資料3

障害者権利条約をめぐる状況等

1  条約採択の経緯

○  2001年12月の「障害者の権利及び尊厳を保護・促進するための包括的・総合的な国際条約」決議が国連総会でコンセンサス採択されたことを受け、2002年にニューヨーク国連本部において本条約について検討するための障害者権利条約アドホック委員会第1回会合が開催され、本条約案の検討が行われ、2006年8月の第8回アドホック委員会で基本合意された。

○  その後、2006年12月13日、第61回国連総会本会議において採択され、我が国は、2007年9月28日(金)に閣議決定の上、署名を行ったところである。

今後、政府としては、条約の締結(批准)に向けて、国内法制の整備等を進める必要がある。

2  条約の概要

○  障害者の権利及び尊厳を保護・促進するための包括的・総合的な国際条約であり、障害者の自立、非差別、社会への参加等を一般原則として規定するほか、アクセシビリティー、家族、教育、労働等様々な分野において、障害者の権利を保護・促進する規定を設けている。また、条約の実施状況を監視する国際モニタリングにおいて、本条約独自の委員会を設置することも規定している。

○  雇用分野については、公共・民間部門での雇用促進等のほか、

[1]  あらゆる形態の雇用に係るすべての事項(募集、採用及び雇用の条件、 雇用の継続、昇進並びに安全・健康的な作業条件を含む。)に関する差別の禁止(1(a))、

[2]  公正・良好な労働条件、安全・健康的な作業条件及び苦情に対する救済についての権利保護(1(b))

[3]  職場において合理的配慮が提供されることの確保(1(i))

等のための適当な措置をとることにより障害者の権利の実現を保障・促進することとされている。

○  雇用分野を含め、経済的、社会的及び文化的権利に関しては、締結国は、その完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用いること等により、措置をとることとされており、必ずしも条約で規定されたとおりの措置を即時に講ずることまで義務付けているものではないが、国内法制の整備の可否又は是非について整理した上で、現時点で対応可能な事項については速やかに法的整備を図る必要がある。


<今後の障害者雇用施策の充実強化について─障害者の雇用機会の
拡大に向けて─(平成19年12月19日労働政策審議会意見書)>

(6)障害者権利条約の締結に向けた検討

本年9月28日に、「障害者の権利に関する条約」について我が国は署名したところであり、今後、条約の締結に向けて、国内法制の整備等が求められている。

この条約は、障害者の権利及び尊厳を保護・促進するための包括的・総合的な国際条約であり、障害者の自立、非差別、社会への参加等の一般原則のほか、教育、労働等様々な分野において、障害者の権利を保護・促進する規定を設けている。

雇用・労働分野については、公共・民間部門での障害者雇用の促進等のほか、

[1] あらゆる形態の雇用に係るすべての事項(募集、採用及び雇用の条件、雇用の継続、昇進並びに安全・健康的な作業条件を含む。)に関する差別の禁止、

[2] 職場において合理的配慮が提供されることの確保

等のための適当な措置をとることにより障害者の権利の実現を保障・促進することとされている。

これらについて、障害者雇用促進法制においてどのような措置を講ずべきかについては、特に、[2]の職場における合理的配慮の提供というこれまで我が国にはない概念が盛り込まれており、十分な議論が必要であることから、労使、障害者団体等を含めて、考え方の整理を早急に開始し、必要な環境整備などを図っていくことが適当である。


<障害者の権利に関する条約仮訳(抜粋)>

第二条 定義

「障害を理由とする差別」とは、障害を理由とするあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害を理由とする差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。

「合理的配慮」とは、障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。

第二十七条 労働及び雇用

1  締約国は、障害者が他の者と平等に労働についての権利を有することを認める。この権利には、障害者に対して開放され、障害者を受け入れ、及び障害者にとって利用可能な労働市場及び労働環境において、障害者が自由に選択し、又は承諾する労働によって生計を立てる機会を有する権利を含む。締約国は、特に次のことのための適当な措置(立法によるものを含む。)をとることにより、労働についての障害者(雇用の過程で障害を有することとなった者を含む。)の権利が実現されることを保障し、及び促進する。

(a)  あらゆる形態の雇用に係るすべての事項(募集、採用及び雇用の条件、雇用の継続、昇進並びに安全かつ健康的な作業条件を含む。)に関し、障害を理由とする差別を禁止すること。

(b)  他の者と平等に、公正かつ良好な労働条件(例えば、均等な機会及び同一価値の労働についての同一報酬)、安全かつ健康的な作業条件(例えば、嫌がらせからの保護)及び苦情に対する救済についての障害者の権利を保護すること。

(c) 障害者が他の者と平等に労働組合についての権利を行使することができることを確保すること。

(d) 障害者が技術及び職業の指導に関する一般的な計画、職業紹介サービス並びに職業訓練及び継続的な訓練を効果的に利用することを可能とすること。

(e) 労働市場において障害者の雇用機会の増大を図り、及びその昇進を促進すること並びに職業を求め、これに就き、これを継続し、及びその職業に復帰する際の支援を促進すること。

(f) 自営活動の機会、起業能力、協同組合の発展及び自己の事業の開始を促進すること。

(g) 公的部門において障害者を雇用すること。

(h) 適当な政策及び措置(積極的差別是正措置、奨励措置その他の措置を含めることができる。)を通じて、民間部門における障害者の雇用を促進すること。

(i) 職場において合理的配慮が障害者に提供されることを確保すること。

(j) 開かれた労働市場において障害者が実務経験を取得することを促進すること。

(k) 障害者の職業リハビリテーション、職業の保持及び職場復帰計画を促進すること。

2 締約国は、障害者が、奴隷の状態又は隷属状態に置かれないこと及び他の者と平等に強制労働から保護されることを確保する。


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