08/05/12 第2回医薬品安全使用実践推進検討会の議事録について 第2回医薬品安全使用実践推進検討会                  日時  平成20年5月12日(月)                      17:00〜                  場所  明治記念館2階「富士の間2」 ○事務局 それでは第2回医薬品安全使用実践推進検討会を開催いたします。本日ご出 席の委員の方々におかれましては、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうござ います。本検討会は、公開で行うこととしておりますが、カメラ撮りは審議に入る前ま でとさせていただいておりますので、マスコミ関係者の方々におかれましては、ご理解 とご協力のほどよろしくお願いいたします。  本日は乾委員から欠席の連絡をいただいておりますが、飯沼委員、五十嵐委員、井部 委員、上田委員、濱委員、松本委員の計6名の委員の方にご出席をいただいております。 また、本日ご報告いただく「医薬品安全情報活用実践事例の収集報告書」について、社 団法人日本病院薬剤師会より、国家公務員共済組合連合会虎ノ門病院薬剤部長林昌洋先 生と大阪大谷大学薬学部臨床薬学教育センター実践医療薬学講座教授小川雅史先生に参 考人としてご出席いただいております。  続いて、事務局側をご紹介いたします。安全対策課長松田、安全使用推進室長倉持で す。  それでは、議事に入りますので、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。以後 の進行は座長の松本委員にお願いしたいと思います。 ○松本座長 委員の先生、参考人としてご出席の先生、どうも遅い時間の開始にかかわ らずご出席いただきありがとうございます。それでは事務局から資料の確認をお願いい たします。 ○安全使用推進室長 それではお手元の資料を確認させていただきます。まずA4の1 枚紙で、本日の議事次第、配付資料の一覧がございます。続きまして、本日の検討会の 委員名簿があります。資料1-1としまして、「平成19年度医薬品安全性情報活用実践事 例の収集報告書」ということで、社団法人日本病院薬剤師会の報告書があります。同じ くその報告書の補足の資料ですが、資料1-2としまして、パワーポイントを打ち出した ものを配付させていただいています。参考資料が2点ありまして、参考資料1が「医薬 品安全使用実践推進事業について」という本事業の概要をまとめた資料です。参考資料 2ですが、「医療機関が入手可能な主な医薬品情報について」ということで、今回、主に 議題となります医療機関が収集して対応を図っていただく製薬企業、あるいは厚生労働 省などからの情報を列挙した資料が1枚紙で配付させていただいています。配付資料は 以上です。  なお、参考資料1をご覧いただきたいのですけれども、医薬品安全使用実践推進事業 については、厚生労働省におきましてご案内のとおり、昨年から2年計画ということで 実施しておりまして、この事業の目的は参考資料1の目的にありますように、厚生労働 省がこれまで取り組んできた予測・予防型の安全対策を、より一層推進する観点から、 医薬品等の安全性情報の提供を受けた医療機関が、その情報を踏まえた当該医療機関全 体としての安全使用の実践につなげていくための一助となるよう、過去の具体的な実践 事例等を取りまとめまして、その普及を図ることを目的としています。  このあと、社団法人日本病院薬剤師会のほうから、昨年度において収集した事例につ いてご報告がございます。本年度はこの参考資料1の3の本事業の進め方にもあります ように、昨年度の事業で作成された実践事例について、規模や組織・体制が多様な医療 現場において活用が図られるよう、さらに実践事例を収集し、その内容の充実を図ると ともに、その実践事例について、医療機関への有効な普及方策を検討していきたいと考 えておりますので、先生方におかれましては、この事業の進め方につきましてご意見を いただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○松本座長 それでは議事次第にしたがって議事を進めます。議事の1は「医薬品安全 性情報活用実践事例の収集報告について」です。本日参考人としてご出席をいただいて おります、林先生からお願いします。 ○林参考人 お手元にも資料がありますが、こちらにスクリーンも用意しておりますの でスクリーンを使って説明を進めさせていただきます。 (パワーポイント) ○林委員 平成19年度に実施した収集の報告です。いまご説明もありましたように、情 報の国レベルでの収集・評価・伝達というところには、市販直後の調査であるとか、評 価に関しては様々な副作用の解析評価マニュアルあるいは安全性情報なども出てきてい ます。病院に届いた安全性情報がどのように活用されているかということに関しての事 例収集が本事業の目的であるというところは、いまご説明があったところです。  実際の方法ですが、私どもの日本病院薬剤師会で受託後にワーキンググープを設置し まして、調査に協力していただく病院を選定しました。その協力病院に、負担を掛けな い程度の書面調査を行った後に、実際に実地調査を行って、事例を収集してまいりまし た。収集した事例を整理していきまして、分析評価した上で、事例集を半年でまとめた ということです。併せて可能な範囲でこの中に共通する項目について要素を抽出しまし た。こちらのスライドはワーキンググループの委員一覧です。  協力病院の選定に当たりましては、医療機関内で副作用等の安全性情報の収集、評価 に関して先進的な取組を実践しているであろう病院を抽出する必要がありました。病院 数が大変多いので、基本的に病院の病床規模ですとか、設置主体、急性期あるいは療養 といったような病院機能、地域性も配慮して選定しました。実際に学会活動などで安全 性情報の活用の発表の多いような施設、あるいは私どもの病院薬剤師会で行っている副 作用回避事例等の報告数の多い施設ということを指標にしまして、施設の選定を行いま した。このスライドの施設が協力病院です。実際に19年の11月に調査に出向きまして、 いろいろ現場を拝見させていただきながら、活用の状況を確認し、情報収集してまいり ました。今回、安全性情報を活用している事例を収集するということが、本事業の企画 ですので、届いた情報をコピーして、不特定多数の医師あるいは院内職員にお知らせを 配付するといったようなタイプのものについては、調査収集の対象から除外しました。 その情報が示すリスクを施設の診療内容に照らして評価し、有効な具体的な安全措置が 取られているか、あるいは処方医の先生方、使用患者さん、その来院タイミング等を勘 案しながら、有効に活用されるような、情報をターゲッティングした活用がなされてい る事例があるかどうか調査しました。さらに、より迅速な活用がされているか、あるい はITの活用ができる施設ではそういったことができているのか、より情報の真価を発揮 するために面談をされているような工夫がされているかといったようなことも含めて評 価しました。最終的に副作用を回避するための安全性情報が持つ、より確実な安全確保 措置を選択されているかを、収集のポイントとして実施調査を行いました。この実地調 査全体で、数多く収集した事例の中から、本日いくつかキーワードに沿うイメージを持 ちながら事例を厳選してご紹介させていただきます。  こちらのスライドは、事例の1になります。添付文書の改訂前に院内の医師が入手し た日本医学放射線学会と日本磁気共鳴医学会からのガドリニウム含有造影剤、これは MRI用の造影剤になるわけですが、腎性全身性線維症(以下、NSF)に関する注意文書の 入手を起点としまして、薬剤部で国内外の情報収集・評価の上、院内の薬事委員会で検 討した上で、院内対策を進めた事例です。  事例を時間経過を追って、お示しします。2007年2月、ガドリニウムを含有するMRI 用造影剤と腎性全身性線維症について、英国医薬品庁(MHRA)が添付文書に高度の腎障 害患者を禁忌とし、一部製剤について警告を記載するよう勧告したとの情報が発端です。 19日に院内でこのMHRAの発表情報を入手したということですが、医薬品情報室担当薬 剤師が、院内医師より入手したということが発端です。19日になりますが、関連する国 内外の情報入手に努め、NSFという病態が名前は皮膚の硬化となっておりますが、実際 には多臓器が線維化する疾患で、死に至ることもある重大な副作用である点を評価しま した。さらに副作用の発症は投薬直後ではなく、週単位、月単位で経過を経て発症する ことがあり、一般には医薬品と副作用の関係では発見しにくいタイミングで発症すると いことを勘案して、適切な院内処置が必要と考えて、薬剤部の責任者あるいは薬事委員 長と病院長と協議が進んでいたという事例です。  電子カルテの処方履歴から、処方状況、使用状況を抽出した上で、薬事委員会で検討 が進められました。4月23日の薬事委員会で当面の対応として、MRI用造影剤の使用は、 腎機能障害患者さんへはやめるような院内周知を図る必要があるという委員会の方針が 出てまいりました。主治医として検査オーダーをされる医師が、多数の診療科に渡って いることから、お知らせ配付だけでは周知が困難と判断した上で、実際に検査を担当さ れる放射線診断学科の医師に、患者の腎機能等の確認を要請するという措置が取られて おります。  薬剤部長、あるいは放射線診断学科の部長が協議したこと、ガドリニウム含有造影剤 を使用したMRI検査の前に、腎機能を確認するというような方策がとられまして、この 病院では、薬剤部長から院長に対応が完了したことが報告されています。時期を前後し まして、4月27日に、使用上の注意の改訂が厚生労働省より指示されました。この事例 の場合には、添付文書の改訂情報はもちろんですが、国内、海外の情報を収集して、院 内でコンセンサスを作り対策を実践していたというところがポイントかと思われます。  最近ではグローバルな医薬品開発や、グローバルな医薬品の安全性情報が医療機関に 届けられるような機会が増えてきております。このため海外規制当局による措置情報あ るいは、大規模臨床試験・メタアナリシス等に関する安全性情報をもとに、院内措置を 決定する必要もありますが、そういった場合には、各国によりまして承認用量も異なり ますし、人種も異なりますので、個々の研究デザインが証明し得る範囲を評価して、院 内で活用するための方策が必要であり、拙速になってはいけないということもあります。 一方、そういった局面でも、施設ごとに対応が必要な場合には迅速な対応も取られてい るということが事例として収集されました。  次の事例のご紹介に移らせていただきます。次も、添付文書の改訂前に、製薬企業の 医薬品情報担当者(MR)から提供された、海外措置情報を基点にして、院内の安全性情 報の活用が迅速に行われた事例です。ここでも海外措置情報という言葉が出てまいりま す。情報入手から速やかに、速やかにと言ってもこの施設では、30分と経たないうちに 処方医、使用患者を調査する作業が始まり、1時間以内に診察室を訪問して、医師と面 談して情報が届けられています。  もう少し詳しくご紹介します。米国食品医薬品局(FDA)におきまして、製造販売業者 と協議し、米国市場で麦角系のドパミン作動薬Aを心臓弁膜症の病変リスクを考慮し、 自発的に販売を中止するというような情報がありました。こうした海外情報に関しまし ては、添付文書の改訂等とは別に製薬企業からお知らせ等で医療機関に届けられること があります。そのお知らせを入手した薬剤部の医薬情報室におきまして、対処が進めら れたものです。8時半に朝いちばんで情報が届けられたようです。8時35分の段階で情 報室担当薬剤師から薬剤部長に採用薬に関して海外で販売が中止になった事例があるこ とに関してお知らせが届いたことが報告されまして、処方医、処方患者の特定がスター トしていました。  8時45分の段階では、薬剤部内での最初の検討が行われ、販売中止の根拠となった海 外の論文、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスンの調査、主として処 方している診療科が絞り込まれてきたので、協議の準備、当日の外来患者さんへの対応 を医師と協議するための処方医師のリストアップ、外来の患者さんの来院状況等の調査 も同時にスタートしていました。合わせて入院患者さんに対しての対応として、病棟薬 剤師に連絡が伝わって、使用状況調査と対応の依頼が進められ、院内のお知らせ等の準 備も進んでいきました。  そこで、専門医との協議が行われ、その結果、少なくとも外来の担当の医師へ診察室 へお知らせを用いて説明に行ったほうがよいという事、あわせて全医師、全部署にお知 らせを出すこと、当該薬剤を使用中の患者のカルテに、次回診療日にあわせて注意喚起 文書を添付すること、等の作業が計画されまして、薬剤部長と薬事委員長が協議を行っ た上で院長に報告がされ、それが実際には行われていたという事例です。  9時過ぎから外来診察室の処方医師を薬剤師が訪問して、新着した安全性情報が、重 篤であること、マスコミ報道等にもつながるので、本日診察中に患者さんから医師に朝 刊を見ながら尋ねられるというようなこともある事について外来診察室を訪問してのイ ンフォメーションが行われました。この事例では、実際に患者さんの安全を守るために は、心エコーの検査をする必要性がありまして、このことに関して、立てられた対策が 各当日来院された患者さん方にフォローアップしていただけるように案内されたのと同 時に、これは専門家からの指摘でもありましたが、安易に中止してしまうことによって、 悪性症候群等が発症する危険もあるので、副作用の懸念からすぐやめるという対策だけ ではなくて、患者さんの安全を守るために必要な対策が、専門医と薬剤部門、そして委 員会で協議されていったという事例です。そして、当日10時頃には、ほぼ病棟の入院患 者さんへの対策も協議が終了していて、当日には全医師、全部署にもお知らせが配られ、 安全措置が取られていったという、分単位、時間単位で対処が進んでいったような事例 で、かつ副作用対策の協議が院内で専門職同士で練られていったという事例かと思われ ます。  事例の3に移らせていただきます。こちらの事例は同じ薬に関してなのですが、今回 施設規模の違う場合の状況も把握するということで、比較的規模の小さい施設に調査に 入って確認された事例です。電子カルテ等が導入されていない施設で、医薬品情報担当 薬剤師が薬歴管理簿から患者と処方医を特定して、処方医へ情報提供しました。また、 薬局長と院長が協議して、医薬品安全管理委員会で、全使用患者に対する検査実施を決 定し、具体的に行われていった事例です。  安全性情報は、麦角系のドパミンAの使用が心臓弁膜症の病変と関連し得るという安 全確認のための検査等も必要という情報です。こちらの施設の場合は4月19日に使用上 の注意の改訂が行われ、翌日に施設のほうをMRさんが訪問し、「添付文書改訂のお知ら せ」を医薬品情報室担当薬剤師に渡しています。担当薬剤師は、薬剤科長に報告すると ともに、薬歴管理簿から必要な情報の抽出を行い、薬剤の処方医と処方患者を特定して いっています。医薬品情報室担当薬剤師が処方医への速報としてお知らせを持参し、情 報提供するとともに、24日に医薬品安全管理委員会が開かれて、比較的小さな施設です ので、全医師と薬剤師と看護師の皆さんが参加していらっしゃる委員会になっていて、 そこでこの問題を協議して、処方医に対して、心臓弁膜症患者の有無を確認するように という指示、決定をしております。まず、最初に問診レベルで安全確認を行った上で、 心エコー検査を実施し、すべての入院患者に異常がないことをこの施設では確認してお ります。5月15日の段階で、MRから当該薬剤は海外で市場を撤回した旨の情報を入手し、 薬剤科長と院長、診療科医師で協議をして、再度検討することになりました。  この施設では、危険因子である長期服薬が必要な薬剤であることと、当該事象が高齢 者では重篤となり得ることに配慮して、採用中止を決められています。医薬品情報室担 当薬剤師が代替になる医薬品の調査をして、非麦角系の類似薬を抽出、推奨する形で協 議に至っております。ここでも悪性症候群の危険性については、切り替えに際して主治 医に注意喚起されました。外来患者さんについても、この段階でエコー検査を来院して いただいて実施し、すべての患者さんに問題が発生していないことが確認されていた施 設です。  事例5に移らせていただきます。事例番号が飛んでいますのは、もともとの報告書の 事例の中から本日のプレゼン用に一部の症例を抜き出したため番号が飛んでいるという ことです。添付文書の改訂などがございますと、先ほどのように面談して情報を伝える、 あるいは、処方医、処方患者を特定して情報を伝えるという作業もありますが、処方オ ーダリングシテムを導入している施設では、これを活用して、処方医師へターゲットを 絞り、処方時に情報提供するというような取組ができます。併せて入院患者さんについ ては、病棟薬剤師がチェックしていたという施設がありましたので、こちらをご紹介し ます。抗生物質Aについて、劇症肝炎の副作用が追加されました。8月30日に当該情報 を入手したということで、手順にしたがって、医師へ情報提供を開始しましたが、同時 に院内LANシステムで報告するとともに、病棟薬剤師に対して抗生物質Aを使用してい た場合には、副作用の発現を確認するよう医師と協議するような協議も行われていった ようです。また、全体に知らせる意味では、院内情報紙も作成されています。ここに具 体例としてオーダリング画面のコピーで出していますが、抗生物質Aを医師が処方され た際に、ボックスワーニングが出て、添付文書で劇症肝炎が記載されて、肝機能検査が 必要ですというようなメッセージが出るので、医師にとってたくさんの紙を手元に置か なくても、こういった必要時に必要な情報が提供されるという形態が取られていました。  もう1つ。角度の違った事例を収集いたしました。先ほどは処方オーダリングシステ ムを効率的に活用して、この場でお薬を使われる際に情報を医師に提供していったわけ ですが、実は最近医療機関では患者さんの持参薬という問題があります。これは院内で オーダリングした薬剤ばかりでなくて、紹介医療機関からの持込薬もありますので、オ ーダリング上でも、チェックできないような局面もあります。こういったものに対して、 オーダリングシステムのガードとともに、病棟薬剤師が持参薬点検を通じて、問題点を 回避、提案できたという事例がありました。  具体的な安全性情報の概要ですが、肺動脈性肺高血圧症に適応を有する新規採用薬A、 経口血糖降下薬Bこの2者を併用すると、肝機能検査値上昇の発現率が2倍に増加する ということで、添付文書で併用禁忌と位置づけられています。こちらの施設では、採用 の時点で薬事委員会において、この医薬品の採用を決定されていまして、情報を調査し た上で、AとBが禁忌に当たるということ、オーダリングシステム上では、この2者、A とBを併用不可にするという措置を登録することを委員会で決定しています。これによ りまして、当該施設でオーダーされるAとB薬に関しては、注意喚起がなされるわけで す。一方で、先ほど申しましたように、持参薬に関しては、オーダーがないので、ここ ではシステム上は警告が出ないということになります。その対策が以下です。この施設 では、毎朝薬剤師全員ミーティングが行われているそうで、全員ミーティングにおいて、 医薬品情報室担当の薬剤師から、新採用薬剤に併用禁忌となる薬剤があるので、処方オ ーダリングシステムでチェクできないような持参薬については、病棟薬剤師がチェック してほしいということを周知徹底されたそうです。  しばらくしまして、ちょうど受け持ち患者さんの持参薬として、経口血糖降下薬Bを 服用中であることを把握していたわけですが、ちょうど肺動脈性肺高血圧症の治療薬A が、初めて処方されたという情報に接しまして、院内ではBは処方されていないので、 オーダリング上は引っかからないわけですが、Aについては禁忌だということで処方医 に連絡をして、経口血糖降下薬Bの一時中止の指示が出たような事例がありました。実 際にこういった情報活用のあり方もあるということです。  多くの事例の中から抜粋して、事例を何例かご紹介いたしましたが、院内の安全性業 務、安全性情報の活用業務に関しては、情報収集、整理、評価・解析、対応と大きく分 けてこの4ステップがあるかと思われますが、いずれの事例におきましても、具体的な 措置の実施という最後のステップにおいて、お知らせを配付するというような平板な情 報の処理ではなくて、何らかの措置が取られていたということが窺えたかと思います。 その前段には、情報の評価、収集といったような、各施設ごとの取組が窺えたわけです。 情報の収集ということで見てみますと、いちばん左にあります、緊急安全性情報から、 添付文書の改訂、あるいは厚生労働省から発出されます「医薬品・医療機器等安全衛生 情報」、あるいはDSU、そして最近では様々な情報がホームページでも収集できます。  今後の課題として、ホームページが最もスピードが速いと今回調査をしていて感じら れましたので、ホームページ上に安全対策通知のようなものも載っておりますので、こ ういったものを活用していくというような方策も必要なのかなと調査をしていて思いま した。併せてこれは医療機関単位であっても、個人であっても、こういった医薬品医療 機器の安全性情報の配信サービスというものも最近では進んできているようなので、こ ういったものを活用するということも、よりタイムリーな情報の発出には必要なのかな と、収集の部分では考えられました。  また、評価・分析に関しましては、全国レベルで見た場合の安全性情報の指示に関し ては、添付文書あるいは緊急安全性情報等で発出されるわけですが、患者さんをケアし ている個々の医療現場、その場でどういう対応が必要かということに関して、有効活用 という視点から言いますと、実在するリスクがその施設についてあるのかということを、 評価対応していく必要があるという点が重要です。第1は、安全性情報にかかる薬物自 体のリスクをどのようにその施設に照らして位置づけていくか、また、施設ごとに受診 患者さんの特性がありますから、そこを見きわめていくということで、薬物自体のリス クの評価としましては、構造上の特徴、クラスエフェクトかというようなこと、あるい は重篤・致死的か、頻度、服用期間はどうなのか、可逆的な健康被害か、健康被害の検 出は容易か、この辺も施設でどのような来院タイミングかということとの相関にもなっ てくるかと思われます。  一方で、施設ごとの受診患者さん特性に関するリスクとしましては、急性期なのか療 養的な施設なのか、診察等の医療行為の頻度がどのような状況にある、どのような患者 層になるのかというようなこと、また病院の機能、つまり在院日数、来院回数などに関 連して、リスクのモニタリングが実際にどのタイミングでできるのだろうかということ にもあります。先ほどの事例で言えば、エコー検査がどのタイミングでできるのだろう かと。処方日数が3カ月投与のような施設では、その日から調査に当たらないと、3カ 月放置してしまうことになるということもありますので、その日中に対処が始まる。ま た小さい施設で、入院患者さんから、まず問診だけでもしてみようという取組み、その 施設にあった対策が取られているように思われました。また、病院の規模によって使用 患者さんの数もおそらく違うでしょうから、健康被害が実際に生じうる確率、具体的な 数にも影響してくるのかもしれません。それらに配慮した迅速な措置が取られたように 拝見いたしました。特に当該施設で安全性情報の対象となる薬剤を使用中の患者さんが 生理機能・年齢・合併症・放射線照射、その他、実際の安全性の問題点のリスク因子を 有しているかどうかを考察していくということも、具体的な問題点を回避するには評価 として重要な要素だと思われました。  さて、情報の収集評価を見てまいりまして、実際に措置がどのような状況で取られて いたかということを、調査事例に共通する活用に関する要素として抽出するということ を現時点で試みてみました。医療施設において安全性情報を有効に活用するために、医 薬品情報室等におきまして、安全性情報の収集・評価と、最適な措置を立案しうるキー パーソンのような人材がいずれの施設でも存在していました。また、医療施設において、 処方医、使用患者、入院・外来の使用状況、患者さんの来院日を特定できるような処方 管理ツールは、電子カルテから情報を抽出するような方法もありますし、手書きの薬歴 簿から抽出できるという小規模施設まで含めて、何らかの形でこの薬を使っているのは 誰なのか、医師は誰なのか、患者さんは何人いるのか即座にわかるというツールが存在 しています。また、医療施設において、医薬品安全性情報の活用対策を実践するための コンセンサスを形成するための、院内の協力体制の委員会、薬事委員会であるとか、安 全管理委員会ですとか、そういたものがうまく機能していったということ。また入院患 者さんを対象として考えますと、活用の主体として、実際にシステム等ではチェックで きない問題点については、病棟薬剤師も医師をサポートして機能している様子が窺えま した。  必要な方策ということでこれを逆に考えてみますと、リスク・ベネフィットに医薬品 情報と薬物療法に専門性を有する薬剤師が配置されていることはいいことだと、どの事 例を見ても思われました。こういった薬剤師というのは、現場で業務をしながら知識と 経験を増やしていく、スキルを高めていくというようなところもあります。また、場合 によっては学会等によりまして、こういったものの養成・認定をしていくことも、1つ の方策かなと考えられます。2番目に申し上げました、処方管理ツールにつきましては、 医師、患者、使用状況を抽出可能なツールを整備していくことが必要であると考えられ ました。また、措置の実行に関しては、様々な視点で院内コンセンサスが必要かと思わ れますので、協力体制確保のための、意思統一のための委員会がタイムリーに機能して いることが必要と考えられます。また、入院患者を対象とした部分では、チーム医療を 進めて、病棟薬剤師を活用していくというような方策が効果的と考えられました。今年 度の事業では多くの事例を収集してきましたが、その中からいくつか特徴的なものをま とめて本日紹介させていただきました。以上ご報告です。 ○松本座長 ありがとうございました。  ただいまの林先生からのご報告に対して、ご意見、ご質問等はございませんか。 ○井部委員 最後におっしゃいましたが、まず多くの事例を収集したけど、5事例に絞 ったとのことです。数多くというのはどのくらいの事例があったのでしょうか。それか ら、何故5事例になったのでしょうか。 ○林参考人 実際の報告には、これに類するものを20例近く集めてまいりました。ただ、 類型化していくと同じような事例もありまして、ここですべて列挙するよりは時間の制 約ということもあって、今回は症例を非常に厳選し、報告をプレゼンテーションさせて いただきました。また、施設の事情に照らしては、確かに活発な活動が行われていると 窺えて情報収集してきたものの、実際全国に模範例として公開、配布するには、施設に よっては解釈が違うようなケースも存在したもので、それらはその20例の中から一部を 省かせていただきました。以上です。 ○井部委員 大変興味深い5事例であったわけですが、この収集報告書の体裁としては、 収集の方法や対象の選択などについてもあまり明確に示されていないので、スライドに あったような、対象の選定、収集した事例の数、それから、何故その5事例を選んだか といった、そのプロセスをもう少し書いたほうが安心して報告書を読めるのではないか と思いました。 ○林参考人 ご指摘ありがとうございます。 ○松本座長 他にご意見はありませんか。 ○上田委員 いずれも非常に貴重な報告だったと思いますけれども。1つ気になったの は、糖尿病薬に併用すると悪いというので、その場合、糖尿病薬を中止して終わってい るのですね。ですから、やはりこういう所では、代替にどういう物を持って来たほうが いいとか、そういう所まで持っていけたらと、ちょっと残念な感じがするけど、どうで しょうか。 ○林参考人 調査に入った当日の実地調査報告書をもう1回照合してみます。もしかす るとプレゼン資料に向けての中で、そこの所が一部抜けていたかもしれません。実際に やめてしまっていいということではありません。上田先生からのご指摘のように、何ら かの措置がとられていたことは確か確認してあったと思いますので、そこは再評価させ ていただきます。ありがとうございます。 ○上田委員 あと、揚げ足を取るばかりで申し訳ないのですが、心エコー、要するに弁 膜症のリスクがあるということで、この場合、全例になさるという。要するに、その薬 を飲んでたら、これは全例にしなければならないのかと。もし裁判とかがあれば、医療 上もいろいろと問題になると思います。そこで、心エコー、要するに弁膜症だったら、 医師の聴診器ということもありますね。ですから、ここだとその辺はかなりナーバスに なって、全例にやるのは行き過ぎではないかと私は感じるのですが、どうでしょうか。 ○林参考人 ありがとうございます。  最初の事例と2番目の事例で、2番目の事例では、問診あるいは医師の診察をもって 初期の安全性を確保していた事例のように思います。確か添付文書の改訂が後ほど行わ れまして、禁忌慎重投与の項で、長期使用患者には心エコー検査を実施するようにとい う添付文書上の指示が出ていたかと思われるので、このように、各施設でそのための取 組みがされていたかと思います。少し報告書の中にも、その辺のことも誤解のないよう に、必要に応じて追記するようにしたいと思います。ありがとうございました。 ○上田委員 では、それは私の誤解でしたか。申し訳ありません。  最後にもう1つ、持参薬の問題ですけども。普通、病院に来た場合、できればかかり つけの薬剤師がいて、調剤薬局で、すべての患者さんの薬剤はコントロールされている と、現在これがある程度徹底してきたと思います。これが持参薬を持って病院に入院し た患者さんにとっては、確かにチェックシステムがないのですね。この場合、偶然こう いうことがあって、調べたら見つかったわけで、これはラッキーな部類ですね。ラッキ ーでこういう症例をつかまえるのではなくて、常にそういう患者さんをサルベージする 形で、入院したときには病院のシステムの中でその薬剤について、この患者さんは日頃 どういうものを服用してるとか併用してるかをチェックできると理想的だなと、そうい う所に持っていけるとよろしいかと思いますが、どうでしょうか。 ○松本座長 そういう事例はありますか。 ○林参考人 はい。上田先生のご指摘はごもっともだと思います。今回の情報活用事例 としてはこういった報告した範囲になるわけです。一方、ご指摘の主旨は、むしろその 辺が日頃きちっと入院時にチェックされているかというご指摘だと思います。実は日本 病院薬剤師会でも持参薬の確認と。それは内容確認をするだけではなくて、その後に行 われる入院医療、造影検査、あるいは簡潔的検査、手術、こういったものに照らして、 一旦服薬を考慮したほうがいいようなものがあるかどうかの管理に関しては、この情報 部門とはまた別に、医療安全の観点から是非、何としても各施設で100%実践するよう にということで、何年か前から啓発活動を行ってきています。卑近な例で恐縮ですが、 私どもの病院でも病棟薬剤師がほぼ100%、夜間は病棟薬剤師がいないのでセンター薬 局当直者での処理になりますが、入院患者さんに100%お会いして、服薬状況等も含め て、上田先生のご指摘にあるような、薬剤師の視点でのチェックをしていますので、多 くの医療機関がそういうふうになってきていると認識しています。 ○上田委員 ありがとうございます。安心しました。 ○松本座長 他にありませんか。 ○五十嵐委員 いろいろな施設で取組みをされていて、このように、いい方向に取り組 んでいるということを伺って、大変勉強になりました。ありがとうございました。私は 感じたのですが、このようにうまくいった例というのは、やはり先生方のような病院薬 剤師の方たちの細かい配慮とか、あるいは、同僚の医師のいろいろなインフォメーショ ンをフィードバックするといった、そういうシステムや体制ができているわけですね。 ところが、実際にはそういうサポートを受けられない医療機関はたくさんあるかと思い ます。例えば大きな病院ではなくて、実際、日本には1人で開業されているような所は たくさんあるわけですね。そういう所をもサポート体制にを組むような方向を目指すべ きと考えます。飯沼先生に伺いたいのですが、いま医師のディストリビューションは、 開業の先生と病院の先生と、どのくらいの割合でしょうか。 ○飯沼委員 数からすると、9対1ぐらいですね。病院が1で、開業医が9ぐらいです。 医療費全体から見ると、10%の病院が7割を使うと。だから、診療所も含めた開業医は 3割ぐらいしか医療費を使っていないと。いまの五十嵐先生の指摘はすごく大事なこと で、個人がやっている診療所は結構たくさんあるわけです。その先生方は、大概は薬剤 師がいない。例えば、奥さんが昔薬剤師であったとか、もちろんそういうことはありま すが、専任の薬剤師を置けるほど医療費がペイされていないからとても無理でして、そ こら辺のことをどこかで組織化するといいますか、システム化していかないと。いまお 2人の先生がおっしゃったようなこと、特に今日のお話は非常によかったのだけど、悪 い面、うまくいかなかった面も、これからどうすればいいかという議論をしっかりして いかなければいけないと思います。 ○松本座長 ありがとうございます。 ○濱委員 私も病院薬剤師の1人として、今回調査に参加しましたが、いまここで報告 されたことは確かに、よくできるためには何が必要かがよくわかったと思います。特に いまの日病薬、林先生のスライドの最後から2番目に示されているわけですが、情報を 評価するキーパーソンがいて、電子カルテあるいは薬歴というツールがあって、しかも、 それをうまく活用、コンセンサスをとれる委員会、あるいは、医師、薬剤師、看護師の 連係があって、初めてこういう予測予防形の対策ができていることがよくわかります。 ここに挙げた5事例がいいというよりも、この5事例ができるような施設にはいま言っ たような、キーパーソン、ツール、それとコンセンサスがある。つまり、そういうもの を作れば、いまできていない所でも同じようなことができるだろう、ということが今回 の調査でわかったいちばん大きなことだと思います。  ですので、いま先生方のおっしゃられた、できていない所をこれからどうするかにつ いては、例えば、今後、日病薬が中心となって、病院単位であれば病院でそのようなこ とを啓蒙する、あるいは、地域の薬剤師会のような所を通して、地域としてこういった 取組みをすることによって、予測型の安全対策ができる足がかりになるのではないかと 思います。 ○松本座長 ありがとうございました。他にありますか。 ○井部委員 いま議論がありましたように、ワーキングループが設置されて、網羅的に 検討されていたと思います。どうして診療所などが対象に入らなかったのか、比較的大 きな病院だけを対象にしたのか、聞かせていただきたいと思います。 ○林参考人 今回の請け負った事業の目的が、具体的に情報を活用している事例を短期 間に収集することであると、当初から理解しました。そして、調査施設数は20、50、100 と、多いほうがいいことは確かですが、現実に情報収集をして、その中の評価、解析を して報告書にまとめるには、施設数としてはおそらく5施設前後だろうと考えました。  ですので、施設の選択基準で示したように、そういったアクティビティがあるという 5施設を学会発表等から収集したことと、医薬品安全性情報を活用して副作用を回避し た事例を報告している施設を選択するのが、今回優良事例を事業として収集するという 観点からすれば、効率的だろうと考えました。  実は今回も調査に入らせていただきましたが、小さい施設でも素晴しいアクティビテ ィを持っている施設はありましたので、もう少し期間や対策、調査の期間を整えて、よ り広く調査してみるという方策は今後とり得ると思います。まず、短期間でこういった 事例を収集するにあたりましては、当初申し上げたように、そういう事例を収集しやす い5施設を選択したことになるかと思われます。 ○井部委員 あとは今後の課題が残っているということですね。 ○松本座長 そうですね。今後、個人的にやられている方、キーパーソンのおられない ような所でどのようにするかが問題になるかと思いますが、それに関して何か、林先生。 ○林参考人 実は小規模施設、あるいは急性期ではなくて、療養施設等も今回調査をし ました。やはり何らかの形で対策がとられているのかということもありますが、先ほど 五十嵐先生、飯沼先生からご指摘があったように、薬剤師のまったくいないクリニック 等でどういう方策がとれるのか、私も今後の展開として、医師の皆さんと薬剤師の皆さ んが地域でどのように、連係したり、情報の活用のための組織づくりをしていくことも 重要かと考えてはいます。ただ、いまの段階で、そういった具体的な事例を私どもで知 り得ていませんので、今後の調査、あるいは啓発の課題なのかもしれません。 ○松本座長 いままでお集めになられた方の中では、キーパーソンになっているのはや はり薬剤関係の方が多いですか。 ○林参考人 はい。そのように思います。 ○松本座長 保険薬局はそういう役割をするには、つまり情報活用を進めていくのは大 変でしょうか。 ○飯沼委員 開業医というか診療所が院外処方をするのは圧倒的に増えているわけで、 いま先生がおっしゃった、保険薬局がこれをしっかりカバーしないととてもいいほうに 回っていかないと思います。だから、先生が先ほどおっしゃったように、その辺の所の 教育も含めた薬剤師会のバックアップが強烈にないと。これは医師だけの問題ではない と私は思います。 ○松本座長 他にありませんか。 ○濱委員 その件については、おそらく一昔前であれば、情報提供の主体は製薬企業の MRからいただくことが非常に多かったと思います。しかし、先ほど、林先生のプレゼン の中にもありましたが、現在は厚労省、あるいは機構のホームページに必要な情報は載 っていますので、それをうまく利用することによって、地域の保険薬局、あるいは、そ ういった所はうまく活用できると思います。ただ、いままでそういう方策がとられてい なかったので、今回調査したような事例を参考に、こういう方法をとれば、十分啓蒙で きるという保証例だと思います。ですので、今後これをどうするのか、いろいろあるの でしょうが、事例を収集することに力を加えるよりも、今後どうしたらいいのかという 啓蒙に力を注いだほうが現実的ではないかと、個人的にはそう思います。 ○松本座長 そうですね。 ○上田委員 何というか、医師のほうもいま、かなり気にして情報を取り入れています ね。医師会とか、実際そういうものに出る機会があるのですが、やはり皆さん、ここで 聞くと、医師が勉強していないような感じになってしまうのですけど、医師は相当勉強 しています。ですから、そのあたりで、ある意味で医師会と薬剤師会と両方で提携して、 薬剤師会といっても、普通の調剤薬局名、薬剤師会とか病院の薬剤師会、そういうもの がそろそろ、もう少し融和のあるいい関係を、更に築き上げていくことがこれからは大 切だと感じました。 ○松本座長 確かに収集に関しては随分楽になりましたね。ただ、評価をしていくとな ると、それだけの余裕があるかどうかということがあるのですが、いかがでしょうか。 ○飯沼委員 積極的に調べれば、何ぼでもその情報網はあるわけですが、私ぐらいの年 齢になると開くこと自体があまり得意ではないので、やはりまだ目の学問、耳の学問の ほうがまだいいという医師のほうが随分います。時代によって少しずつ変わっていくと 思いますが、ITに触ること自体がいやだという先生もまだいます。だから、その辺の所 は我々も頑張って啓蒙しなければいけないと思いますが、順次やるしかありません。た くさんある情報を如何にしてご利用いただくかということですから、薬剤師会と医師会、 看護師たちも、みんなで相談し合っていいシステムをと、そういう方向に協議をしてい けばいいかと思います。 ○松本座長 他にご意見はないですか。 ○井部委員 私は、看護師として思いますのは、次にやる調査の内容としては、1つは 診療所についてです。大きな病院ではなくて、医薬品情報、責任薬剤師がいないような 所や委員会がないような所、比較的小規模な診療所や病院ではどうしてるのか、まず実 態を見る必要があると思うので、私はこの5事例だけで十分とは思えません。  それからもう1点。ある期間を限定して、医薬品安全性情報が何件ぐらい出されてい て、それで、一組織がどのぐらいの情報を取り扱うことになるのかという基礎的な数字 を出していただきたいと思います。この5事例でいいのか、こんなに少なくはないと私 は思います。ある期間限定でいいですから、今日示してくださったような。医療機関が 入手可能な主な医薬品情報はこのようなルートで入手できますので、例えば1カ月なら、 1カ月の間にどのくらいの情報数が出され、どのルートがもっとも利用され、それは誰 がどのように利用して、院内に普及しているのかといった、基本的な数を出していただ くととてもわかりやすいと思います。 ○松本座長 ありがとうございます。その辺はある程度数が出るのではないですか。出 ないですか。 ○上田委員 業務用の薬の改訂件数とか、あと、要するに緊急安全性情報の発出状況等 があればよろしいのではないでしょうか。 ○松本座長 他に、ご意見はありますか。 ○小川参考人 先ほどの改訂のことですが、以前私がいた病院で調べたとき、1,800品 目ほどの採用品目のうち年間400品目くらいが改訂になっています。ですから、院内の 医薬品要覧も少なくとも3年に1回はペーパーベースで改訂しないと古い情報になって しまう実態があります。 ○飯沼委員 もう1つ。1番の例は、オンセットから厚労省が添付文書の指示を出して、 2月初めに始まって、4月ですよね。事例2はすごくスピーディーにやられていますが、 本来こういうものは2のようにスピードがあればいいと思います。2カ月も経って厚労 省から注意文書の改訂が出るというこのラグは、それを縮めることは可能なのでしょう か。 ○松本座長 それは厚労省から出る前に注意したのですね。厚労省よりも早かった理由 は何かあるかということですが、いかがですか。1例目です。先ほどのITで、早目に情 報が入ったということだろうと思いますが。 ○安全使用推進室長 すみません。事例2は、自主的な製造、販売の中止の事例ですが、 事例1は、イギリスのMHRAという規制当局が、一部の患者について使用禁止にするとい う部分的な使用制限で、情報の趣が若干違ったということと。あと、外国がやめたから 日本も当然やめるという対応ではもちろんありません。日本における同様な事例の調査 と、海外規制当局がそのような対応をとった背景情報の収集などにもある程度時間がか かるので、そこで時間的な差が多少出ているということでございます。2カ月が長いの か短いのか、もちろん評価がなかなか難しいところですが、我々としては情報入手後、 なるべく速やかに、対応は考えたいと。ただ、特に海外での販売をやめるというような 事例についてはかなり迅速な対応が必要だと考えています。今回、事例2のほうは約2 週間という時間で、これも人によっては長いという見方もあるかもしれませんが、なる べく早めに対応することでやったと、そういう事例です。 ○松本座長 よろしいですか。やはりその辺は非常に微妙な所なので、よくよく検討し てやってください。  他にありますか。 ○上田委員 ガドリニウムに対して、例の難しい線維症の疾患の症例は、日本ではあっ たのでしょうか。 ○事務局 日本の症例も数例あったと思いますが、ガドリニウムを含有した造影剤にお いては、重篤な腎障害の患者さんはそもそも原則禁忌になっていました。その中でNSF のもの発現が、理由の1つとして追記されたという認識の下に評価をしたわけで、ちょ っと時間がかかったかと思います。 ○松本座長 よろしいでしょうか。最終的に、この報告案は、先ほど井部先生、上田先 生からいくらか訂正がありました。それで訂正はいいと思いますが、1例目は結構微妙 なので、よく考えてまとめていただきたいと思います。  その後のことはどうするのですか。報告案にはまとめないのですね。いろいろとこれ からのこと、井部先生からご提案のあった、診療所での、小規模な所からの情報収集と か、そういうのは報告案の中には載らないのですね。一応ここでのまとめとしては。 ○安全対策課長 昨年度の報告書の案についてはいろいろ、今日説明いただいた報告に 本日の意見を反映していきたいと思いますが、平成20年度については、どういう形でや っていくかは、本日、もう少し小さい施設でとか云々という話もありましたので、そこ らも踏まえ、最終的には、入札等の手続きもありますので、そういう点を詰めてやりた いと思います。 ○松本座長 一応5例に関しての報告案がまとめられるわけですね。 ○安全対策課長 はい。去年の日病薬からの報告書としては一応これを中心に、そうい う形でまとめていこうと思いますが、最終的な業務の成果としては多分、平成20年度の 報告書が実際の医療現場で活用していただけるものとして、最終的なものとしたいと思 います。そこについては、今日の先生方のご意見で、もう少し小さい所とかいろいろい ただきましたので、可能な限り相談して進めたいと思います。そこを踏まえて、今回の 5事例も含めて、もう少し事例を増やすなり、もう少しいろいろな解析をするなりして、 最終的に、病院で参考になるような事例集といったものにしたい、というのがこちらの 考え方です。 ○松本座長 よろしいですか。何かご意見ありますか。 ○井部委員 この報告書を拝見して、平成20年度、やり方としては2つあると思います。 1つは、小さな病院、診療所の実態を調査して、活用事例をもう1つパターンとして出 すという方法があると思います。もう一方では、この5事例の雛形が出たので、このよ うなことが全体の病院に可能かどうかという調査をして、どこがもっとも欠落していて、 補強しなければならないのかと、今度は事例ではなくて調査票を用いて行う。それで、 全体でこのような方法を採用するには何が課題かを明らかにするという、マスで調査を する方法もあると思います。これは、あくまでも事例を出すことに基づいているのか、 あるいは、もっと普及するための方策を検討することになるのか、それはどちらを目的 としたほうがよろしいのでしょうか。 ○松本座長 それはまた後ほど。ここで事務局から説明がありますか。 ○安全対策課長 事務局が考えていたのは、どちらかというと前者の事例を、まず、い ろいろな事例を収集して、それで活用していただけるものにしたい。実際にそれを活用 する、例えば、病院薬剤師会なりで、実際の普及とかはやっていただく。病院薬剤師会 でもいろいろなことを考えていると聞いていますので、特に各施設ごとにこの普及活動 をやっていただくことについては、別枠で考えていた次第です。 ○松本座長 よろしいですか。他にご意見ありますか。 ○井部委員 事例の収集報告書がかなり重要な位置づけを占めると思います。資料1-1 を拝見しますと、初めには、「はじめに」ではなくて結論が書いてあるので、アブストラ クトのような内容になっています。これは、初めには「はじめに」らしくして、それで、 調査方法をきちんと載せて、どのようなプロセスで事例を選択したかを述べた後に事例 報告が1、2、3、4、5番来て、最後に共通要素が出されると思います。「初めに」がアブ ストラクトで、すぐに結果に入っているような感じがするので、この報告書の体裁も少 し考えていただければと思いました。 ○松本座長 他にご意見ありませんか。いまの議論を踏まえて、日本病院薬剤師会と事 務局とで報告書をまとめてください。  続きまして、議事2の「その他」について、事務局から何かあればお願いします。 ○事務局 議事2の「その他」について、参考資料1-3に記載してございます。平成20 年度どうするかについて、いま議論していただいたところですが、規模や組織、体制が 多様な医療現場において活用が図られるように、更に実践事例を収集して、事例集の充 実を図るとともに、医療機関への有効な普及方法について検討するということで、それ に加え、今回いただいた意見を併せて盛り込んでいけるように、仕様書のほうに提示し ていきたいと思います。 ○松本座長 先ほどもいろいろと意見をいただきましたので、それで。 ○安全対策課長 いただいた意見を踏まえて、20年度の調査の入札等にあたっては、で きるだけ反映してまとめたいと思うので、よろしくお願いします。 ○松本座長 この2年目の方針について、まだ何かご発言はありませんか。 ○濱委員 ちょっと確認をさせていただきたいのですが、厚労省の2年計画の事業とし て、あくまでも事例を集めることをエンドポイントまたは目的とする、ということでよ ろしいのでしょうか。それを活用する、あるいは啓蒙することは、この事業とは別に、 例えば、日本病院薬剤師会、場合によっては地域の薬剤師会がこの報告書を利用して行 い、この事業とは切り離すということでしょうか。あくまでも事例の収集が中心になる のでしょうか。 ○安全使用推進室長 今日ご意見がありましたように、やはりもう少し小規模な施設で の事例とか、そういった所でも活用が可能なような事例の収集が大きな要素かと思いま す。大きな施設でも、当然こういう事例を参考に活用していただきたいですが、やはり 小規模な所にも活用できるような、そういう普及方策についても、小規模な事例を収集 しつつ、どういう形で普及をすればいいのかというのもご検討いただいて。もちろん最 終的に、2年度が終わった段階で、行政としても、どういう普及ができるか、あと、病 院薬剤師や薬剤師会の皆さん方からも、どのように普及していただくか、それはまたこ の事業とは別に考える必要があると思います。収集の過程の中で、何かいい普及方策な り、こういった所が障害になっているから、なかなかしづらいとか、そういった課題な ども少し浮彫りにしていただいて、また、この事業とは別に、そういった課題に対して、 例えば、何か新たな事業をやるとか、何か別な研究もやってみるとか、そういった所に つなげていけることもやっていただければと思います。 ○濱委員 わかりました。 ○松本座長 わかりました。よろしいですか。他にご意見はありませんか。今後の方針 について、意見はよろしいでしょうか。  事務局から何かありますか。 ○安全対策課長 今日予定していた事項は終了し、また、平成20年度の事業がある程度 進む段階で、またこういう形で委員会を開催させていただければと思いますので、よろ しくお願い申し上げます。 ○松本座長 全体を通じてご発言はありませんか。ないようでしたら。よろしいですか。  それでは、これで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。 照会先:厚生労働省医薬食品局安全対策課 電話:03−5253−1111