08/04/23 第7回議事録 08/04/23 厚生科学審議会科学技術部会 第7回臨床研究の倫理指針に関する専門委員会 議事録 ○ 日時 平成20年 4月13日(水)10:00〜12:00 ○ 場所 東海大学校友会館 富士の間 ○ 出席者 【委 員】 金澤委員長 廣橋委員長代理       飯沼委員 伊賀委員 井部委員 川上委員 倉田委員 小林委員       寺野委員 永井委員 橋本委員 藤原委員 本田委員 丸山委員 谷内委員 【事務局】 新木研究開発振興課長 林治験推進室長 佐藤課長補佐 【特別ゲスト】 赤林朗 教授(東京大学)、 ○ 議 事: 1.臨床試験登録と研究倫理について ◎ 特別ゲスト 赤林 朗 教授(東京大学) 2.「臨床研究に関する倫理指針」の改正案について   3.その他 ○ 配付資料 議事次第 座席表 委員名簿 資 料 1  :第6回臨床研究の倫理指針に関する専門委員会の主な意見 資 料 2 :臨床研究に関する倫理指針(現行版) 資 料 3 :臨床試験登録と研究倫理 (赤林教授提出) 資 料 4  :臨床研究の補償に関する意見 (前原委員提出) 資料5−(1) :臨床研究に関する倫理指針(改正案概要) 資料5−(2) :臨床研究に関する倫理指針(改正案・新旧対照表) 資料5−(3) :臨床研究に関する倫理指針(改正案・参考資料) 資 料 6 :研究計画の登録と公表について(事務局) 資 料 7  :「臨床研究に関する倫理指針」遵守状況調査報告(案) 資 料 8  :改正GCP省令(平成20年2月29日改正) 資 料 9  :高度医療評価制度の概要 ○事務局  定刻ですので、第7回の専門委員会を始めさせていただきます。本日、先生方におかれ ましてはご多用中お集まりいただきまして、ありがとうございます。  本日は、委員19名のうち、15名の先生方のご出席をいただいております。伊賀委員、 佐藤委員、江里口委員、河野委員については、ご欠席の連絡をいただいております。とい うことで本会議は、成立していることをはじめにご報告申し上げます。  本日の会議は公開としておりますので、ご了承いただければと思います。今回から、北 村委員に代わりまして、国立循環器病センター総長の橋本委員に委員としてご参加いただ いております。はじめにご紹介申し上げます。よろしくお願いいたします。また、本日は、 特別ゲストとしまして、東京大学の赤林朗教授にご出席いただいております。赤林様には、 議題の1番で倫理審査の実際等、現場からのご意見をいただくこととしておりますので、 よろしくお願いいたします。それでは、議事進行を金澤委員長にお願いいたします。 ○金澤委員長  ありがとうございました。それでは、第7回委員会を始めたいと思います。赤林先生に は、今日は特別のゲストとしてお見えいただきましたので、あとでお話をいただきます。 まずは、配布資料の確認からいってください。 ○事務局  配布資料の確認をさせていただきます。本日の議事次第、座席表、構成委員の名簿があ ります。そのあと、資料1から4まで、資料5につきましては、(1)、(2)、(3)とありまして、 資料6から資料9までが本日の資料です。その他、毎回、委員の方々に、参考資料として ハードファイルを配布しております。これは、お持ち帰りにならないようお願いいたしま す。資料全体、過不足等がございましたら、事務局にお知らせいただければと思います。 ○金澤委員長  過不足がありましたら、どうぞおっしゃってください。それでは、議題1に入りたいと 思います。臨床試験登録と研究倫理についてです。倫理指針の改正案を審議いたします前 に、赤林朗先生に特別ゲストとしておいでいただきまして、倫理審査の実践のお立場から お話を伺うことにしております。資料3でしょうか、赤林先生、どうぞお願いいたします。 ○赤林特別ゲスト  ご紹介に与りました東京大学の赤林でございます。私は、専門は医療倫理学というもの をやっておりまして、京都大学、東京大学等で倫理委員会の審査委員長を長らく務めてま いりました。本日は臨床試験登録と研究倫理ということで、研究倫理の概略を簡単にお話 したあと、臨床登録のお話をさせていただきます。それでは、お手持ちの配布資料を順番 にお願いいたします。 (パワーポイント開始)  1頁目に「研究とは」とあります。「研究とは、ある特定の事柄についての普遍的な知識 を得るための、体系的な試みである」と定義されるわけですが、次のスライドにあります ように、よりよい研究というものがあります。FINER Criteriaと呼ばれていますが、 Feasible、実際に実行可能でなければいけない、Interesting、おもしろくなければいけな い、Novel、新しくなければいけない、と同時にETHICAL、倫理的でなければいけない、そ してRelevant、関連して重要でなければいけない。ということで、よい研究の一部には倫 理的であるということが組み込まれていることが特記されるべきことであるとは思います。  次のスライドは、なぜ研究倫理が必要かということです。いままでに多くの非倫理的、 または倫理的妥当性が疑わしい研究が行われてきたからです。例えば、次にいきますと、 第二次世界大戦中の人体実験、資料の次頁にいきますと、タスキギーの梅毒研究。これは、 ペニシリンという特効薬が1950年ほどに開発されましたが、梅毒の患者に投与されずにそ の自然経過を診たということで、世界的に批判された研究です。  次のスライドは、なぜ研究倫理が必要か(その2)です。研究者だけでは、研究計画の 倫理的妥当性を十分に判断できない可能性があるから、そして、研究者の社会的信頼が大 切だからということです。次頁です。社会からの信頼という観点から研究倫理を考えてみ ますと、研究参加者の保護という観点があります。最近は、被験者(subjects)と呼ばな いで研究参加者(participants)と呼びなさいというような研究倫理の専門家もいらっし ゃいますので、本日は、研究参加者で統一させていただきたいと思います。  研究参加者の保護という一側面ですが、ヒトを単なる研究手段として用いてはならない、 研究によるリスクから参加者を保護する必要性があるということで、まず、研究参加者の 保護という側面があると同時に、次頁ですが、もう一方、科学の進歩と社会への貢献とい うことで、科学の進歩は、どうしても、一部ヒトを対象とする研究に依存せざるを得ませ ん。と同時に、普遍的な知識の累積は社会への貢献にもつながるという「公共善」という 側面もあります。したがって、次の資料ですが、研究倫理を考えるということは即ち、研 究参加者の保護と科学の進歩と社会への貢献という、その2つの振子の中のどの辺に位置 を考えるのかということにほかならないと私は考えております。  研究倫理の代表的な国際的ガイドラインはこちらにお示ししたとおりですが、ヘルシン キ宣言、ベルモントレポート等が有名です。そのようなガイドラインを概観いたしますと、 基本的な倫理原則が3つぐらい挙げられてきます。次の資料ですが、“RESPECT FOR PERSONS”、 “BENEFICENCE”、“JUSTICE”が主要なものとして挙げられます。  最初のRESPECT FOR PERSONSですが、どういう内容かと言いますと、完全に自発性が保 証された状況でインフォームド・コンセントを取ることであったり、研究参加者のプライ バシーを厳格に守ることなどという言葉で表現することができます。  さらにBENEFICENCEは、予想される利益が、危険よりも大きいこととか、危険が利益を 上回るとわかった場合には、直ちに研究を中止することであったり、現行の最善の方法や 治療と比較することというような表現で表されます。  さらにJUSTICEは、ちょっとわかりづらい内容ですが、研究の利益と負担が一定の個人 や集団に偏らないようにすること、公平な配分であったり、社会的に弱い立場にある方々、 例えば判断能力のない高齢者、認知症の方であったり、子どもや囚人などを対象とする研 究を適切に行うことと言われています。  研究における倫理的配慮をまとめてみますと、大体、この5項目ぐらいに絞られます。 危険性が最小限であること、予測される利益に比べ危険が妥当であること、インフォーム ド・コンセントが行われ、個人のプライバシー保護が守られていること、研究参加者の選 定が公正に行われていることです。  このような研究の規制ですが、どのレベルで誰がこの規制をかけるのかといった、より 深い問題があります。最近の研究倫理に関する行政ガイドライン、法律等が掲げてありま すが、さまざま出ています。規制のあり方として、4つぐらいに分類されると思います。 法律は中止・刑罰を伴うものです。臓器移植法やクローン規制法などが挙げられます。ま た、2番目のレベルとして、行政のガイドライン、ゲノムのガイドライン、ESのガイドラ イン。この臨床研究のガイドラインもそれに相当するわけです。そして学会のガイドライ ン。これは、罰則としては学会除名ぐらいということで、例えば代理出産などはいま議論 がされている最中です。4番目としては、現場の判断に任せる、そういう考え方がありま す。  そこで、誰が何にどのように合意をするのかということです。私はPrivate vs. Public という表現を用いさせていただきましたが、これは、患者がいいと言い、現場の医師もい いと言う。即ち、患者の自己決定と現場の医師の裁量に任せていいのか、いや、そうでは なくて社会が決める公益とか、行政が関与すべきである、そういう考え方とそのような対 立があるということで、Private vs. Publicという表現をいたしました。患者と医者がよ いからといって何をやってもいいのかと言うと、必ずしもそうではない、しかし、誰がど のレベルで規制をかけるのかという線引きの問題があります。何を法にして何をガイドラ インにすればよいのか、という問題でもあります。その問題については、実はゴールデン・ ルールはないというので、現状で摸索されているというところだと思います。  先にお示ししましたように、法律もありますが、現在行政ガイドライン等がたくさん出 ています。ヒトゲノム、ES、遺伝子治療、疫学研究、臨床研究に関する倫理指針、ヒト幹 細胞、その他、たくさん出ています。私は、今回議論になっている臨床研究に関する倫理 指針は、おそらくこの行政指針の枠内で行っていけばよいのではないかと思っております。 法制化といった議論もありますが、いわゆるソフトロー的な考え方ですね。そういう見方 でいきますと、この臨床研究に関する倫理指針のみを法律化してしまうと他の行政指針等 との関連も非常につきにくくなりますので、私自身は、このガイドラインの枠内で行って いけばよいのではないかと思っております。  次に、現場の倫理委員会でどういうことが起きていて、どういう工夫をしているかとい うことをお話してくれということでした。記憶にも新しいかもしれませんが、平成15年に 東大病院で患者の同意なしにウリナスタチンという薬剤のRCT、患者を無作為に投与群と 非投与群に分けて研究をするということが行われていました。これは社会的にも非常に重 要な問題になったわけです。もちろんその当時も東大病院には倫理委員会等があったわけ ですが、それが守られていなかったということで大きな問題になりました。これは、実は 東大において研究倫理の原点に当たるような事件でした。これ以降、東京大学の医学系研 究科、医学部における研究倫理審査体制を徹底して周知させました。  そのうちの1つの大きな取組としては、次の次の頁にあります研究倫理セミナーの受講 の義務化です。これは、研究倫理セミナーというものを年に3回ぐらい行い、倫理委員会 に申請する可能性がある方は全員受講するようにと指導をいたしました。受講者には受講 証が発行され、申請時には受講番号が必要になります。1回の受講で2年間有効であると いうことで、2年経ったら再度更新するという、そういう制度を導入いたしました。次の 新聞の記事にもありますが、これは昨年度行われた研究倫理セミナーを取材に来られたわ けですが、これで皆さんは晴れて研究の申請ができるようになります。是非、社会から信 頼される研究をしてほしいと、私はこういう研究倫理セミナー等で呼び掛けております。  さらに、次のスライドでは臨床倫理指導員というものを置いております。Clinical Ethics Consultantといいます。こちらの研究セミナーもこの臨床倫理指導員も今回委員 でいらっしゃいます当時の東大病院院長の永井良三先生のイニシアチブによって行われた ものですが、この研究倫理指導員は、ジュニア・リスク・マネージャーのようなものを想 定して各科の、あるいは教室内の倫理審査に関わるアドバイス、あるいは倫理審査に関わ る委員会からの情報を伝達するというような役割を持たせております。したがって、倫理 委員会のことを学内等に周知する際にどういう工夫があるのかということですが、1つは 臨床倫理セミナー、もう1つは、臨床倫理指導員というものを置くという体制をとってお ります。これは東京大学独自の試みで、全国的にここまで整備した形で行っているという 話は今のところ聞いておりませんので、是非、全国でモデルとして試してみていただきた いと思います。以上が研究倫理に関する概括です。  次に、臨床試験登録の倫理的諸問題に移ります。臨床研究の登録の問題ですが、そもそ もきっかけになりましたのは、2004年の『ニューヨークタイムズ』に掲載された記事です。 薬剤の抗うつ剤の治験の際に、製薬会社がそのネガティブ・データを陰蔽していたという ことが明らかになりました。また、そのネガティブ・データというのは、青年期において 自殺念慮を引き起こす可能性が高いという内容のものでした。こういうきっかけがありま して、次の頁ですが、これは細かいので全部をお読みいただく必要はございません、いつ ごろから登録データベースという考え方が出てきたのかということです。ICMJEとかWHO、 U.S.A等で見てみますと、大体2003年とか2004年ということで、極めて最近の事象であ るということを強調させていただきたいと思います。登録をするという動きは2000年に入 って以降の話である、ということを再度確認させていただきます。  そこで、登録を進める根拠という次のスライドに入っていきたいと思います。登録を進 めると何がいいことがあるのかということを整理させていただきました。これは、透明性 を高めるということがまず1番目として言えると思います。ネガティブ・データの陰蔽な ど、不正・非行を予防、あるいは研究の進捗状況を社会が把握できるということです。2 番目に進める根拠としまして、情報へのアクセスを保証するということができます。研究 参加者、潜在的研究参加候補者、他の研究者、企業等がアクセスすることができ、これを 通じて公共善を促進することができる。  3番目は研究参加者保護です。登録をすると即ち研究参加者保護になるかと言いますと、 その前には、いくつかの条件が必要になります。登録を進めて、それが研究参加者の保護 につながるプロセスには、3番にありますように、登録した試験内容の詳細な公表を行う ならば、複数の同一の研究を統合して研究参加者数を減らすことができます。これは研究 参加者の保護になります。また、結果の開示を同時に行うならば、ネガティブな結果であ ったとしても、先行研究と同じ無益な試験に研究参加者が巻き込まれないということで、 研究参加者の保護になります。さらに、研究の途中から終了後に及ぶモニタリングを行う のであれば、不適切な研究を早期に発見して中止できるということです。このような条件 が整っていれば、研究参加者集団のリスクを軽減して、無用のリスクから保護できるとい うことです。ですから、ただ登録制さえ導入すればイコール研究参加者保護になるのでは ないということです。  逆に、では、登録制により予想される混乱にはどういうものがあるのかということです。 登録対象となる研究の範囲・定義が不明確です。情報の洪水になって過剰反応による現場 の混乱が起きるのではないか、かえって患者への不利益が増大しないかという懸念があり ます。  2番目、登録に関わる業務の負担の増大があります。研究者にとっても登録管理者にと っても業務負担が非常に重大になってきます。  3番目として、研究実施のネガティブ・インセンティブの増大があります。要するに、 プライオリティがなくなってしまうのではないか、研究の自由度が縮小してしまうのでは ないかという研究者側の臨床研究を忌避する風潮が助長されないかどうか、さらに知的財 産権が脅かされることへの不安が増大しないかどうかということが挙げられると思います。  登録の対象とすべき臨床研究の範囲です。では、どういう研究を登録すればよいのかと いうことです。ここでは、まず薬事法に基づく治験に関しては、企業主導でも医師主導で あってもPhaseI以降はすべて登録制にすべきなのであろうと思いますが、薬事法の適用 外であっても「身体的リスクの高い」介入研究、あるいはトランスレーショナルリサーチ などは、登録の対象になるものかなと考えます。ただ、いままでの議論を拝見しています と、その介入研究とはというところの定義に「予防、診断、治療、看護ケア、リハビリテ ーション等について・・・」というようなことがありまして、介入研究をすべて登録対象 にいたしますと、看護ケアやリハビリテーション等の介入研究にまですべて登録が必要に なるということで、果たしてこの種の研究に登録が本当に必要であるのかという疑問が出 てきます。  実はその介入研究と言いますのは、東大病院でも審査した例ですが、身体的リスクが非 常に高い研究から身体的リスクが非常に低い研究までさまざまです。トランスレーショナ ルリサーチのように非常にリスクが高い研究、あるいは看護ケアの方法の介入研究等、比 較的リスクが低い研究と様々あります。したがって、介入研究として全部を一緒に議論す るというのはなかなか難しいのではないかと考えております。それでは、どこで分ければ よいのかということですが、やはり身体的リスクの高さが鍵になるのではないかと思いま す。身体的リスクが高いものは登録制にするということならば、非常に理屈に適っている と思います。  登録対象の決定ですが、その身体的リスクが高いということを誰が判断するのかという ことです。現状では各施設の倫理委員会のみです。したがって、現場の倫理委員会はこれ では困ってしまいますので、臨床研究の指針のQ&A等で具体例を挙げて明確にするべきで あると思います。と同時に、適切なリスク評価ができる委員が必要であると思います。  登録制導入までに必須の検討事項です。登録制を導入するという方向性で議論がいくの はよろしいのですが、十分なインフラとリスクの評価を適切に行う人材の整備・配置の保 証ができるのかどうか、そうしないとうまくいきません。次に、誰が登録データベースを 管理するのか、3番目、試験内容の公表及び結果の公表を伴わなければ、被験者保護につ ながるような有益なシステムにはならないということです。あと、モニタリングができる のか、政府による永続的な支援体制、財政的・政策的な保証ができるのかということで、 全体のインフラの底上げをしないと、登録制を導入しても有効には機能しないというのが 私の現在の意見です。  まとめます。ヒトを対象とした研究は、参加者の理解や社会の信頼にかかっています。 研究倫理を考えるということは、研究参加者の保護と科学の進歩と社会への貢献、この振 子の中のどの辺の位置をとるのかを考えることにほかならない、ということを申し上げて まいりました。研究倫理は、研究を進めていく上で重要であるということです。  最後のスライドです。私、「倫理、倫理で夜も眠れず」と同僚の先生方からよく叱られる のですが、倫理というのは決して気高い崇高な道徳観を押しつけるようなものではありま せんで、是非、非常に身近なものであると捉えていただいて、この委員会でも議論を進め ていただければと思います。どうもありがとうございました。 ○金澤委員長  どうもありがとうございました。時間もピタリで終わっていただきました。2つのこと をお話いただきました。研究倫理委員会の実態の話といまの登録の問題、2つございまし た。ちょっと分けて、まず、最初の研究倫理委員会の実態のことでご意見をいただきたい と思います。立場上、こういうことを申し上げていいのかわかりませんが、私からちょっ とご質問をさせていただきたいのです。  22頁の東京大学の研究倫理審査体制の最初の○の対象の2番目に、「附属病院における 診療の倫理審査(にかかる調書)」とあります。倫理審査をなさっているのだと思いますが、 これは症例報告なども含んでいるのですか。症例報告についてはどのようにお考えになっ ているのですか。 ○赤林特別ゲスト  これは症例報告を含みません。これは、待機的なハイリスクの手術などにおける倫理審 査で特にインフォームド・コンセントが、説明文書が患者にしっかりと行われているかど うか、及び同意をする本人が、あるいは代諾者がしっかり理解しているか、それと、例え ば東大病院で初めて行われるような医療行為、そのようなものに関してこの調書というも ので倫理委員会にかけるということをしております。  症例報告に関しては、東大病院のインフォームド・コンセントの書式に一工夫をしてお ります。例えば説明同意文書が普通の手術などでありますね。それで手術に同意をすると いう最終頁があるわけですが、その次の頁に「教育・学術研究へのご協力のお願い」とい うことで、症例報告を含む研究使用についての同意書をもう1枚入れてとっていると、そ ういうことをしております。  また、症例報告に関しては、診療の一環か研究かという線引きの問題がありますので、 これからもう少し議論してみないと、どの辺がいちばんいいのかという辺りはこれからの ところかと思います。 ○金澤委員長  ありがとうございました。できれば、倫理審査委員会のことをまずご議論いただいて、 それから登録のことをと思いますが、ご意見はいかがでしょうか。 ○谷内委員  東大の大変斬新的な試みに非常に感銘を受けたのですが、臨床倫理指導員は教室内とい うことですが、基本的には臨床の教室のみということになるのですか?それとも臨床研究 を行う所すべてということになるのか、あるいは基礎系を含めたすべての教室に臨床倫理 指導員を置くのかということなのでしょうか? ○赤林特別ゲスト  基本的に基礎の研究室でもヒトの試料を用いた研究を行うケースがあります。そういっ た場合は倫理委員会に申請をすることになりますので、そのような研究を行う可能性があ る教室すべてに、こういう指導員を置くという体制をとっております。また、そのような 教室の方も倫理セミナーを受講して受講証を持たないと倫理委員会に申請ができない、そ ういう体制をとっております。 ○谷内委員  各教室に1人ずつ必ず配置するのですか? ○赤林特別ゲスト  ほとんどおります。よほど動物実験だけとか、ヒト試料を用いない研究を行っている所 で置いていない所はありますが、基本的にほとんど置いてあります。 ○金澤委員長  ありがとうございます。ほかにいかがですか。それでは登録のほうのご意見でも結構で すので、どうぞ。 ○川上委員  貴重なお話、ありがとうございます。アメリカでは、IND申請の中で、臨床試験のうち 新しい医薬品、まだ国が認めていない医薬品の場合には必ず審査・登録が必要になり、ヨ ーロッパも2004年からそういった形になっていると思うのですが、既承認、国として承認 した薬を使った介入研究、例えばアウトカムリサーチとか、あるいは薬剤疫学的な研究な どの登録の動向をもしご存じだったらお教えいただければと思うのですが。 ○赤林特別ゲスト  日本の場合ですか。 ○川上委員  いいえ、国際的な動向。 ○赤林特別ゲスト  既に認められている。 ○川上委員  既承認のものです。 ○赤林特別ゲスト  承認ですね。承認済みのものを新たな。 ○川上委員  既承認のもので、例えばAという薬が実際に体にとって役に立っているということを評 価するために、新しいBという薬とどちらがいいのかどうか、あるいは何らかのQOLを上 げているかどうか、そういうことをするために薬剤疫学的な研究は既承認薬で行われてい ると思うのですが。 ○赤林特別ゲスト  それは、少なくとも日本においては、製薬メーカーが付かない医師の自主臨床試験とい うような形で行われている内容のものと理解してよろしいでしょうか。 ○川上委員  日本の場合には、それは一応臨床研究で介入とは言われますが、ただ、これは、現時点 では薬事法でも認められているものですから、そういう扱いだと思うのですが、国際的に どうなのかなということが。 ○事務局  いま川上委員からご質問があった点ですが、WHOの定義で申し上げますと、いわゆる interventionalなstudyということになっていますので、基本的には、介入的な形のもの であれば登録の対象にはなるのだろうと。例えばランダマイズトされるとか割付けをされ るということは、WHOの定義から言うと、対象になるという考え方でよろしいかと思いま す。 ○川上委員  ありがとうございます。 ○金澤委員長  ありがとうございました。ほかにいかがですか。 ○谷内委員  赤林先生のプリントの31頁、登録対象とすべき臨床試験の範囲です。薬事法に基づく治 験ということですが、私の理解では、たぶん薬事法に基づく治験というのは登録制の対象 にならないと私はいま理解しているのです。先生、あえてこれを言われた理由は、治験は やはりもう少し公開すべきだという考え方なのでしょうか?それが1点です。  やはりこういう契約に基づくようなものに関しては、私は、臨床研究の登録の範囲にな らないのではないかと考えています。例えば治験は、一応受託研究で受けますが、製薬会 社以外の例えば食品会社とかそれ以外のものも、受託研究とか共同研究で臨床研究に大学 に来る場合があります。これもきちんと契約書があるのです。そうすると、企業が同意し ないと、これは登録の対象にならないという理解です。ですから、先生があえてこれを入 れた理由をご説明いただければありがたいと思いますが。 ○赤林特別ゲスト  ここは基本的に、2番目にありますリスクが高いものは登録してもいいだろうというこ とと、薬事法に基づく治験というのは、従来、日本で用いていますUMINであったりJAPIC であったり、そういうものでも登録をしている所が多いですよね。 ○谷内委員  そうですか。 ○赤林特別ゲスト  はい。そういう意味で、もし行政が指導するとすれば、この薬事法に基づく治験とリス クの高い介入研究ぐらいまでは登録としてもよろしいのではないか、そういう意味で付け 加えました。いま、薬事法に基づく治験をすべて登録を義務付けておられないとは思いま すが、実質的にかなりの部分が登録されていませんか、いると思いますが。UMINとかJAPIC、 その辺はどうですか。 ○金澤委員長  では、事務局からどうぞ。 ○事務局  製薬団体においても、国際製薬連盟の中の枠組の中でこの登録というものに協力しよう ということで、かなり自発的にこういった3つあるデータベースのうち、特に日本医薬情 報センターのデータベースに積極的に登録をいただいているところは、結構あるかと思い ます。  ただ、そこは薬事法のほうの仕切りになってきますので、そちらのほうで何かその義務 化をしているかということでは必ずしもありません。赤林先生のプレゼンテーションも、 リスクに基づいて見たときにはどういったものが対象になり得るかということでおそらく 書いておられるのだろうと事務局は解釈をしております。 ○赤林特別ゲスト  そうです、基本的にリスクの高いものを登録すべきなのではないか、そういう趣旨です。 「薬事法に基づく治験も、PhaseI以降特に」と書いてあるのはPhaseIもリスクを伴うか らということですが。 ○金澤委員長  明確ではないのですが、そう詳しくはないのですが、論文を受けるジャーナルのほうが この登録をかなり義務付けると言うと語弊があるかもしれませんが、そういう傾向がある のだとすると、これはかなり重要なことで、第III相の立派な結果もジャーナルに報告でき ないということになってしまう危険性がある。その辺について教えていただけませんか。 ○赤林特別ゲスト  既に事務局のほうに資料があるのかもしれませんが、ICMJEには医学系では非常にメジ ャーな雑誌の編集委員が入っている。 ○金澤委員長  何頁でしたか。 ○赤林特別ゲスト  これは28頁でしょうか。ICMJEの略が資料に入っていませんでしたか。 国際医学雑誌編集者会議というものだと思うのですが、そちらで臨床登録をしていないも のは、『Lancet』であったり、『New England Journal of Medicine』であったり、そのよう なメジャーな雑誌には採用しないと。要するに、あらかじめICMJEが認めた登録のデータ ベースに登録していないような臨床研究については、自分たちの雑誌には載せませんよ、 そういうポリシーを2000年の最初の辺りに出したという経緯があります。したがって、逆 の現象として、例えばUMINのサイトなどを見てみますと、臨床の治験よりはむしろ臨床研 究のほうが多く載っています。それはなぜかと言うと、UMINの担当者に聞いてみますと、 ICMJEというグループの中に入っているメジャー・ジャーナルに投稿したい、そういうい い研究であるので今登録している、そういう本来の趣旨から少しずれたような事態が起き ている、そういう現状ではないかと思います。 ○金澤委員長  ありがとうございました。 ○赤林特別ゲスト  ICMJEに含まれる雑誌の群は事務局が全部把握していらっしゃいますよね、20ぐらいあ ったかと思うのですが。 ○事務局  実はリストを事務局では提出しておりませんので、またの機会に出させていただきます。 ○赤林特別ゲスト  そうですか、はい。 ○金澤委員長  また配ってください。ほかにいかがでしょうか。 ○井部委員  31頁、看護ケア、リハビリテーション等については登録が必要であるかどうかについて は、議論を要するところだと思うのです。その前の29頁、登録を進める根拠で、透明性を 高める、あるいは情報へのアクセスを保証するとあります。こういう点からすると、すべ ての研究が登録されていると非常に好ましいかもしれません。例えば、1番の研究の進捗 状況を社会が把握できる、あるいは研究者が情報交換できるという点ではメリットが大き いのではないかと思いますが、一方で30頁にありますように、予想される混乱は確かにあ ると思いますが、登録を進める根拠が、身体的リスクが高い研究だけに範囲を絞るという ことについては、もう少し慎重に考えるべきではないかと思います。その点については、 赤林先生のご意見はいかがでしょうか。 ○赤林特別ゲスト  現場の倫理委員会ではもちろん、看護ケア、リハビリテーション等の介入研究等、すべ てを審査しております。現場の倫理委員会の審査が必要であるということとこの公的なサ イトへの登録が必要であるということとは、次元が少し違うのではないかと考えます。最 初に申し上げましたとおり、登録を進める根拠として、透明性を高めたり、情報へのアク セスを保証するということはありますが、逆に、身体的リスクもさほど高くないような研 究等について登録を全部するとしてしまいますと、現実的に業務の負担が非常に大きいと か、研究のプライオリティのネガティブ・インセンティブが働くとか、そういう懸念もあ るということですので、是非、この委員会では、登録される範囲についてはよくご議論を いただきたいと、そのときの議論の1つの目安になるのが身体的リスクというものである と整理をしたつもりです。よろしいでしょうか。 ○小林委員  いまの登録の問題です。先ほど先生は倫理委員会の話をされてからこの登録の話になっ たのですが、実際の物事の進み方からすると、倫理委員会で承認を受けて実施可能になる わけですから、それ以降に登録をするという形になるわけですか。そうすると倫理委員会 としては、研究者が登録をしたかしないかというのはどうチェックされているのでしょう か。 ○赤林特別ゲスト  倫理委員会は、登録をしたか、していないか、はチェックしておりません。 ○小林委員  そうすると、登録という問題は別次元で研究者が自発的にやっているかどうか、やって くださいという話であって、ということですね。 ○赤林特別ゲスト  登録に関しては、倫理委員会が登録をしなさいというような助言まではしておりません。 ○小林委員  そうですね。 ○赤林特別ゲスト  ええ。 ○小林委員  ですから、今日の流れで言うと、何か倫理委員会とつながってしまうようですが、それ は別の次元のお話だということでよろしいですか。 ○赤林特別ゲスト  はい、前半の話は研究倫理一般の話です。倫理委員会はあくまで研究のプロトコールの ところまでをまずは審査すると。当然のことながら、その中の一部は、倫理委員会がモニ ターをいたします。そうすると、そのモニターの最中に登録をされたといったことの報告 を受けることもあります。 ○小林委員  先生、もう1点よろしいですか。 ○赤林特別ゲスト  どうぞ。 ○小林委員  23頁の研究倫理セミナーをやられて、研究者の教育はものすごく大切なところだと思う ので、これは素晴らしいことだと思うのです。とはいえ、研究をされる医師はものすごく 忙しくて、こういうものになかなか出てこられないという現状もあるのだと思います。東 大の場合は、年3、4回やられているということですが、1回、どのくらいの時間のセミナ ーで、どういう内容をやられているのかを教えていただけますか。 ○赤林特別ゲスト  初回受講時と更新時は違います、自動車の免許の更新と同じなのですが。初回受講時は、 基調講演を30分ぐらい聞いていただいて、そのあと、東京大学の倫理委員会の制度や申請 の仕方、どのような注意点が必要かということに関して、倫理委員会とゲノム委員会と治 験審査委員会のそれぞれの先生方から15分以上ぐらいずつお話いただきますので、トータ ルで1時間半ぐらいの講習になります。  それを1回受けていただきますと、あとはそれが2年間有効になりますので、更新者用 の2年に1回のコースは30分で、その2年間の間にあった変化ですね、行政のガイドライ ン、あるいはトピックになった話題ですね、気をつけなければいけない、例えば最近です と、利益相反のことに気をつけなさいとか、そういう30分の更新者用の講義を行っており ます。  これは、研究者側にとっては非常に忙しいということではあるのですが、最初に申し上 げましたこの新聞の記事にもなりましたが、倫理委員会があるだけでは駄目で、どうして も周知徹底しないといけません。この平成15年の記事になったものが東大の研究倫理の原 点となっていて、再度繰返しになりますが、当時の病院長でいらっしゃいました永井良三 先生が中心となって研究倫理セミナーの受講の義務化と、臨床倫理指導員というアイディ アを出されて、現在に至っています。 ○金澤委員長  永井委員、どうぞ、何かそこでお名前が出ていますが。 ○永井委員  その件は意外と簡単なのです。研究者というのは、研究費を取れないと仕事になりませ んし、そのための努力は惜しみません。ですから、最優先でやっているわけです。受講し ないと申請できないわけですから、忙しいも何もないのです。そういう心理をうまく突い ていけば、結構協力が得られると思います。 ○金澤委員長  ありがとうございました。 ○藤原委員  赤林先生にお聞きしたいのです。30頁で登録に関わる業務負担の増大という記載がされ ています。登録のアイテムの中身を見てみると、通常はプロトコール、治験の実施計画書 のアイテムをそのまま転記するような内容で、プロトコールの科学的な妥当性を検証する には、別に、いつも、どの臨床研究者も考えているようなアイテムが羅列されているだけ です。それらを登録の所に転記することで作業が膨大になるとはとても思えないのです。 むしろ、アイテムを押さえていない臨床研究をやることのほうが非倫理的というか。例え ば、サンプルサイズがしっかり設定されていなくて、結果がベータエラーとかアルファエ ラーが出てきてしまって、白黒はっきりしない臨床研究の結果が出るほうがよほど非倫理 的な気がするのです。プロトコールのアイテムが存在していて、それを転記するだけの業 務が業務負担の増大と本当に考えられているのかな、というのをお聞きしたいのです。 ○赤林特別ゲスト  これは是非、臨床研究の現場にいらっしゃる方と登録の管理をされている方にご意見を 直接お聞きいただきたいのです。少なくとも倫理委員会にプロトコールを出していただく ということ自体は、研究者にとってものすごい負担です。倫理委員会で審議をして通して いただくということも、研究者にとってはかなり負担だそうです。さらにそれに拍車を掛 けて登録まで。要するに、登録ということになると公開度がかなり高くなりますので、内 容にも慎重になっていただかざるを得ないということと、あと、プライオリティの問題も ありますので、研究者側にはそれなりに負担になるという理解でおります。  また、登録管理者にとっても、財政的、政策的な基盤が必ずしも十分ではないという状 況で、半ばボランティア的に登録を維持、あるいはアップデートしていくということは、 それなりの業務の負担ではないかと思います。ですから、私が最後の結論で申し上げたこ とは、全体のインフラを底上げしないことには、倫理委員会あるいはその登録の管理者の 財政的、政策的な基盤を底上げしないことにはこの登録性が有効には働かないのではない か、ということを申し上げた次第です。 ○金澤委員長  ありがとうございました。ここは以前ちょっと議論がありました、mustにするのか recommendationにするのかという議論がありましたが、この辺は少し慎重にさせていただ けたらと思います。まだまだご議論があるかもしれませんが、次の議題に移りたいと思い ます。なお、赤林先生には、次の議論も関係がありますので、続いて少しご協力いただき たいと思います。臨床研究に関する倫理指針の改正案についてご議論いただきたいと思い ます。事務局からまず、今回提出する資料の説明をしてもらえませんか。 ○事務局  議題2の改正案です。本日は、資料5-(2)の臨床研究に関する倫理指針の改正案(新旧対 照表・案)を中心にご紹介させていただきます。  これまで、前回までのご議論ですと、資料5-(1)の概要を中心にお話してきております。 これまでの当委員会でのご議論においては、いまご議論がありました登録をいかにするか という1つの大きな論点、あとは、いろいろな補償とかそういった部分をどのようにして いくかと、その中でその介入研究と観察研究というような論点がありました。あとは、倫 理審査委員会として倫理審査委員会のそのチェック機能やパフォーマンスをどうやって上 げていくか、そういった部分でのご議論がありました。あとは、インフォームド・コンセ ントに関する部分ですが、保存試料の取扱い、観察研究におけるインフォームド・コンセ ントの取扱い、いろいろな代諾の問題、その他、この委員会でもご議論を重ねてきたとこ ろです。そういったところを踏まえまして本日は、5-(2)に改正案をお示しすることとして おります。この中身はまだ法令上の厳密なチェックを受けているものではありませんので、 中身的、内容的には文言等もまだ十分変わり得るものですし、本日のご意見をいただきな がらアップデートをしていきたいというものです。ということで、5-(2)からスタートさせ ていただきます。  1頁目です。前文の真ん中辺ですが、「被験者の個人の尊厳及び人権を守る」という記載 がありましたが、光石スペシャルゲストのご提案等もございまして、ここはこれまでの歴 史的な部分での経緯等も、スタディをしながら「人間の尊厳」という言葉にここは書換え をさせていただこうかという所が1つ1頁目の変更点です。  2頁目も同様です。ここも「個人の尊厳」という部分を「人間の尊厳」という形で言い 換えるとともに、それに伴い、「被験者の人権の尊重」という形での記載の変更を提案して おります。 ○金澤委員長  例えば2頁で空欄の所をどのように考えているか、言ってください。 ○事務局  申し訳ございません。左側が現行指針で、右側の改正案という部分が今回の改正部分で す。そのうち空欄の部分は、基本的に何も変更を及ぼしていないパラグラフです。何らか の変更があるパラグラフの部分が右側の欄に入っていまして、その中で変更箇所を赤字及 びアンダーバーで示させていただいている、というのがこの表の構成です。申し訳ござい ません。  引き続きまして3頁目以降です。用語の定義です。3頁目から4頁目にかけての部分で す。先般より議論になっていますように、この指針の対象の中身を介入的な研究という部 分と介入的でない観察研究という部分に分けるという趣旨の部分が4頁目の上にあります。 その中でも特に医薬品・医療機器による予防診断・治療に関するものを4頁の上のイ項と いう形で示しております。あとは、介入の定義ということで4頁の下に「予防、診断、治 療、看護ケア、リハビリテーション等について、以下の行為を行うものとする」というこ とで、通常の診療を超えたもの、またはグループ分けをする等の手法で研究を行うという ようなものを書かせていただいております。  5頁目です。既存試料の取扱いということで、疫学指針での改正点をこちらにも導入す るというところがありまして、これまで既存試料等の定義がありませんでしたので、5頁 目で既存試料の定義をさせていただいております。それと同時に、既存試料の取扱いにお いて組織の代表者等というものが出てまいりますので、その定義を5頁の下に入れており ます。  6頁にまいりますと、定義の追加ということで匿名化と連結可能匿名化、7頁においては 連結不可の匿名化という言葉が出てまいります。保存試料等の取扱いで出てくるものをこ こで疫学指針と整合した定義を置かせていただいておりますが、ここでの議論でもありま したように、一般的に無名化という言葉を使ったりコード化という言葉を使っております ので、そこをこの(12)の細則(13)の細則の部分で注釈と言いますか、解釈を出させて いただいているということです。  7頁目の(12)、倫理審査委員会の部分です。これまでは倫理審査委員会は医療機関の長 の諮問機関として、院内ですとか医療機関内部の倫理審査委員会ということをベースにし ていましたが、これまでの改正概要の議論の中でもそれ以外のいろいろな法人が設置する 倫理審査委員会の利用という議論がありまして、(12)のアから8頁のコにかけて、民法法 人だけでなく、私立学校法とか独立行政法人、国立大学法人、地方独立行政法人、NPO法 人等が設置するものに対象を広げるという形での記載の追加をさせていただいているとこ ろです。これが7頁目から8頁目までのところです。ここは、薬事法のGCPの改正に合わ せて同様の規定を置いているということです。薬事法のGCPの改正は、本日、資料7で資 料を出させていただいておりますが、時間の関係でそこの説明は割愛させていただきます。  9頁目、研究者の責務です。ここでまず1点ご紹介させていただくのは、臨床研究に伴 い被験者に生じた健康被害の補償という部分です。そこにつきましては、保険、その他必 要な措置を講ずるということで、従前の補償の有無についてインフォームド・コンセント の手続で行わなければならないというところから、一歩踏み込んだ形の記載にさせていた だいております。ただし、この被験者の補償のための措置について明記するという部分、 それをインフォームド・コンセントを行うという部分については、ただし書の中に「第1 の3(1)の(イ)に属さない研究及び体外診断を目的としたものを除く」と書いてありま す。要するに、医薬品や医療機器を使った介入研究については補償のための措置を講ずる ということを明記していただく、それ以外のものについては従前の補償の有無という形で 整理させていただいているというのが、文章的に少しわかりにくい部分がありますが、趣 旨としてはそのような形のものが(2)です。  10頁目です。同様に、臨床研究によって生じた被験者の補償、保険、その他必要な措置 という部分は、同じことをチ項の部分に書いております。また、保管試料の取扱いは、今 回、後ろのほうに明記されますので、試料の保存の期間等の取扱いなどの部分、あと、ま た後ほどご紹介しますが、代諾者の規定を多少変更させていただきますので、その代諾者 を選定する場合の考え方をヌに入れております。  10頁の(3)、インフォームド・コンセントの原則の部分です。観察研究部分においてイ ンフォームド・コンセントがとれないようなケースにおいて、インフォームド・コンセン トを必ずしも要しないようなケース、そういったものが今回出てきます。特に保管試料の 取扱いで過去に保管したものについてご利用いただくようなケースにおいては、必ずしも インフォームド・コンセントがとれないようなケースもありますので、ここは「原則とし て」という言葉を入れております。  10頁の下の部分です。また改めてここで健康被害の補償のために必要な措置を講じてお かなければならないということが入っていますが、これは先ほど説明した内容と同様です。  11頁の上のほうにこの補償という言葉の定義の補足があります。補償というのは、金銭 的な補償に必ずしも限らず、その有害事象に対する治療を提供するとか、そういった金銭 的以外の部分での、身体的なダメージに関する補償という部分についても含まれるという ことを、注釈で書かせていただいております。これは、薬事法のGCPにおいて書かれてい る補償に関する補足と同じ中身を記載しております。  12頁以降です。上のほうの独立行政法人云々という部分は、倫理審査委員会の設置をす る主体について、先ほどの定義に合わせて事務的に修正した部分です。12頁の真ん中の(8) です。研究責任者等が登録するデータベースという部分につきまして、今般、赤林先生に もご議論いただきましたが、研究計画を臨床研究の公表を目的とする登録データベース、 国立大学附属病院長会議(UMIN)、あと、財団法人医薬品情報センター(JAPIC)、日本医師 会が設置したものに登録しなければならないというのが原則ですが、この範囲については、 基本的に医薬品・医療機器を扱うものと、侵襲性を有する介入研究という部分に今回の案 では限定をさせていただいています。あと、ただし書の部分でアメリカの臨床研究の登録 の法制度を参考にしまして、探索的な研究については除くという規定も入れさせていただ きまして、今回は従前の改正案の概要からは少し絞った形でのご提案としているところで す。  あと、この登録につきましては、これまでのご議論の中で、医薬品とか医療機器につい て臨床研究を行う場合には、この登録と合わせて国にいわゆる治験届のような届出を行う べきではないかという記載を、この(8)に相当する部分に書いてありましたが、(8)の右 側の注釈の部分、資料9にあるように、高度医療評価制度というものが平成20年4月1 日から施行されています。これは、薬事法上の適用外とか、未承認の医薬品・医療機器を 使用する場合に、この高度医療評価制度における申請をいただきまして、専門家会議での 評価をいただいたものについては医療保険との併用を認めるという制度です。そういう形 で、医薬品・医療機器をご使用になられる方が、国に対する保険上の取扱いということで はありますが、申請手続をされるような制度が出来上がったということですので、この指 針の中で改めて医薬品・医療機器に関する個別の治験届のような申請を出すという規定に ついては、今回の案の中では記載していないという格好にしています。  12頁の下は事務的な修正です。13頁では有害事象の取扱いについて、研究者の方が知っ た場合の取扱いを明記します。(14)ですが、この臨床研究をスタートしたあとのフォロー アップについて、進捗状況の確認等がなかなか難しいところがありまして、今回そういっ たフォローアップを行わなければならないということを明記させていただいています。14 頁、15頁以降は個人情報に関する規定で、特段変更はありません。  21頁から22頁以降に渡って、臨床研究機関の長の責務に関する部分が記載されていま す。適切にその臨床研究が実施されるということ、また、補償等を行えることを確保して いただくということを改めて明記をさせていただいています。(3)は、こういった臨床研 究に係る業務に関する簡潔な手順書というものを作成して、それに沿って円滑に必要な措 置を講じていただくという部分が追加で記載されています。  この手順書を入れるとか、先ほどの有害事象についての明記ですとか、フォローアップ を明記するという部分は、前々回増田スペシャルゲストに来ていただいたときに、フォロ ーアップの部分がきちんと実施されているかということが、医療機関においてなかなかわ かりにくいという読売新聞で実施された調査結果をいただいた部分、あと、事務局提出資 料8で、臨床研究倫理指針の運用状況に関する調査ということで、私どものほうでも3カ 所予備調査に追加して倫理審査委員会の調査をやってきまして、やはり読売新聞の調査と 同様の問題点が出てきまして、フォローアップというものを適切にやっていただくという 部分等を見ていきますと、やはり手順書等を作って、臨床研究の手続等に関する進行状況 等がチェックできるようなシステムにしたほうがいいだろうということで、22頁の(3) の「簡潔な手順書」というものを追加しています。  (4)の倫理審査委員会の審査ですが、これまで倫理審査委員会は自施設の中での倫理審 査委員会というものを基本にしてきましたが、その他の施設におけるような倫理審査委員 会も活用できるようにということで、原則自施設でなければならないという規定を変更し まして、他の倫理審査委員会も利用できるという規定に変更させていただいています。そ の場合、あらかじめどこに行わせるかという部分について、文書で相手方の倫理審査委員 会の設置者に依頼をするなどということは守ってくださいということが、内容として追加 されています。  その続きが23頁です。フォローアップをする倫理審査委員会はあらかじめ依頼をしたと ころだということが、23頁の上の部分に書いてあります。23頁の下の部分は、有害事象の 対処ということです。これまで有害事象の対処等については独立した規定がなかったわけ ですが、重篤な有害事象、不具合があった場合には速やかに院内での対応をしていただく、 また、24頁になりますが、協力研究機関等他の研究機関にも周知を行っていただくと。ま た、(8)の部分ですが、その中でも予期しないような有害事象、不具合等があった場合に は、これは侵襲性を有する介入研究に限る話ですが、厚生労働大臣等にご報告をいただく、 そして、その状況を公表していただくという規定を追加しています。あと、この報告のイ の部分ですが、何か重大な指針の不適合を知った場合も同様の手続をしていただくという ことです。  (9)は、先ほどの手順書とも関係しますが、院内で自ら指針の適合性についての自己点 検も行っていただこうということです。25頁は、そういう指針の適合性に関する当局の調 査に対して協力することとするということを記載しています。25頁の下のほうからは個人 情報保護に関する責務ということで、ここは特段変更はありません。  26頁は、第3の倫理審査委員会です。ここは、先ほど言いましたように、倫理審査委員 会は今度、外出しのものでも活用できる余地を広げていきますので、それに合わせて規定 の改正をさせていただこうという部分です。26頁の(2)は、倫理審査委員会の設置者に ついては、今度は外出しのケースにおいても手順等を作成してやってほしいという規定で す。27頁は、倫理審査委員会の活動報告を年1回厚生労働大臣に出していただく、また、 倫理審査委員会に対する適合性の調査の受け入れに協力していただく、活動状況を公表し ていただくということです。28頁は、倫理審査委員会の協力、教育、研修等に努めるとい うことです。28頁の(9)においては、これは疫学指針にもありますが、軽微な事項に関 する迅速審査の規定というものを今回ここで入れています。  28頁の下の第4、インフォームド・コンセントから下の部分は、29頁ですが、先ほどの 被験者に対する補償ということで、医薬品・医療機器に関する研究については保険その他 の必要な措置、その他については補償の有無を説明いただくということで、その中身をこ のような形で変更させていただいているということです。  30頁のインフォームド・コンセントの手続ですが、インフォームド・コンセント取得と いうことについては、介入研究は基本的に文書によるインフォームド・コンセントを受け ていただくという既存の規定どおりですが、30頁の(2)の観察研究、人体から採取された試 料の部分と、人体から採取された試料を含まない場合ということで、人体から採取された 試料を含まない場合については、必ずしもインフォームド・コンセントを必要としないけ れども、情報の公開に努める等々、疫学指針と整合した規定を入れさせていただいている ところです。  31頁以降は代諾に関する部分です。この辺りは、光石先生をはじめ当委員会の委員の先 生からもいろいろなご指摘をいただいている部分ではありますが、2の代諾者等からのイ ンフォームド・コンセントを受ける手続ということで、具体的には32頁になりますが、1 つ目に、原則として16歳以上の未成年の方が被験者になるケースがあります。これまで未 成年の場合は親権者等の方の代諾を必ず要すると、そして、16歳以上の場合には代諾者と ともに被験者自身からのインフォームド・コンセントも受けなければならないというのが 左側の現行の指針ですが、これは疫学指針でも同様の改正を行っているところではあるの ですが、被験者が16歳以上の場合については有効なインフォームド・コンセントを与える ことができることについて、倫理審査委員会、医療機関の長の許可を得た場合については、 16歳以上の方のインフォームド・コンセントのみを受けると、逆に代諾の方の必要はない というような規定に書き替えてはどうかというところです。ここは疫学指針との整合とい うことで書いてありますが、また改めてご議論いただければと思っています。  あと、代諾者の関係で、これまでの指針の中で成年後見人という部分があったところに ついて、スペシャルゲストからもご指摘をいただいた部分ではありますが、そこについて は今回、成年後見人というような記載は削除させていただきまして、そのかわり、32頁に ありますような、代諾者となる要件についての状況とか、当該被験者の法定代理人の被験 者の意思、利益を代弁できると考えられる者というような形での記載に改めさせていただ いているところです。  33頁以降については、試料の保存、他機関での利用ということで、疫学指針に沿いまし て、前回の概要でもご議論いただきましたが、今回新たに記載を追加させていただいてい るところです。33頁の第5以降の部分ですが、試料の保存に関するいろいろな手順という ことが34頁にかけて書いてあります。試料の保存において漏洩や紛失が起こらないように とか、保存について、廃棄する場合には匿名化をしてほしいとか、保存期間が定められて いない試料を保存する場合には情報について機関の長に報告するとか、(2)人体から採取 された試料の利用、ここも前回ポンチ絵のほうでご議論いただいた部分ですが、匿名化が されている試料で、基本的には同意を受けることができない場合については、倫理審査委 員会、医療機関の長の許可を受けたときに限り使用できると。(2)の部分で、包括同意が得 られた部分については、利用目的を含む公開と臨床研究の目的との関連性について、倫理 審査委員会と医療機関の長の許可に加えて、要件を満たすという部分が付いてくると。こ れは35頁にかけてのところです。あと、(3)の匿名化も包括同意も得られていないようなケ ースについては、ここに書いてあるような要件を満たすという記載が追加されています。  35頁下の2の他の機関の試料等の利用という部分ですが、他機関でも基本的には倫理審 査委員会等の手続をとっていただくということ、保存試料を扱う場合について、特にそれ が匿名化されている場合、されていない場合等々については、ここに書いてありますよう な所属機関内での手続を経て、お使いいただくというようなことを記載しています。この 辺りも疫学指針との整合性ということで、35頁から36頁にかけて記載させていただいて いる内容です。そういうことで、非常に駆け足になりましたが、新旧対照表について説明 させていただきました。  それと合わせまして、資料5-(1)に戻らせていただきますが、この改正の概要については、 いま説明した内容をここに反映させていますが、資料5-(1)の5頁のいちばん下に、「倫理 指針の運用に関する論点等」という部分があります。改めて今日もご指摘がありましたよ うに、6頁(4)の部分ですが、倫理審査委員会の事務費用・スタッフ等に関する負担を研究 費の間接経費こと、(5)研究費からの手数料、委託費のような形になるかと思いますが、そ ういうものでまかなえる体制をつくるとか、委員に対する教育・研修の場をつくっていく こと。  補償に関しては、前回も損害保険会社の方にいろいろとプレゼンをいただきましたが、 特に薬事法の下での治験、医師主導治験等と差異がないような形の被験者に対する保険と いうものが求められているわけでして、そういう部分をつくっていくべきだろうと。その 場合には、副作用被害救済基金ですとか、医法研のガイドラインに準拠した設計等を考慮 するべきこと。また、第三者での計画の審査とか、健康被害の救済に関する審議という部 分が行われるべきということで、倫理審査委員会がそのような役割を負って、情報提供等 に協力をするというようなことを(3)の「保険等について」のところで記載させていただ いています。  (4)では、先ほどご紹介しましたが、この制度との関連ということで、高度医療評価制 度がスタートしたということをご紹介させていただいています。事務局からの説明は以上 です。 ○金澤委員長  ありがとうございました。概要のほうは非常にわかりやすいのですが、本物のほうは非 常にわかりにくいですね。これから少しご意見をいただきますが、その皮切りに、資料4 について前原委員からご意見をいただいています。 ○前原委員  資料の4に、臨床研究の補償責任に関する意見ということで提出させていただきました。 前回は私は欠席しましたが、損保ジャパンの方から、臨床研究に関する保険制度設計に関 する検討課題という中で、医薬品や機器以外の医療行為に関する無過失の補償制度という もののお話が出たと伺っております。外科の領域は、技術ということをもって医療にかか わっているわけですが、その手技に伴う有害事象の補償責任ということは非常に重要では ないかと思います。特に被験者の保護という観点から、今後の取組として私の意見を述べ ますと、将来的には、被験者の健康被害が発生した場合に、その補償をできる仕組みとい うものは是非とも必要だろうと思います。  しかし、手技に関しまして、リスクの算定が非常に困難であるかと思います。具体的に 考えましても、例えば医師の技量ですとか、その医療にかかわるチームの技量、施設の充 実度、3番目には、患者さんの要因として、疾病の状況として、疾病の進行度、あるいは、 がんであればその転移の状況など、また、宿主の状態として、その患者さんの年齢、肥満 度、それから、併発症としての高血圧、糖尿病、心臓病などによって手技による有害事象 が大きく異なってきますし、その種類や頻度を予測するのは非常に難しいということが考 えられます。  具体的に臨床試験で言いますと、国立がんセンターを中心とした全国のグループで、胃 がんの手術のときのリンパ節郭清を通常の標準的なものにするか、幅広く取って郭清をし て、がんの転移を根こそぎ取るかというようなスタディがなされました。実は、どちらも 保険診療内でできる診療なわけですが、スタディがなされまして、結果的に予後には差が なく、さらに、広く郭清したほうで合併症が多いというような結果が出ました。すなわち、 いままでがんを広い範囲に取ったほうがいいと言われていることは正しいことではなく、 患者さんのためには、ある程度の範囲で合併症を少なくする方が良いということが明らか となりました。  その中で、実際いろいろな有害事象が起これば、その補償という観点からは、現時点で は、誠意を持って通常の保険内で行うということが記載されています。その中で、リスク の算定は、医薬品などと比べ、実際、非常に困難であると思います。そして、研究費から 支出をするということになれば膨大なものになるということで、実際には、臨床研究の萎 縮、あるいはエビデンスに基づいた医療から、経験に基づいた医療に逆行してしまうよう な事態となる可能性が考えられます。今回のガイドラインの改正の中で、手技に関しまし ては、その補償措置を講ずることは求めないという文章になっていますが、実際、補償の 有無の同意ということが現実的だろうと思います。ただ、今後の方向性としては、被険者 保護という観点から、そのリスクの算定、あるいはその補償をどうするかということは、 是非とも取り組んでいくことが重要ではないかと考えております。 ○金澤委員長  ありがとうございました。非常に重いお話をいただきましたが、ただいまのご意見に対 して、できれば皆さん方のご意見も伺いたいと思います。 ○橋本委員  私も外科医の立場です。リンパ節郭清はむしろネガティブ・データであったということ ですが、外科手術、あるいは新しいイノヴェイティブな治療法に関しては、臨床試験が始 まる時点ではむしろまだ初期段階であって、いろいろなスタディがむしろネガティブ・デ ータに出る場合が多いのです。例えば血管内治療がそうです。ところが、そのデータが出 たころには、同じ手技といっても、治療法が非常に進歩していますので、あるいは個人や 全体でのラーニングカーブというものが必ず上がってきますので、ネガティブ・データが 出たときには、実は治療法としてはスタートしたときに比べて進歩しているということが あります。  そういうことを考えると、確かに患者さんに対してリスクがある治療を行うときに、将 来的には補償ということを考えなければいけないだろうと思いますが、それを義務化して やるということになりますと、そういういろいろな、特に外科的治療、あるいは侵襲性を 伴う治療は、スタートの時点から必ずいろいろな細かい手技上のこと、あるいは機械、あ るいはいろいろな方法論でどんどん進歩していくわけですので、そこで、これはインフォ ームド・コンセントということが十分関わってくると思いますが、そういうスタディを萎 縮させるような方向性というのは、特に外科的治療に対しては大変憂慮すべきことだと考 えています。 ○金澤委員長  ありがとうございました。ほかにご意見はありませんか。 ○藤原委員  私も皆様と同じ意見で、補償を闇雲に臨床研究倫理指針に入れられてしまうと、この前 も企業の方をお呼びして意見を聞いたときも、補償の保険を臨床研究者に対して設けるの は大変かなということをおっしゃっていましたし、最初に補償ありきで進んでしまうと、 社会の制度設計ができない状況でこういうシステムが入ってしまうと、研究自体がすくん でしまってできないような気がします。  昨年、厚生労働省から研究費をいただいて欧州調査をしてきた機会に、分担研究者の方 が見てこられたときも、例えばフランスでは、国立医療事故補償公社といって、国の機関 で補償するようなところを設けていたり、イギリスだと、損害保険会社に臨床研究の無過 失なものを補償するような保険が用意されていたりとか、社会の仕組みとして補償ができ ているところに補償という概念を導入してくることはあったのですが、いま日本では、補 償保険もなければ、国のほうで臨床研究の中で発生する無過失責任をフォローしてくれる 仕組みもない中で、補償だけが一人歩きしてしまうと、みんなが辛い思いをするだけでは ないかと思います。ですから、制度設計として国がそういう補償を見るような組織をつく るなり、損保会社が補償保険をきちんと設けて、それもリーズナブルな保険費用で運用で きるということがわからない限り、臨床研究倫理指針の中にこういう文言を入れるのは、 私は適切ではないと思います。 ○本田委員  専門家ではないのですが、1つ質問があります。合併症とか有害事象のレベルにもよる とは思うのですが、そういうものが起きたときに、倫理審査委員会などに戻して、なぜそ ういうことになったのかが検証されて報告されるとか、そういうことはされているのです か。それとも、全く現場の裁量で、被験者である患者さんとの話合いが行われているので すか。現状はどういうことになっているのですか。 ○川上委員  私は京都大学附属病院の治験の倫理審査の委員長をやっているのですが、そういう場合 には、安全性に問題があれば必ずフィードバックがありまして、報告が定期的にきちんと 行われます。さらに、因果関係といって、実際に副作用と介入項目が関係があるのかどう かということを精密に委員で議論することにはなっています。 ○本田委員  報告もされるのですか。 ○川上委員  報告もされます。 ○金澤委員長  そういう例がありましたか。 ○川上委員  臨床研究の場合には各医療機関で例数が違うと思いますので何とも言えませんが、治験 では、京都大学でも例はあります。 ○金澤委員長  わかりました。 ○前原委員  実際は、その有害事象をいかに前もって説明するかということは非常に難しいわけです が、世の中で言われている頻度として1%以上のものを前もって説明するということが我 が国では通常になっています。でも、実際に1%以下のいろいろな合併症が起こり得る可 能性もあるわけでして、そういう場合が実際に起こった場合が非常に問題になってきます。 その場合には、いまのような形で倫理委員会に上げて、こういう合併症が起こったという ことをしっかり報告するわけですが、医療側を守るという立場から、リスクを1%ではな くて0.1%、1万分の1でも患者さんに説明をしないといけないとなりますと、電話帳のよ うなインフォームド・コンセントの書類になる。それは現実的ではありませんし、医療と いうのは特に手技に関しては非常に不確実な要素がありますので、その都度の対応といい ますか、実際は少ない頻度であっても、それが起こり得たものなのかどうなのかというこ とを第三者の目できちんと評価してというステップは、臨床試験で普通やりますし、そう いう形で報告には上がっていると思います。 ○本田委員  もちろん、こういう補償制度は、藤原委員がおっしゃったような補償制度のようなもの を、国できちんとつくっていっていただきたいということは第1なのですが、その段階と して、まずはそういう報告がきちんと公表されて、何が起こったのかがわからないままに されない、それから、倫理審査委員会の中だけでの報告ではなくて、もちろん重大な有害 事象を受けたご本人やご家族、社会に対して公表されるとか、もしくは第三者の方が何ら かの程度とか、私は何とも言えませんが、そういう何かしら担保するものが必要だという ようなことは、書いていただけないのでしょうか。 ○事務局  いまの本田委員のご指摘ですが、先ほどの新旧対照表ではなかなか説明が難しかった部 分があるかと思います。資料5-(3)の3頁が、今回変わった部分でどことどこがカバーされ ているかというのがわかりやすく書かれている表になっています。いま本田委員がご指摘 になった部分で、例えば予期しない重篤な有害事象が発生した場合の対応ですが、今回の 指針においては、介入研究においては(1)(2)の部分、侵襲性がある研究については、基本的 にその情報の公開、その処理結果等の厚労省への報告というものを今回新たに付け加えて います。そういう形で指針の中で対応させていただいていますので、本田委員のご指摘も 踏まえた形になるのではないかと思っています。 ○金澤委員長  おわかりでしょうか。 ○本田委員  これはわかるのですが、具体的な文章を。 ○事務局  文章は、資料5-(2)23頁から24頁です。23頁のいちばん下の部分で、有害事象 への対処等ということで、速やかに倫理審査委員会に出すという部分、24頁で、いわゆる 侵襲性を伴う介入研究については、予期しない重篤な有害事象、不具合について、厚生労 働省またはその委託を受けた者に逐次報告、公表ということが書いてあります。 ○金澤委員長  よろしいでしょうか。 ○寺野委員  全部の話を聞いていないので、わからない面もあるのですが、先ほど赤林先生から登録 制という素晴らしいお話をお聞きしました。それとの関連もあるのですが、結局、先生の お話の結論は、全体のインフラの底上げをしないと有効に機能しないということですが、 実際こういう指針という形で表すのかどうかは別として、こういうものの財政的な裏付け などをどのように考えるか。資料5-(1)の6頁に、実効性の担保として公的研究費云々とい うのがあるのですが、こういう費用がどういう形で保障されるのかということが、どこに 書いてあるのでしょうか。  それから、それに関して言われていることは、倫理指針への適合性を交付の要件とする とか、資料5-(3)25頁に、適合性に関する調査への協力をせよという記載があるのですが、 何となく官庁からの監督という面が非常に強い。そのインフラの整備をどういうふうにす るのかということが具体的に出ていないということと、調査への協力ということになって きて、何となく研究者への指示というものが強力になってくるのかなと。それが条件とし て先ほどの実効性の担保があるという言い方なので、私は施設長として表現に抵抗を感じ ます。インフラの保障も考えましょうということを具体的に出していただかないと、実効 性が危ういのではないかと思います。 ○事務局  おっしゃる点は非常にごもっともだと思います。臨床研究倫理指針というのは基本的に ある種規制をする指針でして、こういう体制整備の話などは書きにくい部分なのです。例 えばこの指針を実際に施行する際に、いろいろな施行通知を出させていただいたり、補助 金に関するいろいろな細則を変更したりします。そういう中で、いまここに書いてあるよ うな趣旨の体制に関する部分が反映させられるように、そういうところをリンクして我々 も取り組んでいきたいとは思っています。 ○本田委員  倫理指針ということなので、先ほどの無過失の補償制度などを今後作っていくなどとい うことが指針には書けないのだとは思うのですが、書いてあるのです。作っていくという ことを指針に明記している。何の形で、そういうことを棚上げにしないで、これは過渡的 なもので、将来そういうことに向かっていくということをどこで担保しているのか。して いるのか、しないのかということだけ教えてください。 ○事務局  先ほど寺野委員にご指摘いただいた資料5-(1)の最後の頁ですが、まず医薬品と医療機器 に関する部分については、治験との関係もありまして、こういう補償の保険のようなもの を導入してほしいというようなことを、この指針の改正に合わせて、おそらく、いま概要 になっている部分が最終的には本調査会のレポートの下敷きのような形になるのだろうと 思いますが、そこからレコメンデーションを出していくような形なのだろうと思っていま す。したがいまして、先ほど前原委員や橋本委員からご指摘いただいたような部分も、い まの6頁にさらに追加するような形で、今日のご議論を踏まえて書かせていただくような 対応で、これを本委員会のレポートとして出させていただいて、働きかけていくというよ うな対応はいかがかと、事務局的には思っています。 ○金澤委員長  それは、各研究施設、あるいは大学というところにもいくということですね。 ○事務局  はい。 ○金澤委員長  要するに、鑑のようなものとしていくわけですね。それは非常にいいと思いますね。先 ほど藤原委員が言われたように、文章の中に補償の話が出てくるのはちょっと問題ではな いか。特に、資料5-(3)の3頁目のいちばん下の「補償対応及びその事前説明」の「介入研 究」の1番に「補償を実施」ということを明言することになっているわけです。これにつ いて藤原委員から異議が提出されているのですが、これについて、特に前原委員のように メスを握る方々からはいかがでしょうか。 ○前原委員  資料4に示しましたが、将来的にはそういう方向性は望ましいと思うのですが、我が国 では、議論もないままにいろいろな臨床試験が行われてきている。突然ガイドラインの中 にこういう文言が登場するということは、非常に現場に混乱を招くような気がします。こ のガイドラインの改正というのは必ず5年置きでなければいけないのですか。頻回に、い ろいろな場面に応じて変わり得るということもあり得るのでしょうか。私は、補償という 言葉の取扱いを慎重にしていただきたいと思います。 ○丸山委員  補償についてなのですが、私はどうも条文を見るのが習性になっていて、資料5-(2)の新 旧対照表の10頁を見ると、10頁の上のほうから9行目以下の赤いところは、インフォー ムド・コンセントの際に説明すべき事項として、医薬品等が関係する場合について、保険 その他の必要な措置を説明するようにと。下のほうの(4)の新たに設けたところで、その 措置を講ずることを研究者等に義務づけると書かれているのですが、現在の状況を踏まえ ると、この臨床研究倫理指針の改定時、おそらく施行が秋になると思うのですが。 ○事務局  いまの予定では、1年後の平成21年7月という予定でこれは書いています。 ○丸山委員  それで間に合うのかなと心配で、しばらくは努力目標の「努めるものとする」ぐらいの 書き方で入れておくのが1つのやり方かなと、特に医学、科学の専門の先生方のお話を伺 っていて思いました。これまでは補償の有無、内容を説明することということで、それに 追加するものとして必要な措置を講じ、その上で、講じられている場合については説明を しなさいというような規定にするのが、1年経てば補償制度が保険などで整備されている ならいるで、その努力目標が達成されたということで対応できますし、まだちょっと難し いということであれば、基本的に指針は法定拘束力はないのですが、ないものの中でもち ょっと要求度が低いといいますか、努力しましょうというような趣旨にするのがいいので はないでしょうか。  先ほどの委員の方の発言にありましたが、補償問題がこれまで議論されていなかったと いうのは、そうでないと思うのです。光石先生などが検討されている臨床研究の在り方の 点でも、あるいは今日赤林先生のおっしゃった倫理原則の整備の内容としても、補償とい うのはかなり早い段階から問題とされてきた。けれども、なかなか現実に実現することが 難しいというようなところを踏まえると、1年でできるかなというのがあります。でも、 落としてしまうのは惜しいので、努力目標というような、「努めるものとする」という書き 方がとれないのかなというのが、1つの発言です。  もう1つは、先ほどの赤林先生のお話、永井先生のお話を伺いますと、倫理セミナーを 行うのはそんなにコストがかからないと永井先生は説明されたかと思います。それであれ ば、「努力目標として研修、教育の機会が確保されるように努めるべきである」という5- (1)の6頁の記載より一歩踏み出して、動物実験のように指針の中に講習の要件を条文化し てもいいのではないかと思うのです。先ほど説明を伺っていて、講習の要件は条文化はま だされていないのではないかという印象を受けたのですが、その辺りの確認とお願いとい いますか、その点をちょっとお尋ねしたいと思います。 ○金澤委員長  ありがとうございました。永井委員がちょっと前にお出にならなければいけないという ことで。 ○永井委員  出る前に一言だけ、いま丸山先生がご指摘の医療倫理セミナーは、驚くほど抵抗がない のです。皆さん、素直に従っていますし、相当浸透しているように思いますので、是非、 積極的に取り入れられたらよろしいかと思います。  それと無過失補償の問題は、あまり今まで議論されていなかったということと、日本に それだけの基盤が残念ながら育っていない。特に保険会社等が極めて躊躇してしまうとい う現状がありますので、方向としては正しいのだろうと思いますけれども、性急に条文の 中に入れるかどうかは、慎重にご検討いただきたいと思います。その2点です。 ○金澤委員長  ありがとうございました。倉田さん、どうぞ。 ○倉田委員  資料5-(3)10頁の(3)のところに戻ってしまうのですが、「原則として文書でインフォー ムド・コンセントを受けなければならない」というのがあります。こういう介入のあるよ うな研究の場合、患者さんのサイドに立つような、例えば治験で言うと治験コーディネー ターのような方を1人必ず付けていただいて、説明を受けたときに理解しにくかったり、 十分理解できないがために文書でサインができないことも十分考えられるので、そういう ような方を置いていただくというのも、1つの方法ではないかと思いますが、いかがでし ょうか。 ○金澤委員長  なるほど。谷内さん、どうぞ。 ○谷内委員  指針の記述でそれが望ましいあるいは義務とするかどうかの点に関して、やはり補償の ところに関しては、「補償していくことは望ましい」ぐらいにしていただかないと、現実的 にたぶん対応できていないのではないかと私は危惧しております。ただ、非常に細かく金 銭的な補償のみでないと書かれているので、致し方ないのかもしれません。それともう1 件よろしいですか。 ○金澤委員長  どうぞ。 ○谷内委員  もう1つ、赤林先生の指摘された臨床研究の登録制の問題ですが、これも「登録しなけ ればならない」という文言になっているのです。片一方で、治験というものは依頼者が登 録する場合もあるし、登録しない場合もあります。よって臨床研究のほうが非常に厳しく なっている。だからこれは倫理委員会等の要請に基づいた場合に関しては、登録しなけれ ばならないとできませんでしょうか?「倫理委員会等の意見に従って」とか、そこら辺の文 言を入れていただかないと、全部登録というのはたぶん不可能なのではないかと思います。 研究者の教育の問題に関しては、これは義務化しても大丈夫だと私は思っています。いわ ゆる倫理委員会委員とか東大がやっているような研究者セミナーのことです。 ○金澤委員長  セミナーのこと。 ○谷内委員  セミナーです。教育に関しては義務化もできると思います。 ○金澤委員長  わかりました。事務局から何か。 ○事務局  事務局から3つあります。まず簡単なところからですが、倫理審査委員の教育研修等に ついては28頁のところで、これは条文のほうです。「教育研修に務めることとする」と入 れていますが、ここはもう少し強く「研修を行うこととする」ぐらいにしてもいいという ご意見と理解しました。 ○丸山委員  研究者はどうなのですか。 ○事務局  研究者に対する教育。 ○丸山委員  ええ。両方必要なのです。何も知らない倫理委員もいますので。 ○事務局  そこは追加するような形で、どこかにはめ込みますので、またご確認をいただければと 思います。2点目ですが、補償の保険等の話については、実は総合科学技術会議といった 場所でも、少なくとも医薬品とか医療機器の治験と同じようなことをやっている部分につ いて、被験者の方が同じような補償を受けられないというのは、おかしいのではないかと いうご指摘をいただいてきている部分です。今回の条文についても、医薬品医療機器のそ ういった治験ライクなものについてのところのみ、この補償についての措置を実施すべき ということが書いています。そういうふうな限定された部分でも抵抗があるのかどうかを、 いま一度先生方にご確認させていただきたいというのが2つ目です。以上です。 ○金澤委員長  3つと言われましたが、あまり時間がないので2つで結構です。最初のことに関しては、 本当によろしいのですか。研究者にそういう義務化を、今、ここでしていいのですか。 ○丸山委員  以前も申しましたけれども、動物実験でできていることですから、人間で作る必要性は 高いと思いますし、可能性も十分あるのではないか。いまも永井先生、谷内先生もできる とおっしゃるので、私は是非入れていただきたいと思います。 ○金澤委員長  川上さん、どうぞ。 ○川上委員  これは話が2つあると思います。IRBのほうの研修と研究者の研修ですが、実際の研究 するほうが理解していないと、IRBの質が上がっていかないと思うので、私も個人的には 研究者に対して教育をする、あるいは何らかの仕組みをエンカレッジしていくという方向 については賛成です。 ○金澤委員長  先生、どうですか。 ○廣橋委員長代理  研究者に向けてそういう教育というのは、是非入れていくべきだと思います。倫理審査 委員会の委員についても、もちろんそういう方向でレベルを上げていきたいわけですが、 いまの現状のままの表現でも、まず1歩としてはいいかなというふうには思いますけど。 ○橋本委員  私も京大にいるときに、いろいろなそういう研修に出ないと研究ができない、しかもそ の研修の最後までいないと判子をもらえないということで行われていましたが、非常に忙 しい教授たちも若い研究者に交じってちゃんと研修を受けていましたので、十分できると 思います。 ○金澤委員長  ありがとうございます。放射線のことと遺伝子のことと、それとこれと、いいかもしれ ませんね。よろしいですか。それではそういう方向で考えましょう。井部さん、何かあり ますか。 ○井部委員  さっき倉田委員がおっしゃったことに関連して。 ○金澤委員長  ちょっと待ってください。2番目には補償のことがあります。これについてはどうでし ょうか。中で言うべきか鑑で言うべきかという問題もないわけではない。 ○事務局  保険会社のほうも、指針の中で補償を実施すべきと書いてあるか書いてないかという部 分で、根拠となる部分が違ってきます。我々が保険会社のほうから内々に話を聞いている 限りでは、もし作るのであれば、そこはきっちりと書いてほしいということは聞いていま す。 ○金澤委員長  「努めることと」いうのでも大丈夫ですか。 ○事務局  そこの書きぶりについては、もう一度会社のほうの皆さんとも相談をさせていただこう と思います。 ○金澤委員長  デューティーにしてしまうと大変ですけどね、いまの時点でね。 ○事務局  それは医療行為全体に対して補償をしろということではないので、そこを先生方はどの ようにお考えになるかだと思います。 ○金澤委員長  少なくとも、さっき事務局が言ったような形で読めるような文章にしないといけない。 何となく全体に読めてしまうから。わかりました。そこは検討事項にさせてください。井 部さん、どうぞ。 ○井部委員  さっき倉田委員がおっしゃった、臨床研究をわかりやすく説明してくれる人がいたらい いのではないかということで、いま治験コーディネーターの中ではCRC(Clinical Research Coordinator)と言ってきているわけですので、法律的にはGCPの中の治験協力者という位 置づけだと思います。CRCという名称からすると、臨床研究全般についてコーディネート するという役割を拡大してもいいのではないかと思いました。 ○金澤委員長  なるほどね、そういう考え方も確かにできるかもしれません。 ○前原委員  登録のことについて、資料の5-(2)の12頁で右側の赤の(8)に登録データベースのこと が書かれています。実は私が知り得た情報では、先ほど赤林先生からお話があったICMJE (International Committee of Medical Journal Editor)という、世界の有力雑誌が加入 しているプロジェクトに承認されているのはUMINだけですので、もし他の医薬情報センタ ーや日本医師会のものに登録されたからといって、それは世界的に認めてくれないのでは ないかと思いますが、そこはいかがでしょうか。 ○事務局  UMINはICMJEに認められているのは事実ですが、ICMJEはWHOのほうで認められたレジ スターに対しては、同等に扱うという方針になっています。現在、医薬情報センターと日 本医師会も、WHOのほうの登録をUMINと一体的な形で登録する手続を進めているところで すので、これは本当に近い将来、同等の立場になると理解していただいてよろしいかと思 います。 ○金澤委員長  まだまだご議論があるのではないかと思いますが、だいぶ時間が迫ってまいりました。 今後の予定について事務局から説明してください。 ○事務局  今回、ご議論いただいた部分については、また必要な修正をいろいろとさせていただき たいと思っています。またこれは7月30日までに改正をするということで、この後、また いろいろなパブリックコメント等の手続をして、一般の方からのご意見をいただく手続も 入ってきますけれども、その前に科学技術部会に報告をさせていただく部分があります。 科学技術部会に報告させていただく前に、もう一度審議ができるかどうか、まだ日程を調 整してみないとわからない部分がありますが、もしできない場合については、修正につき まして関係する委員の先生にご確認いただき、委員長の先生に確認していただいた上で科 学技術部会に報告し、パブリックコメントという流れになることもあるところです。いず れにしても、本日のご意見を踏まえた改正案について、先生方にご意見を伺う形をとらせ ていただきたいとは思っていますので、よろしくお願いしたいと思います。 ○金澤委員長  そうですね。これは必ずパブリックコメントよりも前に、皆さんのコメントをいただか なければいけない。こういう会が開けるか、あるいはネットの中でやらせていただかざる を得ないかは、ちょっと分かりませんけれども、わかりやすい文章で皆さん方にご意見を 改めて伺うことにしたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。部会に報告 する日が決まっているみたいですので。 ○事務局  まだ調整中です。 ○金澤委員長  7月30日までに何とかということでしたか。 ○事務局  7月30日までに、これはしなければいけないということです。 ○金澤委員長  わかりました。そういうことだそうですので、必ず皆さん方にご意見を改めてお伺いし ますので、その節はご協力のほどお願いします。倉田委員、どうぞ。 ○倉田委員  まだ変更していただけるというお話を伺ったので、お願いしたいことがあります。 ○金澤委員長  もちろん、どうぞ。 ○倉田委員  27頁の2番にあたるのですが、「審議又は採決の際には」というところに書かれている 文言ですけれども、「自然科学分野だけではなく、人文・社会科分野又は一般の立場を代表 する委員が1名以上」となっています。私どもが提案した市民参画のモデル研究の勉強を している最中なのですが、そのときに思ったことで、社会科学の分野の方々と、私ども一 般の者との見る目線の質が全く違うというふうに思いました。専門の方は専門の方の目線 でご覧になりますし、私どもは、明日は自分が被験者になるかもしれないという目線で見 ますから、全く別になると思います。ですから、ここで「又は」というのではなく、全く 別に「と」として、自然科学と社会科学分野の方と、もう1つ一般の立場を代表する者と、 3つに分けていただきたいと思っているのです。 ○金澤委員長  これは大きなご提案ですね。どうでしょうか。これはちょっと難しいかもしれませんね。 人文社会科学の方々も患者になり得るのであって、その辺はちょっと物の考え方ではない かなという気もいたします。本田さん、どうぞ。 ○本田委員  倉田委員のおっしゃったことは私も同じ思いです。専門家の方と一般の本当に受けるか もしれないという立場で見る人間とは違うと思っています。ただ、では必ずそれを入れな ければいけないとなったときに、いま急には間に合わないという部分もあると思うので、 「そういうことに努める」とか、「と」にして「努める」とか何かそういう形で、そういう 方向にいくのだということを示すような文章に、せめてしていただけないかなと思います。 ○金澤委員長  トライをしてみましょうか。しかし、これは難しいかもしれない。 ○事務局  おそらく、いま倉田委員からご指摘いただいたように、患者の方々を含めて、そういう 方々が入っていくような仕組みづくりみたいなものを並行して進めていかないと、なかな か指針の中でそれをいま義務化していくのは、事務局から見ると難しい印象を感じていま す。ただ、いずれにしても、そういう方々の参加をサポートするような仕組みというのは、 先ほど委員長が言われた鑑のほうの話でありましたけれども。 ○金澤委員長  そうなのです。これでまずはやるしかないかもしれない。いまの実際の倫理審査委員会 を見ていると、そういう一般の方々に入っていただくのは非常に難しいみたいなのです。 お話は大変よくわかりますので、何らかの形でたとえ鑑であっても、何かレスポンスした いと思います。わかりました。ありがとうございます。まだまだ議論は尽きないと思いま すが、本日の会はここまでということにさせていただきます。次回は6月ぐらいを考えて いますか。 ○事務局  ということですが、今日もまた確認をする審議をということですので、もう一度審議が できるように調整のほうに力を尽くさせていただきたいと思っています。 ○金澤委員長  以上をもちまして、第7回の専門委員会を終了いたします。ありがとうございました。 照会先:厚生労働省医政局研究開発振興課 総務係 03-5253-1111(2543) 03-3595-2430