08/05/30 「安心と希望の医療確保ビジョン」第9回会議議事録 「安心と希望の医療確保ビジョン」第9回会議                     日時 平成20年5月30日(金)                        17:30〜                     場所 厚生労働省5階共用第7会議室 ○ 小野看護職員確保対策官  ただいまより「安心と希望の医療確保ビジョン」第9回会議を開催します。本日は、ご多忙のと  ころご参集いただきまして、誠にありがとうございます。早速ではございますが、大臣、恐縮で  すが一言ご挨拶をお願いします。 ○ 舛添大臣  お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。今日はビジョンの大体の骨格  について、まとめをいただきたいと思っております。国民の安心と安全をどうやって守るかは、  福田内閣の大きな課題であります。皆さん方にいい案をいただいて、それを政策としてどう実現  するかという、非常に大事な局面に来ておりますので、どうかひとつよろしくお願い申し上げま  す。 ○ 小野看護職員確保対策官  恐縮ですが、カメラ撮りはこちらまででお願いします。議事に入ります。本日は資料1「安心と  希望の医療確保ビジョン」の「骨子案(5月30日版)」に基づく議論をお願いします。前回会議で  の議論を踏まえ、前回提出した骨子案にさらに発展させたものとなっています。事務局よりご説  明を申し上げます。 ○ 二川総務課長  「骨子案(5月30日版)」につきまして、書き加えたところをご説明申し上げたいと思います。  I「はじめに」ということで、医師・患者・家族等国民みんなで医療を支えることが必要である。  医療サービスの質も量も増やしてほしいと、そういった国民の声が強い。医療制度改革に向け努  力を続けていくということです。  II「具体的な政策」としては5本立てています。「医師数の増加」につきましては、医師の養成  数をどうするか。ここについては特に記述はしていません。女性医師の離職防止・復職支援とい  うことで、短時間正社員制度の普及等により女性医師の就業率を高め、医療分野を男女共同参画  のモデルにすると、こういったことをしてはどうかということです。医師の勤務環境の改善につ  きましては、ワーク・ライフ・バランス等に配慮し、公務員である医師も含め多様な勤務形態を  導入する、チーム医療を徹底する、交替勤務制度の導入を促進する、こういったことはどうかと。  いま進めております産科医療補償制度の早期実現。また、これも検討しております医療事故の死  亡の原因究明制度の構築と、こういった環境整備も大事だろうということです。  2本目の柱ですが「医師の配分バランスの改善」。医師全体の中で地域の医療とか診療区、そう  いったことにつきましてのバランスの改善です。臨床研修制度の見直しといった視点からは、医  師不足問題がより深刻な診療科、あるいはより深刻な地域医療、そういったことへの貢献を行う  臨床研修病院をどう評価していくか。臨床研修病院そのものの研修医の受入れ数、これを適正化  していくことが必要ではないかと。医療法に基づきまして、医師配置標準が定められております  が、これは実態に合っていないというご指摘もありまして、これについての見直しについてどう  するか。  診療科バランスの改善の中では、特に産科・小児科・救急科・外科・病理診断科など、そういっ  た個別の医師不足が見られる科についての方策の検討が必要であろうと。麻酔科につきましては、  麻酔科だけは国の許可制となっておりますが、ほかの科との認定制度との整合性をどう検討する  かということがあります。医師ではありませんが、歯科医師の適正需給についての検討も必要か  というのがあります。4点目が、総合的な診療能力を持つ医師の育成、これも課題かと思います。  3)ですが、「医療関係職種間の業務の分担と協働・チーム医療の推進」です。その中の(1)が医  師と看護師の役割分担で、現行法令の下でも可能な業務を、看護師の方にやっていただくための  業務の普及をどうするか。また、専門看護師とか認定看護師といったレベルの方をどうやって普  及・拡大を図るかということです。その上で医師・看護師の役割分担のあり方についても検討が  必要であろうと。また、そもそも看護師につきましての基礎教育の充実、看護師確保の施策をど  う推進するかということが課題かと思います。  (2)、産科につきましての医師と助産師との役割分担。これは院内助産所・助産師外来の普及をど  うやってやるかと。助産師の専門性の発揮、あるいは医師と助産師の役割分担をどういったとこ  ろで考えるか。そもそも助産師確保をどうするかということです。  (3)、医師と薬剤師等。医師と薬剤師、歯科医師といったところですが、そういったことの役割分  担です。薬剤師の方につきましての病棟での薬剤管理・服薬指導の業務、こういったものをどう  やって普及させていくか。チーム医療において薬剤師の役割をどう検討し、またその資質向上策  をどう充実していくか。医科と歯科の連携も必要か。どうやって強化するかと。(4)、医師とコメ  ディカルとの役割分担。臨床検査技師・臨床工学技士・作業療法士・理学療法士等のコメディカ  ルとの協働、多職種連携、そういったことについてどう普及を図るかと。ここまでが医師とその  他の医療関係職種です。  (5)としまして医師・看護師と看護補助者・メディカルクラーク、そういった方との役割分担と協  働の充実ということです。看護補助者、メディカルクラーク、これはいろいろな呼び方があるよ  うですが、医師事務作業補助者、医療秘書、そういった方についての活用をどう図っていくか。  これらの人につきましての資質向上の方策をどうするかの検討ということです。  患者・家族に最適なケアを提供する観点から、看護職の専門性に配慮しつつ、看護職だけではな  くて介護職との役割分担のあり方についての検討も必要ということです。また、医師とかそうい  った医療職種の方と、患者側のコミュニケーションの仲立ちをし、十分な話合いの機会を確保す  る、そういった人材、そういった方も医療機関の中に必要であろうということです。  4)ですが、医療機関と医療機関の間、ここまでは医療機関の中のことだったかと思いますが、  医療機関相互の間の分担・ネットワークをどう推進するかということです。(1)は、地域で支える  医療の推進ということで、「医療機関完結型医療」ではなくて、「地域完結型医療」とするのに  どう変えていくかということです。各医療機関におきましては、医療計画の中で個々の役割を明  確化し、地域連携パス等によって円滑なネットワークを構築していくことが必要です。行政、特  に都道府県かと思いますが、医療計画において定められました4疾病5事業に係る連携体制を構築  するために、地域住民のニーズを把握し、十分な情報開示が必要であると。そのためにどういっ  たことをしていくか。地域で支えるといった場合には、診療所の役割の強化というのは避けて通  れないのではないかということです。  3頁ですが、医療機関相互の関係で言いますと、(2)の在宅医療の推進といった切り口も1つ言え  るのではないかと思います。退院前・退院後ケアカンファレンス等を通じて、切れ目のない医療  連携を確保する。訪問看護の普及とか、訪問看護の内容についての専門性の深化が大事であろう  ということです。また、在宅といった場合に、本当に自分の家という意味の在宅ではなくて、そ  れ以外のそういった住まい、そういった所につきましても、どう活用していくかといったことが  重要かということです。夜間休日対応をしてくれる薬局の役割といったものも大事ではないかと  いうことです。また、在宅医療ということでいきますと、患者・家族に対する情報提供とか、ボ  ランティア、そういった方々の活動も大事だということです。在宅におきましては、歯科診療が  特に重要性が高いというご指摘があったかと思います。  (3)、地域医療従事の推進ということで、地域医療の従事を図るための方策を検討し、へき地医療  機関の支援をどう進めていくかと。(4)は、救急と遠隔医療ということで、救急につきましては、  救急医療の地域における拠点をいかに整備していくか。また、救急と言いましても各診療科ごと  の救急体制の整備が必要だろうと。救命救急センターの普及とか、開業医と2次救急の協力の促  進。また2次救急は受け入れられない理由として、後方病床がないからだといったこともありま  すので、後方病床の確保の問題。一般救急と精神科救急ということで、身体疾患と精神疾患を併  せ持つ患者の方に対応するために、そういった連携が必要だと。地域の格差を是正するためには、  遠隔医療を推進しなければいけませんが、どういった形でいくかということがあります。  5)が、「医療者と患者・家族の協働の推進」ということで、(1)の夜間・救急利用の適正化。軽  症患者の人の夜間救急外来とか救急車利用の適正化をどう図るか。また、地域の医療機関の間で  病院群輪番制などによって負担をどう分散するか。初期救急で開業医の人にどれだけお願いでき  るか。特に小児科におきましては「#8000」とありますが、小児科の救急電話相談の活用とか、  家庭への緊急時のマニュアルの普及をどうしていくかといったことかと思います。  (2)が、医療者と患者・家族等の協働の推進ということです。医療は公共制の高い営みで、患者・  家族等国民と医療提供者の双方が支える努力が必要。特に患者サイドにおきましては、医療の限  界と不確実性を理解し、医療者と協働する姿勢を持っていただくようにしなければいけないか。  安易な時間外受診を控えるなど、適切な受診行動についての普及と啓発をどうしていくか。特に  産科におきましては、妊婦健診の適切な受診の普及をしていくことは重要であろうということで  す。また、医療者と患者・家族と相互理解を推進するための市民活動、そういった活動について、  どういった支援をしていけばいいだろうかと。地域における医療者と患者・家族が語らう場をど  う確保するか。メディカルソーシャルワーカー等の活用があります。  III「医療のこれからの方向性」ということです。これまで出ているところで言いますと、「治す  医療」から「治し支える医療」、予防の重視、こういったことがこれまで出ているかと思います。  そのようなところで、とりあえず骨子案をまとめてみました。 ○ 小野看護職員確保対策官  ディスカッションに入ります。ご発言をよろしくお願いします。 ○ 野中委員  「はじめに」は前回の議論もあり大事と思います。しかし、今回の「はじめに」の箇条書きの部  分は大事と思いますが、その前に、国民や社会において医療がどういう意味を持っているのかを、  きちんと捉えておく必要があると思います。病気、障害を抱えた人たちに医療を提供することに  よって再び社会復帰していただく、医療にはそういう大きな役割があります。すなわち、国が国  民に対してそういう保障をするという大きな事業が医療と思います。  その事業を国民みんなで、国の指導の下に支えていこうとするわけですから、国民1人ひとりが  自分もその中の一員であることを自覚して、もっと希望のある医療確保に協力していくことが実  は大事と思います。是非このような視点を冒頭に入れていただきたい。国民が自分たちも一緒に  患者の身になって、医療を考えようとの気持ちを持っていただくことが大切です。  私は最近、認知症にかかわっていますが、認知症は本人、家族だけではなくて、地域の周りの人  たちが認知症を理解してそういう人たちを支えることが大事であり、そういう中にこそ医療の真  の意味があると考えます。その医療を国民皆保険制度で支えるところに、大きな意味があるわけ  です。国民皆保険制度は、国民1人ひとりがそういう役割を果たしてこそ目的を果たす事出来る  わけですから、医療提供者だけの話ではありません。是非、そういうことをはじめに付け加えて  いただけると、みんなで医療を考えようという話になると思っています。そこをよろしくお願い  したいと思います。 ○ 松浪政務官  いま野中委員がおっしゃった点は、私も今回のビジョンの中で最も重要な点だと思います。安心  と希望ということですから、安心と言えば現在の満足度、希望は将来の持続性をいかに国民の皆  様に信じていただけるか、というビジョンを示さなければいけないということです。特に前回も  大臣がおっしゃいましたように、我々は治す医療はあるのだけれども、支える医療が非常に希薄  ではないかということで、我々のこの議論が始まったと思うのです。  前回、私も図ということで申し上げたので、この間辻本委員のCOMLの会議でパネリストで出たと  きに、私も図を作って出してみたのですが、事務局にも渡してあるので、そのうちまたそういう  ものも勘案して作っていただけると思います。いかにそういう循環を、患者・医療者と、そして  治す医療、支える医療が循環するかという観点から、例えば、まさに委員がおっしゃるように、  それをまず治す医療と支える医療を最初に定義してから、具体的な政策に移るべきではないかと  思います。  私は前回も提案したかと思いますが、今回、これは5項目になっていますが、中身を見ますと、  要は医師、医療のネットワーク、患者との関係性と、私はこの3つのカテゴリーのほうがわかり  やすいと思うのです。ですから、1つ目に医師数と配分バランスという1つの括りを作って、医  師の養成とこのバランスの問題をやっていただく。次に、またチーム医療と医療機関の分担・ネ  ットワークの推進と1つを大きく作って、その中でまた細分化していただく。最後に、医療者と  患者の関係もこれで1つの項目が立つと思うのです。  ただ、この順番の問題は私は非常に重要だと思います。野中委員がおっしゃることがいちばん大  事だとするのであれば、最初に来るべきは医師数の増加等ではなくて、我々は今後新しい視点で  ビジョンを描くには、「医療者と患者・家族の協働の推進」が最初に来て然るべきだと。その次  に地域のネットワーク、チーム医療をどうするか、その次に医師。我々の並べ方が非常にいまま  でのステレオタイプな考え方というか、医療のピラミッドのままにあるのであって、私たちはこ  のピラミッドを今回の議論を起点に逆さまにして、これからの厚生労働省の行政を進めるべきで  はないかと思います。  最近、厚労省とか内閣府でスーパー特区の話がありますが、あれでも羅列しているのは最初に来  るのはiPSで、再生医療で、医療機器で、次はバイオ医薬品というふうに、医療機器が医薬品より  前に来ているではないかというところに、皆さんは結構驚きを覚えるわけであります。この順番  は何も全部平等というわけではないと思いますので、こうした構成をもう一度しっかりすること  が、これからの政策順位というものにかかわってくると思いますので、そのあたりの構成をもう  一度考え直していただくようにお願いしたいと思います。 ○ 矢崎委員  政務官がおっしゃったとおりで、このペーパーは過去の8回にわたる議論の論点をよくまとめて  いただいたと思うのですが、このペーパーを見ていますと、前回も政務官が触れられましたよう  に、問題が羅列的になっていてインパクトが少なくなるような感じですので、これはいまおっし  ゃられたような構成を大きく分けて、その中でまた論点を整理していくというまとめ方に組み替  えていただければ、内容はすべて議論の中の論点が尽くされていますので。そういう感じを受け  ました。 ○ 辻本委員  事務局に確認ということでお尋ねするのですが、それぞれの項目の中で検討、普及、推進、充実、  強化という区分けがあるのですが、これはどのように受け止めていけばいいのか、そこの解説を  お願いしたいと思います。 ○ 二川総務課長  これまでの議論を踏まえて申します。事務局としての考えも出ているかとは思いますが、この辺  については異論はなくて普及はするのだと。しかし、普及方策をどうするのだという部分と、こ  こは課題だけれども、まだどういったところまでできるのかということの検討がもう少し必要だ  というところとか。そういったことにつきまして、現実にどういったところまで進められるかと  いったことにつきまして、さらにご議論をいただいた上で、もちろんこれはここでの議論で検討  というよりも、もっとここは間違いないのだという議論も、それはあるのかとは思っていますが、  これまでの議論を踏まえると、そういった煮詰まり具合に差があるのかと考えているところです。 ○ 辻本委員  例えば「検討」と明らかに示していただいているところは、今後、検討会の作業などで中身を詰  めていきます、と受け止めて間違いはないのでしょうか。 ○ 西川副大臣  いま政務官、矢崎委員がおっしゃったことは大変大きい話ですが、また反面、結局、国民、いま  日本の医療制度をどうするかと、いまの後期高齢者のは最大の1つのものになってしまっている  中で、私もそう思うのです。1つのインパクトとして、この問題は一方的に医療制度は行政側だ  けが提示する話では絶対にないのであって、これは国民の皆様に1つの大きなメッセージとして、  そういう方向にやっていかなくてはいけないと思うのです。  もう一方で、それを最初にドーンと出すと、はっきり言えば責任転化しているのではないかと、  そういう見方も1つは捉えられ方があるわけです。これは1つのテクニカルな話かもしれません  が、そういう捉えられ方をする危険性をはらんでいるということは感じます。けれど、正論とし  ては私は絶対そうだと思うのです。あまりに「お任せします」、それで、どんどんその要求に応  えて、圧倒的に責任者側だけが問われるのでは絶対ない。両方から本当にお互いに向かい合って  支えるのだという方向が、絶対正しいのですが、その出し方というか、その辺の書き振りが要求  されるかという気がします。  3つぐらいに分けるという意見は、私も結構こういうことだとインパクトがないかなという気が  します。その中で1つ、私は救急医療ということ、国民から見るといちばん身近で、いろいろな  不満とかそういうことがある中では、救急医療の立て方が小さ過ぎて、もう少し大きな柱でバー  ンと出してほしい気がしています。  最終的にこれは大臣のお考えもいろいろおありだと思いますが、いま財政の問題、社会保障全体  の中での医療ということで、その財政の問題を全く出さないのかどうか、その辺のことも私は議  論はすべきだと思います。 ○ 辻本委員  一生懸命探してもこの中にないと思ったのが、これまでの議論で私も何回か発言させていただい  た、学校教育における子どもたちへの患者教育です。それがすっぽりと抜けてしまっているとい  う気がして、是非とも加えていただきたいと思うところです。  団塊の世代の私が、医療にどう参画していくか。それをいつ学んだかと言えば、幼いころに親に  連れていってもらった病院や診療所での親の受診行動。当時はパターナリズム医療の時代で、医  者に一生懸命頭を下げている、その後ろ姿を見るところから刷り込まれているのです。時代が変  化する中で「患者中心の医療」という言葉でどんなにおだてられても、なかなか意識改革は難し  い。社会の中でもかなり活躍していらっしゃる方が、口では偉そうなことを言っても、いざ医者  の前に行くと、聞きたいことも聞けないのだということを未だにおっしゃることを聞くと、刷り  込みがいかに意識改革の中に困難な要素であるかを痛感します。ということになれば、これから  の子どもたちにはどういう刷り込みをしていくかということが、非常に大きな将来ビジョンの中  に影響を与えることではないかと思うのです。  例えば、医者、看護師、コメディカルの方たちを、私たち患者はいい意味で、どう利用・活用を  させていただければいいか。あるいは病院に行ったときに、患者として自分がどういう努力をし、  どういう役割を務めるべきかということは、例えば患者体験、看取りの体験、同じぐらいの子ど  もを失った母親の話を聞く、そういうことも含めて、小・中・高教育の場面でやっていけること  があるのではないか。  そういう話をさせていただく度に、何となく無視されたように反応もなく、そしてこの度のこの  項目の中にも省かれてしまったのは文科省との関係かと、失礼ながらうがった見方をしてしまい  ました。幸いにも公務員制度の改革がいま明るくなってきた中で、省庁間の人事異動なども含め  て、厚労省と文科省が枠を越えて、子どものときから医療をどう国民1人ひとりが自分の問題と  して考えていけるか、国家的な取り組みとしていただきたい。そういったこともこのビジョンの  中に是非加えていただきたいとお願いしたいと思います。 ○ 舛添大臣  いまの辻本委員の話は、最後の医療のこれからの方向性の中に、情報を国民と共有する、その中  の学校教育の位置づけですね。EBMとかDBMとか、インフォームドコンセントとか、いろいろそう  いう概念がありますが、要するに知らないということ、何か上から医者が恵みでくれていて、ま  さにカルテはドイツ語で書いていく、国民は知らないのは当たり前だみたいな時代ではないので  す。だから、知らないことはよくない。知っているべきで、それが医療の質を考えるということ  がないといけないのです。 ○ 野中委員  「患者中心の医療」との表現はごく当然のように使われるが、一方でどのような行動が本来の「  患者中心の医療」として相応しいのかなかなか理解されていない。病気や障害を抱えた患者の痛  みを理解して、医療従事者が患者と共に一緒に闘う姿を見てはじめて医療は患者との協働作業と  いうことが理解される。つまり医療は患者との協働作業を理解する事が「患者中心の医療」と思  います。それとともに我が国の医療制度は国民みんなで支えるということも大切です。そのため  にも「はじめに」というところに入れていただく。構成に関しては、そこでいいと思います。  いま大臣が言われたように、「はじめに」も大事と思うのですが、私は医療者と患者・家族の協  働というか、そういう視点も取り上げていただきたいと思います。また、現場の診療所の医者と  して、適切なる効率的な受診とは何か。それも医者にとっての受診の視点ではなくて、患者が適  切な医療を受けるための視点でどういう受診が好ましいのかという視点で考え働きかけて頂きた  い。  ある面ではコンビニ診療は患者にとって便利かもしれない、しかし我々医療を提供する者が適切  な医療を患者に提供するとの視点から考えると、必ずしも適切な医療を提供としているとは考え  られない。お互いに本当は困っているにもかかわらず、お互いが理解し合わないで非難しあうこ  とは、それはまさに不幸だと思います。効率的な受診とは何なのかという部分も含めて、いま辻  本委員が言われましたように啓蒙していく事も大切と考えます。  そこにはいわゆる「かかりつけ医」を持つ事など、普段から適切な受診を考えることも大切と思  います。それは子どもの頃からの教育や日ごろの中の経験からも理解して頂きたい。国民の皆さ  ん方は保険料を払っているわけですから、この保険料を集める保険者が、もう少しそういう適切  な受診を啓蒙する活動する役割があるとは思っています。  もう1つは、先ほど西川副大臣が言われたように、救急医療の充実が実は大事です。しかし、そ  の救急医療の中身の充実を認識せずただ闇雲に救急医療を地域の医療機関に任せる事は、国民に  とって不幸なことです。地域の医療においてまず充実すべきは、治す医療である救急医療から始  まって、専門的な医療が適切に提供されるために、医療機関の人員配置もきちんと充実する必要  があります。  しかし、医療が100%治す事は現状では無理な事です。そこで「治す医療」と共に「支える医療」  が重要なのです。この事を医療保険制度で考えてほしいと主張しているわけです。是非その「支  える医療」の重要性を医療提供者側だけではなくて、医療を受ける患者さんをはじめとして現在  医療を受けていない国民の方にも、理解していただく働きかけが大切です。そのことが安心と希  望の医療確保に繋がると思います。  次に行きます。いろいろ書いていただいて、私は特に女性の問題などで、短時間正社員と書かれ  たことは大事と思います。どうしても短時間非常勤となってしまう現実がある。しかし、医療だ  けではなくてほかの職種もそうだと思いますが、職種の果たす責任をまず考える必要があると思  います。しかし一方で、私も診療所を経営していますから、苦しんでいます。つまり雇用する側  にとっては短時間正社員を雇用できるか、さらにその負担を負えるかどうか医療機関にとって大  きな課題と思います。この部分の実現には問題もあると思います。  多岐にわたっていろいろ話すとまずはどうしても費用の問題が大きく残ります。安心と希望の医  療の実現には人員も費用も要るという部分をどこかで記載しないと意味がない。しかし、あまり  書くと、お金が欲しいという話ばかりになってしまう。そのため目指すべき目標を設定しその実  現には、費用が必要と主張するべきと思います。 ○ 矢崎委員  私は病院の立場で、野中委員と違ってすべてお金が欲しいの立場で申し上げなくてはならないの  で大変恐縮ですが。先ほどお話いただいたように、これからの医療を考えるときに、キーワード  は2つあって、1つは、医療提供体制の構造改革といいますか、この改善と、もう1つは医療を  受ける側の方々の患者・家族、国民の医療に対する理解と行動変容を促さないといけないのでは  ないかということで、先ほどお話がありました。  私は医療提供体制の中で、特にいつも治す医療と支える医療があると。治す医療は救急を含んだ  急性期医療である医療機関、支えるのは診療所を中心とした、そこをこれからどう役割を考える  かということを考えていかないといけないと思います。  私は病院側から見ていますので、いまいちばん大事なのは、病院で働いている医師を中心とした  医療者の業務分担の見直しとサポートを、是非お願いしたいということです。それには、ずっと  前にそれは法律を変えるだけであまり費用はかからないのではないかと大臣はおっしゃいました  が、これはものすごく費用がかかる問題です。  というのは、ここに前に出したかもしれませんが、ここに我が国でベッド当たりの医師と看護師  が少ないと。これは日本では病床数が多いので、薄まっているのではないかという議論もあるの  ですが。例えば今日お示しした、これは国民保障会議で提出した資料ですが、高度先進医療をや  っている800床ぐらいの急性期の総合病院です。ご覧のように800床ぐらいの病院で見ますと、医  師数などは米国に比べると10分の1で、看護師数も10分の1です。どうしてこういうことになって  いるかと言うと、病院は人件費が40〜50%ぐらいでないと経営が成り立たない現状があるわけで  す。ですから、病院としてはたくさん医師・看護師が欲しいのだけれども、雇用できない。経営  ができなくなってしまう。  前に申し上げましたように、病院はこういう急性期、救急を含む病院は、労働集約型で、製造業  と違ってみんな手仕事でやるところですが、日本は労働倹約型になっている。倹約、倹約でひど  い状態になっている。それで過労になって看護師も医師も辞めてしまうという現状があるのです。  アメリカなどは、人件費は、こういう病院は85%とか労働集約型になっているのです。ですから、  そういう意味で本当に病院の構成を考えていただかない限り、なかなかうまくいかないのではな  いか。  それと、先ほどおっしゃっていただいた、どこがポイントかというと、支える医療はいま治す医  療へ行きますと、国民のいちばん不安は、救急医療が完備してないのではないかというのが不安  の大きな原因です。これは地域の情報ネットワークがしっかりすれば、そういうたらい回しなど  は防げるのではないかという議論が結構あったのですが、現状を見ますと、1次救急をやるよう  な診療所とか少し大きなクリニックと、2次救急と3次救急、救急救命センター、2次救急がい  ちばん我が国で体制が遅れているのです。  2次救急はどういうシステムになっているかというと、病院の手挙げ方式なのです。手挙げ方式  で、だから実力もばらばらだし、輪番制です。365日全部24時間開いているのが2次救急だと思う  と、全然違う。要するに手挙げ方式だから、「月曜日は整形外科しかやりません」「火・水はや  っていません」。そうしますと、いくら情報ネットワークを整備しても、とてもスムースに行か  ない。  国民の皆さんに安心していただくのは、2次救急に必要な患者は絶対病院に行ける、というシス  テムの確立が必要ではないかと思うのです。それはこのビジョンの中に具体的にどうするかとい  うのは書けないと思いますが、希望としては、2次救急は2次医療圏とか地域ニーズに沿って、  何か中核の病院を2次救急病院としてしっかりまとめて、救急の部門は公費で病院の中にお金を  注ぐのではなくて、そうすると病院の中で消えてしまいますので、救急部門を区分会計にして、  そこに専従の人員を24時間交替制にすると医師が大体24名ぐらい必要になるかと思いますが、そ  ういうしっかりした救急医療機関を設立する。そこに1次救急の人もワーッと来ると、せっかく  整えた2次救急の施設が崩壊してしまいますので、1次救急をしっかり区分して診ていただける  ような、そういうサテライトみたいなシステムを作るということを、将来のビジョンとしてそう  いう提供体制のシステム化といいますか。  熱が出た、腹痛だから2次救急に行くということではなくて、本当に2次救急が必要な患者は絶  対国が面倒を見る、というぐらいの仕組みができれば、国民は随分安心して医療に信頼を寄せる  と思います。それは前回大臣がおっしゃったように、政治の力しかできない可能性がありますの  で、是非そういうシステムづくりをお願いしたいと思います。 ○ 舛添大臣  いま矢崎委員がおっしゃっていたのですが、この2頁目から3頁目にかけての大きな4)の「医  療機関間の分担・ネットワークの推進」の中の3頁目の(4)に、「救急医療の充実及び遠隔医療の  推進」というのがあるのですが、構成としては、緊急医療体制の再構築みたいなそういうもので、  特出ししたらどうですか。丸ではなくて。それで、ちょっと遠隔医療の推進と並列させるのはど  うかなと。遠隔医療の推進は他のところへ入れる。やはり1つ大きな括弧のほうの1)、2)、  3)、4)、5)の中で緊急医療というのを特出しして、いまおっしゃったようなことを書いた  ほうが、国民の関心もありますので。ちょっとそういうふうに思います。 ○ 野中委員  救急に関して追加します。救急はいま矢崎委員がおっしゃったように当然なのですが、救急医療  は医療機関がいわゆる病気になった人を単に救うという話ではありません。地域の住民の安心と  安全をどう地域行政が作るかという話として考える必要があります。いままでは、医療機関が救  急医療を実施しているから任せておけば良いという話だったと思います。   地域医療計画を作成するときに、実際は東京都でも、例えば3次の救急医療機関がいくつあって、  それで2次の医療機関がいくつあるという、いま矢崎委員が言われたような、まさに、そういう  数だけで救急が充実しているという話をしていたわけです。やはりそこにもう少し魂を入れると  いうか、そういう話の中で、もう1回きちんと救急医療体制を構築する必要があります。  東京のような大都市では、救急医療機関の確認だけでも体制の構築は出来ますが、現状ではまだ  まだ課題はあります。しかし、全国には様々な地域があります。そこには、医師が不足して救急  体制を適切に構築できない地域もあるわけです。それらの状況を個々の病院間のの競争原理だけ  で解決する事は出来ません。むしろ、地域の住民の安心と安全を保障する体制を地域行政がどの  ように考えるかが重要であり、それらの費用をどのように用意するかの視点も大事と思います。  さらにそこで、公的な病院と私的な病院の役割分担もやはり明確にする必要もあると思います。  闇雲に公的病院と私的病院に競争をさせることは、避けるべきです。救急医療は地域の住民の信  頼を得るという一面がありますから、選ばれる病院として過剰に活動して、個人の病院特に私立  病院に対して過剰な負担をかける結果に陥ることになる場合も予想されます。  公的病院では医療機器が必要と判断されれば、それらの費用の捻出は容易です。しかし、私立病  院のそれらの費用の捻出は容易ではありません。その様な状況において、地域の救急体制を構築  していくということは、翻って経営が破綻すれば地域の救急体制は崩壊する事に繋がり、結果と  して地域の住民の安心と安全が守れないという話になります。その様な状況を防ぐためには各地  域において適切に地域医療計画を作成して、住民の安心と安全を具体的に守る事を検証する必要  があります。このような視点で、救急体制を作る事を入れていただきたいと思っております。 ○ 舛添大臣  ちょっとよろしいですか。いまの野中委員のお話を聞いていて、先ほどの私が言ったのもあるの  ですが、2頁から3頁にかけての大きな4)の「医療機関間の分担・ネットワークの推進」とい  う、これをむしろ(1)の「地域で支える医療の推進」という大きなタイトルにして、その中にいま  おっしゃったようなことを含めて、緊急医療も位置づける。大きな3)は、業種間とかスキルミ  ックスの話をしている。したがって(4)はインスティチューションの間の分担でやっていますけれ  ども、それよりも、いまおっしゃったように、この大きな4)を「地域で支える医療」というこ  とでバーンと言っておいて、その中に緊急医療も入りますよとしたほうが整理がつくかなと。  ちょっとそんな感じがいたしました。 ○ 松浪政務官  確かに2次医療は非常に重要だと思います。特に北海道などは市町村合併が進まなかった地域で  ありまして、たぶん218が180ぐらいにしかなっていないのです。やはり道のほうは、将来的には  2次医療圏ごとに市町村の再編が望ましいというぐらいに、市町村との連携というのは密接にな  りますので、その辺りの関係をどういうふうに位置づけていくかというのも、自治省マターであ  るのですが、そこもやはりしっかりと位置づけてもらわないといけないと思います。  特に大阪などですと、私なんか地元に三島救急というのがありまして、設置義務は高槻市、島本  町にはないのですけれども、それでも今年は橋下改革で、毎年4千万下りているお金を全部切る  切らないで、いまも大変なことになっております。そういうところ、どういうあり方がいいのか  というのを、この際しっかりと定義づけていただくことは必要だと思います。  それに絡むというか、先ほど冒頭に副大臣がおっしゃったのですけれども、最初に「医療者と家  族の協働の推進」というこういったものを出してくると、押しつけているのではないかという見  方、それもあると思うのですけれども、前回からありましたように、救急車も使い放題でいま大  変な問題になっている。私、調べましたら、アメリカでもフランスでもドイツでも、全部有料な  のですね。イギリスの場合は、例えば公共の病院に行くのはただだけれども、私立の病院の場合  は有料であるとか、それぞれの国で仕組みは違いますが、我が国も使いっ放しではないんだよと。  特に我が国の少子高齢化の率というのは他の先進国に比べて遥かにきついわけでありますから、  限られたパイをモラルをもって持つという、しっかりとした背筋の通った哲学を最初に据えてや  らないと、これもやりたい、あれもやりたいになってしまいます。やはりそこは我々、誤解を恐  れずに毅然とした態度で、将来の医療像、将来のパイというものを、当然我々、2,200億について  も大臣に頑張っていただいていますので、これは置いておくことはできると思うのです。しかし、  それにしても、我々はどこに優先的に置くのかという、将来世代のことも見据えた医療ビジョン  にしていただきたいと、これを特に前に盛り込んでいただきたいなと思うわけです。特にこれ、  順番については、大臣はどうお考えか伺いたいと思います。 ○ 西川副大臣  ありがとうございます。やはり私も最初にきちんとした理念を書くというのは賛成です。その書  き振りというか、そこを申し上げたのです。それと、いまの救急の問題で、いわば今、消防の救  急搬送と病院と一緒くたになってしまっているわけで、ある意味では、搬送は搬送の仕事なので  すよね。ですから、そこを有料にするということは、きちんと考えてみる必要が絶対あると思う  のです。そういうことによって国民の意識改革というか、本当に必要なとき救急車を呼ぶんだと  いうことにつながるので、1つのこれは提言ですけれども、やはりその辺のことは、それこそ検  討かあれかわかりませんが、1項入れてみてもいいのではないかなという思いがあります。  それともう1つ、これはもう、今日メディアの方が大勢いらっしゃっていて、どうかなという思  いがありますが、私は教育の問題とメディアの報道ぶりというのは、大変大きな影響を与えると  思いますね。今回の後期高齢者医療の問題、半分以上は周知徹底が、この辺はもう厚生労働省の  手落ちではっきりとお詫びしなければいけないのですが、周知徹底したら、いまおそらくおっし  ゃっていることの7割ぐらい解決するはずだと思いますね。はっきり申し上げて、ミスリードの  部分、ものすごくありますね。ですから、メディアの役割ということ、これは医療の問題だけで  はないかもしれませんが、どう我々は対応していったらいいのかと、ものすごく問われていると  思います。  本当に国民とご一緒に協働するのだから、メディアも協働してほしい。いわば、本当にもっとわ  かった上で報道してほしいという思いがすごくありますので、これは行政側の力不足というとこ  ろも、もちろんありますけれども、本当にそこまでご理解した上で報道しているのか、というこ  とがものすごくありますね。ですから、その辺のところも、実をいうと、未来ビジョンの中に私  は書いていただきたいなと、正直そういう思いがややあります。 ○ 松浪政務官  私もメディア出身で大変恐縮なのですが、私はちょっと副大臣とは違いまして、後期高齢者の問  題などでも、私も1年前にちょうど老人クラブの事務局で事務局長なんかとお話をして、当時か  ら老人クラブで全国に幹部の皆さんには説明できるのですけれども、それ以上は難しい。もう老  人クラブの皆さんでも1年前からやっていらっしゃいますし、辻本委員のところも1年前にです  ね、パネルディスカッションは後期高齢者の問題でやはり盛り上がらないと。介護保険のときは  民間の皆さんが一軒一軒回っていただいたのでいいのですけれども、今回はそうはいかないわけ  です。メディアの皆さんにわかっていただく以上に、私は正直厚生労働省に問題があると思って  おりまして。 ○ 西川副大臣  もちろんあります。 ○ 松浪政務官  厚生労働省の中でも本当にメディア対策に、これはやはり適性、不適性ありますから、適性のあ  る人材を、縦割りでガンガン持っていくのではなくて養成をして、一子相伝ではないけれども、  何人かやはりそれに長けた特性のしっかりした人間をやらないと。正直、私は厚生労働省のセン  スのないメディア対応というのは問題かなと。メディア出身でメディアを守るわけではないので  すけれども、私、個人的にはそういうふうに考えるわけでして、ちょっとそこは副大臣、いかが  かと思います。 ○ 西川副大臣  これはもうこの際ですから申し上げますが、はっきり言って新聞メディアは、時とともにきちん  と報道してくれているのです。明らかにテレビメディアと違うわけです。片方で煽り、片方で、  いや実は結構いい制度ですと書いている。これは本当に、きちんとした政権行政のチェックとい  う機能がいちばん大事ですから、それはもう、最初に非難、批判、いいのですね。しかし、やは  り啓発という仕事もあると思うのですね。それを最初からセンセーショナルのほうが先行してし  まうと、啓発的な意味はもうどこか行ってしまって、いくら正論を言っても言い分けにしか聞こ  えないのです。もうこれは実感です。地元でいくら説明しても、なかなか通じない。やはりその  辺のメディアの責任ってあると思うのですね。私はきちんとやってほしいですね。 ○ 舛添大臣  メディア論はよろしいでしょうか。今日はちょっと、次の私の公務の都合でどうしても7時に締  めたい。このビジョンは次回で最終回になると思いますが、先ほど矢崎委員がおっしゃったよう  な、現実のものにしていく政治の現場で話をしていかないといけない、ということで毎日のよう  に話をしております。2,200億円の話もあれば、骨太の方針も決めています。私も内閣の閣僚の一  員ですから、内閣の大きな方針に真っ向から反対するというわけにはいかないでしょう。そうい  う中で、このビジョンの裏付けをやるに当たっての私の考え方をちょっと申し上げますので、そ  れについて残った時間でコメントいただければと思います。  3つぐらいの原則で私は貫きたいなと思っております。1つは、規制強化は駄目だということ。  2つ目は、中央集権は駄目だということ。3番目は、改革の努力を怠っては駄目だということ。  最初の、規制強化は駄目だというのは、先ほど矢崎委員がおっしゃったように「金は出すが口は  出さない」ということでですね。いやしくもこういう方向で出たものが、政府とか厚生労働省の  権限を強化することであっては絶対にいけないということです。私がよく言っているのですが、  箸の上げ下げまで厚労省がやることはないだろうと。だから、謝るのも全部厚労省になってしま  う。  後期高齢者の保険証だって、まずは送るのを間違えるミスをした市町村のほうが悪いのです。お  上からの指導がなかったからと言いますが、95%がしっかりやっているのに、5%が駄目だったら、  そこは恥じなければというのもあります。私は、政府やこの厚生労働省の権限を強める方向には  絶対に反対ですね。  それとともに、医師会含めて、利益団体の権限や既得権益を守ることにも絶対に反対です。要す  るに国民の視点でやれということに尽きるので、それがいちばん強いのです。私は比例区ですけ  れども、どの利益団体から押されて政治家になったわけでもない。全くフリーです。そういう大  臣の下でないとできないことなので、薬剤師会も関係なければ、医師会も関係ない。国民の視点  しかないのです。だから、いやしくもこういうものを基にして、1つの利益団体が、これを利用  して自分たちの権益を拡大しようというのは、断固反対します。それは貫きたい。  金は出すが口は出さないというのは、ずっといま医師の確保の話をしておりますと、医師の数と  いうのは十分あるんだと。要するに、大臣、強制的に網走でも沖縄でも、連れて行けばいいでは  ないかという声も出ます。そんなことするべきではない。むしろやるべきは、金を出すが口を出  さないと言ったように、例えば岩手県なら岩手県が、岩手県立大学の医学部に入るように奨学金  をあげる。したがって、最低5年間は地元でやってくださいよと。こういうことはインセンティ  ブだけでいいけれども、厚労大臣に権限があるから、東京で勉強したらどこでやれ、というよう  なことは、もうそういう時代ではないと思いますよ。  ですから、インセンティブは与えるけれども、パニッシュメントを与えて規制を強化して大臣が  どこかにやる。それから、スキルミックスやるときも、厚生労働省がこう決めたスキルミックス  でなければならないとなったら話にならないから、必要な金は付けます、現場でどうぞとする。  2番目も同じようなことです。中央集権、先ほど地域でやるというのは、それはね、こんな厚生  労働省の、私含めて、大臣の椅子に座っていてね、地元がわかるわけがないですよ。国会がタイ  トでなければ毎日でも現場を見たい、というのはそういうことで、やはり現場重視ですね。現場  の看護師さん、現場のお医者さん、現場の病院の理事長さん、院長さん、これが問題だというこ  とを中心にして地域でやるのですから。私、矢崎委員、野中委員が、いまから北海道に行って治  療するわけではないのですね。  北海道の寒冷地と沖縄の暑い所で、医療のやり方だって違っていいはずなのです。最低限守らな  いといけないことはちゃんとやるけれども、もう地域に任せましょうということ。それで地域で  できれば、例えば関東圏と中部圏で、その圏の境を越えてやる協力だってできるのですよ。だか  ら、やはり地域重視、現場重視ということで、現場の声のほうが先ですよ、厚生労働省の役人の  声は後ですよ、大臣の声も後ですよと。こういうことでないと改革は進まないと思います。  それから3番目は、これが出たからといって、何でもかんでも金が付くと思うなということです。  無駄を省く改革努力はやりなさいと。したがって、2,200億円だって、ただくださいと言っても、  こんなものやめろと言っても、そんな虫のいい話はあるかという反論が出てくるわけです。それ  は当然なのです。だから、ジェネリックをもっと推進するならば、どれだけのお金が浮くんだろ  うかと考える。日本の医療機器は欧米のものに比べて高いですよ。なぜ高くなるのか。規制の強  化によって高くなるなら、規制を緩和すればいい。もちろん安全は守りますよ。ですから、やは  り改革の努力がなくて、ただ金をくれというのは、それは通りません。  まとめますと、規制強化によってこのビジョンの言っていることを実現するなら私は反対です。  中央集権によって改革するのも反対です。改革努力を、いま言った医療費全体の削減努力という  のもやらないで、このビジョンが出たからとにかく金付けてくれというのもこれも反対です。そ  れをまず申し上げておきたいと思います。その3つの原則を守りたい。したがって、そういうこ  との下で、金は出すけど口は出さない。  それから、2番目ですが、この問題の中で、財源を、お金を付けなければできないもの、付けな  くてもできるもの、付けるにしてもどれだけの程度を付けないと駄目か、それを少し精査をしな  いと、具体案ができないなというふうに思っています。スキルミックスや医療の中では、お金な  しでできると言ったかもしれませんが、しかしながら、とにかく大金を費やさないとできないと  いうのとはまた違うだろうと思います。  医師の養成も何人ずつ増やしていくか、どのぐらいの積算根拠を出すか。それから、スキルミッ  クスするときでも、看護師さんのスキルが上がらなければ、医師の代替はできないわけですから、  その養成費用がいくらかかるか、年間何人に対してその養成をするか、それをやらないといけな  い。しかし例えば、兵庫の柏原病院のように、コンビニ診療やめようと言ってお母さん方が頑張  っておやりになる、これはお金がかかってないわけです。それで、相当お医者さんが救われて、  小児科が存続できた。こういうこともできますから、それを少し精査する必要があるなと思いま  す。  それから、先ほど緊急医療の話が出てきましたけれども、やはりタイムスパンの概念が若干いる  だろうと。それは長期ビジョンなのですが、しかし、緊急医療が大事だと副大臣もおっしゃった  ので、まずどこからできるか。1年以内でできること、3年以内でできること、5年以内ででき  ることというのが必要だなと思っていますので、その精査が必要だと思います。  それから、まさに緊急にいまやることが必要なのだと、そんな悠長な10年計画なんて立てるな  という意見がありますけれども、矢崎委員がおっしゃったように、国民の側もそうですけれども、  医療提供体制というのは構造改革がない限り、この日本の医療体制の将来は暗黒だと思います。  そうしますと、構造改革を成功させないといけないのだけれども、その先の絵姿がこうですよと  いう10年後の将来ビジョンを描くことによって、いまのような状況なら私は医者にならないと  思っていた若者が、ああ、そうならば、いまから変わるのならなるよと。いま産科は大変だが、  自分はどうしても生命の誕生に携わりたかった。しかし、10年後にそうなるのならいまからや  るよ、というのが増えると思うのです。  長期ビジョンなんてやって悠長だというのは、とにかく政治家はすぐ目の前、先のことをやるの  が政治家だみたいなことを、いっぱいおっしゃる。しかし、そうではないのだろう。構造改革的  な長期的ビジョンがあって初めてであって、そうではないと何が起こっているかが逆なのです。  長期ビジョンがないから、何をいまやってきたかというと、何とか私立病院の産科が閉鎖されま  す、大臣何とかしてくださいと。そこで無理してお医者さんを連れてきて、形だけ閉鎖されない  のでは、何にも構造的に変わっていないのです。それだけ毎年やってごらんなさい。何が起こる  か。大臣の命令で、主任教授の命令で、行きたくもない所に行かされる。毎回こうかと。やる気  がなくなって、どんどん減っていきます。是非、長期ビジョンの意味というのは、そういうとこ  ろにあるとご理解いただきまして、ちょっとわかりやすいように、極端に申し上げましたが、何  かご意見があれば賜りたいと思います。 ○ 野中委員   繰り返しになりますが、私は地域医療計画を地域できちんと立てていくこと。もう1つは、救  急をどうやって受けるかも大事ですが、救急の患者を治療して次の医療機関へ繋げる。最終的に  は住み慣れた地域までどうやって戻すか。その行程をきちんと地域で目指して、描いて地域医療  計画を立てていなかったのが大きな問題だったと思います。そのことはやはり地域の医師会が、  きちんと地域医療計画作成の中で提案していく作業が必要ですが、なかなかそこができなかった  ことにも問題があると思います。先ほどの大臣の保険証の話ではなくて、地域ももう少し住民の  安心を守ることが大事と思う。  例えば、救急車をどう活用するかの話です。救急が発生したら、まず救急隊がトリアージをして  どこの病院に搬送するかを前もって決めていくことが重要です。私が大学を辞めたときに経験し  たのは、救急隊がその現場で搬送先の病院を15分、20分をかけて探していることでした。そんな  非効率なことはありません。ですから、本来の救急体制はどうあるべきかを検討して体制の構築  を考えなくてはいけない。  救急だけではなくて、急性期の病院からどうやって退院するかの視点が、いまの医療の中では欠  けていたと私は思う。今回の診療報酬では、その辺の部分はある面で評価してきた。しかし、そ  のことを病院が大事と思っていただかないとこの事は実現できない。ただし、大事と思っていた  だくためには、一方で地域の医療がきちんと充実しなければいけない。そのためには、例えば適  切な看護師配置が、いまの診療報酬ではなかなか容易ではない。医療機関の数の問題もあります。  また本来は救急の入院を大事にしなければなりませんが、一方で我が国の医療が充実するために  は、患者の退院後の生活を整理して支えていくことが大事と思っています。すなわち「支える医  療」の充実です。  非常に細かい話をしていますが、そういう1つひとつの現場の積上げが、最終的には医師数がど  れくらい必要なのかを判断するためには必要です。さらに医師数だけではなくて、看護師など、  さまざまな職種の必要数も、本当に足りているのか足りていないのかをきちんと考えていく必要  があります。このような積み上げをしなければ医療の充実はあり得ないと思います。  例えば、外国からいろいろな職種の人が入ってくることも大事ですが、それは安易に安く人を雇  うためではなくて、医療や介護の質を担保するためだったらいいと思います。しかし、どうも実  情は質を担保するより、職員すなわち多職種の人々を確保するという取組みのようです。厚労省  から直接援助するのではなく、そういう医療や介護における様々な職種の人々を養成しサポート  する体制を手がけていただきたい。地域が様々な職種の人々が足りているのか、足りていないか  を把握すれば、それらの人々を確保するためにどれだけのお金が必要か判断できます。しかし、  そういう調査がなくて、地域行政が単にお金が必要と希望しても、国も困ると思います。お金を  要求するためには、そういう視点も必要と思います。最終的には医師数が今回の大きな課題です  が、私は医師数だけではなくて、多職種の人数も足りているかどうかを、改めて考えていただか  ないと、医師数の不足も解決できないと思っています。 ○ 矢崎委員  先ほど国民の不安を解消するのは、2次救急病院をしっかり確立することと申し上げました。し  かし、その病院だけ確立してもいけない。野中委員が言われるように、地域でそれを支えるネッ  トワークを作らなければならない。そのネットワークは診療所の先生の努力だと思います。とこ  ろが、いまはやはり前にもお話しましたが、大概は1人の診療所でやっていますので、時間外や  休日の診療をお頼みしますということも罷りません。かかりつけの患者は、その先生の顔が見え  ますが、住民のほとんどは、その先生を知らない。病院は情報を開示していますが、個人の病院  はどういう先生だかよくわからない。  ですから、やはり診療所の機能強化と申し上げましたが、その個々の先生の臨床の診療能力を上  げるという、いま日医などがやっとやっていますが、もう少し、前に申し上げたグループ診療み  たいな、複数の医師が一緒にやって、本当に24時間体制のようなサテライトのステーション、そ  この医師は病院と関連を持つ。  実はこれは可能かどうかわかりませんが、いま病院から医師がどんどん立ち去って、開業してい  るとよく聞きますが、その人たちがどこに行っているかわからない。その人たちは、おそらくも  しかするとビル診になったり、病院と全然関係のない、医師会とも関係ない診療所でやっている  かもしれない。ですから、病院を辞めた少なくとも臨床経験の専門医は、しっかりした研修を受  けて、そしてそういう受け皿のようなグループ診療みたいなサテライトステーションで、病院と  も関連しながら開業するような仕組みがあればいい。  だから、提供体制を従来の病院、診療所ではなくて、いくつかの段階で、そういうところはもう  1次救急は責任を持って診て、2次救急は2次救急の病院に送る。それから、逆に今度は病院か  らしてみると、診療所に逆紹介しても、患者はもう行かないのです。かかりつけ医から紹介され  た患者は、かかりつけ医のもとに行きますが、そうではない患者は診療所に行かない。というの  は、その先生はよくわからないとなる。ですから、やはり病診連携で病院と診療所の連携だけで  は解決できない。もう少し診療所のシステム化といいますか、何かそのようなことも考えていた  だけないかと。  大臣から医療費にも相当に無駄があって、適正化するべきところがあるのではないかとお話いた  だきました。その前に、病院から患者を送るときには、そういうシステムと同時に受け皿がない  となかなか難しい。先ほどの適正化のときに、私は大きなものは、高齢者が高い費用で入院して  いる医療型で療養型の病院を、厚労省は35万床を15万床にと言ったのですが、大体そういう病院  は200床以下の私立の個人病院がメインです。そこを厚労省が15万床に減少しなさいと言っても、  我々の国立病院であれば、厚労省が言ったら、「はい」と15万床に削りますが、そうはなかなか  できないのではないか。結局は15万床はいかないとうやむやになりそうです。そうすると、医療  費の削減はできない。それはやはり難民をつくらない受け皿を、発想を別にして受け皿を作らな  い限りなかなか難しい。  いまそれは診療報酬の世界でやっていますが、診療報酬の世界というのは、本当にこっちを削っ  てこっちに移すというような付替えみたいです。そこにはいろいろな利益相反みたいなこともあ  るし、いろいろな交渉や取りあいになったりなどします。中医協がどういう役割をなしているか  ということも。政治が総枠を決めるのは決めるのですが、中の配分を利益代表の方々が話し合っ  ているようなところでない何か別な仕組みも、将来本当に検討し直してもいいのではないか。 ○ 舛添大臣  いまの矢崎委員のご意見ですが、私も中医協の役割なども、そろそろ見直すべき時期にきている  と思います。まさに、後期高齢者の終末期医療の話はそうであります。専門家で議論するのはい  いのですが、やはり国民あっての専門家なので、私は中医協のあり方は考え直すべき時期にきて  いるのではないかと思っています。  もう1つは、先ほどちらっと言いましたが、別に医師会や看護師会と喧嘩する気は全くありませ  ん。ちゃんと協働してやっていますが、この中で1行もそれについての言及がなされていないの  は、「ああ、うちの地元の医師会があって私たちの命は救われたのですよ。医師会の皆さんのお  かげでこうですよ」と。だから、受け皿だって、医師会が努力すればできるものはあるでしょう。  看護師の会はどうしているのですか。だから、国民から乖離した利益団体というのは存続できま  せん。  医療提供サービス者の中の全国団体はいっぱいあります。この人たちも自己改革が私は必要だと  思います。何かあったら、看護師は医師が悪い。医師は看護師や准看護師をやめさせるのが嫌だ  など、そんな話ばっかりです。自分たちの話ばっかりでしょう。それは選挙だって、そんなこと  をやっていれば落ちるのは当たり前です。 ○ 辻本委員  大臣のおっしゃることは、もう全てごもっともと思いながら、勢いがいいので何か巻き込まれて  しまいそうな気がしました(笑)。確かに国の権限が小さくなるということ、地域主体になって  いくのは、例えば地域の住民がその行政そのものに興味を持って参加していくという意味でも、  大変大きな改革になると思います。ただ、一方で国の責任放棄ではないのか、というような不安  もわき上がってくると思うのです。  先ほど、野中委員がおっしゃったように、私は一気にそういう形にするのではなくて、徐々にそ  うしていくためには、やはり国がサポートすることが必要だと思います。例えば、それを放って  おいたら、地域格差が生まれてくることだって当然あり得る話です。すでに地域医療計画の議論  やがん診療連携拠点病院の議論だって、地域間の温度差が出てきてしまっている。それは地域の  責任ですと放棄されてしまったら、地域の人たちが今度は難民と化して、いい医療の整った県に  移動するなどをしなければいけなくなってきます。だから、その辺のところで、いずれはそうな  るかもしれないけれど、そのプロセスとしては、やはりきちんと国がサポートする必要があると  思うのです。  それから、もう1つは独法化などでもそうなのですが、評価システムというのでしょうか、第三  者機関のような支援体制の充実、これは国主導でどうあるべきかを含めて、そういう中間システ  ムの充実がある意味ではサポートという形になっていくのではないかと思います。一気に地域に  放り出さないでいただきたいということを、お願いしたいと思います。 ○ 舛添大臣  はい、その点について1、2申し上げます。やはり全部中央からやってきたことの歪みが、どこ  かに出てきているのではないかというのがあります。周産期医療センターをつくればいいのか。  まだつくっていない宮崎がうまくいって、周産期医療センターがあったって、たらい回しをやっ  ているのは誰の責任なのだということはあります。  しかし、おっしゃることはよくわかるのです。ミニマムは守ります。ただ、市町村というのは医  療を担う財源的にも、いろいろな意味で体制としては小さすぎる。では、都道府県はどうか、ま  さに今度の後期高齢者の医療。これくらいあればと言いますが、実をいうと私はそれでも足りな  いと思っているのです。九州1つ、四国1つ、東北6県1つ、これならば、いまおっしゃったこ  とは可能になる。  例えば、北海道で命を守るあり方と、何度も言いますが、沖縄では全然気候が違います。旭川な  どは、夏は30度、冬は零下30度です。沖縄は毎日の温暖差が2、3度しかない。全然違う。そうす  ると、中央でガイドラインを作るのか。その地域で大まかなことは任せますよと。  ただ、何がいちばん困るかというと、やりたいときにお金ができません、金がありませんとなる。  これは交付税を含めてです。だから、お金はきちんと出しますよと、これが中央の仕事だと思う  のです。そうしないと、先ほどおっしゃったように、貧しい地域はどうしようもない。金持ちの  東京ばっかりに医療機器だって何だって良いのが集まる。それは是正しないといけない。  しかし、そこから先はどうかなと思う。だから、私は介護や医療をめぐって、そろそろ国の形を、  例えば道州制に変えないと、どっちからも文句がくると思います。後期高齢者だって、では東京  都と島根、鳥取、広域連合で同じですかというと、全然桁なども違います。そうすると、せめて  やはり道州制くらいの規模で国の形も変えることが、いま言ったご意見につながってくるのだろ  うと思います。  私が先ほど言ったことをあえて申し上げているのは、ミニマムを守るのは当然なのですが、この  紙が出たから、では私が思っているのと逆方向に行くのはいかがかと、むしろ申し上げたかった  のです。私が別に独裁者的に決めるわけではないのですが、若い医療提供者の人たちが、これな  ら自分たちは一生懸命今からやれるなという夢がないと、行き詰まってきて何も夢がなく閉塞感  が漂って、悪い話ばかりだとなってしまいます。だから、そういうことがあるものですから、辻  本委員のご意見はよく頭に置きながらということです。 ○ 松浪政務官  ありがとうございます。もうちょうどいちばん私の専門の道州制のところに話をいただいて、大  変ありがたく、これをいつ言い出そうかと思っていたわけです。具体的にいまの道州というのは、  自民党の中で進んでいる議論の中では、地方支分部局の移譲三ゲンの移譲というところまで議論  がきているわけです。権限、財源、人間、ここまでの機能、何故人間かと言いますと、いきなり  都道府県のレベルでいままで政策を作っていた人たちでは、いくら権限、財源を移譲しても、本  当にいままで国でやっていたようなノウハウがあるかという不安があるということです。  厚生局単位でいろいろなルールを、例えば、ベッドの面積要件というのも本当に全国一律の必要  があるのかどうかも疑問であります。小学校などの規制でよく言われるのですが、学校の教室は  南側につくりなさいと、北海道からつくってきたのはいいが、沖縄に行ったら暑くてしょうがな  いなど、そういう馬鹿なことが起きてくるわけです。  できれば、10年後には自民党も道州制に移行するという考えで、経済団体等も動いているわけで  すから、道州制が導入されたときには、やはり大幅な広域の厚生局単位の権限移譲なども、実は  この中に盛り込んでいただくと未来がスーッと見えて、これはいままでの厚生行政とは全く違う  新たな世界があるのだな、と見ていただけるのではないか。大臣には是非「道州制の暁には」と  いうのを盛り込んでいただければ、私は大変ありがたいと思います。  あと1点、矢崎委員がいつもおっしゃることに共感をするのは、やはり病診連携といいましても、  そこにはギャップがあります。いまはまさに勤務医の数が少なくなったというのが問題の最たる  ものです。どうやって川中をつくっていくか。矢崎委員はサテライト、グループ化などとおっし  ゃいましたが、この川中をつくっていくというのは、もしも病院が疲弊しても川中が何とかカバ  ーをしてくれるだろうし、大臣が先ほどからおっしゃるような自律制というのが病院と診療所だ  けというのであれば、限界があるだろう。その間を取りもつ仕組み、辻本委員から言わせたら検  討というか、それくらいの中では盛り込んでいただくのがいいのではないか。  最後に1点、我々はこれまで9回議論をしてきましたが、限界があったと思います。積み残して  いる部分については、今後どうやっていくか。特に私がいつも大臣がおっしゃって大事だと思い  ますのは、医療と介護の線引きです。今回は特に介護の現場の方など、そういう方はヒアリング  もできていないわけです。その線引きも将来医療、特に支える医療で関係があるわけですから、  ここに対して今後厚労省の中で引き続き検討できるような、未来に向かう文言を最後に入れてい  ただければと思います。以上です。 ○ 矢崎委員  現在の病院における医師不足対策としては、医学部定員の大幅増という意見が耳目を集めていま  す。それに対して私はいつも慎重論を唱えていることで、多方面から「わからず屋」というレッ  テルを貼られて、大変苦慮しているところです。増員論を唱える人に対して、私は圧倒的に不利  な立場にあります。  しかし、繰り返しになりますが、私は病院の立場でありますから、本来なら医師がいくらあって  も足りないという立場であって、医師の増員を本当は願い出るのが当然の立場なのです。まして、  私は医師が増員されると、競争相手が増えて収入の確保、すなわち既得権の保持が難しくなると  いう職能団体の代弁をする立場には絶対ない。それから、医療費総枠規制を気にする、こちらの  官僚の方々の気持は十分理解しますが、それを代弁する立場でもありません。病院の医師の置か  れている状況を最も知る者として、また医学教育の立場からやはり慎重論を唱えているのであり  ます。増やしてはいかんということではなく、私も足りないから増員すべきだと思いますが、限  度をしっかり考えていただかないと、現場が混乱します。医学教育の現場が混乱すると思います  ので、最後のお願いで、その点は慎重にご判断をお願いしたい。 ○ 舛添大臣  はい、いろいろなご意見がいちばん貴重なので、1つの意見で固まってはいけないと思います。  いろいろなポイントは、財源の問題を含めて重要な問題があると思います。全体の医療費の抑制  もあります。そういうことも含めて、最初の三原則を申し上げたので、現場が判断する。中央が  判断するのではありません。しかも、規制の強化をやる。つまり、何人、絶対的にこうしろ、今  年は女性医師は何人だというのは、これはまさにある意味で規制なのです。そういうことではな  いだろう。自ずから現場から上がっている声を集約してこうなるという形ではないと、政策は実  現しません。いろいろな無駄があって、よく言われるように、お医者さん足りない、足りないと  大臣言っているが、うちの町内には30軒も開業医があって、土日はゴルフ三昧だし、平日5時に  閉まっているよと、あれを何とかすればなるのだという意見も片一方であります。それはよくわ  かっていますので、また知恵をみんなで出しながらやりたいと思っています。それでは、私の時  間がありますので、今日はこの辺でどうでしょうか。 ○ 小野看護職員確保対策官  それでは、この辺で本日の議論を終わらせていただきます。ありがとうございました。次回につ  いてはまた追って事務局よりご連絡を申し上げたいと思います。本日は閉会します。ありがとう  ございました。 (照会先)  厚生労働省医政局総務課  松淵、加藤(憲) (代)03−5253−1111(内線2516、2517)