の将来動向に関する検討会                      日時 平成20年6月12日(木)                         10:00〜                      場所 厚生労働省共用第8会議室(6階) ○事務局 傍聴されている方へ事務連絡をさせていただきます。本日の会議は公開で行っておりますが、 カメラ撮りはいつものように議事に入る前までとさせていただきます。その旨、ご了解いただきたいと 思います。 ○座長 ただいまから、「第3回薬剤師需給の将来動向に関する検討会」を開催いたします。まず、議事 に入る前に本日の委員の出欠状況、委員の交代について、事務局からご報告をお願いします。 ○事務局 お手元の資料1をご覧ください。本日現在の委員の名簿をお配りしています。ここに書いた委 員の先生方は、本日、全員から出席のご連絡をいただいています。ただ、児玉日本薬剤師会会長は少し 遅れるとのご連絡をいただいています。ほかの先生方はすべて出席でございます。  なお、交代された委員をご紹介させていただきます。日本薬剤師会会長の児玉委員、大阪大学大学院 薬学研究科長の小林委員、日本病院薬剤師会会長の堀内委員に新しく今回からご参加いただいています。 以上です。 ○座長 配付資料の確認を続けてお願いします。 ○事務局 お手元の資料を確認させていただきます。まず、いちばん上に座席表があるかと思います。 その下に本日の議事次第を置いています。その下に資料1として名簿をお配りしています。資料2として、 前回、昨年ですけれども、平成19年6月29日にまとめました「薬剤師需給の予測について(粗い試算)」 の資料です。これについては、昨年6月29日のものと全く同じでございます。それを改めてお配りして います。  資料3が「薬剤師数の推移」として、さまざまな切り口で薬剤師の実数や構成割合、業種別の数・割合 、年齢階級別のデータ、男女別といった諸々のデータをお配りしています。これも昨年来使用している 基礎データでして、先ほどの資料2のグラフを推計する際の基データにもなっているものです。今回、改 めて、それぞれ平成18年に関するデータ等が追加されていますので、その部分をアップデイトさせてい ただいたものをお配りしています。  資料4として、「医薬分業率等の推移」という資料をお配りしています。これも新たに直近のデータが 加わっていますので、昨年使用した様式をそのままに、データのほうをアップデイトしているものです。  資料5は「薬事関係業態数の推移」です。製造販売業、あるいは一般販売業、その他いろいろな業態に 関する業態数のデータです。これもアップデイトしたデータを加えています。  資料6として、卒業生の就職動向に関する資料です。これも昨年来使っている資料ですが、新たに平成 19年3月卒のデータが加わっていますので、学部、大学院、それぞれの直近のデータを加えたものとして 再度お配りしています。  次が資料7です。こちらも新しいデータを付け加えたもので、「薬科大学(薬学部)の数と入学定員・ 入学者数の推移」です。  資料8が「薬剤師国家試験合格者数の推移」です。これも先日合格発表が行われたデータを加え、お配 りしています。  そのほか、本日お越しいただいています5名の先生方の資料も併せてお配りしています。また、委員の 先生方におかれましては、本日ご出席いただいています5名の先生方のお名前と所属を示した1枚紙をお 配りしているかと思います。それから、それぞれ先生方がご用意いただいた資料として、山崎先生から の資料、橋田先生からの資料、網岡先生からの資料、奥田先生からの資料、池田先生からの資料、5種類 をお配りしています。かなりの種類がありますが、不足等ありましたらお申し出いただければと思います。 ○座長 お手持の資料に欠けているものがあったり、あるいは落丁があったりしましたら、是非おっしゃ っていただきたいと思います。よろしいでしょうか。  よろしいようですので議事に入りますが、何か事務局から連絡事項がありましたらどうぞ。 ○事務局 これより議事に入ります。傍聴の方におかれましては、カメラ撮りはここまでとさせていた だきます。どうか、ご協力をお願いします。以上です。 ○座長 それでは、薬剤師の需給問題について意見交換をさせていただきます。今日のこの検討会は1年 ぶりでして、ずいぶん間があいております。この間に、薬学、あるいは薬剤師の需給についての環境が変 わってきています。例えば供給に関しては、これはかなりはっきりしておりまして、3月の薬剤師国家試 験の合格者数が初めて1万人を超えています。もちろん初めからわかっていることではありますが、実際 に現れてみるとかなりショッキングな数字であります。一方で、薬学の大学の総定員の上昇のスピードが 鈍ってきたような感じがしています。それとともに、一部の大学ですが定員割れが出ており、かなりこれ も問題であるかなという気がいたします。  需要に関してははっきりした傾向がなくて、目立った変化がないのですが、いよいよ、平成18年から始 まった6年制の教育が3年目を迎え、新たに薬剤師のどのような需要をこれからつくっていけるのかについ て、我々の努力が求められるような状況になっていると考えます。  昨年のこの検討会では、薬剤師需給の予測について、資料にあるような「粗い試算」が公表されました。 これはかなり、それなりにインパクトのある資料だったと思っています。本日、議論を再開するに当たり、 先ほどご紹介がありましたが、薬剤師職能、あるいは薬学という学問分野について造詣の深い先生方にお 越しいただいています。お越しいただいた先生方から、薬剤師、あるいは薬学の現状に対するご意見、将 来に向けた期待、ご懸念ということについて、率直なご意見をいただきたいと考えています。  そういうご意見を伺った上で、この検討会としては、これから先できれば継続的に、薬剤師、あるいは 薬学の将来に関し、必要な提言をしていこうと考えています。そのための自由な意見交換をこの場でやっ ていただきたいと思っています。  本日、わざわざお越しいただいています先生方をご紹介いたします。ご発言をいただく順番にご紹介い たします。まず、そちら側に座っていらっしゃいますが、新潟薬科大学学長の山崎幹夫先生です。京都大 学大学院薬学研究科教授の橋田充先生です。金城学院大学薬学部准教授の網岡克雄先生です。日本製薬工 業協会研究開発委員会の元委員長、塩野義製薬の顧問をしておられます奥田秀毅先生です。慶應義塾大学 医学部教授の池田康夫先生です。各先生におかれましては、先生方のご見識を伺うにはあまりにも短くて 大変失礼なのですが、大体10分程度でお話をいただければと思います。その後、お時間の許す限り、この 場にそのままご臨席いただければ大変幸いでございます。よろしくお願いいたします。  早速ですが、最初に山崎先生、よろしくお願いいたします。 ○山崎参考人 本日はお招きいただき光栄です。この問題は話し出すと3日3晩かかります。それを10分で やれということですので、かいつまんでお話申し上げます。  ご記憶いただきたいためにメモを書いてきました。本日初めて伺ったのですが、本日は1年ぶり、3回目 ということで、完璧な資料を提供する厚生労働省からの資料に基づいて検討されてきていますので、そう いった現状分析とかについては一切コメントいたしません。ただ、2のところにメモいたしましたが、こ れだけは是非、私の話の前にインプットしておいていただきたいと思います。  いま、井村先生からもお話がありましたが、薬科大学が倍増いたしました。これはそこから供給される 薬剤師の数が倍増されるということを意味する。薬科大学、薬学教育の片隅の問題だと認識されると大き な間違いだと私は思います。これは一種の異常な社会現象であると捉えていただいて、これに対する対応 を真剣に考えていく必要があるだろう。これが第1点です。  院外処方せん発行率は既に50%を超えています。例えば、私がおります新潟県では、既に10人のうち7 人の方々は地域の保険薬局で調剤を受けたり、服薬相談を受けたりという状況です。したがって、需給の 問題から言うと、企業、あるいは病院薬剤部への薬剤師の就職率というのは減少する傾向にあり、薬局、 ドラッグストアへの就職が高まっている。私の大学はみすぼらしい大学で例にならないかもしれませんが、 ほとんどは薬局・ドラッグストア等に就職するという傾向です。  しかし、10人に7人は保険薬局に行っておりまして、薬局への供給がいま増加の傾向にあると申し上げ ましたが、予測的には、処方せんの発行というのは既に限界に近づいているという考えがあります。アメ リカの例で言うと80%から85%、日本の場合は大体70%ぐらいだろうと言われています。それが既に50% を超えて、そこに近づきつつある。ある試算によると、5万7,000軒の薬局が年間に3万枚の処方せんをこ なすと、17億1,000万枚の処方せんということになる。これが70%の限界ということで考えると、年間に 8億です。そうすると、算術計算的に調剤薬局のうちの半数は撤退を余儀なくされるという予測がありま す。最初は暗い話で申し訳ありません。  さらに、調剤報酬は医療報酬の中でターゲットになるおそれがある。それから、処方せん発行に対する 報酬は、医師に対する報酬がもしも削減されていく傾向が重なってきた場合に、処方せんの発行というの は減少していく。したがって、いま私が申し上げた危機に近づいている、危機がさらに近くなると言われ ています。したがって、結果的に言うと、今日は明るい話をするために来たように自覚しているのですが、 どうしても予測は暗い。  そこで、このまま行くと、診療が終わって、処方せんが出てきて、調剤をして服薬指導するというよう な、これまでのパターンの中で考えますと壊滅的です。未来はないということになる。別の視点から考え てみたらどうだろうかということで、ここで先生方に目つぶしのような話をして、目先をちょっとはぐら かしておいてこの話題を提供しようとするわけです。私は歴史が好きで、大学でも科学史科学論という講 義を受け持っていますが、比較文化類型学というのがあります。これはどういうものかというと、各地域、 各民族がございます。これは平面的要因と言っていますが、それぞれの所に特有の文化類型がある。それ から、これは経時的に時間を追って変化していく。そこにはいろいろな問題が出てきます。人為的な戦争 や飢餓とかも含まれてきますが、そういったものを経て独特の文化類型が出てくる。  最近はグローバル化ということが行われています。にもかかわらず、この類型というのは簡単には消え ないというのが事実関係でございます。我が国の医療を考えると、そこに書いたように、まずは中国医学 が伝わってきて、我が国で独特の漢方医学が成立してきた。それが江戸期まではずっと続いてきているわ けです。江戸の末期になりますと、オランダ医学、蘭方医学というものが入ってくる。ここで西欧の近代 医学というものに目覚めたわけですが、明治政府は英断を持ってこれをドイツ医学というものに切り替え ていった。つまり、オランダ医学の向こうにドイツ医学があるということで切り替えていった。そこから 100数十年たっていますが、現在我々が触れている内容は、ほとんどがアメリカ医学の影響を受けています。  ご存じのように、アメリカというのはヨーロッパからの移民が築いた。200年を越えていますが、200数 十年の歴史の中で新しい医学体制というものを築き上げていった。我が国はいま、その体系の中に放り出 されていますが、医療に対する感覚としては、江戸まで続いた中国医学からの影響を受けた漢方医学です。 これは医師1人がすべてを裁量して患者と向き合っていくという体系で、これはなかなか消えないわけです。 漢方医学的な思想の影響というのは相変わらず大きく残されている。  したがって、いま申し上げた地域、民族、時間の経緯、それぞれに固有の医療文化を持っているところ で、これをどう理解して、どう発展していくかというとき、比較文化類型学の立場から言うと理想類型と いうものを作ることができる。つまり、そういうものはそういうものとして、それを下敷にして理想類型 というものを作る。これまでのお話で言うと、我が国の医療、特に薬剤師の存在というものに対しては異 質なところがございます。そういったような異質、あるいは若干弱い、姿が見えないものを否定するので はなくて、その中から理想類型を作っていくという考え方をしないと、薬剤師の需給問題というのは、い まの医療体系、いまの類型の中では先行きが暗い。だから、別の理想を持っていこうではないですかとい うことを申し上げています。こうしないと、明るい形というのは見えてこないだろうと思います。  4で、今後の問題としては、それぞれ異なる文化類型を持つ先進諸国があります、後進と言っては失礼 ですがそういった国もあります。そういったものを比較しながら、我が国が持ってきた固有の医療文化、 その上に、我が国特有のこれからの薬剤師の役割というものを築いていくことが必要になるだろうと思っ ています。追い風としては医療法の改正があり、薬剤師は医療の担い手であるというお墨付きをいただき ました。そのあとの改正では、薬局、地域の現薬局は医療提供施設として位置づけられるというような法 律的後押しがあります。これは地域医療というものを視野に入れていこうという法律改正でして、高齢化 社会というのは、日本はもう既に高齢社会に入っているのだそうですが、薬剤師は地域の生活者の健康を 守る地域医療の担い手であるとして、医療法の改正がバックアップしてくれている。あとは薬剤師の意識 の問題で、相変わらず報酬が高い、それほど自分を動かさなくても済むような医療の体系の中で過ごして いこうとしたら、これは暗い。しかし、治療医療、地域医療の担い手として、新しい分野を切り開いてい こうという意識になれば、私は未来は明るいだろうと感じています。最も生活者の身近にある健康相談相 手として、セルフメディケーションというものを推進していくプロモーター、キーパーソンになるだろう、 薬局やドラッグストアはセルフメディケーションのキーステーションとして、地域の生活者の信頼を得て いくことになっていけば、薬剤師の行き先というのは明るく開けるだろうと思います。  在宅介護という問題が非常に大きな問題として我々の目の前に迫ってきています。いま、後期高齢者が 問題になっていますが、あるいは健康障害者の方たち、そういう方たちをどういうように支えていくか。 薬を通じてこういった方たちの信頼を得ていくところに、いままでにあまり関与できなかった薬剤師の役 割が出てくるだろうと思います。  今日の資料7、資料8を拝見しても、薬科大学の卒業生は10年前に比べると倍になっているわけです。こ の人たちがいままでどおりの職場を求めていこうとしたら、これはパンクします。だけれども、地域の中 に自分たちの生きがいを持って、セルフメディケーションをリードする。セルフメディケーションについ て話すと、3日3晩のさらに向こう側に3日3晩かかるのです。今日はそういうお話はできませんので、いろ いろな資料を参考にしていただきたいと思います。  今年の4月から特定健康診査・特定保健指導制度というものがスタートしました。これは40歳から74歳 まで、メタボにならないような特定の健康診断を受けましょうと。新潟では薬局がこのポータルサイトと して、薬局へいらっしゃいと。そうすれば、このような健康診断への道を一応つけようではないですかと いう運動を、薬科大学が地域の薬剤師の方々と一緒になってやっていこうと考えています。  時間でございます。話は貧しいですが、時間だけは守ることでお許しいただきたいと思います。ご清聴、 ありがとうございました。 ○座長 どうもありがとうございました。山崎先生は今日ご都合があり、あいにくこのあとここを退席さ れますので、いま、ここで各委員からご質問がありましたら出していただきたいと思います。いかがでし ょうか。 ○神谷委員 1つだけ、表現を少し変えていただければというところがあります。2の1番目の2行目、薬剤 師の働き場としての病院、企業は減少傾向にあると言っていますが、実際の数はほんの僅か微増か横ばい です。パーセンテージで見たら、総数が大きくなっているから減少という形に見えますけれども、資料3等 を見ると数としては横ばいだと思います。 ○山崎参考人 わかりました、ちょっと表現がうかつでした。卒業生の中の行き先の比率でいうと落ちて います。 ○神谷委員 パーセンテージは落ちているかもしれないですが、実数は決してそういうことはないと。 ○山崎参考人 我々の立場から言うと、卒業生がどの方面に行くかという関心があります。そのうちの、 どのぐらいのパーセントが病院に行って、どのぐらいが企業に行って、どのぐらいがドラッグストアとい う考え方をしていますので、こういう表現になりました。ですから、先生のご意見を入れて、「実数では 微増」という表現を入れたいと思います。 ○堀内委員 昨年、「病院における薬剤師の業務及び人員配置に関する検討会」が開催されました。その ときに、全国すべての病院、診療所に対しての薬剤師業務等の実態調査を行いました。配置基準は70人に 1人ということになっていますが、調査結果からみると特定機能病院並みの30人に1人が6割に達しています。 50人に1人以上になると8割以上になります。これは3年前の検討会のときから比べても急激に薬剤師数が増 えていることがわかります。  ここに2006年までのデータが出ていますが、是非、新しいデータをお出しいただきたい。やはり、医療が 大幅に変わってきていますので、その中で薬剤師の配置がどうなっているのかを是非、データとしてお示し いただいて、それを基に検討する必要があるのではないかと思います。全体としては急激に増えている可能 性があると考えています。 ○座長 ありがとうございました。是非、今後資料を整える場合には、その辺に注意してやっていきたいと 思います。山崎先生のお話に対し、ほかにご意見ありませんでしょうか。 ○藤田委員 私は行政を担当しています。いまの点、数字上で見れば微増なりという考えなのですが、やは り病院の薬剤師の業務というのはこれからどんどん専門化されて、重要な位置づけになってくると思います。  あと、病棟でいままで看護師等がやっていた行為が、病院薬剤師が主流になってやっていかないと、これ からの医療安全にはつながっていかないと考えています。数字だけでこの辺の判断をするのは非常に問題か なと思います。 ○座長 ありがとうございます。いまのお話のように、薬剤師が病院の中でやらなければならない仕事が実 際にはやられていないという話があります。昨日から今日にかけてのニュースなどでも、輸液の作り置きな どという話が出ていましたが、大いに関係があるのではないかと思っています。ありがとうございました。 いかがでしょう、山崎先生に何かご質問はありますか。 ○望月委員 非常にわかりやすい話であったと思います。我が国に特有の医療類型の現状が理想類型にいく よりも前に、まだヨーロッパやアメリカの薬剤師の類型に届いていないという点が、非常に大きい問題だと 思います。その理由の1つは、やはり薬剤師の資質、つまり薬剤師教育がそこまでいっていない。いま、6年 制で従来とは違う資質を上げた薬剤師が出ることになっていますので、まずそこの段階にいく。そのために は6年制薬学教育でそれだけの価値のある薬剤師が出るということを我々は保証しないと、まだ欧米の段階 にも達しない。達しなかったら、ここに書いてあるような理想類型にはほど遠いということが考えられます。 やはり、やるべきことは大学、あるいは医療機関、薬局及び病院において、薬剤師をいかに育てあげるかが いちばん大きいポイントになるかと思います。そうなればこういう理想になると思います。 ○座長 教育担当者らしいお話が出てきました。 ○小田委員 いまの望月委員の話につながるかと思いますが、私どもは、いま、山崎先生が言われた地域の ドラッグストアを代表して参加させていただいていますが、同じような資格者である看護師、医師と比べる と、薬剤師の教育の中に絡むと思うのですが、意識の問題の中で薬剤師の免状、もしくは薬剤師というのは 誰のものかというところに絡んでくるのではないか。言い方を変えますと、頭数は足りているのですが、 「私は何時間しか働かない」という薬剤師が私どものフィールドでは非常に多いのではないかと思います。  ご存じのとおり、薬剤師は女性の方が非常に多い産業の1つでもあろうかと思います。 ご主人の扶養の範囲内でという条件で、就職を希望される方も多いわけです。この実態はまだ把握しており ませんが、感覚的にそういう方が多いので、頭数は足りても時間数的にどうか。そして、また、山崎先生も おっしゃっていたような、薬剤師の医療の担い手としての教育も、現場と学校側が相携えてしっかりやって いければ、先生の言われたところにも、到達点が早いのではないかと思っています。 ○座長 ありがとうございました。そのほかにございますか。もしよろしければ、それでは山崎先生、どう もありがとうございました。次は橋田先生、ご意見をお願いします。 ○橋田参考人 橋田です。よろしくお願いいたします。いま、山崎先生から、この問題の全体像を非常にわ かりやすくご説明いただきました。私は国立大学で教育に携わっていますので、そういった立場からどうい う人材の育成を目指すか。それから、育てた人材が社会に出たときにいろいろな職域が考えられ、多様な職 種があると思いますので、そういった視点からお話させていただきたいと思います。  お手元の資料に基づいてご説明いたします。1枚目、ここに今日私がお話させていただきます内容のバック グラウンドを整理させていたただきました。大きな立場は「大学人として」ということで、たまたま6年制 の学部教育制度を作りましたときに研究科長を務めさせていただきましたので、そういう関わりを含め、先 ほど申しましたように、やはり教育、需給の問題は大学側がどういう人材を養成するかをきちんと提示して、 社会にその活用をお願いするというのが筋かと思っています。  教育の目的、ミッションについては、各大学でそれぞれ議論しておられるところですが、私どもは簡単に 申しまして、学部はやはり薬物治療を中心に担う医療人を育てる、その際サイエンスマインドも持った人材 であってほしいということです。大学院は、6年制を基盤といたします4年制の大学院を出た人材ということ で申しますが、医療人としてのバックグラウンドを持ったサイエンティストを育てることが目標かと思って います。  そういう立場を背景として、私自身は、これまでにこの問題といくつかの点で接点がありましたので、そ の点から触れさせていただきたいと思います。1つ目は「薬剤師問題検討会」に入れていただいていました ので、平成14年の需給予測というところにもいました。その立場からすると、当時はやはり6年制教育が実 現しても人材が十分確保できるという確認が重要で、もちろん将来的には参入薬剤師数を減らすことも考慮 されなくてはならないという指摘もあったわけです。そういう意味で、いまの時点で考えますと、もちろん 需給というのは非常に大事な問題だと思いますが、需要に余裕がある環境あるいは時期にあるということは、 まず資質向上を目指す絶好の機会ではないかと考えています。その点を挙げさせていただきたいと思います。  次に「薬剤師の行政処分の在り方に関する検討会」にも少しかかわらせていただきました。これは薬剤師 に高い職業倫理と知識・技能の保持を求め、それにもとることがあれば行政処分も考えるということです。 その中で、薬剤師業務として病院、薬局における実務に加え、ここにありますように製造販売業におけるい ろいろな業務も挙げられて、これを広い意味での行政処分の対象とするという書きぶりになっています。そ ういった意味で、他の医療職と比較して、職域が広いことを後ほどご説明させていただきたいと思います。  3つ目は、学術会議の薬学委員会に「医療系薬学分科会」があり、私はその委員長をしておりますが、そ こで医療系薬学の学術と教育のあり方について議論をしています。学術会議ですから、どちらかといえば大 学院教育のあり方などの議論を中心にしていますが、そこでのポイントは、やはり高度医療を進めようと思 えば医療系薬学、薬剤師の役割が非常に重要である。また創薬に対しても大きな役割がある。この点は、ま た奥田先生からお話が出るかと思いますけれども、企業側でもそういった人材に対して期待を持っていただ いていると思っています。  さらに、私は長年国際薬学連合(FIP)の執行部メンバーを務め、さらにWHOや、World Health Profession Alliance、これはいわゆる四師会、医師、看護師、歯科医師と薬剤師会の国際レベルの連合ですが、こうい う活動にも接点を持っています。そこでの経験を申し上げますと、やはり医療制度というのは各国でずいぶ ん違うということがあり、中には、これは特殊な例かもしれませんが、薬剤師の国外流出といったことが問 題になっているケースもあります。一方、教育に関しても、ヨーロッパはいま内容の標準化、例えば英語で 統一して教育するような方向にずいぶん動いています。また、アフリカなどでも、旧主国によって英語圏で あったりフランス語圏であったり、かなり共通性の高い教育が行われています。私はこういう視点もあろう かと思っていますが、日本の場合はむしろボーダーレスになっても、人材提供におけるグローバリゼーショ ンはなかなか難しいかなと考えているところです。  以上の内容をもう少し肉付けしてお話させていただきたいと思います。職域が広いというのが第1点。産 業界ではここにあげた製薬企業、化粧品等、CRO、食品、農薬、いろいろな産業に薬剤師の職場があるので はないか。また、次にデータをお示ししてお話させていただきますが、例えばアメリカの例を見ると製薬企 業の開発や研究の職域に、medical scientistというキャリアを持つ人材の役割がありますが、そういった 例との比較の中でさらに議論する余地があるのではないか。あるいは、製薬企業の総括製造販売責任者等の 職についても、トップはお1人ですが、そこに行きつくまでのいわば分母となる層にたくさん人材が要るの ではないか。こういったことを少し意識しているところです。  次の3枚では、データを使って少しお話させていただきたいと思います。1枚目のデータは、WHOがいろい ろ統計を出しておりますが、そこでの医療関係職の数的比較といったものです。日本の薬剤師のところの数 字も少し引っかかりますので、これは定義の問題があるのだと思います。その点はおいて、申し上げたいポ イントだけを申し上げますと、1つはヨーロッパ、アメリカを比較していますが、北欧、オランダやスウェ ーデンとかでは3,000とか5,000という薬剤師の数があります。これは国策としてこういうコントロールをし ているということと、教育そのものが国立大学で行われていますので、それが可能な環境にあるということ だと思います。しかし、我々はそういう環境ではありませんので、違う発想がいるということになります。  この表では、Pharmacistの隣にPublic and environmental health workersと書いてあります。次の頁を ご覧ください。実はWHOではHealth Workforce、要するに医療関係、健康関係の専門職をいろいろな形で分 類していますが、場合によってはここにあります18のカテゴリーに分けることもできる。いちばん上が Physician、6つ目にPharmacist、その下にassistant、technicianもあるわけです。下を見ていただくと、 Environmental and public health workers、Community health workersなどございます。こういった職域 に薬剤師がどのようにかかわっていくかが1つの視点と考えているところです。  次に移らせていただきます。これはアメリカの雇用統計、労働統計ですが、いろいろな職域、あるいは産 業界でどういう人間が働いているかの統計が出ています。上から2行目にMedical scientistと書いてありま すが、この職種を取り上げさせていただきます。私は医療制度につきましては全く素人ですが、書いてある ものを見ますと、Medical scientistというのはMedical Schoolで教育を受けた、いわゆるMD・PhD、あるい はPhysician scientist、そういったものに相当する職種のようです。それがアメリカで見ると9万人いると いうのがいちばん上の数字、2006年のNumberを見ていただくと9万人いるわけですが、そのうちの1万人は Pharmaceutical and medicine manufacturing、製薬産業、企業で働いているとあります。それ以外に scientificなProfessionとして2万7,000人、教育機関、医大等で2万9,000人という数字があり、下のほうで はGovernment、行政にも4,400人というMedical scientistが働いているとされています。  いずれにしても、私のイメージでは、Medical Schoolで教育していますし、日本の基礎医学の先生方とも オーバーラップする部分がずいぶん多いのではないかと思いますが、こういった人たちが同時に企業にも数 多く勤めているという実態が示されています。これはよく、アメリカの製薬企業には多くの医師が働いてい るといわれていますが、この話と完全に一体かどうかはわかりませんが、つながる部分があるのではないか と思っています。  ちなみに、アメリカ全体で製薬産業の雇用人数として30万人という数字がありました。そのうち、専門職 が8万人で、今申し上げたMedical scientistがここに1万人おります。例えば、Chemistとして1万5,000人と いう数字がありますので、こういうバックグラウンドの方がずいぶん働いているというのは強い印象を与え ます。この点に関しては、いま学術会議で議論しています、6年制学部を出たあと、さらにscienceの領域で 大学院に進む人たちの進路として、こうした人材をより新しい専門性を持ったscientistとして是非、産業 界でご活用いただきたいと思っているところです。  最後に、今まで申し上げてきた医療やサイエンスの世界に加えて、薬剤師が社会に直接関わるという意味 においても、非常に多様な領域、職域で活躍する余地はあるのではないかと思っています。まず、いわゆる MRの問題、登録販売者の問題について、それぞれ試験があります。ここに「補完」という言葉を書いてしま いましたのは、適切ではないかもしれませんが、やはり一義的には薬剤師が持つべき職能をより拡大して、 ご担当いただくということですので、この部分には将来的にもっと流動性があるのではないかと思います。  それから、より一般的な言い方をしますと、いまの社会情勢や環境を考えると、環境問題や食の安全とい うのは非常に大きな問題であります。一方、薬剤師は高度な専門教育を受けて、健康から環境にまで専門性 を持っています。もちろん、国家が認定する資格ですし、先ほどの行政処分等にもありましたように、倫理 的、あるいは業務内容に関して大きな縛りも受けています。したがって、薬剤師の職能としてこうした環境 問題、あるいは食の安全等にこれからさらに関わっていくということは十分可能でありますし、必要ではな いかと思っています。  以上のように、薬剤師の職能はさらに広がる余地があるのではないか。医療とか健康に関わって、いろい ろな職能があり、ある部分は不足し、ある部分は少しゆとりがあるということですから、そういった部分を いかに効率的に運用、活用するか。それは社会全体から見ても、リスクマネージメントの視点から見ても、 重要な部分ではないかと考えています。ただ、そうした人材を本当に社会に役立てるためには、やはり社会 制度の整備、医療現場においても、もちろん産業界におかれましても、そういう教育を受けた人材をこれか ら我々は供給しますので、是非、ご理解いただけたらと思っています。以上です。 ○座長 どうもありがとうございました。のちほど全体でディスカッションするわけですが、この段階で特 に橋田先生のご意見に対してご質問、ご意見はございますか。また、のちほどでよろしいですか。それでは、 次は網岡先生、よろしくお願いいたします。 ○網岡参考人 網岡です、よろしくお願いいたします。現在、私は薬学部で教員として働いていますが、過 去には病院の救命救急センターというところで、専任で薬剤師もやっていました。  いま医師、看護師不足を鑑みて、日本の医療の供給体制は大変難しい状況になっています。このような環 境の中で、外国人看護師等の受入れ等というものも検討され、また施行されています。ただ、医療経済学の 先生方にお話を伺うと、医師が急に不足しているわけではなく、救急医療でありますとか小児、夜間の対応 というような、労働条件の悪いところから離れていることに一部原因があるのではないかということが言わ れています。外国人看護師を入れてということに対して、この政策自身に否定はありません。しかし、医療 現場の先生方が医療というものを考えるときに、コミュニケーションは大変重要な要素であります。 また、より良い医療を行う場合に患者に対して、日本人特有の感情や表現の理解、こういうものが必要不可 欠なのではないかと考えています。  また、医療安全対策においても、他の医療スタッフとのコミュニケーションが大変重要であろうと思って います。つまり医療を行う側にも、受け入れる患者にとってもコミュニケーションを取ることの難しい医療 スタッフが医療を行うことは、可能であるが難しい面があるということは、先生方も容易に想像できるとこ ろではないかと思っています。  このような状況において既に医療の担い手となり、医療に参加している薬剤師の権限を拡大する。あまり 権限を拡大するとか、職能を拡大すると言うと、職能の団体どうしのいろいろな問題点もありますが、ここ は検討会、意見を述べる場ですので少しお話をさせていただきたいと思います。  このような医師、看護師の業務の過剰な状態を緩和するために、薬物療法、あるいは既に医療の担い手と して医療に参加している薬剤師の業務を、無制限に拡大するとは申しませんが、拡大することによって、医 薬品関連、あるいは薬物療法周辺の安全対策や適正使用が飛躍的に進展する可能性があるのではないかと考 えています。先ほども申し上げたように、職能に関する協議というのは関係団体の協調が必要です。しかし、 この問題自身は国民の医療提供が大変難しい時期に各団体の先生方もご努力されています。そういう立場に 立ってご検討いただけたらと思っています。  私が過去に救命センターで、臨床で薬剤師をやっていて感じたところで、薬剤師ができるのではないかと いう項目を少しお話させていただけたらと思います。メモをお渡しできなかったのは、この内容が過激です ので、独り歩きしても大変だなと思っていまして、申し訳ありませんが口頭でお話させていただきます。例 えば、脳血管障害や脳梗塞を起こした患者、経口投与が難しい患者に坐薬などの薬物を投与する、あるいは 軟膏の塗布、一部褥瘡等、既に私のおります愛知県などの薬局では在宅で積極的な取組みが行われています。 通常、患者が行っている行為、あるいは家族が行っている行為、こういうものは、薬剤師が行う医療という ところでは、やっていらっしゃる先生方にしてみれば当たり前だということになっているのかもしれません。  また、今般、先ほど座長もお話されました、原因ははっきりしておりませんが三重県の注射の作り置きの 件、少なくともあのようなものに関して薬剤師がやるということになっていれば、その安全性に関して検討 を加えているということは間違いなく行われていたのだろう。その人数が圧倒的に多いものでなくても、予 防できた可能性はあったのではないかと考えています。  次に、既にアメリカなどでは10年以上前より行われていますが、リフィール処方せんです。鎮痛剤などの 限られた医薬品や、アメリカではかなり拡大されていますが、骨粗鬆症の薬、カルシウムなどがリフィール 処方せんで投与されています。また、ほかでもあるのでしょうが、カリフォルニアで見たところでは、鎮痛 剤などの限られた医薬品に関しては、24時間以内のドクター・チェックを受ければ薬剤師が処方できるとい うようなことも、既にアメリカでは行われています。この辺り、いま疼痛管理、あるいは緩和医療というと ころは、先日も東京で緩和医療薬学会が開かれましたが、大変多くの薬剤師が興味を示し、参画しています。 こういうところにも可能性があるのではないかと思います。  また、いちばん難しいのか、あるいは「このようなことぐらいは」となるのかわかりませんが、バイタル サインのチェック、フィジカル・アセスメント、非侵襲型の検査においては、患者が測れるものであったり、 患者自身が測れるような血糖値であれば、もうこれは薬局などで薬剤師が測っていいのではないかと思って います。例えば、インフルエンザの検査などは大変簡易的なキットがもう既に出ています。パンデミックな どを念頭に置くと、薬局等でそういう検査ができるというのは大変良いのではないかと考えています。教育、 実習などが必要であるとは思いますが、もう一歩進んで、簡易的なワクチンが打てる、あるいはそういうよ うなキットができるということになれば、そういうものも可能だと、こういうようなものも進んでいけるの ではないか、薬剤師でやれるのではないかと思っています。あとは薬局店頭での血糖測定、性感染の診断キ ットなどもいいのではないかと思っています。  このようにやれることを羅列すると、そのようなことを薬剤師に任せるのか、あるいは任せられるのか。 あるいは、国民自身がいままで薬剤師がこういうことを語ったり、こういうところで患者とお話したり説明 をしたりがない状況で、突然明日から出来る、これは無理なことは重々理解しています。そういう意味で、 いま大学におりますが、薬学の教育の中で、最新の、あるいは許される可能性のある、限界という言い方が 正しいかどうかわかりませんが、そういう実務実習前実習、あるいは可能性を追っての実務前実習を行う。 ときどき、学生はできると勘違いすることがありますので危険をはらんでいますが、そういう職能が進んで いくときには、そういう最先端のところも経験するのだというような学校、大学の取組みが、医療人を出す のだったら必要かなと思っています。  最後ですが、「CBL」という資料をお渡ししました。この教育は既に、医学教育などではかなり充実して行 われている教育であります。少人数教育で行うわけですが、Case-based Learning、ケース・スタディーで学 んでいくということです。日本人は比較的、座学、いわゆる講義を受ける、それを勉強して理解するというの は得意な人種とは言われているわけです。そうは言うものの、学校の試験というものは、例えばマルとバツ を付ける場合に「わからないけれども、マルかバツ、どちらかだから、わからないけどペケ打っておこう、 マル打っておこう」、ひょっとして当たったら1点もらえてラッキーという世界があります。  ところが医療の現場に行って、薬剤師が求められる決断というのは、多分、わからないなら調べる、わから ないなら立ち止まるという教育だと思います。そういう意味では試験は大変必要ですし、国家試験の方策を変 えていかなくてはいけないのかもしれませんが、いまのところ、学生はそういうところで頭がいっぱいという ことになります。  ここの中でCBL、ケース・スタディーでやっていくことのメリットです。まず現場で薬剤師の先生にやった わけですが、本学の学生にもやっています。『Drugs in Use(DIU)』というのは、イギリスの薬剤師会が薬剤 師向けに出版したもので、これをメイティスというところが翻訳してくれています。この本の「うつ病」のと ころを使って勉強しました。ほぼ、その授業の進め方というのは、イギリスと同じような形でやっております。 このやり方というのは3枚目を見ていただくとわかりますが、1日目の患者の状況、4週目の患者の状況が書いて あります。その横にはQ1ではうつ病の有病率、つまり通常講義で受けるようなこともクエスチョンとして出し て、学生に先に渡してしまいます。何の講義もしないし、事前の教育もいたしません。自分でまず調べてきな さいということです。薬局の先生方とやるときには、2週間前に「不幸の手紙」ということで、先生方にこれを お渡しして、やってきてくださいということになります。  2枚目にCBLのポイントがあります。実は事前の自己学習が大変大切である。一生懸命勉強してくる、あるい は友だち、同僚とディスカッションするというときには、恥をかきたくないということもありますのでやって まいります。実はその勉強が終わった時点で、半分のことはやり遂げていると考えています。当日のディスカ ッションが30%、ロールプレイ、あるいは発表が20%かなと。ロールプレイの目的は、CBLを通して学んだこと を知識として覚えるのではなくて、使うという意識づけが必要かと思います。多分、いままで薬学部の教育の 中でいちばん欠けていたのは、「使う」という意識ではないかと思っています。  CBLのポイント3としては、楽しく、「me too(私も一緒です)」ではなくて、少しの違いでも自分の意見を 述べる。欧米の学生は大変よく自分の意見を言うというところがあって、同じでもちゃんと同じ意見を言うと いうところがあります。日本人もこういうところが必要なのではないか。また、これが現場へ出たときにいわ ゆる病棟、あるいは在宅、こういうところで医療スタッフとコミュニケーションを取るときの訓練になるので はないかと思います。  下のポイント4は司会の態度ですのでとばします。ポイント5ですが、大事なポイントはもう1つ、「答えは ひとつではない」ということであります。どうしても学生は答えを求めたがりますし、国家試験の問題でも正 誤表に一喜一憂いたします。言葉がちょっと違っていると全問正解で、ラッキーとか言っております。しかし、 実際の医療の現場ではその患者に合った医療が1つではなかったり、本当はベストのものをやりたいのだが、 ベターしかできないということがあります。そういうことに気付くということが大切なのかなと思っています。  いま、こういう教材をいくつか作っています。教育とか理解することというのは知識も大変大事であります。 CBLだけでいいとは決して思っていません。ただ、いままで薬学教育の中ではたくさんのことを覚えて、あるい は患者からたくさんのことを聞いて、そこの中から必要なものを抽出して何かを見つけるという考え方でした が、患者を理解する、あるいは患者の問題点を理解するといったときは、どちらかというと、患者がしゃべっ ていないこと、それから患者が気付いていないことを薬剤師という専門職が気付いたり、知識の中で見つけた りしながら患者の問題点を見つけていく。間を埋めたり、ないものを埋めていくという作業が実は相手を理解 することである。アメリカの教育学で、バランスフォードらがそのように言っております。これからの教育の 中で、こういう少人数、そして症例の中でやっていくということを取り入れることによって、現場でやるよう な職能拡大といったときにも「信頼される薬剤師」をつくっていけるのではないか。また、逆にそれが大学の 責務ではないのかと思っております。 ○座長 どうもありがとうございました。網岡先生のお話に、何かご意見、ご質問はございますか。 ○神谷委員 先生の大学では、1学年の定員は何名ですか。 ○網岡参考人 150名です。 ○神谷委員 150名というと、25グループぐらい作るという計算ですね、こういうのでやろうとすると。 ○網岡参考人 スモールグループでやるという場合ですね。スモールグループでやる場合には、同じ課題を2つ のグループにやらせて、最後に発表するときにディスカッションをグループ同士で対抗させたりしますので、1 度にやらせる方法としては、その倍ぐらいの人数までは可能かと思っております。 ○神谷委員 15、6人が1グループで10グループぐらいということですか。 ○網岡参考人 はい。 ○神谷委員 スモールグループ・ディスカッションの教育は有用であろうというのはわかっているのですが、 現実に、多い所は360人などという所で、スモールグループ・ディスカッションなどは、とてもできるわけがな い。我々医学教育に関わってスモールグループ・ディスカッションの指導を行っている者にとっては、150名で もかなり多いと思うので、それらが本当に機能するかどうかというのは非常に興味があるところなのです。 ○網岡参考人 150人を1人の教員で教育すると、他の先生はお休みできるので大変効率のいい教育でございます。 ただ、こういう教育をすると、1時間の授業の中で10人、15人、20人という数の教員が要るということで、先生 のおっしゃるとおり、教員の負担自体は大変増えてまいります。 ○座長 モデル・コアカリキュラムを作る場合にも、PBLのようなものについては非常に意識して作っておりま すので、何とか実現していかなければいけないことだろうとは思います。ありがとうございました。 ○神谷委員 モデル・コアカリキュラムにあるから、各大学ともスモールグループ・ディスカッションを取り入 れたカリキュラム自体は作っておられますが、現実に、実際にそれだけの教員を集めてできるかというと、かな りの労力が伴うわけですが、それで実際上の実が上がる教育ができるかというのは非常に疑問視されて、医学部 でも100名でさえ苦労しながらやっているという現状です。 ○座長 ありがとうございました。いろいろと問題はあると思いますが、ほかにございますか。 ○高柳委員 将来の薬剤師の問題ですが、先生方が言われたことは「将来の薬剤師の職域の拡大」だと思うので す。橋田先生は、医療だけではなく、学術、教育、行政、産業界、さまざまな分野内の職域拡大というようなこ ともおっしゃられましたが、いちばん重要なのは、医療人としての薬剤師の職域、職能の拡大だろうと思うので す。これがまず広がらないことには、薬剤師の職能の拡大も難しいだろうと思うのです。  医療人としての職能の拡大について今何が足りないかといいますと、患者との接触だろうと思うのです、医師 ・看護師に勝てないという部分は。直接患者に触れていない、患者の気持を酌み取ることができない、患者と話 をする時間がないということが先ほど出ました。そのためには、薬剤師に採血権、要するに採血してもいいと言 う。あるいは、先ほどバイタルサインというようなことが出ましたが、看護師が行うバイタルサインのチェック を薬剤師が聴診器を持って、看護師と同じように病棟で行う。そういったことができるようになれば、そして患 者としょっちゅう意思疎通ができるようになれば、自然に医療人としての心構えが身に付いてくるのではないか と思うのです。現在の薬剤師の状況として、そこがいちばん足りないのだろうと思います。 ○座長 ほかにご意見はございますか。よろしければ次の先生にお願いいたします。奥田先生、よろしくお願い いたします。 ○奥田参考人 カラーのスライドの資料を使わせていただきます。これは、4月11日に日本学術会議のシンポジ ウムがありまして、そのときに使ったものです。結構枚数が多いので、すべてについて話をするのでなく、そこ から選んで話をさせていただきます。最初からしゃべるのだけを用意してもよかったのですが、そうすると前後 の関係がわかりにくいと思いましたので、冗長であるかもしれませんが、一応全部配っていただきました。  薬学出身者が社内部署でどういう割合でいるかというのがスライド2(右下頁2)です。研究部門が30.4%、開 発・臨床開発部門が47.8%、営業部門が20.7%、市販後管理部門が43.7%という数字です。開発・臨床開発、及 び市販後管理部門における薬学出身者の割合は各社とも高く、薬剤師の資質というのが、こういう関係の業務に は要求されているものと思われます。次いで研究部門の割合が多く、創薬のみならず、品質や薬理部門の需要が 多いと思われます。営業部門は平均約20%ぐらいですが、各社のばらつきが大きく、薬学出身者に期待する資質 が各社で異なるものと思います。  スライド4(右下頁4)ですが、生産部門は10%弱です。GMP関係や製造の管理者として勤務しているものと思 われます。その他では、知的財産権に関する部門あるいはライセンス関係に従事しております。全体では、平均 で各社の全従業員数の中で21%ぐらい、大体そのレベルにとどまっています。  スライド5(右下頁5)です。製薬企業の立場から薬剤師に望む知識として、研究部門では、5番目のスライドに 書いてあるような知識と業務内容があり、左側の業務内容を遂行するに当たって必要な知識を右側に整理してあ ります。  スライド7(右下頁7)ですが、開発・臨床部門については左側の業務内容があり、それらを行うのに必要な知 識として、右側に羅列しているような知識が必要であるということです。  スライド8(右下頁8)です。製造部門について、業務内容が左側に、それに必要な知識が右側に書いてありま す。  スライド9(右下頁9)です。販売部門について、業務内容が左に、それに必要な知識が右側に整理されていま す。  スライド10(右下頁10)です。製造販売業、これは医薬品産業のことなのですが、その中で薬剤師の資格が絶 対に必要な職種があります。「製造販売業者は、医薬品の品質管理及び製造販売後安全管理を行うために薬剤師 を置くこと」となっており、これは総括製造販売責任者と呼ばれています。それから「製造業者は、製造を実地 に管理させるため、製造所ごとに薬剤師を置くこと」となっており、これを医薬品製造管理者といいます。それ から「卸売一般販売業者は、その業務を実地に管理させるため、営業所ごとに薬剤師を置くこと」となっており、 これが営業所管理者という形です。この3つは、薬剤師であることが資格要件になっておりまして、それ以外の人 間はこのポストには就けないことになっています。総括製造販売責任者は、一応、1製造販売業者について1人で ありますが、総括製造販売責任者になるためのオンザジョブ・トレーニング、つまり仕事をしながらそういうこ とを学んでいくわけですが、そういう役割として何名か必要なのだろうと思います。  スライド27(右下頁27)は12社にアンケート調査をした結果です。6年制学部、大学院修了者を採用したい部署 として、6年制学部の場合は営業、開発・臨床開発、市販後管理、研究・生産部門には少数と書いてあります。6 年制学部の場合、営業とか開発・臨床開発、市販後管理で欲しいと言ったのは、12社中、括弧の中に書いてある 数字です。研究・生産部門では、意外なことと言うべきか当然のことと言うべきか知りませんけれども、あまり 期待はされておりません。大学院修了者の場合、研究あるいは開発・臨床開発に対して、12社中10あるいは8と 結構高い需要があるようです。  スライド28(右下頁28)で、6年制学部、大学院修了者を採用したい部署です。6年制学部は、営業、開発部門 の採用希望が多い。大学院修了者の場合は研究、開発部門の採用希望が多い。開発部門は、学部、大学院を問わ ず採用希望が多いということでした。  薬剤師に望むこととして、高度な専門性、信頼性のある資格を有しており、臨床での実務実習の経験を活かし てほしい。MR職は薬剤の知識が豊富な薬剤師が望ましく、MRを目指してほしい。薬理学・薬剤学の基礎知識のみ ならず、薬事・医療行政に関する知識や社会性も要求されています。  続いてスライド30(右下頁30)です。薬剤師に望むこととして、在学中に取得した薬学知識を基に、他学部出 身者とは一線を画す学術派を目指し、入社後も、一層の薬学知識の習得と企業人としての人的向上に努めていた だきたいという意見があります。  続いてスライド35(右下頁35)です。MRには薬剤師資格が望まれるかと人事部長に聞いたら、「望ましい」と 回答したのが9社中5社、「特に必要はない」が4社です。望ましい理由としては、「薬剤師としての知識・考え 方は有用である」「MRがライセンス制になりつつあり高度の医療機関で必要」「薬剤師資格があると信用度が高 く、欲しい人材である」。  「特に必要はない」と答えた4社に、特に必要としない理由を聞いてみますと、「MR活動に必須でない」「MR に必要な資質は社内研修で実施する」「MRは薬学知識だけでなく、折衝能力・人間関係が重要」。だから、特に 薬剤師資格は必要がないという回答でした。  スライド37(右下頁37)では、MRには薬剤師資格が望まれるかということで意見をまとめてみました。「薬剤 師資格は必須条件として求めることはない。ただ、今後、業界としてMRに一層の学術知識が求められていくこと は容易に想定でき、薬学知識を持った方に入社いただくことは大いに歓迎すべきことである。ただし、医療関係 者との人間関係、信頼性という観点より、MRに深みのある人間性を求める傾向は今後も変わらないであろう。ま た、営業所における管理者要員として、一定数の薬剤師資格保持者を各営業所に配置する必要がある。」という ことです。  次に、MRの実態を調べたデータがあります。ほとんどは男性なのですが、女性の割合が少しずつ増えています。 MRの学歴ですが、必ずしも薬剤師ではなくて、文系その他薬学部以外の理科系の人の数がそれなりにあります。  最後はスライド44(右下頁44)です。製薬協の研究開発委員会でいろいろ議論をしたのですが、非常に常識的 な結論が出まして、企業が望む人材としては、医療系薬学の基礎的素養のある人材、科学的・合理的思考ができ る人材、生命倫理が身についている人材、利に走らず患者の目線で判断できる人材、黒か白ではなくさじ加減が 感覚的に理解できる人材、こういうものが製薬企業の求めている人材のイメージでした。しかし、「医療系薬学 の基礎的素養のある人材」を除けば、あとは別に薬学部に必ずしも限定される希望ではありません。  日本学術会議でこんな話をしますと、大学の先生からは非常に不評だったのですけれども、これは、現時点で、 いままでの薬学部の、薬剤師のイメージをそのまま踏襲した形での製薬産業が望む人間像です。すでにお話にな った先生方の話からもいくつも出てきていますが、これから後3年間、あるいはそれ以後も、6年制医療薬学的教 育を進めるということは壮大な実験だろうと私は思います。そして、その実験を価値あるものにすれば、当然、 製薬産業が薬剤師に期待することは大きくなってくるでしょう。薬学部の入学者数が結構増えております。しか も、4年から6年になって、学費を払うスポンサーである親は結構負担になるのですが、その親たちの負担を満足 させるような付加価値をこれからの薬剤師教育の中でやっていただく。そうすると、医療全般にわたっての需要 はともかくとして、製薬産業が求める薬剤師、それはこれから結構変わってくると思うのです。そして、私は産 業人として、そういう教育を薬学部で、これから壮大な実験として実施していただくことを希望します。 ○座長 どうもありがとうございました。奥田先生のお話に、ここで今ご質問等々がございましたら、お願いい たします。 ○堀内委員 今のお話は、製薬企業でどういう薬剤師を求めるかというお話でしたが、特に、販売部門あるいは MRにつきまして、スライド9では、疾病に関する知識ということが業務遂行に必要な知識ということで入ってお ります。スライド39でMRの学歴を見ますと、文科系の比率が53%になっています。当然のことだと思うのですが、 人間関係についてみますと、これは医療機関においても当たり前で、今そのために6年制教育の中でいろいろな教 育がなされようとしているのだと思います。MRの位置づけで、疾患のことを知っていて情報を提供すること。そ れから、最近の医薬品を見ますと大変技術が高度化しておりまして、分子標的薬、その他たくさん出てきており ますが、そういうことをきちんと理解して情報提供するためには、かなり高度な専門知識が必要だと思われます。 したがって、企業におけるMRの位置づけというものがこれを見ますとよくわからないのですが、その辺の関係を どのように考えたらよろしいのでしょうか。 ○奥田参考人 私は個人的に、MRは薬剤師がやるべき業務だろうと思っています。ですけれども、少なくとも、 いままでの薬学教育を受けて薬剤師の資格を持って入社した社員は、文系の人と、そこの潜在的な知識というの はあまり変わらないのです。ですから、文系の人にMRをやらせても、薬剤師にMRをやらせてもそれほど、薬剤師 がやっているからというのはなかったのです。  先ほど「壮大な実験」と私は申し上げましたが、私が期待するのは、6年制教育の中でそういう高度な薬剤に関 する知識を教育していただきたい。そうすると、当然、文系出身のMRよりは、そういう薬剤師のほうが働く分野 が広くなるし、医者との関係でも良好な関係が築いていけるものだと思っています。いままでの薬剤師を基本に して話をしたらこんな話になるわけで、私が個人的に期待するものは、もっと別ものです。 ○高柳委員 「いままでの薬剤師に期待していたものは」と今おっしゃられましたが、どうも、話が逆のような 気がするのです。要するに、メーカーのほうでMRに期待していたものが、どちらかというと薬学知識以外のもの、 そちらにウェイトを置いていた。一時、薬学部にもMRの希望者が随分いたのですが、薬学知識本来の、学んでき た知識以外のことが要求されることが多いということで、先生方もあまりMRを勧めなくなってしまった。それで、 かなりMR希望者が減ったという事実があると私は思うのです。その中で、最近またMRが医療現場で基本的に見直 されてきた。私は医療現場にタッチしていますけれども、MRとドクターの関係等で、もう少し本当の、学生が学 んできた薬学の知識を期待してほしい、むしろ、そう言いたいと思います。 ○小田委員 私は薬剤師を受ける立場、薬剤師に働いていただく立場としての意見なのですが。最後の結論のと ころで、薬科大学も6年制になり、費用もそれだけかかるから親の投資に見合う、という話がありました。では、 中学生や高校生が薬科大学を受けようか、どうしようかという判断をするときに、薬科学校でどういう教育を受 けるかというよりは、社会で薬剤師がどのような仕事をし、どのように社会貢献しているか、また、それに伴っ て、どのような社会的地位もしくは収入が得られるかというような判断のもとに、「じゃあ薬剤師になろう」と いうような形になるのではないかと思うのです。そういう意味からすると、もっと世の中で薬剤師がどのような 仕事をしているかというのを、私たちのフィールドもそうですけれども、メーカーのフィールドでも積極的に見 せていく。入学を是非したいというような形を我々が見せていく必要が先にあるのではないか。卵が先か、鶏が 先かになるかと思いますけれども、私はそう思いました。 ○座長 本当に、どちらが先かわかりませんが、いずれにしても、しなければならない努力だろうとは思います。 それでは先に進ませていただいて、最後になりますが池田先生、お願いいたします。 ○池田参考人 慶應大学医学部の池田でございます。よろしくお願いします。いままで地域医療を担う薬局など で勤務する薬剤師の話、あるいは在宅医療に貢献する薬剤師の話、さらに、薬学の専門知識を活かして、産業界 で研究職あるいはMRなどで働く薬学出身者の話が出ていました。これらに対しても、私どもも非常に関心がござ いまして、それなりに意見はあるのですが、本日私の立場では、大学病院で働く医師の立場としてお話いたしま す。ご存じのように、医療はいま非常に多くの問題を抱えているわけですが、その中で、薬学出身者の方々が果 たすべき役割について、私は2つのことをお話しようと思っています。  卒業生の就職動向を見ても、大学で働く人たちが増えているという状況は明らかです。それから、病院・診療 所に就職する方たちを合わせると50%近くになるということですので、医療施設でどのように働くかということ が非常に大きい問題だと思うのです。  私がパワーポイントで簡単にご説明しますと、今日お伝えしたいことの1つは、臨床現場のこと。先ほど高柳先 生が言われたように、臨床現場というのは、要するに患者と接点を持って薬剤師の方たちがどう働くかというこ とになると思うのです。それともう1つ、臨床研究のことについて簡単にお話をしたいと思っています。  臨床現場の話に関しては、薬剤師が常駐する病棟、いわゆるサテライト・ファーマシーというものを、大学病 院も含めて、病院では作っていかなければいけないのではないかと思います。  サテライト・ファーマシーでどういうことをやるかという絵がパワーポイントの2頁目にあります。治療状況の 確認、患者の状態を把握すること、患者のデータあるいは医師が処方したデータを確認し、調剤も含めて、どの ように安全に薬物療法が行われているかということを、まずやっていかなければいけない。これは非常に喫緊に 取り組まなければいけない重要な状況だと私は思います。  次の頁をめくっていただくと、これは私ども慶應義塾大学病院でやっている1つの病棟の絵なのです。ここの病 棟は外科系なのですが、個室が30床ぐらいある病棟です。こういう病棟が6つぐらい、薬剤師が常駐している病棟 として今ございます。どこの病棟も2名ぐらいの薬剤師が常駐し、20平米ぐらいの所で調剤等を行います。その下 にありますように、その業務内容は、ただ単に調剤をするだけではなくて、服薬指導対象患者の薬歴の管理、服薬 指導、それから医薬品情報の提供、それから副作用のモニタリング等もしっかりそこでやっていく。これは医師 と非常に連携をとりながらやっていかなければいけない仕事だと思います。それから、まさに患者と接点を持た ないと、やっていけない仕事だと思います。  次の頁をめくっていただきますと「薬剤師が注射薬混合調整を行う利点」とあります。大変当たり前のことが 書いてあるわけで、先生方の前でこの話をするのは大変恐縮なのですが、多くの病院が看護師、場合によっては 研修医や医師が忙しい合間に調剤をしているというのが日本の医療の現状だと思うのですが、こういうものを薬 剤師の方たちが病棟でやるということです。  これにより、どういう利点があるかというのは、ただ単に安全に調整ができるというだけではなくて、例えば、 がんの化学療法の場合は非常に大事であります。どういうレジメンを使って治療しているかということについて、 薬剤師がレジメンのチェックをする。そうすると、非常に質の高い、安全な医療が提供できるのではないかとい うことで、その下に1例を挙げて、いろいろ書いてあります。こんな形でオーダーが来ますので、ものすごく忙し い病院だと、ちょっとしたミスが起こることがあります。それについてチェックをすると、どんなことがミスの 原因になっているかということが、こういう例を見るとわかります。非常に些細なことなのですが、記載漏れも ありますし、勘違いもあるしというようなことで、これをチェックしていきます。特にプロトコールで動いてい るような場合が、がんの治療では非常に多くなりましたので、それについては、プロトコールを非常にきちっと 認識することによって、そのプロトコールどおりにやっているのか。プロトコールに反して治療が行われている としたら、それはなぜなのかというようなことを医師と議論しながらやっていく。そのようなことが非常に重要 です。特に副作用のチェック等は、レジメンを使うと、どういうものが出るかというのが分かるわけで、もちろ ん医師もそれに対する責任は持っているわけですが、薬剤師の方々が主に責任を分担してやるというような、医 療の中での役割分担というのが非常に重要になってくるのではないかと思います。  次の頁に、いわゆるサテライト・ファーマシー方式で「まとめ」を一応書いてあります。これは当然のことで すが、薬剤師は病棟スタッフの一員であるという位置づけを具体的に表していく、ということがどうしても必要 ではないかと思います。それが「臨床現場」というキーワードの簡単な話です。  次に、臨床研究の担い手として薬剤師の方が果たさなければいけない役割というのが非常に多くなってきてい るということについて簡単に申し上げます。  次の頁をめくっていただきたいと思います。我が国の臨床研究の現状について、ここにいらっしゃる先生方は 皆さんよくご存じだと思いますが、基礎研究に比べると、臨床研究における我が国のpresenceは非常に低いので す。なぜならば、インフラ整備が不十分であるということで、臨床研究に従事する医師や臨床研究を支援するNon -MD、薬剤師の方がかなり重要な役割を果たすと思います。あるいは生物統計の専門家等も含みますが、そのよう なインフラ整備をやっていかなければならないだろうと思います。  つい最近でも『Lancet』の2007年版でMark Colbyという人がこのようなことを言っているのです。“Doctors simply don't want to take part in clinical trial. They are too busy and there's absolutely no financial incentive.”と書いて、これだから日本のドクターはあまりやらないのだと言っているわけです。臨床研究には、 治験と臨床(clinical trial)とがあるわけですが、我が国の臨床治験の問題点というのは、このようなことで まとめられる、ということは皆さんもご承知のとおりだと思います。  それでは、日本における臨床研究・治験を推進するためにはどうしたらいいか。やはり、臨床研究・治験に通じ た医師、薬剤師の育成というのは不可欠だと思います。ですから、それを育成する。そして、人材の育成とともに、 インフラ整備をやっていくということが大事です。特に日本の場合には、国際的な視点でものを進めていかなけれ ばいけない。国際競争力を付けるということが非常に重要だということで、行政もこの点については非常に努力さ れているということは我々もよく存じ上げています。  その下に1つ例を挙げて、被験者を募集中の国際共同治験のプロトコールの数が書いてありますが、実際にグロー バルなトライアルに参加する率が、日本はこれぐらい低いのです。これを上げていくためには、英語でものが進む ようなインフラ整備、あるいは薬剤師や医師の育成が不可欠であると私は思っています。  次の頁で、大学、特にこういう場合には大学の病院あるいは基幹病院がイニシアティブを執ってやっていかなけ ればいけないのですが、大学における臨床研究・治験の現状はこんな状況であるということです。問題点は先生方 もよくご存じのとおりだと思います。  まとめが2つ書いてありまして、1つは、とにかく臨床研究に関しては、我が国のエビデンスを作るために国際水 準の臨床研究が不可欠であるということと、臨床治験もどんどん進めていかなければいけないということ、それが 大事です。それで、この臨床研究や治験は、大学が社会的、学問的にもリーダーシップをとって、どんどん進めて いかなければいけないだろうということ。また、「まとめ」の(2)ですが、ここで医師だけではなくて、薬剤師の 方たちが同じ目線でチームをつくってやっていくというような考え方にシフトしていかないと、なかなかこれは進 まないと思います。臨床研究は絶対に医師だけの仕事ではないということを、教育を通じ、あるいは現場での研究 の遂行を通じてやっていかなければいけないのではないかと思うのです。非常に駆け足でしたが、時間が限られて いますので、これで終わらせていただきます。 ○座長 どうもありがとうございました。何かここで特段、池田先生にご質問というようなことがございましたら、 どうぞ。 ○望月委員 最初の臨床現場の話なのですが。日本では、薬剤師が本来やるべき仕事も医師、看護師がやっている 場合が多々あるかと思うのです。慶應義塾大学病院での話は別としまして、全国的に、なぜそういうことになって いるか。薬剤師の技術、知識が信頼されていないのか、あるいは別のファクターか、というのを医師の立場から、 先生はどうお考えになりますか。 ○池田参考人 薬剤師の方が本当に専門的な知識を持っている、自分たちよりもしっかり持っているということに ついて、大学に勤めている医師が疑っているということは決してないと思います。ですから、いろいろな場面です ぐに医師は、薬局あるいは薬剤部に問い合わせてお聞きするということは日常的になりつつあると思うので、その 点は全く心配ないと思うのです。問題は、高柳先生からもさっきお話がありましたように、薬剤師の方が患者と接 触するチャンスがあまりにもないというところにあります。医療人として話ができるパートナーとして、まだまだ 距離があるのかなと思います。薬剤に関する専門的な知識に関する問合せは十分に今までもしておりますし、我々 も非常に敬意を払っています。ただ、患者の治療とかいうことに関して、チームの一員として話をしていこうとい ったときには、あまりにも現場を知らないというようなところがあって入りにくいところがあります。やっと看護 師がチーム医療のパートナーとして定着しつつあるということで、1周遅れあるいは半周遅れぐらいにあるけれど、 これはすぐに追い着くのではないかと私は思っていますが、いかがでしょうか。 ○高柳委員 サテライト・ファーマシーは大変素晴らしいシステムで、このような形でチーム医療に参加していく ことが薬剤師の形だろうと思います。そうすれば先ほどのような、患者と接触する機会も非常に増えてくるし、そ こから直接いろいろなことを学ぶことができるだろうと思うのです。医療現場の医師、看護師、薬剤師、スタッフ は、こういうあり方が必要である、あるいは望んでいるとは思うのです。ところが、かなり大きな病院でもなかな か実現していない。慶應義塾大学であればこそ、このようなことが実現できたのだろうと思うのですが、ベッド数 500床ぐらいでも、なかなかこういうふうにいかない。ひとえに、医師は稼ぐけれども、薬剤師はあまり稼がない という、厚労省の診療報酬の点数も含めて、その辺を改善していただかないと、なかなか難しいのではないかと思 います。各病院の院長先生と話す機会がありますけれども、例えば500床のベッド数で、ドクターが100人ぐらいは 要るわけです。ところが、薬剤師はその5分の1ぐらいでもぎりぎりなのです、そのうちパートだったりします。で すから、必要性を感じているのだけれども、こういうシステムがなかなか作れない。したがって、作れるようなお 金を投入していただきたい。これは厚労省に対してですが。 ○堀内委員 病院では薬剤師が病棟へ出向いて患者とあまり接しないようなお話がいまありましたが、実は8割以 上の病院で、いわゆる薬剤管理指導業務といいまして、病棟へ薬剤師が出向いていろいろな業務をやるようになっ ております。いまお話のサテライト・ファーマシーのような形で、きちんとした場所を確保してというものはまだ 限られているとは思いますが、これはスペースの問題等があって、なかなかすぐというわけにはいかないと思いま す。そして、その中で、池田先生がお話くださったように、チーム医療の一員としての役割をかなり果たしてきて いると思います。その経験の上に、次回の診療報酬の改定において、患者のところで薬学的管理をする、特に副作 用等も含めて、きちんと患者の状況を把握するというのが薬剤管理指導上の点数を取る場合の条件になっていると 思います。そういう面では、病棟の中で薬剤師がかなり専門性を発揮しつつあると考えています。まだ十分である、 すべての患者をやっているとは思っていませんが、いろいろやっているのです。  その中で池田先生にお尋ねしたいのです。これは網岡先生も先ほどおっしゃいましたが、例えばバイタルサイン のチェックをする。これは医療安全の観点からいうと、病棟へ薬剤師が常時行くようになっていれば、患者の状況 を十分把握できると思いますが、その中で、従来ですと、薬剤師は患者に触ってはいけないというようなことが言 われていたことがあります。しかし見ただけでは、副作用が起こっているかどうか分からないわけです。したがっ て、少なくともバイタルサインを取るというのは、チーム医療の中で誰がやってもいいことではないかと私は思っ ていますが、その辺のことについては、どう考えたらよろしいのでしょうか。実は、私は群馬大学医学部附属病院 に勤務していましたが、病院として、薬剤師が病棟でバイタルサインを取るのは構わない。ただしトレーニングを きちんとしてやるということで、実際に聴診器を持った薬剤師が現れつつあるのですが、このようなことをどう考 えたらいいかをお聞かせいただきたいのです。 ○池田参考人 個人的な意見ですけれども。いまサテライト・ファーマシーで、基本的には「安全な医療」がキー ワードになると思います。抗癌剤(がんの化学療法)あるいは小児の輸液、それから500cc以上の大量の輸液等の場 合には、やった後に患者を観察する。多くの場合には、例えば輸血だったら輸血部の看護師がやるか、あるいは輸 血部の医師がやるかということですが、この観察は医師でも、看護師でも、薬剤師でも、医療チームの一端として、 どなたがやってもいいのではないかというのが私の基本的な考え方です。チーム医療という考えを具体的に定着さ せるためには、そういうことから始めたほうがいいのではないかと思います。 ○座長 これから先は総合討論の形にしたいと思います。5人の先生方から非常に貴重なお話をいただいたのですが、 これからの薬剤師の活躍の場、それから、活躍できる薬剤師を養成するにはどういう薬学教育をしたらいいか、そ れから、薬剤師の職能、あるいは薬学という学問分野の将来見通しというようなことにつきまして、委員の皆様あ るいは先生方も含めて、ご討論をお願いしたいと思います。自由にご意見を出していただき、そういう意見を取り まとめるような形で、これから先、この検討会が職能団体あるいは薬学の大学のほうに対して何か提言ができれば いいと思っているところです。自由にご意見を出していただきたいと思いますが、小山先生、ジャーナリストとし て、いかがでしょうか。 ○小山委員 いま5人の先生からいろいろお話を伺いまして、薬剤師が職域を拡大する、新たな職能を確立する要 素は、かなりあるのかなという印象を持ちました。職域の拡大ということは、適切な表現ではないかもしれません が、言ってしまえば他職種との獲得競争です。例えば、いま池田先生からサテライト・ファーマシーのお話があり ましたけれど、薬剤師の対応が少しでも甘ければ、病棟にファーマシーなど置く必要がないという薬剤師への厳し い意見が、看護師さんなどから上がってこないとも限りません。  先ほど山崎先生は、一般用医薬品、セルフメディケーションとか、特定保健指導など、いろいろな話をされまし た。この特定保健指導にしましても、いま保健師さんたちが非常に力を入れて、対応を図っています。そこに薬局 なり薬剤師がどのように関わっていけるのか。これは制度や仕組みの問題というよりも、1人の薬剤師と1人の保 健師の力量が問われてくる。言葉を換えれば、職域を確保するための競争というのは、資格の競争ではなくて、資 質の競争ということになります。  そういう意味では、いかに質の高い薬剤師を世に送り出すかという努力、いま網岡先生、橋田先生、山崎先生な ど皆さんから、教育現場ではこういうことをやって、質の高い薬剤師の養成に努めていますというお話を伺いまし た。非常に大切なことであり、大変に意を強くしました。6年制の薬学部を終えた薬剤師が、社会に出てくる2012 年を、非常に期待したいと思います。  ただ、一方で私どもが調べたところでは、今年の入学生の数を見ますと、全体の総定員数を満たしていない、つ まり定員割れを起こしているのです。大学によっては、入学生が定員の半分以下というところまでありました。そ ういう大学で、本当にきちんとした薬剤師の養成ができるのか。質の高い薬剤師を輩出するためには、もちろん大 学での教育が何より重要でしょうが、入口の段階、つまり入試での選抜も大きな比重を持つと思います。そういう 意味で、入口段階での選抜が適切に行われていたのかについて、強い懸念を持っています。  この検討会は、将来の需給予測を行うことが役割だと思いますけれども、実際にはどのように需給のバランスを とるかを検討する場だと思っています。そういう意味では需要を拡大する努力、その前提として教育の充実による 薬剤師の質向上は重要ですが、同時に供給側の窓口を少し狭める必要もあるだろうと思っております。 ○座長 どうもありがとうございました。小山委員は日頃から多角的に薬学そのものを見ているので、非常に現実 的な問題点をえぐり出していただけたような気がいたしますが、いかがでしょうか。 ○長野委員 5人の先生方に、専門の立場からお話を頂戴いたしまして、大変ありがとうございました。私は製薬 企業で、先ほど奥田先生のお話にもありました総括製造販売責任者の立場にもございますし、信頼性保証本部長と して、安全確保対策、有害事象の評価、対策といったものについて、責任ある立場を執っております。今回のテー マを前提に、製薬企業、つまり需要側からいたしますと、これはいままでの会合でも若干お話申し上げましたが、 私どもの第一三共で、信頼性保証本部には約300名の社員がおりまして、臨床医も5名おられます。薬剤師は、約300 名のうちの200名、7割近くが薬剤師であります。これも、大変若い世代、つまり20代から30代が多く配属されて業 務をしていただいています。とりわけ有害事象の評価あるいはそれに対する対策を、5名の社員の臨床医と毎週症例 の評価検討会を行う等、いろいろな業務推進をしております。その中で、今後6年制を出られた、まさに臨床薬学の 教育も積まれた卒業生の方々が私どものところに配属されたときに、私どもは製品の研修をかなり広汎にしていた だきます。第一三共は1年ほど前に合併統合したこともあり、成分数で約170を製造販売いたしております。その観 点から、すべての製品の安全確保につながる勉強をとにかく急ピッチで習得していただくというのが大前提で、新 しい社員がこなさなくてはいけないハードルになります。そうしますと、6年制以降も大変優秀な方をいただきたい ということをこの会議で申し上げていますし、7割を8割にしてもいいと思っているのですが、「ベッドサイドオリ エンテッド」あるいは「ペイシェントオリエンテッド」という視点がすでに育っている薬剤師の卒業生を渇望いた しております。  企業に入ってそれを十二分に研修しようと思っても、実態は非常に難しいのです。5人の先生方もデスクサイドで そういうことはとても教えられない。まさにベッドサイドだと思いますし、それは医療現場の先生方にご協力いた だかないといけない、それはごく稀なケースになってしまうのです。そうしますと、少なくとも卒業までにペイシ ェントオリエンテッド、あるいはベッドサイドオリエンテッドなマインドとか経験を積んで、そういう方が卒業さ れれば、さっき奥田先生のお話でもいろいろ評価はございましたけれども、MRであっても非常に有望な、まさに売 手市場にも大いになるという気が強くいたします。また、それが需要側の企業の、少なくとも内外資を問わず、大 手の私と同じ立場、あるいは営業部門の方たちの望みだろうと思っています。長くなりましたけれども、以上です。 ○小林委員 大学サイドから山崎先生、橋田先生、網岡先生にご意見を伺ったのですが、例えば山崎先生は、いま 現状でできる薬剤師の仕事として、地域医療におけるセルフメディケーションのキーパーソンになれば十分機能で きるのではないかと。また橋田先生は、今後に向けて、薬剤師が求められるもっと新しい需要は何かということを お考えいただいたと思います。網岡先生は、実際に現場におられて、こういうことだったら薬剤師にできるのでは ないかということで、かなり詳しくお話をいただいたと思うのです。  私は、そういうお話を聞きまして、たぶんそれぞれがお互いに関係しているのだ。ただ、現状を考えると、例え ば網岡先生のおっしゃったことは非常に大事なことで、今後ともそういうところは発展すべきだと思うのですが、 いまの薬剤師を育てるための6年制教育でそこまで全員を育て上げるのは、神谷先生も言われたように、かなり難し いという気がするのです。それで、ではどうすればいいのかというと、例えば文科省が、がんのプロフェッショナ ルの薬剤師の研修制度というようなものを進めておられますし、そういう何か新しい認定薬剤師の研修制度を考え て、いまは認められていない医療行為の一部をかなり分担できるような制度を構築すれば、いま非常にたくさんお られる薬剤師の中から、現場で実務を経られた後に、そういう研修を受けられて、セレクトした薬剤師をつくり上 げるということがたぶん薬剤師の地位向上にもつながりますし、権限の拡大にもつながるし、ひいては収入の向上 にもつながると思います。例えば、米国だと薬学部を出た学生のほとんどが薬剤師になりたがる。それはなぜかと いうと、やはり収入が大きいからだと。日本の収入のたぶん1.5倍ぐらいの収入を初めからもらう。日本の場合には、 私がお聞きするところでは、年収平均が600万円から650万円ということなので、それだと、やはり薬剤師の地位は 低いなと思います。  だから、そういう新しい認定制度を、例えば厚生労働省のほうでアイディア的に考えていただいて、よりレベル の高い薬剤師、実務経験を経た中から、新しい薬剤師を育て上げる、それは一部認めていない医療行為を分担でき るというような制度をお考えいただくのがいいかなと私は思いますが、厚生労働省はいかがでしょうか。 ○座長 それに関係して、堀内委員、どうぞ。 ○堀内委員 専門薬剤師制度は、日本病院薬剤師会では、「がん専門薬剤師」、「感染制御専門薬剤師」制度を稼 働しており、いろいろな学会等でも立ち上がっておりまして、これはその分野での専門のエキスパートを養成する という意味では、きわめて重要だと認識しておりますが、基本はやはり薬剤師全体の資質をどう向上させるかとい うことだろうと思います。  したがって、6年制教育にもなっているわけですし、4年制教育では十分でなかった点をどうやってやるかと。先 ほどから出ているのは、ベッドサイドオリエンテッドの教育をやるとか、そういうことになっている。まずスペシ ャリストを養成する、これは必要なことですが、全体をどうやってやるか。そのために疾患のこと、それからヒュ ーマン・リレーションのこともそうですが、そういうことをやることによって、それが成り立つのではないかと思 います。 ○座長 小林委員のご提言は、1つの世の中へのアピールの方法としては非常にいいことだとは思うのですが、いま の堀内委員の言われたことも、薬剤師の資質の底上げという意味では絶対にまず基本的に必要だと思います。 ○神谷委員 いまの件に関しまして、その部分は常に診療報酬上にしろ、あるいはチーム医療の構成上にしろ、薬 剤師がいること、あるいはそのチームに入っていること、常駐していること等が、かなり大きく認められてきたの です。今回の診療報酬改定でもいくつかありました。そういう面でいま徐々に進行しているところだと思いますの で、これから我々の病院薬剤師のアピール度によって、さらに進んでくれるだろうと思っています。ですから、そ このところは、たぶんそうだと思います。  もう1点あります。コメントをいただいた先生方に、現状の薬剤師数は過剰だと思われているのでしょうか、不足 だと思われているのでしょうか、それとも、いいところだろうと思われているのか、その辺りがスタートラインに なると思います。先生方は皆さん今後のことを言われましたが、今後目指す方向にしても、現在余っているとした ら、もうこれは大至急その方向にいかなければいけないだろうし、ちょうどいいのだったら、橋田先生が言われた、 余裕がある時期にいろいろなことをやってという話にもなってくるだろうと思います。本当は山崎先生にもお聞き したかったのですが、是非先生方に一言お願いします。 ○座長 ご判断もかなり難しいかとは思いますが、ご意見をいただいた先生方の中で、いまの神谷委員のご質問に ついていかがですか。 ○橋田参考人 全体の問題は山崎先生が最初にまとめられたとおりの状況だと思います。ただ、言いましたように 制度を固定して、その1つの形の中で多いか少ないか、過剰かという議論をするだけではなしに、やはり世界とか、 いろいろな視野でものを考えたときに、いろいろなシステムというか選択肢があり得ると思います。逆にそういう ことに対応できるという意味では、いま1つの環境下にあるように思いますので、そういった点に一応私の話のポイ ントを置かせていただいたということです。やはり大きな視点で見れば制度は多様ですし、それから、もっと長い レンジで考えたときに環境とか、食の安全とか、いろんな問題と薬剤師職能とのバランスを考えるときに、その議 論についてはやはりもう一度きっちりする余地は十分にあると思います。 ○網岡参考人 現在余っているのでしょうかというお話ですが、余っていますとは言いません。パートとか、職種 の中では常勤ではなくて埋めている部分がかなりあるのではないかと思っております。先ほどの先生方のお話でも ございましたが、生涯教育で薬剤師の職能を活かしていくのには、生涯の勉強が必要だと。その勉強が何も費用が なしで、行われるかというと、それはちょっとあり得ないわけで、たぶん働きながら、収入を得ながら自分の支出 を確保することになると思います。  公的な支援制度のある場合もございます。そういうものの場合でいえば、いまのライセンスは一旦取れば、使い 切りといいますか、本当に国民の求めている薬剤師や、これから先生方がお考えになっている薬剤師が、取り切り で済むような内容なのか。この量が出ていく、いなくなっていく、決してお亡くなりになる先生ではございません。 そういうものを考えれば、余っているのではないんじゃないか。それから、必要なところでまだ供給されていない ものが沢山あるのではないか。あるいは、必要とされている雇用形態で、されていないものもあるのではないかと 考えています。 ○座長 そう簡単なお答えではないと思いますが。奥田先生、池田先生、いかがですか。簡単にご判断は難しいで しょうが。 ○奥田参考人 私がその問いに対して答えるのは、適当ではないと思いますが、個人的な考え方を申し上げます。 先ほども言いましたが、いままでのトレンドで考えると、多少多いのかなと思います。ですけれど、橋田先生が言 われるように、これからいろいろなことを考えて、その多様性の中で対応しようと思ったら、どうなんだと。ただ、 それでもちょっと多いのかなという感じはしますが、そういうふうに思います。 ○座長 ありがとうございました。 ○池田参考人 私はあまりコメントする立場にないと思いますが、この薬剤師数の推移を見たときにカテゴリーと して分けているのですが、この中で、やはり先ほど問題になったように、本当にパートタイム等、形だけで勤めら れている方というのは、結構多いのではないかという気がするので、実質的な勤務状況を何かの形で調べられたら なと思います。 ○座長 ありがとうございました。神谷先生、よろしいですか。いま、いろいろなご意見が出てまいりました。先 ほど企業のほうからも需要に関するお言葉もあったのですが、ほかに、例えば行政でありますとか、あるいは医薬 品の承認審査をやるとか、そういうようなところの薬剤師の需要というのは、一体どうなっているかということで、 審議官、何かお話がありますか。 ○審議官 昔から薬剤師の需要先の1つとして、衛生行政は重要な一角を占めていると思います。私の拙い経験から 申しますと、やはり例えば医薬品の安全性の確保、それから、まだまだ克服されていない疾病に対する、より優れ た医薬品の迅速な審査、さらには医薬品の品質の確保や安定な供給というような部分で、大いに薬剤師は期待され ているところがあると思っております。  今日は「需要に関する」ということですので、それではどういうような資質というか、何が期待されているかと いうことになりますが、取り急ぎ、現在の教育はそれで大変ありがたいとして、その上にさらにとすれば、私はや はり薬学の特色としては、生命に対する慈しみの心をからだで持っているということだと思います。例えば、はか なさとか、そういう部分だと思います。  これは例えば動物実験とか、実習で、結局、死に至る過程というようなものを見ていくことによって、何が起こ るかという想像力の基盤が出来るわけですね。そこは是非身に付けていただいて、それで行政の立場でも、危いこ とが起りそうだったら、思わず駆け寄って行って、手を打つというようなマインドは是非やっていただきたいと思 います。  その点で言いますと、例えば先ほど安全性の問題のお話があり、またMRのバックグラウンドのお話も出てまいり ましたが、現在、薬剤師が受けている教育の中で、さらにもう1つ科学的な中心がはっきりしてもよろしいのでは ないかというところに、例えば安全性の問題があると思うのです。何症例集めたからどうするというような部分が まだまだ多くて、医薬品情報もいわゆるスタティックというか静的な部分が多い。むしろ動的に、そういった情報 をどう医師や薬剤師の頭脳にインジェクトして、日常の業務に反映し、服薬指導に表し、その患者さんの安全性の 確保に努める。患者さんも当事者の1人です。こういったところで、土台を用意した方々がもしおられれば、もっと 広がるのではないかと思います。  それから、国民の要望といいますのは、やはり世界レベルの安全性、有効性、それから医薬品を使えるようにし ていただきたい。これは医療の第一線で本当に苦心されている先生も同じだと思います。そのためには、最小限、 自分の母国語以外に外国語を1つ、それに近い形で使えないと、ほとんど難しいです。とにかく、FDAやEMEAと電話 でやりとりがあるわけです。こういったところで、人がいると、ますます私どもは仕事がしやすいということでご ざいまして、その点から本当に是非よい方々をということです。すみません、勝手な要望になりますが、ありがと うございます。 ○座長 要するに資質の高い薬剤師をたくさんつくれということになります。それはそのとおりだと思います。 ほかにご意見いかがですか。 ○児玉委員 遅れて皆様方のお話を聞かずに申し訳ございません。今回は需給ですから、需要と供給、これは当た り前ですが、需要の中で私は職域拡大という言葉はあまり好きではなくて、むしろ今の日本の薬剤師を見たときに、 拡大ではなくて、職域をきちっと確保する、そのことが本質かなと思います。そのために、私どもはそれに見合う 薬学教育をしてくださいということで6年制をお願いした経緯があるわけです。  したがって、むしろ薬剤師本来の業務を、それぞれの分野でできるような、そのようなことをまずやるんだと。 その延長線上に、がん専門薬剤師ももちろんあるでしょうし、ということだと思うのです。  したがって、そういう考え方をまず基本的にすべきかなと思います。では、そのためには何をすべきか。それは 当然、本来の薬剤師業務を各分野でできるようにするためには、先ほどから議論があるように、まず質の問題と、 それから環境の問題があります。その環境の問題の中に、たしかにそれに見合う診療報酬というのがあるでしょう し、あるいはまた施設の、例えば病院でしたら、その病院の施設の責任者の理解です。2日前の三重県の輸液の問 題ですが、これは典型的な例です。私たちからすれば、残念至極です。あれは薬剤師だと考えられないです。だか ら、ああいうことは、やはりその施設の長がもっと薬剤師をきちっと使っていただければと思います。  次に質の問題です。その質の担保の中に2つあって、それが先ほどから議論が出ている、1つはまさに教育、もう 1点は研修だと思います。その教育の中で、せっかく6年制になったわけでありますが、やはり薬学教育改革といい ますか、その中でまだ4たす2というふうに思われている先生方も多いわけですから、やはり2たす4じゃないかと。 これは先ほど黒川審議官がおっしゃった、まさにその2年間で「医療人とは何たるものか」という教育をしっかり 本当にやっていただきたい、ヒューマン教育をしていただきたいと思います。それで、あと4年が専門教育である という考え方が、本当に教育としてうまくいけば、ありがたいなと思うわけです。  もう1点は教える先生方の意識改革です。口で言うのは簡単ですが、やはり薬学改革というものも併せて必要な のかなと思います。たしかに、日本の薬学の歴史の中で、どうしても創薬が中心という流れがありましたが、結局 は両方必要なのです。やはり基礎があって、臨床があるわけですから、そこをうまく融合していただいて、そうい う薬学改革をしていただければ、本当にここで議論が出ている、そういう教育をもっとやっていただけるのかと思 います。  それからもう1点は、せっかくこういう機会がありますので、例えば先ほどから話が出ていますが、例えばメーカ ーにいる薬剤師、あるいは薬局にいる薬剤師、あるいは病院にいる薬剤師等、職種毎に就職状況を見てみると、下 がっている職種があります。これだけ医療安全の中で、薬剤師の役割が増えているのにそれは一体何なのだろうと。 メーカーにおける研究部門や、いろんな部門における薬剤師が、10年の単位でいえば随分減ってきたわけですが、 何が原因なんだろうと。それはやはりその数値をきちっと、もう一度データとして把握し、その原因を理解した上 で、ではそのためにどうしたらいいかということも、今後この中であってもいいのかなという気がいたします。以 上です。 ○座長 ありがとうございました。それでは小田委員、先ほどからお待ちでございました。 ○小田委員 今日の話の中で、これからは資格ではなくて、資質の問題というふうな、非常に的確な話も伺いまし た。その中で、風習の話がいくつかありましたが、風習があるからやるのではなくて、やはり自分たちで作ってい く。先ほど私も自分たちが見せていく必要があるのではないかという話をさせていただきましたが、教育の中で、 是非お願いしたいのは、やはり薬剤師としてのいろいろな場面での「気付き」ということです。習ったことをやる というのではなくて、やはり現場というのは、いろいろなことに気付いてやっていくことです。先ほど来、臨床と いうところは、まさに「気付き」の連続で、そういったことに対する処理、対応だと思います。  山崎先生は帰られましたが、先ほどのセルフメディケーションの話とか、これからの医療の話の中で、私どもの ドラッグストア、薬局のフィールドですと、昨今の話題でも、例えば硫化水素の問題であるとか、それからいま警 察のほうから私たちに非常にアプローチがありますが、アセトンを利用しての爆発物の話であるとか、それからち ょっと古い話になりますが、それでも引き続いておりますが、O-157の話。O-157は学校薬剤師がかかわっていなが ら、薬剤師という名前はほとんど出てこないわけです。今日は医療の中でも薬業の中でも、本丸の話でしたが、周 辺における薬剤師がかかわれる問題というのはいっぱいあって、そういったことに対して、やはり我々の現場の人 間、それから学校側と共闘で、薬剤師がそこでこういった仕事をする、これからはこうしていくんだというような ことを世に見せていく。もちろんそれを教育の中にも使っていただきたいし、我々も現場で使わせていただくとい うようなことは、いまの本丸でなくても、薬剤師のやるべきフィールドはいっぱいあるわけです。そういったとこ ろもこのような機会に是非認識していただきたいと思います。 ○座長 ありがとうございました。既に時間が過ぎておりまして、誠に申し訳ないのですが、もし先生方にお許し をいただければ、もうちょっと時間を延長して、このまま議論を続けさせていただいてよろしいでしょうか。申し 訳ありませんが、少しだけ時間を延長させていただきます。それでは、ご意見をどうぞ。 ○望月委員 いろいろ話が出たのですが、いまの4年制を出ている薬剤師さんが資質が低いのではなくて、これまで の薬剤師は大学を出た後に一所懸命自分で勉強して研修して、非常に高い資質の薬剤師になっていると思います。 ただし、いま6年制薬学教育に求めているのは、大学を出た段階で比べたときに、いまの4年制薬学教育課程を出た 段階の薬剤師は、やはりいろいろな部分で欠けているので、それを補おうというのが6年制だと思います。その中で、 6年制がいちばん目指しているのは、先ほど出ました人間としての倫理とか、医療人としての倫理、患者さん・医師・ 看護師とのコミュニケーション、ペイシェント・オリエンテッド・メディスン、そういうものをしっかり身に付ける。 それを身に付けた上で世の中に出て、もちろんそこからは自分で研修しなければ、何も一人前とは言えません。大切 なのはその後の研修です。井村先生がいらっしゃいますが、日本薬剤師研修センターだけではなくて、全国の薬科大 学、薬学部、それから日本医師会もそうです、日本薬剤師会もそうだし、日本病院薬剤師会もそうですが、そういう 団体がすべて、薬剤師が社会に出た後に学べる体制を作る。それも非常に系統立ったものを作って、学び続ける薬剤 師を国民が見ることによって、やはり薬剤師さんは信頼できるという気持が沸いてくる。それができれば、私はいま の6年制教育は成功すると思います。  もしそれがなければ、6年間の薬学教育を出ても、何にもならないのです。いかに学ぶことを継続させるかという 体制を、日本全体で作る。それは文部科学省か、厚生労働省か、たぶん両方が関わるべきものだと思います。そうい うものを是非、井村先生を中心に作っていただけたら、さらにいいものができると思います。 ○座長 ありがとうございました。ほかにご意見いかがですか。今日はご意見を伺って、それを次につなげていきた いと思っています。ここで結論を出す必要はないと思います。いかがでしょうか。お越しいただいた先生方から、何 か追加でご意見が出てまいりませんでしょうか。よろしいですか。 ○小田委員 私もこの会では初めてなので、薬のことなど、私たちの現場の話をさせていただきます。スイッチOTC の話がいまずっと議論され、積極的に進んでいくだろうと思われ、期待もしております。その中で、去年の秋、アシ クロビルという帯状疱疹の薬がスイッチしてきました。ところがOTCの場合ですと、限定をされていまして、口唇ヘ ルペス、しかも医師の診断、もしくは使ったことがある人しか使ってはいけないと、添付文書に書いてあり、我々も そのようにして売らなければならないわけですが、薬学教育をきちっと学び、まして調剤をやっている薬剤師からし ますと、当然その範囲ではなくて、もっとほかにも使えますし、現実に使っているわけです。  そういうときに一般の方から質問を受けたりしたときに、なかなか説明するのに困るわけです。添付文書にはこの ように書かれていますし、そのように作られているし、メーカーはそのように言ってほしいと言う。ところが、アシ クロビルそのもの自体はもっと広範な範囲がある。このようなことを学校サイドなどでは、これからどうやって教え たり、教育したりしていくのだろうか。こういったことなども、少し整備していただかないと、現場のほうでは困る 部分も出てくると思います。 ○座長 ありがとうございました。ほかにご意見がございますか。 ○木俣委員 私も先回ご報告させていただきましたが、私どもは卸なものですから、先ほどの奥田先生のお話にもご ざいましたが、やはり各在庫、治験品も含めて、一般用の医薬品も含めて、在庫しているところには管理薬剤師を必 ず置くということになっておりますが、この10年で3,000カ所から2,200カ所ということで、800の支店が統合されて無 くなっているわけでございます。この傾向はまだ、ずっと続くというふうに思われます。  新潟県の大規模地震や、今回も中国四川省の場合も、我々の卸というのはやはり輸液から注射、内服、全部横断的 に持っているものですから、その辺のグッド・サプライイング・ファーマシストというか、そういった形での役割も まだあるのです。ただ、減らすだけでなくて、そういった役割も是非、この中で検討していっていただけたらと思い ます。 ○座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○堀内委員 医療の現場からの見方をしますと、病院における薬剤師の業務というのは入院患者にかなりシフトされ てきています。その中で、先ほどからお話がありました、例えばサテライト・ファーマシーを作るとか、すべての入 院患者に対応するためには、いまの薬剤師数ではとても足りない。やはりチーム医療の中で、薬剤師の役割がかなり 拡大をされてきておりますので、できればすべての入院患者に薬剤師がかかわれるような体制を何とか作りたいと思 っています。そのためには、例えば群馬大学医学部附属病院で、入院患者12〜13人に1人薬剤師がいますが、それで もとても足りない、というような状況にあります。  医療現場における薬剤師が沢山いれば、それだけ業務はいくらでも拡大するし、やることはいくらでもあると思い ますので、是非、薬剤師数を増やす。これを固定的に考えないで、是非とも医療の、あるいはチーム医療の変遷とと もに、できるだけ拡大することを考えていただきたいと思います。 ○座長 ありがとうございます。薬剤師の数を増やし、いろんな業務を拡大していくということにつきましては、そ のとおりなのです。みんな誰もそうではないとはおっしゃらないと思いますが、そのためには、やはりこれは薬剤師 にやらせたほうがいいという認識を、例えば病院の経営者なりに持たせなければいけないという前段階が必要なので、 その辺をどうしたらいいかということだろうと思います。 ○神谷委員 そちらになると、病院の経営者もこれをやらせたほうがいいと思っている人は大部分だと思います。そ こまでは。ただし、それを実現するための費用をどこから持ってくるか、現実問題になると、躊躇せざるを得ないと いうのが現在のところです。要は、診療報酬上の評価のない部分を拡大していって、そこへ人数を注ぎ込めば、病院 経営の問題が出てくる。そういう問題点のところから、拡大のスピードが遅いのだと、我々はいまそういうふうに理 解しています。  私どものところも実際に薬剤師を増やさなければいけないよねとは言われても、現実に増やしてくださいというの は、私の所は40人弱の薬剤師であと20人ぐらい増やしてくださいという話があって、それもいいですよ、ただし、い まはできないよという話になるのです。ですから拡大していって、それを現実にさせるための努力、それはやはり中 にいる人間たちのサポート、それから出て来る人たちのサポート、あるいは周りの人たちのサポートをどんどん得て いくということで、結局、教育でいい人を配置して、いい評価を受けていくということになるのだろうと思います。 ○座長 そのとおりだと思います。ほかにいかがでしょうか。 ○児玉委員 少し細かくなるのですが、先ほど小田委員からお話があったのですが、薬剤師というのは、ご存じのと おり、すべての医薬品を供給する、これは当たり前なのです。我々の現場から言えば、医療用医薬品、一般用医薬品、 いわゆるOTCですが、いわゆる需要と供給という議論の中で、それでは薬学教育はどうあるべきかというふうなつなが りを考えるとするならば、まさにOTCに関する教育が少ないのです。何か勘違いをされているのですが、何もOTCの売 り方を教えろとか、そんなことを言っているわけではないのです。  大学ですから、OTCという概念、成分的には複合剤が中心ですから、そういった特性、いわゆるOTCの学問体系もな いわけですね。ご存じだと思いますが、実際にアメリカでは、1年生か、2年生でOTCをちゃんと教えているのです。そ れはどういう意味があるかというと、先ほどお話が出ているように、OTCというのは疾病から入りますので、そこから 入りますから、そこから薬とのつながりを教育の中で覚えていくのです。これが大事なのです。  そうすると、そういう医薬品に関する専門課程に入ったときに、これと疾病との関係はどうなっているかというつ ながりを覚える1つの基礎ができます。そういう理由で、そういうものを導入しているわけです。したがって、そう いう観点で、今後の薬学教育の中で、そういう意味でのOTC教育をもう少しやっていただけたらどうかなと思います。 ○座長 実際に薬学の中で、これからどういう点を、例えばモデル・コアカリキュラムを見直して、どういう点を強 化していくかということは、これからどうせやらなければならない非常に重要な作業だろうと思われます。それは鋭 意やっていく必要があるということだと思います。それに関して、文部科学省の医学教育課から渡辺課長補佐が見え ていますが、いかがでしょうか。 ○文部科学省(渡部課長補佐) モデル・コアカリキュラムは、ここにいらっしゃる先生方にもご参画いただいた部 分があろうかと思いますが、そういうことで、いま立派なものが出来ているというふうに認識しております。今後、 今日のご議論でもあったような質の高い薬剤師を養成していくという観点では、必要な見直しというのは、猫の目の ように変わってはいけないのでしょうが、ある程度の一定の年数を経た後は、そこはむしろ積極的に見直していくべ きではないかと考えております。 ○座長 モデル・コアカリキュラムばかりではなくて、今日の全体の議論を通して、何かご感想がありましたらお願 いします。 ○文部科学省(渡部課長補佐) この検討会のタイトルが「需給」ということですので、そういうことに集中するの かなと思っていましたが、薬剤師の資質の向上ということに、かなりの委員の先生方も視点がおありになるというこ とで、当方としては非常に喜ばしい方向であるかなという感想は持ちました。 ○座長 ありがとうございました。ほかに、特にご意見がございますか。 ○小林委員 また、突飛な意見を言わせていただきますが、まさに6年制が実施されているところですが、これから どんどん薬剤師教育が充実してきて、薬剤師の資質が上がってくる。また現場でもさらに高度な研修を受けられて、 どんどん薬剤師の資質が上がってくれば、私が先ほど言いました、薬剤師が医療行為の一部を分担できる、例えば処 方せんを医師の許可なしに、ある部分については発行できるような形に将来的には移る可能性があるのかどうか。そ れは全くないということでしたら、話は全然先に進まないと思います。  例えば日本ですと、百年前は医師と薬剤師の区別がなかったと思いますが、いまは完全に分けられている。それが そのまま続くのか。やはりそういう見直し、たぶん深刻な医師不足は今後とも重要な課題だと思いますが、薬剤師と 医師とが医療人として、内容的な新知識及び技能のレベルもかなり合わさってきたときには、そういう薬剤師の職能、 業務をもう少し拡大する可能性というのは、厚生労働省としてはどうお考えなのか。いや、そんなことはいまはない よと思っておられるのか、その辺のことを少しお聞かせいただけたらと思います。 ○事務局 今日はこれまで発言の機会がなかったので、ちょっと寂しかったのですが、最後に振っていただきまして、 ありがとうございました。需要と供給両方の面から、厚生労働省は関心を持っているわけでして、そのため、この検 討会があるというふうにも言えるわけです。特に需要のほうに関して言えば、薬剤師というのはほかの職種と比べる ことがいいのか悪いのかわかりませんが、比較的現状でも広い分野に活躍の場が存在しているわけでありまして、そ ういう意味で、今後も、有限か無限かで言えば、無限な領域に対して伸ばしていく余地があると、薬学という学問領 域から見ても可能性があるのではないかという捉え方をしています。そういう意味では需要という面に関して、これ まで実際にやってこられたのかもしれないけど、気付いていなかった領域も含めて、これから拡大する方向に、何ら かの考え方をまとめていって、そこでメッセージを発信していくことによって、そういった分野もあることに気付い てもらうというのは、非常に大事かなと思いますので、是非とも需要のそういった拡大に関しては、積極的に考えて いきたいと思います。  ただ、当然それを考える場合には、相手方が存在しますので、その人たちに対して、どのように理解をしてもらう か、どのように信頼を薬剤師が獲得するかといったことも前提になければいけないと思いますので、そういう意味で は生涯学習ですとか、6年制教育、様々な問題がそこに合わせて入り込むことによって、トータルな環境がいい方向 にいけばいいかなと思っています。また、いろいろな考え方なりは、この検討会、あるいはほかの場で、いろいろこ ちらとしてもお示ししていきたいと思います。以上でございます。 ○座長 ありがとうございました。本日は本当に5人の先生方、お忙しいところ、ありがとうございました。委員の 皆様、これで本日の検討会を閉じさせていただいてよろしいでしょうか。どうも、大変長い時間、ご苦労さまでござ いました。ありがとうございました。事務局から何か、連絡がございますか。 ○事務局 今回は1年ぶりの再開ということになっているわけですが、次回はそこまで間を空けずに、もう少し短い インターバルで開催したいと思っております。日程等につきましては、また改めて調整の上、ご案内いたしたいと思 います。 ○座長 本日はありがとうございました。 (了) (連絡先)  厚生労働省医薬食品局総務課  代表   03(5253)1111                              FAX  03(3591)9044  担当者:境(内線2712)