08/03/13 第43回厚生科学審議会科学技術部会議事録 第43回厚生科学審議会科学技術部会 議 事 録  ○ 日  時 平成20年3月13日(木)15:00〜17:00  ○ 場  所 厚生労働省 省議室(9階)  ○ 出 席 者   【委  員】   垣添部会長           今井委員 岩谷委員 川越委員 菊川委員 北村委員           木下委員 笹月委員 佐藤委員 竹中委員 永井委員           西島委員 福井委員 松本委員 宮田委員 望月委員             【議 題】  1.厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest : COI)の管理に関す       る指針(案)について  2.厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針について  3.ヒト幹細胞臨床研究について  4.その他   【配布資料】   1−1 厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest : COI)の管理に             関する指針(案)   1−2 厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest : COI)の管理に             関する指針(案)概要   1−3 厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest : COI)の管理に             関する指針(案)の修正箇所   1−4 「『厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest : COI)の管             理に関する指針(案)』に関する御意見の募集について」に対して寄せられた御       意見等について   1−5 「厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest : COI)の管理             に関する指針」についてのQ&A(案)   2−1 「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」改定案(新旧対照表)   2−2 「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」の改定について   3   ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について   4−1 遺伝子治療臨床研究実施計画の変更報告及び重大事態等報告について   4−2 国立医薬品食品衛生研究所機関評価結果及び対処方針(要約)   4−3 国立医薬品食品衛生研究所の評価結果等について   4−4 研究開発型独立行政法人の整理合理化の動きについて     参考資料1 厚生科学審議会科学技術部会委員名簿   参考資料2 厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針(平成17年8月25日厚生労         働省大臣官房厚生科学課長決定)   参考資料3 厚生労働科学研究費補助金の不正経理等への対応について(案)(平成19         年10月11日第41回科学技術部会資料)   参考資料4 規制改革のための第2次答申(平成19年12月25日規制改革会議決定)(抜         粋)   参考資料5 ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料 ○坂本研究企画官  傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たりましては、すでにお配りしている注意 事項をお守りくださるようお願いいたします。  定刻になりましたので、ただ今から第43回厚生科学審議会科学技術部会を開催いたしま す。委員の皆さまにはご多忙の折、お集まりいただき御礼申し上げます。本日は石井美智 子委員、金澤一郎委員、末松誠委員、南裕子委員、宮村達男委員からご欠席のご連絡をい ただいております。遅れられている先生方もいらっしゃるようですが、委員22名のうち出 席委員は過半数を超えておりますので、会議が成立いたしますことをご報告いたします。  続きまして、本日の会議資料の確認をお願いいたします。資料の欠落等ありましたら、 ご指摘ください。議事次第をご覧ください。配付資料を記載しています。資料1−1が厚生 労働科学研究における利益相反(COI)の管理に関する指針(案)、資料1−2が厚生労働科 学研究における利益相反(COI)の管理に関する指針(案)概要、資料1−3が厚生労働科学 研究における利益相反(COI)の管理に関する指針(案)の修正箇所、資料1−4が「『厚生 労働科学研究における利益相反(COI)の管理に関する指針(案)』に関する御意見の募集に ついて」に対して寄せられた御意見等について、資料1−5が「厚生労働科学研究における 利益相反(COI)の管理に関する指針」についてのQ&A(案)、資料2−1が「厚生労働省の科 学研究開発評価に関する指針」改定案(新旧対照表)、資料2−2が「厚生労働省の科学研 究開発評価に関する指針」の改定について、資料3がヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請 について、資料4−1が遺伝子治療臨床研究実施計画の変更報告及び重大事態等報告につい て、資料4−2が国立医薬品食品衛生研究所機関評価結果及び対処方針(要約)、資料4− 3が国立医薬品食品衛生研究所の評価結果等について、資料4−4が研究開発型独立行政法 人の整理合理化の動きについてです。参考資料ですが、参考資料1が委員の名簿、参考資 料2が厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針、参考資料3が厚生労働科学研究費補 助金の不正経理等への対応について(案)、参考資料4が規制改革のための第2次答申(抜 粋)、参考資料5がヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の審査に関する参考資料です。 資料についてよろしいですか。それでは部会長、議事の進行よろしくお願いいたします。 ○垣添部会長  皆さん、こんにちは。大変お忙しい中、特に年度末の忙しい中をお集まりいただきまし て、誠にありがとうございます。ただいまから第43回の厚生科学審議会の科学技術部会を 始めたいと思います。本日はおそらくそんなに難しくないと思いますので、多少早く終わ るのではないかと期待しております。どうぞよろしくお願い申し上げます。議事に入りま す。  最初に、厚生科学研究における利益相反の管理に関する指針(案)について、事務局か ら説明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  関連する資料は、資料1−1から資料1−5です。これらの資料に基づき、厚生労働科学 研究における利益相反(Conflict Of Interest:COI)の管理に関する指針(案)について説 明いたします。前回、昨年12月の当部会において、パブリックコメントを実施した指針(案) について説明いたしました。その後、本年1月22日に、6回目の厚生労働科学研究におけ る利益相反に関する検討委員会が開催され、パブリックコメント等を踏まえて指針(案) の修正、Q&Aの検討などが行われました。検討委員会でのご議論を踏まえて本日の資料を とりまとめています。  資料1−1は、先般の部会後、検討委員会でのご議論などを踏まえて修正した指針(案) です。次の資料1−2をご覧ください。この指針の概要を1枚紙で表したもので、先般の部 会でも同じような資料をお示しましたが、検討委員会でのご指摘も踏まえて修正を加えて いるものです。  前回からの主な修正箇所については、この指針の目指すところについて、上の黄色い矢 印の右側、黄色で囲ってありますが、そちらで、被験者が不当な不利益を被らないことを まず第一に考え、透明性の確保を基本として、科学的な客観性を保証するように利益相反 を適切に管理する、そう記載を修正しています。  また、下の長四角の枠の中ですが、指針の名前を書いた下の記載も一部修正しています。 欄外に、平成22年度以降の厚生労働科学研究費補助金の交付申請書提出前にCOI委員会の 設置などがなされていない場合には、平成22年度以降の厚生労働科学研究費補助金の交付 を受けることはできないという原則を記載するなど、少々以前のものに修正を加えたもの です。この資料は必要に応じて、指針のポイントを説明していくために今後用いていこう というための資料です。  資料1−3は指針(案)の修正箇所の新旧対照ですが、先に、資料1−4をご覧ください。 この指針(案)については、昨年11月21日から12月21日までパブリックコメントを実 施しています。パブリックコメントで寄せられたご意見、公式なパブリックコメントのル ートではなくて、委員の先生を介してご連絡を受けたものも含めていますが、いただいた ご意見を、この資料1−4の左に、その対応方針を右に記載しています。まず1番目のご意 見としては、定義のところの関係です。経済的な利益関係の期間が規定してなくていいの かというご意見です。対応方針として、「経済的な利益関係」の定義においては、期間を 設定せずに、給与等を受け取るなどの関係を持つことをいうとしており、あえて期間を規 定する必要はないと考えます、という回答案を作成しています。  2番目は、委員会への報告は当該年度だけではなく、遡って報告を求めるべきで、過去3 年間等の規定が必要ではないか、というご意見です。対応方針として、現在の指針案では、 年度毎に報告するように求めており、仮に、報告の内容が当該年度(単年度)のみであっ ても、研究の期間中は年度毎に報告しなければならない旨の規定を設けており、研究の期 間中は毎年度報告されるため、過去3年間の規定をあえて設ける必要はないと考えます、 なお、報告の基準については、各所属機関において定めて差し支えないとしており、所属 機関の判断により、過去3年間の経済的な利益関係について報告を求める等の基準を設定 することも可能、ということを記載しています。   指針の基本的あり方についての(1)で、この指針案のCOI委員会等への報告等の項で、 COIの管理については各所属機関において一定の基準を策定し、それを超える「経済的な 利益関係」の報告を求めて管理することで差し支えないとし、厚生労働省等への報告の項 では、COIに関する問題が指摘された場合等における説明責任は各所属機関にあり、所属 機関の長は適切に説明責任を果たせるよう、予め充分な検討を行い、必要な措置を講じな ければならない等と定めてあって、要するに各大学等が設定したルールに従っていればよ く、管理は大学等で行うことを骨子として指針を定めているというご意見です。  2頁目の(2)は、このような所属機関、大学まかせのあり方は適当でなく、厚生労働省 として独自の基準を自ら設けるべきである、というご意見です。  またその下の(3)では、厚生労働科学研究は独自の公共的性格を有しており、大学等に おける各種研究と同一には論じられない、厚生労働科学研究においては、実地臨床に多大 な影響を与える「診療ガイドライン」が作成されることも少なくない、また、審議会や各 種検討会において研究班報告書の内容をもとに医薬品の安全対策が決定されたり、行政通 知に反映されることもしばしば見られる、といったコメントがあります。タミフルの件に も言及され、このような厚生科学研究がもつ特殊な性格に充分配慮する必要があり、この 点で、大学等各所属機関の基準に委ねればよいとするのは適当ではない、というご意見を いただいています。  ここまでのご意見については、資料1−4の1頁の下の方から対応方針を記載しています。 指針案では、厚生労働科学研究を実施する研究者が所属する機関におけるCOIの管理の他 に、厚生労働省等への報告、厚生労働省等からの指導、厚生労働省による調査等の規定を 設けています。そのため、必要に応じ、所属機関に対し、厚生労働省等からCOIの管理に 関して指導を行うことができ、また、厚生労働省等の指導が行われたにもかかわらず、正 当な理由なく改善が認められない場合には、研究費の返還、競争的資金等の交付制限等の 措置を講じられる等の規定を設けており、厚生労働科学研究におけるCOIの管理に関する 独自の指針となっています。こうした回答案を記載しています。  次は2頁の(4)からです。そもそも各所属機関の基準を超える「経済的な利益関係」の 報告を求めて管理することで差し支えないと言っているけれどもということで、各大学等 においてどのような基準が設定されているのか等を調査した上での提案なのであろうか、 というご意見です。一部の先進的な取り組みをしている大学からの報告は検討の資料に供 されているが、全体状況の充分な把握が行われていない、実態把握も不十分なまま、所属 機関まかせにするのでは国民の納得は得られない、というご意見がありました。  これに関する対応方針は、2頁の下のほうの右側です。今回の指針を決定するに当たっ ては、各大学の実状に詳しい有識者の意見も聞いているところですが、現時点で、研究機 関におけるCOIの管理への取り組みが必ずしも十分に行われていない等の現状についても 認識されており、そのため、指針において一定の目安を示し、それを参考に厚生労働科学 研究を実施する全ての機関において対応を求めることとしているところです。また、既に 本指針に先立って施行されており、対応している、あるいは対応しつつある大学等が参照 している「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」が示している例示と 同様の例示を示したものです。なお、本指針の施行後、実態の調査・検討を行い、その結 果を次回の見直しの際に反映する予定です。そうした回答を記載しています。  3頁、目安の設定についてです。(1)で、案では各所属機関の実状を踏まえて一定の基 準を設定して差し支えないものとする、とした上で、一定の基準の目安を掲げているとし て、例示を簡略に記載されています。(2)では、これは目安とされているが、基準の整備 が十分でない大学、あるいは基準の改定を検討している大学等においては、この目安が大 きな意味をもつことが予想される、しかし、いずれも目安として適当でなく、同一組織か らの受領額ではなく、合算した年間の受入額によって規制すべきである、というご意見が 示されています。  こちらの対応方針としては、3頁の右側です。該当箇所は、「臨床研究の利益相反ポリ シー策定に関するガイドライン」が示している例示と平仄を合わせたものであり、一定の 基準の目安の例示であって、各機関において、その機関の実状等を勘案し、一定の基準を 設定して差し支えないものとしています。例示については、混乱や無用な重複を避ける観 点から、上記ガイドラインと同じものが適当と考えます。さらに、同一組織からの受領額 ではなく、合算した年間の受入額を例示として示すことについては、例えば、極めて少額 の便宜供与も対象となってしまうこと、合算の方法等の問題もあり、そうした例示は困難 と考えられます。この指針は、COIの適切な管理を目指すものであり、COIの管理について、 研究の現場において、必ずしも十分な認識が浸透していない現状においては、まずは、厚 生労働科学研究を実施する各機関における適切なCOIの管理を促し、その上で、必要に応 じ、個別に指導等を行うこととすることが適当と考えられます。そういう回答を記載して います。  次のご意見として、3頁の(3)では、この規定の仕方では、研究者がある同種治療薬を 製造販売する製薬企業10社から各社100万円ずつ合計1,000万円を顧問料などとして受領 しても申告の対象とならないこと等が記載されています。4頁で、特定疾患の治療ガイド ライン等を作成する場合などを想定して、この結果の不合理は明らか、というご意見があ りました。  その後ろでは具体的な想定事例といいますか、例示的なものが記載されています。1社 からの受領額は多額ではないが、ある種の複数の企業から広く収入や寄附を受けていれば、 その研究にはバイアスがかかる可能性があり、また、少なくともそのように疑われ、厚生 科学研究に対する信頼を失わせるが、これは申告の対象とならないというご指摘、ご意見 です。それから複数社からの受領は広く行われていることを窺わせる実態があるというご 指摘、ご意見があります。  5頁で、指針案は、上記の点について充分な議論を尽くした上で規定されたものなのか、 疑問とのご意見をいただいています。  これに関する対応方針は、3頁から記載しています。ご指摘のように、色々な事例が想 定されますが、この指針案は、厚生労働科学研究全般を対象とするものであり、指針にお いては、全般的な事項を定めることが適当と考えられます。また、COIの管理において、 一定の基準を設けて管理する手法は、COIの管理において先進的な米国においても同様な 方法が採られており、現実的な手法と考えられますが、一定の基準を設けた場合、その水 準がどのようなものであっても、ぎりぎりその水準に達しない場合の取り扱い等の問題が 生じます。COIの管理は、個々の事例毎に、関連する事情を十分に検討した上で行うこと が適当と考えられ、色々な条件が重なった場合には、一定の基準を超えない場合であって も、外部から弊害が生じているのではないかとの指摘がなされる可能性があることに十分 留意すべきであることをより明確にするため、指針案について、以下の修正を行い、Q&A 等で解説を行うことといたします。  修正案として、「IV 3 COI委員会等への報告等」の最後に以下を追記するということで す。「なお、研究者は、各所属機関において定められた基準に抵触しない場合であっても、 外部から弊害が生じているかのごとく見られる可能性が懸念される場合には、COI委員会 に積極的に相談する等、厚生労働科学研究の客観性、公平性を損なうという印象を社会に 与えることがないよう十分留意する必要がある。」そうした追記をするという案です。  最後に、5頁にパブリックコメントを出された段階で、第4回の検討委員会の議事録ま でしか公開されていないとして、説明責任に言及し、議事録の公開を求めるご意見があり ました。  議事録の作成には一定の時間がどうしても必要なもので、これに関しては5頁の右に対 応方針があります。今回の検討会の議論は公開で実施し、資料もすべて公開しており、一 定の説明責任を果たしていると考えます。なお、パブリックコメントの趣旨は規則等の内 容についてのコメントを広く募集するものであり、当該案及び必要な参考資料があれば十 分であり、必ずしも議事録は必須ではないと考えられています、とした上で、括弧書きの 中で、議事録の公開についても、できるだけ早く行う方針であり、第5回の議事録もすで に公開されております、という回答案を記載しています。  資料1−3に戻ります。資料1−3は、指針(案)の修正箇所を示したものです。「定義」 のところで、「含んでいるとされている」という表現を使っていたのですが、そういう表 現はいかがかというご意見が委員からありまして、右にありますように、「含み」、「含 んでいる」と表現を修正しています。併せて、「利益相反(広義の利益相反)」という表 現も、「広義の利益相反」と修正をしています。  基本的な考え方のところで「行われており」という表現をしていたところがありますが、 こちらも前後のつながりから「行われていることから」と修正しています。また、次の段 落の記載が少しわかりにくいというご指摘から、「被験者が不当な不利益を被らないこと をまず第一に考え、インフォームド・コンセント等に十分留意した上で」と、文章を修正 しています。その他、文章の意味が通りやすいように修正を加えているものです。  2枚目、COI委員会の設置について、すでにあります他の委員会にその任務を兼務させる ことは、「Q&A」で記載したほうが誤解が生じないのではないかというご意見が検討委員会 でありましたので、資料1−5「Q&A」の5頁、Q21に移し、ここからは削除しています。  その次、「エクイティ」という表現がありましたが、この用語はわかりにくいとのご指 摘があり、正直なところ適当な日本語訳も見当たらなかったため、「相手先との関係」と いう意訳的に文章を修正して、括弧内もその例示ということで修正しています。そして、 先ほど説明しました「追記」をここで行っています。  3頁以降は、理解しやすいように、「COIの管理」という項目の位置を修正したことに伴 う修正です。  続いて「Q&A」の関係、資料1−5です。こちらは表題の下に、※で記載していますよう に、このQ&Aについては、現状に即したものになるよう、追加、修正を含め適宜見直しを 行っていく予定です、ということで、公表後にも追加修正を行い、充実したものにしてい く考えです。  これまでの議論等を踏まえ、現在24問のQ&Aを作成しています。かいつまんで説明して いきます。Qの1と2は、経済的な利益関係に関するQAです。Q1では、経済的な利益関係 には、およそ金銭的に価値のあるものはすべて含まれ、無償での物品や役務の提供等も経 済的利益関係に含まれますということを説明しています。  Q2では、企業が当該企業の製品を無償で提供する場合等の取扱いについて、研究者に提 供された「経済的な利益関係」とみなすべきか、研究に対する外部資金等の提供の一種と みなすべきかは、契約内容等も含め、無償提供の状況により判断する必要があるというこ とを書いています。所属機関のCOI委員会に、契約内容や他の経済的な利益関係をも含め て、当該企業との関わりについて正確な報告を行って、COI委員会の判断に基づいて適切 な管理措置を講じる必要があることを記載しています。最後のところで、「いずれの場合 においても、ヘルシンキ宣言や臨床研究の倫理に関する指針に基づき、被験者に資金源等 を説明する際には、当該企業からの協力を得ていることを説明する必要があります」と、 念のため説明を記載しています。  Q3では、基本的に所属機関において、「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイ ドライン」に準拠した対応が適切になされていれば、臨床研究に限らず、この指針にも対 応していると考えられる、という回答を記載しています。  Q4は、指針の適用範囲についてです。この指針は厚生労働科学研究全般に適用され、指 定型の研究について、平成20年度からCOIの管理の状況の確認等を実施する予定というこ とを記載しています。平成20年度、平成21年度において所属機関の準備が整っていない 場合には、指定型の研究については研究者から必要な情報の提供を得て、厚生労働省にお いてCOIの管理について検討を行う予定ということを説明しています。  Q5では、厚生労働科学研究であれば、臨床研究に限らず、所属機関のCOI委員会に審査 を申し出る等の管理が必要ということの説明をしています。  Q6では、COIの管理は所属機関において適切に実施されるべきであることを言った上で、 COI委員会の審査についてはできるだけ早期に結論を出していただく必要がありますが、 交付申請書提出時に、その結果を提出していただく必要はないことを書いています。回答 の中のなお書きのところで、交付申請書提出時に、COI委員会等にCOIの審査の申し出が なされているか等について確認すること、それから事業実績報告書においてCOI管理の状 況等について報告を求めることを予定していることを説明しています。  Q7では、所属機関のCOI委員会の判断で、過去数年間の経済的な利益関係について報告 を求める等の基準を設定することも可能ということ、それからCOIの関係書類の保存を5 年間という規定がありますが、これはCOIの管理後の保存期間を意味していることの説明 をしています。COIの管理は、個々の事例毎に関連する事情を十分に検討した上で行うこ とが適当と考えられ、色々な条件が重なった場合には、報告の基準に該当しなくても、外 部から弊害が生じているのではないかとの指摘がなされる可能性があることに十分留意す べきであり、このため、例えば5年以上前にある企業から多額の寄付を受け、当該企業の 利害と密接な関係のある厚生労働科学研究を行うような場合には、COI委員会に積極的に 相談する等、厚生労働科学研究の客観性、公平性を損なうという印象を社会に与えること がないよう十分留意する必要があるという説明を記載しています。  Q8の回答は3頁です。こちらでも、2行目の「また」以下で、各機関において定めた基 準に抵触しない場合であっても、第三者が研究の客観性、公平性を損うという印象を持つ ことが懸念されるような場合には、所属機関のCOI委員会に対して、COIの管理措置の検 討を求める等、適切な管理を行う必要があることを記載しています。  Q9では、経済的な利益関係が所属機関が定めた基準に抵触しない場合であっても、外部 から弊害が生じているかのごとく見られる可能性が懸念される場合の例として、ある医薬 品を研究する場合に、その医薬品を製造する企業から客員研究員が、研究者が所属してい る研究室に来ている場合等が該当するものと考えられますという例を示しています。その 上でも、総合的に見て、外部から弊害が生じているかのごとく見られる可能性が懸念され る場合には、適切な管理を行う必要があるという趣旨を書いています。  Q10では、研究助成金や委託費は謝金等には該当しないこと、公的機関には国、地方自 治体、独立行政法人が該当することなどを説明しています。Q11では、学会から支給され た講演の謝金について、特定の企業からの「経済的な利益関係」に含めることが適当な場 合もあり得るという注意的なことを記載しています。  4頁、Q12では、COI委員会へのCOIの審査の申し出の確認や、事業実績報告書において COIの管理の状況等の報告を求めますが、現時点ではCOI委員会の事前登録等を求める予 定はないことを説明しています。Q13では、COI委員会に報告すべき「経済的な利益関係」 の例示の参考としては、先ほど来からの「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイ ドライン」の例示を参考にしたことを説明しています。Q14、Q15は公益法人関係のQAで す。回答としては、公益法人からの研究費等についても、その性質等を踏まえた上でCOI の管理を適切に実施すべきであること、財源が国からの支出であっても、それで本指針の 対象外となるものではないことを記載しています。Q16は、研究機関の長が研究者として 厚生労働科学研究費補助金を受ける場合には、所属機関の規定としてCOIの管理に関する 「委任」規定を設け、そういうことで適切に管理していただく必要があることを記載して います。Q17、Q18は調査関係です。Q19で、あて職的に組織・部門の長として研究者が受 領した金額についての説明を記載しています。併せて、ここでは、受領した名義人ではな いが、実質的な受益者となるような場合には、逆に合算すべき場合もあり得ることも記載 し、疑議のある場合には所属機関のCOI委員会等において検討した上で、その取扱を決め るべきである旨の説明をしています。Q20は研究分担者が所属する機関にCOI委員会がな い場合のことです。研究分担者でもCOIの適切な管理が必要であって、研究代表者の機関 等に、研究分担者のCOIの管理について審査、検討を依頼してください、という説明を記 載しています。Q21は、先ほど説明した所属機関に既存の委員会があった場合の兼務に関 するQAです。  6頁、Q22では、COI委員会の外部委員に関して、社会通念上、外部と認識されないよう な様態の機関に所属する方を外部委員に任命されることは避けるべきということを記載し ています。Q23では、研究分担者が不適切なCOIの管理を行った場合について、個々の事 例毎に研究代表者の関与の状況、研究全体のCOIの管理の状況等を確認した上で判断する と説明をしています。Q24では、COIの管理が適正になされていない場合の資金提供等の打 ち切り等の措置は、個々の研究について調査した上で判断する旨の説明をしています。所 属機関におけるCOIの管理に問題があると考えられた場合には、当該所属機関におけるそ の他の研究についても個別に確認することがあり得るといった説明を記載しています。  長くなりましたが、説明は以上です。 ○垣添部会長   厚生労働科学研究における利益相反の管理に関して指針案の訂正箇所、それから意見募 集に寄せられた意見の中身の紹介、それからQ&A、その他を説明いただきました。少し長 くなりましたが、全部網羅されているかと思います。何ご発言がありましたら、お受けし たいと思います。  私から一つ、この資料1−4の標題ですが、「管理に関する指針に関する御意見の募集に ついて」「寄せられた御意見等について」、どちらも「御」って要らないのではないです か。意見を募集して、それに対する意見ということで。 ○坂本研究企画官  こちらは、たしか今までの例に倣って募集をしています。ホームページに掲載するとき に、過去の例等についても確認させていただきます。 ○垣添部会長  ほかにいかがですか。 ○佐藤委員  COI委員会のほう、何というのでしょう。実際の構成とか中身についてですが、今のQ&A のQ21、例えば倫理審査委員会に兼務させるようなことができるということですが、何と なくやはりイメージがわかないのです。それで倫理審査委員会も、結構大変な審査を抱え ていることが多いし、何かもう少しCOI委員会というのはこういうものだというような、 外部ガイドライン的なもの出される予定というのは、特にないのでしょうか。 ○坂本研究企画官  これまでのご議論を踏まえ、資料1-1の3頁の下から3行目の「当該機関の外部の者」 について、4頁に注4として、例えば、利益相反の管理に精通している者、関連する法律 等に詳しい者、産学連携活動に詳しい者などが考えられるとして、外部から入っていただ く方の例示はここに記載しています。  これまでのお話をいろいろ聞いていましても、研究者のいろいろな財産的経済的なとこ ろを扱いますので、委員の人数があまり多いようなイメージでやられている所はないと理 解しています。 ○北村委員  疑問がある場合には積極的にCOI委員会に相談せよという形になっていますが、果たし て各施設のCOI委員がウーンと言うケースの場合、厚生科学課としてそれに対応してやろ うという策はあるのでしょうか。例えば、企画官のところに相談せよとか。 ○坂本研究企画官  相談がくれば応じないといけないというようには認識しております。ただし、そもそも 各機関の実情を踏えて管理していただく、各機関で適切に管理していただくところがベー スにありますので、何でもかんでもこちらに持ってきていただくというのは、またちょっ と違ってくることになると思います。 ○北村委員  おっしゃることはわかるのですが、各施設のCOI委員会の同じ問題解決に違った答えが、 各場所で出てくると思いますね。向こうはこのように、こちらは違うという場合も十分あ り得る。過去何年間にどれだけもらったときとか、研究費といっしょにもらっているよう な場合はというのは、5年間でもういいではないかと言う人もあれば、書類すらも破棄し ていいのだからという人も、駄目だと言う人もいる。それはやはり現場で各委員会が違っ た結果を出すと思うのです。裁判でもそうではないかと言えば、それでおしまいですが、 そうした場合には、大変困る場合はご相談くださいというふうに理解してよろしいですね。 ○坂本研究企画官  それは結構ですが、まずはやはり各機関においていろいろご検討していただいた上で来 ていただかないと、それは逆にちょっとこの指針の基本的な考え方ともずれるかと思われ ます。必要があれば、まさにQ&Aで、共通的に出せるようなものであれば、Q&Aの最初に 書きましたようにQ&Aを追加していくということも考えられます。 ○矢島厚生科学課長  ちょっと追加をさせていただきます。この横長の資料をご覧ください。あくまでも、こ の利益相反の管理は、研究の促進という面もあるわけなのです。しっかり活発に研究を行 っている者が排除されては困るという。ですから厚生労働省でとなりますと、現場の方々 のそうした研究を活発にやるというところをどう考えるのかということと、一方、ここに ありますが利益相反の管理が不十分だと、しっかりやるべきではないかという立場を取ら ざるを得なくなります。ここのところをうまく組合わせるということは目的ではあります が、どうしても我々の立場での答えになるものですから、この趣旨をよくご理解いただき ながら、やっていただくことも大事なことではないかと思っています。ですから、ある一 方に偏るのではなく、現場の方々に活発に研究をやっていただくという立場も大事です。 そう言っても、被験者の方々が不当な不利益を被ってもまずい。画一的にできないところ もあり、そこを踏まえて、よく現場で対応していただける余地もある程度あったほうがい いのではないかということで、こうした形になっているわけです。 ○佐藤委員  北村先生おっしゃることはごもっともだと私も思うのです。倫理委員会なんかも、そう いうことというのはたぶん最初のころあったのですが、割合、横断的な組織はできて、お 互いに横目で見ながらというのも変だけれども、そういうようなこともあったので、今後 COIもそういうようなことがあったら、厚労省でもサポートしていただくようにしていた だければ、だんだんうまくいくようになるのではないかなという気がします。 ○垣添部会長  ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。 ○宮田委員  指針としては妥当なものができたというふうに思うのですが、皆さんの意見はそれを現 場でどうやって活用していって、本当にこの指針の趣旨である、研究の促進、少なくとも 研究を阻害しないというところに結びつけるかということだと思うのです。一つ、この指 針に書く必要はないのですが、指針を啓発なさるときに是非お願いしたいのは、各機関が どういうCOIのポリシーをしているのかというのは、少なくともwebで公開をすべきだろ う。実際に、誰がいくらもらったとか、そういう個人情報にかかわるところの公開は必要 ないと思いますが、当研究機関ではこういうような考え方でCOIを管理していますという のは、やはり社会に説明する責任があるだろう。それをwebで公開していただければ、厚 生省に相談に来る前に、他機関の方針というものを勉強する機会もできるわけです。そう いう意味では、相互啓発するような仕組みをここに書く必要ありませんが、なさるのが1 点です。  それから指針にもありますが、調査をいずれやるというのは、しっかりやっていただき たい。少なくとも平成22年にコンパラソリーになる少し前ぐらいの段階で、実態として COIというものの管理が実際行われていて、うまくいっているのかどうか確認するという 努力を、是非やっていただきたいと思います。 ○垣添部会長  ありがとうございました。いまの宮田委員のご指摘は、2点とも大変重要なところだと 思います。ほかにいかがですか。  よろしいですか。では、大変貴重なご意見をいただきましたが、現在説明いただいた指 針に関して、それを訂正するほどの内容はないと思いますので、もしよろしければ、この 指針(案)についてご了承いただいたことにさせていただいてよろしいですか。 (了承) ○垣添部会長  ありがとうございます。では、今後の進め方について、事務局から説明をお願いいたし ます。 ○坂本研究企画官  今後の進め方ですが、この部会でご了承いただきましたので、厚生科学課長通知として、 この指針を通知することを予定しています。また、必要に応じて、個別の厚生労働科学研 究におけるCOIを検討する、そうした場も省内に必要であろうということですので、でき れば本年度内、遅くとも来年度早々にそうした場も設けることを予定しています。以上で す。 ○垣添部会長  それでは先に進みます。議事の2、厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針につい て、事務局からまず説明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針について、ご説明いたします。資料は、資 料2−1と資料2−2、参考資料として、参考資料2、参考資料3、参考資料4があります。 参考資料2、ちょっと厚めのものですが、これが現行の厚生労働省の科学研究開発評価に 関する指針です。厚生科学課長が決定した指針ということです。  参考資料2の1頁をお開きください。目的に記載のとおり、我が国全体では「国の研究 開発評価に関する大綱的指針」というものが策定されています。国民の保健・医療・福祉・ 生活環境・労働安全衛生など国民生活の向上に資することを目的とする厚生労働省の科学 研究開発においても、行政施策との連携を保ちながら、研究開発活動と一体化して適切な 評価を実施し、その結果を有効に活用し、成果を国民、社会へ還元していく、そういうこ とが求められているということです。厚生労働省の科学研究開発、これは試験、調査など を含むということですが、それに関する評価については、個人情報の保護の観点に配慮し つつ、外部評価の実施、評価結果の公開、研究費等の研究開発資源の配分への適切な反映 等を行うことにより、研究開発評価の一層効果的な実施を図ることを目的として、この指 針が策定されているということです。  資料2−2をご覧ください。1として、評価システムの改定の方向を記載しています。今 回の改定では大きく二つのポイントがあります。1点目は、厚生労働科学研究費補助金に よる各研究事業における研究課題採択の際の行政的な観点を採択課題に反映する方法を見 直すということです。参考資料3で、昨年10月の本部会でもこの対応について説明したと ころです。参考資料3の下から4行目、研究課題採択の際に、行政的な観点を採択課題に 反映する方法の見直し、こちらを具体化しようというものです。2点目は参考資料4とし てお配りしています規制改革会議の答申を踏まえて、審査・評価者に関する適切な情報開 示を行おうとするものです。  資料2−2の2の改定の内容です。まず競争的資金に係る研究課題の採択を行う評価委員 会の委員についてです。厚生労働省の職員は、厚生労働科学研究費補助金による研究事業 について、競争的資金に係る研究課題の採択を行う評価委員会の委員となることができず、 評点の付与などは行わないことを規定しています。ただし、厚生労働科学研究の目的に鑑 み、その研究事業の所管課等及び関係課の職員は、行政的な観点からの評価について必要 があると認める場合には、評価委員会に対して意見を述べることができる、としています。 また、今申し上げた(1)の規定の例外として(2)として、(1)にかかわらず、厚生労働省の職員 は以下の場合に、厚生労働科学研究費補助金による研究事業について、競争的資金に係る 研究課題の採択を行う評価委員会の委員となることができる、としています。当該職員が 厚生労働省の施設等機関に所属する研究者である場合、行政政策研究分野の研究事業であ る場合、研究類型が戦略型又はプロジェクト提案型である場合、そういったことを規定し ています。  資料2−2の2頁3行目に、(2)として、評価委員会の委員の業績等の公開ということ で、評価実施後、適切な時期に、いままで公表してきた委員の氏名に加え、委員の業績又 は実績をホームページに掲載すること等により公表することとしています。その他、表記 の細かな修正も併せて行うこととしています。  資料2−1が、この指針の改定案、新旧対照表となっています。本日のご審議でご了解い ただければ、平成20年度の評価から改定した指針を適用することを予定しているもので す。説明は以上です。 ○垣添部会長  科学研究開発評価に関する指針の見直しということで、資料の説明をいただきました。 何かご発言はありますか。  これは見直しをすることに関しては以前からありますように、評価する側にとってもさ れる側にとってもとても大変で、評価疲れという話がありますが、そうしたことに関して は何か変わる所があるのですか。 ○坂本研究企画官  今回は行政官の参加等の改定ですので、先生方の負担に関しては特にこれで軽くなると いうことは、やはりないかなと思います。 ○垣添部会長  いかがでしょうか。これは総合科学技術会議でも検討していますね。ですから、厚生労 働省として、例えばここで了承をいただいた場合には、こういう考え方で見直しを進める ということで、最終的にはこれはどこに一元化されるのですか。 ○坂本研究企画官  総合科学技術会議から大きい方針が出れば、それに従ってまた必要な修正等を加えてい きます。今回は、参考資料4にありますように、規制改革会議から答申が出ていますので、 それを踏まえた修正というものも中に入っているわけです。 ○垣添部会長  わかりました。よろしいですか。 (了承) ○垣添部会長  ありがとうございます。それでは、この厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針に 関してはご了承いただいたことにさせていただきます。  次は議事の3番目、ヒト幹細胞臨床研究についてです。慶應義塾大学医学部からのヒト 幹細胞臨床研究実施計画申請について、ご審議をいただきたいと思います。これは平成20 年2月14日に、厚生労働大臣から諮問され、同日付で当部会に付議されています。まず、 事務局から今回の申請の概要について説明をお願いいたします。 ○研究開発振興課  ヒト幹細胞臨床研究については、資料3を使って説明いたします。また参考資料5とし て、ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会委員名簿等、指針の内容ですとかそうした資 料がありますので、適宜ご参照ください。  まず資料3です。1頁目、今回新たに、先ほど垣添部会長から説明いただきましたよう に、平成20年1月16日に慶應義塾大学医学部長から提出されました「角膜上皮幹細胞不 全症に対する培養上皮細胞シート移植」研究計画についての諮問書です。2頁目が当科学 技術部会への付議書となっていますので、ご確認いただければと存じます。いずれも日付 は2月 14日付です。3頁目が、本実施計画の申請書です。研究責任者は慶應義塾大学医学部眼科 教室の坪田一男教授です。4頁目は、この実施計画の概要です。説明いたしますと、対象 疾患としてはスティーブンス・ジョンソン症候群、眼類天疱瘡など、重症の角膜上皮幹細 胞不全症により角膜上皮の自然回復は見込めないと見られる疾患です。実施予定期間は2 年、対象症例数は5例です。内容は、先ほど申しました対象疾患において、罹患してない 側、健眼の自己の角膜輪部上皮細胞、あるいは海外のアイバンクより入手したドナー由来 の同種角膜輪部上皮細胞の採取をまずいたします。これを同種の骨髄間葉系幹細胞をフィ ーダー細胞として、フィブリンコートされた培養皿の上でシート状に培養します。そして できた角膜幹細胞のシートを罹患した角膜部分に移植するものです。もちろん海外ドナー 由来の細胞による細胞シートを使用した場合には、免疫抑制剤を併用します。現在のとこ ろ、指針の施行前より、角膜の再生に関する臨床研究は国内でも行われており、羊膜を使 う、あるいは羊膜をキャリアとして培養した角膜上皮幹細胞シートを用いる方法、それか ら自己の口腔粘膜の細胞を培養してシートとして用いる方法、あるいはキャリアとして羊 膜を用いずに温度応答性ポリマーシートと呼ばれる人工物をキャリアとした角膜上皮幹細 胞シートの移植などがすでに報告をされています。  今回申請された研究は、培養の際に用いるフィーダー細胞として、異種の細胞であるマ ウス由来の3T3細胞を用いない点、羊膜などのキャリアを用いない点で新規性が認められ ています。実施計画の詳細については5頁目からが概要、10頁目からは実際の実施計画書 となっています。  2月14日に付議をしていただいた後に部会長よりご了承いただき、2月18日に第4回ヒ ト幹細胞臨床研究に関する審査委員会を行い、第1回の審議が今部会の開催に先立って行 われています。その場では、同種角膜幹細胞や、同種の骨髄間葉系幹細胞など、ドナー由 来の同種細胞を用いるという点で、その安全性、倫理性について議論され、今後もさらに 継続して指針への適合性について審理されることとなっています。また、その第4回の審 査委員会では他に上程された申請はなく、この他はいずれも継続審議の必要ありとなって います。以上で、説明は終わりますが、なお、ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会に て、以前より継続案件となっていた奈良県立医科大学の顎骨の再生の研究、それから帝京 大学の骨の再生の研究に関しては、前臨床試験のデーターが不足しているとか、細胞調製 施設の不備が挙げられ、申請者より一旦申請が取り下げられたことを、併せてご報告いた します。事務局からは以上です。 ○垣添部会長  前回でしたか、前々回でしたか、奈良医大と帝京大学から出された骨再生研究計画に関 しては、一旦取り下げられたということです。現在は、慶應義塾大学医学部から申請の角 膜の再生研究に関して、委員会で検討されているということです。いまの事務局からの説 明に関して、何かご発言ありますか。 ○笹月委員  この24頁ですか。6の試験の安全性確保というのがありますが、その中に上皮細胞シー ト作成に用いる培養用血清は、オーストラリア製のウシの血清を用いると書いてあるので すが、これはウシ血清ということは全然問題にしなくてよろしいのですか。 ○研究開発振興課  この点についても、先ほどちょっと申しそびれましたが、審査委員会でもちろんご議論 いただいているところです。指針上はBSEの出ていない所からのウシ血清に関しては特に 禁止はされていないのですが、これに関してやはりオーストラリア製ということで、非常 に頻度としては低いというかない地域からの由来ですが、その安全性等に関しても十分今 後ご議論いただいて、確認をさせていただければと思っています。 ○垣添部会長  当然、いまの笹月委員のご指摘のような懸念があると思いますので、それは審査委員会 で検討いただくということです。ほかに何かご意見ありますか。ここでいただいた意見は、 審査委員会に伝えて、さらに検討いただくことにしたいと思っています。 ○宮田委員  たぶん症例によってはアロじゃないと、自分の健全な眼がない場合があるからかもしれ ませんけれども。これはオートの移植と、それからアロの移植を分けて議論したほうが、 もし実施することを前提に考えれば実は分けやすいのではないかなという考えを少し持ち ました。ただ、実際に、例えばスティープン・ジョンソンみたいな本当に深刻な例で、両 眼やられてしまうケースもあったら、確かにアロをやりたいという気持はよくわかるので すけれども、もし安全性のことをステップワイズに考えるのでしたら、オートを先行させ て、アロを次の段階で申請をしていただくということも、議論すべきではないかと思いま す。 ○垣添部会長  ありがとうございます。大変慎重な、しかも重要なご発言だと思います。いまの点から、 永井先生何か。 ○永井部会長代理  そういうふうに意見が出ております。 ○北村委員  オーストラリア産のウシからの血清使用ではすでに日本のベンチャー企業で行われてお り、やけどに対する皮膚の上皮培養に薬事承認が下りました。そのヒトの上皮細胞培養の システムの中にウシ血清を使っているのですが、オーストラリア製においては医薬食品局 は許可を出して薬事法を通過いたしましたので。その点をもう一度医薬局に確認の上、検 討されてはと思います。ウシの血清については、私の知る限りではオーストラリア製と限 定されれば、ヒトへの応用は可能であるというふうに理解しています。 ○垣添部会長  ありがとうございます。ほかにいかがですか。それでは、いつくかの大変貴重なご意見 をいただきましたので、これは事務局を通じまして、審査委員会にお伝えすることにいた します。その論点整理をいただいた上で、改めて検討結果は当部会に報告されることにな りますので、その時点で最後、総合的な判断を下していただくようにと思います。  その他に移ります。まず、遺伝子治療の臨床研究実施計画の変更報告及び重大事態等報 告について、事務局から説明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  資料4−1に基づき説明いたします。資料4−1の内容は2点あります。1点目が、1頁か ら 21頁の自治医科大学からの変更報告です。自治医科大学ではAADC発現AAVベクター線条 体内投与による進行期パーキンソン病遺伝子治療の臨床研究が行われています。こちらの 臨床研究で、脳内出血、静脈性の出血が認められ、重大事態等報告書が提出されましたの で、前々回の当部会でそれについてご報告させていただいたところです。その原因として は、遺伝子注入時の外科手技に付随して生じた出血が最も考えられた、とのことでしたが、 米国でも同様の臨床研究が実施されており、そちらで9例中静脈性出血1例、動脈性出血 1例が生じています。我々が重大事態等報告をいただいたときには、FDAが米国の臨床研究 の中断を指示したという情報も併せて入手しました。そうした状況がありましたので、何 故出血が発生しているか、慎重に評価する必要があり、研究を一時中止し、米国の状況も 確認しつつ、注入手技の改善を行った上で、臨床研究を行うということで、前回ご報告い たしました。  資料4−1の3頁、実施施設における審査委員会の開催状況及び実施計画の変更を適当と 認める理由の欄ですが、そちらで実施施設における審査委員会の経緯が記載されています。 海外の有害事象に対する検証結果の報告も受けて審議され、変更妥当と判断されたという ことです。米国でも、米国の研究実施側からの回答を受けて、FDAが臨床研究の中断を解 除し、製剤の注入手順の標準化等について指示をしたという情報をいただいています。  この資料の8頁から9頁に、これまでの研究結果について記載されております。出血を 起こされた患者さんは第2例目ということですが、9頁に記載されておりますように、こ の臨床研究で脳内出血が認められた患者さんにつきましても、本年の1月8日現在で脳出 血による症候は完全に消失していたということです。  10頁から今回の変更点が記載されております。論文などの最新の知見に基づき、いくつ か実施計画の変更がなされております。13頁に注入手技の変更につきまして、下線部が付 されておりますが、注入目標である被殻近傍まであらかじめガイド針を挿入してルートを 確保した後に、という手技の規定の追加。同一部位に穿刺針を動かさずに留置することを 避けて、薬剤注入を行う。具体的には1カ所50分の注入時間中、10分毎に穿刺針を回転 あるいはごく短かい距離で引き抜き、穿刺針が脳実質に長時間に渡り接触することを防ぐ。 そういった変更がありまして、また外科手術実施マニュアルを実施計画書に添付するとい う修正もなされています。また、14頁ですが、頭部CT検査を手術当日と術後3日、頭部 MRI検査を術後7日に実施することを追加して、より頻回に検査することで脳出血等につ いて確認するということになっています。患者さんへの説明文書につきましては、この資 料の17頁で、海外で2例の出血が認められたということが記載されております。また、19 頁から20頁にかけまして、国内での有害事象、それから先ほど申し上げた海外での有害事 象の説明の記載もなされています。本件につきましては、症例の経過の詳細とか、注入方 法の改善等について照会を行いまして、その回答等につきまして、パーキンソン病遺伝子 臨床研究作業委員会の委員の先生方にご相談して、本件の内容につきましてご確認をいた だいています。  続きまして22頁以降は、東京大学医科学研究所附属病院から提出されました、重大事態 等報告書でございます。研究の名称は、「腎細胞がんに対する免疫遺伝子治療−IV期腎細 胞がん患者を対象とするGM-CSF遺伝子導入自己複製能喪失自家腫瘍細胞接種に関する臨 床研究」というものでございまして、初回接種から8年7ヶ月が経過した本年1月に、患 者さんが永眠されたというご報告をいただいたものです。  25頁に、重大事態等の内容と原因が書いてありますが、この患者さんにつきましては、 接種開始後約30ヶ月間、転移病巣の増大はなかったということでございます。安定した状 態が続いていたということですが、その後転移病巣の出現等があり、原病の悪化にともな って死亡されたと考えられております。今後剖検結果を基に、組織検査を含め検討を行う 予定ということです。この患者さんは最長に生存された方ということで、この研究は実質 的に終了になるということです。資料4-1の説明は以上です。 ○垣添部会長  ありがとうございました。遺伝子治療の臨床研究に関して、自治医科大学の話は進行期 パーキンソン病の治療で脳内出血があったので中止した、米国でも同じような状況だった と。これはいまご説明のように、遺伝子治療の結果ではなくて、針を刺す手技上の問題で はなかったかということで、それを改めるということで、いまご説明いただいたようなこ とになったということです。米国でもそういうことで、また再開するということです。そ れから、東京大学の腎細胞がんのGM-CSFを入れる話に関しては、もう投与が終わってから でおそらく原病の悪化で亡くなったのではないかと。遺伝子治療は直接の原因ではないの ではないかという報告でしたが、何かこの2つの遺伝子治療研究についてご発言がありま したらお受けしたいと思いますがよろしいですか。いずれも妥当な判断ではないかと思い ますが、笹月委員、遺伝子治療のワーキンググループでいらっしゃいますが、何かご発言 はありますか。 ○笹月委員  特にございません。 ○垣添部会長 よろしいでしょうか。では、この2点に関しては了解いただいたことにい たします。  続きまして、研究開発機関の評価結果等についてということで、国立医薬品食品衛生研 究所に関して、まず事務局から説明をお願いします。 ○坂本研究企画官  研究開発機関の評価につきましては、厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針、参 考資料の2で、15頁になるのですが、第4編研究開発機関の評価の実施方法というところ があります。こちらのほうで、研究開発機関は、各研究開発機関の評価を定期的に実施す るとされておりまして、その評価報告書につきましては、厚生科学審議会、科学技術部会 に報告されているところです。今回は、国立医薬品食品衛生研究所の評価結果及び対処方 針についてのご報告です。本日は、国立医薬品食品衛生研究所の大野副所長にご出席をい ただいておりますので、評価結果等につきましては、大野副所長よりご報告いただきます。 それでは大野先生、よろしくお願いします。 ○大野副所長  国立医薬品食品衛生研究所の大野です。よろしくお願いします。国立医薬品食品衛生研 究所では、昨年の2月20日から21日にかけて機関評価をしていただきました。名前のと おり、国立医薬品食品衛生研究所は、医薬品と食品、生活環境中の化学物質などの有効性、 品質、安全性を研究することによって、国民の生活を守るという使命を持っている研究所 でございます。国立衛研は、多様な分野に渡る研究所ですので、今回の研究評価に当たり ましては、評価書の資料の4-2の2枚目にありますように、豊島先生、寺尾先生、長野先 生に薬品部門から評価委員になることをお願いしました。食品関係につきましては、東大 の熊谷先生、大妻女子大の池上先生、実践女子大の豊田先生にお願いしました。衛生関係 の先生ということで、共立の望月先生、愛媛大学の森田先生に、安全性生物研究センター というのがございまして、安全性に関する研究を行っていますが、その関連の先生として 日本バイオアッセイ研究所の福島先生、北里大学の遠藤先生に評価をお願いしました。  評価された点について次の頁にまとめています。ありがたいことに研究は活発に行われ ており、レベルの高い研究も数多く行われていると評価していただきました。行政から依 頼される研究等への取組についても国立衛研の行政貢献度は高いというふうに評価いただ きました。研究のレベルアップ及びアウトプットを大きくすることへの課題については、 そのあとちょっと文章が抜けてしまっているのですが、意欲や研究業績を重視した採用、 昇格とか研究評価を心がけることによって、研究者が1割ほど削減された中で、論文数が 維持されていることは評価できるとしていただきました。研究テーマ、分野の選択ですけ れども、それについては適切に行われており自由研究を展開できるという理想的な研究部 も数部存在すると。これは逆に言えば、存在しない部もあるということも含んでおります。 全体としてはよい課題が選択されているということです。それから、研究員の任期制の導 入については3%を目標に取り組んでいることが評価できるということです。  職務発明委員会を3カ月毎に開催するなど、研究開発の実用化に向けた意識を喚起する 努力が評価できるということです。  国内外においては、活発な共同研究を行っているということが評価できるということ、 産学官連携は基盤的、先端的分野で積極的に取り組んでいるということが評価できる。ま た、人事面での外部交流においても、新規の研究員や部長の採用を公募で行うというよう な前向きな取組は評価できるということです。医薬品や食品等の安全に係わる行政関連の 委員会とか、評価活動への貢献度は多大であって、国立衛研の専門分野を生かした社会貢 献に対する取組は大いに評価できるということです。研究者の数が少なく、また、研究費 が少ないという現状の中で、行政等への貢献と研究面での新たな成果を求めての活動は評 価できるとしていただきました。ここでは挙げていませんけれども、いま男女共同参画と いうことが言われていますけれども、現在、19部、1省令室のうち3名が女性部長であり まして、室長も3分の1ぐらいが女性であります。男女共同参画に関してもできれば評価 していただきたいと考えています。  次の頁に、ご指摘をいただいたところが記載されています。研究、試験、調査及び人材 養成等に関してですけれども、行政支援の比重が高くて、基礎的な研究評価が充分でない ところもあり、人材育成に問題が懸念されるということ、また一部の人に論文発表が少な いか、全く見られなかったことは残念であり、この点に関して、個人の研究評価がどのよ うな影響を与えるか、見守りながら今後も取組を進めていってほしいと。それから人員の 確保の面からも、国立衛研独自のポストドク制度の導入などの対策を考える必要があると いうご指摘をいただきました。基礎的な研究の取組というのは部によってかなり差があり まして、ここにありましたように食品部は、行政関連の仕事が非常に多いということで、 そちらに偏しているところがございました。それを改めるために、平成19年度において、 代謝生化学部を改組いたしまして、食品関係の仕事の一部を分担させるようにして、なる べく負担の公平化を図るというような努力をしています。  研究者評価については、必ずしも研究は1年だけで研究評価が出るということではあり ませんので、2年3年の目で見て評価していきたいと考えています。去年度から研究者の 評価をして、その結果を給与に反映させるということをやっていますけれども、その結果 を見守りながら、大きな障害が出ないような形で運営していきたいと思っています。それ から、国立衛研としてポストドク制度を設けてはどうかということですが、それについて は残念ながら予算の問題もありましてできませんけれども、HS財団等のポストドク制度を 利用して、活用していきたいと考えています。また、派遣職員や非常勤職員を活用してい きたいと考えています。  研究分野、課題の選定についてですけれども、本当に必要な研究課題であるかを選定す ることも重要であるというご指摘がありました。また重複しないような整理も求められる ということです。国立衛研では、前回の評価でも言われましたけれども、ルーチン的な仕 事はなるべく民間へ委託すると。民間でできることについては民間に委託し、研究者は将 来の行政ニーズを踏まえたような、先導的研究をなるべくしていくように指導していると ころです。研究内容が重複しているというところは、医薬品情報に関してそのような指摘 があったと考えたのですけれども、これに関しては、本省や医薬品機構と相談の上、検討 していきたいと考えています。  組織・施設整備・情報基盤・研究及び知的財産権取得の支援体制についてということで すが、これについては、研究の内容に重複が見られるというようなご指摘でした。それに 関しては、いくつかプロジェクト研究が走っていまして、プロジェクト研究に関しては、 部間で横断的なチームを作りやっていきますので、その面で若干重複が認められるという ご指摘があったのではないかと思います。ただ、こういった部間を越えた共同研究という のは、レベルの高い研究をやる上で非常に重要だと考えておりますので、これからも進め ていきたいと考えております。若干重複しているように見られるということについては、 分担するところが異なっておりますので、ご容赦願いたいと考えています。  情報発信について、国内外への発信にもっと力を入れることが望まれるということです が、いままでは、医薬品とか食品の安全情報に関しては国内中心でしたので、これからは 国外への発信も含めて、検討していきたいと考えています。  知的財産権の取得についての支援体制ついて、今後一層の取組を期待したいというご指 摘です。それに対してはHS財団のTLOとも協力して進めていきたいと考えています。  共同研究・民間資金の導入状況、産学官の連携及び国際協力等の外部との交流について ですけれども、外部協力者をまとめ、指導するリーダーシップのある人材の育成が望まれ るということです。それに関しては、やはり学会でのステータスを研究者個人個人が上げ ることが重要ですので、国立衛研としては学会活動を支援し、また共同研究を支援するこ とによって、レベルを上げていきたいと考えています。  5番目として、研究者の養成及び確保並びに流動性についてということですが、部門に よって基礎研究への取組に違いがありまして、そこについてご指摘がございました。将来 の不公平感を解消するには努力が必要だということですけれども、それに関しては、本人 の希望も踏まえて、海外留学、人事異動とか、そういうものを含めて対応していきたいと 考えています。現在はそういうことでやっております。業務量に比べて研究員の数が不足 しているということで、定員削減緩和の申し入れとか、ポストドク制度の拡充とか、連携 大学院制度の積極的活用とか、そういった対応が望まれるということですけれども、定員 確保のための努力を今後とも必要な分野について続けていきたいと考えています。また大 学等との連携を含め、学生や大学院生を受け入れようということでやっております。連携 大学院とのことも、現在、東京大学や岐阜大学と進めているところでございます。部長等 の選考において、行政能力が強く期待されると外部からの採用が困難であるというような ご指摘がありました。それに関しては、反省いたしまして、行政経験があるということは、 ご指摘を受けてからは応募要綱に入れないことにいたしました。ただし、行政協力は国立 衛研にとって極めて重要ですので、行政協力についての意欲は必要と考えています。  6番の専門研究分野を生かした社会貢献に対する取組についてということで、社会貢献 について国立衛研の存在をアピールしていく必要があるのではないかということですが、 それについても、積極的にやっていきたいと考えています。  倫理規定及び倫理審査会等の整備状況についてということで、いま年に3回程度研究倫 理審査委員会を開催しているのですけれども、それをもっと増やしたらどうかということ です。これに関しては、年間4回ほどに増やしたいと考えています。ただ、迅速な審査を して、研究の遂行をスムーズにいくようにしなければいけないということもありまして、 正式な倫理委員会の了解を受けた範囲内で簡略審査を行う正副委員長会という組織を作り まして、なるべく能率的に研究が進むようにしているところでございます。その他として、 本所は重要な研究所である一方で、研究資源の不足によっては、研究所の基盤が将来的に 弱体化する危惧がある。レギュラトリーサイエンスにおける国立衛研の果たす役割等を鑑 みても厚生労働省も真摯に受け止め対応することが期待されるということですけれども、 機関評価の結果は、厚生科学課を通じて報告して、組織要求や予算要求の際に、厚生労働 省に協力を依頼していきたいと考えています。以上です。 ○垣添部会長  どうもありがとうございました。ただいまのご説明に関して何かご発言がありますか。  私から1点。研究者数が1割ほど削減された中で、論文数が維持されているというのは、 確かに評価されることではありますけれども、だとしたら、もっと減らしてもいいんでは ないかなとなりませんか。 ○大野副所長  それは非常に苦しいところですけれども、現在共同研究をやるとか、大学院生とか学生 さんを入れることによって、何とか研究の業務は果たしているところで、これ以上減らさ れると、非常に苦しいところです。というのは、減らされた結果室長1人で室員がゼロと いう研究室がかなり出てきてしまったのです。そういうところは何とかしてくれと言われ ているのですが、自助努力をしろと言わざるを得ません。特に必要なところについては、 補充について協力するということでやっています。これ以上減らされるとそういうところ がかなり増えてしまう。後継者の育成も含めて非常に大きな問題になってきてしまうので、 非常に困るところだと考えております ○垣添部会長  私は支援したい立場です。ほかにいかがでしょうか。 ○佐藤委員  資料4-3の3頁なのですけれども、任期制の研究員が3%ということなのですけれども、 任期制というのはどういう意味で任期制なのでしょう。3%というのは何か少ないように思 ったものですから、教えていただければと思います。 ○大野副所長  任期制というのは二つ種類がありまして、一つは若手研究者の育成を目的とした任期制 の研究員と、もう一つは、既に出来上がった立派な先生に来ていただいて、特定の問題を 解決するために仕事をしていただくというものです。国立衛研で主に行っているのは若手 研究者の育成のためのものです。3%が少ないということですけれども、国立衛研の仕事の 内容から、なかなかそれ以上増やすというのは難しいところです。というのは、ある程度 行政協力も含めた仕事を責任を持ってやっていただかなければいけない。もう一つは、任 期制研究員ということで募集を何回もかけているのですけれども、いい人が来ないことが 多いのです。採用ができなくて、また振り出しに戻って再公募ということがあります。そ ういうことで、再公募のときに任期制を外してやると、結構良い人が応募してくださると いうのがありまして、なかなか3%の目標を達成するというのは、難しいところです。 ○垣添部会長  大学でいう任期制とだいぶ違うのだなというのがよくわかりました。3%でも随分ご苦労 されていることがよくわかりました。ありがとうございました。 ○笹月委員  私共国際医療センターの研究所も今年になって外部評価を受けまして、対処方針という のを、実は昨日研究所長が作ったものを元に議論したものですから、非常にフレッシュな 感じで拝見したのですが、評価する側も大変たくさんの資料が前もって送られてきて、そ してそれをまたある日集まって1日中ヒアリングをする。そして報告書を書く、大変な作 業を委員会はするわけです。受ける側も資料を作って、またそれをというふうに大変なこ とをするわけで、結局、その評価が行われたおかげで、自分たちが気がつかなかったとい うところを指摘され、そのおかげでこういうところは改善されたのだということを、受け た側が報告書にきちんと書くと、本当に評価の意味というものがわかるのではないかと思 います。きちんと読めばわかるのですけれども、なかなかこういうのを全員が読まないと 思うんですね。そういうところをサマライズしたものを付け加えるようにしていただくと、 厚労省にとっても私は評価の在り方、あるいは問題点を明確化するということでいいので はないかと思います。 ○大野副所長  ありがとうございます。前回の指摘に対する対応というのは、申し訳ないですけれども まとめていませんでした。ただ、今回評価していただいた評価報告書の中に、前回の指摘 されたことへの対応について、どういうことをやったというのを記載してくださっていま す。いくつか民間に任せるべきところは任せて、ルーチンの仕事は減らして研究に専攻す べきだというようなことについてはすでに対応しています。流動研究員を大幅に増やせと いうような指摘がございましたが、それについては、先ほど申し上げたようになかなか難 しいところがあって残念ながら対応できませんでした。指摘していただいたところについ ては、改善しなくてはいけないというモチベーションを私どもはしっかり持ってますし、 所内での共通の意識を持つことができますので、こういった機関評価というのは、非常に 重要なことだと考えています。大変な仕事を評価の先生方にしていただいているわけです けれども、それは大変申し訳ないと思っているのですが、私どもとしましては、それをや ることによって、どっちかというと夢中で仕事しているのを、一定期間毎に評価をしてい ただくことによって、自分たちの社会への貢献度、ほかの大学とか国際的な研究所との比 較の上での評価をそれなりに考えることができて、逆にレベルの高いことをやっているの だという自信につながるということで、非常によかったと思っているところです。 ○垣添部会長  望月委員、評価委員長としてご発言があましたらどうぞ。 ○望月委員  いま笹月先生がおっしゃったように、非常に膨大な資料を前もって送っていただきまし た。まる2日間缶詰で、そのあと各委員からの報告を全部集めて、それを評価報告書にま とめるという作業は思ったよりも大変なことで、評価委員に感謝いたしております。また、 こういう報告を評価委員に戻すタイミングというのがなかなかなくて、なるべく早い段階 で戻していただくと、お互いに自分の評価の記憶がまだあるためいろいろな面で有用だと 思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○垣添部会長  ありがとうございます。ほかにご発言はありますでしょうか。ではただいまのご意見を 踏まえまして、国立医薬品食品衛生研究所におかれましては、今後の運営の改善等に努め ていただきたいと思います。また、本日ご出席いただきました大野副所長につきましては、 お忙しい中ありがとうございました。 ○大野副所長  どうもありがとうございました。 ○垣添部会長  それでは先に進みまして、研究開発型独立行政法人の整理合理化の動きについて事務局 から報告をお願いします。 ○矢島厚生科学課長  それではお手元の資料4-4に基づきましてご説明をさせていただきます。独立行政法人 整理合理化計画につきましては、昨年の6月19日ですが、「経済財政改革の基本方針2007」 におきまして閣議決定をされました。その中で年度内を目処に独立行政法人整理合理化計 画を策定ということが、昨年の6月に決定されているところです。これを受けまして、行 政減量・効率化有識者会議というものが設けられまして、そこでご議論が行われまして、 101の独立行政法人について独立行政法人の整理合理化計画が昨年末に策定されまして、 これを経て閣議決定をされましたのでご報告をさせていただきます。  まず1頁です。国立健康・栄養研究所につきましては、組織の見直しを行うということ で、これは医薬基盤研究所と一緒の頁に現されていますが、国立健康・栄養研究所につき ましては、組織の見直しとして、国民の健康の増進について、より多角的に研究を進める 観点から、医薬基盤研究所と統合を行う。医薬基盤研究所のほうは、組織の見直しとして、 健康・栄養・食生活に関する研究との連携を図る観点から国立健康・栄養研究所と統合を 行うということが、合理化計画の中に位置づけられました。これにつきましては、組織の 見直しとしまして、法人形態の見直しを検討することといたします。具体的には下に書い てありますようなもの踏まえまして、法人形態の見直しを考えています。  2頁目ですが、労働安全衛生総合研究所につきましても、組織の見直しということで、 労働安全衛生に係る研究業務等の一層の総合化を図る観点から、労働者健康福祉機構と統 合するということになりました。具体的にはこれから検討を行うことになりましたが、ま だいまの段階では、どのような方法で行うかということは決まっていません。適宜ご報告 をさせていただければと考えています。以上でございます。 ○垣添部会長  ありがとうございました。何かご発言はありますでしょうか。 ○宮田委員  すみません、国立健康・栄養研究所と基盤研の合理化計画についてお尋ねしますが、「法 人形態を再検討する」と3回ぐらいおっしゃいましたけれども、その中身はいったいどう いうことになるのでしょうか。 ○矢島厚生科学課長  これから具体的に検討を行うことになりますが、我々のほうはよくご説明をさせていた だいているのですけれども、わかりやすいイメージとしては、国立美術館があるのですが、 法人としては一つです。それでも国立西洋美術館ですとか、国立近代美術館とか、それぞ れ独立した看板で運営をしておりますので、そういうようなイメージになるというふうに 考えております。 ○宮田委員  わかりました。 ○垣添部会長  ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。  これですべての議事は終了することになりますが、全体を通して何か特にご発言いただ くことはありませんでしょうか。それでは事務局から今後の予定等お願いいたします。 ○坂本研究企画官  次回につきましては現在はっきりした日程は決めておりませんが、別途日程調整をさせ ていただきますので、その際にはどうぞよろしくお願いいたします。 ○垣添部会長  それでは30分ほど早く終わりましたので、お忙しい皆様方には、貴重な時間を提供でき てよかったと思います。どうもご協力ありがとうございました。                                 −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171 - 1 -