予防接種後健康状況調査集計報告書平成17年度前期分 I.総 論    予防接種の副反応調査は二つの方法で実施されている。則ち、「予防接種後健康状況調査」 と「予防接種後副反応調査」である。本報告は前者で、定期接種のワクチン個々について、 あらかじめ各都道府県単位で報告医を決めておき、それぞれのワクチンについて接種後の 健康状況を前方視的に調査したものである。ちなみに後者は、予防接種後に発生した副反 応を後方視的調査に基づき報告のあったものをまとめたものである。  今回は、平成17年度前期(平成17年4月〜平成17年9月)をまとめたものである。 1.本調査の目的は、国民が正しい理解の下に予防接種を受けることが出来るよう、接種 前に個々のワクチンの接種予定数を報告医毎に決め、接種後、それぞれのワクチン毎に 一定の観察期間を通じ、接種後の健康状況調査を実施することにより、その結果を広く 国民に提供し、有効かつ安全な予防接種の実施に資することである。 2.調査対象としたワクチンは、予防接種法に定める定期接種として実施されたジフテリ ア・百日せき・破傷風三種混合ワクチン(DPT)、ジフテリア・破傷風二種混合ワクチ ン(DT)、麻しん、風しん、日本脳炎、ポリオと結核予防法で実施されているBCGで ある。 3.健康状況調査の実施期間及び対象者数は、DPT(DT)、麻しん、風しん、日本脳炎 については、各四半期毎に都道府県、指定都市当たりそれぞれ40名を対象とし、接種 後28日間を観察期間とした。   ポリオについては、第1期(4〜9月)は、各100名を対象として35日間は観察 とし、BCGは接種数が年間一定でないことから第1期(4〜9月)は100名(乳幼 児、3歳以下)を対象とし、観察期間は4カ月間とした。 4.報告の手順は、各都道府県、指定都市においてワクチン毎に報告定点を受諾した報告 医が、各予防接種の接種当日に保護者に対して、本事業の趣旨を十分説明の上、健康状 況調査に協力する旨の同意を得た後、台帳に登録する。    その後、保護者に健康状況調査票(ハガキ)を渡し、記入要領を説明し、保護者から 返送されたものを、カルテと照合しまとめたものである。 5.本調査は、通常の副反応(発熱、発赤、発疹、腫脹)や、稀におこる副反応(アナフ ィラキシー、脳炎、脳症等)に加えて、これまで予防接種の副反応として考えられてい ない接種後の症状についても報告できるように設定した。 また、予防接種後の健康状況という性質上、変化がない場合でも返送を依頼している。 6.本調査の性質上、登録者全数からの回答が必要であるため、調査表の返送の重要性に ついて、本人又は保護者へよく説明し、同意をいただくことが重要である。 7.報告医から提出された調査表は、厚生労働省結核感染症課で集計し、予防接種後副反 応・健康状況調査検討会において、医学的、疫学的見地から解析・評価を行った。 8.予防接種後健康状況調査の結果は、都道府県、指定都市、日本医師会、地域医師会及 び報告医等に還元するとともに、広く国民に公表することとしている。 9.各ワクチン毎の集計、ワクチンによって少し内容は変わるものの、接種例数、年齢、 発熱、局所反応、けいれん、じんましん、嘔吐、下痢、せき、鼻水、リンパ節腫脹、関 節痛等について集計した。 II.各 論 DPT・DT 1.DPT1期初回1回目   対象者数は754人で、この内748人(99.2%)が生後3ヶ月から3歳代であ った。何らかの症状を呈したのは215人、325件である。男女児間に差は認めない。 症状とその発現日、年齢の関係をみると次の通りである。   37.5℃以上38.5℃未満の発熱は合計29件(3.8%)であるが、接種後7 日までの小計では13件(1.7%)である。   38.5℃以上の発熱は合計56件(7.4%)であるが接種後7日までの小計では 25件(3.3%)である。  局所反応は合計72件(9.5%)であるが、接種後7日までの小計では59件(7. 8%)である。接種後1日目の21件(2.8%)が最大である。年齢別に有意の差は 認めない。   けいれんは15日目、26日目にみられ発熱を伴っていた。   嘔吐は合計13件(1.7%)であるが、接種後7日目までの小計では6件(0.8%) である。   下痢は合計45件(6.0%)であるが、接種後7日目までの小計では25件(3. 3%)である。   せき、鼻水は合計108件(14.3%)であるが、接種後7日目までの小計では5 2件(6.9%)である。 2.DPT1期初回2回目   対象者数は630人で、この内626人(99.4%)が生後3ヶ月から4歳代であ った。何らかの症状を呈したのは239人、344件である。男女児間に差は認めない。 症状とその発現日、年齢の関係をみると次の通りである。   37.5℃以上38.5℃未満の発熱は合計22件(3.5%)であるが、接種後7 日目までの小計では11件(1.7%)である。接種後2日目の5件(0.8%)が最 大である。   38.5℃以上の発熱は合計35件(5.6%)であるが、接種後7日目までの小計 では12件(1.9%)である。接種後2日目の3件(0.5%)が最大である。年齢 別に有意の差はない。  局所反応は合計158件(25.1%)であるが、接種後7日目までの小計では15 0件(23.8%)である。接種後1日目の106件(16.8%)が最大である。   けいれんはみられなかった。   嘔吐は合計19件(3.0%)であるが、接種後7日目までの小計では9件(1.4%) である。接種後0日目の3件(0.5%)が最大である。   下痢は合計36件(5.7%)であるが、接種後7日目までの小計では16件(2. 5%)である。   接種後1日目の6件(1.0%)が最大である。   せき、鼻水は合計74件(11.7%)であるが、接種後7日目までの小計では33 件(5.2%)である。接種後1日目と2日目に各7件ずつ(1.1%)が最大である。 3.DPT1期初回3回目   対象者数は510人で、この内502人(98.4%)が生後3ヶ月から4歳代であ った。何らかの症状を呈したのは206人、332件である。男女児間に差は認めない。 症状とその発現日、年齢の関係をみると次の通りであった。   37.5℃以上38.5℃未満の発熱は合計30件(5.9%)であるが、接種後7 日目までの小計では10件(2.0%)である。その中では接種後3日目と6日目に各 3件ずつ(0.6%)が最大である。   38.5℃以上の発熱は合計57件(11.2%)であるが、接種後7日目までの小 計は21件(4.1%)で接種後1日目と2日目に各6件ずつ(1.2%)が最大であ る。1歳代以下に頻度が高い。   局所反応は合計90件(17.6%)であり、接種後7日目までの小計では87件(1 7.1%)である。接種後1日目の50件(9.8%)が最大である。   けいれんは12日目に1件、発熱を伴っていた。   嘔吐は合計18件(3.5%)であるが、接種後7日目までの小計では8件(1.6%) である。1歳までに多くみられる。   下痢は合計43件(8.4%)であるが、接種後7日目までの小計では18件(3. 5%)である。1歳までに多くみられる。   せき、鼻水は合計93件(18.2%)であるが、接種後7日目までの小計では40 件(7.8%)である。1歳までに多くみられる。 4.DPT1期追加    対象者数は514人で、この内505人(98.2%)が1歳から4歳代であった。 何らかの症状を呈したのは280人、419件である。男女児間に差は認めない。症状 とその発現日、年齢の関係をみると次の通りであった。   37.5℃以上38.5℃未満の発熱は合計22件(4.3%)であるが、接種後7 日目までの小計では16件(3.1%)である。接種後1日目に10件、(1.9%)が 最大である。   38.5℃以上の発熱は合計54件(10.5%)であるが、接種後7日目までの小 計では32件(6.2%)である。発現日は接種後1日目の15件(2.9%)が最大 である。   局所反応は合計206件(40.1%)であるが、接種後7日目までの小計では20 3件(39.5%)である。接種後1日目の123件(23.9%)が最大である。2 歳までに多くみられる。   けいれんは接種後0日目に1件、15日目に1件でいずれも発熱を伴っていた。   嘔吐は合計9件(1.8%)であるが、接種後7日目までの小計では4件(0.8%) である。   接種後6日目の2件(0.4%)が最大である。   下痢は合計29件(5.6%)であるが、接種後7日目までの小計では17件(3. 3%)である。接種後2日目の5件(1.0%)が最大である。2歳までに多くみられ る。   せき、鼻水は合計97件(18.9%)であるが、接種後7日目までの小計では60 件(11.7%)である。接種後1日目の12件(2.3%)が最大である。2歳まで に多くみられる。 5.DT初回接種、追加接種は対象者が少ないので省略する。 6.DT2期   対象者数は946人であった。何らかの症状を呈したのは354人、395件であっ た。症状と発現日の関係をみると次の通りである。   37.5℃以上38.5℃未満の発熱は合計13件(1.4%)であるが、接種後7 日目までの小計では9件(1.0%)である。   38.5℃以上の発熱は合計9件(1.0%)であるが、接種後7日目までの小計で は4件(0.4%)である。   局所反応は合計323件(34.1%)であるが、接種後7日目までの小計では32 2件(34.0%)である。接種後1日目の214件(22.6%)が最大である。1 1歳と12歳に有意の差は認められない。   嘔吐は合計4件(0.4%)であるが、接種後7日目までの小計では2件(0.2%) である。11歳と12歳での差は認めない。   下痢は合計15件(1.6%)であるが、接種後7日目までの小計では12件(1. 3%)である。   せき、鼻水は合計30件(3.2%)であるが、接種後7日目までの小計では22件 (2.3%)である。 ま と め   健康状況調査では各項目で例年の調査結果と大きな相違はみられなかった。  DPT接種後の特徴は初回1回接種の局所反応にみられる。すなわち今回の調査でも 接種1日後の局所反応は1回、2回、3回、追加接種で約2.8%から約23.9%の 率で出現するが、1回目接種後に限っては接種後7日目に8件、8日目にも6件の局所 反応がみられる。即ち、1回目接種後0日〜1日目では3.5%の局所反応であるが、 7日目〜8日目でも計1.9%にみられる。一方2回接種、3回接種、追加接種後は0 〜1日目に約13%から31%みられるものの7日目、8日目ではほとんど局所反応は みられない。けいれんは少数にみられたが全例に発熱がみられた。DPT・DT接種後 の嘔吐、下痢、せき、鼻水を観察しているのは紛れ込みの副反応を観察することが目的 である。いずれの症状も接種1日後にやや多く報告されるが28日を通して大きな発生 率の相違はなく、このワクチンを接種する年齢層の日常における症状の発生率と考えら れる。   麻 し ん  対象者数は、1歳児1,889人(男児983人、女児905人、不明1人)、2歳 児62人(男児28人、女児34人)、3〜7歳半児49人(男児29人、女児20人) の計2,000人であった。  観察期間中(0日〜28日)に初発した発熱は、495人(24.8%)にみられ、 そのうち最高体温が38.5℃以上であったものは、309人(15.5%)であった。 そのうちで、接種後6日までの発熱者は182人(9.2%)、38.5℃以上は11 1人(5.7%)であった。接種後7〜13日の発熱者は205人(10.3%)、3 8.5℃以上は119人(6.2%)であった。0〜13日に初発した発熱を合わせる と387人(19.5%)、38.5℃以上は230人(11.9%)であり、発熱の ほとんどは0〜13日に初発した。  観察期間中に発疹が出現した者は208人(10.4%)であった。そのうち6日以 内に出現した者は、61人(3.1%)、7〜13日に出現した者は、121人(6. 2%)であった。  局所反応は60人(3.0%)に認められた。そのうち、24人(1.3%)は3日 以内の局所反応であった。  けいれんが出た者は10人(0.5%)、発症日が0〜6日は3人、7〜13日が3人、 14〜20日が2人、21〜28日が2人であり、10人すべてが37.5度以上の発 熱を伴っていた。けいれんとワクチン接種との因果関係は不明である。  蕁麻疹は、74人(3.7%)に認められ、発症日は前半の0日から13日までが、 後半の14から28日より多い傾向が認められた。1日以内の蕁麻疹を認めたものは9 人(0.5%)であった。 ま と め  麻疹予防接種にともなう発熱には弱毒麻疹ウイルスの増殖に伴う発熱(通常7−13 日にみられる)、ワクチン液に含まれるその他の成分に対するアレルギー反応としての 発熱(接種後比較的早期に発現する)、そしてワクチンとは無関係の発熱がある。観察 期間中の発熱は24.8%、0〜13日に初発した発熱は19.5%と発熱日に集積性 が認められた。したがって、発熱の多くは麻疹ワクチンと関係あるものと推測される。  麻疹ワクチン接種に伴う発疹には弱毒麻疹ウイルスの増殖に伴うものと、アレルギー 反応、まぎれこみがある。発疹は10.4%に認められ、0〜13日に初発した発疹は 9.3%と発熱と同様発生日に集積性が認められた。   蕁麻疹が0〜13日に集中する傾向が認められた。   熱性けいれんの発生はあったが、脳炎・脳症の報告はなかった。 風 し ん  対象者数は、2,083人(男児1,066人、女児1,010人、不明7人)で、 内訳は6〜11カ月児1人(男児1人)、1歳児1,660人(男児842人、女児8 13人、不明5人)、2歳児246人(男児129人、女児116人、不明1人)、3歳 児78人(男児40人、女児38人)、4歳児29人(男児18人、女児11人)、5歳 児25人(男児10人、女児15人)、6歳児27人(男児18人、女児8人、不明1 人)、7歳児14人(男児8、女児6人)、12〜15歳児3人(女児3人)であった。  このうち健康異常のなかった人は1,745人(83.8%)であった。健康異常件 数は388件であった。何らかの健康異常がみられた人は338人、男性は178人で 男性対象者の16.7%、女性は160人で女性対象者の15.8%であった。  今期は38.5℃以上の発熱率は1歳児次いで2歳児に高い傾向が認められた。けい れんがみられたのは1歳児1人のみ、37.5度以上の発熱をともなった。蕁麻疹は年 齢による差は明確ではなかった。発疹は2.9%に認められた。   リンパ節腫脹は10人(0.5%)にみられた。   関節痛は5人(0.2%)報告された。 ま と め   風しん予防接種は主として1歳次いで2歳児が受けている。風疹予防接種の主たる副 反応は発熱であるが、麻しんワクチン接種後のように最初の2週間に集積する傾向はな く、28日間を通した合計で13.1%であった。年度によって年齢別発熱率がゆれる。 すなわち、1歳児の発熱率が他の年齢層の発熱率より高い年度と同等である年度がある。 今年度(前期)は1歳児の発熱率が他の年齢の児より高い傾向があった。発疹、局所反 応、蕁麻疹の発生率は1〜3%未満と少ない。リンパ節腫脹、関節痛は1%未満と稀で ある。   日本脳炎   1.日本脳炎ワクチン1期初回1回目  報告された対象人数は407人で、接種された年齢は0歳〜7歳児である。発熱、局 所反応、けいれん、蕁麻疹、その他の発疹など何らかの健康異常を来した人数(発生件 数)は合計39人(44件)で対象者の9.6%を占め、男女に占める割合は9.6%: 9.6%で男女同数であった。  接種年齢をみると0歳から7歳に分布、3歳児が特に多く、3〜5歳で全体の95. 3%を占めた。  接種年齢別の健康異常発生者の割合をみると、健康異常は1歳未満、6歳群を除く2 歳〜7歳各年齢群にみられ、発生者数は対象者の4.5%〜50.0%、平均9.6% にみられた。  発現症状をみると、何れの年齢も発熱が最も多く、4.5%〜33.3%、平均6. 6%(38.5℃以上は5.2%)であった。  接種局所反応は3歳群で7件(2.3%)、2,5,7歳群で1件ずつみられ、合計10 件(平均2.5%)であったが、その他の群ではみられなかった。  蕁麻疹は3歳群で4件(1.3%)、発疹は3歳群で1件(1.0%)みられたが、 けいれんはみられなかった。  症状の発現日を観察期間28日でみると発熱は23日目まで散発的に幅広く報告さ れた。接種2日目〜4日目までが1〜10件とやや多く、2日目がピークであった。局 所反応は接種後3日以内が1〜3件とやや多く、接種翌日にピークがあったが、以後も 7日目2件、9日、13日目で1件みられた。蕁麻疹やその他の発疹は1件ずつ散発的 にみられ、特定の傾向はみられなかった。 2.日本脳炎ワクチン1期初回2回目  対象者数は0〜7歳児242人で3歳児が最も多く、接種後28日の観察期間中発熱、 局所反応、けいれん、蕁麻疹、その他の発疹など何らかの健康異常を来した者は19人 (20件)にみられ、対象者の7.9%を占めた。男女別では7.4%:8.3%で男 が女よりやや少なかった。  接種年齢別の健康異常発生者の割合をみると、4.2%〜100%、平均7.9%で 全年令群から報告された。  発現症状をみると、何れの年齢も発熱と接種局所反応が多く、前者は4.2〜100%、 後者は1.7%〜8.0%、平均は前者5.4%、後者2.1%であった。その他の発 疹が1、3歳群に1件ずつ見られたが、蕁麻疹、けいれんはともに見られなかった。  症状の発現日を観察期間28日でみると局所反応は接種後2日以内に合計5件あり、 接種当日がピークで2日目まで見られた。発熱は全観察期間にわたって13件みられた が1〜2件であり一定の傾向はなかった。その他の発疹は5,19日目に見られた。蕁 麻疹、けいれんはなかった。 3.日本脳炎ワクチン1期追加  対象者数は0〜7歳児251人で4歳児が最も多い。接種後28日の観察期間中、発 熱、局所反応、けいれん、蕁麻疹、その他の発疹など何らかの健康異常を来した者は3 3人(34件)で対象者の13.1%を占め、その接種年齢別の健康異常発生者の割合 は2.9%〜17.4%、平均13.1%で、男女の占める割合は10.3%:15. 6%と男より女がやや多かった。  発現症状では、何れの年齢も発熱が目立って多く、2.9%〜13.0%、平均7. 6%(38.5℃以上は平均5.6%)であった。ついで接種部位の局所反応が続き、 これは4.3〜6.6%、平均4.8%にみられ、4歳児群にやや多くみられた。蕁麻 疹やけいれんは見られなかった。その他の発疹は4、5歳群にそれぞれ2件、1件、合 計3件が報告された。  症状の発現日を観察期間28日でみると局所反応は接種後5日以内に1〜9件と集 中し、接種翌日が9件、2日目が2件、5日目に1件みられた。発熱は23日目まで全 観察期間に散発してみられ、一定の傾向は見られなかった。蕁麻疹やけいれんはなかっ たが、その他の発疹は6,11,12日目に1件ずつ見られた。 4.日本脳炎ワクチン2期、3期の結果   2期、3期の結果は同じ傾向を示すのでまとめて報告する。  対象者数は2期の9〜12歳児で111人、3期の14〜15歳児では47人あった。 接種後28日の観察期間中、発熱、局所反応、けいれん、蕁麻疹、その他の発疹など何 らかの健康異常を来した者はそれぞれ、7人(8件)と5人(5件)であった。  健康異常発生者の割合をみると、それぞれ6.3%、10.6%であった。男女別で は2期では5.9%:6.7%と女がやや多く3期でも男が4.8%:15.4%と女 が多かった。 発現症状では2期では接種部位の局所反応4件、発熱2件あり、3期では接種部位の局 所反応が4件のみで2期、3期ともいずれも局所反応が多かった。蕁麻疹は2期、3 期でそれぞれ1件ずつ見られ、その他の発疹は2期で1件あったが、3期はなく、け いれんはいずれも見られなかった。  症状の発現日を観察期間28日でみると局所反応は2期で1日目2件、2日目2件、 で3期では1日目の2件、2,3日目の1件ずつの計4件が見られた。発熱は2期では 7、11日目に1件ずつみられたが3期では見られず、蕁麻疹は7日目1件、3期で2 5日目に1件あり、その他の発疹は2期で接種当日に1件みられたが3期はなかった。   ま と め   以上の所見を考察すると今回も従来と同様日本脳炎ワクチンの副反応の主なものは 発熱、局所反応、発疹である。接種年齢が若い程、初回接種では発熱、ついで局所反応 が多いが、これらは接種回数を重ねるにつれ、また年齢が高くなるにつれ発熱は減少、 局所反応が増加する傾向にある。局所反応をみると何れの接種も接種翌日にピークがあ り、約7日目まで集中する。これを詳細に見ると年齢が若いほど7日以降にもおくれて 発生する傾向があり、年齢の高い2期、3期になると接種後3日までに限定して発生し ている。 一方、発熱は観察28日間に渡って広く散在し、これも年齢の若い群ほど全 観察期間に渡ってみられる。このことは発熱は必ずしもワクチンだけの副反応とは言い 難く、むしろ発熱疾患の頻度、経過や年齢因子を考えると紛れ込みの熱性疾患の可能性 を伺わせる。蕁麻疹やその他の発疹は一定の傾向がなく、頻度も低い。けいれんは今回 もなかった。また今回も脳炎・脳症などの重篤な中枢神経系合併症の報告はなかった。  尚、今回の報告の総数の減少は平成17年5月厚生労働省から出された「日本脳炎ワ クチン接種の積極的勧奨差し控え」の通知による影響があることを付記しておく。 ポリオ 1.ポリオ1回目   接種対象児数は1,576人(男775人、女793人、不明8人)で、内訳は3〜 5カ月356(男191人、女164人、不明1人)、6〜8カ月723人(男346人、 女375人,不明2人)、9〜11カ月330人(男157人、女168人、不明5人)、 1歳139人(男72人、女67人、不明0人)、2歳以上28人(男9人、19人、不 明0人)であった。このうち健康異常の発生のなかった人は1,244人(78.9%) であった。何らかの健康異常がみられた人は332人(21.1%)460件で、年齢 別では、3〜5カ月62人(79件)、6〜8カ月136人(182件)、9〜11カ月 90人(132件)、1歳33人(51件)であった。接種数の比較的多い1歳以下では 6〜8ヶ月児の割合が最多であった。   発熱は200人(接種対象者の12.7%)にみられ、そのうち1歳以下では、6〜 8ヶ月の同年齢接種対象者の10.5%、9〜11ヶ月同じく17.9%、1歳では1 9.4%、2歳では33.3%であった。38.5℃以上の発熱は114人(接種対象 者の7.2%)で、発熱者の年齢別では3〜5ヶ月12例(同年齢対象者の3.4%)、 6〜8ヶ月41例(同じく5.7%)、9〜11カ月36例(同10.9%)、1歳20 例(同14.4%)、2歳4例(同19.0%)であった。接種後の日数では接種1日目 で接種対象者の1.4%、接種2、3日目で同じく1.1%,接種4日目で同じく0. 6%、その後は31〜35日の0.8%を除き、すべて0.6%以下であった。接種1〜 3日以内が若干多いもののその後特定の日数に集中する傾向はない。38.5℃以上の 発熱でみると、接種1、2日目が同じく0.6%で、その後は接種31〜35日の0. 6%を除きすべて0.5%以下であり、また特定の日数に集中する傾向はない。   けいれんを来した症例は、5例に認められ、2例が37.5℃以上の有熱を伴うもの であり、いずれも接種31〜35日目に生じたものである。無熱者におけるけいれんは 3例であり、接種2、5、25日目に生じている。   嘔吐は81例(接種対象者の5.1%)に認められ、接種0日目が10例(同0.6%)、 2日目9例(同0.6%)で、その後は31〜35日の0.5%を除きすべて同じく0. 2%以下であった。   下痢は174例(接種対象者の11.0%)に認められた。接種後の日数でみると、 接種1日目に26例(同1.6%)、接種2日目20例(同1.3%)、接種3日目12 例(同0.8%)であり、、その後は31〜35日の0.8%を除き、接種4日目以降は すべて同じく0.6%以下である。 2.ポリオ2回目   接種対象児数は1,320人(男681人、女632人、不明7人)で、内訳は3〜 5カ月7人(男4人、女3人、不明0人)、6〜8カ月93人(男47人、女46人、不 明0人)、9〜11カ月305人(男155人、女149人、不明1人)、1歳786人 (男414人、女368人、不明4人)、2歳93人(男41人、女52人、不明0人)、 3歳以上36人(男20人、女14人、不明2人)であった。このうち健康異常の発生 のなかった人は1,034人(78.3%)であった。何らかの健康異常がみられた人 は286人(21.7%)413件で、年齢別発生割合は3〜5か月2人(2件)、6〜 8カ月16人(24件)、9〜11カ月66人(107件)、1歳173人(233件)、 2歳21人(34件)、3歳上8人(13件)であった。   発熱は214例(接種対象者の16.2%)にみられた。6〜8カ月では接種対象者 の15.1%、9〜11ヶ月では同じく17.4%、1歳同じく16.3%、2歳同じ く16.1%であった。38.5℃以上の発熱は142例(接種対象者の10.8%) で、発熱者の年齢別では6〜8ヶ月11例(同じく11.8%)、9〜11カ月37例(同 12.1%)、1歳83名(同10.6%)、2歳9例(同9.7%)であった。接種後 の日数では接種1、3日目で接種対象者の1.1%、接種2日目で同じく0.9%、4 日目0.8%で、その後は接種9、22日目の0.9%を除き、すべて0.8%以下で あった。接種31〜35日目は0.8%であった。接種1〜6日以内の発熱および9, 22日目の発熱が若干多いもののその後特定の日数に集中する傾向はない。38.5℃ 以上の発熱でみると、接種3日目が同じく0.8%、接種1日目0.7%で、その後は 接種22日目および31〜35日の0.7%を除きすべて0.5%以下であり、また特 定の日数に集中する傾向はない。   けいれんを来した症例は、6例に認められ、全例が37.5℃以上の有熱を伴うもの であった。有熱者においてはそれぞれ接種3,16,20,24,29,31〜35日 目に生じている。   嘔吐は58例(接種対象者の4.4%)に認められ、接種3日目が7例(同0.5%) で、その後は同じく31〜35日の0.6%を除き0.3%以下であり、また特定の日 数に集中する傾向はない。   すべて同じく0.2%以下であった。   下痢は135例(接種対象者の10.2%)に認められた。接種後の日数でみると、 接種1日目に24例(同1.8%)、接種2日目15例(同1.1%)、接種3日目9例 (同0.7%)であり、接種0日及び5日目以降はすべて同じく0.5%以下である。 ま と め  ポリオ1回目、2回目接種対象者におけるワクチン接種後の発症割合を見ると、発熱 12.7%・16.2%、嘔吐5.1%・4.4%、下痢11.0%・10.2%とな っている。  発熱までの期間を見ると、1回目は接種1、2、3日目で接種対象者の1.4%、1. 1%、1.1%、その後は31〜35日の0.8%を除きすべて同じく0.6%以下で あった。2回目では接種1〜4日目でそれぞれ接種対象者の1.1%、0.9%、1. 1%、0.8%であり、9日、22日の0.9%、6日、31〜35日の0.8%、1 9日の0.6%を除き、それ以外はいずれも0.5%以下である。1回目、2回目とも に接種数日以内の発熱発症の割合が若干多いものの31〜35日目と同様の程度であ る、今回第2回目の接種において接種2、9、22日目に若干高い発熱率が見られてい るが、その後特定の日数に集中する傾向はない。  嘔吐については、第1回目において下痢より小さいピークが1〜2日目に見られるが、 4日目以降はほぼ横ばいとなっている。2回目においては、下痢より小さいピークが接 種1〜3日目に見られるが、5日目以降ほぼ横ばい状態にある。またそのピークはおお むね31〜35日目を下回っている。  下痢については1回目においてピークが接種後1日目、次いで2、3日目となってお り、4日目以降はほぼ横ばいとなっている。2回目においてはピークは1日目にあり、 4日目以降にほぼ横ばい状態となっている  以上の結果は、多少の数字の前後はあるがこれまでとほぼ同様の結果であり、大きな 変化はない。  ポリオが生ワクチンであることを考えると、ウイルスが増殖して何らかの反応をおこ すには極めて短い期間であり、これらの反応がウイルスそのものの影響であるとは考え にくい。医療機関または、接種会場に訪れること自体が、軽微な症状の発現に結びつく 可能性もある。いずれのワクチンでも接種後には0.数パーセントの割合で発熱は見ら れており、DPTにおいては嘔吐、下痢も同様に見られている。  これらから、乳幼児健診などで受診したものにおけるその後の健康状況の観察を行い、 接種者と非接種者の健康状況の変化を比較するなどにより、その原因が予防接種にある のか、受診することにあるのか、あるいは受診に関係なく正常乳幼児で生じ得ることで あるのかについての調査研究を厚生科学研究の一端として行なったデーターがある(厚 生労働科学研究 医薬品・医療機器王レギュラとリーサイエンス総合研究時事業 「ワ クチンの安全性向上のための品質確保の方策に関する研究(主任研究者・下田智一)」 平成17年度報告ポリオワクチン接種後の副反応に関する検討(分担研究者・岡部信彦)   それによれば、発熱,嘔吐、けいれんなどにはポリオ投与との関係は見られないが、 下痢においては、ポリオ予防接種群において乳幼児健康診査群より発症率が高いことが 示された。このことは生ポリオワクチンを接種することが何らかの機序で下痢と関連し ていることを強く示唆している。しかしそれがポリオワクチンウイルスそのものに起因 しているかについては、今後さらなる検討が必要である。また一つの可能性として、予 防接種の場合と健康診査の場合では、症状を報告する基準が異なることが考えられる。 つまり、予防接種に関しては副反応に敏感になっているので、観察がより注意深くなり、 また発症と判断されやすくなるかもしれない。調査では、各症状の程度を示す情報は体 温を除いては求めておらず、また観察における注意深さを計量化することは非常に難し い。したがって、両群でその程度が異なる可能性は否定できない。そうした問題を解決 するためには、倫理的な検討を実施した上で、ワクチン液からワクチンウイルスを除去 した液体を用いるなどして、健康観察を実施する必要があると考えられた。   しかしいずれにしてもこれらの反応はいずれも軽微な自然回復性のものにとどまって おり、現段階でポリオワクチンの重要性を妨げるものではない。 B C G  総数2,330人について接種後観察が行われた。制度の改定で今期から接種対象は 全員0歳児である。そのうち男は1,151人、女は1,171人であった。  これらの中から31人、1.3%に何らかの異常が見られた(延べ件数31件、被接 種者100人あたり1.3件)。健康異常発生者割合は性別に見ると男1.7%、女0. 9%と、男で多かった。  異常の種別にみると、「リンパ節腫脹」が20件(0.8%)、「局所の湿潤」が11 件(被接種者の0.5%)であった。  リンパ節腫脹は接種後1日〜5ヶ月に起こっていたが、とくに1〜2ヵ月に6人、ま た60%が1ヶ月〜5か月に発生していた。1日〜7日という早期に気づかれた例も5 件あった。   局所の湿潤は、1例を除いて接種後1か月〜5ヶ月にわたって発生していた。  接種局所の針痕に関する観察は2,105人(被接種者総数の90.3%)について 行われた。全体では15〜18個(記載上19個以上とされている者を含む)の者が多 い(70.6%)が、4個以下の者も1.4%あった。平均個数は全体では15.3個 で、健康異常の有無別に見ると、「なんらかの異常あり」で16.4個、「異常なし」で 15.3個であり、「異常あり」で多かった。 ま と め  リンパ節腫大のうち、非特異的なものと思われる接種直後の発見例を除くと、被接種 者の0.7%に発生している。大部分は単純な腫大であるが、一部分(ある研究によれ ば2%)が化膿し、穿孔する。しかしいずれにせよ、数ヶ月のうちに無治療のままで治 癒する。  局所の湿潤は約半数が接種3ヶ月以内にみられたもので、正常反応が強調された例と 考えられる。残りは3ヶ月を越えてから見られていたが、その大半は正常反応と考えら れるが、混合感染によるものも多少ある可能性がある。コッホ現象と思われる早期の例 はない。  針痕は今回の観察では全体で平均15.3個みられた。標準的な技術で接種した場合 の平均値に近い。ただし少数ながら針痕個数が4個以下のものもあり、接種技術の向上 の余地がある。                 照会先:厚生労働省健康局結核感染症課予防接種係                        TEL 03−5253−1111                        FAX 03−3581−6251