08/01/28 第21回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会議事録 第21回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会議事録 1 日 時  平成20年1月28日(月)17:00〜18:00 2 場 所  中央労働委員会講堂 3 出席者   【委員】 公益委員   今野部会長、勝委員、中窪委員、野寺委員 労働者側委員  勝尾委員、加藤委員、高石委員、中野委員、横山委員        使用者側委員  池田委員、川本委員、原川委員、横山委員 【事務局】厚生労働省   青木労働基準局長、氏兼勤労者生活部長、              山越総務課長、吉本勤労者生活課長、              植松主任中央賃金指導官、吉田副主任中央賃金指導官              吉田勤労者生活課長補佐    4 議事次第  (1)部会長及び部会長代理の選出について  (2)最低賃金法改正法成立の報告について  (3)改正最低賃金法の関係政省令について  (4)その他 5 議事内容   ○吉本勤労者生活課長   皆様お集まりですので、ただ今から第21回労働条件分科会最低賃金部会を開催いたしま す。本日はお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。昨年8月より勤 労者生活課長を務めさせていただいております、吉本でございます。よろしくお願いいた します。本日は委員改選後、初めての部会になりますので、部会長が選出されるまでの間、 私が議事進行を務めさせていただきたいと思います。  議事に入る前に、新たに委員になられた方々をご紹介させていただきます。お手元の資 料1をご覧ください。本日ご欠席の委員の方もおられますが、新たに委員になられました 方を名簿に従いましてご紹介申し上げます。まず、公益代表委員として財団法人介護労働 安定センター理事長の野寺委員、使用者代表委員として株式会社ベネッセコーポレーショ ン執行役員の岡田委員、日本通運株式会社執行役員の横山委員、有限会社筑波山江戸屋常 務取締役の吉岡委員にご就任いただいているところです。労働者代表委員の方々について は変更はございません。  なお、本日は公益側代表の武石委員、田島委員、労働者側代表の高橋委員、使用者側代 表の岡田委員、吉岡委員がご欠席となっております。  事務局を代表いたしまして、青木労働基準局長よりご挨拶を申し上げます。 ○青木労働基準局長   皆様におかれましては大変お忙しい中、最低賃金部会の委員にご就任いただきましてあ りがとうございます。本日は、お忙しい中ご出席を賜りまして、重ねて御礼を申し上げま す。  この部会では、平成17年6月に今後の最低賃金制度の在り方についてご検討をお願いし て、最低賃金制度の改正につながるご議論をいただきました。その後、要綱を諮問いたし まして、妥当との答申をいただきましたので、最低賃金法の改正法案を昨年の3月13日に 通常国会に提出いたしました。継続審議となりましたけれども、衆議院において修正した 上で、11月28日に参議院本会議で可決いたしまして、12月5日に公布されました。皆様 方には部会での長期間にわたるご審議で、大変ご尽力いただきましてありがとうございま す。今後は改正法の施行がございますので、皆様方のご意見をいただきながら、関係政省 令の策定などの準備を進めていきたいと考えていますので、今後ともよろしくお願いいた します。 ○吉本勤労者生活課長   次に前回の部会以後、事務局の異動がございましたのでご挨拶申し上げます。   ○氏兼勤労者生活部長   昨年の7月から勤労者生活部長をしております氏兼でございます。一部の委員の先生方 には、既に中央最低賃金審議会でお世話になっておりますが、よろしくお願いいたします。   ○山越総務課長   総務課長の山越でございます。どうぞよろしくお願いいたします。   ○植松主任中央賃金指導官   主任中央賃金指導官の植松です。 ○吉本勤労者生活課長   それでは部会長の選出に入らせていただきたいと思いますが、部会長は労働政策審議会 令第7条第6項の規定により、公益を代表する委員のうちから選挙することとされており ます。いかがいたしましょうか。   ○勝委員  今野先生に引き続きやっていただきたいと提案します。 ○吉本勤労者生活課長  ただ今、今野委員を部会長にというご提案がございましたが、いかがでしょうか。 (異議なし) ○吉本勤労者生活課長  ご賛同いただきましたので、今野委員に部会長をお願いしたいと存じます。部会長席の 方にご移動をよろしくお願いいたします。以後の議事進行につきましては、今野部会長に お願いしたいと思います。 ○今野部会長  それでは、部会長代理の選出についてお願いしたいと思います。労働政策審議会令第7 条第8項の規定によって、部会に属する公益を代表する委員又は臨時の委員のうちから、 部会長があらかじめ指名することとされております。私としては、野寺委員に部会長代理 をお願いをしたいと思っておりますので、ご了承いただきたいと思います。よろしゅうご ざいますでしょうか。 (異議なし) ○今野部会長  それではそうさせていただきます。次の議題に入ります。第2の議題は「最低賃金法改 正法成立の報告について」です。事務局からお願いします。 ○吉本勤労者生活課長  ご報告させていただきます。資料2を用意させていただいておりますが、大部になりま すので、主な質疑の内容を目次のようにしてまとめている部分がございます。そこをご覧 いただきながら、簡単にポイントをご説明申し上げます。  まず「最低賃金制度の見直しについての基本的考え方」についてです。これにつきまし ては、様々な質疑があったわけですが、これについて政府といたしましては、就業形態が 多様化して非正規労働者が増加する中で、雇用形態にかかわらず、安心、納得して働ける 環境整備という観点から、セーフティネットとしても最低賃金の重要性が増しており、セ ーフティネットとして十分機能するように生活保護との整合性を考慮する、ということを 法律上明確にしたといった答弁をしているところです。  特に野党の方からは、地域別最低賃金を時間額で1,000円以上にすべきといった議論も なされたところです。また、最低賃金の国際比較などをみましても、イギリスやフランス の最低賃金も1,000円を超えており、さらにアメリカでも今回引上げの法案が成立したと いう中にあって、日本は非常に低いのではないかといった議論があったところです。  一方、与党の方からは、1,000円というのは理想論に過ぎるのではないかといった議論が ございました。あるいは地域の経済力に見合ったもの、支払能力も考慮すべきといった議 論がございまして、中小企業の事情も踏まえますと、かけ離れた水準とすることは、非現 実的ではないかといった議論もあったところです。  それに対して政府としまして、抜本的に一挙に大幅に引き上げることとなりますと、例 えば1,000円といった額に引き上げるということになりますと、中小企業を中心にコスト 増とか、事業経営の圧迫といったことで、かえって雇用が失われるおそれが大きいといっ た答弁をさせていただいています。  生活保護との整合性に関する議論も多くありました。これにつきましては、与野党を問 わず、生活保護よりも低いと働く意欲がなくなる、いわゆるモラルハザードの問題がある といった指摘がなされております。これに対して、法律上、整合性を考慮することを明確 にしたといった答えをしているところです。また、政府としましては、法案成立のあかつ きには、地方最低賃金審議会において、改正の趣旨に沿った議論が行われ、雇用、経済情 勢を踏まえた適切な引上げ等の措置を講じていきたいといった趣旨で答弁をさせていただ いております。  また生活保護との整合性の配慮の意義につきましては、少なくとも生活保護を上回ると いう趣旨で考えるべきではないかという議論がなされております。この点に関しましては、 衆議院において修正が行われております。最低賃金の決定の際、生計費を考慮するに当た って、生活保護との整合性について、最低賃金が労働者が健康で文化的な最低限度の生活 を営むことができるような水準になるよう配慮するといったことです。これに関しまして は、後ろの方の参考資料2-3になりますが、資料をお付けしております。地域別最低賃金 の原則を定めた9条の3項にそのような文言が追加されております。  さらに、生活保護との整合性を考慮することによって、どの程度最低賃金が上がるのか といったことも、かなり議論のあったところです。これに対しましては、基本的には審議 会の議論を経て決めるといったことですが、例えば、まずは衣食住という意味で、若年の 単身世帯で、生活扶助基準、それも都道府県内の人口加重平均に住宅扶助を加えたものと、 手取額の最低賃金を比較して、その逆転をまず解消していくことが重要ではないか。その 上で、さらに整合性のあり方について考慮していく必要がある、といった趣旨の答弁をし ております。  中小企業との関係についてです。与野党とも中小企業対策を最低賃金の引上げと並行し て進めるべきといった議論がされております。これに関しては、中小企業庁でありますと か、内閣府の方からも「成長力底上げ戦略」に関する取組について答弁をいただいていま す。  全国一律最低賃金を導入すべきといった議論も、当初野党からもかなり議論としてござ いましたが、それにつきましては、地域によって物価水準等の差がありますし、生計費も 異なるといったことで適当ではないといった答弁をしております。この他、そこにありま すように、いくつかのポイントについて質疑がございました。例えば産業別最低賃金の見 直しの趣旨、罰則の適用についてです。これに対しては、産業別最低賃金については、改 正法によるところの罰則は適用しないこととなっておりますが、労働基準法上の罰則は適 用されるということで、それにより労働者の保護が図られるという答弁をしております。  最低賃金の適用除外から減額の特例へと変更をすることに対しては、現在許可をするに 当たって、個別に実地調査をしておりますが、こうしたことも踏まえて省令を策定すると いったことで答弁をさせていただいています。目次をご紹介するだけで分かりにくかった かもしれませんが、あとはまた適宜ご参照いただければ幸いです。以上です。 ○今野部会長  ありがとうございました。今の説明にご意見、ご質問がありましたらよろしくお願いい たします。 ○中野委員  一点。参考2-3のところで、修正があって、傍線のところが挿入されたということだと 理解をしておりますが、この条文についてはこの傍線の部分が入ったことによって、どの ように理解が変わったのか。部会の中でこれまで議論をしていたことと変わったのか、変 わっていないのか。変わったとすればどういう点なのか、その点だけを、我々はその議論 に参加しておりませんので、お教えいただきたいと思います。 ○吉本勤労者生活課長  政府原案ですとその部分がありませんで、「生活保護に係る施策との整合性に配慮する」 となっていたわけですが、どのように何を配慮するのかということが必ずしも明確ではな かったということで、今回先程も申し上げたとおり、生計費を考慮するに当たっては、生 活保護との整合性について、追加された文言のように、労働者が健康で文化的な最低限度 の生活を営むことができるような、最低賃金の水準になるようにすることを明確にしたと いった趣旨です。  国会質疑の中で、この趣旨について、最低賃金と生活保護との関係において、最低賃金 が生活保護を下回らないよう配慮するという趣旨だといったことは、既に答弁していたと ころですが、今回これが挿入されることによって、その趣旨がより明確になったと考えて おります。そのような趣旨であるといった答弁を、衆議院で修正がなされた後に、参議院 の委員会の方で、提案者に対する修正の趣旨の質問に対する答弁で、提案者がそのような 答弁をされております。 ○今野部会長  よろしいですか。他にございますか。 ○原川委員  私はその回答には解せない点があるのですけれども。この審議会では、最終的にこれを 合意したときに、少なくとも最低賃金というのは、法律に書いてあるように、3つの決定基 準があって、それを総合的に判断すると。これは法律には特記するけれども、その判断の 一要素であるということを、厚生労働省の事務局の方で紙を出して、それで我々はそれな らということで呑んだ経緯があると思います。それがいつの間にか、生活保護より高いこ とが前提となっているというようなことで、これからの審議は、生活保護よりも高いとい う前提で最低賃金があるというような議論になるとすれば、これは非常におかしいことで はないかと考えています。いかがでしょうか。 ○吉本勤労者生活課長  従来の部会で申し上げておりました、決定原則の中に三要素ありまして、その3つの要 素のうちの1つの生計費を考慮するに当たって、さらにその中の1つの材料として生活保 護に係る施策があるといった考え方については、全く変わるところはございません。です ので、生計費を考慮するに当たって、生活保護についてはこれだけ明確になりましたので、 それを考慮することはもちろんでありますけれども、それ以外の生計費に係る様々な資料、 材料については、併せて総合的に判断するといったことです。あくまでも下回らないとい うのは、今回の規定の意味する趣旨を申し上げたことで、言うまでもございませんが、具 体的な最低賃金の額の決定に当たりましては、今までの三要素を総合的に判断して各審議 会で決定していただくといったことで考えております。 ○今野部会長  よろしいですか。 ○原川委員  もう1つだけ。ということは、新しい規定が入ったことによって、これから平成20年度 の賃金改定時に当たっては、これは賃金決定の要素ではあるけれども、生活保護との比較 においては、下回ってはいけないということになるのですか。 ○吉本勤労者生活課長  今回の条文の趣旨としましては、先程申し上げたとおりですけれども、具体的にどの範 囲の生活保護と比較するのか、あるいはどういうスケジュールで比較していくのか、具体 的なところについては、改めまして、中央最低賃金審議会の中でご議論いただくことにな ると考えています。 ○原川委員  よく意味が分からないのですが。ということは最低賃金は、どこの生活保護とどの部分 と比較するかというのはこれから決めるけれども、いわゆる生活保護との比較では、生活 保護を下回ってはいけないということは、もう決まりですか。 ○吉本勤労者生活課長  当初の趣旨は、働いているときの最低賃金より生活保護の方が高いということでは、モ ラルハザードの面からも問題があるということで、このような状況に入ったということで すので、その趣旨として申し上げると、生活保護を下回らないようにしていくといった趣 旨になります。具体的に繰り返しになりますが、どの範囲の生活保護と具体的に比較して いくのかということについては、きちんと改めて議論の場を設けて検討していくと。 ○今野部会長  よろしいですか。 ○川本委員  この参考2-3の左側の3というところになるわけですので、要は「生活保護に係る施策 との整合性に配慮するものとする」ということで、今のご説明であれば、要は最低賃金は 生活保護を下回らないようにするという趣旨に基づいて、それに配慮していくということ という風に読ませていただいているのですが、そういうことではないのですか。 ○今野部会長  川本さんが言われたのを、もう一度言ってください。 ○川本委員  要するに、生活保護に係る施策との整合性のところ。要は最低賃金を下回らないように するという趣旨なのだということですが、それに配慮するということですので、要は支払 能力及び賃金の実態並びに、3つ目の生計費の要素の中で、最低賃金を下回らないという趣 旨の考え方を整合性という言葉を使った上で、それに配慮するのだということだというよ うに読めるのですけれども、そういう趣旨ではないのでしょうか。 ○吉本勤労者生活課長  まさに最低賃金が、ここでいっている健康で文化的な最低限度の生活を営むことができ るような生活保護の水準、これを下回らないような数字となるように配慮をするというこ とです。 ○中野委員  私のときにお答えいただいた話と、今の話とちょっとニュアンスが違うような感じがし たのですが。どちらかはっきりしておかないと、後で混乱をもたらすと思うのですが、答 弁の中身との整合性もございますので。 ○吉本勤労者生活課長  そういたしましたら、今のところは、国会においてどのような答弁がされているかとい うことを、その事実関係においてご覧いただくのがよろしいかと思いますので、11月20日 の小林正夫議員の(1)というところです。小林正夫議員からの質問に対して、提案者の1人 である細川律夫議員の方から答弁をされている部分があります。私が今一番最後に申し上 げましたのが、「よって」というところのあとの部分です。「最低賃金が労働者が健康で文 化的な最低限度の生活を営むことができるような生活保護の水準を下回らない水準となる よう配慮する旨がより強くされた」と。 ○今野部会長  今読まれたのは一番上の段ですか。 ○吉本勤労者生活課長  一番上段部分です。 ○今野部会長  上段ですね。 ○吉本勤労者生活課長  一応私どもとしては、それに沿って今後また検討していただきたいと思います。 ○今野部会長  資料の場所は分かりましたか。よろしいですか。 ○原川委員  ということは、これは生活保護よりも下回ってはいけないという意味ではないのですね。 そういうことを配慮するという、あくまでもそれを強く言ったということなのですね。 ○吉本勤労者生活課長  そこにございますとおり、下回らない水準となるよう配慮する旨が強化されたというこ とです。 ○原川委員  分かりました。 ○今野部会長  他にございますでしょうか。よろしいですか。それでは次の議題に移りたいと思います。 第3の議題は「改正最低賃金法の関係政省令について」でございます。資料も配付されて いると思いますが、まずは事務局から説明をいただいて議論をしたいと思います。 ○吉本勤労者生活課長  それでは、関係政省令についてご説明いたします。資料をご覧いただく前に、今後の改 正最低賃金法の施行についてです。施行日については、附則第1条において「公布の日か ら起算して1年を超えない範囲内において、政令で定める日」とされています。今回の改 正は、罰則の強化なども含んでいますし、また今後この改正法並びにこれから制定します 省令等の周知のための期間も十分設けていく必要がある一方で、来年度の最低賃金額改定 は新法の下で行っていかなければならないということだとすれば、今後のスケジュールと しては、4月頃に関係政省令を公布しまして、具体的な施行日としては7月頃が適当ではな いかと考えています。つきましては、その施行に向けて政省令を整備するといったことが 必要になってきます。  まず政令については、今回資料は用意させていただいていませんが、形式的な条ずれだ けです。省令については、お手元の資料3にまとめさせていただいていますが、ほとんど が形式的、技術的なものです。ざっと上からご覧いただきたいと思いますが、1つ目は、最 低賃金の規定の適用についての換算方法、これは労働者の賃金とその労働者に適用される 最低賃金額の比較をするための換算方法を定めている部分です。今までは、法律上時間額 以外にも日額、週額、月額といったものが想定されていましたので、それらの場合の規定 がありましたが、今回の時間額の一本化に伴いまして、それらを削除するものです。  2つ目が「最低賃金の減額率の設定」です。今までの適用除外規定を廃止しまして、新た に減額の特例に係る規定を設けたということです。これについては、これまでも実際の運 用においては、適用除外の許可を受けたからといって妥当性を欠くような低い賃金にはな らないようにということで、例えば障害者については、その労働能率が低い割合に対応す る金額を減じた額を下回ってはならないと、後で説明する基準を設けて運用を行っている ところです。今回の法改正により、そうした運用上の取扱いを法律上位置づけることにな ったわけです。それに伴い、今回省令で下限となる減額率を定めるといったことが、2つ目 の内容です。  3つ目は、これまでの適用除外の対象の労働者の1つとして、これも日額等で定められる 場合を想定しまして、「所定労働時間の特に短い者」といった規定がありました。これにつ いては、今回法律でも削除しています。省令においては、関係部分を削除するといったも のです。4つ目は、労働協約拡張方式の廃止に伴う関係の規定の削除です。また5として、 申請様式の改正等といったものがあります。  以上、ご覧いただきましたように、内容的に実質的な内容を伴いますのは、2の新設する 部分です。これについては、本日直ちに要綱案をお示しするのではなくて、これまでの運 用を踏まえてそれを定めていくことになりますので、これまでの運用の実態をこの後報告 させていただきたいと思います。できましたら、その後先生方に実際に現在適用除外を受 けている労働者が働いている事業場に足を運んでいただいて、実際の適用除外、減額の措 置がどのように運用されているのかといったものをご覧いただいた後に、要綱という形で またお諮り申し上げたいと思っています。  引き続いて、これまでの運用の実態ということで、資料4-1からご覧いただきたいと思 います。資料4-1は、適用除外の許可基準を定めた局長通達です。該当するのは、1枚目の 下からになりますが、第2の「法第8条の許可基準」といったところです。この許可基準 に従って、実際には適用除外の申請が出てきましたら、個別に労働基準監督署において実 態を調査したうえで許可をしているものです。まず1つ目の類型が、「精神又は身体の障害 により著しく労働能力の低い者」といったものです。(1)で、障害があってもその障害が 業務の遂行に直接支障を与えることが明白である場合のほかは許可しない。(2)で、支障 の程度が著しい場合にのみ許可をする。(3)支払おうとする賃金額は、他の労働者のうち の最下層の能力者より労働能率が低い割合に対応する金額を減じた額を下回ってはならな い。労働能率が他の最下層の方より8割なら8割を下回ってはならない、といった趣旨を 基準で設けているわけです。  2「試の使用期間中の者」です。これについては、後から数字を示させていただきますが、 例は極めて限られています。この許可基準で定めているのは協約、規則等で定められてい るといったことを前提にして、(2)として業種、職種等の実情に照らして慣行となってい るような場合に特に限定して、また期間も最長6カ月を限度としているところです。  3つ目が、認定職業訓練中の者です。認定職業訓練のうち、そこにありますように、基礎 的な技能、知識を習得させることを内容とするもので、省令で具体的に定めています。さ らに、その基準の(1)で、訓練中であっても生産活動に従事する時間が全体の所定労働時 間の3分の2程度以上である場合は、許可をしないと。また、長期に2、3年にわたるもの については、最終年度については基礎的なものにはならないということで、原則としては 許可をしないといった基準になっています。また(2)で、支払おうとする賃金額について は、生産活動に従事する時間に対応する額を下回ってはならないこととしています。  それから4「所定労働時間の特に短い者」は、今回廃止になりますので割愛させていただ きます。次の頁の5です。「軽易な業務に従事する者」ということで、(1)の基準として、 他の労働者のうち最も軽易な業務に従事する層の労働者の業務と比較しても、なお軽易で ある者に限られる。要は、その事業場の本来業務に属さないような、例えば工場における 草取りや片付けといったような例外的な軽易なものに限られるといった基準です。(2)は、 いわゆる監視の業務で、労働基準法第41条にいう監視の業務と同様の趣旨です。これにつ いても、除外を認めているわけですが、ただ最低賃金額が日額等で定められている場合に ついては、他の労働者に比して所定労働時間がすごく長いときは許可しない、といった基 準を設けているものです。  6「断続的労働に従事する者」ですが、これもその趣旨が労働基準法の第41条にいう断 続的労働と同様です。そこに書いてありますが、手待ち時間が多く実作業時間が少ないと いったものです。具体的には、社員寮などで住込みの管理人をされている方であるとか、 社会福祉施設のような所の宿直といったようなものが、典型的な例です。(2)は、これま で日額等の適用をされる場合については、他の労働者の実作業時間の2分の1以上働いて いない場合については、もう日額でクリアをしていただく必要があるということで、許可 の対象としてこなかったということです。  続いて資料4-2です。最近3年間の適用除外の許可の状況をデータで示しています。そ こにありますように、数として多いのは、精神又は身体の障害により著しく労働能力の低 い方々で、平成18年ですと3千数百人です。その下の類型は数としては限られていますが、 もう1つ多いのが「断続的労働に従事する者」で、平成18年においては3,500人というこ とで、かなり増加をしているということです。  次に資料4-3ですが、これはただ今申し上げたそれぞれの対象労働者ごとに、実際許可 を受けている際の支払額の下限を示していますが、その最低賃金額に対する支払賃金額の 比率、最低賃金額に対して何パーセント支払われているかといった額を分布にして示した ものです。障害者については、ここにありますようにかなりばらつきがあるわけですが、7 割台が27%、6割台もほぼ同じぐらいの割合、そのあと8割台といったことで、逆に5割 に満たないといった所は数はかなり限られるといった実態です。  次の頁は、「試の使用期間中の者」です。これもサンプル数はごく少数ですが、8割台、9 割のところです。8割未満の者は見受けられないというところです。「認定職業訓練を受け る者」については、先程申しましたように、生産活動の時間が3分の2以上になった場合 については、基本的に許可の対象としないといった取扱いをしていますが、実際許可の対 象となったものでみてみましても、7割以上、65%以上といったところで、ほとんどといっ た状況です。  それから、4の「軽易な業務に従事する者」ですが、これもサンプル数はそれほど多くあ りません。一番多いのは9割台のところで40%ぐらいを占めていまして、7割から8割、 一方で6割未満というのは全く見受けられないということです。5の「断続的労働に従事す る者」については、60〜65%未満がかなり多くなっていまして、次いで65〜70、70%台と いったところに分布がやや偏っているような状況です。資料の説明は以上です。 ○今野部会長  今説明していただきましたので、ご意見、ご質問がありましたらお願いします。 ○加藤委員  2点ほど教えていただきたいのですが、今説明のあった資料4-1なのですが、この局長通 達が昭和34年以降、平成16年に1回だけ改正されているということでいいのですよね。 そうすると、昭和34年にこの局長通達が出されてから、平成16年にたった1回だけ改正 されているようなのですが、どの辺りが改正されたのかということが1つです。もう1つ、 先程の説明を聞いていて、適用除外許可状況の一覧表がありましたが、減額の分布の1つ 手前の表です。許可人員が、この3年間顕著に増えているわけですよね。平成16年の6,484 から6,761、7,336と顕著に増えています。先程眺めてみましたら、断続的労働に従事する 者のところが、どうも増えていることがこの表から分かったのですが、この業務の分野で 何か特徴的な変化や、雇用上の要因が分かりましたら教えていただきたいと思います。 ○吉本勤労者生活課長  この通達の改正ですが、基本的には昭和34年に制定した時点から、実質的な内容の変更 はしておりません。その間、根拠の法律が改正されたりといったようなことがあったわけ ですが、平成16年に変えましたのは、職業能力開発促進法の関係の規定が変わったことに 伴いまして、実質的な中身は変えていませんが、そこを変更しました。それから、少し時 点がずれてはいるのですが、平成14年に時間額に最低賃金が一本化されたときに、それま での日額等だけに基準が適用されているようなものがありましたので、それが明確になる ように、例えば断続的労働の(2)の「時間額が適用される場合を除き」といったものを付 け加えるというような改正です。実質的な内容は変えていないと申し上げた方がいいと思 います。  それから、2つ目の断続的労働が特に増えたというのは、今も少し申し上げたことに関連 しますが、それまでは日額でクリアされていればいい、例えば断続的労働の場合で1日8 時間実作業時間があって、8時間手待ち時間があるといった場合については、日額であれば その最低賃金額をクリアしていると。ただ、それが時間額の適用になった途端に、16時間 全部の額で単純に時間額を換算して比較するといったことになりますので、それで最低賃 金額を下回ってしまうといった、同じ働き方をしていてもそういうような状況が出てくる といったことで、許可を得るケースがあるという影響がかなりの部分だと思います。 ○今野部会長  他にありますか。 ○中野委員  今日ではなくて結構なのですが、今の減額のところで、断続的労働と軽易な作業のとこ ろで、軽易な作業というのは草取りや片付けという例が出たので気になっています。許可 申請がどういう形で出てきて、そしてそれを今まではどういう基準で許可をしていたのか について、具体的にお示しをしていただきたいと思っています。と言いますのは、例えば 軽易な業務というのは、その工場の中では軽易かもしれないけれども、地域全体からいう と軽易ではないかもしれない、その軽易の軽易と書いてあるのですが、その判断をどのよ うなところでやったのかを教えていただきたいと思います。それから、申請する側がどう いうことで申請をされているのかという、具体的な事実を知りたいというのが1点です。  2点目も同じなのですが、断続的労働というのは、手待ちなどというのは結果として発生 をするわけであって、申請の段階でどのようにするのだろうかというのが分かりませんの で、具体的な事例を教えていただきたいと思います。 ○吉本勤労者生活課長  典型的な事例は、また整理をして次回申し上げたいと思います。断続的労働については、 基本的に労働基準法第41条の労働時間の規制の適用除外を受ける人たちが、こちらの最低 賃金の適用除外の対象にもなるということですので、労働時間規制の方の適用除外を受け る際に実態を把握して、実作業時間と手待ち時間がどうであるかといったことが、その時 点で明確になっていることも前提です。  監視業務についても同様です。先程の説明の中で申し上げましたが、軽易な業務という のは大きく2種類ありまして、1つは大雑把に言えば高齢者の方々の生きがい的な仕事とい うことで、先程草取りという例を出しました。もう1つは、労働基準法上の第41条で適用 除外されるところの監視業務です。これは、例えば事業場における駐車場で守衛をされて いるというタイプの仕事などです。改めてペーパーとして整理させていただきたいと思い ますが、現状では以上です。 ○中野委員  出していただくのはお願いしたいと思います。というのは、減額率みたいなものを考え なければいけないのでしょうから、そうすると今までは適用除外ということでよかったの でしょうが、どういう形になるのかが議論の対象になりますので、是非具体的な事例を資 料として出していただきたいと思います。それから、労働基準法第41条には施行規則に細 かく書いてあるのでしょうが、実際に我々は申請書を見たことがありませんので、具体的 なことがどのように行われているかは、さっぱり分かりません。そうすると、その具体的 事例を知らないまま審議をするのはいけないと思いますので、それをお教えいただきたい ということです。 ○今野部会長  それは、次回出していただくということですか。 ○中野委員  次回で結構です。 ○中窪委員  今のものと併せて、労働基準法第41条の許可の場合に、ほとんどこれが申請されて出て いると考えたほう方がいいのか、それとも半分ぐらいなのか、その辺りの件数だけでも教 えていただければと思います。 ○今野部会長  今は考え方の理解でもいいかなと思うのですが。 ○吉本勤労者生活課長  分かりました。単純には比較できない部分があります。ご承知のとおり、監視、断続的 な労働の許可というのは、事業場ごとの件数ということで把握していますが、私どもは、 それぞれの許可対象労働者に着目した件数になっています。 ○今野部会長  では、いずれにしてもそのような資料を次回にでも作っていただきたいと思います。他 にありますか。それでは、今日は運用実態についての報告をしていただいて、議論をして いただきました。今後、最低賃金の適用除外の許可を受けている事業場を実地視察した上 で、省令案要綱を諮問していただくということにしたらいかがでしょうか。一度皆で現場 を見て、もう一度議論しましょうということで、よろしいですか。 (異議なし) ○今野部会長  それでは、そういうことにさせていただきます。事業場の視察については、後日具体的 な日程について、事務局でもう一度調整していただいて、連絡をしていただければと思い ます。この件について何かありますか。追って後から連絡をするということでよろしいで すか。 ○吉本勤労者生活課長  ご連絡申し上げたいと思いますが、日にちとしては2月12日を次回押さえていただいて いると思いますので、そこでお願いしたいと思います。改めてきちんとご連絡申し上げた いと思います。 ○今野部会長  ということは、この近辺で見させていただくということですよね。 ○吉本勤労者生活課長  はい。 ○今野部会長  分かりました。それでは、また連絡がいくと思いますので、よろしくお願いします。最 後に議事録ですが、労働政策審議会運営規程第6条第3項の規定により準用する同条第1 項の規定により、議事録には部会長の私と、私の指名する委員お二人が署名することとさ れています。したがって、労使代表1名ずつで署名をお願いしたいと思います。本日の議 事録の署名は、高石委員と横山委員にお願いします。 ○池田委員  ここで言ってもしょうがないと思いますが、国会で一時生活保護が高すぎるという議論 があって、野党の反対で立ち消えになってしまって、今また年金がそれより低すぎるとい うことで問題になっていますが、今後は生活保護の水準に関する国会論議が起こり得る可 能性があるのでしょうか。その点だけ確認したいと思います。 ○吉本勤労者生活課長  議論としては、いろいろこれまでもありましたが、来年度については今おっしゃったよ うな方向で、ほぼ方向性が出たと思います。それ以後の動きについては、私どもでは正確 に分かりかねます。 ○今野部会長  議事録署名の委員は、もうお願いをしてしまったのですが、今の池田委員まで含めて議 事録の署名をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。それでは、本日はこ れで終わりたいと思います。ありがとうございました。                     【本件お問い合わせ先】                       厚生労働省労働基準局勤労者生活部                       勤労者生活課最低賃金係                       電話:03−5253−1111                               (内線5532) 1