08/02/12 第75回労働政策審議会労働条件分科会議事録 第75回 労働政策審議会労働条件分科会 日時 平成20年2月12日(火) 17:00〜19:00 場所 厚生労働省職業安定局第1会議室 ○大西監督課長  定刻になりましたので、ただいまから第75回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催 いたします。労働条件分科会長については、労働政策審議会令第6条第6号により、労働 政策審議会の本審に所属する公益委員の中から選出されることになっており、岩村委員が 選出されております。また、分科会長代理については、労働政策審議会令第6条第8号に より、公益委員又は臨時委員から分科会長が指名することとされており、廣見委員が指名 されております。以降の議事進行は岩村分科会長にお願いいたします。 ○岩村分科会長  岩村です。慣れませんけれども、皆様のご協力を得ながら議事の進行を務めてまいりま すのでよろしくお願いいたします。  本日は、廣見委員、大坪委員、平山委員が欠席です。大沢委員は少し遅れて到着されま す。議事に入る前に、委員及び事務局に異動がありましたので、事務局から説明をお願い いたします。 ○大西監督課長  新しく委員に就任されました皆様をご紹介いたします。資料No.1として委員名簿を配付し ております。順にご紹介いたします。公益委員の、東京大学大学院法学政治学研究科教授 の岩村正彦委員です。日本女子大学人間社会学部教授の大沢真知子委員です。弁護士の鬼 丸かおる委員です。京都大学大学院法学研究科教授の村中孝史委員です。  労働者代表として、全国電力関連産業労働組合総連合労働福祉局部長の浦野英子委員で す。情報産業労働組合連合会書記長の野田三七生委員です。  使用者代表として、NTTコミュニケーションズ株式会社ヒューマンリソース部人事・人 材開発部門担当部長の大坪眞子委員です。住友化学株式会社常務執行役員の高尾剛正委員 です。旭化成株式会社人材・労務部EO推進室部長の田中恭代委員です。  事務局に異動がありましたのでご紹介いたします。勤労者生活部長の氏兼です。企画課 長の土屋です。本日は遅れておりますが、総務課長の山越です。ここで、青木労働基準局 長よりご挨拶申し上げます。 ○青木労働基準局長  労働基準局長の青木です。どうぞよろしくお願いいたします。皆様方におかれましては、 労働条件分科会の委員にご就任いただきましてありがとうございます。引き続きご就任の 方もいらっしゃいますし、新任の方もいらっしゃいますけれども、労働条件にかかわる重 要な事項を審議していただくということですので、どうぞご指導、ご審議をよろしくお願 いいたします。 ○岩村分科会長  議題1に入る前に、議題2のその他ということで、労働契約法及び有期労働契約の締結、 更新及び雇止めに関する基準につきまして、事務局から報告をお願いいたします。 ○大西監督課長  労働契約法及び有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について、資料に沿 ってご説明させていただきます。資料No.3-1「労働契約法に関するこれまでの経緯」という ことで、国会審議の状況が記載されています。労働契約法については、昨年3月13日にこ の法律案を第166回通常国会に提出いたしました。同法案は、5月24日から審議をし、通 常国会において5回にわたり厚生労働委員会において質疑がされましたが採決に至らず、 第168回臨時国会において継続審議になりました。  継続審議の臨時国会においては2回の質疑が行われました後、11月7日に衆議院の厚生 労働委員会において与野党間の協議ということで、修正の上可決され、参議院に送付され ました。  参議院厚生労働委員会においては、2回の質疑と参考人質疑が行われた後、11月27日に 同委員会において可決されました。その後11月28日に参議院本会議で可決成立し、12月 5日の公布となっております。  審議については、契約法の中で主に法案でいうと第2章のところで、就業規則による労 働条件の設定変更は例外的な場合であり、今回の立法は判例法理に沿って、判例法理を変 更することなく立法されている、ということが何度も議論が行われたところです。  国会における修正内容について追加でご説明いたします。資料No.3-2の「修正案要綱」で す。修正の第1点は、法律の第1条の目的の規定ということで、政府原案においては合意 の原則と並んで、労働契約と就業規則の関係を定めると書かれていましたが、修正の結果 「その他労働契約に関する基本的事項とする」となりました。  修正の第2点は、法律の第3条第2項及び第3項を追加したところです。労働契約の締 結又は変更にあたっては、均衡を考慮することが重要であることから、第3条第2項にそ の考え方が立法化されました。また、ワーク・ライフ・バランスが重要であることから、 第3条第3項に仕事と生活の調和の原則も規定されたところです。  第4条第1項は文言の修正です。「締結し、また変更した後の労働契約」という文言が、 単に「労働契約」という修正がなされるとともに、第2項で有期労働契約について、書面 明示に関し、契約、更新について曖昧な部分等があることで紛争が生じるというようなこ とから、有期労働契約に関する事項についてもできる限り書面で確認する、ということが さらに確認的に規定されました。  第5条は文言の修正です。「労働契約により」と書いてあったところを、「労働契約に伴 い」という修正が行われました。  就業規則と労働契約の関係を規定した第7条については、この規定が労働契約の締結の 場面を対象とするものである、ということを明確にする修正が行われました。  第14条関係の出向のところです。政府原案では出向の定義が第14条第2項にあったわ けですが、この定義については業として行う出向を可能とするのではないかというおそれ がある、という議論があったことから削除するという修正が行われました。  第17条第1項の、期間の定めのある労働契約については、契約期間中の解雇はやむを得 ない事由がない限りできないという旨を定めているわけですが、政府案では、このやむを 得ない事由がないことの証明責任を労働者が負っているとの解釈が生じるおそれがあるこ とから、一部修正をして「やむを得ない事由がある場合でなければ」という修正が行われ ました。  いまご説明いたしました修正は、先ほどご説明させていただきましたスケジュール等の 関係では衆議院で修正され、参議院では修正後の労働契約法案をよしとするということで 成立に至ったということです。  契約法の周知の関係です。本法律は12月5日に公布されたわけですが、法律では3カ月 以内に施行するということです。1月23日に労働契約法の施行期日を定める政令が公布さ れ、労働契約法の施行は本年3月1日からとなりました。国会においては、労働契約法成 立後においても、その趣旨・内容をしっかりと周知していくことが大変重要であるという ことで、そのような議論も繰り返しなされたところですので、厚生労働省といたしまして も、その考え方はホームページ等で公表するとともに、リーフレットも作成し、しっかり と周知に取り組んでまいりたいと考えております。  有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準の改正です。資料No.4-1です。本審議 会でいただいた答申に沿い、3回以上契約を更新した場合についても、雇止め予告の対象と するという改正を行いました。この改正告示については、先に申し上げました労働契約法 と同様に3月1日から適用することになりました。  以上簡単ではありますが、労働契約法と告示の改正についてご説明させていただきまし た。 ○岩村分科会長  ただいま、事務局から説明のありました件についてご意見、ご質問がありましたら承り ます。 ○長谷川委員  有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準の改正の告示そのものではないので すが、現在平成20年度の厚労省の予算案で、有期労働者の処遇の改善等ということで、職 業安定局において研究会を設置し、有期労働契約者の雇用管理改善のためのガイドライン の作成・周知をするという話を聞いています。有期労働契約についての所管は職業安定局 なのか労働基準局なのかをお聞きします。  有期労働契約に関して言えば、法律では労働基準法第14条があり、その第14条に基づ いて有期労働契約の雇止め指針があるわけです。もう1つは、今回成立しました労働契約 法第17条で、有期労働契約について触れているわけです。これまでの指針もあり、今回の 契約法もある中で、今度職業安定局で作る有期契約労働者の雇用管理ガイドラインという のはどういう性格なのか。  有期労働契約の問題というのは、契約社員であったり、派遣労働者であったり、パート 労働者のようにいろいろなところにかかわるわけです。いまでも大臣告示があるのに、職 業安定局の雇用管理ガイドラインとの関係はどのように捉えればいいのか。私どもとして は少し混乱しているので説明をしていただければと思います。 ○大西監督課長  所掌ということですが、有期労働者の場合は、いまご指摘いただきましたように労働基 準法に有期の規定がありますし、それに基づく告示もありますし、労働契約法でも有期の 話を書いておりますので、当然その部分は労働基準局でしっかりやっていくということで す。  一方、有期労働者でありましても、就職をする場合には安定所に行くわけです。いまご 指摘いただきました研究会の内容については、まだ始まっておらず、中身がまだ決まって いないので、どのような内容かをここでご紹介できないのですが、そういうものとして有 期労働者でも雇用管理として安定局で取り組むという部分はあるのではないかと思います。  それは、有期労働者に限らず、いわゆる普通に働いている方の雇用管理の問題は安定局 でやっておりますし、労働条件の違反があれば基準局でやるということです。通常の労働 者においても、安定局、基準局、あるいは雇児局で割り振りがあるのと同様に、その有期 労働者についてもそのような割り振りはあるのではないかと考えております。  こちらの審議会との関係では、宿題として、平成18年12月27日の報告の中で、有期労 働者について、期間の定めのある労働契約について引き続き検討をすることが適当である というご指摘をいただいておりますので、これを受けた検討というのは、いま契約法がい よいよ成立の時期がまいりましたので、契約法が施行された後に、そういう検討について は基準局のほうでもやっていくという感じです。  お答えといたしましては、有期労働者については、局所掌により、それぞれ分担がある というお答えになるのではないかと考えております。 ○岩村分科会長  長谷川委員よろしいでしょうか。 ○長谷川委員  納得はしていないけれども、一応聞いておきたいと思います。 ○小山委員  いま説明していただいたことではないのですが、本題に入る前に報告していただけると すれば、この段階でいただくべきかと思いますので一言申し上げます。第74回労働条件分 科会が昨年の2月2日に開催されました。そのときには、労働契約法、労働基準法の一部 改正案で、法案要綱の答申を行いました。労働基準法改正案については労使それぞれ意見 の違いがあり、その意見を記載した上で答申が出されたわけです。  昨年の通常国会に政府提案の労働基準法の一部改正案が出されております。その中身は、 当審議会で議論した中身と大幅に違う中身が提案されています。当然この審議会において、 その後の経過がどういうことでそうなっているのか、あるいは本分科会での議論はどうい うことだったのか、という辺りの整理をきちんとしていただいて、報告していただくべき ことではないかと思います。 ○大西監督課長  労働基準法の改正案については、委員ご承知のとおりまだ衆議院で継続審議中ですので、 どのような結論が出るのかはわからないわけですので、本日冒頭での報告は、結論的な報 告ではありませんでしたのでしないこととさせていただきました。中間的に、いままでど ういう経緯を辿っているかということでご説明させていただきます。  委員ご指摘の労働政策分科会で答申の行われた法案要綱について、盛り込まれた事項が 変更になっているということです。これは、大きく3点ぐらいあると思います。法定割増 賃金率については、政令で定める時間を超えた時間外労働について、政令で定める率まで 引き上げるということで、割賃の引上げについては政令で定めましょうということがひと つ、法案要綱の答申にはそう書いてありました。  自己管理型労働制の創設であるとか、企画業務型裁量労働制の見直しということも答申 に盛り込まれていました。これについては、法律案要綱を答申いただいた後、私どもがそ の法律案を作成するとともに、法案提出に向けて与党の審査というものがあるわけです。 平成19年2月6日に与党合意ということで、いわゆる法案の枠組みについて、こういうも のがよいだろうというのが示されたところです。  先ほどの点と関連したところを申し上げますと、月80時間を超える時間外労働に係る割 増賃金率を5割に引き上げるということです。そういう意味では、この数字がここで入っ たということです。中小企業については、法定割増賃金率の引上げの適用を猶予し、施行 後3年経過した後に検討を行うことということです。これも数字が入ったということと同 時に、追加になったということです。  もう1つは自己管理型労働制の創設及び企画業務型裁量労働制の見直しについては今国 会には提出しないというのも、そのような合意になったところです。そのほかに今後の課 題として、我が国の事務系労働者の働き方に対応する労働時間制度のあり方について検討 を行うこととする。このようなことが与党の中で決定されました。私どもといたしまして は、こういう内容を踏まえ、法律案要綱と、与党の合意の内容を踏まえ、この法律案を作 成し、第166回通常国会に提出したところです。  その後、労働基準法改正案については、昨年の通常国会で6回、臨時国会では2回審議 が行われました。労働契約法のほうは先ほど申しましたように、そのままさらに審議を重 ね、修正し、参議院まで行って、それで成立したということになっております。この労働 基準法改正案については、臨時国会で2回審議が行われ、現在は衆議院において継続審議 になっています。いまは、そのような状況になっています。 ○小山委員  与党が国会に提出できないぐらい問題のある法律案要綱を我々は議論してきたのか、と いう意味合いでの疑問も含め、今後のあり方等一応政府提案の法律ですので、ちょっと異 例なのか。異例なら異例として例外的なことならいいのですけれども、いままでの例から いってそういうのはよくあるのでしょうか。 ○大西監督課長  あるかどうかというお話からすると、それはないことはないわけですが、通常はあまり ないのではないか。これは、小山委員もそう思っていらっしゃると思いますが、そのよう な考え方だと思います。 ○小山委員  納得できたというわけではないのですが、報告はお聞きしました。 ○岩村分科会長  議題2についてはよろしいでしょうか。 (特に発言なし) ○岩村分科会長  特にないようですので先に進みます。今度は議題1の労働時間等設定改善指針の改正に ついて、事務局から説明をお願いいたします。 ○土屋企画課長  資料No.2-1と資料No.2-2に基づき、設定改善指針の改正についてご説明いたします。資料 No.2-1で、今回ご議論をお願いいたしますことについての概要をお示ししております。1の 背景の4つ目の○で、今回ご議論いただきます設定改善指針は、労働時間等設定改善法に 基づいて定められております指針です。労働時間等設定改善法においては、事業主の責務 として、設定改善を図るために必要な措置を講ずるよう努めなければならないという規定 があります。必要な措置を具体的に講じていただくために、この指針では4つ目の○にあ りますように、事業主及びその団体が設定改善について適切に対処するために必要な事項 について定めるものという位置づけで定められているものです。設定改善法の施行と併せ、 平成18年4月から施行されているところです。  平成18年の施行後の動向として、仕事と生活の調和、ワーク・ライフ・バランスという 議論が大変大きなものとして出てまいりました。今回議論をお願いする背景としても、背 景のいちばん上の○に記載しておりますように、昨年12月になりますが、政府全体の議論 の場として、労使のトップにもお入りいただいた官民トップ会議を設定し、この場におい て仕事と生活の調和の推進のための憲章と行動指針が策定されました。本日も資料No.2-4と して提出しておりますので後ほどご参照いただければと思います。  この憲章と行動指針の概要を掻い摘んで申し上げますと、2つ目と3つ目の○です。憲章 においては、仕事と生活の調和の緊要性についての共通認識を整理し、その上で仕事と生 活の調和が実現した社会の姿を共通認識として提示しております。併せて関係者、企業、 労働者、国民、あるいは国、地方公共団体といった、それぞれの主体が果たすべき役割を 明示しております。  行動指針においては3つ目の○に記載しましたように、憲章で示した目指すべき社会を 実現するために、企業あるいは労働者、国民の効果的な取組、国や地方公共団体の施策の 方針を示すとともに、併せてこれらの各主体の取組を推進していくための社会全体の目標 としての数値目標の設定もしているところです。  こういう形で、仕事と生活の調和の議論をめぐっては大きな動きがあり、このような憲 章、行動指針が策定されたところです。労働時間の設定の改善等の問題も、こういう仕事 と生活の調和の中の大きな柱でもあり、したがって今回の憲章、行動指針の策定を踏まえ、 設定改善指針についても必要な改正を行っていくことが必要ではないかということで今回 ご議論いただくことにしたものです。  改正内容の主なものは2に記載しました。考え方としては3つあります。1つは憲章、行 動指針の中に盛り込まれているもので、設定改善指針には盛り込まれていないものを事項 として、あるいはワーク・ライフ・バランスの趣旨といったようなものですが、それを設 定改善指針にも盛り込んでいくことが1点です。  もう1点は、数値目標を設定したと申し上げましたけれども、この数値目標が設定され ている項目が、これから取り組んでいくべき大きな課題、重点項目だと考えられると思い ます。そういう項目を中心に、憲章や行動指針の内容に沿い、設定改善指針の内容の充実 を図っていくことが2点目です。  3点目は、この指針は事業主や団体の方に取り組んでいただくための指針ですので、その 際にはワーク・ライフ・バランス、あるいは労働時間の問題といったものが全体として見 渡せるような指針であるのが望ましいと考えております。そういう意味での一覧性の確保 をこの改正の中で図ってまいりたいということを心がけたつもりです。  以上3つの観点から、今回の改正内容をお願いしたいと思っております。本日は、具体 的にご議論いただき、またご意見をいただくという趣旨から、大変恐縮ではございますが、 指針の改正の新旧対照表という形で、資料No.2-2を用意いたしましたので、これを踏まえて ご議論いただければと思います。  資料No.2-2を冒頭から順番に項目に沿ってご説明いたします。この設定改善指針では、前 文が1頁から2頁にかけてあります。ここで、設定改善指針の策定の背景、あるいは趣旨 といったものを掲げています。右側が改正案、左側が現行です。過去の経過を詳細に記載 している部分がありますので、その辺りの記述を1頁で整理した上で、2頁の右側の下線部 のところにありますように、先ほど申し上げました憲章あるいは行動指針が策定されたこ と、それから憲章、行動指針においてどういうことが盛り込まれているかを記載し、そう いう趣旨を踏まえ、この指針において必要な内容を定めるというふうに、前文を憲章、行 動指針を踏まえたものに改正してまいりたいということです。  3頁からですが、1として「労働時間等の設定の改善に関する基本的考え方」という項目 が立てられております。(1)においては「設定の改善を図る趣旨」ということで大きな趣 旨が書かれています。この部分において、設定改善の趣旨を従来は触れていたわけですが、 それよりさらに大きな考え方、取組として、仕事と生活の調和、ワーク・ライフ・バラン スというものがありますので、その趣旨を憲章、行動指針に書かれたワーク・ライフ・バ ランスの姿に沿って新たに書き加えをし、さらにそういう取組は企業にとっては「明日へ の投資」として積極的に捉えていく必要がある。これも憲章で触れられているところです ので、その旨を追記させていただきました。  4頁で基本的な考え方の項目として、(4)で「経営トップに求められる役割」というのを 追加してここに記載したいと考えております。この部分は、憲章においてもここに記載い たしましたように、そもそもこういうワーク・ライフ・バランスや労働時間の問題という のは、労使による自主的な取組が基本だということにしつつも、経営トップの方々が自ら リーダーシップを発揮し、意識改革、働き方の改革を図っていくことが必要だということ が書かれております。その旨を設定改善指針においても盛り込ませていただき、さらに経 営トップの姿勢を明確にする、あるいは企業内の推進体制を確立していくためにも、ハイ レベルの責任者を配置していくことなどが重要だということを、具体的な取組としてここ で1つ提示させていただいております。  (5)は、他の法令や計画との関係を書いている部分です。憲章、行動指針をここにも盛 り込ませていただくのと併せて、5頁の「なお」書きのところで、行動指針において定めら れた、先ほどご説明いたしました社会全体の数値目標を紹介し、事業主が設定の改善を図 るに当たっては、数値目標の内容も踏まえ、各企業の実情に応じて、仕事と生活の調和の 実現に向けて計画的に取り組むことが必要であると記載しております。  なお、この数値目標については、先ほどの一覧性の観点も含め、別表の形でこの指針に 添付する形を取らせていただきたいと考えております。具体的には18頁、19頁に掲げた表 が、ワーク・ライフ・バランスの行動指針に盛り込まれました数値目標全体で、今回の引 用は、この全体を引用する形でこの指針の中に盛り込ませていただきたいという内容にな っております。  このうち労働時間に関係の深い項目を掻い摘んで申し上げますと、上から4つ目の項目 として、労働時間等の課題について労使が話合いの機会を設けている割合がいまは4割ほ どですが、10年後の理想的な姿として、すべての企業で実施ということを掲げております。 長時間労働の抑制という観点から、週労働時間が60時間以上の雇用者の割合がいまは1割 ちょっとということですが、これを半減させる。次の項目の、年次有給休暇の取得の促進 という観点から、これも現状では5割弱に留まっておりますけれども、完全取得といった 項目を掲げております。  これらと併せて、メンタルヘルスケアの取組の事業所割合、あるいはテレワーカーの比 率、短時間正社員の導入といったようないろいろな項目にわたり、ワーク・ライフ・バラ ンスの実現に向けての数値目標が掲げられています。  5頁に戻りまして、いま申し上げましたように別表の形で掲げた上で、各企業の実情に応 じて計画的に取り組むことが必要であるとこの部分で書かせていただきたいということで す。  次は5頁の2の事業主等が講ずべき設定改善のための措置ということで、ここから以下 が具体的な措置の部分です。最初の改正のところは、「経営トップのリーダーシップの下」 というのを入れさせていただきたいということです。  次に一般的な措置としていくつかの項目が並んでいます。具体的な改正点としては7頁 の(ホ)のところで、設定改善の措置に関する計画を作り、計画的な取組をするのが望ま しいということが従来から書かれている部分です。「なお」のところで、先ほど数値目標で も出てまいりましたように、労使間の話合いの機会の重要性に鑑み、設定改善委員会をは じめとする話合いの機会において、「労働者の意見を聴くなど労働者の意向を踏まえたもの とするようにすること」というように、話合いの機会を踏まえた計画の策定を追記させて いただいております。  8頁の(ロ)のところでは、労働者の多様な事情、あるいは業務の対応に応じた労働時間 の設定ということで、従来変形労働制、フレックスタイム、裁量労働制の活用が書かれて いる部分ですが、ここに短時間正社員のような柔軟な働き方の活用、ということも1つの 選択肢として付け加えさせていただきたいということです。  9頁の(ハ)で年次有給休暇の取得の促進です。これと、次の長時間労働の抑制が、労働 時間の面では大きな2つの柱になろうかと思います。年次有給休暇の部分については、従 来の記述の中に、なぜ年次有給休暇が取られていないのか、という要因が十分に書かれて おりませんでした。いろいろなアンケート調査等によると、周囲に迷惑がかかるとか、職 場の雰囲気が取得しづらいといったことが大きな理由で、そこからためらいが生じている ということが見て取れるところです。その点に触れた上で、年次有給休暇の取得は、企業 にとっても大きな意味を持つということを言及させていただき、その上でここの部分でも 経営トップのリーダーシップの下に意識改革を図っていただきたい、という形で記述の内 容の充実をさせていただきたいということです。  10頁から11頁にかけては所定外労働の削減です。所定外労働の削減については、ノー残 業デー、ノー残業ウィークといった取組、あるいは36協定の限度基準の遵守といった、い わば全般的な部分での所定外での削減についてはこれまでも記載があったところです。特 に長い時間になっている、いわゆる長時間労働者が一定の高水準でいることについて、そ れを踏まえた対策ということはこれまで書かれておりませんでした。先ほどの数値目標の ところでも週60時間以上の長時間労働者の割合を半減させるということが出てきたわけで すが、そういうことも踏まえて「さらに」のところにこのような記載を追加させていただ き、「このような長時間労働が恒常的なものにならないようにする等、その抑制を図ること」 ということを盛り込ませていただきたいということです。  11頁の(ヘ)は在宅勤務等の活用ということで、テレワークについて、これも数値目標 で立てていた部分ですが、在宅勤務、あるいはテレワークの趣旨やメリットをここで書か せていただいた上で、さらに12頁のところではIT機器を活用した在宅勤務については、 その適切な導入実施のためのガイドラインを局長名で定めさせていただいておりますので、 その紹介も含め、ここにテレワークの記述を充実させていただきたいということです。  12頁の(2)の部分からは、特に配慮を必要とする労働者について、事業主が講ずべき措 置ということで、一般的な措置ではなくて、労働者の類型ごとに必要な措置が書かれてい る部分です。その最初の項目として13頁の(イ)の健康の保持に努める必要があると認め られる労働者というのがあります。ここで、労働時間の面から健康保持の点での留意事項 が書かれているところです。併せて予防策が書かれている部分があります。ここの部分に メンタルヘルスケアの実施と併せて、労働時間等の設定を考えていただきたいという形で、 メンタルヘルスケアに言及するという追加をさせていただきたいというものです。  次は、子の養育あるいは家族の介護を行う労働者というところです。ここでは、育児介 護休業法を踏まえた労働時間等設定改善について記述があります。14頁に、先ほどの数値 目標のところにも出ている事項ですが、特に男性の育児等への参加が進んでいないという 点、あるいは出産後の女性が継続就業ができていないという点が数値目標の中でも問題意 識として出てきておりますので、そのことに言及した上で、「男女が共に職業生活と家庭生 活の両立を実現できるよう一層の配慮をすること」という記述を盛り込ませていただきた いということです。  しばらく項目が飛びまして、16頁の(3)として事業主の団体が行うべき援助の項目です。 この項目においては、事業主の団体に是非お願いをしたい点は、仕事と生活の調和という 観点からも機運の情勢、あるいは啓発活動といった点であろうかと思いますので、その点 について記述の整理をさせていただき、また盛り込ませていただいたということです。  具体的な改正点は以上です。先ほど申し上げましたように、本日はこの新旧対照の形で ご提示申し上げました案を踏まえてご議論いただき、またご意見をいただければと思って おります。次回は3月7日に予定させていただいておりますが、その際に本日のご議論を 踏まえた形の案を改めて諮問をお願いしたいと考えているところです。 ○岩村分科会長  ただいま説明をいただきました、労働時間等設定改善指針の改正案について、ご意見、 ご質問があれば承ります。 ○島田委員  労働時間等設定改善指針の改正ということで、その背景の説明がありました。基本的に は内閣というか、総理大臣を含めてワーク・ライフ・バランス憲章を作り、その行動指針 を作ったというのがスタートだと思うのです。それを労働法の関係から当てはめると、こ の改善指針を変えていくのがいちばんいいだろうという趣旨だとは思うのです。  しかし、労働時間等設定改善指針と言われても、基本的に何かわからない法律であり、 指針なのです。設定改善法は、時短促進法が変わってきたわけですけれども、もしこの審 議会で7日までにみんながOKと言ったとして、改正がマスコミに載ったときにこの指針 の名前を見ても「何だろう」という感覚があると思うのです。ワーク・ライフ・バランス については大きな動きがあると言われたのですけれども、本当にそうであれば、それにぴ ったりと当てはまる名前の法律なり指針を作っていかない限り、法律を知っている人は読 むかもしれませんけれども、基本的にはピンとこないでしょう。なんとかもうちょっと違 う名前で出したら、内容は同じにしても、そこは読まなければいけないという動きが起こ るではないですか。  そういう意味で、労働時間等設定改善法とか、指針というのはどうも名前と中身が一致 しない。私たちも経営者に、今回こういう話があるのですと言ったら、その指針は何だと、 基本的に知らないわけです。時短促進法は知っているけれども、それ以降は無視している という世界があるわけです。  そこでお聞きしたいのは、こういう大きな動きがあって、本当に変えようという意思が あるのかどうか。この社会的目的を達成するために、強制はしないけれども、社会的雰囲 気をつくろうという感覚であるのなら、別法案とは言わないにしても、せめてこの名前を 変えていただくとか、ワーク・ライフ・バランスという名前の法案を作ってもらったほう がいいような気がするのです。そういう気持は事務局には全然ないのですか。指針の中身 を変えるだなのか、そこを質問します。 ○土屋企画課長  いまお話のあった点ですが、ワーク・ライフ・バランス全体の議論としては、今回憲章、 行動指針を作ったということで、世の中の動きを大きく動かしていきたいというのが政府 全体としてのスタンスではないかと思います。必ずしも法律によってやっていかなくては いけないかどうかというところは、いろいろご議論やお立場もあるかと思います。今回政 府全体の整理はそういうことで、憲章が政府全体の取組を示し、あるいは国民なり関係者 の皆さんにお取り組みいただく基本的な部分を明確にし、定めたという趣旨のものになっ ているのだろうと思います。  そういう大きな方針の下で、今度は個別に見ていったときの対策の部分で何をやってい くかということではないかと思います。ワーク・ライフ・バランスの議論の中で、特に労 働関係、働き方の見直し、改革という意味で言いますと、私どもの労働時間の問題と、い わゆる両立支援にかかわるような育児とか介護との関係、両立の部分とがあると思います。 それは、それぞれ既に法律がありまして、私どもですと設定改善法であり、両立のほうで あれば育児・介護休業法、次世代法ということになってくるのだろうと思います。  そういう法律の下で、今度は具体的な取組をどこまでどうやっていくかということにな ってくると思います。それで、私どもとしては設定改善法という既にある法律を踏まえ、 この指針の中でどこまでワーク・ライフ・バランスの動きを取り入れることができるか、 という流れの中でこの作業をして本日ご提示申し上げているつもりです。  設定改善法なり、設定改善指針があまり知られていないという点については私どもの努 力不足も大変大きいと思っております。逆に今回のこういった改正を機に、改めて指針の 周知徹底といいますか、皆さんに設定改善とは何ということを知っていただくことを含め、 この改正を機に改めて最大限の努力をしていきたいと思っております。是非労使の皆様方 にもご協力をいただければと思っておりますのでよろしくお願いいたします。 ○八野委員  いまお答えをいただいたところもあるのかもしれませんが、指針の前文のところにある ように、ワーク・ライフ・バランスの憲章を作り、行動指針を定め、その中で根幹をなす 労働時間について指針をどのように変えていくのかというところが重要なのかと思います。  このワーク・ライフ・バランス憲章、行動指針においては、仕事と生活の調和を実現し た社会というものをつくっていかなくてはいけないということは共通認識であり、「就労に よる経済的自立が可能な社会」であるとか、労働時間の中では非常に重要な「健康で豊か な生活のための時間を確保できる社会」、「多様な働き方・生き方が選択できる社会」とい うものを目指すとされています。その中で、特に労働時間のところにかかわるのは、目指 す社会の2番目と3番目のところです。こういう社会を目指していくために、企業、国民、 国が支援したり、地方公共団体が支援したりという内容だと思うのです。  ところが、指針の前文のところには目指すべき社会について記載されておりません。こ れでは目的が不明確になってしまうのではないか。十分浸透させるためには名称の問題も あると思いますが、指針の前文の中でも、そういう具体的な社会の姿に向けて、労働時間 の部分については示していくのだ、ということを記載すべきなのではないかと思っており ます。  また、細かな点で申し訳ありませんが、1頁の、「正社員の労働時間は依然として短縮し ていない」という表現ですが、一般労働者で見ていくと、労働時間が増加傾向にあるので はないか。パートタイマーの総実労働時間も若干増加傾向にあるという中で「短縮してい ない」ということではなくて、逆にいまは増加傾向にあるという認識なのではないかと思 うのです。この2点についてお願いいたします。 ○岩村分科会長  野田委員の手が上がりましたが、もしあれでしたら併せてということでお願いいたしま す。 ○野田委員  若干ダブルところもあるのですけれども、島田委員もおっしゃったように、目的と名称 は明確化すべきだと思います。指針の改正には大賛成ですし、その実効あらしめるために 社会的にインパクトのある改正案にしたいと思っています。表題の「労働時間等設定改善 指針」という名前は、あまりにも社会から離れているような気がしてならないのです。そ れは中身の問題というよりは、名称も大事だと思うのです。そこはわかりやすい、社会に 向けてメッセージ性のあるような名称にすべきだというのが1つです。  また前文の中身について言わせていただきますと、労働時間の現状をどうとらまえるか ということです。現行の文言にも、改正案の中にも両方に出てきているので申し上げてい いかどうかというのもあるのですけれども、現状概ね目標を達成することができたという 認識なのですが、私はそうは思っていないのです。  確かに数値的には、こういうことで下がってきているという状況は認識しておりますけ れども、下段に出てくるような状況などを考えると、まだまだ不十分だという認識です。 「1,800時間を達成した」という文言は違うのだろうと思っております。確かに2003年辺 りの数値からすると大きく改善はされてきておりますし、これは労使の営みの中で評価は すべきだと思いますが、「達成した」という文言は使うべきではないし、その上に立って改 善策などを論ずるべきだろうと思っておりますので、そのことについて申し上げておきま す。 ○土屋企画課長  八野委員からお話がありました、特に憲章で描かれている目指すべき社会の姿が盛り込 まれていないということです。確かに今回ご提示している案では、憲章、行動指針の趣旨 にとどまっていて、お話のあった点を書き込めていないという状況にあります。お話があ ったように、目指すべき方向をはっきりさせて、それを踏まえて労働時間の面で何をやる べきかという整理がこの指針の中で十分にされるために、その点は確かに入ったほうがい いのではないかと思っておりますので、是非この場のご議論を踏まえて直していきたいと 思いますのでよろしくお願いたします。  労働時間の認識の点で、1頁で触れている正社員は短縮していないというところについて は、むしろ増加傾向にあるのではないかという点ですが、本日ご提示している資料No.2-5で 労働時間の現状の数値を少しお出ししております。1頁にありますように、総実労働時間で、 左側がパートを含む全体の平均値で、右側が一般労働者とパートに分けた数値です。17か ら18の傾向を見ると若干上がっているという傾向も見られます。  直近の数字も踏まえてといいますか、まもなく確定値も出てくると聞いておりますので、 踏まえてどうするかということは我々も考えたいと思います。この場でも、この辺の現状 認識をどう押さえていくのかをご議論いただければと思いますのでよろしくお願いいたし ます。  その点では、先ほど野田委員がおっしゃった1,800時間の目標を達成したことについて の認識をどうするかという部分についても、これは平成18年に設定改善法を作り、設定改 善指針を策定したときに、いまお話の中でも触れていただきましたように、現状の指針に おいても、そういった認識をこの労働条件分科会の場でもご議論いただいた上で押さえて いるわけですが、そういった点でそこの認識を変える必要はあるのかどうかという点につ いても、この場のご議論を踏まえて対応していきたいと思いますので、よろしくお願いし ます。  それから、指針の名称ですが、これは設定改善法という法律の下での指針ということで、 指針の正式な名称というのは変えるのが難しい部分もあろうかと思います。ただ、先ほど 申し上げましたように、この改正を期に、いままで知られていなかったという反省を十分 に踏まえて周知の徹底をしていきたいと思っていますので、その際にはワーク・ライフ・ バランスということが前面に出る工夫もしつつ、指針の周知をしていきたいと思いますの で、いろいろなアイディアがあればいただければと思っております。 ○岩村分科会長  八野委員と、野田委員のおっしゃったことですが、憲章で書かれたことというか、それ は今日の改正の案の新旧対照表の2頁を見ると、いちばん上のところで、改正案のほうで は「経済社会を持続可能なものとしていくためには云々」と書いてあって、その部分に労 働者の心身の保持であるとか、家庭生活とのとか、労働時間の柔軟な組合せというような ことが入っていて、そこから「このような考え方は」と引き取って、今回の憲章なり行動 指針に盛り込まれているという構造になっていると、私は読んでいましたものですから、 両委員がおっしゃられたことは、今回の改正案の中では表現されているのかとは理解して いました。ただ、ご指摘もあったところですので、改善の余地があるかどうかについては、 事務局でもご検討いただきたいと思います。  名称は先ほど企画課長からもあったように、こういう名前の指針だと法律であらかじめ 決められてしまっています。したがって、もし名称を変えるとなると法改正をしなくては いけないことになってしまいますから、少し話が大きくなって、今回のこの議論では難し いかと思います。他方、企画課長もおっしゃったように、周知という観点から、こういう 固い名称を使うかどうかというのは、検討の余地はあろうかと思いますので、それはまた 事務局でご検討いただければと思います。 ○今田委員  この法律があまり周知されていないということは、確かにそうだろうと思いますが、こ の法律が時短法から名前が改正されるときに、大きなポイントは、時間でこの法律を今後 の働き方を方向づけるのではなくて、新しい原理として、仕事と生活の調整、それはいろ いろな働き方の面に表われているという問題意識があって、この大きな改正が成立つ。こ こで十分な議論がされたと記憶しています。  「設定」という言葉自体は、難しく耳触りのよい言葉ではないことはたしかなのですが、 趣旨そのものは、いまワーク・ライフ・バランスと言われているような問題意識を色濃く 持って改正されたと思います。これが1つです。  もう1つは、これでよいのではないかということを言いたいのですが、そういう趣旨で 出来上がって動き出した法律なのですが、いま言ったように、あまり普及していない、知 れわたっていない状況で、折しも政府を挙げてワーク・ライフ・バランスという大きなプ ロジェクトが動いて、啓蒙活動が動き出したわけです。このワーク・ライフ・バランスと いうのはある意味で一般的な概念で、労使も、一般国民も、ワーク・ライフ・バランスを 実現しようというのは、あまり反対する人がいないぐらいに、受け入れられやすい哲学と して一般化されているというのが現実です。  ただし、これをお読みになってわかるように、漠然とした、悪く言えばアドバルーンの ような形で目標なのです。ここでいっている「経済的に自立が可能な社会」とか、「健康で 豊かな社会の時間確保社会」、「多様な社会」、これは誰もが賛成するけれども、これをどう 実現するのかと言い出すと難しいというのが、いまのワーク・ライフ・バランス提唱の現 実なのです。でも非常に重要です。  そういう状況で我々はどう受け取めるのかというときに、労働時間設定改善法、担当の 事務局でもすぐに出てこないぐらいに難しい名前なのは確かに問題だということも認めま すが、このようなものがあって、もともとワーク・ライフ・バランスという哲学を持って スタートした。基本的には労使の話合いによって推進する、労使の枠組みで推進する。あ まり拘束力も強制力もない法律としてスタートしたということも相俟って、力を持った法 律になっていないのはたしかですが、一般的なワーク・ライフ・バランスをもう少し限定 的に、実効あるもの、制度として改善していくというときに、労働時間というのは有益な スタンスであると私は考えてよいだろうと思うのです。豊かな暮らしだとか、生き甲斐の ある生活、それを実現するためにもう一歩踏み込んだときに、では労働時間、働いている 時間をどうするのかというのは1つの提案であるわけだし、有効な案として我々は考えて よいわけです。それで、この法律の枠組みの中に取り入れて、指針の改善として進めてい こうというのはわかりやすく、有効な方法だろうと、私は皆さんのご意見とは違った感じ として受け取っています。  ただし、この改善法が力がなかったというのは、労使の自主的な話合いというのが基本 ルールになっていることがあって、もう一歩、ここで言われているいろいろな提案が、実 効あるものとして先に進まないという面があるのです。このまま今回の案を読ませてもら うと、そういう不満が残っていて、ここに再三労使の話合いとか、枠組みというだけで、 後ろの行動目標にあるように、話合いの場というのは40%しか達していない現状です。将 来どう100%にするのかというように、非常に乖離した状況で、もう法律ができて何年かし ているにもかかわらず、労働時間の課題について労使が話合いの機会を設けますかという のは40%と非常に低いです。この低さというのが、認知度にもかかわっているのではない かと思うのです。強制力はないから、労使の自主的な考え方によるしかないというのはし ょうがないかもしれませんが、これではあまりにも弱いのではないかという印象を持って います。  というのは、ワーク・ライフ・バランスとか、仕事と調和の諸制度の普及、定着につい て、私は調査をやってきましたが、そういう制度の普及とか定着には、労使のコミュニケ ーション、話合いの場、そういうものが大変に効果があることは、いろいろな調査で検証 されているのです。そういう話合いがあることによって、情報収集をしたり、コミュニケ ーションを持ったり、工夫がされる。そういう話合いの場というのが労使の自主的な取組 でというところで放置されていたのでは、せっかくこういうものを作っても弱いのかなと いうのが、私の印象で、労使がこういう問題に取り組むことが積極化できるような、義務 化というのはきついかもしれませんが、もう少し実現できるようなアイディアをこの指針 は出すべきなのではないかというのが私の印象です。 ○紀陸委員  細かい点を含めて4点申し上げます。1つが、3頁の1の(1)です。この下に労働時間 等の設定の改善を図る趣旨が書かれていて、この下に数行、憲章ないし指針の圧縮した引 用が書いてあります。即ち、「労働時間等の設定の改善を含めた仕事と生活の調和の実現に 向けた取組は少子化の流れを変え、人口減少下でも多様な人材が仕事に就けるようにし 云々」とあるのですが、私どもこのメンバーとして携わってきまして、全体の組立てなり、 表現振りなどは相当に論議をしてきまして、ここで労働時間の設定改善がきっかけとなっ て少子化の流れが変わるというような断定とか、必然的な因果関係までをこの憲章、指針 で謳っているわけではないのです。この辺の表現は違和感を覚えるので、見直してほしい と思います。国民一人ひとりのライフスタイルを変えていこうというニュアンスで、労働 時間短縮の法改正に結び付けるということでもないでしょうし、これは捉え方として断定 的にすぎるのではないかというのが印象の1つです。  2つ目は、4頁の(4)の「経営トップに求められる役割」の中に、企業内の時間短縮の 推進体制を確立するためにも、労働時間設定の改善を進めるための責任者を配置すること などが重要であるという3行があるのですが、憲章でも、指針でも、ここまで踏み込んで いないのです。この憲章と指針は、ワーク・ライフ・バランスに対していろいろな受け止 め方があり、ワーク・ライフ・バランスという言葉を聞いただけで拒絶反応を起こす人も おられるわけです。ですから、できるだけ労使が自主的に取り組んで、さまざまな工夫を しながら、この考え方を実現していこう、という投げ掛けをしております、時短が重要だ から責任者を決めてやってくださいというところまで、この指針で踏み込んでよいのかど うか、それはちょっと違うと思います。確かに、トップと責任者がいれば進むかもしれな いけれども、憲章、指針はそこまで求めていませんし、法もそうです。それをここまで踏 み込んだ形で書かれるのは、話が違うのではないかと思います。  5頁の右の第2段落ですが、行動指針で数値目標の言及がありまして、それを引用してい るのですが、特に下線の引いてある中段から下の3行で、「事業主が労働時間等の設定の改 善を図るに当たっては、数値目標の内容も踏まえ、各企業の実情に云々」とありますが、 数値目標というのは指針の位置づけでは、あくまでも企業や個人に責務を課すものではな いとなっているわけです。ここは非常に論議があったところで、「数値目標の内容も踏まえ」 ときますと、あまり経緯を知らない方々は、これも企業ないし個人の義務なのかなと、間 違った受け止められ方をするので、「数値目標の内容も参考にしつつ」とか、そのような文 意に改めていただけないかというのが3点目です。  4点目は、何カ所かに「経営トップ」とか、「経営者のリーダーシップ」という言葉が出 てくるのですが、そもそもこういう告示とか指針という法律的な性格を持つ文書に、こう いう言葉が表現として相応しいのかどうか。「経営トップ」とか、「リーダーシップ」とい うのを安易に使うというのは、表現上の問題ですが、ご勘案をいただければという点です。 ○岩村分科会長  事務局から何かありますか。 ○土屋企画課長  まず最初の1点目ですが、確かに憲章からある程度引用を圧縮しながらやっているよう な点もあるので、憲章での表現振りと違う、位置づけと違うという話がある部分もあると 思います。ただ、いまお話が出た3頁の(1)で申し上げますと、今日は資料2-4として、 憲章、行動指針そのものを提出していますが、その2頁で、上から4つ目の段落で、「いま、 我々に求められているのは」というところで、仕事と生活の調和の取組の必要性、どのよ うな取組が必要かというところで触れている部分があります。ここに「少子化の流れを変 え、人口減少下でも多様な人材が仕事に就けるようにし、我が国の社会を持続可能で確か なものにする」という表現が使われています。つまり、ワーク・ライフ・バランスの取組 の内容が具体的に書かれている部分、求められる取組として具体的に書かれている部分を 引用したつもりですし、また、その次のフレーズは、その下の「明日への投資」と書いて いるところに、「企業の活力や競争力の源泉である有能な人材の確保・育成・定着の可能性 を高めるものである」という表現が使われています。そういう意味で2カ所から引いたの で、どうかというご意見はあるかもしれませんが、私どもとしては、ワーク・ライフ・バ ランスの取組の具体的な中身、趣旨を書いている部分を引用したつもりですので、その点 を踏まえて、この場でもこれが適当かどうかのご議論をいただければと思います。  4頁の責任者の話に触れている部分ですが、これは先ほども申し上げましたように、経営 トップの役割をよりはっきりさせていく具体的な取組の1例として、ここでは書いていて、 そういった意味で、こういった取組が重要であるという書き方をしているところです。  経営トップが自ら旗を振って、こういう取組を興していくことの重要性は、いま紀陸委 員からもお認めいただいたところですので、こういった具体例を書きながら、具体的な取 組を企業の中でご議論いただけるようにしていくことができればという思いがあって、書 かせていただいたものです。  5頁の「数値目標の内容も踏まえ」というところですが、ここは紀陸委員がお話になった ような、数値目標の位置づけがあることを私どもとしては承知をしつつ、そういったこと もあるので、「数値目標の内容も踏まえ、各企業の実情に応じて計画的に取り組むことが必 要である」という表現にしているところですので、その点をお汲み取りいただければと思 っています。  「経営トップ」あるいは「リーダーシップ」という言葉が適当ではないのではないかと いう話でしたが、この点は他の例なども当たりますと、経営トップもリーダーシップも、 それなりにご理解いただきやすい日本語ではあるかと思いますので、このままで無理がな いということもあるのではないかと思いつつ、他のワーディングも探してみたいと思って いますので、その点はまた次回までに整理をしていきたいと思います。 ○岩村分科会長  先ほどの議論にもありましたように、この指針自体は強行的な法規範ということではな いので、したがって紀陸委員のご指摘も理解できるところはありますが、そこまで法制局 的に用語に拘る必要はあまりないのではないかと思います。 ○土屋企画課長  他の用例では、「経営者」という使い方とか「リーダーシップ」に変わって、「主導して」 という言い方はあるようですので、そこは工夫はしてみたいと思います。 ○紀陸委員  いまお答えいただきましたが、特に4頁の「労働時間等の設定の改善を進める責任者の 配置」というのは、さまざまに労使で話し合って、いろいろな工夫をしようというのはこ れからなのです。これからなのに、確かに例示とはおっしゃいますが、こういうのが入っ てくると、責任者を選任すればそれで事足りるということが起こりかねないので、こうい うのは慎重であるべきだと私どもは思います。  それから、くどいようですが、5頁の「数値目標の内容も踏まえ」というのは、数値目標 の意義というのは相当に論議をしたところで、あくまでも私どもは言葉として、「数値目標 の内容も参考にしつつ」とか、「参照して」という表現のほうが、特に指針の論議の経過を 適切に反映させる表記ではないかと思うのです。ここはあえて拘らせていただきます。 ○岩村分科会長  ご意見も踏まえて、事務局でも検討していただくとしたいと思います。 ○野田委員  紀陸委員がおっしゃったところについてですが、5頁の数値目標についてですが、確かに 行動指針を策定する際に、個々の個人や企業に課されるものではないという辺りを巡って 論議があったことについては承知をしていますが、そうは言いましてもということで申し 上げるのですが、私は今回数値目標をお作りいただいたことを高く評価したいと思ってい まして、実効を上げていくという観点からすると、先ほど言われた「数値目標の内容を参 考に」というより、私としては「数値目標の内容を重く受け止め」みたいな、踏み込んだ 文言でもよいのではないかと思っております。各企業の実情に応じてという表現は入って いるわけですから、私としては、「重く受け止める」ということが書けないとすれば、「踏 まえる」ぐらいのところで落としていただいたほうがよろしいのではないかと思います。  その上で、先ほど申された4頁も、確かに責任者を配置するという具体的な事象を捉え たところは、私もどうなのかと思いまして、それらを含めた労使間の工夫があればよいと 思っていますので、そういった書き振りでもよいのではないか。  その上で3行目に「労使による自主的な取組を基本としつつも」とくるのです。否定し ているわけではないのですが、実は両方大事なわけで、そういう意味では、基本とした上 で自らのリーダーシップを発揮していただくという文言のほうが、適切ではないかという 感じがしますので、申し上げておきたいと思います。 ○八野委員  数値目標の辺りをどう扱うかは重要なところだと思うのです。憲章や行動指針を作ると きにさまざまな議論があったことを承知の上で話をさせていただきますが、憲章や行動指 針を労働時間という中に落とし込んだときに、社会全体で取り組んで、企業や個人に課す ものではないといっても、これだけ労使で労使でとなってくると、労働者と使用者とでの 話合いの中で、この数値目標を何らかの形で達成させていかなくては、政府が考えている ワーク・ライフ・バランスは、永遠に現実のものにならないことになってしまうのではな いかと思っています。  そのため、個人的に言えば、もう少し踏み込んで書いていただきたいという気持もあり ますが、数値目標の内容も踏まえ、労使がさまざまな議論の中でやっていくということが 重要だということを認識しなくてはいけないのではないかと思っています。前文の中で、 憲章と行動指針をどのように今回の労働時間改善指針に位置づけるのかを明確に書き、さ らに今回の指針で数値目標をどのように捉えていくかを改正案ぐらいの書き振りで書いて いかないと、今回改正した意図が、労使に伝わらないのではないかと思います。  もう1点は、憲章や行動指針においては国民の役割、国民の取組も書かれているところ もあるので、国民の多くが勤労者ということで考えていくと、働いている者の考え方を明 確に出していくべきなのではないかと思います。 ○小山委員  ワーク・ライフ・バランス憲章というのは、ある意味で中身として重い、労使のトップ が合意したということを含めて、国の施策として進めていこうとなったわけですから、そ れはきちんと受け止めなければいけないと思うのです。これは決して労働条件改善のため の憲章ではなくて、企業の経営にとってもワーク・ライフ・バランスはプラスになるのだ という共通認識があったからできたのだと思うのです。とすれば、それに向けて労使がど う努力していくのかという姿勢でここは議論しないと、あまり後向きになってはまずいの ではないか。これは日本の社会、あるいは日本のこれからの産業、経済のあり方を、ワー ク・ライフ・バランスに基づいて内需型のしっかりとした基盤をつくっていこうというこ とも含めて、私は合意されたのだと思うのです。  だから、もっと前向きな形で、労使が積極的にやっていこうという方向を示すべきです。 名称の問題もそうなのです。わけのわからない、パッと名前が出てこないような名称では なくて、どう積極的にしていこうかという、そこは国の施策としてもう一歩踏み込んでい くべきだろうと思います。  せっかく数値目標を作ったのだったら、本来は労働基準法を直してでも進めるべきだと 思うのですが、憲章の合意のプロセスからいくと、そこまではいかないのだろうというよ うに思いますので、そうだとすれば、この指針だって、法律の改正をしたっていいのでは ないですか。法律にも手を着けてでもやりますというぐらいの姿勢を、私は厚生労働省に 見せていただいたほうがよいのではないかと思います。 ○岩村分科会長  ご意見としては承ります。 ○小山委員  具体的な中身についてさらに細かい点を含めて、1回だけで終わるみたいな話だから、も っと議論するのかと思ったら、これだけですかという感じがするのです。中身の項目でも、 もう少し吟味して、本当にワーク・ライフ・バランスという観点からいって、労働時間の あり方で、ここはもっとプラスすべきではないかという議論をするのかと思っていたので すが、これだけで次回は諮問・答申ということだと、せっかくの機会なのに残念だなとい う気がするのです。 ○岩村分科会長  いままさにお伺いしようと思っていたのです。先ほどの紀陸委員の問題提起の部分も含 めて、そこを中心に議論はされていたので、それ以外の点でご意見があればということで お伺いします。 ○石塚委員  労働側の主張というか、異口同音に言っていることなのですが、私は審議会で前の時短 促進法から、この設定改善法に変えるときも参加しましたので、趣旨はわかっているつも りです。したがって、時短促進法のときの1,800時間が、いまの状況では同じように発揮 できない。だから、いまの状況に合うように趣旨を変えるべきだということは飲み込んだ 上で臨んできた経過は十分に承知しています。  ただし、だから上から被せるようなことはできない。したがって労使の自主的な取組な のだ。だから、落とし込んでいくときの実務的な手法として指針が出てくる。それも理屈 としてわかるのですが、時短促進法というのは、1,800時間という明確なものがありました。 それが無理になってきたのもわかります。ただ、法律というのは旗印が重要な役割だと思 っていました。率直にいって、設定改善法というのは旗印に欠けていた。今度ワーク・ラ イフ・バランス憲章なり、指針が出ることによって、一種の社会的アピール性というか、 世の中全体に対してこういう問題意識があり、このように変えていかないとこの国は大変 なことになるという、1つの旗印的な役割を期待できると思っています。  したがって、法律論からすれば、この設定改善法という法律自体を変えることは難しい というのであれば、ワーク・ライフ・バランスの憲章なり行動指針が出てきたので、それ を旗印としてどうやって活かしていくのかといえば趣旨をうまく汲み取った格好でやって いるわけです。したがって、設定改善法の指針という名称を変えられないとすれば、どう したらアピールできるのか、どうしたら労使の自主的取組が促進できるような枠組みを作 れるのかが重要だと思うので、周知徹底させるときに、一工夫でも二工夫でもできるはず だと思います。  したがって、正式名称は設定改善法の指針となるかもしれませんが、それをアピールす るときには、例えばワーク・ライフ・バランスということを前面に出してもできるはずで す。私たちは言いたいことはたくさんありますが、もともとの流れから汲んできて、設定 改善法の趣旨を活かそうとすれば、しかも憲章、行動指針の趣旨を踏まえて継続すれば、 そのようになるのではないかと思います。  ワーク・ライフ・バランスという表現はせっかくここまできたわけですから、正式名称 は指針という名称を使うにしても、周知徹底に関しては、アピール性のあるように、一工 夫も二工夫もしてほしいと考えています。 ○岩村分科会長  いまの点について事務局から何かありますか、先ほども同じ趣旨でお答えをいただいた かと思うのですが、そういうことでよろしいですか。 ○長谷川委員  大きい話と細かい話の2つ申し上げます。私はワーク・ライフ・バランス憲章と行動指 針というのは、ある意味では労使のトップが、我が国の働いている国民の状況について認 識して、労働力人口は減るし、少子化対策もやらなければいけないし、労働時間は一向に 減る様子もない、過労死、過労自殺と世界で言われないような言葉が使われているし、働 き盛りの30代、40代が長時間労働になっていて、このままでは困るので、ある意味ではワ ーク・ライフ・バランス憲章という高らかなものについて合意して、行動計画を作ったと いうことではないかと認識しています。  トップが決めたやったことであって、私どもとしては何とも言えないのですが、「行動指 針」の「数値目標」は「企業と個人に具体的に課するものではない」と書かれているわけ です。労使のトップが国の状況、働き方の状況はこれではよくないとして、お互いに取り 組みましょうねと決めたということで、それを具体的にどのようにして取り組んでいくの かといえば、いつも経済界の皆さんがいう「労使自治」で取り組むわけですよね。労使で どのような取組方がよいのかなと考えるときに、労働関係の法律を開いてみると、労働時 間等設定改善法という法律があって、その中の指針を参考に取り組むということは、常識 の範疇だと思います。もしこれが常識ではないとしたら、審議会委員としてどうなのかと いうことが問われると思います。義務でもなく罰則をかけるというものではなくて、労使 で取り組んでみたらどうかという指針の範疇です。労使のトップがあれだけ汗をかいて、 ナンバー1とナンバー2同士で決めたことなのだから、私たちはナンバー5ぐらいなのでし ょうか、その人たちが具体的なロードマップを作るのは必要なのではないかなと思います。  おそらく使用者の皆さんは、またコストがかかるのではないかと思って嫌なのかもしれ ませんが、何も費用のかかる話ではありません。もともと存在する委員会などを活用して、 労使で進めましょうということです。  もう1つは、今田委員が言ったように、こういうときでないと委員会をなかなか開かな いのです。私も過去に職場で、時短推進委員会の作業チームのメンバーだったことがあり ます。あれは週40時間です。週40時間労働制をつくろうといって、日本の国全体が、官 民が国を挙げて取り組んだときです。職場で時短推進委員会とか作業チームをつくって、 まず、どうやったら効率的に仕事ができるかとか、無駄をなくそうという発想で、週休2 日制週40時間を入れていったわけです。今回もそういうことをやろうということなので、 それはなにも具体的に箸の上げ下げまでを指導しているわけではありません。こういう時 期でないと、また忘れてやらなくなるから、労使で工夫した取り組みをこの時期にやった ほうがいいと思います。  紀陸委員がおっしゃる、「トップ」という言い方については、別な書き方にすればよいの ではないかと思います。労使の自治に任せてやるということでよいのではないかと思って います。現状はあまりにもひどいから、労働時間の問題について労使で話をしましょうと いう、そういう社会的な気運をつくれればよいのではないかと思っています。  次に細かい話ですが、1頁の前文での1,800時間についてです。1,800時間があったから こそ、週40時間、週休2日制、年休取得が進んだのであって、こういう数値目標がないの は駄目だと思っています。ここは今回も述べさせていただきたいと思います。  次に、1頁の下から8行目で、「いわゆる正社員等については、依然として労働時間は短 縮していない」とありますが、短縮していないのではなくて長時間化しているのが実態で すので、「労働時間はむしろ長時間化している」と書いてほしいです。  8頁のロで、「いわゆる短時間正社員のような柔軟な働き方」とありますが、柔軟とは何 を言うのか、柔軟の意味を教えていただきたいと思います。  9頁に年次有給休暇のことが書いてあるのですが、ここの調査結果を正確に書くと、ため らいを感じる理由の(1)は「みんなに迷惑がかかると感じる」で66.2%、(2)が「後で多忙に なる」が43.3%、(3)が「職場の雰囲気で取得しづらい」が36.3%となっています。(2)の「後 で多忙になる」というのは、要員配置で重要な表現なので、これは3つきれいに書いてほ しいと思います。  11頁のテレワークですが、テレワークの定義は何なのかを教えてほしいのです。テレワ ークとか、テレワーカーの違いは何なのか教えていただきたいと思います。テレワークに ついてはよくわかりません。以上です。 ○岩村分科会長  大きなところはご意見として伺うとしまして、細かい点についてお答えいただきたいと 思います。 ○土屋企画課長  特にご質問としてあった点についてお答えします。8頁のロの短時間正社員のところです が、これも行動指針からの引用によっている部分がありまして、資料2-4の行動指針の3 頁に「多様な働き方の選択」という項目がありまして、ここに短時間正社員だけではない のですが、いろいろな働き方が列挙された上で、「個人の置かれた状況に応じた柔軟な働き 方を支える制度の整備」と書かれた部分を踏まえた表現になっています。選択肢の1つと して、こういう形をとるのも柔軟な働き方の実現につながるという趣旨のつもりです。  テレワーク、テレワーカーがどういったものかですが、一般的には職場を離れてという か、オフィスに出勤をして働くという働き方ではなくて、という使われ方をしている言葉 ですが、今回の行動指針や私どもがテレワークの施策を打っている中での意味合いとして は、資料2-2の新旧対照表の20頁に、数値目標の補足的な説明、指標の算定方法等を書い ている部分がありまして、ここにテレワーカー比率の定義が書かれています。下のほうに あるようなA.B.C.D.の4つの条件をすべて満たしている人が、ここではテレワーカーだと 位置づけられています。  具体的には、Aはともかくとして、Bで、ITを使っていて、ITを使っている場所が自分 が所属する部署のある場所以外で、かつDにあるように1週間当たり8時間以上は、そう いった場所で働いているという、いわば全部在宅で、あるいは全部外回りということでな くて、1週間当たり8時間以上あれば、テレワーカーだという位置づけの中で、テレワーク の促進を図っているということです。 ○長谷川委員  「後で多忙になる」はどうするのですか。 ○土屋企画課長  そこはご意見として承って、また検討したいと思います。確かにデータをご紹介いただ きましたように、順番としては2番目の項目のものが記載されていない点では、不十分だ と思いますので、追加する方向で検討したいと思います。 ○原川委員  中小企業の立場から質問と意見を言わせていただきたいのですが、まず、5頁と9頁で、 5頁でいうと2で、先ほど「経営トップ」という言葉が出ましたが、文章を見ると、事業主 等は「経営トップのリーダーシップの下」、努めなければならないと読めるのですが、事業 主と経営トップというのはどう違うのでしょうか。少なくとも中小企業では、これを見た ときに事業主も経営トップも社長だとなると思うのですが、文章的にどう使い分けている のかが第1点です。  次ですが、これは意見と質問ですが、5頁で、先ほど紀陸委員がおっしゃった「数値目標 の内容を踏まえ」というところですが、数値目標を見ると、18、19頁で、例えば18頁の 労働時間等の課題について労使の話合いの機会を設けている割合は現行で41.5%、年次有 給休暇取得率が現行で46.6%、これを後の備考で見ると、この2つは、データは調査デー タの数字ということですが、この2つの調査はいずれも企業規模30人以上の企業の調査結 果ということであろうかと思います。したがって、30人未満の中小企業が日本では断然数 が多いわけですから、中小企業の実態を反映していない数字になろうかと思います。我々 の意見を言う機会が与えられていなかったこともありますが、こういう全企業、国民に対 して設定する目標、みんなで守りましょうという目標を作るときに、データがないという 理由からだと思いますが、30人以上の数字をポンと載せて、これを5年後にはいくらにし ましょう、10年後にはいくらにしましょう、そういうところは、目標設定に問題があるの ではないかと思っています。したがって、5頁に戻りますが、「数値目標の内容も踏まえ」 という言葉は、きつすぎると思いますので、「参考として」とぐらいにしていただきたいと お願いする次第です。 ○岩村分科会長  ご意見の点は承ることにして、質問についてお願いします。 ○土屋企画課長  最初にお話がございました、事業主と経営トップの言葉の問題ですが、この指針ないし 法律もそうですが、そこでいっている事業主というものは、労働者と雇用契約、労働契約 を結ぶ主体としての事業主なので、法人の場合には法人そのものが事業主と表現されてい ます。したがって、事業主はそういうことで、企業ないし会社だと思っていただければと 思いますし、そういった中で社長に当たる方、経営者の方が経営トップと表現していて、 使い分けています。  数値目標の点についてご指摘がありましたが、確かにこの目標を立てるに当たりまして は、私ども内閣府に協力しながらやっていた部分はあるわけですが、数値目標ですので数 値がないと目標たり得ないということで、既存の調査も含めて、統計的に把握できる部分 で立てさせていただいていることがあろうかと思います。  ただ、そういった規模の大小の問題はありますが、ここで書かれている部分というのは、 こういった方向で目指していくべきということについては規模の大小において変わりがな いのではないかと考えていますので、そういったことを踏まえて、この指針の改正の案に おいても、1つは20頁以降にあるような数値の持っている意味を十分に引用した上で、先 ほど申し上げたように事業主全体の方に向けて、5頁にあるような表現で「数値目標の内容 も踏まえて、各企業の実情に応じて」と書かせていただきました。 ○大沢委員  初めてなので経緯をよく知らないので、質問自体が適切であるかわからないのですが、 例えば労働時間に関して、最低の休息時間の1日に11時間というような規定が諸外国であ りますが、そういった形で、これ以上は働かせてはいけないというような最低の基準みた いなものは、ここでは議論しないということなのですか。 ○土屋企画課長  いまお話があったような最低基準というのは、日本では法令上はないという状況にあり ますが、先ほど申し上げましたように今日ご審議をお願いしていますのは、憲章行動指針 という、先ほど来お話も出ていますように、官民トップの方の合意の下で作られたものを 踏まえて、それをいかにすでにある設定改善指針の内容の充実にしていくかになりますの で、いまお話があったような点は、いわば新たな法規制をどうするかというような趣旨に なってこようかと思いますので、それは議論としては別の場面でになるのかなと思います。 ○石塚委員  15頁の下線の入っていないところのホで、「自発的な職業能力開発を図る労働者」の部分 です。今回の改正の下線が入っていませんが、下から2行目にいろいろな支援策が羅列し てある中で、「始業・終業時刻の変更、時間外労働の制限等」とかありますが、その前に「短 時間勤務の制度」というのが入らないかという意見を持つものです。  具体的な趣旨を言いますと、行動指針とか憲章を読みますと、自己啓発とか、能力開発 はすごく強調されています。多様な働き方というのも相当強調されていまして、その中に 短時間勤務という表現が相当入ってきています。短時間勤務というのはいろいろな制度も ありますが、能力開発と関係して短時間勤務が使えるのであれば、相当趣旨にかなうのか なと思いますので、数値目標にも、短時間勤務や能力開発のことは出ているので、この指 針でも、15頁の能力開発についても、短時間勤務の制度を加えていただけるとありがたい と思います。  具体的な書き振りからいくと、13頁の右下のほうに、これは育児・介護休業労働法の関 係ですが、「始業・終業の繰り上げ・繰り下げ、所定外労働をさせない」と書いてあるので すが、もう1つ短時間勤務の制度が入っていますよね。それで「勤務時間の短縮等の措置」 と括ってありますので、同じ書き振りのほうが受け止めやすいかと思っています。これは 意見です。よろしくお願いします。 ○岩村分科会長  それではご意見として承って、事務局で検討していただきます。 ○八野委員  7頁の(ニ)の「業務の見直し」に関することです。行動指針では、ここはかなり踏み込 んでおり、「労使で長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得促進など、労働時間等の設定改 善のための業務の見直しや要員確保」と書いてあります。それとの関係では、指針の「要 員計画」では不十分なのです。時間を守るためには、計画をつくり、確保することが必要 です。行動指針には、そこまで踏み込んで書いていただいているというところがあります。 設定改善指針でも業務の見直し関連のところで、要員計画に留まらず、要員確保もきちん と取り込むことを明記していただきたいと思います。 ○岩村分科会長  それも検討させていただきたいと思います。 ○長谷川委員  先ほど労働時間等設定改善委員会は、そんなに費用がかかるはずがないと申し上げたの は、例えば36協定を結ぶときに、1年で結ぶところ、6カ月で結ぶところ、3カ月で結ぶ ところあります。必ず36協定の締結の時に労使がテーブルにつくわけです。そのときに労 働時間について意見交換することは可能だと思うのです。労働時間の問題は、労使自治で 解決しようというときに、そういう機会も活用しながらメッセージを出していくというこ とで、何も新しく委員会などをつくるべきと言っているわけではありません。現在でもで きるのではないか、そのためのメッセージを出すことが必要だという意味で申し上げまし た。 ○岩村分科会長  その他はよろしゅうございますか。本件についての議論は今日はここまでとします。本 件の取扱いについては、先ほど労側からもご意見があったところですが、私としては、こ の労働時間等設定改善指針の案については、この後関係省庁等の協議と、都道府県知事の 意見聴取を行う。そして、次の本分科会において諮問をして、答申を行うことにしたいと 考えています。したがいまして、協議等を行う際の指針の案としては、今日ご議論いただ いた案で概ね妥当と考えてよろしゅうございましょうか。 ○小山委員  概ね妥当というのはどういう意味ですか。 ○岩村分科会長  事務局から正確に説明していただいたほうがよろしいと思います。 ○土屋企画課長  この後の手続きとして、関係省庁と協議をしたり、都道府県に意見を照会するという手 続きがあります。もし差し支えがなければ、今日お出しした案でこれらの内々の協議をま ず進めさせていただきたいという趣旨です。最終的な確定は3月7日に向けて、私どもで 今日いただいた意見を調整させていただき、また事前に調整もさせていただいた上で、固 めていきたいと思いますので、その前にそういった内々の協議を進めさせていただきたい という趣旨ですので、確定に向けた作業は別途きちんとやりまして、ご相談もさせていた だきたいと思います。 ○岩村分科会長  こちらで答申をいただいてから協議に持って行くということではなくて、先に内々の協 議等をさせていただいた上で、次回の本分科会でと。 ○小山委員  変更があり得るということで事前に手続される分にはよいと思うのですが、概ね妥当だ といわれていますと言われてしまったら、我々の立場がないですから。 ○岩村分科会長  そういった趣旨ではございません。先ほど申し上げた趣旨は、協議等を行う際の指針の 案としては、これで概ねよろしゅうございますかということです。そういうことでよろし ゅうございますか。                  (了承) ○岩村分科会長  ありがとうございます。次回の日程について事務局からお願いします。 ○土屋企画課長  次回の分科会は3月7日(金)の17時からで、場所はこの庁舎の16階、労働基準局の 第1、2の会議室で開催する予定です。なお、いまご説明したように、7日にお諮りする案 の取りまとめに向けて、事前に今日の案で関係省庁、都道府県との協議を内々にさせてい ただきたいということで、引き続き案の確定に向けては皆様方にご相談をしながら進めて いきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○岩村分科会長  これをもちまして今日の分科会は閉会とします。議事録の署名ですが、労働者代表は浦 野委員、使用者代表は紀陸委員にお願いしたいと思います。今日はどうもありがとうござ いました。 照会先:労働基準局勤労者生活部企画課企画係(内線5353)