08/03/07 第76回議事録 第76回労働政策審議会労働条件分科会    日時 平成20年3月7日(金)    17:00〜19:00    場所 厚生労働省労働基準局第1、第2会議室 ○分科会長  定刻となりましたので、第76回労働政策審議会労働条件分科会を開会いたします。今日 は村中委員、平山委員、渡邊委員がご欠席です。今日の議事に入る前に、前回の分科会以 降新しく委員に就任されました方をご紹介いたします。資料1ということで委員の名簿を 席上に配付しておりますので、ご参照いただきたいと思います。使用者代表の委員で、日 本電信電話会社総務部門ダイバーシティ推進室長の近藤さつき委員です。今日はご欠席で ございます。  それでは、早速、今日の議題に入ることにいたします。前回に引き続いてですが、諮問 案件「労働時間等設定改善指針(案)」について事務局からご説明いただきたいと思います。 よろしくお願いします。 ○土屋企画課長  まず、今日の資料ですが、資料2といたしまして、本日諮問をお願いしている設定改善 指針の改正案についての諮問文書を資料としてお出ししております。1頁以降が実際の設定 改善指針の案という形です。その次の資料としまして参考1と記載されている資料があり ますが、これが改正の新旧対照表になっております。こちらのほうで中身をご説明申し上 げたいと思います。この資料の左側が現行の指針、右側が改正案ですが、前回2月12日に ご議論いただいたときにすでに改正案としてご提示してあった部分が黒い下線が引いてあ る部分ですが、その際のご議論等を踏まえて今回さらに修正を加えてご提示している部分 が赤字で記載している見え消しの部分です。この赤字の修正部分について順番にご説明い たします。  1頁目ですが、下から7行目ほどの「正社員の労働時間が依然として短縮していない」と いう記述につきまして、八野委員、長谷川委員から、むしろ増加傾向にあるのではないか、 というご意見がありました。ここにつきましては、年々の最近の推移を見てみますと、必 ずしも増加が続いているという状況とはいえない、そういう状況があります。この部分の 記載の趣旨としましては、正社員等の労働時間の水準が高水準にあるという趣旨を書いて ある部分であろうかと思いますので、そういった趣旨を踏まえまして、今般ご提示してい る修正としては「平成18年度においては2,024時間となっており」という部分を付け加え まして、その上の所にある平均1,842時間との比較を明確にしたという形の修正を入れて おります。なお、そこの上の部分で「1,800時間の目標はおおむね達成することができた」 としている部分についても、前回、野田委員、長谷川委員からご指摘、ご意見があったと ころですが、この部分については設定改善法、設定改善指針制定時のこちらの分科会での ご議論を踏まえてこのように記載されているものだということで、原案どおりとさせてい ただきたいと思っております。  次の2頁ですが、赤字の部分につきましては、八野委員から、憲章、行動指針が策定さ れたことについて言及するだけではなくて、憲章の中で示されている仕事と生活の調和を 実現した場合の社会の在り方、その姿というようなもの、内容についても記述すべきでは ないかというご指摘がありました。このご指摘を踏まえまして修正した箇所におきまして は、「憲章においては」以降の部分ですが、「仕事と生活の調和が実現した社会とは」とい うことで、憲章における文章を引用する形で、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じ ながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても子育て期、 中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」でありと 記載した上で、さらに憲章においては3つの社会の姿が記載してありますので、これを「就 労による経済的自立が可能な社会」、「(2)健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会」、 「(3)多様な働き方・生き方が選択できる社会」を目指すべきであるという形で盛り込んで おります。  次が3頁になりまして、1の(1)「労働時間等の設定の改善を図る趣旨」の部分です。こ の部分につきましては、紀陸委員から、この部分の表現は憲章などの表現と必ずしも整合 的ではないのではないかというご指摘をいただきました。このご意見を踏まえまして、赤 字が入っている所ですが、「我が国の社会を持続可能で確かなものとするために必要な取組 であるとともに」と修正をしております。  その次が4頁です。(4)「経営トップに求められる役割」という項目を立てていた部分で す。これについてはご指摘が3点ありまして、1点目は、経営トップ、リーダーシップとい う用語の使い方につきまして、法令上の表現として適切かどうかというご指摘がありまし た。この点については、私どものほうで確認したところ、次世代法の行動計画策定指針の 中で同じ趣旨のことについて、「経営者」あるいは「主導して」という表現もありましたの で、その表現に置き換えております。2点目のご指摘として、2行目から3行目にかけてで すが、野田委員から、「労使による自主的な取組を基本とし」という部分について、基本と しつつもではなくて、その性格をはっきりさせるために「した上で」としたほうがよいの ではないかというご指摘がありまして、そのとおりに直しております。3点目としまして、 2段落目の「その際には」の所ですが、紀陸委員から、この部分については憲章や行動指針 についても言及されていない部分なので、どうであろうかというご指摘がありました。そ の際にも、ここは取組の例示として掲げさせていただいている、というふうに私からもご 回答したところですが、その趣旨をよりはっきりさせるために、文章の整理としまして、「例 えばこれこれなどが考えられる」という形に例示であることを明確にした上で、加えまし て、「責任者を配置すること」と記載していた部分については、この責任者ということの趣 旨をよりはっきりさせるために、「役員等が指揮をし、労働時間等の設定の改善に取り組む ことなどが考えられる」と文章を整理しております。  次が5頁ですが、社会全体の数値目標について触れている部分です。まず、下から3行 目から2行目の部分ですが、「このような数値目標の内容も踏まえ」という表現につきまし て、紀陸委員から、この目標の性格からすると「踏まえ」ではなくて「参考にし」という 表現のほうがいいのではないかというご指摘があったのに対しまして、野田委員、八野委 員から、むしろ「もっと重く受け止め」という強い表現であってもいいのではないかとい うご意見がありました。このご意見を踏まえまして、この部分については原案の「内容も 踏まえ」という表現を維持しながら、目標の性格についてご指摘もありましたので、全体 としてのこの表現について「このような社会全体の目標の内容も踏まえ」と文章を整理し ております。その次の2の所の修正は、先ほどの「経営者主導の下で」ということで同様 です。  次は7頁の(ニ)です。ここにつきましては八野委員から、憲章、行動指針においても 要員の確保ということが記載されているので、要員計画の策定というよりは要員の確保と いうことを記載したほうがよいのではないかというご指摘がありました。このご意見を踏 まえまして、記載のとおりですが、「業務計画の策定等による業務の見直しや要員確保等を 図ること」と修正し、表題についても「業務の見直し等」としております。  次が9頁です。8頁から9頁にかけてロとして「労働者の抱える多様な事情及び業務の態 様に対応した労働時間等の設定」となっていますが、その最後の所、短時間正社員につい て記述を加えた所ですが、ここにつきましては、事務局としての整理として、この短時間 正社員の次の所の(フルタイム正社員)という言葉は法令上の表現としてこういう使い方 が適当かどうかということがありました。改めてここを検討しますと、短時間正社員とい う表現でその意味するところは十分ご理解いただけるのではないかということで、定義全 体を省略させていただくという整理をしたところです。  それから、ハの年次有給休暇の所の2段落目ですが、ここについては長谷川委員から、 年次有給休暇が取りにくい理由については2番目に「後で多忙になること」ということが 挙げられるのではないかというご指摘がありました。ご指摘に沿いまして、2番目の理由と して付け加えているところです。その下の修正は先ほどと同様の修正です。  次に12頁ですが、テレワークに関する記述の部分です。ここについては、前回のご議論 のときに長谷川委員からテレワークの意義などについてご質問がありましたが、改めて私 どものほうでテレワークに関する政府全体の基本的なプランとなっているテレワーク人口 倍増アクションプランの記載内容等と参照しまして、表現を整理することとしまして、ご 覧のとおりですが、「働く意欲を有する者が仕事と生活を両立させつつ、能力を発揮できる ようにするためにも、その活用を図ること」と文章を修正しております。  最後ですが、16頁のホの所です。「自発的な職業能力開発を図る労働者」についての部分 ですが、石塚委員から、短時間勤務という方法も一つの方法として考えられるのではない かというご指摘がありました。能力開発法におきましても、確かに、勤務時間の短縮が自 己啓発の一つの支援のあり方として記載されておりますので、これを踏まえまして記載の とおり追加しているところです。以上の修正点を踏まえまして今日ご諮問申し上げている ところでございます。どうぞよろしくお願いしたいと思います。なお、私どもとしては、 本日ご議論いただいてご答申をいただければ、これを踏まえまして告示という形で発出い たしまして、本年4月1日からの適用という形で考えていきたいと思っております。  もう1点ですが、前回のご議論をいただいたときに、この指針につきましては、そもそ もこの指針についての認知度が大変低い状況だという厳しいご指摘をいただいたところで す。その中で、周知の方法を工夫する必要があるし、また、こういった設定改善指針とい うような堅い名前ではなくて通称みたいなものを、検討してはどうかというご指摘もいた だいたところです。私ども事務局としましては、この設定改善指針の通称としまして、中 身がわかる表現ということも踏まえまして「労働時間見直しガイドライン」という名前で これから周知を図り、皆さんにも内容をご理解いただくようにしていきたいと考えており ます。この点につきましても、この場でまたご意見を頂戴することができればと思ってお ります。どうぞよろしくお願いいたします。 ○分科会長  それでは、ただいま事務局からご説明いただいた労働時間等設定改善指針案について、 前回からの議論を踏まえて修正したものを今日ご提示していただいていますが、それにつ いてご意見、ご質問等をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○長谷川委員  12頁の項目のテレワークについてですが、私、前回の会議のときに、テレワークに関し ての質問と少々の発言をしまして、若干の修文がされたわけですが、前回、私も意を尽く せなかった点もありますので、テレワークについて少し述べておきたいと思います。ただ、 これで修正をしてくれということではありません。1つは、今回のこの表現の中にも、在宅 勤務やテレワークによる勤務について「その活用を図ること」というふうになっているの ですが、私は、テレワークというものをどのようなものと考えるのかは、かなり人によっ て異なっているのではないかと思います。政府のさまざまなところでテレワークの促進と いうことが言われてきたのですが、テレワークについては労働時間との関係も含めてきち んと議論したという記憶が私の中にはないというふうに思っています。労働者が情報機器 を活用して、勤務時間の一部とか全部を自宅で仕事をするというのがテレワークの一般的 なイメージだと思いますが、情報機器を携帯して、事務所以外でも仕事をするモバイルワ ークもテレワークに含まれているのではないかという問題もあります。その場合には、時 間外とか休日の呼出しの問題が私どもの構成組織からも指摘されていますし、労働時間法 制と関連してこのような働き方についてどのように扱うのかということについてもこの間 指摘されてきました。  それから、テレワークの場合に、企業の情報管理の問題や労働災害や通勤災害というも のをどのように考えたらいいのかなど、まだいろいろな課題や問題が指摘されています。 そういう中で、テレワークは仕事と生活を両立させつつ能力を発揮できる、というふうに テレワークの積極的な面が書かれているわけですが、本当にテレワークがそういうものに 役立つかどうかということに関しては、私どもの中ではまだ議論をしていないしそこの理 解が不十分であります。今回、この指針の中にテレワークについて縷々書かれたわけです が、テレワークについてはもう少し議論をしていただきたいし、もう少し慎重に検討して いただきたいなという要望であります。今日やってくれという話ではありませんが、もう 少しテレワークについて労働時間も含めてきちんと議論をしたほうがいいのではないかと 思っています。  ついでにもう1つですが、全体的には、前回出された意見が修正されていますのでその ことについては事務局に感謝申し上げたいと思っています。ただ、今回いろいろ議論した のですが、私どもの中でも非常に混乱したのですが、厚生労働省の組織、機構の中で、か つてあった賃金時間課がなくなって、労働基準法に関する事項や監督指導は監督課で、労 働時間等設定改善法やワーク・ライフ・バランスなどは勤労者生活部の企画課が所管して いるのです。労働時間を担当する部署が2つに分かれていて、でもその関係は非常に密接 な関係なのです。だから、労働基準法の監督は監督課で、仕事と生活の調和みたいなもの は勤生部という、省の中では整理されているのかもしれませんが、私たちのほうからはと ても理解しにくかったわけです。この労働時間問題は、長すぎる労働時間の持つさまざま な問題をどのように解消していくのかということについて、総合的に取り組む必要がある のではないかと思います。行政組織の話になってきますけれども、トータルに労働時間を 扱う課が必要なのではないかということです。この場で、できるとかできないとは言えな いと思いますが、是非、今後検討していただきたい。要するに、労働者や使用者から見て も、行政組織名を見て、ここは労働時間をやっているのだという、そういう扱い方がいい のではないかと思いましたので、今回の指針とは直接関係ありませんが申し上げました。 よろしくお願いいたします。 ○分科会長  第1点についてはご意見として承るということでよろしいかと思いますし、第2点につ いてはそういう要望が表明されたということで事務局のほうで受け止めて今後の労働時間 に関する全体の政策について取り組んでいただきたいということかと思いますので、よろ しくお願いしたいと思います。そのほかにいかがでしょうか。 ○石塚委員  前回も議論して、その結果として要望が受け入れられ、「労働時間見直しガイドライン」 という名称を使うということなのですが、前回も私が申し上げたことですが、法自体が名 前が決まってしまっているので、その法律の名前を変えるわけにいかないのでということ でこうなるのだと思います。労働時間等設定改善指針というのは長ったらしいし、しかも 象徴的意味合いがなかなか出てこないので、そういう意味で、事務局から説明があった労 働時間見直しガイドラインのほうがまだイメージが湧きやすいので総体的にはいいのかな と思っています。  これは要望ですが、今後は周知徹底が非常に重要でありますし、しかも、憲章とか指針 という、いわば旗印をかついで実践に移すわけですからまさに周知徹底だと思いますので、 気持としては、この正式名称よりも略称のほうを正式名称として前面に出すぐらいの気持 で、周知徹底をお願いしたいということを要望申し上げたいと思います。 ○紀陸委員  私どもはいまの点に関して反対でありまして、その理由を3点申し上げたいのです。こ の長ったらしい名前云々と言いましたけれども、これを周知する方法は名前を変えること のほかに手段があるだろうと。名前を変えれば耳に入りやすくて内容が周知されるという 筋合のものではないというふうに思っています。2つ目は、ガイドラインという表現はいろ いろなところで使われておりまして、例えば行政指導の根拠になるものもありますし、さ まざまな使い方をされているわけです。要するに、これを見た一般の事業主やその他の人 たちが、このガイドラインの性格をそういうふうに表現した場合に、これは自分たちが自 ら自主的に何かをやるということではなくて、指導される場合の足がかりとなるものだと いう印象を持たれやすい。3点目ですが、この内容は、まさに3頁目に書いてあるように、 事業主等が改善の必要があれば適切に対処するために必要な事項を掲げたものだよという ことで、あくまで自主的な取組、しかも改善の必要性も自ら自主的に判断して取り組むと いうことなのです。見直しガイドラインにすると“must be”「ねばならない」という方向 で、これでやりなさいよみたいな感じを持たれる。かえって、こういう名称だとこの指針 が本来持っている性格を歪めてしまうような誤解を受ける可能性が出てくると思っていま す。以上3点から、柔らかい名前にしたら周知が図れるというものではないということだ けはきちんと反対させていただきたいと思います。 ○分科会長  使用者側からのご意見があったのですが、その点について何かございますか。 ○小山委員  紀陸委員はそうおっしゃるけれども、「労働時間等設定改善指針」とパッとなかなか言え ないのですよね。通常の場でこの法律のこと、あるいは指針のことを指したときに「労働 時間何だっけ」という、労使で話をしていてもいつもそういう会話になります。ですから、 通常の日本語として非常に使いにくい法律の名前になっていて、それを、いまおっしゃる ように、名前を変えればいいのかというのは、別に、名前を変えればいいのではなくて、 少なくとも、名前ぐらい共通にすぐ出てくるような言いやすい名前に変えるというのは世 の常識ではないかと思いますので、あまり適切なご発言ではないと思います。  もう1つは、今、ちょうど春闘の労使交渉の最中のところなのですが、これほど労働時 間の問題、長時間労働をどう抑制するかということが社会的な課題になっているときに、 経営側の皆さんも共通して長時間労働の抑制については理解しますというふうにおっしゃ っているわけで、そういう流れからして、こういう指針についてあまり消極的なご発言を 経営者団体でされるのはいかがなものかと思うのです。長時間労働を本当に抑制してワー ク・ライフ・バランスをということで労使が合意をして進めようとしているわけですから、 是非、前向きな対応をお願いしたいと思います。 ○紀陸委員  そもそもこの指針が改正されたのが、この仕事と生活の調和の憲章や指針ができて世の 中全体の雰囲気が仕事と生活の調和を見直そうという中で、労働時間の問題はどうなのだ というので目をつけたらこれがある、ではこれを直そう、という話ですよね。これはあく までもワン・オブ・ゼムの話で、そもそも労働時間設定改善法なるもの自体が周知されて いなくてこれだけが目につくということは本来あり得ないわけですよ。さまざまな労使が おられる中で、我が社で仕事と生活の調和の方針をどのように活かそうかといった場合に 労働時間の問題が出てくる。その場合には法があって、こういう指針がある。この中でど ういう点を我が社において活用したらば労使が納得できるような働き方なり生活の仕方が 実現できるか、そういうものの活用の材料だと私どもは思っているのです。だから、最初 にこれだけを立てて、押し出して、これでワーク・ライフ・バランスをやってちょうだい というのは話の順序が逆だと思っているのです。あくまで、自分たちの会社における仕事 と生活の調和を本当に実現するためにはどういう手があるかというのは、それぞれ会社に よって取組方が違いますから、その中で、いずれにしても時間の問題は重要ですので、そ の時間の問題にどうやって取り組もうかというときにこれを活用する。本来そういうもの だと思うのです。これだけ表に出して労働時間を変えてくださいよと言ったって、かえっ て話に乗れない企業がたくさん出てくるから、順序を逆にしたほうがかえって時短の改善 が進むというのが、そもそも、私どものワーク・ライフ・バランスの取組自体に対する主 張なのです。これも同じ扱いですね。これだけ立てたって進むものではないと思っている のです。やれる所はいろいろやっていますしね。まさに、仕事のやり方の見直しというと ころから入らないと、ノー残業デーを1日だけ置いたって、なかなか満足できる結果は得 られないですよね。そこまでやるためには両方の意思がそこまで行かないといけないので す。それは名前を変えるなんて話ではないと私どもは思っているのです。本当に真面目な 話でね。 ○島田委員  その名前を変えるかどうかは別にして、そもそもの話として、ワーク・ライフ・バラン ス憲章を政府がつくり、中身は別としても、労使がやりましょうといったときに、政府と して本当に社会的目標を達成するために本気になるのだったら本来は別法律か別指針のよ うなもの、たとえば年休ならばこれだ、これをやるために皆でどうするんだ、という指針 をつくるべきであって、今まであったものを小手先で改正してすませるということ自体が おかしい。本来は、労働に関する目標達成を全部やろうとしたら、それに関する新しい法 律や指針を出すべきだというのが前回私が言った話なのですが、それをしないからこうい うことになる。どちらにしても、名前の部分は、紀陸委員が言うようにガイドラインとい う名前を付ければ本当に広がるのかということはあります。「長時間労働見直しのための指 針」ぐらいの名称にしてくれればいいのですが、中身が違うのでそこまで言えないですけ ど。ただし、何遍も言うように、名前を変えるかどうかは別にして、厚労省としてこれを どれだけ宣伝できるか。そして、経営にしても労働者にしても、本当の中身の意味がわか ってもらえるかという部分がいちばん大事だと思うのです。変えたとしても、出した案内 文とかがあまりに軽い位置づけで書かれていたら意味がないというふうに私は思っていま す。だから、名前はどうにしても、これを宣伝する資料がどのように書かれるかを、先に 見たほうが議論しやすいなと私は思っています。名前だけ変えたって中身がわからない形 で書かれたら意味がないわけですから、宣伝の資料がきちんと書かれたものでなければ、 名前を変えるとか変えないという議論はない。ただ、答申としてはこの改正案のままで答 申していただければいいのかもしれないと思います。 ○野田委員  同趣旨でございます。 ○分科会長  そのほか、この件についていかがでしょうか。 ○八野委員  いま紀陸委員が言われた、名称のことではなくて、いろいろなことをやっていかなけれ ばいけないということについては賛成です。ただし、この法律やほかの法律もあって、今、 長時間労働が問題になっている。その現実を見たときに、これも通称をこのようにしてい くことで周知がされていけば、それは労使ともに良いものになるのだという考え方を持っ たほうがいいのではないかと思います。例えば、ワーク・ライフ・バランスについてかな りの有名なトップの企業が集まってやっているアンケートを見ても、これに準じたチェッ クをそれぞれ掛け、それがどのようになっているのかというのを後から追っていっている という中で、ワーク・ライフ・バランスがとれているかとれていないかという見直しを今 やろうとしているところがあると思います。これ1つだけでできるとは我々も思っていま せん。であれば、これが通称としてこのように呼ばれることによって周知が進めば、労使 が時間というものに対して、時間というものは非常に大切だ、その上で生産性を上げてい くのだ、または、男女共同参画を進めるような企業社会を作っていくのだという中におい て、いま言われたような意見でもし通称が消えるということであれば、これはいま直す意 味がないのではないか。こういうものを我々の中で労使ともに知っていく、また、この存 在を知りながら労働時間というものをもう一度見直していくというのが、今、求められて いることだと思います。そのことが、憲章や行動指針としても現れてきているというふう に考えます。ですから、そのことであまり議論するのは、良い言い方ではないのですが、 無駄なような気がします。通称は通称として認め、我々の中で周知していくということが 非常に重要なのではないかと思います。 ○紀陸委員  私どもがしつこく申し上げたいのは、仕事と生活の調和というのは、まさに、働き方の 見直しで、「労働時間短縮ありき」ではないのです。それを言うと逆に進まないという企業 さんが多い。まして、これは事業主のための指針ですから、それであっては何のためにい ろいろな憲章をつくり指針をつくり、この指針も直すのだということがかえって実現され なくなってしまうということを恐れているのです。私どもとしても、仕事と生活の調和と いうのは進めるべきだという立場なのです。  だけど、見直しガイドラインとか労働時間がすべて大事な問題で、それを直すべきもの をここで示しているのだということになると、それだけで、我が社はそんなガイドライン なんてものは要らないよとか、入り口のところで論議を止めてしまうというか、そこで認 識が止まってしまうような経営者の方々が現実にはたくさんおられるわけです。だから、 この指針をガイドラインとしたいのであれば、それこそ、設定改正ガイドラインでいいで すよ。それだったら私どもも呑むけれども、見直しガイドラインというと、まさに、労働 時間の見直しがワーク・ライフ・バランスのためにいちばん重要なのだという、何となく そういうニュアンスが出ているのでそれはかえって良くないだろうというのが私どもの主 張なのです。これは憲章あるいは行動指針の論議をしてきたときの一貫した私どもの主張 なので、この改善については同じような立場で臨まざるを得ないからこだわっているわけ でありまして、決してこういうものの内容が論議されなくていいということではなくて、 逆のことを私どもは望んでいるので、単なる名前の変更だというだけでは済まないのです。 できるだけ、個別の労使がさまざまに取り組みやすいようにするためにはどうしたらいい か、という観点から論議をしてほしいわけです。そのためにはと言っているので、そこの ところは逆にとらえないでいただきたいと思うのです。 ○分科会長  たぶん、そもそもの通称を考えてはどうかということは、私の理解では、どうしても法 律用語というのは堅くて、労働時間等設定改善指針と言われたときに一般の労使の方々で はパッと見たときに何が問題なのかということがよくわからないのではないかということ で、何か通称を考えて、そのほうが名称を見ればパッと中身がわかる。少なくとも、堅い 文字が書いてあるとそのまま積んでおしまいになるというのではなくて、中身を見ていた だける。そういう形での広報のしやすさ、あるいは周知の図りやすさということが可能に なるのではないかというように考えたのだと思うのです。  紀陸委員がおっしゃるご懸念というのも非常によくわかるのですが、他方で、法律用語 的に書かれている労働時間等設定改善指針というものが一般に周知していく上でややわか りにくいというのも確かなような気がするのです。そういうことから、この労働時間見直 しガイドラインということでもって、ある意味、中身をパッと把握できるようなというこ とで事務局のほうで考えていただいたというように思うのです。労働時間見直しガイドラ インということで紀陸委員のおっしゃるような懸念が出てくるというのが私のほうもいま ひとつわからないところがあるのですが、まさに、労働時間等設定の改善を図るという意 味では、労働時間の見直しということの言い替えのような気がするので、一言でうまく表 現しているのではないかなというように思うのですけれども。 ○紀陸委員  基本的には、こういうものの周知を図るときにはいろいろな工夫をすべきだというのが 先にありきで、名前を変えたからそこでわかりやすさが増えるというものではないですよ ね。見直しガイドラインというと、かえって逆に誤解を受ける要素が増えるから私どもは 反対です。どうしても名前にこだわるのだったら、設定改善ガイドラインでいいではない ですか。それよりももっとほかにやるべきことは、こういう堅い文章というか、そういう ものを見慣れていない人がたくさんおられます。だから、この内容をどうやって噛み砕い て周知をするか、そういう努力をするほうが先で、いまここでこの名称、副題についてと やかく言うことに時間を費やすのはそんなに意味のあることだと思っておりません。その 前に、噛み砕いてどういう内容をきちんと説明したらいいのか、そっちのほうに時間を費 やすのが先にありきだと思います。 ○分科会長  ただ、逆に言うと、いちばんタイトルからまず噛み砕いて説明するのがいいのではない かという、そういう意味での周知の工夫なのではないかと思うのです。 ○紀陸委員  だから、私が申し上げたように、これが行政指導の足掛りになるというふうに誤解を受 ける要素があるでしょう。そういう指導はありますよね。ガイドラインというのは、実際 問題として行政指導の根拠になるものがたくさんあるでしょう。これもそうなのかと思う 懸念はありますよね。 ○分科会長  ただ、逆に言うと、指針という言葉でもいろいろな意味として使われているところなの で、ガイドラインという言葉を使うと誤解を受けるということでもないように思うのです。 ○紀陸委員  でも、一般的にそういう印象を持っている人が多いのではないですか。この中には事業 主等が対応するためのあれだというように書いてありますが、ここまで読んで内容を理解 する人はおられませんよね。言葉だけで全体の印象を評価する人が多いから。しかも、ガ イドラインの場合に、そういう言葉を使うと行政指導の根拠になるというやり方のほうが 過去のいろいろな例として多かったと思うのです。そういう意味で、こういうものの間違 った印象を持たれかねないのではないかということを申し上げているのです。 ○分科会長  指針でも同じなのではないかという気がするので、指針とガイドラインでそれほどに大 きな差があるかどうか。 ○紀陸委員  見直しガイドラインというのは、こっちの方向へ行きなさいよという感じで受けとめら れてしまうのではないかという懸念があるということです。 ○分科会長  そちらのほうですか。見直しという言葉に問題がある。 ○紀陸委員  両方併せてです。だから、どうしてもというのならば設定改善ガイドラインでどうでし ょうかと言ったのはそういうことです。 ○田中委員  たしか、前回の委員会のときに労側の委員から非常にわかりやすいご説明をいただいて 私自身も非常に腑に落ちたのですが、この行動憲章が出て、これをいろいろな形で実現し ていくのだと。それの1つはこれですという、ステップ・バイ・ステップで、できること からやる。それがこの1つですと。私は非常にわかりやすいと思ったのです。この行動憲 章も、正直、それほど企業に浸透しているものとは言えないと思うのですが、この行動憲 章ができたからまずこれが変わりますと。次にこういうところも変わりますと。次世代法 なりもまた変わってくるかもしれませんが、これも変わりますと。こうなってきたときに 初めて労働時間設定改善指針というのがあって、これが改正されるのだと。この行動憲章 を受けて改正されるのだと。  今までは確かに覚えにくい名前ではありましたが、こういう労働関係をやっている使用 者側の者には、全部理解していなかったにせよ、それなりに頭にあった法律、指針があっ て、それがある方向にギアチェンジ、あるいは少しアジャストメントを図っているのだと いうことがはっきりわかるのだと思うのです。これをもし労働時間見直しガイドラインに すると、確かに頭には入りやすいのですが、知らない人から見たらまた新しい法律ができ たのかなと。憲章ができて、また新しい法律ができて、設定改善何とかというのはなくな ったのかなと。単純に言うとそういう構造になっていて、かえってわかりにくいのではな いか。  私は名称のところはそれほど強いこだわりはなくて、わかりにくいというのは賛成なの ですが、法律の名前が変えられない以上は、労働時間見直しガイドラインという新しいも のができたかのような印象を持つよりも、これからほかの法律なりほかの指針なりも変え ていく第一歩ですよという意味で、この名前は残したままでこれを改正するのだというこ とをきちんとPRしていただくほうが、これだけではないですから、使用者側には頭に入っ ていくのではないか。そういう意味で、紀陸委員が先ほどからおっしゃられているいろい ろな観点はあると思うのですが、素直に考えると、素人的な考えで申し訳ないのですが、 今までのものが改正されたということをきちんとPRする。そして、ほかのものもこれから 改正されるポイントはこんなところがありますよと、ここでもう一度行動憲章に遡及する というやり方のほうが遡及力が強いのではないかと考えております。ですから、この名前 はこのままで、PRの仕方で非常に難しいご苦労をかけるところがあるかと思いますが、変 えないことの意味というのもあるのではないかと私自身は考えております。 ○荒木委員  労働時間について考える場合に、現在、労働基準法という、我々の分野で言うとハード ローというのですが、違反をした場合には罰則や行政監督がかかる、そういうハードロー で規律する部分があります。この労働時間設定改善法というのは、ソフトローというので すが、違反に対して直接の罰則や監督が及ぶというものではありません。しかしながら、 この設定改善法は事業主に対して労働時間設定改善を講ずるような努力義務、努めなけれ ばいけないという義務は課しているわけです。これは、直接、罰則で担保されるものでは ないソフトローであるだけに、これをどう実際に世の中に浸透させていくかというのは非 常に大事だと思っております。そこで、今回、この法律自体も指針というものを作って、 どういうことをすればこの努力義務を果たしたことになるのかというのを定めているわけ ですが、それが労働時間設定改善指針ということだとなかなかピンとこないではないかと いうご指摘が前回ありました。私も、確かに、設定改善というのはどういうことをすれば いいのかというのはピンとこないだろうという気がいたします。何か言いやすいニックネ ームを付けたほうがいいのではないかということを、私も前回も感じたところです。  今回、労働時間見直しガイドラインということが出てまいりました。いまご指摘の点は、 見直しというのは非常に強すぎるのではないかという経営側からのご指摘だと思いますが、 もともとこの労働時間設定改善法はソフトローであるということを考えると、その努力義 務ということについて事業主のほうでしっかり考えていただく。ある意味では、ハッとし ていただくような指針であることも重要ではないかという気がしております。これは労基 法とは違うそういう法律のための指針であるということを踏まえると、ある意味では、な るべく遡及力のあるような名前を付けていただくことが必要かなと考えております。 ○分科会長  ご議論がいろいろあって、ちょっと難しいのですが、私としては使側の議論、ご懸念と いうのもわからなくはないのですが、要するに、もしこれをこれから周知するとすれば、 今回設定改善指針を改正してこういう新しい内容になりましたということと併せて、労働 時間見直しガイドラインという愛称でこれから呼ぶことにしますという、そういうことに なるのだと思って、労働時間見直しガイドラインというものを新しく作りましたという話 で周知していこうということではないのだと思っているのです。いま荒木委員もおっしゃ いましたし、先ほど私も申し上げたところですが、ある程度パッと見て内容がわかって、 労使の方々で受入れ、理解してもらいやすいというところで、愛称というか、通称を考え てというのは、まさに、周知の方法の工夫の一つであるという理解で私としても考えてい たのです。そういう意味で、今後の設定改善指針を新しくバージョンアップして、それを 周知していく上でこの通称というのは必要ではないかと私自身は思っておりますので、今 日、事務局からご提示いただいた労働時間見直しガイドラインということで通称を用いて、 それを一つの手段としながら周知を図っていく。決して新しいものを作ったのではないと いうことはその際にご注意いただいて、広報においても呼びかけていただくということだ と思います。そういうことでもって、ご異議はあろうかと思いますが、使側としても受け 入れていただければと思います。 ○紀陸委員  いまの荒木委員のお話は、まさに、改めてこの法律をなぜ設定や改善ということで使っ ているかということですよね。設定の中には、労働時間の内容にいろいろなものがあるわ けです。だから、私もこの法律本文はあれですが、ここで有給の組み方からさまざまな業 務のやり方なども入っているのでしょうけれども、切り口としていろいろなものがあって、 それの結果、トータルで働き方の改善が実現できるということを狙っているわけですね。 要するに、我が社において労働時間の見直しが必要だというような、どうも「結論先にあ りき」のための論議をここでするための材料を提示するのだというようなことをこのガイ ドラインが示しているようで、かえって逆に、この法が設定を入れている趣旨に悖るので はないですか。この法律はそこまで要求しているわけではないのでしょう。見直す必要が あったらば、その場合に手伝いましょうという法律ですよね。 ○鬼丸委員  今までの論議を聞いていて私なりの印象なのですが、もともとの指針の題名が改善とい う言葉なのです。改善という言葉は、改めて善くするということですが、見直しというの はどういう方向づけをさせているかというと、必ずしも見直しというのは、日本語として 紀陸委員がご心配になっているような色合を持っている言葉だとは思わないのですね。見、 直す、ということですから、どっちの方向かというのは中身を読まなければわからない話 ではないかというように聞いておりまして、紀陸委員はこの中身をあらかじめわかってい らっしゃるから、こういう方向なのだという、それを“must”とおっしゃっていましたが、 そう受けとめていらっしゃるだけであって、この見直しという言葉は、本当に労働時間を 労使でそれこそ見直そう、考え直そうという意味だと私は受けとめたのです。日本語とし てそのように受けとれませんか。むしろ、私の印象としては設定改善という言葉のほうが 強いと思われるのですが、いかがでしょうか。 ○紀陸委員  語感の問題でしょうけれども、どうも私の印象としては“must”のほうが強いのです。 ○鬼丸委員  見直しは“must”ですか。 ○紀陸委員  ええ。この3頁の「多様な働き方に対応したものへ改善することが重要である」と、こ れがこれですよね。その場合に、個別の労使が、我が社の中でどういう問題があるのでし ょうか、というところの論議から始まりますよね。 ○鬼丸委員  しかし、それは中身の問題であって。 ○紀陸委員  いやいや、これを実現するために個別企業の行動としてです。労使として行動するとき はまずそこから始まるわけです。その場合に、ここの所は我が社は見なくていいねとか、 さまざまな対応がありうるわけです。見直すための指針というと、見直さなければいけな いというのを無理やり押し付けるようなニュアンスがこの中にあると受けとられる懸念が あるという、そういうことを言っているのです。 ○廣見委員  私は、基本的にはいま分科会長がおっしゃっていただいたことに全く同感なのです。使 用者側の委員がおっしゃっておられる気持はわかるのですが、憲章が出て、行動指針が出 て、そういうものの流れの中でいま何をしようかと考えてみると、それぞれの職場では少 なくとも何かの改善を図っていこうとすれば、これは鬼丸委員もおっしゃったのですが、 その前提として、当然、見直しがある。何も見直さないで改善がポッと出てくるわけのも のでもないと思いますし、少し見直しを全面に出しすぎて、ともかく見直してくれという ことがインパクトとして強すぎるのではないかという恐れのほうを感じておられるのかな と思ってお聞きしていたのです。しかし、こういう流れの上に立ってみると、いま分科会 長もおっしゃったように、別に、これが今までのものと違ったガイドライン、あるいは違 ったものを出すというわけでもありませんし、労使が一つの話合いの場を持ちながらこの 方向に向かって努力しようというときでありますから、いまのようなご心配やご懸念はあ るにしても、心配は心配として、大きな立場からこの略称ぐらいは呑んでいただけたらな と。そういう分科会長のお話でもありますし、私も、何とかそういうことでご了解いただ ければありがたいのではなかろうかなと思います。 ○高尾委員  初めて発言して申し訳ないです。的外れかもしれませんが、労働時間見直しというと、 労働時間さえ見直したらいいのかと。要するに、書いてある内容は、例えば目標の所もそ うですし、労働生産性を上げるとか、労使が100%目標として話合いをしましょうとか、か なり内容が深いのです。たぶん、紀陸委員が言われているのは、いろいろなこういう施策 をとったその結果として労働時間が短縮される、そのためには改善をしないといけない、 こういうことを言われているのだろうと思うのです。私自身、聞いていていちばん心配し たのは、それならば労働時間だけを見直したらいいのかと。これはちょっと違うのだろう という気がして、さっきからどういう妥協点を見出したらいいかと思うのですが、労働時 間等という「等」が消えてしまっているわけです。改善というのは、労働時間もあるでし ょうけれども、結果として出てくるものとしては生産性の向上もあるわけです。だから、 それは一つに労働時間だけに見直しというのは気にはかかります。 ○分科会長  1つ案を出していただいて、労働時間等見直しガイドラインということでお考えを出して いただきましたが、私のイメージとしては、使側のほうでおっしゃっていた設定改善とい う言葉にこだわる趣旨はよくわかるのですが、逆に言うと、おそらく、いちばんのわかり にくさはこの設定改善というところにあって、事務局としても苦労したのはこの設定改善 という言葉をわかりやすい表現にどう変えるかというところだったのではないかと思うの です。私個人としても、設定改善という言葉自体が、ある意味、ややテクニックな表現に なっていて、紀陸委員がおっしゃるように、非常に幅広いものがそこに入るのだというこ とを表現していることは確かなのですが、一般には一目ではわかりにくい部分がある。そ ういうところから、設定改善というものをひっくるめる一言で表現するものとして見直し というのが出てきたのかと思います。それで、語感として「等」が入るとウウンッという 気はするのですが、使側のほうでそういう提案を出していただいているのですが、長谷川 委員はいかがですか。 ○長谷川委員  そもそもの名称を変えるというのだったらこういう議論をしてもいいのですが、そもそ もの名称は変えなくて、もう少し言いやすいものにしようという話ですよね。例えば、日 本労働組合総合連合会を連合と言うという話と同じであって、日本労働組合総合連合会を 別の名前にしようという話ではないのです。私もいつもこの指針のことを「労働時間、何 と言うんだっけ」と言うのですが、もっと言いやすいようにしましょうということですか ら、私は労働時間見直しガイドラインでいいかなと思います。何か、これでも嫌なのです が、もっと言うと、過労死撲滅のためのガイドラインなどの通称にしてはどうかと労側は 本当は言いたいのですよ。そうでなければ仕事と生活の調和実現ガイドラインとか、本当 はそうして欲しいのですよ。でも、それはあえて難しいだろうなと思っているのです。労 働時間見直しガイドラインとして、見直しをするというのは、ここにいる人たちは労使交 渉のプロフェッショナルのような人たちですが、労働時間を見直すときに労使交渉では「労 働時間を短くしましょう」だけで議論をするはずは絶対にないわけで、そのときに、仕事 の仕方をどうしましょうか、どうやったら能率よく効率よくできるようになるのか、要員 配置をどうしようかとか、そういうことを議論するわけですよ。それは労働時間と必ず付 いてくる話なので、事業所に行けばそういう話です。ただ、世の中に向かったときに、労 働時間等設定改善指針というと、「等」は言いにくいことは言いにくいのです。紀陸委員の ご心配事なんていうのは中身を見ればどうってことないわけで、私は本当はワーク・ライ フ・バランスをもっと書き込んでほしいと、思っているわけです。それは過ぎたことだか ら言いませんが、労働時間見直しガイドラインは言いやすいのではないですか。「等」を入 れると、また霞が関がもっと指導をするのではないかとかえって思ってしまいますからね。 ○浦野委員  パート労働法もそうだと思うのです。本当は正式な名称があって、パート労働法という 別称があって、別称があるお蔭で非常にいろいろな所で4月1日の改正法施行ということ で取り組まれている。正式な名称は「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」と いう言葉なのですが、略した名称の中には「等」が入っていないのです。パート等労働法 という名前では語呂が悪いということもあるのではないでしょうか。等を入れない方がす んなりと受けとめられると思うのですが、いかがでしょうか。 ○分科会長  労側の意見もわかるのですが、使用者側のほうで歩み寄っていただいているということ もありまして、「等」を入れるということであれば歩み寄っていただけるということですが。 ○長谷川委員  それは本当に見映が悪いし語呂が悪いのでやめたほうがいいです。私は使側の方がなぜ こだわっているのかよくわからないのですけれども、中身でこだわられるのならばわかる し、本当に労働時間等設定改善指針の名称を変えるというのだったら議論の意味もあると 思うのです。正式名称は、これでもいいと思ってないのですけどね。 ○分科会長  使側から最後に何かご意見ありますか。 ○紀陸委員  歩み寄ったところでというその座長の裁定で了解しました。 ○分科会長  では、双方いろいろご意見があろうかと思いますが、労働時間等見直しガイドラインと いうところで歩み寄っていただいて、それを通称に用いるということでご了解いただけれ ばと思います。座長の不手際で、この件について非常に時間をとってしまいまして申し訳 ございませんでした。まだ時間がありますので、中身について、特に先ほど事務局からご 説明いただいた修正点についてご意見等があれば伺いたいと思います。 ○鬼丸委員  方向が全然違ってしまうのですが、これは単なる今回の答申にどうこうということでは ないのですが、特に少子化の問題などを考えると、今回のガイドラインというのは女性に とってもとても大きな問題だろうということなので、少し事務局のほうにご提案したので すが、憲章そのものをいじることになるので難しいと言われたのですが、2頁の赤い部分で す。気持として「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働く」という所に、国 民一人ひとりというのは男性も女性もという意味だと思うのですが、女性も自分の仕事に やりがいや充実感を持って働くような社会にしてほしいという意味を込めて、「性別の如何 を問わず」という言葉をここに入れるか、あるいは総論的な所に入れていただけないかと いうご提案を申し上げたのです。ここの解釈として、国民一人ひとりという中に女性も男 性と同様に仕事に生きがいを持てるようにという意味を込めていただきたいなと。解釈で そういうふうに持っていただければというような気持を込めて、どこかに入れていただけ ないかなという要望を持っております。もし入らないのであれば、次回、こういうガイド ラインをいじることがあればそういうことを一言入れていただければという希望を持って おります。 ○分科会長  確かに、おっしゃる趣旨もわかるのですが、ここの部分はワーク・ライフ・バランス憲 章をそのまま持ってきている部分なので、手を入れることはちょっと難しいかなと思いま す。それと、明確には書いていませんが、「国民一人ひとりが」となっていますので、当然 のこととして男性も女性もということであろうと思いますので、鬼丸委員のおっしゃった ご趣旨は入っているという理解で特に問題はないと思います。 ○原川委員  質問ですが、7頁の(ニ)の業務の見直しということで、そのいちばん下の所に「要員確 保等を図ること」とあります。前は、「要員計画の策定等により業務の見直しを図ること」 と。比べると、1歩踏み込んだような、要員確保を図れよというような言い方に聞こえるの ですが、ご承知のように、中小企業の場合には、最近、多能工化とよく言われるように、1 つの職種を1人でやるのではなくて、複数の人である程度補えるように業務配置をすると いうことがあります。要員確保というところで、あたかも人を増やせというようなニュア ンスもあると思うのですが、これは合理的に多能工的な働き方をするということも含めて の要員確保と解釈してよろしいでしょうか。 ○土屋企画課長  いまご指摘のあった点ですが、先ほど少し触れましたように、ここは前回に八野委員か らご指摘があったことを踏まえて修正をしたところです。もともと行動指針の中で「企業・ 働く者の取組」という項目が立てられている中で、「健康で豊かな生活のための時間の確保」 という小項目がありまして、この項目の中に、行動指針の表現ですが、「労使で長時間労働 の抑制、年次有給休暇の取得促進など、労働時間等の設定改善のための業務の見直しや要 員確保に取り組む」ということで、行動指針の中で業務の見直しと併せて、もう1つの選 択肢として要員確保ということが書かれているという前提がありましたので、今回それを こちらの設定改善指針にも反映したという形です。いま原川委員がご指摘になった点です が、多技能工等々の活用という面では、それは業務の見直しのほうに該当するのかもしれ ませんが、いずれにしても、いろいろ見直しをしていく中で、業務の見直しや要員の確保 を図るという意味で選択肢として並べて提示をしているつもりですので、そのようにご理 解いただければと思います。 ○分科会長  趣旨としては、おそらく、ここは業務の見直し等というところで、より効率的に業務を 処理できるようにするという観点から、業務の見直しや要員確保等を図るということであ ると理解しますので、原川委員がおっしゃったようなことも含めてということで、より効 率的な作業ができるようにすると。それによって余裕を生み出して労働時間の設定等が改 善できればよろしいのではないかという、そういう趣旨だと理解していただければよろし いかと思います。 ○原川委員  わかりました。 ○分科会長  他にはいかがでしょうか。特にご発言がないようでしたら、当分科会としましては本指 針案について妥当と認める旨の報告を私のほうから労働政策審議会の会長宛で行うことに したいと考えておりますが、それでよろしいでしょうか。 (異議なし) ○分科会長  ありがとうございました。それではそのようにさせていただきます。それから、報告文 ですが、これについては私に一任させていただくということでよろしいでしょうか。 (承認) ○分科会長  ありがとうございます。では、そのようにさせていただきます。それでは、最後に青木 局長からご挨拶がございます。 ○青木局長  ただいま労働時間等設定改善指針の改正案につきましては妥当というご報告をいただき まして、誠にありがとうございます。これは、昨年の12月に、仕事と生活の調和憲章、ワ ーク・ライフ・バランス憲章、そのための行動指針が策定されまして、その取組を強化す るということであります。これをその取組の大きな柱の一つとして考えております。  なお、いまご議論いただいた労働時間等見直しガイドラインというニックネームも、私 どもとしては最大限活用しまして、役所が、使用者側の皆さんがご懸念になったようなこ ともないように、啓発していくのは当然でありますが、使用者の皆さん方や労働者の皆さ ん方もまず自分たちの中でより良いものにしていこうということで、そういう意味でこう いうガイドラインができているのだということを、この趣旨も含めてよく周知にご協力い ただいて、ご懸念のようなことがないようにしていっていただければ大変ありがたいと思 っております。  その指針の中身について、私どもとしても十分に周知してまいりますが、そういうこと でできるだけ努力をしていきたいと思っております。引き続き、委員の皆さんにおかれま しても多大なご支援を賜わりますようよろしくお願いいたします。 ○分科会長  これをもちまして閉会したいと思います。なお、議事録の署名ですが、これにつきまし ては労働者代表は石塚委員、使用者代表は高尾委員にお願いしたいと思いますので、よろ しくお願いいたします。それでは、どうもありがとうございました。 照会先:労働基準局勤労者生活部企画課企画係(内線5353)