08/03/21 社会保障審議会 第5回少子化対策特別部会議事録 08/03/21 第5回少子化対策特別部会議事録 第5回少子化対策特別部会 議事録 日時:2008年3月21日(金) 17:00〜19:00 場所:厚生労働省 省議室 出席者:  委員   大日向部会長、岩渕部会長代理、岩村委員、内海委員、大石委員、小島委員、   清原委員、駒村委員、佐藤委員、庄司委員、宮島委員、山縣委員、吉田委員、  事務局   大谷雇用均等・児童家庭局長、村木審議官、高倉総務課長、小林調査官、   朝川少子化対策企画室長、杉上虐待防止対策室長、定塚職業家庭両立課長、   藤井家庭福祉課長、田中育成環境課長、井上児童手当管理室長、義本保育課長、   千村母子保健課長、宮川雇用保険課長  参考人(オブザーバー)   岡田章二参考人(飯泉委員代理)   今井克一参考人(福島委員代理)  参考人(ヒアリング出席者)   普光院亜紀参考人(保育園を考える親の会)   坂崎隆浩参考人(青森県・野木保育園理事長) 議題:   1.次世代育成支援に関するサービス・給付の現状と課題(1)(現物給付)   2.サービス利用者・提供者からのヒアリング    普光院亜紀参考人(保育園を考える親の会)    坂崎隆浩参考人(青森県・野木保育園理事長) 配布資料:  資料1  次世代育成支援に関するサービス・給付の現状(1)(現物給付)  資料2  次世代育成支援に関するサービス・給付の現状(1)(現物給付)参考資料  資料3  次世代育成支援施策の在り方に関する研究会報告書(平成15年8月7日)の       ポイント  資料4  普光院参考人提出資料  資料5  坂崎参考人提出資料  資料6  杉山委員提出資料 議事: ○大日向部会長  それでは定刻になりましたので、ただ今から社会保障審議会第5回少子化対策特別部会 を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、先週に続きまして本日もご多用のと ころお集まりいただきまして誠にありがとうございます。それでは議事に入ります前に、 事務局より資料確認と委員の出席状況に関するご報告をお願いしたいと思います。 ○朝川少子化対策企画室長  それでは、まずお手元に配付しています資料の確認をさせていただきます。最初に議事 次第です。それから資料1、資料2ということで少し厚めの資料が二つ、今日、中心的にご 説明する資料です。その下に資料3として「社会連帯による次世代育成支援に向けて」と いう表題の資料が付いていますが、これは前回、吉田委員からご要請いただいた資料とし て、平成15年に京極高宣先生を座長とした研究会の報告書を参考として配布させていただ いています。そしてその下に、今日は参考人からのヒアリングというテーマがありますの で、その関係の資料が資料4、資料5とあります。今日は杉山委員がご欠席で、紙でご意見 が出ていますので資料6として配付させていただいています。それから、委員方の机上の み配付させていただいていますが、普光院参考人から「つうしん」という冊子をお配りさ せていただいています。もし不足等ございましたら事務局にお声をかけていただければと 思います。また委員の皆様の机の上には前回の資料をファイルで置かせていただいていま す。ファイルに入っていますのは前回の資料です。  委員の出席状況ですが、本日は飯泉委員、杉山委員、福島委員、山本委員から、ご都合 によりご欠席とのご連絡をいただいております。まだいらしていませんが、山縣委員は途 中で退席されるご予定とお伺いしています。なお、飯泉委員の代理といたしまして、徳島 県保健福祉部長寿こども政策局こども未来課長の岡田章二参考人、福島委員の代理として 社団法人日本経済団体連合会経済第三本部長の今井克一参考人にご出席いただいておりま す。ご出席いただいております委員の皆様方は、定数を超えていますので会議は成立して います。  次に本日、参考人として本部会にご出席いただいております参考人のお二方をご紹介さ せていただきます。まず保育園を考える親の会の普光院亜紀参考人でございます。 ○普光院参考人  よろしくお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  青森県・野木保育園理事長の坂崎隆浩参考人でございます。 ○坂崎参考人  よろしくお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。  それでは、議事に入ります前に、本日欠席の飯泉委員、福島委員の代理としてご出席い ただいております、徳島県保健福祉部長寿こども政策局こども未来課長の岡田章二参考人、 そして社団法人日本経済団体連合会経済第三本部長今井克一参考人のご出席についてお諮 りしたいと思います。ご異議はありませんでしょうか。よろしいですか。ありがとうござ います。  それでは、議事に入りたいと思います。本日はお手元の議事次第にありますように、議 題が二つあります。議題1「次世代育成支援に関するサービス・給付の現状と課題」の(1)(現 物給付)についてのご議論。そして、議題2「サービス利用者・提供者からのヒアリング」 をお願いしたいと考えています。最初に議題1につきまして、事務局からご説明をお願い します。 ○朝川少子化対策企画室長  それでは、説明させていただきます。資料1、資料2の両方を併せてご説明させていただ きます。  まず、資料2の2ページ目をお開きください。今回の部会では、現物給付ということで、 サービスの量と質の拡充についての必要性、あるいはその手法についての議論を中心にし ていただきたいと思っています。2ページの図でいきますと、赤い点線枠で囲った中の「保 育」あるいは「放課後児童クラブ」や、「母子保健事業」などといったところのご議論をい ただきたいと思います。次回は、この赤枠の外の上にあります「育児休業」や「短時間勤 務」、あるいは下にあります「育児休業給付」「児童手当」といった現金給付の関係、さら にはこれら全体のサービスを賄います財源や費用負担など、そういったところについて、 ご議論いただければと考えています。  1ページおめくりいただきまして、「保育サービスの全体像」ということで、保育に関し ましては幾つかのサービス給付が組み合わさりながら、事業が全体として展開されている 形になっています。まず、黄色のところを見ていただきますと、ここが11時間開所の保育 所(通常保育)の部分です。財源につきましては、国からのお金は負担金という形で、義務的 な経費として賄われている部分です。右にいきまして、この11時間を超えた延長保育と言 われている部分は、また別の給付サービスとなっていまして、同じ一般財源でソフト交付 金ということで、裁量的な補助金という形で国からの補助金は出されています。一方、左 側にいきまして、週2日〜3日、あるいは半日という部分的な利用の場合のサービスとして は特定保育ということで、別類型の給付として、財源は児童手当の事業主拠出金で賄われ ている特定保育という類型が別にあります。通常保育の下の赤色のところは、休日保育と いうことで、これも事業主財源で賄われている部分です。もう一つ下にいきまして、時間 帯をずらして夜22時までということで、夜間保育という類型のサービスが別にありますが、 基礎的部分は通常保育と同じ負担金で賄われていますが、上乗せ経費分については事業主 財源で賄われている形になっています。さらにその下の右に、トワイライトステイとあり ますが、仕事の都合などで夜間に預かりをする必要がある場合には、別類型としてサービ スが構成されています。この財源は一般財源でソフト交付金という形になっています。そ の下に今回の法改正で法律上の位置付けを出させていただいています家庭的保育です。こ れも事業主拠出金を財源に行わせていただいています。その下の認可外保育施設の類型の 中に、事業所内託児施設があります。これについては、病院内の事業所内託児施設は一般 会計で別途補助金がありますが、それ以外の民間の事業主のものについては雇用保険のお 金で、補助金が5年間に限り出されている状況です。それ以外のいわゆるベビーホテルや、 自治体単独でやっているような保育施設などは認可外施設として国からの補助が出ていな いという仕組みになっています。さらに一番下にありますように、幼稚園で午後に預かり 保育という形で保育が行われている所があります。保育制度の面から見れば、この中に保 育に欠ける子どもも一部入っているというのが現状かと思います。さらに一番上ですが、 事業主財源で病児・病後児保育が別に行われています。このような全体像になっています。  論点としては、それぞれ担っているサービス給付を新しい枠組みの中で制度的にどのよ うに位置付けていくか、あるいは財源構成や事業主負担の在り方など、そういったところ を体系的に整理し直すときに、どのように整理をしたらよいかといったところが一つあり ます。  もう一つは、全体は提供サイドから見た図になっていますけれども、利用者サイドから 整理をし直した場合に、例えば延長保育と通常保育の関係をどう考えるか、あるいは特定 保育を別類型としているけれども、この通常保育と一体的に組み直す必要がないかどうか、 休日保育についても同様ですし、家庭的保育については今回の法律上は補完的位置付けと していますが、新しい枠組みの中でどのような位置付けをしていくか、事業所内託児施設 をどうしていくかなどが大きな論点としてあろうかと思います。  次に資料1にいきます。1枚おめくりいただくと目次というページがあります。両立支援 系のサービス給付と、もう一つはすべての子育て家庭に対する給付・社会基盤と大きく分 けて二つありますが、まず両立支援系のサービスについて順にご説明してまいります。  2ページです。2ページ〜4ページ目は認可保育所についての制度の概要を整理したもの です。まず、概要のところは資料2に移っていただいて4ページの図は、昨年末の重点戦 略あるいはワーク・ライフ・バランスの行動指針の数値目標、あるいは最近の新待機児童 ゼロ作戦における数値目標などを概念図で整理し直したものです。横軸に年齢軸が取って いて、縦軸が利用率です。まず3〜5歳のところを見ていただきますと、現在135万人40% の利用率ですが、ここを56%ということで約50万人の需要増を見込んでいるところです。 この年齢層は全体としては幼稚園と保育園でサービスが9割以上賄われているところです ので、新しくできました「認定こども園」の制度や、あるいは幼稚園の活用策をどうして いくかなど、そういった幼稚園との関係を整理しながら新しい枠組みを考えていく必要が ある部分です。次に0〜2歳です。ここは現在20%のところを38%に利用率を引き上げて いきましょうということを言っているわけですが、ここはまさにサービスを純増させなけ ればいけないところで、人材面、あるいは箱物といった基盤整備をどのように図っていく かということが課題かと思います。右側の小学校のところですけれども、ここは19%を60% に大きく引き上げる数値目標になっていますが、これも人材面、あるいは施設整備、箱の 確保、あるいは財源の確保、ここは事業主財源で国の財源は賄っているところですので、 そういったところをいかにしていくかということが論点かと思います。さらに0歳のとこ ろにつきましては、まず下のところを見ていただきますと、各歳の単価を整理してありま す。事業費ベース、公費負担ベースで見ても、他の年齢層と比べて大きく高くなっている ところです。この0歳児保育については単純に利用者増を図っていくということではない、 何らかの仕組みを考えていく必要があろうかと思います。  ここの部分は重点戦略では、育児休業や短時間勤務等の働き方の部分から、切れ目なく 保育サービスが利用できるようにしていくということが整理されています。今後女性の継 続就業率を高めていくということに併せて、男性も含めて育児休業の利用が進んでいくこ とが期待されるわけですが、一方で保育制度の側では、年度途中の入所が非常に難しい現 状が特に都心部であって、どうしても4月に入所をしがちであるということで、その結果0 歳児の保育を受ける方が多くなる傾向があります。こういったことを踏まえて、育児休業 の制度側と保育の制度側の双方から、どのようにこの0歳のところを考えていくかという 別の論点があろうかと思います。  次に資料2の7ページの「3歳未満児における保育サービス利用率」です。これは全国ベ ースでいくと約2割といったところですが、これを都道府県別に見たものです。ざっと見 てかなりばらつきがある感じですが、例えば青森県、石川県、島根県、高知県といった所 は3割を超えて4割近いところもあります。一方首都圏や中部地域、あるいは近畿という 大都市圏を抱えている所についてはやはり利用率が低くなっているのが見てとれるかと思 います。比較的、量的整備が進んでいる所と潜在需要も含めて、さらにサービスの充実を 図るべき所に分かれているということかと思います。また、さらに県内でも恐らく都市部 と郡部では状況に差があるかと思います。郡部は郡部で、保育所に空きがあるという問題 があろうかと思いますので、そのような地域性を考慮しながら、保育ひいては子育て支援 サービスをどのように確保していくかということが課題になってくるかと思います。  1ページおめくりいただいて、「保育所待機児童の現状」です。左のグラフは折れ線グラ フが入所定員数です。毎年おおむね3〜4万人ぐらい定員数が増えてきていますが、棒グラ フの待機児童の数を見ますと、2,000人ぐらいの減りであると。保育所を整備することによ って潜在需要が喚起されて、作ったほどには待機児童は減らない状況です。  右側の待機児童は都市部を中心とする特定の市町村で、2歳児以下のところに多くの割合 が占めているところです。  さらに1ページおめくりいただいて、同じく待機児童に関する資料です。これは重点戦 略のときにも出ている資料ですが、ある四つの市を見て、保育所の定員を一番左の欄でそ れぞれ増やしているわけですが、左から四つ目の欄の待機児童数は定員の増ほどは減って いない。さらには、その減り方にも若干の違いがあって、一番右の欄の3歳未満児の入所 割合がそもそも低い所はやはり減りが少々低いという傾向が見て取れるかと思います。こ れも潜在需要の問題があるということかと思います。  次は資料1に戻っていただきまして、2ページ目の「(2)サービス提供・給付責任」のと ころです。認可保育所については、後で他のサービスを見ていただきますが、ここの部分 だけ市町村に対して保育所における保育の義務付けという形で、サービス提供責務が掛か っているという形になっています。一方、括弧書きで、やむを得ない事由があるときは、 その他適切な保護という形になっていまして、ここで待機児童の問題や認可外保育施設の 問題などがそういった形になっています。ここは新しい枠組みで制度的にどのように組ん でいくかということが課題の一つかと思います。  「(3)基盤整備」ですが、これは今回の法改正で出させていただいている次世代育成支援 対策推進法の行動計画で、参酌標準を国が示して、潜在需要も含めて計画的な整備を進め ていただくという部分です。財源については、施設整備補助が出ているわけですが、一番 下から2行目の「費用負担」を見ていただきますと、国も2分の1を出していますが、市 町村も4分の1の負担がある。さらに公立保育所については、三位一体改革ですべて一般 財源化しています。兼ね合いで4ページ目を見ていただきますと、こちらは運営費の財源 構成を図で示しております。私立保育所については県と市でそれぞれ4分の1ずつの負担 があり、公立保育所についてはこれも三位一体改革で全額市の負担になっているというと ころです。現状では地方の、特に市町村の財政が非常に厳しいという状況がありまして、 今後保育のサービス量を増やしていく議論をしていく上では、地方財政措置をいかに講じ ていくか。さらにはこのような子育て支援の分野にいかに投入を確保するかというところ が重要な論点かと思います。  1枚お戻りいただいて3ページの「(4)事業開始規制等」です。特に民間主体が実施する 場合は都道府県知事の認可が必要になります。主体制限はありませんので、現行制度上は NPOでも株式会社でもできる仕組みになっています。この認可は最低基準等を守っていた だく必要がありますが、法律上明文では、それ以外どういった場合に拒否ができるかなど、 そういったことの限定列挙等の規定はありませんので、施設の分布状況や入所の必要児童 数などを考慮して都道府県が一定程度の裁量の範囲内で認可をする仕組みになっています。  もう一つの認可された場合の効果としては、認可された保育所の運営費については、義 務的な負担が行われる仕組みになっていますので、他のサービスも含めて新しい枠組みの 中で、給付対象となるサービスの規制の枠組みをどのように構築していくかというのが論 点かと思います。  次に「(5)サービス利用の仕組み」です。必要性の判断については、いわゆる「保育に欠 ける」要件があります。これについての具体的なところは、国は大枠の基準を示している にとどまっていまして、具体的には各市町村が条例で細かい要件を定めています。現状で は、要件はそれぞれの市町村で異なっていまして、都市部では週4日以上と基盤の整備量 に応じて、比較的狭めの要件になっている所もあれば、郡部では週3日、さらにもう少し 要件が緩い所もあり、それぞれの市町村ごとに要件が異なっています。ここの部分につい ては、あくまでも新しい枠組みでも、公的な財源でサービスの費用を賄うことになります ので、仮にここの部分を見直すとしても、何らかの要件の判断は必要になってくるかと思 います。そういった場合に、どのような視点で見直しをしたらよいのか、あるいはするべ きではないのかといったところと、どの程度全国的に統一した基準を作っていく必要があ るかといったところをご議論いただく必要があるのではないかと思います。  次に「(2)サービス利用の流れ」です。これは平成9年に法改正が行われていて、従来は 措置であったものが、保護者と市町村の間の利用の契約でサービスの提供が行われる仕組 みに変わっています。ここについては、この仕組みをどのようにしていったらよいかとい うところが論点です。  さらに「(3)利用料」も新しい枠組みです。現状については資料2の13ページを開いてい ただきますと、基本的には所得に応じた費用徴収額が国の基準として定められています。 その費用徴収基準額の表です。現行の制度はこのようになっていますが、新しい枠組みの 中でこのような利用者負担、利用料について、どうしていったらよいのか、そういったと ころが一つ論点としてあります。  次に「(6)サービスの質の確保に関する仕組み」です。大きく分けますと、人員配置と設 備の基準があります。資料2の14ページを見ていただきますと、「保育の質を支える仕組 み」ということで、このページでは四つの要素を掲げさせていただいています。まず一つ は職員配置です。子どもに対して職員の配置の基準がありますが、こういった人の配置を どうしていくかというのが一つあります。二つ目は職員の保育士資格を求めています。保 育士資格の中でも、現任の研修をどうするのかなど、そういう職員の在り方が二つ目の要 素としてあります。三つ目としては、運営上の基準として保育の内容があります。これに ついては、今月に新しい告示を出させていただく予定にしています。四つ目には、都道府 県の監査、あるいは第三者評価といった第三者の目で質を評価していくという枠組みがあ ります。  18ページに飛んでいただきまして、もう一つは質といったときに職員の処遇の問題もあ ります。必ず経営上の問題が入りますので、制度的にどうこうという問題でもない部分が あります。現状の実態を整理させていただいた表を出させていただきました。勤続年数は 保育所では約7.6年で、年齢でいきますと33歳ぐらいです。決まって支給する社会保険な どを控除する前の月収が22万円ぐらいという現状です。この質の改善の議論については、 財源措置の必要性と裏腹の議論で、限られた財源の中で、どのようなプライオリティ付け をしながら質の改善を図っていくか、あるいは全体として効率的な給付とする観点との兼 ね合いで、どのように保育の質を考えていくかといったことが重要な点かと思っています。  次に資料1に戻っていただいて4ページです。下の「(8)その他」で、一昨年の10月から、 「認定こども園」という制度が開始されていまして、特に3歳〜5歳のところについては、 幼稚園と保育園の関係をどうしていくか、あるいは「認定こども園」の仕組みをどのよう に活用していくか、そういったところが新しい枠組みでの課題かと思います。  次に5ページです。以降、延長保育や保育に関連するサービスについて幾つかご紹介し ますが、基本的には保育と同じように、それぞれの項目ごとに現状の整理をしています。 一つ一つ説明すると時間がかかりますので省略させていただきますが、「延長保育事業」で 言えば、同じ保育所で行われるサービスとして、通常保育との関係をどのように整理する か。例えば、給付の位置付けをどうするのか、あるいは利用の仕組み、利用料をどうする のか、そういったところが論点として考えられます。  7ページには「休日・夜間保育事業」です。これも同様です。  9ページに「特定保育事業」ということで、パートの方の特別の類型の給付があります。 これも同様です。  次に11ページで「家庭的保育事業」です。これは今回の法改正の案において保育所の補 完的役割として、(2)に書いてありますように位置付けさせていただいていますが、新しい 枠組みの中でどのような位置付けをしていくかということが論点かと思います。  1枚おめくりいただいて12ページです。「(5)サービス利用の仕組み」について、必要性 の判断は保育所と同じように保育に欠ける児童ということになっています。サービス利用 の流れについては、法律上特段定められていません。こういったところを新しい枠組みで どうしていくか、あるいは人員配置のところをどうしていくかという問題があります。  さらには費用のところも、今回の法改正では特段、従来の費用構成はいじっていません ので、現行は事業主負担で補助金という仕組みでやっています。負担金になっていないと いう意味で、補助金でやっています。こういったものを新しい枠組みの中で、給付の位置 付けとともにどのように考えていくのかというのが論点かと思います。  次に13ページ目です。病児・病後児保育事業です。これについては大きく分けて、その 地域の病気・病後児をオープンの形で受け入れるものと保育所で体調不良となった子ども を一時的に預かるという二つの類型がありますが、ここの大きい論点としてはいかに「実 施箇所数」を増やして身近に利用しやすい環境を整えていくか。そのためには、どういう 課題があってどのようにその課題を解決していったらよいかということかと思います。ち なみに平成20年度の予算では、採算面に配慮して補助単価のアップなどを図らせていただ いているところです。  14ページ目の「サービス利用の流れ」のところで、医療機関以外の実施施設ではいった ん診断書を入手していただいた上で受け入れ施設に行っていただく必要がある。あるいは 質の確保の仕組みでは、「人員配置」あるいは「医療機関との連携体制」を求めるなどとい ったことが行われています。  次に15ページ目の「放課後児童クラブ」ですが、資料2の22ページ目を見ていただき ますと、順調で着実にサービス量が増えてきています。1枚めくっていただくと、それを都 道府県別に見て児童数と比較した登録児童数の割合を見ると、このようにばらつきがこれ についてもあると見て取れます。もう一つ視点を変えて、小学校区においてどれぐらい実 施率があるかというのが24ページ目の方です。分布が違うことが一見して分かるのですが、 24ページ目の方で行きますと都市部は高い割合になっています。従って、小学校区におけ る実施率という意味では、都市部はだいぶやってきているのですが、23ページ目の利用率 で見ると、まだ都市部はやはり低くなるということで、需要がたくさんあるということか と思います。  25ページ目は「放課後児童クラブの現状」ですが、左上のところはどういった人員、人 数の規模別でどういうような状況になっているかということです。平成19年10月に出し ましたガイドラインでは70人以下にしましょうと言っているわけですが、71人以上のとこ ろが現状で15%程度ありますので、まずはこういったところを解消していく必要がある。 事業全体が自由な設計になっていますので、「終了時刻」について国は特段申し上げていな いわけですが、大体18時ぐらいまでといったところが多いというのが右上のところです。  資料1に戻っていただきまして15ページ目ですが、「(2)サービス提供・給付責任」のと ころは保育と違いまして、特段の義務付けがなく市町村には努力義務がかかっている。そ の裏返しだとは思いますが、経費についても16ページ目にありますように、ここは事業主 財源でやらせていただいているわけですが、保育のように負担金の構成にはなっていない という形です。以上が両立支援系への給付サービスですが、17ページ以降はすべての子育 て家庭に対する給付サービスです。  一つ目は「妊婦健診」ですが、こちらの仕組みとしては(2)にありますように、市町村に 対しては必要に応じて受診勧奨を行うことが義務付けられており、何回程度助成するかと いうことは独自に市町村が決定する仕組みになっていまして、財源も一般財源化されてい ます。地方交付税措置で5回程度ということを平成19年度から言っているわけですが、資 料2の27ページ目をご覧いただきますと、これは平成19年8月現在で取った助成の回数 の都道府県別の状況です。国は5回程度と言っているわけですが、この時点ではまだ5回 に達しているところはあまり多くないということが一つ見てとれます。二つ目は、黄色い ところの近畿3県が2回にも到達していないという状況で低調であるということです。三 つ目は秋田が突出して高くなっています。これは秋田県知事が非常にここに熱意があって、 県費を出されているということで、このように自治体の熱心さによってだいぶ格差がある という状況が見てとれるかと思います。  資料1に戻っていただきまして、18ページ目は「乳幼児健診等」でこちらは市町村に実 施が義務付けられています。こちらはそういうことです。  19ページ目のこんにちは赤ちゃん事業ですけれども、これは今回の法改正で努力義務付 けまでさせていただいています。これは市町村の事業としてやっていただく。新しい枠組 みとの関係で言えば、他のサービスもそうですが、どのように費用保障していくかという ところが論点になってくるかと思います。これは21ページ目の「育児支援家庭訪問事業」 についても同様です。  次に23ページ目ですが、「一時保育(一時預かり)事業」です。これは育児疲れや冠婚葬祭 などといったときの一時的な預かり事業に対応するサービスですが、今回の法改正で一番 下(4)のところですが、主体制限はなくしています。一方、補助については認可保育所に対 して財政支援をするという形になっています。新しい仕組みを考えるときに、この財政支 援をどういった単位で行っていくかということ、あるいは重点戦略でこれは大類系で対個 人給付として整理している部分ですが、新しい枠組みの中で給付の位置付けを、どのよう な位置付けにしていくかということも論点かと思います。さらにはどの程度の利用を念頭 に制度を組んでいくかということも論点かと思います。  次に25ページ目ですが、「子育て短期支援事業」です。こちらのショートステイの方は 児童養護施設などで数日間、養育・保護していただくという事業があります。さらにトワ イライトステイについては仕事などの都合で夜間の預かりが必要なときに対応するサービ スです。  次に27ページ目ですが、「地域子育て支援拠点事業」です。これは子育て親子の交流を 促進することや情報提供、相談を受けるなどという事業です。今回の法改正では主体制限 なく都道府県知事の届出ということを位置付けさせていただいています。  資料2の29ページ目ですが、これも都道府県間においてかなり格差がある状況が見て取 れるかと思います。乳幼児人口当たりで見ているものです。どちらかというとやはり都市 部が少し厳しいかなというのが見て取れますが、必ずしもそう割り切れない状況かと思い ます。  1枚めくっていただいて30ページ目ですが、これは幾つかの事例を聞かせていただいた ものですが、例えば「事例1」を見ていただきますと、下から二つ目の箱に、国庫補助基準 額436万円とありますが、実際に市町村からこのNPOに補助が出ていますのは、さらに四 つ上の欄に「42%(180万円)」と書いています。国の補助基準よりも下の単価で市からの委 託が行なわれているところも市町村の財政が厳しいということの反映だと思います。その 結果、さらに四つ上の真ん中の辺にある「人件費」のところを見ていただくと「73%」と 書いてありますが、このNPOでは1人当たり年で18万円という人件費になっているとい う非常に厳しい状況が見て取れます。こればかりではなくこういう例もあるということで、 「事例3」を見ていただきますと、真ん中辺りに「賃貸料」というのがあります。「賃貸料」 が「50%」ということです。これは都市部なのでなかなか場所の確保が難しいということ で、「人件費」の方にしわ寄せがいっているという事例です。  資料1に戻っていただいて29ページ目ですが、「ファミリー・サポート・センター事業」 です。これは地域の人材を活用しながら、柔軟にソフトに利用しやすいサービスを展開し ていくというもので、うまく機能している所では利用者から高い評価を受けているという ことですが、公費としてはどの部分を当てているかというと、提供の登録会員と利用の登 録会員の利用調整をするアドバイザーを置くことになっていますが、その利用調整の部分 について公費で補助するという仕組みになっています。この新しい枠組みでどのように位 置付けていくかということですが、一つは保育所あるいは放課後児童クラブを補完するも のとして、どのように事業展開をしていくか。あるいは新しい枠組みにどのように位置付 けていくかというのが一つの論点だと思います。もう一つは、箇所数を全体として増やし ていく必要があるということと、実施している場合でも提供会員数はそれなりに充実して いないと非常に使いづらいという形になりますので、いかに会員数の増を図っていくかと いうことかと思います。  31ページ目は「児童館事業」です。子どもの健全な育成を支援していくものとして児童 館という場を活用して、いろいろな各種の地域の取組を支援していくものですが、こうし たものも新しい枠組みの中で、どのように位置付けていくかということです。  最後に、33ページに「社会的養護」の資料を付けさせていただいています。利用の仕組 みとか、これは措置という形になっていますが、あるいは事業の性格がこれまで説明して きた事業とは必ずしも同じではありませんが、広くのすべての子育て家庭を支援する枠組 みを考えていくときに、特別な支援を要する子どもについての対策も常に考えていく必要 があろうかと思います。ここについて措置という仕組みについて見直しをしていくという ものではありませんが、サービスの質あるいは量といったものを拡充していく議論につい ては、他のサービスと同様に必要かと思います。  資料の説明としては以上ですが、資料6として杉山委員からの意見の提出がありますの で、私の目から見てポイントとなるところを、二つ、三つ最後に紹介します。  1ページ目では「議論に先立ち必要と思うこと」の三つめのポツです。「待機児対策を積 極的に行わなければならない都市部」と「若者が減る一方で少子化対策が必要な地域」そ ういったところでは取り組む内容が違うということ。あるいは年齢別にもいろいろ考えて いく必要があるということを指摘されています。  その一つ下では、抜本的に見直す必要があるとおっしゃった上で、ワーク・ライフ・バ ランスの応援に資するものという観点を大事にする必要がある。あるいは「サービスがあ る」ということで、親がそちらに流れてしまうという側面があるのではないかということ です。次のページの一番上のところでは、子どもが病気のときに預かってくれるサービス が、先進国にどのようにあるのか、そういったことも調べてほしいということが書いてあ ります。  あるいは2ページ目の上から6行目ぐらいのところでは、「特定保育」「休日保育」につ いては通常保育に組み込んでもよいのではないか。あるいは「通常保育はすべて税金で」 という考えはバランスを欠いているのはないか。あるいは、施設整備費について今後量を 拡充していく中で、株式会社、NPO法人も対象にしていったらどうか。  その下の真ん中辺りのところでは、家庭的保育事業は保育の柱として独立させた方がよ いのではないか。病児・病後児保育や一時保育など、何を「専門職」に委ねて、何を「地 域のボランティア」に委ねるかといった整理も必要ではないか。  一番下のところでは、介護保険制度のケアマネジャーをイメージされているかと思いま すが、親子の状態を把握しながら「あなたにはこの支援サービスがいいのでは」という案 内をするような役割の人を置いていただけないかといった提言がされています。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。事務局から次世代育成支援に関する現物給付の現状について、 大変膨大かつ詳細なご説明をいただきました。ご準備が大変だったことと思います。あり がとうございます。皆様からも、いろいろと今のご説明に対してご質問もあるかと思いま すが、まず議題2を先にしてその後でご議論いただければと思います。  次は議題2の「サービス利用者・提供者からのヒアリング」として、この領域に関して 有識者でいらっしゃいます普光院参考人そして坂崎参考人からご説明いただきたいと思い ます。それでは、最初に普光院参考人からご説明をお願いいたします。よろしくお願いし ます。 ○普光院参考人  「保育園を考える親の会」の代表をしています普光院と申します。この会は1983年から 始まって2008年で四半世紀になりますけれども、私は途中から代表を引き継ぎまして、い ろいろと働く親同士の支え合いや情報交換また保育制度のさまざまな調査等の活動をして います。皆さんのお手元に配らせていただきました「つうしん」という機関紙を2カ月に1 回発行することや、会員同士のメーリングリストを作っていて、そういったところで働く 親たちの交流と支え合いの活動をしています。そのような活動を長く続けているというこ とで、いろいろな自治体や国の方の委員会等でも委員をさせていただくこともあり、そう いった立場からもいろいろとこれまで考えてきたことをまとめてきましたので、これから ご説明したいと思います。  皆様のお手元にあります資料4の「利用者から見た保育サービスの現状と課題」という ところに私は名前を入れ忘れてしまいまして、大変失礼いたしました。「保育園を考える親 の会」の普光院と申します。メモしておいていただければと思います。  まず、先ほどのご説明にもありましたように、まだまだ量的には拡大しなければならな いという国の読みがあるわけですけれども、これまでも「量拡大」ということでずっと進 んできたというプロセスがあったと思います。「量拡大の時代の検証」ということで、これ まで行われてきた施策について、私の見ている範囲でわかっていることをここにまとめて みました。(参考資料1参照)となっていますけれども、この資料の6枚目のところに、主に 規制緩和等で保育制度の変遷についてまとめた年表を掲げています。この年表を見まして も、一つ保育制度の変遷は、規制緩和とそれからもう一つ保育サービスの多様化という二 つの流れで進んできたのではないかと思われます。  その中でまず1点目に「保育士の非正規化」ということを挙げています。保護者にはこ れは実は見えにくいところではあるのですが、これは質に及ぼす大きな変化ではないかと いうことを心配しています。短時間保育士に関する規制緩和というのは、非常に教科書的 な規制緩和だったと思うのですが、実はレジュメの7枚目に参考資料2というものを掲げ ていますが、このように保育所の中の仕事というのは、さまざまなものがあります。この 規制緩和は単に保育所が延長保育等の柔軟なサービスを行なえるようにということで、こ のような緩和をされたと思うのですが、実際にはパート保育士はこの時点で既に保育所に はたくさん導入されていたわけで、この緩和によってむしろクラス担任の方に短時間保育 士を導入しようというものが打ち出されたことによって、クラス担任という職務に対して 非常に軽視が起こったのではないかと思われます。現実には子どもの10時間ほどに及ぶ生 活の中で、担任の保育士がコロコロと2、3時間ごとに入れ替わるということは、情緒の安 定という意味でも現実的ではありませんし、また保育所の安全管理や勤務管理という面で も非常に難しいところがあると思います。そういうことで、実際には非常に短時間で働く 形では入っていなくて、現状で非常に増えているのは常勤という、いわゆるほとんどフル タイムで働いているのだけれども雇用形態が非正規であるという形の保育士が、特に公立 保育所において、特に地方の財源、財政が苦しい地域において増えているということを、 私も地方にいろいろと呼んでいただいて行くことがあるのですが、お話を聞いて実感して います。ここに正規雇用が園長と主任だけという町立保育所があったというようなエピソ ードも書いてありますけれども、こういったことでこの後少しお話ししますけれども、役 割が大きくなっている認可保育所の職務が果たせるのだろうかと。そういった保育士配置 等を決めているのは行政の方で、保育の中身というものをあまりご理解ない場合もありま すので、非常に粗っぽいことになってないかということを心配しています。  その背景にあります一つのこととして、次の「公立運営費の一般財源化の影響」という ことがありまして、これは資料3と書いてありますけれども、資料の8枚目のところに、 これは全国保育協議会の公立の園長に取ったアンケートでありますけれども、他のいろい ろな団体でどのような変化が生じているか。また厚生労働省でもアンケートを取られてい たようですが、やはりこの一般財源化によって、まず保育予算の確保が非常に難しくなり、 一番簡単なのは保育材料費等を削減することなのですが、その他に職員の雇用形態や民営 化、保育料の値上げ等を行っていく理由や根拠になっているということが挙げられるかと 思います。  次の参考資料4で、これが特に規模の小さい自治体の中で顕著になっているということ が、市町村の所管課に取ったアンケートによって明らかにされています  地方6団体の三位一体改革の議論では、この一般財源化によって地方自治体が創意工夫 を凝らした保育サービスを充実していけるはずだという議論だったと思うのですが、現在 起こっていることは、むしろ固定されていたお金がなくなったことによって、それを理由 に保育サービスを弱めていく。あるいは財源を確保しにくくなっているということが起こ っている現状を見ますと、ひょっとしたらこの国庫負担金というのは規制ではなくて保育 の「下支え」というものだったのではないかということで、ぜひこの公立運営費の一般財 源化の影響については、検証が必要ではないかと思っています。  保育の多様化ということで、認証保育所ということが例に挙がってくるわけですけれど も、認証保育所について保育の質というのは、玉石混淆ではないかということで、はっき りと何らかの数字なものが出ているわけでは全くないのですが、さまざまな調査によって、 また私が聞いています関係者の話によれば、非常に人材の定着や育成が困難になっている 現状もあるということです。ここに挙げています資料10枚目のところに、東京都が調べた 認証保育所の職員の月収の平均が挙がっていまして、これが非常に低いということがわか るようになっています。これはまだできて年数が浅いことや、あるいは短時間の保育士が 多いということが確かにあるのですけれども、それ以上にこういった月収18万円未満の保 育士、スタッフが76%もいるということを考えますと、この中には常勤の人もかなり含ま れているはずで、非常に待遇が厳しいということがわかるかと思います。  それから、認証保育所に関しては、駅前の徒歩5分以内に設置した場合に、改装費が最 高3,000万円まで補助されるということで、駅型、駅前誘致型なのですけれども、そうい った環境が非常に無造作につくられて、雑居ビルですとはめ殺しの窓なので窓も開けられ ないという環境、子どもが自然を感じるということが非常に少ない環境でありまして、ま たこれを戸外活動等、体を十分動かす活動をするためには、非常にスタッフの努力と経営 者の信念が必要で、毎日近くの公園に散歩に連れて出るということもなかなか厳しい立地 であったりすることもあります。また、駅前のビルということでテナント料も高いことな ども心配な要素かと思っています。あと、認証保育所の面積基準が認可保育所よりも緩い から、認証保育所が増えたと考えておられる向きもあるのかもしれませんが、私が考える ところでは同じように規制緩和されている認可保育園よりも認証保育所の方に株式会社が たくさん参入したということの裏には、行政の補助金に関する関与が非常に少ない、「売上」 になった補助金と利用料はどのように処分しても構わないという、経営のある意味自由で はあるのですが、そういうところがあるかと思っていまして、果たしてそれがそのように 緩い状態で適正な保育水準が保たれるのかどうかというのは未知数だと思っています。  それから、認定こども園に関してですが、モザイク的な制度になりましたけれども、私 が一番気にしていますのは、幼稚園型で3歳未満児の保育を行った場合に、認可外保育所 と同様、補助金のない状態になるということ、また地方裁量型などにおいてはどういうも のを地方自治体が認定こども園に認定してよいかということについて何もなくて、私の知 っているところでは、全く公的な補助金の出ていない認可外も「特定認可外保育施設」と 呼んで、それを認定こども園に認定するという自治体もあるという状況です。それでは認 定こども園という看板は保護者や子どもに対して、何を保障しているのかというところが 非常にあいまいになっているということが気になっています。このようにその制度そのも のが悪いなどと否定するわけではないのですが、非常に危惧されるところがあり、この制 度の見直すべき点というところもあるのではないかと思っています。  レジュメに「子どもと家庭のニーズ」と書きました。これはこの少子化の部会では、何 度も確認されているかと思うのですが、まず共働きが一般化する中で、以前は女性の自己 実現のための共働きなどと申しましたけれども、今や生活防衛のために共働きをする時代 になったということで、保育所というものがライフラインになっていて、切実度が高い施 設になっている。例えそれがひどい施設でも、保護者は「明日から行きません」というよ うな選択がしづらい。あるいは保育所が突然なくなってしまったら、次の日から生活に行 き詰まるという非常に切実度の高い施設になっているということがあるかと思います。  それから、保育料や困難家庭の入園などについて、子どもの平等やセーフティネットの 在り方を配慮した制度を維持する必要性があるのではないかと。それは今の社会状況が、 非常に格差が広がり生活が厳しい家庭が増えているということを考えると、その必要性が あるのではないかということです。  それから、「子どものことがわからない」「子どもが育ちにくい時代」と書いていますが、 少子化の中で本当に子どもモデル、子育てモデルが少なくなり、親に子どもの育つ姿、発 達ニーズが見えにくいという状況が発生している中で、それを社会が補っていかなくては ならない、いわゆる子育て支援をしていかなくてはならないという状況が一般的になって いると思います。その中で虐待の増加やさまざまな多様な子どもの育ちの状況、「保育園を 考える親の会」にも発達障害やアレルギー、ひとり親の方などやさまざまな保護者がいら っしゃいますけれども、そういうものに対する対応がしっかりさらに広く求められるよう になっているだろうということで、そういったことを考えますと、単に保護者のニーズに 応えるという商業的なサービスというもので、そういうものがカバーできるのかどうかと いうこと。子どもの最善の利益の追求をミッションとした、ある程度の公共性を持った事 業、また保育に関する専門性を有する支援というものが必要なのではないかということが 言えるかと思います。  そして、「競争社会のきびしさにさらされる親の労働を支える」ということを書いていま すけれども、延長保育、病後児保育、先ほどいろいろと実施率等のご紹介がありましたけ れども、これに対応する必要があるということと、それから杉山委員がおっしゃっていま すように、これは実は一方で「労働(=働き方)の問題」と表裏一体になっています。また、 もう一つ「父親の分担の問題」と表裏一体になっているということに着目する必要がある と思います。父親および働く親がもっと家庭で過ごす時間を増やすことができることによ って、親と子どもの満足を増やし保育コストの増大を抑制する効果が期待できると。日本 の延長保育は非常に増えてきて私も保護者の1人としてうれしいのですが、一方でこれほ ど延長保育をやっている先進諸国があるだろうかと。いろいろとモデルに挙げられる国で は意外と保育時間が短いということもわかっていまして、やはりこれはワーク・ライフ・ バランスということをしっかり進めないと、さらに公的な支出も増える、つまり企業中心 社会のコストが結局保育コストにも跳ね返っているということは、一つ押さえる必要はあ るかと思います。  あと労働者としては、非正規雇用の激増によって、結婚・出産・子育てがより難しくな り、また非正規雇用の増加が正規雇用者の労働も過剰にしているという現状、これも労働 制度の問題ですけれど一言申し上げたいと思いました。  それから「保育サービスの課題」ということで、今まで述べてきたことをまとめていま すけれど、もちろん量的な拡充はこれからも必要という見方は間違いないと思います。し かし保育の質も向上するための体制をとっていかなければ、次世代の子どもたちの心身を 健全に育成することはできないだろうと感じています。 「保育士の人材の定着と育成」ということで、先ほど保育士の非正規化が進んでいるとい うことを申し上げましたけれども、このような待遇の悪さや労働過重が保育士のリクルー トにとってどういう影響を及ぼすだろうか。介護の世界では既に養成課程が廃止になるよ うな、志望者の減少ということが起こっています。これを一つの反省材料として、保育の 世界も見ていかなければいけないのではないかということです。そして今、保育所保育指 針の改定に私も参画しましたけれども、非常に保育所の役割の進化・拡大が求められてお り、それに見合った人材育成が非常に求められるようになっていると思います。  それから「保育士の配置を適性に」ということで、ここに11時間開所・週5日稼動を基 準とするのであれば、それに見合った職員配置をする必要があるということで、皆様のお 手元にあります「つうしん」の122号の6ページを開いていただきたいのですが、「うちの クラス、保育士さんの手が足りない!」ということで、例えば「3歳児30人に1人の保育 士」とか「2歳児30人を3人の保育士」とか「1歳児15人を2人の保育士」とか。これは たまたま、自分の保育園で起こっていることを投書してこられた会員の方、あるいはホー ムページにきたメールなのですけれども、これは都市部で、しかも首都圏ですので、本来 ですと国の基準よりも多めに保育士が配置されているはずなのですが、ここにあります通 り一時保育に手を取られていたり、あるいは定員外受け入れのための保育士のリクルート がうまくいっていなかったり、さまざまな理由で、何時間か午前中いっぱいですとか、丸 一日ということはないはずだとは思うのですが、かなり長い時間、国基準さえも切るよう な状況で保育が行われていたと。それも実は保護者がわかるのではなく、たまたま保育体 験で参加してこられた地域の母親が見たとか、あるいは何かの用事で早めにお迎えに来た 保護者が見たとか、そういう状況であり、保護者がいかに保育の状況というものを見るこ とができないかということも、この投書からわかるかと思います。  このような状況を踏まえていただき、例えば人格形成期の子どもが保育士に話しかけて も答えてもらえない状況、泣いても抱っこしてもらえない状況、あるいは口を開ければ給 食をどんどん詰め込まれるような状況が発生することのないように、ぜひ保育現場にきち んとした人の手を置いていただきたいというのは、親の切実な願いだと思います。  それから「適正規模の保育を」というのは、今大規模化が進んでおり、大規模の方が効 率的にコストダウンできるものですから、民営化などの機会や統廃合という形で大規模化 が進んでいるわけですけれども、大規模な保育施設よりも中小規模の施設が地域に転々と 適当な間隔で転在する方が、恐らく安心できる地域子育て支援ができるはずで、保育内容 も中小規模の方が良い保育をしやすいということは、恐らく保育の経営をしておられる方 でしたら誰しも認めざるを得ないところではないかと思います。それから保育ママが制度 化されますけれども、それと小規模認可の中間の良質の小規模保育を何とか制度として、 特に低年齢児の待機児対策に取り入れていけないものかと思っています。  それから、先ほど少し問題にしました規制緩和ですが、一般財源化と認定こども園等を、 もう一度どうなっているか検証する必要があると思っています。  それから「透明性を高める」ということで、第三者評価が筆頭に挙がってくるわけです けれども、この第三者評価はコンサルティング的な機能を果たしているという実績は上が っていると思いますが、よく言われていますように保護者が選択するときの判断材料とす るという点では全く今のところ、その効果はゼロだと思っています。その理由につきまし ては、私の著書に挙げております12枚目に「本当の質を求めて」ということを書いていま す。この中に、東京都は補助金をかなり出しておりますので普及しておりますが、全国的 にはなかなか受審料も高いし普及が難しいという状況であるとか、評価機関の力量にばら つきがあるということ、あとは非常に構造的なことですが、評価機関が施設をクライアン トとして、施設にまたリピーターとなっていただきたいという気持ちで評価をすることに よって、評価の公正を保つインセンティブが働きにくい構造になっているということは非 常に問題だと思っています。何とか親や子どもの、特に子どものための評価ができるよう なインセンティブが働くような何か制度の仕組みを作らないといけないのではないかとい うことも挙げております。また、評価項目が保育の本当は中身に関するものの比重が少な くなっていること。それ以外の抽象的な項目も多く、非常に膨大な評価になってコストが 高くなっていること等も問題だなと思っています。あまり細かく言っておりますと時間が ありませんので、これをお読みいただければと思います。それから、何よりも手っ取り早 いのが、指導監査をきちんと行って、その透明性を高め公表していくことを徹底していた だくということではないか。その中で、事業者の参入と退出について、本当に質の高い事 業者が、例えば認可外でも質の高い所が参入できるようにし、また意欲がなく問題がある 認可事業者があった場合には、それと入れ替われるようにするとか、そのために、例えば 認可業務の透明性を高めるとか、そういったことも現行制度の中で工夫した方がよいので はないか。その方が、市場原理の中で大量のお金を投じて供給過剰状態をつくり、長い時 間をかけて自然淘汰を待つというような、非常にリスクの高いやり方よりは、現行制度の 中で質の高いものを選りすぐっていく形を取った方が犠牲は少ないと思っています。  あと、少し長くなりますが、レジメの、「保護者支援や福祉的ニーズから求められること」 という項目ですが、保育園と保護者の関係が今は利用者とサービスを提供する側という関 係になっていますけれども、こういった位置付けが、ある程度保護者にとって、非常にド ライな、お金さえ払えばいくら預けても私の自由というような関係になる恐れもあり、や はりこれからは、こういう長時間保育が広がる時代だからこそ保護者と共に育てる関係で の保育所との連携というものが非常に求められているということを強調したいと思います。  それから、さまざまな困難を抱える保護者に対するソーシャルワークも求められている ということは、今後「保育所保育指針」の中にもあり、読んでいただくとわかることかと 思います。  それから「保育所の持つ特性」と(レジメに)書いていますのは、子どもがたくさん集 まり、専門職がいて、子どもに適した環境持っていること。それから所得に応じた保育料 により安心して利用できているという認可保育所にこそニーズが集中していることに着眼 する必要があるのではないかと思っています。認証保育所の料金は、先ほど私の資料を飛 ばしてしまいましたが、資料の11枚目に、私の方で試算しました東京都内のある区の認証 保育所と認可保育園の保育料比較をしていますが、やはりなかなか中間層、低所得層には 認証保育所は利用しにくい体系になっており、自ずと利用層も異なってきているというこ とがわかっています。そういったことからも、認証保育所の保護者も低年齢児を過ぎます と、空きができ次第、認可保育園移るという方が多いことにも注意していただきたいと思 います。レジュメの5ページ目ですが、最後に書きました図は、市場の契約関係はこのよ うなものであるが、次世代を社会で育てる仕組みというのは、事業者が単に保護者が求め るものだけを満たせばよいのではなく、もう少し広く地域や社会そして何よりも子ども自 身のニーズを満たすように目を向けるような仕組みであるべきではないかと思ってまとめ た図です。  長くなりまして申し訳ありません。ありがとうございました。 ○大日向部会長  数々の貴重なご意見を、ありがとうございました。  それでは、続きまして、坂崎参考人からご説明をお願いします。 ○坂崎参考人  坂崎でございます。今日は、保育現場の基本的な、今感じていることを10分ほどレジュ メに従って述べさせていただきたいと思います。普光院参考人と重なる部分があるかもし れませんが、その辺につきましてはご容赦願いたいと思います。  「1.保育現場の現状と課題」です。保育所に期待される役割の拡大というのは、もう皆様 方もご存じだと思います。この役割の拡大に対して、保育現場では子どもの最善の利益を 基本に置いて真摯な取組を基本的にしているというのが私たちのプライドであります。  その役割の拡大は、保護者に対する支援、3歳未満児の受入れ拡大に伴う健康・安全のき め細かい対応、発達障害を含めた障害を持つ子どもの受入れの増加、食育の推進、発達段 階に応じた幼児教育の充実等、現在保育所に期待されている役割は非常に深く、また拡大 しているという状況にあると思います。  一方、そこで働いております保育者・保育士の仕事というのは、「保母」から「保育士」 という名称に変わりました国家資格化により多忙を極めています。そして、それに見合わ ない待遇だとも基本的に感じています。保護者対応また園内研修、保育の諸準備等ありま すので、限られた職員による業務の多忙化というのは、やはり年々増えていると感じてい ます。  また、普光院参考人と重なりますが、規制緩和によるパート保育士の増加によります正 規職員の負担の増大等もこれは年々増えている状況にあると思います。また資料の1、2で も少し説明がありましたが、他の職種と比べて少し低い給与水準も基本的なところだと思 います。  こういうことを考えますと、この保育士の多忙化また待遇を含めて将来的にはなかなか 優れた人材の確保が、困難になるのではないかと懸念しています。  2番目に「2.地方の現状と課題」ということを少し話していきたいと思います。やはり量 の拡大というのが、基本的な今の国の施策としてあることは私も非常に感じています。し かし、現実としては、量の拡大とともに質の確保、またそれが都市と地方では随分違い、 保育の問題を浮き彫りにしていると感じています。保育水準の地方間の格差というのが、 やはり相当あるのではないかと思います。現在の保育所というのは、国の定める運営費だ けではなかなか運営しにくいことは一目瞭然で、例えば今回の資料の9ページ目に千葉県 と東京都の、ある市と区の例を挙げています。この中で「1人当たりの年額」というところ を見てくだされば、随分違うということがわかると思います。例えば青森県がこの国基準 以外のところのお金を、ほとんど出していない状況にあるわけです。  そういうこと考えますと、多くはギリギリの職員の配置の中で、また先ほどのところに 戻りますが、やはりパート保育士や正規職員との組み合わせによってのみ、ある程度保育 を行わなければならないという状況にあります。それから、先ほどご説明いただいた資料 の中で、青森県が非常にたくさんの、いわゆる延長等の特別事業、地域子育て支援事業、0、 1、2歳児の受け入れが非常に多くあると思います。逆にいうと、それらの補助事業ができ なかったり、0、1、2歳児が多く入らなければ保育士の数を確保できない。結果的には、週 5日間・11時間の66時間を、保育士をきちんと置いて保育ができるという状態ではないと いうところに、地方としては大きな問題があるわけです。  ですから、自治体が独自の追加財源を当てて運営費を増額しているという状況が、大都 会を中心としてあるわけですが、現実的には財政状況や首長の姿勢で保育水準に大きな地 域間の格差があることは間違いないと思っています。  よって、都市部と地方の直面する課題の違いは、はっきりしています。待機児童が多く あり、その解消のための保育サービスの拡充としている都市部と、私たちのような厳しい 財政状況の中での保育機能をやっと維持しているという地方とでは、非常に大きな格差、 保育問題としての問題の質そのものが違うような気がします。また、その中における少子 化またはっきりいうと過疎問題、そういうことと、保育が一緒になってきますので、そう いう中で保育が見捨てられていく、できなくなっていくという状況をどう考えていくのか ということも大きな問題です。  いずれにしても、「保育現場の現状と課題」「地方の現状と課題」の中で、認可保育所が ある程度高い保育実践と保育機能を発揮しているというのは、保育所と保育者の自助努力 やアイデアなどのいろいろな中での組み合わせを考えている中で成立していることであり、 そういうことを考えると、さらに十分に発揮するためには、保育環境の改善を図る必要が あるのではないかと思っています。  それでは、2ページ目に移りたいと思います。保育サービスを拡充するに当たっての現状 の認可保育所の要望を少しさせていただきたいと思います。「保育環境および職員の処遇の 改善による保育の質の確保」というのは非常に大きなことです。先ほど述べましたが、保 育時間というのは児童福祉法の中で8時間ほど使ってはどうかと書かれていますが、保育 所の開所時間は11時間です。現在の保護者の方々が保育時間を8時間と考えている方はど れだけおられますしょうか。ほとんどの方は11時間と考える向きが多いわけです。保育時 間8時間の時代は、保育士の働く時間は週48時間でした。現在、11時間の6日間、月曜 日から土曜日まで含めますと66時間です。その中で、保育士の働く時間は40時間です。 ですから、その長い保育時間といわゆる労働時間ということのギャップを埋めるのは非常 に難しくなってきています。ここに対する職員配置の整合性を何とか確保しなければ物事 は進んでいきません。  また、7ページに、ある程度諸外国の配置基準を入れておきましたが、0、1、2歳児、3 歳児辺りの子どもに対する日本の保育士の数と随分戦後からあまり変わっておりませんの で、この辺をどのように考えていくかということも大きな問題かと思います。  また、看護師、栄養士、障害児対応の方々、また子育て支援対応の方々など専門的な職 員の配置等ということも、保育所の中にだんだん盛り込まれていかなければならないので はないかと思います。また、何度も繰り返すようですが、他の職種との均衡のとれた保育 所職員の処遇の改善も併せて、何とかお願いできないかと思っているところです。これら と並行して職員の専門性、資質の向上ための施策の推進というのも、これからどんどん進 めていくべきだと思っています。  保育所の施設長の資格化。また、保育士短大・養成校卒業時の国家試験の導入、次に主 任保育士を含めた形での専門や上級資格の創設などに含めてこれからの保育士の研修の在 り方ということを、早急に進めていけるような形になっていくことが大切ではないかと思 います。  また、地方の中で、保育サービスの財源の確保のための仕組みの構築ということも非常 に大きなことだと思います。地方の自治体において、保育サービスを拡充する、また計画 的な基盤整備などがなかなかできていけないような状況、ある意味では地方財源が乏しい ので保育サービスができない、基盤整備できない、保育所を建てるのも何年か待たなけれ ばならないという状況にあることも確かですので改善が必要です。  いずれにしても1、2の現状と、それをある程度改善するためには3が必要なところでは ないかと考えています。  それでは、新たな保育システムの議論に当たっての意見も3点ほど述べていきたいと思 います。今回、直接契約等の利用者の選択にできる仕組みの議論ということが大きなお話 になっていると思いますが、まず、現行のシステムの成功例を十分に吟味していただきた いと思います。少子化の歯止めがかからなかったということと、認可保育所が果たしてき たこの十年間、平成7年からのエンゼルプランそして約12、3年の間に、保育所が、少子 化でこれだけ子どもが減っているにもかかわらず、約150万人から210万人近くまで、約 60万人入所者を増やしてきているわけです。認可保育所としてはいろいろな実績をもって やってきた例がありますので、決して今の仕組みがすべて悪いとは思いません。現在も選 択できる仕組みであるということを、ぜひ議論をしていただきたい。  そのためには、何といっても保育の必要性の高い子どもの利用が排除されないことや、 保育財源の確保、需給のバランスの確保、保育環境の改善を前提として、その可否につい てご検討いただきたい。直接契約することによる認可保育所のいろいろな問題を、今ここ で話すことはなかなか難しく、非常に荷が重いと思っている保育関係者、施設の関係者が たくさんいるということもお話をしておきます。  また、都市部の待機児童解消のための保育サービスばかりではなくて、少子化および過 疎地問題が直面している地方の保育サービスを充実するためにも、やはり国基準の財源の 確保や最低基準の維持をしていただきたい。  一般財源によるいろいろな問題を先ほど普光院参考人もおっしゃったように、そのこと による保育の制度の廃退ばかりではなくて、そこにいる子どもたちの最善の利益が失われ ていくような仕組みというのは、非常に懸念される次第です。  最後ですが、保育の具体的な制度設計という議論の中に、ぜひ保育関係者が参画する機 会をご検討いただきたいと思います。保育現場としては、ぜひこういう部会を通して、さ らなる認可保育所が活躍していけるように、その中で子どもたちが健全に幸せに保育をさ れることを基本的に願っていますので、そのような形で進めていただきたいと思います。 ありがとうございました。 ○大日向部会長  ありがとうございました。以上、事務局そしてお二方の参考人からご説明いただきまし た。本日は、質・量ともに非常に重い情報提供をいただいたと思います。ここから19時少 し前までを目途に皆様にご議論いただきたいと思います。  先ほど事務局がご提供くださいました資料1の目次を見ていただきますと、私どもが議 論すべき次世代育成支援に関するサービス給付に関しては、「I.仕事と子育ての両立を支え るサービス・給付」と、「II.すべての子どもの健やかな育成を支える給付・社会基盤」との 二つに分かれてご説明を事務局でいただいたわけです。  しかしながら、本日はお二方の参考人から特にIに関するところでのご意見・ご説明を いただいたかと思います。そして、これらは前回のこの部会で次世代育成支援に関するサ ービス給付を論ずるときには、ぜひとも理念というものをしっかりと確認したいというこ とがどの委員からも出されたと思います。それがまさに本日のお二方のご意見表明にも重 なっていたと思います。  従いまして、これから後は、できましたらせっかくおいでいただいているお二方のご意 見を中心としてご質問・ご意見等が皆様からあれば、それを出していただいて、目次Iの ところに議論を集中できればと思います。  それでは、どうぞ、どなたからでも、よろしくお願いいたします。では、清原委員お願 いいたします。 ○清原委員  三鷹市長の清原です。今日はお二人の話を伺って、前段で厚生労働省からご説明いただ いた実態と合わせて仕事と子育ての両立を支えるサービス・給付について幾つかの点を意 見として申し上げたいと思います。  まず、第1点目は、何よりもお二人がそれぞれ保育所を運営される立場から、あるいは それを利用される立場から、現在の保育所をめぐる問題について、非常に簡潔に、また実 態に基づいて整理をしていただいたことに心から敬意と感謝を表したいと思います。  その上で、第1点として申し上げたいのは、三位一体の改革の中で、とりわけ公立保育 園につきまして一般財源化されたことによりますこの間のさまざまな取組の中で、やはり 再検討すべき幾つかの課題があるという問題提起があったと思います。まず、1点目に留意 しなければいけないのは、こうした取組につきまして保育のサービスが基礎自治体に委ね られてきたわけですけれども、保育所の運営にかかる経費というのは、ある意味では義務 的な経費の側面があり、子育て支援に必要な経費であるという、公にかかる経費だという 共通認識が必要であるということを再確認したいと思います。  2点目に、だからこそ全国で、それぞれの地域特性に応じた柔軟な取組をするべく、基礎 自治体である市が臨んでいくということは当然のことなのですけれども、サービスの質や それからその内容については地域格差が生じてはならない。その地域格差が生じないため に、設置者は公立であろうと民間あろうと、それぞれ努力をされていると思います。その ために、とりわけ質の確保を担保するために、第三者評価などの取組がなされてきた経過 があります。  しかしながら、現時点で都市部と少子化や過疎化がとりわけ進んでいる地域ということ で対比的に坂崎参考人はおっしゃったのですけれども、私はやはり、都市部においても格 差が生じている面もありますので、それを軽減化し、なくしていくような今後の検討が必 要だと思います。  そこで、具体的な1点目ですけれども、設置について一般財源化することによって、ま ず例えば私たち三鷹市の例ですが、公設民営化やむなしということで、そのような取組を してまいりましたけれども、「保育の質のガイドライン」を作り、そして「第三者評価」を しっかりすることによって、まずは質の担保を心がけていますが、これらについても、や はりさまざまな取組を基礎にしつつ、やはり「保育の質のガイドライン」の共有化という ことが進められなければならないと思います。  2点目に、サービスが大変多様化してきておりますので、そのサービスの多様化を保障す る何らかの財政的措置、「ソフト交付金」に代表されるようなものの拡充が重要だと思いま す。一つには、通常保育との関係の中で延長保育や病児保育を、どのように位置付けてい くか。そして、それを充実していくためには、一定の財源的な支援が必要ですし、現場の 保育園は、在宅の子育て支援にも取り組んでいます。例えば、いわゆるひろば事業、地域 開放事業、一時保育といった取組ですが、それらについてもやはり、この場合「仕事と子 育ての両立を支える」とありますけれども、そうした例のように、保育園が子育てに専念 できる保護者への支援をもしているという辺りを、総合的にどのように財政的支援をして いくか。その根拠をどのようにするか。それから、今回はあまり具体的な報告はなかった のですが、近年アレルギー症状を持つ子どもや障害児を保育園でも保育しているわけです が、その場合には看護師・保育士・栄養士の増員が必要です。これらに対する人的な補助 というのは不可欠だと考えます。  3点目に、見直しを考えていくときに、やはり施設について今後、老朽化・耐震化という こともありまして新設する場合は、私たち市の負担ということに一般財源化されているの ですが、今後はハード面での支援について、国がまったく何もしないでいくのかどうかと いうことについても考えなければいけません。  2点目は、地方交付税不交付団体・交付団体とで、先ほどの障害児保育についても差が出 ているのですけれども、それを人件費の面で集約するならば、ベテラン保育士の確保が困 難になってくるような人件費に対する考え方については、やはり国も、あるいは都道府県 も、私たち市町村の立場でも配慮していかなければならないと考えています。これは職員 配置の基準等も含めた総合的な見直しが求められてくるのではないかと思います。一点だ け補足しますと、例えば国の障害児保育事業に対する経費が平成15年度から一般財源化さ れました。地方交付税不交付団体である私ども三鷹市がある東京都へは、国の特別児童扶 養手当支給対象児分が交付されなくなりました。ですから、東京都から各市へ交付される 補助額も大幅に削減されるという事態が生じています。けれども東京都の場合には、新た な枠組みとして「子育て推進交付金」を創設することによって、より柔軟な市の子育て支 援を推進する補助の枠を創設されました。こうしたことも、それぞれの道府県での独自の 取組もあるかと思いまして、国と広域自治体である都道府県の取組と、市町村の取組の中 で、幾つかの先駆的な、今の事態を突破するような取組についても、厚生労働省の方で検 証していただいて、その情報を共有することによって、市町村と国と広域自治体との適正 な配分の裏づけがなされなければ、今日、例示されましたような取組や、お二人が紹介さ れた事例も、今後の展開の中では弱くなっていくのではないかと思いました。  まとめさせていただきますと、私はお二人の率直なご意見の中で、私たちには保護者の 皆様こそ巻き込んだ活動が必要だと思います。最後に普光院参考人がおっしゃったように、 保育を保育施設とそれを利用する児童の関係だけではなくて、地域や保護者といった総合 的な視点で整理する絶好のチャンスを、今迎えていると思います。その方向で今後の保育 サービス等の在り方についても議論されれば幸いだと思います。ありがとうございました。 ○大日向部会長  ありがとうございます。それでは、吉田委員お願いいたします。 ○吉田委員  かなり時間が押しているので、課題を箇条的に申し上げたいと思います。  今のお二人の話を踏まえて、一つは制度レベルの問題なのか、運用レベルでかなり改善 できる問題なのか、この種分けをしなければいけないと思います。それからちなみに、そ の一般財源化問題は規制緩和というより地方分権の話だと思いますが、公立幼稚園という のは、もともと地方交付税措置で一般財源化で、必ずしも公立の保育所と同じような道を たどっているとは思いませんので、実際、今の事態はかなりの財政難ですので、一般財源 化の影響がどこまであるかということを、もう少し検証しなければいけないと、個人的に は思っています。  それから、認証保育所の問題については、認証保育所に限らず民間参入が可能になって、 認可保育所でもかなり企業立の所がありまして、そこもやはり玉石混淆で、認可保育所で ありながら人件費を相当抑えているところもかなりありますので、単に認証保育所だけで はない問題として考えなければいけないと思います。  運用レベルでいうと、認証保育所が所得による低減がないので中・低所得層は苦しいと いうことですが、幾つかの区は独自に認可保育所と同じ水準になるように補助を出してい ますので、これも運用の問題がかなりあるかと思っています。そのことを申し上げた上で、 駆け足で3、4点申し上げますが、一つはパート保育者がかなり増えてきていることです。 これは私も全国を回って実感しております。もしかすると、一つの要因として、少なくと も今、民間保育所の運営費の積算が平均在職7年程度だと聞いています。そうすると、平 均在職10年を超えてしまうと、運営費だけでは民間保育所は運営できない。逆にそれが圧 迫要因になって、パート保育者を採らざるを得ないという構造が、もしかするとあるかも しれません。これは財政問題ですが、そういう要因も考えなければいけないと思います。 先ほどのデータでも、保育士の平均在職年数が7.6年、処遇が21万8,000円ということで、 在職年数も8年近くなので、額面通りで考えますとそれだけでかなり人件費が圧迫してし まうということがあるかもしれません。  それから、入所要件「保育に欠ける」要件と契約制の問題ですが、事務局説明で保育に 欠ける要件が全国の市町村でかなり違うということで、待機児童がいない地域では週3、4 日の就労でも緩やかに使えるということでしたが、国全体のバランスで考えると同じ状況 に置かれている親と子どもでありながら、地域によって保育に欠ける要件が違うというこ とは公平性を欠く部分がありはしないかということが一つです。  それから、契約制の問題でいうと、認可保育所そのものは今、市町村事業ですが、延長 保育等の事業は基本的には契約制になっていて、先ほどのご説明でも多くのもので利用者 が直接利用できる状況であるということ。もう一つ申し上げると、認可保育所も例えば定 員120人で実際に保育に欠ける子どもが90人で、30人空いている場合、その30人分は私 的契約児ということで、直接契約なので保育料も保育所が直接取ってよいという例外的な 仕組みもありますので、そういったことを総合的に考えて、この保育に欠ける要件の問題、 契約制の問題を考えるべきだと思います。同時に一番大事なのは、先ほどのご意見にもあ りましたけれども、セーフティネットをどう作るかということで、例えば東京都の認証保 育所は契約制ですが、一番欠点だと思っているのは、認証保育所に入所の応諾義務を課し ていないということです。つまり、逆選択ができるということになっています。しかし、 契約制にしても応諾義務を課せば、保育所の都合で面倒な子どもは入れないとか、低所得 家庭は排除するということは恐らくあり得ないので、応諾義務を課すとか、あるいは厳密 な部分の措置は残すというように、制度設計でかなりカバーできるものがあるのではない かと思っています。  それから、トレードオフといってよいかどうかわかりませんが、保育サービスの質と量 というのはトレードオフに近い関係でして、提供手段を多様化していくと、どうしても質 が下がる懸念が確かに出てきます。あるいは入所要件を、保育に欠ける要件を要保育度か 何かで多様化すると、それだけで多分量的に増えてしまって、本来の保育に欠けるという 部分でまた待機児童問題が絡んでしまい、恐らくトレードオフの関係があるのではないか と思います。そういう意味では、ある種のプライオリティを政策的にどう設計するかとい う視点がなければ、常に矛盾を抱え込んでしまうのではないかと思っています。  それからマクロに見ると、3歳未満児の保育サービス利用率がありましたが、待機児童と のトレードオフの関係で、待機児童のない地域では3〜4割という3歳未満児利用率で、待 機児童が多い地域はどうしても入りきれないということです。その関係もありますけれど も、3歳以上児については、都道府県・市町村によって保育所がかなり多い地域と、逆に幼 稚園がかなり多い地域があり、幼稚園と保育園の地域偏在が相当ありますので、そのトレ ードオフの問題も考えなければいけないのではないかと思います。  最後に1点申し上げますが、制度の問題、運用の問題を含めて図式的なことを申し上げ ると、一つは公立・私立という図式があります。これはかなり民営化によって変わってき ました。もう一つは、幼・保という問題で、認定こども園が今後どうなるかということに もよりますが、幼と保の図式も今までとはかなり変わってきました。それから、認可と認 可外という関係も、先ほどの資料2の3ページをご覧いただきますと、認可外であっても 事業所内託児施設ですとか、院内保育所のようにまったくの無認可的なものではないもの が出てきて、認可と認可外の関係もかなり変わってきています。施設と非施設も家庭的保 育等によって、あるいはファミリー・サポートのように施設に依存しないという保育、あ るいは子育て支援が出てきました。それから、定型・非定型というものも、定型的な8時 間あるいは11時間開所の問題も別にありますが、定型的な保育サービスと、特定保育や一 時預かりのような非定型的な保育も組み立てがかなり変わってきています。こういう公・ 私、幼・保、認可・認可外、施設・非施設、定型・非定型というものをもっとトータルに 枠組みを考える必要があるのではないかということを申し上げておきたいと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございました。宮島委員、お願いします。 ○宮島委員  今日のお話を伺いまして、やはり量も質も必要なので、もっと財源が必要だと痛感しま した。親の立場や過去の経験から考えますと、認可の基準を上げることによって、結果的 に認可に入れるとその子どもは非常に良いけれども、そうでないとあまり良くない状況に なるということに関しては不安を感じます。トータルで見て基準を上げるにしても、今は 無認可で条件に合っていなくても非常に良い保育をしている施設もあるわけですから、そ ういうところのご意見や、もしくは親が参画した形で、無認可も含めて全体の質を上げて いくということを前提に考えたいと思います。  それから、3歳児から5歳児の幼児教育を考える上で、ぜひ幼稚園との建設的な一本化と いうものを求めたいと思います。現在、幼稚園は教育の場で、保育園は福祉の場とされて いるわけですけれども、その結果として現実的には保育園の子どもは幼稚園にいく子ども と比べて、小学校の入学時の能力が、本当かどうかわかりませんが、下がると言われてい まして、それを周囲に指摘されて幼稚園の時期になって仕事を辞めるという母親もいなく はないですし、実際に保育園に預けるときにそれが多少気になったと言う母親もいます。 それは女性の両立支援にも多少マイナス圧力になるのではないかと思います。また、小学 校に行って、幼稚園ママと保育園ママの微妙なギャップと言いますか、そういうものも感 じます。今、幼保一元化の認定こども園がありますけれども、今一つ広がっていません。 認定が保育所型か幼稚園型かで支援に差がありますし、それに加えて地域裁量型はニーズ も多いですが、支援がまだないというところもあります。親の立場からはこうした二重行 政といいますか、今それを一本化されようとしている最中だとは思うのですけれども、親 や民間の声を十分反映しながら3〜5歳児の幼児教育をぜひ一体的なものとして進めていた だきたいと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございました。今日はいろいろご意見を出していただきたいと思いますが、 今、宮島委員が言われたいわゆる風評のレベルの幼稚園と保育園の子どもの育ちがどうか ということですが、やはりデータに基づいて実証的に検証していくことが必要かと思いま す。保育園の子どもの育ちもいろいろな意味で素晴らしいというデータもありますので、 その辺りはきちんと検証しながら議論していくことが必要だと思いますが、親の不安とい うことでの貴重なご意見をありがとうございました。他にいかがでしょうか。山縣委員は 早めに退席されますので、何かおっしゃることはありませんか。 ○山縣委員  このあとで結構です。 ○大日向部会長  では、今井参考人の次にお願いいたします。 ○今井参考人  3点申し上げたいと思います。  まず1点目は地域の特性を踏まえることの重要性ということです。本日いろいろなお話 がありましたように、やはり保育、子育て支援の状況は、大都市部とそれ以外の地域・地 方では大きく異なっているわけですので、こうした状況に適切に対処していくためには単 に財源構成の見直しや拡充というだけでは不十分で、どうすれば各地域が自主的に取り組 めるようになるのかという視点が欠かせないと思います。そういう意味で、大都市部とそ れ以外の地方自治体の関係の方から、財源の問題も含めて、具体的にはどういうご要望が あるのかという点を伺う機会があっても良いのではないかと考えました。その際には、今 お話しにありましたように、幼稚園との関係もありますので、幼稚園についてもいろいろ なデータ提供を事務局の方でご用意いただければと思います。  2番目は、児童育成事業の在り方についてです。児童育成事業の対象として通常保育以外 の各種保育、放課後児童クラブ等の事業が行われているわけですが、今回新たな枠組みを 作るということならば、そういったものの在り方も併せて見直すべきだと考えています。  3番目は、事業所内の保育施設の問題です。事業所内保育施設は地域の保育所で十分対応 できないような低年齢児向けの子育て環境を従業員に提供する、産休あるいは育児休業を 取得した従業員の早期の職場復帰に貢献するという意味合いも持っていまして、日本経済 団体連合会としましても会員企業にその設置を呼びかけているところです。企業の役割に も関わる取組みですので、こうした事業所内保育施設の位置付けですとか、あるいはイン センティブの在り方といった点につきましても、今後の新たな枠組みの中で併せて検討い ただければと思っています。 ○大日向部会長  ありがとうございました。 ○山縣委員  時間をいただきありがとうございます。3点、お話をさせてください。二つは既に言われ ていることと重なるのですが、あえて私の意見を言わせていただきたいと思います。  1点目は、一般財源化との関連で公設民営化の話も入っておりましたが、裁判等でも民営 化が質を低下させるのかどうかというのは、いろいろな判例も出始めていますが、個人的 には質が低下すると考えてしまうと、今、認可の民間保育所を利用している110万人の子 どもたちには、最善の利益どころか基本の部分がすべて否定されてしまうような気がする のです。その辺の丁寧な議論ですが、私も確かに完全とは思っておりません。職員配置の 問題で起こっているのではないかと思っている部分があります。運営費の80%以上が人件 費であるというのが、恐らく保育所の実態だと思いますので、積算基準を変えていかなけ れば、一定の年齢で保育士の数を掛けてしまうやり方が、恐らく民間保育所の経営を圧迫 しているのではないかと考えていますので、そこを変えていくことによってあくまでも認 可制度の中の民営化の話も、もう少し建設的な考え方ができるのではないかと思っていま す。  2点目は、既に何人かの委員からも出ていましたが、私は認定こども園にも非常に興味を 持っていまして、前回幼稚園に対して若干失礼な発言をしてしまったのですが、今、幼稚 園の中の民間の幼稚園について言いますと、70〜80%が夏休みも含めて少なくとも17時く らいまでの預かり保育をしています。かなりの部分が既に18時までの預かり保育をされて います。保育所と違って公立幼稚園の子どもたちは40万人弱で、民間の場合130〜140万 人ですから、民間幼稚園の占める割合が圧倒的に高いのです。ですから、ここの部分を含 めて、しっかり私立幼稚園の取組の評価を踏まえていくと、認定こども園の進め方も変わ ってくるのではないかという気がしています。認定こども園の認定に、今は市町村が直接 かかわれないという問題がありますので、早めに市町村の下でいろいろな仕組みができる ように、都道府県レベルではなくて市町村レベルで取り組んでいかなければ、公立幼稚園 だけが取り残されたような改革になってしまうのではないかと思っています。  3点目は、あまりおっしゃらなかったのですけれども、坂崎参考人が入り口では過疎地の 話をされましたが、でも子どもの定員は60人という比較的安定した保育園になっているの ですけれども、前回の最後にも少し言いましたように、地方では20人の小規模保育の定員 をも満たせない所が次々に出てきているのです。これは保育所の経営努力のミスではなく て、子どもが生まれていないわけですから、埋めようがないのです。子ども施策の範囲内、 あるいは保育に欠ける施策の範囲内では埋めようのない地域が次々に出てきていると思っ ています。延長保育等にしても、すべて何人以上という人数をベースにした職員配置にな りますので、過疎地の子どもたちの福祉を図る上では人数以外のベースのものを例外的に 設けざるを得ない状況に日本はなってきているのではないだろうかという気がします。す べてにとは思っていませんが、特別な地域を前提にという考え方です。  ありがとうございました。 ○大日向部会長  ありがとうございました。ただ今の山縣委員のご意見は、先ほど吉田委員が、この問題 は制度と運用を構造的・多面的に議論することが必要であるというご意見をくださったと 思いますが、それに重なるご指摘として伺いました。ありがとうございました。他にいか がでしょうか。 ○内海委員  いずれにしろ、この保育に掛けるお金は絶対値が少なすぎます。それだけを私は言いた いと思います。全体の福祉に掛けている子どもに関する予算は、今の日本は非常に少ない です。これだけ少子化が言われていて、いくら制度や運用と言っても、ないものはないと 言われると一向に進まないので、そこがまったく増やしてもらえていないことは、私自身 も子どもを保育園に預けて育てましたし、今、公立保育園を2園、東京都認証を2園、そ れから無認可も持っていて、毎週のように保育園に行って保育士の様子、子どもたちの様 子、預けにくる母親たちの様子をつぶさに見ていると、やはり人は足りないです。一見、 足りているようですけれども、延長保育のときの分も日中に換算していたり、延長保育に なると、とにかくけがをさせないことだけに目を配って、安定した保育はとてもできてい ませんし、泣いている子どもに声を掛けることも、割と恵まれた保育園でもできていませ ん。ですから、子どもたちが年少・年中になるとなぜか落ち着きがなくなってきて、おか しなことになっているという実態があって、そこのことがすべて後の方の問題になってく るので、小児科医としては根っこの部分のところを、特に強調して、人とお金を掛けてほ しいということは、0歳児保育が広まってから15年くらいになりますが、そのときにもっ と人とお金を費やしてもらうことが、15年、20年くらいはすぐに経ちますから、将来的に 早急に予算を組んで驚くほど増やしてほしいと思っています。 ○大日向部会長  ありがとうございました。他に、委員の皆様からご意見はありますか。このテーマは、 後ほど事務局からご説明があると思いますが、来月早々の会にも続けていきたいと思いま すが、もしなければ、最後に参考人のお二方に、こうした議論をお聞きになって、何かお っしゃることがありましたらお願いいたします。 ○普光院参考人  私は保育ママと認可保育園にお世話になりまして、保育ママに関しましては本来家庭の 中で保育するという趣旨の制度なのですが、保育ママも核家族化しているという状況があ るので、何らかのサポートがないと危ないと思っているところはあります。認可保育園に つきましては、非常にいろいろなことを思ってきました。先ほど吉田委員から運用面で認 証保育所のような制度でも何とかなるのではないかというようなお話もあったのですが、 ただ、少し気になるのは理念の部分が、私がレジュメの最後に書きましたようないわゆる 保護者の求めるもの、例えば早期教育であるとか、あるいは便利に楽に通えるとか、そこ の部分だけを満たして、それで人気が取れるというものなのか。それとも、もう少し広い ところに理念を持っているのかというところに違いがあるのではないかと思っていまして、 もちろん認証保育所でも本当に地域のことを考えてやっている所もたくさんあるとは思う のですが、そもそも制度としてどのような理念を持って、その制度が作られているのかと いうことも注目する必要があると思います。例えば、人件費をもっと増やすとか、先ほど 認証保育所にも応諾義務を課せばという話もありましたが、そういうことをきちんとやっ ていけば、結局は認可保育園と制度的にはあまり変わらないものになっていくのではない かと思いますので、むしろ認証保育所が認可保育園になれるような形というものを考えて いった方が良いのではないかと思います。 ○大日向部会長  それでは、坂崎参考人、お願いします。 ○坂崎参考人  たくさんの委員の方からいただいたご意見の中で、一般財源化における公設民営という ことがここ数年非常に多くなって、その結果、多分今年の4月で初めて公立よりも私立の 方が多くなるということになってきたと思います。そういう意味では、ここで発言をして 良いかどうかわかりませんが、国の施策として公設民営というものを基本的に進めていく としても、ある意味では公立保育所の存在する意味と少子化に伴うところの統廃合的なこ とも非常に大きなところでは考えていかなければならないのではないかと個人的に思って います。それから、3〜5歳児の幼稚園との一体化を含めた保育所との教育の差ということ がありましたが、保育指針を考えてみますと基本的にはそういう差はありませんので、ど ちらかというとそれぞれの幼稚園、保育所における教育に対する考え方による差があるの だと思います。私どものような地方の保育所では、幼児教育を非常に強く望まれるところ もありますし、都会で泥んこ保育や自然保育などを主眼に行っているところもありますの で、それは一概にそういうところの差ではないと個人的に思っております。また、一般財 源化による民営化による質の低下と一体になっておりますが、そのことにつきましてもや はり詳細に話をしていく時間があればと非常に思いました。いずれにいたしましても、養 護と教育を含めたきちんとした形での保育ができる条件をきちんとそろえながら質を拡大 していくということが、これからの認可保育所においても、また家庭的保育事業において も基本線だと思いますので、財源を含めた形での話をこれからも進めていただきたいと思 います。ありがとうございました。 ○大日向部会長  ありがとうございました。お二方からいただきました貴重なご意見を参考に、このテー マは次回以降にまた議論をしていただきたいと思います。それでは最後に、事務局から次 回の日程についてご説明をお願いいたします。 ○高倉総務課長  本日は誠にありがとうございました。次回の日程につきましては、4月9日金曜日の17 時から厚生労働省9階の省議室で予定しております。引き続き、次世代育成支援のための 新たな枠組みについてのご議論をお願いしたいと考えております。皆様大変お忙しい中、 このように日程をやりくりしていただいて大変恐縮ではありますが、岩渕部会長代理も参 加しておられる社会保障国民会議の第2回が本日まもなく開かれますが、そちらにおける 特に、先般開催されました少子化、仕事と生活の調和に関する分科会の第1回の中でも、 この分野につきましてはやはりスピード感のある取組が必要であるというご意見を何人も の方からいただきました。  大変お忙しいところを恐縮ではありますが、このような日程で議論を進めさせていただ きたいと考えていますので、ご理解・ご協力のほどお願いしたいと思います。また、こう した会議の場だけでは時間が足りないということがありまして、本日のいろいろなご発表、 あるいはご意見の交換等でこの場では足りなかったということがありましたら、会議の間 でもどしどしご意見等をお寄せいただいて、部会長とご相談させていただきながらできる だけスピード感をもって議論を深めていけるように、事務局としても精いっぱいやらせて いただきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。 ○大日向部会長  それでは、本日はこれで閉会といたします。ありがとうございました。