08/05/23 薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会運営委員会・安全技術調査会 合同委員会 平成20年5月23日議事録 平成20年度薬事・食品衛生審議会薬事分科会 血液事業部会運営委員会・安全技術調査会 合同委員会 議事録 1.日時及び場所   平成20年5月23日(金)14:00〜   三田共用会議所(B、C、D、E会議室) 2.出席委員(14名)五十音順 大平 勝美、岡田 義昭、杉浦 亙、高橋 孝喜、◎高松 純樹、高本 滋、新津 望、 花井 十伍、半田 誠、水落 利明、山口 一成、山口 照英、○吉澤 浩司、脇田 隆字   (注)◎運営委員会委員長(座長)、○安全技術調査会委員長  欠席委員(3名)五十音順   今井 光信、内山 巌雄、菊地 秀 3.行政機関出席者   新村 和哉(血液対策課長)   植村 展生(血液対策企画官) 他 4.議題   1.不活化技術導入に関するプレゼンテーション     日本輸血・細胞治療学会理事     比留間医院 院長 比留間 潔氏   2.不活化技術導入について   3.その他 5.備考   本合同委員会は、公開で開催された。 ○血液対策企画官 ただ今から、「平成20年度薬事・食品衛生審議会血液事業部会運 営委員会・安全技術調査会合同委員会」を開催いたします。本日は、日本輸血・細胞治 療学会理事の比留間潔先生にお越しいただいております。議題1で、のちほど御意見を 伺うこととしております。本日は安全技術調査会の今井委員、菊池委員、内山委員から は御欠席との連絡をいただいております。採血事業者で血液事業の担い手として、日本 赤十字社血液事業本部経営会議委員の田所憲治さん、同副本部長の日野学さんにも お越しいただいておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。  前回同様、議事に入る前に、本日の合同委員会において、個別品目の承認の可否や 個別品目の安全対策措置の要否の審議はありませんが、血液事業の運営において、日 本赤十字社が調達する技術の提供企業との利益相反を確認しておく観点から、平成20 年3月24日、薬事・食品衛生審議会薬事分科会申し合わせ、審議参加に関する遵守 事項に基づいて利益相反の確認を行ったところ、審議及び議決への参加については、 「退室委員及び議決には参加しない委員はともになし」ということで、確認をしております。 それでは、このあとの進行は、本日の合同委員会の座長をお願いしている高松運営委 員会委員長によろしくお願いします。 ○高松委員長 それでは、大変暑い中御参集いただきましてありがとうございました。初 めに、事務局より資料の確認をお願いします。 ○事務局(秋野課長補佐) 最初に、議事次第の次の頁に座席表があり、委員名簿のあ とから、資料1は比留間先生のプレゼンテーションの資料です。資料2は、委員の先生方 からの質問に対する各社からの回答です。資料3は、不活化技術導入に係る論点(案) です。資料4は、国立感染症研究所提出資料です。  続いて、参考資料1は、平成20年4月8日開催運営委員会・安全技術調査会合同 委員会議事概要です。参考資料2は、平成20年2月27日開催の第1回血液事業部 会運営委員会・安全技術調査会合同委員会において配付された資料です。資料3はマ コファルマ社提出資料で、前回配付したものです。参考資料4は、BCTJapan株式会社 (旧ガンブロ株式会社)提出資料です。参考資料5は、シーラス社提出資料です。参考資 料6は、バイオワン株式会社提出資料です。参考資料3〜6は、前回の会議資料の中か ら公表可能なものを入れております。  参考資料7が、「血液製剤の不活化についてのFDAの意見とHSAの勧告」、国立感染 症研究所提出資料です。参考資料1の議事概要については、先日委員の先生方に御 確認いただいたものを厚生労働省ホームページに掲載しております。 ○高松委員長 ありがとうございました。もしなければ、事務局の方へ申し出てください。  本日の議題に入ります。第1番目、「不活化技術導入に関するプレゼンテーション」につ いて、日本輸血・細胞治療学会理事の比留間潔先生からプレゼンテーションをしていた だきたいと思います。先日、4月の末に行われた日本輸血・細胞治療学会の理事会にお いてもいろいろ議論がありましたので、そういうことも踏まえてお話をいただければと思い ます。よろしくお願いします。 ○比留間氏 皆様、こんにちは。ただ今御紹介に預かりました比留間と申します。本日は、 合同委員会第1回、第2回と開かれて、だいぶ情報も集まったところで論点の整理がで きたらということでお招きいただきました。私のようなものではとても力不足だろうと思いま すし、ここにいらっしゃる輸血学、あるいは血液事業学の諸先輩を差し置いて大変僭越な 話だろうとは思いますが、このような所でお話する機会をいただきまして、高松先生、吉澤 先生には大変感謝いたします。少しでも私のお話が今後の病原体不活化にとって前向き な議論につながればと思います。  これも第1回、第2回の合同委員会ですでに出ていることとは思いますが、論点を整理 する意味でまず意義についてお話し、次に病原体不活化の現状と課題についてお話した いと思います。さらに、具体的な論点ということで、導入に向けて考えるべきことをまとめ たいと思います。  病原体不活化の意義に入る前に、病原体不活化の概念について、周知のとおりです が簡単にお話します。献血者からいただいた血液の病原体を検査しますが、どんな検査 でも感度の限界があります。また、検査していないパソジェンは世の中にたくさんあるとい うことで、どうしても検査の限界からすり抜けて患者に輸血されてしまって、感染症が伝播 することがこれまでの輸血医療だったわけです。それだったら、いっそのこと何が入っても いいように病原体を不活化してしまえば、どんなウイルスや病原体が出ても患者には安 全な輸血ができるだろうというのが病原体不活化の技術です。考えはもっとも至極ですば らしい夢のようなものなのですが、残念ながら未だにこれがすべてできるようなところまで はいっていません。ですから悩み深いということになるのだろうと思います。  御存じのように、病原体不活化は血漿分画製剤においてはHIV感染による、原性血液 製剤による感染症以後、広く病原体分画の技術が導入され、今では血漿分画製剤では ほとんど感染症が起こらなくなるぐらい安全になったわけです。ところが、輸血用血液にお いては、特に赤血球、輸血と言えば赤血球ですが、赤血球は細胞そのものなので、タン パクに使うような技術を使ったら全部破壊されてしまうということで、いまだに未熟な技術 です。ですから、輸血はやはり赤血球輸血で、赤血球輸血でできない時点で、輸血用血 液の病原体の不活化など無理だろうなと、私もそう思っておりますが、もしこれがうまくい ったら、患者には非常に大きな福音を与えるものであることは間違いないわけです。  ここ10年間の国の指導の下、血液センターの御努力による血液製剤の安全対策は、 まさに目を見張るものがあったと思います。特に技術的なものにおいては、1999年の500 プールNAT、(B型肝炎、C型肝炎、HIV)に関して、世界で初めて輸血用血液のこの3ウ イルスに対して核酸増幅法を導入したものですが、それが50プールNAT、20プールNAT と感度を上げていったということです。それ以外に、2004年には保存前白血球除去が導 入されて、成分血小板を皮切りにFFP、さらに2007年には全血由来の輸血用血液に関 して白血球除去が行われたということです。それ以外に、献血者の本人確認、あるいはF FPの貯留保管(Quarantine)が導入されました。2005年には、我が国でE型肝炎の問題 が注目されて、これは我が国の血液事業では珍しいことではないかと思いますが、北海 道部分限定版の検査が導入されました。これは今も続いております。また、成分PCの初 流血除去が主に細菌感染のリスクを減らすために行われて、今年は成分FFPにも導入 される予定です。  法制度の方は、何と言っても2002年に血液法、改正薬事法が公布され、その1年後に 大半が実施され、あるいは救済制度ができ、遡及調査ガイドライン、指針改定、輸血管 理料が制定されるということで、まさに血液の安全技術に対してはやり尽くしたという感が あります。実際、かなり安全になったということがあります。  ここで、今世界で広く導入されている中で、我が国で導入されていないものは一体何が 残っているのだろうかと考えた場合に、血小板製剤の細菌検査、病原体不活化というこ とになると思います。ですから、今まさにこの二つの課題について、今回は病原体不活化 だけですが、この時期であるからこそ、病原体不活化に関して本気で考える時期であると 言ってもいいのではないかと思います。同時に、血小板の細菌検査の必要性についても 検討すべきではないかと思います。  とは言うものの、輸血の安全性は格段に良くなったということで、これは何度も出ている ので省略しますが、売血時代は2人に1人が輸血を受けると肝炎になってしまったのが、 今では0.001%、すなわち10万人に1人の確率にまでなったわけです。ただ、NATが導 入された1999年でもすでに0.48%ということで、このときもNATが導入されるときに、なぜ こんなに安全になったのに、わざわざ金をかけてまで3ウイルスのNATを導入するのだ、 という議論がありました。私もそういう論者ではありました。それよりも、もっと臨床現場を 見てほしいと、臨床現場はもっと危ない輸血がたくさんなされていると、適正輸血をもっと 進行してからこれをやるべきだと言って反対もしましたが、今となってはNAT導入に反対 する人はほとんどいなくなったのではないでしょうか。NAT導入によって、残存リスクがさら に改善されたことに対する評価の声の方が上がってきたと思います。同時に適正使用も 推進されて、輸血の適正使用も随分推進されました。すなわち、優先順位をつけるとは 言うものの、できるときにできるものを平行してやっていくということが、ここ10年間の経験 から言えることではないでしょうか。  その残存リスクについては、これも厚労省のデータから取りましたが、今検査されている 3ウイルスに関しては、B型肝炎がロータイターキャリア、あるいはウィンドピリオドの長さ から年間10人ぐらいがまだ出ているということです。C型肝炎、HIVに関してはすごく少な くなっていて、HIVに関してはNAT導入後わずか1例なので、7分の1、0.14になっており ます。  部分的に検査が導入されているサイトメガロウイルスは、私は血液内科医として多くの 患者に輸血の処方箋を書いていますが、私が書いた処方箋によってnon-A、non-Bが起 こった患者、サイトメガロ感染が起こった患者を目の当たりにしたからこそ、あえてここに 書いたわけです。サイトメガロ感染は、例えば血液の患者がサイトメガロ陰性で骨髄移植 のドナーがサイトメガロ陰性だったら、サイトメガロ陰性血を選ぶわけですが、今白血球除 去もできたのでサイトメガロ陽性も入りますが、ときどき1年間に1例ぐらいは、輸血で感 染したとしか考えられないサイトメガロ感染が出ています。ただ、これはなかなか報告され ません。なぜかというと、サイトメガロの治療と検査法が格段に上がったので、この数は分 かりませんが相当数あるのではないかと思います。  検査していない感染に関しては、先ほど申し上げたようにE型感染がこの4年間で4例 出ているから、1年間に1例ということになります。細菌感染は7年間に5例ということで、 0.71%です。こういったC型肝炎、HIVに比べると、細菌感染のインパクトが強くなっている のが現状であろうと思います。  臨床現場の立場になって考えると、輸血による細菌の感染というのは非常につらいもの です。それはゼプシスを起こすので、患者が数時間以内、数日以内に亡くなるという転帰 を取ります。長くかかって亡くなればいいと言うわけでは決してないのですが、輸血直後に 直死につながることは、患者もつらいし、見ている医師にとっても大変つらいことで、私は 臨床的なインパクトはこの0.71などではないと感じております。そのようなことで、今の残 存リスクは少ないから、これ以上すべきでないという考えの方はいないのではないかと思 います。いたとしても、かなり少数派ではないかと思います。ですから、血液製剤の安全 性確保の原点は、残存する危険性がある限り、その危険性を限りなく排除する努力は続 けるべきであると思います。これはみんなの同意を得られたとしたら、今残存するものがあ るのかないのか、あるとしたらこれに何をしたらいいのかを絶えず考えるべきであろうと思 います。  3年前を思い起こすと、イギリスで輸血によってプリオンが伝播するという症例報告がな されて、そのあとイギリスに行っていた日本人が狂牛病にかかって、それでイギリスに1日 でも行ったら輸血を禁止することが3年前に決まりました。そのとき、私は安全技術調査 委員として反対しました。なぜならば、そのときの想定リスクは1年間に0.01人だったと思 います。これは、冷静に考えれば100年に一遍出るかどうかというデータだったわけです。 100年に一遍出るか出ないかに関して、献血者が減るのではないかというあれだけの政 策を打ち出したポリシーから言うと、今ある輸血の残存リスクは、決して安全だったとのん びりしている場合ではないと思います。ちなみに、あのとき反対したのは、ここの委員の山 口先生と私2人だけだったのではないかと思います。座長から「そんなことを言うものでは ない」とたしなめられたのは、今でも覚えております。ただ、やはりここは国と血液センター の努力の賜で、尾辻大臣と日赤の社長が街頭に出て献血者に呼びかけて、献血者の不 安定供給は一切なかったというのは特出すべきだと思います。  そのようなことで、輸血用血液の病原体不活化導入の意義についてまとめますが、現 在の病原体スクリーニング検査の限界を補うということで、特に残存リスクとしてはB型肝 炎の問題、あるいは免疫不全患者ではサイトメガロも無視できないのではないかと思いま す。細菌感染の問題がありますが、これは特に室温で保存される血小板製剤のリスク、 またHIV等についても考えるべきだろうということです。未知の病原体に関しては、常に輸 血の感染症は未知であったわけです。non-A、non-B、HIVもそうですが、そういうものが 出たときに、ではそのときに不活化を導入しようかと言ったら、もう遅いのです。今のうち からそのようなことができる体制を取っておいても損はしないだろうということで、危機管理 的な意味合いがあるのではないかと思います。  病原体不活化に関しては、多くはDNAに作用するので、献血者の白血球を不活化す るということで、同種免疫原性の低下、あるいは今輸血後GVHDはほとんど克服されまし たが、大病院では未照射血を自分の所で照射していますが、緊急の場合には時によって 未照射血が使われる場合もあります。そのような場合には、輸血後GVHDが起こる残存 リスクはゼロではないので、そのような意義もあり得るだろうと思います。  血液事業にとっての意義は、先ほど言ったとおりで、いざ危機のときに基盤整備をして も間に合わないのです。ですから、これをきっかけに不活化をできる体制を取っておくこと が非常に大事ではないかと思います。そのためには、特に改良技術開発のための基盤 整備にもなりますし、不活化をすれば当然ウイルスプロセスバリデーションもしなければな らないだろうということで、是非これを機に作られるといいのではないかと思います。おそら く、今大きなお金をかけてウイルスプロセスバリデーションをヨーロッパに頼んでいるのが 現状ではないかと思いますので、このようなところも国内需給をすべきだろうと思います。 そのようなことで、残存リスクがこれだけ減った今、この残存リスクをどれだけ減らすかと いう観点で考えれば、病原体不活化の意義は間違いなくあると言えるのではないかと思 います。  次に、今、どのような病原体不活化技術が実用化されているかについてお話しします。 これも本日の資料にも随分あると思いますが、これについて簡単にお話します。赤血球 製剤に関しては、残念ながら今の時点ですぐに導入できる技術はありません。これは大 変物足りないです。輸血と言えば赤血球輸血がメジャーなので、これにできない技術など は、本当になさけない技術としか言いようがないです。これを早く開発することを努力しな い限り、FFPとPCに入れたからといって満足したり、威張るような技術では決してないこと を強調します。  血小板製剤に関しては、アモトサレン、リボフラビンがすでにヨーロッパでは認可されて いて、アモトサレンはすでに10万人以上の方に使われており、その間での特異的な有害 事象はないというところまでの実績が得られています。リボフラビンはビタミンB2なので、 紫外線による破壊物にしてもほとんど危険性はないだろうということで、安全性の観点か らの注目を浴びています。こういった二つの技術があるということです。  血小板の安全対策は、先ほど言ったように細菌感染があるということで、細菌検査ある いは不活化導入が各国で試みられているわけです。ヨーロッパで細菌検査と不活化のど れを入れているかについてですが、フランスは両方とも導入しています。不活化に関して は全部ではありませんが、一部導入している形を取っております。片や我が国においては 細菌検査は導入していないし、不活化も導入していません。ただし、日本の場合は有効 期間が今度採血後4日までとなりましたが、世界で最も短い有効期間を取っているので そういった安全性と、初流血除去をしているので、別に手をこまねいているわけではあり ません。日本でも細菌感染に対する対策はなされているわけです。ただ、それでも先ほど 述べた残存リスクが残っている限り、次のステップについて、できるところをポジティブに考 えていくべきであろうと思います。  次に血漿製剤ですが、これがいちばん歴史が長く、これは細胞成分がないから技術を 導入しやすかったという経緯があると思います。ニューヨークブラッドセンターが開発したS D処理で、これがいちばん歴史のある不活化技術だと思います。そのあとメチレンブルー が出て、さらにアモトサレンの血漿への応用もあって、今ではこの三つが認められていま す。血漿製剤に関しては、基本的には薬害エイズのことを思い出していただければ分か るように、血漿分画製剤はプール血漿を使うので、もし1人の感染があった場合、それが プール全体を汚染するのです。これがまさに薬害エイズの原因になったわけです。ですか ら、ヨーロッパは赤血球に入れなければ意味がないではないかという批判を他所に、ある いは血漿を安全にすること、薬害エイズを二度と起こさないという強い決意の下、血漿製 剤にはかなり古くから導入していたという経緯があると思います。フランスでは、SD処理、 MB処理、S59処理といったものが入れられていますし、さらに検疫保管(Quarantine)も 入れております。5年前にパリのEFSを見学しに行ったとき、その当時は積極的 Quarantineを入れるか、入れないのならSDかMBの処理をするということだったと思いま すが、確認したら現在では処理なしは認めていないということです。Quarantineを残した まま何らかの処理をしているということなので、大したものだなと感心しております。  我が国は、不活化処理はもちろんまだ導入されていませんし、検疫保管はやっていると 言いますが、それはヨーロッパで言うQuarantineとは違って、消極的なPassive Quarantineです。これに関しては、我が国は世界的に見ると技術導入が遅れてしまった と言えます。  今言ったQuarantineは、皆さん御存じだと思いますが、「Active Quarantine」と 「Passive Quarantine」があります。ヨーロッパの概念のActive Quarantineは、初回献血 者が来たらそれは使用しないで取っておく。この献血者が2回目に来て、採血をしてOK だったら、前のものに振り返ってこれを使うわけです。もし2回目来なかったらどうするの かというと、これは廃棄してしまう。非常にもったいないですが、これがActive Quarantine です。ここまで積極的にやれば、Quarantineの有要性は出てくるのですが、我が国は6カ 月間取っておいて、何の情報もなかったらそのまま使うと、この人が2回目に来ようが来 まいが関係なしに使うということなので、冷静に考えると、ただ取っておくだけです。こんな ことを言うと日赤に怒られてしまいますが、それに近い制度で、このために6カ月間大事 な有効期限が消耗されているわけです。このための廃棄が、今病院では増えています。 ですので、Passive Quarantineはかなり安定供給に障害を及ぼしているのです。あとでも 言いますが、もし不活化を導入したら、そんなPassive Quarantineなら止めてしまった方 がいいのではないかと言えるのではないかと思います。  今まで赤血球、血小板、血漿に対する不活化技術にはどういうものがあって、その問題 点、あるいはそれと関連する技術との兼合いをお話しましたが、そのようなことを踏まえて 不活化技術の課題と論点をまとめます。まず、何と言っても不活化技術は威張るほどの 技術ではないということです。赤血球製剤に応用できる技術がない限り、そんなに威張れ るものではありません。だから止めるかというと、これは周辺技術を開発しなければ生ま れないので、できるところからやっていくということです。残存リスクがあるとしたら、その残 存リスクは不活化技術以外の方法論とも混ぜながら、不活化が活かせるところを探りな がらやっていく。それによって新たなブレークスルーが生まれ、新たな技術が出てくるのだ と思います。  同じことですが、不活化技術の能力は完全ではありませんし、それぞれの技術によって 得手不得手があります。ですので、これに関してもだから止めるかよりも、どこが応用でき るのかを考えて、それは意義があるのかということを考えて、前向きな議論をしていくべき 時期ではないかと思います。  血液製剤の影響ですが、こういった処理をすれば、多かれ少なかれ元血液の歩留まり が悪くなることがあります。血漿製剤に関しては、大体凝固因子の20〜30%が低下し、 血小板製剤に関しては3〜10%血小板数が減少します。これによって、より多くの献血者 を集めなければいけないだろうという議論がありますが、私は臨床的な目から見れば全 然問題ないと思います。というのは、今現時点で血漿製剤はあと半分ぐらいに減らしても いいのではないかと思いますし、不適正輸血が多すぎます。このぐらい減ってちょうどいい ぐらいです。これは、皆さんが思うほど心配するものではないと、少し言いすぎですが、あ まり心配しなくてもいいのではないかと思っております。  血小板製剤も、8割以上は出血の予防に使われているのです。予防に使われていると いうことは、ひょっとしたら使わなくても済むのではないかということがあります。ただ、白血 病の治療において、使わない群と使った群でコントロールスタディは、倫理的にできない わけです。ですから、どうしても多く使われます。また、我が国は先ほど言ったように3〜4 日間と大変有効期限が短いので、恩恵はあるのですが、それゆえにオンデマンドで供給 する苦労があって、予約しないとなかなかもらいにくいところもあるのです。その日の患者 の血小板数を見て、血小板をオーダーしようということは、なかなかしにくいのです。です から、オーダーしたあと、今日は輸血しなくて済んだけれど、捨てるのはもったいないから 輸血してしまおう、というのが、我々の研究では随分認められています。血小板も、おそら く半分ぐらいは減らせる可能性があるということで、そのようなことから考えると、この歩留 まりは問題ないのではないかと思います。  安全性の検証をどこまで行うか、これが最も大きな課題です。病原体を不活化する、す なわちDNAやRNAに作用する。ですから、これがもし人間の細胞に作用したら、変異原 性や発がん性がどうなるかが最も心配することだと思います。ただ、これに関しては、前 臨床試験でやってからヒトに応用しているという段階ですので、長期的な安全性はこれか らの課題であると思います。どこまで見たら安全なのかは、なかなか言えないことがありま す。これは別に不活化技術に限ったことではなく、新しい抗がん剤などではすべて言える ことですし、DNAやRNAに関連する薬剤として、リウマチや膠原病などに使うDNAやRN Aに作用する薬がたくさんあるわけですが、そのようなものは長期的に見てどうなのかを 見ていたら、患者は薬が使われないうちに人生を終えてしまうわけです。ですから、その 辺りはどこで踏み切るかが課題になってきますが、現実的には製造販売後調査によって 確認していくことが現実的なのではないでしょうか。実際は、今のところメチレンブルーに 関しては200〜300万人がすでに使われていますし、アモトサレンは10万人ぐらいが使わ れていて、そんなに大きな問題はない。では、1,000万人見たらいいのかと言っていたらき りがないわけです。結局、製造販売後調査によって確認することでクリアしていくべき問 題なのだろうと思います。  まだこれだけの安全性が確認されていないのに、一律全面導入するのはとても危険だ と私も思います。ですので、全面導入ではなく、部分的試験的導入でいくべきだと思いま す。ヨーロッパ、アメリカがどうしてこのように速やかに新しい技術を導入できるかというと、 こういった部分的試験導入ができるシステムができているからこそなのです。ですから、そ れによって導入して安全性を確立しながら、よりよい技術を開発してきたと言えると思い ます。メチレンブルーなども、当初出たときはメチレンブルーは除去しなかったのです。メチ レンブルーで処理したら、そのまま体内に投与していたのです。それでも、ベビーブルー症 に使うメチレンブルーの量から比べれば大変わずかだから、そのぐらい入れてもいいだろ うということでやっていたわけです。ただ、そのあと、そのようなことをやっていたがゆえにメ チレンブルー除去フィルターができて、いまではメチレンブルーを除去しながら入れていく ということで、やはり部分的導入をしない限りはブレークスルーは生まれないわけですから、 我が国でも是非新技術を部分的試験的導入することを、これを機に本気で考えていくべ きではないかと思います。  血液センターの実務体制は、私が言うのも大きなお世話ですので、血液センターに考え ていただければいいかと思いますが、大きな課題だと思います。頑張ってほしいと思いま す。医療経済に及ぼす影響は、血液製剤の薬価の上昇ですが、患者負担に関しては高 額医療費負担制度もありますし、基本的には国家の医療費の抑制政策をどうやって覆 すかなので、これは血液対策課に頑張ってもらうしかないということで、私があまり多くを 言うのはやめようと思います。  そのようなことで、病原性不活化の技術の現状と課題について述べました。さらに、今 残存リスクがあって、それを克服するために、不活化技術は意義のある部分があるので はないか、あるとしたらどのような部分なのかを考えて、初めてこの技術の本格的な議論 になるのだろうということです。これは私見もあるので、これが正しいとは言うつもりは全然 ありませんが、これを一つの叩き台にしていただきたいと思います。  今まさに病原体不活化の問題が非常にホットな話題になっていますが、実は10年前に もっとホットだった時代があるのです。皆さん、御存じないでしょうか。平成10年7月、今 のメンバーはいらっしゃいませんが、このとき不活化の技術の検討が本気で行われていて、 安全技術調査会委員長の、今はなつかしい、温和なお人柄の小室先生が血液事業部 会、当時の血液製剤特別部会に答申したのは、「FFPに対する病原体不活化技術を導 入すべきである」ということで、当時の安全技術調査会は導入の検討を決定したのです。 ただ、SDとメチレンブルーがあってどちらかは結論が出なかったので、あとで考えてほし いと、血液製剤特別部会に答申しています。これは議事録を読んでいただければ分かり ます。部会長の山中學先生は、安全技術調査会の小室先生の答申をほぼ受けた形で 部会をまとめられました。FFPに対する不活化技術の早期導入を検討すべきだと、なる べく早く入れるべきだという言葉が、3〜4回ぐらい議事録に載っています。早く導入できる ための方策で技術を考えろというニュアンスもあるので、このときは今以上にホットに燃え 上がっていたのだろうと思います。  ただ、今よりも技術は未熟だったと思います。SDかMBかどちらかにして検討して決め るということで、日本赤十字社としてはSDを考えていたかもしれません。当時、SDの方 が歴史があったし、ニューヨークブラッドセンターで開発されて、これを導入しようと思った のです。SDとMBの問題は、SDはまず血漿を混ぜて、そこに不活化するので、混ぜるこ とによって感染拡大の危険があります。MBの方はワンバッグずつ処理するので、そのよ うな危険がありません。ですから、メチレンブルーの方がいいのではないかという論点があ りました。結論が出ず、その辺りの検討をずっとやっていたわけです。  その後、アメリカはSDを導入しましたが、SDはNon-envelop virusを不活化できないと いう問題があって、パルボウイルスの感染がSD処理、FFPによって出てしまい、アメリカ はSDをやめたわけです。MBも、先ほど言ったように、当時MB除去フィルターがなかった ので、まだ目新しい技術で信頼できないということで悩んでいたのだろうと思います。もち ろん、そのあと手をこまねいていたわけではなく、平成12年の安全技術調査会では不活 化技術に対する情報を集めて、今後検討していこうと言いましたし、5年前には輸血学会 と厚労省の合同で不活化技術の研究会を開催しています。やめていたわけではなく、ず っと検討していたのです。また、1999年にNAT導入があったこともあって、ほかの技術と の相互関係で考えていこうということで即座に入らなかったような事情があったのではな いかと推測します。  ところが、あのとき導入していたら、これはなかったであろうという1例が出たわけです。 これも御存じだとは思いますが、HIVの今の輸血の残存リスクは7年間で1例だろうとい いますが、その1例がこれです。この1例は、献血者が2003年5月に献血されたのです が、そのときは50プールNAT検査が合格だったので、患者にFFPが使われました。ところ が、この献血者が約半年後に来たらHIVが陽性になっていたために、遡及調査でこの献 血者のSingle NATを調べたら、陽性になってしまったのです。これは大変だということで 患者を調べたところ、患者は大変不幸なことにHIVに感染していたことが分かったというこ とです。ですから、これはあくまで結果論ですが、もしあのときFFPに関するSDなりMBを 導入していたら、この1例はなかったわけです。となると、今の残存リスクは、HIVに関して は7年中0になったということで、明らかに不活化技術によって、わずかな残存リスクです が、それを克服できる可能性があるという貴重な1例だと思います。もちろん、これで鬼の 首を取ったように言うつもりは全くありません。これがもしPCだったらどうするのか、赤血 球だったらどうするのか、大体片割れの赤血球を入れた患者はどうなっているのかという ことで、FFPに導入したからといって解決できる問題では決してないのです。ただ、FFPの 感染症は少なくとも防げたということは、間違いなく言えます。  我々が我が国でやっているQuarantineでこれができたかどうかですが、5月19日から 11月16日で、たまたま6カ月以内なのです。だから、もし今のQuarantineを導入してい たら、ひょっとしたら防止できたかもしれません。ただ、この人が11月16日に来る約束な どできないわけです。11月20日に来たら駄目なわけですから、Passive Quarantineでは、 おそらく防止できなかったと思います。Activeだったらどうかということもありますが、 Activeだったらよりできたかもしれません。ただ、Activeの場合は、もちろん既知のウイル スに対するものだけですから、Activeでも絶対的なものではないわけです。そのようなこと から相対的に比べれば、病原体不活化がいちばん確度が高いだろうということです。  これは私見なので、単なる叩き台として考えていただいて結構ですが、新鮮凍結血漿に おいては10年前にかなり決定に近いことまで言われたので、これをどうするかはっきり結 論すべきではないかと思います。このためのメリットは、現在のPassive Quarantineは廃 止する勇気を持って臨んでほしいと思います。そうすることによって、FFPの有効期限が1 年近くになるわけですので、これによって廃棄血は随分減ることになりますし、今の Passive Quarantineはそれほどしがみつくほどのものではないので、非常に廃止しやすい だろうと言えます。  血小板製剤については、いろいろ意見があると思います。私は血小板製剤を優先すべ きではないと思います。先ほど言ったように、血小板製剤の細菌汚染は臨床的インパクト が大きすぎる。ですから、1年間で0.71人以上のインパクトがあります。これを防止するた めの意義として、不活化技術導入を考えるべきだと思います。ただ、この場合S59などの 核酸への問題もありますし、ほかの技術、例えばUVCなどは核酸を使わないけれど、HI Vに弱いとか、一長一短があるので、この辺りは議論が必要だろうとは思いますが、血小 板に対する意義は低いのではないかと思います。また、何と言っても赤血球製剤でこの 技術が開発されない限り、これは本当になさけない技術としか言いようがないのです。だ からといって、世界が開発されるのを手をこまねいて待っている場合ではなく、これをいい 機会として、是非国産技術の開発をどこかがやるべきだと思います。輸血学会もやるべ きだと思います。輸血学会も、臨床研究としてこのようなことがなぜできないのか、自己批 判も含めて、我が国から新技術を開発して、世界に打って出るぐらいの気概を持ってほし いと思います。  先ほど言った全面導入の危惧ですが、確かに今まで国の指導の下で日赤がやる一元 体制は非常に功を奏してきたと思います。特出すべきは、東京オリンピックのときにまだ ほとんど売血だったのが、それから10年足らずで完全献血を導入できたことは、一元体 制の大きな業績であったと思います。ただ、こういった新技術の導入に関して、不公平感 をしないために一気に全部やろうという意気込みが出てしまうので、まず試しにいいところ からやっていこうと、それから新たなものを見つけていこうということはできないのです。で すから、我が国独自の新技術が開発しにくいことがあるので、是非これを機にそのような ことができるようになればいいのではないかと思います。  最後にまとめると、今この機に病原体不活化導入へ向けて、現実的な検討を行うべき ではないかと思います。10年前の国の血液部会で決めたことは新鮮凍結血漿の不活化 導入だったので、この結論をダラダラ先延ばしすることは国の委員会の信義に関わる事 項なので、積極的な結論を出していくべきだと思います。血小板製剤への病原体不活化 については、これは私の私見になりますが、細菌汚染防止の観点で入れていただいたら いいと思います。議論の叩き台にしていただければと思います。先ほど言いましたように 部分的導入を視野に入れて、安全性確認に関しては製造後販売調査でやっていくべき だろうと思います。繰返しになりますが、赤血球製剤の病原体不活化の技術をやってほ しいということになると思います。以上、簡単ですが、もし私の拙いプレゼンテーションが不 活化技術の議論に少しでもお役に立てれば幸いと思います。御静聴ありがとうございまし た。 ○高松委員長 ありがとうございました。現在までの問題点もまとめていただきましたが、 委員の皆さんから御意見、御質問等ありましたら、活発にお願いします。 ○山口(一)委員 新しい技術を開発するとか、その周辺技術を進行させるという考え方 には賛成です。ただ、個々の問題でいくつか御質問、あるいは私が調べた資料に基づい て質問したいと思います。  血小板の細菌感染のことですが、私は血液製剤調査機構からつい最近データをいただ きました。例えば、フランスでこの2年間初流血除去をやって、細菌感染による死亡事故 が、それまでは年間数例から5例以下ですがゼロになっています。ドイツにおいてもいい 結果が出ており、日本でも初流血除去で今のところまだ死亡事故は出ていません。その ような新しい安全対策をやっているところはその効果を見ればいいのではないかというの が私の考えです。  FFPについて、Quarantineが非常に無駄になっているということですが、それは今どれ ぐらいの廃棄になっているのか、具体的なデータをもしお持ちであれば、見せていただき たいと思います。  また、根本的なことですが、私は細菌の問題は初流血除去でもうしばらく見ればいいの かなと思いますが、ウイルスの残存リスクについては、数百万分の1、あるいはHIVやHC Vに関しては1,000万〜2,000万分の1の話をしているときに、先生は血液製剤にこういっ た不活化を入れたときに、活性として20〜30%落ちることを笑って済まされましたが、これ はあまり関係ないのだというギャップが私には理解ができないのです。血小板のこともそう ですが、そういったものが流布することは、いろいろな不活化の技術、どの技術がどうとい うことではなく、私たちが検討している高圧を血液製剤にかけても、20〜30%のロスは起 こります。細菌やウイルスがちょうど死ぬところの肝心な部分が、もともとの血漿部分が活 性をなくすこととは非常にクリティカルで、非常に難しい問題なのです。そういった20〜 30%活性が落ちる問題は、私は相当大きな問題で、はっきり言うと笑い飛ばして臨床が もう少しちゃんとすればいいという問題ではないような気がします。 ○比留間氏 ですから、そういうことも考えて、今どのようなことが導入できるかを前向き に考えてほしいと言ったのです。先生は今の3点から不活化技術を見送るべきだとお考 えなのですか。 ○山口(一)委員 それは言っておりません。技術的な開発については私もやっておりま すし、できるだけ安全で有効な不活化技術は開発すべきだと思います。 ○比留間氏 ですから、大きな問題にはなりません。一つひとつお答えしますが、初流血 に今この時点でそこまで期待していいのだろうかと思います。血小板の細菌汚染は、先 生も血液の御出身ですからよく御存じだろうと思いますが、先ほども言ったように血小板 は8〜9割が白血病に使われているのです。白血病の患者は、そのときは骨髄が空っぽ の状態ですので、多くの方は感染症を起こすことがあります。血小板による細菌汚染は、 本当に実数が把握できるのかどうかという問題があります。ですから、今厚労省に挙がっ ている数字をそのまま鵜呑みにしてゼロだからいいという方が、よほど楽天的すぎる発想 だと思います。  2点目のQuarantineですが、今回の輸血学会でも東京都の取組みで出したのですが、 FFPは1年間も有効期限があるからといって、大量在庫をして捌けるだろうと思っていた ら、どんどん適正使用が進んで使用量が減ったために、FFPが有効期限切れで廃棄に なることが増えてきたのです。折角の献血者の貴重な血液ですから、期限切れで捨てる ことは果たして倫理的に許されるのだろうかということで、期限切れになる前にほかの都 立病院で使おうかということに取り組むきっかけになっております。実際の数値は今は出 せませんが、FFPの廃棄率は昔はほとんどなかったのが、今では数%になってきていま す。  歩留まりの問題については、なかなかきちんとしたデータでお示しすることができません が、先ほども言ったとおりの理屈です。FFPは使われすぎています。例えば、FFPの厚生 労働省の指針は、プロトロンビン活性が30%未満で使うことになっていますが、30%以上 で使われている、あるいは検査なしで使われている症例は、全国で調べればおそらく半分 以上ではないかと思います。それはすべて不適正だとは言いませんが、少なくともそのう ちのかなりの部分は使わなくても済んでいるはずです。ですから、臨床現場はもちろん凝 固活性のことを考えながら使っていることもあるかもしれませんが、多くは凝固活性をそん なにきちんと意識してFFPを使っているわけではないのです。したがって、30%ぐらいの歩 留まりなら、臨床的にはOKだろうと思います。  血小板も先ほど言ったとおりで、我々は予防的には通常1回に10単位を投与していま す。白血病の治療などでは、大体1日置きに10単位使われていますが、これに関しても もっと少なくしてもいいのかというトライアルをして、本来節減できるぎりぎりの適切な使用 量を定めるべきですが、これは定まっていないのです。これまでの経緯を見ると、昔はよく 1回に20単位を使ったのです。20単位でなければ骨髄移植できないなどという時代が、 つい10年ぐらい前にあったのです。我々は10単位でも大丈夫ではないかと、半分に減ら しました。それで問題なかったのです。この分野は、先ほど言ったように厳密な比較臨床 試験をしながら一歩一歩進んでいくのは難しいのです。ですから、これも市販後調査のよ うなもので、今までの臨床的経験と基礎的なデータからこれでいけそうだといったら、それ でトライアルしてみて、症例数を重ねてOKだったという経験を積み重ねるのが現実的で 有効的な方法と思います。そのような観点から言って、この歩留まりは大丈夫ではないか と思っています。 ○高橋委員 非常に論点が整理されやすくなったと思います。先生がいくつか提示され た中で、NATの導入の問題の検討、CJD絡みの献血者の基準変更、そのときの議論も 引用されて、それに比べてこの不活化技術導入はどうであろうかというお話だったと思い ます。それぞれ大変重要な議論なのですが、NATの導入をすべきかどうかは、主には費 用対効果、これだけのコストをかけるだけの価値があるかが論点ですし、CJDのときにも 先生と山口委員とお二人だけが反対されたとおっしゃいましたが、私自身は非常に心配 しました。それは、主に量的な問題です。献血者の確保が十分かなうかという点が、不活 化技術に関する第2の論点になるかと思います。結果的には、先ほど御紹介があったよ うなキャンペーンで現実は何とか持ちこたえているけれど、少子高齢化以降本当に大丈 夫かはなおも残る懸念です。  不活化技術に関して私がいちばん心配しているのは、むしろ費用対効果や量的な問題 以上に、リスク・ベネフィット、これを導入することによるベネフィットと新たなリスクを生む 割合です。これを導入することによるベネフィットが、先生の御説明のように安全技術がこ こまで進んだ日本の今の状況からすると、それほど大きくはないわけです。一律に外国で 導入している状況と日本の状況と、同時にベネフィットの大きさを考えてもいけない。リス クについては、もちろん長期的な安全性が求められるわけですが、例えばGVHDの防止 策を止めていいという単純なことは極めて恐い話で、GVHD防止策に対して白血球除去 が有効だという議論をした方がいますが、結果的には白血球除去では駄目で、小量混入 するリンパ球がGVHDを惹起するリスクは残るので、リンパ球の不活化を放射線照射で 行うのです。そのようなことで、おそらく40年ぐらいかかって解決した問題なわけです。で すから、先生自身はそこまでおっしゃいませんでしたが、対策として行っていることをやめ るのは、本当にそれで大丈夫かどうかは、動物実験を含めて相当しっかりした根拠がな いと言いきれないと思います。  私自身が気にしているのは、ほとんど大きな有害事象は出ていないと言うけれど、新た な不活化を導入したことによってタンパク変性その他が起こって、何らかの新しい免疫学 的な副作用が起こっている可能性は本当にないのかどうかです。それを動物実験で動物 の血液に対して不活化処理をして、それを同種輸血して、確かに大きな問題が起こらな いという結果を得て、さらに前進的に試験的導入あるいは限定的導入をして積み重ねる のが正しい進め方ではないかと思います。  2点目は、この議論になると消極派か積極派かという色分けをされるのですが、それは あまり正しくなくて、導入に向けて進むべきであると。危機的な状況に対してこれを発揮す るためにも、準備はした方がいい。ただ、導入にあたっては、どこの段階で何をもってゴー サインを出すかをはっきりしないといけない。先ほどのリスク・ベネフィットに対して、このよ うな時点だからベネフィットがリスクを明らかに上回るという、そのような線をはっきりすべ きではないかと思うのです。  Quarantineの話で、やめてもいいとかそれに代わるのだというお話がありましたが、単 純なことですが、1年間の有効期限のうち半年をQuarantineで費やしているわけです。そ のような問題が生ずるなら、1年半や2年に有効期間を延ばせばいいだけのことで、ほか の方策で解決しようがあるもの、先ほどの細菌汚染に関しても、初流血除去で相当解決 が図られているわけです。あるいは、量的な問題に関してもこのような面で有効だという 議論がありますが、ほかの方策でカバーできていることと不活化技術ならではの得られな いメリットと分けて議論しないと、混乱するのではないかと思います。 ○比留間氏 今述べられた悩みは大きな悩みだと、私はそれに答えに来たわけではない のですが、逆に高橋先生にお聞きします。リスク・ベネフィットが分かるまで、これはいつま で延ばしますか。 ○高橋委員 リスク・ベネフィットが自然に分かるとは思っていません。今開発されている 技術についての情報を、まずしっかり集めなければいけないし、開発されているメーカーと してはどのようなところで安全性が確認されているかの情報、どのようなところでまだ懸念 が残るかをはっきり示していただかないと、話が始まらないのです。その上で、誰がいいと 言ったからとか誰が決めたからという話ではなくて、これで試験的に部分的に導入してよ ろしいというコンセンサスが得られないと始まらないのではないでしょうか。部分的試験的 に導入する際にも、当然患者にインフォームドコンセントを提示して、「私はいやだ」と言う 人には導入すべきではないわけです。そのような説明文を今の段階で作るのは、私が得 ている情報だけではしがたいと思います。  放射線照射に関しては全面導入をして。その場合でも病院で照射する余地が残ったわ けです。ですから、結局照射血と未照射血が併存する格好です。  保存前白血球除去に関しては、全面的に導入しているわけです。それは保存前白血 球除去によるマイナスが想定されなかったことが大きな要因だと思うのですが、この場合 リスクが理論的には少なくともあり得るのであれば、ある期間併存させなくてはいけません。 その上で患者が自由に選べるという条件でないと、試験的導入は進まないのではないか と思います。 ○比留間氏 その辺は、まさにこの委員会で考えてくれればいいことではないかと思いま す。それを考えるための叩き台を出すのが私の役目ですので。GVHDを防止しなくていい とは、私は一言も言っていませんので、その辺りは勘違いをされないようにお願いします。 Quarantineについては、FFPを1年や2年有効期限を延ばしながら守るほど、私は今の Quarantineが有効であるとは考えていません。  このように考えればいいのではないかと思うのです。要するに主体性の問題です。外国 を見渡すと、なぜか不活化技術をやっている。知らないうちに、先進諸国の中では我が国 だけやっていない。それなら、どうしたらいいかと考えようというのではなく、今患者にある 残存リスクは何なのか、いくつかあるだろうと。かなり減ったけれど、いくつかあるだろうと。 これは無視していいのか、無視してできないのか。無視してできないなら、何を導入したら 残存リスクを減らせるのか。減らすために何があるのか。そのときにもし不活化技術があ るのなら、その適用を考えていこうと、そのように考えていくべきだろうと思います。その中 で、当然リスク・ベネフィットの考えが出てくると思いますので、それは皆さんで考えていた だければいいことです。私はリスク・ベネフィットなんて無視して導入しろなどとは一言も言 っていませんので、その辺りは是非皆さんで知恵を集めて考えていただきたいと思いま す。 ○高橋委員 私も、リスク・ベネフィットを無視した議論だとは言っていないのです。特に論 点として大事なのはリスク・ベネフィットではないだろうかと、NATを導入するときにも自分 は否定的だったけれど、今から見れば反対すべき理由はないと。NATの話ほどは単純で はないと。そういう意味でGVHDの防止にもつながる可能性があるとか。  それから、GVHDについてはリスク・ベネフィットの可能性が大きいのではないかと。先 生が廃止していいというふうなことを言っているとは言っていませんけれども、ただ、GVH Dの防止にもつながる可能性があるとか、そういう可能性を言うのであれば、一方でマイ ナスの可能性もしっかり提示しないと問題が大きいと。  それから、先ほどの抗がん剤の治療とか、治療薬に関する治験の話と、この安全性の 議論とは少し隔りがある議論ではないかと思うのです。つまり、ほかに治療の方法がなく て、新たな治療薬選択という場合は、過去に使われた治療薬よりも、有効性があって、安 全性がある程度確保されていればゴーサインが出るという性格のものです。  この場合は斯程に安全性が確保されつつある血液製剤について、新たな方策を追加 することによって起こる事柄についてですから、相当高い安全性がそもそも求められるの ではないかと考えております。 ○比留間氏 それに対してですが、私はGVHD云々、あるいは抗がん剤云々というのは 今回の本論ではありませんので、その辺のちょっとしたところを突っ込まれて私を攻めら れても、困ります。 ○高橋委員 いやいや、私は先生を攻めているというのではなくて、先生が示された。 ○比留間氏 そういうようなことをやっているから、いつまで経っても議論の結論が出ない のではないでしょうか。 ○高橋委員 いやいやそういうことではなくて、私が言っているのは課題と論点のところで 述べられているし、これは非常に大事なことだから申し上げているのです。 ○比留間氏 それだけ大事なら、それに関して一つずつもう一度説明させていただきます。 GVHDに関しては、私はマウスの実験で、何個のTリンパ球を入れたらGVHDが起こるか ということを随分研究してきました。そこでは、かなりドーズディペンデンシーというのがあり ます。  1個のリンパ球を入れても、GVHDはほとんど起こらないです。ヒトでそれを換算すると、 大体10の3乗個入ってもほとんど大丈夫だろうと言われています。ですから、今の白血 球除去フィルターは、場合によっては10の3乗個ぐらい落とせますので、それにさらに不 活化技術を導入したら、理論的にはかなりGVHDは起こらなくて済むと思います。  それと、そもそもGVHDの自然発症率は多くても0.15%ということですので全例が起こる わけではないのです。全例に10の6乗個入っても全てが起こるわけではないのです。その ような事態において、10の3乗個に減らして不活化をしたら、「絶対」という言葉を使った らすぐ突っ込まれるから言わないけれども、かなりの確度で白血球除去をして不活化をし たらGVHDは防げると思います。  それから抗がん剤の問題ですけれども、例えばリウマチの患者にメソトレキセートという 薬が使われています。それを議論する場ではないのですけれども、先生がおっしゃいます から言いますが、メソトレキセートのDNAに対する危険性が十分否定されて、使われてい るわけではないと思います。ですから、そういう議論はしないでほしいと思います。 ○高松委員長 そういう話はちょっと外れますから。 ○半田委員 先生は残存リスクとおっしゃいましたが、先生の議論はたぶん感染の残存 リスクということだと思います。ところが、輸血の安全というのは、基本的にはもっと総括的 に考えるべきでありますし、その中でリソースは非常に限られ、経済的にも、人員的にも、 時間的にもと先生はおっしゃいました。もちろん技術的というのは開発ということです。そう すると、優先順位を付ける必要があります。  私の身近で患者がいちばん苦しんでいるのは、今までにも議論はあったと思うのですけ れども、いわゆる急性のアレルギー反応、それからTRALIみたいなものです。そういうもの は死亡率もかなりあることになります。そうすると、優先順位というところを先生はどのよう にお考えかというのは是非お話いただきたいと思います。  最後のまとめの中では、例えば導入ありきというニュアンスもあります。でも、これは違い ますよね。導入に向けて検討しろということを先生はおっしゃっているということでよろしい わけですね。 ○比留間氏 そうです。 ○半田委員 あとはプライオリティの問題で、優先順位というのはすごく大切だと思うので す。身近に患者が苦しんでいる、それをどうやって片付けていくのか、その辺の御意見を いただきたいと思います。 ○比留間氏 半田先生に全く同意いたします。我々は、それ以外の輸血事故の問題だっ てまだまだ解決しなくてはいけない。これは、なかなか優先順位を付けにくいと思うので、 同時並行してやれるところからやっていくしか今の時点では言えないかと思います。 ○高松委員長 不手際で時間も超過いたしましたし、議論もまとまりませんけれども、今 回の比留間先生からのプレゼンテーションは非常に参考になりました。皆さんも、これか らの議論の根拠にしていただきたいと思います。比留間先生、お忙しいところをどうもあり がとうございました。 ○比留間氏 僭越なお話で大変失礼いたしました。 ○高松委員長 本日の二つ目の議論であります「不活化技術導入について」という非常 に大きな題名ですが、これについて事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局(秋野課長補佐) 資料2、資料3について簡単に御説明させていただきます。 資料2の1枚目は、各社によるヒアリング概要をまとめたものです。各社のヒアリングを横 軸にし、縦に(1)不活化法の種類、(2)化合物添加、(3)光照射、(4)薬剤除去工程、(5)適応 製剤、(6)不活化効果、(7)製剤への影響、(8)安全性についてという形でまとめをさせてい ただきました。  次のページの「目次」で5ページからがマコファルマ社回答、6ページからBCT Japan株 式会社回答、16ページからバイオワン株式会社回答とありますが、これについては前回 の会議で、委員の先生方には既にお配りさせていただいている中から、各社より公表可 能とされたものについてのみ載せております。  追加ですが、7ページのBCT Japanの(4)の問のみ追加の説明がありましたので、ここ のみ前回の資料に追加という形で付けております。  再び「目次」に戻りまして、そこから後のページには委員の先生方から出ました追加質 問1、追加質問2に対する回答を載せておりますので御確認をお願いいたします。  追加質問1については27ページから、その回答については28ページから30ページに かけてバイオワン社からの回答があります。質問については、抗体の産生について及び 凝固因子の活性についてという内容です。抗体産生について、現時点では報告がなされ ていません。活性については、30ページの表2に、不活化処理前後の活性について記さ れています。  31ページは追加質問2で、海外における状況として、供給数、不要となった技術、市販 後調査の実態についての問がありまして、32ページからマコファルマ社からの回答を日 本語と英語で付けております。37ページからはBCT Japan社、57ページからバイオワン の回答を載せております。  資料3は、これまでの議論及び比留間先生のプレゼンテーションでも、本日既に議論が ありましたけれども、事務局でもこれまでの議論の論点を整理させていただきました。  1ページの下のスライドになりますが、論点として、1)は現状の輸血感染症のリスクの現 状、2)は不活化効果について、3)は処理された製剤への影響について、4)は処理された 製剤の安全性について、5)は実作業への影響について、6)は比留間先生からもありまし たが全国一律導入か段階的導入か、といったことが論点になろうかと存じます。  2ページの上で、我が国の輸血感染症のリスクとしてはHBV、HCV、HIVについては上 のスライドに載せてあるように世界各国と比較して残存リスクはあまり変わらないところに あるかと思われます。下のところを見ますと、本日も山口先生からもお話がございました が、初流血除去の効果も上がっているようです。  3ページの上の、FFPの貯留保管の効果についてのところで、「異常プリオンには不活 化なし」というのは削除してください。同じ2年間で比較をしたウイルス感染症例、B型肝 炎になりますが、貯留保管前は8例、貯留保管後は2例ということで効果が上がっている のではないかと思われます。  その下のその他のウイルスで、HEVについては、北海道において試験的NATが現在 行われているところですが、その他のスクリーニングがされていないものに関しては、問 診・検診等により見合わせ措置を行い、安全対策としているところです。  4ページで、不活化技術の対象とする病原体として、HIV、HBV、HCV及び細菌感染 については安全対策が行われてきているわけですが、さらなるリスクを減じるという角度 から、不活化の議論がなされるのか、また3番目の未知の病原体に備えるという考え方 で不活化の議論がなされるのか、というところが論点になるかと思われます。  下のスライドで、不活化の技術の導入については、高い不活化能であるとか、広いスペ クトラムといったことが求められているわけです。5ページの上のスライドでは、リボフラビン、 メチレンブルー等の不活化技術等が現在適応となっております。先日、企業の方々から もヒアリングを行ったところであり、ここに適応についてもまとめさせていただきました。  その効果については一般的になりますが、ウイルスの不活化については概ねエンベロ ープ・ウイルスには効果があるが、ノンエンベロープ・ウイルスに対しては効果が劣る。そ して、高濃度の病原体に対しては、必ずしも効果があるとは限らず、そして標準的な細菌 に対しては効果があるだろうというのが各企業の御説明であったかと思います。  6ページでは、不活化処理による製剤への影響として、血液製剤の品質が変わらないこ とが求められているところですが、資料2-2のところにもありましたが、製剤の容量変化と いうことが若干でもあり得るようです。7ページでは先ほども議論がありましたが、凝固因 子活性の低下という問題、それから血小板の回収率の問題といったことも分かってまい りました。この点については、臨床的な問題だけではなくて、安定供給の観点からもこれ まで議論があったかと思います。  そして安全性については7ページの下のスライドで、さまざまな角度から安全性につい て議論が行われるべきであり、8ページの上で、臨床治験では限界もあることから、市販 後臨床調査の重要性も議論され、海外の動向についても先生方から御質問があり、今 回各社から回答もいただいているところです。  8ページの下のスライドで、前回のヒアリングにおいては各社とも安全性については問 題ないといったコメントをいただいております。  9ページの上のスライドは、いわゆるGVHDの議論もありました、放射線照射が導入さ れて以降、2000年からGVHDの報告はありません。議論になりましたが、不活化技術が 導入された場合、放射線照射がどうなるのか。即ち不活化技術と一緒に行う場合であれ ば、例えば凝固因子活性がさらに下がると臨床的に問題がないのか。放射線照射を省く のであればGVHDが起きてしまうリスクが再び増加するのか、といった議論も今後さらに 安全性を考えていく上で論点になるかと思います。下のスライドは、不活化技術の導入を 検討するかどうかの議論に当たっては、安全性を第一義的に考えるべきである、というこ とで議論が進められてまいりました。  10ページは、作業工程と実作業への影響ということです。不活化技術を行う対象血液 の規格が限定されていることから、採血装置の問題もまた考えなくてはいけないことから、 供給時間の問題、そして凍結血漿については融解して不活化処理を行い、また再凍結 を行うということも考慮に入れながら、その下のところで、実際に現状では技術に応じて製 剤容量の規格が変わり得るといったことも考慮に入れる必要があるようです。  11ページで、現在の採血装置では、不活化技術の導入に対応するのは困難であること から、技術導入に当たっては1963台の採血装置への対応も考慮していく必要があること が分かりました。  その下で、それ以外に種々期待される効果もあるわけですけれども、12ページで対象 製剤とする優先順位については本日も議論がありましたが、論点となるかと思っておりま す。  以上簡単ですが、論点をまとめてみました。資料2、資料3については以上です。 ○高松委員長 今までの議論をまとめていただきましたけれども、ここで山口先生から血 液不活化についてFDAとHHSの勧告について調べていただきましたので御説明いただ きます。 ○山口(一)委員 私は、委員でありますとともに感染研の職員でもあり、この合同委員 会には5名の感染研のメンバーが入っておりますので、私たち独自に何回か所長・副所 長を交えて議論をしております。それを現時点でまとめたのが資料4です。事務局から報 告がありましたが、基本的には大きく外れてはいないと思います。  まず導入目的ですが、その長所としては未知の、あるいは新興の病原体、あるいは残 存リスクに対する安全性の向上が期待できる。しかし、これは万能ではないということも是 非御理解いただき、これを入れることによってすべてがバラ色であるかのような幻想はや はり非常にまずいのではないか。もちろん、技術の性能向上に向けた新しい開発、先ほ ども出ましたがその周辺技術も含めて自由にやるべきだと。それから赤血球ができていな いわけですから、それをどうするかという問題。そういうものの開発に向けて研究を推し進 めていたただきたいと思います。  導入により付随する問題として、長所のところに書いてあるように、同種抗体による免 疫学的副作用の軽減効果があるのではないか。しかし、この点についてもフランスの事 情をよく調べますと、血漿をかなり除去しています。そのことだけで、免疫学的反応が軽 減しているという報告がありますので、フランスの血液事業者の立場からいうと、どうして 日本は血漿をもう少し省かないのですか、そのことでいいのではないですかという答えが 返ってまいります。  それから血小板機能や、血漿内の凝固因子の低下による、製剤本来の効果の低下、 このことは先ほども質問いたしましたけれども、私自身は大きな問題だと思います。要す るに役に立たないわけですから、むしろ非常に変性しているわけです。それがたくさん入る、 ということはどういうかということはやはり考慮しないといけないと思います。製造工程や、 製剤規格の全面的な変更を要する。この問題は先ほども議論されています。  それから、新たに生じる問題として、例えば問診やスクリーニングの検査を緩和できる のではないか、ドナーがたくさんできるのではないかという可能性、これは確かにあるのか もしれません。ただ問題は、従来のスクリーニング、NAT及びGVHDの予防のための照 射といったものを本当にやめられるのか。私自身は、γ線照射と、この不活化をどう入れ たら20〜30%のロスの凝固活性の問題は相加的あるいは相乗的に活性をなくしていくと 考えています。もちろん、そういうデータはこれから研究としてやる必要はあるかと思いま す。  ただ、導入に向けて検討する価値は十分ある技術とは考えています。新しい未知の病 原体を次から次に検査をしていくのか。そこに非常に大きな問題があるわけで、そういうも のに備える観点からは正しい方向ではないかと考えています。もし、そういう形で検討す るのであれば、臨床治験あるいは市販後調査を充実させることも視野に入れてやる必要 はあるのではないか。トータルとして私たちの立場としては、拙速な導入により、新たな薬 害を作ってはいけないと考えています。 ○高松委員長 今までの議論、あるいはそれをまとめてお話をしていただきました。ある いは山口先生の御意見につきまして御議論、コメントはございますか。 ○高橋委員 細かいことですが、照射と不活化技術の併用ということで、照射自体は白 血球を含む濃厚血小板、あるいは赤血球に対応しているものです。FFPあるいはFFP中 に含まれる凝固因子に関しては、それを併用する必要はほとんどないのではないかと思 っています。  ただ、実際に血小板に関しては、当面導入の可能性がかなりありますので、その両者を 併用するのがいいのか、片一方にした方がいいのか、先生が御紹介くださったような血漿 をなるべく除いてあげることで対応するのか、そういうのもよく議論する必要があると思い ます。 ○花井委員 専門的なことは分からないところがたくさんあるのですけれども、導入する かしないかということはさて置きまして、何かの危機が迫ったときに、どういう状況になって いればいいかというと、私どもは1980年代のことを思い出すわけです。当時、HIVという のはまさに未知の病原体でした。そのときにいくつか手立てはありました。  例えば、国内のFFPを回すとか、加熱技術は新しいものをすぐ導入する。プール血漿を 2、3人のプールに縮小するといった案がありました。結果として今から振り返っては言え るのですけれども、当時は腰が重かったと思います。危機に対したときには、フットワーク 軽く、いろいろな選択肢を確保しておくというのがここではいちばん重要かと思います。  したがって、当面は危機的な状況で、緊急的に素早く導入すべきという危機は何かとい う議論ではまだないかと思います。しかしながら、今後未知の病原体に関してそういうこと があったときに、例えばこういう技術をフットワーク軽く導入できる体制を持っておけば、そ の病原体の本体を探るまでの間に、何らかの保険になるという意味においては極めて重 要な技術だと思います。  素人考えでは、日本はこれだけの量の血液を一社が供給しているということで、全部同 じ技術でザーッとやってしまうというようになりがちなのですが、できれば複数の技術をうま く導入し、その技術を学びながらいくつかの広域ブロックでもいいですし、センター毎の何 か分かりませんが、いろいろな選択肢があって、何かあったときにフットワーク軽く動ける ような感じにしておくということが、本当の危機が迫ったときに重要だと思います。  したがって、私たちは1980年代のことを振り返ってしか分からないのですけれども、当 時は腰が重かった。そういうことによって、大変なことになった感じがあります。一律に今こ れを決めて、すべてこれでやるのだということの動きのことよりも、常に選択肢を広く、懐を 広く構えられる体制をどのように作るかというところを考えていただきたいのが1点です。  もう一つは、先ほどのQuarantineもいいのではないか。Quarantineというのは、Passive というのがあるというのを本日初めて分かりました。ヨーロッパへ行くと、溜めているだけと 悪口を言われるので私も分かるのですが、逆に言えば献血者のあり方を考えれば、本当 の意味でのActive Quarantineというのも可能かな、という可能性はないですか。そういう ことも含めて考えていただいてもいいかと思いました。 ○山口(一)委員 もう少しフットワーク軽く行け、というのは賛成です。フランスの例です けれども、フランスで導入しているのは海外圏です。これは、カリブ海のマルティニークとい う40万ぐらいの島、あるいはインド洋のマダガスカルの東1,000kmの所にある島でチクン グニアが出たとか、デング熱とか亜熱帯のウイルス病に対しての備えをやるのに、彼らは 非常にうまくやっているという印象を私自身は持っています。  日本でも、フットワーク軽く、あるいはある地域に限った臨床治験といったことが血液輸 血製剤でも行われるべきだと個人的には思いますが、それはどういうところを変えていっ たらいいのかという答えは持っていませんが、基本的には賛成です。 ○山口(照)委員 私は、前からこの導入には慎重だったのですが、この間の議論を聞い ていて、それならば一定の効果があると思いつつあります。ただ、安全性に関しての懸念 は相当あります。ただ、短期の安全性に関してというか、普通の動物実験でやれるような 安全性に関しては、たぶんメーカーはみんな持っていると思います。  安全技術調査会というのは公開の場なのでわりと見られないのですけれども、総合機 構に申請すれば、そこですべてのデータが見られますので、その上で判断は可能だと思 います。こういう席で、そういうデータを見て、どこまでの安全性が担保されているのかとい うのを議論できるのかどうか、それが一つのポイントかという気がするのです。  もう一つは、今実際に導入されているのは山口先生のお話にもありましたように部分的 なところ、それから比留間先生が言われた血小板について10万人ということは、いわゆる 全面的ではなくて部分的に導入されているということだと思うのです。それは、遺伝属性 などだとネズミでやりますからせいぜい1年半しかもたないので、その間の安全性しか担 保されていない。長期にわたるものは、たぶんファーマコビジランスで見ていかないと仕方 がないのだろうと思うのです。  逆に言うと、そのデータが揃うまでスタートしませんか、という話がもう一つ求められてい るのだろうと思うのです。ある方向性というか、その辺の安全性は、メーカーにきちんとし たものを出していただく。こういうものをどこまで出せばいいのだろう、ファーマコビジランス と非臨床のデータと併せて、どこまでのものを出すかということをこの委員会は求められて いるのだろうと思います。 ○大平委員 リスクの問題としては、副作用の問題とか、これからの調査の問題として、 血液全体として、例えば抗がん剤の問題とか、先ほど比留間先生のその比較の問題と は違うという話でした。抗がん剤とか、そういう特定の疾患について、いろいろな製剤のリ スクを追跡調査する問題と、この血液の問題はかなり広範な血液全体に転化するか転 化しないかというところがあります。そこはちゃんと調査ができる体制として、たぶん日赤 がやるのかもしれないし、あとは感染研といった所が加わるのかもしれないのですが、そこ のフォロー体制がある程度確保されていないと、一部で試験的に導入するにしても、こう いう体制の下にやりますということを皆さんにお話するような説得力がないといけないかと 思います。  それが、前提条件になるのだろうと思うのです。私たちが、血友病に対して血液製剤を 投与するリスクの問題とは違い、一般の方全体にかかわる問題なのです。それは生命の 問題としては同様ですけれども、リスクの大きさの問題を考えると、そう簡単にはいかない 問題なのかと思います。それを盾に導入するなという話ではなくて、やるとしたらその体制 がきちんと取れていないと、国民一般に対しての説得力はなかなか出てこないのではな いかと思います。そのリスクをある程度皆さんと共有するような形を訴えかけることになる ので、そこはきちんと担保していただけるような体制を是非考えていただきたいと思いま す。 ○山口(照)委員 大平委員の点に関しては、前からファーマコビジランスの話があったと 思います。これは本省の安全対策、あるいは総合機構の安全課が、薬事法改正以降き ちんとした体制を今とっていると思います。特に市販後直後調査をきちんとやる体制にな っていますので、その全例については把握できている。私が、把握できていますと保証す るわけにはいかないのですが、その体制はかなりきちんととれるようになってきていると思 います。  そういう調査の中で何をちゃんと調査しろ、ということが明確になれば、総合機構なりそ ういう所にデータが集まってくる。ひょっとしたら、運営委員会の所にそういうデータを出せ、 という話をすればより緻密な調査ができるのかもしれないと思います。 ○山口(一)委員 資料7について簡単に説明させていただきます。資料7は、先ほど言 いましたように感染研のメンバーがここに5名いて、非常に大事な部分を翻訳ということで、 特に感染研切っての英語の使い手である水落委員を中心に、何人かで担当して訳をし たものです。  第一にこの答申というのは、今年の1月9・10日に、日本の厚生労働省に当たるHHS の血液の安全供給に関する諮問委員会、たぶんこういう会だと思うのですが、そこでの 会合の議事録です。ワシントンD.C.で行われています。  5ページから7ページにかけては全体のディスカッションです。この全体の会議は、メーカ ーからの発表もあり、私たちが翻訳したのは、公的な立場にある人たちの部分だけを訳し ました。メーカーからのは訳しておりません。  5ページから7ページはDiscussionとまとめということで、やはり本日ありましたような議 論が出ております。例えば、Radiation照射をやめることができるのかどうか、あるいはコ ストの問題。それから、血液の安全性についてのパラダイムシフトの意味。パラダイムシフ トであると議論しているが、新しい技術については真のパラダイムシフトなのか。米国でも かなり慎重論はありまして、新しい技術はこれまでのアプローチとは全く違うものであるの で、副作用、反作用ということも十分考えなければいけない、といった議論がずっと出てお ります。  例えば、新興感染症に対する予防策としてはリーズナブルである。ただ、あまりにも感 染症に焦点を合わせすぎてはいないか、他のことにも言及できるのかといったこと。それ から不活化のコストは、最近加えていった安全対策を段階的に止めることで相殺できる のだろうか。プリオンには、無効であるときちんと言っておけ、といったことがディスカッショ ンされています。  8ページから13ページにかけては、Harvey Klein、これはNIHの人ですけれども、彼がず っと話しております。最初のページからですけれども、米国でも安全になってきた。しかし、 カナダで開かれた、トロント・Consensus Conferenceにおいてデータが集積された。しかし、 最終決定はまだなされていないということ。Canadian Consensus Conferenceでの6つの 疑問点について、1から6まで挙げています。ほぼ私たちの議論と同じようなものであると 考えていいかと思います。それから、市販後調査なのか、きちんとしたヨーロッパ風のファ ーマコビジランスなのか、どっちがいいのかという議論も行われています。議論はずっと続 いておりますので、これは見ておいてください。  25ページから32ページについては、Margarethe Heidenさんですが、彼女はドイツのポ ール・エールリッヒのメンバーです。ポール・エールリッヒ研究所というのは、日本でいうと 総合機構、あるいは感染研のような立場で、生物学的製剤を扱っています。ヨーロッパの 法規制についてのプレゼンテーションがされています。ドイツは、ヨーロッパやアメリカと同 じで、日本のように単一ですべてやっている所はあまりないとお考えください。ドイツは、バ ラバラにいろいろな組織がやっていますので、例えば導入したとしても、それはそこの組織、 あるいは大学の一部、あるいは一部の血液センターでの話であって、全部でやっていると いうことではありません。  ドイツでは、B型肝炎ウイルスのNATはやっていないです。しかし、それについてはHBc 抗体をやってどうだったと。NATも、HBVのスクリーニングはやってみたのだけれども、あ るいはプール血漿のSD-不活化といったものもやってみたのだけれども、あまりうまくいか なかったということを彼らは述べています。翻訳ですので、忠実にということを考えました。 一部は明らかなミスもありますけれども、それはそのまま訳をしております。  43ページから50ページにかけては、FDA-CBERのDr.J.Vostalさんのかなり詳細なレ ポートです。今も出ていましたけれども、リスク・ベネフィットの問題を考慮しないといけない ということ。不活化の問題についてベネフィットは何か。初流血除去云々についてですが、 アメリカでは細菌汚染は非常に大きな問題ですので、細菌の検出を導入したり、そういう ことには何がいちばんいいのかという議論をしております。  そこでPhaseI、PhaseII、PhaseIIIの話ですが、PhaseIIIの臨床治験のSPRINTスタデ ィについて詳細にコメントをしています。この結果については非常に学ぶべきことが多いで す。ただ、血小板の投与の量は相当増えた。それから皮下出血について、ここでは統計 学的な有意差はないがと書いてありますけれども、赤血球の本数も増えたということをデ ィスカッションしています。先ほどのファンクションがなくなるわけですから、単純に考えれ ば適正使用の問題はありますけれども、これはファンクションが減れば、臨床としては余 計に使いたくなるのは当たり前ではないか。  また、そのことと適正輸血をきちんとやるということとは別の問題ではないかと思います。 比留間先生がいないときに言って申し訳ないのですけれども、私は臨床の立場からもそう いうことではないかと思います。  そういうことでずっといきまして、例えば輸血間隔が短くなったとか、必ずしもSPRINT  Trialについての問題は、諸手を挙げてよかったということではない。もう一つの問題は、 有害事象の問題、特に呼吸器症状についての有害事象をコントロールではなかったのに、 投与群で318人のうち5例発症したということも言っております。こういう臨床のトライアル ができるということは、ある意味で非常に羨ましいシチュエーションでもあるわけです。新し い技術が導入されたときに、そういうことを積極的にトライするということも、先ほど花井委 員の言葉にもありましたように、やはり今後はフットワーク軽く、いろいろなことをやっていく べきではないかと思います。  詳細については、是非これをお読みください。私も全部読みましたし、翻訳にもかかわっ ていますが、翻訳の詳細は水落先生が見事に訳されました。 ○高松委員長 追加の分も含め、御意見がありましたらお願いいたします。 ○大平委員 ここまで導入の問題として検討課題になってきています。ここが導入の方向 にもし向かうとしても、それを医療機関とか患者に提供するのは日本赤十社になります。 日赤の方では、こういう問題について、導入するかどうかということも含め、シミュレーショ ンみたいなものは立てておられるのでしょうか。ある程度シミュレーションを立てていないと、 現実的にこの地域で何かをやるということを考えたとしても、実際にそのタイムラグは大き いと思います。  ですから、現実的に技術の問題というのは日赤の研究所などで検討はされていると思 うのですが、そういうことも踏まえてある程度のシミュレーションは立てておられるのでしょ うか。こういう薬剤を導入した場合の問題点、製造工程の問題、コスト問題、それについ て社会的に説明する問題点がありましたらお聞かせください。 ○高松委員長 日本赤十字社の問題につきましては、本日は時間がないということもそ うですし、準備もしてありませんので、今までの議論も踏まえ、大平委員が言われたような ことも含めて日本赤十字社からの御説明をいただければと思うのですがいかがでしょうか。 細かいことも当然あるでしょう。つまり、機械をどうするかということもあるでしょうし、全く違 うことですから当然治験もあるでしょうし、大まかなことも含めて次回に少しお話をいただ ければと思うのです。 ○田所担当者(日本赤十字社) 我々が検討してきた範囲に限ってですけれども、我々 が今まで研究してきたことが、一応言われているような効果があるのかどうか。すべてで はないのですけれども、そういうことをやってきました。機能はどうなのか。先ほど議論にな ったようなものを、患者には投与できないので、in vitroの分かる範囲でどうなのか。製剤 の製造工程の影響でどれぐらい変化が起きてしまうのか、あるいは今の日本の採血行動 でできるものはどれだけなのか、ということを検討しています。  いちばん大切な安全性については、残念ながら動物実験はできないし、もちろんヒトに はできないので、最大限あちこちに情報の網の目を敷いて、そういう所からの情報を入手 しているというのが、今、我々がやっていることです。その範囲内でお話できることについ ては、機会をつくっていただければ最大限お話をさせていただきます。 ○高松委員長 各企業と契約をして研究されているのでしょうから、ここで抵触するような 問題をあえて話をしろとは申しませんので、できる範囲で我々にお示しいただければと思 います。 ○田所担当者(日本赤十字社) 御指摘いただいてありがとうございます。そういった問 題は確かにありますので、メーカーの方の了解を得ながら、できる範囲でお話をしたいと 思います。 ○吉澤委員長 できる範囲のデータをここに出していただいた上で、さらに何が必要なの かという議論をここですべきだろうと思います。日赤で最大限の努力をして情報を集めて いただき、導入するかどうかを考える材料がそろっているかどうかを検討することが問題 だろうと思いますので、引き続きここでまた議論するという前提で出していただくと。  その中で最大の問題は安全性はもちろんなのですが、これは田所先生が言われたよう に限界があります。不活化の効果については、前回の委員会でも伺ったのですが、直接 的に見ているわけではないわけです。核酸の量で見たり、in-vitroで見た結果を基にして 推測していたり、不活化の効果というのは元来の感染性から何パーセント低下したのか 定量的な測定結果を基にして判断していかなければいけない問題だろうと思います。  先ほど残存リスクの話がありましたが、少し混同があると思うのは、残存のリスクという のは、年間の症例数ではなくて、感染力を保持しているウイルスの量で見なければいけ ない。つまり、血液の中にどれぐらいのウイルスが残っているのか、ということと関係する わけです。  もう一つ関係するのは、新興の、未知のウイルスに対する不活化の効果が云々という 話がありました。未知のウイルスは量が少ないという保証は全然ないわけで、ある一定量 以上のウイルスについては無効であることは分かっているわけですから、未知のものにつ いて、この不活化の技術が有効であるという幻想は振りまかない方がいいと思います。そ ういうことは考えずに、具体的なデータに基づいて議論していく、という体制が必要だろう と思います。  そのために、ファーマコビジランスのチームをつくることももちろん大事なのですが、今申 し上げたような、データに基づいて議論できるような、そのデータを作り出し得るような何ら かのチームをつくることを考える必要があるのではないか。そういう時期に来ているのでは ないかと思います。 ○高松委員長 貴重な御意見をありがとうございました。本日はプレゼンテーションを踏 まえ、今までの総括といいますか、今までの問題点だったところがよりはっきりしてきたと 思うのです。 ○岡田委員 我々が心配するのは、不活化について確かに病原性に関しては減るだろう と。一方で安全性ということを皆さんが心配していると思うのです。この中には毒性の専 門の方は誰もいらっしゃらないのですが、毒性についてどう考えたらいいか。特に慢性毒 性の研究をやっている方に、一度そういう考え方を講演していただいて、皆さんの知識を シェアするというのは、今後の議論を進める上で重要ではないかと思います。次の機会に でも、そういう専門の方に講演をしていただければいいと思います。 ○高松委員長 毒性のことについて、感染研の中には専門家はいませんか。 ○山口(照)委員 遺伝毒性、生殖毒性、慢性毒性といくつかありますが、毒性部の菅野 先生辺りにお願いすればと思います。 ○岡田委員 核酸に結合するような物質の研究をやっている方がいちばん適切ではない かと思います。 ○山口(照)委員 核酸の場合やっておられるのは、変異原性を中心にやっておられる方 が多いので、むしろ毒性の変異原性の方が多いかという気がいたします。 ○水落委員 単純な疑問なのですが、比留間先生も輸血では赤血球がいちばん大事だ とおっしゃっていましたが、現在のところ赤血球の不活化の研究はまだ進んでいません。 実際に赤血球の不活化に関しての研究というのは、今、日本ではどこがどれぐらいやっ ているのかという情報はあるのでしょうか。  もし赤血球の不活化を置いておいて、ほかの2製剤を先にスタートするという考え方な のか、その2点が気になっています。 ○高松委員長 日本赤十字社の方でそういう情報はありますか。申し訳ないのですが、 私はどこの大学にせよ、研究機関にせよ、赤血球を含めた不活化のことをやっていると いう情報はあまりないです。 ○田所担当者(日本赤十字社) こういう化学物質を使って不活化をしているという話は 聞きません。ただ、物理的な方法では、感染研等で検討されているということは知ってお りますが、それ以外に日本で新たな不活化技術を開発しているメーカーがあるというよう には聞いておりません。 ○山口(一)委員 赤血球ですので、少し圧をかけたり、いろいろなものを加えたらすぐパ ンクしてしまう。溶血の程度をどこまで許容できるかという検討もしていますが、現実には なかなか難しいです。研究としては進めています。 ○高松委員長 次回に、日本赤十字社から御説明をいただくということ。慢性毒性につ いてはなかなか難しい問題で、どのように研究されているかというのは、我々は門外漢で よく分かりませんが、是非その辺の御意見をいただきたいと思います。かつて、放射線照 射のときには、放医研からお話をいただいたように聞いています。生物学的なこととして 何が起こるか、ということは当然のことながら考えられるわけです。  確かに一方ではメチレンブルーのように治療用として使っているからという御意見もある でしょう。しかし患者によっては、再生不良性貧血の方ですと、もっと長期間に輸血を続 ける、何十年という形で続けることがあるので、多様な治療をされているということを、なか なか均一の形で決定するわけにはいかないと思います。 ○高橋委員 現実的な対応としては、市販後調査ということも出てくると思うのですが、 市販後調査の前に動物実験でどこまで確認できるか。毒性の話とか、慢性的な投与によ ってどんなことが起こるか。動物実験に関しては、先日もヒトの血小板をウサギに打った 御紹介がありました。それだと、ほかの抗体産生がメインになってしまって、実際に同種 の血液を、ある処理をして投与した場合の特殊な抗体産生が見えにくくなってしまうと思 うのです。  毒性もそうですけれども、前臨床のものとして動物実験でどこまで確認できるか。そうい う点を田所先生、あるいは日赤の方からも、それから毒性の専門家の先生からも、具体 的にどういうやり方をしたらいちばんいいのだろうかと。それも限りがあるから、最終的に は市販後調査になると思うのですが、もう少し詰められるところは詰めて確認すべきでは ないかと思います。 ○田所担当者(日本赤十字社) 先ほど言いましたように、毒性自体のデータの詳細はメ ーカーに出していただかないと、残念ながら我々の方では持っていませんので、是非そち らの方でお願いしたいと思います。 ○高橋委員 私が言っているのは、方法論としてどうやるべきか、ということを含めてで す。 ○田所担当者(日本赤十字社) そういう議論を、もしここで今後議論していただくのに、 先ほどちょっと問題になったのですが、どれもすべて病原体を全部やっつける方法は現実 にはないです。先ほど先生が幻想だとおっしゃいましたように、現実にはないので、それぞ れ特徴があります。現状のリスクも下げなければいけないし、新興感染が来たときに抑え なければいけないし、細菌も抑えたい、いろいろあると思うのです。どういうのを重視して 考えたらいいか、ということを一つ議論していただくと、こちらも考えやすくなるということが あります。  先ほどちょっと気になったのは、機能が落ちるということに関係して、我々はいつも新鮮 な血液を出せと病院から言われているのですけれども、おそらくどうでもいいよという話で はないのだろうと思うのです。目的によって、出血しているときに止めるのか、予防的に使 っているから余裕があるときに使っているのか、その総数で余裕があるからこれぐらいは 臨床的に問題はないと言っているのか、その辺は臨床の先生にはっきり論点にしておい てくれないと、今後どういう血液を出したらいいのかという点では我々としても考えなけれ ばいけないことなのです。 ○高松委員長 私は、大量出血のことをやっていますので一言申し上げます。おっしゃる とおり、フィブリノゲンにしても、凝固因子にしても下がると非常に困るところがあります。な ぜかといいますと、大量出血によってフィブリノゲンが下がって、そのために悪循環になっ て止まらなくなる。確かに30年前、20年前のC型肝炎の検査ができない時代には、不幸 なことにフィブリノゲンによって感染が起こりましたけれども、今はフィブリノゲン製剤を含 めて血漿分画製剤は、感染症はほとんどない、あるいは全然ないと言える。ですから、も う1つは今のように、適用が先天的に限られているものを、そういうことを補うという意味 で、別な形で承認をしていただければ、多少歩留まりが悪くなっても、そちらでレスキュー ができると思います。  血小板は残念ながら減りますので、なかなか代替がないのですけれども、輸血の大原 則は安全な代替があったらそれを使えというのが大原則で、考えてみれば血漿も分画製 剤で安全なものは使いたいというか、使うようにしていただけると本当はありがたいのです が、保険上の問題があって使えないのです。  ただ、一方では血漿交換のように、必ずしも凝固因子を期待しなくてもいいような場合 は、そういうことにあまり斟酌しなくてもいいとは言いませんけれども、そういうことは比較 的いいということもあると思います。 ○高本委員 現場ということで、血小板についてです。血小板の数が2割、3割減るとい うことは、使用者側にとっては大きなファクターです。何単位を使うかということ、しかもど のぐらい上がるのかという効果を期待する上で大きな問題になります。もし、こういうシス テムを導入するのなら、出庫時点での細胞数をベースにして何単位ということをちゃんと 明言していただかないと困ります。 ○高松委員長 細かい技術的な問題がいろいろ出てくるかと思いますけれども、これは 本当の時点になってディスカッションするということになります。 ○半田委員 先ほども花井先生からお話がありましたように、患者の立場から言うと、い ろいろな選択肢がなければいけない、フットワークを軽くするということ。皆さんからコンセ ンサスを得たことは、部分的な導入というのは、日本人全部に同じものが行くというのは ちょっと受け入れ難いということです。ですから、部分導入というのも視野に入れるべきだ と思います。  そのためには、日本赤十字社から御報告をいただく場合に、そういうテクニカルな部分 をもし発表していただければ有難いと思うのです。例えば、部分導入というのはどの程度 可能であるか、というようなところの試案みたいなものがもし可能であれば。あるいは、規 格とか製造工程が随分変わってくるということがあります。現実的な導入を視野に入れた 場合に、どういう問題点があるかというのも議論しておいた方がいいのではないかというこ とがあります。 ○高松委員長 いろいろな観点からの検討が必要ということで、何回も議論してまいりま した。今までの議論を踏まえ、日本赤十字社、あるいは事務局とも相談して毒性の専門 家にも来ていただいてお話を伺えるかと思います。  ほかに、議題3について先生方、あるいは事務局から何かございますか。ないようでし たら本日の会議はこれで終了させていただきます。次回については事務局から御連絡申 し上げますのでよろしくお願いいたします。本日は、長時間ありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局血液対策課 後藤(内線2902)