08/05/09 社会保障審議会 第8回少子化対策特別部会議事録 社会保障審議会 第8回少子化対策特別部会 議事録 日時:2008年5月9日(金) 15:00〜17:00 場所:厚生労働省 省議室(9階) 出席者:  委員   大日向部会長、飯泉委員、内海委員、小島委員、清原委員、駒村委員、佐藤委員、   庄司委員、杉山委員、福島委員、宮島委員、吉田委員  事務局   大谷雇用均等・児童家庭局長、村木審議官、高倉総務課長、小林調査官、朝川少子化   対策企画室長、杉上虐待防止対策室長、定塚職業家庭両立課長、藤井家庭福祉課長、   田中育成環境課長、井上児童手当管理室長、義本保育課長、千村母子保健課長 議題:  新たな次世代育成支援のための具体的な制度設計の検討について 資料:  資料1  次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に向けた基本的考え方(素案)  資料2  少子化対策特別部会第4回〜第7回における委員等から出された主な議論  資料3  現状の主な次世代育成支援施策に関する費用負担と考え方  資料4  経済諮問会議(平成20年4月23日)関係資料  資料5  吉田委員提出資料  配付資料 清原委員提出資料 議事: ○大日向部会長  定刻になりましたので、ただ今から社会保障審議会第8回少子化対策特別部会を開催い たします。委員の皆様方におかれましては、ご多用のところお集まりいただきまして、あ りがとうございます。議事に入ります前に事務局から資料確認と、委員の出席状況に関す る報告をお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  それでは、お手元に配付させていただいております資料の確認をさせていただきます。 最初に議事次第がありまして、その下に資料1「基本的考え方(素案)」という資料。資料2 として「第4回〜第7回における委員等から出された主な議論」という資料。資料3とし て1枚紙で「現状の主な次世代育成支援施策に関する費用負担と考え方」という資料。資 料4として表に「新雇用戦略について」と書かれている資料。資料5として吉田委員から 提出していただいた資料。さらにその下に資料番号を付していませんが三鷹市長の清原委 員から提出していただいた資料を配付しています。さらに委員の皆様方の机上には、内海 委員から「ヒブワクチンの実際」という小冊子を参考に配付させていただいています。も し不足等がありましたら、事務局の方にお声をかけていただければと思います。  委員の出席状況ですが、本日は岩渕部会長代理、岩村委員、大石委員、山本委員からご 都合により欠席との連絡をいただいています。内海委員と佐藤委員は出席の予定ですが、 到着が遅れるという連絡をいただいています。山縣委員はもうすぐお着きになると思いま す。ご出席いただいています委員の皆様方は定足数を超えていますので会議は成立してい ます。  以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。それでは議事に入りたいと思います。本日は、ただ今説明が ありましたお手元の議事次第にありますように、次世代育成支援のための新たな制度体系 の設計に向けた基本的考え方(素案)についてご議論いただきます。  まず、これまでに事務局に対して委員から要請のあった資料と、保育についての議論が された先般4月23日の経済財政諮問会議の議論の関係ついて、事務局から説明をいただき まして、その後に次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に向けた基本的考え方(素 案)の資料の説明を事務局にお願いし、それが終わりました後に、委員の皆様方にご議論を いただきたいと考えています。それでは今申し上げた順に、事務局からご説明をお願いし ます。 ○朝川少子化対策企画室長  それでは、説明させていただきます。まず資料3、1枚紙の横紙をご覧いただければと思 います。前回、前々回と福島委員からお求めのあった資料の一部しかまだ対応できていま せんが、「現状の主な次世代育成支援施策に関する費用負担と考え方」を改めて整理したも のです。  概ね今まで説明したものの内容と重複していますので、簡単に説明します。育児休業給 付につきましては、失業でありますとか失業に準ずる雇用継続が困難な状態に労働者と事 業主の双方の共同連帯で対処すべきということで、労使折半の保険料が中心の財源になっ ていまして、さらに政府の経済・雇用政策とも無縁ではないので、一部を国庫負担すると いう考え方の整理になっています。  保育所につきましては、制度創設当初から児童福祉施設の最低基準を維持するための費 用の裏付けをすることによって、児童に対する公の責任を果たそうということで、公的な 財源、公費で財源がこれまでまかなわれてきている。その中で、公立保育所については平 成16年の三位一体改革の中で一般財源化されているということです。  児童手当につきましては、我が国の将来を担う児童の健全育成という観点から国、地域 住民の福祉増進にもつながるということで地方、さらに将来の労働力確保にもつながると いうことから事業主が、それぞれ一定の負担をするという形になっています。  同じく児童手当の拠出金でまかなっています児童育成事業。ここにありますように放課 後児童クラブでありますとか、病児・病後児保育・一時預かり・地域子育て支援拠点など を行っている事業ですが、これにつきましては地域住民の福祉に密接につながるというこ とで、地方に一定の負担をいただいて、さらに現在と将来の労働力確保の観点から、事業 主にも一定の負担をいただいているという考え方の整理ができると思います。  最後にあります延長保育ですとか全戸訪問・ファミリー・サポート・センター等につき ましては、これらは次世代法に基づく市町村の取組、それを推進する一環として国も2分 の1補助を交付金という形でしているというものです。  次に資料4を説明させていただきます。これは先月4月23日に経済財政諮問会議で当部 会の議論の中心である保育にかかわる議論が行われました。その議論の状況について簡単 に紹介をさせていただきます。まず舛添厚生労働大臣の方から「新雇用戦略」についてプ レゼンをしています。中身としては1枚おめくりいただいたところの上の枠の中にありま すが、今後3年間を「集中重点期間」として取組を進めるということで、「新雇用戦略」を 若者、女性、高齢者という大きく3本の柱を立ててやっていこうということです。さらに1 枚おめくりいただきまして若者、女性、高齢者、障害者等の柱の中の女性のところが当部 会と関係の深い部分ですが、女性の枠の中のさらに一番上の枠にありますように、団塊ジ ュニア世代が30代後半を迎える中、早急に取り組むということです。中身としては「新待 機児童ゼロ作戦」の展開で保育の質・量を充実していくこと。二つ目が当部会でまさに議 論いただいている新たな枠組みの検討、さらに仕事と家庭の両立支援、最終行の企業継続 就業支援の充実といった中身になります。目標については横並びで2010年までの3年間の 目標を立てるということで統一していまして、25〜44歳の女性の就業率を2010年には66 〜68%。3歳未満児の保育サービス利用率を2010年に26%へという目標を立てています。 10年後に38%ということに対応する数字です。  さらに5ページ目をお開きいただきまして縦紙の部分ですが、これはいわゆる民間委員 といわれています諮問会議の委員の先生方から出されたペーパーです。その中で当部会に 関係する部分を簡単に紹介しますと、大きい1番の「子育て期の就業促進」ということで、 利用者の立場に立って、保育サービスの規制改革を行う。その中身として四つ書かれてい まして、一つ目は保育サービスを「措置」から利用者の「選択」に転換する。二つ目は認 定こども園等の「二重行政」を解消する。三つ目は最低基準を地域に委ねる。四つ目は保 育ママ制度の資格要件を緩和するという提案をされています。  引き続いて財源のあり方の議論ということで、「新待機児童ゼロ作戦」によって進めるた めには、財源の手当てが不可欠であるということと。量・質の拡充の費用については税制 の抜本改革に向けて、財源のあり方の議論を行うべきであるとされています。  大きい2番のところでは、一つ目でテレワークの拡大ということで、子育て期の女性に もテレワークの拡大が望ましいので環境整備を進めるべきであるという点と、さらにその 次に育児期の短時間勤務制度の普及ということで、仕事と子育ての両立には育児休業後の 壁があるので短時間勤務が重要な支援策となる。その普及を図るべきであるとされていま す。さらに一番下のところで育児手当とされていますが、給付と税制を一体として扱って 給付付き税額控除制度について検討を行うべきであるという指摘もされています。これら を踏まえて7ページ以降に大田大臣の諮問会議レポートを付けていますが、いろいろなや りとりがあったものをコンパクトにまとめていますので、この中身は後ほどご覧いただけ ればと思います。  9ページを開いていただきまして、最後に「総理からは、以下の発言がありました」とい う最後の四角がありますが、その二つ目の四角のところで、「長年の懸案である保育サービ スにかかわる規制改革については、利用者の立場に立って年内に結論を出してほしい」と いう点と、「財源のあり方は、社会保障国民会議の議論も踏まえて、抜本的税制改革におい て検討する」という総理からのまとめの発言があったという状況です。以上が状況説明で す。  次に資料1をお出しいただきまして、本日のメインのテーマであります「基本的考え方(素 案)」についてご説明申し上げます。まず柱書きの部分ですが1段落目は、昨年末の重点戦 略のとりまとめを受けまして、本年3月から議論を行い、今後の具体的な制度体系設計の 検討に向けて、以下の通り基本的考え方を取りまとめたと。2段目のところで我が国の少子 化の現状は猶予を許さないという点と、国民の深い関心もあると。こうしたことを念頭に 諮問会議であるとか地方分権改革推進委員会などからさまざまな指摘も出されていること を踏まえながら、引き続き税制改革の動向も踏まえつつ、必要な財源の手当を前提として、 速やかに議論を進めていく必要がある。その際、関連する議論が社会保障国民会議でも行 われていますので、連携を図りながら議論を進めていく必要があるとさせていただいてい ます。  中身に入ります。大きい1番目は「基本認識」としていまして、その中で三つ柱を立て ています。一つ目の柱として「新制度体系が目指すもの」ということで、新制度体系を最 初に定義していますが、次世代育成支援のための新たな制度体系ということで、新制度に なるべきそのものと、その関連部分を含めて新制度体系と呼ぶことにして、その新制度体 系においては「すべての子どもの健やかな育ちの支援」という考えを基本に置くことが重 要。続いてのところは二つ○が続いていますが、ここは重点戦略のエッセンスをまとめて いるところです。重点戦略で示された通り、結婚・出産・子育てに対する国民の希望と現 実が大きく乖離していると。その国民の希望が実現できる社会とするということが一つ目 の○。二つ目の○としては就労と出産・子育ての二者択一構造の解決が必要であり、その ために働き方の改革と両立支援と子育て支援。そのための社会的基盤の構築、この二つを 柱として考え方の両面を基本におくことが必要であるとしています。三つ目として「未来 への投資」ということで、次世代育成支援が、良好な育成環境の実現により、将来の子ど もの成長に大きな意義を有するということ。もう一つは将来の我が国の担い手の育成の基 礎になるという両面をとらえて、「未来への投資」であるという視点を共有する必要がある としています。  次に基本認識の二つ目ですが、「新制度体系に求められる要素」として三つ挙げています。 新制度体系が対象とする主なものとして、※印に保育・放課後児童クラブといったサービ ス、あるいは地域の子育て拠点のような子育て支援サービス、母子保健サービス、社会的 養護、現金給付、そういったものを包括的にとらえた上で体系的に整理していくことが必 要としています。二つ目は「普遍性」で、地方公共団体の適切な関与の下で、誰もが、ど こに住んでいても、必要なサービスが選択・利用できるようにすることが必要としていま す。三つ目が「連続性」で育児休業明けの保育所入所、さらに就学後の放課後児童クラブ、 そういった利用が切れ目なく支援が行われるようにする必要があるとしています。  基本認識の3番目として財源の話です。我が国の次世代育成支援に対する財政投入、こ れが諸外国と比べて小さいということも踏まえて、一定規模の効果的財政投入が必要とし ています。そのために税制改革の動向を踏まえつつ検討を行い、次世代に必要な負担が先 送りされることがあってはならないとしています。次に先ほども出てきました「未来への 投資」という側面を、この次世代育成支援が有することを踏まえて、社会全体(国、地方公 共団体、事業主、個人)が重層的に支え合う仕組みが求められるとしています。  大きい二つ目として「サービスの量的拡大」です。その(1)として「質」を確保しながら の「量」の拡充ということで、まず一つ目に書いているのは、緊急性の高さ、あるいは実 施の普及に時間がかかるということを考慮して、とりわけ現物給付の拡充に優先的に取り 組む必要があるとしています。二つ目のところは子育て支援サービス全般的に「量」が不 十分ですので、必要な人が必要な時に利用可能な状態になっていない。特に保育サービス・ 放課後児童クラブについては大きな潜在需要を抱えているとした上で、1枚めくっていただ きまして「新待機児童ゼロ作戦」の展開等により、女性の就業率の高まりに応じた潜在需 要にも対応し、スピード感を持って量的拡大をすることが必要としています。その際に、 「質」の確保と「量」の拡充の必要性のバランスを常に勘案することが求められるとして います。  (2)として「量」の拡充に向けた視点・留意点です。「量」の拡充を実現するためには、認 可保育所の拡充を基本としつつ、多様な主体が、多様なサービスを提供する仕組みとする ことが必要である。その際、多様な提供主体の参入に際して透明性・客観性を高めるとい うことと、「質」の担保の方策を考える必要があるとしています。  大きい3番目「サービスの質の維持・向上」に関するものです。(1)は全体的な事項で、 質の高い専門性のあるサービスを提供することで、子どもの最善の利益を保障し、子ども の健やかな育ちを支援することが重要としています。二つ目のところは、いろいろな保育 でありますとか、子育て支援サービス、社会的養護、いろいろなサービスがありますが、 子の年齢あるいは家庭の状況、これは共働きなのか、片働きなのか、母子家庭なのか、そ うでないのか。サービスの利用時間、サービスへの親のかかわり方、一緒に親も利用する サービスなのか、そうでないのか。サービスの提供方法。これは出向いて行うサービスな のか、集団で預かるサービスなのか。そういう要素に応じたサービスの質の確保を図って いくことが重要であるとしています。三つ目ですが、優れた人材確保を行っていくために は、従事者の処遇のあり方は重要なので、サービスの質の向上に向けた取組が促進される 方策を併せて検討すべきであるとしています。  (2)は「保育サービス」についてですが、まず担い手にふさわしい専門性を必要とした上 で、多様化する家族問題への対応、親に対する支援、障害をもつ子どもの受入れなど、保 育サービスの担う役割が拡大しており、それに対応した専門性の向上も求められるとして います。そういう保育の期待される役割の拡大に応じまして、保育士や専門職等の職員配 置、子どもの生活空間等の保育環境の在り方を検討する必要があるとしています。こうし た保育環境の改善とか保育サービスの質の向上のために、利用者の意見や地域性、地方公 共団体やサービス提供者の創意工夫等に配慮して、保育環境等のあり方について、科学的・ 実証的な調査・研究により継続的な検証を行っていく仕組みを検討していく必要があると しています。  次に4ページ目ですが、保育サービスの「質」を考えるに際しましては、認可保育所を 基本としつつ、その他の多様なサービスを視野に入れ、保育サービス全体を念頭においた 「質」の向上を考える必要があるとしています。次に保育サービスは、行政、サービス提 供主体および保護者が連携・協力して改善していくという視点が重要であるとしています。  大きい4番ですが、「財源と費用負担」について、その一つ目として社会全体で費用負担 をするという部分です。次世代育成支援については、従来の福祉としての側面のみならず、 未来への投資という側面、あるいは仕事と子育ての両立支援という側面を有することを踏 まえ、社会全体で重層的に支え合う仕組みが求められるとしています。個々の給付サービ スの目的や受益とそれらに対する費用負担のあり方が連動すべきものであることを踏まえ て、さらにどういう負担をし合うか、さらに踏み込んだ議論が必要であるとしています。  (2)「地方財政の配慮」として、実施主体である市町村の厳しい財政事情に配慮して、新 制度体系への地方負担に対しての財源の確保を必要としています。その際、地域特性に応 じた柔軟な取組を最大限尊重するということ、さらに一方で不適切な地域格差が生じない ような仕組み。こういう両面の仕組みを考える必要があるとしています。最後に公立保育 所の一般財源化による影響を踏まえた議論も必要としています。  (3)「事業主の事業負担」につきましては、現在の労働者の両立支援としての側面、ある いは未来への投資としての側面を考慮するということを一つ書いているのと、さらに働き 方と関連の深いサービスなど、個別の給付サービスの目的・性格も考慮すべきとしていま す。  (4)「利用者負担」ですが、利用者負担の給付費に対する負担水準、全体の負担水準の話 をどうするか。さらにその中でその設定方法をどうするか等は重要な課題であるとして、 低所得層が安心して利用できるようにすることに配慮しつつ、今後、具体的な議論が必要 であるとしています。  1ページおめくりいただきまして(5)として、これら重層的な負担、利用者負担に加えて、 多様な主体による寄付の促進方策についても検討すべきとしています。  大きい五つ目です。「保育のサービス提供の仕組みの検討」です。全国どこにおいても一 定水準の保育機能が確保され、かつその質の向上が図られるとともに、保育の機会がそれ ぞれの事情に応じて選択できることを基本に考える必要があるとしまして、二つ目の○で すが、保育サービスを量的に拡大し、利用者の多様なニーズに応じた選択を可能としてい くために効率化を図っていく必要がある。併せて、保育サービスの持つ公的性格、あるい は情報の非対称性、質や成果の評価に困難が伴うこと、選択者と最終利用者が異なるとい うこと、さらには親としての役割を果たすための支援。従って、親が単なる経済的取引だ けでは捉えきれない相互性を有するということ。そういう保育サービスの特性を踏まえる 必要性があるとしています。  従って利用者の多様な選択を可能とするため、サービス提供の仕組みについては、二つ 目の○にありますような、対人社会サービスとしての公的性格や特性も踏まえた新しいメ カニズム。ここでは完全な市場メカニズムとは別個の考え方として、「準市場メカニズム」 と呼ぶこととして、それを基本に新しい仕組みを検討していくことが考えられるとしてい ます。  四つ目の○は「保育に欠ける」要件について、現在市町村が条例に基づき判断をしてい ますが、両立を支援する観点から、また地域によって判断が異なることなく全国どこでも 保育サービスが保障されるよう、客観的にサービスの必要性を判断する新たな基準の導入 などを検討する必要があるとしています。  五つ目の○ですが、保護者とサービス提供者の契約など利用方式のあり方についても「準 市場メカニズム」の考え方を踏まえつつ、多様なニーズに応じた選択を可能とする方向で、 需給バランスの改善とも並行して、さらに検討していく必要がある。  六つ目の○ですが、保護者は基本的に子どものために選択を行うと期待されますが、保 護者と子どもの利益が一致しない場合は子どもの利益を配慮すること、保育支援の必要度 が高い子どもの利用が損なわれないこと、サービス提供者による不適切な選別がなされな いこと等の要素がありますので、保育サービスの提供の責任を有する市町村等が適切に関 与する仕組み、あるいは選択に際して必要となる情報公表、第三者評価の仕組み等を併せ て検討することが必要であるとしています。  1枚おめくりいただいて、6ページ目ですが、これらの新しい仕組みを導入する場合には、 選択できるだけの「量」が保障されていること。またそれを裏付ける財源の確保がなされ ることが不可欠であるとしています。さらに、保育サービスが利用する保護者の生活圏で 提供され、地域との関わりが密接であるということにかんがみ、地方公共団体が、地域の 保育機能の維持向上や質の向上に適切に権限を発揮できる仕組みが必要であるとしていま す。また、都市部と、過疎化が進みやっと保育機能を維持している地域とでは、問題の質 や取り組むべき内容が異なることに留意が必要であるとしています。  幼稚園と保育所につきましては、現行の幼稚園による預かり保育の実施状況や、認定こ ども園の制度運用の検証を踏まえ、関係府省間、主に文部科学省、内閣府、厚生労働省だ と思いますが、関係府省間において連携を図りながら、就学前保育・教育施策のあり方全 般に関する検討が必要であるとしています。  大きい6番目ですが、保育以外の「すべての子育て家庭に対する支援」ということで、 妊婦健診、一時預かり、地域子育て支援拠点等、すべての子育て家庭に対する支援も同時 に重要であり、その量・質・財源のあり方を考えていく必要があるとしています。次の○ は当部会で特に議論のあった病児・病後児保育につきまして、できる限り保護者が仕事を 休める働き方の見直しが必要ですが、現在サービスの箇所数も限られているので、その拡 充が必要であるとしています。三つ目の○は地域のさまざまなサービスを把握して、親の 子育てを支援するコーディネーター的役割を果たす体制についても検討すべきとしていま す。6番の最後の○は、育児休業の取得促進には育児休業給付が重要であるなど、現金給付 についても議論が必要であるとしています。  大きい7番は「多様な主体の参画・協働」ということで、まず利用者の視点に立った制 度の見直し、運用改善を継続的に図っていく仕組みを検討すべきである。二つ目として地 域の高齢者、NPO、企業など、多様な主体の協働・参画により、地域の力を引き出して 行っていくべきであるとしています。  7ページをめくっていただきまして、サービスの担い手としては、行政や社会福祉協議会 など半公的な主体が大半を占めているものがあるので、多様な主体の参画に向けた検討が なされるべきとしています。次に、親を一方的なサービスの受け手としてではなくて、積 極的に参画する方策を探るべきであるとしています。  大きい八つ目ですが、「特別な支援を必要とする子どもや家庭に対する配慮」として、新 制度体系の設計に当たっては、虐待を受けた子どもなど特別な支援を要する子どもや家庭 に対する配慮を包含することが必要であるとしています。  最後に9番目として「働き方の見直しの必要性」です。一つ目の○は働き方の見直しに よる「仕事と生活の調和」の実現を車の両輪として進めていくことが必要であるとしてい ます。二つ目の○といたしまして、特に、延長保育や病児・病後児保育など、サービスの 拡充と同時に、両親がともに家庭における子育ての役割を果たし得るような働き方の見直 しが不可欠であるとしています。最後の○は「ワーク・ライフ・バランス憲章」と行動指 針に基づき、仕事と生活の調和の実現に向けた取組を進めるとともに、仕事と子育てを両 立できる環境整備に向けた制度的対応を含めた検討を進めるとしています。  「終わりに」ということで、「今後、サービスの利用者、提供者、地方公共団体、事業主 など多くの関係者の意見を聞きながら、国民的な議論を行い、投入される財源の規模に応 じた進め方に留意しつつ、その具体的制度設計について、国民的な理解・合意を得ていく 必要がある」としています。説明は以上でございます。 ○大日向部会長  ありがとうございました。以上の事務局からのご説明を受けまして、これからは一応午 後5時までを目標に、皆様と意見交換をしていきたいと思いますが、今日は資料1に基づ いて具体的なご意見をいただきたいと思いますが、その前にただ今の資料1以外のところ でも何かご質問等がおありになればいただきたいと思いますが、よろしいですか。  それでは、資料1の「基本的な考え方(素案)」をお手元に置いておきながらご意見をいた だきたいと思います。どういたしましょうか。ざっくりと全体を流してどのような方向か らご意見いただいてもということも考えましたが、ある程度、内容が分かれているように も思いますので、最初に「基本認識」、その次に「2サービスの量的拡大」、「3サービスの 質の維持・向上」を一つのブロックとして、それからその次に「財源・費用負担」等の4、 5というように、分けてご意見をいただいてもよろしいですか。別途資料を出していただい ている吉田委員、清原委員もその都度それぞれ入っていただく形でよろしいですか。  ありがとうございます。それでは最初に1ページの「基本認識」の辺りでご意見をいた だければと思います。清原委員、お願いいたします。 ○清原委員  それでは本日配付させていただきました資料の前半にそって、意見を申し上げたいと思 います。まず今回の「基本的考え方(素案)」につきましては、この間この特別部会で議論し てきたことを本当に丁寧に集約していただいて、素案として私たちが検討してきたプロセ スを反映したものをまとめていただいたことに感謝したいと思います。その上で、強調す べきと思う点について申し上げます。  1点目はまず「子ども」の視点の重要性ということです。「1の基本認識」、「(1)新制度体 系が目指すもの」において、まず「すべての子どもの健やかな育ちの支援という考えを基 本におくことが重要」と示されています。このことはまさに有意義な点だと思います。こ の基本的視点を反映する取組をその他の項目について、積極的に反映していくということ が重要だと思います。「次世代育成支援」という概念から、一般には、「次世代を育成する 世代の支援」、すなわち「親支援」が強調される傾向があります。次世代を担う「子ども」 の視点を忘れずに、いわゆる「子ども支援」、そして「子育て支援」の両面の意義を明記す ることが、現時点で極めて重要だと思います。また新制度の中核的なものに「保育サービ ス提供の仕組みの検討」がありますが、この場合も親のニーズに適合的であるサービスを 検討するだけでなくて、「子ども」の視点からの「保育の質の確保」が重視されなければな らないと思います。その意味で、幼保一元化、こども園といった融合のみならず、小一プ ロブレムを発生させない幼・保・小連携の取組など、「連続性」とも関連する従来の枠の違 いを超えた子ども本位の取組が必要だと思います。そのためにも、制度やサービスの評価 を実施する場合に「子どもの視点からの評価のあり方、手法」というのは難しいと思いま すが、積極的に、この点について調査検討する必要があると思います。  IIといたしまして、「新しい公(公共)の位置づけ」ということを明確にしてはどうかとい う意見です。「1.(2)新制度体系に求められる要素」の中の給付・サービスの包括性・体系性 が指摘されています。これについて全体を見ますと、各府省の縦割りを超えて、しかも従 来制度の相違を超えた方向性が示されています。さらに、国民にわかりやすい形での再整 理の必要性が強調されることが有用だと思います。特に財源確保と社会全体の重層的負担 を示す中では、国、地方公共団体、事業主、個人がその主体として示されているのですが、 7に「多様な主体の参画」ということも明記されていました。この観点から自治体の声を大 いに反映しつつも、NPO等の「新しい公」の視点を要素として明記してはどうかと考え ました。  IIIは、サービスの「量」と。 ○大日向部会長  すみません、今は資料1の「基本認識」のところですので、III以下はまたそのところで ご発言いただければありがたいと思います。 ○清原委員  はい、失礼いたしました。以上「基本認識」のところというのは、制度体系の基本に当 たるところですので、声なき声である「子ども」の視点を重視したこの原案というのは、 大変意義があると思います。ありがとうございました。 ○大日向部会長  ありがとうございました。「基本認識」のところで、他にいかがでしょうか。吉田委員も 別途資料でここに関わることを随分お出しくださっていらっしゃいますが。 ○吉田委員  今日は資料を出させていただいたので、後でお読みいただければ結構です。「未来への投 資」ということで、私はあえて「未来への有効な」と書いているのです。私の資料に記載 しているように「未来への有効な投資」ということを、もう少し国民に理解してもらえる ようなアピールというか、わかりやすい具体的な説明をすることももっとあって良いので はと思います。今回は「基本的考え方」ですから、これはこれで良いのですが、今後こう いう包括的な次世代育成支援の施策・仕組みを作る際には、やはり基本の「未来への投資」 をわかりやすく、より多くの国民の理解・賛成が得られるようにもう少し丁寧にここは言 った方が良いということが一つです。  それからもう一つは、「包括性・体系性」「普遍性」「連続性」ですが、恐らく「包括性・ 体系性」の中に入るかもしれませんが、例えば総合性という視点があっても良いかもしれ ないと思います。さまざまなサービスを効果的・効率的に組合せて、在宅あるいは施設に よるサービスも含めて、企業、NPOも含めた総合的なシステムを構築するという意味で「総 合性」のような視点があっても良いということが一つです。  それからもう一つは、これも「普遍性」「連続性」に関係するかもしれませんが、やはり 量と質ということを今回重視していますので、専門性、あるいは専門性および安定性のよ うな視点があっても良いのではないか。つまりサービスの質を維持・向上させるという観 点から保育環境の整備や、保育士の資質向上など、あるいはソーシャル・ワーク的な役割 をもっと重視するとか、そういった専門性、あるいは今回保育サービスの見直しで恐らく 大きな課題になるいろいろなリスクを避けるセーフティ・ネットをどう構築するかという 意味での安定性。何か、そういう専門性や安定性のようなものもあっても良いと思います。 このように思います。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。他に、この資料1の「基本認識」の辺りでご意見はいかがでし ょうか。飯泉委員、お願いします。 ○飯泉委員  2ページの(3)ですが、吉田委員からもお話がありましたように、やはり国民の皆様にご 理解をいただくということであれば、この(3)にある「財源確保」「財政投入」といったとこ ろが非常に重要になってくるかと思います。といいますのも、これからいろいろな分野に おいて、どこに重点的に国税をはじめとして公共財を投入していくのか、大きなポイント になるときに、まさに1行目にある「諸外国に比べて規模が小さく」といった辺りをもう 少し、例えばヨーロッパはこうだとかアメリカはこうだとか、よりわかりやすく示した方 がより説得力があると思います。特に医療費の問題などでいつも言われるのは、日本の医 療費というのは諸外国に比べて実は財政投入が少ないというところですが、でもいろいろ な財政論になりますと、一方では医療費が高過ぎるという形で言われて、それが信用され てしまうということが一つの事例としてありますので、ここもいかに次世代育成支援に対 する財政投入が少ないのかということをわかりやすく、そして比較しやすい形で入れてお く方が効果的だと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございます。今の飯泉委員のご意見で事務局に確認したいのですが、この「基 本的考え方」を出すときに、今までこの部会にとても貴重な資料をたくさん出してくださ いましたが、そういう資料集も必要に応じて付けることは可能ですか。 ○朝川少子化対策企画室長  それは、その方向で検討させていただきます。 ○大日向部会長  ありがとうございます。ということですので、ぜひこの資料は付けてほしいというご意 見がありましたら、今後もどうぞおっしゃっていただければと思います。他にいかがでし ょうか。杉山委員、お願いします。 ○杉山委員  ありがとうございます。細かいことなのですが、「てにをは」のようなことなのですけれ ど、1ページの「未来への投資」の○の1行目で「新制度体系においては」という所に「将 来の子どもの成長に大きな意義を有し」と書いてあるのですが、多分これは「今の子ども の成長に大きな意義を有し」で良いと思うので、将来ではなくて子どもが大きくなって「未 来への投資」になるので、ここの「将来の」は取って「大きな意義を有し、また、これは 将来の我が国の担い手の育成の基礎となるものであり」ということで、「これは」を入れて はどうかということが1点です。  それから2ページですけれども、(3)の「効果的な財政投入」の部分なのですが、少しセ ンテンスが長くてわかりづらい気がしますので、「我が国の次世代育成支援に対する財政投 入は、諸外国に比べ規模が小さい」と言い切って、「小さい。今後サービス量の」で「今後」 を入れて「今後サービス量の拡大を行っていくためには、一定規模の効果的財政投入が必 要である」というように切って言った方が、言いたいことがはっきり出る気がします。以 上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。他にいかがでしょうか。福島委員、お願いします。 ○福島委員  どうもありがとうございました。この「基本認識」は非常によく整理していただいてい ると思っております。個々にも少し触れられていますけれども、政府の施策全体につなが りますので、ぜひ厚生労働省と関係省庁が連携を取りながら進めていただきたいと思いま す。ここは非常にポイントの一つではないかと思いますので、ぜひそれをお願いしておき たいと思います。例えば経済的支援につきましても、児童手当と扶養控除の関係などもあ りますので、ぜひ。ここの所で、関係省庁との連携強化ということを、もう少し強調して いただけたらと思います。  それからもう一つ、2ページの(3)のところですが、ここでも国民的議論を呼びかけてい くのだという点を指摘してはどうかと思います。7ページの最後に書いてあるのですけれど も、ここは一番のポイントだと思いますので、もしできましたら、2ページ目の(3)にその ようなセンテンスを入れていただきたいと思います。ここでは「社会全体で重層的に支え 合う仕組みが求められる」となっていますが、国民的議論を「みんなでやりましょう」と いうような呼びかけを入れていただいたら良いのではないかと思います。 ○大日向部会長  はい、ありがとうございます。小島委員、お願いします。 ○小島委員  私も今福島委員が指摘されたところなのですが、1ページの前文については、財源の所の 下から4行目「引き続き、税制改革の動向を踏まえつつ、必要な財源の手当を前提として、 以下の基本的考え方に基づき、速やかに議論を進めていく」ということなのですが、いわ ばこれは財源手当が前提で、それがつかないとこれは実現できない話だと。現実的にはそ うなのですけれども、逆にこういう政策が今求められていると、まさに子育て支援のとこ ろが。そのためにはこれだけの財源が必要だと、積極的にその財源が必要だと言い切った 方が良いのだろうと思っています。財政当局に配慮しているというのはやむを得ないと思 いますけれども、そういうトーンで出した方が、福島委員が言われた国民に訴えるという ことで議論になってくる。そういうポジティブな姿勢が、そういう書き方が必要ではない かということを考えています。  そういう意味では2ページの(3)でも同じく前文で言っているのと同じように「そのため に税制改革の動向を踏まえつつ検討を行い」という、そういう、何と言いますか、まわり くどい言い方ではなくて、財源が必要だと。そのためには国民的議論が必要だというよう な少しトーンと言いますか、そういうことが必要ではないかと思っています。  そうすると最後の「終わりに」についても、「投入される財源の規模に応じた進め方に留 意しつつ」とありますが、では財源が投入されなければ何もできないという話になってき ます。そこで今言ったような「投入が必要」と変える必要があると思っています。 ○大日向部会長  わかりました。他にいかがでしょうか。庄司委員は前回欠席でいらっしゃいましたが、 この「基本認識」に関して何かご意見をいただけますでしょうか。 ○庄司委員  ありがとうございます。私もやはり一番気になるのはこの財源についてが最後の方に出 てくるわけですけれども、そこの担保がないと全体の議論が非常にむなしいものになりか ねないと思います。特に「サービスの量的拡大」と「サービスの質の維持・向上」という のは綱引き状態に常になるわけです。ですから、そちらの方で意見を申し上げようかと思 ったのですが、今のいろいろな委員のお話を伺って、基本的なところで強調したいところ を膨らませる。具体的に言うとやはり(3)の所です。ここをもっともっとしっかりと書き込 んでいく必要があるのではないかと思いました。 ○大日向部会長  ありがとうございます。それでは今庄司委員もおっしゃってくださったように、サービ スの量的拡大と質の維持・向上の問題は理念とも密接にかかわってくるとも思いますので、 「基本認識」にまた戻っていただくことは構いませんが、ご意見をいただく箇所を2ペー ジ、3ページ、4ページの上ぐらいまで、つまり2の「サービスの量的拡大」と3の「サー ビスの質の維持・向上」の方に移らせていただいてもよろしいでしょうか。  それでは今の流れで、どうぞ庄司委員、続けていただけますでしょうか。 ○庄司委員  恐れ入ります。先ほど申しましたように、本当に量的拡大と質の維持・向上を両方きち んとやっていけるかどうかというのが一番気になるところなのですが、今日お出しいただ いた資料4の経済財政諮問会議の、特に民間委員の方々が提案されていること、これは資 料4の5ページですが、正直言って大変気になるところです。資料では「1.子育て期の就業 支援」に「利用者の立場に立ち」と書いてありますが、「保育サービスの規制改革」という、 この大きなテーマが冒頭に出ているわけです。そうするとこれをめぐる議論をするわけで はなくて、「基本認識」をどうするかということにはもちろんなりますが、例えば「最低基 準を地域に委ねる」とか、「保育ママ制度の資格要件を緩和する」とか、こういう形で量的 拡大を図っていくということが、現実にもう動きとしては東京都の認証保育所などが今そ の例だと思います。先ごろ認証保育所の中で初めて「認証取り消し」という例が報告され ています。これを記事で読みましたところ、例えば、7名の保育者がいることになっている けれども実際には2名だったと、それが大きな取り消しの理由になっているのですけれど も、やはり緩和していくことによって、こういう事態が早晩どんどん起きるだろうという 感じを持っておりました。ここには現に子どもがいたわけです。ところがやはり保護者、 利用者の方は「認証」、「認可」ということも本当の意味で制度をきちんと知っているわけ ではないのです。ですから、これは最後の方で少しその仕組みの所で申し上げた方が良い かと思いますが、保護者の教育といいますか、情報提供と書いてありますけれども、情報 提供ぐらいでは済まないほどの深刻な事態があるということを考えますと、この民間人の 中にこういう意見が非常に強く出ているということをやはり相当強く意識しながら、はっ きり言って個人的には、そういう方向に流れないように、つまり限りなく量を充足してい くために、実質は質が落ちていく。そういう方向が出てこないために、相当強い姿勢が必 要だと考えています。以上です。 ○大日向部会長  貴重なご意見をありがとうございます。それでは宮島委員、お願いします。 ○宮島委員  私も2と3にかかわってですけれども、保育所に関しましては、質と量の拡大というこ とを考える上で認可外の施設の問題を十分視野に入れたいと思います。例えば4ページに 「保育サービスの『質』を考えるに際しては、認可保育所を基本としつつ」とありまして、 その「基本としつつ」という文面は理解するのですけれども、今少子化対策の財源が希望 通り確保できないという段階の中では、より危機感があるのは、認可からこぼれている子 どもたちの環境だと思っておりまして、そこに何とかお金を使えないかと考えます。「認可 外」の保育所の質の向上が一つの優先事項と考えます。もちろん、どこにでもお金を渡す というわけにはいきませんけれども、ある程度公の関与がある、例えば認証保育所などに 何かもっとお金が回るような方策を真剣に考えたいですし、もし今の認可制度と整合しに くいのであれば、別の仕組みを考えるということもあるのではないかと思います。そうい う意味で4ページの現在の文書の「保育サービス全体の念頭においた『質』の向上を」と いう書き方では、少し弱いかなと思いまして、もう少し強くその辺りを書けないかと思い ます。  また、別の話ですけれども、学童保育について全体として記述が少ないという印象を持 ちました。もちろん、各所に少しずつ書いてはあるのですけれども、認定こども園と同様 に文部科学省と厚生労働省の連携が必要なところでもありますし、もう少し学童保育の記 述を増やしていただきたいと思っております。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。佐藤委員、お願いします。 ○佐藤委員  サービスの量的拡大と質的拡大にかかわるのですが、量的拡大については「仕事と生活 の調和」の行動指針の10年間の数値目標などが、例えば保育等の子育てサービスを提供し ている割合が、保育サービスで現状20.3%が38%のような、そういう目標があるわけで す。そうすると、質もある一定程度担保しながら量的拡大をしていくときの財源の問題も あるのですけれども、サービス提供の担い手のマンパワーの方も、当然増えていくわけで すが、10年後どれぐらいのマンパワーが必要なのかという推計をされているのかどうかで す。  そしてもう一つは、例えば保育士等の養成の現状の規模で、全員が保育士になっている わけではないのですけれども、一定程度そこから出ていってしまう人もいるわけですが、 現状どのように保育士が供給されて、保育士のマーケットがどうなっていて、どれぐらい ストックされているのか。今後のサービス提供の増大に対して、現状の供給で足りるのか どうか、もし足りないということであれば、そこをどうするのか。例えば資格を取る人は 足りているけれども、なる人が少ないのか。資格取得者の中で保育士になる人を増やすと か、辞めないで継続できるような施策をするとか、あるいは保育仕事に就いている人や無 業の人から再参入を勧めるということが大事になってくると思うのですが。お金は議論し ていたのですが、人材の方はどうなっているかということと、10年という期間を見据えた ときに、サービス提供の量が拡大するときに、それを支えるマンパワーの規模と、それを 確保できるのかどうかということを今わかれば教えていただきたいですし、できていなけ れば計測等をやっていただいた方が良いと思います。  これは例えば高卒の女性で、進学に際して、保育士等にいく人と例えば看護にいく人と か、福祉分野というのは競合しているわけです。現状でいうと例えば福祉は人気が落ちて きていますが、こちらもしっかり確保できるようにしようという議論をしているわけです。 全体としては若者の供給が減ってくるわけですから、今、を確保できたからといって今後 も確保できるかどうかわかりません。他との取り合いがあるわけですから、そういうこと も含めながら、きちんと人材の育成と確保面での議論をしていただければありがたいと思 います。  それともう一つ、今10年後という話をしたのですが、今回の議論はどれぐらいの期間を 想定しているのか。他の施策とのリンクを少し最初の方に書いていただいた方が良いと思 います。我々は、他の議論を踏まえているのですけれども、見る人はこれしか読まないと いうことが多いので、他の施策とのリンケージを最初の方に書いていただいて、量的拡大 といっても一応外枠の目標があるわけですね。そういうことを最初の方に書いていただく と良いのではというのがお願いです。 ○大日向部会長  義本保育課長、お願いします。 ○義本保育課長  佐藤委員のご指摘は非常に重要な点だと思っています。どれぐらいマンパワーが要るの かについての推計というのは、受入児童数がどれだけになっていくのか、10年後の少子化 の影響で実際上どうなっているかということでも多分変わりますので、なかなかその辺は 難しいところでありまして、その辺はマンパワーとして推計はしておりません。  現状の養成の状況でございますが、ざっとの話でございますけれども、保育士の登録し ている数自身が大体90万人弱ぐらい、常勤換算でございますけれども大体30万人ぐらい が今保育サービス関連で仕事をしていることになっております。もう一つは養成の方でご ざいますけれど、大体4万数千人ぐらいが毎年保育士として生まれているという状況でご ざいます。プラス恐らく今おっしゃっているのは離職率がどうなのかとか、どれだけ定着 するのかなどについての分析は、正直申しましてこれからの課題だと思っております。そ の点においては介護等の分野でも一律でございますけれども、ここも踏まえながらもう少 しデータを整理する努力が課題だと思っております。 ○佐藤委員  実は今どれくらい保育園等に入るのかわからないというお話だったのですけれども、今 までの重点戦略の推計でも、例えば女性が働きたい人が働けて、その人たちが保育園に入 れるという最大規模の推計をしたわけですよね。それはわかるわけですので、現状の待機 児童の分と、後は新たに働きたい人が働いて、かつその人は預けたい人は預けるというと 最大規模の推計できると思うのです。今度は保育サービスの量的なニーズですね、そうし た場合にどれぐらいそれに合わせてマンパワーの推計をできないわけがないので、一応そ れをやっておかなければならないと思います。逆に言えばそれができないということは量 の方の推計もできないということになります。保育サービスの必要人数も推計できていな いということは、量的拡大がどれぐらい拡大していくかわからないということと実は同じ ことなのではないかと思うのですが。 ○義本保育課長  すみません。ご説明が足りなかったので誤解があるかと思いますけれども。おっしゃる ように足元の数字で100万人という数字でございますので、それに合わせましてどれぐら いの対象年齢がいるかということで考えましたら、それはおっしゃる通り、数としては人 数が出てまいります。そこはデータとして出すことが可能でございます。それは整理した いと思います。ただ、申し上げましたのは、一気にその数字が10年かけてというのではな くて、やはりそれは10年後の姿とした場合について、どれだけいるかについての話でござ います。そこの話を申し上げたのでございます。 ○佐藤委員  一気に増えるわけではなく徐々に増えていくということは、徐々にマンパワーのストッ ク、必要が増えていくわけですから、それに合わせて供給が追いつくかどうかは、ぜひや はり他方でやっておかないと、質はもちろん、質と量の確保にかかわると思いますので、 ぜひお願いしたいと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございました。この「基本的考え方」ではスピード感を持って量的拡大をす るということを書いてある一方で、質の確保について書いていますね。そうすると、今佐 藤委員がお尋ねになられたようなことも一つ、調査ということは非常に大事だということ です。その点に関して先ほどストップをかけて失礼いたしましたが、清原委員のペーパー に書いていらっしゃるようですので、ご説明をお願いしたいと思います。 ○清原委員  素案の2ページの最後の○、それから3ページの最初の○で「潜在需要」というキーワ ードがあります。これは、まとめていただいたときに「潜在需要」と表現されましたが、 市町村の現場でもやはり一時預かり、それから先ほど宮島委員がおっしゃった学童保育等 についても大変ニーズの高まりがあり、既存の保育サービス以外についてのきめの細かい 要望の声を聞いておりますと、大きな「潜在需要」があるということは確かです。これは しっかりと顕在的なデータにするということが必要で、これを素案に書かれているという ことは、厚生労働省でも恐らくこうした「潜在需要」を「顕在的なデータ」とする調査に 踏み込まれると私は想定しているのですが、それは大変有効な数字になると思います。  二点目に3ページの最後の○に、サービスの量と質の両面をしっかりと考えていく上で 「利用者の意見や地域性、地方公共団体やサービス提供者の創意工夫等に配慮しつつ、保 育環境等のあり方について、科学的・実証的な調査・研究により継続的な検証を行ってい く仕組みを検討していく必要がある」とあります。私はこの部分を大変重要だと思ってお りまして、新制度は評価・検証していくことによって絶えざる継続的改善を図っていくの だということを示している重要な部分だと思います。  例えば三鷹市の例をご紹介しますと、三鷹市では公設民営を含めた公私立保育園の質的 確保に向けて、市が策定した「保育のガイドライン」につきまして、公私立保育園全園で 徹底してきています。この保育のガイドラインを作るときにもさまざまな部門の声を聞い ていますが、とりわけ公設民営保育については、保育園の保護者に対する満足度調査の実 施や、市と保護者や市民、学識経験者で各園が設置している運営委員会による検証、また 定期的な立ち入り調査の実施をさせていただき、各月ごとに保育園運営状況を市に報告す ることなどを義務付けさせていただいています。  私は、検証をしたり評価をしたらそれをきちんとフィードバックして、そして主体が多 様化すればするほど、それを改善しながら日々反映していくという総合的な仕組みを作る ことが大変重要だと思います。従いまして、量的な拡大が大前提だと思っておりまして、 量的な拡大を図っていったときに質を低下させてしまうのではないかという懸念を、国民 市民の皆様にお持ちいただかないために、しっかりとした標準的なガイドラインを示しつ つ、検証を繰り返していくことが大切です。そして、大事な表現が3ページの上の2行目 にありました。「スピード感を持って量的拡大をする」ということです。このことをしてい くためには、いきなり評価・検証に基づいてこのスタートをということだけではなく、こ れから量的拡大を図っていく上では、必ず質的な評価を踏まえた取組がセットであるとい うことを示していくことで、このスピード感というのは決して衰えることはないのではな いかと思っております。その意味で、もちろん財源が大前提ですので、量的拡大を求めて いる「潜在需要の顕在化」が求められますので、それらをどちらが鶏か卵かということで はなく、両方を同時進行で進めていければ心強いと思います。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。杉山委員、お願いします。 ○杉山委員  ありがとうございます。先ほど佐藤委員がご指摘されたマンパワーの確保については、 本当に重要な問題だと思っておりますので、3ページの(2)の「『量』の拡充に向けた視点・ 留意点」は、今○が1個しかないので、もう少し増やして、この人的確保に関しての部分 を膨らませて書いていただけたらと思っております。  私の指摘ですが、3ページの最初なのですが、この○の2行分が少しわかりづらいので、 真ん中の「保育サービス等について」を最初に持ってきて、「保育サービス等について、『新 待機児童ゼロ作戦』の展開や、女性の就業率の高まりに応じた潜在需要等にも対応し、ス ピード感を持って」というような文章の作りにした方が良いかと思います。  その次の○ですが、「その際には、限られた財源の中で」やらなくてはいけないというこ となので、その「財源の中で」の後に、「必要なサービス内容について優先順位を示して子 どもの健やかな育成のために」というような、やはりどうしても優先順位は必要だと思い ますので、それについても少し書き加えていただけたらと思います。  それから、ずっと気になっているのが「サービス」という言葉で、子育て支援のことを ずっとやっている人間からしますと、この「サービス」というのをどのようにとらえよう かというところで躊躇するのです。後ほど出てくると思うのですが、「準市場メカニズム」 は完全な市場メカニズムとは違うのだというところにも、多分かかわってくると思うので すが、我々はこの「サービス」というものをどのようにとらえているのかというところを、 できればどこかに。冒頭でもいいですから定義付けのような形でいったん踏まえて、それ から中身に入っていただいた方が、それこそ規制改革論などのご議論が起きる民間の委員 の皆様との差異が、よりクリアになるのではないかという気がいたします。  それから3ページの一番下ですが、「科学的・実証的な調査・研究」がより必要だという ところに補足するように、何点かお願いしたいことがあって。それはワーク・ライフ・バ ランスのような全く保育環境とは別の視点も、知見として盛り込んでいく必要があるだろ うと。先ほど佐藤委員がご指摘されたような保育従事者の労働に関する部分も、どうして も保育環境だけですと、「これが必要だ」という理想ばかりに走ってしまいますので、現実 との対応という意味ではそういった知見も必要だろうと。  後は海外の価格的根拠はどうなのか。私はなかなか手に入れるチャンスがないのですけ れども、0歳児、1歳児、2歳児、3歳児の一般的な保育環境はどういう基準になっている のかなど、そういう比較ができるようなものがあれば、果たして日本の保育環境が良いの か悪いのかが、はっきり出てくると思いますので、そういうものを加えていただけたらと 思っております。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。今とても大切な指摘をいただいたと思います。マンパワーの 確保というのは、きちんと項目を一つ作って掲げた方がよいのではないかと。確かに質の 確保という一言ではすまないわけです。いろいろと具体的にどういうことに留意すべきと いうことを書く必要があるでしょう。「スピード感を持って量的拡大をする」一方で、「質」 に関しては、こういうこと、こういうこと、というようなことを掲げていくことは必要だ というご指摘は、確かにその通りかと思いながら伺いました。  先ほど庄司委員から、規制改革の民間委員からのご提言に対して大変強いご懸念のご発 言があったのですが、その辺り特に「質」ということに関して、庄司委員はどの辺りを強 調して書いたらよいとお考えなのか、お示しいただければ大変ありがたいと思います。今、 急に投げかけて申し訳なかったのですが、後でも結構ですので、どうかよろしくお願いし たいと思います。 ○庄司委員  ちょっと考えさせてください。 ○大日向部会長  では考えていただいて、後で。他には。では、飯泉委員と、その次に駒村委員、お願い します。 ○飯泉委員  今、ずっと話が出ているところなのですが、清原委員からもお話がありましたように、3 ページ「保育サービス」の三つ目の○の所なのですが、これは大変重要な部分だと思いま す。そしてまずこの中身の点については、1行目から2行目、「地方公共団体やサービス提 供者の創意工夫等に」、ただ単に配慮するというよりも、そうした自主的な活動や創意工夫 というものを引き出すのだといったものを、もっと前面に打ち出した方がよいのではない かと。そして検証についても「継続的な検証」をただ行っていくのではなく、その延長線 上にこの制度が非常に弾力性をもって、さらには持続可能な制度になっていくといったも のを、もう少し前面に言った方がよいのではないかと思います。  そうなってまいりますと、一行目にあります「保育環境の改善や保育サービスの質の向 上のため」というよりも、全体的なサービスの質の維持向上についてそうしたものがよい のではないかということで、できればこれを(1)の「全体的事項」に入れてはどうかと思い ます。というのは、この「全体的事項」の二つ目に、この中で言われるサービスが一体何 かということが羅列されているわけですが、こうなると保育サービスに限らずすべての、 例えば放課後児童クラブですとかそれ以外にいろいろな支援サービスについてもそうした 創意工夫といったものが引き出されるような、そして持続可能な制度になっていく必要が あるのではないかと。これを逆に「全体的事項」の中に入れてはどうかと思います。  そして逆に今度は、今申し上げた「全体的事項」の二つ目の各個別のものについては、(2) として「保育サービス」だけがありますので、逆に各論に落として、保育サービスがメイ ンだというのであれば、保育サービスが(2)、そして3番目にそれ以外のサービス、と各論 の項目を設けたらどうかと思います。そうした意味で、4ページ一番頭にあります「保育サ ービスの「質」を考えるに際しては、認可保育所を基本としつつ」と。こうしたものにつ いても今までの制度を抜本的に見直していこうではないか、そして新しい制度を構築とい うことであれば保育サービスだけなのか、あるいは従来の制度との継続性をどうしていく のか。この辺りも逆に全体事項のところで訴えかけた方がよいのではないかと思いますの で、またご考慮いただければと思います。以上です。 ○大日向部会長  先ほど、宮島委員から4ページの一番上のことについてご指摘いただいたと思いますが、 その点は今、飯泉委員が言われたようなことでよろしいですか。 ○宮島委員  そうですね。この文章の印象として認可保育所に割合重心があるという印象がありまし て、もちろん全体のことは言っているのですが、保育所全体の質をあげるということをも う少し強く打ち出したいということです。 ○大日向部会長  恐らく事務局がまとめてくださったのは同じ思いでまとめてくださったと思いますが、 文章をもう少し工夫するということで承りました。ありがとうございます。それでは駒村 委員、お願いいたします。 ○駒村委員  先ほど杉山委員からお話のあったサービスのところですけども、確かに注を加えた方が よいのかもしれないと思います。「サービス」という言葉を使うと福祉関係の方からも市場 で産業論のような話になるのかというようなイメージを持たれるようですし、また規制改 革的な発想の人から見れば、これはもう自由市場なのだというふうに持たれる可能性もあ りますけれども、英語で言うとパーソナル・ソーシャル・サービス(パブリックサービス) ということで、概念的には教育とか、介護とか、医療とか、保育とか、ケアとか、こうい ったことをここで言っているソーシャルサービスという理解でございますので、それを日 本語的に訳したらこうなっているのだという意味だと。もし古い言葉で言えば「現物給付」 ということになりますけれど、保育現物給付などと非常に堅苦しいので、そういう注をつ けながら書いておくと。  それから注を付けることによって無制限な生活産業論からの発想で、無制限な規制緩和 というものの対象ではなくて、あえて「準市場」という言葉が出ているのは市場とは違う 論理立てのものなのであるというところで、これは後ほどの議論になると思いますけれど も、一つの防波堤になるということ。違う世界のものですよと。ただ、民に活躍してもら うのは一向に構わないけれども、何をしてもよいというわけではございませんよというこ とは、はっきりしておくということが一つ。「サービス」というものを大義的な意味で一度 きちんと定義しておくことは必要かとは思います。 ○大日向部会長  ありがとうございました。「サービス」という用語に関しては、ただいまのような方向で、 最初にきちんと定義をするということで。大変貴重なご指摘ありがとうございます。それ では2と3は、この辺りでよろしいですか。  それでは4ページ目の「財源・費用負担」について。ここに関しましても、ペーパーに ご意見がありますので、もう一度、清原委員にご意見お願いいたします。 ○清原委員  この「財源・費用負担」というところは、新しい制度を作るときに大変基本的な部分だ と思いますし、そこに「社会全体による費用負担」という考え方、および(2)で「地方財政 への配慮」とあります。配慮という言葉にやや抵抗感がないわけではありませんが、しか し、これが書かれているということは、市町村あるいは都道府県等が、子育て支援につい て主体性を持って積極的に取組をしていく上で、財政というものは裏付けとなる重要なも のだということを示しているということですから、この記述は欠かせないと思います。そ れ以外に「事業主の費用負担」や「利用者負担」について記述があることは大変重要なポ イントで、制度を提案するときに、ここの負担のあり方については、恐らくはこれまでい ただいた資料などから見ても、総点検をしながら大きな変革を示せる部分だと思います。  私はやはり地方分権を進め、自治を進める市長の立場からは、このような取組の中で、 もちろんサービスの実施主体が市町村であるということが認識されていますし、住民に最 も近い政府としての私たちが、そうした責任を果たしやすいような財源の裏付けはもちろ ん不可欠だと言わなければなりません。そこで、制度だけが市町村に任されるのではなく、 財源の裏付けを持ちつつ、その中で先ほど飯泉委員もおっしゃいました「持続可能な制度」 として、円滑に地域の特性に合わせた創意工夫がなされるような柔軟性が必要です。  そこで、例えば包括的補助金等の枠がさらに広がるなど、自治体が地域特性に応じた最 適なサービスの展開を図れるような発想での取組がなされることとなりますし、財源の保 障や委譲が、新制度の実効性を高める上では有意義ではないかと思います。従いまして、 先ほどの議論の流れで、量の拡大は不可欠ですがそれを一層担保していくためにも標準的 な指標を持ちつつも、各自治体がどれだけ主体的に我が仕事としてかかわっていくことが できるかという上で、財源の面についても今回の新制度において、今までの傾向というも のにとらわれない提案ができていけばありがたいと考えます。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。他にこの「財源・費用負担」に関して、いかがでしょうか。飯 泉委員、お願いします。 ○飯泉委員  今、清原委員からも出たわけですが、4ページ「(2)地方財政への配慮」ですが、特にこ の二つ目の○、国・地方を通じて、あるいは中央と地方との格差というものが、あらゆる 分野にわたっているというのが今、国民的な議論になっているわけですが、そこで、「不適 切な地域格差」があるのですが、逆読みをすると適切な地域格差ならよいのかというよう な話が出るのではないかというのが一つと、そうした議論の中で今回こうした分野、次世 代育成支援というものについてユニバーサルサービスと考えるのか、あるいはユニバーサ ルサービス的なものとしてある程度の各地域における、適切なスタイルではありませんが、 創意工夫によって差が生じてもやむを得ないと考えるのか、そこのところが基本的な考え 方、この全体では示されていないのですが、ここでこうした言葉が出てくることによって 考えさせられる点になるかと思います。  そこで質問なのですが、今回、これは親会全体の話にもなると思うのですが、次世代育 成支援というものについて、これをユニバーサルサービスと考えるのか、セーフティーネ ットという言い方もあるとは思うのですが、あるいはユニバーサルサービス的なものとし てある程度の差が生じる、創意工夫という言い方もあるわけなのですが、そうしたものと してとらえ、そうした先頭を走っている所についてはどんどん引っ張っていけるような制 度を考えるのか、その点はどちらに考えていけばよいのか、この点はご教示いただければ と思います。 ○大日向部会長  室長、いかがでしょうか。 ○朝川少子化対策企画室長  次世代育成支援のサービスにも恐らくいろいろなサービスが入っているので、サービス によって性格が多分違うと思うのですが、一番中核になる保育サービスについていえば、 今、飯泉委員がおっしゃった言葉でいえばユニバーサルサービスに近いということだと思 います。一方いろいろな地域のレベルで、地域力を活用して行われるような各種子育て支 援サービスのようなものは、どちらかというとユニバーサルからは少し距離を置いたもの と、いろいろなものが混ざってグラデーションをなしているような感じだと思います。 ○飯泉委員  そういうことであれば、この不適切な地域格差といった辺りについても、不適切なとい うよりも極力地域格差を生まないような形で、そしてまた全体として今回このユニバーサ ルサービス的なというような設置はできないのですよね。いういような表現をもう少し上 の1の費用負担の考え方のところとか、あるいは最初の基本的な考え方になるのかもしれ ませんが、そうしたところで触れておいた方がわかりやすいのではないかと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございます。福島委員、どうぞ。 ○福島委員  少子化対策は、ここにありますように国と地方自治体と事業主と国民それぞれが、今後 の役割を分担しながら、費用負担を含め、連携して取り組むことが必要ではないかと思う のです。そのような視点でいきますと、ここの事業主の費用負担の根拠と、「将来の担い手 の育成を通じた社会経済の発展の礎」とありますが、これが、全部企業の負担のメインミ ッションというのでしょうか。企業の少子化における基本の役割は、仕事と生活の調和、 ワーク・ライフ・バランスをいかに進めるところにあると思います。(3)にある「将来の担 い手の育成を通じた社会経済の発展の礎」という線引きをするようになると、これはまさ に国の役割ではないかと思います。こういう論議の展開は、企業がお金を出さないと誤解 されたら困りますけれども、整理の仕方として短絡的といったら失礼ですが、なじみにく いところがあるのですが、どうでしょうか。  それともう一つ。資料3に現行の費用負担とその考え方が記載されてありますので非常 にわかりやすいのですが、こういう考え方で、「そうかな」という感じもする一方で、後付 けだと思われるところもある。目指すべき今後のあり方は、これから考えると理解してよ いですか。以上の二つです。 ○朝川少子化対策企画室長  まず前者の点ですけれども、ここで記述している意味合いを解説させていただきますと、 4ページ目の4(1)の一つ目の○に書いてありますが、この次世代育成支援は従来、福祉の側 面が非常に強いことで移行してきたと。そういう中で、最近は将来の担い手の確保という ことと両立支援という側面も色濃く出てきているということを踏まえて考える必要がある ということを踏まえて(3)を読んでいただくと、次世代育成支援にはこういう役割、側面が あるということを考慮すると書いているつもりでございまして。  例えば、従来よりどうして保育所が公費で行われているかというと、資料3でお示しし たようにこれは福祉ということで公の責任を果たすということで整理がされてきているわ けですが、次世代育成支援全体について新しい側面が出てきているということを考慮する という意味合いで書いてありますので、単体で見ると確かに将来の担い手の確保というの は公の責任ではないかと見えなくもないかと思いますが、そういう文脈で書かせていただ いているとご理解いただきたいのです。  今回資料3で用意させていただいたのは、現状についてこういう整理が可能かというこ とで出させていただきましたが、今後のことについてはむしろこの部会で議論を深めてい ただく方が適切かと思いまして。差し出がましいかと思いましたので、今回基本的な考え をまとめていただくに当たって今日用意させていただいたペーパーをもう少し深めていけ るのであれば深めていただくということで、今の時点ではこの程度だということであれば この程度でいくということでご議論いただければと思います。 ○大日向部会長  吉田委員が先ですね。それから杉山委員にお願いします。 ○吉田委員  先ほどの繰り返しになりますが、基本認識の「未来への投資」とこの「財源・費用負担」 がかなりかかわるということで少し重複しますが、この4ページには今の子育て家庭に対 するメリットと将来のメリットを書いていますが、もう一つの視点はこのようなさまざま な取組を通じて、つまり今このようなコストをかけることによって、長い目で見ればトー タルコストは結果的に安くなりますという視点が多分まだないので、ここをうまく表現し ていただくことの方が実は大事ではないかと思います。  というのは、かなり報道もされましたが、秋田県の知事がご熱心で子育て支援税を何と か実現させたかったようですが、結局県民が理解せずにつぶれてしまった。私は何度か足 を運んでタクシーの運転手などにいろいろ聞くと「ただでさえ苦しいのに、何で税金を納 めなきゃいけないんだ」と。どうしてもこういう反応になっているのです。しかし、そう ではなくて後々のいろいろな負担を考えれば、今そこに投資をした方が後々かえって負担 は安くなりますよと。それは本人の将来の可能性もそうだし、親家族にとってもメリット があるし、地域社会にとってもメリットがあるし、国にとってももちろん企業にとっても、 そういう人材が育つことはメリットがある。何かそういう視点をうまくもう一段入れた方 が少し熱い議論になるのではないかと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございます。今吉田委員が言われたことは、確か2月1日のこの部会の中で もしっかり議論があったと思います。トータルコストという観点から、あるいはそれも含 めて次世代育成ワーク・ライフ・バランスは企業が推進すべき時を迎えているのだという ことで、次世代育成支援対策推進法の一部見直しで、皆様のご了解をいただいたと思いま すので、そういうことでご了解いただければと思います。ただ、4ページの(3)の書き方が 今、福島委員が言われたように、もう少し全面的に、トータルコストなどの点も含めて書 き直すということでよろしいですか。ありがとうございます。  お待たせしました、杉山委員、お願いします。 ○杉山委員  また少し補足をお願いできればと思うのですが。4ページの「事業主の費用負担」ですが、 側面として、現在の労働者の両立支援の側面と未来への礎の側面が出ているのですが、3番 目に「企業の社会的責任の側面」をとりあえず付けておいていただいて、ご理解いただい てはどうかと思っています。以上です。 ○大日向部会長  福島委員、よろしいですか。というご意見があったということで、ありがとうございま す。  それでは、また戻っていただくことを前提として、少し進ませていただいてもよろしい ですか。5ページの「保育のサービス提供の仕組みの検討」に移っていきたいと思います。 よろしくお願いします。どうぞ清原委員、お願いします。 ○清原委員  ありがとうございます。この新しい保育のサービスの仕組みの検討というのが、大変重 要な今回の新制度の一つの中心になるかと思います。一般的にいわゆる「直接契約」つま り「措置から選択へ」という方向性についても議論されている状況がありますが、私は例 えばひとり親家庭の子どもであるとか、低所得者世帯の子どもであるとか、障がい児、あ るいは虐待等を受けている要保護児童等に対しての公的な保障の責務は、依然として行政 にあると認識しております。ですから、その上でより柔軟な保育サービスを必要に応じて 利用できるような仕組みの必要性についても、期待する声があることは重く受け止めてお りますので、こうした保護者の声を反映し、また自治体の声を反映し、声なき子どもの声 を反映する過程を確保して、この新たな標準となる指針が策定されていかなければならな いと考えます。  そこで、保育サービスの提供ですけれども、これは「視点」のところでも申し上げまし たが、子どもの育ちを地域で支え、とりわけ子どもの利益を保障するという「子どもの視 点」が最優先されるべきことから、保育の新たな仕組みを考えるときも保護者の満足度や 利益のみで考えてはいけないというところが難しいのですが、いかに子どもたちの満足度 を計測し検証し得るかということが問われていると思っています。従って、基準あるいは 標準を作る場合にも、三鷹市の例でご紹介しますと、三鷹市の「保育の実施に関する条例」 や「条例施行規則」に基づいて、いわゆる「保育に欠ける」要件を規定しているわけです が、その「保育に欠ける」ということについても、一般的には各市町村で、居宅内労働や 同居親族の介護状態のとらえ方や、休職や就学状態への判断といった細部の判断について は規定しつつも、まだ地域特性というか独自性があると思われます。特に三鷹市の場合、 最近は0〜2歳児の受け入れ枠の不足が大変顕著になってきました。反面、3〜5歳児は欠員 が見られるような状況があります。そこで、年齢ごとに定められている専有面積や保育士 の配置についての基準が、例えば「人財」の問題もありますし、面積要件についてはそれ ぞれの都市、地域による事情がありますから、それらに一定の柔軟性が設けられるならば、 待機児童解消への効果が期待できるということは考えているところです。ただし、この場 合に保育所の最低基準を見直すのか、あるいは標準として設けるかということは、市町村 すなわち基礎自治体の裁量の範囲に大きく影響しますので、この辺りを丁寧にしないと、 私が自治体格差のことを言っては何ですが、経営をするのにも大変厳しい経済財政状況の 中では、質のことをよほど担保しておかない限り、質の後退のおそれがないとは言えない とも考えます。この辺について私は自治体として頑張りたいと思っていますけれども、基 準・標準の作り方ということについては、やはり利用者の声そして実態というものをどう 反映しながら、新しい仕組みの中で設けていくかについて、いち早く厚生労働省にも動き 出していただきたいし、自治体を含んで、そういう立場を超えた総合的な体制での検討が 必要ではないかと考えています。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。今の点に関して、先ほど「基本認識」を伺ったときに、庄司 委員から「後で発言を」と言っていただきました。よろしくお願いします。 ○庄司委員  今の清原委員のおっしゃったところと非常にかかわると思うのですが、「基本認識」のと ころもそうですが、サービスの量と質の関係を考えたときに、3ページの一番下の○には、 例えば「地域性」という言葉が出ていますし、4ページには先ほどご議論があった「地域特 性に応じた」と。そういう形で地域性や地域特性ということをここで出す場合には、相当 具体的に、何を取り上げて、その地域性の配慮や評価などを言っているのかわかるように 書かないと、先ほど私が非常に心配していると申し上げた民間議員のご意見などは、「最低 基準を地域に委ねる」となっていますね。しかし、今はあまり言わなくなりましたけれど も、ナショナル・ミニマム、スタンダードがあって、それよりもより地域に力があって創 意工夫もされてレベルアップする分には良いのですけれども、先ほどのユニバーサルなの かどうかということとも共通しますけれども、そこが明確にならない中で地域性・地域特 性というのを漠然と出すのは、大変危ないと正直言って思っています。どういうところを 地域性として考慮の対象や評価にするのかなしに、この言葉はあまり使うべきではないの ではないかというのが一つあります。  続けてもう1点申し上げてよろしいですか。 ○大日向部会長 ぜひ、お願いいたします。 ○庄司委員  3ページには、「利用者の意見」というものがありまして、今議論に入っています「仕組 みの検討」のところでは、結局利用者の選択や契約などを考えますと、一定の利用者像が 想定されていると思うのですけれども、先ほど冒頭で申しましたように、現実には例えば いわゆる準市場メカニズムというときの保育サービスを提供する側と利用する側の関係と いうのがどうなのかということを現実に見ると、あまりに若い親世代というのは、保育サ ービスの仕組みやいろいろなことを知らないのです。学校教育できちんと教わる機会はな いわけですし、大学生などを見ていますと恐ろしく何も知らずに、そのまま卒業したら、 福祉や児童分野の専門で勉強している学生は別として、一般的に圧倒的多数の学生は、女 性であっても何にもそこまで考えるような状況ではないです。現実には働いていて妊娠・ 出産の段階で、圧倒的に辞める人たちが多いのも、一つは乳児期の保育というのは、いろ いろと考えなければならないものだという程度の知識で、しばらくは辞めなければいけな いとか、その逆にとにかく保育所があれば助かるというぐらいの理解しかないという両極 がいるという感じで、私が先ほど申しました言葉で言えば、この利用者・保護者の教育を どういう仕組みとしてやっていくのかという議論がここになければいけないのではないか と思っています。もちろん、大学などでも何かがなければいけないと思いますけれども、 実際に今、保健サービスの中で必ず多くの妊婦が通る道筋もありますし、それ以後の健診 などもありますけれども、例えばそういうものを活用するのか、あるいはもう少し違った 仕組みで。要するに先ほど言いましたように、認可保育所と認証保育所では認証の方が立 派だと思っている利用者もいます。証明の「証」という字で何か言葉に重みがあるなどと、 本当に極端な話ですけれども、そういう現実があるということを考えますと、対等な契約 関係になる、本当の親が選択する力があるという前提に立って仕組みを論じても、現実に は合わないのではないかと。そういう項目を一つ何か入れていただければと思っています。 ○大日向部会長  ありがとうございます。今、庄司委員がおっしゃったことは、5ページの5「保育のサー ビス提供の仕組みの検討」の上から二つ目の○のところに要約した形で入れてはあるので すが、今庄司委員がおっしゃったようなところは、現場の親たちの実態を見ますと本当に その通りだと思います。「親が親としての役割を果たすための支援」と1行で書いてありま すが、やはり提供者と受給者のアンバランスの問題なども含めて、もう少しこの辺りを丁 寧に書き込むということでよろしいですか。その辺りも検討させていただくということで。 駒村委員、お待たせしました。 ○駒村委員  今、大日向部会長にまとめていただいたことなのですけれども、庄司委員が今ご指摘さ れたことは、前回私が発表するときに、つまり利用者像や消費者像というのは、いわゆる 普通のマーケットの消費者像と思ってはいけない。この仕組みを特に利用するに当たって の最終的な目的は一体何なのかと。要するに、自分が使いたいときに好きなことを要求す るという意味での消費者ではありませんということは、この疑似市場という考えの中で位 置付けなければいけないという話をしていますけれども、やはりご指摘のようにその部分 については、私も少し書き込んだ方が良いのではないかと思います。  それからもう1点、先ほど清原委員のご指摘・ご発言の中で、この問題は後々議事録と してはいろいろと大事な点なので、清原委員の資料の3ページで「子どもたちの満足度」 というようなことで、多分「子どもたちの健やかな育ちを」という意味だと思うのですけ れども、この辺が、では満足度調査を客観的にやればよいのかという話になって、後でこ の部分だけが親の満足度調査と子どもの満足度調査というものを客観的にやって尺度にす れば良いのだなというようになってしまうので、これは確認ですけれどもそういう意味で の満足度ではないのだということで、多分よろしいかと思います。 ○大日向部会長  親も子どもも共に発達していくという発達過程を大切にし、評価を行うということでよ ろしいですか。ありがとうございます。  杉山委員、吉田委員の順でお願いします。 ○杉山委員  ありがとうございます。先ほどから他の委員方もおっしゃっている5ページの2番目の ○の部分は、それこそ利用者の立場に立ってということが、いろいろなところでも出てい るのですが、これでは本当に申し訳ないのですが、何を言っているのかよくわからないと いうか、もう少し書き砕いて、こういうことなのだということが伝わるように書いていた だけると、なるほどということで、それこそ親の教育にも寄与するかと思っています。先 ほどから出ているこちらが契約の主体になったとき、親が主体になったときのことは、私 たちも非常に心配していて、6ページの少し先になるのですが、6「すべての子育て家庭に 対する支援等」の3番目の○に、「親の子育てを支援するコーディネーター的役割を果たす 体制」ということをぜひ盛り込んでほしいと申し上げているのは、やはりそういった助言 者のような人が親の利便にばかり走らないように、あなたは親なのだからというようなと ころや、庄司委員がおっしゃったような保育の制度の理解をする機会を得るということで も役割を果たしてもらえたらよいかと思っているところです。  また、5ページに戻るのですけれども、一番下の○のところも6行にわたって1個も句点 がないという状態で、もう少し句点を途中に入れた方がよいと思うので、3行目のところで 「選別がなされないこと等を踏まえなければならない」「これは保育サービスの提供の責任 を有する」というように、いったんここで切ったらよいのではと思っています。  次に6ページの上から2番目の○なのですけれども、冒頭で言っていることと、その後 の「また、待機児童がいる都市部と、過疎化が進み厳しい財政状況の中でやっと保育機能 を維持している地域とでは」というのは、少し問題が違うように思うので、この後半の部 分はもう一つ○を付けて、これも大事な点だということがわかるようにしていただいた方 が良いと思います。ここは保育サービスのことに特化して書いていらっしゃるので、入れ るのはどうかと少し議論があるかとは思うのですが、例えば過疎化の進む厳しい部分では、 むしろ雇用創出のような部分も本当は配慮した方が良いかと思っています。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。それでは、吉田委員お願いします。 ○吉田委員  なるべく素案の言おうとするところを汲もうとしていますので、文章の整合・不整合は 申し上げませんが、「保育に欠ける」うんぬんのところについて申し上げると、「保育に欠 ける」特に今実質的に保護者特に母親の就労ということがかなり大きな要件になっていま すが、冒頭の「基本認識」にあるように「すべての子どもの健やかな育ちの支援」という 観点から、確かにそれもリスク要因でしょうと。そうすると他にもリスク要因があります。 家族問題が多様化してきているのではないかと。例えば家族構成でひとり親家庭が増えて いることや、親の養育力がかなり問題になって育児放棄や虐待があったり、そこまで行か なくても地域で孤立して、結局地域の中でそこだけでもがいているようなことも結局広い 意味では家族問題で、そういう家庭の子どもに対して「健やかな育ちを保障する」という ことであれば、明らかに今の「保育に欠ける」要件では恐らく限界があるだろうと。そう いう視点からの見直しが多分必要だろうというのが一つです。  それから私の資料5の3ページに、実はかなり踏み込んだことを書いていますが、今回 は素案ですのでこういう表現で私は差し支えないと思いますが、ただニュアンスとしては 例えば「保育に欠ける」要件を見直すということと連動して、いわゆる契約制の問題を考 えることになった場合に、広い意味のセーフティーネットとして、虐待や社会的養護に相 当配慮して、措置要件は一定程度残さなければいけないだろうということや、それから施 設の逆選択があり得ます。そうすると、先ほどから認証保育所の話が出ていますが、認証 保育所は認証に際して応諾義務を課していませんので、実際そういうケースはほとんどな いと思いますが、施設による逆選択つまり「面倒な家庭の子どもはお断り」ということが、 仕組みとして認証保育所では実は可能ですので、いわゆるパブリックということからいく と応諾義務を一定程度課すということも恐らく必要になるだろうと思います。  今いろいろとご議論が出ていた、今度は子どもそのものの利益の話と親の都合は一致し ない場合が出てくるというところについて、やはり「子どもの最善の利益」という視点で の仕組みを入れなければいけない。その際今、杉山委員もおっしゃっていましたけれども、 例えばそういう保育施設と子ども・保護者の間の調整を図ったり、保護者に対する支援ア ドバイスをしたり、要するにソーシャルワーク的な機能とコーディネーターの機能を併せ 持った、イギリスではファミリーワーカーと言っているようですが、何かそういうものを 市町村に配置して、契約制になった分今度は市町村がそういう人材を活用しながら、セー フティーネットを構築するなど、恐らくそういうことをもっと考えなければいけないだろ うと思います。  それから最後に、これは少し戻った話で恐縮ですが、佐藤委員がマンパワーの話をされ ていまして、最大限どの程度の人材確保が必要かと。これは多分シミュレーションが必要 だと思いますが、もう一つ必要な視点はワーク・ライフ・バランスを図ることによって、 例えば0歳児の親がかなり育児休業によって在宅で子育てをされるということになれば、 今の保育所の基準からいくと0歳児3対1というところにかなりマンパワーを吸い込まれ ていますので、そこが在宅化していくと、そこの人材が1歳以上に回せるという、むしろ そこを政策的にどう組んでいくかという視点も必要ではないかと思いますので、一応その ことも申し上げておきます。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。杉山委員も吉田委員も6ページ以降の部分にも関連したご意見 もいただいたと思いますので、これ以降は時間の関係もありますので、6、7ページを一括 してご議論いただきたいと思います。  それでは、6・7・8・9を一括してご意見いただければと思います。飯泉委員、よろしく お願いします。 ○飯泉委員  ちょうど橋渡しの部分になりますので、5のところも含めてお話ししたいと思います。今 いろいろお話があったのはつまりこの5の部分だけ、こんなに多くのボリュームがありな がら、小学校の小見出しが全然ないというのが一つあるのです。ですから、少なくとも5 ページに戻っていただいて恐縮ですが、最初の三つはまさに基本的な考え方を示していま すので、この辺りは基本的な考え方として例えば取りまとめていただくと。それ以降のと ころについては、例えば四つ目のところであれば、新たな基準の導入など。またその下二 つであれば、利用方式のあり方などとまとめていただいたらどうかと思います。  それから2点目ですが、これは庄司委員あるいは杉山委員からも出ました「地域特性」 これは危惧があるというお話がありました。これは6ページをご覧いただいて、上から二 つ目のところがまさに地域特性のことをコンパクトにまとめていますので、まずここにも 小見出しとして「地域特性」、できれば「への配慮」というような形にしていただきたいと 思います。  と言いますのは、まさにここに書かれている通りで、大都市部におけるニーズは、例え ば駅前保育などが必要となります。しかし中山間地域になると逆に駅が大体ありませんし、 また中山間地域では保育所の数が非常に少ない、逆に高齢者の皆様がたくさんいて、そう した皆様が昔取った杵柄ではありませんが、「私は、子育ては日本一よ」と。そうしたらフ ァミリーサポートセンターを充実した方が良いわけでありますので、そうした意味での地 域特性の配慮という形で、おまとめいただければと。そうすると危惧の部分も薄れるので はないかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございます。それでは、佐藤委員お願いします。 ○佐藤委員  最後の9番「働き方の見直し」で、先ほど吉田委員が言われた働き方が変わってくるこ とによって、保育サービスのニーズの構造が相当変わってくる。子どもが病気になったと きに休めれば病児保育の必要性、もちろん必要なときは必要だと思うのですけれども、今 のような必要性があるのかどうか。延長保育のニーズも当然変わってくる。それから先ほ ど吉田委員が言われたように1歳まで育児休業を取る人が増えれば0歳児の保育ニーズが 減り、それ以降に預ける人が増えてくるなど、量が増えるけれども構造が相当変わってく るということを、ここに書く必要があると思います。  もう一つは、「働き方の見直し」といったときに、先ほどのマンパワーにもかかわるので すけれども、保育士として働く人たちが、例えば結婚し子育てしながら保育士として仕事 を続けられるかというと、正直言ってやや遅れているのではないかという気がします。そ こで働いている人たちの働き方、結婚し子育てをしながら働き続けられるということが、 どこかに少し書いてあってもよいと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございます。清原委員とそれから時間が残り少なくなりましたので、まだご 発言がない内海委員も、もしよろしければその後によろしくお願いします。 ○清原委員  佐藤委員の発言に触発されて発言しますが、私は、公立の保育園で働いている職員が、 育児休業後その経験を生かして職場復帰してまた活躍してくれている例を目の当たりにし ますと、やはり保育士を確保し続けるための体制というのは、ワーク・ライフ・バランス を考えながら、育児休業制度なども有効に生かしてもらうというような条件整備が重要だ と思います。また、今回配られました資料4の6ページに「育児期の短時間勤務制度の普 及」という記述があります。これがどれだけ実現性を想定できるかですが、やはり確かに 育児期の休業だけではなく短時間勤務というようなことを企業が導入してくださったら、 これもまた有効だと思いますし、また前回飯泉委員がおっしゃったことですが、例えば女 性の医師の場合もその経験や能力を生かして活躍してもらうために、その働き方で例えば 短時間勤務というような場合に専門性が生かされたケースもあると聞いています。総合的 にこの9「働き方の見直しの必要性」というところは、社会全体に問いかけるとともに、少 子化対策にかかわる制度で働く専門の小児科医あるいは産科医さらには保育士等々の働き 方についても、何らかの提案ができれば有効なものではないかと考えました。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。他によろしいですか。内海委員、いかがですか。 ○内海委員  ここは保育を中心にずっと話されてきましたけれど、多分2番から8番までが保育です よね。見出しがよくわからなくて、2番から8番は保育ではないのですか。 ○朝川少子化対策企画室長  全体の構成は基本的にはすべてが保育だけに限らずに学童保育もそうですし、いろいろ な子育てサービスも含めて全部書いてあるという構成にしているつもりで、特に保育に特 化しているといえば3の(2)といったところです。 ○内海委員  わかりました。できれば9番を一番前に持ってきていただきたいというのが私の考えで す。これでは今までの動きと全く変わりがないので、9番をとにかく社会に向けて大きくし ないと保育をいくら増やしても駄目だと思うのです。とにかく9番を先に持ってくること が、北欧に倣えということではありませんが、変わってきた実績を上げているところは、 皆9を実現させているからなのです。病児保育を増やしたり、待機児童ゼロにしたり、延 長保育をしたり、保育のサービスを親向けに増やすことが子どもの健全な育成を促進する とは思えないので、やはり9を前面に持ってきてそれをしつつ、短時間勤務などというよ うにして、やはり親が子どもと、子どもが親と一緒にいられる時間をどう確保してあげら れるか、特に乳児期に焦点を置いた進み方をしないと、皆思春期におかしくなっていると いう現実を私は小児科医として見ていますので。一生懸命働いていけるように親の環境を 整えば整えるほど、子どもが思春期で実際おかしくなっていますので、その辺のところが 将来の経済的な担い手だけでなくて、国の担い手として1人の人間としての社会的な保障 をするために、企業に向けては経済的基盤の担い手という言葉を使ってもよいと思うので すけれど、他のところでは国の担い手ということで、経済だけが別に国の基盤ではないと 思っています。それも大切なことですけれど、あまりお金を出すと効率優先など、今の経 済第一の考えを散りばめてほしくないと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございます。確かにおっしゃる通り、働き方の見直しは子育て支援の施策の 根本の一つだと思います。その点に関しては、佐藤委員が座長をお務めのワーク・ライフ・ バランスの会等で全面的にご検討いただいていると思いますが、それを今内海委員が言わ れたように大前提の一つに押さえつつ、新たな次世代育成支援の制度体系の設計というこ とが、この特別部会に託されたことだということですので、ご理解いただければと思いま す。  さて、今日は本当にいろいろと建設的なご意見をいただきまして、ありがとうございま した。次回には、できればこの基本的な考え方の案を確定したいと考えております。今日 はいろいろとご意見をいただいた思いではありますが、なおご発言が足りない委員もいら っしゃるかと存じます。ご発言が足りない部分に関しましては、5月12日月曜日中に事務 局までご提出いただければと思いますが、そのような方向でご協力をお願いしてもよろし いですか。  ありがとうございます。そのようにして皆様のご意見を5月12日中にいただいた上で、 私と事務局とでご相談させていただき、基本的な考え方の案を作成して、次回の会に出さ せていただきたいと思います。  それでは、最後に事務局から次回の日程についてご説明お願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  本日は誠にありがとうございました。次回の日程については、5月19日月曜日17時か ら、本日と同じく厚生労働省9階の省議室で予定しています。引き続き、「次世代育成支援 のための新たな制度体系の設計に向けた基本的考え方」についてのご議論をお願いしたい と考えています。お忙しところ恐縮ですが、ご出席いただきますようよろしくお願いしま す。 ○大日向部会長  ありがとうございました。本日はこれで閉会します。 (照会先)  厚生労働省  雇用均等・児童家庭局総務課  少子化対策企画室  (内線7944)