08/04/18 平成20年度第1回介護労働者の確保・定着等に関する研究会議事録         平成20年度第1回介護労働者の確保・定着等に関する研究会                    日時  平成20年4月18日(金)                        13:00〜                    場所  大同生命霞が関ビル6階第1会議室 ○佐藤介護労働対策室長補佐 定刻になりましたので、ただいまから第1回「介護労働 者の確保・定着等に関する研究会」を開催いたします。委員の皆様方には足元の大変悪 いところ、またご多忙のところお集まりいただきましてありがとうございます。また、 本研究会にたくさんの傍聴をいただきまして感謝申し上げます。座長が選出されるまで の間、事務局の介護労働対策室の佐藤と申しますが、司会を務めさせていただきます。 よろしくお願いいたします。  当研究会の開催に当たり、職業安定局長の太田より挨拶を申し上げます。局長お願い いたします。 ○太田職業安定局長 職業安定局長の太田でございます。委員の皆様方におかれまして は、この度当研究会に大変お忙しいところご参集いただきまして、誠にありがとうござ います。介護をめぐる状況は、皆様方にご案内のとおりでございますけれども、少子化 が進行する中で、介護サービス分野に進出する事業者、あるいは介護で働く方々が年々 増加しているところでございまして、今後の介護従事者の需要見通しにつきましても、 平成16年の100万人に対しまして、平成26年には140万人から160万人の介護従事者が必 要と見込まれているところでございます。  こういう中で近年、景気回復の中で他の分野で採用意欲が増えているところでござい ますし、また、介護分野での高い離職率とも相まって一部の地域事業所におきましては、 人手不足感が非常に強くなっているという状況もございます。  このため、将来にわたって安定的に人材を確保していく仕組みを作ることが求められ ているわけでございます。介護労働を取り巻く課題あるいは背景を踏まえるとともに、 多様な人材の参入・参画、さらには潜在的な有資格者の方々の掘り起こし等を中心とし た「人材の確保」についての方策、また、「介護」という職業が評価され選択されるた めの「介護分野に相応しい雇用管理の在り方や改善」、そしてイメージアップに取り組 んで、若者を中心に、魅力ある仕事として社会的に認知してもらうための方策などの検 討を行うことが必要ではないかと考えています。  介護労働につきましては当然ながら、介護報酬の果たす役割が大きいわけでございま すし、また、公的な制度の中での議論ということで、これは老健局におかれまして、別 途、介護事業者の経営とか実態に関する調査を含めて検討が行われているところでござ いますが、この研究会におきましては、介護労働者の人材確保や雇用管理改善の在り方 等につきまして、重点的にご検討をいただきたいと考えているところでございます。  私どもこういった問題意識に基づきまして、今般、労働経済、労働法、社会保障法等 の専門家である先生方にお集まりいただきまして、介護労働者の人材確保や定着、さら には雇用管理の改善等につきまして、専門的な検討を行っていただきたいということで、 本研究会の開催をお願いしたところでございます。この研究会につきましては、できれ ば7月末ごろを目途に中間報告として取りまとめさせていただきまして、今後の介護労 働対策につきまして反映させていただければというふうに考えているところでございま す。委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中で恐縮ではございますが、何卒よ ろしくお願い申し上げます。以上でご挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいた します。 ○佐藤介護労働対策室長補佐 ありがとうございました。続きましてご参集いただいて おります委員の皆様方をご紹介いたします。はじめに中央大学大学院の大橋勇雄教授で す。続きましては神奈川県立保健福祉大学の河幹夫教授でございます。社会経済生産性 本部の北浦正行事務局次長でございます。東京大学社会科学研究所の佐藤博樹教授でご ざいます。慶應義塾大学の駒村康平教授でございます。東京大学社会科学研究所の堀田 聡子助教でございます。また、本研究会には千葉大学の皆川宏之准教授もご参集のご予 定となっておりますが、本日は所用のため欠席となっております。  このテーブルに座っております事務局のメンバーを紹介させていただきます。ただい ま挨拶をいたしました太田職業安定局長、小川雇用政策課長、木下社会・援護局福祉基 盤課長、古都老健局振興課長です。 ○片桐補佐 古都が国会審議のために欠席させていただいていまして、私は代理で出席 させていただいています片桐と申します、よろしくお願いいたします。 ○佐藤介護労働対策室長補佐 水野職業能力開発局能力開発課長です。介護労働対策室 長増田でございます。  続きまして、本研究会の開催要綱についてご説明しますが、その前に資料のご確認を お願いいたします。皆様のお手元に議事次第をトップにした資料と、付属資料の形で整 理をされているかと思います。議事次第の次には資料の1として開催要綱、資料の2とし て委員名簿、資料の3として議事の公開について、資料4として研究会で議論をしていた だく論点の各案、資料5として研究会のスケジュール案、資料の6として従事者の動向、 資料7として雇用管理のイメージ図を付けています。基本的にこちらの資料で議事を進 めさせていただければと思いますが、参考の資料として付属資料一覧として、1番の介 護労働の需要見通し等についてから13番の介護保険制度の概要まで資料として用意させ ていただいています。  続きまして開催要綱について説明いたします。資料の1をご覧ください。1の趣旨です が、先ほど太田職業安定局長からご案内申し上げたとおり、将来にわたって安定的に人 材を確保する仕組みの構築が求められている中、介護分野においてはさまざま検証しつ つ対策をとらなければならない必要がある。こうした状況を踏まえ、介護労働者の雇用 管理の改善、ハローワーク等の支援による人材の参入促進等の観点から検討を行う本研 究会を開催することとするということです。  2、検討事項としてここに書いていますのは、介護労働者の雇用管理の現状の把握及 び分析、介護労働者の雇用管理の在り方、介護労働者の確保・定着のための支援策など ですが、後ほど議論の進め方について詳しく述べさせていただければと思います。  3、検討スケジュールですが、本日より検討を開始いたしまして、業界ヒアリング等 を通じて7月末ごろまでに中間報告を取りまとめさせていただければと、このように考 えています。  4、構成ですが、研究会は厚生労働省職業安定局が学識経験者の参集を求めて開催す る。研究会の委員は7名程度、研究会に座長を置き、座長は研究会の運営を掌握する。  5、運営ですが、研究会は必要に応じて年数回程度開催する。研究会の議事について は、別に研究会において申し合わせた場合を除き公開とする。  6、その他ですが、研究会の庶務は厚生労働省職業安定局雇用政策課が行う。この要 綱に定めるもののほか、研究会に関し必要な事項は職業安定局長が定める。このような 開催要綱にさせていただければと思います。  ただいま説明させていただきました開催要綱のうち、5、研究会の運営の2点目におい て、「研究会に座長を置き、座長は研究会の運営を掌握する」と、いま説明したところ ですが、この要綱にしたがいまして、座長の選出を行いたいと思いますが、これについ ては事前に事務局のほうで各参集者の委員の皆様にご相談させていただいておりますが、 大橋教授に座長をお願いしたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。                   (異議なし) ○佐藤介護労働対策室長補佐 ご異論がないようですので、本研究会の座長を大橋教授 にお願いしたいと思います。今後の議事進行については、座長の大橋教授にお願いした いと思いますので、座長よろしくお願いいたします。 ○大橋座長 僭越ですが、座長を務めさせていただきます。ここにご出席の皆様方は十 分なスペシャリティを持っておられますので、私はどちらかというとまとめ役に挺身さ せていただくことになるかと思います。よろしくご協力のほどお願いいたします。  まず本研究会の議事の公開につきまして、申し合わせをしておきたいと思います。こ れにつきまして、事務局から説明をお願いいたします。 ○佐藤介護労働対策室長補佐 資料の3、「議事の公開について」ということで読み上げ させていただきます。  研究会は、原則公開とする。ただし、以下に該当する場合であって、座長が非公開が 妥当であると判断した場合には、非公開とする。  1個人に関する情報を保護する必要がある場合。2特定の個人等にかかわる専門的事項 を審議するため、公開すると外部からの圧力や干渉等の影響を受けること等により、率 直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるとともに、委員の適切な選考 が困難となるおそれがある場合。3公開することにより、市場に影響を及ぼすなど、国 民の誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある場合。4公開 することにより、特定の者に不当な利益を与え又は不利益を及ぼすおそれがある場合。 これら上記1〜4については、厚生労働省が定める「審議会等会合の公開に関する指針」 における審議会等会合の公開に関する考え方に準拠するものでございます。お諮りした いと思います。 ○大橋座長 ただいまの説明につきまして、何かご意見ご質問がございますか。異議ご ざいませんか。                   (異議なし) ○大橋座長 それでは本研究会の議事の公開につきましては、事務局の原案どおりに進 めさせていただきます。  続きまして、本日の議題に入りたいと思います。本日は本研究会の今後の進め方につ きましてご議論いただくことにしておりますが、まず介護労働を取り巻く現状につきま して資料を事務局で用意しておりますので、ご説明をお願いいたします。 ○佐藤介護労働対策室長補佐 付属資料の一覧のほうの付属資料1をお願いいたします。 介護分野の需要見通しと介護労働分野の現状について続けて説明させていただきます。  付属資料1では、介護分野の需要見通し等について説明いたします。 資料1の2頁、介護職員の需要見通しについてということで、文章で整理していますが、 平成16年現在の介護保険の介護職員数は100万人ですが、これをさまざまな伸び率、例 えば後期高齢者等の伸びに比例して需要が増加すると仮定した場合には、平成26年には 140万人〜160万人の介護職員が必要と見込んでいるところです。  下のほうに枠で囲った式がありますが、後期高齢者数が平成16年現在1,110万人です が、平成26年には1,530万人だろうと予測されています。また、要介護認定者数が410万 人ですが、予防効果があった場合600万人、予防効果がないとした場合640万人という伸 びを予測しています。  これらの伸び率を利用して介護職員数に当てはめますと、Dの後期高齢者数の伸び率 を掛けますと100万人は138.1万人、Bの伸び率を使用しますと146.6万人、Aの伸び率を 利用すると156.4万人。つきましては140万人〜160万人ぐらいの介護職員が今後必要で あろうと見込まれているところです。  2に整理をしたのは、今後の介護職員はどれぐらい供給できるだろうという予測です が、2の箱で整理したのが介護保険サービスの介護職員数の過去の推移です。介護保険 制度が始まった平成12年が約55万人でしたが、16年が約100万人、17年10月で約112万人 と見込まれているところです。毎年10万人程度増加しており、今後ともこのくらいの伸 び率であれば、十分に要員の確保は可能と見込んでいるところですが、さまざまな労働 市場の条件が絡んでまいりますので、この辺を皆様とご検討をさせていただければと、 このように考えています。  付属資料の2です。介護労働の現状についてということで、介護労働安定センターが 行った実態調査に基づいて、簡単に特徴を表した表です。1番、事業所の属性ですが、 (1)事業主体では、訪問系サービスを行うことでは、民間事業所が55.4%という感じ です。施設系のところでは、社会福祉法人が46.9%で、法人格でいろいろな違いがある というところが見受けられたと思います。  (2)で事業所規模を整理したものですが、訪問系では14人以下の所が48.2%、15人 〜49人の所が38.1%で、小規模な事業所が訪問系サービスを展開していることがここか らうかがわれるかと思います。施設系では15人〜49人規模が34.2%、50人以上が55.5% で、事業所規模の違いがサービスを展開する違いによって、これだけ違うところがわか るかと思います。  2頁、ここでは労働者の属性を示したものです。(1)は一般労働者の男女比、平均年 齢、勤続年数、平均賃金を表したものです。構成比として全産業が男性が68.8%、女性 が31.2%のところ、介護の関係では施設系では3対7、ホームヘルパーでは2対8、大体7割 から8割が女性の方が占めていることが構成比としてわかるかと思います。勤続年数です が、全産業の平均が男性の場合13.5年に対して、施設系、ホームヘルパー系では4年〜5 年、女性でも4、5年ということで、制度が始まって間もないこともありますが、勤続年 数も相当差がある。  続いて現金給与額の比較です。男性の場合、全産業が37万2,000余のところ施設系で は22万7,000円、ホームヘルパーでは23万円というところです。また、女性で見ますと、 全産業が23万8,000円のところ、施設系では20万6,000円、ホームヘルパーで19万7,000 円の現金給与額を示しています。また、就業形態で見ますと、施設系では正社員の方、 訪問系では登録ホームヘルパーを主体とする非正社員の方が構成的には、このような労 働者の形態となっています。  3頁、現在の事業所に就職した理由を複数回答で求めたものですが、高い数値を示し ているのは男性・女性とも、「やりたい職種・仕事内容だから」ということが5割以上 を占めています。また「通勤が便利だから」というところが女性で35.6%、「家族や知 人の勧めや紹介があったから」が男性・女性とも24〜25%で、特に仕事の内容にすごい やりがいをもって入職当初は入ってこられるということがわかるかと思います。  4頁、1週間当たりの労働時間を整理したものです。施設系では30時間以上の方が88% を占めています。また、1週間の労働時間数を就業形態別で見ますと、非正社員の方が3 0時間未満で約半数、正社員の方は30時間以上が9割以上ということで、働き方の違いが わかるかと思います。また、訪問系サービスでよく見られるところですが、直行・直帰 の問題を(3)で整理しています。直帰する者の割合は正社員は8.5%、登録ホームヘル パーと言われる非正社員の方は42.6%で、特徴的な直行・直帰の姿がここで表れていま す。  5頁、訪問介護員の方に賃金や労働時間についての考えを伺ったところの結果です。 毎月決まった収入があれば曜日や時間帯にこだわらないという方が正社員56.1%、非正 社員44.5%で、都合のよい時間に働けるほうがよいと考えている方が多いのがわかるか と思います。  6頁、賃金水準です。(1)として短時間労働者、女性の平均時間給を賃金構造基本統 計調査で調べたところ、ホームヘルパーは1,296円、福祉施設介護員は985円です。また、 賃金の支払形態が時間給である者のうち、時間給の水準が千円未満の者の割合は、訪問 介護員では20.6%、介護職員の方は85.6%です。また正社員である者のうち、年収が30 0万円以上の者の割合は、訪問介護員18.5%、介護職員が22.6%です。(4)では年収が 103万未満、これは税の関係ですが、訪問介護員は42.1%、介護職員は28.1%というと ころで、働き方の違いがわかるかと思います。  ここで賃金水準の賃金カーブを用意いたしました。付属資料10-1-1がカラーの賃金カ ーブです。付属資料10-1-1、職種別年齢賃金カーブです。まず男性ですが、企業規模計 で福祉施設介護員、看護師、準看護師を賃金カーブで見たものです。例えば40〜44歳の ところのポジョンで見ますと、福祉施設介護員の男性の場合、これは所定内給与につい て見たものですが、25万2,000円のところ、準看護師の方は27万7,000円、看護師の方は 32万3,000円という違いがあります。  10-1-2、職種別年齢賃金カーブ、女性です。同じように40〜44歳のポジションで賃金 カーブを見た場合、いちばん下にあるのはホームヘルパー18万5,900円、福祉施設の介 護員19万2,000円、準看護師とケアマネージャーが大体同じポジションで25万5,000円 ぐらい。いちばん上にあるのは看護師で29万8,000円と、このようなポジションです。  経験年数別で賃金カーブを見たのが10-2-1の資料です。職種別経験年数賃金カーブ、 まず男性の場合ですが、5〜9年のポジションでは福祉施設介護員男性と準看護師の方は 同じポジションにいるかと思います。また経験年数が伸びても福祉施設と準看護師のカ ーブは大体同じポジションを描いているところです。男性の看護師はそれより上のポジ ションのカーブを描いています。  続いて女性で同じ職種で経験年数別で見たのが10-2-2です。5〜9年のポジションで見 ますと、いちばん下にあるのは福祉施設の介護員、女性が20万1,000円と19万6,000円、 真ん中ほどに位置するのは準看護師の23万1,000円、ケアマネージャーの方は26万4,000 円、いちばん上にあるのは看護師の方で26万9,000円ほどと、このようになっています。  10-3-1で用意しましたのは、男性の産業、職種別の賃金カーブです。福祉施設介護員 男性は橙色でいちばん下のポジションでいますが、40〜44歳のポジションで見ますと、 これは年収ベースですが、384万円ほどです。その上に位置するのは卸売・小売業の男 性、続いてサービス業、いちばん上が製造業というポジションになっています。  次頁は女性の産業、職種別賃金カーブです。35〜39歳のポジションで見ますと、ホー ムヘルパーと福祉施設系は大体重なっていまして、28万〜28万5,000円ぐらいのところ のポジションです。それに対して35万6,000〜35万8,000円のところに製造業、卸・小売 業、サービス業の方が位置していまして、いちばん上に介護支援専門員と言われるケア マネージャーのポジションがあります。  企業規模、10〜99人、介護事業所は小規模の所が多いというところを特徴的にとらえ て10〜99人の所で産業、職種別の賃金カーブを見ました。男性の場合40〜44歳のポジシ ョンで見ますと、福祉施設介護員、これも年収ベースですが、404万円ほど。その上に 位置するのは製造業、続いて卸売・小売業、いちばん上にサービス業が位置づけられて います。  同様に女性の企業規模、10〜99人に絞った35〜39歳のところを見ますと、3つほどポ ジションが同じようになっています。福祉施設系、ホームヘルパー、続いて製造業の年 収が267万〜270万ぐらいのところで位置づけられています。その上に卸売・小売業、そ の上にサービス業、いちばん上にケアマネージャーの女性というポジションです。いま 申し上げましたのが賃金カーブです。また、先ほどの賃金水準の6頁に戻りまして、賃 金カーブを踏まえた賃金水準を同時に説明いたしました。  7頁、離職の状況です。(1)として離職率を調べたところ、全産業の平均16.2%に対 して、介護全体として20.3%です。これを正社員、非正社員のところで位置づけますと、 全産業平均13.1%に対して介護職員というのは専ら施設系だと思っていただいてかまわ ないと思いますが、21.7%というところで、相当乖離がここで発生しています。(2) で、従業員の定着状況を整理したものです。施設系では定着率が低くて困っているとい う所が25.4%で、施設系で相当人手不足あるいは定着が低くて困っているということが 表れていると思います。  8頁、離職の状況を見たものです。事業所規模別の離職率、(1)は正社員ですが、14 人以下、あるいは14人〜99人の所で、いずれも高い離職率を示しています。また、経過 年数別で見ますと、3年未満のところで3割、34%、介護職員が44%で、小規模な事業所 で開設年数が少ない所に高い離職率を示している状況が表れているかと思います。  9頁、離職の状況の理由を調べたところです。(1)として前職を辞めた理由の職種別 で見たところ、高い数値を示しているのは訪問介護員では「自分・家庭の事情により」 辞めたというのが29.8%ですが、そのほかに「職場の人間関係で不満があったから」が 25.8%、「待遇に不満があったため」が24.4%です。同様に介護職員でも、いちばん高 いのは「待遇に不満があったから」が30.4%、続いて、「自分・家庭の事情により」が 27.8%ですが、「職場の人間関係に不満があったから」が25.6%です。  また、就業形態別に前職を辞めた理由を調べてみますと、正社員の方は「待遇に不満 があったため」が29.6%、次に「自分・家庭の事情により」です。非正社員の方はいち ばん高いポジションは「自分・家庭の事情により」が34.9%ですが、続いては「職場の 人間関係に不満があったから」というところで、この辺が雇用管理の改善をしなくては いけない要素が含まれているのではないかと、このように思っています。  10頁では有効求人倍率の推移を見ています。平成18年現在、全職業では常用では1.02 を示していますが、社会福祉専門職種は1.30、介護関連職種では1.74というところで、 せっかく求人を出してもなかなか充足しない。あるいは地域別格差で見ますと、東京都 が2.82倍に対して、沖縄県は0.69倍と、どこも人手不足というわけではなく、地域バラ ンス、地域格差が生じているような感じが見受けられるところです。  11頁、現在の勤務先での継続の意思を調べたものです。訪問介護員、正社員の方です が、この方たちは「できる限り勤め続けたい」という意思が44.1%です。それに対して 介護職員の正社員の方は「今ではないがやめたい・転職したい」という方が19.4%で、 いちばん高い数値を示しています。  12頁、働く上での悩み・不安・不満等を調べたものです。悩みの内容として「仕事内 容の割に賃金が低い」という方が、施設系では50.6%ということで、半数以上の方がこ の問題に悩まれている。同じように「夜間や深夜時間帯に何か起きるのではないかと不 安がある」というのが施設系で44.8%を示しています。また「ケアの方法等について意 見交換が不十分である」と答えた方も施設系で38.8%です。訪問系でいちばん強くパー セントが上がりましたのは、「職場での人間関係について特に悩み、不安・不満等は感 じていない」というのが41.1%ありますが、悩んでいらっしゃるのは「定められたサー ビス行為以外の仕事を要求される」というのが38.2%です。  13頁、事業所に対して過不足状況を聞いたところの反応です。「大いに不足」「不足」 「やや不足」を足しますと、訪問介護員について6割を超える事業所の方々が不足をし ていると回答している状況です。  14頁、事業所の経営状況を調べたものです。平成18年4月に介護報酬が改定されたわ けですが、平成18年3月の改定前と改定後の売り上げを比較して見た場合、訪問系では 100%を切った所が合わせると46.2%です。施設系でも100%未満の所を合わせると51.6 %で、半数近くの方が「売り上げが落ちた」と回答しています。  15頁、事業所運営上の問題点を尋ねたものです。「いまの介護報酬では十分な賃金を 払うことができない」と答えているのが訪問系が45.9%、施設系が49.1%です。また「 介護サービス提供に関する書類作成が煩雑で、時間に追われてしまう」が訪問系が46.8 %、施設系が37%です。続いて「経営が苦しく労働条件や福祉環境の改善をしたくても できない」と答えたのが訪問系、施設系とも33〜35%です。「良質な人材の確保が難し い」と答えたのが訪問系が30.1%、施設系が44.6%です。  16頁、介護保険制度改正に伴う仕事や職場環境の状況変化を調べたものです。介護保 険制度改正に伴って何か変化がありましたかというところで、すべての職種において「 あった」と半数以上の方が答えています。また、「あった」と回答した方々のうえで、 状況変化の内容を尋ねたところ、「業務量が増えた」というのが訪問介護の方で33.8%、 介護職員の方が53.4%、ケアマネージャーの方が63.9%です。「賃金が下がった」と答 えたのが訪問介護員22.1%、介護職員12.3%、ケアマネージャー12.4%。「労働時間が 増した」と答えたのが訪問介護員17.7%、介護職員24.9%、ケアマネージャー35.3%で す。  最後のカラーの頁ですが、離職の状況、本研究会の委員でご参加していただいていま す堀田先生が介護労働安定センターの個票データを再集計しまして、離職率の分布を調 べた表です。これで軒並み離職率が高い状況であるかをポイントに見ましたが、軒並み 高いわけではなく、0%と安定している所が正社員で64.4%、非正社員でも70.6%、定 型的短時間労働者65.1%、登録ヘルパーでも38.0%。逆に30%以上離職率が発生してい るのは正社員で22.7%以下です。そういうことで離職率が0%の事業所と30%以上の事 業所との二極化が見られるという分布の分析表です。  最後になりますが、現在、国で行っている介護労働者に対する雇用管理改善施策の平 成20年度の予算について説明いたします。付属資料3です。厚生労働省としては、介護 労働者の雇用管理の改善のため、(1)相談援助事業として、約5億円予算化しています。 これは介護センターを通じて事業主に対する相談援助あるいはいまほど使わせていただ いた介護労働者の実態調査、健康確保対策事業。本年度より、なかなか中小零細の事業 所の方では取り組みづらいところがユニットを組んで、いろいろなモデル事業をやって いただこうという新規事業を立ち上げています。  また助成金として2種類用意しています。1つは介護基盤人材確保助成金、雇入れ助成 ですが、これは26億円規模。さまざまな雇用管理のメニューに対して助成をする介護雇 用管理助成金は1.6億円の予算規模を示しています。他の事業として、能力開発の関係、 あるいは我々の機関であるハローワークで、福祉重点ハローワークでさまざまな職業紹 介、面接会を開催していますが、このような経費が対策費として載っているところです。 以上が現在の介護労働を取り巻くところです。  資料の6番です。介護分野における従事者の動向を入職ルート別に実数値あるいは推 計値で見たものです。平成16年と17年の介護保険従事者を比較しますと、全体のパイと して9.4万人増加しているわけですが、どのような入職経路によって入って来て、離職 者はどいうことかを分析したものです。その前提として、介護福祉士の方は年間新規登 録者として、約5.8万人の方が登録されるわけですが、うち3万人はすでに介護分野で実 際に働きながら資格を取ったという方で、新たに入る方たちは大体2.8万人ぐらい。こ れを前提として入職のルートを検証しますと、学校基本調査による学卒ルートは5.3万 人が入る勘定です。また、職業安定業務統計によりますとハローワークでは約7万2,000 人、福祉人材センタールートが約1万4,000人、合計8万6,000人ほどの方がハローワーク 等による就職ルートから入ってきます。  離職者で13.8万人とカウントしていますが、介護保険従事者、平成17年101.2万人に 現在の離職率20.3%を仮に掛けた場合には、20.5万人という数字が出てきます。その中 で転職者の分を差し引くことが必要で、転職率を介護センターの転職率32.5%を使用し ますと、転職者は大体6万7,000人ぐらいだろうと推計されます。これらの方を引きます と、実質の離職者は13.8万人ぐらい。全体の中から他の入職ルートはどれぐらいの規模 で発生しているだろうというのは、推計値で差し引いたものですが、例えば民間の求人 情報サイトあるいはクチコミで、相当転職が行われるというふうに聞いていますので、 それらを合わせると大体9.3万人ぐらいの方は民間ルート、クチコミルートで動いてい ると、このような勘定で従事者の動向が仮に推計しますと、このような絵が示される ところです。  資料7、雇用管理のイメージを単純に絵で示したものです。事務局が示すまでもない ものだとは思いますが、キャリア管理、配置管理、労働条件、能力開発、福利厚生とい うのが雇用管理の枠内で整理されていまして、これらを改善をすると人材の確保・定着 につながり、ひいてはサービスの質の向上、人材の質の向上、経営の質の向上が図られ るのではないかという概念図です。ご参考までにお示ししたところです。座長、説明は 以上です。 ○大橋座長 これまでの事務局からの説明について、ご質問・ご意見をお伺いしたいと 思います。どうぞご自由にご発言ください。 ○佐藤委員 事業所規模というのは、言葉どおりの事業所規模なのか、法人規模・企業 規模なのか。後ろに離職率など出ていましたね。もう1つ、賃金構造の賃金カーブは常 用労働者。つまり、ホームヘルパーなどは有期短時間のうち、後ろはフルタイム常用労 働者の、例えばヘルパーなどを採っているということですか。その2つです。 ○佐藤介護労働対策室長補佐 まず、賃金カーブの所ですが、常用労働者としてです。 ○佐藤委員 そういうことですね。ホームヘルパーの一部の人ですね。 ○佐藤介護労働対策室長補佐 はい。全部は示していないということです。それと事業 所規模は、全体の説明の中での事業所規模。これは賃金カーブの関係ですか。 ○佐藤委員 ではなくて、離職率でも、規模が小さい所ほど離職率が高いとか、介護労 働安定センターので、あれはたしか両方取れると思っていたので、どっちの規模を使わ れた表なのか。ただ、訪問介護だと一つひとつのステーションは小さいけれども、全体 は大きい会社もあるので、この規模はどちらの規模なのか。 ○佐藤介護労働対策室長補佐 会社全体の規模です。 ○大橋座長 これは、賃金構造で一般労働者ですね。 ○佐藤介護労働対策室長補佐 申し訳ありません。一般労働者です。 ○駒村委員 いくつかあるのですが、最初に需要見通しは、一昨年に作ったものですが、 この見通しで議論を続けていくということなのか、何か見直す。どのように推計したの かというのもあると思いますが、見直すのかどうなのかという点が1つですね。もう1つ は、センターの資料を使われていますが、こういうのは経営形態別というのですか、経 営形態別に何か分けて、それぞれの理由、離職率など、もう少し細かいメッシュで見る ことはできないかという点です。 ○佐藤介護労働対策室長補佐 1つは需給見通しですが、今回用意したのはこのような 伸び率を利用したものですが、もっと緻密にさまざまな推計を用いて需給バランスをと らなくてはいけないとは、事務局で思っておりますが、今後の宿題とさせていただけれ ばと思います。続いて、いろいろなクロスが掛けられたものがないかというご質問だと 思いますが、介護労働センターのほうでも、法人格別やサービス別、あるいはさまざま な職種別での離職率がありますので、次回の宿題として資料を提出させていただきたい と思います。 ○北浦委員 需要見通しの計算は大変な作業だと思うのですが、ちょっと素朴なことで 疑問に思ったのは、今後の見通しにおいては、大体4万〜5万程度の増加でいくことで、 一応、見通しも姿が出来上がっているわけですね。ただ、実勢を見ると、これまで10万 程度上がってきて、現実に足下でも10万人、増加しているわけですね。ということは、 今後において、確かに業界の認定者との関係であるなどといったところのバランスでい くと、この4万〜5万の推計なのかもしれませんが、実勢がこれまで10万ぐらい上がって きているという事実と、足下において既に10万ぐらいなのです。単純に言ってしまうと、 そんなに集まるのだったらという話になってしまうのですが、おそらくそうではなくて、 これは量的なものだけではなくて、質的なサービスの必要性、あるいはもう少し構造的 に見ると、非常に人間の数が必要な分野もあったりします。そういったところを見越し てくると、この4万〜5万程度の推計は、やや低いのかもしれない。そのようにも思うの ですが、その辺はご論議になったかどうか教えていただきたいと思います。 ○小川雇用政策課長 この需要見通し自体は、たしか老健局のほうでやられた推計で、 とりあえず対外的には、現在、厚生労働省を通しての公式な見通しというところで出し ているのです。これについて、確かに推計では4万〜6万程度の増が必要という見込みで ありながら、足下で10万人増えていますが、もうすぐ平成17年、平成18年の数字も出る と思いますし、そういったものを見ながら、この研究会としてオフィシャルな見通しに するかどうかという問題がありますので、そこはまだ他局との相談もありますが、とり あえずは足下の数字、平成17年、平成18年の数字を見て、またちょっと考えるのかと思 います。 ○河委員 これからいまの関係のデータなどの整理をされるときに、お忙しいから、あ まり個別的に全部そうするべきだというつもりもありませんし、何らかの予見を持って 言っているつもりではないのですが、介護の世界の議論の大きな流れを考えると、1つ は介護保険ができる前の時代は、介護の世界は基本的に社会福祉法人が担ってきたわけ ですよね。社会福祉法人が担ってきた文化は、良い文化もあるし悪い文化もあると思い ますが、そのあと社会福祉法人はそんなに増えていないと思いますから、逆に言えばそ の文化を引きずっている部分がある。これも良い文化もあると思うし、悪い文化もある と思います。  そういう要素が全体、数字に反映しているもの、つまり90年代文化みたいなものが 社会福祉法人を通して社会福祉法人の中に残っているもの。繰り返しますが、それは良 い文化もあると思うし、悪い文化もあると思います。そういう分野と、まさに介護保険 制度ができたあとに、いろいろな方たちが入ってきてくださったことによっての数字の 変化ですね。勤続年数などは特に大きいと思いますが、最後は全部平均していただいて も構わないので、検討するときにはそういうものを分けて数字を見るほうが、どうなっ ているのかがわかりやすいのかと。繰り返して言いますが、どっちが正しいとか間違っ ているではなくて、それを分けて考えたほうが要素が分かりやすいのかというのが1つ だと思います。  もう1つは、時間的・歴史的に言うと、何よりも介護保険制度が生まれたことが非常 に大きな影響を与えていると思いますが、それと並行して2つぐらい制度が動いていま す。1つは、18年前にまさに社会福祉士や介護福祉士の資格みたいなものが生まれたこ とに伴って、だんだんそちらのウエイトが高くなって、特に介護福祉士のウエイトが高 くなっているのだと思います。その要素に伴う変化が何か起こっているのだろうと思う のですが、どうもうまく見えていない。  もう1つは、またこの関係で、1番目に話したことと多少重なるのですが、やや個人的 な思い入れもあるのでお許しいただきますと、全体的に介護報酬は公定価格みたいなと ころがありますから、良い悪いは別にして、いろいろな意味でパブリックな体系になっ ていく部分がどうしてもあるのだと思うのです。その際に、1番目の話と絡みますし、 いまの話とも絡んで、看護の世界などもそうですが、いわば給与の座表軸みたいな世界 は、それに引きずられるかどうかは別にして、医療職俸給表の影響が意味を持っている と思うのです。  それに対して、福祉の関係の場合は、介護の関係の公務員の俸給表が専門職として生 まれたのが2000年ですので、座表軸としてまだ機能していないというか、あるいは機能 させるべきではないならそれでもいいのですが、何か標準形が見えなくなっている。そ の標準形みたいなものがどこかにないと、公定価格との関係での議論が非常にしにくい 部分がある。公定価格だから、給与を一律にしろと言っているのではなくて、座表軸み たいな要素がないと、先ほどの看護などの勤続年数別で見ると、あれは明らかに、公務 員で言うと事務職俸給表の動きをしているのだと思いますよ。福祉系の場合、事務職俸 給表の動きをしていて、ある面では地域によってすごくばらつきがあるということなの だと。  そういう意味では、先ほども言いましたように、看護の世界は公務員の医療職俸給表 の動きがわりと全体の座表軸になってきていることが長年、定着してきている。これも 良し悪しはありますが、だから結論をこうするべきだというつもりは全くありませんが、 それのことを多少どこか議論のときには活用すると、いわば医療の風土がどう生まれて きたか、あるいは20年前に看護の世界で、やはり人材不足なのか人手不足なのかが起こ っていたときの議論と、どう重なり合うのか、あるいは重ねてはいけないのかというの がわりと議論しやすくなるのか。いま申し上げたのは、いずれも議論のためにそんな分 析を多少分けてやってみると、わりと共通認識に達しやすい部分があるのかと思いまし た。  1つは、やはりいま介護を担っている集団の属性が歴史的にそれぞれ違うということ と、この20年ぐらいの間にいろいろ制度が動いてきたことに伴って、動かされている部 分と新しく発生している部分とあると思いますので、時間軸みたいなものと縦横でやっ てみて、もちろん、それで全部解決するとか、議論の結論が出るわけではないのですが、 わりと見取り図は描きやすくなるのかと。そういうのをどこかで留意していただいた表 があるとありがたいと。  資料7の雇用管理のイメージですが、私は社会福祉法人とか社会福祉の世界を長くやっ てきて、「ああ、そうか。雇用管理というのはこういうことを考えなければいけないの か」と。恥ずかしながら私が言うぐらいに、先ほどの社会福祉法人の経営みたいなこと を形式で言うと指導していたような立場の人間が、こういうことも知らずにやっていた 部分がありますので、冒頭に言いましたが、社会福祉法人という文化の良いものもある と思うし、悪いものもあると言ったら、例えばこういうことを申し上げているわけです。 こういうことを考えてプロットして、社会福祉法人グループが考えたことはなかったの ではないかと。と言うなら、逆に言えば、そういうことを考える中で、また良い答えが 見出せるのかもしれないというのをちょっと思いつきました。恥を忍んで申し上げた理 由は、そういう意味です。 ○堀田委員 いま河委員がおっしゃった点から離れて戻ってしまうのですが、まず需要 見通しについて。これは自分でやらなければいけないのではないかという気もするので すが、そもそもこの介護職員の将来の需要見通しは、利用者の側、後期高齢者なり、要 介護認定者数の伸びを、単純に掛けているだけだと思うのです。もちろん、利用者側の 要素も精査しなければいけないことの1つですが、出発点の現状で必要十分な量のサー ビスを利用者に提供できているのかということを考えると、いま不足感があるわけで、 単純に出発点をいまにして、利用者数の伸びにあわせて掛けるというのは、やや過少な 需要見通しになっているのではないでしょうか。いまの不足感をどう折り込むのかは難 しいことですが。  それから2つお願いです。需要見通しの付属資料1の次の頁の下の囲みの中で、介護 職員数が大体10万人ずつ増えてきているというのがありますが、どのサービスで増えて いるのか。職員数が増えているサービスはニーズも増えていているのか、ニーズと職員 の増え方が対応しているのかがわかるような資料が出されると、ありがたいです。  もう1つは、論点にも書かれていますが、人材確保のいろいろなチャネルがあって、 いろいろな属性の人たちがいらっしゃるわけですが、この増えてきた10万人というのが、 ざっとは資料6でイメージはつかめたのですが、特に最近の状況として、どこからどう いう属性の人たちが来ていいるのか、あるいは来なくなっているのかということがわか るようなものがあればよいのではないかと思います。例えば訪問介護などでは、過当競 争ではないかという見方もありますし、ニーズと職員数の伸びとの対応、その内訳がわ かればということです。 ○大橋座長 いまの点で、見通しの問題については、先ほど北浦委員からも出されまし たし、確かに数が一応合うことになる場合と、足らないという場合では、議論の持って 行き方が大幅に変わってくるという気もします。例えば全体の数は合っていても、これ は非常に地域密着型ですから、地域でのバランスが悪いなどという議論も、当然出てき ます。逆に、数が合っていても、例えば人材の質、クオリティの問題なども出てきます ので、この辺はある程度スタンスを固めたほうがいいと思います。人員の過不足につい て、データがありましたね。 ○佐藤介護労働対策室長補佐 はい。 ○大橋座長 これを見ると、結構「不足」という意見が多いので、確かに甘いという指 摘もあり得ると思いますけれどもね。 ○堀田委員 これもなかなか難しくて、13頁で不足感が示されています。これで見ると、 訪問介護は「やや不足」まで含めると6割を超えていて不足感が高いのですが、離職率 を見ると、施設系よりもその水準は低いのです。もしかすると、必要以上に事業所数が 増えているので、不足感が高いということも考えられます。過当競争が起きているから 不足感がいま高いのか、それとも事業所数は適正な状態だが、それでもサービスの担い 手が足りないのか、需要見込をたてるにも、両方の可能性を考慮する必要があります。 ○大橋座長 どうでしょうか。これはきちんとやろうと思うと、この見通しだけで相当 時間がかかります。ただ、この研究会の趣旨は、雇用管理の在り方を良くすることによ って、良い人材に来てもらうとか、離職率を下げるといったことがポイントになってき ますので、需要見通しだけ一生懸命やっても、それほど生産的でないと思いますが、あ る程度の足場固めはしておいたほうがいいかなとは思います。 ○佐藤介護労働対策室長補佐 いまおっしゃっていただいたファクターを、入れられる ことはできるだけ入れるようにして、ちょっと検証して。 ○大橋座長 そうですね。あまり窮屈にやって動いてもしょうがないので、たぶんもう すぐ平成18年の数字が出るので、それで足下を見てからということだと思います。 ○佐藤介護労働対策室長補佐 座長、申し訳ございません。事務局のほうで、資料4と資 料5の説明が抜けておりましたので議論が進む前にさせていただきます。順序が逆になっ て大変恐縮ですが、資料4と資料5では、本研究会で議論していただく論点を、事務局と して案で作りました。  1は今後、介護労働が目指す姿、介護労働のあるべき姿とは何かをご議論していただい たらどうかと思っております。2は介護労働市場を踏まえた、人材確保・定着のための 取組、いまさまざまな観点からご意見をいただいたところですが、そういう見通しを立 てた上で、将来にわたって安定的に人材を確保していく仕組みをどのように構築してい くか、という観点でご議論していただければと思います。また、介護分野にふさわしい 雇用管理・処遇の在り方、魅力ある仕事として、この仕事を評価していただいて選択さ れるには、どんな雇用管理・処遇が必要か、ご議論していただければと思っています。 また、介護分野における生産性の向上という観点では、介護サービスはもちろん労働集 約型産業ですので、介護報酬の枠組にある介護労働分野において、生産性向上について どのように考えていくか、このような視点でもご議論していただければと思います。そ の他として、現在もいただいておりますが、必要に応じて適宜、論点を追加させていた だければと思っています。  次頁の資料5は研究会のスケジュールの案です。本日、第1回は4月18日、研究会の進 め方について、フリーディスカッションをしていただいているところです。第2回目か ら第4回目については、業界団体等からのヒアリングをお願いしているところです。 ヒアリング対象団体として、いま考えているのは、全国老人保健施設協会様、全国老人 福祉施設協議会様、「民間事業者の質を高める」全国介護事業者協議会様、日本在宅介 護協会様、日本介護福祉士会様、日本介護福祉士養成施設協会様、求人情報サイト「カ イゴジョブ」様、それと労働組合の方々です。括弧として書いてありますが、できれば 6月、モデル的な取組、好事例等があれば、そういった具体的な取組をヒアリングして、 第5回、第6回ということで報告案の骨子、中間報告取りまとめを流れとしてさせていた だければと思っております。事務局からは以上です。 ○大橋座長 引き続き、ご議論いただきたいと思います。 ○佐藤委員 今回の雇用管理改善は、たぶん背景には人材不足、他方で離職率が高いと いうことがあると思うのです。そういう意味で、資料で説明していただいたように、ま ず現状をきちんと理解することが大事で、本当に離職率が高いのか、あるいは介護の中 でも施設と訪問で相当違うし、あるいは首都圏と地方で違うということで、どこに課題 があるのかを理解することが大事だと思うのです。そのときに、局長もこの分野は離職 率が高いというように挨拶があったのですが、資料の色頁の7頁で離職率は結構大事だ と思いますが、ここでも例えば介護職員の正社員が高いのではないか。ホームヘルパー や非正社員はそうでもない。これだけでもすごく大事だと思うのですが、例えば全産業 の正社員は男性が多いのです。つまり、女性だけ、男女別に見ると、たぶん全産業とあ まり変わらないかもしれない。同じだから安心しろという意味ではないのですが、この 時期、ややもすると介護関係は離職率が高いと言われてきた。今日、マスコミの方がい らっしゃるのですが、その人たちがほかの産業の離職率を知らないで議論しているとい うのがすごくあって、全体で正社員もこのぐらい離職している、あるいは女性だけ取る ともっと多いなどというのはあまり知らない。きちんと現状を理解し、その上でこの業 界は離職率が高くて、あまり働きがいがない業種みたいなことだけが歩いていて、安定 している所もあるし、働き続けたい人は結構いるわけです。ですから、そういうきちん とした情報を出すことも大事なのではないか。それが1つです。  あと、現状を理解した上で課題がはっきりしたときに対策も、1つは雇用管理なので すが、企業だけでやれる部分と、この業界全体の魅力アップというのは、個々の企業の 努力だけではなかなか難しいことがありますので、業界全体として取り組むことは何か。 もう1つは、その業界独自でやれる部分と、行政のサポートが必要な部分をきちんと区 分けしていただければというのが2つ目です。  3つ目ですが、資料4で落ちていると思っているのは、1つは特に訪問系を考えれば、 働いている人のかなりの部分はパートタイマーですよね。短時間労働者です。ご存じの ように、この4月に改正パートタイム労働法が施行されて、基本的にはこの業界もパー トタイマーについては改正パートタイム労働法の趣旨に即して、雇用管理を改善しなけ ればいけないわけです。そっち側のさまざまな支援のツールはあるのですが、そういう 人はガラッと多くて、それは別の局がやるからというのは、ちょっとあれだろうと。基 本的には、パート労働法の枠組の中でも、この介護分野についても使えるツールはある わけです。あるいは、事業主も改正パート労働法の趣旨を理解して、雇用管理を改善し なければいけない。ですから、それはもうあるわけです。それに加えて、さらに介護分 野固有に、何の雇用管理を改善するのかということを議論しないと、例えばパートの方 でもパート労働法と関係ないというのは、ちょっとどうかなと、これが3つ目です。  最後に、需要調整のときに個々の企業なり行政ということでもう1つ大事なのは、労 働省需給では民間の職業紹介はあったわけですが、施設を考える、特に首都圏を考える と、派遣を活用しているところがすごく多いのです。4割ぐらいの施設、もっとかな。 過半数。かつそこから採用しているケースも多いので、需給システム人材確保の側面で も、派遣ビジネスも特に施設系はすごく多いので、ちょっとここから落ちているかなと いうので、4つ目としてご検討いただければということです。以上です。 ○北浦委員 少し重なるところがあるかもしれません。資料6は良い資料だと思うので すが、この全体構造がもっとよく見えるといろいろな議論ができると思うのですが、こ のときにちょっと考えておいたほうがいいなと思ったのは、離職者の部分なのです。要 するにこの流れの中から出てしまう離職者なのですが、実はその離職者がどこへ行くの かと。つまり、環流されて、またほかの事業所なりに行く、あるいは違う形態で進むの であれば、それは個々の企業にとっては問題かもしれませんが、産業全体としてはより 良い条件の所へ移行していくということで、産業全体として労働力が維持・培養といい ますか、向上していくのであれば、それはそれの1つの効果はあると思うのです。  しかし、現実はどうかというと、離職の中で、おそらく全く他の産業、つまり折角介 護を施行しながら、諦めて、絶望して全然違うほかの所へ行ってしまうということにな ると、これは問題だと思いますので、結局、この離職者のところがどういう形をとるの か。だからといって、流動的であるのが良いかどうかわかりませんが、そういう中での 移動の中では安定的な形の方策をどうとるのかということと、より根本的には定着をど うするのかという議論が出てくると思うのです。いちばんは、まず全体としての介護分 野の中の折角指向された方が消えていってしまう。ここのところがあるかどうかという ところ。よくそういう話は聞かれますが、実体はなかなかつかみにくいと思いますが、 そんな議論をひとついかがかなと思っております。  もう1点は、佐藤委員がおっしゃったように、確かに他の高齢のパート法にしても、育 介にしても、相当に手厚くなってきているわけで、そういったものがこの分野にも適用 されることの効果を一緒に考えないといけないと思うのですが、特にその場合にそうい った既存の一般施策が、この産業に適用するときの難しさ。例えば育介の問題で言うと、 退職は育児介護理由の方が多いわけですが、とてもここでは継続できない、とてもここ で短時間勤務なんてすることは無理です、あるいは1回離職をしないと、体力的にもとて も続きません。何かそういう事情があるのだとすれば、一般施策の限界といいますか、そ この適用の限界も政策論議の中でご審議していただくといいのではないかという2点です。 ○小川雇用対策課長 北浦委員の前段なのですが、資料6のフローで見ると、13.8万人は 介護分野からもう出てしまった人というイメージで、離職率が20.3%ですから、辞めた 人が20.5万人いますが、そのうち6.7万人はもう1回介護分野に戻ってくるということで、 全く離れてしまうのが13.8万人という状況で推計しています。 ○北浦委員 その離職者は、他産業に従事している方なのですか。 ○小川雇用対策課長 他産業に行ってしまったと。 ○北浦委員 それは明らかなのですか。 ○小川雇用対策課長 ですから、入職者で前職が介護という人が6.7万人いるので、そ れを引くとそう出てしまったのではないかと。他産業か、もしくは家庭ですね。こっち からここに入ってしまっている。 ○佐藤委員 戻っている人はこっちに入れている。 ○北浦委員 9.3か何かね。 ○堀田委員 お二人と関連するところもあるのですが、3点。まず1点目で現状認識の ところは本当に大事で、離職率はサービス業平均で、常用労働者の値ですが、21.7%で す。介護はそれよりも低いということなので、1つは「介護職はどんどんやめます」と いうイメージだけが広がらないことを祈っています。最後にお示しいただきましたが、 離職率の分布をみると、同じ地域でサービス別にとっても、やはり二極化しています。 先ほどお二人からも法人格というご指摘もありましたが、どういう事業所で定着してい るのか、サービスの種類、組み合わせ、事業主体、規模、それに雇用管理のあり方など、 特徴を見ていく必要があると思います。定着しているところの特徴を把握して、それを 学び合うことを考える必要があるのではないでしょうか。  1点目の補足として、先ほど佐藤委員から企業の役割、業界団体の役割ということが ありましたが、それに加えて国のレベルでやらなければいけないことと、地域・地方自 治体レベルをわけて整理することも大切だと思います。とくに地域レベルについては、 企業単位、あるいは事業の種別ごとにやるべきことと、事業種も超えて連携し合ったほ うがうまくいくことがあると感じます。果たして企業や業界団体ごとの施策だけでいい のか、人の流れ、キャリアを考えるうえでも、地域での横のつながりの役割、介護に携 わる関係者全体が話せるような場の役割も考えてよいのではないかと思います。  2つ目は、付属資料2の7頁で、先ほどもご説明がありましたが、「定着率は低くない」 と考えている事業所が訪問系7割、施設系6割と出ています。でも、一方で人手不足と言 っているのをずっと謎に思っていたのです。最近事業所を回りながら、経営も、雇用管 理もしっかりしていて、辞めていくのは定年を迎えたり、結婚・出産や配偶者の転勤の 方だけで、定着率は確かに低くない。しかしその補充がどうしてもできない。だから定 着率は決して低くないわけだが、人手不足感はあるのだという方々にお会いすることが 多く、謎の実態はこういうことなのかもしれないと思いました。確保・定着につながる 様々な努力を経営者も現場の管理者もつくしても、採れない。補充できない。そういう 事業所があるということも、やはり大事にしなくてはいけない。その意味で、介護とい う仕事全体の人材確保力を高めるための情報発信のあり方を、企業レベル、マスコミも 含めて、もっと考える必要があると思います。定着促進だけではなくて、新しい人を介 護の業界に呼んでくるための方策を考えるべきというときに、もちろん報酬の在り方な どの検討もここに含まれます。  3点目は、資料4の最初に「やりがいを持って働き続けられるような」と示されていま したが、介護の仕事に就いている人たちの働きがいというときに、利用者との関係は欠 かせないものです。示された資料にも一部掲載されていましたが、働く上での悩み・不 安・不満として、特に訪問系で、定められたサービス以外のことを要求される、利用者 は何をやっても当然だと思っているといったことがあげられる割合が、とても高いので す。訪問に限らず施設でも、介護職は社会的評価・理解が得られていないという声は強 い。社会的評価には、いろいろな意味が含まれていると思うのですが、利用者、私たち 一人ひとりから見て、介護職はどういう役割なのかが、まだなかなか明確になっていな い。介護の仕事をする人たちがどういう目的でどういう役割を担っていて、私たち一人 ひとりにとってどういう存在なのか、しっかりと検討・発信して、利用者の側の理解を 高めていくことは、介護職のやりがいを伸ばし、損なわないためにも重要ではないかと 思います。以上です。 ○大橋座長 データ面で、もう少し男女別に取ったりすることはできますね。 ○佐藤介護労働対策室長補佐 可能です。 ○大橋座長 ですから、それは次回出していただきたい。できるだけのことをしていた だきたいと思います。 ○佐藤介護労働対策室長補佐 次回は1週間後ですから、ちょっと時間が。 ○大橋座長 すみません。 ○駒村委員 この資料4の2つ目の時間的な視野というか、どこまで見ているかは、ここ に書いてあるように2014年、5、6年後というところを当面の視野として考えるというこ とでよろしいかということ。2つ目は、4は非常に深い内容だと思うのです。どう理解す るかということなのですが、いままで労働市場に余裕がある時期は、介護財政制約、公 費と保険料から報酬が決められて、その中で賃金という話になったと思うのですが、い よいよ人手不足になってくると逆になって、特に一般職との有効求人倍率の関係を見て も、新しい方が来てくれるかどうかも含めて、相対的な賃金が影響を与えてくるわけで すから、今度は財政制約のほうから賃金が決まっていた話から流れが逆になり始めて、 人を確保するためには賃金を上げなければいけない。そうすると、介護報酬そして財政 にもというように、流れが逆になってくるわけですね。そういう中で、この議論、特に 生産性の向上をどう考えていくかという話になってくるわけですが、ここで言う生産性 というのは、一体どういう意味で、介護における生産性というのはどういう意味で理解 して、これは質も含めての意味合いと考えているのかどうか。つまり、認知症の方も含 めて、高いレベルの介護業務が求められてくることもあるわけですね。そういう部分も きちんと評価をするものを含めて、生産性の向上ということをおっしゃっているのか。 ここはさらっと書いてあるわりには、内容は非常に重要なことを書かれているのかと思 うのですが、その辺どう考えておられるか。質も含めてとか、報酬にも考え方としては 当然流れは逆になってくるということも意味して、この4はあるのか、確認したいので すけれども。 ○小川雇用政策課長 4の生産性の向上については、我々も確かにややチャレンジング と思いながら書いたところではあるのですが、例えばトヨタの生産性向上でいけば、要 するにベルトコンベアを1秒早くすれば、生産性が上がりますねということだとは思う のですが、介護の場合はどちらかというと、マンアワーで介護報酬が決まってくるとい う世界でしょうから、そういうことはなかなか言いづらいことはあると思います。当然、 駒村委員がおっしゃったように、もちろんその質の向上と。要するに同じマンアワーの 中でやっている人が向上することによって、例えば利用者に対するサービスが向上する とか、あとは実際に行っている人の負荷が減るなどということのプラスの影響があるだ ろうという話があります。ただ、もちろんここにも書いてあるように、当然、介護報酬 の枠組にあるということがありますから、それをどうやってレベルに反映するかはまた 別の問題だとは思いますが、そこまでは我々の研究会の範囲を超えていますので、問題 意識としてそういうことがあるという、制約の中で議論せざるを得ないけれども、そう いうことも考える必要があるのではなかろうかということで、この論点を付け加えさせ ていただきました。 ○駒村委員 メッセージとしては、労働市場の要請としては、当然それを介護報酬のほ うにも何らかの形で反映してもらわないと困る、というインプリケーションになるのか と思うのですけれどもね。 ○小川雇用政策課長 そうなるかもしれませんけれどもね。 ○大橋座長 一応、市場を使ってやる以上は、生産性の向上がないと、どうしても処遇 条件が良くならないので、そういう点では生産性向上というのは非常に重要なテーマだ と思うのです。そこで、私がお聞きしたいのは、介護の仕事というのは、年齢・勤続な どといったものがずっと長くなると、同じ時間でより多くのサービスを被介護者に提供 できるようになるのかどうか。私は介護をしたことがないので、その辺がわからないの ですが、あるいはもうちょっと機械化するとか、そういう可能性があるかどうか。その 辺が非常に大事になってくるのではないかと思うのですが、その辺はどなたに聞いたら いいのでしょうか。 ○河委員 まさにいま座長がおっしゃったところは大事なポイントで、先ほど公務員の 世界の話を例として申し上げましたが、基本的には、かつて公務員社会の中では、介護 の仕事は事務職系の仕事だと認識されていたのは、事実なのです。ということは、逆に 言えばそういう職階制度と組み合わせていく。それが良いかどうかは別として、これは 少なくとも人事院勧告の世界ではそう扱われてきたのは事実です。先ほど申しましたよ うに、医療の世界は基本的に専門職、教育の世界もそうです。専門職俸給表を作ったの は、公務員人事をどうやるかではなくて、この仕事の位置づけを広い意味で人事院はど う考えているだろうかというと、教育や医療の世界、あるいは専門職的なものは、年功 もあるけれども、ある程度専門性のウエイトが高いものではないか。だから、わりと横 に寝るわけですね。  繰り返して言いますが、企業体系をどうするべきかというよりも、その2つの方程式 が違うとすると、2000年で福祉職俸給表を作ることを、人事院勧告を受け、あるいは政 府として決めた厚生省の判断は、基本的には事務職系の考え方から専門職系に替えるべ きではないかということを、政府は認知した、あるいは政府は考えた。正直言って、そ れが6、7年で、公務員世界の中でもまだあまり普及していませんし、世の中でもまだ普 及していないことがあるというのが現状だと思います。ただ、考え方、判断はそのよう にしたという部分は、それが事実かどうかは別にして、歴史的にはそうなってきたとい うことです。  併せてついでに言わせていただくと、これは堀田委員がおっしゃったことと重なるの ですが、先ほど社会福祉法人の歴史の中でということを申し上げた中で、私も社会福祉 法人をいっぱい見てきて、結局、かつて社会福祉法人においては流動化がすごい激しい。 はっきり言って、ろくでもない仕事しかやっていない所は流動化が激しいのです。良い 老人ホームはほとんど人が動かないのです。これは経験的に皆さんもおわかりのところ で、一方、医療の世界は人は動くのですが、20年前からですが、良い病院に看護師は労 働市場で動いていくのです。だから、もし労働市場がうまくできていて、専門職の体系 がうまくできていてやると、そこで人手不足だと言っている病院はたぶんろくでもない 病院なのだろうなと。「うちには良い看護師が集まってもらって、応募が多くて困って るんだよ」というのは、たぶんその院長は「うちの病院は良い病院だとみんな思ってる よ」と。だって、病院の出来・不出来みたいなものは、看護師がいちばんよくわかって いるわけです。看護の世界は、20年ぐらい前にそういう時代がありまして、また最近、 市場が動いてしまっているのでわからないですが、その後15年間ぐらいは、院長は「う ちは人手不足だ」と言わなかったですね。言った瞬間に、「ああ、そうか」とみんなが 思う雰囲気があった。  実は老人介護の世界は、もう同じようなことが起こっているのですが、いま人手不足 だと言っている人たちが自分をどう位置づけていっているかが、正直言って私はよくわ かりません。だから、先ほど堀田委員がおっしゃったことから言えば、誰に聞いて答え たかによって、私はすごく違うと思うのですね。もっと言えば、良い施設長に聞いて答 えたのか、言葉は不適切ですが、悪い施設長に聞いて答えたのか。そこまで分けるつも りはないですが、だから、先ほどの堀田委員のジャンル分けプラスアルファみたいなも のが必要なのかという気がします。その意味では、先ほど小川課長もおっしゃったので すが、また恥を忍んで言うと、数字をきちんと分析の対象にするまでにまだ熟していな い部分があるので、ある程度ぼやっと見て分析する部分と、ここは緻密に分析してもい いだろうという部分を分けないと、聞いた人によって言っていることが全然違っている こともあると思いますので、そこはケース例的に考えていただく部分も必要なのかとい う気がしますが。それから、20年前の看護不足と言われていた時代の分析は、どこかで やっておかれるといいと思います。 ○駒村委員 いまの点で教えてもらいたいところがあるのですが、先ほど座長がおっし ゃった福祉職の賃金体系はどうあるべきかという点については、いまの厚生労働省の見 解は福祉職俸給表というモデルを出したのですけれども。 ○河委員 人事院ですね。 ○駒村委員 しかし、年齢とともに、どう技能が変わっていくか、資格によってどう技 能が変わっていくか、経験によってどう賃金が変わっていくかというエビデンスがある というわけではなくて、先にそれを作ったけれども、エビデンスはやや曖昧な部分もあ る、あるいは先生にお聞きすれば、もしかしたらあるのかもしれません。福祉職の賃金 体系に対する研究は、いまどこまであるのかというのが1点です。  もう1つ、後半でお話があった、労働者が働きやすい施設はサービスの質が良いとい うことであれば、先ほどの介護報酬の話にはこだわるつもりはないのですが、介護サー ビスのアウトプット、アウトカムは測定しにくいわけです。逆に、きちんとしたインプ ットをやっている施設はきっと良いサービスをやっているのだろうから、インプットに 着目した報酬の加算・減算を行うことも処遇改善にはつながるのかという考え方ができ ないか。2点、そういう考えを持っていてもいいのかどうかをお聞きしたいと思います。 ○大橋座長 今後、ヒアリングが随分予定されていますので、その視点から是非いろい ろとヒアリングしていただきたいと思います。 ○堀田委員 賃金に関しては、河委員がおっしゃったように、おそらくまだ社会福祉法 人では福祉職俸給表のようなものを横ににらみながら、勤続年数に合わせて単純に上げ ていくような・・・。 ○河委員 やっていないのです。 ○堀田委員 やっていないのですね。これも、あるいは次回以降お聞きすればいいと思 うのですが、介護の仕事の生産性を求めるのは、単位時間当たりに車が何台できるかと いう問題とはまた別物で、すごく難しいと思っています。おっしゃるとおり、必ずしも 勤続にあわせて、皆同じように能力が上がっていくかというと、それはほかの仕事同様、 必ずしもそうでもないわけです。いかに現場で発揮される具体的な能力を把握して、そ れに合わせた処遇を考えていくか。単純に俸給表を横に見ながらではなくて、仕事ぶり を見ながら賃金に反映させていくか。そういった取り組みをおこなう事業所も増えてき ていますし、業界としても今後さらに仕事ぶりの把握と処遇への反映を検討していくと いうのが、ひとつの方向性ではないかと思っています。  それから、インプットの量でアウトプットを類推していいのか、それはいつもとても 悩まされるところなのですが、職員が定着している事業所は、職員と利用者のなじみの 関係ができて良いケアを提供していて、地域からの評判と信頼を得て、利用者も集まり、 職場の魅力が伝わって職員も集まってくるという循環があると思いたいのです。「介護 サービスの質」と、よく話されますが、それを測る客観的な指標は、介護分野において は日本ではまだ確立していません。インプットの量を報酬に反映することについての意 見は控えたいと思いますが、アウトプット、つまり介護サービスの質を測定する指標が 確立していない現状では、インプットが充実していればサービスがしっかりと提供され ていて、健全な市場であれば、結果的に利用者がそこに集まってきて、経営も安定する だろうと考えるしか、難しいのではないかと思います。 ○河委員 駒村委員のおっしゃった2点について、私なりに思ったのは、あとのほうの インプットの話は、もう先生などもおわかりのように、いわば措置費時代の特別養護老 人ホームは、まさにそうやって計算してきたわけですね。医療保険は、どちらかという とアウトプットの経営論で評価して、報酬を考えてきた。つまり、措置費時代と医療保 険と報酬の方程式が違っているのは事実なので、それをどう考えるべきかというのは、 基本的に大問題だと。これは介護だけに限らずです。だから、その議論はたぶんどこか で必要だと思いますが、あまりそれに突っ込んでいくと、まさに社会保険とは何かとい う議論になるのです。ただ、そういうところをどっちから計算するべきかというのは、 ざっくばらんに言うと、措置費時代、あるいはいまの社会福祉法時代の計算式と医療保 険の計算式が意味が違っていることをどう考えるかという問題は、常にあると思います。  もう1点、先ほどありました効率性の議論の中で、これは小川課長もちょっとおっしゃ ってくださったので、私もそうだと思うのですが、いま先生たちがおっしゃっている効 率性の議論よりも、福祉の世界の効率性というのはほとんど移動距離なのです。だから、 ざっくばらんに言うと、ある半径何キロの中で、自給自足できると、非常に効率的にな る。もっと言えば、遠距離移動すると、非効率になると。非常にシンプルで、その関数 がいちばん大きいのです。そうすると、効率的にするためにいちばん安直なのは、利用 者を遠くまで振り回すのは、供給側から言うといちばん効率が良いのです。もっと言え ば、大規模施設をどんどん作って、そこに居住を移してもらう。病院でも、3時間待って 3分診療で、3時間はコストになりませんから、3分診療だけがコストになっていくわけで、 それをやれば効率的な病院運営ができるわけですが、そこには価値判断というか、政策 論みたいなものが必要だと思うのです。  そこも、小川課長も慎重におっしゃったように、効率の関数だけで答えを出すと、た ぶん全然別な政策目的、政策が実現してしまうとなると、話が違うではないかと。ただ、 私は効率性というのは極めて大事なことだと思っています。要するに、パブリックな費 用を使ってやっている事業である以上は、効率的でなければいけないというのは当たり 前だと思いますが、その結果、目的がずれないようにすることに留意しながら、効率性 を求めるべきだと。そこは私はおっしゃるとおりだと思います。 ○堀田委員 あとは訪問介護で言うと、訪問ルートをどう効率化するか、サービス提供 地域をどれくらいに設定するかというのも大きいわけですが、「生産性」の定義は難し いので、一人ひとりの職員の能力をどう高めて、より良いサービスにつなげるか、どの ように能力開発を促進するかというように捉えれば、わかりやすく議論しやすいかとい う気はします。 ○北浦委員 生産性の議論は、私の所もサービス業全体の生産性向上というと、これは よくわからないのです。これもその中の1つということで、そういう中の応用できる範 囲もあると思うのですが、おっしゃったようにかなり施設的なもの、設備的なものによ って影響を受ける部分も大きいのと、場合によってはサービス類型とかなりセグメント をはっきりさせて、専門化させることによって効率を得るなど、業務方法の改善でかな り変わってしまうところはあると思うのです。ただ、これはもう介護サービスの在り様 の問題にかかわってしまいますので、介護保険はどうあるべきかという議論になって、 なかなか大問題だろうと思います。  そういった意味では、おっしゃったように個人の主体のほうですね。そこの能力をい かに高めるかというところの修正・賛成というように論じたほうが、この研究会として はいいのではないかと私も思います。  そのように付属資料の中を見ると、先ほどの介護保険が改正されたあとに、業務量が 増えたという見解はものすごく多いわけです。これは、はっきり言って人間があまり増 えなければ、生産量が増えているわけですから、生産性が上がっているわけなのです。 これはわかりませんが、別にインプット・アウトプットを対比しているわけではないの ですが、そういう中において業務量が増えてきている。その増えてきていることが、ど のような増え方をしているのか。無駄な増え方をしているのか、無理な増え方をしてい るのか、そこのところだけはつかんでおかないと、やはり労働の問題とは言ってもそこ は無視はできないのではないかと思うのです。そういった点で、その辺はヒアリングな どでだんだん見えてくることだろうと思うのですが、そこが1点です。  それから、インプットの問題で言えば、それと関連するのですが、人の数の問題です。 実はいる方の中で、例えば休暇が取れない、あるいは腰痛のために欠勤が多い。いろい ろな意味において、そういったような形で、いる方々が十分働けない状態がある。また、 人員基準ぎりぎりのところでやっているので、例えばシフト勤務する場合においても、 いわゆる欠補要員的なものがありますが、これは製造現場でもそうですが、そういった ゆとりが比較的少なくなってきている。そういったものの中の累積として、いわゆる不 足感が出ている。つまり、不足感というのは、量的に測れるものと心理的なものと、両 方ありますから、やはりその辺を少し実態的に明らかにしていただいたほうがいいので はないかと。  もう1つ言えば、私は賃金は非常に大事だと思うのですが、現場で聞いてみると、賃 金も大事なのですが、賃金以外としての報酬に対して、結構効いている部分もあって、 環境もあるし、あるいは施設内における人間関係、あるいは自分の仕事に対してのリタ ーンというか、誇りというものがどう得られるかなど、いろいろなところで満足感が出 ているところもあります。あまりそっちに流れてはいけませんが、そういった面も含め ていったいどういうところで喜びを感じ頑張ろうとするのかという、いわゆるモチベー ションの議論ですが、そういったところをそれぞれ実態として聞いていくといいのでは ないかと思っております。  1点、気が付いたのですが、細かい話で、付属資料の10-4-2を見ると、施設系の福祉 系の方と、ほかの製造業・卸売・サービス業と、あまり賃金が変わらないのです。これ は、実態としてこうなったのかもしれません。先ほど議論が出たのですが、この資料は 今日は参考資料だと思いますが、表に出すときはよく注意して扱わないと危険だなと思 いました。これを見た人は、大体良い線いっていると大胆に判断してしまうかもしれま せん。そうではないので、読み方も違います。それから、45歳から先の賃金カーブの意 味も、女性の場合はちょっと違います。そのようなところも含めて、もう少し精査して お出しになったほうがいいのではないかと思うのです。 ○佐藤委員 先ほど堀田委員が言われたこととも重なるのですが、我々が議論するとき に、利用者のことを議論しなくていいかということです。施設もですが、特に訪問系を 考えれば、利用者が皆保険制度の仕組みなりをどう理解しているかとか、ヘルパーとい うのはどういう役割をするかを誤解していたりすると、働く上で自分が勉強してきたこ とと違うことを聞くことになると、やはり仕事を続けるのが嫌になってしまうというの はすごい大きいわけです。やはりそこの部分をどうするかを抜きに、働きがいがある仕 事というようにやれるかどうかということです。  もう1つ、生産性にもかかわるのですが、特に福祉の場合1対1の提供ですので、同じ 時間に、みんなに同時にというと、これは人が足りなくなるわけですよ。例えば食事介 助といったとき、同じ時間に同じサービスをみんなに提供してほしいなどというと、こ れは利用者分だけ人がいなければいけない。そうすると、例えば食事介助でも、多少、 不便だけど1時間ずつずらしてくれれば、2カ所行ける。1人で2人に食事介助サービスが できるということもある。でも、これはサービスを下げることになるかもしれないわけ です。その辺を議論しないと、生産性にもかかわるわけですが、事業者みんなが求めて いるものを提供する原則だとしても、サービスの仕組みは、1人が提供する場合が多いと。 時間が固定されてしまうと、マンパワーの確保は実際上難しくなるのです。1つは施設で 集めてしまえばいいということがありますが、その辺は利用者の理解を求める。多少、 不便だけれども、そうしないと全然サービスを得られなくなってしまうことと比較する ぐらいのことをどこかでやらないと、だんだん難しくなるのかなという気もします。 ○大橋座長 先ほど佐藤委員がおっしゃった、施設系で派遣が多いという話ですね。半 分ぐらい。 ○佐藤委員 使っている所が、事業所が。事務ではなくて、介護の職員についてです。 ○大橋座長 それを聞いて、ちょっと不思議に思ったのは、施設介護のほうがより賃金 が低いのですね。より賃金が低い所に、派遣業者が人を送るというのは、ちょっとおか しな現象だなと思うのですが、これはどういうことなのでしょうかね。賃金が低いでし ょう。訪問介護より施設介護のほうが、賃金が全般に低いのですよ。低いにもかかわら ず、派遣会社が施設のほうに人を送るというのは、不思議な現象だなと思うのです。 ○堀田委員 どこに送らなくて、施設に送るということですか。 ○大橋座長 いや、賃金が非常に低い所に送るというのは矛盾しているのではないかと。 ○河委員 若い介護職員の施設系の人件費が低いのは、先ほど申したとおり事務系相場 みたいになっているわけですね。その意味では、派遣の世界は別の市場が動いているの だと思うのです。たぶんそちらのほうが高いはずなのです。 ○大橋座長 そうですよね。高い所から低い所へ送り。 ○河委員 逆です。そういう意味ではなくて、データで出ているところは、施設で働い ている職員の人件費の若い所の給与表みたいなものがわりと低いということが出ている のと、こちらでいまそういう形で行っている人の給料がどうかといったときに、もっと 高い形で行っていると思います。 ○佐藤委員 ですから、そこは調べなければいけないのですけれども。 ○河委員 そこは調べなければいけない。そこはこの給与でやっているのではないと思 うのです。 ○佐藤委員 1つは足りないということ。一時的な欠員補充みたいな利用で、どうして も採れない。派遣会社にお願いして来ていただいているということで、コスト的に派遣 のほうが安いかどうかというのはわからなくて、短期的に見るともしかしたら。もちろ ん手数料込みで計算すると別ですが、結構それなりの金額を払っている可能性はあると 思います。 ○堀田委員 それぐらい不足感が高いということだと思います。特に首都圏ですね。 ○佐藤委員 働く側も、施設よりも派遣であればいいという人もいるようなのです。あ る程度、働く時間など選べるので。 ○河委員 直感ですが、そういう部分で多いのは夜ですよね。 ○佐藤委員 夜勤もあります。その時間帯だけ。 ○河委員 先ほどちょっとおっしゃったように、夜の人員配置の世界が、普通に回すと すごい手薄になるので、そこの部分を補うのは、都心部では非常に多いですね。たぶん そういう部分があるのではないでしょうかね。 ○堀田委員 そうですね。特に有料老人ホームで多いと言われます。 ○佐藤委員 ただ、あまりやる時間がないので。少し分析しようとは思っていました。 ○河委員 そのための研究会ですから、ちゃんとデータで研究するべきだという指摘を したいと思います。 ○大橋座長 今後のスケジュール、あるいは論点等について、今日は論点も結構出して いただきましたが、その点では論点に加えさせていただきたいと思います。スケジュー ルについて、何かご意見はありますか。今後の日程等について、事務局からご説明願い ます。 ○佐藤介護労働対策室長補佐 次回の研究会ですが、業界団体からのヒアリングを予定 しております。日時は4月25日13時から15時、場所は厚生労働省14階の職業安定局第1会 議室で開催することとしております。委員の皆様方、ご参集方よろしくお願いいたしま す。 ○大橋座長 ほかにご意見はありませんか。 ○河委員 私も恥を忍んで申し上げたことと絡むのですが、全労災や生協など、そうい う分野に、ある面で私などと比べてはるかに知識が豊富な方たちで、介護の仕事をして らっしゃる法人があるのです。そういう方たちは、正直言って1つの法人の中でいろい ろな価値がぶつかって、ご苦労されていると思うのです。だから、あまりつるし上げる とかそういう意味ではなくて、要するに言語共通にできる上で、両方の言語を使ってみ て、「こういうことで悩むことがあるんです」みたいなことをお聞きする部分があると、 わりと議論が進むかなと思うところがあります。端的に言えば、全労災などは、両方と もプロみたいな世界ですから、そういう方にお話を聞かせていただくと、言葉がうまく わかりやすいかなという部分があります。生協もややそれに近いと思います。 ○大橋座長 そうですね。向こうもおっしゃりたいことがあるでしょうから、それをう まく聞いてあげてください。それでは、第1回の研究会を終了させていただきます。本 日は、皆さんお忙しい中、どうもありがとうございました。 連絡先 職業安定局 雇用政策課 介護労働対策室係 Tel:03−5253−1111(内線5785) Fax:03−3502−2278