08/02/20 第36回議事録 第36回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会 議事録 1 日 時 平成20年2月20日(水)10:30〜11:30 2 場 所 経済産業省別館1036号会議室(10階) 3 出席者 [委 員] 市川委員、市瀬委員、伊藤委員、臼杵委員、            高橋(均)委員、高橋(寛)委員(代理:勝尾氏)、            布山委員、松本委員、宮本委員、室川委員、山川委員       [事務局] 氏兼勤労者生活部長、吉本勤労者生活課長、            田尻勤労者生活課長補佐 4 議 題 (1)一般の中小企業退職金共済制度における支払備金の計上方法の見直しについて (2)一般の中小企業退職金共済制度における予定運用利回りの見直しの検討について 5 議事内容 ○伊藤部会長 それでは、定刻になりましたので、第36回労働政策審議会勤労者生活 分科会中小企業退職金共済部会を始めさせていただきたいと思います。本日は、小林委 員、西村委員、鈴木委員、高橋寛委員、林委員が御欠席でございます。ただ、高橋寛委 員につきましては、代理として、日本労働組合総連合会労働条件局の勝尾文三さんが御 出席となっておられます。よろしくお願い申し上げます。  本日の議題ですが、2つございます。前回からの課題でございました「一般の中小企 業退職金共済制度における支払備金の計上方法の見直しについて」、事務局からお考え を聞きたいということと、「一般の中小企業退職金共済制度における予定運用利回りの 見直しの検討について」にあたりまして、皆さん方の御意見をあらかじめ頂戴したいと いう2つでございます。  それでは、まず、前回から宿題となっておりました議題1の「一般の中小企業退職金 共済制度における支払備金の計上方法の見直しについて」、事務局から説明をお願いし たいと思います。では、お願いします。 ○吉本勤労者生活課長 それでは、資料にしたがいまして、説明申し上げます。まず、 資料1、支払備金の計上方法の見直しについてです。前回の部会においては、一般中退 におけるいわゆる未請求の退職金の問題について報告をさせていただき、いろいろ御指 摘を頂戴いたしました。いま、それも踏まえて、来年度から始まる、中期目標、中期計 画の内容を検討しているところでありまして、その内容は次回、報告して御議論いただ きたいと考えています。それに先がけて大変恐縮なのですが、その中の1つとしてあり ました未請求退職金の取扱に関わる会計上の処理について、今年度の決算見込みを計算 する際に、この会計処理が前提となることもあるので、ちょっと先立ってこれだけ説明 させていただく次第です。よろしくお願いいたします。  まず、現状の取扱についてですが、法令上の規定については、中退法33条で、いわゆ る時効は5年という規定があります。ただ、実態としては退職後5年の時効期間が経過 した後も、請求があれば支払をしているということで、平成18年度の支給実績は4億円 余りとなっております。また、会計上の取扱については、その時効までの間は、支払備 金として負債のほうに計上しているわけですが、時効期間を経過したものについては、 その支払備金(負債)から除外して収益に回しています。もちろん、請求があった場合 には費用として支払っているということです。その結果として、時効によってその収益 化している未請求の退職金の額が平成18年度末現在で365億9,000万円あるという状況で す。  今後の取扱ですが、これについては前回も説明しましたが、総務省の勧告の方向性な どにおいても、今後、その未請求の退職金の各請求勧奨を積極的に取り組んでいくこと になったときに、その支払いに必要な見込額を算出して、支払備金に再度計上するよう にといった指摘がなされており、それを受けて私どもとしても取扱を変更したいという ことであります。  そこで、見込額をどのように算出するかということですが、いま、366億弱あるわけで すが、そのうち、請求が予想される額ということで時効後に実際に請求があった割合と いうのは、過去の実績から調べることができます。それが、約18%弱であります。それ は、いままでどおりやっていても、そのぐらいの率は時効後に出てくるだろうというこ とであります。ただ、今後、積極的な請求勧奨をしていくということですので、その政 策効果を考えて、それは今回、3.5倍程度を見込んでいますが、請求が予想される額から すでに請求があり支給した額を差し引き、それに政策効果を乗じて、結果として約77億 円程度の額を再度支払備金に計上し直すといったことで処理をしたいと考えております。 以上でございます。 ○伊藤部会長 ありがとうございました。ただいまの説明について、皆様から御質問、 御意見等をお願いいたしたいと思います。どなたからでも、どうぞ。 ○宮本委員 いま、提案された内容は会計上の問題ではありますが、前回の部会では、 今後取り組む対策で予定しているものと検討しなければならないものに分けて提示があ りました。そこには、積極的に事業主から住所等の連絡をもらうということでありまし た。これは、また後ほど述べますが、いまの会計処理上の備金の計上としてはこれでい いのかもしれませんけれども、やはり、366億円にのぼる未請求については、できる限り 多くの未請求者に対して、ここに積極的な請求勧奨という一言がはいっています。した がって、会計上処理とは少しはずれますけれども、さらに積極的な請求勧奨を具体的に 立てていただいて、少しでも多くの方々に請求がなされるように努力をお願いしたいと 思っております。 ○伊藤部会長 御指摘のことは、前回もいろいろ御議論いただいて、そうしたお話、御 意見も事務局でも承っているところだと思います。おそらく、そのような請求勧奨等に よって、この未払事案の解消に向けて努力をすることは、これからもいろいろな対策を 講じて中期目標・中期計画の中でもその辺は触れられてくるのだろうとは思いますが、 その方向性について事務局からちょっとお願いします。 ○吉本勤労者生活課長 詳しくは、恐縮ですが、また次回に改めてさせていただきたい と思いますが、いま考えていますことは、時効になっている未請求の部分についてはす べての対象の方に調査をすべく努力をしていきたいと考えています。ですから、77億円 で十分だと考えているわけではもちろんありません。一応、会計上の処理の見込みとし て、あくまでもそのような数値を算出しているということです。また、未請求の退職金 もそうですが、これから新たに時効になるような方を発生させないようにということで、 この間お話がありました住所の把握をあらかじめどのようにしておくかという観点につ いても、いま、それに対する対策を検討していますので、次回報告させていただきたい と考えております。 ○伊藤部会長 よろしいですか。 ○宮本委員 はい、分かりました。 ○伊藤部会長 はい、どうぞ。 ○高橋(均)委員 確認なのですが、実際には時効後も請求があったら支払えというこ とですので、会計上の処理については総務省の勧告に沿って措置されることには特段異 議があるわけではありませんが、前回もいま話があったように、既に未請求が発生して しまった部分の追跡措置の問題と今後未請求を発生させない手だてをどうするのかとい うことがあります。いろいろ検討していることはいいのですが、いつの段階でその検討 の具体的な中身をここに提示されるのか、あるいは別のところでされるのかは分かりま せんが、ここの場に提示されるとするならば、いつの段階で提示されるかについて、次 回とおっしゃっているので、3月何日かですね。 ○吉本勤労者生活課長 いまのところ、3月11日に予定していますが、そのときに報 告したいと思います。ただ、手続上の話だけ申し上げると、来年度から始まるこの独法 の中期目標・中期計画については、最終的には年度末に決定されます。その決定の手続 として、独立行政法人の評価委員会の審議を経て決定されていくという運びになります。 ○伊藤部会長 よろしいですか。 ○高橋(均)委員 はい。 ○伊藤部会長 ほかに、どうぞ。 ○松本委員 会計上の処理は、このような形が妥当であると、私も思います。また、今 後の対策としては、先ほどから出ている5年間過ぎた方への支払を進めていくという部 分なのですが、今後、そのようなことを発生させないために、いまもお話に出たように、 未請求の方がなぜ未請求になったかという原因をきちんと把握した上で、それに対する 対策を、是非、お願いしたいと思います。 ○吉本勤労者生活課長 時効後、請求が上がってきた時点で、これまでも一応理由は書 いていただいていたのですが、より詳しくお聞きするような形で、定量的な分析ができ るようにしてまいりたいと思っております。 ○伊藤部会長 はい、どうぞ。 ○臼杵委員 1点確認させていただきたいのですが、この支払備金は77億円計上される という理解でよろしいのでしょうか。いままでだと、先ほどおっしゃっていた18%弱が 67億円ぐらいだと思うのですが、77億円の計算の根拠はどのようになるのでしょうか。 ○吉本勤労者生活課長 特に資料を用意しなくて恐縮でしたが、いままで時効処理をさ れた退職金の累計総額では413億円です。その内の18%弱ぐらいが過去の実績から時効後 に請求があるということなのですが、その内、既に52億円については請求があったとい うことであります。結局、その21億円がいままでどおりやっていても今後出てくる可能 性がある額として残っているということになります。その21億円に、先ほど申し上げた 政策効果として3.5倍強の効果を乗じて、後は、平成19年度末の見込額も推計して加え て、77億円という額を出しています。 ○臼杵委員 そうすると、あくまで見込みだと思うのですが、413億円に対して18%弱あ って、その内の52億円が既に請求されていて、残りが21億円だということですね。21億 円に対して、さらに3.5倍されたということですね。そうすると、努力によって新たに請 求があると考えられるのが73億円ぐらいということになるのですか、21億円の3.5倍とい うことになると。 ○吉本勤労者生活課長 21億円は、これまでどおりやっていても出てくるであろうとい うことですので、その残りの部分が政策による部分というように考えたらいいのではな いかと思います。 ○臼杵委員 細かい話ですみません。ですから、21億円の3.5倍が政策部分ということで すね。 ○吉本勤労者生活課長 21億円はもともと出てくる部分ですので、それにプラスされる 部分としては2.5。 ○臼杵委員 2.5倍ですか。50億円ぐらいが政策の。 ○吉本勤労者生活課長 はい。 ○臼杵委員 私が伺いたかったことは会計上の目標見込みは、77億円を支払備金に新た に積み立てて、新たな請求勧奨を起こすことによって、その意味では50億円ぐらいが見 込めるだろうと。ただ、それは、あくまでも会計上の見込みであり、先ほどからいろい ろお話があるように、仮に、これで支払備金がこれだけだと、それ以上に請求がくれば、 当然、会計上はコストが出てくるわけですけれども、その辺はお構いなくというか、当 然、積極的に勧奨されるという理解でよろしいですか。 ○吉本勤労者生活課長 そういうことでございます。また、政策効果をどのように見積 るかについては、私どもなりの算出根拠はありますが、ただ、これからの話ですので、 これからどのような政策効果が出てくるかによっては、もちろんこの額を見直しするこ とも将来的にはある話だと思っております。 ○臼杵委員 それと、もう1つお願いです。別の企業年金のある組織で同じような未払 の問題があって、そこで少し議論したことがあるのですが、やはり、どうしても勧奨す るには、いろいろ調べたり、手紙を出したり、どこかで広告を出したりなどの費用がか かるのですね。そのようなことも含めて、積極的に、ある程度出していくのだと思うの ですが、それらも計画の中に入れていただきたいと思います。 ○吉本勤労者生活課長 はい、分かりました。 ○伊藤部会長 ほかにございますか。もし、なければ、ただいま臼杵委員からもお話が あったように、会計上の支払備金の計上方法としてはこのような形で、ただ、政策努力 としての請求勧奨と今後の発生防止というのは、まだこの会計上の支払備金の額が目標 になるわけでもありませんので、そのような前提で、事務局のこのような見直しの案に ついては、当部会として了解するということでよろしいでしょうか。                   (了解) ○伊藤部会長 それでは、御了解いただいたということで次の議題に進ませていただき ます。2番目の議題ですが、「一般の中小企業退職金共済制度における予定運用利回り の見直しの検討について」、皆さん方のいろいろな御意見等を賜っておきたいというも のであります。それでは、事務局から資料等について説明をお願いいたします。 ○吉本勤労者生活課長 それでは、資料2を御覧ください。資料2−1ですが、前回申 し上げたように、中退法の85条に、5年ごとのいわゆる財政再計算の検討の規定があり、 それに基づいての御検討をお願いするところであります。検討に当たっての論点をまと めてみました。後でもう少し詳しく資料を御覧いただきますが、過去からも制度改正の 見直しの際に整理されていたいろいろな考え方があるわけですが、それを集約すると、 1つは制度の財政が健全であることが制度運営に対する信頼を高める、いわゆる、制度 の健全性をどのように保っていくかという観点と、予定運用利回りが高いことが制度の 魅力を高めることということで、一定の利回りの水準を確保することで魅力を高めてい くことといった観点と、両方それぞれ重要な観点であるわけですが、これまでもその時 々におかれた状況を踏まえながらその論点のバランスを取りつつ予定利回りの御議論を いただいてきたところです。  具体的な現在の状況として、これも後で参考資料を御覧いただきたいと思いますが、 (1)〜(3)に整理をさせていただきました。(1)は、現在の運用状況です。昨年度までは非常 に運用環境が良好で、予定運用利回り1.0%を大きく上回る利回りが確保できていたわけ ですが、昨年秋以来の、いわゆるサブプライムローンの問題等に端を発する株式市場の 低迷により、運用利回りがマイナスになってきているといったことで、単年度で損失が 生ずる可能性が高くなってきている状況です。(2)の財政状況ですが、これも平成14年の 改正以来運用環境がよかったことが影響して、累積欠損金は計画以上の早いペースで解 消してきたところです。平成18年度末には、151億円の水準まで減少してきていました が、残念ながらいま申し上げたように直近の運用環境の悪化で、この解消のめどがなか なか立ちにくくなっている状況があります。(3)として、参考として他の制度との利回り の比較をすると、1.0%ということは多くの類似の退職金制度において、現在適用されて いる利回りと同等、あるいはもうちょっと低いところもありますが、そのような水準に なっています。  以下の資料でもう少し詳しく、それぞれの状況について御覧いただきたいと思います。 資料2−2ですが、改めてこれまでの運用利回りの改正時の考え方を整理させていただ きました。この中退共制度は、昭和34年から発足していて、その後ずっと黒字の状態が 続いてきたわけですが、平成元年に初めて単年度で欠損金が生じており、その後、平成 2年にいまの基本退職金に加える付加退職金を支払う制度・仕組みが導入されました。 また、その運用利回りは、容易に運用実績を割り込む可能性がない水準にするというこ とで、6.6%から5.5%に改定が行われたということであります。その後平成7年、平成 10年と引下げをしてきたわけですが、これは、実際に引き下げた後、一時的に単年度に 黒字が出た年度もありますが、残念ながら実績がそれを下回る状況が、その後すぐに連 続して続くといったことで、結果として累積赤字が増大したということであります。そ れで、そのような赤字を増大させないように、少なくとも単年度損金が発生しないよう な水準に利回りを設定しようという観点から見直しが行われました。平成14年改正につ いては、3%から1%に引き下げたということでありますが、ここの考え方は単年度収 支が黒字になり、かつ、累積欠損金の解消に確実に資する水準に設定すること。それか ら、いわゆる2分の1を累積欠損金の解消に、残りの2分の1を付加退職金に充てるこ とを基本として審議会の意見を聴くといったルールを定めたということ。それから、こ れまでは法律に規定されている退職金額の前提となる予定運用利回りは、法律事項だっ たわけですが、それを政令事項に変更することで、状況に応じて機動的により変更しや すい仕組みに直したという状況であります。  次に、運用状況・財政状況について御覧いただきたいと思います。資料2−3ですが、 財政状況の推移については、前回示した資料と同じです。改めて御覧いただきますと、 前回の利回りの見直し以降、運用環境が良好だったということで、単年度でも純利益が 出ております。特に平成17年度は非常に大きな利益があがったということもあり、累積 欠損金の解消が急速に進んだということでありますが、平成19年については、まだ数字 を入れていませんが、足元で言いますと、いま申し上げたような状況で、次の頁を御覧 いただきますと、1月末までの運用利回りを整理させていただいていますが、秋以降、 全体と金銭信託分けていますが、金銭信託がその外部の信託銀行等に委託して運用して いる部分であり、全体の4割ほどあり株式等が含まれているものですが、これが、かな り12、1月と大きく下落していると。その影響で、全体としてもマイナス2.1%といった 足元の状況になっています。  ちなみに、これは参考ですが、次の資料2−4に、ベンチマーク収益率の推移を付け ています。ベンチマークは、市場の動きを代表する指数で、国内債券・株式、外国債券・ 株式ごとにプロットをしております。これを御覧いただくと一目瞭然だと思いますが、 四角のプロットになっております国内株式については、平成17年度には非常によかった ということですが、これが平成19年後半に至って非常に大きく下げてきています。また、 外国株式についても、程度はやや少ないですが似たような状況にあるということで、こ れらの影響が心配されているところであります。  次に、それでは今後どのようにするかということになるわけですが、その際の参考と して、毎回このような検討の時期には、私どもでシミュレーションをさせていただいた ものを参考として出しておりますが、それが、資料2−5です。ただ、これはその頁の いちばん下にありますが、シミュレーションを始めたのが昨年の6月時点であり、その 後、大きく経済状況が変わってきております。メインシナリオ、楽観シナリオ、悲観シ ナリオと平成19年度あたりをピークにして下方トレンドに入るということでそれぞれシ ナリオを描いていたわけですが、すでに平成19年度の足元において、かなり大きな乖離 が出そうだと、特に、平成19、20、21年あたり、今日もいろいろな機関が経済見通しを 出したということが出ていましたが、それなどと比較をしてちょっと高い前提になって いるということを、恐縮ですが前提に御覧いただきたいと思います。それぞれのシナリ オにおいて、予定運用利回りを1.0%、1.5%、2.0%で維持した場合どのようになるかと いうものを推計したものが、その後に付けております5枚の資料です。次の頁の予定運 用利回りが1.0%を維持した場合を御覧いただきますと、メインシナリオでは、平成19年 度で運用利回りがこの推計ではまだプラスになっているわけです。これが先ほど申し上 げたように、いまの状況ではマイナスになるのではないかという状況があります。いま ここに置いている数字を前提としても単年度で欠損、結果として累積欠損金が再び増加 するという状況になり、また、平成20年度でもその解消には至らず平成21年度までかか るのではないかという推計結果になります。その後の1.5%にした場合、平成20年4月改 正の場合、その次の頁が平成21年4月改正の場合とありますが、それぞれ平成19、20年 度は単年度でも欠損が出て、その結果として累積欠損金がふくらんで解消が平成23年度 ぐらいになってしまうのではないかと。改定の時期によって、やや欠損の出方は違った 推計になっていますが、大まかな傾向としてはそのような状況になるといった推計結果 になります。4、5枚目の予定運用利回りを2.0%にした場合は、平成19、20年度の欠損 が大きくなって、平成21、22、23、24年度に至ってもなかなか累積欠損金の解消が見込 みにくいのではないかといった結果になっています。私どもは、6月の状況で1.5%とか 2.0%ということもあり得べしということを想定してこのような推計をしたわけですが、 残念ながら、足元の状況は想定とはかなり違っているということをちょっと重複します が、改めて申し添えたいと思います。  最後に、他の退職金制度との比較を参考として表で付けております。小規模企業共済 は中小企業庁所管のものですが、これは1%。また、税法上の取扱として制度が設定さ れているいわゆる特退共、商工会議所や市がやっているものなどがありますが、1%と いう例がお聞きするところでは多いようであります。また、市単独でやっている共済制 度や生命保険の団体年金では、1%を割るような利率の設定になっている状況も伺って います。全体の状況の説明は以上でございます。 ○伊藤部会長 それでは、いまの予定運用利回りの見直しの検討に関しての説明につき まして、皆さんから御質問、御意見等がありましたらお願いします。 ○宮本委員 いまの提案は、資料も含めて1%でこのままいっても特段見劣りする数字 にはなっていないということですが、別紙のいちばん最初に2つの大事なことが書かれ ていまして、制度の財政が健全であることが制度運営に対する信頼を高めることである と、予定運用利回りが高いことが制度の魅力を高めること、この2つはいわゆる独法に よる事業の継続性が大事だということを、たぶん訴えているのだろうと思います。  そうは言いながらも、この事業を継続するにあたって背景にあるのは、雇用労働者数 がこれから減少していく、なおかつ非正規が増えていくことになると、今後そのパイと いうか、加入者数をどう確保していくのか。  適格退職年金からの移行がいまちょうど話題になっていますが、そういうことから考 えると、さらにいま以上にこの事業の制度としての魅力を高めていくことが、非常に大 事なことだろうと思っています。  このシミュレーションを見ると、確かに1%の予定運用利回りでいくことがいちばん 安全、健全ではあると思います。一方で、例えば1.5%程度にしたとしても、平成23年度 には累積欠損金が解消されるということを考えれば、魅力を高めていく、あるいは健全 な財政の中でバランスを取っていく中でも、ここは1.5%の予定運用利回りに変更する検 討も、含めていいのではないかと思っています。 ○伊藤部会長 いま宮本委員から御意見がありましたが、そのことについてでも、また ほかの御意見でも、ほかの委員の方から御発言はありますか。 ○高橋(均)委員 すみません、結論は今日得るのではないのですね。 ○伊藤部会長 これはちょっと確認ですが、今日これから検討して、いずれ案を出して いただくに際してあらかじめ皆さんからの御意見を拝聴して、ということでよろしいわ けですね。 ○吉本勤労者生活課長 はい。 ○伊藤部会長 では、そういうことです。 ○高橋(均)委員 その上でいまのと重複するのですが、この論点を拝見しますと、こ のまま行きたいというのが透けて見えるのです。シミュレーションで、例えば2%の悲 観シナリオでいっても5年後にはまだ消えませんが、110億ぐらいとのことですね。です から、それで仮にそうだとしても、制度の財政がこの規模からすると健全性が損なわれ ることでもないと思いますし、何よりも制度の魅力を高めることからいえば、私は政策 判断として、利回りを引き上げることは妥当性があるし、もっと積極的に政策強化すべ きではないかと思います。意見です。 ○伊藤部会長 ほかにいかがでしょうか。御意見はございますか。 ○臼杵委員 ちょっと確認ですが、シミュレーションの利回りで、例えばどれでもいい のですが、メインシナリオでは平成19年度は0.37%で、たぶんこれは平成19年度は0.37 %行かなくてマイナス5%ぐらいになると思います。そうすると、それはそれで累積欠 損金は、たぶん平成19年度でどのぐらい増えるのですか。責任準備金が5%でしょうか ら、150億ぐらい増えるのですかね。 ○吉本勤労者生活課長 金額的な数字はまだ出しておりません。 ○臼杵委員 いや、5%でしたら大体そんなものですよね。150億ぐらいで、平成19年度 はだからスタートポイントとして平成19年度はもっと増えているということですね。1 %だから、実際に責任準備金から考えれば、4%増えるのです、1%が予定利回りです から。ごめんなさい、マイナス5と1でマイナス6%増えることになります。そこはそ れでいいのですが、そのあとの2.2%や2.1%、これはどういう前提でこのような利回り になるというお考えになるのですか。 ○吉本勤労者生活課長 ちょっとシナリオの前提を本当に簡単にしかお付けしていませ んが、経済成長率についてはそこに書いてあるとおりですが、それぞれにおいて6月時 点において、シンクタンクで、物価上昇率や各資産ごとの収益率等を推計していただき まして、そういった前提の下で推計した数値です。 ○臼杵委員 基本ポートフォリオ策定時の利回りはどれくらいでしたか。 ○吉本勤労者生活課長 現在の基本ポートフォリオの期待収益率という意味ですか。 ○臼杵委員 はい。 ○吉本勤労者生活課長 2.6%です。 ○臼杵委員 平成20年度以降は2.6%を上に行ったり下に行ったり、こういう感じで作ら れているわけですね。 ○吉本勤労者生活課長 そうですね。 ○臼杵委員 はい、分かりました。 ○伊藤部会長 ほかに御意見がありましたらどうぞ。 ○市川委員 経済の状況を見ますと、とりあえず輸出で大企業は相当頑張っていますが、 先ほども事務局の説明の中にありましたサブプライム問題の日本経済の足を引っ張る影 響は、これからまだまだ出てくるのではないかと思います。  また石油を代表に、いろいろな原材料の価格が上がっている。鉄も今度は65%引き上 がるとか、小麦も上がるというニュースもあります。そういう経済の足を引っ張るいろ いろな状況を考えますと、これからだんだんとより一層厳しい状況になっていくのでは ないかなという気がします。そういうところから考えても、現状の1%を維持する結論 が妥当ではないのかなと思います。 ○伊藤部会長 どうぞ。 ○市瀬委員 私もいまおっしゃるように、いまのこの状況で、例えば平成18年度、19年 度は2.81%で、平成20年度も2.2%という形を見ていて、断トツに現実としてはたぶん 0.37%という形になるのだろうとは思うのです。  市川委員がおっしゃるように、本当にいま厳しい状況ではあるのです。ただ皆さんが そういう形で萎縮してしまうと、余計もう低い水準でいいのだというところに落ち着い てしまうともっと悪くなってしまうこともあるので、やはり高橋委員たちもおっしゃる ように、要はここを1.5%にした場合でもメインシナリオでも2.2%や2.1%になっている のですから、私も少し高めに設定して、それが達成されるような努力をすることは必要 ではないかなと思います。これは意見としてです。 ○伊藤部会長 どうぞ。 ○布山委員 いまいろいろ御意見を伺いましたが、まず累積欠損金があること自体が、 いわゆる安定した財政状況にあるかどうかを見たときにどうなのかなというところと、 計画を持って欠損金を解消していくことがまず大前提でこの制度の中にあるはずなので、 その辺も踏まえて、なおかつ足元は昨年の前半と後半はずいぶん状況が違っていて、こ の先どうなるかがいま分からない状態でとなると、高くも低くもと非常に言いにくい状 況にあるのではないかと思っています。そういう意味合いで、現状維持を前提に議論を したらどうかなと思っています。以上です。 ○伊藤部会長 松本委員、どうぞ。 ○松本委員 昨年の10月までは、全体の運用利回りが2.48%とプラスでずっと推移して きていて、確かに今年で累積欠損金が解消されて、新たな割合、パーセンテージが設定、 検討できるのかなと思っていたのですが、確かにこの数字を見ますと、1月末でマイナ ス2.13%とシナリオ自体がかなり狂ってきているような状況ですし、過去の検討の改正 の中で、平成7年の累積赤字額を増大させない、平成10年も単年度の損失金が発生しな いような水準とする、平成14年も単年度収支が黒字となりという形のものをベースで考 えていらして、これが私も妥当だと思うのです。だからまずその辺をきちんとした上で というのが妥当ではないかなと。  ただ改正につきましては、4年や5年という長いサイクルではなくて、欠損金が解消 されたら、その辺が見えてきたら、新たにもう一回給付の割合を検討することを考えて もいいのではないかと考えます。 ○伊藤部会長 ほかにございますか。 ○高橋(均)委員 確かに直近のところを見るとそういうことは言えると思いますが、 5年遡って見ただけでもこんなにバラつきがあるわけです。読めないのが正直なところ で、読めたらみんな苦労しないわけです。だから少なくともそんな大きな、何というか このシナリオを見ていても、そんな無茶苦茶大騒ぎするふうには。規模からいうと例え ば2%の悲観シナリオでいってもそんなにびっくりするものではありませんから、それ はもう政策判断なので、少しこの制度に魅力あるような仕掛けを是非考えていくと。  これは少なくとも5年を超えてということにはならないので、単年度ごとに見直して いく方法もあっていいと思いますが、いずれにしてもあまり直近の悲観的なシナリオ、 実態だけを見て、向こう5年間の判断をするというのもいかがなものかと思いますので、 その辺は十分議論をしていただきたいと思います。 ○臼杵委員 私はどちらかというと申し訳ないのですが、現状維持派です。先ほど私は 計算違いをしたのですが、仮に今年度がマイナス2%だとしますと、予定利回りが1% ですからたぶん3%欠損が出て、3兆ですから900億です。だからここのシミュレーショ ンの平成19年度の所の0.37%を、もう少し足元の数字に直していただいて、将来推計を まず考えるべきだということが1つ。  先ほどのところは、確かに分からないところはあります。結局のところリターンを上 げるにはリスクを取るしかないわけです。リスクを取ることに関して、そうすると年々 の振れはもっといまよりも大きくなるわけです。そういうことに関して、皆さんのコン センサスが本当にできているのかどうか。例えば株の比率をもっと上げるということで リターンを上げることに関して、皆さんのコンセンサスができているのかどうかが、ま だよく分からないところがあります。  いまの現状でも制度の魅力に関して言えば、剰余金の半分は付加退職金に充てること になっていますから、それはそれでいいのではないかと。逆に、仮にこれが1.5%や2% に上がったとして、一体どれだけの加入者が増えるのかということに関しては、必ずし も定量的な何か分析もあるわけでもないです。  先ほどからご指摘にもありましたように、中退共自体の制度が、例えば労働市場の変 化にもっと対応していくような方向で考えることが、むしろ制度の維持につながるので はないかと思っています。もちろん予定利回りが、仮に3%になればもっと入る人は相 当出てくるとは思うのですが、1%が1.5%になる、あるいは2%になることによってど のくらいの効果があるのかというのは、ちょっとよく分からないというのが正直な感想 です。 ○山川委員 先ほどの高橋委員、あるいは松本委員のお話にもありましたが、改正方法 についてちょっと確認しておきたいのですが、5年ごとということでは必ずしもなくて、 少なくとも5年ごとというのと、先ほどの政令事項に変更した趣旨との関係が、いま一 つちょっと自分ではっきりしないものですから、ご説明をいただければと思います。 ○吉本勤労者生活課長 法律の規定は、少なくとも5年ごとに検討するものとするとい うことですので、最長の限度がその5年ということで、それ以内に検討することは、全 く妨げられるものではありません。退職金の額についてはいままでは法律で定めていた のが政令で定めればいいことになり、それの基となる予定運用利回りの御検討というこ とです。 ○山川委員 これは直接関係することではないかもしれないのですが、シンクタンクに 頼んで出てきた数字で、ベースとなったデータが平成19年6月時点ということですが、 これはそういった政令事項に変更した趣旨などからして、もうちょっと短いというか直 近のデータでするようにはできないのでしょうか。  一過的なものかわかりませんが、モノラインとか新しくアメリカでいろいろ問題が出 てきていることも聞いていまして、長期的なものが非常に見えづらいとは思うのですが、 拠るべきデータが非常に古くなりやすくなっていることに何か対応がないのかなと思う のです。 ○吉本勤労者生活課長 本当にその推計の時点からあまりにも状況の変化が今回の場合 は大きかったということで、参考資料の内容が不十分なものにしかならなかったことで、 申し訳ないと思います。今後に向けてはできるだけ直近のものを使って、速やかに推計 をお出しできるような手順を工夫してまいりたいと思います。 ○伊藤部会長 1つ質問ですが、昨年末の独立行政法人の整理合理化の中で、累積欠損 金の解消等に向けての填補なり、そういう方向について、何か閣議決定の中で指摘を受 けているものはあるのでしょうか。 ○吉本勤労者生活課長 現在、累積欠損金の解消計画をすでに機構の方で定めて計画的 にやっているわけですが、それを適宜見直して解消を図るといった内容のことは書かれ ています。ちょっとすみません、現物はありますか。 ○伊藤部会長 おおよそで。 ○吉本勤労者生活課長 累積欠損金の確実な解消を図るとともに、各退職金共済事業の 予定運用利回りを必要に応じて随時、的確に変更する、といったようなものです。 ○伊藤部会長 ほかに御意見はございますでしょうか。もしお許し願えれば部会長とし てではなく、一公益委員としてこういう視点もというお願いをしておきたいと思います。  いままでの御意見を拝聴していますと、制度の魅力を重視していかなければいけない という立場からの積極的な御意見と、いろいろな今後の経済情勢等も見ながら慎重な御 意見とあるわけですが、私も独立行政法人をあずかっているわけですが、事業内容は労 災病院の運営という医療事業で、なかなかいまのような情勢では黒字にしていくことは 大変難しい。収支差は黒字ですが、与えられている施設等の医療機器の減価償却費を完 全に払い切れるかと、的確にそれを上回る分だけ需要を出せるかというと厳しいもので すから、年々縮小させていますが、やや欠損金は残る形です。そういう状況に対して、 現在の行政改革を進めている考え方というのは、医療事業で働く人の健康や命のために 不採算を抱えているからという理念の下に、そういう事業をやっているから赤字を許し てもっとしっかり積極的にやれというようには、なかなか言ってくれないことも事実で す。むしろ赤字が出ているのだったら民営化してしまえとか、民営化した途端にアスベ スト問題等の視点の不採算でもいつも乗り出してやっている特徴は失われていくわけで す。  しかしそういう立場からいえば財政重視、あるいは制度の健全性で、行革の方は割合 割り切ってパッときますから、もし累積欠損等についてもそういう問題で制度の健全性 が損なわれる事態を招いたときに、こういう退職金共済制度について民営化論やいろい ろなほかの共済制度をつないでいく分解論が飛び出さないように、そういう視点からも 制度の魅力と現在の行政改革の流れをつくっている物差しとの関係も、常にそういう目 で評価にさらされていく立場と利用者の兼ね合いの中で、どのように予定運用利回りの 考え方を将来に向けて立てるか、是非そういう視点もお持ちいただきたいなというのが、 一公益委員としての現状の中での意見でもあります。部会長の立場でそういう意見を言 って、恐縮です。ほかに御意見がありましたらどうぞ。  それでは、あらかじめの予定運用利回りの検討に際しての御意見は、拝聴したという ことでよろしいでしょうか。では、議題2についても御意見の交換等を一応これで終わ らせていただきまして、次回の部会までに事務局にとりまとめていただいて、またお諮 り願うことにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。                   (了解) ○伊藤部会長 では、議題1、2は終わりましたので、あとは全体を通じてのこと、あ るいは今日の議題に関連しない事項等について、もし皆さんのほうからこの際お話をし ておきたいということがありましたら、どうぞお願いします。よろしいですか。  それでは、本日予定された議題を一応終了させていただきまして、議題1でありまし た未請求事案についての勧奨の問題やこれからの発生防止の問題についての方向をどう 考えていくのか、そしていま議題2にありました予定運用利回りの事務局の考え方等に ついて、今後どういうスケジュールになっていくのかをお話願いたいと思います。 ○吉本勤労者生活課長 本日は、いろいろ御議論を頂戴しましてありがとうございまし た。次回については3月11日(火)14:00から15:30の予定ですので、よろ しくお願いします。  いま部会長からありましたように、今日の御意見を踏まえ、とりまとめてお諮り申し 上げたいことと、あと未請求退職金の取組状況について、併せて毎年定例ですが、付加 退職金の支給率の御議論もお願いしたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いし ます。以上です。 ○伊藤部会長 それでは、本日はこれで終了させていただきます。最後に本日の議事録 の署名委員を高橋均委員と市瀬委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 以上で終了いたします。ありがとうございました。 照会先: 厚生労働省 労働基準局 勤労者生活部 勤労者生活課(内線5374)