08/04/02 社会保障審議会年金部会経済前提専門委員会(第3回)議事録 社会保障審議会年金部会経済前提専門委員会(第3回)議事録 日  時:平成20年4月2日(水) 10:00〜12:08 場  所:共用第8会議室(中央合同庁舎5号館本館6階) 出席委員:米澤委員長、江口委員、小塩委員、権丈委員、駒村委員、樋口委員、      本多委員、増渕委員 ○山崎数理課長 それでは、定刻となりましたので、これより第3回「社会保障審議会年金部会 経済前提専門委員会」を開催いたします。  委員の皆様方には、本日、御多忙のところをお集まりいただきありがとうございます。  議事に入ります前に、資料の確認をさせていただきます。  議事次第、座席図、名簿のほか、次のとおりでございます。  資料1−1「平成19年 労働力需給の推計」。  資料1−1参考「参考資料」。  資料1−2「労働力推計と平成21年財政検証について」。  資料2−1「内閣府『日本経済の進路と戦略』参考試算について」。  資料2−2「民間機関等による経済見通しについて」。  資料3−1「過去の財政再計算における経済前提」。  資料3−2「積立金の運用と財政検証における運用利回りの前提について」。  資料3−3「フランス・ドイツの年金財政見通しにおける賃金上昇率について」。  以上でございます。資料はおそろいでしょうか。  それから、委員の出欠状況でございますが、本日は、山口委員、吉冨委員は欠席でございます。  また、本日は新しい労働力推計について御議論いただくために、労働力推計の担当の方にお越 しいただいておりますので、紹介させていただきます。  独立行政法人労働政策研究・研修機構情報統計担当部長の久古谷部長でいらっしゃいます。  三菱総合研究所経営コンサルティング本部研究部長の木村部長でいらっしゃいます。  それでは、以後の進行につきましては、米澤委員長にお願いいたします。 ○米澤委員長 おはようございます。それでは、議事に入りたいと思います。  本委員会では、平成21年までに行う財政検証における経済前提について、年金部会における 討議に資するために、専門的、技術的な事項について検討を行うこととなっております。  昨年の12月に、諸外国の公的年金の将来見通しにおける経済前提の設定等について説明を受け、 委員の皆さんの方の問題意識をお聞きしたところです。  本日は、新しい労働力推計について、それから、各種の経済見通しについて、また、委員から の宿題事項についての3点について御報告をいただき、皆さん方、委員の先生方に御議論をいた だくことになっております。  まず、新しい労働力推計について、事務局の方から説明をいただきたいと思います。  よろしくお願いいたします。 ○久古谷部長 労働政策研究・研修機構の久古谷でございます。着席で説明させていただきます。  皆様のお手元に資料1−1と1−1の参考ということで、2つ資料があると思いますので、そ れに沿った形で御説明いたします。  まず、この資料そのものは、今年の2月22日に、私どもが新聞発表したもので、この資料自体 は、私どものホームページにも掲載しているものでございます。  結果のポイントということで、最初のページに結果が書いてあるんですけれども、実は、ケー スA、B、Cという3種類について書いてありまして、中身をまず説明してからでないと何を言 っているのかよくわからなくなりますので、まず、最初にどういう方法で労働力の推計を行った かを先に説明して、その結果、及び少し細かい技術的な点についての補足を三菱総研の木村部長 の方から行っていただこうと考えております。  それでは、資料1−1の2ページ目に「労働力需給推計の概要」と書いてございます。  「1 趣旨」ということで書いてありますのは、厚生労働省の職業安定局の方から、今後の雇 用政策に役立てるために、労働力需給推計を行えという話が、私どもに入りまして、それで行っ ているものなんですけれども、具体的な方法としましては「2 推計方法」に書いてありますよ うに、多部門計量経済モデルによるシミュレーションというものを実施しております。  別紙1が13ページにございますので、少しこれを見ていただきたいんですけれども、何をやっ ているかというと、まず、一番右に「労働力供給ブロック」というのがありまして、これが労働 者に関するものでして、ここで労働力率を四角に書いてあるような、各種の説明変数を使って推 計を行っております。  左上の方に「労働力需要ブロック」というのがございまして、これは産業活動で生産が行われ ると、それに対して労働者が必要とされるということで、産業側でどれぐらいの労働力を必要と しているかをこのブロックで推計していまして、この2つの結果を、少し下にあります需給調整 ブロックというところで、両者の結果を使って有効求人倍率を推計して、有効求人倍率から完全 失業率を推計して、ここで最終的な就業者数とか失業者数を決定する。そういう形で推計を行っ ております。  また、2ページに戻っていただきまして、私が先ほどごく簡単に説明したようなことが、もう 少し詳しく「仮定」というところで、具体的には産業別に労働力の需要を推計したりとか、労働 力供給につきましては、性・年齢階級ごとに推計を行っております。  あとは、労働力の需要に関しましては、経済成長率を何らかの形で仮定しないと計算できない んですけれども、今回の場合は、ケースB、Cでは、人口一人当たり2%成長という仮定の下で 労働力需要を計算しております。  それで、具体的にどういうメンバーでこういった検討を行ったかにつきましては、15ページに 研究会のメンバーについての一覧表がございますので、後ほど、参照をお願いいたします。  次の3ページの方で、今回の具体的な推計で用いているケースについて簡単に説明しておりま す。  まず、ケースAというのは、現在の性・年齢別の労働力率という構造が将来的に変わらなけれ ば、人口の高齢化の影響によって、どんなふうに変わっていくか。単純に現在の構造をそのまま 将来に延長したもので、これについては経済成長等の仮定はなくて、現在の構造をそのままもっ ていったというものになっております。  それで、ケースB、Cについては、経済については、先ほど申しましたような人口一人当たり 2%成長という仮定の下で、労働力の構造につきまして、さまざまな雇用政策を講じることによ って、現状に対して一定の構造変化、改善があるという仮定の下での推計になっております。  具体的に申しますと、ケースBでは、年齢間の賃金格差が一定程度解消することによって、若 年者の労働市場への進出が進むという仮定と、2番目としまして、65歳まで雇用が確保される 割合が2030年には95%まで高まるという仮定と、3番目としまして、保育所や幼稚園が整備さ れて、女性の社会進出が一定程度進むという仮定でございます。  ケースCは、ケースBの(1)、(2)に加えて、更に雇用政策の効果が生じているという前提になっ ておりまして、保育所、幼稚園の児童比率につきましては、ケースBの約2倍のスピードで進ん でいく。  そのほかには、短時間勤務制度などの普及により継続就業率が向上するとか、男性の家事分担 率が上昇して、女性の社会進出が進むとか、これは必ずしも労働力にプラスの影響ばかりではな いんですけれども、4番目ということで、短時間雇用者比率が高まり、平均労働時間も短縮する。  (5)として、男女間の賃金格差が2030年までに解消して、これもやはり女性の社会進出が進む。 こういう仮定の下でケースA、B、Cというものを推計しております。  推計結果なんですけれども、最初のページに返っていただきまして、まず、労働力人口に関し ましては、2030年の状況は、ケースAの場合は、2006年に比べて約1,000万人減少する。  それに対しまして、ケースBでは750万人、ケースCでは477万人の減少で減少幅が縮小す る。ケースCではケースAに比べて、約半分に減少幅が縮小するという結果になっております。  それと、性別の構成比につきましては、ケースA、Bでは2006年とほぼ同様の構成比なんで すけれども、女性の社会進出の効果を見込んでいるケースCでは、女性の構成比が1.4ポイント 上昇すると見込んでおります。  あとは、年齢別の構成比につきましては、やはりこれは人口の高齢化を反映して、ケースA、 B、Cいずれについても2006年よりは上昇すると見込んでおります。  これまでは、労働力人口という絶対数の世界だったんですけれども、15歳以上人口に占める パーセンテージでいう労働力率で見ますと、ケースA、B、Cはいずれも低下するんですけれど も、資料の5ページの図3を見ていただきたいんですけれども、ケースA及びBについては、ず っと低下していくんですけれども、ケースCの場合は、初めは少し低下するんですけれども、ほ ぼ横ばい程度の減少で推移するというふうに見込んでおります。  また、最初のページに返っていただきまして、就業者数と就業率なんですけれども、これは経 済成長の仮定がかなり就業者数には効いてくるんですけれども、今回のケース設定の条件だと、 ケースA、B、Cは労働力人口の減少幅は、ケースAでは1,019万人、ケースBでは640万人、 ケースCでは375万人の減少というふうに見込まれております。  また、就業率に関しましても、労働力率とほぼ同様の推移が見込まれているところです。  以上が、簡単ではございますけれども、労働力推計の結果でございます。 ○木村部長 それでは、若干、私の方から補足をさせていただきたいと思います。  先ほど、資料1−1の13ページで推計のフローチャートをごらんいただきましたけれども、 この中の特に労働供給のところにつきまして、どういう関数で推計しているのかというのを若干 補足させていただきたいと思います。  資料1−1の参考というのをごらんいただきたいと思います。  1ページに、男性の労働力率関数が出ております。男性については、15歳〜19歳から60歳〜64 歳まで年齢5歳階級別の労働力率関数を設定するということを行っております。  恐縮でございますけれども、この労働力率につきまして、参考の一番最後の19ページに「労働 力率(被説明変数)の変換について」というのがございまして、実は労働力率というのは0〜 100%の間ということで、将来予測をする際に、その間に収まる必要があるということで、この 0〜1という比率をマイナスに無限大からプラス無限大に変換して、その変換した数字を被説明 変数にするというような形で推計を行っております。  お戻りいただきまして1ページ、男性の労働力率関数でございますけれども、ここでは大体若 年については、進学状況との関係で決めるという形をとっております。  ほかの年齢階級については、失業率でありますとか、年齢が上の方になりますと、5年前の5 歳の労働力の状態とか、そういうコーホート的な要因で進めるということになっています。  それから、年齢別の賃金格差というのが、真ん中辺にございますけれども、年齢階級別賃金を 年齢計の賃金で割ったという格差ですけれども、これが大体若年から34歳ぐらいまで入るという 形で設定することにしております。  あと、60〜64歳のところにつきましては、年金と賃金の比率。これはマクロの統計なもので、 かなりおおざっぱな指標でございますけれども、年金と賃金の比率。  真ん中から左側に65歳まで定年が確保された割合。これは希望者全員が確保される制度をもっ ている企業の割合ということで、そういう変数を用いて推定をするということをしております。  後ほどごらんいただきたいんですけれども、具体的な変数で、どういう変数が対応しているか は、参考の16ページ以降に書いてございますので、後ほどごらんいただければと思います。  2枚目が女性の労働力率関数でございまして、女性については、先ほど説明を省略しておりま すけれども、年齢階級別に加えまして、配偶関係ということで、有配偶と無配偶その他という2 つに分けて推定をしております。  2ページ目は、女性の有配偶の労働力率ということでございまして、若年のところは、進学率 の問題でありますとか、それから短時間雇用者比率、これはいわゆる配偶関係にあって、夫がい る場合に、短時間に雇用機会があるかどうか、そういう変数ですとか、前期の失業率、それから 男女間の賃金格差、真ん中辺の三世代同居率は、これは働きに出るときに、いわゆる三世代で自 分の親が自分の子どもの面倒を見てくれて、そういうような働きやすさということであります。  その右が保育所、幼稚園の在所、在園児童比率。  その右側にございますのが、男性の家事分担率ということで、その右に教育費がどれだけ負担 があるかというような指標が入っております。  男性の家事分担率につきましては、実は時系列的な変化が余り見られないといいますか、過去 変化しているんですけれども、非常に小さいということでありまして、これについては、実は内 閣府の調査で、個票データで家事分担率と女性の就業のところを調べた統計がございまして、そ の個票を使わせていだたきまして、プロビット分析をしたパラメーターを時系列に変換して用い ているということでございます。  3ページ目が女性の無配偶というところでございまして、これについては、真ん中辺にござい ます賃金の指標、それからその左側にございます失業の関係というのは、大体どこも多く入って いるということであります。  若年のところは、進学率という形で入っていまして、あと、20〜24、25〜29については、いわ ゆる男性の期待賃金みたいな指標なんですけれども、将来どれだけ夫になる人が所得を稼いでく れるかということによって、それが低いと働きに出る、そういうような指標を入れているという ことであります。  実は、ここの関数にない年齢階級が幾つかございまして、例えば女性の有配偶の15〜19、20 〜24のところが関数がないですけれども、実はここは人数的に非常に小さいところで、労働力率 が非常に不安定ということで、ここにつきましては、平均的な労働力率を使うとしてございます。  それから、年齢の高いところにつきましては、関数のあるところの年齢より上のところについ ては、5年前の5歳下の年齢階級の労働力率からどれだけ働き続ける、残存するかといいますか、 そういう比率を計算してあります。コーホート的な残存率ととりあえず名づけておりますけれど も、これを過去のデータから計算して、これが変化しているかと思って見てみましたけれども、 余り変化していないということで、その平均値を使っているということになります。  したがいまして、例えば男性の65歳以上の労働力率というのは、60〜64までの就業率が高まっ ているかどうか、その効果を引きずっていくという形になっております。  一応、概略は以上ということで、御説明させていただきます。 ○弓場数理調整管理官 それでは、続きまして、お手元の資料1−2でございます。  厚生年金、国民年金の財政検証、いわゆる従来、財政再計算と呼んでいたものですけれども、 そこで年金財政の将来見通しを作成いたします上で、被保険者数の将来見通しというものが基軸 となってまいります。  そして、この被保険者数の将来見通しを立てる上で、ベースとなりますのが、労働力人口の将 来見通しということになるわけです。  そういうことでございますけれども、まず、1ページ目ですが、厚生年金、国民年金の財政検 証を行います上で、どういった労働力人口の将来見通しをベースとするのが妥当であるのかとい ったことがあるわけです。  そこで、先ほど労働政策研究・研修機構の方から説明がございました労働力需給の推計におき ます3つのケース、A、B、Cの内容につきまして、それがどういう前提のものかというのを1 ページのところで列挙しております。  繰り返しになって恐縮ですけれども、簡単に復習の意味で振り返ってみますと、まず、3つの うちのケースAですけれども、これは性・年齢別で見ましたときの労働力率が、今後、現在と同 じ率で推移するという機械的に計算をした場合ということでございまして、それに対しまして、 ケースB、Cとありますが、これらは、ともに将来の雇用環境というものを想定しました上で、 若者とか女性、高齢者等の労働市場への参入が進むケースと、そういうことなんですが、そのう ちケースBにつきましては、定年延長とか継続雇用制度、保育所の拡充といった、現在、実施さ れている施策が功を奏した場合ということでございまして、それに対しまして、ケースCという のは、ケースBに加えまして、雇用政策研究会の報告書にありましたワーク・ライフ・バランス の取組みが今後進んでいったとした場合ということでございます。  なお、各々の前提につきましては、ケースBの(1)〜(3)とケースCの(1)〜(5)というふうに列挙し てあるとおりで、先ほど労働政策研究・研修機構の方から説明がありましたとおりということで ございます。  計算の前提ということでは、こういうことですが、その結果はどうかというのが、2ページ、 3ページでして、男性、女性の労働力率が2030年にどういうふうになっているのかというのが、 ケースA、B、C別にグラフにしてございます。  例えば2ページですと、男性の労働力率は60歳代前半で、B、Cのケースでは、極めて100に 近い九十幾つという高い率に見通されるということです。  3ページの女性の場合ですと、特に30歳代を中心として全体的にということですが、ケースC の場合は、ケースBの場合に比べてより高い率に将来なると、Cはそういう施策を含んだ推計と いうことでございます。  こういったケースA、B、Cの推計があるわけですが、最初に申しました厚生年金、国民年金 の財政検証を行います上で、こういったA、B、Cというのがある中で、どういった労働力人口 の将来見通しをベースとするのが妥当なのかというがあるということでございます。  次のテーマは、4ページになりますけれども、厚生年金、共済年金全部を含めました被用者年 金の被保険者、言わば正規雇用者というのに近い概念かと思いますが、その人数の将来推計とい うことでございまして、平成16年財政再計算で、どのような方法で行ったのかということが書 いてございます。  簡単に申しますと、ここにありますように、性・年齢別に見ましたときの、被用者年金被保険 者割合、これは労働力人口の中で被用者年金の被保険者数がどのくらいかという比率なんですが、 これを性・年齢別に見まして、これが基本的には生まれ年によるもの、例えば男性の場合で申し ますと、今から10年後に50歳の人の割合というのは、今の40歳の人の割合をそのままということ、 言い換えますと、足元40歳の方の被保険者数に、今後、10年間の労働力人口の変化率をかけたも のが10年後の50歳の人の被保険者数といったやり方をやっておるということです。  ただ、今後、30歳になられる若い世代ですけれども、そこにつきましては、30歳までは今のパ ターンで、30歳以降は、現在の30歳の方の割合で推移するというふうにしております。  言葉ではわかりにくいかと思いますので、下のグラフを見ていただきますと明らかかと思いま すが、上の青い線、これは男性ですけれども、青の実線が平成13年度末で年齢ごとに被用者年金 被保険者割合がどうなっているかというのをグラフにしたものでして、これが将来的には、30歳 までは実線で同じ線、30歳以降は水平になっております薄い青の線と、将来的には年齢ごとの被 用者年金被保険者割合がこういうふうになるということで推計をしているということでございま す。  ですから、この線が持ち上がった分は、時代とともに、サラリーマン化してきたことに対応す るということです。  60歳以上のところは、50歳代後半の持ち上がりの上昇率を使っておりますし、女性の場合は、 男性の場合の持ち上がりの上昇率を使っているというやり方でやっているということでござい ます。  そして、この方法は次回の財政検証でも踏襲し得るかということですけれども、その際、注意 しておくべきこととして、5ページのようなことがあるところです。  最近の被用者年金被保険者割合につきましては、次のような状況が見て取れる、それはどうい うものかと申しますと、特に(2)のところにありますが、女性につきましては、下のグラフを見て いただきますと、30歳代のところですけれども、平成13年度末で30歳の方の率というのは0.57、 これが平成18年度末の35歳のところでも、やはり0.57と、また、平成13年度末で35歳の方、 0.48ですが、平成18年度末の40歳のところで、0.44というふうに、この5年間で年齢は上昇 しているのですが、割合が低下していない、横ばいということが見て取れる、これは、晩婚化、 晩産化の傾向とか、育児休業制度の普及とか、ほかにも景気の影響ということもございましょう けれども、こういう最近の傾向を見まして、例えば今後、40歳以降につきまして、この割合が どういうふうになるととらえるべきなのかという問題があるということでございます。  次に、6ページ、これは一言でいいますと、労働力率が将来高まる、そういった将来見通しだ としましても、高まった分は被用者年金の被保険者につながるものなのかどうかという点でござ います。  要するに、非正規雇用者が増えるようなものであれば、労働力率が高まっても、被用者年金の 被保険者につながるというものではないのではないかと、そういうことについてということでご ざいます。  実際、気になることといたしまして、昨今、非正規労働者の割合が高くなっているという話が ございます。  確かに、雇用者に対する非正規雇用者の割合というのは、左下のグラフで見ていただくと一目 瞭然ですが、この10年間で高まっている様子が見て取れます。  ただ、このように雇用者に占める非正規雇用者の割合というのは高まっているわけですけれど も、次の7ページのところで、労働力人口に占める雇用者の割合というのを見てみますと、増加 傾向にあるということがあります。特に、右下のグラフにありますように、女性においては、労 働力人口に占める雇用者の割合の増加の傾向というのは、顕著だということです。  そういうことでして、労働力人口に占める厚生年金の被保険者数の割合ということで見てみま すと、下の実線のところですけれども、比較的安定的に推移しているという状況かと思います。  その意味で、平成16年財政再計算で被用者年金の被保険者数の将来見通しということで、被保 険者数を労働力人口の伸びで伸ばしたような方法というのは、そこそこ安定感のある方法ではな いかという気もするところですが、これはどういうふうに取られたらいいのかということがある ということでございます。  あとは、参考のグラフですので、見ていただいてということで、私からの説明は以上でござい ます。 ○米澤委員長 ありがとうございました。それでは、この辺で一旦切らせていただきまして、皆 さんの方から御質問、御意見等がありましたらお願いしたいと思います。  どうぞ。 ○江口委員 2点質問があるのですけれども、1つは労働政策研究・研修機構の資料1−1の関 係なんですが、ここでケースCというのを設定して、このときに男女間賃金格差が2030年までに 解消するとなっていますね。  その意味なんですが、労働基準法上、同一労働、同一賃金とされており、別に男女であるから といって同じ職種についていれば賃金に差があるはずはないのです。  そうすると、ここで言っている男女間賃金格差が解消するというのは、実際には、例えば男性 の方が管理職の数が多いとか、そういった職位によって賃金格差が生じている、それを解消する ということになります。言い換えれば社会全体として、高い給与を得ているポストに、男女が同 数付くという前提なのかというのが第1点です。  仮にそうだとすると、1ページ目の労働力人口の2番目の点で、ケースCでは、女性の構成比 が1.4ポイントしか上昇しないことになっているのです。しかし、男と女が、極端に言えば、国 会議員も男女半数で、会社の社長も男女半数で、管理職も男女半数で、それによって、社会的な ポストや賃金の格付けの差が解消するようになるという割には、1.4ポイントしか上昇しないと いうのは、何となく感覚的にピンとこないのです。  2点目の質問は、ケースBとCなんですけれども、先ほど一人当たりの経済成長率2%を前提 にしているというお話でございましたが、ここでいう経済成長というのは、実質なのかどうか。  つまり、賃金を除いた実質成長率ということを考えると、これはかなり高いというか、つまり 労働生産性を毎年一人2%高めていくということを意味しているのかどうか。  そうすると、教育とかを考えても、本当に日本人が毎年2%、そんなに生産性が向上するよう なスキルというのを身に付けていけるんだろうかと、そういう意味での質問が2番目です。  以上です。 ○久古谷部長 最初の方の御質問で、男女間の格差なんですけれども、これは実際にモデルとし て計測なり実際に使っているのは、賃金構造基本統計調査の男女別の賃金の格差を使っておりま して、具体的にモデルに組み込んでいるのは、参考資料の2ページ目で、女性の有配偶の中の 45歳〜49歳と50歳〜54歳のところに男女間賃金格差ということで説明変数として取り込んでおり ます。  それで、男女間の賃金格差が解消するという社会的状況がどういう条件で起こるかという話は、 委員の方がおっしゃったような話にはなるんですけれども、今、私どもが使っている、モデル上、 実際、男女間賃金が過去のデータを使って有意に効果が表われている部分が45〜54歳層ですの で、モデルとしての反映というのが、かなり限定した部分になってしまうという状況で、社会的 状況から期待されるほど、モデル上は伸びないという形になっております。 ○木村部長 今の話に補足をさせていただきますと、実は産業別、年齢階級別に男女間賃金格差 を解消しようとしているんですが、年齢別に見ましたときにも、働いている職種とか職階とかそ ういう問題の違いがあって、そのために賃金格差が現状発生している。それを同じようにすると いうことは、お話のように、女性も男性と同じようなポジションに就くとか職種に就けるという ことを意味しているんですが、実際に女性の構成比が高まる割合が低いというのは、実際には働 く、働かないというのは、経済的な条件以外の要因もあって、経済的に動く範囲が1.4%、範囲 が小さいということもあるんですけれども、そういうこともあって、1.4%しか高まっていない ということになります。  2つ目の経済成長率ですけれども、実質の経済成長率を想定しておりまして、お話のように、 一人当たり生産性が2%高まっているということにほぼ相当するということでございます。  したがいまして、本当に2%高めることができるのかという議論はありまして、生産性の向上 率が可能かどうかというチェックをいろんな側面からしております。  過去の動きから見ると、十分可能だと思われるんですけれども、いわゆる三次産業化が進んだ ときに本当に可能かどうかという辺りは、実は今後労働力の需要の方、産業構造の話も含めて検 討していく必要があるというふうに思っています。 ○米澤委員長 どうぞ。 ○江口委員 今の2番目の点はわかったのですが、そうすると、さっきの男女の賃金格差が解消 した場合、理念的にはそういった社会的なポストとかが、全く男と女がと同じになるという前提 だけれども、推定上は資料2ページにある45〜54歳の有配偶の女性の労働力率のところの調整し かしていないので、そこは実際はもっとドラスティックに変わる可能性があると考えてもいいの ですか。  つまり、理念上の社会のあるべき姿と推計上のテクニカルな結果との間にギャップがあると考 えてよろしいのでしょうか。 ○木村部長 経済的要因で基本的には説明しようとしているんですけれども、ほかのいろんな要 因で、いわゆる価値観みたいなものもあって、やはり働かないで子どもの面倒を見たいという人 がいた場合、そこがどの程度強いかという問題がきっとあって、そういうことがいろいろ影響し ていて、労働力率関数にこういう変数を入れるときになかなか効いてこないということがあるん だと思うんです。  ですから、働こうと思った人については、基本的には同じような雇用条件が提示されるように なっている。働かないというのを選択した人については、それも許容されるような姿だと考えて おります。 ○米澤委員長 わかりましたか。 ○江口委員 はい。 ○米澤委員長 どうぞ。 ○増渕委員 事務局の説明の最後の部分についてなんですが、資料1−2の6ページと7ページ のところですけれども、結局、厚生年金、被保険者の割合は2つの要因がキャンセル・アウトし てほぼ安定的であるという御説明だったと思うんでが、グラフを見ると、1つには安定的という よりは、やはり右上がりなんではないかと見えるんですが、これは評価の問題ですけれども、そ れで1つは非正規雇用者の割合というのは、更にどんどん高まっていくのかなという疑問が1つ ありますのと、それから仮に非正規雇用者であっても、被用者保険者とするという動きが一方で あるんではないかと思うんですが、そういうことを考慮する必要はないのかというのが、私の質 問です。 ○米澤委員長 どうぞ。 ○山崎数理課長 数理課長でございます。非正規雇用者の割合が高まっていくかどうかというと ころ、これはなかなか見方が難しいところでございますが、今の資料1−2の6ページに実際に データとしてございますように、少なくとも過去20年間の傾向で見ますと、雇用者の中での非正 規雇用の割合は、特に女性で顕著に高まっている。  最近の傾向といたしまして、逆に非正規が増え過ぎていて、それを正規に戻すという動きが一 部に出ていると聞いておりますので、それがそのまま右肩上がりに増えていくかどうかというの は、必ずしも予断を許さないというところでございます。  6ページの右側に、10年前と最近とを比較した年齢ごとの非正規雇用の割合ということで見ま しても、どの年齢層でも一様に過去10年につきましては、非正規雇用の割合が高まっているとい う状況でございます。  一方で、非正規雇用についても、厚生年金の被保険者に取り込んでいくということがあるので はないかということで、まず、今の法律の仕組みの下では、いわゆる正規型の労働者、通常の労 働者の4分の3以上の労働時間、40時間労働を基本といたしますと、基本的に30時間以上の方に つきましては、雇用形態を問わず、基本的に厚生年金の被保険者となっていただくということで ございますので、いわゆる非正規雇用イコール厚生年金の適用を外せるということでは、現状の 仕組みにおいてもないということでございます。  実際、非正規ということで申しましても、これは必ずしも勤務時間が短いということとイコー ルではございませんで、いわゆる雇用形態で1年更新の契約でございますとか、いわゆる期間を 定めない雇用でないような方、こういう方も多くの場合、非正規雇用ということで分類されてお りますので、そういうことで、非正規雇用の増加イコール厚生年金の適用が減っていくというこ とではないということでございます。  将来的な政策の動向といたしましては、今、国会の方に提出されております、被用者年金の一 元化法案におきまして、いわゆるパートの方につきましても、20時間以上かつ賃金に関しまして、 正規労働の方に近いような性格の方という考え方でございますが、そういう方につきまして、厚 生年金の適用を広げるという内容の法案を御提案させていただいておりますので、将来的にはそ ういう非正規の方につきましても、被用者年金の適用を伸ばしていくという方向性というものは、 政策の方向として打ち出されているというところでございます。 ○米澤委員長 どうぞ。 ○樋口委員 今の点と関連しまして、1つは、労働力人口に占める比率を取っているわけですね。 これはなぜ労働力人口なんだろうか。もともと雇用者数の中に占める比率というのが本来そうで あるし、これはJILPTの方では雇用者数の推計というのをやっていたように思うんですが、就業 者数ではなくて、少なくともこれまでは、今回はわかりませんが、これまでやってきたというよ うなことで、要は自営業、農業が減ったり、あるいは家族従業者が減ることによって雇用者数と 就業者数の乖離が起こってきている。  これが、どんどん自営業が減ってくることによって、労働力全体に占める雇用者割合というの が上がってきているんだろうと思うんですが、そこのところをどう考えていくのか、もし、推計 をやるということであれば、まず、雇用者数を推計するというのが本来であって、その中におい て厚生年金に入っている比率をどう見るかという話になってくるのかなと、その点が1点。  もう一つは、増渕さんがおっしゃったように、非正規の中でも要件によって、公的年金に加入 するわけですね。例えば、この比率自身がどう変わってきたのか、非正規の中における厚生年金 に加入している人たちの比率。この要件は、多分年金については変わっていなかった。ここのと ころ、ずっと安定してこの要件を取ってきたと思うので、この比率自身が変わるということは、 それだけ、例えば労働時間4分の3以下の人たちが増えてきているというようなことで、それを どう見通すかという問題があるかと思います。  片方で、雇用保険については、かなり要件を変えてきているわけです。今も労働時間を2分の 1以下、それだけが適用除外、加入要件から外されているというようなことで、その数字もやは り参考にして、検討なさっていく必要があるんではないかと思います。その点、どう推移してき ているのか教えていただけたらと思います。  ちょっと違う点なんですが、もう一つ非常に重要なのは、労働需要ブロックの説明が今日はほ とんどなかった。労働供給について、どういう前提を置いてきているのかというのはわかったん ですが、例えばGDP2%といっても、モデルを見ると、その中の構成比、例えば個人消費支出 の想定を2030年についてはどう置いているのかとか、あるいは財政支出をどういうふうに想定し ているのか、これによって需要モデルによると大きく変わってくるわけで、その点、どう想定し ているのかということです。GDP2%というのは御説明があったんですが、その内訳の項目が 非常に重要になってくるかと思いますが、それはどうなっているかということです。 ○米澤委員長 では、最初の点のお答えをお願いします。 ○久古谷部長 まず、第1点目と第3点目にかかるところなんですけれども、まず、今回の需給 推計に関しましては、この前提としまして、前回というのは、2004年に同様な形で労働力の需給 推計を行っているんですけれども、今回は社人研の方で新しい将来人口推計が公表されましたの で、それに基づいて、供給部分について主に見直しを行って、今回の推計を行った。  先ほど、御指摘のあった需要側はどうなんだというお話につきましては、今年度の活動におい て、需要側につきまして検討して、恐らく、その中では経済成長率等につきましては、今回のよ うな単独の一本の推計ではなくて、もう少し細かくケースを分けた推計を行う予定としておりま す。  あと、1点目の雇用者推計はどうしたんだというお話なんですけれども、私どもが持っている 資料で確認した限りでは、前回から就業者とか就業者数についての推計は行っているんですけれ ども、雇用者数等につきましては、需要側の要因で、かなり変化が生じ得る。やはりそういうこ とを考えると、供給側については、かなり安定した推計ができるんだけれども、具体的にどんな 形で働いているか、そこまでについては、構造変化等、かなり仮定を置かないとできないという ことで、今のところは、就業者数までの推計を行っているところです。 ○木村部長 雇用者の推計は、雇用政策研究会の前々回ぐらいまでは、次をやっていたんですけ れども、実は、そこはなかなか産業別の雇用者の比率がどういうふうに決まっているのかという 辺りの検討が十分できませんでしたので、雇用者の推計というのは、今、落ちております。  ただ、需要の構造との関係をよく考えなければいけないということで、そこも含めて、今後検 討していきたいと思っております。 ○米澤委員長 どうぞ。 ○山崎数理課長 樋口委員からの御質問の第2点のところになりますが、非正規雇用の中でも、 従来、厚生年金の適用要件というのは安定的だったので、その中で、非正規雇用といってもいろ いろあって、いわゆる時間の長い嘱託のような方、あるいはパートでも短時間パートの方と比較 的長時間のパートの方、そういう方それぞれについて、厚生年金の適用割合がどのぐらいかとい うことについてデータをということで、なかなか毎年取れるような形でのデータとなると難しい んではございますが、就業状況の多様化に関する調査というものを私どもの統計情報部で以前に 行ったということもございます。  ただ、ちょっとデータが古うございますので、そこも少し新しいもので、その辺で拾えるもの がないかというところ、これは宿題としてちょうだいいたしまして、できる限り資料をそろえて、 次回にお示ししたいと考えております。 ○米澤委員長 樋口先生、とりあえずよろしいですか。ケースA、ケースB、ケースC、こうい うのはよくわからないときは、こういうふうに分けてやるわけです。最後にどこにまとめるかは、 また最後になってしまうんですけれども、正規雇用というのは、ここのケース分けのところで少 しうまく処理した方がいいような感じを私自身持っているんですけれども、個人的ですけれども、 そういうふうな感じもします。  ほかにいかがでしょうか。 ○樋口委員 今の点であれば、モデルの中で短時間雇用者比率を外生変数で入れているわけでし ょう。そうだとすると、その外生変数をかければ、必然的に短時間は何万人雇用者がいるという のは出てくるはずですね。ですから、もう答えは出ているんではないかと思うんですが、そうい う問題ではないんですか。  これは、推計の労働力率の方程式を見ると、外生変数の中に短時間雇用者比率が入っています からね。 ○木村部長 1点、就業者から雇用者を決めるところが落ちておりますので、雇用者を決められ れば、今の雇用者の中の短時間雇用者比率をかけてあげれば出てくる、そういう形になります。 ○樋口委員 実は、前回までの推計を見れば、雇用者比率というのはすごく安定的ですよ、就業 者に占める比率がトレンド的に変わってくるだけであって、景気がいいからぽんと上がるとか、 下がるということはほとんどないので、そこのところは推計しやすいんだろうと逆に思います。 ○米澤委員長 どうぞ。 ○山崎数理課長 おっしゃっているのは、労働力人口に占める雇用者の比率ということだと、こ れはかなり伸びてきているというか、そういう状況だと思います。就業者と雇用者の比率という ことでございますと、また違う状況があるのかもしれませんが。 ○樋口委員 就業者と雇用者の差は失業者だけですから、就業者数の増減がどうしているかとい う話で、これは景気循環的な話というのがあると思います。 ○山崎数理課長 労働力と就業者の比は失業の循環的な違いということでございますが、最近の 動向でございますと、資料1−2の7ページでございますが、労働力人口に占める雇用者の割合 が上の点線でございまして、男性の場合は、過去10年で81.3%〜82.5%ということで、かなり安 定的でございますが、女性の場合、77.2%〜83.0%ということで、労働力人口の中の雇用者の割 合は、かなり高まってきている状況で、それは非正規雇用が大分増えているという影響があろう かということでございます。 ○米澤委員長 よろしいですか、誤解はないですか。それ以外の点でいかがでしょうか。  小塩委員、どうぞ。 ○小塩委員 私も樋口先生と同じように、労働力人口をベースにして、被保険者数を推計してい ることについて、ちょっと疑問がないとは言えない部分があると思いました。  その関連なんですけれども、ここではケースA、B、Cと3つのケースを想定されているんで すけれども、就業者数もそのケースによって影響を受けますね。  ところが、先ほどの説明ですと、就業者数は基本的には需要サイドで決まるような形になって いる。フローチャートを見てもそんな感じはするんですけれども、供給サイドの想定がどうして 需要サイドから出てくる数字に影響を及ぼすのか、その経緯をちょっと教えていただきたいとい うのが1つです。  もう一つは、先ほどから非正規の問題が出ていると思いますけれども、確かに、被保険者数と いう頭数がどれだけかということが問題意識にあったとすれば別にいいと思いますけれども、や はり正規と非正規は違うと思うんです。賃金も恐らく違うでしょう。そういう質的な違いという のは、今回は頭数で話が終わると思うんですけれども、年金財政を計算する場合は、やはりどれ だけ生涯賃金が要るか、どれだけ年金を受け取るかという金額面での影響が出てくると思うんで すけれども、やはりそういうのを考えると、気にする必要があるんではないかなという気がしま す。  その2点です。 ○米澤委員長 どうぞ。 ○木村部長 1点目の点につきまして、実は就業者は需要で決まっているというだけではなくて、 供給との需給調整を通じて決まっておりますので、そういう意味では供給の中のどれだけが、供 給されたうち失業者と就業者に分かれるということで、供給の方にも需給関係の影響を与えます けれども、基本的には、需給両方の要因で就業者が決まっているという形になっております。 ○山崎数理課長 後半の点でございますが、将来の年金財政を考えていく上で、労働力の構成の 中で、非正規の割合が高まったとして、その場合、正規と非正規でかなり労働の質に違いがある のではないかということで、それによって将来の総賃金でございますとか、そういうものが影響 を受ける。そういう要素を勘案すべきではないかというお尋ねかと存じます。  当然、そこが大きく構成の変化があるのであれば、そこを踏まえたものになる必要があるとい うことでございまして、質という以前に、まず、労働時間なども違ってくるだろうという面がご ざいまして、それは、労働投入といたしまして、単に頭数だけではなくて、平均時間のようなも のがどうなっていくかというようなこと、これが労働力の推計の中でどのようになっているか、 そういうところまで踏まえた上で、年金の財政にどう使っていくかということを考えていく必要 があろうかということ。  あと、生産性の上昇というもの、これは大体正規、非正規を押しなべて何%というふうに見て いくわけでございまして、それの大きな要因としては、いわゆる全要素生産性の上昇率をどう見 るかという部分があるわけでございますが、この全要素生産性の上昇をどう見るかという部分の 見込みの中には、将来、もし、労働力の構成が変化していくのであれば、それもある意味織り込 んだ形での全要素生産性の上昇率の見方ということになるのではないかということで、ある意味、 そこのところの見方に繰り込むことができるのではないかと考えているところでございますが、 なお、この辺に関しましては、引き続き、論点として御議論いただければ幸いでございます。 ○米澤委員長 やはり今の点は、この時期において、無視できないような感じがしますね。  ほかに、いかがでしょうか。まだ、もう少し時間はありますかね。  どうぞ。 ○樋口委員 1つだけ申し上げたいんですが、A、B、C、どのシナリオかという話が先ほどか ら少し出ていたんですが、御説明あったように、Aというのは現状の労働力率それぞれ年齢層別 にこれが今後も続く。  B、Cというのは、ある意味では本腰を入れて、かなり政策的なサポートをし、社会を変えて いかないと、B、Cの実現というのはかなり難しいと考えざるを得ないところがあるわけです。  それで、どのシナリオを取るかというのは、まさに政策をどうするのかということと、企業に おける雇用管理をどうしていくかということにすごく左右されるところでありますので、どれを 取るのかというのは、そういうことも含めて考慮していただきたいということで、どれがいいと は一概に言えないし、どれになるんだということも、これは予想の話ではありませんので言えな い。むしろ、どうするんだという話だと思います。 ○米澤委員長 これは、今の段階でわかっている範囲で、今後、これをどのように取り扱ってい くのか、お答えいただけますでしょうか。 ○山崎数理課長 これは、なかなか難しいところでございますが、これは財政検証に基本的にど ちらのケースをメインと考えて取っていくかということで、現時点では、なかなか決め難いとい うのはおっしゃるとおりでございまして、1つの考え方としまして、将来のあるべき姿、これを 目指すんだというものは、比較的はっきりしているとして、ただ、それに向けての政策にどれだ けのフィージビリティーがあるのかというところに関してのどれだけのサポートがあるかという ところが、1つ議論になってくるところかと存じます。  それで、実際のところ、まだ、経済財政諮問会議で、2月に新雇用戦略というものが議論され たというところでございますが、その際、総理からも新雇用戦略は、全員参加の経済戦略を展開 していく上では大きな柱となるものということで、女性、若者、高齢者に対する就業支援が重要 であるという旨の御発言もあったところでございまして、就業率等の数値目標も含めたプランを 提示するようにという御指示があったと承っておりまして、現在、これを受けて、厚生労働省と してのプランを作成しているというところでございますので、このプランがどういうものになっ て、どう位置づけられるかということを見極めました上で、今後、また経済前提専門委員会で引 き続き御議論いただければと考えているところでございます。 ○米澤委員長 よろしいですか。ほかに、どうぞ。 ○小塩委員 今の御説明に関連するんですけれども、政府が労働政策でいろいろやっていかない といけないのは、そのとおりだと思うんですけれども、やはりリスクはあると思うんです。です から、どのシナリオが最も蓋然性が高いかというのは、やはり言えないと思うんです。  どうしたらいいかということなんですけれども、私はもっともらしいシナリオはどれかという ふうに立てるんではなくて、むしろ例えば現行の2004年改正後の制度は維持できるような労働供 給はどれぐらいか、ここまで労働供給は落ちたらちょっと危ないですとか、そういう逆の数字の 出し方もあり得るんではないかという気がするんです。ここまで労働力が落ちると、今の制度は 維持できないとか、そういう制度を前提にして労働供給の数字を評価するというのもあるんでは ないかと思います。 ○米澤委員長 どうぞ。 ○山崎数理課長 その点に関しまして、実のところ、将来の年金財政というのは、労働力率1つ の関数ということではなくて、そもそも人口と経済の2つが両輪となって決まっておりまして、 当然人口が影響を与える与え方の中に労働力率というものが入ってきて労働力人口、また賃金が どうなる、一方で、経済がどのようになっていくかというところ、これも当然一とおりには決ま らないことだということでございまして、これはそれぞれについて幾つかのあり得る幅みたいな ものをお示しする中で、両者を組み合せて、将来の年金の財政がどうなっていくかということを 見ていただいて、それで総合的に判断していただくということになろうかと思いますので、年金 財政はここまでは確保したいということから逆算して、どれか1つのパラメーターをこれだとい う形でのお示しの仕方というのは、なかなかできにくいのかなと私ども年金の財政検証を実務的 に行う立場のものとしては、考えているところでございます。 ○米澤委員長 というか、今までは、結構最後までケースを分けて、年金財政を予測していった わけですね。ですから、ただ、その中で、ここの我々のミッションとしては、どれか1つの数字 を最終的には取らなければいけないということにはなるかと思います。 ○山崎数理課長 例えばケースBかCかということでございますと、試算としては、こちらのケ ースならこうなる、こちらのケースならこうなるというものはお出しできると思いますので、ま さに労働政策がどこまで進むかによって、年金財政にどういうふうな違いが出てくるかというと ころを、ほかの条件をそろえた形でお示しするということは当然できると思います。  最終的に、財政検証として、どれを一番メインのケースと考えて政策を考えていくかというと ころに関する重点の置き方について、どのケースに準拠するのかということに関しまして、やは り御議論いただいて、これは財政検証の性格ということにも関わる話かと存じますが、そういう 御議論が必要かと考えているところでございます。 ○米澤委員長 どうぞ。 ○江口委員 今の御説明はそれでいいと思うのですが、例えば今の中でケースAとケースB、C が議論になっているときに、B、Cは経済成長率2%という前提です。他方、Aは現状固定で、 そのギャップが物すごく大きいのです。例えばB、Cで言えば、せめて1%とか1.5%という議 論があってもよくて、しかもこの経済成長の2%は、単に労働力推計における前提なのです。  今、数理課長からお話がありましたけれども、年金の場合に、経済成長というのは、もっとほ かの要因としても非常に響くわけで、そうすると、仮に2%を1.5%とかにしたときに、他の推 計との関係が実はどうなるかというのがよくわからない。つまり、非常に相関性の強い問題なの で、多分、AかBかCかという議論よりも、そういった経済成長をどう見込むかとか、それが賃 金とか、収益率とか物価とかにどう響くのかとか、そういう全体の相関の中で考えていくしかな いのではないかというのが印象です。 ○米澤委員長 それは、ごもっともで、この数字はフィックスというわけではないですね。1つ 出てきたイグザンプルという格好で理解して、大体骨格はこうであるけれども、今、言ったよう な数字に関しては、再計算もあり得ると理解して、2%が1.5に下がった場合とか、BもCも、 今、2%で計算されていますね。ですから、その辺のところのフィードバックというのはあり得 ると考えてよろしいのですね。  どうぞ。 ○久古谷部長 技術的な点で申しませば、モデルの係数を変えて回せば、数字としては得るんで すが、冒頭申しましたように、この研究、私どもの活動自体が職業安定局から雇用政策のための 推計ということでやっている作業ですので、その中でお示しするというのは、ちょっと枠組みが 異なっておりますので、できないんですけれども、今後どうするか、私どもの方からマテリアル、 素材として年金局の方に御提供するという形であれば、検討可能かと思います。 ○米澤委員長 そういう理解でよろしいですか。 ○山崎数理課長 その辺のところを踏まえまして、ただ、雇用戦略と、いわゆる年金の財政検証 の整合性というような話もございますので、その辺も総合的に勘案して、今後、御議論いただけ れば幸いでございます。 ○樋口委員 今、課長がおっしゃったところは、すごく重要なところで、私は今まで雇用の方か らこういった問題を見てきたんですが、今までのやり方というのは、割と労働力がどう決まって くるか、それを受けて財政がどうなっていくかというところでやってきたんです。雇用の方が与 件なんです。労働市場の方が与件でやってきたんですが、今回の方程式を見てもわかるんですが、 例えば賃金と年金の支給額の比率というのが、高齢者の労働力率にすごく影響を及ぼすというよ うなことになると、フィードバックをどう考えていくか、要するに年金制度をどう設計するかが 労働力率を決めてくるというようなところが入っているわけです。ですから、やり方として、今 までのようなやり方だけでは、どうも今後の財政状況を見通すということが難しくなっているの かと思います。  例えば60代前半については、もう支給開始年齢を引き上げるということが決まっているわけで すが、65歳から在職老齢年金のところをどうするかとか、そういうようなことがすごく重要な労 働市場へのインパクトという形になってきて、今、既に推計でB、Cでは60代前半に九十何%の 人が働くということを想定して、今回、足元で2007年問題が社会的に問題にならなかったという のも結局、すごく労働力率は上がっているんですね。就業率も上がっている。だから企業として も継続就業みたいな形をやっているし、その1つの影響というのは、むしろ年金支給開始年齢が 1階部分について63歳まで上げられてきたというようなことも相当に影響を及ぼしているという ような認識になっていますので、そこのところは、是非おっしゃったように、お互いフィードバ ックをし合ってやっていかないと推計できないかなと思いますが、よろしくお願いします。 ○米澤委員長 それは、そのように承ったということで、今、幾つかマクロの経済の方の話にも 関わってきていますので、続きまして、次のテーマに移りたいと思います。  次に、各種の経済見通しにつきまして、事務局の方から説明をお願いしたいと思いますので、 よろしくお願いします。 ○山崎数理課長 それでは、まず、資料2−1でございますが、内閣府から今年の1月に発表に なりました、日本経済の進路と戦略の参考試算につきまして、内閣府で発表した資料に抜粋した 資料でございます。  平成20年の参考試算の概要ということでございますが、この試算の性格としましては、改革 や財政収支改善努力を前提として実現させる、将来の経済財政の全体像を提示するという性格の ものでございまして、この中でマクロ経済につきまして、成長シナリオとリスクシナリオという 2つのシナリオを想定するということで試算が行われております。  その中で、歳出・歳入の一体改革につきましては、経済財政運営と構造改革に関する基本方針 2006で決定いたしました歳出改革を踏まえまして、ケースAとして5年間で14.3兆円の歳出削減 を行うという考え方に対応するケース。  ケースBの方は、それよりも少し小さくて、11.4兆円の歳出削減の考え方に対応するケースと 2ケース取り上げてございますが、基本的には、ケースAの方で、数値の方を3ページの方に記 載してございます。  試算につきましては、マクロ経済、GDPや物価等、財政及び社会保障の相互連関を考慮した 計量経済モデルを基礎としているということでございます。  試算の期間は、平成23年度までの4年間ということでございまして、試算の内容につきまして は、マクロ経済の姿といたしまして、経済成長率、物価上昇率、失業率、長期金利等、あと国・ 地方の財政の姿ということが掲げられているところでございます。  2ページ「(2)マクロ経済についての2つのシナリオ」ということで、成長シナリオとリス クシナリオがどのような経済の姿、生産性の上昇を想定しているかというところを表にまとめた ものでございますが、成長シナリオは、日本経済の進路と戦略に沿いまして、我が国の潜在成長 力を高めるための政策が実行される場合に、視野に入ることが期待される経済の姿ということで ございまして、生産性の上昇率、TFP、全要素生産性の上昇率でございますが、これはその足 元の0.9%程度から、平成23年度に1.5%程度まで徐々に上昇するという見込みとなっているとい うことでございまして、労働力につきましても、雇用者の労働参加率が名目賃金と年金給付の比 率に応じて変化、上昇している。60歳未満の労働参加率につきましては、労働市場改革を受けて、 女性を中心に徐々に上昇していくという見方に立っている。  一方で、世界経済の実質成長率につきましても、IMFの世界経済見通しを基にいたしまして、 20年度の年率3.0%の後、21年度以降年率3.8%程度で好調に推移していく、こういう見方に立っ ている。  一方のリスクシナリオでございますが、こちらは政策の効果が十分に発現されず、かつ世界経 済の減速など、外的な経済環境も厳しいものとなる場合の経済の姿ということでございまして、 こちらにつきましては、生産性の上昇率も0.9%程度に低下する。  労働力につきましても、労働参加率が横ばいという見方ということで、世界経済の成長率につ きましても、2011年度にかけまして、年率1.5%程度まで徐々に低下しているという厳しい環境 を見込んだというシナリオになっているところでございます。  3ページ、歳出削減ケースAを前提といたしまして、それぞれのシナリオにおける成長の見通 しということでございますが、成長シナリオの方でございますと、実質成長率は平成20年度 2.0%から21年度2.3%、22年度2.5%、23年度2.6%というふうに高まっていくということで、 先ほど成長率2%を想定しているという労働力推計の話がございましたが、こちらの成長シナリ オでは、十分それを上回るようなものをクリアーするというような見込みになっているというこ とでございます。  消費者物価上昇率につきましては、22年度1.0%から23年度1.4%に高まっていく。完全失業率 は3%台で比較的低く推移し、名目長期金利につきまして、23年度2.9%までこれも高まってい くという見込みになっている。  一方の制約シナリオの方でございますと、実質成長率が21年度1.6%から22年度1.3%、23年度 1.1%というふうに下がっていくという見込みでございまして、消費者物価の上昇率も23年度で 1.1%と成長シナリオよりは低め。名目長期金利も同じく23年度で2.3%ということで成長シナリ オよりも低い。名目、実質ともに成長が低い見込みになっているところでございます。  4ページ、これは参考でございますが、平成16年の財政再計算のときに、足元の経済前提の参 考といたしました構造改革と経済財政の中期展望、2003年度改定の参考資料というものをこちら に掲げているわけでございますが、中期展望2003年度改定は、成長シナリオ、リスクシナリオと いうような複数シナリオではなくて、1パターンのみの推計だったということでございまして、 複数パターンの試算が示されるようになりましたのは、翌年度の改定の参考資料からということ でございます。  5ページ、参考の2でございます。こちらは昨年の10月に経済財政諮問会議におきまして、 民間議員の資料として試算が出ておりまして、中長期の社会保障の選択肢ということで試算が提 出されているわけでございますが、そちらで2025年度までの実質GDP成長率でございますと か、長期金利につきまして、前提を置いて、2通り、成長ケースと制約ケースという前提を置い て試算を行ったというものがございまして、そちらの数値を参考までにこちらに掲げてございま す。  成長ケースにおきましては、生産性の上昇率が年度平均で1.1%程度ということで、その下で、 2025年度までの年度平均の伸び率といたしまして、実質GDP成長率が1.7%程度。  それで、消費者物価上昇率というのがございませんで、GDPデフレーターの上昇率というこ とでございますが、これが1.6%程度。長期金利が4.5%程度、こういう数値になっております。  一方で制約ケースは、生産性の上昇率が0.8%程度で、実質GDPの成長率は0.9%程度、長 期金利が3.6%程度ということで、いずれも成長ケースよりは低い数値というものが発表されて いるという状況でございます。  続きまして、資料2−2、これは民間のシンクタンク等の機関におきます経済見通しを参考ま でに収集して掲げたものでございまして、おおむね発表の新しい順に並べているところでござい ますが、1ページ目が2008年度から2011年度まで、この3か年間の見通しを、発表されている数 字を単純に平均したというものでございますが、下の注の1にございますが、見通しの前提とし て、消費税の引上げが見込まれているものがかなりあるわけでございますが、その引上げが行わ れる年は、ややイレギュラーな数値になりますので、それは除いた残りの年の平均ということで 表示しているところでございます。  これで見ていただきますと、実質GDP成長率、各期間の見通しを押しなべてみますと、おお むね1%台後半から2%にかかる程度という見込みを足元のところではしているということでご ざいまして、消費者物価の上昇率で見ますと、0.5ないし1%程度。  長期金利に関しましては、2.5%内外ぐらいの数字が多く並んでいるというところでございま す。  2ページ、これが同じ期間におきます2012年度以降の見通し。やはり消費税の引上げが見込ま れている年を除いた各年の数値を単純に平均したというものでございます。  これで見ていただきますと、実質GDP成長率は、前のページの2011年までの数字をやや減 速したような感じの見込みとなっておりまして、1%台後半、一番高いところで2.0%というぐ らいの見込みになっている。  見込みの期間は多くのところは2017年度まで、12年度以降、5年間程度ということでござい まして、中期的な見通しという見方になっております。  消費者物価上昇率は、2011年までよりやや高めという感じで1%内外の数字を見込んでいる ところが多いというところでございます。  長期金利に関しましても、2011年までの見込みよりやや高めの見方が多いということで、これ はかなりばらつきがございますが、2%台から一番高いところで4%台にかかるぐらいまでとい うような範囲に分布しているという状況でございます。  3ページ以降、今、各年の平均を取りました、その基になる毎年の予測数値をそれぞれが何% と出しているかというものをまとめたものでございまして、網かけになっているところは、下の 注にございますように、消費税率の引上げが仮定されている年度ということでございます。  4ページ、5ページ、それぞれその資料でございます。  6ページ、消費者物価の上昇率の前提に関してということでございますが、従来から物価上昇 率の見込みというのは、なかなか難しいということで、過去のある程度の期間の平均と、あるい は政府の見通しの何年間かの平均というものを総合勘案してということで設定させていただい ていたわけでございますが、1つ、それの参考になるものといたしまして、日本銀行におきまし て、2006年3月に金融政策決定会合で議決されたものでございますが、物価の安定に関しての 考え方というものを整理するということで、最後のページ、一番最後のパラグラフでございます が、金融政策運営に当たり、中長期的に見て物価が安定していると各政策委員が理解する物価上 昇率、これは中長期的な物価安定の理解ということで呼ぶということでございますが、これにつ いて議論を行いまして、委員の間の意見に幅はあったものの、現時点では海外主要国よりも低め という理解ということで、具体的に消費者物価指数の前年比で表現すると、0〜2%程度であれ ば、各委員の中長期的な物価安定の理解の範囲と大きくは異ならないという見方で一致したとこ ろでございまして、また、委員の中心値は、大勢として、おおむね1%の前後で分散していたと いうことでございます。  これにつきまして、これは当然変化し得る性格のものということで、2006年時点で今後原則 としてほぼ1年ごとに点検していくこととするというふうに定められまして、実際、昨年2007 年4月の金融政策決定会合におきまして、この点検の議論が行われまして、この下線を引いたよ うな整理を維持するということで意見の一致を見たというふうに発表されているところでござ います。  御説明は以上でございます。 ○米澤委員長 どうもありがとうございます。この点に関しまして、御質問、御意見等がござい ましたら、どうぞ、お願いいたします。  江口委員、どうぞ。 ○江口委員 2点ほどございます。これは最初の委員会でもお聞きしたと思いますが、そもそも 財政検証の対象期間というのは何年かということなんですけれども、これはたしか100年でした か、ですから100年先をどう見込むかいうこと、つまり、我々は常に目先何%かという議論もし なければなりませんが、対象期間の中で推計がどういう意味を持つかということを考えなければ いけないのではないかというのが1点目。  2点目は、今、日本国内のGDPとかいろんな成長率だけを見ていますけれども、近年のサプ ライムローンに見られますように、グローバル化が進めば進むほど、非常に世界経済との連動リ スクが高まっています。そういうものについて、リスクシナリオというのは一応あるのでしょう が、実際には、100年とは言わないけれども、何十年先を考えたときに、どう考慮すべきなのか。  つまり、結局、いろんな見通しを見ても、サブプライムの問題で全部がたがたになってしまっ ているというのが現状でして、長期的なトレンドを見るのだから、そういうものは短期的にイベ ントとして収れんするんだという見方もあるでしょうし、いや、むしろ長期的にもグローバルな リスクが高まるんだという見方もあるでしょう。ここに示されているのは従来の成長率の見方な んでんすけれども、グローバリゼーションがここまで進むと、本当にそれでいいのかなという素 朴な疑問を感じるということの2点です。 ○米澤委員長 それにお答えしろということですか。 ○江口委員 いや…。 ○米澤委員長 我々は、これからどう対処していけばいいか、お願いします。 ○山崎数理課長 なかなか難しいお尋ねでございますが、まず、対象期間の問題でございますが、 年金の財政検証における年金の財政計算の期間そのものは、法律で、おおむね向こう100年とい うふうに定められておりまして、おおむね100年間を推計するわけでございますが、一方で、そ の基礎になる経済につきまして、100年後まで見通せというのは、なかなか無理な話でございま すし、実際、平成16年の財政再計算におきましても、日本経済の中長期的な成長力と、これは 全要素生産性の上昇率を前提に置きまして、マクロ経済の基本的な関係式に基づいて見込んだわ けでございますが、これは向こう30年程度ぐらいまでを見通してということで数値を設定いたし まして、それから向こうの期間は推計期間の平均値として与えられる数値をそのまま外挿すると いうことで計算前提としたということでございます。  これは、前回、権丈委員からも御発言があったんですが、財政検証というのは、1回やったら、 ずっとそれを使い続けるということではなくて、5年ごとに新しい状況を反映して、また新しい ものをつくっていく。  それは、ある意味で向こう5年間において、そのときにやれることは、それなりに限られてい るわけでございますので、その時点でのベストエスティメイトに基づいて、そのときにやれるこ とはどういうことかということを検討して進めていって、5年経ってまた新しいデータもそろい、 外部環境も変わってまいりましたら、そこでまた新しい検証を行って進んでいくと、こういう5 年ごとに見直しがあるというプロセスの中でどう考えていくか。  そのときに、年金制度というのは、かなり人口の占める要素が大きいわけでございますが、人 口と申しますのは、今、出生率が変わったとしても、それが実際に大人になって保険料を払い始 めるのは、20年ぐらい経ってからだと。その方々が最終的に年金をもらい終わってお亡くなりに なるまで年金制度がどういう姿かまずは見通せるんだというものがないと、なかなか保険料をい ただくに当たっても、安心して制度に入れないということになるわけでございますので、どうし てもおおむね100年のような長期間を財政の上では見通すということは宿命になるわけでござい まして、その際には、何らかの前提を置かないといけない。  そのときに、やはりいろいろな景気の循環等々が入りますような、5年とか、そのぐらいの短 期のタームでの見込みでは、なかなか100年コースを見るには難しいものになるわけでございま すが、30年とか、そういうタームで見通しますと、ある意味、景気の短期的な循環のようなもの はならされたものが見えてくるのではないかということです。  そういう意味で、日本経済が安定的に得られるような中長期的な成長の見通しはどのぐらいか というようなことに関しての御知見を賜わって、その辺を前提として、今後、20年、30年ぐらい の平均として妥当な経済前提を考えていく。  それから先は、とりあえず、それがずっと続いていくという前提の下で、人口要素等が反映し て、どのような財政の姿になるかというものをお見せして、それを基に年金制度についての御議 論をいただきたいと、こういうプロセスかなと考えているところでございます。 ○米澤委員長 どうぞ。 ○権丈委員 今、説明されたので、私も若干付け加えさせていただきます。100年前と言えば、 今から考えると日露戦争が終わって数年の頃ですが、そのくらいのタイムスパンを考えるという のは、なかなか難しいものがあると思います。ただし、財政検証というものの役割を私なりの理 解といいますか、説明しておきますと、100年先を終点としてそこまで延びていくシミュレーシ ョンをやっていくのですけど、見るべき焦点は所得代替率が何年後に50%を切るかにおかれて いるんです。5年以内なのか、それとも20年後なのかなど。  前回2004年の年金改革で、附則第2条に「その次の財政検証までの間に所得代替率が50%を下 回ると見込まれる場合には、50%の給付水準を将来にわたり確保するという趣旨にのっとり、マ クロ経済スライドによる調整の終了その他の措置に講ずる」とあります。だから、毎回の財政検 証のときに最大の焦点が当てられるのは5年後ということになる。この5年後を見るために100年 先を終点としたシミュレーションを行っているわけです。そういうわけで、私の関心は、5年後 までに所得代替率が50%を切るのか、切らないのか、そこにある。  そして、今、100年先まで推計して、5年以内に所得代替率が50%を切るということが示された 場合、2004年の改革で固定された保険料率や支給開始年齢をどう見直していけばいいのかという ことを考えていくための材料として、私は財政検証を位置づけております。そういうふうに位置 づけておりますと、2004年の年金改革というのは、なかなか頑丈にできていると私は思うんです ね。もしも附則がなかったら「もたない」というのは、一体どう定義すればいいのかというのが、 私はよくわからなくなってくる。保険料率は固定されているわけですから、出生率が下がってい ったら50%を切って、給付水準が下がっていく。何%の給付水準を切ったら、これを「もたない」 と表現するのかということは、附則第2条がなければ、定義をするのもなかなか難しいという気が します。今は60%近い所得代替率なのですから、少々低い成長率や出生率でも10年20年間は所得 代替率が50%を切ることはないと予測されるでしょう。そして100年後を見定めた財政検証で、 このままだったら、20年後に所得代替率が50%を切るということが示されたら、先ほど樋口先生 からおっしゃられたような形で、やはりお金を使ってでも、財政支援してでも、何とかして次世 代育成策や成長政策などの社会経済政策を展開していこうというような指針を与えてくれること になると思う。そういうシグナルを国民に知らしめるものが、財政検証の役割だと私は理解して おります。財政検証は今回第1回目になるわけですけど、これはこれまでの財政再計算とは意味 も役割もちがうものだと思っております。 ○米澤委員長 事務局の方、それでよろしいですか。ですから、いずれにしても、最後ここで 我々は数字を出さなければいけないんでしょうけれども、やはり見せ方を、今言ったような形で うまく説明していくということが、世の中にどのぐらい納得してもらえるか、どのぐらい安心し てもらえるかというのは、数字を出すことと同時に、そこの方の努力もかなり必要かなという感 じがします。  場合によっては、さっきいったシナリオも、とても我々はマクロモデルを作る余地もないので、 せいぜいシナリオのところで、うまく整合的なシナリオをつくって、その上で数字を出すという のが適当かなという感じがしていますね。  この数字は、こういうものだということで拝見しておけばいいのかなと思います。  もう一つ加えて、多分、今回も足元は政府の数字を使うのが一番自然ですね。スタート時点と いうのはね。この点はそれでよろしいですか。 ○山崎数理課長 今回1月に内閣府の方から試算として出たものでございますが、これは例年で すと、毎年1月にまた出てまいるということでございますので、今からはっきりは申し上げられ ませんが、来年の1月ぐらいにまた新しいものができる。それは、また最新のものを踏まえたと いうことになりますので、最終的に財政検証を実際に行う時期にもよりますが、発表時期におい て、より新しいものがあれば、それを踏まえたものというのが自然ということでございますので、 その辺につきましては、今後の、実際上のスケジュール等を勘案いたしまして、また、こちらに お諮りして考えていくということになろうかと存じます。 ○米澤委員長 よろしいですか。それでは、次に移らさせていただきたいと思います。  前回、委員から宿題が出ていたかと思いますが、その宿題に関しまして、事務局の方から説明 をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。 ○山崎数理課長 それでは、資料3−1でございますが、過去の財政再計算における経済前提を まとめたものということでございますが、これは1ページ目、賃金上昇率、運用利回り、物価上 昇率、その三者についての財政再計算を実施した年度、一番左にございますが、それぞれのとき の見込みがどうだったかということを表にまとめたものでございます。  昭和48年の財政再計算におきましては、賃金上昇率を48年から52年度のところでは13%でござ いますが、以後、5年おきということで、10%、8%、7%というふうに下がっていくという見 込みを立てていたということでございます。  51年におきましても、51年から55年度に関しましては、10%、8%、6%というふうに下がっ ていく見込みというものを立てていた。  55年以降は、単一の数字ということで、55年で7%、59年で5%等々、平成11年では2.5%、 16年の長期の前提ということでは、平成21年度以降2.1%、これは名目の賃金上昇率でございま すが、こういう見込みになっていたというところでございます。  次のページ、これはグラフで賃金上昇率の財政再計算における前提と、標準報酬の上昇率の実 績ということを掲げたところでございますが、48年の財政再計算を見ていただきますと、それ以 前の時期、これは非常に高度成長の時期でございまして、標準報酬上昇率の実績値、これは20% を越えるような年もかなりある。  こういう過去の実績だけを踏まえるのであれば、最初のところの13%というような数字が横に 水平に行くというような見方もあり得たわけでございますが、当時も、過去の実績だけを見てい たわけではありませんで、直近のところは、過去の実績を見てということでございますが、その 先に関しましては、政府の当時の経済計画というもの、これにおける実質経済成長率の見通しと いうものを参考として将来を設定していくということで、当時も足元のような高度成長がずっと 続くということではないだろうという経済の見込みに基づきまして、5年刻みで順次賃金上昇率 の見込みを下げていく、こういうような見方をしていたということでございます。  51年に関しましても、考え方は同じでございまして、足元のところは、過去の状況というもの もある程度勘案してということでございますが、基本的には、51年のときには、以前の高度成長、 あとは激しい物価上昇の後で、オイルショックの不況も経験したということで、必ずしも過去の 実績は当てにならないという見方から、どちらかといいますと、経済計画における将来の経済成 長の見通しというものを踏まえて、やはり段階的に下がっていくというような見通しを立てたと いう状況でございます。  55年以降におきましては、過去の実績と、更に政府の経済成長率の見通し、こういうものを総 合的に勘案するという考え方で将来を見通すということでやっていったわけでございますが、一 方で、かなり長い期間の不況というようなものがございまして、物価も低いけれども、賃金も低 いという時期がかなり続いてきたということでございます。  平成16年の財政再計算に至りまして、将来の成長率の見込みに関しまして、必ずしも経済計画 における見通しをそのまま使うということではなくて、むしろ、それの原動力となります全要素 生産性の見込みに関しましては、内閣府の経済財政報告の数値を踏まえまして、将来、どのぐら いの実質賃金上昇が得られるかということにつきましては、将来の一人当たりの経済成長率、こ れを労働力人口が減っていくという状況を踏まえまして、中長期的なものをマクロ経済の基本的 な関係式を基に推計を行うという考え方で設定しているということでございまして、そういう意 味では、足元の5年間を当てていくということではなくて、中長期、30年タームぐらいでみて、 平均的な日本経済の成長の見方、それを反映する賃金上昇の見方というものを設定するという考 え方に変えてきたというところでございます。  3ページが、過去における物価上昇率の実績と、財政再計算における前提ということでござい ます。  物価に関しましては、なかなか見込みが難しいというところがございまして、これにつきまし ても、ある程度過去の実績と、あと政府の経済見通しでどう見ているかというものを総合勘案し て決めていくというような考え方に立っているところでございまして、16年再計算におきまして も、その考え方は踏襲されているということでございます。  こちらにつきましても、やはり目の前のものを当てにいくというよりは、長期的な前提として どういうものが妥当かという考え方で整理したというところでございます。  資料3−2、こちらの前回の委員会で御議論がありました、積立金の実際の運用と財政検証に おける運用利回りの前提についてということで、両者がどのような形で関連しているのかという ところにつきまして、少し考え方を整理しておく必要があるということで、資料を準備いたした ものでございます。  まず、積立金の運用は厚生年金保険法等の規定によりまして、長期的な観点から、安全かつ効 率的に行うということが定められておりまして、これを受けまして、現在、国内債券を中心とし つつ、国内外の株式等を一定程度組み入れた分散投資というものを行っているところでございま す。  安全という観点からリスクを低く抑えるということを考えますと、国内債券といった比較的株 式等に比べて、値動きの小さい、リスクの低い資産への投資というものが、まず考えられるとこ ろでございますが、実際上、他の資産を組み合わせるということによりまして、全額を国内債券 で投資するのと、同じリスクでより高いリターンを期待することができる。これが、いわゆるポ ートフォリオセオリーの結果でございます。  このことから、国内債券が幾ら安全だといっても、全額を国内債券に投資するというのは、そ の意味では効率的ではないというふうに言えるということでございまして、このように効率的な 運用を行うという観点からは、国内外の債券や株式を組み合わせた、いわゆるポートフォリオ運 用を行いまして、一定の許容されるリスクの下で期待リターンをできる限り高めるということが 求められるところでございます。  財政検証におけます運用利回りの前提は、積立金運用がこのような考え方で行われているとい うことを踏まえた上で設定するということになるわけでございます。  実際の積立金運用に当たってのポートフォリオの策定は、逆に財政検証において経済前提が設 定されますと、その下で賃金を上回る実質的な運用利回りを経済前提で前提された数値をできる だけ確実に確保するということを目標として行われるということになるところでございます。  2ページに、参考までにリスクとリターンの関係ということで、イメージ図を掲げてございま すが、この図は、横軸がリスク、これは利回りの変動の標準偏差のようなイメージでございまし て、縦軸がリターン、利回りの期待値というようなことでございますが、これは単独資産で見ま すと、国内債券というのを左下の辺りにございますが、リスクも低いが相対的に期待リターンも 低いということでございまして、それに対して、外国債券はそれよりリスクは大きいが、リター ンもやや高い。国内株式、外国株式は大分右の方にございまして、債券に比べて、かなりリスク は高いが、それなりに高いリターンが期待できる。  これは、それぞれ単独資産ですと、こういうリスク・リターンの特性になるわけでございます が、これをうまく組み合わせると有効フロンティアと書いてある線の上のようなリスク・リター ン特性を持ったようなポートフォリオを組むことができる。これがポートフォリオセオリーの結 果でございまして、国内債券のところに、上に矢印がございまして、星印がございますが、例え ば国内債券100%というものでも、それなりの値動きのリスクがあるわけでございますので、う まく株式等々を組み合わせると、全額国内債券を運用しているのと、同じリスクで、より高い期 待リターンを得られるようなポートフォリオが存在するということでございます。  前回、平成16年の財政再計算のときで申し上げますと、国内債券がどのぐらいで将来回るの か、こちらを将来の日本経済の利潤率の見通しや、過去における10年国債の利回り等々と関連 づけまして、将来を予測いたしまして、それに対しまして、分散投資でどのぐらい利回りが上積 みできるかということで、国内債券プラスαの利回りというものを考えていったということでご ざいます。  この際、有効フロンティア上にあるポートフォリオであれば、どれもそういう意味で効率的だ と考えられるわけでございますが、より株式等の組み入れ比率を高めて、リスクを高めれば、そ の見返りとして、より高い期待リターンが得られるという関係になるわけでございまして、これ をどのぐらいまでのリスクをとることができるかというところに関しまして、これはまさに高い リスクを取れば、期待値としては、より財政に貢献して、一定の保険料でありますと、最終の給 付水準を高めることができるわけですが、ただ、これは確率からいって、よりリスクは高まる。 要するに、市場がうまく回らないで、むしろ低くなってしまうという確率も増すということで、 それをどのぐらいまでのリスクを許容できるかということを考えていく必要がある。こういう関 係にあるということでございます。  3ページは、今、申し上げたのは、やや抽象的でございますので、少し具体的なイメージをと いうことで、仮想的な3つの資産A、B、Cというものに、リターンとリスクの特性を真ん中の 表にあるような形で想定いたしまして、簡単なシミュレーションを行ってみたということで、資 産Aが比較的値動きが少ないが、期待リターンも低い資産ということで、B、Cは、それよりも リスクは高く、リターンも高い資産ということで、これは組み合わせたポートフォリオの期待リ ターンが青のドットで示されているわけでございますが、このように有効フロンティアというの がこのような曲線で出てくるのが見て取れるという資料でございます。これを御参考までに付さ せていただきました。  資料3−3、フランスとドイツの年金財政見通しにおける賃金上昇率、これがどこでどのよう に決まっているかということに関しましてでございますが、フランスに関しましては、CORと いう、これは年金に関する審議会のようなところでございますが、そちらの2006年のレポートに 記述がございますが、年金の財政見通しにおけます、実質賃金上昇率につきましては、これは労 働生産性の上昇率に準拠しているわけでございますが、これを全要素生産性と資本装備率に要因 分解するということによって見通しを立てているということでございまして、2006年3月のレポ ートにおきましては、これをフランスの経済研究所における見通し、及び経済・財政・雇用省の 見通し、このような経済官庁の見通しを踏まえまして、全要素生産性の上昇率を1.2%、実質賃 金上昇率を1.8%と置きまして、この数値を過去30年の賃金上昇率の平均とも見合わせまして、 これとほぼ等しくなっているということで評価しているというところでございます。また、低 位、高位の前提もしかるべく置いているということでございます。  次のページ、ドイツに関してでございますが、これはドイツ政府の年金保険報告書2007という ものの記述から取ったものでございますが、長期15年間の見通しにおきまして、賃金上昇率を3 通り仮定されているところでございますが、これにつきましては、基本的にはリュールップ委員 会ということで、社会保障制度の資金調達における持続可能性のための委員会というものが置か れたところでございますが、そちらで2003年に経済前提を作成した。  これを踏まえて、決めたというふうに記述されているところでございまして、賃金上昇率、中 位で平均増加率2.5%ということでございますが、これは10年間かけて2%〜3%増加するとい うような見込みをリュールップ委員会の見込みに沿って立てていると記述されているところでご ざいます。  以上でございます。 ○米澤委員長 ありがとうございます。それでは、これはこれまでの宿題に対して事務局の方か らのお答えなんですが、どうぞ。 ○駒村委員 資料3−1の過去の前提と実績の乖離、これは1回検証してみようという意見があ ったので出たんだと思いますけれども、例えば2ページをどう評価するかということで確認なん ですが、48年、51年は階段状にやっている、これは特殊な時代であったわけで、16年もある意 味特殊な時代だということで、階段状にやっているわけです。結局、実績と前提で乖離がどうし ても出てくるわけですけれども、この年金財政の与えた影響というのは、乖離が収入に与える影 響と、それから再評価のときの支出に与える影響と逆方向に向いていて、乖離があるから直ちに 年金財政がその分だけ悪化したとか、甘い予測をしたとか、そういう評価にはつながらないのか どうか、そこだけ確認をしたいと思います。 ○山崎数理課長 お答えします。まさに駒村委員がおっしゃるように、賃金上昇率というのは、 両面ございまして、保険料収入に対する影響といたしましては、賃金上昇率が見込みよりも低い 場合には、当然保険料収入もそれに沿って減少するということでございますが、一方で、年金の 給付そのものが、まさに所得代替率が59%だ、50%だというように賃金の水準にリンクして決 まってくるものでございますので、賃金上昇が見込みより低いと、長期的には、それに応じた年 金の給付額になるということで、年金財政そのものがおおむね向こう100年を見通して、長期的 に均衡を図るものだということでございますので、賃金上昇率、特に名目値が見込みと乖離して いても、実際には収入と支出の両面に反映してまいりますので、年金財政の影響はかなり限定的 だと言えます。  特に年金の場合は、基本的に物価スライドというようなことがございますので、名目値そのも のではなくて、賃金上昇率と運用利回りと物価上昇率、その三者の間の相対的な関係が重要でご ざいますし、かつまた数値がずれたことによって、一方的に収入だけ減るというようなことはな くて、基本的に収入と支出が長期的に見れば両建てで推移していくということで年金財政の影響 は、それだけ限定的なものになるということはおっしゃるとおりでございます。 ○米澤委員長 樋口委員、どうぞ。 ○樋口委員 今の説明で十分理解したと思うんですが、それにしても実績と想定との間に乖離が あったかなと思います。しかも、どちらかというと、いつもオーバーエスティメイトしてきたと いうようなことがあるわけですね。  この賃金上昇率の見通しを立てるときに、どういうようなものを基に今まで立ててきたのかと いうことについて、どうなんでしょうか。これは推計か何かなさっているのでしょうか。 ○米澤委員長 どうぞ。 ○山崎数理課長 過去の財政再計算の報告書によりますと、まず、昭和48年でございますと、昭 和48年2月に閣議決定されました当時の経済社会基本計画というもので、経済成長率の見通し、 こちらの方を昭和45年から55年までが9%前後、55年から65年までが6ないし7%と見込んでい る。  これを勘案いたしまして、将来の段階的に下がっていきます、賃金上昇率の見込みというもの を立てたと記述がございまして、その後の51年の財政再計算におきましては、かなり石油危機を 契機とした激しい物価上昇と経済の安定成長への移行という変動を体験した当時の現時点におい ては、過去の実績値は必ずしも参考にならないということで、参考し得る資料としては、昭和50 年代前期の経済計画というものがあるということで、当時、これによりますと、我が国経済は、 今後5年間は6%強の実質成長率を達成していくことが適切であるとうたわれていたということ、 この辺のことも踏まえて設定を行ったという記述がございます。  その後、ちょっと逐一申し上げるのはあれですが、簡単に申し上げますと、次の昭和55年の財 政再計算では、参考となる資料として、新社会経済7か年計画というようなもの、こちらを参考 にしたというような記述がございます。その後、少し飛びますが、平成6年の財政再計算で、こ の当時標準報酬上昇率を4%と見込んだものでございますが、これにつきましては、一人当たり 雇用者所得の伸び率や、一人当たりの労働生産性上昇率の過去の実績、更に経済審議会の2010年 委員会というものにおける経済の長期見通し、こういうものを勘案して設定したということで、 最近におきましては、過去の実績プラス、経済官庁の関係で出されております、できるだけ長い 経済の見通し、こういうものを踏まえてという考え方でございますが、いかんせん、経済の見通 しというものは長いと申しましても、20年、30年というものは、なかなか政府のものとして発表 されておりませんので、平成16年の改正におきましては、全要素生産性の上昇率という部分につ きまして、内閣府における経済財政報告の見通し、これは構造改革の実施を前提として、0.5ない し1%に高まることは十分可能である、当時非常に不況の中で低かったわけですが、そういう見 込みを前提といたしまして、全要素生産性の上昇率を0.7、今から見ると、かなり低めの数字でご ざいますが、そう置きまして、労働力人口等につきましては、担当部局の見込みと、これを踏ま えまして、日本経済の将来の労働力人口一人当たりの実質成長率というものをマクロ経済の基本 的な関係式に基づいて推計すると、こういう考え方で行ったということでございまして、このよ うな考え方で、将来の経済を前提に置きましたのは、平成16年の時点が初めてということでござ います。 ○樋口委員 かつては、経済計画をつくっていましたから、その中で、長期のターンパイクモデ ルであるとか、そういったものに基づいて、賃金についてもかなり長期的な見通し、賃金は余り やってこなかったんですけれども、成長率とかをやったわけですね。  ところが、堺屋長官の時代に、経済計画はもう廃止するというような形で、今の諮問会議に受 け継いでいるような数年という単位でしか見通しは出さないというような形で、それも見通しと いうよりもシナリオだという形で、これは推計とは違いますという形で出る。  それ以降、では、今までは政府が発表していたからとか、経済企画庁が発表していたからこれ を使ってという方法だろうと思うんですが、そこのところが大分事情が変わったわけですね。変 わった中において、これをどう見通すかというようなことを、えいやというところもあるんだと 思いますが、そこのところをどうするのか、これはかなり大きな問題を提起しているんではない かと思うんですが、どうなんでしょうか。 ○山崎数理課長 まさにおっしゃるような事情でございまして、要するに、政府として長期の経 済見通しを公定のものがあれば、それに準拠しましたということでいいわけでございますが、そ ういうものがない中で、どう見通していくかということを16年の改正のときには、当時の資金 運用分科会の先生方にもいろいろ御相談申し上げまして、16年に実際に行いましたような、将 来の、いわゆる成長力の源としての、全要素生産性の上昇率につきましては、内閣府の見通しを ベースとして、それで、30年間ぐらいどのように日本経済が展開していくかということにつき ましては、労働力の見通し、あと全要素生産性の上昇率、あと、現実の日本経済そのものの資本 や労働の状況あるいは労働分配率等々、こういうものと整合的なものということで、マクロ経済 の関係式に基づいた推計をある意味自前で行うというようなことで数字を入れさせていただい たということでございます。  それにつきましては、資金運用分科会、更には年金部会にも御報告するというようなことでお 諮りをして、経済前提は設定させていただいたというところでございます。 ○米澤委員長 よろしいですか。ということは、私なりに言い換えると、名目は別として、実質 賃金上昇率は、この委員会でもって決めていくという理解ですね。  あとは、名目を決めなければいけないので、物価上昇率は、どこかで決めていただいて、我々 は、それを承認するということになるかと思います。  そういう理解でよろしいですか。 ○山崎数理課長 物価につきましても、やはりこれは経済前提の専門委員会でございますので、 なかなか資料が乏しい中ではございますが、是非、委員の皆様方の御見識を賜わればと思いまし て、そういう意味でも物価関係の資料もできる限りのものは付させていただくということでよろ しくお願いできればと存じます。 ○米澤委員長 増渕委員もいらっしゃいますので、いろいろお助けいただきたいと思います。  ちょっと予定の時間を過ぎております。こちらの不手際もありましたが、今回特に絶対言いた いということはありませんね。よろしいですね。  それでは、予定の時間も過ぎましたので、本日の審議を終了したいと思います。次回の日程等 につきましては、事務局の方から連絡をお願いします。  それでは、どうもありがとうございます。  事務局の方から御連絡はありますか。 ○山崎数理課長 ございません。 ○米澤委員長 では、また別途個々に連絡を受けるということで、本日は終わりたいと思います。 どうもありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省年金局数理課 03−5253−1111(内線3355)