08/05/28 第4回介護予防継続的評価分析等検討会議事録 第4回介護予防継続的評価分析等検討会議事録 1. 日時・場所 平成20年5月28日(水)14:00〜15:41 航空会館 大ホール 2. 出席委員 石田、岩越、植田、大川、大久保、大渕、坂元、杉山、鈴木、          丹後、辻、津下の各委員(高橋委員は欠席) 3.議題  (1)介護予防サービスの定量的な効果分析について  (2)介護予防サービスの利用回数の変化ごとの介護度の変化について ○天本課長補佐 それでは、定刻となりましたので、第4回「介護予防継続的評価分析等検討 会」を開催いたします。  本日の委員の御出席状況でございますが、大川委員は、御出席の御連絡をいただいておりま すが、まだ御到着なさっておりません。そのほか、高橋委員からは、欠席の御連絡をいただい ております。  それでは、辻座長、議事進行をお願いいたします。 ○辻座長 それでは、事務局から資料の説明をお願いいたします。 ○天本課長補佐 かしこまりました。  それでは、お手元の資料について確認させていただきます。  まず、議事次第がございまして、1枚おめくりいただきまして資料一覧、おめくりいただき まして委員名簿がございます。  そして、おめくりいただきまして、本日の資料1「介護予防サービスの定量的な効果分析に ついて(第2次分析結果)(案)」がございます。  そして、資料2としまして、「介護予防サービスの利用回数の変化ごとの介護度の変化につ いて」。  最後に、参考資料1としまして、「介護予防サービスの利用回数の変化ごとの介護度の変化 について(図)」という資料がございます。  以上でございます。 ○辻座長 それでは、議題1「介護予防サービスの定量的な効果分析について」に入らせてい ただきます。  1つまとめをいたしますと、3月31日に開催されました前回の検討会では、介護予防施策の 導入前後で状態が悪化した期間を人・月で計算いたしまして、その割合について仮集計を行っ たものでありました。その結果、悪化した期間の割合が減少するということが、特定高齢者施 策、それから要支援1の両方で明らかになりましたけれども、実際に介護予防の効果を定量的 に算出するには、ある集団におきまして要介護度が悪化した人数のデータをもとに発生率を比 較することの方が一般的ではないかという議論が前回あったと理解しております。  それを受けまして、本検討会の委員の先生方の何名かのメンバーで参集いたしまして、定量 的な介護予防効果について、第2次分析の結果という形で資料としてまとめていただきました。 この資料につきまして、大久保先生の方から御説明いただきます。 ○大久保委員 それでは、資料1について御説明したいと思います。  3ページ目をごらんになっていただければと思います。今、辻先生からお話がありましたよ うに、前回の解析とは異なった解析、むしろより一般的に行われている解析を行った結果を御 紹介させていただきます。  3ページ目、文章が丁寧に書かれておりますので、それにできるだけ忠実に進めさせていた だきますが、まず、目は参考資料1をごらんになっていただいて、耳は私の声をということに なるとわかりやすいかと思います。それでは、御説明します。  これは、平成20年3月31日に行われた第3回検討委員会での結果でありますが、そのときは、 継続的評価分析事業が開始された平成19年1月1日から11月30日までに記入され、12月に収集 されたデータをもとに、これを「人・月法」と言っておりますが、人・月法によって仮集計を 行ったものであります。  その結果、特定高齢者や要支援1に相当する者について、介護予防施策の導入前後で要介護 度が悪化した人・月の割合が減少することが明らかになりましたが、人・月法に基づく割合の 変化を直ちに介護予防効果の大きさとみなすことについては、さまざまな議論があるというこ とであります。  次に、これは前回を思い出していただければと思いますが、次のページの参考資料2をごら んになっていただければと思います。  介護予防の効果を定量的に算出するには、実際にある集団において、要介護度が悪化した人 数のデータを用いて、その発生率を算出することが必要とされました。前回の仮集計で用いた 方法は、要介護度が悪化した者の発生した人数に加えて、悪化後の期間の長さについても評価 する手法で、介護予防施策導入前後において、その人・月の割合がどのように変化するかにつ いて分析を行ったものでありまして、この方法で定量的な介護予防効果を算出するのは余り一 般的ではないということであります。  そのため、ではどうするかということでありますが、一般に、ある集団における特定の事象 の発生率は、ある集団を一定期間追跡した場合、その期間中に特定の事象が発生した人数を分 子に、その事象が発生するまでの追跡期間の累積、この場合、人・月でありますが、人・月を 分母として算出される数値であります。つまり、分子が事象を発生した人数、分母が追跡 (人・月)ということであります。  介護予防の効果を評価する際には、集団における要介護状態の悪化の頻度が、介護予防事業 を導入することによって低下するか否かを検証することが必要となります。すなわち、要介護 度が悪化した者の発生率を施策導入前後において算出し、施策導入前の群(コントロール群) の発生率よりも施策導入後の発生率が小さい場合は、効果があったと解釈され、その差もしく は比を算出することにより、定量的にその効果を算出することができることになります。  したがって、今回は定量的な介護予防効果の算出のため、前回の仮集計で用いた方法による 評価を行わず、施策導入前後の要介護度が悪化した者の発生率を求め、その差や比を算出する ことで分析を行ったということであります。これは参考資料2に書かれていることであります。  次に、参考資料3をごらんになっていただければと思います。  具体的には、今回の分析では、継続的評価分析支援事業が開始された平成19年1月1日から 12月31日までに登録され、平成20年4月までに集計された、前回より長期間にわたり収集され たデータをもとに、実際に要介護度が悪化した人数のデータを用いてその発生率及び定量的な 介護予防効果の大きさを算出したところであります。  医学的介入においては、理想的には、無作為抽出試験(ランダマイズ・コントロール・スタ ディ)を行うことが理想的ではありますが、今回の分析においては、前向きのコントロール集 団がないため、前回同様、介護予防施策導入後の段階でも入手可能な、導入前の状態に関する 過去のデータを対照(ヒストリカルコントロール)として比較することとなりました。  そのため、今回の分析についても、一部、仮定と留意点があり、今後の事業終了後の最終分 析に向け、さまざまな視点からの考え方や意見を踏まえて適宜検討を続ける必要があると認識 しております。  次に、5ページ目を読ませていただきますが、介護予防施策導入による効果分析の基本的な 考え方ということで、新たに導入された介護予防施策の定量的な効果は、対象者に対して一定 期間の働きかけを行った場合と行わなかった場合について、それぞれの要介護度が悪化した者 の発生率を算出し、その差や比を分析することによって求められる。こうした属性の異なる2 群において、ある事象の発生率を比較する際には、統計学的な両群の属性の調整が必要であり ます。  今回は、ほぼ同一とみなせる群における施策導入前後のデータは存在しないため、施策導入 後については、現在、市町村が行っている継続的評価分析支援事業の対象者を調査対象と設定 し、導入前(コントロール群)については、同事業の対象者にできるだけ類似したコントロー ル群の設定を行い、更に、統計学的に両群の属性の調整を行うことにより、施策導入による定 量的な効果の分析を行ったわけであります。  6ページ目ですが、新予防給付と特定高齢者施策の2つありますが、まず、新予防給付の効 果、要支援1の効果について御説明します。  まず、効果分析に用いる対象者として、これは同じように資料3を引き続きごらんになって いただければと思いますが、新予防給付導入前に要支援であった者については、導入後の平成 18年4月以降、要支援1とされたということ、そしてもう一つ、比較する2つの集団を可能な 限り類似したものにするため、施策導入前後、いずれの群においても、継続的評価分析支援事 業の調査対象地域である83市町村から抽出しました。  具体的な方法として、以下、2つの者を対象に、これは参考資料3をごらんになっていただ ければと思うんですが、実際にそれぞれの集団において、要介護度が悪化した人数のデータを 用いて、それぞれの発生率や定量的な介護予防効果を算出しました。  新予防給付導入前、コントロール群ですが、これは83市町村、1万7,612人であります。継続 的評価分析支援事業の調査対象となった市町村の住民であり、かつ、平成16年1月に要支援と して給付を受けていた者であります。該当者について、平成16年12月までの要介護度の推移の データを介護給付費請求書、いわゆるレセプトを用いて抽出いたしました。  新予防給付後の方ですが、これも同じく83市町村ですが、今回のデータ分析の対象となった のは5,087人であります。平成19年1月から開始された継続的評価分析支援事業において、調査 対象となった者のうち、次の2つの両方を満たす者として、1つは、継続的評価分析支援事業 登録時に要支援1の者、そして、登録後、1回以上追跡調査が行われた者。3カ月ごとに追跡 調査が行われるというデザインになっておりますが、2回以上、登録後、1回以上の追跡が行 われた、この2つの条件があった者を抽出しております。  次に、分析であります。  集団の属性が違うわけですので、その違いを踏まえた分析ということで、最初に、新予防給 付導入前後の両群における要介護度が悪化した者の発生率及び定量的な介護予防効果を算出す るに当たっては、分析の対象となる調査対象・コントロール集団について、予防効果に影響を 及ぼす可能性のある属性の分布の違いを踏まえて、可能な限り調整を行うことが必要でありま す。  具体的な調整方法としては、両群のデータを、調整を行う属性ごとに層別化し、層別データ を用いて、1つは標準化法によって両群における要介護度が悪化した者の発生率及びその差を 算出し、もう一つは、Mantel-Haenszel法によって発生率の相対危険度を算出したところであり ます。  新予防給付導入後のデータは、いずれも継続的評価分析事業の調査対象地域である83市町村 から抽出されており、また、両群ともサービス給付を受けている者となっています。したがっ て、性・年齢ごとの層別化による調整を行うことによって、両群は極めて属性の近い集団とし て比較が可能と考えられました。  ただし、両群のデータに含まれる人数の差、追跡する期間、対象の状況を把握する頻度には 以下のような差異があり、これらの差異が、「要介護度の悪化する者が発生する割合」にどの 程度影響を与えているか、現段階では断定的を評価を行うことは困難であります。  以下のような差というのは、1番目として、データに含まれる人数及び追跡の大きさ。これ は、平成16年1月に給付を受けていた者だけでも、調査対象群に比べて非常に大きく、もし2 月以降に給付を受け始めた者もコントロール群に追加する場合は、両群の人数及び追跡の間に 更に大きな差が生じることになるということであります。  もう一つは、追跡する期間の差として、対象者をある一定期間だけ追跡した場合、これは、 継続的評価分析支援事業3カ月ごとでありますが、それと対象者全員を1年間追跡した場合、 これはパイロット調査であります。  もう一つ、対象を把握する頻度に違いがあるわけですけれども、これは、地域の全住民を毎 日追跡する形になっているのがレセプトデータを用いたものであります。そして、登録された 者のみを3カ月ごとに追跡する形になっているのが継続的評価分析支援事業であります。それ ぞれ集団が微妙に違っているということをここで申し上げているところであります。  したがって、今回の分析に当たっては、評価事業の実施可能性を確保する観点から、以上の ようなコントロール群と調査対象群の設定を行っています。  2つ目、新予防給付導入前及び導入後のデータについてということであります。  要支援1に該当する要介護度の対象者について、コントロール群及び調査対象群のデータに おける要介護度が悪化した人数、追跡(人・月)、性・年齢階級ごとにデータを集計したとこ ろ、表1のような結果になったわけです。  男女2つに分け、そして年齢を3区分、65〜74、75〜84、85以上といった、男女の性差2つ に年齢階級3の層化を行ったところであります。ここに書いてある悪化人数(分子)というの は、悪化した人の数でありまして、観察人・月(分母)でありますが、これは悪化した人に関 しては悪化するまでの期間、悪化しなかった方は、そのまま観察していた期間がここには積み 上げられているものであります。次に、これは、この表から悪化度の計算をしているところで あります。  次に、要介護度が悪化した者の発生率及び介護予防効果の算出についてということでありま すが、これは、参考資料4を見ながら聞いていただければと思います。  要支援1に相当する者に関するデータについて、要介護度が悪化した者の発生率及び同発生 率の相対危険度を算出したところ、以下のようになりました。  標準化法による要介護度が悪化した者の発生率、1万2,000人・月当たり、これは1,000人を 12カ月追跡したということに相当するわけですが、新予防給付導入前の悪化した者の率は1万 2,000人・月当たり389.3、そして導入後は233.9ですから、389と234でありまして、その差がマ イナス155、95%信頼区間で言うとマイナス174.9〜135.9ということで、ゼロをまたいでおりま せんので、統計的に有意差があったということになります。  次に、Mantel-Haenszel法によって行った場合は、これはダイレクトに悪化率が出るというよ りも、比率として、相対危険度として出てきましたが、これは0.60ということになりまして、 信頼区間が0.56〜0.65で1をまたがらないということで、統計的な有意が認められたというこ とでございます。  以上の結果を解釈すれば、繰り返しになるかもしれませんが、標準化法を用いて施策導入前 後の要介護度が悪化した者の発生率とその差については、要支援1に相当する者については、 悪化する人数は導入前の389に対して導入後は234人となり、導入前後の要介護度が悪化した人 数は、統計学的に有意であり、155人減少、対象者1,000人に対しては15.5%の減少、導入前の 悪化する人数に比べると40%減少ということがわかりまして、介護予防効果があったというこ とが認められました。  以上が、新予防給付までの話です。  次に、特定高齢者施策導入の効果についてということであります。  参考資料5をごらんになっていただければと思いますが、右の青いところが旧基準、オレン ジ色の方が新基準ということでありますけれども、これをごらんになっていただければと思い ます。  要介護・要支援状態にない高齢者に対する介護予防事業として、平成18年4月から地域支援 事業が実施されております。特に、要支援・要介護の状態となる可能性が高い高齢者(特定高 齢者)に対しては、新たな介護予防施策(特定高齢者施策)が創設されています。  同事業は、当初、65歳以上の高齢者のうち、基本チェックリストの該当項目数等を基準とし て、特定高齢者候補者を選出した上で、生活機能評価を実施して特定高齢者を確定するという ものでありました。その際、高齢者のほぼ5%が対象である特定高齢者となるとされたが、実 際に地域で同事業の参加者が少なかったため、平成19年4月からは、特定高齢者候補者の選定 基準及び特定高齢者の決定基準が緩和されたところであります。  これは、「新基準」とここでは申し上げ、それ以前のものは「旧基準」と申し上げます。ど こが違うかというと、例えば、特定高齢者候補者の選定基準について、当初、チェックリスト において、うつ予防、支援関係の項目を除く20項目のうち12項目以上に該当する者が、特定高 齢者候補者の基準の一つでありましたが、それが緩和されて、「10項目以上に該当」といった ようなことであります。また、基準が緩和する前に特定高齢者の決定基準として、「運動器の 機能向上関係5項目全てに該当」というものでありましたけれども、緩和後は、「5項目のう ち3項目以上に該当」と基準が緩くなっております。  したがって、基準緩和後の新基準に基づいて決定された特定高齢者候補者及び特定高齢者は、 緩和前の旧基準に基づいて決定された特定高齢者候補者及び特定高齢者と比較して、生活機能 の程度、更に機能の推移など、異なる可能性があるわけであります。  そのため、介護予防施策導入前後の特定高齢者における要介護度の悪化した者の発生率を比 較するためには、こうした新旧の基準の違いを踏まえ、それぞれの基準に分けて対象を選別し、 旧基準により算出した者同士、新基準で算出された者同士の比較を行う必要があるということ であります。  具体的には、これは参考資料3に戻って、ごらんになっていただければと思いますが、先ほ ど参考資料では新予防給付を御説明しましたが、今回は、その下の特定高齢者施策の方を御説 明させていただきます。具体的には、本分析においては、それぞれ以下の1、2の者について、 実際にそれぞれの集団において要介護度が悪化した者の人数のデータを用いて、それぞれの発 生率や定量的な介護予防効果を算出することとしました。  特定高齢者施策導入前(コントロール群)でありますが、平成18年4月の特定高齢者施策導 入前には特定高齢者はおらず、コントロール群として特定高齢者を設定することはできないが、 施策導入後の特定高齢者との比較を行うためには、できる限り特定高齢者に類似しており、か つ一定期間の状態の変化を把握することが可能なコントロール群を設定することが必要であり ます。  厚生労働省では、特定高齢者の把握手法に関する基本的調査を目的として、平成17年から 「基本チェックリストに関するパイロット調査」を実施しております。  平成18年度にこのパイロット調査に参加した10市町村のうち、4市町村のデータについては、 基本チェックリストや要介護認定上のデータに不備・欠落があり、完全なデータセットを有し ていた6市町のデータをコントロール群のデータとして使用することになりました。  調査対象群のデータには、旧基準による特定高齢者、新基準による特定高齢者の両方を含む ことになりますが、前述のように、調査対象群のデータと比較を可能にするためには、コント ロール群のデータについても、旧基準と新基準それぞれに基づいて特定高齢者候補者とみなさ れる者を選定しましたということでございます。  したがって、本分析におけるコントロール群としては、パイロット調査の対象者のうち、次 の(ア)、(イ)において(1)及び(2)の両方を満たすものとしたということでございます。  まず、(ア)旧基準によるコントロール群、これは6市町村、588人を対象としましたが、(1) は、平成17年調査対象者のうち、平成19年3月31日までの特定高齢者の候補者の選定基準を満 たす者で、かつ、(2)平成18年度調査において要介護度等の状況が把握されている者、この2つ の基準を満たす者としました。  また、(イ)新基準によるコントロール群、これは6市町に、1,679人でありますが、(1)平成 17年度調査対象者のうち、平成19年4月1日からの特定高齢者の候補者の選定基準(新基準) を満たす者で、かつ、(2)平成18年度の調査において要介護度等の状況が把握されている者とい うことであります。  特定高齢者施策導入後の調査対象群について御説明しますと、今回の分析における調査対象 群のデータは、継続的評価分析支援事業において、平成19年1月1日から平成19年12月31日ま でに調査票が記入されたデータであることから、平成19年3月31日までに旧基準によって判定 された特定高齢者と、平成19年4月1日から新基準によって判定された特定高齢者の両方をこ の分は含んでいることになります。  特定高齢者と決定された者が実際に特定高齢者施策に参加するのは、市町村における事務手 続等の期間を経た後、通常、一定期間経過してからであり、今回の分析に当たっては、当該期 間について1カ月程度を見込むことが適切と考えられました。つまり、4月30日までに継続的 評価分析支援事業に特定高齢者として登録があった者を「旧基準により選定された対象群」と して、5月1日以降に登録があった者を「新基準により選定された対象群」としたわけであり ます。制度的には3月31日、4月1日で分かれておりますが、分析上、4月30日で区切ったと いうことであります。  したがって、調査対象群は次のようなものであるということで、旧基準により選定された調 査対象群、83市町村で899人ですが、4月30日までに特定高齢者として登録があった者で、かつ、 登録後、1回以上の追跡調査が行われた者。  新基準により選定された調査対象群としては、これは83市町村、371人でありますが、5月1 日以降に特定高齢者として登録された者であって、登録後、1回以上の追跡があった者という ものであります。  新予防給付と違って、特定高齢者の場合は基準が変わったということで、予防給付とは異な る少し複雑な比較対象を設定いたしました。  分析方法です。  これは、分析法そのものについては、今までお話ししてきた新予防給付と方法は同じであり ます。標準化法、両群の属性の分布の違いを踏まえて、できる限り調整をした上で、標準法に よって、そしてMantel-Haenszel法によって介護度の悪化した者の率を比較しました。  今回の分析に関しては、介入前後の集団の比較を行う場合に、調整を行うべき属性の違いと して、性・年齢、特定高齢者候補者と施策に参加した特定高齢者、つまり導入前と導入後の集 団特性の違いがあることが予想されます。そのため、性・年齢の違いについては、性・年齢階 級ごとに両群のデータを層別化することで調整が可能でありました。(2)について、導入前の集 団と導入後の集団の違いでありますが、これについては、基本チェックリストにおける運動機 能測定得点を用いて、まずは調整を検討しました。当該得点を層化した場合、両群のデータに おける追跡人・月や要介護度が悪化した人数が少なくデータが不安定になって分析に不十分で あることから、当該得点を用いて調整をすることは不適切と考えました。  これは、参考資料7をごらんになっていただければと思います。実際に、性・年齢、更に運 動機能の測定得点によって、つまり2掛ける3掛ける3、つまり18のマスがそれぞれできるわ けですけれども、データ数が少ないこともありまして、分子に入っているところまで、ゼロと か1というのが目につくかと思います。やはりゼロとか1といった数字が1つのマスに入るこ とは、分析上、必ずしも適切とは言えませんので、ここでは、性・年齢のみを層別化した分析 を行ったところです。つまり、結果的には、ちょうど新予防給付のときの調整と同じでありま して、その結果については、表2に出ているところであります。  次に、参考資料4をごらんになっていただければと思います。ちょっと長くなってきて申し わけございませんが、結果について御説明したいと思います。  旧基準により決定された特定高齢者候補者の評価でありますが、標準化法による要介護度が 悪化した者の発生率、1万2,000人・月当たりで見ますと、施策導入前は、コントロール群です が、要介護度が悪化した者の発生率が101.0、導入後が82.4、差がマイナス18.6ということであ ります。ただし、95%信頼区間はマイナス56.3〜19.2ということで、ゼロをまたがっておりま すので、統計的に有意な差はなかったということになります。  Mantel-Haenszel法によって比べた発生率の相対危険度の場合は0.93、95%信頼区間が0.64〜 1.35ということで1をまたがりますので、これも統計的に有意と認められたものではありませ ん。  以上の結果を解釈すれば、この参考資料4の表でありますけれども、介護度が悪化する人数 は、施策導入前の101人に対して、導入後は82人、そして、その前後で19人が減少したというこ とであります。しかし、統計的な有意は認めなかったということでございます。  次に、新基準同士で評価をした場合について御説明します。これも、この参考資料4をごら んになっていただければと思いますが、同様に、標準化法の場合は、悪化者の発生率が、前が 55.8、後が49.4、差がマイナス6.41、信頼区間は42.86〜プラス30.03ということで、統計的な 差は認められませんでした。  一方、Mantel-Haenszel法によっても、相対危険度0.89、信頼区間が0.44〜1.81ということで、 有意な差は認められませんでした。  そういうことで、繰り返しになりますが、以上の結果から、導入前後の特定高齢者について、 施策導入前後の新基準での要介護度が悪化した者の発生率は、前の56人に対して後は49人であ りまして6人減少したということであります。割合で言いますと1,000人に対して0.64%、介護 度の悪化した人に対しては11.4%の減少ということであります。しかし、統計的な有意は認め なかったということであります。  以上の結果をまとめます。ちょっと長くなって大変恐縮ですが、平成19年12月末までに得ら れたデータを集計し、定量的な介護予防効果について分析した結果、次のような結論が得られ ました。  要支援1の者については、統計学的に有為な介護予防効果がある。1,000人を12カ月追跡した 場合、要介護度が悪化する人数が統計学的有意に389人から234人へと155人減少し、施策導入前 の悪化する人数389人に対しては40%減少という結果になりました。  特定高齢者または特定高齢者候補者については、旧基準及び新基準のいずれで選出・決定さ れた場合においても、旧基準、新基準どちらを用いた場合においても、施策導入前後で要介護 度が悪化する人数は減少はしますけれども、その差は統計的に有意ではなかったということで あります。  結果の考察について、新予防給付の場合と特定高齢者について御説明します。  新予防給付の予防効果については、今回の解析に用いたコントロール群と調査対象群は、両 群とも同じ市町村のデータであり、そして、両群ともサービスを受けている群であることから、 両群は極めて属性の近い集団と考えられました。更に、性・年齢を調整しておりますので、解 析結果については、属性の違いはほぼ調整できると考えられました。  その前に申し上げました追跡方法の相違の影響などについてはあるわけですけれども、それ については今後更なる検討を続ける必要がありますが、要支援1相当の者について、施策導入 前後で、悪化する人数は統計学的有意に減少し、予防効果が実証されたと考えております。  一方、特定高齢者についてであります。  特定高齢者については、施策導入前後で要介護度が悪化する者の発生率は減少するが、統計 的に有意な介護予防効果を算出することができなかった。  この結果については2つぐらい考えられまして、その一つが、コントロール群が特定高齢者 候補者であるのに対し、調査対象群が特定高齢者施策利用者であるなど、両群の属性が大きく 異なっている。これは、参考資料の8をごらんになってください。ここに両群の違いが、特定 高齢者施策の方では目で見える形で表しておりますが、一つは、コントロール群が特定高齢者 候補者であるのに対して、調査対象群が特定高齢者施策利用者であること、それと、もう一つ 目が、特定高齢者施策について、統計的な有意差を検出するために十分な調査対象数が得られ なかったのではないかといった2つが今考えられておりまして、最初の1つについては、今ま で申し上げた方法で抽出された施策導入前の対象者(コントロール群)は、あくまでも基本チ ェックリストの点数のみにより、便宜的に特定高齢者候補者とみなされた者であって、施策導 入後の対象者のように、特定高齢者候補者の中から、各種検査、理学所見及び医師の判断等か ら成る生活機能評価を受けて特定高齢者と決定され、更に本人の意思により特定高齢者施策に 参加した者とは、集団の属性が異なっている可能性があるということです。  具体的には、施策導入後の対象者は、導入前のコントロール群より生活機能が低く、要介護 度が低下しやすい可能性があり、両群の要介護度が悪化した者の発生率を比較するには、導入 前の要介護度の悪化する者の発生率が過小評価されるのではないか。「施策導入後の発生率− 施策導入前の発生率」とか、その相対発生率によって定義される予防効果が検出されにくくな っている可能性がある点に留意する必要があるのではないかということであります。  2番目については、特定高齢者施策の対象者には、新予防給付の対象者に比べて生活機能低 下が少ない。したがって、新予防給付対象者に比べて、特定高齢者施策の対象者の方が、「要 介護度の悪化する者の発生率」が少なく、一般に介護予防施策に参加した者でも、その効果が 表れる程度が少ないと考えられる。  これは、非常に少ない差を検出するためにはより多くのサンプル数が必要だということを申 し上げていることでありますが、そのため、特定高齢者における介護予防の効果に関する分析 において、効果を統計学的に有意に検出するためには、新予防給付のコントロール群及び対象 群に比べ、より大きなコントロール群と調査対象群を設定する必要がある。今回は、両群とも、 新予防給付において設定された両群よりも小さくなっており、このことが統計学的な有意差を 検出できなかった要因としてあると思う。本来は差があるかもしれませんが、このサンプル数 から算出することはできなかったのではないかということであります。  3点目、追跡期間が違っているということについての考察でありますが、特定高齢者施策の 介護予防効果を評価するために設定された施策導入前のコントロール群では、調査開始時点の 特定高齢者候補者を追跡し、1年後に悪化した者及び維持、改善した者を把握してデータとし ており、一方、導入後の調査対象群では、平成19年1月1日から平成19年12月31日の期間に登 録された対象者を3カ月ごとに追跡しております。  一方、新予防給付の介護予防効果を評価するために設定された施策導入前のコントロール群 では、平成16年1月にレセプトデータによって把握した者を毎月追跡しており、導入後では、 特定高齢者施策における対象者と同じく、継続的評価分析事業で追跡していることから、3カ 月ごとに追跡している。  そして、データに含まれる人数及び追跡の大きさ、追跡する期間並びに対象を把握する頻度 の差については、それらが「要介護度の悪化する者が発生する割合」にどの程度影響を与える のか、現段階では断定的な評価を行うことが困難であり、今回の分析に当たっては、評価事業 の実施可能性を確保する観点から、上記のようなコントロール群と今まで話してきましたコン トロール群と調査対象群の設定を行っています。  また、今後、予防施策への参加1年目である場合の介護予防効果と2年目、3年目と参加期 間が長くなった場合の介護予防効果を比較した場合、長期の介護予防効果についても検討する 必要があるのではないかということであります。  今後の定量的測定に関する論点についてということで幾つか上げられておりますが、先ほど 述べたように、特定高齢者施策については、1つ、コントロール群と調査対象群の属性が大き く異なっており、その相違を十分に調整できなかったこと、2番目、統計学的な有意差を検出 するのに十分な調査対象者が得られなかったことなどから、今後の解析において、ヒストリカ ルコントロールを用いて介護予防効果を算出することが妥当であるかについては、慎重な検討 が必要である。  また、今後、特定高齢者施策の介護予防効果を検出するためには、今回得られた結果を踏ま え、上記で論じられた点を踏まえて、次の3つの要素を考慮しつつ、適切なデザインによる調 査研究を新たに実施する必要があると考えられます。3点と申しますと、コントロール群と調 査対象群の属性の違い、統計的な有意差があった場合に、これを検出できるだけの対象、コン トロール群の規模、データ収集の頻度や複数年にわたる予防効果の算出などであります。  また、今回、介護予防施策導入による効果分析が行われ、定量的な結果が出されたことから、 今後は、投入された「費用」についても、何を費用としてとらえるかなどについて分析の考慮 に入れた上で、新予防給付などの介護予防施策の費用対効果について分析を行う必要があると 考えております。  大変申しわけないです。時間があれですけれども、次に、29ページ、要支援2に該当する者 の効果分析についてということです。3月のときにはこの分析については行わなかったもので すが、今回、これを幾つかの注意しなければいけない点がありますが、分析として行いました ので、参考として御説明します。  新予防給付導入前に要介護1であった者と、導入後に要支援2である者は、要介護認定にお いて、同じ「要介護1相当」のカテゴリーに属すということで、これは、その後ろの32ページ、 33ページをごらんになっていただければと思います。同じ「要介護1相当」のカテゴリーに属 し、介護の手間に係る審査判定において「要介護1相当」であると判定された後、「認知症高 齢者の日常生活自立度」や「認定調査結果」等を用いて状態の維持、改善可能性に係る審査判 定を行い、「要介護1」または「要支援2」と判定されております。  今回、参考として、新予防給付導入前に要介護1であった者4万人余りと、導入後に要支援 2であった5,000人余りを同等の状態(要支援2に相当する者)と仮定する場合として、本文中 に要支援1に相当する者について、解析と同様に、分析を行いました。  一応、導入前、要介護1だった者は、導入後は要支援2と同じであるという仮定をした場合 に、そういう前提を置いた上で分析をしてございます。導入前に要介護1であった者と、導入 後に要支援2であった者が同等の状態であると仮定することから、両者ともに、要介護2以上 となった場合に、悪化した者として計算しております。  なお、平成18年度の介護給付費実態調査を見ますと、翌年に悪化した者の割合は、それぞれ 24%、そして25%、これは参考資料2の33ページをごらんになっていただきます。33ページの データですが、レセプトから分析を行いますと、要支援2から悪化した人は24%、要介護1か ら悪化した人は25.6%ということでありました。  新予防給付導入前(コントロール群)と導入後のデータについてということで、これは表3、 次の裏のページです。同様に、性・年齢で区分したところに数値が出ております。  このデータを用いて、今まで御説明してきた方法と同じ方法で標準化法による悪化率の計算、 そしてMantel-Haenszel法による悪化者の発生率の相対危険度を計算しました。これは34ページ、 一番最後の参考資料3をごらんになっていただけるとわかりやすいかと思います。その結果、 導入前は、標準化法によりますと1万2,000人・月当たり、発生率250人でありますけれども、 後は67.2人、差が183人ということであります。一方、Mantel-Haenszel法により行いますと、 相対危険度は0.27ということで、両方とも統計的な差があったということでございます。  以上の結果を解釈すれば、ちょっと繰り返しになるかもしれませんが、要支援2に相当する 者について、標準化法を用いて行ったところ、250人から67人となった。これは183人減少して、 統計的な有意があったということであります。  ただし、これは参考として御説明しているということで、注意点を幾つか最後に申し上げま す。  これらの分析では、新予防給付導入前の要介護1と導入後の要支援2を同等の状態と仮定し た上での分析を行いました。しかし、今回の解釈を行うに当たっては、以下のような(1)から(3) の、要支援2よりも要介護1の方が要介護度が悪化する者の割合が高い可能性があるという点 に留意する必要があるということでございます。  (1)要支援2及び要介護1は、前述のとおり、審査判定において「要介護1相当」であると判 定された後、「認知症高齢者の日常生活自立度」や「認定調査表結果」等を用いて両者のいず れかに判定されるわけであります。つまり、要介護1は要支援2に比べ「認知症を有してい る」か「症状が不安定」であるため、生活機能がより低下しやすい可能性があります。  (2)両群とも同等の状態であると仮定しているため、ともに要介護2以上の状態になる場合を 「要介護状態が悪化した」と定義しております。この定義に従えば、今のような効果があった ということでありますが、この定義が正しいかどうかということは議論があるところでありま す。  (3)また、当該結果の解釈において、平成18年度のレセプトからのデータによって得られた要 支援2の24%と要介護1の25.6%という数字、要介護度が悪化した者の割合の差について、要 介護1の者は、要介護2以上の要介護へと移行した場合に悪化と定義されるが、要支援2の者 は、要介護2以上となる場合に加え、要介護1と移行した場合でも悪化と定義される点を考慮 する必要があるということであります。  以上、非常に長くなりました。大変申しわけないんですが、私から御説明させていただきま した。ありがとうございました。 ○辻座長 大久保先生、どうもありがとうございました。  それでは、ただいまの説明につきまして、委員の先生方から御質問、御意見いただきたいと 思います。どなたからでも結構です。よろしくお願いします。 ○津下委員 あいち健康の森の津下と申します。大久保先生、本当に詳細に御説明いただきま してありがとうございました。  特定高齢者では今回の解析でははっきりしなかったけれども、新予防給付の対象者では有意 差が出たということなんですが、前回の議論にもあったかと思いますが、特定高齢者の施策に おいては、維持と改善を一緒にひっくるめていると、特定高齢者から一定のサービスによって 一般高齢者へと改善する方々の率が違ってくるあたりを見過ごしてしまう可能性が高いという ことと、それから、先生もおっしゃいましたように、評価までの期間が、1年未満のところで 評価することが妥当性としていかがなものかという点は考慮しなければいけなくて、もう少し 長期的な視点できちんと評価をしていただくことが大切ではないかなと。今回、有意差がない からといって、ネガティブにとらえるのはよくないのではないかと思いました。 ○大久保委員 特に、前回も議論になりましたけれども、今回、悪化者の割合で見たというこ とで、改善した者の割合を見ていませんので、その辺は評価としてこれで十分なのか、やはり そこまで含めてしっかりやらなければいけないのとかいうことは、またいろいろと議論させて いただきたいと思います。 ○辻座長 ほかにどなたか。鈴木先生、何か。 ○鈴木委員 今、津下先生もおっしゃられたことで、基本的に私も同じ意見です。ただ、特定 高齢者は、確かにMantel-Haenszelなどの有意差検定を行うと有意ではないと出ているんですが、 17ページに特定高齢者の今回の分析に当たっての幾つかの留意点が書かれていて、やはりこれ だけ大きな属性の違い、つまり完全にコントロールし得ないような両群の属性等があった訳で す。にもかかわらず、一応、相対危険度がいずれも1を下回っているということを、私はやは り大事にしなければいけないというか、その意味はあるのだろうと思っております。観察期間 が短かったり、長かったりとかいろいろなことで、確かに有意検定をしますとそこには至って いないということは確かですけれども、しかし、そういったことをもう少し長く観察するとい うことなどを通じて、人・月などのパワーを増やしていくというようなことをすれば、有意差 は出てくる可能性もあるのかなと見ております。  いずれにしても、特定高齢者施策というものを、今回の有意差がなかったということで単純 に効果がないと決めることはできないだろうと思っております。 ○辻座長 ありがとうございます。  ほかにどなたかありますか。 ○坂元委員 やはりちょっと母集団の数もあると思います。数を増やして行ったときに、もう ちょっと違った結果が出るのではないかと思います。  参考になるかどうかわからないんですけれども、川崎市では、毎年高齢者の意識調査をやっ ていております。特に特定高齢者という仕切りでの調査ではありませんが、要支援や要介護を 受けていない高齢者でも、外出調査とかをやると、7割近くは昨年と「変わらない」と答えて いるんですが、18%が「減った」と答えております。つまり、一般の高齢者でも、何も介入も していないと自然に運動機能の低下が起こるのではないかと思われます。  それから見ると、有意差はなかったが、悪化が改善する傾向にあるといのは、別の見方をす ると、やはり効果があるのではないかというような見方もできるのではないかと思われます。 私どもは、この数カ月後には、全戸通知をして、介護予防事業を一気に推し進めていくことに なりますが、数は少ないが我々の過去のデータからも効果があると思っており、市としては全 力で進めていきたいとは思っています。 ○辻座長 ありがとうございました。  ほかにどなたかございますか。 ○津下委員 新しい施策の前と後の比較ということで条件の違う比較をせざるを得ないという ことなんですけれども、27ページの表がわかりやすいわけですが、新しい制度になった後のグ ループで、特定高齢者ですが、サービスを受けている者と受けていない者というのが、これか ら明確に出てくるわけです。そういうようなサービスの評価も大切ではないでしょうか。施策 の評価というと導入前後という見方になってしまいますが、サービスの評価、つまり新制度の 中での特定高齢者におけるサービス実施の有無についての比較ということも十分にやっていた だけると、介護予防効果の根拠になるのではないかと思いますので、そのあたりの解析もよろ しくお願いしたいと思います。 ○辻座長 ありがとうございます。  実際問題といたしまして、報告書の中にも書いていますけれども、本当にサービスなり施策 の効果を調べたいと思うと、サービスを実施する群としない群に無作為に割り付けて、その効 果を見るということがベストなのですが、現実問題として介護予防の施策は国全体でされてい ますので、法律による話ですので、実施しない群はつくれない。ですから、次善の策として過 去にさかのぼって、制度改正以前の状況と以降の状況を比べるということをやっているわけで すが、その意味で、特定高齢者という制度自体がなかったわけですので、そのデータがない訳 です。唯一あるのが、この基本チェックリスト作成のときのパイロット調査、12市町村の8,000 人のデータだけです。その方々について、基本チェックリストの点数について1年後の状況を 比べているわけですが、その対象者と今回の継続評価の対象者が比較可能なのかという問題が ある。  もう一つは、どうしても対象者数が少ないので、統計学的な有意差の検出力は基本的に対象 者の数によって規定されてしまうので、これはもういかんともしがたいという状況です。  ですから、今後も追跡を続けるということももちろん行うべきですが、ほかに検討の仕方が ないのかということは、今、津下先生がおっしゃっておられますが、それについて、やはりこ の検討会としても考えていかなければいけないのではないかと考えております。例えば、特定 高齢者施策でも、その回数をたくさんやっている市町村と通常のレベルでやっている市町村と 分けて、その後の変化を前向きに見ていくというような、同時並行的にいろいろな差を見てい くということもあり得るのではないかと思いますが、その辺で、丹後先生、これまでの検討の 限界を踏まえた上で今後どのような検討があり得るのか、先生のお考えを教えていただければ と思います。 ○丹後委員 丹後です。よろしくお願いします。  行政の皆さんに御迷惑をかける発言をする可能性があるのでちょっと控えたいんですけれど も、今日のこの検討会に参加されている方々は、まさにこういう事業にかかわっている方が中 心になっていらっしゃると思いますので、恐らくそれは前向きに、こういう事業は効果がある んだという前提、勿論信じて多分ここにいらっしゃっていると思うんですね。ですからそれは、 私は、ある意味、統計の専門家として、解析というのはそういう立場ではいけないと常々思っ ています。つまり、解析するということは、効果があるかどうかわからないからやるのであっ て、わかっていれば解析はしないという立場で参加させていただいていますから、そういうこ とをちょっと踏まえさせていただきますと、要するに、今回は、まさにさっき先生が言われた ように、対象者がもともとなかったわけですよね。ないんだけれども、やらなければいけない ということで、かなり無理を承知で、可能な限りできることをやったということだと思います。 したがいまして、効果があった、ないということは、本来的に言うと、かなり対象群の性格が 違うものを寄せ集めてきてやっているということがあるので、したがって、下がったからどう のこうの、なかったからどうのこうのということを、今回だけの結果から明確に言うことは非 常に難しいと私は思っています。  したがいまして、本当にこの効果があるかないかということをきちんと議論しようとすれば、 これは法律だという話なんですけれども、先生も一生懸命言われていましたが、いわゆるこの 事業をランダマイズして、サービスを受けないグループと受けるグループに分けるというのが 基本なわけですが、それができないのであれば、サービスの少ない、サービスを受けているレ ベルの低いグループと、かなりたくさん受けている、頻繁に受けているグループに分けて、前 向きに分けて、それをしかも相当数の市区町村で、これは疫学研究で言うとクラスターランダ マイゼーションという話になるんですが、クラスター分析のような比較で前向きに評価するこ とによって、1年2年ではという話であれば2〜3年追いかけて、改善、悪化も含めた形でき ちんと評価するということをすることによって、本当にこの事業がどの程度の効果があるかと いうことが明確に出てくるのではないかと感じています。  ちょっと一言でよろしいでしょうか。 ○辻座長 ありがとうございました。  ほかに何か。 ○大川委員 いろいろと細かい分析をいただいてありがとうございます。ただ、この分析が、 どうも要介護度を中心として議論されているので、効果というのは、何も要介護度だけではご ざいませんで、本当の意味での生活機能ということで、本来は、要介護度だけではなく、それ も加えて評価をすべきではないかと思います。  そうして考えますと、施策の導入前にはそのデータがないとおっしゃるかもしれませんが、 施策を導入した後の同一人における介護予防の今回のものが、介入の前と後ということで比較 が、継続的な評価のところで、事業のところの対象者でもある程度できるのではないかと思い ます。ですから、効果の分析というのを、要介護度だけではなくて、ほかの因子から検討して いただければありがたいのではないかと思います。  それから、2番目ですけれども、やはり介護予防というのは、維持を目的とするのではなく て、改善までを目的とする。特に要介護度が軽い人の場合には改善ができるんだということを かなり強調したわけですから、やはり改善ということをもっときちんと見るべきではないかと、 前回も申し上げましたが、それを強くもう一度申し上げたいと思います。  効果の判定ですけれども、どうも議論の中で、システムとしての効果なのか、今行われてい る介護予防の事業の内容の効果なのかということは、もう少し明確に分けながら話をすべきで あって、今出ているデータは、システムが導入されたことによって、システムによる効果どう こうではなくて、その後で行われている、今行われている介護予防ということで、行われてい る内容が効果があるのかないのかということの議論だと思いますので、今効果がないからシス テム、介護予防を重視するということが問題だということにはつながらないわけですから、そ こも明確に考えるべきではないかと思います。当然ながら、短期的な効果と長期的な効果とい うことは別でしょうということであります。  それから、前提としてもう一回確認すべきではないかと思うんですが、介護予防を重視する ようになったときに問題になったことは、脳卒中モデルだけではなくて、廃用症候群モデル、 すなわち徐々に低下していく、ただし、階段状に低下するということを早く見つける、そうい う状態の人でも、今まではそれは改善できないと思われていたんだけれども、そういう人が改 善できる対象である、そういうことを認識してやりましょうというのが、介護予防のシステム をつくるときに非常に重視されたことだと思います。先生もいろいろなところで座長をしてい ただきましたけれども。ですから、こういう分析をするときにも、廃用症候群タイプなのか、 脳卒中タイプなのかということは、層別化のときに非常に重要な観点ではないかと思います。  今回の継続的な評価分析等の事業の中でも、原因は何なのかとか、中止の理由は何なのかと いうところで調査はしてあるわけですから、調査項目がございますから、そこを使えばある程 度は出てくるのではないかと思います。  それとの関係ですけれども、人・月でやる場合には、中止というのも、なぜ中止したのかと いうところ、人・月で評価ができている期間というのは限られているわけですが、中止という ことで短くなった人もいるでしょうし、開始が遅いから短い人もいるでしょうから、なぜ短い のかということで、これも中止だとかそういう項目もきちんと調査があるわけですから、たく さんの調査項目があるわけですから、その内容をもう少し活用して、もっと違う観点から分析 すると面白いというか、もう少しいろいろな観点でよい介護予防が組めるような結果が出てく るのではないかと思います。  以上です。 ○辻座長 ありがとうございました。大変重要な御指摘をいただきました。特に、今回の継続 的評価分析事業全般との関連で御示唆いただいたと思うのですけれども、今まで、特に介護予 防サービスにそもそも効果があるのかないのかということで、今回の制度改正前後で要介護認 定度の変化(悪化率)を比べていたわけですが、おっしゃるとおり、それ以外にもたくさんデ ータがあるわけです。生活機能、QOL、あるいは日常生活の活用度、GDS(うつの尺度)、 食事の内容とか、歯の問題とか、さまざまなデータがあります。ですから、今後これを、研究 班の方でかなり具体的に、生活機能の変化、生活の質とか日常生活の活発度、さまざまなこと の変化をこれから体系的に出していこうと思っております。  特に考えておりますのは、サービス利用開始後に改善が著しい人、あるいは期待できる人は どういう人なのか、年齢・性とか要介護度とか、今先生がおっしゃった原因疾患として廃用モ デルのタイプなのか脳卒中モデルのタイプなのか、あるいは心理的な要因、社会的な要因、家 族のバックアップなど膨大なデータを持っておりますので、どういった要因がサービスを受け た後の生活機能等の変化に関連しているのかを明らかにしたいと考えています。その要因とし ては、サービスの内容、種類、あるいは先ほど丹後先生もおっしゃっていましたが、そのサー ビスの頻度、回数とか量についても、どのようなサービスをどれくらい受けている人で、どれ くらい変化が大きいのか、あるいは少ないのかということを解析することによって、例えば、 現状の介護予防サービスの効果が期待できるような方々を絞り込んでいけるような、あるいは サービスを評価していけるような、そういったことをこれから検討していきたいと思っており ます。  どうもありがとうございます。  ほかに。坂元先生。 ○坂元委員 1つには、行政側の立場としては、ある施策があったときに、市民が受けたいか 受けたくないかということは、かなり重要な要素だと思います。いくら科学的に有用であると 言っても、市民が受けたいか受けたくないかが問題となります。我々は、パワリハなどの介護 予防サービスを受けたいか否かという無作為の調査をやったところ、6割近い市民が「受けた い」と答えているということを重視しております。行政側としては、極論になりますが一つに は、多くの市民が受けたいと言っている以上実施する意義があるだろうということ、それから、 もう一つには、無作為調査で高齢者に介護予防の調査したときに、郵送で70%以上の回答率が あるという事実です。実際やっていけばかなり高い実施率が望めるだろうという調査結果が得 られたということです。  それで、特定高齢者となって、予防を受けなかった人がどうなっていくかということもフォ ローできるかもしれない、そうすると、特に川崎市の場合は今後18万通の通知を出す予定なの で、受けた人と受けなかった人の差というものがもっとわかってくるのではないかと思われま す。 ○辻座長 杉山委員、何か。 ○杉山委員 大変詳細なおまとめをいただきまして、予防給付が効果があったという結果は非 常によかったと思っておりますが、特定高齢者施策は、先生方も御指摘のように、コントロー ルの取り方、例えば予防給付でありますと83対83で市町村が一致しているわけですが、特定高 齢者施策では、コントロ−ルとなった6市町村の特性もあるかと思います。この6市町村がそ れまで何もしていなかったと言っても、この時代、かなり介護予防を重視していた市町村も入 っている可能性もあるかもしれない。ですから、ここで言うコントロールに対して、地域支援 事業が効果がなかったと言ってしまうのはよくないと考えております。もう少し慎重にこの委 員会がいろいろな検討をしていかなければいけないと思って聞いておりました。 ○辻座長 どうぞ。 ○石田委員 4点ほど意見をお話しします。  予防給付と特定高齢者施策とで差があるというカウントですけれども、保険者とすると厳し い結果かなと。給付ではなくて事業に対する効果というものが明確にならなかったということ だと思います。要支援者と特定高齢者との特性の違いが明らかになったのかとも見えるわけで すけれども、特定高齢者のための自治体のいわゆる事業の開発と申しますか、サービスの開発 も含めて、更に自治体側でも工夫が必要になるのかなと思います。これが1点目です。  2つ目には、稲城市を初め、多くの自治体では、一般高齢者も含めて幅広く実は事業を展開 しています。そうしたことから、特定高齢者の分析だけでは地域の介護予防施策の効果を測る のは十分ではないのかなと思います。非常によくやっておられるという自治体も、初年度の特 定高齢者の数が抽出できなかったということから、幅広く事業をやっているということが挙げ られるのではないかと思います。  3点目は、今回、定量的な分析で効果を見ようということで、非常に意義のあることだと思 いますが、定性的な分析として主観的健康感という観点も非常に重要ではないかと思っていま す。この点も加えて、施策の効果として市民への広がり、介護度への関心の度合いの高まりと か、やはり住民参加型といった効果も含めて、施策の効果という分析も必要ではないかと思い ます。  4点目、最後ですけれども、この結果を、実は保険者とすると、今年度は介護保険事業計画 の策定に着手している真っ最中というところで、結果については非常に関心があります。この 結果を事業計画にどのように反映するかというのが課題になるかと思いますが、介護予防の自 治体の施策というものを、保険者も関与する、考えるという観点から、事業計画への反映の仕 方についても、ある程度保険者に任せると申しますか、それぞれの自治体の結果を個々に測っ た上で、事業計画に反映させることが必要ではないかと思っています。  以上です。 ○辻座長 ありがとうございました。 ○岩越委員 失礼します。近江八幡市の岩越です。  私たちは日々、先ほど大川先生の方から御指摘がありましたけれども、仕組みとしての評価 というところと実際の特定高齢者の施策という事業としての評価というあたりと、やっている 中で、どちらをどう感じているかすごく迷いのあるところなんです。仕組みとしましては、も う既に国の方が示された中で、一般、それから特定、そしてその中に指定された運動器とか口 腔、栄養というあたりの枠組みがある中で、そこの対象者を見つけてきて事業を実施するとい うところが、実際の市町村としては、その枠に当てはまる方を見つけ出してきて、更にそこの 市民の方が、それこそそこを利用したいというところの納得と合意というところまでが、実際 つなげにくいし、つながる方はごくわずかというところなので、ここに適切な該当する、これ に向いている方、このサービスが必要な方、さっきの廃用性のモデルということで言われたと きには、そういう方も確かにいらっしゃいます。  ただ、実際の市町村は、介護予防の事業というと、もう特定高齢者施策で幾つか事業メニュ ーがあって、口腔、栄養、運動器という中にすべて入れ込んでしまわなければならないような イメージを持っているところがありますので、実際には、この特定に該当する方はごく一部で、 それ以外にも、また違う展開というか、そこの枠組みに入らない介護予防というあたりの事業 をやっていかなければならないというところを感じているところですので、今の計画の中に、 介護保険計画に反映させていくときに、従来と同じような事業とか、対象者数を出していって、 事業をどう組み立てていくかというところはすごく迷いを感じているところです。仕組みと事 業が決まっているので、そのとおりにやるということが市町村としてはすごく難しい。その枠 に当て込んで介護予防事業を展開していくということは難しいので、今、2年目をやってみて、 次に3年目を今、やはり方向性としてすごく見えているところは、ポピュレーションアプロー チの中に、今の機能低下、廃用性の方も含んだ中で展開していくやり方の方が、広く介護予防 啓発の取組みも予防効果も期待できるところかなと。生活機能だけが特別に改善するというこ とよりも、生きがい対策であったりとか、高齢者のモチベーションが上がるというところまで が取り込めるとは感じています。  以上です。 ○辻座長 大渕先生、何かありますか。 ○大渕委員 老人研の大渕です。どうぞよろしくお願いします。  丹後先生が御指摘になったように、私も運動器の機能向上マニュアルの担当をしております ので、そういう意味では介護予防にどっぷりつかっているんですけれども、この評価事業に参 加するに当たって、難しいながらもヒストリカルコントロールをコントロールとして、それか ら、前向きに今後も調査してやっていこうということで、ここから出てきた結果についてはそ れなりに評価してやっていきましょうという気持ちでやっているので、今、大久保先生から御 提示された点については、文字どおり認識するべきかなと私自身は今考えております。  ただ、でも、まだちょっとにわかに納得できない部分がありまして、要支援の対象者と特定 高齢者の対象者と、まるきり違う対象ではないんですよね。連続性があるといいますか、言っ てみれば、大川先生がおっしゃったような、廃用症候群モデルの一つの対象群と考えてこの計 画を立てたわけですけれども、そういう意味では似たような性質を持った人なのに、介護保険 の施策でやっている方は効いていて、特定高齢者施策の方でやっているものは効いていない。 それから、サービスの中身についても、恐らく特定高齢者施策でやっている方はかなり充実し ていると思うんですね。そういったことも考えてみると、結果は文字どおり認識しますけれど も、やはり釈然としないなという部分が残っていて、この場ではわからないし、もう少し勉強 したいなと感じているところです。 ○辻座長 植田先生いかがですか。 ○植田委員 植田です。  先ほどの大久保先生からの資料を拝見いたしまして、今回の事業の運動と栄養と口腔という 3本柱のサービス提供をするに当たって、軽度より中度、中度より重度といった方々に対する アプローチをしていくと、より効果というものが上がっていくのではないかという印象を受け ました。  そもそもこの介護予防というのは、食事の介助が必要になったり、栄養などが経管栄養にな ったとき、途端に費用対効果ですとか介護負担が、階段状ではなくて、もう急落してしまって、 お年寄りの居場所すらなくなるみたいな状況に陥ってしまう。それを何とか防ぎたいというと ころで、運動、栄養、口腔といった3本柱を立てたと思います。  そのようなときに、むしろ本当に効果というものを考えますと、健康高齢者や特定高齢者と いったよりも,食事に関してはもう少しグレーゾーン、食事はできるけれども思うようにはで きないというレベルの方たちを対象にすると、今のような3つのサービス提供の効果というも のが、より顕在化してくるのではないかと思います。  現段階の状況からいいますと、先ほど岩越先生がおっしゃったように、むしろポピュレーシ ョンアプローチのところにこのような問題をもっと明確化させることが必要ではないかと、そ のかわりポピュレーションアプローチ対象者の人たちにおいては、1年、2年のスパンでは効 果対象というものが恐らく出ないだろうと思いますので、もうちょっと長いスパンで、なって しまうことを予防するのですが、かりにその人たちが中度、重度の要介護高齢者になったとき に、このような効果という明確な数字が出るだろうと予想されます。  短期的な効果を出すためには、むしろ先程申し上げたグレーゾーンにはまったような方たち になるだろうというところで、新予防給付が今後継続する、しないに当たっては、対象者の制 度的な限定、選別といったものをもう一回考え直していただきたいと思います。 ○辻座長 ありがとうございました。  一通り全員の先生から御意見をいただきましたが、それを受けて何かもう一言という方がい らっしゃったら、いかがでしょうか。よろしいですか。  大久保先生、全体通して何かコメントございますか。 ○大久保委員 感想として、今回、悪化率ということで、つまり介護度が下がった人を効果の 指標として行いましたけれども、皆さん方から、それ以外の効果の手法もあるんだという御意 見をいただいておりますので、またこの中で、悪化率以外にどういう効果の指標がいいかとい うことについては、皆さんと一緒にこの中で議論していく必要があるかと思いました。 ○辻座長 よろしいでしょうか。ほかにどなたかございますか。よろしいですか。  それでは、一応、議題の(1)につきましては御議論いただいたということで、議題(2) に移らせていただきたいと思います。  議題(2)でありますけれども、これは、「介護予防サービスの利用回数の変化」について であります。これにつきまして研究班で仮集計を行いましたので、その結果を資料2に基づい て御説明したいと思います。  これは、前回の3月31日の検討会でも同様の御報告をさせていただいたのですが、制度改正 前後で介護予防サービスの利用回数が変化しているかどうかということで御提示したわけであ ります。前回は、制度改正前後で要介護度の区分が悪化した人、変わらなかった人、改善した 人、このグループごとに、それぞれで回数が増えた、減ったという話を申し上げたわけですけ れども、今回は、見方を逆に変えて、反対側から見て、この制度改正前後で利用回数が増えた 人もいれば減った人もいるし、変わらなかった人もいるわけですけれども、それぞれにつきま して、要介護度区分の悪化、維持、改善のパーセンテージを比べてみたらどうかという御指摘 をいただきましたので、それをしたわけであります。  したがいまして、「はじめに」とか「使用する調査項目について」、それから3の「対象の 選定について」ということにつきましては、3月31日に詳しく申し上げたとおりですので割愛 いたします。  次のページをごらんください。参考資料1を併せてごらんください。参考資料1は要介護度 の変化を書いているんですが、1,120名の方が対象になりまして、そのうち利用回数が増加した 人が210名、変わらなかったのが716名、減った方が194名ということで、頻度的には、増えた方 のパーセンテージと減った方のパーセンテージがほとんど変わらないという状況であります。  資料2の2ページに戻っていただきますと、(ア)通所介護の対象が1,120人、(イ)通所リ ハの対象が501人、(ゥ)訪問介護の対象が920人、(エ)として通所介護及び通所リハビリテ ーションの合計、要するに通所系のサービスを利用している方が1,852人、そして(ォ)3サー ビスの合計が2,265人ということになっております。  4として「解析対象者の分類について」でありますが、利用回数が増加した方、変わらなか った方、減った方のそれぞれについて検討したということであります。  次のページをごらんください。通所介護1,120名で見ますと、210名で回数が増加、回数が変 わらない方が716名、回数が減った方が194名ということで、パーセンテージで見ますと、増加 した方が18.8%に対して、減少した方が17.3%、わずかでありますけれども、回数が増えた方 がパーセンテージ的には多いということであります。  それらにつきまして、制度改正前後で介護度が改善したか、悪化したか、変わらなかったか ということを見ておりますが、回数が増加した方の中で見ますと、改善群が12.4%、維持群が 72.4%、悪化群が15.2%で、改善群と悪化群のパーセンテージはほぼ同じような感じです。改 善群のパーセンテージを回数増加、不変、減少と見ていただきますと、回数増加群では12.4%、 回数が変わらなかった群では17.9%、そして回数減少群では24.7%ということで、要するに回 数が減った人では改善群の割合が増えている。逆に、悪化群のパーセンテージを見ますと、回 数増加群の15.2%、回数不変群の8.5%、そして回数減少群の5.2%とだんだん下がってきます。 回数が増えた方では悪化群の方が多い、回数が減っている方の中では悪化群の割合は少ない。 15.2%と5.2%、大体3倍の違いがあるということであります。  同様の結果が続くのですが、通所リハにつきましても、501名の方のうち、制度改正前後で回 数が増加した方は71名、14.2%いらっしゃいまして、回数が変わらなかった方が59.9%、回数 が減った方が26.0%いらっしゃいました。それぞれについて、改善、維持、悪化のパーセンテ ージの内訳を見ますと、改善群の割合が、回数増加群の14.1%、回数不変群のうち18.3%、回 数減少群の30.0%ということで、改善群の頻度は、回数が増加した群よりも不変群、そして不 変群よりも減少群となるにつれて増えてくる。逆に、悪化群は12.7%、9.3%、5.4%と下がっ てくる。当然の話ですけれども、そういったような形でありました。  次のページでも同じことが書いてございます。訪問介護につきましても、回数が増加した方 が12.7%、変わらなかった方が66.3%、減少した方が21.0%、トータルしますと、減少した人 のパーセンテージの方が多いという結果であります。そこで、増加群、不変群、減少群のそれ ぞれにつきまして改善、維持、悪化のパーセンテージを見ていきますと、回数が増加した方で は16%、71%、12%という形になっていまして、改善群の割合が、回数増加群では16%、不変 群で17%、減少群で28%ということで、増加群よりも不変群、不変群よりも減少群で、改善群 のパーセンテージが多い。悪化群のパーセンテージは逆に下がってくるということで、要する に、すべて共通いたしまして、回数が増加した方では悪化群の割合が多く、回数が減った方で は改善群の割合が多い。  これは決して因果関係ではありませんで、前回も申し上げましたけれども、改善したから回 数が減ったのでありましょうし、悪化したから回数が増えた。そういったことが、また逆から 見ても同様の結果が出ているということでありまして、(エ)の合計とか(オ)の3つのサー ビスの合計も、これは全く同じデータになっておりますので、これくらいで割愛させていただ きたいと思います。  以上、簡単ではありましたけれども御報告いたしましたが、何かこれにつきまして御意見と か御質問ありますでしょうか。よろしいでしょうか。何かございますか。これは、前回の話を 逆の角度から見て同じ結果でしたということなので、そうですよねという話なので、余り御議 論ないかと思いますが、何かございますか。よろしいでしょうか。  どうぞ。 ○津下委員 今、辻先生がおっしゃったように、悪化する群では利用回数を増やして悪化を食 い止めようというような解釈になるかもしれないんですけれども、改善した群、これは、勿論、 統計的にはそういう傾向がしっかり出ているんですが、でも、利用回数が増加した人たちの中 には改善群の方々も含まれていまして、これはどういうふうに解釈すべきか。やはり自分から 進んでどんどんというようなことなんでしょうか。改善したのに利用回数が増えているという 方々も見えるということがわかるわけなんですけれども。 ○辻座長 これについては、私もちょっとわからないですね。増えた、減ったというのは、1 カ月間の回数が4回から5回とか、7回から6回とか、1回でも増えたり、減ったりしただけ でも増加、減少と分けていますので、どれくらいのインパクトがあるのかちょっとわからない です。一つ言えるのは、増えたから改善とか、増えたから悪化とか、こういった因果ではない と思うのですけれども、どうして改善群でも回数が増えた人が若干ながらいるのか、あるいは 悪化した方ですと回数が増えるはずなのに、どうして減っている人がいるのかということにつ いては、恐らく個々のケアマネジメントの実態を見ていかないとわからないと思います。 ○丹後委員 この解釈、統計的に、個人はいろいろバリエーションがありますけれども、平均 的に見ると、多分この解釈というのは、よくなった人は余り来なくなる、よくならない人が続 けていくという解釈になっているような気がするんです。実はそれは、バリエーションは個人 差がありますけれども、平均的にはそういう、よくなったら余り行かないといったような感じ の結果ではないかという気がします。 ○辻座長 ありがとうございました。  ほかに何かございます。よろしいでしょうか。  それでは、今後のスケジュールにつきまして事務局の方から何かございますか。 ○鈴木老人保健課長 今日は、詳細な分析をありがとうございました。新予防給付と特定高齢 者について、要介護度を目尺とした場合の定量的な評価について分析していただきました。  今日、大久保先生からおっしゃっていただいた課題、それから先生方から御指摘いただいた 事項等を踏まえますと、恐らく3つぐらいになると思います。1つは費用対効果、ここの検討 班も含めて、それから国会からいただいた宿題も含めて、この予防給付なり特定高齢者施策の 費用対効果をどう評価するのかということがございますので、それが1点あると思います。  それから、もう一つ、大川先生、岩越先生を初めとして御指摘いただいた、どういう属性の 人に具体的にどういうインターべーションをするとどういう効果があるのか。その効果は、必 ずしも要介護度だけではなくていろいろな目尺があると思うんですけれども、そこを今回の分 析は、膨大な34ページにわたる資料の一部しか使っておりませんので、それをフルに分析させ ていただくとどういうことになるかというのをやっていただくというのがあると思います。  それから、今年度中は少し難しいかもしれませんが、特定高齢者について、具体的に、今回、 統計的パワーの問題とか、比較する両集団の属性の問題があって、有意差はないという結果だ ったけれども、もう少しその辺も詰めた方がいいのではないかということがございましたので、 そこは、他の先生からもございました、前向きに追っていくとしたら、一定の限界はあるもの の、こういう考え方ができるのではないかというものを各先生ともちょっと御相談させていた だいた上で、これから前向きにどうするかというのを少し考えさせていただけたらと思います。  次回をお願いします。 ○天本課長補佐 次回でございますが、次回は8月から9月にかけて第5回の検討会を予定し てございます。また、日程調整等をさせていただきたいと思っておりますが、次回は、費用対 効果、そして属性、サービスごとの生活機能の推移等について、ご検討をお願いしたいと思っ ております。  以上でございます。 ○辻座長 そういった状況でこれから進んでいくと。特に、今まではこの検討会でお示しして きたデータとしては、主に要介護度の変化ということに特化した議論だったんですが、この継 続評価で集めているデータもそのようにたくさん、膨大なデータがありますので、それをいよ いよこれから出していくということですね。  ほかに何か皆さんから御意見、御質問とかございます。よろしいでしょうか。  それでは、進行を事務局にお返ししたいと思います。 ○天本課長補佐 それでは、これをもちまして第4回「介護予防継続的評価分析等検討会」を 終了いたします。  本日は誠にありがとうございました。 <照会先>  厚生労働省老健局老人保健課 介護予防係   電話:03(5253)1111 内線3946