第2章 ネットワークによる臓器あっせん業務の状況の検証結果

1.初動体制並びに家族への脳死判定等の説明および承諾

平成18年5月22日5:00頃、本人(50代の男性)が自宅で意識消失したため、隣人が救急車を要請。5:27、救急隊到着時、意識レベルJCS 300で搬送中に心静止。5:56、当該施設に搬送され、気管内挿管、心肺蘇生術を施行し、心拍再開したが、JCS300、両側瞳孔散大で自発運動は全く見られなかった。CT撮影にて、くも膜下出血(Grade5)と診断され、手術の適応なしと判断された。12:30、主治医が知人に対し病状説明を行った際、意思表示カード所持の有無を確認したところ、意思表示カードが提示された。

5月24日13:30、臨床的に脳死と診断。14:09、家族がコーディネーターの話を聞く意思があると申し出られ、病院がネットワーク中日本支部に連絡した。15:09、都道府県コーディネーター1名が病院に到着し、院内体制等を確認するとともに、医学的情報を収集し一次評価(ドナーになることができるかどうかの観点からコーディネーターが行うドナーの入院後の検査結果等に基づく評価)等を行った。16:00、都道府県コーディネーター1名が家族(患者の長姉、次姉、甥)に約1時間面談を行い、脳死判定及び臓器提供の手順と内容、家族に求められる手続等につき文書を用いて説明するとともに、家族構成等を確認するために一旦時間を置くこととした。

その後、ネットワークのコーディネーター1名が病院に到着し、19:40から2時間、家族に面談し、21:40に患者の長姉が家族を代表して脳死判定承諾書、および臓器摘出承諾書に署名捺印された。コーディネーターは承諾が家族の総意であることを確認し、両文書を受理した。家族は、本人の意思を最大限生かしたいと話され、臓器提供を承諾された。

【評価】

○ コーディネーターは、家族への臓器提供に関する説明依頼を病院から受けた後、院内体制等の確認や一次評価等を適切に行ったと判断できる。

○ 家族への説明等について、コーディネーターは、脳死判定及び臓器提供の手順と内容、家族に求められる手続等を記載した文書を手渡してその内容を十分に説明したと判断できる。

2.ドナーの医学的検査およびレシピエントの選択等

5月25日4:13に、心臓、肺、肝臓、小腸のレシピエント候補者の選定を開始した。膵臓と腎臓についてはHLAの検査後、同日6:57よりレシピエント候補者の選定を開始した。

法的脳死判定が終了した後、同日13:03より心臓、肺、肝臓、小腸、膵臓、腎臓のレシピエント候補者の意思確認を開始した。

心臓については、第1候補者、第2候補者、第3候補者の移植実施施設側が心臓の移植を受諾し、第1候補者に心臓の移植が実施された。

肺については、第1候補者は、体調が安定しているため移植実施施設側が両肺の移植を辞退。第2候補者と片肺移植の第1候補者の移植実施施設側が肺の移植を受諾し、第2候補者に両肺の移植が実施された。

肝臓については、第1候補者の移植実施施設側が肝臓の移植を受諾。第2候補者と第3候補者は、連絡時既に死去していた。第4候補者の移植実施施設側が肝臓の移植を受諾し、第1候補者に肝臓の移植が実施された。

膵臓については、第1候補者、第2候補者の移植実施施設側が膵臓・腎臓の同時移植を受諾し、第1候補者に膵臓・腎臓の同時移植が実施された。

右腎臓については、第1候補者の移植実施施設側が腎臓の移植を受諾するも、その後にリンパ球直接交叉試験が陽性であることが判明したため、腎臓の移植を断念。第2候補者、第3候補者の移植実施施設側が腎臓の移植を受諾し、第2候補者に腎臓の移植が実施された。

小腸については、第1候補者の移植実施施設側が小腸の移植を受諾するも、最終的に、ドナーの医学的理由により移植の適応なしと判断し、小腸の移植が見送られることとなった。

また、感染症検査等については、ネットワーク本部において適宜検査を検査施設に依頼し、特に問題はないことが確認されてた。

【評価】

○ ドナーの提供臓器や全身状態の医学的検査等及びレシピエントの選択手続は適正に行われたと評価できる。

3.脳死判定終了後の家族への説明、摘出手術の支援等

5月25日11:45に脳死判定を終了し、主治医は脳死判定の結果を家族に説明した。その後、コーディネーターは、情報公開の内容等について説明し、家族の同意を得た。

また、コーディネーターより家族に対して、小腸については医学的理由にて移植が見送られることとなった旨を報告した。

【評価】

○ 法的脳死判定終了後の家族への説明等は妥当であったと評価できる。

4.臓器の搬送

5月25日にコーディネーターによる臓器搬送の準備が開始され、参考資料2のとおり搬送が行われた。

【評価】

○ 臓器の搬送は適正に行われたと評価できる。

5.臓器摘出後の家族への支援

臓器摘出手術終了後、コーディネーターは手術が終了した旨を家族に報告し、病院関係者等とともにご遺体をお見送りした。

5月27日(臓器提供の翌日)、コーディネーターが家族へ電話し、レシピエントの移植手術がすべて終了したことを報告した。

5月28日、コーディネーターが家族へ電話し、肺移植を受けられたレシピエントが死亡されたこと、また、膵腎同時移植を受けられたレシピエントが、移植膵を摘出したことを報告した。家族は、気の毒でしたねとレシピエントを気遣う気持ちを話された。

6月6日、コーディネーターが家族へ、移植後の経過報告の手紙を郵送した。

6月9日、家族からコーディネーターへ手紙のお礼の電話があり、手紙を読んで嬉しくなったと話された。

6月15日、家族からコーディネーターへ電話があり、移植後の経過を聞き、皆さんに喜んでもらえて嬉しいと話された。

6月17日、コーディネーターが家族へ、厚生労働大臣からの腎臓および眼球の感謝状、アイバンクからの感謝状を送付した。

6月19日、家族からコーディネーターへお礼の電話があり、四十九日の法要を済ませたと話された。

6月21日、コーディネーターが家族へ、臓器移植推進財団からの感謝状を送付した。

8月29日、コーディネーターが家族へ手紙を送り、レシピエントの移植3ヵ月後の経過を報告した。

9月4日、家族からコーディネーターへお礼の電話があった。

12月18日、コーディネーターが家族へ手紙を送り、レシピエントの移植6ヵ月後の経過を報告した。

コーディネーターは、上記の連絡、報告以外に、その後もレシピエントの近況報告をするなど、適宜報告や対応を行っている。

【評価】

○ コーディネーターによるご遺体のお見送り、家族への報告等は適切に行われたと認められる。


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