08/05/20 第2回労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会議事録 労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会(第2回)議事録 1.日時   平成20年5月20日(火)13:30〜15:30 2.場所   経済産業省別館 1014会議室 3.議題   (1)各国の制度に関するヒアリング   (2)その他 4.資料    資料1.フランスにおける「合理的配慮」について    資料2.ドイツにおける「合理的配慮」について    参考資料1.平成19年度における障害者の職業紹介状況について    参考資料2.最低賃金法施行規則の改正について ○座長  それでは、時間になりましたので、ただ今から第2回の労働・雇用分野における障害 者権利条約への対応の在り方に関する研究会を開催いたします。本日は、大久保委員と 森委員がご欠席です。  本日の議題ですが、各国の制度に関するヒアリングということで、フランスとドイツ における合理的な配慮についてのヒアリングを予定しております。前回事務局から説明 のあった論点整理を作成するに当たりまして、両国の制度について調査研究をいただい た研究者の方からお話しをいただくということで、お二人の研究者の方にご出席をいた だいております。  まず、ご紹介をいたします。障害者職業総合センターの指田忠司さんです。その次は、 東京大学の大学院の永野仁美さんです。  それでは、本日の議題に入ります。先ほども言いましたように、本日の最初の議題は、 1つ目が、各国の制度に関するヒアリングということでございます。条約に規定されて いる差別禁止に関する制度も含めて、ドイツにおける合理的配慮については、指田さん から、フランスにおける合理的配慮については、永野さんから、それぞれご説明をいた だきたいと思います。2つ目の議題が、その他ということになっておりますが、障害者 雇用施策に関連した最近の動きとして、19年度の障害者の職業紹介の状況と、昨年の最 低賃金法改正に伴う適用除外制度から減額措置制度に移行したことについて、事務局か ら報告をしていただいて、説明をいただきたいと思っております。  それでは、まず、議題ではフランスが先になっておりますが、指田さんのご都合がご ざいますので、ドイツを最初にしたいと思いますが、よろしくお願いいたします。 ○指田氏  ありがとうございます。私は障害者職業総合センターの指田と申します。ドイツにお ける合理的配慮ということでお話しをさせていただきます。なお、話の筋は、お配りし た資料に沿ってやるつもりですが、若干補足的なテータも付加したいと思いますので、 その点、ご了承ください。  まず、障害者の雇用・就労状況ということで、ドイツの概観を把握してもらうための 数字を申し上げます。ドイツは人口が8,247万人ということです。障害をもつ人々が864 万人、10.5%おります。うち、障害程度が重度の者が673万人、8.2%ということでござい ます。また、労働年齢人口、15歳から64歳までの人口を見てみますと、5,513万人中障害 者が441万人、8.0%、うち重度の者が306万人、5.5%となっております。この5.5%が非常 に重要な数字でございます。15歳から64歳までの障害者の中で、就業者が188万人、失業 者が15万人となっております。これは、2005年のミクロセンサスの数字でございます。  ドイツの場合、施策の流れとしまして、1920年の第一次大戦の後から、重度負傷者法 という法律が制定されまして、戦争または労働災害による障害者の雇用義務というもの が導入されました。その後、第二次大戦後の53年に重度負傷者雇用法というものが制定 されて、また、74年に、重度障害者の労働・職業、社会への編入を保障する法律、これ は、最近よくいわれている重度障害者法のことでございます。これが74年に制定されま した。この時点では、法定雇用率が6%でしたが、90年の東西の統合を経まして、西ドイ ツの法律が東ドイツ全域にも適用されまして、2000年から重度障害者法の大改正が行わ れました。そして、2000年の法定雇用率では、5%になっております。そして、2001年に は、重度障害者法が社会法典第9編という法律に編入されまして、これは、現在は、社 会法典第9編第2部、重度障害者法という名前になっております。  こういった法律制定の流れがありまして、基軸としては、法定雇用率あるいは割り当 て雇用制度というものを、ドイツは一貫して維持しているということが言えると思いま す。  一方、差別禁止に関しまして、今回お配りした資料にございますが、差別禁止につき ましては、ドイツ憲法の、ボン基本法ですね。これが1949年に制定されましたが、その 後、同法第3条が改正されました。その中に、障害を理由とする差別というものを禁止 するということが謳われております。確か、1994年だったと思います。この憲法改正で すけれども、この背景としましては、一連の障害者を取り巻く様々な差別事案について の裁判例が出ておりまして、区裁判所レベルで、知的障害者に対する差別を理由として、 差別を是認しているような判決が出たというようなことがございました。それに対して、 障害者団体が運動を展開して、94年の10月にこの憲法を改正するということが実現した ようでございます。  それから、その後、94年の憲法改正もあったんですが、EUの指令というのがございま す。短くいいますと、雇用均等一般枠組み指令といいますが、これは2000年11月27日に 発布されました。その中で、2003年12月2日までに国内法を整備するようにというよう なEU指令が出ております。これに対して、ドイツがその履行を全部できなかったという ことから、EUの裁判所がドイツ政府に対して、ちゃんと履行しなさいという判決を出し ました。2005年だったと思います。  この判決を受けて、当時のシュレーダー政権、また、その後のメルケル政権がこれを 取り組みまして、2006年8月に、一般均等待遇法というものを制定しました。これは、 先ほども申し上げたEU指令、他にも職業訓練などのものとか、男女均等待遇ですとか、 4つほどあるんですけれども、それを全部ひっくるめて改正し、こういう国内法が制定 されたということです。そして、2006年の夏、制定直後、すぐに施行されております。 その結果、ドイツは違約金を払わずに済んだというようなことでございます。  障害差別に関しましては、このEU指令が大きな働きをしているわけですけれども、94 年の憲法改正、そして、その後の2000年の重度障害者法の改正、そして、2001年の社会 法典への統合といった法律の制定を経まして、従来は、障害者がいわゆる雇用主、事業 主のいわば雇用の対象であった。そして、合理的配慮についていいますと、雇用を促進 するために障害者の置かれた職場環境を整備していきましょうということが雇用主に対 して義務づけられるんですよ、こういった内容の規定だったわけです。これが、2000年 頃から、いわゆる当事者、つまり障害者が主人公になって、障害者がそのような権利を 有する。つまり、事業主あるいは雇用主に対して、一定の作為、合理的配慮をするよう にという請求をできる。そういう権利を軸とした規定に変わっております。  ただ、これにつきましては、解釈が非常に分かれております。ドイツの伝統的な解釈 としましては、合理的配慮については、先ほど申し上げたように、雇用の促進というこ と、特に失業の防止というものを全面に出して、様々なプログラムを展開していく。そ の中で、職場環境の整備というものを図っていく。こういう趣旨ですから、いわゆる障 害者が権利として請求をするということまでは、どこまで社会法典がフォローできるの か、これは議論が分かれております。最低限、合理的配慮をしない場合には、民法上の 損害賠償請求ができるだろうという説が通説であるようです。  次に、雇用率制度との関係で申し上げますと、割り当て雇用の関係ですと、日本でも 納付金というのがあります。ドイツの場合は、負担調整付加金と訳しておりますけれど も、これを1974年から導入しております。86年から大幅な改正がありましたけれども、 実際の額はどうなっているかといいますと、これは先ほど申し上げたように、5%が目標 の雇用率ですので、5%を軸にして、パーセンテージによって負担調整付加金の額が違っ ております。資料の4ページですが、範囲を決めておりまして、未達成の部分がいくら かということで決まります。法定雇用率が民間も公的部門も5%ですが、実際上公的部門 につきましては、99年10月31日から、1日現在で6%を達成している場合は、そのまま6% が維持されるということがございます。それから負担調整付加金の額ですけれども、以 下のようになっております。  まず、年平均の実雇用率が2%未満の場合には、未達成分1人について月額260ユーロで す。かなりな額ですね。それから、3%未満の場合には、未達成部分1人につき月額180ユ ーロです。年平均の実雇用率が3%以上で5%または6%未満の場合には、未達成分1人につき 月額105ユーロということで、未達成の度合いが重い部分について負担調整付加金の額を アップしているということが言えます。  この負担調整付加金につきましては、30%が連邦雇用機構の方に編入されまして、あと の残りは州の雇用機関に振り分けられて、助成金ですとか、そういったところに支出さ れるということがいわれております。雇用率につきましては、他にも論点があるかも知 れませんが、一応合理的配慮について、もう少し話を進めたいと思います。  まず、社会法典81条というのがございます。これは、先ほど申し上げたように、雇用 率制度を前提として、一定の配慮をすべきだということを規定しております。その中に、 差別禁止についての1項がございましたが、これにつきましては、先ほど申し上げた200 6年の一般均等待遇法という法律に委ねられておりまして、様々な差別事案、つまり求職 活動、待遇など雇用条件の差別的な扱いにつきましては、一般均等待遇法で扱うという ことになっていて、社会法典では、適切な措置ということで、合理的配慮について雇用 率制度を前提として義務を課しているということでございます。  この中身につきましては、資料の7ページで、1番目で、自らの能力と知識を最大限に 活用し、一層発達させることのできる仕事を用意しなければならないということです。 それから、2番目は、職業的進歩を促すための職業教育が企業内措置として実施される よう特別な配慮を行う。3番目が、職業教育の企業外措置に参加できるように、妥当な 範囲で便宜を図る。4番目が、企業施設、機械、装置ならびに職場、労働環境、労働組 織および労働時間の構成を含む障害に応じた作業所の設置と整備。5番目が、必要な技 術的作業補助を職場に装備するという、5項目を挙げております。注意したいのは、職 業訓練についても規制されているということですね。つまり、能力開発についても、位 置づけをもっているということでございます。  それから、配慮につきまして、適切な措置の提供について、次のような条項がありま す。2番として、過度な負担と認められる場合には、上記の請求を履行することが、以 下に該当するときは、その請求権はないものとする。ということで、1番目が、雇用主 にとって負担が過大であり、2番目は、極端な出費を強いることになる、3番目が、国 もしくは同業者組合の労働者保護規定もしくは公務員法の規定に抵触するとあり、こう いった限界がございます。これは、社会法典自体が規定しております。  ドイツの特徴について最後に申し上げますと、ドイツの場合は、合理的配慮というも のを提供すべき対象というのは、重度障害者及び重度障害者と同等とみなされる障害者、 つまり、重度障害者は障害程度が50以上の者で、それに対して、同等とみなすという人 は30から50未満の者です。この人々に限定されます。ただし、合理的配慮というものを 提供する主体は、公的部門、民間部門の別は問いません。  それから、実効性の確保についてですが、司法上の効果の有無・内容ということで申 し上げますと、これは先ほど申しましたが、合理的配慮を行わなかったことが、障害に よる差別を構成するかについては、まだ十分な議論が尽くされていません。ただし、合 理的配慮の不提供というものが金銭賠償の原因となり得ることは、ドイツにおいてもコ ンセンサスがあるといわれております。  この後に参考があります。これに雇用者の権利とありますけれども、これは紛らわし いので、労働者の権利と直してください。  それから、ドイツの特徴としましては、先のところに書いてあって、ちょっと飛ばし たんですが、重度障害者代表という制度があります。障害者が職場で定着していく。ま た、様々な問題に遭遇した時に、5人以上の障害者を雇用している事業所では重度障害 者代表を選ぶことが義務づけられております。この重度障害者代表が相談にのったりす るというような位置づけがあります。こういった意味で、いわゆる権利擁護という点で、 重度障害者代表というのが機能しているのではないかと思われます。  それから、不利益待遇を受けた者が、例えば、今後どのようになった場合に不利益待 遇に当たるのかとか、そういう意味で、ガイドラインというものがどうしても出てくる と思うのですが、まだ、ドイツの場合には、そういった一般均等待遇法、それから社会 法典の事例として十分な事案が蓄積されていないように思われます。2、3はあります けれども、それを今ここで紹介するのは難しい状況です。  あと、ドイツの特徴として、後でフランスでも出てくるかも知れませんが、一定の規 模、例えば会員が75名または加盟団体が7以上の反差別団体に対して、弁護士訴訟が法 定されていない裁判手続に、不利益待遇を受けた者の補佐人として参加することを認め る。こういった訴訟上のアシストを補助するというような制度も一般均等待遇の方で規 定されております。あと、労働組合の方で、団体訴権というものをもっておりまして、 これは障害者対等化法の2002年の規定です。障害者対等化法によって、一定の場合に 労働組合とか障害者団体が障害者の権利保持のために訴訟をすることができる。こうい った規定もございます。  以上で、ドイツの概要について、ご報告を終わらせていただきます。ありがとうござ いました。 ○座長  ありがとうございました。それでは、ただ今のご説明について、ご質問、ご意見がご ざいましたらお願いします。どうぞ。 ○松井委員  松井です。この資料に説明があったのでしょうけれども、指田さんが先ほど説明され た負担調整付加金は日本の納付金に当たるとおっしゃいましたけれども、例えば、合理 的配慮をする場合に必要な経費がこの付加金の方から出るというようになっているので しょうか。 ○指田氏  先ほどもちょっと触れましたが、負担調整付加金を各企業、雇用主から全額集めます。 そのうちの30%は、国の独立行政法人と思われる連邦雇用機構というところに行くわけで す。その余りは、地方の州の団体に行きます。その州の団体がこういう合理的配慮、い わゆる職場環境整備ですとか、そういったところの配慮を提供する原資になっていると 理解されます。 ○松井委員  すると、例えば金額ですが、ある特定の合理的配慮をする場合に、かかった経費につ いて、どれぐらいそこから出るかというようなマニュアルというか、スタンダードはあ るのでしょうか。 ○指田氏  大変残念ですが、ただ今のことについては、真正面からお答えできる数字は現在持っ ておりませんので、後日、調べてお答えしたいと思います。 ○松井委員  ありがとうございました。 ○座長  他にございますか。笹川委員、どうぞ。 ○笹川委員  雇用率が日本に比べると大変高く、5%というびっくりするような法定雇用率ですけれ ども、達成度がどの程度なのでしょうか。それから、障害別の法定雇用率というのはあ るんでしょうか。それとも、結果的に雇用の実態から障害別に障害で分けることができ るんでしょうか。それと、もう1点ですが、視覚障害者の場合は、通勤ということが非 常に大きな問題になるわけですけれども、それに対する何か制度があるのでしょうか。 ○指田氏  もしかしたら、ポイントが外れるかも知れませんが、まず、達成率ですが、これにつ きましては、今、手持ちの資料にはございませんが、別途資料がございます。ただ、就 業者が188万人いて、失業者が15万人ということで、失業率が15%ということになってお ります。これは、別途公表されておりますので、障害別につきましても、なるべく把握 した上でご報告したいと思います。  それから、通勤の問題ですが、これにつきましては、今すぐに条文が出てきませんけ れども、社会法典に規定がございまして、ドイツの場合、50キロ以内の旅客、電車等を 乗る場合は、重度障害者はすべて無料です。付添人も無料です。そういう規定が社会法 典にございます。ただ、私は50キロだと思っているのですが、念のためもう1回調べさせ ていただきますが、昔からそれほど変わってはいないと思います。50キロの範囲という のは、つまりドイツは連邦国家で、都市が小さいですから、1つの都市圏は50キロあれ ば十分なんですね。そういう意味では、50キロという制限は妥当な制限かも知れません。 ○座長  笹川委員が今ご質問になさった一番最初の質問は、5%の法定雇用率を達成している企 業は何パーセントぐらいかなとか、そういう趣旨ではなかったんですか。 ○笹川委員  5%というのは、大変高いですね。その理由がどこにあるのか。 ○座長  そういう趣旨ですか。 ○指田氏  5%の理由ですか。これは、あまり乱暴なことを言うと怒られてしまうのですが、ドイ ツの場合は、かなり政策的なものがございます。社会法典では、実は、2000年までは6% だったわけです。今は5%にしておりますが、実は参議院の同意があれば、10%から6% (※工藤コメント5%では?)の範囲で、法規命令で変えられるんです。つまり、障害者 の失業状況を見ながら、政府、議会がこれはまずいという時には、少し雇用率を変えて いく。そういった政策的な要素がかなり強いといわれると思います。一時的に、例えば、 97年のソントンというイギリスのヨーク大学の学者がまとめた文献などによりましても、 当時は6%の雇用率でしたが、実際に障害者がそれだけいるかというと、先ほど申し上げ たように、5.5%しかいないわけですね。ですから、先ほど申し上げたのは、15歳から64 歳までの人口5513万人のうち障害者が441万人で、8.0%。うち重度の者は306万人で、5.5 %となっています。この5.5%の中には、どうしても就業できない障害状態の方もいらっし ゃいます。ですから、その意味では、5%というのは、かなりハードルが高いのではない かと思います。今、数字を持ち合わせておりませんが、多分3ピリオドいくつか4%ぐらい の達成率だったと思います。 ○座長  それでは、川崎委員どうぞ。 ○川崎委員  同じく雇用率について伺いたいんですけれども、我が国におきましては、大変に障害 者の雇用につきましては三障害かなり足並みが揃っていないといいますか、特に私は精 神障害者の方なんですけれども、精神障害者の雇用というのは、大変に低いといいます か、困難な状況にあります。現状でも、一般雇用している方はかなり少なく、厚労省の データでも、大体の概数ですけれども、身体の人が100万台ですと、知的が10万台、精 神が1000台というような数字が出ておりまして、精神の人が大変に就労しづらい。 現時点でも、福祉就労に甘んじている方が多いんです。後ほど出していただけると思い ますが、この達成度の中で、障害別に、ドイツにおいてはどのような状況になっている かということを1つお聞きしたいと思います。  それと、ここにドイツにおける合理的配慮が掲げられておりますけれども、実際、精 神及び知的の方に対しては、マンパワーといいますか、人的な支援がとても私は必要だ と思っています。何かこの中にはあまり強く出ていないような気がいたしまして、その ようなところは、ドイツでは具体的に精神の方が雇用に繋がっているかということを少 しお聞きしたいと思いました。 ○指田氏  よろしいでしょうか。まず、精神障害者及び知的障害者の方々の就業状況につきまし ては、申し訳有りませんが、今数字を持ち合わせておりませんので、後ほど事務局の方 に提出したいと思います。  もう1つの、マンパワーの合理的配慮についてですけれども、これにつきましては、 確かに81条の中で人的支援のことが謳われておりますが、この他に、実は、日本でいう ところの援助付き雇用、サポーティドエンプロイメントに相当するものがドイツでは実 現しております。社会統合プロジェクトというものがありまして、ここで一般労働市場 での雇用が困難な重度障害者の就労を可能にするための職場を用意して、就労援助者に よる支援、それから、企業内外の職業教育、そして、就職紹介の援助を実施する。こう いったことが行われております。  また、先ほど松井委員からもご質問がありましたけれども、助成金の使い方ですけれ ども、確か2004年だったと思いますが、これも後でまた調べますけれども、「ジョブ4 000プログラム」というのがありまして、政策的に、障害別に、こういう人を1,000人、 こういう人を何千人という形で、合わせて4000人ですね。例えば、訓練課程に入れるの を1500人、一般の労働市場に向かって就職させるのを1200とか、例えば、そういった具 体的な数値目標を出して、それで実現を図る。こういった政府のプログラムがあります。 こういった点で、具体的な障害者の雇用の促進ということについては、ドイツでも様々 な手法が採られているといえると思います。 ○座長  他にございますでしょうか。今井委員どうぞ。 ○今井委員  今井です。よろしくお願いします。数字の確認なんです。けれども、先ほど15歳から 64歳の306万人が、労働人口の中の重度の方ということですね。その中で、失業者が15 万人で、就業者が188万人ということでした。そうしますと、合計して、200万人ぐらい しかなりませんので、残りは何なんですか。 ○指田氏  これは、私の方の点字の関係でよく判読ができないんですが、50%が自立というふう になっているんです。自立という50%というのは、多分、自営ではないかと思います。 ○今井委員  そうですか。自営の人は就業しているわけですから。 ○指田氏  これは雇用だけではなくて、就業者とあったので、これはちょっと後で確認しておき ます。 ○今井委員  要するに、それ以外にも何かカテゴリーがあるのんですね。 ○指田氏  あります。 ○今井委員  就業でもない、失業でもないもの。 ○指田氏  そうです。そういう中間のものが50%ということです。 ○今井委員  就業というのは、雇用関係を結んでいる人という意味ですか。 ○指田氏  いや。雇用関係プラス自営も入ります。 ○今井委員  分かりました。では、後日で結構ですので、よろしくお願いします。  それから、2点目は、障害者が労働人口の中に441万人とおっしゃいました。うち重 度が306万人。この差は、障害者ではあるが、重度ではない人。これはどういう形で保 護されるのんでしょうか。 ○指田氏  障害者は441万人で、あとは306万人です。これは、実はまだ別なプログラムがござい まして、先ほど重度障害者は50%以上と申しました。それから、同等とみなされるもの が30から50の間です。それ以外に、30より下回っている人も、一時的にカウントに入れ ていこうということがあったように思います。ですから、どのような施策を講じている か、ちょっと詳しく分かりませんが、多分、この障害者の441万から306万を引きますと、 135万ですから、この人たちは障害が軽い人たちと、あとは重複が考えられますね。 ○今井委員  そういう人たちに対する法的な保護の体系はどのようになっていますかというのが質 問なのですが。 ○指田氏  それは、今回お配りした資料の方に書いてあるのですが、間違って応えてもいけませ んので、後で調べさせてください。 ○座長  部長、どうぞ。 ○高齢・障害者雇用対策部長  重度障害者については、日本の場合の障害者とドイツの場合の重度障害者というのは、 これは精密に比較しなければいけないのですが、やや近い部分があって、ドイツでいう 重度でない障害者の方というのは、日本でいうと、日本の障害者手帳の対象にならない ような程度の障害者の方も結構入っているというふうに思われます。ただ、精密に日本 の障害者手帳があったら、重度障害者と同じかというと、そこまででもないんですが、 日本でいうダブルカウントの重度障害者と同じ感じで重度障害者と捉えられると、ちょ っと誤解があるかなというふうに思いますので。 ○指田氏  そのように思います。ドイツの場合は、リストがあって、そのリストに該当するかし ないかということで判定していますので、ある意味では医学モデルですけれども、日本 のものとうまく対応するのは難しいようです。 ○座長  どうぞ、輪島さん。 ○輪島委員  同じような質問です。趣旨は今井さんと同じで、8200万人の人口の中のいわゆる重度 障害者の割合が864万人で、10.5ですから、その重度障害者の定義というものをお伺いを したかったんですけれども、もう1度文書で分かるように、もしくは日本の制度とどう リンクするのかを教えていただければと思います。これは事務局にお願いをしたいと思 います。  それで、資料の8ページ目ですけれども、そうなると、(3)のドイツの特徴の、重度障 害者のみを対象としているというところの理解をしたいということと、それから、上の (1)、(2)、(3)で、事業主にとっての課題というところの課題、それから、極端な出費の出 費というところの極端ということですね。ここに、何をもって課題なのか、何をもって 極端なのかというスタンダードはあるのか。以上です。 ○指田氏  これについては、やはり裁判例とか、そういったところを調べていかないと、なかな か難しいものがありまして、経済的な負担というものと、もう1つは、事実上事業所の 規模によっては、人をつけたり、職場を改善するということができない場合があります。 費用の面だけでなくて。そういった場合も、やはり事業規模ですとか、そういったとこ ろから見て、課題かどうかという判断があり得ると思います。これについては、まだ資 料が十分ないものですから、すぐにはお答えできない状態でございます。 ○輪島委員  ありがとうございました。 ○座長  どうぞ、花井委員。 ○花井委員  花井と申します。ドイツの場合は重度障害者が雇用率の算定に入るということですが、 そうしますと、重度でない障害者の雇用を逆に企業が避けるというような問題は起こっ ていないのかどうなのか。企業のカウント数を上げていくために、重度の比較的軽度の 人を雇っていくというようなことはないのかどうか、教えていただけたらと思います。 ○指田氏  企業行動については、研究的な視点からはまだデータを集めたことはないものですか ら、分からないんですけれども、確かにご指摘のように、軽度の障害者を雇って雇用率 を達成してしまうということは起こり得るとは思います。ただ、その点で、では何パー セントの企業がそうなっているかということについては、数値的なものは把握しており ません。今後の研究課題とさせてください。 ○座長  よろしいですか。では、松井委員。 ○松井委員  前回の笹川委員からの質問にも関連するんですけれども、ドイツの場合、いわゆる作 業所で働いている人たちに対して、企業から発注する場合に、いわゆる雇用率にカウン トするという仕組みになっていますよね。それは、どの程度カウントされているのかと いうようなことは分かるんですが、あれは付加金で調整しているということかも分かり ませんけれども、どうなんでしょうか。 ○指田氏  ドイツの場合の制度ですけれども、例えばある企業が負担調整付加金を1万ユーロ払 わなければいけないとします。その企業が障害者授産所、昔は盲人授産所だけだったん ですけれども、そこに発注をします。そうしますと、払わなければいけない負担調整付 加金を50%まで免除できる。つまり、盲人授産所の方から代金とかの請求がきます。こ れに沿って、50%まで負担金を免除できるというような規定がございます。従って、こ れは雇用率の達成にはカウントしておりません。 ○座長  他にございますか。岩村委員、どうぞ。 ○岩村委員  1つ、コメントのような感じなんですが、障害者の、重度障害者の先ほどの議論につ いては今日お配りいただいた資料の4ページの真ん中辺りの注のところで、指田さんの 方で30から50というパーセントの障害程度というのは、おそらく日本の障害等級でいえ ば3級程度ではないかということで、注記していただいています。従って、30%を切るも のについては、先ほど岡崎部長からもありましたように、完全にマッチは当然しないと しても、日本でいうと障害者手帳の所持者ということにはならない。あるのか、多いの かも分かりませんが、そういうことになるでしょう。ですから、重度といっても、多分、 日本でイメージされる重度とドイツでイメージされる重度とは、ちょっとイメージが違 うということは、今日の指田さんの資料からも分かるのではないかと思います。  それから、これは私もちょっと完全に理解したのかどうか分かりませんが、今日の報 告をまとめてみますと、おそらくドイツの場合も差別の禁止というのは、EUの指令の動 きを受けて、非常に最近になって入ったものである。それから、もう1つは、合理的な 配慮ということについても、これも私がもしちゃんと理解をしていればということなん ですが、やはり1990年代というよりは2000年頃に入って来たというような理解でよろし いのかどうかなんですが。一番最後の点はどうなんでしょうか。 ○指田氏  特に最後の点ですが、これにつきましては、規定の仕方が義務規定から権利規定に変 わったというようなことで、これは多少EUの影響を受けていると思いますが、やはり解 釈としましては、74年辺りからずっと同じような規定がありますので、適切な配慮とか、 適切な措置とか、そういったことは、以前からあるものとして理解されてよろしいかと 思います。それを権利として根付かせるという形をとったかとらないか。ここら辺の違 いが、この最近10年ぐらいの変化かなと思われます。 ○岩村委員  そうしますと、合理的配慮というものを権利というか、そういう形にしたというのが この10年ぐらいだというふうに理解しておけばよろしい。ただ、権利というのは、具体 的に何を意味するかというのは、そこはまた法的にはちょっとややこしい議論があるの かなという印象を受けました。  それと、そういう意味では、多分、権利という形で構成していったということからす ると、先ほどちょっと指田さんもお答えに悩まれていましたけれども、多分まだそれほ ど何が具体的な配慮の内容なのか、特に、障害者の側が請求、主張できる配慮の内容な のかということについては、私はどっちの事情もよく分からないんですけれども、こう した何か具体例がたくさん蓄積されているという、あるいはガイドラインみたいなよう なものが、法律の規定よりももうちょっと詳しいガイドラインのようなものがあるとか ですね。具体例が判決だけではなくて、行政の実例とかというようなことで、蓄積され ているというようなところまでは、まだいっていないというふうに理解してよろしいの かどうか。 ○指田氏  その点が、私どもとしても限界がありまして、多分、ドイツは先ほど申し上げたよう に、30年前から同じような規定を運用しているわけです。従って、その合理的配慮に似 たものを職場適応措置、あるいは適切な配慮として実施しているわけですから、それな りに紛争はあったはずなんですね。ですから、それを当時の連邦雇用庁、今は連邦雇用 機構ですね。こちらが当時かなりお金を配分していましたので、当然様々な雇用啓発の パンフレットと一緒に、どんな配慮が望まれているかなどについては、資料があるはず です。ただ、それを私どもがキャッチできていないということで、少し歯がゆい思いを しております。大変中途半端なご報告で申し訳有りませんが、今後課題として取り組み たいと思います。 ○岩村委員  その手の調査が非常に困難であるということは、よく知っておりますので、ありがと うございました。 ○座長  では、最後に、今井さんどうぞ。 ○今井委員 この点も調べ難いと思うのですが、では、重度とか、障害者以外は合理的配慮をしなく ていいということではないと思うのです。そこで、一般の人は何によって守られている のかがまずあった上で、障害者についてこうなっていると思うので、そこの関係につい て、どういうご意見をお持ちですか。 ○指田氏  つまり、一般法における労働者の地位ですね。それと、障害をもつ労働者の地位とい うことですね。当然これは、調査は十分ではないんですけれども、ドイツでは労働者の 地位に関しては、EUの指令も含めて様々な国内法が整備されておりますので、その中で、 例えば民族の違い、性別による違い、こういったことも含めて、障害とは関係なく、そ の他の差別事由となり得る、そういったファクターがありますので、こういった点につ いては、当然いろんな法律があって、その中で対応していると思います。あと、労働者 の、例えば労働条件、それから労働安全衛生、賃金などは最低賃金だとか、そういった ことも当然含まれていますので、そういった法律で守られた上で、更に障害者について は別な法体系が被さっているという理解ができると思います。 ○座長氏  それでは、この辺でドイツの報告は終わりにさせていただきます。指田さん、どうも ありがとうございました。指田さんはご都合がございますので、これでお帰りになりま す。  それでは、続きまして、フランスの合理的配慮について、永野さんからご説明をお願 いしたいと思います。 ○永野氏  東京大学大学院で博士課程に在籍しております永野です。どうぞよろしくお願いいた します。では、フランスの障害者雇用制度について説明していきます。  フランスの障害者雇用制度は、差別禁止原則と雇用義務制度の二本立てとなっており ます。両制度について説明していきたいと思いますが、その前に、フランスの障害者雇 用の全体像を確認しておきたいと思います。  まず、障害者雇用政策の対象となる障害労働者の定義ですが、フランスでは労働法典 L、323-10条に定義が置かれております。その定義によると、フランスでは、身体的、 知的、精神的機能、または、感覚器官の機能の悪化により雇用を獲得し、維持する可能 性が現実に減退している全ての者、これが障害労働者とされております。この障害労働 者認定は、障害者自立権利委員会という委員会が行うことになっています。  次に、このように定義される障害労働者が働く場合に、どのような道があるのかです が、フランスでは、自営の場合を除くと、次の3つの道があります。つまり、(1)通常の 民間企業、公的部門での労働、(2)適応企業での労働、そして、(3)労働支援機関、以下、 エザット(ESAT)と呼びますが、ここでの労働です。これらのうち、(1)と(2)については、 通常の労働市場での労働とされ、労働法典の適用があります。(2)の適応企業は、従業員 の80%以上が障害者の企業です。労働能力の低減した障害者を多く雇用することから、 国からの助成がなされることになっていますが、通常の労働市場での労働に分類され、 一般の企業と同列で、経済競争にさらされることになっています。他方で、(3)のエザッ トは、社会福祉、家族法典の定める医療福祉施設です。様々な職業活動を提供すると同 時に、医療・福祉的な支援や教育的な支援も提供しています。エザット(ESAT)での労 働はいわゆる福祉的就労ということができます。ここでの労働は、通常の労働市場での 労働との対比で、保護された環境での労働とされ、安全衛生等に関する一定の規定の他 は、労働法典の適用がありません。  障害者が通常の労働市場で働くのか、保護された環境で働くのかは、障害者権利自立 委員会が、理由を付した上で決定することになっております。それぞれで働いている障 害者の数は表で示しました通りです。フランスでも求職中、失業中の障害者が多いこと が問題視されております。なお、今から説明します差別禁止原則と雇用義務制度は、基 本的に(1)の通常の労働市場に関するものです。以下では、まず差別禁止原則と雇用義務 について説明し、両者の関係について、最後に言及したいと思います。  それでは、まず差別禁止原則です。フランスでは1990年7月12日の法律によって、障 害と健康状態を理由とする差別の禁止原則が制定されました。しかしながら、同法の定 める差別禁止原則は2000年のEC指令の要請を完全には満たしておりませんでした。です から、2005年の障害者関連政策の大改正の中で、この点についても検討が行われ、新た に合理的配慮という概念が導入されることとなりました。EC指令のフランス語版では、 amenagement raisonnableという用語が使用されましたが、国内法化に当たって、コン セイユ・デタの決定によって「適切な措置(mesures appropriees)」という言葉が使 用されることとなりました。意味は、アメリカ法にいうリーズナブル・アコモデーショ ンとほぼ同じと考えてよいと思います。以上が、フランスで障害を理由とする差別禁止 原則が導入され、その後、適切な措置概念によって、差別概念が補完された経緯です。  それでは、次に具体的な内容を見ていきます。障害に関する差別禁止原則は労働法典 L、122-45条で定められています。この規定は、雇用における差別禁止原則を定める一 般規定で、同条で他の事由による差別も禁止されております。同条が禁止しているのは、 健康状態や障害を理由とする募集手続きや企業での研修、職業訓練からの排除、懲戒、 解雇、そして報酬や職業訓練等における直接的または間接的な差別的取り扱いです。障 害の種類や程度についての限定はありません。なお、以上は労働法典が禁止するもので すが、他に刑法典において、障害を理由とする採用の拒否や懲戒、解雇、そして健康状 態や障害に依拠する条件を募集や研修、職業訓練の申し込みに付けることが刑罰の対象 とされております。採用拒否は労働法典では救済されませんが、刑法典により罰則が加 えられることとなっております。また、差別禁止原則の適用に関して、企業規模を限定 する規定はなく、全ての使用者に適用されるということになっております。  以上のような内容の一般規定に対し、障害を理由とする差別には特別規定が置かれて おります。まず、労働医によって確認された労働不適性に基づく取り扱いの際は、それ が客観的かつ適切で、必要なものである限り、差別には当たらないとされています。こ の医学的不適性に基づく採用の拒否や解雇の場合には、刑法典の適用もありません。  次に、平等取り扱いを促進するために、障害者に対してなされる適切な措置も差別に は該当しないとされております。逆に、適切な措置の拒否は差別を構成し得るとされ、 使用者が過度な負担が生じる場合を除き、具体的な状況に応じて、障害者に、資格に応 じた雇用や職業訓練が提供されるよう、適切な措置を講ずることとされています。この 2つは、他の理由による差別には見られない障害を理由とする差別の禁止に特有な規定 です。  それでは、次に、適切な措置の対象となるものを確認していきます。適切な措置の対 象となるのは、障害者権利自立委員会によって障害認定を受けた労働者、そして、10% 以上の恒久的労働不能をもつ労災年金の受給者、労働稼得能力が3分の2以上を減少し ている障害年金の受給者、障害軍人年金の受給者、ボランティア、消防士の障害年金、 障害手当を受給している者、そして、障害者手帳の保有者、成人障害者手当の受給者で す。これらに該当する者は、次に説明します雇用義務の対象者でもあります。  では、次に、適切な措置の具体的内容を見ていきたいと思います。具体的な内容とし て、労働法典は非常に抽象的ですが、以下のものを挙げております。まず、1つ目とし て、労働環境を適用させることです。これには機械や設備を障害者が使用できるものに すること。作業場所や就労場所の整備。ここには、障害労働者の必要な個別の介助や設 備といったものが含まれます。そして、作業場所へのアクセス保障が含まれております。 そして、これらにかかる費用は助成の対象となるとされております。  それから、2つ目として、労働時間の調整があります。これにより、障害労働者は要 求に応じて個別に労働時間を調整してもらうことができることとなっております。なお、 この調整は障害者を介助する家族や近親者にも認められております。  以上が労働法典が定めているものですが、非常に抽象的な定め方となっております。 フランスには、適切な措置の具体的内容を定めるデクレ等、政令等は存在しておりませ ん。それは、適切な措置の内容は何か決まった定型があるものではなく、障害者毎に個 別に検討されるべきという考え方が背後にあるためだと考えられます。しかしながら、 事例の蓄積はなされつつあります。例えば、フランス障害者評議会が2006年にまとめま した報告書や、これから説明いたしますアルデという人権救済機関の報告書などで、適 切な措置に関する事例が提示されております。これら具体的事例については、資料の最 後に翻訳して付けておきましたので、参考になさってください。  それから、次に、障害者の負担が過度な負担か否かの判断ですが、フランスでは過度 な負担が生じるか否かの判断において、使用者への様々な助成が考慮されるということ になっています。従いまして、こうした助成を考慮してもなお適切な措置の費用が企業 の負担能力を超えている場合にのみ過度の負担が生じているとされます。なお、助成の 原資は主として雇用義務制度で徴収される納付金ですが、助成は雇用義務を負わない企 業に対しても提供されます。つまり、助成は企業の法的形態や企業規模等に拘わらず提 供されることになっています。  助成は主としてアジフェフというところが行うことになっていますが、アジフェフに よる助成には、例えば、適切な措置として法が掲げる機械や設備の適用等にかかる費用 に対するものがあります。また、フランスでは、2005年法によって、障害者への最低賃 金の保障が規定されましたが、これによって企業が負担することになった部分、つまり 労働生産性が低減している重度障害者への最低賃金保障によって企業が負担することに なった部分についても助成がなされることになっております。  それでは、最後に差別禁止の実効性確保のための手段を確認いたします。適切な措置 の拒否は障害を理由とする差別に当たりますので、訴えの対象となります。まず、司法 上の効果ですが、労働法典に違反する措置や行為、例えば募集手続きや企業での研修、 職業訓練からの排除、懲戒、解雇等は全て無効とされます。ですから、例えば、解雇の 無効を求めて労働審判所へ提起することができます。また、差別により生じた損害につ いて、損害賠償請求を行うこともできます。なお、民事訴訟の場合には、差別の被害者 の立証責任の軽減が定められております。この立証責任の軽減によって、原告、差別を 受けた側は、直接差別あるいは間接的差別の存在を推認させる事実を提示すればよく、 被告側が、当該措置は差別とは関係のない客観的な事実によって正当化されることを立 証しなければならないということになっております。  次に、差別行為のうち、採用の拒否や懲戒、解雇、そして、健康状態や障害に依拠す る条件を募集や研修、職業訓練の申し込みに付けることについては、3年の拘禁刑およ び45,000ユーロの罰金の対象となります。また、法人が処罰の対象となる場合には、個 人に対する罰金の5倍の罰金、そして、差別が行われた職業的・社会的活動の禁止、司 法監察の実施、事業所の閉鎖、公的取引からの排除等の罰則が化せられることとなって おります。全ての差別的行為が刑罰の対象となるわけではなく、刑法典に定めのないも のについては民事訴訟での救済のみとなります。刑事訴訟の場合には、他の刑法違反の 場合と同様に、有罪判決が確定するまでの無罪推定や証拠の自由の原則等の証拠に関す る法のルールが適用されるということになっております。立証責任の軽減は、刑事裁判 では適用されず、立証責任は検事の側にあるとされています。  それから、以上のような裁判所への提訴の他に、権利救済機関であるアルドゥ HALDE (高等差別禁止平等機関)への提訴も可能です。同機関は、2004年12月30日の法律によ って創設されました独立行政機関で、法律やフランスが批准した国際条約で禁止された 全ての直接的・間接的差別について、裁定を下す権限を有しております。差別の被害者 なら誰でも、HALDEへの提訴ができ、国会議員や欧州議会フランス代表を介した提訴も 可能とされております。また、設立後、5年以上の差別問題に携わる非営利組織も被害 者の合意を得て、被害者と共同でHALDEへの提訴をすることができます。 さらに、被害者の反対がないことを条件として、HALDEが職権で差別事件を扱うことも 可能とされております。そして、HALDEはこうした訴え、申し立てを受けて、調停の斡 旋や和解案の提示、勧告の作成を行うことを任務としております。発足以来HALDEへの 提訴は増え続けており、平均すると1日に15件の申し立てがあるとされています。うち、 障害、健康状態に関するものが21%を占めるとされております。  以上が、フランスにおける差別禁止原則の概要です。それでは、次に、雇用義務制度 について説明いたします。フランスでは従業員数20名以上の事業所を対象として、6%の 障害者雇用義務が課されております。この雇用義務制度も、2005年2月11日の法律によ っていくつか改正されましたので、その点に言及しつつ制度の概要を説明していきたい と思います。  まず、6%の数値ですが、1987年法で採用されたものです。これは、2005年法でも維持 されましたが、その計算方法は2005年法によって大きく修正されることとなりました。 まず、2005年法以前は分母の従業員数から除外されていた特別の適性を必要とする職種 というものが分母に参入されることになりました。つまり、除外率制度が廃止されたと いうことです。また、障害者1人を最低1単位として障害の重度や年齢等により1.5倍、 2倍等と計算する、いわゆる重複カウント制度も2005年法によって廃止されました。し かし、確かに、これらの制度は廃止されたのですが、納付金額の計算において除外率制 度や重複カウント制が持っている効果と同じ効果をもつ計算方法が導入されております。 ですから、これら2つの制度の廃止をどう評価するかは、納付金額の計算の方法と合わ せて行わなければなりません。その計算方法については、この後の履行方法のところで レジメに提示しております。  では、まず雇用義務の対象となるものを確認しておきます。雇用義務の対象となるの は、先ほど確認いたしました適切な措置の対象者に、戦争犠牲者の遺族を加えたもので す。戦争犠牲者の遺族が加わるのは、雇用義務制度が元々傷痍軍人を対象とする制度と してスタートしたという沿革によるものです。なお、障害者手帳の保有者と成人障害者 手当の受給者は2005年法によって新たに加えられたカテゴリーです。これらは、障害率 80%以上の重度障害者を対象とする制度ですから、2005年法により重度障害者も当然に 制度の対象とされることになったということができます。なお、雇用義務の対象となる か否かは、任意のものであり、障害をもっていても雇用義務の対象とならず、雇用義務 の制度外で働くことが可能とされております。  次に、雇用義務の履行方法を確認いたします。まず、当然ですが、雇用義務は上記対 象者を直接雇用することで果たされます。この他、フランスでは以下の4つの方法が定 められております。  1つ目は、適応企業やエザット(ESAT)といった保護労働セクターとの請負契約等の 締結です。これら保護労働セクターに仕事を発注することで雇用義務を果たすことがで きることになっております。ただし、この方法による履行は雇用義務の50%までとされ ております。2つ目は、研修です。150時間以上の研修での障害者の受け入れによるもの です。この方法による履行にも上限があり、全従業員数の2%までとされております。そ して、以上の方法によってもなお6%に達しない企業に対しては、3つ目の方法として、 アジェフィフ(AGEFIPH)という機関への納付金の支払いが課せられるということにな っております。納付金額は雇用しなければならない障害者数、障害者の不足数に応じて 決定されますが、その際、特別の適性要件を要する雇用や、企業の雇用努力、重度障害 者認定、そして企業規模等が考慮され、納めるべき金額の調整が行われるということに なっております。計算方法は次の通りです。  まず、不足する労働者数が、雇用すべき障害者数マイナス6カ月以上在籍する障害者 数プラス雇用みなし分の式で求められます。例えば、従業員数300名、うち20名はトラッ ク運転手の事業所で、雇用義務対象者を7名雇用し、保護労働セクターと最低賃金(SMIC) の8,000時間分の契約を締結(障害者を4名雇用しているのと同等)している場合を想定 します。この事業所が雇用しなければならない雇用義務の対象者は18名です。ですから、 不足数は、「18-(7+4)=7」で、7名となります。  ここから納めるべき納付金の調整が行われていきます。まず、雇用維持や直接雇用等 の雇用努力、重度障害者の雇用が考慮されます。例えば、26歳未満や51歳以上の者を雇 用していれば、0.5の引き算が認められます。また、重度障害者を雇用していれば、マ イナス1が認められます。具体的に見てみますと、次の通りです。  事業所で雇用された雇用義務対象者7名のうち、1名が54歳で重度障害者であったとす ると、この人の分について、1.5の引き算が認められます。そして、もう1人が、長期失 業後に雇用されていた場合、そして、さらにもう1人が適用企業からの退出後に雇用さ れていた場合、それぞれマイナス1が認められ、不足数は3.5となります。  さらに、ここから、特別な適性を有する雇用についての調整が行われます。特別の適 性を要する雇用の割合が80%未満の場合には、減額計数は、「1-(1.3×特別の適性を要す る雇用の割合)」で求められるということになっております。この例では、特別の適性を 要する雇用の割合は0.66%ですから、この場合の減額計数は0.91ということになります。 ですから、ここの段階で、不足数は、「3.5×0.91」で、3.18となります。そして、最後 に、企業規模毎に定められた倍率が掛けられるということになっております。ここは、 事業所の規模ではなく、企業規模で倍率が決まります。  この例での事業所が、従業員数700名の企業に属している場合、納付金の額は、「3.18 ×500×時間当たり最低賃金」ということで、130,149.30ユーロということになります。 なお、この倍率の最高値は、つまり600倍の部分ですけれども、これは2005年法によって 500から600倍に上げられております。  こうして見ますと、除外率制度の廃止と重複カウント制の廃止というのは、どこまで 効果があるのかということになります。  それから、雇用義務の履行方法については、最後に1つ残りました労働協約の締結に よるものがあります。これは、以上4つの方法による履行とは独立したもので、障害者 のための1年または数カ年プログラムを定める労働協約を締結していれば、6%の雇用義 務を果たしているということになるというものです。2007年10月の段階で、97の企業が この方法によって雇用義務を果たしておりました。  最後に、雇用義務制度に実効性を持たせるための方法について確認いたします。上記 の納付金の他に、フランスでは制裁的納付金や罰則、罰金の制度も用意されております。 まず、3年以上にわたって雇用義務対象者を1人も雇用しておらず、保護労働セクターと の契約もしておらず、そして、研修による受け入れもしていない企業、または、前述の 労働協約を適用していない企業には、企業規模に拘わらず、最低賃金の1,500倍の納付 金が課せられるということになっております。これは、2000年法により導入されたもの で、2010年から適用される予定となっております。また、この額は、労働者を最低賃金 で1年雇った時にかかる費用と等しいとされております。  次に、いかなる方法によっても雇用義務を果たしていない使用者、つまり納付金の支 払いもしていない企業には、制裁として、最低賃金の1,875倍に当たる額を国庫に支払う ことが課せられています。制裁的納付金の支払先がアジフェフという機関なのに対して、 これは国庫に支払われるものであるという点に注意が必要です。また、公的機関の行う 入札では、雇用義務の遵守状況を示す文書の提出が要求されることもあり、雇用義務を 遵守していないということは、公的機関の行う入札への参加拒否事由にもなるとされて おります。  それでは、最後に、差別禁止原則と雇用義務制度の関係を簡単に説明しておきます。 1990年以降、フランスでは雇用義務制度を障害者差別を積極的に是正するポジティブア クションと捉え、整合性を確保してまいりました。両制度は基本的に相対立するものと は考えられてはおらず、むしろ相補的に機能するものと考えられております。両制度の 間には、まず雇用義務制度によって集められた納付金が差別禁止原則における適切な措 置にかかる費用への助成金となるという関係があります。納付金の支払いが適切な措置 への助成となり、差別禁止原則の履行に貢献すると同時に、それによって生じた新たな 雇用が、雇用義務の達成にも貢献するという構造がここにはあります。  それから、両者の間には、それぞれの欠点を補い合うという関係が見られます。まず、 差別禁止原則は基本的に事後的救済を主としていますので、単独で、現実に、障害者の 雇用を促進していく効果は弱いとされております。この差別禁止原則の弱点に対しては、 納付金等の金銭的インセンティブを与えることで、強制力をもって使用者に障害者の雇 用を課す雇用義務制度が効果を発揮しております。  また、差別禁止原則のみでは雇用を得ることが難しいもの、例えば、労働医によって 労働不適性とされた者等も雇用義務制度の存在によって雇用を得る可能性をもつことが できております。  次に、割り当て制度については、しばしば障害者の特権的地位や障害者が感じるスデ ィグマが問題になりますが、フランスでは雇用義務の枠外で雇用されることを可能とす ることで、その問題をある程度解消することが図られています。そして、その場合にも、 差別禁止原則は適用され、障害者が差別によって雇用にアクセスできないという状況を 防止する役割を果たしております。また、フランスでは、雇用義務と障害者専用の雇用 やポスト等を区別し、障害者専用の雇用やポストは理論上差別禁止原則に違反するとい う構成も採られております。これも、障害者が恩恵的な障害者専用雇用を与えられるこ とで感じるスティグマを解消することに貢献しております。このように、フランスでは 雇用義務制度をポジティブアクションと捉えた上で、両制度を相補的に機能させ、障害 者雇用の更なる促進が図られております。  以上です。 ○座長  ありがとうございました。それでは、ご質問をお願いします。どうぞ、松井さん。 ○松井委員  松井ですが、2つばかり聞きたいんですけれども、1つはアルドゥというのが新しくで きましたよね。アメリカの例でいうと、機会均等委員会でほとんど処理をして、裁判に いくのは1%から5%ということになっていますけれども、フランスの場合、まだできて新 しいから、その比較はできないと思いますけれども、その辺はどうなのかということで す。  それから、もう1つは、アジフェフが納付金を集めているわけですけれども、その納 付金で合理的配慮に対する助成を全部賄えるのか。あるいは、税金が入っているのかど うか。それと、企業が対応するに当たって、いわゆるサポートといいますか、単なる助 成金をやるだけでなくて、ノウハウについて、何か企業に対する支援体制というか、そ ういうシステムがあるのかどうか。  それから、もう1つ次いでに言わせていただければ、労働医によって確認された労働 不適性に基づく取り扱う差別はいいというふうになっていますね。その労働医が労働不 適性という判定をした場合に、不服申し立てというか、本人としては納得できないとい う場合に、どういうところに不服申し立てができるのかということです。そこの3つを お願いします。 ○永野氏  ほとんど答えられないかも知れないんですけれども、アルドゥについては、本当にま だ発足して間もないので、やはりちょっと比較は難しいです。しかし、アルドゥが扱う 案件において、障害を理由とする差別というものは、非常に占める割合が大きくて、重 要視されております。これはもう少し時間が経つと分かってくるかも知れません。  それから、適切な措置に対する助成ですけれども、これは主としてアジフェフによっ てなされますが、他の共済組合や、そういった機関からもなされることがあります。あ と、労働不適性に対する不服がある場合、これについては私はまだ調べたことがないの で、ちょっと正確には答えられません。すみません。 ○座長  他にございませんか。 ○今井委員  どこかで説明があったのかも知れませんが、特別の適性を要するという言葉の意味が ちょっと分かりません。特別の適性を要する雇用という言葉が、日本語的によく理解で きません。 ○永野氏  これは、例えばなんですけれども、消防士だとか、救急車の隊員とか、一覧がありま して、こういう職業については特別の能力が必要ということです。 ○今井委員  能力ですか。 ○永野氏  能力というか、適性、attitudeと書かれています。 ○今井委員  適性という意味もありますね。視力がこのぐらい要るとか、色の識別の感覚がこうで なければいけないとか。 ○永野氏 典型的には飛行機の操縦士といったものです。 ○今井委員  いわゆる能力特性ですね。 ○座長  どうぞ。 ○花井委員  3点ほど教えていただきたいと思います。1つが、障害者権利自立委員会というのが判 定すると出ているんですが、どういうメンバーで、どういう機能を果たしているのか、 もう少し詳細が分かれば教えていただきたいということ。それから、ダブルカウントを 廃止したということですが、廃止した理由と、廃止したことによって何らかの問題なり 課題が生じていないのかというのが2つ目です。3点目が、フランスの場合、ICFに基づ く障害定義を採用したと聞いているのですが、そのことによって何が変わったのか。労 働能力の判定が変わったのか、障害の度合いが変わったのか。そこら辺、もしお分かり になれば教えていただきたいと思います。 ○永野氏  まず、障害者権利自立委員会ですけれども、この委員会は障害労働者認定を行うだけ でなく、例えば、成人障害者手当などの社会給付を行うか否か、そういったことを決定 する委員会となっております。構成は、正確には今申し上げられませんが、医師や障害 者の代表の方も入っていますし、行政官も入っています。それから、ダブルカウントの 廃止の理由ですけれども、これについて明確に書いて有るものは見たことがないのです が、人を数で数えるのは良くないというようなことを書いている論者もいました。ただ、 これは廃止されましたが、納付金の計算のところでは、結局カウントされるということ になっておりますので、それほど大きな影響があるとは思えないというのが、私の判断 です。それから、ICFについてですが、2007年に調査に出かけた時には、障害認定を する際の基準リストというものを、今まさに新しいものに変更しようと作成中だという ことでしたので、これからもしかしたら変わってくるかも知れません。 ○座長  それでは、川崎さんどうぞ。 ○川崎委員  適切な措置のところで、障害年金のところなんですけれども、ここですと、障害年金 受給者全員ではなくて、障害により労働稼働能力が3分の2以上減少していることを条件 とするとなっているんですけれども、この条件はどのような形で認知されるんですか。 障害年金受給者全員ではないんですね。 ○永野氏  障害年金の受給要件が、稼得能力が3分の2減退した60歳未満の被用者となっています から、障害年金を受け取っている人は自動的に雇用義務の対象に入ります。 ○川崎委員  条件として、障害年金を受給しているに繋がるんですね。分かりました。 ○輪島委員  1番目の点は、事務局にお尋ねした方がいいのかも知れませんが、資料の1枚目の労働 法典ですが、障害労働者の定義と書いてあって、いわゆる障害者の定義、労働者の定義 ではなくて、障害労働者の定義と書いてあります。日本国内の法律には、障害労働者と いう定義はないというふうに考えていいのかどうか。  2つ目の質問は、障害者権利自立委員会というのは、公的機関なのかどうか。どうい う機関なのか教えていただければと思います。  3点目は、次のページの(3)の義務制度の履行方法ですけれども、これはキャップがか かっていて、3%と2%ですので、直接雇用1%、(2)のところで3%、(3)のところで2%というよ うな組み合わせは可能なのかどうか。または、4番の、納付金だけで履行を確保するとい うことは可能なのかどうか。  それから、日本の国内法制では雇用の義務はかかっていますけれども、雇用の義務と、 それに違反すれば、指導、助言、それから企業名の公表という、いわゆる社会的制裁措 置と、それとは別に納付金制度がありますけれども、雇用の義務については、いわゆる 納付金だけで処理をしているのか。要するに、お金だけなのかどうかということをお伺 いしたいのです。  それから、最後に、IIIのポジティブアクションと雇用義務の関係ですけれども、これ はご意見を伺いたいんですが、特に均等法上のポジティブアクションというと、奨励策 というようなイメージがあって、おっしゃった点はよく分かるんですが、国内の感覚で いうと、雇用義務としてのポジティブアクションというのは少し強すぎるのではないか と個人的には思うのですが、そこの感覚はどうなのか。それが併存して、双方を補う点 だという考察はよく分かるんですけれども、一方のポジティブアクションという位置づ けにしては、雇用義務というのはつらいなという感じがするのですが、その点はどう感 じていますか。以上です。 ○永野氏  まず、障害者権利自立委員会ですけれども、これは公的な委員会です。それから、労 働医については、岩村先生にお任せして、3番目の雇用義務の履行方法ですが、もちろ ん先ほどおっしゃられたパーセントで雇用義務を果たすということは可能です。ただ、 納付金の支払いのみで雇用義務を果たしていますと、3年以上その状態ですと、制裁的 な納付金がかかるということになっております。もちろん、一番求められているのは、 直接雇用ですけれども、他の方法による達成でもかまわないということで、アジェフェ フ(AGEFIPH)が出している統計等では、この3つの方法、研修と請負契約と直接雇用、 この3つで6%を達成している企業の割合、そして、この3つで1%から6%を達成している企 業の割合、そして、納付金だけで果たしている企業の割合というのが、資料として出て きます。大体、6%をこの3つの方法で果たしているのが半分ぐらいで、あとの4分の1が 1%から6%、残りの4分の1が納付金だけということになっております。  雇用義務に違反した場合の社会的制裁ですが、私が存じ上げている限りでは、制裁と しては、この制裁的納付金の制度、国庫への罰金の制度、そして、公的取引への参加の 制限、この3つとなっています。  それから、ポジティブアクションか否かですけれども、これはフランスにインタビュ ーにいった時の印象ですが、障害者雇用において、ポジティブアクションを行うのは当 たり前ではないかというみたいな、そういう感じでした。 ○輪島委員  最後から2つ目のところですけれども、日本では、ハローワークに企業を呼んでいわ ゆる達成率指導をするわけですけれども、そういうようなスキームはないんですか。 ○永野氏  具体的にはよく分かりませんが、2010年から納付金でしか義務を果たしていない人に ついては、制裁的な納付金が課されることになっているので、アジェフェフ(AGEFIPH) をあげてキャンペーンが行われています。納付金以外の方法によって雇用義務を果たし ましょうというキャンペーンが張られています。 ○岩村委員  追加で、労働医ですけれども、労働医というのはこの自立委員会とは別のもので、フ ランスの場合は、医者の中の1つの独立した専門資格です。 ○輪島委員  産業医ではないんですね。 ○岩村委員  日本の産業医に相当しますが、これを行うには独立した免状が必要になっています。 大体は、開業していて、企業からは完全に独立しています。経済的にはちょっと分かり ませんけれども、企業の指揮命令は受けないという非常に独立性の強いものです。あと、 労働不適性というのは、これだけですとなかなか分かりにくいんですが、フランスある いはヨーロッパ一般に、ある仕事については、どういう能力と適性が必要かということ が非常に細かく決まっていますので、従って、「あなたは今までこの仕事をしてきまし たね。しかし、こういう障害になってしまったので、その仕事をすることはできません ね。」という、そういう意味での労働不適性ということになります。ですから、ありと あらゆる仕事ができないという意味ではなくて、ジョブディスクリプションが決まって いて、資格と連結しています。それができなくなったという意味での労働不適性という ことになります。先ほどの松井委員のご質問との関係では、多分、これは労働者の側が 差別をされているということで、使用者相手取って、労働審判所で争うとか、そういう ことになって、労働医との間でということには、多分ならないのではないかと思います が、これはあくまでも推測ですので、また永野さんにでも調べていただければと思いま す。  それと、輪島委員のご質問になった制裁の関係ですが、公表とか何とかというのは、 かなり日本独特のものだというふうに私は理解しています。ただ、フランスの場合は、 労働監督官の権限が非常に強いので、障害者雇用の領域で労働監督官がどの程度役割を 果たしているかというのは、ちょっとよく分からないところがあります。 ○永野氏  資料の提出を命令することができます。 ○岩村委員  もしそうだとすると、非公式ではあるけれども、駄目ではないかということをやって いる可能性はあるかなとは思いますが、ちょっとそこは明確には分かりません。 ○輪島委員  岩村先生に教えていただければと思いますが、ヨーロッパは結構労働能力ということ を判定します。日本は、いわゆる社会生活上こういうハンテ゛ィがあるからこういう障害で、 それが何級ですということで、それがそのまま障害者雇用促進法にコピーを持ってきて いるだけです。ここのところで言うと、雇用を獲得し、継続する可能性というところと は、全く違う障害認定を使っているわけで、そこは非常に違和感を感じるんですが、ど うなんでしょう。 ○岩村委員  多分、労働医のところの問題でお話ししていることとは、やはりちょっと違っていて、 例えば、実際の障害者の3分の2とかいうのは、それはトータルで見た時の、要するに、 いろいろな仕事ができるかどうかということを見た時の、3分の2以上の喪失という、そ ういう味方をしていると思います。 ○輪島委員  その3分の2は、社会生活上3分の2ではなくて、労働の分野での3分の2ですよね。 ○岩村委員  そこは、労働とは必ずしも特価していないんだと思うんですね。そこはパラレルじゃ ないですかね。 ○輪島委員  その専門家が、労働医が確認する場合。 ○岩村委員  そこは、狭い意味の労働ではないんじゃないかと思うんですけど。 ○座長  今の点については、今のところ情報もないし、輪島さんがそういう問題意識をもって おられるということでいいと思うのですけど。 ○岩村委員  向こうは、多分、そういう問題意識はそもそもない可能性があって、ちょっと正確に 対照して比較というのは難しいかも知れない。 ○座長  何れにしても、労働不能というのは、非常にベーシックな部分だと、輪島さんが言わ れた生活関連の能力もあるし、もう少し専門的になると、これができる、あれができる となるから、非常に重層的な関係だと思いますので。 ○輪島委員  違和感があるというのは、日本は社会生活上の障害認定しかもっていない、物差しが 1個しかないということです。 ○座長  ですから、それは、プラスの質問じゃないですよね。そういう問題意識をもっていら っしゃるということで。 ○岩村委員  あと、もう1点述べさせていただければ、その労働フォローとかいうふうに出てくる のは、労災年金と障害年金なんですね。これは、やっぱり労災とか障害年金というのは、 ここでいっている障害年金は社会保険の障害年金なので、元々要するに労働者というの を想定して、そして、稼げなくなるというのに着目して考えているというところが1つ ですね。他方で、成人障害者手当ということになると、これは非拠出制ということにな るので、労働能力とは直結しない話になります。 ○輪島委員  社会保障の財源が違うということですか。 ○永野氏  財源が違います。障害年金は疾病保険から出て、成人障害者手当の方は家族手当金庫 から出ることになっています。 ○岩村委員  家族手当金庫から出るんですが、国庫からの税金が何割でしたっけ。何割か入ってい るんですね。  別途と1点、質問させていただいてよろしいですか。雇用義務のところで、雇用率が6 %となっていますけれども、6%というのはどうして6%になったのか、何かはっきりとした 理由なり根拠があるのかどうか。もし分かれば教えていただきたいのですが。 ○永野氏  実は、これはあまりよく分かっておりません。ただ、1924年に傷痍軍人を対象とした 雇用義務制度が始まった時には、雇用率は10%とされておりました。しかし、それは高 すぎるということで、1987年に改正が行われた時に、6%に引き下げられました。立法資 料を見ておりますと、対象となる人数がこれだけいるという計算式等が示されて、大体 6%でしょうというような資料もあるんですけれども、今現在の状況で計算すると、6%に はとても及びませんので、87年の立法資料に書いてある計算式がどのような意味をもつ かというのがちょっと分からなくなってきています。 ○座長  どうぞ。 ○松井委員  先ほどおっしゃったように、様々な方法で雇用率はクリアできるんですけれども、向 こうで公表されている実雇用率、例えば6%に対して2.7%というのは、これは実際に雇用 されている人をカウントしたものがそうなんですか。それから、もう1つお聞きしたい のは、この履行方法で2番目の保護労働セクターというのは、適用企業と福祉雇用の両 方入っているんですよね。すると、実際にそこでどの程度の仕事がいっているのかとい うか、6%に対して、企業の中で、例えば、そういう形でいわゆる雇用をどの程度カバー しているかというのは分かるんですか。 ○永野氏  2004年のデータしかなく、法改正後のデータではないんですけれども、ダブルカウン ト等をしない現実の障害者雇用率は2.7%ということになっております。そして、その割 合ですけれども、アジェフェフ(AGEFIPH)が公表している資料も、先ほどのこの3つの 方法によって6%を達成した企業というのはデータを出していますが、その内訳となる資 料は私のところの手に入っていないので、そこはちょっと分かりません。 ○岩村委員  人数的には今日の参考資料の表1があるので、どの程度の、要するに総量に対して適 用企業とエザットがどの程度のウェイトを占めているかということ自体はアバウトな数 としては分かるんですね。個別企業でどうなっているかという、その割合までは分から ない。 ○座長  何か突然切ってしまうようで申し訳ないんですが、実は今日もう1つの議題がござい ます。永野さんはまだおられるでしょうから、もしご質問がございましたら、直接永野 さんにご連絡していただきたいと思います。今日のこの報告はこれで終わりにさせてい ただきます。永野さん、どうもありがとうございました。  それでは、引き続いて議題の2、その他がございますので、事務局から説明をお願い します。 ○事務局  先週金曜日、16日に新聞発表いたしました、平成19年度のハローワークを通じての障 害者の職業紹介状況のデータをご用意させていただいてございます。ざっとご紹介させ ていただきたいと思います。  平成18年度が就職件数4万件を超えたということで発表させていただいたわけでござい ます。参考資料1の2ページ目に総括表がございます。右から2つ目の列が就職件数でござ いますが、これが18年度、43,987件でございました。これが、更に19年度に伸びまして、 3.6%増ということで、45,565件ということになってございます。  中身を見ますと、例えば、身体障害者につきましては、例えば、三角が立っておりま すが、有効求職を、例えば、高齢の方で求職登録をしているだけのような方々につきま しては、今回、ハローワークの方では、実質的に求職者がどのぐらいあるのかというこ とを把握するということもありまして、ご本人の了解を得て、保留という形に変えさせ ていただいたということもございまして、大きな三角が立っております。そういうこと も受けて、紹介の方も3.7%の三角が立っているところでございます。それと比較しまし て、4ページ、5ページにございます、知的障害者の方、精神障害者の方の伸びは、引き 続き高いものがあるということでございます。知的の方の有効求職の7%の三角というの も、先ほど申し上げましたような整理をした結果と考えていただければよろしいかと思 います。やはり、一番大きな特徴は精神障害者の方でございまして、新規求職も有効求 職も急激な伸びを示してございます。ほぼ知的障害者の方の有効求職、新規求職と同じ ぐらいの数字のところまできました。これだけ、特に精神障害者の方の求職意欲という ものが高まっているということが、見ていただけると思いますし、それを受けまして、 就職件数も二桁増が続いているところでございます。  これから、ハローワークにおきましては、ご存知の通り、地域の社会資源と連携しま して、こういう精神障害者の方、あるいは知的障害者の方等、求職が伸びている方々の 雇用の促進と職場適応、安定というものを今まで以上に努めてまいりたいと考えている ところでございます。かなり簡単でございますけれども、昨年度の紹介状況についてご 紹介させていただきました。以上でございます。 ○座長  ありがとうございました。それでは、もう1つ報告がありますね。よろしくお願いし ます。 ○事務局  勤労者生活部勤労者生活課長の吉本でございます。参考資料の2に基づきまして、最 低賃金の適用除外制度から減額措置制度への移行についてご説明申し上げたいと思いま す。  最低賃金法につきましては、先の臨時国会で改正法が通りましたところですけれども、 この7月1日に改正法施行を控えております。新しい制度についてご説明させていただく 前に、簡単に現行法の概要でございますけれども、ご説明させていただきます。最低賃 金制度とは、国が法的強制力をもって賃金の最低額を定め、使用者に対してその金額未 満の賃金で労働者を雇用することを禁止する制度ということでございます。現在、適用 除外制度があるわけでございます。これは、同じように適用すると、雇用機会が失われ て、かえって労働者に不利な結果になるといったことから設けられておりました制度で ございまして、具体的には、そこの類型とあります方々を対象として設けられていると ころでございます。  ちなみに、件数といたしましては、一番上の障害者の方々につきましては3,700件余 りで、これは18年度1年間の許可件数でございます。その後の3つの類型はそれほど多く はございません。数件から数十件でございますが、続いて多いのが、断続的労働に従事 する者ということで、これが3,500件余りあるといった状況でございます。  ただ、法律上は適用除外制度ということでございましたけれども、運用上は減額の措 置をとっておりまして、適用除外の許可をいたします際に、附款という形で減額、支払 い賃金の下限となる額を定めるといった運用を行ってきたところでございます。  今回の改正の概要でございますけれども、今回の最賃法の改正は、最低賃金のセーフ ティネットの機能をより強化していこうということで、これまでも運用上は地域別最低 賃金が全国で定められておりましたけれども、法律上もそれをきちんと明確にいたしま して、あまねく全国で地域別最低賃金を定めるといったようなこと、また、違反した場 合の罰則を強化するといったことなど、機能の強化を図ったところでございます。そう した中で、適用対象につきましても、減額措置が可能であれば、適用除外というよりは できるだけ広範囲の方々を対象にしていこうという趣旨で、減額措置の特例といった形 にしたわけでございます。これによりまして、運用上は今までも減額措置ということで やっていたと申し上げましたけれども、あくまで適用除外の中での運用上の取り扱いで ございましたが、今後は、減額の特例の許可を受けた場合であっても、その額を違反す れば、直ちに罰則の適用となるということで、これまで以上に労働者保護が図られる形 になったというふうに申し上げられるかと思います。  具体的な運用でございますが、次のページをご覧いただきたいと思います。これまで も許可に当たりましては、例えば障害者の方々で申し上げますと、単に障害があること のみを理由にその許可をしているわけではございませんで、その障害によって著しく労 働能力の低い労働者について認めるといったような形で、各対象者の類型毎に厳格な基 準を設けてやってきているところでございます。ちょっと参考までに、参考2と右上に 付しております紙がございますが、これが現行の許可基準でございます。障害者の方々 の部分について抜粋させていただいておりますが、(1)にありますように、障害が業務の 遂行に直接支障を与えることが明白である場合に限るということでございます。更に、 その支障の程度が著しい場合に限るということでございます。その後、(3)として、その 減額の考え方を書いているわけでございますが、これは最低賃金の適用を受ける目他の 労働者のうち最下層の能力者より労働能力が低い割合に対応する金額を減じた額を下回 ってはならないということで、他の方を100とした時に、その障害者の方が仮に80の能 力だということだったとすれば、それ以上、2割以上減額をしてはならないといった基 準でやってまいりました。  こうした、これまでの運用の基準を踏襲をいたしまして、今回、省令になりますが、 参考3というところをご覧いただきたいと思いますが、次のページでございます。省令 におきましても、その下のところに書いてございます。ただ今(3)としてご紹介申し上げ たところとちょっと法令上の文言の整理がございますが、趣旨は全く同じことを書いて いるわけでございます。これが障害をおもちの方の固有の事情として定める減額率の上 限といったことになりまして、5条と書いております柱書きで、それが減額率の上限で あるということであります。更に、職務の内容、成果、労働能力、経験等を勘案して総 合的に定めるといったことにしてございます。  恐縮でございますが、2枚目に戻っていただきますと、これが新しくなる制度の概要 でございます。実際の許可に当たりましては、事業主から減額特例の許可の申請を行っ ていただくわけでございますが、これに対しては、十分慎重に、必ず個々に、その事業 場を基準監督官が実態調査をいたしまして、その上で実態が間違いないといった時に初 めて許可をするといったことで、身長に、厳格に運用してまいりたいというふうに考え ているところでございます。以上でございます。 ○座長  予定の時間を少しオーバーしているんですが、せっかくですから何かご質問があれば どうぞ。 ○輪島委員  最賃の方ですが、単純な質問なんですが、知的障害と発達障害はどこにあるんですか。 ○事務局  今、そうした分類での集計はちょっと取っておりませんで、ちょっと申し上げられま せんが、かなり知的の方が多いというふうに考えております。 ○輪島委員  意味がよく分かりません。1枚目に、対象の労働者が精神または身体の障害なので、知 的とか発達障害とかは対象になるのか、ならないのか。 ○岩村委員  それは個別の法律とはリンクしない定義だと思います。 ○輪島委員  入っているんですね。対応表にあるんですね。 ○事務局  そうした対応に基づいた分類というのは特にいたしておりません。 ○輪島委員  入るということですね。 ○事務局  入っております。 ○高齢・障害者雇用対策部長  条文が精神または身体になっているけれども、知的障害者も読んでいけばいいという ことですね。 ○座長  読めるということですね。 ○事務局  そうです。 ○座長  では、川崎さんどうぞ。 ○川崎委員  先ほどのハローワークのデータですけれども、精神障害者が大変に増えているという ことですが、この背景には、トライアル雇用とか、ジョブコーチ支援とか、あと、地域 での就労支援、そういうところのサポートがあってのことということで、ある程度そう 考えてよろしいんですか。 ○事務局  その通りでございますが、それと、18年度から雇用率へのカウントが始まったという のが非常に大きかったと思います。それで、ハローワークを通じれば、雇用率にカウン トできるんだったらば、自分の職場も探しやすくなるなと考えていらっしゃる方が増え ているのは確かです。それと、今おっしゃった支援策の活用ということもあろうかと思 います。 ○川崎委員 分かりました。 ○座長  どうぞ。 ○松井委員  最低賃金のことですが、減額されるわけですけれども、これはどの程度の期間ですか。 例えば、人間の能力というのは、3カ月、6カ月、あるいはもっと、それによって違いま すよね。だから、一旦減額した場合に、それは恒久的なものではないわけでしょうから、 どの程度の頻度でチェックをして、やっていかれているのかですね。 ○事務局  類型毎にやや経過は異なりますけれども、障害者の方々の場合は、少なくとも最初の 許可を受けた時は、長くても1年以内ということで、改めて許可を受けていただくとい うことでフォローアップするという考え方でございます。ただ、その障害による能力の 程度がそんなに変化がないといった、何回か更新した後になりますと、最長で3年ぐら いといった形のものがございます。 ○松井委員  その人の労働力というか、なかなか第三者がその場へちょこっと行って見ても分から ないですね。そこは妥当かどうかということの検証はどういう形でなされているんです か。 ○事務局  予め事業主が申請を出される時に、その方々の能力がどうかといった具体的な資料を お出しするようにお願いしてあります。例えば2週間ぐらい、その方と健常者の方とを 比べて、数で数えられるものについては、何時間で何個やったというような具体的なデ ータをお出しいただきまして、それを実際に出向いて目で確認いたします。また、数量 で確認できない場合は非常に難しいわけでございますが、例えば、実際のコミュニケー ションがきちんととれるかどうかとか、上司の言うことを聞けるかどうか、あるいは日 によって波がないかどうかといったようなことを、上司の方、あるいは、場合によって は同僚の方々からも聴取した上で判断するといったことで行っております。 ○今井委員  これは運用の世界なので、実際に現場でどうされているかが分からないので質問する わけですが、途中で、たとえば指を切って従来の業務ができなくなったとします。けれ ども、その企業が考慮すれば、減額措置なんかしないでも、指がなくてもやれる十分な 仕事があるとすれば、それが優先された後ということなんでしょうか。 ○事務局  最低賃金法の中でそこまで何かを求めているものではございません。具体的に、結果 としてその職務ができない、それ以外の職務になったといった時には、その職務におい てどうかということになります。あくまで、その方の就いている業務毎に能力を判断す るといった考え方でございます。 ○今井委員  病気とか怪我のあった職場に復帰できなければ駄目だというような、現場的な風潮が 実は製造業の中なんかにはあったんですね。しかし、考慮すれば、別の仕事は十分でき るということまで雇用側に義務を指導して、助けたかどうかということなんですけど、 それは何とも言えないということですか。 ○事務局  それは、ちょっと最低賃金法の範疇ではないのではないかというふうに思います。最 低賃金法はまさに就く業務に対して支払われるべき賃金を減額し得るかどうかというこ とです。 ○今井委員  就く業務に対してということ、そこだけ分かれば。ありがとうございました。 ○座長  まだご質問があるかと思いますが、大分時間もオーバーしてきております。この辺で 今日は終わりにしたいと思います。次回ですが、次回も引き続き各国の制度についてヒ アリングを行いたいと思います。日程等について、まず事務局から説明いただけますか。 ○事務局  次回の日程の前に、ちょっとご紹介といいますか、皆様既にご案内かと思いますが、 権利条約ですが、前回4月2日に研究会がありましたが、その翌日にエクアドルが批准 して、20カ国が批准したということで、その30日後の5月3日に発効したという状況で ございます。  次回の日程でございますが、6月27日の金曜日でございます。13時30分から15時30分 まで、本日と同じ時間でございますが、場所はまだ未定でございます。後日改めてご連 絡をいたします。 ○座長  よろしいですね。それでは、議事録の公開ですけれども、これは差し支えないという ことでよろしゅうございますね。(「意義なし。」)それでは、これで今日の研究会は 終了いたします。ありがとうございました。 (照会先)   厚生労働省 職業安定局 高齢・障害者雇用対策部    障害者雇用対策課 雇用促進係    電話 03-5253-1111(内線5855)