08/04/09 遠隔医療の推進方策に関する懇談会(第2回議事録) 遠隔医療の推進方策に関する懇談会第2回会合(議事要旨) 1.日 時 平成20年4月9日(水) 18:00〜20:05 2.開催場所:厚生労働省5階 共用第7会議室 3.出席者 (1)構成員(敬称略) 金子 郁容(座長)、石田 清信(秋草 直之代理)、内田 健夫、太田 隆正、大山 永昭、川島 孝一郎、久島 昌弘、栗原 毅、仁坂 吉伸、本田 敏秋、本多 正幸、 松原 由美、村瀬 澄夫、和才 博美、國領 二郎 (2)総務省 中田政策統括官、松井官房審議官、鈴木総合政策課長、安藤地域通信振興課長、 青山地方情報化推進室長、市橋自治政策課長、濱田地域企業経営企画室長、中野 調整課課長補佐 (3)厚生労働省 外口医政局長、佐藤指導課長 新木研究開発振興課長、冨澤医療機器・情報室長 (4) 経済産業省 岡田商務情報政策局長、渡邊医療・福祉機器産業室長 4. 配布資料 資料1 「遠隔医療の推進方策に関する懇談会」第1回議事要旨 資料2 遠隔医療の類型と取組例 資料3 仁坂構成員発表資料 資料4 本田構成員発表資料 資料5 太田構成員発表資料 資料6 本多構成員発表資料 資料7 今後のスケジュール(案) 5. 議事概要 (1) 開会  ○金子座長より、第1回懇談会の概要と議論の枠組みについて説明された。  ○要旨は下記の通り。 ・本懇談会は、医師不足等、地域医療の充実という喫緊の課題に対応した遠隔医療 技術の活用方法とその推進方策を検討することが目的である。 ・地域医療へのニーズ把握、課題解決に資する遠隔医療モデルの内容、当該遠隔医 療モデルの推進上の課題、それを踏まえた実証実験プロジェクトの内容等を検討 していきたい。 ・具体的には「救急医療サービス」等に特化するのではなく、地域に住み続けるた めの「慢性期医療サービス」や「健康管理サービス」を中心に検討していきたい。 ・遠隔医療の定着には「技術イノベーション」と「社会イノベーション」が必要だ が、技術を用いて地域の活性化につながる「社会イノベーション」に重点をおき たい。 ・なお遠隔医療の類型には、従来の「医対医」「医対患者」に加え、患者・住民・医 療関係者による「コミュニティ」の相互信頼性のもと医療サービスを提供する型 があると考える。 (2)遠隔医療の類型と取組例 ○株式会社NTTデータ経営研究所ライフサイエンス戦略チーム本多氏より、遠隔医 療の定義と想定される類型の説明、類型に基づいた遠隔医療実施例の概要説明がさ れた(資料2参照)。 ○要旨は下記の通り。 ・遠隔医療の定義には「映像技術を含むか否か」「医療行為の範囲か否か」という点 で国内外に様々なものがある。 ・遠隔医療の類型として、(1)B to B:医療関係者間(医対医)(2) B to C:医療関 係者と患者間(医対患)の2つがあり、さらに地域に遠隔医療を普及させる上で 鍵になると考えられる(3)C to C:コミュニティ形成型(地域住民(患者・医師) が主体で実施)を挙げている。 ・上記類型に基づき、遠隔医療実施例を紹介。 (3)和歌山県における地域医療の現状・課題と遠隔医療普及への期待 ○仁坂構成員より、和歌山県の地域医療の現状と課題、遠隔医療への取り組み状況と 普及への課題について説明がされた。(資料3参照) ○要旨は下記の通り。 ・和歌山県の人口10万当たり医療施設従事医師数は全国平均を上回るが、病院勤務 医が占める比率は低い。特に、拠点病院である県内公的病院の医師の減少は深刻で、 一方、救急患者受入等の増加により病院勤務医の業務負担が増大しており、現在は和 歌山県立医大をはじめ関係者の支援で診療体制を維持している状況である。これまで、 地域拠点病院等の医師確保、へき地医療体制の確保、救急医療体制の確保等に取り 組んでいる。 ・遠隔医療に関しては、(1)県立医大病院と拠点病院(6拠点)間の遠隔病理画像診断、 (2)県境を越えた救急医療時の遠隔放射線画像診断、拠点病院とへき地診療所間の遠 隔放射線画像診断、(3)在宅慢性期疾患患者に対するテレビ電話を活用した在宅医療 支援に取り組んでいる。 ・遠隔医療を適切に推進するための課題等としては、(1)遠隔医療システム運営の経営基 盤の強化、(2)保険制度上の対象範囲等の検討、(3)情報セキュリティの確保、がある。 今後進めていくには数億円必要と考えており、特に経費の回収が重要な課題である。 (4)遠野市助産院の創設 ○本田構成員より、遠野市の産婦人科医不在への取り組みについて説明がされた。 (資料4参照) ○要旨は下記の通り。 ・遠野市は平成14年以降出産を扱う医療機関が無く、妊婦の不安解消、負担軽減が 課題になっていた。そこで公設公営の助産院を設置して、遠隔妊婦健診、妊婦相 談・健康教育等を平成19年12月より先行開始した。遠隔妊婦健診では9医療機 関の協力を得ており、妊婦やその家族の安心・安全に寄与している。 ・経済産業省「地域医療情報連携システムの標準化及び実証事業」のモデル事業と して実施し、新聞等にも数多く取り上げられている。 ・課題としては、運営費の支援、地域の取組を情報共有、遠隔医療の対象範囲の拡 大等が求められる。とりわけ財政状況の厳しい自治体にとって、助産師の雇用等 運営費の負担が大きく、国として産科医療過疎地域に対する何らかの支援制度・ 仕組みを整備いただきたい。 (5)新見地区在住患者医療介護へのIPTV電話利用の試み−中山間地の光ファイバー 網の医療への応用研究− ○ 太田構成員より、新見市の遠隔在宅医療支援への取り組みについて説明がされた。 (資料5参照) ○ 要旨は下記の通り。 ・新見市は典型的な中山間地域で、往診は時間が係るうえ冬場は雪のため困難であ る。また、医師不足、現職医師の高齢化等により救急指定病院が無い。 ・そこで市長の推進する「ラストワンマイル事業」(管内全世帯へ光ファイバー接続 可能化)にあわせ、地域で遠隔医療の実証実験に取り組んでいる。在宅療養患者 宅に訪問看護師がIPTV電話の通信端末を持参し、医師と通信を行う。各家庭に 設置するよりもローコストだが、予算が不足しており、端末開発費用を一部医師 が持ち出しで負担している。今後は入院患者と患者家族間の通信、介護との連携 や救急医療への応用を検討している。 ・課題として、いつでもどこでも誰でも簡単な機器の開発や医療機関側への認識の 向上があり、普及のために患者負担が発生しないような方法を国に要望したい。 (6)遠隔医療・地域医療連携について ○本多構成員より、長崎における遠隔離島医療支援の取り組み等について説明がされ た。(資料6参照) ○要旨は下記の通り。 ・長崎県では離島医療支援として、国立長崎医療センターと離島中核病院を結ぶ遠 隔医療診断支援と、長崎大学附属病院と診療所を結ぶコンサルテーション支援を 実施している。 ・実施した結果、顔の見える関係の構築(人的連携)と、運用経験の共有化が必要 であることが分かった。 ・今後の遠隔医療推進のためには、セキュリティ技術や認証基盤の確立や、離島医 療圏組合等の現場のニーズを踏まえたシステムの更新、さらに医師の遠隔教育コ ンテンツとの組み合わせが必要であると考える。 (7)意見交換 ・D(医師)toD、DtoP(患者)との区分に加え、DtoN(看護師)の仕組みがある。 ・他のコメディカル(ケアマネジャー等)とのコミュニケーションにも有効である。 ・遠隔医療に係るコスト負担の考え方を整理すべきである。コスト負担の考え方に は自己負担、医療機関の負担、保険(診療報酬)、補助金等があるが、診療報酬と すると一定の患者負担が生じるが、補完的医療ということもあり、患者にとっ てメリットが見えづらいので、費用を考えると導入は非常に難しいのではない か。 ・遠隔医療のコスト負担に関する重要な視点は、遠隔医療の有用性を踏まえて医療保険 制度における位置づけを明確化するということではないか。初期費用については国また は国が命じて県が負担するのもひとつのやり方ではないか。 ・医師対医師の場合、遠隔医療のメリット(有効性)は患者にとっては見えないが、 おそらくメリットは大きいのではないか。 ・対面診療が望ましいのは勿論だが、寝たきり患者の相談等、在宅医療の推進には 遠隔医療は有益である。 ・医師対医師の遠隔医療によって患者に生じる付加価値を評価する仕組みが、イン センティブとして必要である。 ・遠隔医療において事故が発生した場合のリスク、責任問題を整理する必要がある。 ・地域医療に対する妊産婦や家族の不安は切迫した問題であり、自治体としては最 終的にリスクを負ってでも、遠隔医療の実施の必要があるのが現状である。 ・コスト負担、リスク、安心・安全のバランスを考慮する必要がある。 ・遠隔医療による診断時の質の担保が必要である。 ・フリーアクセスを原則とする国民皆保険の制度下で、遠隔診療のシステムを地 域全体に取り入れてしまうと、かえって生活している人の縛りにならないか。 遠隔医療のネットワークから脱退したい人が多数出てきた場合かけたコストが無 駄になるのではないかという問題がある。また、患者の求めに応じて必要な医療 を提供する一方で、患者の私生活に干渉しないというバランスを遠隔医療でどう やって実現するかが重要である。 ・地域医療は切迫しており、その解決策として遠隔医療を求めている。遠隔医療に はまだ様々な課題があるが、当懇談会でその方向性が示されることを期待する。 ・コミュニティの資源を活用することで医師の負担を軽減するような仕組みも必要 ではないか。 ・地域医療に対する住民への医療に対する啓発も遠隔医療の担う役割である。 ・各事例調査に関して、メリット、費用、利用者の負担、補助金の状況についても 調査してほしい。 (8)今後のスケジュール(案)について ・事務局より、資料7に沿って今後のスケジュールを説明した。 ・次回会合は、平成20年4月25日(金)13:00から総務省にて開催する。 以上