08/05/16 第5回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会議事録 第5回 今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 1 日時 平成20年5月16日(金)14:00〜 2 場所 厚生労働省職業安定局第1会議室 3 出席者     委員 阿部委員、有田委員、鎌田委員、山川委員   事務局 太田職業安定局長、大槻職業安定局次長、       鈴木需給調整事業課長、田中派遣・請負労働企画官、       牛島需給調整事業課長補佐、鶴谷需給調整事業課長補佐、       竹野需給調整事業課長補佐、飯郷需給調整事業課需給調整係長 4 議題  派遣労働者の雇用の安定について ○鎌田座長   ただいまから、第5回「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」を開催いた します。本日は橋本委員が欠席です。本日の議題に入ります前に、前回までの議論を整 理いたします。まず、第1回と第2回では、労働者派遣制度の現状や、派遣労働の雇用政 策における位置づけについてご議論いただきました。また第3回と第4回では、今後の議 論の参考とするため、関係者をお呼びしてヒアリングを行いました。  これまでの議論の中で、以下のようなご意見がありました。労働派遣制度の在り方の 検討に当たり、労働者供給事業の禁止の趣旨を否定するものではないこと。次に、世界 的な流れとして、事業規制の緩和は、労働者保護の強化を伴って行われてきたものであ ること。次に、就業形態の多様化は進んでいくものと考えられるが、我が国の労働者派 遣制度は、雇用慣行との調和と、常用雇用代替防止を前提としていることを踏まえつつ、 その特質に合った保護の在り方を検討すべきであること。とりわけ派遣労働者にはさま ざまな働き方があり、これらの属性に配慮する必要があること。こういうご意見等があ りました。これらについては、概ね各委員共通のご理解であったと考えております。  また、職業紹介等との比較において、労働者派遣の機能をどのように考えるか。特に、 日雇派遣等のごく短期の労働者派遣と、職業紹介との間にはどのような差異があるかと いった点。労働者保護の具体的な内容、特に常用雇用の意義をどのように考えるか。ま た、労働者保護を図るべき主体をどのように考えるか。こういう点については、今後各 個別の議論を進めていくに当たり留意すべきものであったと考えております。  こうした点を踏まえ、今回以降の各個別の議論の進め方を参考資料のとおり整理いた しました。これについては、事前に各委員の皆様にお送りし、ご了解をいただいたもの ですので、今後は参考資料に沿って議論を進めていきたいと思います。  今私が述べましたように、これまでの共通のご理解と、それから検討すべき大枠の視 点というものをまとめましたが、委員の皆様からこれについてご意見があれば今言って いただきたいと思いますが、後で言ってくださっても結構です。 (特に発言なし) ○鎌田座長   よろしければこのまま先に進めさせていただきます。それでは本日の議題に入ります。 本日は「派遣労働者の雇用の安定について」をご議論いただきます。事務局から説明を お願いいたします。   ○竹野補佐   最初に資料の確認をお願いいたします。資料1「派遣労働者の雇用の安定について(論 点)」、資料2「論点に係る公労使意見及びヒアリング時の発言」、資料3「派遣労働者 の雇用の安定に関する資料」、参考1「第5回以降の議論の進め方について」ということ で、本日の第5回と次回第6回で派遣労働者の雇用の安定についてご議論いただきたいと 考えております。参考2「労働者派遣制度に関する提言等」ということで追加の資料を 用意しております。これについては、第1回研究会の時にも資料としてお示ししたもの ですが、それ以降に追加の提言等が種々ありましたのでそれをまとめております。「各 党の労働者派遣法改正案」を付けておりますけれども、これは各党のホームページ等に 掲載されておりますものから把握したものですので、こういうことも参考にしながら議 論を進めていただければと思います。  資料の説明に移ります。資料1「派遣労働者の雇用の安定について(論点)」という ことです。昨年まで労働政策審議会労働力需給制度部会で議論を進めてまいりましたも の、それからこれまでの研究会での議論を踏まえ、これらをカバーする形で作成してお ります。読み上げさせていただきます。  論点1、登録型・常用型の在り方について。(1)「登録型」「常用型」はそれぞれど のような機能を果たしており、何が問題となっているか。特に、職業紹介等と比較して、 それぞれどのようなメリット・デメリットが考えられるか。また、いわゆる「26業務」 と、それ以外の業務とで、違いはあるか。(2)「登録型」を禁止すべきとの意見があ るが、どのようなメリット・デメリットが考えられるか。(3)「常用型」については、 安定した雇用として評価し得るか。そのためには、定義や規制の在り方等についてどの ような対応が考えられるか。(4)「登録型」の派遣労働者の雇用の安定を図るため、ど のような対応が考えられるか。例えば、派遣元での常用型労働者への転換、派遣先での 直接雇用、派遣先以外の企業での直接雇用等が考えられるが、その実現のため、派遣元、 派遣先、国等はどのような役割を担うことが適当か。  論点2、日雇派遣の在り方について。(1)日雇派遣はどのような機能を果たしており、 何が問題となっているか。特に、派遣ではない日々雇用が存在する中で、職業紹介等と 異なる日雇派遣固有のメリット・デメリットは何か。(2)日雇派遣を禁止すべきとの 意見があるが、派遣ではない日々雇用が認められていることや、労働者派遣制度が臨時 的・一時的な労働力の需給調整を図るものとして位置付けられていること等を踏まえ、 どのようなメリット・デメリットが考えられるか。(3)日雇派遣労働者の雇用の安定 を図るため、どのような対応が考えられるか。また派遣元、派遣先、国等はどのような 役割を担うことが適当か。  論点3、期間制限等について。(1)期間制限はどのような機能を果たしており、何が 問題となっているか。(2)期間制限を撤廃すべきとの意見や、期間制限の上限を延長 すべきとの意見等があるが、どのようなメリット・デメリットが考えられるか。(3)派 遣の活用事由を制限すべきとの意見があるが、どのようなメリット・デメリットが考え られるか。(4)派遣の対象業務を制限すべきとの意見があるが、どのようなメリット ・デメリットが考えられるか。  論点4、雇用契約申込義務等について。(1)常用型については、雇用契約申込義務を 撤廃すべきとの意見があるが、常用型の派遣労働者の雇用の安定の観点等を踏まえ、ど のようなメリット・デメリットが考えられるか。(2)登録型に係る雇用契約申込義務 についてどのように考えるか。(3)「みなし雇用制度」を導入すべきとの意見がある が、どのようなメリット・デメリットが考えられるか。(4)派遣先企業における社員 登用制度について、どのように考えるか。(5)派遣労働者のキャリアパス(常用雇用 への道筋等)についてどのように考えるか。  論点は以上です。続きまして資料2「論点に係る公労使意見及びヒアリング時の発言」 についてご説明いたします。これは部会においての公労使意見と、第3回、第4回にヒア リングを行いましたが、その際に種々のご発言がありましたものを、先ほどの論点ごと に整理をして記載しているものです。詳細な説明は省略させていただきますが、かい摘 んでご説明させていただきます。  第1点は、登録型・常用型のあり方についてということで、2頁をご覧ください。 (2)「登録型」を禁止すべきとの意見があるが、どのようなメリット・デメリットが 考えられるかについて、労働者の代表からは、雇用の不安定さ、処遇の低さ、日雇派 遣の温床となる等問題が多いということで、少なくとも当面は専門26業務に絞るなど、 非26業務は禁止する方向で検討すべきというご意見。使用者代表意見としては、一時的 な対応要員としての活用を求める企業側の声が強い。自由に働く機会が与えられる登録 型を希望する労働者側の一定のニーズもある。これは多様な働き方の1つとして尊重す べきではないかということがあります。  ヒアリング時の発言としては、1つ目のポツで、人材派遣協会からは、雇用機会を提 供する有効な手段となっているというご意見。派遣ユニオンからは、不安定雇用という ことで、登録型を禁止する、常用型のみを認める形にしていくべきというご意見。 JSGUからは、派遣で働くことを積極的に選んでいる人も結構いる、ということで反対で あるというご意見。  2点目の日雇派遣の在り方については、資料の6頁です。日雇派遣を禁止すべきとの意 見があるが、どのようなメリット・デメリットが考えられるか。労働者代表意見として は、日々雇用は直用が原則と考える。使用者代表意見は、日々派遣でも適正に運営され、 有効に機能している業務もあることから、日々派遣というだけで全面禁止という考え方 は不合理。  ヒアリング時の発言として、派遣協会からは、軽作業のみならず、同時通訳等有効に 機能している1日派遣も多数あるということで、就労機会を奪うことになるのではない かという懸念もある。3つ目のポツで、派遣ユニオンからは、日雇派遣はむしろ軽作業 派遣ということができる。低賃金であり、非常に不安定な雇用である、危険な作業で労 働災害が多く発生していることから、きちんと禁止していくべきというご意見。4つ目 のポツでJSGUからは、日雇派遣の制度を積極的に選んでいる人たちのためにも、この制 度を残しておく必要があるのではないかというご意見が提出されています。  3点目の期間制限等については、資料の8頁です。労働者代表の意見としては、派遣可 能期間の上限は延長するべきではない。活用事由を限定することも検討すべき。使用者 代表の意見としては、受入期間制限については撤廃し、当事者間において規定をするべ きというご意見が出ています。  4点目の雇用契約申込義務等については、資料の10頁です。労働者代表からは、雇用 申込義務は必要ということ。使用者代表の意見としては、3つ目のポツで、26業務にお いては派遣期間制限がないにもかかわらず、法第40条の5に基づく雇用契約申込義務が あり、これを避けるために派遣先で契約を3年で打ち切らざるを得なくなっているので、 かえって派遣労働者の雇用が不安定になってしまうため、26業務の雇用契約申込義務は 撤廃すべきというご意見が出ています。  ヒアリング時に、常用型派遣労働者からのご意見として、常用型派遣労働者のスキル アップのためには、法第40条の5を廃止してほしいということがありました。  公労使意見、それからヒアリング時の発言については以上です。  続きまして資料3「派遣労働者の雇用の安定に関する資料」ということで、本日の論 点に沿ったデータ等を、一部昨年の審議会の部会でお示しした資料を再び載せるような 形で整理しているものです。1頁の、請負・派遣・職業紹介・求人広告の対比というこ とで、規制の有無、責任の有無を整理したものを付けております。いちばん左側の派遣 元事業主等というのは、派遣であれば派遣元ですが、職業紹介であれば職業紹介事業者。 下の派遣先等の「等」というところは、紹介であれば求人企業という形で読んでいただ ければと思います。  派遣元事業主等の雇用管理責任のところで、派遣であれば派遣元事業主にある、職業 紹介については紹介事業者は雇用管理責任はない。手数料規制について、派遣の場合は 規制はない。職業紹介の方は10.5%を上限とし、それ以上の場合には届出をするという 規制があります。労働者に対する責任ということで、職業紹介の方は求人企業の方には 当然あるのですが、派遣の場合の派遣先についても、派遣法に基づく責任分担の規定が あり、派遣先の責任も一部あるという形になっています。  2頁で、常用型、登録型、26業務、非26業務の関係図ということで、それぞれのプロ フィール等を示しております。(1)常用型・26業務については、ソフトウェア開発や機械 設計に従事する男性が多い。(2)登録型・26業務については、事務用機器操作、ファイリ ングに従事する女性が多い。(3)(4)非26業務については、物の製造に従事する男性、それ から一般事務に従事する女性が多い。できるだけ早い時期に正社員として働きたいとい う調査についても、常用型よりは登録型、26業務よりは非26業務のほうが若干高い傾向 があります。  3頁で、派遣契約期間等ということで左上のグラフです。派遣契約期間、これは3カ月 以上、6カ月未満が最も多くなっています。右上の通算派遣期間は、1年以上、3年未満 が最も多くなっています。左下の登録型についての雇用契約の期間は、3カ月以上、6 カ月未満が最も多いということ。右下の通算契約更新回数は4回以上が最も多いという ものです。  5頁は、派遣法における常時雇用の定義についてです。特定労働者派遣事業について は、常時雇用される労働者のみを対象とする事業ということで派遣法上定義を設けてあ ります。この常時雇用されるということについては、雇用契約の形式の如何を問わず、 事実上期間の定めなく雇用されている労働者のことをいうと解しております。  具体的には(1)(2)(3)とあり、(1)のとおり期間の定めなく雇用されている者、これは当然 含まれるのですが、(2)(3)のとおり過去1年を超える期間について引き続き雇用されてい る者、又は採用のときから1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者ということ で、こうした者についても常時雇用される者であるということで解しております。  ただし、雇用契約の更新回数が、一定の回数を超えた場合に、雇止めできるという場 合については、事実上(1)と同等とは認められないだろうということで、常時雇用には該 当しないということで解しております。  5頁は、派遣元との雇用契約の期間別派遣労働者の構成比です。これは先ほどの常時 雇用の定義と関連するものですが、いちばん下の丸で囲った常用型のところの、いちば ん右側の期間の定めなしとなっているところは43.2%います。それ以外については有期 雇用であるということで、常用型の派遣労働者であっても、有期雇用となっている者が 一定程度存在するという形になっています。  6頁は、日雇派遣労働者等の雇用契約期間についてです。日々雇用なのか、それとも 1カ月未満程度の短期雇用なのか、どういう分布になっているかということです。 大体が日々雇用で84%ということで、1日単位の日雇派遣労働者が最も多い結果になっ ています。  7頁は、派遣元での常用労働者への転換ということの1つの資料として、パート労働者 については平成19年のパートタイム労働法の改正により、こういう措置が義務付けられ ているということで付けているものです。下の改正内容の1つ目のポツで、通常の労働 者を募集する場合には、その募集内容を既に雇っているパートタイム労働者に周知をす るといったような、通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずるということが、 パートタイム労働法上位置付けられているということで、こういうことも参考になるの ではないかと考えております。  8頁は、派遣受入期間制限の運用についてです。いわゆる26業務等以外の業務の場合 には、原則1年、最長3年の期間があります。その運用として、新たな労働者派遣の開始 と、その直前の労働者派遣の終了との間が3カ月を超えない場合には、その直前の労働 者派遣から継続して労働者派遣の役務の提供を受けているものとみなされるということ。 真ん中の図の白い矢印の部分が3カ月ではなくて、例えば1カ月、2カ月であれば、その 前後の労働者派遣が継続して行われているものだと解されるということで運用しており ます。  9頁は、今申し上げたことの参照条文、それから指針に書いてある内容をそのまま付 けております。  10頁は、フランスにおける派遣労働の利用事由の制限についてです。労働者側代表の 意見として、派遣の活用事由の制限についても考えてはどうかということがありました。 これは、部会で諸外国の状況をヒアリングした際に、資料として提出していただいたも のを引用しています。フランスにおいては、例えば(1)のaのところで、欠勤労働者の代 替要員であるとか、bの企業の業務量の一時的変化への対応といったものに利用事由を 制限し、派遣を認めているというような制度があります。  11頁は、雇用契約の申込義務に係る考え方についてということで、これはアンケート 調査の結果です。派遣元・派遣先事業主においては、廃止すべき、努力義務程度に緩和 が多くなっています。派遣労働者は、そのままでよいというのが最も多いです。一方で 派遣労働者でも、常用労働者として雇われている労働者は適用除外にすべきだというの が15.1%ということで、一定程度見られるという結果になっています。  12頁は、派遣労働者のみなし雇用制度についてで、ドイツ、フランスの状況を紹介し ております。例えば、ドイツでは派遣先事業所が無許可の派遣元事業主から派遣労働者 を受け入れた場合、派遣先事業者と派遣労働者に労働関係が成立したとみなすという制 度が設けられています。  13頁は、派遣労働者を社員に登用する制度の有無です。派遣先で社員登用制度を設け ているかどうかということですが、制度がないとする事業所が70%で最も多い状況です。  資料の説明は以上です。 ○鎌田座長   資料1「派遣労働者の雇用の安定について(論点)」ですが、本日は(1)の登録型・ 常用型の在り方について、それから(2)の日雇派遣の在り方を中心にご議論いただき ます。論点に沿って、現行制度の何が問題で、具体的にどのような対応が考えられるか、 という視点からご発言をいただければと思います。まず、(1)の登録型・常用型の在 り方についてご発言をいただきます。中身を見ますと、(1)から(4)のような論点に 分けておりますが、必ずしもそれにこだわらずにご意見をいただければと思います。  ご発言を促す意味で私の方で整理をしながらご意見を求めたいと思います。(1)登 録型・常用型はそれぞれどのような機能を果たしており、何が問題となっているか。特 に、職業紹介等と比較して、それぞれどのようなメリット・デメリットが考えられるか。 また、いわゆる26業務とそれ以外の業務で違いがあるかということです。  この議論の前提になっているのは、(2)の登録型を禁止すべきという意見が前提にな っておりますので、こういう観点から登録型と言われるものの特徴、そしてそれの労働 者保護という観点からどのような役割を果たしているかということです。同時に、この 研究会で労働力の需給調整という観点からも、派遣制度を捉えてみることが提起されて おります。こういう観点から、登録型についてどのように考えるか。そして、労働者の 保護、あるいは雇用の安定という観点から、常用型というものを、登録型の対比におい てどう評価すればいいのか。このようなことをご検討いただければと思います。 ○有田委員   資料の説明にも出ていたと思いますが、登録型の派遣で働いている派遣労働者のほう が、正社員への移行を望んでいる人が非常に多いという実態もあり、逆にその割合は常 用型で働いている派遣労働者は低いということを考えてみると、登録型に期待されると いうことで言うと、恒常的に登録型で働きたいという派遣労働者も当然一定割合いるも のの、正社員への移行のつなぎを担うような役割を、登録型が現状として担っているの かという点についてはどうなのでしょうか。例えば、紹介予定派遣を行っている事業者 としては、やはり登録型の方が多いのではないかと思うのですが、その辺はどうなので しょうか。   ○鎌田座長   何かデータはありますか。ずっと以前に、部会で人材派遣協会の方が、派遣協会のデ ータとして出してくださいましたが、厚生労働省で調べたものもありましたか。   ○田中企画官   紹介予定派遣の実施状況ということで見ますと、一般労働者派遣事業の事業所でやっ ている所が、平成17年度で1,936、特定でそういうのをやっていますという所が32にな ります。そういう意味では登録型の派遣労働者のほうが、紹介予定派遣の対象となって いるのが多いのではないかと思います。   ○阿部委員   今の登録型、常用型の話なのですが、前回のヒアリングもそうですし、アンケート調 査の結果もそうなのですが、どうも常用型は、そこにいる派遣労働者のスキルレベルと か、要求されるスキルが登録型とは違っているのではないかという気がします。  例えばアンケート調査の方でいくと、常用の派遣労働者に対する、派遣元による教育 訓練受講率や訓練期間は、登録型の派遣労働者よりも多いですし、長いです。前回のヒ アリングでも、常用型の人たちはスキルレベルもかなり高そうですし、教育訓練もやら れています。  そういうところが相当違うということで、登録型と常用型の仕事の中身がちょっと違 うのではないか。常用型の場合にはスキルレベルもちょっと高かったり、あるいはその 仕事特有のノウハウがあったり、そのために派遣元も教育訓練をする。だからこそ、常 用型はその仕事で働いてもいい。ところが、登録型はスキルレベルもそうないのかもし れないし、あるいは一般化されていて、どこでも身に付けられるようなものであるから、 派遣元もしない。だからこそ、こういう所ではなくて、もっと自分のスキルを身に付け る所で働きたい、という希望が労働者に出てくるのではないかと思うのです。  そういうことを考えてくると、メリット・デメリットというふうになるのかと思いま す。それを考えると、そもそも仕事のスキルということと、派遣の在り方、あるいは派 遣元の在り方というのは決まっているように私は整理しているのです。 ○鎌田座長   今のお話ですと、常用型というのはスキル、専門的な技術や知識等を活かすような業 務について、常用型が採られている。登録型というのは、そういうものとは少し違うの ではないか。これまでの議論でいくとアルバイト的といいますか、それほど高い専門的 な技術や知識を必要としないような業務に事業を行っているのではないか。そのような ご指摘ですね。   ○山川委員   今の点とも若干関連するのですが、質問をさせていただきます。資料3の2頁にある、 常用型、登録型、26業務、非26業務関係図のところで、正社員として働きたいという調 査結果に、若干類型によって差があるということです。正社員として働きたいというの は、派遣先における期間の定めのない従業員として働きたいというふうに限定して読ん でよろしいのか。  派遣先でなくても、正社員としての安定が望ましいということもあるかもしれません。 正社員というのは、直用とは違うので、派遣先で直用であれば、期間の定めがあっても いいという希望なのか。ここでいう正社員というのは、どこのどんな従業員なのかとい うのは、アンケートでは特定されるのでしょうか。 ○田中企画官   アンケートの調査票を見ますと、調査項目の1番は今後も派遣労働者として続けたい、 2番はできるだけ早い時期に正社員として働きたいとなっておりますので、丸を付ける ほうとしては、派遣会社でということではなくて、いわゆる直接雇用の正社員という ことを念頭に置いて選んでいるのではないかと思います。   ○山川委員   派遣先かそうでないかは必ずしも聞いていないということですね。    ○田中企画官   はい。    ○山川委員   先ほど有田先生からも話が出ました、紹介予定派遣についてですが、これはわりと評 価を受けている制度ではなかろうかと思うのです。今後、こういう点は現在の紹介予定 派遣制度は使いにくいという指摘、例えば、派遣労働者側から見て使いにくい場合と、 派遣元・派遣先から見て使いにくいというのがありますけれども、そういう現状での問 題点の指摘はあるのでしょうか。   ○田中企画官   これも、労働力需給制度についてのアンケート調査を見ますと、紹介予定派遣のメリ ットとしては、適性・能力を見極めてから雇用することができるが73.2%となっていま す。そのほかに、紹介予定派遣の派遣期間に関する要望を見ますと、このままでよいと いうのを派遣元の企業で見ますと54.5%、6カ月より長くしてほしいが20.2%あります。 そういう意味では、評価されている所の方が確率が高いかと思います。   ○鈴木課長   使用者側からの意見ですと、6カ月という今の派遣期間は短い、もっと長くしてくれ、 少なくとも1年ということでフルシーズンいないと採用はできない、という意見があり ました。反対に労働者サイドからの意見としては、紹介予定派遣だということで、正 社員になれるものだと思っている。だけど、実際に採用されてみたら期間社員で、ど うも最初の話と違った。そういうことであれば、もともと紹介予定派遣はやらなかっ たのにと。そういうことで、条件面での明示のトラブルがあります。そこがちょっと 課題かというところです。   ○山川委員   紹介予定派遣かどうかということをより明確に明示すれば、トラブルの防止という意 味では有効になるかもしれないということはあるのでしょうか。   ○鈴木課長   いわゆる紹介予定派遣とは明示してあるのだけれども、採用される時の条件が、正社 員かそうではなくて期間社員か。ただ、それも使用者側からすると、それもやってみな いとわからないから明示できない。労働者側から見ると、初めから知りたいということ です。   ○有田委員   単純にメリット・デメリットということで考えるならば、職業紹介等と比較してとい うことで言えば、先ほど来出ている教育訓練の問題と、スキルアップのためのサービス の提供を、紹介だとやりにくいけれども、派遣だとそういうサービスは付けやすいので はないか。本来そういうものが期待されているのではないかということを前からずっと 思っていました。  ただ、実際には常用型の場合にはそれが行われるけれども、それは派遣先のニーズ・ 要求があってそうするということもあります。登録型の場合には、それが相手方のニー ズとの関係もあってなされないというところが大きな問題ではないかと思います。つま り、先ほどのように正社員の方へこのルートを使って行きたいということを考える場合 に、スキルを身に付けなければ正社員化への道へはつながりにくい。この辺りを登録型 の派遣制度の問題としてどのように見るのか。  臨時の労働力のニーズがある、そこに労働力を配置するための需給システムとしては 確かに有効なものかもしれないけれども、そういう側面だけで評価するのか、働く労働 者のキャリアパスの問題等を考えていくときに、常用型の方はそういう意味で行きやす いと思うのですが、登録型でもそういうものに乗っていけるような仕組みをどのように 考えるか、というのが1つの問題としてあるのではないかと思います。 ○鎌田座長   今有田先生がおっしゃったのは、教育訓練といいますか、派遣労働者の職業能力を高 めるという観点から、派遣事業というのは一定の役割を果たすという点では評価できる 面もあります。一方、登録型については需給調整という面での機能もあるけれども、教 育訓練としても併せて考えてほしい、考えてみたいということですね。  (2)の「登録型を禁止すべきとの意見もあるが」というところも含めてご意見をいた だければいいかと思います。進行役としてはあまり口を出さないほうがいいのかもしれ ませんが、私も需給部会にいますので、いろいろな形で派遣事業の意義とか役割という ものを考えるわけです。今回ヒアリングを2回行い、その中で集中的に私が聞いたのは、 派遣事業のメリット、特に登録型ですが、何なのですかということです。 これは、派遣会社の人にとりわけ聞きたいと。  例えば、職業紹介事業とか、そのほかの雇用情報、雇用サービス関連事業というもの があるのですが、この点が派遣としてのメリットがあって、これがあるから派遣が利用 されるのではないかということ、それは何なのでしょうかということをいろいろ聞いて いきました。  そこで聞いた答えが、資料2の1頁の「ヒアリング時の発言」ということで出てきてい ます。ヒアリング時の発言の1、これは派遣協会の方にお聞きしたのですが、ポツ1とポ ツ2がそうです。登録型派遣において専門性のある26業務のみならず、就職困難者や、 エントリーレベルの方々に対し、雇用機会を提供する有効な手段となっているというこ と。それから、情報化時代において、効率的な職探しができる、あるいは直用雇用を希 望する場合についても、それをステップとしながら正社員になることも不可能ではない。 このようなことをおっしゃっていました。  私とすれば、登録型が臨時的・一時的な労働需要に対して一定のツールとして有益で あると一般論としては言えるわけですが、具体的に現実の機能としてどういう点で役割 を果たしているのかを聞きたかったわけです。その回答の1つで印象深かったのは、い ろいろな形での労働者と、それから受入先の派遣先のニーズとの間でのミスマッチがか なり広く存在しているらしいのです。  つまり、自分の持っているスキルだとか能力、あるいはコミュニケーション能力とい ったものも含めてだと思うのです。こういうものと、受入先が求めるものがなかなか合 わないということがあります。派遣というのが、まさに双方のニーズを、派遣会社とし てのスキル、ノウハウを持って調整していくということ。こういうことがないと、なか なかうまくマッチングができないのではないだろうか。  一部の人の意見としては、自分のスキルがあって、受け入れる側のニーズにぴったり 合っていれば、おそらく派遣という制度を使わずに、自分でうまくいっているのではな いでしょうか。そうならなくて、そこに少しずれがあるという場合に、派遣というもの の存在意義があるのではないかということでした。  職業紹介との関連で、それは職業紹介ではできないのですかと言ったところ、職業紹 介というのは基本的に正社員を中心に考えていて、そしてある特定の人を、ある特定の 会社に紹介するということなわけです。その辺では、いま言ったような双方のミスマッ チをうまく調整しながらマッチングしていく機能とは違うのではないかということが言 われています。  コスト的にも、職業紹介と派遣では、つまり臨時的・一時的な業務のマッチングとい うのは、紹介ではなかなかコスト的に割が合わないのではないか。やはり正社員が中心 になるのではないかというお話がありました。  そのようなことを考えると、派遣会社はある一定の求められるスキルを持っている労 働者を、それを求めている会社に、いわば円滑・スムーズに合わせるというのではなく て、そこにあるさまざまなずれを、先ほど有田先生がおっしゃったように、教育訓練と いうことも付加価値を付けながらやっていくことが大切だと。そこにまた、派遣会社の 事業としてのノウハウと、事業としての存在意義もあるのではないかというお話だった です。  その辺のところを聞いて、十分スキルを持っている労働者が、本来であればすぐに自 分で仕事を見つけていくところを、派遣という迂回路を通って回り道をしていく、そこ に現代の労働市場の中でのさまざまなミスマッチをうまく調整する機関として意義があ るのかと私は捉えていました。  そのことと、労働者保護がどうあるべきかという議論はちょっと別なのですけれども、 そのような意義というのが私としてはあるのかと考えたところです。皆さんのご意見を いただくために、やや踏み込んだ私の感想を述べましたが、どうぞ忌憚のないご批判を いただければと思います。 ○阿部委員   先生がおっしゃることは、私もそうだろうと思うのです。ただ、ある一時点を切った 場合にはそうなのですけれども、労働者の生涯を考えていくと、果たして登録型派遣で 働いている人たちが、10年後、20年後になったときに、どういう仕事に就いて、どうい う勤労生活の状態にあるのかを考えると、そのところだけなんとかしなければいけない のではないかと思うのです。  アメリカの研究では、いわゆる派遣労働で働いていく人たち、はっきり言えば刑務所 から出てきた人たちが、派遣労働で働いた場合と、たまたま正社員に就いた場合とでは、 所得の伸びが全然違っています。それから、離職率とか、定職に就く確率も全然違って います。私は、日本でそういうデータを見たことがないのでわかりません。教育訓練が ないですから、スキル、あるいはキャリアパスが見えない中では、将来どうなっていく のかというのは相当問題はあるのではないか。  だからこそ、有田先生が先ほどおっしゃったように、登録型でも教育訓練をどのよう に取り込んでいって、派遣で働いても、将来的にキャリアパスが伸びていけるかどうか というところまで含めて制度設計しないといけないのかと思っていました。ただ、現実 に登録型の労働者がどういうキャリアを行っているのか、あるいは所得がどのように推 移していくのかあまり見えていないので、そこのところはもう少し私自身も研究しなけ ればいけないと思っています。そういう問題はあるのではないかと思います。 ○鎌田座長   今のは、どちらかというと私が事業としてのメリットという視点でお話をしたので、 それに対して阿部先生は、そこの下で働く労働者の生涯にわたるキャリア形成という観 点も入れてこのメリットを考えてみたらどうか、見なければいけないのではないかとい うのはそのとおりで、そこはまさに職業能力開発ということが1つあると思います。  ただ常用型と言われるものについては、ヒアリングでも出ていましたけれども、例え ば派遣がない時期においても職業能力開発はしなければいけないということで、それは 会社のお金でやっていますという話がありました。これは非公開のときだったので、資 料にはのっていないかもしれないのですけれども、そういう話がありました。登録型の 場合に、後の日雇の話は別だと思っていますので少し除けておきますが、普通の登録型 というのは、3カ月ぐらいの期間を定めて何回か更新するのが多いのではないかと思うの です。その中で、能力開発がどのような経済的なインセンティブで行われることになる のかです。 ○阿部委員   今の状況ではインセンティブはないのだと思うのです。ないから、そこの部分が欠落 して、そういう意味では有田先生がおっしゃるように、職業紹介と派遣との切り分けと いうのは難しいという状況になっているのではないかと思います。   ○鎌田座長   ただ教育訓練と言っても、ある意味で高い専門的な技術とか知識ということではなく て、もっと広くコミュニケーション能力とか、これは派遣事業というか業界で言う言葉 にヒューマンスキルという言葉があります。もしかしたら先生方は初めて聞くのかもし れませんけれども、そのような観点まで広げて考えると、そういう面でのスキルの養成 というのは登録型でも行われていると私は理解しています。   ○有田委員   需給の関係で難しいのではないかと思うのですが、例えばキャリアを上げていくとか、 能力を開発していく時に、OJTの方式であれば、派遣先をそういう形で、前に派遣してい た先はこのぐらいのレベルの仕事を要求された所だから、もう少しアップした所への派 遣をする、といった一定の配慮を求める、という形が1つ考えられると思うのです。  ただ、その場合も相手である派遣先としてニーズがなければ、そのようにもっていく のは難しいので、現状からするとなかなか難しいハードルが相当いろいろあると思うの です。ただ、なんとか考えないと、紹介ではなくて、派遣の持つ意味、需給調整といっ ても、その調整機能が固定化するということでは、全体の今の雇用政策の流れとか、安 定した雇用を増やしていこうとか、そちらの方向へと動いている中で、固定化するよう な方向にもっていきかねないということが、登録型派遣の場合には非常にあると思うの です。だから、そこを変えるようなことを仕組みとして入れていかないと、全体として 労働市場のあり様が良くなっていかないのではないかという気はします。 ○山川委員   同じようなことかもしれませんけれども、労働者派遣による需給調整システムは、必 ずしも事業者のためだけではなくて、職業紹介に比べると非常に簡便で迅速だと。これ は大量処理の反面ですが、摩擦的失業のようなもののコストを減らすという意味では、 阿部先生がおっしゃられたように、ある一時点においてはあるのではないかと思います。  有田先生が言われたように、ニーズがない所では、雇用の安定といっても、現実はな かなか難しい。逆にニーズに合致するような人材育成をしないといけないということで、 資料3の2頁の4つの区分けで、例えば事務機器操作とファイリングで、派遣元での常用 雇用を考える場合でも、非常にスキルが高くて、常用型として雇用しておいてもいろい ろ派遣先を見つけてあげられるという意味で、市場におけるニーズが高い人に育て上げ れば、その意味では企業のニーズも高いのではないかと思うのです。  それがソフトウェア開発とか設計でしたら、ある意味では現実もそうなっている。問 題は、事務機器操作、ファイリング、製造で、例えば派遣元で雇っておいて、いろいろ な所に派遣先を見つけられるようなケースがあるか。あるいは、そのようなスキルを持 ち得るかどうか。そこまでのスキルアップというのは、なかなか現実には難しいかもし れないです。  派遣先でも、派遣元でも、あるいはその他の所でも通用するようなスキルということ にならざるを得ないのではないかという感じがします。(4)にありますように、方向 としてはこのとおりだと思います。それは、外部労働市場でのマーケッタビリティみた いなものを高めることを併せてやらないと単なる絵に描いた餅になる可能性があるとい う感じがするのです。 ○鎌田座長   今のお話で、労働市場の観点から考えて、(2)の禁止すべきという意見があるのです が、禁止して、労働者がそれでよくなるのであれば、登録型を禁止して労働者がみんな 正社員になりますというのであれば私は大賛成です。問題は、そうなりますかという話 です。  つまり労働市場というのは、受入先の企業の雇用政策があって、そしてさまざまな多 様なニーズを持った労働者がいて、ミスマッチがあってという中で、100%ではないで すけれども、さまざまなツールを使って、一人ひとりの努力、あるいは仲介機関を使っ て仕事をしていく。  日本の労働市場においては、先ほど山川先生が言われたように、外部労働市場として のツールと機能が十分発達しない中で、正社員と非正社員との格差というかハードルが 非常に高い。その中で、例えば派遣というところを禁止したことによって、派遣労働者 が希望すればそのまま正社員となれるというのであれば、私は大賛成です。ところが、 労働市場というのは、やはり受け入れる企業の雇用管理と非常に密接にかかわってきて いるわけで、そうした場合に、例えば派遣がなくなりましたといったときに、受入企業 側でどういう行動、パフォーマンスが出てくるのか。もしかしたら、私たちは現在、外 部労働市場に存在しているさまざまなツールを1つ消したというだけになりはしないだ ろうか、その消したことがどのような影響を与えるのかという、そこだと思うのです。 だから、これは積極的に派遣というものが社会的に許容される働き方、あるいは事業と してどうあるべきかという議論と、労働市場全体を見たときに、需給調整のツールの手 段としてそれを封鎖したら、それによって労働者が良くなるのかという問題と、ちょっ と違う議論なのですが、私はこの2つの議論をやはり見ておかなければいけないだろう と思うのですね。  これはもしかしたら経済学の人の発想なのかもしれません。つまり、労働市場のツー ルを1つなくしてしまおうと、法的に強制的になくすわけですよね。そうした場合に、 でも労働市場は労働市場として機能するわけですから、いわば外部から一種の歪みをか けるわけですよね。そのことによって、ポジティブになっていくのであれば、非常に良 いのだろうと思うのですけれども。 ○阿部委員   確かに、登録型がなくなったら大変だろうなとは思うのです。ですから、登録型を禁 止すべきかと言われたら、私はそうでもないだろうと。ただし、登録型の中にどうやっ たら安定した雇用、あるいはスキルのレベルアップを組み込めるかといったところを設 計すべきではないかとは思います。ただ、私は派遣元がやるのは、先ほども言ったよう に難しいのだろうと思うのです。でも、何かやらない限りは、やはりこの問題はずっと 続いてくるような気がするのです。   ○鎌田座長   今のお話は(4)の所とも密接に関係しますよね。つまり、派遣元、派遣先ではない とすれば、国がどんな役割を果たしていくのかということ、あるいは公共の職業能力開 発がどういう役割を果たしていくのか。そういうことと密接にかかわってくる問題であ ると思うのですが。   ○阿部委員   登録型か、あるいは日雇はまたあとでなのかもしれませんが、スキルレベル、あるい は失業期間が長引く人たちというのは、たぶんスキルの低い人たちだろうと思うのです ね。そういう人たちが雇用保険だとか社会保障といったところで支えられるのは、かな りマージナルな部分ですから、そんなにないのではないかと思うのです。たぶんそこの 部分がスポッと抜けていて、だからこそ、この前あったように働き続けないと食べられ ないという人たちが出てきてしまっているのではないか。そこをうまく社会が手を差し のべて訓練が受けられるとか、食べながらも訓練が受けられるという状況に環境を改善 してあげれば、少しは変わるのではないかとは思うのですが、今のままでは派遣元もで きそうにないし、労働者が自前でできるかというと、そこも難しいだろうしということ ではないかと思っているのですけれども。   ○有田委員   今の点、阿部先生がおっしゃったのでいくと、例えば雇用保険とは別のような社会保 障制度で。   ○阿部委員   社会保障をもっと制度でやってあげるとか。    ○有田委員   その間の所得保障をしながら、教育訓練を受ける機会を保障すると。ただ、併せて短 期とはいえ、派遣元にせよ派遣先にせよ、その間は一定の使用者としての責任を負う立 場にあることを考えると、使用者として一定のキャリア形成をするための責任を一部は 担うことは十分考えられるというか、考えるべきではないかと思うのです。ただ、それ を非常に短期の登録型で派遣期間も短い中で、どういう形で実効あらしめるのかという のは、制度を具体的に考える時には難しいと思います。  それを何とかしながらも、でも背後で支える国の施策みたいなものはやはり整備しな いと、どちらにしても難しいとは思います。ただ、国のそういう支援策みたいなものだ けでいいかというと、やはりそうは思わない。使用者としての責任を果たすということ、 それを業として、事業として行って利益を上げているからにはという観点が、どうして も私の頭から抜けない。だから、やはり一翼を担わないといけない。ただ、仕組みをど うすればいいのかは、まだちょっと具体的には描けませんが、考え方としてはやはりそ のように考えるべきではないかと思っております。 ○阿部委員   あり得るとしたら、登録型の派遣労働者の方ができるだけ長く働けるとか、スキルレ ベルが上がっていくというのを、もしモニタリングできれば、それに応じたメリットを 与える、あるいは労働期間が短いとか、スキルレベルが全然上がっていないという人た ちは雇用保険料率を上げるなどというインセンティブを与えて、安定した雇用、それか らスキルレベルを高めることは、理論的には考えられますよね。現実にできるかどうか は、また別の話でしょうけれども。   ○鎌田座長   この問題を考える時に、登録型に関連してですが、登録型の中でも2つ分けて考える 問題があるのではないか。1つは例えば学生、あるいは既婚女性など、本当に一時的・ 臨時的な労働需要に対して、臨時的・一時的に働くという、本当にテンポラリーに働く という働き方。もう1つ、登録型と言いながら、10年以上も反復・更新して働いている、 それで常用ではない。これはいったい何なのだろうと思うのです。これは何かというと、 私はよくわからないのですが、経済的な観点から言えば、つまりグローバリゼーション の中で、企業としての経営上のさまざまな波動性というものがあって、どれだけの労働 需要が必要なのかということが極めて読みづらい世の中になっている中で、リスクがあ るわけですよね。  良いか悪いかは別として、解雇がある程度制約されている中で、雇用期間をある程度 短く切って、短い労働需要に対して短く働いてもらうというならわかるけれども、実は 長い労働需要を登録型でずっと反復更新していくと。これはいったいどういうことかと いうと、つまり派遣先の企業が負っている経営上のさまざまなリスクを、派遣元は雇用 主として負っているのかいないのか。もし負わないとすれば、それは労働者が負うこと になると。しかし、一方で、いわば長期にわたって事業を行うというメリットは、派遣 元は得るわけですよね。そこから利潤を得ると。こういったことが、いかに経済活動と 言いながらも、労働者のリスクで事業展開をするというのはどうなのだろうか。そうす ると、反復更新していって、長く働くことが前提になっているのだったら、当然、雇用 主としてそういう人たちについてはしっかりとしたスキル、教育訓練をやるというコス トをかけていかなければいけないのではないか。それをなしにして都合よく使おうとい うのは、問題ではないか。  そうすると、実質常用みたいな人たちに対しては、常用としての取扱いをしてあげた らどうですかということを、こちらとしては考えていかざるを得ないのではないかと思 うのですね。それは本当にテンポラリーな労働需要に対して、テンポラリーな働き方と して選んでいる人たちが、今後将来においてどのようにキャリア形成していくか、その ための支援をどうするかという問題と、実際テンポラリーでない人たちがテンポラリー という形式で、見せかけで働かされて、しかし職業教育訓練というコストが適正に企業 に負担されていないという問題を、どう処理したらいいのか、ここだと思うのですね。 これは分けて考えなければいけないと私などは思うわけです。  1つは雇止めという問題があって、これは山川先生もよくご存じですが、雇止めとい うのは、通常の直用の場合には一定の雇止め規制というルールがある。派遣の場合に、 こういったルールはあるのか、ないのか。もしないとすれば、これは派遣は得ですよね。 扱う側とすると、雇止め規制がない世界ということで、そういったことが労働市場のあ り方として、果たして公平と言えるだろうか。もし、やはり派遣とは言いながらも、雇 止め規制があるのだと考えれば、派遣における雇止め規制というのは、どういう問題と して考えたらいいのか。これはなかなか難しい問題なのですが、1つはこういう問題も考 えていかざるを得ないのではないか。 ○山川委員   今の点について、10年も登録型をやっているというケースは、現在は26業務だったら 問題なくなっているのかもしれませんが、期間制限で対応するというのが1つの方法で、 非26業務については、それでやっていると思うのです。もう1つは、現実にそれが展開さ れてきてしまった場合に、座長のおっしゃられたような雇止めの問題になってくるとい うことで、やはりもうそれは保護に値するのではないか。本来は短期的だからといって も、現実に反復更新してきた場合はですね。あとは結果的な問題だけではなくて、もと もと10年見込まれることがほぼわかっているのでしたら、短期で反復更新を繰り返すこ と自体がよいのかという問題があり、労働契約法17条2項では、必要な期間に合わせて、 そもそも期間を設定すべきだとされています。10年という期間は設定できませんが、細 切れで反復更新しないように配慮しなければいけないという規定が通常の有期雇用でも できたわけですから、派遣労働者については、それは具体的にはどういうことになるの かということを考えてもよさそうな気がします。  もう1つ別なことになるのですが、先ほどのスキルも、ソフトウェア開発みたいに外 部市場でかなり活用できるようなスキルと、先ほど座長の言われたエントリーレベルみ たいなスキルの問題があります。事務機器操作ですと、実際には26業務とはいえ、実際 にはエントリーレベル的なスキルがわりと多いみたいな気もします。事務機器操作でも、 私はそういうもののプロだから、非常に引っ張りだこであるという人をどれだけ養成で きるかというのが1つで、それはそんなには広がらないとすれば、エントリーレベルであ っても、別に紹介予定派遣というのは高度なスキルがあるからそうしているのではなく て、エントリーレベルからじっくり養成していくというタイプですから、どうやればい いかという結論はないのですが、それを推進していくのが、必ずしもスキル能力開発を 十分に行えない場合の現実的な対応策かなという感じがするのですけれども。 ○鎌田座長   先ほど私の話とのつながりで、一言だけ言っておきたいことがあるのですが、常用型 というのは、雇用の安定が図られているという意味では、派遣としては非常に社会的に 許容できる事業形態だというお話があったと思うのです。その場合の常用型は、先ほど 言ったように反復更新の問題もありますので、私は無期を考えています。いまは常用型 というのは有期でもOKなのです。つまり、社会的に許容されるというのは、社会的に評 価できる派遣。ただ、その社会的に評価できる労働者の雇用の安定の図れる派遣という ものが、それだけに限定するということではないのですが、先ほど言っ たようにミスマッチの防止ということもあります。ただし、反復更新みたいな議論もも し皆さんが聞いていてそうだなと思われるのであれば、私はこの場合の常用型は、無期 の人たちをイメージして考えています。その辺では、許可基準とちょっとずれが出てき ますので、これはなかなか面倒な問題なのです。ただ、許可基準の問題とルールの問題 をどう考えるかというのは、少し違うのかなと思っています。   ○山川委員   私も基本的には同感で、厳格に無期に限るかどうかという問題はあろうかと思います が、先ほどの資料3の4頁に常時雇用の定義、これは現在許可制か届出制かという次元で の話で、手続的な問題ですが、(1)が期間の定めなく雇用されている者で、(2)が反復継続 の場合でもよいということで、そこまではあり得るかと思いますが、例えば(2)の「すな わち」という所で、「1年を超える期間について、引き続き雇用されている 者」とあります。これが(1)と同等と認められるか、「すなわち」でつなげられるかどう かは、検討の余地があるのではないかという気はします。   ○鎌田座長   また戻っても結構ですが、今度は日雇派遣のほうに議論を移していきたいと思います。 日雇派遣の在り方についてですが、(1)、(2)、(3)と問題を立てております。現 行法の中では、法的には登録型の一部が日雇ということですが、山川先生の用語で言う と超短期雇用です。特に日々雇用に関して言うと、かなり異質な問題があるのではない かと思っています。また、これは人材派遣協会、それから派遣ユニオンの方でも発言が ありましたし、またJSGUの所でも議論があったのですが、私がこだわったのは、日雇派 遣と言うけれども、日雇派遣というのはどういうものをイメージしているのですかとい うことなのです。登録型は登録型なのですが、私がヒアリングで理解したところでは、 基本的には日々雇用で、かつ軽作業などの業務を行っている者を日雇派遣というように、 皆さんは共通認識をしているのではないかと思っています。  ですから、超短期雇用ということで言えば、それはいろいろなものがあると思うので すが、今言ったように業務としては限定されたイメージとつながっている。ですから、 例えば非常に危険度が高いなどというのも、まさにそういったところから出てくる議論 ではないかと思います。これについて、中心的な議論は日雇派遣を禁止すべきという意 見があるが、これをどのように捉えたらいいのだろうかということですから、是非何か ご意見をいただきたいと思います。 ○阿部委員   たぶん先ほどの議論と同じことなのでしょうけれども、日雇派遣の問題は、日雇派遣 が悪いのか、それとも日雇派遣で働く人たちがうまくほかの仕事に就けなくなるような、 その中にスキルアップの制度、あるいは何かそういったものがないからいけないのかと いうのは、ちょっと分けて考える必要があるのではないかと思うのです。日雇派遣その ものが本当にいけないのかどうか。もしそこの中に、例えばスキル形成やキャリアパス が見えるような仕組みが入っていれば、実は問題ないのかというのはちょっと考えない といけないのではないかと思うのです。たぶん今はそれがないというのが問題であって、 もしそれができてきたら、実は日雇派遣もニーズとしてあるし、機能として残しておく べきではないかという議論もできるのではないかと思うのです。そこは、たぶん先ほど の登録型の議論の蒸し返しになってしまうのですが、私自身はまだそこがうまく整理が ついていない。   ○有田委員   ただ、そもそも1日単位でそういうことが考えられるかというのがあります。それと ヒアリングのところで、日雇派遣で働いている方の実態のお話を伺うと、非常に過酷な 状況で、これは労働条件が何かして上がっていくということも、およそ期待できないよ うな感じに受けたのです。  もう1つは、やはり安全面などで、その日限りで行って、しかも直接雇われているわ けでもないという関係の中でそこで作業をすると、やはりいろいろな面で被災のリスク も高いし、非公開の時なので言っていいのかわかりませんが、被災した後の対応が非常 にひどいというお話を伺うと、そのまま放置するわけにはいかないのではないかと思う のです。規制を必要としているようなある種の立法事実というか、弊害がそこにあると 私は認識したのですけれども。 ○阿部委員   それはそのとおりだと思うのですが、例えば学生がアルバイトとして日雇派遣に登録 することについては、社会もそんな悪いことではないだろうと思っているのではないか と思うのですね。ただし、いわゆる縁辺労働ではなくて、誰かほかに収入源があるなど ではなくて、本人が働かなければ食べていけないという状況の中で、日雇労働というの はさまざまな問題が出てきているのはたぶん事実だろうと思うのです。だから、先ほど 座長もおっしゃったように、いろいろな人がいて、いろいろな状況で働いていると。そ のときに、日雇の仕組みというのを、こっちは良いけれども、こっちは悪いなどという のがあるはずなので、そこをどう改善するかということなのではないかと思ったのです。 私は有田先生がおっしゃるのもそのとおりだと思いますし。   ○有田委員   先ほどの座長の登録全般の話にもつながりますが、いまの阿部先生のお話からすると、 人の属性で禁止の対象にするのか、そうでないのかということが立法技術として可能か というのが1つ、問題としては出てくるかと思います。例えば、業種でここは非常にリ スクが危ない、だから駄目だというのは、いまもそういう形でやられているし、比較的、 立法的な問題もなくできると思うのですが、人の属性で切るというのはなかなか難しい。 私の所の学生の中にも、例の派遣会社で日雇のアルバイトを経験した学生が何人もいて、 データ費などを取られたというのでゼミでも議論しました。やはり学生は仕事が簡単に 見つかるからというので、よく利用しているみたいです。ただ、それもいろいろな危険 が伴うことも十分あり得るので、学生だからそういう所に行かせていいとはならないと 思うのです。そのように、こういう仕事は絶対駄目だというのを書けるのは共通してい るのだろうと思うのですね。  ただ、それ以外のところで、学生だと家計補助のためにというか、仕送り補助のため にというか、それは認めてもいいのではないかというのもあり得るかとは思うのです。 これも、例えば全面的に禁止したときに、代替のものがあり得るかというと、職業紹介 の方で、例えばユニオンの方ですか、おっしゃったように、実際今でも配膳や家政婦紹 介などというところは、登録しておいた人の中からピックアップして紹介していくとい うことで、その登録をある種、いまはデータ化して、それを携帯にかけてという、今の 派遣と同じようなことは紹介でもツールとしてはできるようなものを持っていると思う のです。この場合には、代替となるものが十分あり得るので、例えば全面的に禁止した としても、そこで働く場が、そういうニーズに応えられないということはなくなるので はないかと思います。だから、もしそういうニーズに応える事業としてやりたいという のであれば、業態を変えればいい。派遣としての意味として、例えば派遣元として、使 用者として何かするということが、おおよそ日雇では考えられないと思うので、派遣と いう業として認める必要があるかというと、私はあまりないのではないかと思います。 何かやるとしても、先ほどの教育訓練にしても何にしても、一定の期間がいると思うの で、短期と言っても限度があるのであって、日々ではそれはおそらく難しいと思う。だ ったら、紹介で十分対応できる、ニーズに応じられるということであれば、これは紹介 で十分いいのではないかと思いますけれども。 ○山川委員   スキルアップの点はなお残りますが、どちらかというと日雇派遣の問題は、ある意味 で若年雇用の問題と共通しているところがあって、それはより広い雇用政策的な意味か ら図るということなのかなという感じがします。ニーズがあることは間違いないので、 やはり有田先生が言われたような紹介にどれだけスムーズに移行できるかなど、その辺 りは労使双方にはっきり道筋をつけるということかと思います。  ただ、そもそも日雇派遣自体が全面的に排除すべきかというと、もともと短期・臨時 的という点は、派遣の一方の趣旨には合っているものですから、問題になっているのは、 先ほどお話にありましたように、派遣法そのものというよりも、雇用主責任の基準法違 反とか労災などのほうです。ただ、それでは紹介にしても同じではないかという問題も なくはないのですが、そこはそもそもなぜ派遣が合法化されるに至ったかという基本に 立ち戻れば、もともと供給事業として禁止されていたものが、派遣元事業主が雇用主で あり、かつ派遣先は指揮命令しか行わないというものだけ切り出して解禁したわけです よね。それはたぶん雇用主がはっきりしていれば、雇用主責任が徹 底できるという前提に立っていたのですが、有田先生が言われたように、それが日雇派 遣のような場合、どこまで期待できるか。  しかし、一方で例えば通訳などでしたら、あまり雇用主責任の点で問題がないから、 一概にすべてカテゴリーで分けるというわけにいかなくて、一方で直用に比べれば雇用 主責任の果たし方が非常に不十分になりやすい場合がある。かといって、全部排除する わけにはいかないとすると対象業務による問題の大きさというのでしょうか。安全衛生 などでしたら、事後的な是正がなかなか効かないというか、怪我をしてしまった場合に、 特に大怪我などになった場合には、事後的な是正や救済は限界がありますから、そうい う雇用主責任の果たし方と、起きる問題の大きさみたいなものを相関関係で考えていく。 どう区切るのかというと、なかなか難しいのですが、もし制約するとすれば、そういう 2つの観点から考えていく。抽象的ですが、そもそも派遣が例外的に許容されるに至っ た前提と趣旨から考えていくということかと思いますけれども。 ○鎌田座長   今お三方の話を聞きながら、私の方で少しまとめてみたいと思うのですが、まず日雇 派遣の問題といった場合に何が問題なのかということを、派遣法の趣旨から考えてみよ うということで、それは労働者供給事業の禁止を解禁して、派遣法を認めてきたと。そ ういう経過があった。しかし、それにもかかわらず、例えば建設や港湾などは禁止して います。こういった政策的な視点が1つあるのではないか。  もう1つ、臨時的・一時的労働需要に対して、需給調整システムとして派遣を認めて きたと考えた場合に、そういった趣旨から言って、日雇が直ちに問題があるとはならな いのではないか。臨時的・一時的という趣旨で言えばそうだと。ただし、労働者の保護 を図る、あるいは労働者の雇用の安定を図るという、もう1つの理念から言うと、日々 雇用に関して言うと、この日雇派遣は限りなく雇用主としての責任が縮減した形態だと 見るわけで、現行法ではこれは禁止にならないのですが、新たな派遣法の将来像を考え る場合に、この辺のところをどう考えるのかということが1つあるのではないか。  もう1つ、普通の登録型と違うように言えるのは、今山川先生もおっしゃいましたが、 いわば派遣法以外のところで基準法違反など、いわゆるコンプライアンスの問題で、さ まざまな問題を事業者が指摘されてきたという経緯がある。これは皆さん新聞などいろ いろなところでお聞きだと思いますが、事業者が社会的な正義や労働者の利益というも のに対して、問題ある現象が多発したと、これをどう評価していくかということ。こう いったことから、この日雇派遣の問題は考えてみたらどうだろうと。これは確かにどれ も登録型というのとはまたちょっと次元の違う話ではないかと思っています。私はその ような形で理解したのですが、何か付け加えること、あるいはそれに対してご意見があ ればお願いします。  もしご存じなら、事務局にお答えいただきたいのですが、建設業や港湾は禁止してい ますよね。なぜですかということですよね。政策的なものなのですが、どういった経緯 で現在も禁止されているのか。もしわかればお願いします。 ○田中企画官   建設、港湾については、制度創設時から適用除外業務としております。港湾について は、業務の特殊性に鑑みて、派遣法に基づく労働者派遣事業とは別に、港湾労働法にお いての港湾労働の実情を踏まえた特別な労働力需給調整制度が設けられておりますので、 労働者派遣法の労働者派遣事業の対象とすることは適当ではないということで、港湾労 働の特性を踏まえた形で、別法においてそういう需給調整の議論がされていることから 適用除外になっております。建設についても受注生産、総合生産等、建設業務に対して の特殊性があります。また、いろいろ歴史的な経緯もあって、建設労働者の雇用の安定 を図るためということで、特別な法律が設けられており、この中で建設労働者の実情を 踏まえた、また特別の制度が設けられているというように特別な扱いがされております ので、これも労働者派遣法の労働者派遣事業の対象とすることは適当ではないという形 で、適用除外業務にしていると。   ○鈴木課長   それが公式見解なのですが、実態を申し上げると、要は建設も港湾も、いわゆる手配 師等の中間搾取等が実態として非常に起きやすかった業種ですので、そういったところ に派遣を適用すると、いわゆる無法状態になってしまうであろうということもあって、 この2業種については禁止しているという実態があります。   ○鎌田座長   今課長がおっしゃったことは私も同感で、いわゆる手配師というのですかね。労働者 派遣事業は手配師ではありませんが、しかし、基本にあるのは、問題行動を多発させて いた事業者集団がいて、それに対して派遣法においても禁止をするということに政策的 な意図があった。ただし、そうは言っても、建設や港湾においても労働力需給調整は必 要なわけですから、それは受け皿として、いま企画官がおっしゃったようなさまざまな システムを作っているということだと思うのです。   ○山川委員   港湾、建設は、有料職業紹介事業でも禁止されていますよね。そうすると、手配師と いうのは、いわゆる中間搾取系の問題であるということで、日雇派遣は、今座長がおっ しゃられたように、今行われている派遣事業というのは、そういう手配師云々の問題で はないという分野について認めたと。   ○鎌田座長   従来の手配師というのではないと。    ○山川委員   先ほどの派遣が難しければ紹介に移行するというのも、建設、港湾と同じ発想だと、 それもいけないということになる可能性があるのですが、ちょっと問題の質は違うのか。 これは業種によりますが、中間搾取云々というのは、もうある意味でクリアされている 業務でも、雇用主と就業先の分離の問題が対象業務によっては非常に大きくなると。そ ういうところで、やはり職業紹介と派遣とは違うという位置づけは可能なのかと思いま すけれども。  もう1つは、そんなに実態は変わらないかもしれないのですが、派遣の場合は誰を送 っても変わらないはずだというコンセプトで、受入先は誰を希望するということはでき ないので、就業している人の個性を捨象してしまうシステムなのです。そうすると、そ の点でも紹介とは違うから、雇用主と就労先を分離することによって問題が大きくなる ことはあるのかという気がしますけれども。 ○鎌田座長   これは、例えば労災の場合でも、今の制度でいうと、日雇派遣であっても、労災が起 きた場合には派遣元が責任を負うというスタイルですよね。   ○鈴木課長   そうです。    ○鎌田座長   その辺が、ある程度安全衛生は、もちろん派先が責任を負う側面があるのですが、派 元も自分の雇用する労働者を送って、何よりも安全で健康や生命を侵さないようなシス テムで、職場環境で働いてもらうというのが、派元としても雇用主として当然考えるべ きことですよね。ところが、日雇になると、これはどのように担保するのか。今度の日 雇指針でも、派先についてはしっかりと担保しなさいよということは書いてあるのです が、派元もそうなのですが、教育訓練、安全教育をやりなさいということになっている のですが、日雇の場合、日々雇用の場合にそういうインセンティブはあるのかというこ とと、そもそも安全教育をするというのは、どの時点で安全教育をするのか。   ○鈴木課長   日雇指針の話が出ましたので、いまの日雇指針の構造を、これは安全衛生法をそのま まなぞっておりますが、雇入れ時教育は派元、それから特別な場合の安全衛生教育は派 先という仕組みで、まず派元においては、たぶん実態上は、例えばどこかの駅前か何か で集合して、それからバスで連れていきます。その集合時、もしくはバスの中で、こう いうところを注意しろという教育をやるのが、たぶんいちばん現実的かと思います。派 先に行ったら、これは派先で実際、機械などを使うのであれば、機械についてのこうい うことをすると危険だからという教育をすると。こういう役割分担でやっていただくの が本来の姿であって、あの指針ではそういったことをしっかりやってください、という ようにいっているものです。   ○鎌田座長   そうですね。でも、非公開のヒアリングで聞いたので、個別ケースだと言われると私 も自信がないのですが、安全上の指示が何もなかったと言っていましたね。そもそもど んな仕事をするのかもよくわからない。一般的に倉庫の仕事という程度のことは教えて くれるけれども、具体的にどういう中身なのかは全然わかりませんでしたと。今の課長 のお話ですと、まさに就業前に派元の従業員が、何らかの形で派遣労働者に具体的にこ ういう仕事で、こういった危険があって、実際こういった所で事故があるようですよ、 あるいはこういった危険を回避するために、安全に配慮してくださいということをやる べきだということなのですね。やるべきだということだから、やればいいということに なるのですが、日雇派遣では何かちょっと想像がつかないというかな。  またあえて問題提起の意味で、私の考え方というか、感じを申し上げてご批判をいた だきたいと思うのですが、臨時的・一時的な労働需要に対して、派遣という労働力需給 調整のツールを用意しましょうということで、1999年の改正があったわけです。そのと きには、私などはやはり通常の登録型派遣を想定していて、実は日雇派遣はあまり想定 していなかった。あまりというか、想定していなかったわけです。なぜそうなのかとい うと、日々雇用の場合には、そのような安全教育だとか、安全衛生上のさまざまな措置 を派元が行ってということのコストは、たぶん負担できないのではないか、ある程度の 長期間にわたって、仮に3カ月ならあれば教育訓練のコスト負担ということもあり得る かと思いましたが、日々雇用はあまりそういったことに手間ひまをかけていくと、大変 な労力とコストになるわけで、事業としては成り立たないのではないかという考えでい たのですが、ところが広がっていった。  何でこういう事業がそんなに広く行われるのか。労働力の需給調整のマッチングのメ リットはわかるのですが、いろいろ調べて、あるいは新聞の報道などでデータ装備費な ど、どうもいわゆる正当な原因があるかわからない費用というか、経費が事業者の手元 に残っているということでした。それから日雇雇用保険の保険料などもほとんど適用が なかった。当時は全然なかったということで、派遣でなくて日雇という形態であれば、 日雇雇用保険という負担も当然出てくるわけで、それもないということで、非常にコス ト負担が少ないところで行われていた。かつ、それがご議論があったように派遣法違反、 さまざまな法律違反を伴いながら行われてきて、ご存じのように指導も行われていると いうこと。そうすると、派遣元の雇用主としての責任が十分果たせていないというとこ ろで成り立っている事業という側面があると思いました。  しかし、そうは言いながらも、労働者にとって需給調整のツールとして有用であれば、 そこは適正に指針などで図っていけば、改善ということもあり得るかと思ってもみたの ですが、ヒアリングなどで聞きましたところ、JSGUは原則日雇派遣は禁止すべきではな いという意見をおっしゃったのですが、しかしながら、危険性が高くて、安全性が確保 できない業務については別で、これは禁止すべきであるという意見をおっしゃった。人 材派遣協会のご意見も、やはり危険性の高い業務については、この日雇派遣というあり 方に問題があるのではないかというニュアンスの表現があったように記憶しています。 ただし、派遣協会は禁止には反対でしたが。  そして、これは非公開で日雇派遣で働いている労働者の方に聞いたのですが、先ほど 言いましたように、安全衛生という点では非常に問題がある働き方であった。こうする と、日雇の派遣事業のあり方と、業務の危険性の特性を考えた場合に、政策的な視点か ら言うと、臨時的・一時的労働需要の1つの手段としても、認めるのは難しいかなと私 は考えているのです。その辺のところでご意見があれば、お聞かせいただきたいのです が。 ○阿部委員   たぶん日雇派遣の労働市場におけるファンクションは有用であるが、実際に日雇派遣 をしている業者はコンプライアンス上は問題があるので、日雇派遣は禁止すべきではな いか、というようなことに聞こえますが。   ○鎌田座長   コンプライアンスというか、業務の特性と、そういう問題と。    ○阿部委員   ただ、本当にそれで日雇派遣がなくていいのかどうかというのは、やはり先ほどの登 録型と同じ議論なのですが、同じかなと思うのですね。ただ、日雇派遣のファンクショ ンは、どうしてもそういう問題が起こるようなものだというのであれば、それは禁止し ないと、やはり問題はずっと引きずるとは思うのですが、まだ私の中ではそれが整理で きない。   ○鎌田座長   今阿部先生がおっしゃったように、禁止した場合に、先ほどの登録型と同じようで、 何を受け皿にしていくのかという問題ですよね。これは私はやはりハローワークを含め た国が責任を負うべきだと思っています。このように労働市場の中では、コンプライア ンスが問題となる市場においてこそ、国が、受け皿になっていくという組織の立て方を する必要があると思います。今私が言ったことは、先ほど私が登録型で言ったのと同じ 問題ですね。これをもう片方で、国の責任ということ、この面での責任を日雇の派遣と いう形で働いている人たちの雇用をどう安定させるか、あるいは就業機会をどのように 確保するかということの仕組みを考えずして、禁止ということは到底取り得ないと思い ますので、私はここでは国の役割ということを考えています。  現在のハローワークというか、公共職業紹介は、基本的には日雇の人たちに対する対 応はしていないと思うのですが、どうなのでしょうか。もし認識が間違っていたら。日 雇というか、こういった非常に長短期の人たちに対する国の職業紹介機能というのは、 どのような働きをしていますか。 ○田中企画官   いわゆる日雇の職の紹介という意味、いわば限られた安定所でしか。    ○太田局長   あいりんとか山谷とか、建設労働者中心に、場合によっては公的な団体なども活用し ながら、かなり限定的にやっているということが事実です。   ○鎌田座長   それは建設や港湾なども、公的な機関として公正なシステムで、そういう仕組みでや っていますよね。そうではなくて、いま日雇派遣で問題になっている形は、もちろん建 設ではないし港湾でもないわけで、こういったものを立法で対応するのか、あるいは国 の雇用サービス事業の中にどう位置づけるのかという問題はあるのでしょうけれども、 この問題を考えずしては今の話は成り立たないと思っていますので、是非その辺のとこ ろを考えながらやっていただきたい。今特にフリーター、若者の雇用の安定の促進は、 いろいろな形でお金も使いながらやっているということだと思うのですが、それとどう セットできるか、この問題もそこに組み込んで考えることを私は希望します。というこ とで、阿部先生、お答えになっていますか。   ○阿部委員   ちょっと私も考えてみます。    ○山川委員   今のお話との関係では、先ほど来、紹介にどれだけ移行するかというのが議論に出て いましたが、よくわからないのですが、携帯メールですか、それで簡単に登録できて、 簡単に情報が入ってくる。そのこと自体がそもそも悪いのかどうかは、ちょっと検討を 要するといいますか、ある意味ではマッチングのコストを極限まで減少させたシステム かもしれないので、そのことによって、例えば安全衛生などの問題が起きなければ、別 のシステム、あるいは使用者責任、雇用主責任が分離するという問題が起きなければ、 簡便なマッチングはあっていいかもしれないので、職業紹介ということでも、そういう ことが利用できるのかどうか、あるいは現実にはあまり多くないかもしれませんが、委 託募集のような、要はマッチングのコストが少ないシステムへのニーズがあって、かつ それがコストが少ないのであれば、問題が生じないような形の事業形態みたいなものに ついて、仕組み自体としてどういうものがあり得るかは検討してみてもいいような気が します。   ○鎌田座長   そうですね。私は公的な雇用サービスの在り方みたいな話を、ストレートに言ってし まったのですが、今言ったように各企業の中でいろいろな工夫があり得るので、それは もしかしたら委託募集とか職業紹介とか、さまざまな今の枠組みの中にはまらないもの もあるかもしれないので。   ○阿部委員   例えば、もう1つ考えられるのは、日雇が本当に日々雇用でなければ、先ほどの安全 衛生のコストの面なのですが、安全衛生のコストを回収できるような期間さえ設定でき れば、もしかしたらこのファンクションは残したっていいということは議論できるので はないかと思うのですね。例えば1日は駄目だけれども、2、3日行けば、機械の使い方 などがわかってくるからとか、その1日目だけちょっと気を付けなければいけないかも しれませんけれども。そうなってくると、日雇派遣はどこまでを日雇派遣というのかは 別なのですが、何か日数の制限などということで、それ以下は駄目だけれども、それ以 上だったら安全衛生のコストは担保できるなどという議論はできるのではないかと思い ます。   ○鎌田座長   私の先ほどの議論では、まさに日々雇用ですから、1日単位を考えています。ですか ら、いま先生がおっしゃったように、1日はともかく、どこまでの期間までが許される か、許されないかという問題はありますが、1日ということですから、極限ですよね。   ○太田局長   国の役割の話、国の責任で考える上において、それはいわゆる日々の雇用についての 国の責任の話なのか、あるいは我々としてはむしろ常用化のほうが望ましいと思ってい るのですが、両方含めた意味での国の責任なり、あるいは公的な需給の仕組みが必要だ と。もう少し幅広い意味と考えてもよろしいですね。   ○鎌田座長   実はそこはあまりよく考えていなかったのですが、とりあえず正社員化というか、常 用化のいろいろなプログラムがありますね。その中に、日雇の方たちの受け皿となるよ うな仕組みを考えていただければありがたいということで、広く考えてくださって結構 です。   ○太田局長   できれば常用化したほうが望ましいけれども、日々のものもニーズがあれば、その中 で考えると。   ○鎌田座長   そうですね。仕組みのところは私はよくわからないので、その辺のところは教えてい ただきたいのですけれども。   ○太田局長   今の議論に関して、今の若者の常用雇用化プランは、フリーター、派遣も含めて、か なり短い人をできる限り常用雇用、正規雇用に就けていこうというプログラムで、我々 としてもやはり短いよりは、なるべく長いほうがいい、あるいは正社員がいいという方 向です。そういう中で、この代替するものを考えていくということなのかと思って、聞 いていたのですけれども。   ○鎌田座長   その辺の受け皿をどう作るかということは、私自身もまだ明確なイメージは持ってい ませんので、場合によってはあとでどこかの機会で教えていただければ、議論したいと 思います。現行法の理屈の中で、日雇がなぜ駄目なのかということを、原理的に言うの は、明確な理由は私もよく認識できないところもあるのです。しかし、今言ったように コンプライアンスの問題とか、これはある意味では建設業や港湾で禁止しているのと似 たような話ですが、もう1つ安全衛生上の雇用主としての責任、最も大切なものは、日 々雇用という非常に超短期の中で確保するのは難しいのではないか。そうすると、そう いった意味での業務の特性、危険性というものもある。そういうことで政策的観点から 禁止ということはできるのではないかと思います。また、実際にさまざまな関係者の意 見を聞いても、具体的に軽作業の日雇派遣をイメージしておられたので、そのように現 実の実務の方たちのイメージとしても、そう変わらないのではないか、ずれてはいない のではないかと思っているわけです。  さて、もう既に時間をオーバーしてしまったのですが、ほかにご発言がないようでし たら、本日の議論はこれまでにしたいと思います。  次回の研究会では、派遣労働者の雇用の安定の2回目として、期間制限、雇用契約申 込義務等についてご議論いただくこととしたいと思います。次回の日程について、事務 局からお願いいたします。 ○田中企画官   次回の研究会ですが、5月30日(金)14時から、職業安定局第1会議室で開催を予定し ておりますので、よろしくお願いいたします。   ○鎌田座長   なお、本日の議論において追加でご意見等がありましたら、事務局までご連絡をお願 いします。これをもちまして、第5回の研究会を終了させていただきたいと思います。 皆様、お忙しいところ、ありがとうございました。 照会先    厚生労働省職業安定局需給調整事業課需給調整係    〒100-8916東京都千代田区霞が関1−2−2    TEL03(5253)1111(内線5745)