08/04/08 労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会第30回議事録            第30回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会          日時 平成20年4月8日(火)          10:30〜          場所 厚生労働省共用第7会議室 ○平野部会長  ただいまから、第30回労災保険部会を開催いたします。本日は那須委員、内藤委員、平 山委員がご欠席です。議事に入る前に、事務局に人事異動がありましたので、自己紹介を お願いしたいと思います。 ○主任中央労災補償監察官  4月1日付で、主任中央労災補償監察官を拝命いたしました渡辺でございます。どうぞ よろしくお願いします。 ○平野部会長  それでは本日の議事に入ります。本日の議題は、「行政不服審査法の施行に伴う関係法律 の整備等に関する法律案(労働基準法、労働者災害補償保険法及び労働保険審査官及び労 働保険審査会法の一部改正関係)要綱について」です。本件は厚生労働大臣から労働政策 審議会会長あての諮問案件ですので、事務局よりご説明いただきたいと思います。 ○労災管理課長  まず要綱を読み上げた上で、内容をご説明させていただきます。 ○労災管理課長補佐  厚生労働省発労基第0408001号。労働政策審議会会長、菅野和夫殿。別紙「行政不服審 査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案要綱(労働基準法、労働者災害補償保 険法及び労働保険審査官及び労働保険審査会法の一部改正関係)」について、貴会の意見を 求める。平成20年4月8日。厚生労働大臣、舛添要一。  別紙、行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(労働基準法、労 働者災害補償保険法及び労働保険審査官及び労働保険審査会法の一部改正関係)要綱。  第1.労働基準法の一部改正。業務上の負傷、疾病又は死亡の認定、療養の方法、補償金 額の決定その他補償の実施に関する行政官庁の審査及び仲裁の結果に対する不服の申立て は、労働保険審査会(以下「審査会」という。)に行うことができるものとすること。  第2.労働者災害補償保険法の一部改正。1.保険給付に関する決定に不服のある者は、再 調査の請求をし、その決定に不服のある者は、審査会に対して審査請求をすることができ るものとすること。  2.保険給付に関する決定に不服のある者は、再調査の請求をすることができる旨が教示 されなかった場合、再調査の請求をした日から2月を経過しても、当該再調査の請求につ き決定がされない場合その他再調査の請求についての決定を経ないことにつき正当な理由 がある場合は、再調査の請求についての決定を経ないで、審査会に対して審査請求をする ことができるものとすること。  3.保険給付の決定の取消しの訴えは、審査請求がされた日から3月を経過しても裁決が ないときその他裁決を経ないことにつき正当な理由があるときを除き、審査請求に対する 審査会の裁決を経た後でなければ、提起することができないものとすること。  4.その他、所要の規定の整備を行うものとすること。  第3.労働保険審査官及び労働保険審査会法の一部改正。1.題名。題名を「労働保険に係 る処分についての不服審査等に関する法律」に改めるものとすること。  2.労働保険審査官の設置に係る規定の削除。労働保険審査官の設置に係る規定を削除す るものとすること。  3.再調査の請求。(1)標準審理期間。再調査の請求の対象となるべき処分の権限を有す る行政庁は、当該再調査の請求がその事務所に到達してから当該再調査の請求に対する決 定をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるものとすること。  (2)再調査の請求期間。再調査の請求は、正当な理由があるときを除き、処分があった ことを知った日の翌日から起算して3月を経過したときは、することができないものとす ること。  (3)口頭による意見の陳述。処分庁は、再調査の請求人又は利害関係者の申立てがあっ たときは、意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる場合を除き、当該申 立てをした者に口頭で意見を述べる機会を与えなければならないものとすること。  (4)文書その他の物件の提出。再調査の請求人並びに利害関係者及び(6)により指名 された者は、証拠となるべき文書その他の物件を提出することができるものとすること。  (5)審理のための処分。処分庁は、審理を行うため必要な限度において、再調査の請求 人若しくは利害関係者若しくは(6)により指名された者の申立てにより又は職権で、文書 その他の物件の提出を命ずる等の処分をすることができるものとすること。  (6)関係労働者及び関係事業主を代表する者の指名。厚生労働大臣は、再調査の請求に 関し、処分庁に対し意見を述べさせるため、都道府県労働局につき、労働者災害補償保険 制度に関し、関係労働者を代表する者及び関係事業主を代表する者各2人を、関係団体の 推薦により指名するものとすること。  (7)その他。再調査の請求の方式、本案の決定等について所要の規定を設けるものとす ること。  4.審査請求。(1)審査会。労働者災害補償保険法の規定による審査請求の事件を取り扱 わせるため、厚生労働大臣の所轄の下に、審査会を置くものとすること。  (2)関係労働者及び関係事業主を代表する者の指名。厚生労働大臣は、審査請求に関し、 審査会に対し意見を述べさせるため、労働者災害補償保険制度に関し、関係労働者及び関 係事業主を代表する者各6人を、関係団体の推薦により指名するものとすること。  (3)審査請求期間。審査請求は、正当な理由があるときを除き、原処分に係る再調査の 請求についての決定があったことを知った日の翌日から、起算して2月を経過したときは、 することができないものとすること。  (4)審査請求の手続の計画的進行。当事者及び(2)により指名された者並びに審査会 は、簡易迅速かつ公正な審査の実現のため、審査請求の手続において、相互に協力すると ともに、審査請求の手続の計画的な進行を図らなければならないものとすること。  (5)意見の陳述等。イ.当事者及びその代理人は、審査期日に出頭して意見を述べるこ とができるものとすること。ロ.意見の陳述に際し、当事者(処分庁を除く。)及びその代 理人は、審査長の許可を得て、審査請求に係る事件に関し、処分庁に対して、質問を発す ることができるものとすること。  (6)文書その他の物件の提出。審査請求人並びに処分庁、利害関係者及び(2)により 指名された者は、証拠となるべき文書その他の物件を提出することができるものとするこ と。  (7)審理のための処分。審査会は、審理を行うため必要な限度において、当事者若しく は(2)により指名された者の申立てにより又は職権で、文書その他の物件の提出を命ずる 等の処分をすることができるものとすること。  (8)特定審査請求手続の計画的遂行。審査会は、審査請求に係る事件について、審査す べき事項が多数であり又は錯そうしているなど事件が複雑であることその他の事情により、 迅速かつ公正な審査を行うため、(6)及び(7)の審査請求の手続を計画的に遂行する必要 があると認める場合には、期日及び場所を指定して、当事者を招集し、あらかじめ、これ らの審査請求の手続の申立てに関する意見の聴取を行うことができるものとすること。  (9)当事者等による物件の閲覧。当事者及び(2)により指名された者は、裁決がある までは、審査会に対し、(6)又は(7)により提出された文書その他の物件の閲覧を求める ことができるものとすること。  (10)その他。イ.3の(1)の標準審理期間等に係る規定は、審査会が行う審査請求の 手続について準用するものとすること。ロ.審査請求の方式、本案の裁決等について、所要 の規定を設けるものとすること。  5.その他。その他所要の規定の整備を行うものとすること。  第4.附則。1.施行期日。これらの法律は、行政不服審査法の施行の日(注)から施行す るものとすること。(注)行政不服審査法の施行期日は、公布の日から起算して2年を超え ない範囲内で政令で定める日とされている。  2.経過措置。これらの法律の施行に関し必要な経過措置を定めるものとすること。 ○労災管理課長  労働保険審査制度の見直しについては、これまでもこの部会で何回かご説明し、ご意見 を賜ったところですが、今般、法案要綱という形で諮問させていただいたということです。 改めて行政不服審査法自体の概要から、まずご説明させていただきます。参考4をご覧く ださい。行政処分に対する不服申立てについての一般法として、行政不服審査法がありま す。今回、その見直しは総務省で行います。それに伴って労働保険審査制度についても、 その整合性を図るために見直しを行います。  まず大きな1番は、手続の一元化です。現在の行政不服審査法においては、異議申立て と審査請求という2種類の不服申立てがあるわけですが、手続保障のレベルにおいて、異 議申立てが若干劣っているため、今後は審査請求に一本化いたします。  審理の1段階化については、現在、特別な場合は再審査請求がありますが、それを廃止 して1段階化するということです。ただ、この※にありますように、大量に行われる処分 などについては、審査請求の前段階として、「再調査の請求」を個別法で設けることを認め ることとする、とされております。労働保険あるいは社会保険、税金などは大量に行われ る処分ということで、再調査の請求を設けることとしております。  大きな2番目は、審理の客観性・公正性の確保です。行政不服審査法では審査請求につ いて、処分に関与した者以外の者を審理員に指名いたします。さらに行政不服審査会を総 務省に置き、ここに諮問した上で審査請求の裁決を行うことになっております。労働保険 などについては、すでに労働保険審査会という第三者機関がありますので、基本的にはそ ちらで対応いたします。  大きな3番目は、審理の迅速化について。1つ目は標準審理期間を設定するということ で、審査請求から裁決までの標準的な期間を定めます。審理手続の計画的な遂行というこ とでは、複雑な事案について迅速・公正な審理を行うために、審理手順の整理などを行い ます。審査請求期間の延長については、現在は処分があったことを知った日から60日とな っておりますが、それを3カ月に延長いたします。行政不服審査法の施行期日は、公布の 日から2年以内で政令で定める日とされております。  この施行に伴う関係法律の整備については、各省の法律を整備法という形で一括して改 正します。参考1に戻ってください。労働保険審査制度の改正の趣旨ですが、いまの行政 不服審査法の改正との整合性を図るために、労働保険の不服審査制度について、所要の見 直しを行います。  審理の1段階化については先ほどもありましたように、大量に行われる処分ということ で、まず保険給付に関する決定に不服のある者は、原処分をした行政庁に対して、再調査 の請求をすることができます。それを審査請求の前段階でやります。再調査の請求は、行 政不服審査法の審査請求期間の延長と横並びで、処分があったことを知った日の翌日から 起算して3カ月を経過したときは、することができないということで、3カ月間という期 間となっております。  審査請求については、再調査の請求を経た上で、さらに不服のある者は、労働保険審査 会に対して審査請求をすることができます。審査請求は、原処分に係る再調査の請求につ いての決定があったことを知った日の翌日から起算して2カ月という期間になっておりま す。  審査会における審査の迅速化ということでは、行政不服審査法の見直しとの並びで、審 査の迅速化のための措置を講じます。1つ目は、標準審理期間を設定いたします。2つ目に、 特定審査請求手続の計画的遂行というのは、先ほどの審理手続の計画的な遂行と横並びで、 複雑な事案について迅速・公正な審査を行うために、審理のための処分等を計画的に遂行 する必要がある場合に、当事者を招集して意見聴取等を行います。さらに、当事者等によ る物件の閲覧については、当事者と参与が審査会に対し、提出された文書その他の物件の 閲覧を求めることができます。施行期日は、行政不服審査法の施行日と合わせることにな ります。  さらに要綱について説明させていただきます。別紙をご覧ください。併せて参考2で、 「改正による主な変更点」という一覧表がありますので、そちらもご覧いただければと思 います。第1が、「労働基準法の一部改正」です。業務災害について労使間で争いがあった 場合は、行政官庁の審査・仲裁が行われることになっております。さらに、それについて 不服があった場合、現在は労働者災害補償保険審査官に対して、不服の申立てをすること になっておりますが、審査官が廃止されますので、不服の申立ては労働保険審査会に対し て行うように改めます。  第2が、「労働者災害補償保険法の一部改正」です。まず1番ですが、保険給付に関する 決定に不服のある者は、再調査の請求をし、その決定に不服のある者は、審査会に対して 審査請求をすることができるものとすることとなっております。参考2のいちばん上にあ りますように、現在は審査官に対して審査請求をして、審査会は再審査請求ということに なっておりますが、改正後は処分庁に対する再調査の請求、審査会に対する審査請求とい う形に変わります。  第2の2が、決定が遅延した場合の手続です。これを参考2で見ていただくと、現在は 審査請求をした日から3カ月を経過しても審査請求の決定がないときは、再審査請求に移 行できるという形になっておりますが、再調査の請求をすることが教示されなかった場合 や、再調査の請求をした日から2カ月を経過しても決定がなされない場合等は、再調査の 請求についての決定を経ないで、審査会に対する審査請求を行うことができます。現在、 審査請求の場合は3カ月ということになっていますが、再調査の請求はより迅速化を図る ということで、2カ月を経過しても決定がない場合は、審査請求に移行できるということ です。  2頁の3は、取消訴訟の関係です。これも参考2の上から3つ目にあります。現在は再 審査請求がされた日から3カ月を経過しても裁決がないときその他正当な理由があるとき は、取消訴訟の提起が可能となっております。これについては、審査請求がされた日から 3カ月を経過しても裁決がないときその他の場合に取消しの訴えが可能です。基本的には 再審査請求と審査請求等が変わっているというところです。その他、若干形式的な規定の 整備があります。  第3が、「労働保険審査官及び労働保険審査会法の一部改正」です。1が、労働保険審査 官が廃止されますので、題名も「労働保険に係る処分についての不服審査等に関する法律」 と改めます。  2が、労働保険審査官の設置に係る規定を削除いたします。  3が、再調査の請求です。再調査の請求についても標準的な審理期間を定めるというの が(1)です。  3頁の(2)が、再調査の請求期間です。これも参考2の下から2段目に、審査請求等の 期間というのがあります。現在は審査請求は処分のあったことを知った日の翌日から起算 して60日以内となっておりますが、処分のあったことを知った日の翌日から起算して3 カ月です。これは行政不服審査法の請求期間が3カ月に延びたことに伴って、それと合わ せるということです。  (3)が、口頭による意見の陳述です。現在、再調査の請求については請求人なり、利害 関係者の申立てがあったときに、口頭で意見を述べる機会を与えなければならないとなっ ております。  (4)が、文書、その他の物件の提出です。これも再調査の請求人、利害関係者、参与は、 証拠となる文書、その他物件を提出できることとなっております。  (5)が、審理のための処分です。処分庁は、必要な限度において、請求人、利害関係者 あるいは参与の申立てにより又は職権で、文書その他の物件の提出を命ずるといった処分 もできます。これらの手続は現在、審査請求の場合に同様の手続があるわけですが、再調 査の請求のときも、同じように規定するということです。  4頁の(6)にいきます。現在、審査請求の際は各都道府県労働局に労使各2名の、いわ ゆる参与を置いて、意見の聴取を行っております。これを再調査の請求についても同様に、 各労働局ごとに労災保険制度について、労使各2名を関係団体の推薦で、参与として任命 いたします。  (7)がその他です。再調査の請求の方式については、文書あるいは口頭のどちらでもい いということです。それから本案の決定ですが、再調査の請求の場合は取消しだけではな くて、もともとの原処分庁が行いますので、処分の変更も含めて決定できるという形で規 定いたします。  次に、4の審査請求の関係です。(1)の審査会については、現在は再審査請求の事件を 取り扱わせることになっておりますが、改正後は審査請求の事件を取り扱わせることにな ります。  (2)も参与についてです。現在、労災保険制度の再審査請求については、労使各6名を 参与ということで任命しております。これについては現在と同様に、各6名を関係団体の 推薦によって指名することにしております。  (3)の審査請求期間ですが、現在、再審査請求は決定書の謄本が送付された日の翌日か ら起算して60日以内となっております。今回はまず再調査の請求があって、それについて 決定があったことを知った日の翌日から起算して2カ月となっています。全部月単位で統 一したので、2カ月となっております。実質的に現行の再審査請求と変わらない形です。  (4)が、審査請求の手続の計画的進行です。これも行審法との並びで、迅速・公正な審 査のために、当事者及び参与、あるいは審査会が相互に協力して、計画的な進行を図ると いうことです。  (5)が、意見の陳述等です。まず当事者及び代理人は、審理期日に出頭して意見を述べ ることができるということで、これは現在の審査会の再審査請求についても同様です。た だしロにありますように、意見の陳述に際して、当事者及びその代理人は、処分庁に対し て、質問を発することができるということを、行政不服審査法の並びで新たに設けており ます。  6頁の(6)の文書その他の物件の提出については、請求人、処分庁、利害関係者、参与 は、証拠となる文書、その他の物件を提出することができます。  (7)の審理のための処分ということでは、審査会が必要な限度において、当事者あるい は参与の申立てによりあるいは職権で、文書その他の物件の提出を命ずる等の処分をする ことができます。  (8)が、特定審査請求手続の計画的遂行です。これも行政不服審査法等の並びで、新た に設けているものです。特に、審査すべき事項が多数であるとか錯そうしているといった 複雑な事案について、迅速かつ公正な審査を行うために、文書その他の物件の提出、審査 会による物件の提出の命令といったものを計画的に遂行する必要がある場合に、当事者を 招集して、そういう手続についての意見を聴取し、計画的な遂行を図っていくという規定 を設けております。  (9)が、当事者等による物件の閲覧です。これも今回、新たに行政不服審査法との並び で新設するものです。当事者あるいは参与が審査会に対して、(6)(7)で出された文書、 その他物件についての閲覧を求めることができるという規定を設けております。  7頁の(10)が、その他です。審査会における審査請求についても、標準審理期間等を 設けるといったことで、再調査と同じような形で準用いたします。審査請求については文 書で行います。本案の裁決等については、所要の規定を設けます。さらに形式的な規定の 整備も行います。  第4が附則です。施行期日は、行政不服審査法の施行の日ということで、それが公布の 日から起算して2年を超えない範囲で政令で定める日ということです。  8頁の2が経過措置です。必要な経過措置を定めるということですが、施行前にすでに 審査官に対して審査請求がなされている事案については、そのまま審査請求、再審査請求 という流れで処理することにしております。施行後に再調査の請求がなされた事案からは、 新しい法律で処理していくことになります。以上です。 ○平野部会長  ただいまの事務局からの説明について、皆さんからご意見を伺いたいと思います。 ○長谷川委員  今度示された要綱ですが、基本的には二審制を一審制にして、迅速化を図るというのが 改正の趣旨だと思うのです。参考3を見ると今回の労災保険の場合、いままでの二審制が、 労働基準監督署長に再調査請求をして決定するというようになります。しかし、この構図 は私の目から見ると、いままでと同じ二審制ではないかと思うのです。厚生労働省の説明 だと、参考4の一般的な行政不服審査法の※の所にありますように、大量に行われる処分 については、審査請求の前段階として、再調査の請求を個別法で設けることを認めるよう になっています。これは厚生労働省の解釈だと思うのですが、これが二審制なのか一審制 なのか。私は、これでも二審制ではないかと思うのです。これが一審制だと言える根拠は 何なのかというのをお聞きしたいのです。  それから、現在の労働保険審査会は中央に置かれていますよね。もし迅速化を図るとい うことであれば、中央に置くよりは、現場に近い地方に設置したほうがいいのではないか と私は考えます。なぜ中央に労働保険審査会を置くのですか。私は、都道府県労働局の局 長の所に出して地方でやったほうが、労働者も東京に来る交通費や宿泊費といった費用を 考えたら安くて済むし、現場に近いほうがいいのではないかと思っているのです。実際に 現状の処分の裁定の中身を見ても、地方に置いたほうが、かえっていいのではないかと思 うのです。なぜ中央なのか、中央に置くというその根拠は、行政不服審査法一般法との関 係なのか、他の行政不服審査との並びなのか、ここを聞きたいと思います。  もし、中央に労働保険審査会を置いた場合に、これから計画審査とか、いろいろなこと をやらなければいけませんし、それでも迅速処理をしなければいけないわけです。事務局 体制とか、案件の処理を早くするための合議体を増やすということは、これ以降の法施行 の中では考えられているのかどうか、というのをお聞きしたいと思います。  それから、中央の労働保険審査会の会長や会長代行の任命については、私どもの中でも いろいろな意見があります。やはり省庁のOBといった省庁経験者ではないほうが望ましい のではないかと思っています。例えば公務員の労災の場合、共済でやるわけですが、それ を見ますと、そこにOBの人たちはいないと言われています。そういう意味では中央の労働 保険審査会の会長や会長代行の任命なども、併せて法施行後の検討が必要なのではないか と思います。  また、労働保険審査会にはかなり専門的な知識が必要だと、私どもも聞いているわけで す。中央も地方も労使の参与がいるわけですが、そういう人たちの研修を行って専門性を 高めることによって、非常に迅速な処理ができるのではないかと考えております。その辺 についてこれ以降、どういう体制を考えているのかお聞きしたいと思います。  もう1つは、これも行政不服審査法の一般法との関係です。今日の資料の「改正による 主な変更点」でも、取消訴訟は行政不服審査の場合、行政不服審査前置なわけで、一発で 訴訟には行けないわけです。現行法だと行政不服で二審で、訴訟が三審で五審制となって います。今回、これを一審にするということですが、例えばこの前置主義をやめるという 検討はどこにあるのですか。私もいままでそういう発言はしなかったのですが、そういう ことはどこで議論しているのか、今回の法改正の中で、どこで出てくるのか、お聞かせ願 いたいと思います。  最後に、今日の法案要綱の8頁の「経過措置」についてです。先ほど必要な経過措置の ご説明があったのですが、例えば計画審査などは無理かもしれないけれど、証拠の提出命 令や文書や物件の提出命令、物件や文書の閲覧などの案件は、経過措置だと対象ではない と言っていますね。そういうものは法の施行と一緒にできるのではないかと思うのです。 そういう分け方はできないのでしょうか。例えばAという案件については、一括で全部で きない経過措置なのかどうかをお聞きしたいと思います。 ○労災管理課長  まず、二審制の問題についてです。参考3にありましたように、審査請求については労 働保険審査会に対して行うもので、あくまでも審査請求は一審です。再調査の請求という のは、行政不服審査法の一般法でありますように、大量に行われる処分については、原処 分をした処分庁がもう一度その処分を見直すということで、いままでの審査請求とは異な って、より簡易・迅速な手続ということで設けます。それは労働保険だけではなく、社会 保険や税といった大量に行う処分については、みんなそういう形でやるということです。 基本的に大量に行われる処分については、再調査の請求を行いますが、それは審査請求よ りもより簡易・迅速な手続であり、審査請求はあくまでも審査会に対するものであるので、 そこは一審制です。  2点目の、審査会は中央に置くよりも地方に置いたほうが、迅速化という面ではいいの ではないかというご意見ですが、これは基本的に総務省の行政不服審査法との整合性とい う観点から、中央に置かざるを得ないということです。まず行政不服審査法の基本的な考 え方として、処分庁が国の行政機関であるときに、上級行政庁が複数存在する所も含めて、 審理の客観性、公正性を確保するという観点から、審査請求に対しては本省庁レベルでの 審理を受ける機会を確保し、統一的な処理を図るということで、基本的には審査請求の対 象は、大臣などの本省レベルが審査庁になるということになっております。  行政不服審査法案においても、原則として主任の大臣等が審査庁になるというように規 定されております。それとの整合性を図るという観点から、行政不服審査法一般法の原則 を適用した上で、その特例を設けるということになります。労働保険についても、本省庁 レベルで審査請求事案を扱う必要があるということで、都道府県労働局レベルで審査請求 を扱うというのは、行政不服審査法との整合性が図れないので、労働保険だけ違う扱いを するというのは、全体の整合性からできないということです。  さらに、中央の審査会における事務処理ですが、特に東京だけしかないので、請求人に とって利便性の面での問題があるというご指摘は、これまでもありました。そういったこ とについては審査会のほうで来年度予算において、例えばテレビ電話などを使って審理を 行うといったことも含めて、現在検討しているところです。そういった運用面でさらに利 便性の向上を図るとともに、事務局の体制の整備、あるいは今回の見直しも含めて、事案 の迅速な処理の体制を、今後さらに整備をしていきたいと思っております。  委員の任命については、これまでも特に専門性が必要ということで、OBだけではなく、 医師や弁護士、裁判官、労働法学者などの任命を行っていました。昨年、労働法学者を新 たに1名任命し、今年はさらに弁護士を任命したということで、OBの数を減らして、そう いう任命を行っているところです。今後とも第三者性や専門性の確保という観点から、任 命を行っていきたいと思います。  参与の研修については、さらに今後の運用の中で審査会、あるいは各地方のほうで、今 日ありましたご意見も踏まえて検討していきたいと思います。  取消訴訟の不服審査前置の問題については、税や社会保険や労働保険といった、かなり 専門的・技術的な処分は、できる限り行政機関内部において簡易に違法・不当を是正する ことが望ましいと考えております。そういう事案については現在、不服審査前置というこ とでやっております。ただ、審査請求を行ってから3カ月経てば、取消訴訟に移行できる、 取消訴訟も選択できるということで、実際問題としてこの前置主義が、それほど大きな制 限になっているということでもないと思います。税や社会保険、労働保険という大量に行 われる処分は、かなり専門的・技術的であるということから、横並びで不服申立ての前置 主義を現在採っているということです。  経過措置については、形式的にはこの法律の施行前に行われた審査請求なり再審査請求 は、現在の法律で処理することになります。ただし迅速化等の問題については、運用の中 で、いま出されたご意見も踏まえて考えていくことは可能かと思っています。 ○平野部会長  よろしいでしょうか。ほかにありますか。 ○林委員  再調査請求の関係です。確かに処分庁に対して再調査を求めるという内容でしょうけれ ど、処分庁と言いましても、実際に処分を下した担当が再調査をするということは、本来 あり得ない話です。やはり処分を下した人と再調査をする人は、明らかに分けていただき たいと思います。これから法施行までに2年間ぐらいあって、その中で政令、省令、さら に通達などがあると思いますが、そういう手続の中で、例えば再調査専門の担当官を置く といったことについて、是非とも担保していただけないだろうかということです。 ○労災管理課長  行政不服審査法案での再調査の請求ということですので、法律的に形式的には処分を行 った者に対してやることになります。しかし、実際の運用面においては、現在、労働保険 審査官というのがいるわけですが、それが廃止されるので、審査官に代わる再調査官のよ うな職員を設けて、原処分に関与していない者がその再調査事案の担当をするという運用 を考えていきたいと思います。その辺については審査官を廃止した後に、さらに職員の振 替えや増員という形で、今後も検討していくことになります。この法案が成立すれば、施 行までの間にそういったご意見も踏まえて検討していきたいと思っています。 ○金城委員  具体的に何件ぐらいかを伺いたいのです。改正前は労働保険審査官ということで、各都 道府県にいる方たちが、審査請求をしていたわけですよね。それを今度、中央に全部集め てしまう。そういうことになりますと、年間どのぐらいの件数が出てくるのでしょうか。 その予定はどうお考えでしょうか。かなり事件が多くなって、大変なことになるのではな いかと思いますが、そのようなことはないのでしょうか。 ○労災管理課長  平成18年度に都道府県労働局の審査官に対し、請求のあった件数は1,870件です。さら に審査会に対して再審査請求があった件数は、510件となっております。改正後について は、再調査の請求が基本的にいままでの審査会に対する再審査請求の並びかと思いますが、 審査会に対する審査請求もいまよりも増加することは、かなり考えられるところです。い ま500件程度ですが、もうちょっと増えることがあるかもしれません。ただ、具体的にど の程度かというところまでは、現時点ではなかなか申し上げにくいところではあります。 ○金城委員  件数が増加する可能性が非常に高いと思いますので、準備期間のときには、手続が遅れ ないようなご準備をお願いしたいと思います。 ○労災管理課長  はい、ありがとうございます。 ○平野部会長  ほかにどなたかありますか。 ○野寺委員  ご説明の中で、長谷川委員のご質問にもあったのですが、再調査の請求というのは、改 正行審法と改正審査会法の両方に、「大量に行われる処分」云々という言葉が出てくるので すか。もし出てこないとしたら、これは通達か何かで明らかにされるのですか。つまり、 再調査の請求ができる範囲を限定することになるのでしょうか。 ○労災管理課長  いや、法律にこういう言葉が出てくるわけではなくて、個別の法律の中で、再調査の請 求の対象になる処分を定めることになります。労災保険の場合は労働者災害補償保険法の 中で、保険給付に関する決定に不服がある場合に、再調査の請求ができるというように、 条文に書くということです。趣旨としては、大量に行われる処分については、再調査の請 求というのが基本的な考え方です。 ○平野部会長  ほかによろしいでしょうか。それでは委員の皆さんのご意見を踏まえて、疑問のあった 件につきましても、当部会としてはおおむね妥当という旨を、労働条件分科会に報告した いと考えますが、いかがでしょうか。ご意見がなければ、そのようにさせていただきます ので、ご了承いただきたいと思います。                   (了承) ○平野部会長  それでは、そのようにさせていただきます。報告文については、事務局と私に一任させ ていただくということでよろしいでしょうか。                   (了承) ○平野部会長  ありがとうございます。では、そのようにさせていただきます。以上をもちまして、本 日の部会を終了いたします。本日の署名委員は、労働者代表の高松委員と使用者代表の松 井委員にお願いします。よろしくお願いします。皆さん、本日はお忙しいところ、ありが とうございました。これで閉会にいたします。 照会先:労働基準局労災補償部労災管理課企画調整係                          03−5253−1111(内線5436,5437)