08/01/28 社会保障審議会 第2回少子化対策特別部会議事録 第2回少子化対策特別部会 議事録 日時:2008年1月28日(月) 17:00〜18:30 場所:経済産業省別館1042号会議室 出席者:  委員   大日向部会長、岩渕部会長代理、岩村委員、内海委員、大石委員、佐藤委員、庄司委員、杉山委員、   福島委員、宮島委員、吉田委員  事務局   大谷雇用均等・児童家庭局長、村木審議官、高倉総務課長、朝川少子化対策室長、定塚職業家庭両   立課長、義本保育課長、  参考人(オブザーバー)   徳島県東京事務所長 石川茂参考人(飯泉委員代理)   日本労働組合総連合会男女平等局部長 陳浩展参考人(小島委員代理)   三鷹市健康福祉部長 玉木博参考人(清原委員代理)  参考人(ヒアリング出席者)   子どもの領域研究所長 尾木まり参考人   全国家庭的保育ネットワーク代表 鈴木道子参考人 議事:   家庭的保育に関するヒアリング 資料:  資料1  家庭的保育事業について  資料2-1 家庭的保育のあり方に関する研究(中間報告)(平成19年10月29日)〜概要〜  資料2-2 家庭的保育のあり方に関する研究(中間報告)(平成19年10月29日)  資料3  家庭的保育の取り組みに関する調査  資料4  家庭的保育事業の現状と課題  資料5  家庭的保育事業の法制度化のイメージ  参考資料 杉山委員提出資料 ○大日向部会長  定刻になりましたので、ただ今から「社会保障審議会 第2回少子化対策特別部会」を開催いたしま す。委員の皆様方には、ご多用のところお集まりいただきましてありがとうございます。議事に入りま す前に、事務局より資料の確認と委員の出席状況に関するご報告をいただきたいと思います。 ○朝川少子化対策企画室長  それでは、お手元に配付しております資料の確認をさせていただきます。  1枚目が「議事次第」です。資料1は「家庭的保育事業について」、資料2-1と資料2-2は研究会に関 する資料です。資料3は「家庭的保育の取り組みに関する調査」、資料4は「家庭的保育事業の現状と 課題」、資料5は「家庭的保育事業の法制度化のイメージ」です。その後に、参考資料として「杉山委 員提出資料」を配付しております。以上、お手元にございますでしょうか。もし、不足等がございまし たら事務局にお声掛けください。  次に、本日初めてご出席いただきます委員がいらっしゃいますので、僭越ですが、事務局よりご紹介 申し上げます。前回、ご報告させていただきましたが、部会長代理をお引き受けいただきました東北福 祉大学教授の岩渕勝好委員でいらっしゃいます。 ○岩渕部会長代理  岩渕です。 ○朝川少子化対策企画室長  東京大学社会科学研究所教授の佐藤博樹委員でいらっしゃいます。 ○佐藤委員  佐藤です。 ○朝川少子化対策企画室長  委員の出席状況ですが、本日は、飯泉委員、小島委員、清原委員、駒村委員、山縣委員、山本委員か ら、ご都合によりご欠席とのご連絡をいただいております。宮島委員はご出席のご予定ですが、少し遅 れるとのご連絡をいただいております。内海委員も同様かと思います。なお、飯泉委員の代理といたし まして、徳島県東京事務所長の石川茂参考人、小島委員の代理といたしまして、日本労働組合総連合会 男女平等局部長の陳浩展参考人、清原委員の代理といたしまして、三鷹市健康福祉部長の玉木博参考人 にご出席をいただいております。ご出席をいただいております委員の皆様方は定足数を超えております ので会議は成立しております。  次に、本日、本部会にご出席いただいております参考人のご紹介をさせていただきます。子どもの領 域研究所長の尾木まり参考人でございます。 ○尾木参考人  よろしくお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  全国家庭的保育ネットワーク代表の鈴木道子参考人でございます。 ○鈴木道子参考人  どうぞよろしくお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。議事に入ります前に、ただ今ご紹介がありました欠席の委員の代理としてご 出席いただいている参考人について、皆様のご承認をいただきたいと思います。本日ご欠席の飯泉委員、 小島委員、清原委員の代理として、徳島県東京事務所長の石川茂参考人、日本労働組合総連合会男女平 等局部長の陳浩展参考人、三鷹市健康福祉部長の玉木博参考人ですが、このお三方のご出席について、 委員の皆様におかれまして、ご異議はありませんでしょうか。ありがとうございます。  それでは、議事に入りたいと思いますが、初めに、本日この部会を持ちました経緯について、簡単に 確認をさせていただきたいと思います。この部会は先般策定されました「子どもと家族を応援する日本」 重点戦略において、親の就労と子どもの育成の両立を支える包括的な次世代育成支援の枠組みの構築の 一つとして、家庭的保育など保育サービスの提供手段の多様化が提言されました。それを受けて、本部 会は家庭的保育事業を法律的に位置付けるための検討を託されたわけです。そして、昨年の暮に第1回 の会を持ちましたが、何人かの委員の方々から、法制度化を検討するためには家庭的保育事業の実態に ついて、もっと詳しく知りたいという要望が出され、本日、この事業にお詳しい専門家の方々にヒアリ ングをお願いする運びとなりました。  まず、家庭的保育事業の有識者でいらっしゃいます尾木まり参考人、その後に鈴木道子参考人の順に、 大変短い時間で恐縮ですが、10分ほどでご説明いただければと思います。その後に、事務局からもご説 明をいただき、それを受けて委員の皆様方にご議論をお願いしたいと思います。それでは、このような 手順で進めさせていただきます。初めに、尾木参考人にお願いいたします。 ○尾木参考人  尾木でございます。よろしくお願いいたします。私の方からは、昨年度より厚生労働省雇用均等・児 童家庭局保育課からの委託研究として、日本子ども家庭総合研究所で行っております「家庭的保育のあ り方に関する調査研究」から先ごろ発表された中間報告に基づいてご報告をさせていただきたいと思い ます。  資料2-1「家庭的保育のあり方に関する研究(中間報告)概要」と資料3「家庭的保育の取り組みに関す る調査」を使わせていただきます。家庭的保育とは、保育者の居宅等で主として3歳未満の少人数の乳 幼児を対象に小規模に行われる保育です。2000年に創設されました国庫補助事業と地方単独事業があ ります。地方単独事業は、古くは1950年の京都市の昼間里親に始まり、1960年代の後半から1970年 に掛けて増加してきたもので、地方単独事業が国庫補助事業に先行して行われてきたという背景があり ます。多くの自治体では、保育所における産休明け保育、乳児保育の補完として、児童福祉法第24条 第1項のただし書き「その他の適切な保護」を行うために実施されました。1980年代後半からは、保 育所の乳児保育の拡大・一般化に伴い事業を廃止する自治体も出てまいりましたが、国庫補助事業の創 設やその後の保育ニーズの増大に伴い、待機児童対策として新たに導入する自治体が出始めているとこ ろです。厚生労働省調べでは、2005年には全国で83カ所の自治体で実施されています。また、その保 育者数あるいは利用児童数というのはお手元の資料の通りですが、利用児童に関しましては年度末に向 かって増加していく傾向があります。  次に家庭的保育のメリット・デメリットに関してです。まずメリットとしては、特定の保育者が少人 数の子どもを家庭的環境で保育することから、子どもと保育者、保育者と保護者の間に密接な関係を築 きやすく、また個別的で柔軟な対応が可能であるということが挙げられます。また、適切な生活リズム やきょうだい関係に近い仲間関係などを体験することにより、集団生活への移行がスムーズになる可能 性、あるいは地域に密着した保育であるという点も指摘されています。特定の保育者が保育を行うとい うことはメリットであると同時に、保育者個人の資質や人間性の影響が大きいという点で、デメリット にもなりかねないと言われています。特に保育者が1人の場合に密室性や孤立性、それから休暇が取り にくいなど困難な状況になりやすいことが指摘されています。このようなデメリットを解消するために は、保育者への援助体制の整備、保育所との連携など右側にお示ししている事柄が必要となります。  研究班では昨年度「地方自治体における家庭的保育への取り組みに関する調査」を行いました。その 結果から、地方の家庭的保育の状況をご説明します。参考資料3をご覧ください。この調査の対象は、 全国の人口10万人以上の都市および東京都内の区市です。まず、家庭的保育の必要性については、「や や必要」も含めて全体の42%が「必要である」と回答しています。この中には、家庭的保育を実施する 自治体が多く含まれていますが、実施していない自治体でも、その必要性を認める回答が見られました。 また、必要とする理由として、「低年齢児保育の補完」「待機児童の緊急対応策」といった選択肢が5割 前後の割合で選択されたことに対して、多様な保育ニーズに対応するさまざまな選択肢が8割と最も高 い割合で選択されました。  次のページをご覧ください。家庭的保育を実施する自治体は全体の約3割ですが、関東地区に集中し ており、待機児童数が多く、特に低年齢児保育ニーズが高い自治体に多いという特徴が見られました。 事業種別は、地方単独事業が多く、全体として国庫補助事業を導入する自治体は少ないという実態があ ります。  次のページをご覧ください。国庫補助事業を導入していない理由として、地方単独事業として実施し ている場合に、定義や資格要件あるいは運用の形態が一様ではありませんので、その要件が国庫補助事 業と一致していない場合には二重構造にせざるを得なくなる。あるいは、国庫補助事業では家庭的保育 者の孤立を防ぐために、連携保育所を設置することが補助要件になっていますが、そのことに困難があ るといった意見が挙げられています。  次のページをご覧ください。家庭的保育実施の問題や課題としては、巡回指導や相談の体制をいかに 構築するか、あるいは募集しても家庭的保育者のなり手がいない、年度明けの定員割れの問題などが挙 げられています。  最後のページをご覧ください。家庭的保育を強化・充実するための条件として、連携保育所との連携 を強化することや、法的な位置付け、事業の重要性のPRなどが挙げられています。また、これと同じ 設問で、家庭的保育を実施していない自治体にも聞いております。最も多かったのが、国が家庭的保育 を運営するためのガイドラインを示すことや、家庭的保育の有用性を明らかにするデータを示す。ある いは、児童福祉法上に位置付けるなどの項目が多く選択されていました。  資料2‐1に戻ります。次に、諸外国の家庭的保育の状況についてご説明します。わが国では、保育 所に代表される施設型保育が主流になっていますが、諸外国ではファミリー・デイ・ケアが広く普及し ています。両者の違いを見ますと、わが国では保育需要に対して保育所を整備してきていますが、それ に対して諸外国では、必ずしも公的な保育施設の建設という対応を行ってきておりません。そのために 自然発生的な個人の方への依頼が増加して、そのことが保育の質の点で様々な問題を引き起こし、それ に対して行政が認定や支援を行うことにより、より質を担保し促進してきたという経緯があります。そ の点では、児童福祉法第24条第1項ただし書きに基づき、質を担保する形で実施してきたわが国の家 庭的保育とは、そもそもの成り立ちが異なります。一方で、現在諸外国で行われている保育者への支援 体制、あるいは身分保障、社会保障などについては、今後、日本の家庭的保育も参考とすべき点が多く あります。  次のページをご覧ください。「家庭的保育の普及・定着のための課題」として、6点挙げています。ま ずは、「法的位置付けの明確化」です。多様な保育ニーズを抱える子育て家庭に対応していくためには、 家庭的保育を通常保育の一つの選択肢として位置付け、安心して利用できる制度へと整備・充実させて いくことが必要です。保育の質を担保するためには、家庭的保育者の要件は、保育士ならびに看護師を 基本とすることが必要です。ただし、実態として、現在いる家庭的保育者の中には、そういった資格を 持たずに保育者としての認定を受けている保育者がいることに配慮することも必要であると考えてい ます。  2番目として、「実施基準等の整備」が挙げられます。これまで地方単独事業として実施されてきた経 緯に加え、個人の家庭で実施される保育ということもあり、統一した実施基準が設けられずにきました。 家庭的保育の特性を踏まえた家庭的保育独自のガイドラインが保育所保育指針に準じた形、あるいは保 育所保育指針を基礎としながら追加する形で作成されることが必要であると考えます。家庭的保育の特 性とは、個々の家庭が保育室となることから、保育空間を一様に設定することが難しいという点が挙げ られます。また、異年齢の小規模集団の低年齢児保育という特徴があり、毎年年齢構成が変わります。 それから、年間を通して同じ子どもが在籍するのではなく、年度途中から受託する子どもや、途中から 保育所へ移行していく子どもなど、在籍児童の変動が激しいという特徴もあります。法的位置付けをし、 実施基準を整備することにより、これまでの家庭的保育の制度上の不備、あるいはデメリットといわれ てきたことを解消し、より良い保育を提供できる制度になると考えています。その上で、最も必要とな るのは家庭的保育者への支援です。資料に課題とバックアップ体制をお示ししておりますが、認可保育 所との連携については、国庫補助事業の創設により、何年か経過した今、モデルとなるような保育所と の連携が行われるようになってきました。しかし、全体としては連携保育が進まない状況があります。 その理由として、保育者1人で3人の年齢の異なる子どもを保育所まで連れて行くことが非常に困難で、 そのことが大きく影響しております。地域の社会資源の活用も非常に大事なことなのですが、家庭的保 育者には必要な援助をそれぞれの家庭的保育の場に届けるという支援が必要になります。「巡回指導」 とありますが、これも監督指導的なものとサポート的なものに分けて支援していくことが必要であると 考えられます。  次に「人材の養成・確保」という点ですが、研究班で研修に関する調査も行いましたが、新規に家庭 的保育者としてスタートする際の研修が十分でないということが明らかになっています。保育士などの 有資格者であり、また、集団保育経験者も多く家庭的保育者となっているのですが、それにしても家庭 における個別保育は、保育所における集団保育とは異なる側面があります。また、現任研修についても 保育開始後のスキルアップの体制も不十分であります。そのため、資料にお示ししているような研修体 系を構築して、特に基礎研修に関しましては、必須のものとすることが重要だと考えています。  最後のページをご覧ください。安定的財源を確保する必要性はいうまでもありません。そして、家庭 的保育を強化・充実させるための条件としては、社会的なPRが欠かせません。家庭的保育がどのよう な保育であるか、まだまだ認知が低い状態にあります。視覚的なPRを実施しながら普及させていく必 要があります。保護者への情報提供はもちろんのこと、家庭的保育を実施していない自治体に向けた PRや研修、保育所の方たちを対象とした研修なども行い、理解を深めていただくことも今後の課題で はないかと考えております。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。それでは、続きまして鈴木参考人からご説明をお願いいたします。 ○鈴木参考人  鈴木でございます。私からは、現場から見ました制度の課題と要望についてお話させていただきます。 10点ほどあります。  1点目は、休暇についてです。家庭的保育者が病気や冠婚葬祭などで休暇をいただくと、親が仕事を 休まなければならないのでお願いしにくいというのが現状です。代替保育という選択肢もありますが、 ある保育ママからは、親の葬式を家族葬で執り行ったところ、隣の保育室からにぎやかな声が聞こえて きて困ったという本当の話が届いております。代替保育として、休暇をいただくことも大事ですが、で きれば連携保育園での休暇というものを望んでいます。代替保育ですと、事故などの責任を負わなけれ ばならないという問題もありますので、私たちは第一に連携保育園での休暇対策をお願いしたいと思っ ております。しかし、保育所も過密で大変なことと思いますので、検討課題になるかと思います。  それから、2点目には補助者の配置についてです。制度の持つデメリットが、たびたび新聞紙上に取 り上げられまして、1人で3人も保育することから閉鎖的で密室的な保育だとイメージされているかと 思います。そのことによりまして、不安になり躊躇(ちゅうちょ)される父母もいらっしゃいます。横浜 市では、3人に対しては1カ月に85時間の補助員雇用費、5人に対しては1カ月に197時間の補助員 雇用費を助成してくださっています。そして、このことにより安心で安全で豊かな保育の実践ができて おります。補助員雇用費をいただいて開放的な保育のイメージを押し出すことが大切かと思っておりま す。終日1人で3人の乳幼児の保育に当たりますと、家庭的保育者はストレスにより事件を起こしやす くなるようです。このデメリットはぜひ改善して頂けますようにお願いいたします。  3点目に、3歳以降の保育園の入所の保障が挙げられると思います。私どもに入0歳で入所してくる お子さんは、大体3歳まで保育をお願いしたいといいます。3歳まで残るお子さんが多いのですが、3 歳の3月を迎えるこの時期になりますと、移行の問題が発生し、希望の保育園に入所できないと利用者 からは不満が出ます。今まで一生懸命保育に明け暮れてきた日々は何だったのだろうかと空しくなりま す。保育園の拡充が無理でしたら、幼稚園の預かり保育や認定こども園を増やしていただいて、解決し てほしいと思います。実際、私のところから昨年2人が横浜市の幼稚園の預かり保育を利用して移行し ました。先日その親子がおみえになりまして「働いている母親は保育園しか利用できないかと思ってい たけれど、幼稚園が利用できてとてもうれしかった」とおっしゃいました。ですから、いろいろな固定 的な観念ではなくて、幼稚園もあって、認定こども園もあって、保育所もあるという、そういう施策が 今こそ必要ではないかと思います。また、家庭的保育制度(保育ママ)を拡充した場合には、この問題 はさらに大きくなりますので、受け皿の保障をお願いしたいと思います。公立保育所は18時半に閉め ていますので、私立保育所のように遅くまでやっているところが第一希望なのですが、私立保育所も0・ 1歳児を20人くらい入れていて、5歳まで経営が安定するようにやってらっしゃるので、その保育園に 2歳児で申し込みたいと思っても、実際には1人の欠員枠に何人も応募するという状況が起きていて、 入れません。公立保育園も民間委託され、この先、私たちの子どもは本当に保障されるのかという不安 が、いつもつきまとっております。  4点目は、給食がないことです。いまや幼稚園でも6割が給食を実施している時代になっております。 家庭的保育は、保育に欠ける保護者の子どもを預かるシステムになっている通常保育です。毎日のお弁 当作りは体力的に大変というお話もあります。また、今春、改定されます保育所保育指針にも食育の推 進として、給食を保育の一環として位置付けて、給食の果たす役割の重要性をうたっております。人員 配置などの助成をお願いできましたら、実現に向けて努力したいと思っておりますので、ぜひこの点の 問題を解決してほしいと思います。  5点目は、実施要綱の家庭的保育者の要件に、「6歳未満の子どもがいないこと」となっていることで す。この点につきましても、やはり若い人が入ってこられない、30代後半からしか入ってこられないシ ステムになっていると思います。私も28歳のときに保育ママを志しましたが「6歳未満の子どもがい ないこと」という要件がありましたので、9年間の準備期間を経て37歳でようやく念願の家庭保育福 祉員(保育ママ)になれました。この9年間を、今の方たちが待っていられるか。保育ママをあきらめ ることがないか。出産をあきらめることがないか。このことは少子化対策にとっても大事なことだと思 います。保育所の保育士にこのような問題がないように、家庭的保育を志す者にも、ぜひ解決してほし い課題であると思います。  それから、PRについてですが、私たちの家庭的保育は保育ママと言われておりまして、マスコミを 頼りに宣伝活動をしてきました。ところが、マスコミの方が取材にいらっしゃるときは、必ず社会的な ダメージや社会的事件が起きたときですから、それと重なってどのように書いてくださるのか気になり ます。でも、マスコミの方はいつも「保育所にもいろいろな事件があります。保育所は人数が多いから、 遠足に行って川に落ちた子どもが分からなかったとか、散歩の後、食事の時間になって1人分の席が空 いていたのであわてて探してみたら、棚の後ろで熱中症で亡くなっていたとか。保育所の方にもたくさ ん事故はあります。それに比べたら保育ママの事故は少ないです」とおっしゃって、好意的に書いてく ださいました。取材に当たっては私たちの保育をよく見て書いて下さいますが、社会的な暗いニュース とかぶってしまいますので、なかなか普及しなかったのかなと思います。今、尾木参考人から社会的P Rの強化という点では、いろいろなご意見・課題が出されていますので、ぜひ実現に向けお願いいたし ます。  それから、国の家庭的保育事業にも3人型に加えて5人型が創設されました。1日2人の複数の保育 士による5人型保育の実践は次世代の育成支援での活用や、ご夫婦での開設、あるいは友人など、多彩 な組合せで開所できる家庭的保育制度のとても良い保育の形だと思います。ぜひ安全で豊かな保育であ ることのPRをしてほしいと思います。  それから、歴史ある保育ママ制度を家庭的保育という名称でリニューアルし、男性保育士にも門戸を 広げ、発展的に一歩進んだ仕組みとなっていることを宣伝をしてほしいと思います。  それから、保育所やファミリーサポートやベビーシッターとの違いが一般市民には鮮明になっていま せん。私たちの所に来る家庭的保育にいらっしゃる方は一時預かり的な類のファミリーサポートですか とおっしゃるのです。私の所で言いますと7時20分から18時50分までの11時間を超える保育を毎 日しています。決してファミリーサポートではなく通常保育ですので、その辺をもう少し市民にわかり やすく紹介したいと思っています。  それから、7点目は個人の責任が多いことです。今は親の方が強くて、問題が起きるとどんどんエス カレートしていき、最終的には訴訟問題も起きかねません。家庭的保育では、訴訟になった場合には自 治体が解決してくれる体制が整っていることが望まれると思います。アメリカの発表では、突然死は預 かり初めの1週間の間に33%が起き、そのうち初日には50%が起きていると報告があります。0歳児 をたくさん預かる私たち家庭的保育にもその対策が必要だと考えます。家庭的保育者は、保育者や幼稚 園など組織で働いてきたため、人や組織に守られて働いてきました。今度家庭的保育を希望すると、個 人で責任を負うところが多くなってくるので、そのバックアップ体制をしてほしいと思います。  それから収入が安定しないことも問題になっています。4月の入所のときに子どもがいない、集まら ないという家庭保育者もいます。そのようなときには一時保育や緊急一時保育にも活用できるように、 幅の広い施策をお願いしたいと思います。  それから、家庭的保育者の研修や情報の共有に対しての支援がないことです。相談する相手が近くに いないことが多いので、市町村や保育所による巡回指導、家庭的保育者同士の連携を図ることなどで支 援体制を作ってほしいと思います。  それから最後ですが、嘱託医がいないことです。子どもの健康への支援をお願いしたいのですが、ほ とんどの所には嘱託医がいません。以上が課題と要望です。  それから今なぜ家庭的保育なのかを私が考えた範囲で3点述べさせていただきます。  生活環境が適しているからだと思います。家庭的保育には子どもが育つための、ごく当たり前の生活 環境と人がいつもいます。子どもが育つには親に代わる存在が必要です。楽しい時を過ごし、困ったと きには助けてもらえる良い人間関係を築くことが大切で、その親に代わる人が保育ママと言えると思い ます。親が子育てを通して、喜びや悲しみや感動を経験し、より一層子どもがいとおしくなるように、 私たちも自分1人ではまだ何にもできない乳児期の子どもたちと1日を通して生活している中で、心と 心が触れ合い、保育の大切さを与えてもらっています。今、心が置き去りにされがちな日本で、人と人 とが信頼関係を結び合える保育の形態が家庭的保育にはあると考えています。  2点目には、家庭的保育は子育て支援者であるというところです。子どもは昔から地域の中で育ち、 地域につながっていって、同居する親や近所の子育て経験のある人などが子育てを支えていました。し かし現在では、核家族化や地域社会の関係の希薄化が進み、地域の育児力は低下し、子育ては母親やそ の家族にとって非常に負担の大きいものとなっています。私たちが公園に子どもを連れて遊びに行くと、 育児不安の母親からいろいろな相談を受けます。例えば、子どもが「汚して食べるのですけれど、どう したらいいでしょうか」と。1歳や1歳半というのは、当たり前に汚しますけれども、いろいろな本だ ときれいに食べているところしか見せてくれないので、心配なのです。「ぜひ遊びに来るように」と言 います。今、私の所は1歳半から3歳までの5人定員なので、発達段階の途中でこういう食べ方をして いるお子さんがいますが、「今は気になっても、やがて3歳になるとこういうふうに上手に食べられる ようになるから大丈夫」と話します。理解し、安心してお帰りになります。このように私たちの知識と 経験は身近に頼れる存在として子育て支援の一役を担っていると思います。  それから3点目に地域に根付いた保育であること。家庭的保育は居宅を保育の場としているため、地 域との交流がしやすいと思います。私の所では、いつも遊びに行く公園で、グループホームのお年寄り の方たちと仲良くなり、介護士さんから「今度、遊びに来てくれませんか」と声を掛けられたのをきっ かけに交流が始まり、毎月1回伺って子ども達の歌や体操などを披露し、お年寄りからは抱っこや、握 手で温かさをもらう等ほっとした交流を続けております。また、中学生が遊びに来て一緒に赤ちゃんと 触れ合い、赤ちゃんのお世話をする機会を作ったり、卒園児と一緒にみんなで年1回200人規模の「わ いわいまつり」を開いている方もいる等、いろいろな交流の話が寄せられています。  家庭的保育も地域の子育てを支えるだけでなく、家庭的保育者自身もまた地域の方々に支えられてい ます。このように家庭的な雰囲気の生活環境や、一人一人の子どもや保護者に応じたきめ細かい保育、 子育て支援者としての役割、地域との交流における柔軟性。これが今の時代に求められているように思 います。今なぜ家庭的保育かと言えば、日本の昔の子育てが家庭的保育に残っているからではないかと 思います。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。  続きまして義本保育課長から家庭的保育の実施上の課題等についてご説明をお願いします。 ○義本保育課長  前回第1回の会議の際、特に委員の方から「今家庭的保育がなぜ普及しないのか。」その現状の分析・ 課題等について報告するようにという指示をいただいています。先ほど尾木参考人、鈴木参考人から詳 細なお話はありましたので、それを補足する形になりますけれども、現状や課題等、それから現在事務 局で考えている制度化に当たってのイメージについて、主に資料4と資料5を中心にしてご説明させて いただきたいと存じます。それから資料1につきまして現行の事業と、平成20年度における充実・強 化を記載しておりますので、資料1についても適宜触れながらご説明させていただきたいと存じます。  では、資料4をご覧いただきたいと存じます。特に「課題」については利用者の立場、また、先ほど 鈴木参考人からお話がありましたけれども、家庭的保育を担当する方の立場、それから事業を行う自治 体の立場がありますので、それぞれ立場について資料を整理させていただきました。  まず「利用者」の立場についてです。特に家庭的保育についてはPRが足りないという話がありまし たけれども、そもそも情報がないという話や、それから密室性、孤立性の問題があります。安全でサー ビスの質がどう確保されるかについては、やはり非常に関心があるところです。それについては、なか なか十分ではないという課題もありますけれども、その中において特に今後の方向性として、情報につ いては市町村等におけるPR等もありますけれども、身近な地域の子育ての拠点の支援機能の充実の中 で家庭的保育についても情報の提供、あるいは相談をやっていただく形の展開は考えられないかという ことでございます。  それから密室性・孤立性の問題です。特に先ほどの調査の中においても、ガイドラインあるいは実施 基準の話がありました。国としては、先ほどの研究会の報告にもありましたが、自治体において実施す るすべての家庭的保育について守っていただく実施基準を策定させていただきまして、具体的な質の確 保が考えられないかと思っております。それから家庭的保育については、保育所における保育以上に基 礎研修あるいは現任研修が重要だというご指摘がありました。この点については、例えば研修の体系化 や先ほど実施前には資格を問わず、すべての方々に対して一定の研修を課すべきではないかというご指 摘がありました。後ほど触れたいと思いますが、そうした研修、あるいは段階に応じました現任研修に ついては、その内容の体系化等を図っていくという課題があると思っています。この点については検討 していく方向で考えています。  情報と密室性・孤立性の問題の両者についての具体的な対応として、重複になりますけれども、バッ クアップ体制や、実施基準において市町村による情報提供や代替保育・巡回指導等についての体制整備 を図っていくということを明記していくことになると思っています。  研修の体系化は先ほど申した通りです。  それから「家庭的保育者」の立場です。これは、特に負担が大きいという問題です。例えば1人で保 育しなければならないという問題、それから先ほど鈴木参考人からお話がありましたように、病気ある いは用事で休みにくいといった責任、収入が安定しない等の問題があります。  それから「孤立しがち」ということで、相談する相手が近くにいない、あるいはスキルアップを図ろ うと思っても高める機会が少ないという話もあります。  課題としては、それに対応するということも含めまして、市町村において、代替保育あるいは巡回相 談あるいは連携保育所の確保等しっかりとした支援体制を構築していただくことです。先ほど嘱託医の 話もありましたけれども、健康診断等の問題につきまして、市町村がすべてバックアップしていく体制 を取っていく。それを国として制度構築していくことはあろうかと思います。  それから報酬の問題です。後ほど予算の話をさせていただくと思いますけれども、報酬単価を引き上 げていく。損害の話であれば、例えば損害賠償保険の問題や補助員の雇用等ができる形で、一定の報酬 を引き上げていくということも課題だと思っています。  この点については、資料1をご覧いただきたいと存じます。2ページです。平成20年度の予算案に おいて、平成19年度の2億円を今回7億3,000万円弱という形で、約5億円増で予算要求をさせてい ただきました。その中身としては、この破線の中に書いてありますように、バックアップ体制というこ とで、連携保育所の下に家庭的保育者を支援する専門職員として支援者を置きまして、相談や代替保育 の対応を図る形の体制を強化するというが一つです。それからもう1点は、先ほど申しました補助単価 の見直しということで、「本俸の引き上げ」です。それから事業を始める場合については環境の整備が 必要です。あるいは何か事故が起こったときの保険等の問題について対応できる形の報酬単価をかなり の額を引き上げさせていただくという内容を講じまして、予算を大幅に増加するという対応を取ってい ます。  元に戻っていただきまして、そういう形での連携保育所の支援や、それから単価の引き上げ等を今回 の予算として措置させていただいています。それから先ほどの繰り返しになりますけれども、研修の充 実強化、それから地域の子育て拠点による支援機能を強化していくことも併せて、実施基準等に盛り込 む形で考えていくことを考えているところです。  それからもう1枚めくっていただきまして「地方自治体」の立場です。やはり未実施の自治体が多い ということ、それから実施する場合についてのノウハウがない、あるいは実施の場合について国の事業 で使うようなインセンティブが乏しいという話があります。この点については事業自体の見直しもあり ますし、それから先ほどの調査・研究にもありましたように、資格についても保育士あるいは資格を有 する方を基本としつつも、自治体で現在やっているような形で研修を積んだ育児経験のある方々も、質 を確保した上でルートとして家庭的保育者になれるような状況を作っていくことで対応してまいりた いと考えております。  それから具体的なノウハウの提供が課題だと思っています。この点については、研修等が未実施の所 については教材等を作成することを国としても考えまして、具体的な資料を提供することや、事業自体 のPRも考えさせていただきたいと思っているところです。  それから4点目としては先ほどの調査・研究でもありましたけれども、家庭的保育事業は現在予算事 業ですが、法律的な位置付け、実施基準等も含めて対応したいと思っているところです。社会的PRに ついては先ほどのお話がありましたように、地方自治体だけでなく、国民一般それぞれに合った形で具 体的なPRを強化する方向を検討していきたいと思っているところです。  そういうことを踏まえまして、全体的にどういう形で法制度化を考えているのかというイメージを資 料5で作らせていただきました。現在、全国でやっています家庭的保育を包括的に取り込む枠組みを作 るのと同時に、先ほどご指摘いただきました諸課題への対応、質の確保という観点から、児童福祉法の 改正とともに、すべての家庭的保育に守っていただく実施基準と、国として一定の望ましい方向を示す ガイドラインの作成ということで、今のところ整理しているところです。  法律についてはこのグリーンの左ですけれども、市町村事業として家庭的保育事業を位置付けて、「保 育に欠ける乳児又は幼児を家庭的保育者」を省令で要件を定めることを考えていますが、居宅等におい て保育をする事業という形で、市町村事業として位置付けるとその上で、個人ないしは保育所に対して 委託する形での実施という事業の整理を現状においてさせていただきました。その上で、現状において は児童福祉法第24条におきまして、「保育に欠ける」に該当する者については、保護者の申し出があっ た場合には市町村は保育所において保育しなければならないとしているところですが、例えば保育の需 要の増大、あるいは減少という自治体の実情に応じて、家庭的保育事業を位置付ける、補完的な意味と いうことで自主保育と法律上明記してはどうかということにしているところです。  それから3番目以降については具体的な質の担保について、監督的な規定を新設するということで、 例えば事業開始前については市町村の都道府県に対する事前の届け出、実施基準の順守と、都道府県に おいける報告・聴取や、立入検査あるいは基準等に適合しない場合についての是正命令等の指導監督と いったものです。それから保護者への情報提供は非常に大事なポイントです。市町村において保護者の 選択、あるいは事業の適正な運営の確保という観点から、情報提供を市町村に義務付けていくことを法 律上明記してはどうかと思っているところです。  それを受けました実施基準として資格要件については、具体的に自治体等において、現状でやってい ることを踏まえながらも、包括的に質を確保しながら規定するということで、保育士・看護師を基本に しつつ、市町村がそれと同等のものについて認めるというものも考えております。その上ですべてにつ いて、先ほどの研究会の報告にありましたように、基礎研修を受講することを義務付けする形で要件を 定めるのはどうかと整理したところです。具体的な研修の内容や時間等についてはガイドラインとして 国が望ましい在り方を示していく形で、家庭的保育の資格を持っていない方にも一定の考え方で道を開 いていくとともに質を確保するということをしてはどうかという形で整理しているところです。  それから「実施基準」については例という形で示していますけれども、例えば市町村が順守すべき事 項として実施の場所・施設の基準・面積です。配置基準としては現行にも記していますけれども、質の 確保という観点から3人以下、補助者がいる場合については5人以下という形で現行の事業をベースに して整理すると。保育内容についても基本的には保育所保育指針にも準じた形で展開すると。それから 市町村の体制整備ということで、ここに書いてありますような保育の内容の計画・管理、それから指導 巡回指導・相談、研修、代替保育、健康診断、集団保育の確保、苦情受け付け等については保育所その 他の関係機関と連携を図りつつ、このような事柄について体制を整えないといけないと市町村に課す形 で課題に対応するということを考えられないかとご提示させていただいています。その上で、研修の内 容や、先ほど申しました体系化などの内容についてはガイドラインで具体的なところについてはお示し する形で対応できればという形で考えているところです。  以上のようなイメージで考えているところですけれども、このような実施基準、ガイドラインは非常 に大事なポイントです。現在は厚生労働省内において、有識者のご意見も踏まえながら事務的に検討し ていますけれども、具体的な法案の議論が進んだ段階においては専門家によります検討会を正式に発足 させていただきまして、具体的に詰めていく方向で考えさせていただきたいと思います。以上、課題と 現状での対応の考え方です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。お二方の参考人と義本保育課長からのご説明をいただきました。この後、 約30〜40分近く、この課題について皆様にご議論いただきたいと思いますが、簡単に確認と共通理解 を持っておきたいと思います。家庭的保育事業というのは、これまで、国庫補助事業として行われてき たものと、それ以前にかなり歴史のある地方自治体単独事業として行われてきたものの2本立てであっ た。国庫補助事業、これは2000年に創設されたものですが、国庫補助事業の家庭的保育事業はあくま でも保育所入所待機児童の対策の応急措置であった。それを今般の重点戦略を受けて、最近の子育て家 庭のニーズに合わせて通常保育の選択肢の一つとして、存続拡大を図るための法制度化を皆様にお諮り するということです。その場合に、今お二方からいろいろと出されました課題、義本保育課長からご説 明がありました実施基準・ガイドラインに関する課題。さらには既に地方自体で行われているものへの 配慮等も含めて、いかに法制度化の中身を進めていくかということを踏まえたご意見をいただければと 思います。それでは、どうぞご自由にご意見をいただければと思います。  杉山委員、お願いします。 ○杉山委員  貴重なご意見をどうもありがとうございました。  参考人のお二方のどちらでも構わないのですが、少し確認をしたいところが、一つは連携保育所との 連携が難しいというご意見があったかと思いますが、どの辺りが難しいのか。特に保育所側が嫌だと言 っているのかと聞こえてしまったのですが、その辺りがどうなのだろうということを少し教えていただ ければと思います。  それともう一つが、先ほども出ましたけれども、異年齢の小集団の保育は、聞くだけで難しそうだと 思いますけれども、それはやはり保育所の保育の専門性とは違ってくるのかどうか。私が伺ったイメー ジだと、やはり中堅所ぐらいの保育士クラスではないと保育ママは難しいのではないかという印象を持 ったのですが、その辺りの専門性の部分でどのようにお考えかを少しお伺いできればと思います。  後は義本保育課長に質問ですけれども、資料1の下の方に「事業実施状況等の推移」ということで、 平成14年度に予算額が12億円あって、それがどんどん減ってきて、また少し増えたという推移になっ ているかと思いますけれども、12億円あったのにどうしてと思うので、少しその辺りの背景のようなと ころをご説明いただければと思います。  それと2枚目の下の方の図で、本年度の実施に関して「家庭的保育支援者」という方を置いて、「保 育ママ」を束ねた形で支援するようなスタイルをイメージされているのかなと、この図だけを見て思っ たのですけれども、自治体の方等にお話を聞いても、やはり個人の家庭的保育のママさんにお願いする のは、どうしても非常に不安というのか、リスクが高いという部分をお考えの自治体も多いかと思うと、 やはり何人かの保育ママを束ねた組織なりがあって、そこが先ほど何点か出ていました、市町村にやっ てもらおうと思っているさまざまな部分ですよね。そこを束ねてやってもらうようなものを間にかませ るようなやり方は実施するのは難しいのかどうなのか。わかる範囲で結構ですので、その辺りを教えて いただければと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございます。  ご提案なのですが、時間も限られています。またお聞きになりたいことが重なることもあるかと思い ます。少し最初にまとめて出していただいて、参考人の皆様や義本保育課長にはメモを取っていただい て、後でまとめてお答えいただくようにしてみたいと思います。  では佐藤委員、お願いします。 ○佐藤委員  参考人のお二方が先ほど言われた提案でやったら課題は解消するのか、つまり何か残るだろうと。義 本保育課長が言われたようなものができたとしたら、先ほどお二方が挙げたような課題やメリット・デ メリット。デメリットは解消するか、こういうものは残るというものがあれば、ぜひ教えていただきた いという質問です。 ○大日向部会長  他にどうでしょうか。はい、では岩村委員。 ○岩村委員  一つは先ほど杉山委員がおっしゃったことと少し関連するのですが、お伺いしたいのは、この家庭的 保育の方々の中での一種のNPOでも何でもよいのですが、そのような集団なり、協会なりというよう な組織というものが、地域レベルなどであるのかどうか。それとも皆さん非常に孤立した状態で個別的 にいらっしゃるのかどうかを教えていただきたいということと、私もやや市町村と個々の家庭的保育者 の方々がつながるのは管理コストも非常に高いのではないかという気がして、間に家庭的保育の人たち のそういう組織や何かが中間に入ってという方がやりやすい面があるのかなと。そこも問題がないとは 言えないので一概には言えないのですが、少しそういう感じを持ったということ。  あともう一つは、密室性と保育者の孤立の問題があって、例えばこれが今日の資料4だと利用者の側 に整理されているのですが、これは多分利用者と家庭的保育者両方の問題だという気がしています。そ こで密室性、保育者の孤立への対応ということで、今日は課題や具体的な対応を、尾木参考人や、ある いは先ほど義本保育課長からもご説明いただいたのですが、ご提案いただいたものが果たしてこの問題 にうまく対応しているのかどうかというのが今一つよく見えなかったという気がするので、足りない部 分があるのかどうか。あるいはもう少し他の方策が考えられるのかどうかについて、お教えいただけれ ばと思います。 ○大日向部会長  では大石委員。ここで1回切ります。 ○大石委員  お二方の参考人にお聞きしたいのですが、例えば今ですと、民間で「エスク」などのような別のNP O的なサポート事業もたくさんありますが、そちらの保育ママになるということも、もしかしたら可能 だったかもしれないですよね。公的な保育ママになるまでに何年もお待ちになったということですが、 そういう保育ママ的な仕事をしたいと思っていらっしゃる方にとって、公的なものになるのか、それと もNPO的な方に参加するのかの意思決定は、どういう理由に基づいてなさっているのかという点をお 聞きしたいというのが1点です。もう一つは、報酬について皆さんはどのようにお考えなのかというこ とです。例えばフローでの報酬についてもですし、それから例えば今の時代でしたら、床暖房ぐらいは 入れたいなどという発想ももちろん出てくると思うのですが、そういう場合に住宅改築などのコストを 考えたときにどのような援助を必要とされているかといったことについて教えていただければと思い ます。 ○大日向部会長  ではここで1回切らせていただいてよろしいでしょうか。ご質問の中には重複しているものもあった かと思いますので、お答え、よろしくお願いします。 ○尾木参考人  私のわかる範囲でお答えいたします。まず連携保育が難しいという点ですが、一つは家庭的保育者と 子どもが指定された連携保育所に行くことが非常に難しいという点が一つあります。それはたまたま立 地条件で近くに存在すれば良いのですが、小さい子どもたちを連れて例えば20分も歩いて行かなけれ ば行けないというような所に連携保育所がそこにしかない場合には、そこに行くこと自体がまず困難に なります。それから連携保育という仕組みが割と最近新しく作られたものですから、保育所での理解が ない場合に一体何をすれば良いのかわからない。そしてその家庭的保育者と子どもたちが来たときにど のように受け入れたら良いのか、あるいは必要な支援や指導というのは何なのか、そのことがまだ一般 化していないということもありまして、積極的にどんどんいらっしゃいと電話をくださったり訪問して きたり。そう いうようにやってくださる園長もいらっしゃれば、訪問しても地域の子育て家庭が園庭 開放を利用するような程度の利用しかさせてもらえないとか、その辺の幅がまだ非常にあります。モデ ルとなるような所ができてきたと先ほど申し上げましたが、それは家庭的保育者と施設長、それから市 の担当者等が3者で合同の研修会をしながら、どのように連携保育をやっていけば良いのかとか、ある いは連携保育を組み立てるときにその前の段階から保育所の方を巻き込んで、これから連携保育が始ま ります、家庭的保育が始まります、どのようにやっていけば良いですかということを相談してから始め て、とてもうまくいっている例が見られています。  それから異年齢の中の少人数保育での専門性ということなのですが、基本的に一人で保育しているあ るいは5人型の場合は2人で保育しているわけですけれども、この家庭的保育者は一人で園長から主任 保育士それから保育士、そしてもしかしたら雑務の担当まで一人でこなしているわけです。そうすると、 ただ保育だけできればよいのではなくて、判断力が必要、それから保護者対応もしなければならない、 かなりさまざまな能力が必要で、先ほど中堅どころの保育士の専門性とおっしゃいましたが、まさにそ の通りで、もしかしたら、施設長クラスの専門性が求められる場合もあると思います。  それから先ほど義本保育課長が指摘されました課題への対応で、これで十分かどうかという点ですけ れども、現在はほとんど支援のない状態です。もちろん自治体によっては非常に手厚い支援、良いシス テムとなっている所もあるのですが、ほとんどが保育者個人の努力や資質などに任せ放しの状態になっ ています。ですから今回具体的な対応として挙げられているような支援が行われましたら、家庭的保育 者は非常にやりやすくなるはずです。現在応募するする人がいないということが家庭的保育が広がらな い理由としても挙げられているのですが、それはやはり保育所保育なり保育を経験した人であれば、家 庭で一人で3人の子どもを毎日毎日ずっと延々保育していくことの難しさがわかると思います。そこに こういった支援体制が付くことによって、今の家庭的保育よりはずっとやりやすい、魅力的な家庭的保 育になる可能性が秘められていると思っています。  それから密室性や孤立性の問題ですが、現在も多くの家庭的保育者は例えば自腹を払って補助者を雇 用しています。やはり一人で1日中みるというのは本当に大変なことで、連携保育所にも行けないと申 し上げましたけれども、公園に連れていくのも非常に大変なのです。食事のお世話など現在のところそ うやって、横浜市では一定の補助が付いているのですが、そういう補助がない所でも必要な時間帯ある いは週に3回だけでも補助者を雇用している方が非常に多くあります。そういった点からはこの報酬単 価の引き上げによってもう少し補助員の雇用ということをしながら、そしてご自身の報酬としてもしっ かり残るという形が実現できるのではないかというように考えています。後はお任せしてよろしいです か。 ○鈴木参考人  先ほどどうして公的なものを選んだのか。それから「エスク」のような私的なところもあるのにとお っしゃったと思いますが、それは事故が起きた場合のバックアップ体制が自治体にはきちんとあると信 じているからです。私は公立幼稚園と公立保育士を経験してきましたので公的な保育以外は考えられな かったため、9年間待ちました。そのことは私にとってはとても大事な選択でした。それから先ほどの 密室性の問題、小集団の保育の難しさということでございますが、やはり低年齢児、0歳〜3歳の低年 齢児を扱っておりますと0歳がたくさん入ってくる可能性が高いです。0歳を3人で保育することの難 しさ、危険性というものを私たちは十分承知しておりまして、保育園でも0歳児は主任クラスでなけれ ば担当させないとなっています。ですから異年齢の難しさに加えまして、この3人型の保育をするには やはり補助者の活用が非常に大事になってくると思います。 ○尾木参考人  すみません、一つ忘れていました。市町村と個々の家庭的保育者の間に何かそれを束ねる組織なり何 なりが入るのが良いのではないかというご意見がありましたが、現在行われています国庫補助事業の家 庭的保育事業で保育所実施型というものがあります。これは保育所が保育ママを雇用して、地域に幾つ か家庭的保育の場所を持って実施することができるという形態なのですが、実際はそれがあまりまだ普 及している段階ではありません。けれども、そこで保育所が入ることによって例えば保護者の方の安心 感というのは非常に大きくなると思いますし、それから今後少子化がどんどん進んで保育所にも空きが 出るようになったときに、今度は保育士をいかに活用するかというようなことを考えるときには、保育 所が家庭的保育を実施するということも一つの選択肢となってくるのではないかと考えます。例えば今 児童養護施設ではグループホームなどがどんどん出来てきていますが、そういった形で保育所であって もそこで集団保育をしていても、地域の中に幾つか家庭的保育の場所を持つ。そのことで何かあったと きはその本体施設が責任を取るあるいはその代替保育を受け入れるということが、もしかしたら今後新 たに家庭的保育を始める自治体では、そちらのやり方の方が取り掛かりやすいでのではないかとも思っ ています。 ○大日向部会長  岩村委員のご質問の中に孤立化していないか、ネットワークはどうかということがありました。NP O法人化についても簡単に触れていただけますか。 ○鈴木参考人  自治体の家庭的保育者は、ほとんどが連絡会というものを作っていて、連絡会でお互いに情報交換し、 悩みや相談を聞き合って保育の質の向上に向けて努力しています。それから、家庭的保育制度を実施し ている自治体は本当に少ないのですけれども、私たちは任意団体として15年前に「全国家庭的保育ネ ットワーク」という組織を立ち上げました。そこに横のつながりを持ちたいと考えている連絡会や個人 の方が入会してきています。また、昨年10月14日に「全国家庭的保育ネットワーク」を発展的に解消 し、NPO法人家庭的保育者全国連絡協議会として、全国的な法人格のネットワークを立ち上げました。 今、内閣府に申請し、認証が下りるのを心待ちしているところでございます。 ○大日向部会長  ありがとうございます。それでは義本保育課長よろしくお願いします。 ○義本保育課長  杉山委員から2点ご質問いただきましたので、順次お話ししたいと思います。一つは平成14年度に 12億円あったのにどうして減らされたのかということは明らかでございまして、事業実績がそれと伴わ ないということがありましたので、それに合わせて予算も落としていったということでございます。こ れは逆に言うと、これまでいろいろな自治体の方のやはり課題に対して国の事情重視が十分対応してな かったとか、そういう課題があってなかなか普及しなかったということですので、逆に今回そういう反 省を込めまして、このような形で強化を図るという方向を目指していきたいというのが1点でございま す。  それからもう一つは、資料2の中で家庭的保育支援者の図がありますけれども、こういう形でうまく いくのかという話がございましたが、先ほど尾木参考人からのお話がありましたように、私どもとして は逆に市町村と個人だけではなくて保育所自体が実施するという形で広げていくこと自体がこの事業 を普及していくことにおいて鍵ではないかと思っております。逆にそういう保育所実施型を誘導してい くという形で連携保育所に対するバックアップ体制を強化するという観点から、専任の支援者を置きま してバックアップをしっかりする中において連携を強化していく方向を目指していきたいということ でございます。これにつきましては反響がございまして、保育の団体や自治体の方からも問い合わせが ありました。今後少子化時代を迎えてやっていく方向性として積極的に考えたいという形でございます。 私どもとしては保育所と家庭的保育が良い関係を持って進めていくような事業として展開できればと 思っているところです。  それからもう一つは、中間的な組織がないかということで岩村委員からお話がありました。これは私 の方に特にご質問はいただいておりませんけれども、こういうような保育所実施型が深く関わる場合も そうでございますし、自治体において家庭的保育者のある程度の数が出てきた場合につきましては、家 庭的保育者自身がいわゆるネットワークというか組織を作られましてそういう自主的な組織でお互い の研鑚をするとか相談に応じるというようなことで やっておられるケースもございますので、私ども としてはそういう公的な支援や体制とともにこういう家庭的保育者自身がそれぞれ互助的にする方向 もやはり模索していきたいと思っているところでございます。 ○大日向部会長  ありがとうございました。それではもう少し、引き続きご意見やご質問をいただきたいと思います。 どうぞ、大石委員 ○大石委員  先ほどのお二人のお話を伺っておりますと、保育ママには施設長クラスが必要であると。また0歳児 の場合には保育園の主任クラスの専門的な知識というかスキルが必要であるというのが、お二人の共通 した見解のようなのですね。そういたしますと無資格者の扱いについてはかなり困難というようなご見 解なのでしょうか。 ○尾木参考人  そうですね。非常に難しいご質問なのですけれども、今のところやはり研修制度がしっかりしており ません。それから家庭的保育者は一人で保育をしていることから、なかなか休みを取って他の人の保育 を見に行くとか、研修も自治体が行う研修でしたら代替保育が用意される場合もあるのですが、そうい った意味で他の人の保育を学ぶ研修機会がほとんどありません。そういった意味で研修体系をもう少し しっかりとしていく必要があります。そのことによって経験年数が増すごとにスキルアップしていくこ とが求められるのではないかと思っています。また、施設長クラスの専門性と言ったときに、それが保 育経験なのか、例えば集団保育での保育経験で培われるものなのか、それとも他の体験を通じて多くの 方が、例えば幼稚園教諭や学校教員免許などを持っている方も非常に多いのですが、それまでの体験で すとか家庭的保育者になってからのさまざまな蓄積によって培われる面もあるのではないかと思って います。いずれにしても研修制度ということが重要と思っています。  それから、先ほど大石委員の報酬についてのご質問にお答えしてなかったのですが、やはり4月初め に受託児がいないということで無収入になる自治体もあります。また逆にその期間であっても1人分の 保育料が支給されるというような自治体もあって、この報酬に関してはその組立が自治体によって全く 異なっております。それを並べて比較しようとしてもなかなか難しいのが現状です。 ○大日向部会長  義本保育課長、今のご質問に対して事務局として何かお答えがあれば、資格要件、報酬等について、 ご説明をお願いしたいと思います。 ○義本保育課長  資格については先ほど尾木参考人からお話がございましたように、スタートするだけでなかなかやは り身に付けられない専門性もございまして、そこは研修あるいは経験を積みながらやっていくことがポ イントだと思うのが一つです。それからもう一つは、やはり量の確保も、バランスを取っていくことが 非常にこの問題としてはあります。現実問題としては資格をしっかり持っている方自身が当たることに よるメリットもある一方、自治体の方からお話を伺いますとなかなか人材の確保というのは難しいとい うこともあって、そこはやはり研修をしっかりやるという中において資格を確保し、質を確保していく 併せ技で考えていかなければならないのではないかと。ただそうは言っても無資格者の方についても、 やはり一定の国として考え方を示す必要があろうと思っていますので、そこはどういう受講をしていた だくかとか、時間など、あるいはそういうことについてのガイドライン、それから先ほどお話がござい ましたように施設保育とは違う異年齢の小集団の難しさ等もありますので、そこはやはり基礎研修とい うことを義務付けることによって一定の質の担保というような方向で、私どもとしては現時点において は考えさせていただきたいと思っております。 ○大日向部会長  ありがとうございました。他にご質問いかがでしょうか。 ○鈴木参考人  現場で保育に携っている者なのですが、この異年齢の集団の保育というのは大変難しい保育です。私 は幼稚園教諭を経験し、それから保育所では3歳、4歳の経験しかありませんでしたので、0歳児保育 に戸惑いました。一番頼りになりましたのが補助者の方でした。お互いに相談し合って、こうじゃない か、ああじゃないかと言って乗り越えたことがあります。補助者は補助ではなく、パートナーとして大 事な存在でした。相談相手がいることによっていろいろな場面を切り抜けられるということだと思いま す。それから実習の大切さも見逃してはいけないと思います。家庭的保育の型というのは本当に少ない ですから。保育所にもない、幼稚園にもない型ですので、家庭的保育で実習をさせていただくというこ とで大変力が付くと思っております。以上でございます。 ○大日向部会長  ありがとうございました。他にいかがでしょうか。庄司委員、お願いいたします。その後に宮島委員、 お願いします。 ○庄司委員  今日は参考人の方々の大変貴重なお話をありがとうございます。併せて義本保育課長からのご提案と 言いますか、お考えが示されてそれらを突き合わせると、個人的に一番関心があったこととして、家庭 的保育は孤立するということと休暇が取れないということが挙げられていますが、それは相当意味が違 うことのように思うのです。つまり職業としてやっていく上での組織性のようなものがあるのかないの かということと、実際に仕事を日常的にやっていく上で、例えば休暇が取れない、休憩も取れない、ト イレに行くのも心配だとか、言ってみればそういう状態をどうするかということを考えたとき、私は1 人職場でやるべき仕事ではない、一人でやる家庭的保育とは、まさに家庭の保育そのものを考えている ような感じがします。子ども3人ならば1人とか、あるいは5人なら補助者が必要という感じでご提案 があるようなのですけれども、やはり基本がどちらなのかで、非常に違うことのような気がします。補 助者がいて複数で仕事をしていくのか、1人というのがベースになって補助者が付けば5人までよいと いうような考え方を取るのか、その辺りは現段階ではどうお考えなのかということをお聞きしたいと思 います。それから家庭的保育支援者というのも、恐らく何か非常に困ったら飛んで来て助けてくれると いう意味ではなくて、相談をいろいろ受け止めてくれるなど、いろいろなサポートをしてくれる人、あ るいはスーパーバイザー的な助言、指導に当たってくれる人かなと思いますと、やはり保育の現場とし て考えたときの保育者が2人なのか、1人なのか、そこはとても重要なことだという位置付けで議論さ れるべきではないかと思います。そこは大変あいまいにご提示いただいていると思いましたので念のた め伺います。また、その辺は、本当は鈴木参考人や尾木参考人からもご意見を伺った方がよろしいのか と思います。率直に言って私はその辺に非常にこだわっております。 ○大日向部会長  はい、ありがとうございました。では、宮島委員お願いします。 ○宮島委員  すみません、最初の方でお話があったのでしたら大変申し訳ないのですが、私もこの難しさというの があると思います。例えば今やっている方々の難しさという他に、今提示されていることで、保育者に なる側の人数に相当増大が見込めるのかどうか、例えば資格者にこだわった場合に、保育ママがしっか り増えるのかどうかというのが一つ。例えば先ほど6歳以下の子どもを持っていると公的な保育ママに はなれないということだったのですけれども、民間では同じぐらいの子どもがいらっしゃる家庭で一緒 に、保育ママをやっていらっしゃるというお宅もうまく運営されている所があると聞いています。例え ばそういった方向、年齢などの制限は今後どんどん変えていく方向で考えているのかどうか。あと今の 補助者の方というのは結果的には非常に家庭的保育に長けていくことになると思うのですけれども、そ の方は多分今の条件で資格者ではないと思うのですが、そういう方の参入も含めて例えば最初は信頼を 得るために小さく産んでという政策だけれども、その後はどんどん条件を変えていくというイメージで あるのか、それともやはり質の確保のために、量は将来的にもかなり限った形で運営するのか、どちら のイメージか教えていただきたいと思います。 ○大日向部会長  そろそろ時間も残り少なくなりまして、皆様からのご質問はこの辺りで。本質的なご質問もちょうど 出たところでございます。尾木参考人、鈴木参考人そして義本保育課長にそれぞれ一言ずつお答えいた だいて一応ご議論は終わりにしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○尾木参考人  庄司委員からのご質問にお答えしたいと思います。やはり家庭的保育を地方自治体で創設してきたと きに、保育所の補完として位置付けられてはきたのですが、家庭の養育の代わりとして運用してきたの ではないかと思っています。だからこそ保育者に任せてきたという経緯があったのではないかと思って います。けれども、今後法制度上に位置付けをするということは、家庭の養育の代わりに行う保育では ないわけですから、その場合に、1人で保育をするということが非常に問題になっていますが、そのこ とに対してどういう体制を整えるべきかということを今後検討していくことが非常に大事なことだと 思っています。私としては、家庭で行う保育ですけれども、保育現場であると位置付けて整備していく ことが必要であると思っています。 ○大日向部会長  ありがとうございます。 ○鈴木参考人  これから家庭的保育者が増えていくのかどうかということでございますが、先日「プレ合研」と言い まして私たちが毎年参加している分科会では、今まで以上に多くの参加者がありました。そしてまた男 性保育士も入っていらっしゃって、これから始めたい関心のある方もいらっしゃいました。それから 2005年に独立行政法人から助成金をいただいて作りましたガイドブックも、今までは研究者や現役の 保育者からの購入希望でしたが、最近ではこれから保育をやりたいという方からの希望が入ってきてお ります。それから「全国家庭的保育ネットワーク」を立ち上げましたときに、「ショッピング」という 雑誌の在宅保育特集という記事では、20人位の方からやりたいという声が寄せられました。それも全員 が20歳代で、20代の男性や女性、それも東北地方や沖縄などの遠い所からございました。ですから、 ここの要件の「6歳未満の子どもがいない」というところをもう少し緩和すれば20代の方たちが入っ て来られて、また違った形になっていくのではないかと思っております。 ○大日向部会長  ありがとうございました。それでは義本保育課長お願いいたします。 ○義本保育課長  庄司委員の方から出されました1人職場がどうかという問題についてですけれども、行き届いた保育 をするということは非常にポイントだと思っていますし、そのために報酬単価、あるいは補助員を雇い やすいような方向を目指していくということを考えなければいけない一方で、やはり自治体の取組が基 本でございますので、それをどこまで縛るかという問題もございます。その辺のバランスをどう考えて いくのかについては、今検討しているところでございます。  それからもう一つは宮島委員からお話がございました今後増大を見込めるかという問題でございま すが、これは尾木参考人の方でお調べいただいたのですが、今家庭に入っておられて資格を持っている 方にアンケート調査をしたところ、非常に興味を持っておられるという方がかなりの割合であったとい うことがございまして、今後どれだけPRしていくのかというところにかかってくるかと思いますので、 その辺は私どもとしてはしっかり考えていきたいと思っています。  それから年齢の問題、特に対象を広げるという観点からは、これは鈴木参考人からお話しいただきま したけれども、要件の緩和ということについても、6歳未満あるいは年齢をどこまで下げるのかという ことも含めて、あるいは他に誰かみる方がいらっしゃった場合については考えるとか、その辺の要件の 方もあるかもしれませんけれども、そこは今の基準をもう少し広げる方向で考えさせていただきたいと 思って入るところでございます。 ○大日向部会長  ありがとうございました。まだまだご議論いただきたいところですが、時間もほとんど尽きてまいり ました。この部会は家庭的保育事業の法制度化を皆様にお諮りしているわけですが、最後に部会長とし てこういう案の方向で皆様にご承認いただけるかどうかをお諮りしたいと思います。 この家庭的保育事業というのは昨今の親の子育てニーズあるいは多様な働き方に応えるための多様 な保育サービスの充実ということを考えますと、これは尾木参考人がおっしゃいましたが、単に家庭 の保育の代替ではなく社会的なシステムとして包括的な次世代育成の構築として家庭的保育事業の 拡大の必要性は認められるだろうということです。しかしながら、今日お二人の参考人のお話あるい は委員の皆様のご意見にもありますように、家庭的保育の実態は通常の保育所保育とは全く違った大 変な難しさ、課題があるということです。子どもの育ちの権利を守るためにも保育士や看護師によっ て担われてきたこれまでの国の補助事業としての家庭的保育事業の水準をどこまで維持できるのか を大事にしていただきたい。一方で、既に歴史のある地方の単独事業としての家庭的保育事業への配 慮も当然しつつ、子どもの育ちを守るための水準・ガイドライン・実施基準をどう担保していくかを 確認した上で、法制度化を進めるということをご承認いただければと思います。 それに当たりまして、これは先ほど義本保育課長が最初のご説明のところで言及してくださいました ことなので、改めて繰り返しになる部分もございますが、私は2点お願いしたいと思います。まず第 1点は、この家庭的保育事業の実施基準・ガイドラインを作成するということは、今日の皆様のご意 見にありましたように、大変重要な課題を含んでいるということです。そういたしますと保育や発達 心理の専門家の方々、さらにはそれぞれの学会関係者の方々を交えた検討会をぜひ立ち上げていただ きたいということが第1点です。 また第2点はそうした検討会の議論・審議が保育関係者の多くが合意できるように、オープンな形で ぜひもっていただきたい。この2点をぜひとも担保していただきたいということを条件としてお願い した上で、この資料5に説明いただきました法制度化ということを承認いただければと思いますが、 いかがでしょうか。よろしゅうございますか。ありがとうございます。 ではそういう方向で、事務局で進めていただければ大変ありがたいと思います。それでは尾木参考人、 鈴木参考人におかれましては、お忙しい中、貴重なご意見をいただきましてありがとうございました。 ○福島委員  今日はどうもありがとうございました。実は、次回の会合では次世代法の見直しを取り上げるという ことになっています。申し訳ございませんが、私は次回出席できませんので、次世代法の見直しについ て、2点だけ意見というか課題提供ができたらさせていただきたいと思います。 ○大日向部会長  今日のテーマではありませんが、いかがでしょうか。委員の皆様に若干お時間をいただいて福島委員 からご発言いただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。  では、よろしくお願いします。 ○福島委員  2点ほど申し上げたいと思います。1点はこれまで各企業におきましては、ワーク・ライフ・バラン スの推進に向けた、さまざまな取り組みをやってきています。例えば制度でいきますと、育児休業制度 とか短時間勤務とか、いろいろな取り組みをそれぞれ企業はやってきていまして、今回提案されていま す行動計画の公表につきましては我々もぜひ前向きにやっていきたいと思っています。ただ、この行動 計画そのものも、作った経過も踏まえますといろいろありますので、各企業はさまざまな取り組みを、 いろいろな切り口でしていますので、企業の実情に即しまして情報を提供できるような枠組み、スキー ムにぜひしていただきたいと思います。  もう1点は少子化対策につきまして、これは言わずもがなで、国と地方自治体と企業と国民個人の四 位一体のような取り組みで進めていくことが非常に大事だと思います。そういう意味におきまして、企 業に対しまして、法律の義務付けとか、今回基準の見直しも提案されておりますが、国民一人一人の皆 様の意識を少子化の問題に向けていくことがより大事だと思います。そのような中におきまして、次世 代法はどうしたらよいのかを考えていく必要があると思います。また「くるみん」マークといって、ご 存じの方も多いかもしれませんが、実は私は半年前までこれを知りませんでした。仕事柄いかがかと思 いますが、例えばこのような良いものを作っているにもかかわらず、国民の間にも企業の中にも、まだ まだ周知徹底されていませんので、もっと周知していく。政府も地方自治体も企業も国民個人も、その ような国民運動的な盛り上げをもっとやっていくことが、今の時点では大事だと思います。自分が欠席 する中でこういうことだけ言うのは非常に申し訳ございませんが、2点ほどよろしくお願いしたいと思 います。 ○大日向部会長  ありがとうございました。ただ今福島委員から次世代法の見直しについて発言を承りましたが、この 点につきましては、他の委員の皆様、ご意見がおありになろうと思います。次回ご議論いただきたいと 思います。それではちょうど定刻がまいりました。本日はこの辺りにしたいと思います。  最後に、事務局から次回の日程についてご説明をお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  本日は誠にありがとうございました。次回の日程につきましては2月1日金曜日17時から、厚生労 働省9階の省議室で予定しています。引き続き先行して実施すべき課題についてご議論をお願いしたい と考えていますので、お忙しいところ恐縮ですが、ご出席いただきますよう、よろしくお願いします。 ○大日向部会長  それでは、本日はこれで閉会とします。ありがとうございました。