08/02/08 小児薬物療法検討会議 第5回速記録 第5回 小児薬物療法検討会議 平成20年2月8日(金) 霞が関東京會舘 ゴールドスタールーム ○事務局  定刻より多少早い時間ではございますけれども、先生方おそろいでございますので、 ただいまより第5回小児薬物療法検討会議を開催させていただきたいと思います。  本日の出欠の状況でございますが、横田先生、橋本先生、古澤先生から御欠席との御 連絡をいただいております。  また、本日は参考人といたしまして、日本小児リウマチ学会から横浜市立大学の森先 生、日本小児神経学会から横浜市立大学付属市民総合医療センターの根津先生にお越し いただいております。  それでは秦先生、以降の議事進行の方をよろしくお願いいたします。 ○秦座長  こんにちは。第5回の小児薬物療法検討会を始めさせていただきます。まず事務局か ら本日の資料の御説明をお願いします。 ○事務局  本日お手元の配付資料でございますが、資料1といたしまして「小児薬物療法検討会 議」において検討を開始する薬物療法、資料2といたしまして、「メトトレキサート」 に関します報告書、資料3といたしまして、メトトレキサート報告書見直しのポイント、 資料4といたしまして、小児薬物療法検討会議の「A型ボツリヌス毒素」に関します報 告書。  以降参考資料といたしまして、開催要項、委員リスト、メトトレキサートの添付文書、 日本小児リウマチ学会等の編集によります初期診療の手引き、それからリウマチ治療薬 用量用法改定検討委員会におきます報告書、参考資料6といたしましてA型ボツリヌス 毒素の添付文書。以上でございます。 ○秦座長  はい、どうもありがとうございました。何か落丁そのほか抜けている資料の方はいら っしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。それではきょうの議事に従って進めて いきたいと思います。最初にワーキンググループの検討状況の報告について中村先生お 願いします。    ○中村委員  国立成育医療センターの中村でございます。ワーキンググループ座長でございます。 前回も御報告している品目が多くございますので、今回は前回の検討会議以降動きがあ るものについてのみ御説明をいたします。  まず酢酸フレカイニドでございますけれども、第3回の検討会議でレポート作成者で あります滋賀医科大学の中川先生より詳細に報告をいただき議論をしていただいており ますけれども、現在使用実態調査を行っておりまして、まだ症例が集まっておりません けれども、その結果を踏まえまして再度ワーキンググループで検討をすることになって おります。  それからメトトレキサートにつきましては、ワーキンググループでの再度の検討を終 えまして今回報告をいたします。  あと、アセトアミノフェンでございますけれども、小児領域における解熱鎮痛という ことで2007年9月28日に一部変更承認が下りたということは、もう皆様御存じかと思 います。  あとA型ボツリヌス毒素でございますが、ワーキンググループの検討は終了しまして、 今回の検討会議で根津先生より報告書の内容を御紹介いただくということでございまし て、現在学会の方で本剤のガイドラインを作成中でございます。  その他のものにつきましては、次回以降に検討ということでワーキンググループで準 備を進めるということになっております。  以上でございます。 ○秦座長  ありがとうございました。何かただいまのワーキンググループの検討状況について御 意見あるいは御質問などございましたらいかがでしょうか。よろしゅうございますか。 それではどうもありがとうございました。  次は、個別医薬品に関する報告に関して、最初にメトトレキサートについて、前回か なりの議論があり、特に投与量、投与方法などについて活発に議論していただきました が、そのあたりを中心に今回改定をしていただいたわけです。それについて事務局から 御説明をいただきたいと思います。 ○事務局  ありがとうございます。そうしましたらお手元の資料2及び資料3に基づきまして御 説明をしたいと思います。  まず資料2でございますが、前回森先生の方から詳細に御説明をいただいているかと 思いますが、概要についてまず簡単に事務局の方から御紹介したいと思います。  医療上の必要性につきましては、この若年性特発性関節炎に対しまして、このメトト レキサートの使用ということについての検討でございますが、我が国におきましては16 歳未満の子供さん10万人に9.74人の割合で認められる疾患で、本疾患は1年間に10 万人に約1人の割合で発病するというふうに言われております。  この若年性特発性関節炎、JIAと申しますが、この治療薬といたしましては初期の 炎症に対して非ステロイド抗炎症剤が使用されることが一般で、米国におきましてはJ IAに承認を得ている薬剤としてはアスピリン、ナプロキセンとトルメチンの3剤であ り、イブプロフェンにつきましても小児薬用量が設定されている状況でございます。我 が国におきましてはNSAIDsでJIAの適応を得ている薬剤は1剤もなく、鎮痛目 的でイブプロフェンが使用されるといったような状況でございます。   メトトレキサートに関しましては、欧米を中心に1980年代から小児の関節炎を対象と した広範な臨床試験が行われ、無作為比較試験でも関節型においてプラセボよりも効果 があると。また、米国では、JIAに対する治療薬として承認されているほか、欧州に おきましても各国の承認状況が多少異なるものの患児は広く恩恵を受けていると、そう いったような状況にあるというふうに御報告いただいております。  これらの状況を踏まえまして2ページ目でございますが、我が国で必要と考えられる 具体的処方等に関する具体的処方等に関する概要としまして、予定効能・効果、予定用 法・用量ということで、ここの部分につきましては前回御議論をいただきましたので後 ほど詳細に御説明いたしたいと思います。  それから3ページ目以降海外の承認状況及び文献情報等ということで、4ページ目か ら無作為比較試験等の公表論文としての報告状況をおまとめいただいております。   この中で5ページ目でございますが、18歳未満のJIAの患者さん127例に関しまし て二重盲検の試験を行ったところ、10mg/平方メートル/週の群におきまして63%に改善が見られ、 これにつきましてはプラセボとの比較において有意な差が認められておると、こういっ たようなデータを中心にこの薬剤のJIAに対する効果が認められているというふうに おまとめいただいているところでございます。  それから9ページ目以降でございますが、教科書等への標準的治療としての記載状況 をおまとめいただいておりまして、代表的なNelsonのテキストブックに関しましては、 メトトレキサートにつきまして1週間に1回10mg/平方メートルの経口投与でプラセボ投与よりも 明らかに良好な効果を示すといったようなことが記載されております。  このような文献あるいは教科書の記載などを踏まえまして、12ページ以降でございま すが、まず国内での使用実態といたしまして、JIA68例の使用実態調査を行ったとこ ろ、1週間の投与量は最低3.12、最高17.26、平均といたしまして8.73mg/平方メートルこういった ようなデータが得られております。このうち有害事象といたしましては10例で認められ ていて、嘔気・嘔吐・下痢・頭痛・倦怠感といったようなごらんのような有害事象が報 告されております。  週当たりの投与回数といたしましては、1回という例が18例、2回が50例、平均が 1.74回で、3回以上に分割して小児のお子様に分割して投与されている例というのはご ざいませんでした。  このようなことを踏まえまして、有効性の総合評価といたしましては、13ページでご ざいますが、我が国で承認するに足るエビデンスは十分にあるのではないかということ、 それから、安全性の総合評価といたしましては、メトトレキサートの投与というのが小 児の忍容性が高く、副作用を調べたところ胃腸障害、口内炎、肝酵素異常、頭痛、白血 球減少症といったような有害事象の報告がございますけれども、14ページの方にまいり ますと、国内外で安全性プロフィールに特記すべき違いというのは特段認められないの ではないかといったようなおまとめをいただいているところでございます。  このようなレポートを前回おまとめいただき御議論をいただいたわけですが、その中 で用法・用量に関しまして御議論をいただいたところです。資料3に基づいてポイント を御説明したいと思います。  資料3のポイントですけれども、小児に対する用法・用量につきまして、国内使用実 態調査などを踏まえたものにするという観点から、ワーキンググループの方で再度御検 討いただいているところです。  前回の報告書におきましては、四角囲いにありますように、まず3回の経口投与とい うことを基本としつつ、必要に応じ回数を減らすと、週1回の投与も認めるといったよ うな考え方でまとめておりましたけれども、成人の用法が3分割というところを基本と するものの、国内使用実態調査について3回分割の投与の例はないということ、あるい は、服薬コンプライアンスの向上の観点から、医療現場での裁量の余地の必要性といっ たようなお話もございましたので、変更後といたしましては、1週間当たりの投与量1 回または2〜3回に分割して経口投与する。分割して投与する場合はこのような条件で 行うといったような書きぶりに変更してはどうかという御提案をいただいております。  次に用量の観点でございますが、前回の報告書におきましては10mg/平方メートルを1週間の単 位の推奨用量として記載しておりましたけれども、海外及び文献での推奨用量が10mg/ 平方メートル/週であるものの、国内使用実態調査では8.73を中心とした用量が用いられていると いうこと、また、用量につきましても、症状等に応じて医療現場での裁量の余地の必要 性があるということ、また、小児より成人の忍容性は低いといったような報告もござい まして、特に10代後半の小児に対する投与について注意喚起が必要であるといったよう な観点から、変更後といたしまして、1週間当たりのメトトレキサートとして4〜10mg/ 平方メートルを経口投与するといったような記載に変えてはいかがという御提案をいただきまし た。  その他といたしまして、本剤の投与に当たっては、特に副作用の発現に注意し、患者 の忍容性及び治療上の効果をもとに、個々の患者の状況に応じて投与量を適切に設定す るということ。  また、本剤につきましては、成人の方が小児に比べ忍容性が低いという報告があるの で、若年性特発性関節炎の10代半ば以上の年齢の患者さんの投与量については特に注意 する必要があるという注意喚起が必要であるという御意見をいただいております。  以上でございます。 ○秦座長  はい。どうもありがとうございました。それでは今の説明に対して何か御質問あるい はコメントなどございましたらお伺いしたいと思いますがいかがでしょうか。  森先生何かコメントございますか。 ○森参考人  横浜市立大学の小児科の森です。今回はどうもありがとうございました。  今の御説明でほとんどお話ししていただいたわけですが、一部つけ加えさせてくださ い。ガイドラインの件を少しお話しさせていただきたいと思います。   実は、小児科学会誌の小児リウマチ学会分科会報告としてこのJIAの初期治療のガ イドライン公表しております。これは、2007年版ということでつくりまして、これが参 考資料4なのですが、実はこれはまだメトトレキサートが認可されていないという条件 でつくったものですので、今回の会議に基づいてここを変更するという作業を進行させ ています。ですので、ここの決定事項に基づいて、また診療のガイドラインの手引きに 即して改定していきたいと思っております。それ以外は特にございません。 ○秦座長  ありがとうございました。森先生には非常に詳細な御検討をいただきまして、どうも ありがとうございました。  それではほかにコメントなどございますか。   ○宮坂委員  質問なのですけれども、資料3のところの用量のところがよくわかりません。下の段 で、10mg/平方メートルを基本として、低い方の値をとっているわけですが、その低い値の理由で、 左の白い抜け矢印のところに「他方、小児より成人の忍容性が低いとの報告があり」と あって、「10代後半の小児に対して注意喚起が必要」と書いてあります。これを見る限 り、日本で使われている年齢層が若いために、比較的低目の設定をすることになったの か思いました。そこで今度下の方を見ると、「本剤については、成人の方が小児に比べ 忍容性が低いとの報告がある」、かのように書かれていてわかりにくいので御説明をい ただければと思います。 ○森参考人  この点につきましては、私たちは最初この10mg/平方メートル/週という形の量を推奨用量として 提示したわけですが、実際に実態調査を本邦の小児リウマチ専門施設で行いましたとこ ろ、やはり成人の最大の規定量が8mg/週ということもあったせいか、この10mg/平方メートル/週 を使っている例が余りなくて、検討するためには4mg/平方メートル/週という少ない量も実際に行 われていることを実態調査の結果で出しております。その結果やはり少量でも効いてい る症例もございますので、どうしても丁度10mg/平方メートル/週というところに合わせる必要はな いのではないかということで、少し幅をつくらせていただきました。以上です。 ○秦座長  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。  中村先生何かつけ加えていただくことがありますか。  ○中村委員  特にございません。非常に森先生によくおまとめいただいております。  ○秦座長  それでは特に追加していただく御意見もございませんので、この報告書をこの会議と しては了承するということでよろしゅうございますか。 ○宮坂委員  資料2の出始めのところがわかりにくいのですけれども、初めに16歳未満の数字が書 いてあります。その後に今度人口全体の10万に対しての数字が出てくるので、分かりに くいです。これは逆にした方がよいと思います。 ○森参考人  どうも御指摘ありがとうございました。少し検討をさせていただきます。 ○田中委員  さっき宮坂先生が御指摘になったのですけれども、そこの用量の2のところには、「小 児より成人の忍容性は低い」と書いてあって、「その他」のところには「成人の方が小 児に比べ忍容性が低い」と書いてあるのですけれども、ちょっとわかりにくいのでちゃ んと両方統一して書いた方がいいかなと。 ○森参考人  書き方でございますね。どうもありがとうございます。統一を図りたいと存じます。 ○秦座長  それではマイナーチェンジはさせていただくことにして、会議としては基本的にこの 報告書を了承するということにいたしたいと思います。どうもありがとうございました。  森先生何回もこの会議に出席いただいて、検討の結果を説明していただきどうもあり がとうございました。 ○森参考人 どうもありがとうございました。 ○秦座長  それでは新たな個別医薬品に関する検討ということで、今回はA型ボツリヌス毒素に ついて検討して頂いた報告書について説明願いたいと思います。この報告書については 根津先生が中心となり作成していただいてきましたので、先生から御説明をしていただ きます。よろしくお願いいたします。 ○根津参考人  よろしくお願いいたします。横浜市立大学の根津です。  ボツリヌス毒素の今回は小児脳性麻痺患者の下肢痙縮に伴う尖足に対する効能効果と いうところでの適応認可をお願いしているわけですけれども、具体的にボツリヌス毒素 の下肢痙縮治療というのは日本ではほとんど紹介されておられませんので、委員の方々 も若干イメージがわきにくいと思いますので、最初に少しそれについて説明をさせてい ただきます。  A型ボツリヌス毒素製剤を筋注しますと、その筋肉の局所にあるアセチルコリンの作 動性神経終末にすぐに結合します。それでもってアセチルコリンの遊離を阻害して標的 の筋肉だけを化学的に脱神経させて弛緩させることができます。ただし、神経の再支配 がありますので、2カ月から4カ月ぐらいで筋力低下は回復します。  ちょっと図が見にくいのですけれども、ふくらはぎの具体的に言いますと内頭外頭左 右2カ所ぐらいずつに注射をすると腓腹筋がほぼ脱力する状態になります。製剤は、A 型ボツリヌス毒素を精製したものを100単位含んでいるのですけれども、1単位という 定義は約20gのマウスのLD50値というところで定義されています。製剤にもちろん菌 は含有しておりません。  製剤自体は1989年米国で初めて製剤認可されております。日本では96年から眼瞼痙 攣、片側顔面痙攣治療というところで認可発売されております。2001年には痙性斜頸の 治療が認可されています。   具体的に症例の治療前後の歩行状態を見ていただきたいと思うのですが、特に足首に 注目してください。脳性麻痺のタイプは、最近この下肢痙縮を伴うような形の症状を示 すお子さんが比較的多い割合で出現しています。  これが初回の治療の2週間後です。同様に足首に注目していただきたいのですけれど も、尖足がなくなり歩行が非常にスムーズになっています。また、母親が支えています けれども、この1週間後には自分で歩けるようになっています。このお子さんは3歳な ので非常に治療への反応がよろしかったケースです。  次のお子さんは8歳で、少し年齢が大きくなった方なのですけれども、先ほどのお子 さんよりはやや重たくて、少し足が重なるハサミ足も伴っていまして、かなり歩行速度 の遅いゆっくりしたもので、これですと全く実際の歩行は杖を使っても難しいのですけ れども、今「治療前」と書いてあるのですけれども、これは2回目の治療で、もう治療 を1回した後にはまたすぐにこう戻ってしまうのですけれども、2回目の治療の後には やはりこのように2週間後には尖足が消失してかかとが容易に地面に着地できるという 姿勢を得られることができます。  それでは動画は以上ですので、報告書に戻らせてください。  初めに医療上の必要性について御説明いたします。(1)の適応疾患の重症度ですが、既 に御説明するまでもなく、脳性麻痺というのは完全な予防は不可能で、近年でも0.2% の発生率でなかなか減りません。  先ほど申し上げたとおり、未熟児による脳室周囲白質軟化症による下肢痙縮型の割合 が増加していることから、この下肢痙縮の治療の重要性は増大しています。動画で示し たように、尖足というのは非常に強い歩行障害あるいは立位姿勢保持障害を示しますの で、理学療法、早期から短下肢装具療法などを行うのですけれども、それぞれの治療は 不十分で、現状では徐々に下肢の変形が進行して、しばしば5歳以降にアキレス腱延長 術などの整形外科的手術を必要とすることになります。これらの問題は非常に脳性麻痺 児の成長発達に重篤な悪影響を及ぼすために、有効な治療が切望されています。  (2)の医療上の有用性ですけれども、ボツリヌス毒素はこのように施注して2週間後か ら非常に下肢痙縮を有意に軽減させて、その効果を約3カ月持続させることができます。 1回の治療で大体5割以上の症例が改善され、数回複数反復投与を行うことによっては 75%まで歩行機能を改善させることができます。  また、Molenaersらの報告によりますと、これは後方視的な研究なのですけれども、 このような治療を行った患者と、理学療法のみで様子を見た患者では、将来の整形外科 的な手術の頻度が約3分の1ボトックスによって減らすことができたというように示唆 しています。  安全性に関しましては、欧米での下肢痙縮治療に関する重篤な副作用は非常にまれで、 数件過量投与による嚥下・呼吸障害という副作用がありましたけれども、アナフィラキ シーなどの重篤な全身副作用はほとんど報告されておられず、比較的安全な治療だとい うように認識されています。  欧米では95年から98年にかけて欧州先進国で適応認可をされていまして、現在は約 60カ国2歳以上の脳性麻痺児に対して下肢の適応承認がされて、その高い有用性がもう 既にコンセンサスとして得られています。我が国でも製剤認可はありますけれども、現 在この薬に関しては適応外使用が厳しく制限されているために、実際に使用されている ことは非常に少ないのが現状です。  ボツリヌス毒素のこの治療は従来のフェノール/アルコールブロックと比べまして、 非常に簡便かつ安全に施行できます。短期間で痙縮、歩行機能の改善を得ることができ るもので、我が国でも早急に追加適応承認されることが切望されています。  加えまして、この有用性というのは患者自身の症状の改善という利益のみならず、医 療・福祉費全体の削減にも及ぶことが予想されます。すなわち、脳性麻痺児に対するマ ネジメントには、理学療法の費用、補装具、車いすの制作費、介護者の献身や介護費、 あるいは障害者手帳などの福祉的な手当、あるいは整形外科的な手術の費用というもの を要しますけれども、これらの費用の節減にも大きく貢献することが見込まれると思わ れます。  次に、小児医療を行うに当たり必要と考えられる処方に関する概要をお話しいたしま す。予定の効能・効果に関しては、今申し上げたとおり、小児脳性麻痺患者の下肢痙縮 (2歳以上)に伴う尖足。  予定用法・用量は、罹患している腓腹筋の内側及び外側頭のそれぞれ2カ所に投与す る。初回推奨投与量は、4単位/kg 体重として、両麻痺では両肢に分割投与する。1回 の総投与量は、200単位を超えないこと。投与間隔は3カ月より短くならない。という ことに規定していまして、これは後に御説明いたしますイギリス、フランス、ドイツ等 の用法・用量を参考にさせて決めさせていただきました。  注意事項としては、施注する医師は、脳性麻痺の病態や下肢筋の詳細な解剖に対して 十分な知識を持たなければならない。初回投与による効果が不十分な場合には、用量及 び投与部位、海外での使用経験でいいますと、ヒラメ筋・後脛骨筋・大腿屈筋群・大腿 内転筋群を治療するとさらに歩行機能が上がることがコンセンサスとして認められてい るのですけれども、これらを再検討した上で2回目の治療を行うことということにいた しました。  それでは次に米国に関する情報ですけれども、米国ではまだ下肢痙縮に対する適応は 認可されていません。FDAの適応認可はないのですけれども、現状では民間の健康保 険の支払いは行われておりまして、米国でも広く普及している治療だというように報告 されています。  それでは次に英国では適応認可されておりまして、6ページの(4)をごらんください。 英国では同様に2歳以上の脳性麻痺患者の下肢痙縮による尖足の変形に関して適応承認 されておりまして、腓腹筋の治療、推奨総投与量は4単位/kg 体重。2カ月以内に頻回 投与しない。というように記載されています。  次にドイツの用法・用量をごらんください。7ページの下の(4)です。やはり腓腹筋を 治療すると。両麻痺では6単位/kgということで、英国よりは若干多くなっています。 1回の総投与量は200単位を超えないこととし、再投与は3カ月の頻度でそれ以上短く なってはいけないということになっています。  さらにフランスもほぼ同様でして、10ページをごらんください。10ページの(5)ですけ れども、罹患している腓腹筋を治療します。用量は小児の体重をもとに決定することと なっておりまして、やはり両麻痺の場合には初回の推奨投与量は6単位/kgということ になっていまして、再投与の間隔も3カ月以上というようになっています。  次にこれらの欧州の主要先進国で、その適応認可の根拠となった公表論文を2つ御紹 介いたします。12ページをごらんください。 どちらもKoman博士の報告なのですけれども、1)は無作為化二重盲検試験による短期 的な有効性を示しています。  それから13ページの2)には、多施設オープンラベル臨床試験で、長期的な有効性を 示しています。  簡単にそれぞれ御説明をいたしますと、まず1)の報告では、2歳から16歳の脳性麻 痺児114名に関しまして、56名にボトックス、58名に生食を投与しております。ボトッ クスに関しては投与量は4単位/kgで、1回の上限量は200単位としてあります。  評価法は3つあるのですけれども、それを治療前と治療後2週、4週、8週、12週を 比較しています。最も参考になった評価方法は、観察的歩行評価ということで、0から 14点のスケールとして、2点以上の変動で歩行機能が改善したという有効と判定してい ます。  結果ですけれども、13ページの図A、Bに示していますとおり、図Aは改善した患者 のパーセンテージ、図Bは治療前と後の改善度、どのぐらい改善したかという改善度を 示しています。黒の柱が治療群で、白がプラセボ群です。ここに示してあるとおり、す べての週で有意な有効性が示されていました。  例えば8週目の有効例は、ボトックスでは61%、プラセボ群では25%であり、0.006 の危険率以下で有効となっています。  有害事象に関してはボトックスでは12件、プラセボ群では3件の副作用を見ています けれども、すべては軽度・中等度、施注部位の疼痛、下腿筋の一時的な筋力低下であり ますけれども、有害事象によって試験を中断した例はありませんでした。  次に2)に関しては、これはオープンラベル試験です。9施設から207症例が候補に なっていますけれども、そのうち203例が試験基準を満たし、また47名が治療と関係な い理由で中断しています。1例が可逆的な全身の軽度の筋力低下の副作用を見たという ことで中断しています。  したがいまして、1年以上観察できたのが155名、2年以上は42名、3年以上観察で きた症例が7症例あったそうです。1名当たりの平均治療期間は1.46年であったという ことでした。  図A、Bは先ほどと同様の図なのですけれども、横軸が3カ月から24カ月、2年とい うところで示されています。示された図のとおり、治療1年目では55%の症例で有効で あり、2年目では44%の症例で有効であったそうです。期間を通して評価法でいうと平 均が1.4から2.1点のスコアリングの改善を示して、期間を通して有意な改善があった というように結論をされています。  有害事象に関しては、治療に関係した有害事象はすべて軽度・中等度で、歩行時の転 倒、足の疼痛、下肢の筋けいれんあるいは筋力低下、あるいは全身の軽度の筋力低下、 ふくらはぎの萎縮などがありましたけれども、重篤な副作用は認められなかったという ことです。   中和抗体の産生は28%の症例に認められましたが、実際に治療の有効性が消失する機 能のある中和抗体は6%の症例で認められたということでした。  ということで、ボトックスの治療は1年以上継続してもその有用性が高いという結論 になっています。  次に16ページをごらんください。無作為化試験を8つそれぞれ概略を記して示させて いただきました。コクランレビューでは99年10月までの報告に基づいて行われていま すけれども、それに含まれている文献は下記の1)から3)の文献ですけれども、それ による結語としてはボトックスを支持あるいは否定する強いエビデンスは明らかにされ なかったと。進行中の無作為化比較試験によって、短期効果についての有用な報告がな されるであろう、と記載されています。   21ページのメタ・アナリシスの報告をごらんください。Cardosoは先に示した無作為 化二重盲検試験の6データ、上記の1)あるいは4)〜8)から成るところの報告をメ タ・アナリシスしました。ボトックスの治療はプラセボ群と比較して統計的に有用であ るというところの報告を示されています。  それからその下の2)Naumannらの報告は、副作用に関するメタ・アナリシスですけ れども、2003年までのさまざまな適応疾患に関するボツリヌス毒素療法に関する二重盲 検試験36の報告について安全性にのみ検証したところ、有害事象の発現率は治療群の 25%に対してコントロールでは15%であったと。それらの内容は軽度から中等度の一時 的かつ非全身的なものであり、また作用機序に関係したものであったというところで、 重篤なアナフィラキシーなどの副作用はほとんど認められていないというところで報告 しています。  次に24ページをごらんください。海外では既にこの治療に関する著書本が数冊出てお りまして、2)〜5)までの著書に関しては治療の概略をそこに提示させていただきま したけれども、2回目の治療以降に関しては大体安全なボトックスの治療量、用量の上 限というのは12単位/kgであると。それから治療感覚は3カ月以上あける。  主な用法として、主な治療候補の筋肉は、大腿内転筋群それから腸腰筋、大腰筋、ハ ムストリング、腓腹筋、後頸骨筋というところで、ほぼどの本も同じ内容になっていま す。  次に27ページをごらんください。学会または組織・機構の治療ガイドラインですけれ ども、私が探した範囲内では海外の学会でもガイドラインを提示しているところがちょ っと見つからなかったのですけれども、このHeinenの報告は2006年のEuropean consensus tableというところで紹介されたものです。ボトックスについて欧州9カ国 13施設15名の専門医の方が協議されて、そのコンセンサスはこういうことであるとい う報告をしているのですけれども、適応は脳性麻痺に関しては、尖足、カガミ足、ハサ ミ足、上肢屈曲、あるいは痙縮による疼痛に有用であると。用量は、下肢に対しては12 単位/kgが上限である。それによって有効率は尖足治療では50%〜61%、長期治療では 75%が有効であるという報告をしています。副作用に関しても、比較的安全な治療であ ろうと15年の使用経験に基づいて結論をされておられます。  それから28ページには、日本小児神経学会薬事委員会報告として、治療のガイドライ ンの案をつくりましたので、ここに付記させていただいております。まだ実際の治療が 始まったところでは変更があるかもしれませんけれども、用法・用量に関しては今回の この適応承認に準じた初回推奨投与量は4単位/kgという、1回の相当用量は200単位 を超えないということにしてあります。しかしながら、治療する筋肉に関しては海外で の教科書を参考に、もう少し幅広く大腿の筋肉にもこういう症状に合わせて治療をする ようにという記載になっています。  それから次に34ページをごらんください。国内での使用実態調査の結果について報告 してあります。なかなか最初に述べましたとおり適応制限が厳しい薬ですので、実際に ほとんど使用されてはいないのですけれども、痙性斜頸に伴う下肢の痙縮を持つ小児の 患者に下肢を治療していた施設がありまして、それらを選びますと5つの医療機関にア ンケートの調査票を送って調査を依頼しました。  集計結果ですけれども、58名延べ153の下肢痙縮治療に関する調査票を集計しました。 しかしながら内容の無記名なところがあって有用でないものがありましたので、実際に 解析したのは55名延べ150回の治療成績についてです。治療開始年齢は6歳±3.1歳、 2歳〜13歳。1症例当たりの治療回数は平均2.7±2.3回で、1〜11回です。  国内の使用実態に基づく用法・用量の情報ですけれども、3に示したとおり尖足に対 する下腿筋の治療は90.1%、35ページの上の表に示したとおり腓腹筋は両麻痺で 88.1%、片麻痺では100%の患者で腓腹筋の治療を受けられています。その投与量の平 均は3.8±1.9と、先ほど示しました4単位/kgというところにほぼ準じた量になってい ます。  3)に示した1回の治療総投与量、痙性斜頸あるいはほかの下肢筋合わせた総投与量 は5.5±2.0単位/kgということになっています。  投与間隔は21.3週ということで、少し3カ月よりは長い傾向があります。  それから36ページの4からが有用性に関しての報告なのですけれども、歩行の改善は 128回の治療中113回88.3%に認めています。歩行改善を認めた症例は最終的には48 名中42名、87.5%でありました。  それから統計学的な評価法ではその下の3)に書いていますとおり、今回用いました フットコンタクトスケール、これはかかとがどの程度着地するかというグレードで、0 から4点で示したのですけれども、治療前では平均3.1±0.9、治療後では1.9±0.9と いうことで、有意な改善を示しています。   それから38ページの4)に関しましては、投与量と治療効果の相関性について調べて います。表に示しましたとおり、投与量2単位/kg未満、2〜4単位/kg、4単位/kgを 超える投与量に関しまして、フットコンタクトスケールの差、一番右端の2点以上のと ころをごらんください。少ない用量では2未満では19%の改善率に比べまして、4を超 えるものでは42.4%と用量に準じた治療効果の相関性を見ています。  国内実態調査に関しましては、副作用について有害事象の発現は報告がなく0件でし た。  以上からする総合評価といたしまして、ボトックスの下肢痙縮治療に関しては、海外 と同様の用法・用量によって国内でも同様の高い有用性と安全性が示されるということ が示唆されました。  次に40ページのこれはもう既に製剤が販売されているものですけれども、ほかの適応 症に関しまして2006年12月28日までに集計された製造販売後調査に関する有害事象の 概要というところを示させていただきました。この薬に関しましては一応全例販売後調 査をするということが今義務づけられていますので、それをGSK社がまとめたもので ありますけれども、概要といたしましては副作用については施注部位周辺への浸潤ある いは薬理効果の過剰な発現によるものが多く、具体的には眼瞼痙攣、片側顔面痙攣の治 療においては眼障害、痙性斜頸の治療においては嚥下障害や垂れ首などが報告された。 これらの症状は一過性であり、重篤なものはまれであった。また、重篤な有害事象の発 現率は、適応3疾患について合計しますと16771例のうち100例、0.6%であり、そのう ち調査担当医が本剤との関連性を否定していない有害事象については17例における25 件(霧視、視力低下、肺炎、誤嚥、細菌感染等)であったということです。全身的な副 作用の出現率は低く、例えば国内でのアナフィラキシーの報告はまた認められておらず、 比較的安全な治療と考えられたということです。  以上の資料をもちまして、42ページをごらんください。有効性の総合評価について述 べさせていただきます。このようにボトックスの治療は一回の施注によって約2週間後 から下肢痙縮と尖足の軽減、歩行機能の改善が得られ、その効果は約3カ月持続します。 また有効例に関しては、定期的に治療することによって歩行予後の改善と下肢変形の予 防効果が得られると示唆されています。  安全性の評価ですけれども、このように海外あるいは国内での使用実態に関しても比 較的全身的な副作用の少ない薬ですけれども、小児脳性麻痺の下肢痙縮の治療に対して は、十分な知識・経験のある医師が適正な用法・用量を遵守することによって、比較的 高い安全性を持つと考えられる治療だと思います。海外では時に過量投与によっての嚥 下障害、呼吸障害という副作用の報告がありましたのですけれども、これに関しては1 回総投与量が400単位、20単位/kg以上の使用に関してそういう報告がありましたので、 用法・用量を遵守するということが重要だと思われます。  7番の用法・用量の妥当性ですけれども、用法に関しましては初回の治療の適応年齢 ということに関しては、歩行訓練が本格的に開始される2歳以上とすることは、歩行機 能の改善上妥当であると考えられます。それから国内の用量に関しては、特に過量投与 に関する安全性を考慮しまして、欧州の主要先進国が認可している量の少な目少な目で 今回は決めさせていただきました。すなわち、初回推奨投与量は4単位/kg、投与間隔は 3カ月以上、また上限を200単位とするということにいたしました。  それから初回投与では腓腹筋の治療ということにしてありますけれども、2回目以降 は症状に応じて他の下肢筋にも注意して検討して投与することができるものとするとい うことにいたしました。  以上です。どうもありがとうございました。 ○秦座長  大変詳しい御報告をありがとうございました。何かただいまの御報告で意見などござ いますか。 ○宮坂委員  資料の一番最後の添付文書についてですが、このことについて質問しても良いですか。 ○根津参考人  添付文書の資料に関しての説明ですか。用意していなかったのですけれども。 ○宮坂委員  安全性がやはり一番気になるところです。個人的にこの医薬品を眼科疾患で使う場面 を経験していますが、ヒラメ筋とか下肢の筋に対してともなると、目とは違い筋肉量が 多いことから相当の量を使うことになります。全身に対する作用がどうなるのかが気に なります。その添付文書の3ページの副作用の中に、「国内臨床試験において本剤との 因果関係が完全には否定しきれない突然死が1例報告されている」、と書かれています。 これは気になります。何かもう少し情報がありますか。 ○根津参考人  これに関しては因果関係がはっきりしないということは僕はGSKさんから聞いてい ますけれども、詳細はわかりません。  しかしながら、用量に関しては痙性斜頸とさほど量は変わらないと思うのですけれど も、加えて薬液の浸潤ということを考えますと、痙性斜頸の治療に関しては御想像でき ますとおり、やはり首の筋肉に打ちますと浸潤によって喉頭筋、嚥下筋の影響を見るこ とがしばしばあるのですけれども、下肢に関しましては局所からの浸潤に関してはさほ どその辺で重要な器官がありませんので。 ○宮坂委員  先生のおっしゃるように、局所的な作用の結果なのか全身的なことなのかの区別がつ きにくいですね。目の病気の場合のように非常に少ない量だったら全身的な問題は少な いとは思います。しかし例えば書かれている嚥下障害が起きたとして、それが薬剤を注 射してすぐに起こるアナフィラキシーみたいなものなのか、嚥下に関わる局所の筋肉が 麻痺して起きるものなのか、などの情報が重要です。これは結構安全性にかかわること なので、もう少し詳しい情報が必要だと思います。足にこの薬剤を注射した場合には嚥 下障害は起きない、というような記載は特にどこにもないですよね。 ○根津参考人  先ほど申し上げましたとおり、国内では3疾患が適応されていまして、1万6千件以 上の治療をされていますのですけれども、アナフィラキシー等の明らかに全身的なこれ は重篤な副作用であったというような割合は非常に少ないというふうに一応報告されて います。 ○中村委員  私が答えるべきかどうかわかりませんが、これは成人での臨床試験での結果というこ とで、もし今回の報告書の内容を全体的に評価していただいて承認しても差し支えない という結論になるのであれば、あとは審査の過程でもう一度、恐らくこれは成人での審 査の過程で一度確認はされていることであると思いますので、そこは審査の方で確認を されるべきものだということで、1例ということと、「因果関係が完全には否定しきれ ない」という書き方がありますので、そこは審査の過程で確認されているものだと考え ます。 ○宮坂委員  そうですね。この言葉の解釈ではいろいろ考えられると思うのですけれども、1000例 に1例の重篤な合併症は結構高い頻度ですので、とても気になりました。説明は良くわ かりました。 ○事務局  御指摘も踏まえまして先生の御意見もぜひ医薬品医療機器総合機構の方とも情報を共 有いたしまして、審査の過程においてよく注意していきたいと思います。 ○秦座長  ほかにいかがですか。   ○五十嵐委員  長期的な効果の持続についてお伺いいたします。15ページに中和抗体が28%にでき て、6%の方が治療の有効性が消失したと書かれています。例えば2歳で始めた場合、 関節の拘縮、萎縮などを防ぐために恐らく長期にわたって投与されることが予想されま す。この脳性麻痺に対する経験について海外でも長期間経過をみたものはないかもしれ ません。長期間にわたって既にほかの疾患において最初効いていたのが、後になって抗 体ができて効かなくなってきたというデータはございますか。 ○根津参考人  個々の海外の臨床医に数人聞いたことがあるのですけれども、10年以上例えば顔面痙 攣、痙性斜頸等のジストニアを治療された先生の話では、実際に無効になったという症 例は一応ほとんどないとおっしゃっていました。抗体は発現するのだけれども、実際の 治療効果としては維持できるケースがほとんどであるというお話でした。 ○五十嵐委員  エビデンスのレベルが高いものはございますか。 ○根津参考人  済みません。私はちょっと存じ上げていないのですけれども、そうですね。 ○秦座長  中村先生、何か追加することがありますか。 ○中村委員  済みません。私どものワーキンググループが小児で各海外での承認のデータを踏まえ て国内での承認に値するかどうかという視点で見ておりますので、恐らく製造販売後の 長期のデータを持っているものは医薬品医療機器総合機構の方で把握していると思いま すので、もしよろしければ審査の方で見ていただくということで御勘弁願えればと思い ますが。 ○秦座長  よろしいですか。はいどうぞ。   ○伊藤委員  1点だけなのですが、これは効果がないという判定のときはどのようにされているの ですか。 ○根津参考人  具体的には、やはり既に関節の拘縮や変形がある場合には、恐らく効果はないと思い ます。  それから、やはり痙縮が非常に重篤な場合でも、非常に局所的であればこの薬は局所 には非常に効果的に高いので、局所としては役に立つのですけれども、例えば痙縮が広 範な場合、その場合はやはり高用量になってすべてを治療することはできませんので、 その場合には例えば薄く広く打つにしてもやはり有効性が落ちると思います。 ○伊藤委員  その判断基準がどうなのでしょうか。例えば、要するに、ある程度濃度を高くしたと きに、ここまでの投与量であれば効果があるかどうか判定できて、これ以上続けてもだ めだとか、そういうことは決まっているのでしょうか。 ○根津参考人  経験的には大体決まっています。先ほども申し上げたとおり、もう既に筋の線維化と か関節拘縮がある場合には、評価法で変化がありませんし、例えば念のためにさらに高 用量で2回目の治療を行って、やはり同様に無効であったということであれば、恐らく 2回目ぐらいでの治療でもう中断されるのではないかと思います。 ○伊藤委員  ありがとうございました。 ○秦座長  ほかにいかがですか。はいどうぞ。   ○村山委員  用法・用量の設定なのですけれども、200単位という上限をこの場合に設定されてい ると思うのですが、この200単位の根拠というのは、資料4の安全性についてはという 下から8行目あたりから書かれているところで、過量投与による嚥下・呼吸障害を認め る、とありますが、これはやはり200単位以上のオーバードーズのとき、先ほどありま したが400単位という一回投与量が、そしてそれから考えて200単位は妥当であろうと いうそのお考えになった根拠といいますかその辺を教えていただきたいということと、 恐らく関連すると思うのですが、ドイツにおいてのみこちらの資料を読ませていただけ ると上限が設定されているように思います。だから、英国、フランスでは特に上限が記 載されていなくて、4単位/kgと6単位/kgというふうに書いてあるのですが、英国とフ ランスでは上限を設定しないでも通常この量で投与されれば安全であるというエビデン スのもとに上限を決めていないのか、そこで、今回200単位に設定されたというのは、 200単位に設定しておけば副作用として極めて起きにくいと考えられて200単位に設定 されたのか確認したいと思います。教えていただければと思います。 ○根津参考人  ありがとうございます。今御指摘されたとおり、400単位の投与では全身ボツリヌス 症、いわゆるボツリヌス中毒という形で、下肢に治療をしたにもかかわらず嚥下障害、 呼吸困難で入院を余儀なくされたという報告があります。  海外で大体12単位/kgというのが安全であると言われているのですけれども、時折20 単位/kgと書いてあるのがあるのですが、そうなりますとやはり高学年齢、小学生高学 年、思春期の治療に関して言うとちょっと高用量になってきますので、上限の量は必要 だと思います。200単位は安全であるというのはどの海外の先生もおっしゃっていまし た。  上限の記載を設けているのは1カ国だけなのですけど、やはりこれは必要だと思いま す。 ○秦座長  はいどうぞ。 ○中村委員  この検討会でどこまで検討していただくかといいますか、この検討会の趣旨自体が海 外、米英独仏で承認されていると。それについてもし製薬企業の方から申請時の細かい データをいただければかなり細かいことの検討ができるのですけれども、過去の事例で メトトレキサートとアセトアミノフェンについても、本当に治験の論文すら手に入らな い。これも論文になった2本のものが比較試験とそれから長期試験がこの論文に公表さ れた試験の結果が各国で審査されて承認されたということまでは確実に把握していま す。  なので、あとの細かい内容でどういったデータを見たかというところは最近論文が出 ていまして、実際に審査した内容と論文に出た内容が必ずしも一対一対応していないこ ともあるというふうな論文が最近出ていましたけれども、細かいところについては、基 本的にこの検討会でのスタンスというのは米英独仏で承認されているのだと、だから一 定のエビデンスレベルがあるのだというところで、あとは文献的な考察とそれから先生 方の専門的な判断を踏まえて解釈しているというところで、細かいところについては私 どもでは回答をし切れない面が多くあるかと思います。これは海外と国内でメーカーが、 海外はアラガンという会社だと思いますけれども、のデータですので、場合によっては 審査の場合にもなかなかそういう情報がスピーディーに入ってこないような状況がある ということは御理解いただければと思います。 ○村山委員  よろしいですか。上限を設定しておいて、そしてしかも海外でその上限を超えなけれ ば、サイドエフェクトアドバンスイベントが起きていないという事実が極めて多ければ、 極めていい上限設定だと思いますので、今回この資料4を読ませていただいて、本当に ワーキングの先生方ここまで調べ、わかりやすく、また根拠も提示いただいていますの で、ぜひ200単位という上限をつけていただければというふうに考えました。どうもあ りがとうございました。 ○秦座長  よろしいですか。ほかにございますか。   ○藤村座長代理  よろしいですか。細かいことなのですけれども、わからないので教えていただきたい のですが、いろいろな文献はレビューとか紹介いただいていて大体非常に有効だという ふうに評価されているように思うのですが、気になるのは16ページのコクラン・ライブ ラリー・レビューは何かあいまいな、「支持あるいは否定する強いエビデンスは明らか にされなかった」、要するにあいまいな結論になっている。  まず文章、この次に「1、4〜6、8)は」と書いてあるのは、コクランレビューで はこれらはレビューされた文献も入っているのか入っていないのか、要するに2001年の もあれば1999年のもあり、コクランはどこを見てどう書いたのかよくわからないのです ね。下のKoman、1)からずっとありますね。脳性麻痺、小児における有効性、文献的に はどうなのかというところで、あとずっと出てくるのは有効というふうに読めるのです けれどもいかがでしょう。 ○五十嵐委員  長期がわからないからでしょう。短期が有効であるというエビデンスはあるけれども 長期はないからということだと思います。 ○中村委員  あとは臨床試験の結果の、実際に海外で承認されたピボタルな臨床試験結果で公表さ れたものが2001年と2000年、比較試験の方が2000年それから長期試験の結果が2001 年に公表されておりまして、そのコクラン・ライブラリー・レビューが1999年10月ま でに報告されているものに基づいておりますので、実際本格的に評価された論文がこの コクランレビューをされた段階ではまだ公表されていなかったということが主な理由で あると考えています。なので、それ以外の試験についてはかなり症例数が少なかったり とかというものばかりですので、最初の2つの論文がメインだとお考えいただいて構わ ないと考えています。 ○藤村座長代理  その後出たもので一応有効だと報告されていると理解します。  それでもう一つ二つ質問があるのですけれども、1ページで(2)の上から6行目ぐらい に「必要頻度を減少させると考えられる」という言葉なのですけれども、私は二つに解 釈できると思うのです。必要頻度を減少することが期待されるということなのか、また は、減少させるというそういう効果をはっきり得ているのか。要するに楽観的な期待な のか、そういう効果が証明されたと言っているのか。この「減少させると考えられる」 という言葉はどちらなのでしょうか。 ○根津参考人  申しわけございません。おっしゃるとおりの御指摘なのですけれども、この長期的な 予後に関する実際のエビデンスがまだありません。その下に書いてあるとおり、候補試 験では手術を3分の1減少させた報告があったりとか、下肢の変形の割合を減少させた という最近の長期報告が出てきてはいるのですけれども、実際の歩行器ですとか車いす の必要頻度を減少させたという報告がまだありませんので、ここは済みません、減少さ せるということを期待しているというように御解釈ください。 ○藤村座長代理  それからこれは非常にシンプルな質問なのですが、例えば2ページの2.の予定用法・ 用量で、「罹患している腓腹筋の内側及び外側頭の」と書いていますが、後の方をずっ と見ると「内側頭、外側頭」と書いてありますので、多分「内側」の後ろに「頭」とい う字が抜けているのですよね。 ○根津参考人  おっしゃるとおりです。「内側頭及び外側頭」という。 ○藤村座長代理  それを一応確認した上で、「に投与する」というのは「の筋肉内に投与する」と理解 していいのでしょうか。 ○根津参考人  そのとおりです。御指摘ありがとうございました。検討させていただきたいと思いま す。「筋肉内に」というように正確に表記したいと思います。 ○藤村座長代理  それはかなりのページにありますので。 ○事務局  ありがとうございます。また審査の段階におきましてもその辺は十分注意するように 気をつけたいと思います。 ○秦座長  ほかに、何かありますか。 ○中村委員  いろいろと細かい点で御指摘があるかと思うのですけれども、ワーキンググループの 座長としまして根津先生が物すごく御苦労されて書いているところがありまして、記載 整備的な事項のところというのは、クリティカルでない面については最終的な審査の段 階で修正されていくあるいは記載整備で修正されるということで御了承いただければと 思っています。 ○秦座長  ほかにどうぞ。 ○藤村座長代理  済みません。12ページで2番1)のKomanさんの文献、これは「プラセボ」という言 葉が出てくるのですが、どんなプラセボですか。 ○根津参考人  生食です。 ○秦座長  はい。何かほかにございますか。どうぞ。 ○田中委員  余り本質的なことではないのですけれども、ぱっとこれを読んで非常によく書かれて いたのですけれども、これ添付文書があるとわかるのですけれども、途中で急に【日本 未承認】とかそういうのがぱっと出てくるので、きょう先生が最初にちょっと話された、 今、日本ではどういうふうなのがまず承認されているというのをちょっと入れていただ くともう少しわかりやすいかなと思いました。 ○根津参考人  ありがとうございます。 ○秦座長  ほかにいかがですか。よろしいでしょうか。  それでは書きぶりとかを記述を明確にすべきであるといったような御意見がありまし たけれども、ボツリヌス毒素に関する基本的な報告はこれでよろしゅうございますか。  はいどうぞ。 ○宮坂委員  良いと思います。全体を見て本当によくまとまっています。有効性については相当に 書いてあるのですけれども、やはり安全性のところがどうしても気になります。で先ほ ど審査の段階で細かく検討されるとおっしゃっていましたけれども、そのあたりの補強 をしていただければいいかなと思います。  ○秦座長  どうぞ。   ○中垣審査管理課長  確かに審査の段階でということだろうと思うのですけれども、一方においてはこれは こういう検討会でやっているというのは基本的に医学薬学上公知であるとして、基本的 には国内で新たな臨床試験をすることなく認めていくというような方向にいってよろし いか悪いかというようなことを議論していただいておるわけでございます。ですから、 また審査の段階ということになりましても、恐らく今集めていただいた以上の文献とい うのは、なかなかこれはもう手に入らないのだろうと思うわけでございます。  もちろん、先ほど先生から御指摘のありました、添付文書にある以前やった試験の突 然死の話というのは、これは以前のデータがあると思いますからそれは見極めるわけで ございますが、今回のこの新しく出てきております脳性麻痺の適応については、ここに あるようなデータをもとに考えるということで、余り後で審査の段階、審査の段階とい うと、審査の段階が山ほど今度宿題を抱えてしまってまた前に動かない。そこを突き詰 めようと思うともう試験するしかないというような話になってまいるわけでございます けれども、そのあたりも含めて、各国で基本的な承認に当たっての基本的なデータとい うのを集めていただいているようでございますから、このあたりを分析してどうかとい うような御判断を賜ればと思っておるわけでございます。 ○宮坂委員  新たに安全性のデータを出せとか、そういうことでは全然なくてですね、今のままで も例えば局所に注入して、局所の副作用に皆さん目がいくのですけれども、全身的な副 作用があるということも既に書かれているわけですから、それにどう対応するかという ことを加えればいいだけの、審査というよりは、審査の段階なのかよくわかりませんけ れども、数例だけそういうことを考えていただきたいということだけですので、改めて 安全性の試験をするとかそういうことでは全然ないです。 ○秦座長  だいたい意見が出尽くしたように思いますが。 ○中川委員  済みません。恐らく今回もそうなのですけれども使用実態調査をやっても有害事象が 出なかったりとか、安全性の問題というのは本来は使用実態調査で解決すべき問題だと 思うのですが、レトロスペクティブに後方視的に検索するとその辺がどうしても抜けが ちになってしまいますので、使用実態調査をやるならば、できたらある程度の、これは 未承認でありしかも使用が限定されているという品目ですので、この品目に限定する話 ではないのですけれども、やはり普遍的にある程度日常診療で使われている医薬品であ れば前方視的にやった方がいいのなという気がするので、ちょっと追加のコメントとし てさせていただきました。 ○秦座長  何かありますか、今のコメントに対して。 ○中村委員  おっしゃることはもちろんそのとおりだと思うのですけれども、あとは検討会でもっ とどんどん報告書をつくってもっと早く承認されるものだと僕は始まったときに信じて いまして、それがプロスペクティブなことを皆で全部やるのだという話になると、ます ます検討がおくれていきますので、そこはケースバイケースで考えていかざるを得ない という、最初のころの議論に戻りながらやっていかないといけないと思います。  ですから、この報告書でも、製造販売後の実際の企業の方で持っておられるデータも 載せて、そこをある程度補完しようとしたようなところがありますので、もちろんプロ スペクティブにやることが好ましいというのはわかりますけれども、全部やっていくの は実際にかなり症例が集まるのに時間がかかっていますので、それはちょっとケースバ イケースで考えさせていただければと思います。    あと、ちょっとこの件、報告書の書き方について、今申し上げますけれどももともと アセトアミノフェンがかなり山のように論文があって、たくさん論文があって、どれを 選ぶかわからないという話がかなりあった中で選んできた経緯があって、それと同時進 行で残りの報告書が全部できていますので、これもピボタルスタディーの論文がどれか というのを最初十分に把握し切れずに書いていたもので、根津先生にもちょっと御迷惑 をおかけしてかなり大量の作業をしていただいたのですけれども、例えばピポタル試験 がもうわかるのであれば、ピポタル試験のデータを中心に書いて、あとはさらっと流し てということで、少しめり張りを、ワーキンググループの方でもやっとやり方というも のがパターンが見えてきましたので、できるだけ今後報告書は短目短目にしていって、 後から続かれる報告書を書かれる先生方に極力負担をかけないようにできればと思って いますし、あと、ここの検討会議でかなり厳しい、審査の中で専門協議の中で出るよう なコメントが余り出ますと、また報告書を書かれる先生方がかなりびびってしまいます ので、そこは御配慮いただければと、これはお願いでございます。 ○中垣審査管理課長  それは積極的に御議論いただきたいと思います。そこをなくしていわゆる公知である かどうかという判断をあいまいにされますと、私はかえって先生方、すなわち小児で適 正な薬物療法をやっていくために少しでも前向きの活動をしていこうというところに障 害が与えられるのでなかろうかと考える次第でございまして、ぜひぜひ熱い議論をお願 いしたいと思います。 ○秦座長  そのあたりはこの検討会議の役目でもありますので、それぞれの薬物について、ケー スバイケースで議論し決めていったらいいのではないかと思います。  本日の報告書に関しては、少し明快にした方がいいという御意見もありますので、そ のあたりはワーキンググループあるいは根津先生を中心に、マイナーチェンジをしてい ただくとして、この検討会議としては基本的にこの報告書を承認するということでよろ しゅうございますか。はい、どうもありがとうございました。  本日の予定しておりました議事は以上でございます。事務局の方から何かございます か。 ○事務局  引き続きまた中村先生を中心にワーキングの方で検討を進めさせていただきまして、 その進捗を踏まえまして次回の会議につきまして御案内申し上げたいと思います。あり がとうございます。 ○秦座長   今日は大変ありがとうございました。これで検討会議を終わらせていただきます。 (了) 照会先 厚生労働省医薬食品局審査管理課 03−5253−1111