08/01/30 平成20年1月30日薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録 1.日時及び場所    平成20年1月30日(水) 10:00〜 厚生労働省 省議室 2.出席委員(15名)五十音順    飯 沼 雅 朗、 五十嵐   隆、 川 西   徹、 澤 田 純 一、   ○首 藤 紘 一、 鈴 木 洋 史、 土 屋 文 人、◎永 井 良 三、    中 澤 憲 一、 野 田 光 彦、 林   邦 彦、 松 井   陽、    村 勢 敏 郎、 村 田 美 穂、 本 橋 伸 高 (注) ◎部会長 ○部会長代理   欠席委員(4名)    千 葉   勉、 成 冨 博 章、 西 澤   理、 長谷川 紘 司 3.行政機関出席者   黒 川 達 夫(大臣官房審議官)    中 垣 俊 郎(審査管理課長)、    豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、 川 原   章(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)、 村 上 貴 久(独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)、 丸 山   浩(独立行政法人医薬品医療機器総合機構センター次長)、    森   和 彦(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役) 他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を開催さ せていただきます。本日はお忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。 当部会委員数19名のうち14名の委員に御出席いただいておりますので、定足数に達して いることを御報告申し上げます。松井委員からは御出席という返事をいただいております が、何らかの事情で遅れているのだろうと考えております。なお、千葉委員、成冨委員、 西澤委員、長谷川委員からは、本日欠席という御連絡をいただいております。  それでは部会長の永井先生、議事進行をよろしくお願いいたします。 ○永井部会長 それでは、まず事務局から、配付資料の確認、資料作成、利益相反等に関 する申出状況について御報告をお願いいたします。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に、議事次第、座席表、当部会 委員の名簿を配付しております。議事次第に記載されている資料1〜9を、あらかじめ送 付しております。このほか資料10、資料11として、それぞれ取扱い等の案及び専門委員 リストを配付しております。  平成13年1月23日の薬事分科会申合せ、及び平成19年4月23日の薬事分科会申合せ に基づく、資料作成、利益相反等に関する申出につきましては、次のとおりです。議題1 「ポプスカイン」につきましては、退室委員、議決には参加しない委員はともになし。議 題2「アクテムラ」につきましては、退室委員はなし、議決には参加しない委員は、五十 嵐委員と林委員です。議題3「ジュリナ錠」につきましては、退室委員はなし、議決には 参加しない委員は、永井委員、野田委員です。議題4「エクジェイド」につきましては、 退室委員は、永井委員、議決には参加しない委員は、鈴木委員です。なお、議題3及び議 題4につきましては、座長を首藤部会長代理にお願いいたします。 ○永井部会長 本日は審議事項が4議題、報告事項が5議題となっています。早速議題1 につきまして、機構から概要の説明をお願いいたします。 ○機構 それでは、議題1、資料1-1及び1-2、医薬品ポプスカイン0.75%注75mg/10mL 他の製造販売承認の可否等について、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。  本申請は原薬等登録原簿制度を利用しており、資料1-2は原薬に関する報告書及び資料 概要となっております。なお、原薬製造所については、□□社から□□□□□□□□□□ 社に譲渡されているため、□□□□□□□□□□社に変更される予定です。  本剤の有効成分である塩酸レボブピバカインは、英国Chiroscience社(現UCB社)で 開発された長時間作用型局所麻酔薬であり、ブピバカインのS-異性体です。海外では1998 年12月にスウェーデンで承認されて以来、2006年12月現在、本剤は米国、英国等57か 国で承認されております。なお、類薬としてはブピバカイン、ロピバカイン、リドカイン 等があります。  本申請の専門委員としては、資料11に記載されております9名の委員を指名いたしま した。  審査内容について、説明させていただきます。  品質、薬理、薬物動態及び毒性については、特に大きな問題はないと考えております。 なお、ブピバカインは血管内に誤投与した場合に、中枢神経毒性及び心毒性等に関する懸 念がありますが、本剤はブピバカインよりも重篤な心毒性が生じる可能性が低いことが非 臨床試験成績から示唆されています。  次に臨床成績について説明いたします。  本剤の有効性について、硬膜外麻酔を対象とした国内第III相試験では、主要評価項目で ある第10胸椎の痛覚神経遮断の作用持続時間は本剤0.75%群で389.1分、0.75%ロピバ カイン群で315.0分であり、本剤のロピバカインに対する非劣性が検証されています。ま た、術後鎮痛を対象とした国内第III相試験では、主要評価項目である覚醒確認後0〜21 時間のペンタゾシンの使用量で本剤0.25%群で20.8mg、ロピバカイン0.2%群で23.5mg であり、本剤のロピバカインに対する非劣性が検証されています。  安全性について、主な有害事象として血圧低下、嘔吐等が認められております。また、 心毒性及び中枢神経毒性については、本剤とブピバカイン群で発現率に大きな差異はな く、本剤の心毒性リスクがブピバカインよりも低減していることは明確になっていません が、ブピバカインと同様の注意喚起を行い、本剤が医師の管理下で慎重かつ適切に使用さ れる限り、安全性上特に問題ないと考えております。なお、製造販売後にこれらの事象に ついては、重点的に調査することとしております。  以上の審査を踏まえ、本剤の硬膜外麻酔及び術後鎮痛に対する効能・効果を承認して差 し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしまし た。本申請は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、原体は毒薬、製 剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断し ております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。  以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。 ○永井部会長 これはブピバカイン、マーカインというのでよく使われている麻酔剤です が、それの光学異性体です。通常の使用をしている分には心毒性はなく、静脈内に入って しまったときの心毒性が少ないのではないか、そういうポイントだということですね。 ○機構 誤って血管内に投与された場合、急速に血中内濃度が上がりますので、そのとき に心毒性が起こるということで、そのリスクが低い可能性があるということになります。 ○永井部会長 御質問、御意見はいかがでしょうか。 ○中澤委員 12ページの非臨床の「循環器系に対する影響について」のところですが、 局所麻酔薬の痙攣誘発用量と心毒性の用量を比較していて、それ以降の部分では薬理作用 を発現する量と心毒性の量を比較していると思われます。これは何か意味があるのでしょ うか。 ○機構 この薬剤の循環器系に対する影響、心毒性について実際にそのくらいの濃度まで 達したときの影響と、薬理作用、濃度における問題点をいろいろな観点から考察したとい うことで、こういった書き方をさせていただきました。 ○中澤委員 痙攣誘発用量というのは薬理作用ではありませんよね。 ○機構 痙攣誘発濃度で心毒性に対する影響もあるか、循環器系に対する影響もあるかと いうことも検討させていただいたというところです。 ○永井部会長 よろしいですか。 ○中澤委員 ちょっと納得できないところはありますが、本質的なところではないので結 構です。 ○永井部会長 ほかにいかがでしょうか。もし御意見がございませんでしたら議決に入り たいと思います。ポプスカインを承認してよろしいでしょうか。御異議がございませんの で、承認可ということで、薬事分科会に報告とさせていただきます。  では議題2にまいりたいと思います。機構から概要を御説明ください。 ○機構 議題2、資料2、アクテムラ点滴静注用80mg他の承認事項一部変更承認の可否 等について、機構より説明いたします。  本剤の有効成分であるトシリズマブ(遺伝子組換え)は、チャイニーズハムスター卵巣細 胞を用いて産生された、IgG1サブクラスのヒト化抗ヒトインターロイキン6レセプタ ーモノクローナル抗体です。本邦においては、アクテムラ点滴静注用200が2005年4月 にキャッスルマン病に係る効能・効果で承認されておりますが、今般の申請は、「関節リ ウマチ」及び「全身型若年性特発性関節炎」に係る効能・効果を追加し、また、新規剤型 としてアクテムラ点滴静注用80mg及び400mgを追加するというものです。なお、本申請 において、「全身型若年性特発性関節炎」の効能・効果については、疾患の重篤性等をか んがみ、平成18年7月19日付けで優先審査の対象として指定されており、関節リウマチ に係る効能・効果につきましても、併せて迅速に審査を行うよう同日付けで審査管理課よ り通知されております。また、本剤につきましては国内開発が先行して行われておりまし て、現時点においていずれの効能についても海外における承認国はなく、2007年11月に 米国、12月にEUにおいて「関節リウマチ」の効能・効果で承認申請がなされたところ です。  本申請の専門委員としては、資料11に記載されております6名の委員を指名いたしま した。  審査内容について簡単に説明させていただきます。  非臨床に関する資料につきましては、特段の問題は認められないものと判断しておりま す。  臨床に関する資料につきましては、日本人関節リウマチ患者を対象として本剤又はメト トレキサートを24週間投与した二重盲検試験の結果、主要評価項目である最終観察日の ACR基準20%改善頻度は、本剤群で80.3%、メトトレキサート群で25.0%であり、本 剤群において有意に高い改善率が認められております。また、本剤の骨・関節破壊に対す る遅延効果を検討することを目的として日本人関節リウマチ患者を対象に実施された、T NF阻害剤であるインフリキシマブ、エタネルセプト等を除く既存治療を比較対照とした 無作為化非盲検並行群間試験の結果、主要評価項目である投与52週後における erosion scoreの平均変化量は、既存治療群3.21に対し本剤群0.85であり、本剤群にお いて骨びらんの有意な進行抑制が確認されております。また、全身型若年性特発性関節炎 患者を対象に、6週間の非盲検期間後に、12週間のプラセボ対照期間に移行するデザイ ンで実施された第III相試験の結果、非盲検期間における主要評価項目である関節症状、身 体機能、全身状態等を総合的に評価するJIA core setによる30%改善頻度は91.1%であ り、二重盲検期間においても本剤群ではプラセボ群に対し有意に高い効果維持率を示すこ とが確認されております。さらに、申請者は、多関節に活動性を有する若年性特発性関節 炎を小児の関節リウマチと位置付けて、関節リウマチと同様の用法・用量における小児患 者での有効性・安全性を検討するための非盲検試験を実施しており、その結果、JIA core setによる30%改善頻度は94.7%であり、成人関節リウマチ患者と同様に高い改善率が 示されております。以上の成績より、機構は、本剤の関節リウマチにおける関節疼痛等の 症状及び骨・関節破壊に対する有効性、全身型及び多関節に活動性を有する若年性特発性 関節炎に対する有効性は示されているものと判断しております。なお、申請時の効能・効 果案では、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎については、関節リウマチに含め ることが予定されておりますが、機構としては、当該疾患に係る効能・効果、用法・用量 を別途規定することが適切であると考えており、本申請に係る効能・効果は、既存治療で 効果不十分な下記疾患−関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)、多関節に活動性 を有する若年性特発性関節炎、全身型若年性特発性関節炎−とすることが適切であると判 断しております。  安全性につきましては、TNF阻害剤と同様に感染症の発現率が高く、肺炎、敗血症等 の重篤な感染症も報告されていること、また、本剤の作用により発熱、CRP上昇等の感 染症状が抑制され、感染症の発見が遅れ重篤化する危険性があることなどから、感染症の 発現には十分に注意する必要があると考えており、添付文書等において注意喚起するとと もに、製造販売後においても引き続き慎重に検討するよう指示しております。  また、感染症に加え、心臓障害、悪性腫瘍等の重篤な副作用も報告されていることを踏 まえ、TNF阻害剤と同様の製造販売後の安全対策として、一定数の症例が集積されるま では全例での使用成績調査、さらに長期投与時の安全性等を検討するための長期特定使用 成績調査を実施し、適正使用の徹底、副作用情報の把握の徹底等を図る必要があると判断 しております。  以上の審査を踏まえ、本剤については製造販売後に全投与症例を対象とした使用成績調 査を実施すること及び大規模な長期特定使用成績調査を実施することを承認条件とし、本 申請を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と 判断いたしました。本剤の既承認効能であるキャッスルマン病は希少疾病用医薬品として 指定されていることから、本追加効能に係る再審査期間は5年10か月とすることが適当 と判断しております。また、80mg製剤及び400mg製剤は劇薬及び生物由来製品に該当す ると判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。  よろしく御審議のほどお願いいたします。 ○永井部会長 それでは御質問、御討論をお願いいたします。 ○鈴木委員 全例調査をされるということなので、そこで安全性がかなり担保されると思 ったのですが、データを拝見すると、非線形性がすごく大きく出てきて、投与量依存的に クリアランスがどんどん下がっていくのです。これは恐らく、レセプターメディエイテッ ドエンドサイトーシスが飽和していくと思うのですが、そうしますと、レセプターがリッ チな臓器にこの抗体が結合した状態があるわけです。クラス2なら問題はないと思うので すが、これはIgGのクラス1ですので、補体系が活性化される可能性も十分考えられる のです。副作用を拝見しますと、IL-6レセプターリッチな肝臓の毒性も何パーセント か、それが原因で中止された例もあると書いてあるのですが、想像以上に重篤なものがあ ったといったことは特になかったでしょうか。 ○機構 肝臓障害に関しましては、特に重篤なものは見られておりません。ALT、AS Tが上昇するということはございますが、ほとんどが基準値の範囲内あるいは一過性の上 昇です。 ○川西委員 私は以前、品質を見たという経験があります。関節リウマチに関して、実際 に使ってみないと分からない部分もあろうかと思いますが、臨床成績としては比較的いい のです。アクテムラの場合は、まだ確定した評価がないというところもあろうかと思いま すが、一律に、少なくとも1剤の抗リウマチ薬で効果不十分な場合に限りとあります。エ タネルセプトの場合も、最近のヒュミラから、インフリキシマブから、みんなにこういう 記述を一律に書いているのですが、これはメトトレキサートなどでは駄目な場合という雰 囲気を出したいがためなのでしょうか。この辺を一律に書くという意味を教えていただけ ればと思います。 ○機構 臨床試験での選択基準を反映させてこのような記載になっています。 ○川西委員 これに実質的な意味はさほどないのかもしれないのですが、例えばレミケー ド等も、いまだにこういう文言が書いてある。レミケードの場合は併用が基本なのですが、 エタネルセプトの場合は単独という形があるのです。そういうときに、こういうものが一 定の評価を得た後までずっと残ってしまうものなのですか。 ○新薬第四部長 一般に、新薬の効能・効果につきましては、その基になった主たる臨床 試験の成績に基づいてということですので、本剤につきましても、臨床試験で少なくとも 1剤の抗リウマチ薬無効の患者を集めて、その中で有効性、安全性を評価したということ で、それが反映されております。  今のお話は、臨床的にいろいろ違う使い方をされているということですが、その場合、 いろいろなケースがあろうかと思いますけれども、基本的には、臨床試験の結果等が新た に出されて、効能・効果を変更することで新たな使い方が承認されていくのが一般的では ないかと思います。 ○澤田委員 確認させていただきたいのですが、原則的にこの薬は併用で使うことが多い という認識でよろしいのですか。 ○機構 国内の臨床試験におきましては、すべて本剤単独という形で試験をしておりま す。 ○澤田委員 例えばメトトレキサートが効かなかった場合には、次にこれを単独で使うと いうことですか。 ○機構 そういうことになるかと思います。 ○五十嵐委員 先行している薬はやめられませんので、メトトレキサートやステロイドは ある程度使いながら、これを加えていくという使い方をする。臨床的、実際的にはそのよ うに使うのではないかと思います。 ○機構 国内の臨床試験においては、単独という形のものしかしておりませんが、御指摘 のように、臨床現場においては、メトトレキサート等と併用して使われることもあるもの と想定しております。ただ、日本人患者でのデータがないということで、そういった使い 方での安全性は確立されていないという注意喚起はさせていただく予定です。 ○澤田委員 併用で使う場合には感染症の発症が多いという話があります。併用薬と両方 の薬が同時に効いて、より強く免疫毒性が出て、感染症が発症しやすいという状況になる 可能性があるかどうかということを心配しているのですが。 ○機構 海外ではメトトレキサートとの併用試験が行われております。メトトレキサート の用量が国内外で違うというところもあるので、そのまま日本人患者に適用できるかとい うところはあるのですが、併用した場合の方が感染症等の発現率は高くなるという傾向は 出ております。ALT、AST上昇等の発現も若干高くなる傾向が出ており、注意喚起が 必要と考えております。 ○永井部会長 IL-6の抗体ですから、抗体を作りにくくするという可能性はあるわけ ですが、自己抗体ができないわけではないのですね。その頻度がほかの医薬品に比べて少 ないのでしょうか。 ○機構 自己抗体は本薬投与後でも認められています。他の品目と比較したデータは現時 点では得られていません。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。もし御意見、御質問がございませんでしたら議決に 移らせていただきますが、五十嵐委員、林委員におかれましては、分科会申合せに基づき まして議決への参加を御遠慮いただくことになります。アクテムラを承認してよろしいで しょうか。御異議なしということで、承認可とし、分科会に報告させていただきます。  議題3及び4につきましては、首藤部会長代理に進行をお願いいたします。 ○首藤部会長代理 それでは議題3に入ります。総合機構から概要を御説明ください。 ○機構 資料3、医薬品ジュリナ錠0.5mgについて、医薬品医療機器総合機構より御説明 いたします。  本剤は、更年期障害及び卵巣欠落症状に伴う症状の緩和を目的としたホルモン補充療法 に用いるエストラジオールの経口製剤です。更年期障害は、顔面紅潮、のぼせ、発汗等の 血管運動神経症状等を主訴とし、その主因はエストロゲンの産生低下であることから、エ ストロゲンの補充が最も効果的な治療法として行われており、国内においては結合型エス トロゲンの経口製剤、エストラジオールの経皮吸収製剤が用いられています。しかしなが ら、ホルモン補充療法に伴って乳癌、冠動脈性心疾患、脳卒中、静脈血栓塞栓症などの合 併症のリスクが増大する可能性が海外臨床試験で報告され、ホルモン補充療法においては エストロゲン製剤を必要最小量で必要最短期間投与することが国内外で推奨されたため、 低用量製剤の必要性が高くなったことから、エストラジオールを主成分とする経口投与可 能な低用量製剤として1993年より本剤の開発が開始されました。2007年11月現在、海 外においては、本剤の承認申請、承認取得及び販売は行われていませんが、エストラジオ ールの経口剤は広く使用されています。  本品目の審査に関しまして、専門委員として、配付資料11に記載されております委員 が指名されました。  次に、機構における審査の概略を説明させていただきます。  品質、毒性、薬理及び薬物動態については、審査の過程において申請者から適切な対応 がなされ、特に問題はないと判断いたしました。  臨床試験成績について説明させていただきます。国内後期第II相試験では、更年期障害 及び卵巣欠落症状と診断された患者を対象に、プラセボを対照として本剤を1日1回 0.5mg又は1mgで8週間連続経口投与され、主要評価項目とした8週後又は中止時の最終 評価時におけるHot flush回数の減少率について検討したところ、本剤0.5mg群と1.0mg 群との間に有意差は認められなかったものの、プラセボ投与群に対する各実薬群の優越性 が認められたことから、更年期障害及び卵巣欠落症状に伴う血管運動神経症状に対する本 剤の有効性は示されたと判断いたしました。また、提出された試験成績を踏まえ、膣萎縮 症状を効能・効果に含めることが妥当であると判断いたしました。本剤の全般的な安全性 は既承認製剤と同程度であり、本剤の用法・用量については、提出された試験成績等より、 通常用量の1日0.5mgに加え、1日1.0mgに増量するという選択肢を設ける必要があると 判断いたしました。また、製造販売後の調査として、ホルモン補充療法との関連が懸念さ れているリスク等に関する情報収集、脱落例及び本剤の投与終了後の追跡調査、1.0mg/ 日に増量した患者における有効性及び安全性等を実施する必要があると判断いたしまし た。  以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品 第一部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。なお、原体及び 製剤は、毒薬又は劇薬のいずれにも該当せず、製剤は生物由来製品及び特定生物由来製品 に該当しないと判断し、再審査期間は6年とすることが適当であると判断しております。 薬事分科会へは報告を予定しております。  御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○首藤部会長代理 エストラジオールの新剤型ですが、御意見はいかがでしょうか。 ○本橋委員 一つ確認したいことがあります。更年期障害には不安とか抑うつ等の精神症 状をよく伴うわけですが、今回その辺りは評価項目に入っていたのでしょうか。 ○機構 自覚症状として、有害事象等では検討しておりますが、特にそれを評価項目とす るようなことはございませんでした。それに伴いまして、効能・効果につきましても既存 の類薬と同程度としております。 ○本橋委員 こういった薬が抑うつをかなり改善するという報告があったり、逆に副作用 として出すというようなこともありますので、どのような影響が出るのか、今後見ていく 必要があるのかなと思っております。それから、貼付剤との比較では、どのようなメリッ ト、デメリットがあるのですか。 ○機構 メリットといたしましては、特に皮膚症状等をお持ちの方、また入浴等もござい ますし、本剤は剤形も比較的小さいものですので、簡便な用法で、比較的コンプライアン スの維持も良好ではないかと考えております。ただ逆に、デメリットというわけではあり ませんが、人前で錠剤を飲むという行為もございます。貼付剤にもメリットがございます ので、臨床の先生方の方で患者さんの状態を診ていただいて、お話合いの上で適宜必要な もの、適切なものを御使用いただくということでよろしいかと思います。  従来、国内におきましてはエストラジオールの経口製剤というものはございませんでし た。欧米におきましては、それを含めて幅広い選択肢があったことから、今回、国内で本 剤が承認されるということであれば、海外同様、幅広い選択肢を臨床の先生方に選んでい ただくことも可能となってまいります。そういう意味では、専門協議等におきましても、 専門委員の先生方から評価はいただいております。 ○土屋委員 些細なことですが、添付文書(案)の8ページ、1日1回、0.5mgと1mgで反 復投与したときの例で、注として「本剤の承認用量は1日1回0.5mgである」と書いてあ るのですが、こういう場合、増量することが許されていても、承認用量はあくまで1回 0.5mgと考えるのでしょうか。 ○機構 修正が間に合わなかったのですが、ここは削除ということになっております。申 し訳ありませんでした。 ○中澤委員 細かいことですが、教えてください。これは経口用の薬として開発されてい るのに、非臨床は皮下で投与しているものがすごく多いのです。薬物動態に関しても、皮 下については行われていないので、経口との同等性がよく分からないのですが、これはこ ういうやり方でよろしいのでしょうか。 ○機構 エストラジオールということもございまして、既存のデータもかなり豊富にござ います。そういうこともあり、今回のところについては、ヒトでPK等のデータも比較い たしまして、本剤の血中濃度での位置付けというところは評価できると判断します。 ○村勢委員 本邦においては初めてのエストラジオール製剤ということですが、もちろん 欧米では30〜40年、かなり歴史が長いものであるわけです。この記述とか添付文書の引 用の仕方などを見ますと、エストラジオール単独での副作用はほとんど載っていない。そ れよりは黄体ホルモンとの併用療法の方が主にディスカッションされておりまして、肝心 なエストラジオール単独の副作用などについては余り言及されていない。要するに、有利 なデータは割合よく引いてあるのですが、悪いデータはリファレンスにも余り引いていな いというのが、読んでとても印象的だったのです。  エストロゲンの単独療法では、過去のかなりきちんとしたデータで、子宮内膜癌のリス クが高くなるという論文がありますし、乳癌のリスクも高くなるというデータもあるので す。  添付文書を見ると、その辺がお分かりになると思うのです。1.8の3ページの2.の「重 要な基本的注意」という項目、それから9ページの「主要文献」、この二つについて主に お話します。先ほど言ったように、エストラジオール単独の副作用が全然引かれていない ということです。過去のデータで、子宮内膜癌のリスクが高くなるとか、乳癌のリスクが 高くなるというような欧米のきちんとした文献も一緒にここに掲載しておくことがフェ アではないかと思います。  2.の「重要な基本的注意」の(1)に「卵胞ホルモン剤と黄体ホルモン剤を長期併用」 うんぬんと書いてありますが、これは乳癌になる危険性が高くなると書いてあります。2. の(5)には「子宮を有する女性に投与する場合は、子宮内膜癌予防の見地から黄体ホルモ ンの併用が原則である」という記述があるのですが、(5)に関してはこれでよろしいと思 うわけです。この記述の中にもありましたように、WHI(Women's Health Initiative) という、かなり代表的な治験を見ますと、エストロゲンとプロゲスチンの併用療法は乳癌 の明らかな増加があるということで、トライアルの途中で3年間くらいで中止していると いう経緯があるわけです。  「黄体ホルモンの併用が原則である」と書いてあるかと思うと、(1)においては「乳癌 になる危険性が」うんぬんと書いてあったりする。これも、そもそもがエストロゲン単独 の副作用ということではなくて、エストロゲンとプロゲスチンの併用のことであって、こ こではそれは余り書く必要はない。エストラジオール単独の効果あるいは単独の安全性に 関する議論にもう少しフォーカスを定めて、添付文書でも、あるいは主要文献の中でもそ れを引用あるいはディスカスしておくのが丁寧ではないかと思います。黄体ホルモンまで 一緒に入れて、エストラジオールの不利な点を何となくカモフラージュするというような 印象を強く受けるのですが、これはこれでよろしいのでしょうか。  文献に関しては、両方ともかなりきちんとした論文がありますので、後で提示しても結 構ですが、その辺の論文が余り載っていない。新しい論文が載っていると言えばそうなの ですが、欧米では1970年代くらいから盛んに使われておりまして、莫大な経験の蓄積が あるということで、かなりきちんとしたデータは1980年代の後半から1990年代の初めご ろに出そろっております。その辺が全然抜けているというか、故意なのか、新しい文献を というような意図なのか分かりませんが、その辺に対するお答えがありましたらお教えい ただきたいと思います。 ○審査管理課長 御指摘ありがとうございました。御指摘を踏まえて、使用上の注意につ いては、先生のお知恵も借りながら再整理をしてみたいと思います。その上で、次回の部 会にその点は御報告するということにさせていただければと考えますが、いかがでしょう か。 ○村勢委員 前の貼付剤については、こういう書きぶりですか。 ○審査管理課長 類薬に合わせて整理をしてきたと聞いておりますが、類薬の例があるか らこれでいいということではなく、今の先生の御指摘は、科学的、合理的なところだろう と考えますので、まずはこれの整理を試みてということを条件にさせていただければと考 えております。 ○首藤部会長代理 村勢委員、よろしいですか。 ○村勢委員 はい。 ○林委員 疫学研究と臨床試験の記述の仕方について、WHIは確かに臨床試験のところ でいろいろ出していますが、実はコホート部分があって逆の結果を出しているのです。例 えば乳癌もそうですし、脳卒中もそうですし、逆の結果が出ているところがあると思うの です。私は逆に、あえて危険なところだけをピックアップして出されているのかなと一瞬 思ったところもあるので、もしも整理されるのであれば、WHIのコホート部分も、つま り逆の結果が出ているところも記述した方が網羅的なのかなという気がします。私は逆の 印象を持って、リスクのところだけがあえて取り出されているところもあるのではないか という気もしました。  もう一つ、エストラジオールと、海外では結合型のエストロゲンを使ったものが多いと 思いますので、その辺の違いもきちんと記述された方がいいという気がします。 ○機構 結合型のエストロゲンとのことにつきましては、国内の今回の開発において直接 比較したものはございませんが、海外において結合型エストロゲンとエストラジオールと の比較をしたデータはございます。結合型エストロゲン「プレマリン」の0.625mgにおお むね該当するのがエストラジオールの1mgであろうというデータはございます。 ○首藤部会長代理 添付文書は御検討をお願いいたします。議決に入りたいと思います が、永井委員、野田委員におかれましては、薬事分科会申合せに基づきまして議決への参 加を御遠慮いただくことにいたします。ジュリナ錠0.5mgを承認してよろしいでしょう か。 ○村勢委員 先ほどは、次回までにいろいろ調査をしてというようなお話だったのですよ ね。 ○審査管理課長 もし差し支えなければ、使用上の注意について、今、二人の委員から御 指摘いただいたわけですが、それを踏まえて再整理することを条件に本日の議決をいただ く、ということでいかがかと思います。いずれにしましても、これが承認されるのは、3 月に予定されている分科会を待って、恐らく4月になると思いますので、その間にその条 件が満たされなければ、当然のことながら、我々としてその承認を止めます。正直に申し 上げて、エストラジオールの副作用の整理はかなり膨大な作業になるのではないか、また 学問的にも議論があるところが若干残っているのではないかと私は思うところがあるわ けですが、現段階でできる限りの整理を試みる、また試みたいと考えております。そうい うことでいかがかと考える次第です。 ○首藤部会長代理 添付文書を整理するという条件付きでということになると思います が、再度お諮りいたします。いかがでしょうか。  添付文書あるいは使用上の注意の整理をすることを条件として承認可ということにい たします。これは分科会に報告ということですが、それまでに、あるいは次回までに丁寧 にやってください。  議題4、エクジェイド懸濁用錠125mgに入ります。永井委員におかれましては、本議題 の審議の間、別室で御待機いただくことといたします。 ── 永井委員退室 ── ○首藤部会長代理 機構から概要を説明してください。 ○機構 それでは議題4(資料4)医薬品エクジェイド懸濁用錠125mg及び同500mgの生物 由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並 びに毒薬又は劇薬の指定の要否について、機構より御説明申し上げます。  本品目は、「輸血による慢性鉄過剰症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品です。 本品目の有効成分であるデフェラシロクス(以下、本薬)は3価の鉄に選択的な鉄キレート 剤であり、鉄を排泄させる薬剤です。  重度の貧血が現れるβサラセミア、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群等の難治性貧血 患者には、支持療法として頻回に赤血球輸血が行われております。頻回輸血により、赤血 球崩壊後の鉄が体内に過剰に蓄積されますが、鉄の生理的排泄量はわずかであるため、継 続的な頻回輸血により肝臓、心臓等へ鉄が沈着し、不可逆性の臓器障害が引き起こされま す。  現在、輸血による慢性鉄過剰症の治療薬としては、鉄キレート剤である「注射用デフェ ロキサミンメシル酸塩」が承認されておりますが、デフェロキサミンによる治療は、半減 期が短いため、適切な除鉄治療を行うために連日の筋肉内注射が必要であること、血小板 減少や白血球減少を合併する再生不良性貧血や骨髄異形成症候群等の患者では、連日の注 射により注射部位の炎症や皮下出血の合併が懸念されること、等の問題があり、実際、調 査によりますと、本邦における注射用鉄キレート剤では、十分な治療が行われていない現 状が示されております。  一方、本薬は経口剤であるため、適切なデフェロキサミン治療が困難であった患者にと って新たな治療を提供できる薬剤となることが期待され、開発されております。なお、本 品目は、未承認薬使用問題検討会議のワーキンググループより「外国臨床データの活用も 考慮した上で、早期の承認申請が望まれる」との検討結果も報告されております。  本薬は、2005年に米国において承認を取得した後、2007年10月現在、米国、EU諸国 等世界95か国において承認されております。  本品目の専門協議では本日の配付資料11に示しますような方々が専門委員として指名 されております。  審査の概要に移ります。規格及び試験方法、非臨床に関して提出された資料の内容は適 当であると判断しましたので、臨床試験成績について述べさせていただきます。  臨床試験成績としては、国内試験は輸血依存性の難治性貧血患者を対象とした臨床薬理 試験のみが実施されております。国内では輸血依存性の難治性貧血患者が少ないこと、有 効性の評価項目である肝鉄濃度の測定が国内患者では困難であるため、肝鉄濃度を指標と する有効性を評価した国内臨床試験は実施されておりません。  そのため、海外で実施された臨床試験を中心に評価資料として提出されております。  国内の対象患者は主に骨髄異形成症候群及び再生不良性貧血であり、βサラセミア患者 を対象に実施された海外の検証試験とは主な対象患者が異なりますが、本薬は原疾患にか かわらず頻回輸血により蓄積された過剰な鉄を除去する薬剤であることから、本薬の除鉄 効果が確認されること、原疾患による有効性に差異が認められないことを確認すること で、本薬の有効性を評価することとさせていただきました。  まず、有効性に関してですが、主要な評価試験である、重症型のβサラセミア患者を対 象に、経口剤である本薬又は注射剤であるデフェロキサミンを1年間投与した第III相二重 盲検比較試験が実施されております。主要評価項目である「肝生検又は機器による測定装 置により測定されたベースライン時及び52週時の肝鉄濃度に基づき算定された有効率」 については、本薬群が52.9%、デフェロキサミン群が66.4%であり、デフェロキサミン 群に対する非劣性は検証されませんでした。  デフェロキサミンと比べて低い成績ではありましたが、国内でデフェロキサミン治療が 十分に行われていない現状をかんがみると、肝鉄濃度の減少を確認することで、本薬の除 鉄効果は期待できると判断いたしました。  また、デフェロキサミンによる治療が困難な、輸血による慢性鉄過剰症を伴う難治性の 慢性貧血患者を対象にした試験では、本薬を1年間投与しましたが、主要評価項目である 52週時の有効率は55%程度でした。原疾患別による有効率は、βサラセミア患者の有効 率と骨髄異形成症候群や再生不良性貧血を含むその他の難治性貧血患者の有効率は同じ ような成績が得られております。  そのため、国内の対象患者においても有効性は期待できると判断させていただきまし た。  安全性に関してですが、有害事象は本薬群、デフェロキサミン群に85%程度、ほとん どの症例に認められておりますが、デフェロキサミン群よりも本薬群に、血中クレアチニ ンの増加の発現頻度が高いことが認められております。血中クレアチニンの増加に関して は、可逆性が認められているため、臨床試験と同様に血中クレアチニン値及び尿中タンパ ク/クレアチニン比を4週に1回測定し、経過を十分に観察し、減量・休薬の措置を講じ ることが必要と判断させていただきました。  また、下痢、嘔吐といった消化器症状についても高齢者の発現頻度が高いことが認めら れたため、注意喚起をさせていただいております。そのほかにも、本薬及び類薬で認めら れている有害事象である、肝機能障害、眼障害、聴覚障害、血球数減少、過敏症反応等に ついても、注意喚起が必要であると考えております。  本邦における治験の症例数が非常に限られていたこともありますので、一定期間全症例 を対象とし、安全性・有効性を調査する製造販売後調査が予定されております。  以上のとおり、機構での審査の結果、本薬による輸血による慢性鉄過剰症患者における 除鉄効果が認められ、「輸血による慢性鉄過剰症(注射用鉄キレート剤治療が不適当な場 合)」を効能・効果として承認して差し支えないと判断し、医薬品第一部会で審議される ことが妥当と判断いたしました。  なお、本薬は生物由来製品又は特定生物由来製品に該当せず、原体及び製剤は劇薬に該 当し、また、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年とすることが適当 であると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。  御審議どうぞよろしくお願いいたします。 ○首藤部会長代理 委員の方、御意見、御質問をどうぞ。 ○五十嵐委員 この疾患自体が、全身に鉄が沈着する結果として、肝障害や腎障害等いろ いろな臓器障害を来すということで、それを治療する薬だと思うのですが、一つ教えてい ただきたいのです。米国でも腎障害のことが結構注目されていると言われています。添付 文書(案)の2ページの(4)に、血清クレアチニンが2回続けて治療前の平均値の33%を 超える時、例えば0.9mg/dlの血清クレアチニンの人が1.2mg/dlになったら注意するとい う書きぶりです。腎障害の評価として33%の上昇という数字を出した根拠はどういうと ころにあるのか。何か根拠がございましたら教えていただきたいのです。 ○機構 33%の根拠ですが、こちらの基準を使って臨床試験を実施しておりました。その ため、こちらを注意喚起させていただくという措置を採らせていただきました。 ○五十嵐委員 本当にそれでいいのでしょうか。腎機能の評価の際に、血清クレアチニン 値が、0.9mg/dlの人が0.8mg/dlを示したり、あるときは1.0mg/dlと、10〜20%くらい 変わることは、臨床検査上よくみられます。それを超えて33%ということは、明らかに 腎機能障害が進行しているということは言えるとは思います。しかし、33%の上昇をもっ て腎障害があると考えた場合、かなり進行していないと、薬は減らせないことになります。 注意喚起としてもう少し厳しい方がいいのではないかという気もするのですが、いかがで すか。 ○新薬第一部長 我々としては、基本的には海外でのいろいろな基準等を用いて設定をさ せていただきます。ちなみに、EUの添付文書を御紹介させていただきますが、インデッ クス1.6の1の16ページです。腎機能に関してEUの添付文書でもかなり詳しく述べて いますが、この中で同じように、モニタリングは血清クレアチニン評価を2回実施するこ とを推奨すると。さらに、その場合に33%を超えてうんぬんと、同じ基準があります。 海外でもこういうものを利用していますので、私どもも同様にしたというところもありま す。 ○審査管理課長 今、先生に御指摘いただきました「用法及び用量に関連する使用上の注 意」の(4)、ここに「33%」という記載があるわけです。もう一つ、その次の「使用上の 注意」の2.「重要な基本的注意」の(2)、ここにまた「血清クレアチニンの増加」とい う形で書かれているわけです。すなわち、上の「用法及び用量に関連する使用上の注意」 の(4)を単独で見ると、先生がおっしゃっているような違和感があるのだろうと思いま す。2.の「重要な基本的注意」の(2)がまずあって、その上で特に33%を超えた場合に は休薬するとか、そういう趣旨であれば、先生の御意見と齟齬がないのかと考えます。も う一段そこが分かるような工夫ができないのかと考えていまして、その点について、文章 を整理させていただきたいと思います。 ○首藤部会長代理 五十嵐先生、いかがですか。 ○五十嵐委員 結構です。 ○首藤部会長代理 これもいろいろ御相談して整理してください。これは用量が1日1g くらいですね。随分量が多い薬だという印象を持ちます。  ほかに何か御意見、御質問はありますか。もしないようでしたら議決に入りたいと思い ます。鈴木委員におかれましては、薬事分科会の申合せに基づきまして、議決への参加を 御遠慮いただくことといたします。添付文書の整理が必要かもしれませんが、本剤を承認 してよろしいかどうか。異議はありませんか。異議がないようですので、本件はこの部会 としては承認です。これは分科会へ報告という事項です。永井先生がいらっしゃるまでお 待ちください。 ── 永井委員入室 ── ○永井部会長 報告事項に移りますので、御説明をお願いします。 ○機構 報告事項の議題1「医薬品ペンタサ錠250の製造販売承認事項一部変更承認につ いて」報告いたします。資料5を御覧ください。本剤は、メサラジンを有効成分とする、 炎症性腸疾患治療剤であり、現在は潰瘍性大腸炎(重症を除く)及びクローン病の効能・効 果で承認されております。今般、日清キョーリン製薬株式会社から、「適応外使用に係る 医療用医薬品の取扱いについて」(平成11年2月1日付け研第4号医薬審第104号、厚生 省健康政策局研究開発振興課長及び医薬安全局審査管理課長通知)に基づいて、医学薬学 上公知であるとして、小児用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請が なされたものです。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支 えないと判断いたしました。  続きまして、報告事項の議題2「医薬品ワソラン錠40mgの製造販売承認事項一部変更 承認について」です。資料6を御覧ください。本剤は、現在は、「狭心症、心筋梗塞(急 性期を除く)、その他の虚血性心疾患」の効能・効果でのみ承認されておりますが、抗不 整脈剤として、Vaughan Williams分類では"クラスIV"、Sicilian Gambit提唱の分類では "強力なCaチャネル抑制作用を有する薬剤"と位置付けられているものです。今般、エー ザイ株式会社から、「適応外使用に係る医療用医薬品の取扱いについて」(平成11年2月 1日付け研第4号医薬審第104号、厚生省健康政策局研究開発振興課長及び医薬安全局審 査管理課長通知)に基づき、医学薬学上公知であるとして、「頻脈性不整脈(心房細動・粗 動、発作性上室性頻拍)」の効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請 がなされたものです。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を頻脈性不整脈 (心房細動・粗動、発作性上室性頻拍)の効能・効果で承認して差し支えないと判断いたし ました。  続きまして、報告事項の議題3「医療用医薬品の再審査結果について」、三つ報告いた します。資料としては、資料7-1の医薬品再審査確認等結果通知書、一般的名称は「ラベ プラゾール」、販売名は「パリエット錠10mg他」、資料7-2の医薬品再審査確認等結果 通知書、一般的名称は「リュープロレリン酢酸塩」、販売名は「リュープリン注射用3.75 他」、資料7-3の医薬品再審査確認等結果通知書、一般的名称は「ニカルジピン塩酸塩」、 販売名は「ペルジピン注射液2mg他」です。これらの品目につきましては、市販後の使用 成績調査、市販後臨床試験、特別調査の成績等に基づいて各々再審査申請が行われまして、 審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられています承認拒否事由のいずれにも 該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要は ない「カテゴリー1」と判定したものです。 ○事務局 議題4につきまして説明します。資料8を御覧ください。優先審査品目の指定 について御報告します。  優先審査の取扱いについては、資料の2ページにその概要を示しています。1.の(2)に ありますように、適応疾病の重篤性と医療上の有用性とを総合的に評価して判断すること としています。  資料の1ページにお戻りください。今回、指定の報告をする品目は、「アリクストラ皮 下注1.5mg、同2.5mg」です。本剤は、既に、「静脈血栓塞栓症の発現リスクの高い、下 肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制」の適応により承認されてい ますが、今般、「静脈血栓塞栓症の発現リスクの高い、腹部手術施行患者における静脈血 栓塞栓症の発症抑制」の効能・効果で承認申請がなされたものです。  まず、適応疾病の重篤性についてですが、申請された効能・効果である静脈血栓塞栓症 は、深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症の総称です。日本人の腹部手術施行患者において、肺 血栓塞栓症が発症した場合の死亡率は14%と高いこと等より、本剤の適応疾病は生命に 重大な影響がある疾患に該当すると判断しました。  次に、医療上の有用性については、国内では肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症予防ガイド ラインにおいて、腹部手術における術後静脈血栓塞栓症の予防のために、間欠的空気圧迫 法、あるいは低用量未分画ヘパリンによる抗凝固療法が推奨されていますが、日本人にお けるエビデンスは存在していません。提出された資料から、本剤は、有効性に関して、国 内外において、既存療法と同等若しくはそれ以上に静脈血栓塞栓症の発現リスクを低下さ せる可能性が示唆される成績が得られており、安全性に関しても、既存療法と比べ臨床的 に忍容できる範囲にあるものと考えられます。以上より、静脈血栓塞栓症の高リスクであ る腹部手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制に関して、本剤は、既存療法に比 べ高い有用性を示すと考えられます。  以上より、本剤について優先審査品目に指定することにしました。 ○機構 続きまして、報告事項の最後になりますが、議題5「医薬品優先対面助言品目の 指定について」御報告します。資料9を御覧ください。  優先対面助言品目指定制度は、薬事法で規定する「医療上特に必要性が高いと認められ るもの」となることが期待される開発中の薬剤について、他の品目に優先して、医薬品医 療機器総合機構が「対面助言(治験相談)」を行う制度です。  「優先対面助言品目」は、「優先審査品目」の選定の考え方に準じまして、指定の時点 までの国内外の試験結果を踏まえ、「適応疾患の重篤性」、「医療上の有用性」を総合的 に評価することによって指定しているものです。  資料9を改めて御覧ください。今回指定したものは、バイオジェン・アイデック・ジャ パン株式会社の「治験成分記号BG00002、Natalizumab」です。優先対面助言の対象効能 としましては、「単剤投与による再発型多発性硬化症患者に対する身体機能障害の進行抑 制及び再発予防」です。  本薬につきましては、「参考」に書いてあるような状況のものでして、欧米では2006 年に薬剤としては最終的に承認されているものです。医療上の有用性に関しましては、再 発型多発性硬化症患者を対象とした海外第III相臨床試験におきまして、本薬は既存の治療 法であるインターフェロン関係薬剤と比較しまして、年間再発回数を高い割合で抑制する とともに、身体機能障害進行率の大きな低下が示されているということでして、当該疾患 の治療において、高い有用性が期待できると判断し、優先対面助言品目に指定したもので す。報告としては以上です。 ○永井部会長 ただ今の報告事項につきまして、御質問、御意見のある方、いかがですか。 ○中澤委員 資料6のワソラン錠について、臨床で効果が出ているのなら特に問題はない と思うのですが、ベラパミルという薬はCaチャネルブロッカーとしては余りピュアでは ないという印象があります。例えばHERGチャネル、IKrを抑制したりとか、ほかに いろいろな作用がある気もするので、果たしてこの作用を全部Caチャネル抑制に持って いってしまって本当に大丈夫なのかという危惧が多少あります。 ○機構 先生のおっしゃる基礎の部分では、いろいろなデータが出ているかもしれません が、御存じのとおり本薬は、抗不整脈薬としては強いCaチャネルブロッカーという分類 で長年にわたり使用されてきていまして、本薬の作用の中で、陰性変力作用につきまして は問題となる可能性はありますが、その他の作用につきましては臨床上特に大きな問題と なっていないという背景もあります。Caチャネルのブロックに関しましては、御存じの ようにほかのCaチャネルブロッカーと比べて非常に変わった作用点といいますか、結合 部位を持っていまして、その点について特徴あるお薬として、価値があるのではないかと 考えています。 ○永井部会長 臨床的にかなりの実績があることが、今回の適応拡大の根拠になっている ということですね。  そのほかにいかがですか。よろしいですか。もし御意見等がありませんでしたら、ただ 今御報告いただいた事項については、御確認いただいたということにさせていただきま す。  本日の議題は以上ですが、事務局から何か連絡事項はありますか。 ○新薬第三部長 一点御説明申し上げたいと思います。 ○機構 中澤委員からポプスカインに関して一点御質問をいただきまして、先ほど事務局 で十分御説明できていなかったかと思いますので、若干補足をしたいと思います。  審査報告書12ページに記載をしているところで意図していることは、この薬の薬効、 目的とする作用と心毒性にどのくらいの開きがあるかということです。先生の御指摘とし ては、直接的なものですが、麻酔作用と比較すればいいではないかということかと思いま す。実際、非臨床で硬膜外投与等をした場合に心毒性は認められておりません。  そこで、心毒性を発現しながら、なおかつ中枢性の作用を比較する一つの手法として、 イヌでの静脈内投与の結果が参考になるのではないか。中枢作用として何を指標にするか というと、実験から得られているのは痙攣が認められているので、痙攣を誘発した用量を 中枢発現用量とみなして、それと、今回の心血管の毒性の作用を比較する。そうすると、 そこの上段に書いているところは、類薬でも4倍程度、今回の薬でも、臨床で実際に中枢 神経症状としてふらつき、しびれ等が認められている用量、そのときの血漿中濃度とラン ゲンドルフで得られた成績とを比較しても4倍程度ということで、心毒性作用については 中枢神経作用よりも高濃度で発現するということは、一つの考察として成り立つのではな いか。インダイレクトではありますが、そういった可能性もあることについては、我々も 一つの可能性としては有り得るのではないかと。そういったことを申請者としては試み た、そういう考察になっている箇所だと御理解いただければいいかと思います。 ○中澤委員 ここに書いてある中枢神経症状は、ふらつきとか、そういったものを指して いるわけですね。 ○機構 上段の方の類薬のリドカインやエチドカインは、文献報告から出て痙攣作用で す。下の方は、この薬で痙攣作用が出ていないものですから、臨床成績等で実際にヒトに 投与したときの中枢作用と健康成人に投与した成績がありまして、そこでふらつき等が認 められた用量を計算してみると、ここに書いてある用量になります。それと比較すると4 倍程度の用量になって、そこは類薬等を比較してもその程度の用量になるのだろうという ことだと思います。 ○中澤委員 これは局所麻酔作用とは全く関係なくということですね。 ○機構 そうです。健康成人に静脈で投与していますので、低い用量ですが、健康成人に 静脈内投与をしたときにふらつきが認められた用量を一つの指標、中枢の作用、本当にそ れがそれだけで起こっているかどうかは議論のあるところですが、一つの作用としてそう いうものを中枢の発現用量としてみなしたら、このような結果になったと、そういう考察 になっているということです。 ○中澤委員 分かりました。ありがとうございました。 ○永井部会長 よろしいですか。事務局から、どうぞ。 ○事務局 次回の部会の日程ですが、既に御案内のように、2月22日(金)午後4時から 開催する予定となっていますので、よろしくお願いします。 ○永井部会長 本日はこれで終了します。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 河野(内線2746)