08/03/13 第1回議事録(雇用・能力開発機構のあり方検討会) 雇用・能力開発機構のあり方検討会(第1回) 日時 平成20年3月13日(木) 10:00〜 場所 厚生労働省省議室9階 ○美濃企画官 ただいまから「雇用・能力開発機構のあり方検討会第1回」 を開催いたします。本日はお忙しい中、ご参集いただき、誠にありがとうご ざいます。第1回の会合ですので、委員ご紹介までの間、事務局で司会を務 めさせていただきます。まず初めに、岸副大臣よりご挨拶申し上げます。 ○岸副大臣 おはようございます。本日はお忙しい中、お集まりいただきま して、誠にありがとうございます。本来であれば、舛添大臣が出席をいたし まして、親しく皆様とお話をし、ご挨拶をすべきところでございましたが、 参議院の予算委員会の審議が入っておりまして、誠に恐縮でございますが、 私、副大臣の岸でございますが、代わりまして本検討会の開催に当たりまし て、一言ご挨拶を申し上げる次第でございます。  現在の経済政策の課題は、人口減少下でも持続的な発展を可能とするため の基盤づくりでございます。そのためには少資源国である我が国では、これ まで以上に人材育成が重要であり、誰もが能力を開発する機会を持ち、能力 を発揮できる社会に向けて、本格的な取組みを始めなければなりません。雇 用・能力開発機構はセーフティーネットとしての離職者訓練をはじめ、多様 なニーズに応じた職業訓練、人材の能力向上に資する助成金の支給などを行 ってきた独立行政法人であります。が、これまで時代の要請に合致した業務 に特化する改革の必要性が指摘されてきたことも事実でございます。舛添大 臣も雇用・能力開発機構について、施設の視察などを行った上で、渡辺行革 担当大臣とも議論を行ってまいりましたが、昨年末の「独立行政法人整理合 理化計画」において、雇用・能力開発機構については、1番目として、職業 能力開発施設の設置・運営業務の必要性について評価を行い、2番目として、 その結果を踏まえて、法人自体の存廃について、1年を目処として検討を行 うとされ、改革はまさに待ったなしの状況にあります。  本検討会を開催するに当たり、ものづくりの技能の維持、伝承など、これ からの日本を支えていく人材育成として、真に国民にとって必要な事業等に ついて、効果の観点から検討することといたしたいと思っております。また 必要性の薄れたものについては、当然縮小、廃止の方向で整理をしていただ き、行政としても改めるべきものは改めることとしたいと考えているところ でございます。  雇用・能力開発機構の改革は、独立行政法人整理合理化の中でも、極めて 重要なものであります。幸いにも庄山座長はじめ、さまざまなご知見をお持 ちの方々にご参画いただくことができました。舛添大臣も、私も皆様方と一 体となって取り組むべく努力・尽力してまいりたいと思っております。  本検討会が実りあるものとなりますよう、皆様方の闊達なご論議のほどを、 よろしくお願い申し上げまして、一言ご挨拶といたします。ありがとうござ いました。 ○美濃企画官 岸副大臣は所用のため、ここで退席させていただきます。              (岸副大臣退席) ○美濃企画官 続きまして、本検討会の委員をご紹介いたします。お手元の 資料No.1の別添をご覧ください。まず座長をお願いしております株式会社日 立製作所取締役会長の庄山悦彦様、座長代理をお願いしております学習院大 学経済学部教授の今野浩一郎様、愛知県産業労働部労政担当局長の青木学様 の代理で就業推進監の上田様、全国専修学校各種学校総連合会理事・総務委 員長の秋葉英一様、東京都中小企業団体中央会理事の上原洋一様、法政大学 名誉教授・学事顧問の清成忠男様、日本経済団体連合会専務理事の紀陸孝様、 愛媛県経済労働部長の上甲啓二様、弁護士の住田裕子様、日本工学院八王子 専門学校長の千葉茂様の代理で教務部長の栗原様、全国産業人能力開発団体 連合会専務理事の本田一男様、公認会計士の山田真哉様、日本商工会議所労 働小委員長の渡辺祥二様の代理で常務理事の篠原様です。  このほか本日は所用のため、ご欠席ですが、株式会社リクルート ワークス 研究所所長の大久保幸夫様、石川県商工労働部長の高本隆様、急遽ご欠席に なりましたが、日本労働組合総連合会事務局長の古賀伸明様に委員をお願い しております。よろしくお願いいたします。カメラ撮りはここまでとなりま す。それでは、これからの進行につきましては座長の庄山様にお願いいたし ます。 ○庄山座長 このたび「雇用・能力開発機構のあり方検討会」の座長を務め ます庄山でございます。先ほど副大臣からもいろいろお話がございましたよ うに、昨年、独立行政法人の「整理合理化計画」の答申を受けまして、当雇 用・能力開発機構におきましても、抜本的な見直しが迫られているところで す。本検討会は、職業訓練関係を中心にご議論いただくわけですが、「雇用 のセーフティーネット」であるとか、「ものづくりに伴う人材の育成」など の観点から、その必要性についてはどなたもご異論はないと思いますが、こ れのあり方、進め方等々につきましては、今後、公正・中立に評価を行い、 法人自体の存続か廃止かについて、1年を目処に検討するようにということ で、当検討会がスタートするわけでございます。  検討会の皆様方には、さまざまな分野から、是非建設的ないろいろな意味 での造詣の深い方々ですので、この分野について、いろいろな議論を積み重 ねて、いい結果が出ればと思っている次第でございます。  後ほどスケジュール等々、ご説明があるかと思いますが、本検討会は、今 後は大体月1回ぐらい開催の予定で、夏ごろには一応の方向づけを1回やり、 年末に向けて、どういう形にするかということで進めていくようなスケジュ ールになっているようですから、是非、皆様方のいろいろな意味での、いろ いろな角度からのご意見を拝聴し、まとめていく方向にしたいと思いますの で、皆様方のご協力、ご支援のほど、よろしくお願いいたします。  それでは、早速、議事に入りたいと思います。まず事務局で準備されまし た本検討会の趣旨及び会議等の公開の取扱いにつきまして、ご説明をお願い したいと思います。 ○姉崎総務課長 資料No.1です。趣旨については、副大臣、庄山座長からご 説明をいただいたとおりです。昨年、独立行政法人制度の創設6年が経過し て、原点に立ち返って101の法人すべてについて見直しをするということで、 12月に「整理合理化計画」が閣議決定され、1.趣旨に書いてあるようなこと になった次第です。本検討会の検討事項は、2に書いてあるとおりです。  資料No.2は「会議等の公開の取扱いについて(案)」です。会議について は、公開を原則とさせていただき、特段の事情がある場合には、座長の判断 により非公開とすることができるという取扱いにさせていただければと思っ ています。以上です。 ○庄山座長 ただいまの事務局の提案について、ご質問、ご意見ございます か。特にないようでしたら、この形で進めさせていただいてよろしいでしょ うか。                (承認) ○庄山座長 会議の公開等につきましては、事務局案のとおりに取り扱うこ とにいたしたいと思います。それでは、議事に従いまして「雇用・能力開発 機構の概要とこれまでの経緯」「検討の視点(案)」「今後のスケジュール (案)」について、事務局からご説明をお願いします。 ○姉崎総務課長 それでは、資料No.4、No.5をご覧ください。資料No.4に「雇 用・能力開発機構のあり方検討の視点(案)」という1枚紙があります。本 検討会でご議論いただく際の検討の視点ということで、大きく5つの柱を掲 げています。下のほうに注書的に書いてありますが、本日第1回目の検討会 においては、大きな柱の1番と2番についてご説明し、ご議論をいただければ と思っています。国が行う職業訓練について、どのように考えるのか。官と 民の分担、国と地方との分担についてどう考えるのかという点についてご意 見を賜ればと思っています。  次回の第2回目ですが、雇用・能力開発機構からのヒアリング、5月に施 設の見学を予定していますが、その際に大きな柱の3番と4番について、ご 理解、ご意見、ご議論をいただければと思っています。それらを踏まえて、 第3回目の検討会において、大きな柱の1番から5番までのより具体的な論 点を整理し、ご議論をいただければと思っています。  スケジュールですが、資料No.5の1枚紙です。本日が第1回目です。第2 回目は4月16日水曜日を予定していますが、雇用・能力開発機構からのヒア リングを踏まえてのご議論、5月に職業能力開発施設をご見学いただき、第3 回目のときに大きな柱の1番から5番までのより具体的な論点について提示 し、ご議論をいただき、一応7月、夏を目処に中間的なとりまとめをお願い できればと思っています。閣議決定では、1年を目処に検討するとなってい ますので、最終的なとりまとめについては年内にお願いできればと思ってい ます。スケジュールの関係は以上です。  本日は、視点の1番と2番に関わるところについてご説明をしますが、最 初に簡単に資料No.3「雇用・能力開発機構の概要とこれまでの経緯」について です。これまでの経緯については、先ほども副大臣、庄山座長からのご紹介 もありましたので省略させていただきます。8頁をご覧下さい。そもそも雇 用・能力開発機構はどういう法人なのかということです。  「沿革・組織」ですが、平成16年3月1日に特殊法人から独立行政法人に なった法人で、職員数約4,000名で、横浜に本部があります。主たる業務は 3つあって、事業概要は1つが公共職業能力開発施設等の設置運営、事業主 が行う職業訓練に対する援助等の能力開発に関する業務、これが中核的な業 務です。2つ目が、中小企業の雇用創出のための助成金の支給、相談等の雇 用開発に関する業務です。3つ目の柱が、勤労者財産形成促進に関する業務 ということで、主要な3つの業務を行っている独立行政法人です。  改革の取組ということで、平成15年度から平成19年度までが第1期の中 期目標期間でしたが、改革を加速していくという観点から1年前倒しをし、 平成19年度から第2期の中期目標期間に入っており、第2期中期目標期間の 最終年度の平成23年度までに、職員数、予算等々、合理化に努めながら、進 めていく予定にしております。  10頁の当法人の予算です。平成19年度予算ですが、ピンクの所で予算総 額5,798億円と書いてありますが、外部から資金調達をして勤労者財産形成 促進業務の融資・償還原資になっているのが約4,000億円ありますので、こ れが大層を占めており、平成19年度予算で国から機構に対して支出している 予算額は、ピンクの下にある1,175億円です。  雇用開発・能力開発関係業務については、国からの予算は2種類あって、 運営費交付金、補助金があります。それぞれ790億円、377億円、それから 職業訓練についての自己収入が128億円あります。合わせて事業予算として は1,295億円ということになっています。  このお金が一体どこからきているのかというのが11頁ですが、機構に出し ている予算は、雇用保険二事業(雇用安定事業、能力開発事業)があって、 能力開発事業として行われており、全額事業主が負担する保険料が財源にな っています。  12頁にメインテーマである公共職業訓練を行うための施設として、どんな ものがあるのか。まず1つは、ポリテクセンターという離職者訓練、在職者 訓練を実施している施設が全国に61カ所、新規高卒等を対象にした施設のポ リテクカレッジが全国10ブロックに1カ所ずつ、その附属ということで附属 短期大学校が別に12カ所、職業訓練の指導員の養成・再訓練を行う職業能力 開発総合大学校が1つ、それからホワイトカラー向けの訓練コースの開発等 を実施しているアビリティガーデンという組織が1カ所あります。 このような法人です。  次に本日の検討の視点に基づく資料として資料No.4-3を脇に置いていただ きながら、資料No.4-2でご説明いたします。初めに、2頁の「教育訓練市場の 全体像」です。イメージを持っていただくために、我が国の教育訓練市場の 規模について、お金の支出主体別にどのようになっているかを整理したもの です。国と都道府県は予算額ですが、国は1,548億円で、全体の約1割弱の 規模を占めています。その中で雇用・能力開発機構が約3分の2の規模を占 めています。企業、労働者それぞれどういう数値かと申しますと、企業は従 業員のOFF-JTや自己啓発支援のために使ったお金の総額、労働者のところは 労働者が自己啓発のために使ったお金の総額ということで計算をしています。  3頁ですが、教育訓練市場において、教育訓練サービスを提供している主 体別にどのような特徴があるのかを整理したものです。上のほうの横軸に学 卒者、在職者、離職者。縦軸にはものづくり分野か、それ以外の分野かとい うことで整理をしています。こういう訓練サービスを提供している主体とし て、まず雇用・能力開発機構ですが、主にものづくり分野で離職者を対象に 職業訓練を実施しています。それから都道府県の職業能力開発校は主として 学卒者を対象にものづくり分野を中心に訓練を実施しています。民間のサー ビス主体は公益法人、教育訓練企業等さまざまあるわけですが、OAや資格取 得が中心の訓練サービスになっています。  右側に赤字で委託訓練と書いてありますが、公共職業能力開発施設では、 ものづくり分野を中心に実施しており、それ以外の事務系分野については民 間教育訓練機関に、訓練そのものを委託するという形で、民間を活用してい るということで「委託訓練」と赤字で書いています。  4頁は国際比較です。訓練プログラムに対する公的支出の対GDP比の国際 比較です。基本的にこれは各国の国の予算を基にそれぞれ計算をしており、 日本は低い状況にあります。  6頁は、雇用対策における職業訓練の位置づけです。雇用対策法という法 律があって、その法律の第4条で、国は必要な雇用対策について、総合的に 講じなければいけないということで、12の事項を設定しており、その2番目 に職業訓練が位置づけられているところです。同じ雇用対策法の第16条で、 職業訓練について何をやるのかということで、国は職業訓練施設の整備云々 ということで、具体的に講ずべき措置を法律で位置づけています。  7頁は、雇用対策法に基づいて、国は雇用政策基本方針を定めることとな っており、この2月29日に告示されたものですが、当面5年程度の間、国が 取り組むべき雇用政策の基本的な方向性等を明らかにしたものです。大きく 3つの柱があり、2番目の柱に働く人すべての職業キャリア形成の促進という ことで職業訓練が位置づけられています。  8頁で、ここの項目で具体的に何が書いてあるのかを抜粋していますが、 職業キャリアを支援するインフラの充実ということで、下のほうの赤字です が、先ほど庄山座長からもお話がありましたが、国の責務として、雇用のセ ーフティーネットとしての役割を果たすとともに、ものづくり分野を担う人 材を育成するということで、公共職業訓練の充実を図るということで雇用政 策の中での位置づけが明らかにされています。  9頁は、それでは公共職業訓練には、一体どういうものがあるのかという ことで、離職者訓練、在職者訓練、学卒者訓練という3つの箱が書いてあり ます。いちばん左側の離職者訓練は、求職者、失業者に対する訓練で、無料 で実施しており、期間は3カ月から6カ月、公共職業能力開発施設で行う施 設内訓練と民間に委託をする委託訓練とがあります。  在職者訓練については、主に中小企業の在職労働者を対象とした2日から 3日間程度の訓練で、受講料を取っています。学卒者訓練については、新規 中卒、高卒を対象とした1年、2年等々の訓練ですが、ものづくり分野中心 にして、受講料を取っています。  資料No.4-3は公共職業訓練の訓練コース例で、離職者訓練、在職者訓練、 学卒者訓練の写真が付いています。資料No.4-2で引き続き説明しますが、写 真が付いていて、こちらを見るとイメージが湧きやすいと思いますので、そ れぞれ説明するときに写真を見ていただくとイメージが湧くかなということ で、資料No.4-3も適宜ご参照いただければと思います。  10頁は離職者訓練のうちの施設内訓練です。これは雇用・能力開発機構も 都道府県も実施していますが、機構のほうは原則6カ月、都道府県のほうは 6カ月から長いもので1年の訓練というものもあります。機構のほうは、主 にものづくり分野を中心とした訓練を実施し、都道府県のほうもものづくり を中心にしながら、地域の実情を踏まえたきめ細かな訓練を実施しています。  11頁は離職者訓練のうちの委託訓練です。ものづくり分野以外の民間でで きるものについては民間の教育訓練機関でやっており、そこに委託をすると いうことで、4の訓練コースにありますように、ものづくり系以外の分野に ついては、民間に委託をしているということで、委託訓練については、標準 3カ月、委託費は月額6万円を教育訓練機関に対して支給をしています。  12頁に委託訓練の意義、機構が実施する委託訓練の特色を整理しており、 意義は上のほうに書いてあるとおりです。特色は委託に当たって民間教育訓 練機関等に対して、個別のカリキュラムを提示する等のノウハウの提供ある いは雇用対策と連動した訓練を開発し、それに委託をして実施する。あるい は業界団体と協同してカリキュラムを開発し、それを委託訓練という形で実 施するということです。  13頁は離職者訓練の実施規模ですが、左側が雇用・能力開発機構です。平 成18年度を見ますと、施設内訓練で約3万3,000人、委託訓練が約10万人、 就職率は、施設内訓練が81.6%、委託訓練が68.9%です。右側が都道府県の 実施規模です。  14頁は雇用対策における離職者訓練の実施で、雇用情勢の変動に応じて緊 急的な雇用対策が過去講じられていますが、そうした雇用対策の重点の1つ として能力開発、職業訓練が位置づけられ、その時々の情勢に応じて機動的 な対応を図ってきたところです。  15頁からが在職者訓練ですので、資料No.4-3の5頁の写真を適宜見ていた だければと思います。在職者訓練の特徴としては、主として中小企業の在職 労働者を対象に実施していますが、新たな技術に対応した訓練、現在ある生 産工程の改善・改良に関わる訓練、今日的なものとしては技能継承の必要性 に対応した訓練や環境問題に対応した訓練などを実施しています。  16頁に在職者訓練の実施規模が書いてありますが、平成18年度は雇用・ 能力開発機構が約8万2,000人、都道府県が約6万人となっています。  17頁に「職業訓練におけるPDCAプロセス」と書いてありますが、離職者 訓練、在職者訓練については、それぞれ訓練ニーズの把握、それを踏まえて コースを設定し、訓練を実施し、それを評価し、問題点があれば、それを修 正するというPDCAサイクルに基づいて、毎年コースの改廃・見直し等々を実 施しています。  18頁からが学卒者訓練です。新規学卒者訓練については、左側に普通課程 があります。これは新規の中卒・高卒を対象とした1年から2年の訓練で、 都道府県が設置している職業能力開発校で実施しています。真ん中の専門課 程は新規高卒者を対象とした2年間の課程で、職業能力開発短期大学校等で 実施しており、機構立が24、都道府県立が9となっています。短期大学校の 24のうち、11については、いちばん右側ですが、さらに専門課程の上に2年 間の応用課程を乗せて4年間の課程で実施しているのが職業能力開発大学校 です。  19頁で普通課程、専門課程、応用課程それぞれの目的、訓練時間等々を整 理してあります。実績で入校者数ということで、新卒訓練については都道府 県中心にやっていますので、普通課程がいちばん多くなっています。就職率 については、いずれも高い水準になっています。  20頁で学卒者訓練全体の実施状況があります。いまのは入学者数で、こち らはストックとしての学生数ですが、平成18年雇用・能力開発機構は約7,600 人、就職率は98.3%、都道府県は全体として1万5,300人、就職率は92.6% です。  21頁で4年間の職業能力開発大学校は国立大学の工学部とどのように違う のかを整理したものですが、真ん中で実習等の割合、カリキュラムの基礎と 書いてありますが、能力開発大学校の場合には、実学融合の訓練手法とカリ キュラム、カリキュラムのベースは生産現場の職務で、大学は理論とそれを 検証するための実験、学術・理論からなるカリキュラムということです。  22頁でより具体的に総時間数・取得単位の比較が書いてありますが、職業 能力開発大学校の総訓練時間数は、国立大学に比べて相当長く、時間に占め る実技・演習の割合も相当高いということで、かなり時間が長くなっており、 能開大の学生はほとんどアルバイトをすることもできないぐらい忙しいとい うことになっていますが、そのことが高い就職率に結びついていると考えて います。  24頁がものづくり政策における職業訓練の位置づけで、超党派の議員立法 でものづくり基盤技術振興基本法があります。ものづくり基盤技術の振興に ついて、国が総合的な施策を講じるということで、その第十二条で、ものづ くり労働者の確保のために、職業訓練を実施していくということが位置づけ られています。  25頁は、雇用・能力開発機構が、学卒者訓練、在職者訓練、離職者訓練そ れぞれの面で、中小企業のものづくりを担う人材の育成に取り組んでいると いうことを示しています。  26頁は、機構が行う離職者訓練は、大部分がものづくり系という資料です。 27頁は、在職者訓練における訓練コースも機械系を中心に、ものづくりを 中心に実施しているというものです。  28頁です。中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律がありま す。主として中小企業によって担われている技術の中で、その高度化を図る ことが、我が国製造業の国際競争力の強化あるいは新たな事業の創出に資す る技術ということで、それを特定ものづくり基盤技術と位置づけていますが、 先ほどの雇用・能力開発機構の職業能力開発大学校等で実施している中で、 こうした技能を教えているかどうかということで対応率を見ていますが、合 計の欄で、全訓練科数147科のうち、120の科で特定ものづくり基盤技術の いずれかの技能を教えている状況です。  30頁が官民の役割分担と連携です。繰り返しになりますが、公共職業能力 開発施設については、ものづくり分野を中心に実施しており、ものづくり以 外のITや事務系の分野等については、専門学校、教育訓練企業等の民間教育 訓練機関が主に担うということです。  離職者訓練の委託とオレンジで書いてありますが、離職者訓練、機構はも のづくり分野については、自らの施設内で実施しますが、ものづくり系以外 のものについては民間教育訓練機関に委託をしているということで、オレン ジの字が書いてあります。  31頁に国と地方との役割分担と連携ということで、国は雇用のセーフティ ーネットという観点から離職者訓練、在職者等については高度な職業訓練を 実施する、地方公共団体においては、地域産業のニーズ、訓練ニーズをきめ 細かく把握し、地域の実情に応じた能力開発を推進するという考え方で取り 組んでいます。下に連携と書いてありますが、両者それぞれ密接に連携をし、 お互いに重複等がないか、訓練コースの設定等についても必要な調整を図り ながら、連携をとって進めているところです。  32頁は訓練の種類別に整理したものですが、国、雇用・能力開発機構は離 職者訓練を中心にということで、施設内・委託を含めて、平成18年度は約 13万3,000人となっています。学卒者訓練は約8,000人です。都道府県のほ うは離職者訓練は、国に比べて数が少なく、約3万9,000人ですが、学卒者 訓練については1万5,000人で、国の2倍の規模を実施しています。  33頁は国のほうにだけある機能で、職業能力開発総合大学校という施設を 1つ設置しており、公共職業訓練の指導員の養成、すでに指導員になってい る人の技術の変化等に応じた再訓練を実施しています。  大学校の中に、能力開発研究センターを設置しており、「生涯職業能力開 発体系」と書いてあります。次回、雇用・能力開発機構から説明があると思 いますが、こうしたものを基礎とした教材・訓練コースの開発、訓練技法等 の開発を実施し、幅広く民間・地方にその成果を提供させていただいている というのが、国のほうには機能としてはあります。  以上の資料に基づいて、国が行う職業訓練の必要性について、どのように 考えるのか。官と民、国と地方の役割・分担・連携をどのように考えればい いのかについて、ご意見を賜ればと思います。 ○庄山座長 非常に盛りだくさんのご説明でしたので、これからの時間は皆 様方からのご質問、ご意見等をお話いただければと思います。これから約1 時間を予定しておりますので、全員の皆様方からのご意見を拝聴したいと思 っておりますので、どんどんご質問、ご意見を賜りたいと思います。 ○紀陸委員 質問ですが、離職者訓練も学卒者訓練も、訓練後に就業率が高 いという数字になっていますが、大企業に行かれるのか中小企業に行かれる のかさまざまだと思いますが、いずれかの段階で、どういう所に就職されて いるのか、何かデータがあればお示しいただければ幸いかと思います。 ○水野課長 就職先については、追って詳しい資料を用意させていただこう と思っております。例えば、就職先の企業の規模を申しますと、大体6割以 上の方が中小企業に就職されています。学卒者訓練の場合は、訓練を受けた 中身に関連する分野に就職したかどうか関連就職率をとっていますが、それ で見ますと、9割以上が関連する分野に就職しています。 ○庄山座長 今日の説明で不足しているところは、また資料をまとめていた だくような形で、皆さんの理解を共有化したいと思います。 ○住田委員 この検討会の仕事というのは、事業評価及び事業監査という観 点が必要だろうと思います。そうすると、特に監査に関しては財務諸表をあ る程度見せていただいて、利益を生むところで、民間に委譲してよろしいも のと、セーフティーネットとして公共的な立場を貫かなくてはいけないもの と大別できると思いますので、どの辺りが民間移行が困難であるかという意 味でも、特に公認会計士の委員もおられますので、必要に応じて財務諸表を 出していただけるようにお願いしたいと思います。 ○庄山座長 本件は是非お願いしたいと思います。よろしいでしょうか。 ○姉崎総務課長 言い忘れましたが、第3回目以降で、検討の視点の具体的 な論点を提起させていただきます。今日、説明した資料で足りない、あるい は検討するに当たって、住田委員と紀陸委員からもお話がありましたが、こ ういうデータを出してくれると議論がしやすいというのがありましたら、今 日言っていただければ、できる限り3回目以降に揃えるようにしたいと思い ます。 ○渡辺委員(篠原代理) いまの関連で、今回出していただいたデータで、 学卒者訓練と大学校との比較は大体わかりましたが、高等専門学校のものづ くり系と、学卒者訓練がどのように仕分けされているか、あるいはどのぐら いのコストがかかっているのか。一方は文部科学省の所管で一般財源でやっ ていますが、一方は特別会計の事業主負担の経費でコストが賄われていると 思います。併せて学生数、卒業生、就職率、どういう分野に就職しているの か、生徒の学費はどう違うのか等、高等専門学校と学卒者訓練との差異のデ ータを揃えていただきたいと思います。 ○姉崎総務課長 国立高等専門学校ですね。少し前に新聞記事等で出ており ましたが、国立高専も近年は進学する人が非常に増えてきて、就職する人が 非常に減って、ある高専ですと、進学率が7割ということになって、最近は 理論や勉強のほうに力を入れているようです。実情についてはデータを整理 させていただきます。 ○上原委員 私の認識不足だったのですが、予算規模にしても体制にしても、 大変立派な機構があるのだなということを、改めて認識した次第です。裏返 していうと、逆にそれだけPR不足なのかという気がするのです。  それから、民と比べて機構の最大の売りの部分で切り口を考えてみますと、 中小企業などは特にそうですが、いろいろ教育しようと思うと、お金もかか るし、人材も要るわけです。仮に質が同じであれば、安く教育訓練を提供で きるというのは、国の予算を使っているわけですから、最大の売りだと思い ます。この部分が1つ大きな特徴なのかと思います。  一方で同時に、効率や成果を求められるわけですから、そういう部分をど ういうネットワークを使って、いろいろ人数を減らすとか、就職率を上げる とか出ていますが、そういう視点で効率をどのように捉えていくのかという のが、今後の話ですが、大きなポイントなのかと思います。  例えばの話ですが、資料No.4-2の28頁の経産省が言っている特定ものづく り基盤技術との対応率が81.6%と出ています。先々の話ですが、ある機関で 例えばあるべき姿としたら、こういうものは100%のほうが好ましいでしょ うし、経産省の20分野も、PDCAではありませんが、変わってくるのだろう と思います。ほかの省庁とのリンクというか、そういう部分が非常に重要な のかと思います。  全然別件ですが、例えば、中小企業大学校などというのは、よく案内が来 ます。対象にしているのは経営者の予備群や指導者で、ほかの機関でも同じ ような、広い意味での人材育成というか、部隊があるのだろうと思うので、 そういう機関との連携が必要なのかと思います。  それから時代の要請というか流れというか、2つの視点でお話したいので すが、1つは日本の高齢者は非常に働く。年金だけでは食べられないという ことがあるやに聞いております。ところが、今はどちらかというと若者を中 心にいろいろ考えられているようですが、働く側が、例えば健康のためとか、 そういうスタンスですと、国の競争力ということでいうと、ついでにやって いるようでは困るわけで、そういう部分の働く意識を切り換えてもらうよう な、高齢者への施策も改めて必要なのかなと思います。労働力人口は減るわ けですから、若年層を戦力に上げてくるのも方法ですし、高齢者の再戦力と いう部分も着眼点としてあるのかと思います。  もう1つは、中小企業レベルでも産業にもよりますが、すでにグローバル 競争に巻き込まれており、こういう視点でのアイディアが要ると思います。 ものづくりでいうと、いろいろ加工したりする、「それはこのようにやるの ですよ」と教えるのはさることながら、いずれにしても競争力でいうと、世 界の標準に対して、いろいろな意味で効率を上げる、付加価値を上げる、い いものを作る、デザイン性を上げるなどということをやっていかなければな らないわけです。そうすると、考える力をその中で育てていかないと、単に コピーをして作るだけでは駄目なのです。そういう施策の視点をどのように 織り込んでいくのかは、非常に重要ではないかと思います。 ○庄山座長 いまいくつかご提言がありましたが、最初の人気度というか、 PRの仕方などは、卒業後の就職率などがありましたが、それぞれの機関に対 して、どのぐらい希望があるのかがあって、それからどれだけ選ばれている のかというのも、先ほどの1番には付け加えていただければと思います。ど こかに資料あるのかもしれません。何千人いるというのはあるのですが、ど れだけ人気というか、そういうことを受けたいと思っている人がいるのか。 母集団がどのぐらいになっているのかがわかりませんでしたので、それも付 け加えていただけばと思います。  いまのほかとの連携、高齢者の活用、あるいは考える力の教育については、 どのようにまとめて、この次に説明していただけるのでしょうか。もしこん な方法でよければというベクトル合わせができればお話いただいても結構で す。 ○草野審議官 いま考える力、まさにそのとおりだと思います。21世紀のも のづくりというのは、単に技能を高めればいいということではなく、知的な もの、あるいは経営的なものを含みながらやっていくという要素が出てくる と思います。その辺は試行錯誤的な取組を若干やりつつあります。  例えば、総合大のMOT人材育成事業です。経済産業省では技術の分野でMOT ということがあったようですが、雇用・能力開発機構では技能、それから起 業ということをテーマに、MOT人材の育成も始めております。ある種、これ までの単なる熟練工あるいは技能の中核になる人材だけではなく、それだけ の付加価値をいかに付けていくかということが、まさに大きな課題になって おり、試行的な取組を始めているところです。  高齢者という観点で見ますと、直接機構でやっているわけではありません が、取り組み始めている部分として、インストラクターの養成があります。 これは各企業の中で団塊の世代の方は退職していきますが、その後、継続雇 用になって後輩を指導していくということがかなり行われているので、そう いうときに単に熟練技能を持っているからすぐ教えられるというものではな く、あるポイントを理解させながら教えていくことで、いかに分かり易く技 能を伝えるかが重要になっていますので、インストラクターに仕立上げる養 成を部分的に取り組み始めています。民間でもそういう取組はあると思いま すので、そういうものと連携していかにやっていくかということです。特に 総合大学校では、指導員の養成をやっていて、指導技法の面でかなりノウハ ウの蓄積がありますので、そういうことを技能の継承ということで、いかに 還元していくかということが大きなテーマかと思っています。  関係機関との連携はまさにそのとおりで、反省も込めて、やや内向きの姿 勢だったことは事実です。これからそういうところをいかに直して、PRして いくかが重要な課題であり、そういう意味で、今回、ジョブ・カードシステ ムなどは内閣府で立ち上げていますが、そういうことに対するご協力、支援 あるいは施設設備を活かして、あるいはノウハウを活かして工業高校と連携 して、生徒にも来ていただくということも始めていますし、地域の中小企業 と連携して、いかにネットワークを作りながらやっていくかというのは非常 に重要です。そういう意味でのコースの共同開発なども始めており、その辺 は、是非いろいろな角度からご指摘いただきたいと思っています。 ○清成委員 いま議論になったこととも関わるのですが、機構のファンクシ ョンの中で、最重要はものづくりだろうと思います。それがある所はかなり 外へ出せるのではないかという印象があります。  ものづくりについても、これまでいろいろ議論されています。特に中小企 業について、いろいろ議論されているわけだし、外国でもそうですが、特に 技能と技術を媒介するような高度な技能工を育成するかについては、どこの 国でも社会的システムにするのか、企業内のシステムにするのかいろいろな 問題があります。どこの国でも実態が整っていないし、政策も出来上がって いないというところがあるわけです。  先ほどOECDの資料で、国の支出の対GDP比というのがありますが、例えば、 ドイツは非常に高いと言っても、問題はその中身だろうと思います。こうい うものづくり、特に高度な技能工養成については、仕組みの国際比較みたい なデータを是非出していただきたいと思います。  第2点は、上原委員から中小企業大学校の例が出てきたわけですが、中小 企業基盤整備機構がやって、9つあるわけです。そのうち1つを市場化テス トに出したのですが、その結果を見ると、ほとんど出せそうだという感じが あるわけです。こちらの大学校について部分的に市場化テストみたいなこと をおやりになったのかどうか。その辺について伺いたいと思います。  第3は上原委員は他の機関との連携ということをご指摘になり、これも非 常に重要ですが、他のプロジェクトとのオーバーラップがあるわけです。ど この部分をここでやるのかという話があるわけです。先ほどMOTの話が出て ましたが、MOT協議会が何大学かが加わってやっているのもあるのですが、 これは高度職業事業制ということで、制度的には専門職大学院になっている のです。これは5年に1度の評価ということになっていて、もう評価の準備 をしなければならないところまできています。実際に調べてみると、中教審 の制度設計が非常に甘かったものですから、専門職大学院というのが無限に 多様になり、MOTも無限に多様になっているのです。それを評価しなければ ならないということで、評価機関の財団法人の大学基準協会というところで、 私が中心となって、いま評価の仕組み、基準等を整備をして、4月からもう 評価にかかわるわけです。そういうことがMOTに非常に深くかかわっている ものですから、そういうものとの関係をどう考えるのか。それから、教育再 生会議の最終報告の中に盛り込まれたのですが、産学協同人材育成パートナ ーシップというものがあるわけです。これも今月末に中間報告が出るのです が、たぶん来年度から、地域ベースで、大学と企業のコンソーシアムのよう なもので、大学の授業内容と産業界のニーズをマッチさせようという試みが 一方でどんどんこれから進むのです。そういうものの中に、こちらの能力開 発というものがどう位置づけられるのか。それから、首相官邸のプロジェク トの成長率底上げ戦略の中にも「生産性向上、中小企業」というのがあるわ けですが、それとのかかわり、これは最低賃金の問題もかかわるわけですが、 そういうプロジェクトのかかわりを一体どうするのか。随分オーバーラップ しているところがあるわけです。そういう全体的な視点から見ないと、この 機構の姿がどうあるべきかというのもはっきりしてこないのではないか。機 構のこれまでやってきたことには、効果もあったでしょうし、そうでない部 分もあったかもしれませんが、いまの日本のさまざまな政策、プロジェクト という全体の中で、やはり機構の評価というのはすべきではないかという感 じがしたわけです。 ○庄山座長 どうもありがとうございました。最初のほうの市場化テストは、 現状はどうなっていますか。 ○水野課長 市場化テストの関係ですが、これも細かい数字等については別 途資料を用意させていただきたいと思っています。実は、機構の中の施設に 「アビリティガーデン」というものがあります。これは、ホワイトカラー分 野の職業訓練のコースの開発、試行、普及等をやっているところですが、そ こを対象に、平成17年度から市場化テストのモデル事業を行っています。中 身としては、離職者訓練と在職者訓練の2つを市場化テストの対象にしてい まして、17年度の結果がもう出ていますので、ご紹介させていただきます。  離職者訓練については就職率で結果を見ていますが、アビリティガーデン のほうは就職率71%で7割を上回っていますが、民間企業のほうはその半分 以下の就職率ということになっています。在職者訓練のほうは、その訓練を 受けられた方の満足度で見ていますが、こちらのほうは、アビリティガーデ ンも民間も9割前後の満足度ということで、非常に高い結果が出ています。 ただ、在職者訓練については、民間企業のほうがなかなか人が集めにくかっ た、定員の充足率が低かったという結果が出ています。今年度も、この市場 化テストは引き続いてやっているところです。それ以外に、先ほどご紹介が ありましたポリテクセンター等の離職者訓練についても市場化テストができ ないかというご議論もあったわけですが、これについては、先ほど言いまし たように、民間に委託できるものはすべて民間に委託をしていますので、市 場化テストをやるまでもなく、すべて民間に出しているという状況です。 ○庄山座長 他のものとの連携については、これは非常に重要な問題だと思 うのですが、ある程度この検討会で絞り込んで、ある時期に、いろいろなと ころとの連携について対話をするような場面をつくっていくということでな いといけないのではないでしょうか。この中でも、まだいろいろなご意見も たくさんあろうかと思いますので、そんなふうに思っています。何かコメン トはありますか。 ○草野審議官 連携というところでは、まさに底上げの中で、ジョブ・カー ドというものがあります。これは、もちろんカードだけではなく、一種の教 育訓練システムで、座学と実習を組み合わせると。特に、中小企業における 現場における実習と、教育訓練機関の座学を結び付けて、主として、ニート、 フリーターの方とか母子母の方、あまり教育訓練機会に恵まれない方を就業 に誘導するという仕組みですが、そのとき肝心になるのが、座学のほうのカ リキュラムです。この辺のノウハウというのが、ものづくり以外では民間教 育訓練機関はたくさんありますので、そこでご活躍いただくわけですが、も のづくり分野が中心に必ずしもないということで、このカリキュラムの提示 と、座学と実習のマッチング、あるいは、場合によっては座学を直接やると いう辺りで、機構がそのノウハウを生かさないとなかなか動いていかないよ うな面があります。そういうところを中心に、いま、連携をいかに図るかと いうことをやっているところです。そのことは、同時に、清成委員がおっし ゃったような、中小企業の生産性向上というところにもつながる部分もある と思います。  この機構の特色は、実践的な内容の訓練を企業のニーズに応じてやるとい うところでして、先ほど言いましたPDCAサイクルをいかに回して企業のニー ズを汲み取ってくるかという辺りが、非常にポイントになると思います。こ れは、典型的な文科系の学校教育と少し違う面だろうと思います。その辺に ついては、次回以降、機構のヒアリングの中で、どのようにニーズ把握を行 ってコース設定しているかを詳しく説明させていただきたいと思っています。 ○庄山座長 是非よろしくお願いしたいと思います。委員の皆様方も、いろ いろなところでいろいろな連携をお持ちの方がたくさんいらっしゃると思い ますので、いろいろなところでのご発言を通じて、最終的には国としてどう かということになるのでしょうから、そういう形になっていければと思って います。 ○住田委員 就職率が90数パーセントと書いてありましたが、いま、若年者 の人口減少の中で、私は十数箇所の商業高校にキャリア教育等で伺ったこと があるのですが、どこも高い就職率なのです。でも、実は問題はその次で、3 年以内の離職率が非常に高いのです。商業高校でもそうなのですが、おそら く、こういうところでも同様の問題があって、関連就職はできていても結局 定着していないということがあれば、やはり何らかの問題があるのだろうと 思います。もしそういう数字があれば、出していただきたいと思います。  2つ目ですが、先ほどニート・フリーター対策というのがありましたが、 実数として把握し難いのです。ネットカフェ難民というのが随分メディア等 で報道されていました。ああいう若者に対しては、生活保護と連携した上で の職業訓練というのも必要だと思うのです。そういう視点で政策を実施して おられるのであれば、是非教えていただきたいと思います。  そういう意味では、3つ目になるのですが、評価という意味で、こういう 学校を卒業した方が技能五輪等でこれだけの成果を収めましたということが あれば、外向けには非常にアピールできるのではないかと思いました。 ○水野課長 いまのご質問の1点目は、就職率以外の、就職してから3年後 の定着状況といいますか、いわゆる定着率ということだと思います。現在は、 訓練を終えてから3カ月後の雇用についてチェックをして、それで就職率を 見ているわけです。現状では、その先はまだフォローし切れていませんので、 ご指摘も踏まえて、どんなデータがとれるか工夫をしてみたいと思っていま す。 ○今野座長代理 今回は、機構の事業分野をどうしようかということが基本 的なテーマです。そうなると、官民の分担がどうなのかということが重要な テーマの1つとして挙がるわけですが、すでに話がありましたように、実際 には委託訓練をたくさん出しているわけです。ということは、官民分担につ いてはすでに大変豊富なケースは持っているということになるわけです。そ うすると、この委託訓練をどう政策評価しているのかということに大変興味 があります。これが大変よければもっと前に行くし、悪ければ下げるという ことになると思います。この委託分野は非ものづくり系ですので、アビリテ ィガーデンとの関連もあると思います。今後、結果的にある分野を民間に任 せることになったとしても、特に離職者訓練などは公的資金でやるわけです。 そうすると、政府はどうやってウォッチングするのかというのは、非常に重 要な問題ですよね。ただ出せばいいという問題ではない。現在の委託訓練に ついても、委託訓練のマネージメントをどうしていて、結果としてどう評価 されているのかということが情報としていただければ、今後の大きな参考に なると思いますので、お願いしたいと思います。 ○水野課長 委託訓練については、求人者なり求職者の方の多様なニーズに 応えるために、世の中のいろいろな教育訓練資源を使って柔軟な訓練ができ るというメリットがあるのではないかと思っています。その一方で、委託訓 練もやはり離職者訓練の一環ですので、最終的には就職ということが目的に なります。先ほども就職率の数字をご紹介させていただきましたが、機構が 直接施設内でやっている施設内訓練と比べますと、就職率は少し低くなって います。平成18年度の数字で言いますと、施設内訓練は就職率が81%、そ れに対して委託訓練は68%ということで、13%ほど低くなっています。ただ、 過去に比べると、委託訓練の就職率も相当上がってきています。これはどう いうことかというと、1つは、インセンティブ方式ということがあります。 これは、就職率の結果に応じて委託費の額を変えるというものです。就職率 が55%を超えると、通常の委託費は訓練生1人当たり1カ月5万円なのですが、 さらに1万円オンする。就職率が75%を超えると、さらにもう1万円オンする。 そういう形で、結果に応じた成功報酬という形で委託費を出すような仕組み を導入したら、就職率がかなり上がってきたのです。また、機構のほうでも、 就職支援のノウハウやキャリアコンサルティングのやり方のノウハウも提供 させていただきました。その結果、委託訓練の就職率がかなり上がってきた ということがあります。 ○秋葉委員 2点ほどあります。これだけの機関があって、多様な訓練をし ているということはわかったのですが、人材育成計画といいますか、どうい う人材が、どういうところに何人必要なのかというところを緻密にやってい かないといけないのだろうと思っています。企業でのニーズだけで動いてい ると、短い期間のものになってしまうのではないか。例えばIT業界などです と、あれがいいかどうかは別なのですが、スキル標準というものをつくって、 どこの人材が多いから、あちらへ動かすための努力をしましょうとか、いろ いろやっています。そういうものが、ものづくりのいろいろなところで必要 なのかなと思います。地域によってだいぶ違う部分もあるかと思います。こ の間、新聞を見ていましたら、理容、美容の施設は秋田がいちばん多いとい う話が出ていました。とんでもない数字の差があるのです。ですから、地域 の差は相当あるのだろうと思います。そういうものをどうやって把握して訓 練に向かっているかということが、1つ問題点としてあると思います。どう いう人材をどうつくるのかという研究が、どこにどういう数字であるのか、 それが教育にどう反映しているかということが、問題点としてあろうかと思 います。 いま、民間に委託しているというお話があって、就職率が悪いと 言われると専修学校としては非常に辛いのですが、実は、受講生を選べない のです。向こうから、あてがい扶持でくるのです。デュアルシステムになっ て、少し面接をする部分があって、意識を聞いて入れるようにはなってはい ますが、原則としては選べない。それでいて、3カ月コースで1カ月で辞める 人が何人かいる。これで、インセンティブも何もないのです。 非常に過酷なところでやっている。民間でも、我々専修学校と株式会社があ るわけですが、株式会社などですと、自分のところで人材派遣センターをつ くって、そこへ入れて就職率を上げてしまっているという例も出てきていま す。ですから、仕組みが全体的にまだ悪いのだろうという気がしています。 これは将来の、何回目かの議論になるのでしょうが、いまここで定着されて しまうと困るので、お話しておきたいと思います。 ○水野課長 いま、2点ほどご質問があったかと思います。1点目の、訓練の ニーズをどう把握するのかということですが、おっしゃるとおり、地域によ って、産業構造なり就業構造により大きな違いがあると思っています。機構 では、都道府県ごとに訓練の専門部会を設けていまして、そこに、機構だけ ではなくて、都道府県の代表の方、事業主団体の代表の方、民間の教育訓練 機関の代表の方々にお入りいただいて、そこで毎年その地域の訓練ニーズを 把握して、それに基づいて、どういう訓練をやっていくのかを検討させてい ただく場を設けています。その専門部会のもととなるニーズのデータについ ては、事前に機構で、ハローワークの求人・求職状況を見たり、実際に事業 主団体なり個々の企業にニーズを伺ったりしています。そういうものをもと に、専門部会で、次年度はどういう訓練をやっていくのかということを、そ の地域ごとに検討させていただいています。併せて、全国ベースでは、毎年、 訓練計画というのを立てていますので、それに基づいて訓練をやっていると いうことです。  もう1つ、委託訓練の受講生を選べないというお話がありました。離職者 訓練というのは、基本的に対象者はハローワークの求職者の方で、そこでま ず職業相談をやります。 職業相談をやって、その方の希望職種なり、それまでどんな仕事をしてきた のかという経歴を伺って、その上で、それぞれの地域の労働市場の状況を見 て、この方はこういう訓練を受けたほうが再就職は早いだろうという判断が されたら、ハローワークのほうで、受講指示、受講推薦という形で訓練を受 けていただく。制度上は、ハローワークの職業相談の中で訓練の必要性を見 極めて、訓練が必要で、しかも就職意欲の高い方を選んでお送りしているは ずなのですが、そこのところは、まだ結果として十分でなかったかもしれま せん。そこは、改めてまた徹底させていただきたいと思っています。 ○本田委員 いま、アビリティガーデンの話も出ていましたが、私は民間の 教育団体を束ねている団体ですので、国しかできないものを国がやるべきで あって、そうでないものは限りなく民間に渡してほしいと思っています。私 は、アビリティガーデンのホワイトカラーの再就職支援プログラムの討論会、 研究会にも参加した1人です。ホワイトカラーというベースがどの位置の層 を指しているのか。いま現実に市場化テストで走っているのは3カ月コース だろうと思いますが、3カ月が2本、6カ月が1本の研究会をしたのです。自分 たちとしては、6カ月コースを走らせてほしいと思っています。なぜか6カ月 が頓挫して、3カ月コースだけが現状では走っているわけです。  就職までということなので、通常の5万円にインセンティブを付けて6万円 でといったときに、民間企業が、委託訓練とはいえども、なかなか乗り切れ なかったことは事実です。なぜなら、6万円で就職まで責任は持てないとい うことだったのです。でも、研究会をやっただけでは困るから、とりあえず 私の団体からも2つの教育所にこれを引き受けてほしいと。けれども、調査 したところ、まだ定員に達していないというのは、先ほどのご説明のとおり です。最初から民間にアビリティガーデンをレンタルして、そこで委託訓練 をやっているところは、定員が充足しているのです。なぜそういう差が出て くるのかということは、まだ具体的に伺っていませんが、やはり両方の細か い数字を検討する必要がある。なぜ定員に満たないのかということです。 それと、費用的になぜ5万円がメリットなのかということです。  就職までするというのは、大変労力が要ると思います。先ほど、フリータ ー、ニートというお話が出ていました。ジョブカードをつくったことによっ て、フリーターは働く意欲は持っていますが、ニートの方々は本当にジョブ カードで就職をしていく気力があるのか。それを、どなたが、どういう機関 で、どれぐらいかけて醸成していくのか。私は、教育や国の施設だけでは解 決できないのではないかと日々思っている1人です。  先ほど住田委員が言われたように、財務諸表から検討して、利益が可能で あるようなものであれば民間にお願いするとし、これはどう考えても国の施 策でやっていただかなければならないというものも、多々あると思います。 例えば、中央職業能力開発協会で技能検定が始まっていますが、あれも、教 材の開発は国がやって、実際の試験その他については民間に委託していただ ければ、なおうまく機能していくのかなと思います。そういう意味では、国 と民間が連携を常にうまくやっていく必要があろうと考えます。 ○水野課長 最初にご意見があった市場化テストの関係ですが、基本的に、 市場化テストである以上、競争条件といいますか、比較条件をそろえるのが 原則ですので、そういうことでやらせていただいたつもりです。離職者訓練 については、仕様書上は6カ月以内で、あとは民間の事業者さんのご希望で 訓練期間を設定するということになっていまして、結果としてああいう形に なったということです。  この市場化テストは、今年度は在職者訓練だけでやっています。今年度は 本格実施ということです。モデル事業のときは、在職者訓練の中身は民間の ほうでご提案いただいて、それに基づいて募集をしたわけですが、事業者の お話を伺いますと、区役所などに募集のパンフレットを持っていっても、 「公でないので協力できない」というような反応があって、人集めにご苦労 されたということでした。そういうお話があったので、次回からは、アビリ ティガーデンの職員も一緒に行って、協力をお願いしたといったこともあり ました。そういうことで、できる限り競争条件をそろえるということをやっ ています。  今年度やっている本格実施の在職者訓練については、在職者訓練の中身を アビリティガーデンのほうでいろいろな事業主団体等と一緒に開発をして、 試行も済んで、かなり充足率の高いものを、実施のほうを民間にお願いして やっていますので、今年度は相当充足率が上がっているということがありま す。 ○草野審議官 先ほど私は、ニート、フリーターと言いましたが、底上げで 言っているのはフリーター層です。ニート層については、おっしゃるとおり、 別途の対策が必要です。従来から、地域若者サポートステーション事業とい うのが全国50カ所にありますが、ここで、ご家族も含めて、どうしていくか という相談をしたり、教育機関、福祉機関という関係機関と連携しながら、 どういう対処をしたらいいかを総合的に相談できるようなネットワークをつ くっています。特に、最近重要なのは、ご家庭に行ってお話をするというも のです。アウトリーチと称していますが、その辺をいかに充実して専門的な 視点からご相談できるかということで、専門家の養成を始めつつあります。 これは、まだ就職意識、職業意識を持つ前の段階ですので、まず生活面も含 めた相談から始めるという仕組みでやっています。  もう1つ、「若者支援自立塾」が全国に30カ所あります。これは、3カ月 ぐらい宿泊して、農作業、ワークショップなどのいろいろな作業をやりつつ 就職意欲まで持ってくるという事業をやっています。こういう施策をいかに 効果的に活用していくか。さらに、サポートステーションだけでなく、全国 にいろいろな若者支援のNPO団体などもありますので、そういうものを育て て、特にその担い手を育成していくということが今後重要だろうと思います。 おっしゃるように、別途の施策体系として展開していく必要があると考えて います。 ○青木委員(上田代理) 職業訓練を担当している者として、資料4-2にあ る「国と地方の役割分担」の関連でお話をさせていただきます。愛知県は現 在、離職者訓練として1,200人ほどの訓練を高等技術専門校でやっています。 それに合わせて、機構が500人ほどの訓練をやっていますので、全部で1,700 人ほどの訓練を実施しています。この実施に当たって愛知県はどう考えてい るかということですが、少なくとも愛知県が職業訓練、人材育成をやる場合 には、機構がやっている500人を合わせた形で考えているということです。 資料4-2の2頁にもありましたように、国と県との予算の使い方の比重を見 てみますと、都道府県がだいぶ少ないわけです。地域の職業訓練を考える場 合には機構を抜いては考えられないという状況になっていると思います。  都道府県と機構とは訓練の内容がどう違うかといいますと、一般的には、 自治体でやっているのは基礎的な訓練、機構でやっているのは高度な訓練と いう位置づけをしています。その基礎的、高度という区分をどう基準として 考えるかというのは大変難しい部分ではありますが、基本的には、基礎的な 部分と高度の部分での住み分けをしているということがまずあります。  機構が高度な訓練水準をどのように確保しているかということですが、機 構では在職者訓練に相当力を入れてやっておられまして、その分野で高度な 技能水準を確保しているということだと思います。そうした在職者訓練で培 っている高度な技能水準を、離職者訓練に活かすことで、相当高度な内容の 訓練をやっていると承知しています。そういった形で高度な分野を機構が担 い、県が基礎的な分野を担うという住み分けをやっているということがある と思います。  愛知県の場合、ものづくり産業が相当集積していまして、ものづくりが盛 んです。現在、若い人がものづくりから離れていくということが多いもので すから、ものづくりの人材育成をどうしていくかということが愛知県の中で も重要な課題になっていまして、職業訓練がその中心的な役割を担うと位置 づけています。機構の職業訓練は、県で考えた場合には相当重要な位置づけ をしているということがありますので、その辺も加味した検討が進められる ことを期待しています。最近、法人事業税の国への一般財源化とか、道路特 定財源とか、地方の声がなかなか反映できにくい部分がありますので、地方 の意見もある程度踏まえた上での見直しを進めていただければありがたいと 思っています。 ○庄山座長 ありがとうございました。 ○上甲委員 愛知県のお話がありましたので、愛媛県からも申し上げたいと 思います。  愛知県は大都市で、ものづくりの中心ですが、愛媛県は、どちらかという と地場産業等が主体となっています。まず愛媛県の事例を紹介しますと、愛 媛県は高等技術専門校を4校持っています。地方となりますと、地域の産業 のことも考えなければなりませんし、地域に立地している企業はどんなもの があるのか、その求人、求職の動向がどうなっているのかということも勘案 した訓練を行わなければなりません。  愛媛県は住友系の企業が集積していまして、そこに中小鉄鋼が中小企業で はたくさん集積しているわけですが、そこは、メカトロニクス、溶接エンジ ニアを2年から1年でやっています。今治は、日本のタオル生産の6割を占め ていまして、タオル縫製が主要な地場産業です。それと、造船があります。 そこは、繊維エンジニア、服飾ソーイング、ビジネスデザインを1年コース でやっています。それから、農林水産業主体の南予の宇和島は、製造業の集 積が非常に乏しいということもありまして、1年の木工クラフト科、短期の 介護ヘルパーなど、就職、地域のものづくり、まちおこし等につながるよう な学科をやっています。これは定員10名から30名程度でやっていますが、 地場産業が集積している限り、こういうものも維持せざるを得ないというこ とです。  私が機構に望むことは、やはり高度なものづくりです。これ以外の企業も 集積しているわけですから、そういう企業の人材を確保するための多様で高 度な設備等が必要なものづくりに力を入れてほしいということです。特に、 財政状況が非常に厳しくなっています。我々も、訓練校の整理・合理化等を 図らざるを得ないということもあります。これから、そういう中でどう地域 のものづくりを支えていくか、新たに進出する企業等の高度なものづくりの 支援をどうしていくかが大きな課題になっています。機構の役割は、そうい う意味で非常に大きなものがあると思っています。 ○庄山座長 ありがとうございました。 ○紀陸委員 いま、私どもは、雇用保険財源の中で、1,000分の3というこ とで、事業主だけの雇用保険二事業にお金を拠出させていただいていますが、 このお金が効率よく使われているかということにいちばん関心を持たざるを 得ません。雇用保険二事業については別の場面で論議をするところがあるの ですが、世の中の大きな流れが非常に早くて、雇用保険のお金を必要な場面 にきちんと使って効率を上げるということが、非常に大事な話になってきて いると思います。前の三事業が二事業になっているのですが、経営側として も、社会全体で見て、やはり雇用の安定というのがいちばん大事な話だと思 います。ニート、フリーターの方々だけでなく、世の中の流れが激しければ 激しいほど、それにおいていかれる方というのが当然出てくるわけです。そ ういう方々も含めて、アジアやヨーロッパと競争しているわけですから、日 本は、人的な質を上げるより効果的な手立てはないと思っています。 雇用保険の事業主負担の中にはさまざまな雇用政策がありますが、人材育成 にはもっとお金を充当してしかるべきだと思います。ただ額だけ増やせばい いという話ではなくて、いかに効率的に、さまざまなニーズに応えられるよ うなお金の使い方をしていくかが、非常に大事ではないかと思っています。  機構の事業は基本的に離職者と在職者と学卒者で、官と民の役割分担、国と 地方の役割分担がそれぞれ絡まっていますので、ある程度限られた財源をこ れからどうしていったらいいのか。一般財源という話も別にあるのかもしれ ませんが、事業主側から見れば、これから負担していく保険事業のお金を、 いろいろな意味でニーズを満たすような形できちんと使っていただきたいと いうのが願いなのです。そのための建設的な論議を、いかにこれから数回の 間でしていけるか。そういう観点から論議に加わらせていただきたいと思っ ています。 ○庄山座長 どうもありがとうございました。いまのお話は非常に大事なお 話で、どなたも、少なくていいと思っている方はいないと思います。いまお 話がありましたように、同じお金を使うのにも、いかにうまく使うかという ことが重要なのだろうと思います。全体量を増やすには、資源のない日本で すから、いろいろな意味でこういう部分が大事なのだろうと思っています。 これは、次回以降も、皆さん方から「こうすれば、もっと」というようなお 話をいただいて進めていければと思っています。 ○山田委員 次回からの議論のために必要となる資料についてのお願いを、 2点ほど申し上げたいと思います。1つは、資料4-2の4頁「各国における訓練 プログラムへの公的支出(対GDP比)」です。ドイツは州の支出も含めてい るので、単純に比較はできないと思うのですが、このグラフは、イギリスに しろ、イタリアにしろ、ドイツにしろ、年々減っているというところがポイ ントなのかなと思います。2003年から2005年にかけてヨーロッパ各国のGDP が急に増えたという記憶は私にはないので、おそらく意識的に減らしている のだろうと思います。ヨーロッパの国々は一体何をどうやって減らしている のかというのが次の資料でわかると、非常にありがたいと思っています。  2点目は、住田委員もおっしゃっていた財務諸表です。資料3の10頁に財源 構成の簡略版が記載されています。ここに、雇用開発・能力開発業務1,295 億円とあって、内訳がいろいろありますが、内訳を全部足しても800億円ち ょっとだと思うのです。400億円ぐらいどこかに消えている。こういう内訳 を書くときは、大体でいいので、全体像がわかるような書き方をしていただ けるとうれしかったと思います。財務諸表を出される際も、こういうところ が漏れなくあるとうれしいと思います。  雇用・能力開発業務の中では人件費が多い。教育というものは人件費の負 担が非常にかかるというのは学校の経営をなさった方ならよくおわかりで、 これは仕方ないと思うのですが、求職者等に対する職業訓練に231億円。こ れが多いのか少ないのかがちょっと判断し辛いので、1人当たりどれぐらい かかっているかという数字も出していただけるとうれしいと思っています。 離職者1人当たりいくら、在職者1人当たりいくら、大学校別いくらといっ た形で出ると、財務諸表としての有効性が高まるのではないかと思います。 ○庄山座長 ありがとうございました。これは、次回よろしいでしょうか。 ○千葉委員(栗原代理) 民間と委託部分と、切分けのところで、ものづく りとそれ以外と分けられているようですが、いま、民間でも、ものづくり関 係の教育を頑張ってやっている機関というのはたくさんあるわけです。そう いう部分との今後の協調をどうお考えになっていくのかについて、ご説明い ただければと考えていました。もう1つ、特に学卒者の部分で、ものづくり というと民間にはない部分というようなお話もありましたが、民間で行われ ているものづくり部分というものも存在しているわけです。その辺との今後 の住み分けをどうお考えになっていくのかについても、お話を伺えればと感 じました。 ○水野課長 民間のほうでもものづくり分野のいろいろな教育訓練をおやり になっていることは、私どもも承知しています。専門学校、各種学校でもお やりになっていますし、企業でもそういうものづくり分野の訓練をやってい るということもあります。企業のものづくり分野の訓練は、対象者が閉ざさ れているといいますか、ご自分の企業の従業員の方、関連企業の従業員の方、 自社の製品のユーザーの方々を中心にやっておられる。それに対して、専門 学校、各種学校のものづくり訓練は、より開かれた方々にやっているわけで す。その辺との重複は避けなければいけない。そこは地域ごとに状況が違う と思いますので、地域ごとにそれぞれの訓練の中身を細かく精査して、重複 しているものは民間のほうにお任せするということが基本だと思っています。 より高度なもの、高額な設備投資が必要になって民間では採算がとれないよ うなものは、やはり国のほうでやっていくのかなと考えています。 ○今野座長代理 抽象的なお願いなのですが、この問題を検討する場合に、 東京などの大都市圏と、先ほど愛媛県のお話がありましたが、そういうとこ ろとでは全然状況が違うのではないかと思うのです。例えば東京だけ見て判 断すると、何か間違えそうな気がします。東京だけではなくて地方も含めて 全体を見るときに、こんなことを気を付けたほうがいいということがあれば、 教えておいていただけるといいかなと思うのです。 ○庄山座長 今回も何人かの地方代表の方がおられるわけですが、厚労省の ほうでそういう意見聴取ができるような仕掛けはあるのでしょうか。 ○水野課長 おっしゃるように、大都市圏と地方とでは全然状況が違ってい ると思います。まず、教育訓練の実施主体は、大都市圏はたくさんあって、 地方はなかなか少ないということがあります。それから、雇用情勢の違いも あります。そういったものについては、次回以降、資料を用意させていただ きたいと思います。 ○上原委員 私どもの一部は北海道で仕事をしているのですが、1つは、情 報が少ないということがあります。関東圏では、いわゆるものづくりのピラ ミッドができているのですが、全然ピラミッドにならないのです。部品など は関東圏から引かなければならないということがあるし、機械のメンテナン スなども、関東圏で仕事をしている倍ぐらいになってしまうのです。運賃も 含めて、泊まりで来なければ駄目だということもある。人材育成で、旭川中 小企業大学校というのがあるのですが、やはり中心は札幌だということで、 やり取りに時間がかかる。そういう不便さといいますか、情報の質、量の部 分で、地方のほうが苦労するということはあると思います。逆に、雇用する という視点で言うと、先ほども宇和島の例が出ていましたが、人はいるけれ ども、勤め先がないということになる。企業さえあれば人は集めやすいとい う感じはありますね。 ○秋葉委員 専修学校のことを少しお話したいと思います。県の施設が悪さ をしているといいますか、いろいろなことをやっているのです。島根県では、 やめると言ったのですが、そこで働いている人がいて、その人たちを退職さ せるわけにいかないので、残してしまったという例を聞いています。次回に は、もう少し資料を集めておきたいと思います。 高知県では、テレビでコ マーシャルをして、新卒者をガザッととろうという活動をしている施設があ るという報告をいただいています。民間と協調するのではなくて民間を圧迫 している、施設を維持するためにやらざるを得なくなっている、という部分 もあるという報告をいただいています。 ○庄山座長 どうもありがとうございます。今日は第1回でしたので、いろ いろな意味で資料が不足しているところがあったかと思います。今後の検討 のために必要な資料をだいぶお願いすることになりますが、是非よろしくお 願いしたいと思います。みんなで正しく理解を共有して、あるべき姿という ものを追求したいと思います。事務局は大変でしょうが、よろしくお願いし たいと思っています。次回以降については、もし途中で疑問等があれば、窓 口にメールを送れば会議の前に準備していただけるようにすれば、より効率 的にいけるかなと思います。その辺もよろしくお願いしたいと思います。そ れでは、次回以降の会合についてのご説明をお願いしたいと思います。 ○姉崎総務課長 本日配布した資料3-2の「基礎資料」は、労働市場をめぐ る状況、能力開発、職業訓練をめぐる現状についての基礎的なデータですの で、ご説明はしませんでしたが、お時間があるときにご覧いただければと思 います。また、独立行政法人雇用・能力開発機構のパンフレットをご覧いた だくと、全体としてどんな業務をやっているのかということがわかる形にな っています。お時間があるときに見ていただければと思います。なお、第2 回目は、4月16日(水)の15時から2時間程度、本日と同じこの場所で行いた いと思います。  資料6ですが、今後の検討のために職業能力開発施設の現場を見ていただ くことが有効であろうと思いまして、職業訓練指導員の養成・再訓練を行っ ている職業能力開発総合大学校と、離職者訓練、在職者訓練を行っているポ リテクセンター関東の2つについて施設見学会を計画しています。総合大は 5月13日と20日、ポリテクセンターは5月14日と15日です。なるべく2つ行っ ていただくのがいいのですが、どちらか1つでも、ご都合が許す日程をご連 絡いただければと思います。もしこの日程が駄目なら、個別に事務局に言っ ていただければと思います。よろしくお願いします。 ○庄山座長 どうもありがとうございました。次回は4月16日ということで す。そのあと見学会等もアレンジいただいているようですので、お忙しいと は思いますが、奮ってご参加いただいて、ご理解をより深めていただくよう お願いしたいと思います。予定されていた議題は終わりましたので、これで 第1回の会議を終了させていただきます。ご協力ありがとうございました。