08/03/19 第5回議事録              第5回人生85年ビジョン懇談会                  日時:平成20年3月19日(水)15:30〜  場所:霞ヶ関合同庁舎5号館9階厚生労働省省議室                      ○岩男座長 ただいまから「人生85年ビジョン懇談会」を開催いたします。本日は大 変お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。最初に菊川委員は今日 が初めてでいらっしゃいますので、一言ご挨拶をお願いしたいと思います。  ○菊川委員 菊川怜です。よろしくお願いいたします。今日、このような会議に出席さ せていただくのが初めてなので、緊張していますけれども、参加できること、とても光 栄に思っています。どうぞよろしくお願いいたします。 ○岩男座長 どうぞ緊張なさらずに、いろいろご意見をお聞かせいただければと思いま す。今日は若干遅れていらっしゃる委員、早く退室なさる委員があったりしまして、少 し出入りがございますが、どうぞよろしくお願いをいたします。大臣はただいま国会に 出ておられますが、終わり次第、駆けつけられるというふうに伺っています。  本日の議論の進め方ですが、事務局でこれまでの議論を叩き台としてまとめてくださ っていますので、それに基づいて議論を進めたいと思います。まず、事務局からご説明 をお願いいたします。 ○村山企画官 資料1「『人生85年ビジョン』の取りまとめに向けた叩き台」につきま して、簡単にご説明を申し上げます。ただいま、座長からもございましたように、過去 4回の懇談会で委員の先生方から示されましたご意見がさまざまございましたが、これ を取りまとめに向けたご議論のために事務局で整理したものです。特に参加された先生 方のプレゼンを中心に内容を深めていただきましたため、構成については第1回懇談会 で仮置きとして示した章立てに沿いまして、一応、整理をしたものです。章立ても含め た構成等についても、本日ご議論をいただければ大変ありがたく存じます。  資料1の最初の頁にありますように、「はじめに」「第1章:いきいき人生のための基 礎づくり」「第2章:自己実現に向けた働き方の改革」「第3章:地域・社会参加による いきいき人生の実現」という、「はじめに」と3章構成になっています。  中身に入ります前にざっと申しますと、「いきいき人生のための基礎づくり」に関して は、健康づくり、学習、あるいは高齢期における所得確保、経済的安定等を、85年時代 の基礎づくりに向けた、さまざまいただきました提言について、ある程度のまとまりに それぞれまとめているということです。  岡田先生からいただきましたカロリー表示の問題、萩原先生からいただきましたスポ ーツの問題、多数の先生からいただきました学習にかかわる問題、とりわけ山崎先生の プレゼンを契機として大変深めていただいております、死を学びより良く生きるカリキ ュラムの話、あるいは文化を学習することに関して高階先生からいただきましたお話な どをまとめています。  第2章の「自己実現に向けた働き方の改革」に関しては、最初の会議で大臣からもご ざいましたように、少し「時間の哲学」というようなものも盛り込んでということがご ざいましたので、ライフステージごとのと申しますか、キャリアの形成段階ということ も少し意識したようなまとめで仮置きをさせていただいています。  とりわけ(3)の「いくつになっても働ける社会づくり」の部分については、清家先 生からプレゼンをいただきました「生涯現役社会」の考え方も踏まえながら、叩き台を 作っております。また、(4)の「仕事と生活の調和」については、小室先生や茂木先生 からいただきましたプレゼン、あるいはお話をご紹介しています。(5)のそうした「『働 き方』の見直しの前提となるサービスの在り方の再検討」に関しては、古賀先生からい ただきましたところ、また(6)のところについては石川先生からご提起いただいたと ころを、少しとっかかりにして、議論の素材にさせていただいています。  第3章では、「地域・社会参加」ということで、人のつながりの再生の問題、高橋靖 子先生から累次ご指摘をいただいているところを中心にしていますし、また「パブリッ クとプライベートの中間領域」という高階先生からいただいたお話。年金生活者等の地 方移住のお話、これは清家先生からいただいたアイデアを書いています。また、大臣の ほうから清家先生のお話を踏まえて、少し、海外への移住などについてもお話を深めて いただいたらいかがかということもございましたので、それも合わせてご紹介していま す。  以下、ざっと2頁以降を説明させていただきます。委員の先生方には、事前に送付さ せていただいていますが、若干その後、個別に座長をはじめ、先生方からアドバイスを いただいた点もございますので、事前に送付したものとは若干異なる点があることを、 一言お断りをさせていただきます。  まず、「はじめに」です。最初の書き出しのところで、山崎先生からいただきました死 生観と申しますか、人生観の話を切り口としまして、その上で、我が国における平均寿 命が非常に長期的に言っても伸長してきたこと。あるいは、また、今後、更に伸長する と見込まれているというような客観的事実を書いています。  その上で、ダニエル・カール先生からも、非常に日本として誇るべき点は誇っていく べきだということもいただきましたし、そこで、例示もいただきましたので、そのお話 を紹介した上で、茂木先生からいただきました、しかしながら、将来に向けてのさまざ まな不安というようなことも、国民の間で現われているということにつきまして、真ん 中辺りで書いています。  前回、川勝先生からいただきました男時、女時の話で、特に人口の停滞期というのは 過去にもあって、今回3回目だというお話がありましたが、とりわけ多くの先生から、 この人口減少というものの中で、どうやっていくのかということが、大きな問題として 提起されています。それを問題提起としてご紹介させていただき、その上で高齢者の就 労意欲の高さをはじめとする、我が国の強味を活かしていくべきであるという、清家先 生からいただいたお話なども敷衍しながら、今後の取組について前向きな感じで書いて います。  同時にさまざまな問題、茂木先生をはじめ、多くのご指摘がありました、ニート、フ リーターの人数の高止まり。3頁にかけて、働く方々の仕事と生活の調和をめぐる問題。 少子高齢化に伴う高齢期の所得保障の問題。あるいは、また、人生の終末期におけるケ アの問題等々、人をめぐるさまざまな課題は顕在化していて、そうした課題にどう対応 していくかということで、問題提起をさせていただいています。  とりわけということで、高度経済成長期以降の、基本的「人生60年」のビジョンと いうものが、だんだん間尺に合わなくなってくる中で、やはり70歳代、80歳代を余生 と考えるのではなくて、生涯現役で誰かの役に立つような生き方を支えるビジョンを打 ち立てていくことが必要なのではないかというように提起した上で、今後の人口減少社 会を支える活力の観点からも、そうしたビジョンの検討が必要だという、今回、先生方 にお集まりいただき、ご議論をいただいている趣旨のようなことを少し書いています。 その上で、今回のビジョンの方向性について、大まかに3頁の下のほうで書いています。  4頁目、最初に申しましたように、「いきいき人生のための基礎づくり」ということで、 客観的な平均寿命の伸び、あるいは今後の見込みということの上で、今後、不可欠にな ってまいります基礎づくりとして、生涯にわたる健康確保、さまざまな学習、高齢期に おける所得確保や経済的安定ということを頭出しをしています。  以下、それを具体的にいただきましたご提言を中心に、少し並べているのが(1)以 下です。健康確保のところでは、真ん中辺りですが、現在の生活習慣病への対応。それ から、特に「自分の体重を自らコントロールすること」の必要性、岡田先生からいただ いたような点について、まずはじめに触れています。その上で、そうした心身のバラン スを保ちながら健やかに人生を送っていくことが必要だという観点につきまして、小室 先生をはじめ先生方からいただいたところを書かせていただきました。  とりわけ心身の充実感をもたらすスポーツについて、萩原先生から具体的なご提言も いただきました。施設の配置で交流が促進されるようにというご提言。あるいは5頁で、 具体的に取り上げていただきました「ねんりんピック」等々の問題もさらに発展させて いくことが必要なのではないか、というご提言についても書いてあります。また、トッ プアスリートの方々を派遣して、スポーツの楽しさを伝える授業についても、もっと質 的に広げていくべきではないかというご提言もあったかと思います。  その前提としてということで、古賀委員からも以前ご指摘がありました、自助努力に よる健康づくりももちろん大事だけれども、やはりきちんと国民が安心できる医療を効 果的に提供する体制をしっかり築いていくことが必要だということの上で、現在、言わ れているような問題について、若干の整理をしているところです。  最後にということで、山崎先生からいただきました、人生の終末期のケアの問題。と りわけ、緩和ケアの希望者に比べて担い手が少ない現状を打開していくために、人材育 成の取組を強化することが急務であるということについて書いています。  学習の問題については、大変多くの先生からたくさんのご意見をいただきました。(2) 以降で書いています。基本的な考え方について、古賀委員をはじめ先生方からいただい たことで5頁を整理しました。  6頁目、とりわけその企業の在り方が2章のところでも出てきますが、これまで非常 に大きな役割を職業人の人材育成という観点で果たしてきたけれども、基本的にそれが 引き続き大きな役割が期待されるとした上で、しかしながら、世の中の変化等々ある中 で、これから多様化してくる労働者の自己啓発も含めた職業キャリアの希望をかなえて いくためには、単に企業だけではなくて、個人もしっかりしなければいけないし、行政 や社会が支えていくことも重要性を増すということで、具体的なことも少し書いている のが6頁の真ん中辺りです。  とりわけ社会人の学習、教育の受け皿として、大学及び大学院等の高等教育機関に期 待されるところは大きいということを、テリー・伊藤先生、岩男座長からいただきまし た。そこのところの考え方を少し整理した上で、ただ、現在うまくいっていないという ような声も聞かれる中で、もっと高等教育機関と企業の双方が出入りの自由度を上げて いくべきだというご提言があったかと思います。その辺について敷衍しているのが6頁 のいちばん下から7頁のいちばん上。あるいは、それが今後の教育機関の在り方にもか なっているのではないかということも書いています。  7頁の(3)が山崎委員からいただきました「死を学びより良く生きるカリキュラム」 についてです。ここは若干、役所のデータの整理も織り込みまして、希望としては、終 末期を一義的に希望する最後の療養場所として自宅を挙げられる方々の比率は高いのだ けれども、しかしながら、委員の先生方からもありましたように、多くの方々が家族へ の負担だとか、いろいろな環境的なことから、なかなか難しいのではないかと考えてお られるということの中で、今後どうしていくのかということを少し提起しています。そ ういう希望と現状の乖離を解消して、末期状態になっても自宅で過ごせるようにしてい くための提言を少し書いています。  同時にこの章の節のタイトルになっている「より良く生きるカリキュラム」というこ とで、7頁〜8頁目です。児童、生徒、学生、社会人それぞれが、死へのプロセスであ る老いや病を抱えて生きられる人々の場のケアに、ボランティアとして参加する仕組み を整えるべきであるというご提言。あるいは、また、それを生涯教育の1つの柱として 位置づけていくべきであるということを書いています。そうしたことによって、どうい うことがもたらされるのか、期待されるのかということを、その後に整理しています。 特に学びが人のつながりの再生、ひいては崩壊の危機にある家族や、地域や社会の再生 の契機にもなることが期待されるということを書いていますし、リビングウイルの問題 などについても言及しているところです。  (4)番ですが、「文化を学習することの提唱」ということで、こちらも高階先生をは じめ多くの先生からいただきました。我が国における文化的伝統の中に自然が織り込ま れている中で、いろいろな季節の移ろいだとか、そういったものが織り込まれてきたと いうこと。9頁、しかし、そういった特質が都市化や核家族の中にあって、ともすれば 忘れられがちになっている。それを次世代に継承していくことが必要ではないかという ことについて書いて、最後の所は川勝先生から前回いただきました文化力の向上という 締めにしているところです。  (5)の高齢期における所得確保や、経済的安定が非常に重要だというご指摘は、た くさんの先生方からいただきました。それを踏まえて、少し考え方を基本的に整理して いるのはここのところです。自助の考え方を原則としながらも、さまざまな不公平の是 正に留意しながら、現役世代中心に、社会全体で高齢化に伴う社会的費用の負担につい て、社会全体で負担することが重要であるという、基本的な考え方を書いています。そ の上で現役時代からの投資と蓄積を重ねて、ストックを貯めて、必要なときにフローを 活用していくことが大事だということで、いくつか具体的にご提言のあったところに触 れています。  「もとより」というところで、こうした所得確保や経済的安定を実現するためには、 社会保障制度について、持続可能で長期的安定性が確保された信頼に足るものとしてい くことが不可欠ということにした上で、現在、私どもの組織に突きつけられている、あ るいは国民の皆様方との関係で、きちんと果たしていかなければならないことについて、 一言、言及しております。  第2章「自己実現に向けた働き方の改革」について、10頁です。最初で人口減少とい うことに触れた上で、高階先生からいただきました、日本人は仕事を苦役と考える西洋 人と異なって、天職、あるいは働くことを喜びに感じる傾向が強いという伝統を持って いるというご指摘もありました。そうしたことも踏まえながら、今後、働く方々がやり がいを感じながら働き、仕事上の責任を果たしていく。そして同時に、これから長い、 そして充実したものとされるべき家庭や地域生活のさまざまな人生について、自らの希 望する生き方を選択できるようにしていくことが必要、ということを書いています。  その上で、先ほども申しましたが、時間的な概念を少し入れるようにという大臣の示 唆もございましたので、「職業キャリア」すなわち職業経験の積み重ねを通じて、職業能 力を形成していくプロセス、時間的概念ということを意識しながら、先生方のご提言を 少し整理させていただいたのが(1)以下です。  (1)の「学校から職業への円滑な移行」のところでは、最初の書き出しのところは、 茂木先生のプレゼン資料からそのまま引き写させていただいています。「職業を通じて自 己実現できる社会づくりは重要な課題」という提起です。然るに現状を見るとというこ とで、フリーター数の高止まり、ニート数の横這いなど、なかなか難しい問題を抱えて いるというところについて、10頁の下のほうで整理をしています。  11頁、今後の人口減少社会の中で、そうした若者の在り方がいかがなものなのだろう かという提起になっています。やはり、若者の希望を実現して、充実した、あるいは安 定した人生設計を可能にしていくことが、少子化対策、社会保障制度の持続可能性の観 点からも重要であるということを書いています。  その上で、いろいろご示唆のありました具体策について書いています。とりわけ、パ ン1つを取ってみても、小麦を栽培する人、輸送する人、加工する人など多くの人々の 労働の結晶であることが全く知られていないというような子どもたちの現状もあるが、 そうした教育の在り方を見直していくべきではないだろうかという、古賀委員からいた だきました点についても触れています。こうした教育あるいは職業訓練も含めた雇用対 策をしっかりやっていく。また、企業の皆様方の採用の在り方についても考えていただ くことが、格差の拡大だとか、固定化を防止するとともに、社会の支え手を増やしてい くという意味で、基盤強化の取組として重要なのではないかと(1)は締めています。  (2)は、大臣からも最初の会議でも申されました「働き盛り期における長期休暇」 の話について書いてあります。清家先生の整理に従って、「短距離走型」の職業生涯から 「マラソン型」ないし「トライアスロン型」になってくるのだということをお話いただ きましたが、これからは、職業キャリアの積み重ね、節目における充電だとか自省だと か、あるいは方向転換のための訓練も含めた準備が大事になってくるということを、11 頁の下のほうで書いています。  12頁、その意味で少し参考になるのではないかということで、隠居暮らしについて触 れています。西日本中心かもしれませんが、特に江戸の半ば以降、隠居される方々は、 家督を相続人に譲って竈の火を別にして、別な生計を立てられて、別な生き方に入られ るということを、かなりされていたということです。逆にいうと、いままでの柵から、 常識から離れて、広い視野に立ってものを見ることができたということを紹介していま す。  おおむね、85年の半ばぐらいになります40歳ぐらいの時期は、非常に仕事に脂がの ってくる一方で、家庭責任、介護、子育てとかが増したり、あるいは体力なども落ちは じめたり、いろいろな転機にもなってくるということで、こうした時期にまとまった休 暇が入るようになれば、これは労使をはじめ、国民の合意を得ながらということになる のだと思いますが、非常に多くのことが期待できるのではないかというようなことが真 ん中辺りで書いています。「特に」のところで、清家先生からプレゼンでございました教 育訓練休暇の普及・定着については、人口減少社会の中で、産業構造の変化に即した労 働力人口のシフトを実現させるために重要だということを書いています。  (3)で「いくつになっても働ける社会づくり」円熟期に向けた課題と対応というこ とで、最初に申しました「生涯現役社会」の実現について書いています。我が国の高齢 者は、健康寿命の長さや労働力率の高さに示されるように、健康で就労意欲が高いとい う恵まれた前提条件を持っておられるということで、これを今後の社会づくりに活かし ていくことが求められるのではないか。  とりわけ、60歳代に到達しつつある「団塊の世代」の方々は、まさに人材の宝庫であ って、この方々を先導者にしていくことが大事だということを書いています。「そのため には」ということで、先程来申しています、健康をはじめ、技術・技能やノウハウ、人 脈といった幅広い意味での職業能力をきちんと蓄えていくということ。あるいは資産形 成、とりわけ住宅の問題等々につきまして、きちんと計画的に対処していくこと。さら に社会人として、人間関係をいろいろな意味で構築していって、将来に向けて備えるこ とが重要な前提であるということを真ん中辺りで書いています。  その上でということで、定年制の在り方についてもご議論がありました。これについ ては、定年を経験すると働き続ける確率が低下するという客観的事実を前提として、現 在、法律上も求められている高年齢者雇用確保措置をきちんと実施していくということ。 さらに、年金の支給開始年齢が65歳になっていくことにしたがって、到達した際には 定年も接続して、さらに長期的には、もちろん年功賃金の見直し等々、労使の話合いを 前提として、いろいろなことがあった上でですが、一律の定年制ではなくて、引退時期 を働く人が選択できる制度づくりが期待される等のことについて書いています。  13頁のいちばん下から14頁にかけては、第二の職業人生で少し違った仕事に踏み出 したいという方の場合には、いろいろな経験を増やしていくことも大事だという機会づ くりの話。あるいは、岩男座長からございました「ジョブ・シェア」のようなものを日 本においても取り組んでいくことはできないか、ということについても書いています。 また「年齢で区切る考え方」そのものに関してもご提起がありました。政府の審議会委 員の要件につきまして、長期にずうっと何十年も同じ人がやるということを排除すると しても、年齢により一律に排除するやり方が適切なのかどうか、という提起もありまし たので、そこについても書いています。 (4)で、それらすべても前提になります、あるいはまた帰結になる「仕事と生活の調 和」につきまして、職業キャリアを通じての課題と対応であるということで書いていま す。「働き方の二極化」ともいうべき状況が生じている中で、世の中の、特に働き方の部 分がそれに見合ったものになっていない。現在の人々のニーズに合ったものになってい ないという中で、人材活用の面、あるいはまた急速な少子化が進んでいるということに ついて書いた上で、国民1人ひとりがやりがいと充実感を持てるようにするために、き ちんとした対応が必要であるということを14頁〜15頁で書いています。  それがもたらすさまざまな積極的な効果について、小室先生からいただいたところ、 あるいは、また団塊の世代2世層においては、今後、仕事と親の介護との両立を迫られ る方が増えるという問題提起についても触れています。また、最後のところでは茂木委 員からいただきました、具体的な提言についても入れております。  (5)の「『働き方』の見直しの前提となるサービスの在り方の再検討」です。これに 関しては、働き方の見直しの前提として、例えば年中無休、24時間営業であるとか、あ るいは指定時間配達など、非常に便利ではあるけれども、それを担う労働者の観点から いうと、例えば非正規の働き方が多くなるだとか、長時間残業を余儀なくされるだとか いった悪影響が認められるものもあるのではないかという、古賀委員のご指摘に触させ ていただきました。そういった問題について、社会全体で議論を深めていくべきではな いかということを提起しています。  16頁、(6)の仕事本位の働き方の復権ということで、仮置きでタイトルを付けていま す。これは江戸時代等と比べて雇用者の割合が極めて高い水準にあるし、さらに一貫し て上昇しているということについて、石川委員や高橋委員から投げかけがございました。 そういった中で、雇用者が非常に多くなった中にあって、集団主義的な雰囲気の中で横 並びを重視するような仕事の進め方がある場合に、それが人間的なリズムを持った働き 方を実は阻害している面もあるのではないかという提起をしています。やや、未消化で はありますが、この辺の職人的な生き方、働き方に光を当てていくことなどについても、 今後ご議論を深めていただければ大変ありがたいということで、1つの節を起こしてい るものです。  第3章です。「地域・社会参加によるいきいき人生の実現」です。(1)番で「地域社 会における人のつながりの再生」で、最も自然なつながりがある地域社会における人の つながりが、非常に長きにわたって社会を支える大きな機能を果たしていたことを最初 に触れています。しかしながら、それが非常にサラリーマン化が進んでいることなども 相まって希薄化してきているということで、例えば子どもたちの引きこもりといったこ との一因にもなっているのではないかという提起をしています。これに対する対策とし て、どんなことが考えられるのか、少しいただいたご意見も踏まえながら17頁の下の ほうに書いています。  18頁では、特に高橋靖子先生から、介護に関して「ご近所の底力」を発揮していくこ とが、「小さな介護」という高橋先生の表現でしたが、大変効果があるというご紹介があ りました。コレクティブ・ハウスの話、あるいは、また介護施設と学校等が食堂やサロ ンを共有することで、交流を深めるといったような「新たなご近所システム」というこ とについてご提起がありましたので、議論を深めていただければということで掲げてい ます。また、それに関連して、町づくりの問題などについてもご議論をいただければと いうことで書いています。  (2)で「世代間の交流の舞台となる『パブリックとプライベートの中間領域』」とい うことで、高階先生からいただいたところを、少し敷衍して書いています。こうした共 通の価値観に立ったというところが先ですが、やはり文化的活動のいちばんの大きな舞 台になるのは、仕事時間・職場と生活時間・家庭の中間領域という所であることが多い ということで、こうした中間領域を確保していくことが、有意義な交流につながるので はないかという投げかけをいただきましたのでそれを書き、今後の議論の素材にしてい ただければということです。  19頁、(3)年金生活者等の地方への移住に関しては、清家先生からいただいたアイデ アを要約して書いています。今後の地域の活性化を考えた場合、公共事業みたいなもの を増やすのもなかなか難しい時代になっている。一方で、魅力ある地域にどんどん移住 していくという積極的な、比較的年齢の高い年金生活者の方などが増えてくるのではな いかということで、その辺を切り口に何か議論ができないかということで書いています。 また最初に申しましたように、大臣から、それは海外への移住ということに先生方のご 関心に応じて広げていただいても、また面白い議論がしていただけるのではないかとい う示唆がありましたので、それを書いています。大変雑駁な説明ですが、以上でござい ます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○岩男座長 ただいま事務局からご紹介がございましたように、これまでの委員のプレ ゼンテーションと、それから、それに触発された意見交換、議論を中心におまとめをい ただきました。また、そのご説明でもおわかりのように、議論の濃淡がございまして、 全く触れていないような問題も当然あると思います。それにつきましても、まだこれか らいろいろなご意見をいただきたいと思います。  これは誰に対して発信をするのかということも明確にしておかないといけないのだと 思うのですが、一般国民に向けてということなのだろうと思うのですね。そして、また、 少しは触れられていますが、十分かどうかという点で、まだこれからご議論をいただき たいと思いますのは、この報告書の意義といいますか、なぜ、こういうものが必要にな っているのか、またどういう意味をもつのか。そして、人生60年ビジョンというもの がかつてあったかどうか私はよくわからない、むしろなかったのではないかと思います。 なんとなく人生のビジョンなどというのを考えずに、とにかくその時、その時、必要な ことをこれまでしてきたのではないかというような気もいたします。60年では先ほど間 尺に合わないというお話がございましたように、もう、もたない。ですから、85年と考 えたときに、一体どういうものが新しく必要なのか、どういう視点でないといけないの か、そういったようなことを、少し明確にする必要もあるのではないかと思います。  いろいろなご意見があると思いますので、全く自由にご発言をいただく場でございま す。最後に、地方への移住あるいは海外への移住というようなことが、まだ十分議論が されているとは思いませんが、出ています。そういった、住まい、生活の場、町づくり といったことについては、ほとんど議論をしていません。菊川委員はそういうところで も何かご意見がおありかとも思いますし、どうぞ、まだ意見が足りないと思われるとこ ろがたくさんあると思いますので、是非ご発言をいただければと思います。どうぞ積極 的なご発言をお願いしたいと思います。 ○小室委員 根本的な質問になってしまうのですが、まさに最初に言われた、これは誰 に対してなのかというのと、どんな効果を期待するのか。これは何なのかなというのを、 この委員会が始まったときからずっと今日まで疑問に思ってきたのです。これを出して、 どのように国民にインパクトがあって、若しくはこれを何に利用する予定があってとい うところの全体像が見えない。ただ、議論そのものは非常に勉強になりつつ、毎回、議 論をさせていただいているのです。  やはり何か、こういう効果を出したいというゴールを1回設定しないと、この出すも のの方向性も決まってこないのではないかなと。もし、それが決まっていないのであれ ば、そこの議論を最初にしたいなと思うところです。 ○岩男座長 いまのご指摘の点、実は何の役に立つのか、どういう貢献をしようとして いるのかという点、それも実は私も同じように考えていたところです。どなたからでも 結構ですから積極的にお願いします。 ○清家委員 私も小室委員がいま言われたこと、賛成です。やはり1つの目的というの は、もちろんこの報告書を通じて、いろいろな個別の政策とか、制度が変わっていくと いうこともあるのでしょうが、私はいちばん大切なのは、人々のマインドセットを解く というか、つまり年齢基準のマインドセットというのでしょうかね。学んだり働いたり あるいは楽しんだりするということが、いままでは例えば22歳までは学ぶ期間、そこ から64歳までは何か仕事をする期間、その後はのんびり余生を楽しむ期間という。何 か学んだり、働いたり、楽しんだりするということが、例えば年齢を基準に輪切りにさ れてしまっていたような気がしますね。  それもある面で言えばマインドセットというか、この年齢はそういうことをする年齢、 世代なのだと。もちろん若いときに一生懸命勉強しなければいけないとか、そういうこ とはありますから、ある程度そういう年齢基準は必要かと思いますが、逆にそれがあま り強くなると、年齢を理由に例えばもっと働きたい人が働けないとか、一定の年齢にな るともう1回学び直したいと思っても、学び直せないとかいうことが出てきてしまう。 そういう意味では、一旦ここで「人生85年」というスパンに立って、従来の年齢輪切 り的なマインドセットを解き放すというか、リセットしてみるというか、そういうメッ セージを懇談会の報告書は世の中に送る必要があるのではないかなと。非常に漠然とし たイメージですが、思っています。 ○岩男座長 私も実は全く同感でございます。これまでも高齢者という言葉というのか 概念を使うのをやめたいというご意見は、皆さん共有なさったと思っておりますが、適 当な代わるものがないので、当面仕方なく使うというようなところで、いま妥協してい るのだと思うのです。  本日の会合が始まる前にも清家委員といまの点でお話をしていまして、要するに年齢 でここからは余生であるとか、定年後であるとかいったような切り方というか、そうい う視点、枠組みはもうとにかく外すというのが、1つ提言をすべき新しい視点なのだろ うと思うのです。伊藤委員が共通の関心と言われましたが、共通のテーマでいろいろな 人が、年齢にかかわりなく共通のテーマで参画するというイメージだと思います。  そういうことで言うと、清家委員が「生涯現役世代」ということを、特に働くことに おいて言われているのですが、これは何も働くことに限らなくて、遊ぶことも学ぶこと も、それこそ文化的な楽しみすべてにおいて、生涯現役という発想が必要ではないかと 思っています。  もう1つは、いちばん最初のときに桑原委員だったでしょうか、おそばをこねていて、 その残りを、人生が長くなったから一層薄くして最後まで使っていくような、何かそん なお話がありました。私は、そうではなくて、適宜必要な知的な投資、あるいは体力に 関する投資とか、いろいろな意味でもっと能力を伸ばすようなことを続けていって、最 後まで能力開発をする。そういう発想をしないといけないのではないかと考えています。 その辺は、「いや、違うのですよ。やはり少し蓄えたものをそおっと、できるだけ薄く長 く使うんですよ。そのほうがいいのです」と言うご意見が多ければ、また、そういう立 場で結構だと思うのですが、私はその辺りも少し違うのではないかなという気がしてお ります。 ○高階委員 いまの問題提起、誰のためかということと、それとの関係でこの報告書に どういうことをさらに入れたらいいかということ。まさにいままでのご指摘のとおり、 これは行政に対しても注文をつけたいし、しかし、一般の考え方でも少し違うのではな いかと。いま言われたマインドセット、違う考え方で85年見直しましょうということ だと思うのです。それは全く私も同感です。  そのために清家委員が言われた、若いころは勉強だと、壮年時代は働け、あとは余生 だという仕方で、年齢で区切っていく。それはわりに日本ではいままであって、働く時 は残業をして夜中でもやる。定年になってしまうと朝から何をしていいかわからない。 そういう人間のさまざまな活動を年齢ではないと言われた。確かにそうで、それをでは、 どうやって生き方に組み込むか。  1つの提案としてここの中にもあったのですが、どの年齢であれ、1日でも1年でも いいのですが、時間の中にどうやって組み込むか。地域社会の話も出ましたが、例えば 会社が全部引き受けている。職縁だと福利厚生はよくて、どこかに旅行に行くのも全部 会社が持つとか、運動会までやるとかということ。それは別の所でやるということが考 えられて、別の地域社会ができるというお話も出たのです。そうすると、いままで出て きた人間が生きていく上にやること、その働くことも大事だけれども、スポーツも大事 だし、文化活動も大事だし、生涯学ぶのもいい。それを既にある1日の時間で、朝早く 起きてジョギングをしたり、夕方の社交時間ではもう会社とは別れて音楽会に行ったり ということを、徐々にやり始めていることがある。  私はそういうことがやりやすくなるように、年齢で区切るのではなくて、一人ひとり がどうやって自分の時間割りを組めるか。そのためには、例えばスポーツならばスポー ツ施設も早くても使えるような、あるいは夜でも使えるようにするとか。フレックスタ イムの話もどなたからかちょっと出たと思いますが、働く時間も1日8時間だけではな くて、半日だけやれる、それでそれなりのあれができるシステムを企業が考えてもらう とか。  中間領域の社交というのは、私もいつも考えているのですが、劇場とか音楽会とか、 一緒になってカルタ遊びをするでも将棋でも何でもいいのですが、そういう場所にアク セスが大事だとか、場所が必要だということ。さらには、そういう社交の場、ヨーロッ パなどで見ると、それぞれの人の自宅にあるのですよね。空間の中も働く場所もあるし、 社交の場所もある。日本だといままでは政策的に、とにかく住む、本当に住むだけの場 所なのだけれども。  したがって、自分の家に複数の人を呼んで社交、社交と言ってもそんな堅苦しいもの でなくてもいいし、あるいは俳句の会をやってもいいし、あるいはサロンみたいなもの でもいいのですが、そういう場所がない。かなり大きなあれになりますが、住宅なども 従来の必要最小限ではない余裕をもった住宅ができるような、これは住宅政策の問題と もかかわります。座長が言われた町の中でも、そういう場所ができるような町づくりで も考えていく。それを、それぞれの人が自分の余生、60を超えてから使うのではなくて、 若いころでもある時間配分で使えるような方式を考える。  同様に勉強でも若いころは一生懸命に勉強をするけれども、これも生涯教育の話が出 ましたが、年をとってからでも勉強が楽しいという人もいるし、あるいは働きながらや りたい。その時間割が組めるような社会の考え方と、それから一部は企業なり行政も加 わって、社会制度を整えていくということがこれから必要ではないかと考えます。 ○山崎委員 私もこの提言は誰に向かって発信するのかなというのは考えつつも、しか し、自分の立場からの意見を展開していました。これをこういうふうにまとめていただ きますと、この提言は、いろいろな人にとって、例えば日々の生活をおくる一般国民に とってもそうですし、あるいはまた、行政とか企業などで働く人にとってもそうですが、 これから我々は平均的には85年ぐらいは生きるという統計的な人生の長さの中で、い ろいろなことが起こり得ますよという情報の発信と、そして、そういう場面での生きる ヒントのようなものになるのかなと考えました。ですから、これを読む人の立場によっ て、受け取り方それぞれ違ってくるのではないかという気がします。    私の提言「死を学び、より良く生きるカリキュラムの構築」も入っていますが、人間 が生きる、死ぬというのは、長さでは決してないだろうと思うのです。私の提言のよう な取り組みをベースとした結果として、自分なりの死生観を確立できれば、結果として の人生が短かったとしても長かったとしても、その人は自分らしく生きることが可能に なってくるのではないかと思うのです。  ですから、この人生85年ビジョンの構想が、まず、舛添大臣が出してきたと思われ るのですが、最初の意図が十分読めないところもありますが、でも、私はこの間の論議 を通して、この提言は、読む人の立場によって、それぞれの人がそれぞれの生きるヒン トになればいいぐらいでよいのではないのかなという気がしています。 ○石川委員 これを今朝読んで大変感心しましたね。やはり中央官庁というのは頭のい い方がいらっしゃるものだと。あれだけみんなが勝手なことを言っているのを、よく教 科書のようにきちんとおまとめになるものだと。私もこれ読んではじめて自分たちがこ こでやってきたことの全体像がわかりました。  それで、つくづく思いますのは、やはり、これは若い人のために、あなた方はこうい う状況に置かれているのだよということを。私もこれを読んで、ああ、なるほどこうな っているのかということがわかりましたし、特に山崎委員のお話を伺う前なんか、自分 が家内が肺がんで亡くなるという悲惨な経験をしていても、自分のことしかわかりませ んから、その全体像が見えないのですね。我々はどうせもう先が長くない、お線香とロ ーソクが目の前にちらついているような年ですからあれなのですが、若い方に、いまあ なた方はこういう状況に置かれているのだよということを、3分の2ぐらいの重点で知 っておかれたほうがいいと思うのです。  そう思うのは、特に86.何パーセントですか、勤め人が多いという世の中です。私の 親友が高校の同期なのですが、東京大学の機械科を出て、某大手機械メーカーで研究所 長の役員になるまで勤めて、定年になってからも、非常に有能な人ですから70歳まで 嘱託でかなりの給料をもらって働いていました。70までは会社にも週に何回か行きなが ら、私立大学の工学部機械科の非常勤講師を3つぐらいやっていました。  私も70歳で武蔵野美術大学の非常勤講師をやっていたが、私は定年になっても全然、 困らないのですが、彼の場合はもうやることがないのです。何をやっているかというと、 平和、憲法9条を守る会とかいうのをやっているのですね。精力があり余っていて、能 力もあるのですが、なんていうのでしょうか。結局、勤めている間に自分が会社から切 り離されたときに、どう生きるかというビジョンが全くないのです。  私なんかは、とにかく、毎日毎日、襲いかかる仕事に必死になって立ち向かっていて。 厚生労働省からお声がかかってと、携帯電話も何も持っていませんから、逃げてこられ るのですね。国の仕事をやっているのだとか何とか、勝手な理屈をつけて、それでいそ いそと一度も休まずにここへ出てきているのです。高橋委員は今日はいらっしゃいませ んが、私たちのような自営業者は、とにかく仕事があるかぎり先のことを考えている余 裕もないですし、自分はいかにいくべきかとか。もう死ぬ話のことのほうは、もう身に 浸みてわかっていましたけれども。  特にこれだけの、人口の大部分、いまの90%近くが自営業者ではなくなってしまうと いうことになると、あの人たちにこれをわかるように、これは人口の大部分と言ってい いわけですから、あなた方は現役でいま働いている、特にまだいまなら何とかなるとい う。私ぐらいの年になると、もう定年になっても、それこそ憲法9条を守る会ぐらいの ことしかやれなくなってしまいますから。現役の、それこそ40、50ぐらいの人に「あ んたたち、年をとるとえらいことになるんだよ」と恐喝するわけではないのですが、こ ういうことが待っているのですよ。だから、それに備えておきなさいということを、ま ず自分で考えてもらわないと。  制度、いくらその場所を作って、大体こういう話をしていると「箱もの」と言うので しょうか、何か道具を作って、どうのこうのというのですが。そういうこと、例えば大 学院に行って何とかしたところで、年をとってから仕事があるわけではないです。それ は若いうちから、いずれ我々は会社から、お役所の方は天下りとかいううまい方法があ るのかもしれませんが、私たちはそういうのはないですから。だから、50、60になって 職業転換しようとしても、ここにおられるような有名な方にはあるかもしれませんが、 まず無理だと思うのです。  私も50歳で自分の会社を辞めて専業作家になりましたが、最初の3年は、これはし まったと思いましたよ。いままで創業経営者で独裁者みたいで威張っていたのが1人に なっちゃうと、これは。これでもう一度、会社に戻るということはみっともなくて言え ないし、どうしようかと思っているときに、ちょっと売れる本が出て、それから忙しい ことは忙しいですが、所得の点では左うちわで暮らせるようになりました。これだって、 運がいいからなのですね。転換しているときにソ連の崩壊と、バブルの崩壊という二大 事件が相次いで起きて、それで、それまで鼻も引っかけなかった人が、みんな江戸、江 戸というようになったので、これ幸いとせっせと売り込んで、私は何とかやっていける ようになりましたが、これは幸運なのです。  私の場合は40ぐらいのときから、50歳になったら専業作家になろうと思って準備し ていましたし、本もそれまでに十何冊出していましたが。普通に会社に人生をかけたよ うな方というのは、定年になってから、さあと言っても、私は無理ではないかと。これ はもう絶対に現役の方に、これをもっとそういうふうに書き直して、内容はもうこれで いいと思うのですが。  年寄りはどうせもうすぐに死ぬのですからもういいのです。これから出てくる人たち、 大変です。だってこんなに佃煮になるほど老人がいる社会なんて、誰も経験したことが ないのですし、私たちどうしていいかわからないのですから。いまから、これから佃煮 の材料になる世代の人が、自分たちはこれから年をとったらどうなるのだということを ちゃんと、何とかやっていこうということを考えておかないと手遅れになります。いく ら国でやろうといっても、国でできることなんて、馬を水辺に連れて行くことはできて も水を飲ますことはできないという言葉がありますが、やはり本人がやる気じゃないの に、いくら周りでバックアップしたところで、できないと思うのです。  ○岩男座長 ありがとうございました。準備がちゃんとできるようなことをメッセージ として伝わるようにしたいと思います。 ○石川委員 年寄りもかわいそうというか、勝手に年をとるのだからしようがないので す、みんな。 ○岩男座長 人口講成の中で、年をとった人が占める部分が非常に大きくなるわけです ね。そこが非常に沈滞している、あるいはいろいろな意味でその部分のために財政負担 が大きくなるというのは、やはり国全体として、社会全体として、非常に問題があるわ けです。また、おそらく民主主義の基本は、構成員の意見が反映されるということなの だろうと思いますが、年寄りの意見はもう聞かなくていいということではないのだと思 うのですね。ですから、年をとった人たちも、ちゃんとその声が反映できるような仕組 みも必要でしょうね。 ○石川委員 それは自分が年をとっているから、やけになって言っているだけで、本当 は年寄りも大事なのです。ただ、私も、例えばこんなに長生きするとは思わなかった。 私は74歳になっても、とにかく1日中パソコンに向かって電話の相手をして、ファッ クスの熱転写のテープが入れたばかりなのにすぐなくなっちゃうほど、たくさんファッ クスが来て。とにかく、こんなに年をとってまで働かなければいけないのだということ を、若いうちから覚悟していれば、もうちょっとやりようがあったと思うのです。です から、これは若い方に、あなた方はこうなるんだよということを言ってあげないと、ど うしようもなくなると思います。これは、そのためには本当にいいテキストになると思 います。 ○古賀委員 大小を混ぜて、いくつか意見を言わせていただきたいと思います。誰に訴 えて、何をゴールにするかというのは、大臣に聞いてみないとわからないことです。我々 にどのようなオーダーをくれたのかを含めて、それはもう少し整理をすることは、前提 として非常に重要なことだと思います。  私の個人的なイメージは、山崎委員が言われたそれを読んで生きるヒントにするとい うことだと思います。それにしては、各分野でものすごく具体的、超具体的な政策が出 ているところもあれば、考え方だけ出ているところもあるという不揃いがあるのです。 そういうところをどう整理するかというのも、全体的な構成としては非常に重要なこと ではないかということがまず1点です。  2つ目は「生涯現役」、私はまさに座長の言われるとおりだと思うのです。我々は働く 者の団体ですから、働くことを中心にということであるけれども、人生85年時代とい うのはそれだけではないわけです。そういう意味からすれば、例えば1頁の第2章「自 己実現に向けた働き方の改革」みたいなことがどんとあっていいのかと。人生85年の 中での1つの分野が働くことであるということであるべきなのかという思いもしてなら ないわけです。したがって、それはまた最初に戻るのですが、大臣のオーダーがどうい うことなのか、あるいは我々がこの発信をどうするかということによって、この辺の書 きぶりもだいぶ変わってくるであろうという感じがしています。  その2点が全体的な課題なのですが、少し個別に触れさせていただきますと、先ほど 言ったのと一緒なのですが、これは「働き方の改革」ということをどんと持ってきて、 いきなり「学校から職業への円滑な移行」みたいなことになっているのですよね。前段 はどうなのかというところ、中には少し書いてありましたが、前段の中で働くところか ら寿命が伸びるから、この上のところがやはり主にならざるを得ないというのは、よく わかるのですが、この辺が主になっているのですよね。もちろん死というものを、死の 尊厳みたいなことは考えられていいのですが、生まれて若いときの、この辺が全体のボ リュームから言うとやはり薄いのですよ。そういうことがどうなのかということが、1 つ課題としてあるのではないかと思います。  もっと具体的なことを言えば、私は第1回目でも提起しましたが、この働き方にして も、個人のキャリアをつけるというのは非常に重要なことですが、何かみんなで支え合 うみたいな、働くことによっても支え合う、あるいはチームとしての組織としての力を どう付けていくのかということが重要でしょう。「地域・社会参加」におけるところでは、 そういうことが書かれているのですが、そのことがその他のところではあまりないので す。  いま非常に問題なのは、お互いに支え合って生きていくのがやはり組織なのだよ、社 会なのだよ、その一員なんだよ、その役割と責任を私たちは果たさなければならないの だよという教育や気づきや、あるいは具体的行動においても、そういうことをしなけれ ばならないという、そこが非常に大きいと思うのです。それは私は地域のコミュニティ だけではないと思うのです。その辺りをきちんと、まさに「人生85年ビジョン」と言 う中では、どこかできちんと訴える、書き込んでおくべきではないかと思います。  また、これ思いつきみたいですが、環境問題というのは非常に重要なのですよね。い ま考えて、ただサミットがあるからどうだこうだというものではなくて、その種のこと も含めて、少しオブラートでもいいからその辺のことも非常に重要なテーマとして、我々 が生きていく上での環境問題に対することも書き込む必要があるのではないか。非常に 雑多なことを申し上げましたが、そんな感じがしております。 ○岩男座長 ありがとうございました。最初に事務局のほうで第1章、第2章、第3章 という3本の柱を、この懇談会でこれから議論することとして一応提示があったと記憶 しているので、この3つの柱にこだわりながらこれまでの議論を整理したということで はないかと思うのです。ですから、この構成についていろいろなアイデアをお出しいた だければと思います。前回、古賀委員はお休みでしたでしょうか。前回、社会的存在と しての人間の社会、お互いさまというようなことがかなり議論されたように記憶してい ます。 ○古賀委員 途中で出たのです。 ○岩男座長 お帰りになったあと、そういうご意見が出されておりました。環境につい ては私も全く同感で、第1回の懇談会でご指摘のあった24時間営業などが、環境問題 への配慮なしに行われているということと関連づけて、もう少し環境への配慮を入れた らいいのかなと、いまの話を聞いて思っております。 ○石川委員 エネルギー問題は私の専門でもあるのですが、いま古賀委員がおっしゃっ たとおりで、環境問題と言っても、こんなふんだんにエネルギーが使えなくなる世の中 が目の前に来ているのです。ですから、我々もその覚悟でいなければならないし、若い 方が我々みたいなじいさんになってもばあさんになっても、あんなことをやれるのだと 思っていたら、これも大間違いなのです。急速にエネルギーが使えなくなる時代が来て いるということは、いまの世の中が延々と続くのではなくて、人口だけではなくて、い ま古賀委員がおっしゃった環境問題、もう少し狭く言うとエネルギー問題が、いい、悪 いの問題ではありません、いままでのようにいかなくなるということは、触れておいて もいいような気がします。 ○清家委員 ちょっとテクニカルなことについて2点だけ。いま古賀委員が章立てのと ころでおっしゃったこととも関連するかもしれませんが、12頁で「いくつになっても働 ける社会づくり」とあるのですが、そのときに「働く意思と能力のある人が希望に応じ て働き続けられる『生涯現役社会』の実現は、働く人に生きがいや自己実現、健康をも たらすとともに」と書いてあるのです。おそらく、本人にもたらす最も重要なものは所 得だと思うのです。ですから、働き続けることによってきちんとした所得が得られ続け て、豊かな生活ができるということ。  全体の書きぶりについても、古賀委員等からもありましたが、私も同じような感じを 持ちました。先ほど石川委員がおっしゃったように、これを見ると、日本の官僚は本当 に優秀で、すばらしい文章になっているのですが、優秀すぎて、書き方として少し気に なったのは、例えば13頁の下から4行目で「併せて、募集・採用に際しての年齢制限 の撤廃については、雇用対策法の改正により事業主に義務付けられるところであるが、 その徹底を図るべきである」と書いてあるのです。このような文章は、おそらく我々の 報告書としてはこのような書きぶりにはならないと思うので、その辺は優秀すぎないよ うに、少し書きぶりを考えていただくといいかなと思います。これは、私どもが文章を 直したりするときに心がければいいところかと思います。 ○江利川事務次官 大臣の参加は最後ということなので、大臣が答えればまた違った話 も増えるかもしれませんが、この懇談会でいろいろと議論をお願いしたいと、あるいは していただいてよかったと思うことも含めて申し上げます。「人生80年時代」と言われ て久しいわけです。このテーマを「人生85年」にしたのは、人生80年時代の既成概念 にとらわれない切り方をしたいという問題意識があったわけです。  それは、前提にどういうものがあるかというと、人口ばかりですが、1つは少子化が 極めて進んでおり、高齢化が進んでいる。みんな長生きをするようになって長寿化した。 人口が減少していく。このようなことで、ある意味で誰も経験したことのない日本社会 が出てくるわけです。そういうものを踏まえて、既成概念にとらわれない何かを出して もらいたいという問題意識です。それは日本社会に対して、常識と思ったことが実は常 識ではないと。先ほど清家委員がおっしゃったことは、私はなるほどと思ったのですが、 年齢を基準に制度などが仕組まれていますが、年齢の輪切りではなく物の考え方をする というのは、まさに既成概念を切り換えていこうということで、そういう問題意識があ ったのが1つです。  みんなが長生きするというのは、人生の最後をみんなが共通に考えなければいけない 時期が来るのではないかと思うのです。死ぬ時期がばらばらだと、さまざまな形の死が あるわけですが、ある程度みんなが人生を全うする社会になったということは、人生の 生き方について、社会全体として何か考え方を持つべきではないかと。これは、山崎委 員の報告を中心にいろいろな議論が展開されました。  少子化の関係でいくと、少子化そのものというよりは就職氷河期のニート、フリータ ー問題が結構大きくて、この人たちが結婚しない、子どもを持たないことが、ある意味 で社会全体の負担になってくる可能性があるわけです。これは、いまの社会が抱えてい る1つの病理的な現象です。病理という言葉がいいかどうかはわかりませんが、大きな 課題です。このような現に抱えていることはどうなのだろうかと。  もう1つは、これは議論があればということで、皆さんのご自由にと思っていたので すが、よくモラルの崩壊と言われています。社会が経済的に発展していく中ではなく、 成熟していったときに生じるのがそういう問題です。これも、ある意味で新しい課題だ と思いますので、そういうものについてのご提案を。  ですから、私は大臣とたくさんは議論していませんが、最初に何をここで議論しても らうかは、特に後ろのほうはあまり言っていませんでしたが、既成概念を超えたものを 社会に投げていただく。行政も大体既成概念にとらわれてやっているので、これが行政 の門を開いてくれるのではないかと、そんな思いでお願いしたわけです。議論は、私が 当初思っていたものをはるかに超えて、すばらしい議論が展開されているのではないか と感じております。 ○高階委員 いまのご意見に関して、確かにいろいろな働き方があって、生涯現役とい うことは働く人に生きがいや自己実現、健康をもたらすと。でも、それだけではよくわ からない。健康ははっきりするのですが、生きがいや自己実現とは何だろうということ もよくわからないのです。生きがいは、よかったということで、働いてお金が入るのを 一生懸命毎晩数えるのを生きがいにしている人もいるかもしれないので、それも生きが いの1つなのですが、そうではない。自己実現とは何だろうと。達成感みたいなものも あるかもしれない。  しかし、清家委員がおっしゃったように、非常に実際的な面での生きがいも、所得も 増える、あるいは少し心配がなくなることもありますが、それとは別に、何もしないよ りやってよかったということ、例えばボランティアなどはそうですね。別に儲けるため にやるわけではないけれど、そこで生きがいを感じる。それは人様の役に立つというか、 自己実現というと、いまの若い人は自分のやりたいことだけをやればいいというのを強 く強調されるのです。それも大事なのですが、そうではなくて、世のため人のためとい うのはあまりにも決まり文句ですが、かつてはそれであって、それが生きがいになる。 石川委員がおっしゃった、ご隠居さんが江戸時代に40歳で竈も別にして何をしている かというと、熊さん、八さんが来たときに相談相手になるとか、店子の世話をするとか で生きがいを感じていると。  また、チラッと出てきましたが、西洋では労働は苦役ですが、日本ではそこに喜びが あると。その喜びは、私はそこだと思っているのです。西洋の場合には苦役だけれど、 仕方がない。お金のためにやるから、西洋の人は働かせようと思ったら必ずボーナスを 出すとか、よくやった人にはお金をやろうと。私の従兄弟がドイツで企業をやっていて、 何かやりたいときにもっと働かせようと思うと、こういうことをやれば給料を上げてや るよと言うと一生懸命やるのです。  日本では、これは音楽をやっている人ですが、どうもそうではなくて、仲間内での承 認が非常に大事だと。もちろん、お金が入ることもいいのでしょうが、「お前、よくやっ たね」と言われることが一生懸命働く意欲になる。これはNHKのプロジェクトXなど でもやっていると思いますが、日本の一生懸命ものづくりをやる人が、何であんなに一 生懸命になるかというと、1つは自分の達成感、それからチームの中で「お前、よくや ったね」と言われる、つまり他者の承認が非常に大きいのです。一種のグループや地域 社会、どこかのコミュニティの中で、日本ではそれが大きいから働くことの喜びがある ような気がするのです。そういう意味では、自己実現は大事だけれど、それは同時に他 者とも結びつくし、その承認が自分に返ってくるという視点が必要ではないかという気 がします。 ○岩男座長 ありがとうございました。事務局から皆様にお送りしたバージョンには入 っていなかったのですが、昨日、私はいま高階委員がおっしゃったことを是非入れてい ただきたいと、3頁の真ん中のパラグラフに、「生涯現役で誰かの役に立つ生き方を支え るビジョンを打ち立てなければならない時期が来ている」ということを加えていただき ました。これを、是非皆様の知恵でもっと膨らませていただければと思います。 ○小室委員 今回、このまとめられたものを拝見して非常に勉強になったのは、私たち がいま生きている時代が、何がどう変わったのかがよくわかりました。先ほど石川委員 がおっしゃったように、これは若い人が早く知らなければいけないと思ったとともに、 これを知らなければいけないのは若い人だけではなく、現時点で私の親世代にとっても、 自分の親を見ていたロールモデルが通用しない時期なのではないかと思うのです。そこ でこの報告書の中で明確に出していったらいいと思うのは、時代の変化について何かま とめて、何がどう変わったのかという背景が、まず1点目にあるといいのかなと思いま した。  特に、私はよく管理職の研修をするのですが、かつて長時間労働は非常によかったの だと、会社にとって必要だったのだという議論が展開されたときに、当然ですよと、早 く安く大量に物を作る時代に、長時間労働したほうができるアウトプットが増えるのは 当たり前で、その時代は長時間労働はマルでした。それが知的生産性の時代になって、 成熟した社会の中でオンリーワンのものを作らなければ勝ち残っていけなくなったとき には、どんなに長い時間やってもアイデアが枯渇するだけで、いいものなんかできない。 背景が変わったら、作り方も会社の組織も変わる。20年前と同じ商品は出さないですよ ね、というお話をすると、だから残業奨励の時代から残業はNGの時代になるのだなと。 自分のマネジメントを変化させるきっかけは、背景を知ると非常に腑に落ちるというの を見て、現実の変化を端的にまとめて、こんなに時代が変わったので、だからこそとい うベースを入れるべきではないかと思いました。  そこに2点目として、だからいま何が必要な社会かということで、皆さんからも盛ん に出ていた助け合いの話です。特に思うのが、働いている期間もその後もだと思います が、人の助けなしに生涯のキャリアを終えられる人が大変少なくなったと思うのです。 育児の時期も、地域コミュニティがないので、その時期を超えるには短時間勤務を使っ て同僚の世話になったり、休業期間を取らなければいけないし、そのあともう1回キャ リアのへこみがあって、介護の時期を迎え、その時期にも組織の助けを借りて働かなけ ればいけない。自分のキャリアが人の助けなしには成り立たない時代になったことの背 景を、1の現実の変化のところで知った上で、お互いさまで、すべての人にとって明日 は我が身の時代なのですよと、「だからこそ」ということを入れたらいいと思います。自 己実現に向けた働き方の改革のところが納得いくためにも、いまがいかにお互いさまの 時代で、それがすべての人にとって明日は我が身の時代なのだと。  かつては、男性の場合はほとんどキャリアのへこみを考えずに生涯のキャリアを終え られたと思いますが、いまは男性も介護から逃げられないし、未婚率は男性のほうが高 いわけです。そうなってくると、たった1人で親の介護をする確率は、女性よりも男性 のほうが高いことを考えると、すべての人がそういったことで明日は我が身なのですよ というメッセージを入れていくと、古賀委員もおっしゃった、今後はチームワークで成 り立っていかなければいけないという組織の在り方についても、腑に落ちるのではない かと思っております。  もう少し、自分の生きている時代がいかに昔と変わって違うロールモデルが必要か、 かつてのロールモデルが成り立たないかという話を入れていかなければいけないのでは ないかと思いました。すでにこの中に入っている話ではあるのですが、切り口を、変化 に光を当てたほうが納得感が出てくるのかなと思いました。 ○菊川委員 人生85年ビジョンということで、最初に生き方とか人生ということがあ ると思うのですが、私はこの中では若いほう代表で、まだ人生30年の経験の中から言 わせていただきます。私の場合は、小学校、中学校、高校、大学、社会に出て10年目 なのです。私は受験勉強を中学、高校、大学としてきて、いまはみんな激しく受験勉強 をやっている時代だと思いますが、その1人としてやってきました。それで将来何がや りたいかということに大学生で直面したときに、自分の心がわくわくするような、胸が 踊るようなことって何だろうと、初めてそこにぶち当たりました。それまでは、学校だ ったり両親だったり、周りの環境や常識、とらえ方の中で受験勉強をしてきただけで、 自分の生き方を自分で考えてこなかったのです。大学に入って、初めて自分の人生をど う生きていこうかと考えたときに、何がやりたいかと初めて考えたのです。  それと同じように、ちょっと前の時代も経済が発達したり、産業が発達して高度成長 の時代であったり、先ほどおっしゃったようなロールモデルがあって、それに何となく 乗ることが自分の幸せであったり、ものの価値基準の尺度になっていて、それが時代が 変わって自分1人になったときに、これはどういうことなのだろうと、自分が空っぽに なって迷子になってしまうことがあると思うのです。  それは全員が全員ではなくて、例えばそういうことがあるとして、それはなぜかとい うと、自分の心や価値基準で判断して行動し、経験して、そこから成長していくといっ た自分で歩いていく力がないと、自分は何が楽しいのかも分からなくなると思うし、ど う生きていったらいいかも分からないと思うのです。  このように枠組みをいっぱい作って、85年生きるいろいろな段階があって、そのため に途中で長期休暇を取るといったことは、自分の経験ややりたいことをする上でやりや すくなる、とてもすてきで大切なことだと思うのですが、根本的なところで、小学校、 中学校、高校などで知識ばかりを教えるのではなく、生き方や考え方、知恵を育てる経 験をしていかないと、例えば80年生きた人や60で定年した人は、赤ちゃんと同じ状況 から始めなければいけなくなると思うのです。  小さいときから自分で考えたり、経験で自分づくりをしていったときに、初めていき いき生きるということはどういうことかを観念的、概念的でなく、自分の身をもって感 じることができるのではないかと思うのです。そこからどのように生きたいか、どの時 代に生きる人も同じだと思うのですが、世の中の常識や既成概念、社会ルールの中で生 きてくると、見えにくくなってくるところは多いのかなという気がします。  私も、大学を出て芸能界で女優の仕事などをしていて、すごく右往左往していますし、 どうやって生きていったらいいのだろうというのは日々わかっていますが、そこで経験 をすることによって1歩でも次に進んでいける、自分が楽しく生きるには、いきいき生 きるにはという経験をしている最中だと思います。そういったことがとても大事なので はないかと思います。それぞれにそういう意識、自分のことなのだという意識の変化を もたらすようなことを伝えられることが、まず第一歩なのではないかと思います。 ○岩男座長 ありがとうございました。「自分づくり」というのは非常にいい言葉だなと 思いながら伺ってました。前回「人間力」という言葉を使われた委員がいらっしゃいま したが、さまざまな経験を通じて人間力のある自分をつくっていくということを、この 中に入れていく必要があると思いました。 ○古賀委員 先ほど言った学校から職業への円滑な移行、その前がないといった部分が、 いま菊川委員がおっしゃったことなのです。ここをどう作っていくかが非常に重要だと 思うのです。それは教育の問題だと一言で片づけるのではなく、そこの基盤があって、 若いとき、あるいは子どものときからそういうことをいろいろな意味でやることによっ て、本当に長い80〜85年を生きていける。もちろん、それはずっと続いていくことな のだろうと思いますが、その部分はもう少しあるのではないかと思います。  これもずっと出てきているのですが、セットとして健康と経済と生きがいだと思うの です。生きがいややりがいは、先ほどおっしゃったように、誰かに必要とされているな どといったことが非常に大きなファクターになっていくと思うのです。そういう意味で は、先ほど座長がおっしゃった3頁で、ほかの人の役に立つのは非常にいいのですが、 この辺りも少し肉付けをして、他者から必要とされる、自分のやりがいなのか自分の存 在意義なのか、そういうことを原点に据える必要があると思います。  3つ目は、次官がフリーターやニートの話をされましたが、これは健康、経済、生き がいということからすれば、非常に大きなポイントだと思います。ここに書けとは言い ませんが、ここ10数年、いわゆる非正規社員がどんどん増えて、すべてとは言いませ んが、その人たちが不安定な生活に置かれていることが多いのです。年収200万円以下 の層が1,000万人を超えるということに陥っているのです。  暗い面ばかりを出す必要はないと思いますが、それがフリーター、ニートに総称され るのかどうかは別にしても、そのような現状はきちんと把握しておかないと、人生85 年を生きる意味での健康、経済という大きな2つの基盤に、大きな支障が出てきている 人たちが増えていることは事実だと思うのです。このことは認識をしておく必要がある のではないかということは、あえて申し上げておきたいと思います。 ○フランソワーズ・モレシャン委員 いまの話を聞いて、大賛成です。でも、私たちよ りも若い人たちには不安定なのはそのとおりです。これから、もっともっと人生は不安 定になると思います。昨日の晩は銀行のインサイダーと一緒にお食事をしていたのです が、今年はうんと大きそうですね。結構早く、経済的とみんな言っています。大きな銀 行は倒産すると。それは世界中で、日本だけの話ではなく、日本は世界の中の1つで、 もちろん日本にも影響がある。  けれど、皆さんご存じのように、どんどん私たちの人生は長くなる。長くなるほど、 いろいろなことが起こってしまいます。中世時代は35歳でみんな死んでいたときです、 フランスでも日本でもどこでも。なんて簡単でしょう。1回結婚すれば大丈夫でしたが、 いまは3回。覚えていますか、フランスのとても有名なクストーですが、この間亡くな る前に、ニューヨークへ行く前にパリから、クストーのそばでした、私。クストーはつ いでに哲学者でしたが、彼はあのとき4回目か3回目の結婚でした。  それは別にいいのですが、私に言ったのは、フランソワーズが、昔1回きりで大丈夫 でした、コトンと死んでしまう。いまは80〜90まで生きていますから、人間がお互い 変わります。気持ち、大人になりながら。ですから、何回も結婚してもそんなに恥ずか しいことにならない。プラス、仕事もそうですね。私があちこち電話しても、大体最近 私たちの世界では特に変わるかもしれませんが、会社を変えるのは当たり前です、いま。 人生の中で5回ぐらい。それでフリーターとして働くしかできない人間も。  私たちが若者たちに教えてあげないといけないのは、混沌の時代の上手な使い方です。 ジャングル、アフガニスタンなどとても危険な所に行かせて、どのように上手に生きて いくか、何が起こっても生きることができることを教えるのは、これからいちばん大事 だと思います。  いま、みんな指示を待っています。政府から、何でも待っています。学校の先生から 教えていただきたいと。パッシブの社会から、文句は言うけれど動かない。文句だけで 何も動かない。パッシブの時代から、1人ずつアクティブにならないといけません。そ れがいちばん大事でしょう。それは、やはり学校から教えてあげたほうがいいですね。 「お前は砂漠3週間、頑張って」ということにしないと、上手に上手に85や90まで生 きていられないでしょう、ということでした。よろしくお願いします。 ○山崎委員 菊川委員のお話を聞いて、大学を卒業するころになって、これからどんな 人生があるのだろうと考えていく。大抵そうだと思うのですが、子どもも大人も、どん な場面でも、自分たちが遭遇した問題に対してどのような価値判断をしていくのかを、 しっかりと自分の中に持っていれば、選択ができるのではないかと思います。  ここでビジョンの話をしていても、今後、日本のみならず、地球上全体が環境も含め ていい方向に向かっていくとは限らないわけですし、むしろとても過酷な環境と人生が 待っているかもしれないわけです。そのような場面で、自分はどこに価値基準を置いて、 自分の周囲の人たちとの関わりを持ちながら生きていくのかという生き方の部分を、し っかり子どもの時代からの教育の中に入れていく。人間とは何なのか、人生とは何なの か。私は終末期に関わる仕事をしていますので、とくに違和感なく死という言葉を使い ますが、死によって有限の人生を規定されている我々にとって、いまこの場面で何をす ることが大事なのかというのは、時代と世代と状況によって変わってくるかもしれませ んが、そのときに価値判断を選択する基準を、小さいころからいろいろな場面で学ぶこ とは可能だと思います。それこそが、ビジョンの土台を作っていくものだろうと思いま す。  我々の社会がどのような社会になっていくかは予測できるわけですから、そのような 予測できる状況を示していくこと。しかし、その中でどう生きるかは、それぞれの問題 だと思うのです。なおかつ、最終的にどんな大変な時代であったとしても、戦前もそう ですし、戦争直後もそうだったと思いますが、おそらく人が人生を終えていくときに大 事なものは、その人が蓄えてきたお金も経歴も役に立たないわけでしていちばん役に立 つのは、弱っていく自分を大切にしてくれる人たちとの関わりで、それこそが生きてき てよかったと思える根拠になるわけです。  あとは各年代ごとに遭遇するかもしれない状況を提示していくことによって、そのと きには、こうしたほうがいいですよではなく、自分で判断していけるようになることが 大事なことなのかなと思います。 ○萩原委員 菊川委員のお話を聞いて、私も幼稚園、小学校、中学校、高校、大学のこ とを思い出していたのですが、私は20歳で成人式を迎える前に、10歳の小学校4年生 のときに、2分の1成人式というのを小学校でやってもらったのです。そのときに、し っかりと物心ついた4年生なので、10歳までの自分史を作ったのです。自分はどうやっ て生まれて、どうやって生きて育てられてここまで来たのか、誰に支えられてきたのか、 感謝の気持ち。これから未来へという欄も先生が作ってくださったのですが、みんなの ものを先生が読んで発表してくれた中に、みんな感謝の気持ちという言葉がたくさん出 ていました、というのがありました。  私はそれがすごく印象に残っていて、たくさんの方々に支えられて生きているのだと いうことや、未来に向けて自分はこれから何になりたいのか、将来に向けての夢や目標 をその場で決めて、それが変わることもあると思いますが、そのときに自分がどうやっ てゴールまで行くのかのプロセスも自分自身で考えて、もちろん周りの意見も聞ける環 境をつくることも非常に大事になると思います。  私はいろいろな小学校に行ってお話をするのですが、そのときに「皆さん、夢はあり ますか」と聞くと、学校によって全員手が挙がる学校と、100人いたら20人ぐらいの 学校など本当にばらばらで。100人いたら100人手を挙げてくれた小学校は、ふれあい 授業、課外授業をたくさんされているのです。パン屋さんが来たり、花屋さんが来たり、 スポーツマンが来たり、女優さんは難しいかもしれませんが、そういった所で活躍して いる方を呼んで話をしたり。学校外に出て自分がやりたい職業を体験学習の形でやった りすると、自分が何をしなければならないか、どうしたらそういうものになれるかを自 分で調べる時間が増えていると先生から聞いて、そういった自分づくりのヒントが大事 なのかなと感じます。  私は、大学院の修士論文で自分史を書きました。自分史で25年間について書いたの ですが、初めてすべてのことを省みて、要所要所でたくさんの方に恵まれて、提言をし てもらいながら生きてきたので、自分を省みる機会を作るヒントになるようなことがあ るといいのかなと思います。  うちの祖父が、今年88で米寿を迎えるのですが、この間近所の方や親戚の方々に、「私 はいま85年ビジョン懇談会に出ているのだけれど、何かある」と聞いたのですが、み んな口を揃えて、いま言っても遅いからと言うのです。それで私も困ってしまうことが あって、これをファックスでいただいたときに読んできたのですが、年齢がばらばらの 意見で、これは誰が読むのかがわからなくて、これは年齢の高い方が読んだほうがいい とか、これは若者が読んだほうがいいということがたくさんありました。年齢を分けて はいけないと思うのですが、若い方の意見をお年寄りが読んでも、こんなのは僕たちで はできない、となってしまうことがあると思うので、年齢をうまく分けて、若い方には 若い方の生きるヒントを与えてあげたいし、年齢が高い方には年齢が高い方ができるよ うな文化や運動を、ヒントとしてあげられるようなものができればいいのかなと思いま す。 ○ダニエル・カール委員 いままでの皆さんの発言は本当に上手にまとめていただいて、 なるほど、自分もこんなうまいことを言っていたかと、いろいろびっくりしました。本 当にありがとうございました。  ビジョンとしてはだんだん骨に肉がついてきているのですが、トータルの数字がまだ 見えてこないので、1つの案ですが、いまの日本人を外から見る私としては、人生全体 が苦労せねばならないという考えが強すぎるのではないでしょうか。学生の時代、皆さ んが先生に苦労しないと進歩はないと言われる、働く者になれば、社長にも課長にも苦 労しないと会社は拡大できないと。今度は85歳まで生きるという予定ですが、64、5 ぐらいで引退したとすれば、年金が少ないからまた苦労をせねばならないと思われたら、 人生は一生苦労まみれなのだと。それだったら、はっきり言って85年間生きたくない、 となるのです。そのせいで、いまの若い人たちはやりがいがない、生きがいがない、ニ ートが増えた、引きこもりも増えた、何のために生まれてきたのか、苦労するために生 まれてきたのか。どこか根本的に、日本の社会が戦後からおかしくなりましたね。ネガ ティブシンキングが主流となり、苦労しないといけないという考え方は、はっきり言っ て長生きするには相応しくないのです。それでは早く死んでしまいます。  日本という国は、経済的に見ればスイス以上の国です。GDPはもちろん、1人当たり の給料は日本はOECDでの中で2番目か3番目です。それで平均年齢がドーッと長く なれば、こんなに幸せになる条件が揃っている国は、全世界でどこにもないのです。だ から、日本にいちばん必要となっているのは、特にこのビジョンでは、もっと明るく生 きていこうということなのです。  学生時代から働いて、苦労するものからスムーズに苦労するものにという滑り台、結 局85年経ったら死ぬ。やはりネガティブシンキングが多すぎるのです。こんなに尊敬 できるところがたくさんある国なのに、気がつかないところ。文化的なこと、経済的な ことなどなどたくさんあるのに。ビジョンが必要だと言われたら、このビジョンは肉と してはいいかもしれないけれど、根本はそれなのです。スイスみたいな国になりましょ う。もっとボヘーッとしましょうよ。もっとのんびり生きていこうよ。  戦後から日本はおかしくなりましたね。アメリカと同じような経済力にならなければ ならないと、大黒柱1人で大家族が食っていけたのが、いま共働きでないと、共働きで もぎりぎり、おかしいですよ。いちばん儲かっているのは誰だろうと考えれば、私も納 税者ですからはっきり言わせていただきますが、政府なのです。政府が今度消費税を上 げるかもしれないとか、これからインフレが伸びるかもしれないとか、いろいろな恐い 発言をしているのだから、それでは高齢者は喜ばないですよ、また苦労かと。  資本主義的に消費者1人ひとりがもっとお金を使わないと、経済はよくならないのだ とよく言われていますが、あんな発言をすると、みんなが貯金ばかりするのです。銀行 に入れて、0.0001%で貯金する、おかしいですよ。日本人をもっと明るい国民にするた めには、とりあえず最初に、最低条件は、国が建設大国を変えなければならないですね。 無理やりな開発をやめて、余計な予算をやめて、公務員の数を半分ぐらいにカットして、 もちろんこちらの人たちはいいですが、でも日本の政府はいろいろなことをせねばなら ないのです。結局、日本を変えるにはそれしかないのです。だから、明るく生きましょ う。あまりいいまとめではないのですが、私の考えは、納税者ばかりですから頭に来て いるのです。 ○岩男座長 テリー・伊藤委員からも明るくというご発言がありましたので、いずれに しても明るいトーンの。 ○ダニエル・カール委員 追加ですが、働いている間や学生の時間をいちばん明るくす るためには、もっと余裕の時間を皆さんに与えることです、残業はなるべくなくして。 余裕の時間を学生から取ろうとしていますが、それは大間違いです。皆さん少子化が問 題だと言っていますが、すでに生んだ子どもたちをきちんと育てている時間もない人に 「もっと生め」と言っても、そんな発言はけしからんですよ。いまの若い人たちは、働 いて働いて、6カ月から保育園に預けるなんて、何を考えてるんだ、と思うぐらいです。 もっと時間を作らなければならない。これも政府が、できることでしたらいろいろ対策、 政策を考えていただきたいと思います。 ○岩男座長 これはあくまでまだ叩き台ですから、これからいろいろと皆さんのお知恵 を拝借しながら構成を含めて直していくわけですが、1つ気がついたのは、確かに「ゆ とり」という言葉がどこにも出てきていないと思います。岡田委員、まだご発言いただ いておりませんが、いかがでしょうか。 ○岡田委員 発言すると、ダニエル・カール委員と全く反対になってしまうのですが、 第1回のときにも話したのですが、ダイエットしたのです。そのときに思ったのですが、 人間の欲望の全行程は本人のためにならないというのがこの考えなのです。例えば、お いしいものを食べたいとか、楽したいとか、幸せになりたい、長生きしたい。こういう ことは、本人は幸せだと思っているのですが、トータルとして見たらあまり幸せそうに も思えない。生きがいや働きがいというのもこの委員会でよく出る言葉なのですが、す べての人間が生きがい、働きがいを求めると、社会は破綻してしまいます。苦労するこ とは、私は悪いことだとは思っていないのです。昭和33年生まれの古い日本人ですか ら。 ○ダニエル・カール委員 いい苦労と悪い苦労がある。 ○岡田委員 それを区別すると、違うと思うのです。いい苦労も悪い苦労もやれという のが私の考え方なので。基本的に、経済的効率というのが、いつの間にか言葉の定義が 変わって、どれぐらい自分の心の中のマイナス要素を少なくして、プラス要素を多くし ていくか。ワーク・ライフ・バランスなら、いかにつまらない労働を少なくして、楽し い生きがいや家族との余暇の時間を多くするのかという考え方自体が、何か間違った方 向なのではないかというのが私の考えなのです。ですから、まとめのところで聞かれる といままでの議論をぐちゃぐちゃにしてしまうのですが。  国民全部が生きがいや幸福を求める社会は破綻すると、私は思っています。例えば、 大家族だったら、子どもたちだけでものびのびさせてやって、それを支える親などは自 分が苦労を引き受けてなんぼというもので、国民の8〜9割ぐらいが、人間苦労するの が当たり前だと、一生懸命働こうと思っていて、1割から5%ぐらいの人はその中でも いきいきしたほうがいいと言うぐらいが、健全なバランスであろうと思うのです。  あまり国の方針としてみんなが生きがいを求めたり、みんながやりたいことをやった り長生きをする社会を求めても、エネルギー収支として絶対無理があると思います。85 年と決めるのだったら、それ以上長生きしそうな人はどうするのか。ぶっちゃけ、日本 国内では1億2,000万人しか生きていけないし、65億〜75億人ぐらいが地球の上限な のだから、そこから先長生きする人は、ほかの人の生きる権利、より豊かに生きる権利 を奪いつつ長生きすることを自覚しているのか。それは誰かが考えなければいけないわ けです。国民1人ひとりがそんなことに悩む必要がないのなら、省庁なり厚労省の人が 悩んで、長生きに関してはこういうアッパーリミットを設けようという提言ができるの かどうか。  考えている最中のことを話しているのでばらばらなのですが、私は自分自身の問題と しても、私は何歳まで生きていけば幸せなのかとか、何歳以上生きたら罪悪感を感じて 生きていくのがちょうどいいバランスなのだろうと。いつまでも生きられる限り、医療 が発達している限り、科学や自分の財力がいける限り幸せになりたいというのは、実は かなりみっともなくて醜い考え方なのではないかというのが、いまの私の真剣な気持ち なのです。このような提言はすごくポジティブな言葉が並んでいくところですが、そこ にちょっとした疑問が入ればいいなと思って、正直に思っていることを言いました。 ○岩男座長 今日は、もうやめなければいけない時間に来ております。厚生労働省のロ ゴの話を事務局のほうからすることになっておりますので、また次回続けて。 ○小室委員 ワーク・ライフ・バランスのところで、一言だけお願いします。いま「ワ ーク・ライフ・バランス」という言葉が出たので、その定義に関してなのです。つまら ない労働を少なくして余暇を広げようという概念もあるのですが、どちらかというと、 いまのワーク・ライフ・バランスは、ライフの時間をきちんと取ることが発想や人脈に つながって、それが仕事での質や効率にもつながって、お互いの相乗効果で回っていく という概念が、いま主に言われている内容かなと思うのです。これはまだ定義が定まっ ていないものなので、こんな考え方もあるということを、社名がワーク・ライフ・バラ ンスなので言わなければいけないかと思って、一言言わせていただきました。 ○岩男座長 ありがとうございました。岡田委員、世の中は苦労ばかりする人と苦労を 全然しない人の2つのグループに分かれるのではなくて、1人の人間の中で苦労すると きもあれば、それがあったからさらに喜びが大きかったりするのではないでしょうか。 ○岡田委員 私の言ったことは、あまりこの中に反映しなくても結構です。 ○岩男座長 大変活発にいろいろなご意見をいただきましたので、事務局にはご苦労を おかけしますが、まとめ方自体も含めて、今日のご意見を踏まえながらもう1度叩き台 のセカンドバージョンをご用意いただければと思います。大変活発なご議論をいただき ましてありがとうございました。  次回については、4月の日程を調整しておりますので、調整がつき次第開催をご案内 しますので、お忙しいとは思いますが、是非よろしくお願いします。 照会先 政策統括官付労働政策担当参事官室 調整係 内線7715