08/01/16 厚生科学審議会科学技術部会第5回臨床研究の倫理指針に関する専門委員会議事録 厚生科学審議会科学技術部会 第5回臨床研究の倫理指針に関する専門委員会 議事次第 ○ 日時 平成20年 1月16日(水)10:00〜12:00 ○ 場所 経済産業省別館 10階 1020会議室 ○ 出席者 【委 員】 金澤委員長 廣橋委員長代理       飯沼委員 伊賀委員 井部委員 江里口委員 北村委員 倉田委員 河野委員  小林委員 佐藤委員 藤原委員 前原委員  丸山委員 谷内委員 【事務局】 新木研究開発振興課長 林治験推進室長 佐藤課長補佐 【参考人】 増田記者(読売新聞科学部) ○ 議 事: 1.臨床研究に関する倫理指針の運用状況に関する調査について 2.各国の臨床研究に関する法制について(追加情報) 3.臨床研究に関する倫理指針の改正素案の概要(案)について 4.その他 ○ 配付資料   議事次第 座席表 委員名簿 資 料 1:第4回臨床研究の倫理指針に関する専門委員会の主な意見 資 料 2:日本の特定機能病院における倫理審査委員会の現状 資 料 3:各国・地域の臨床研究に関する法制について(追加情報) 資料4−(1):臨床研究に関する倫理指針の改正素案の概要(案) 資料4−(2):臨床研究に関する倫理指針の改正素案の概要イメージ(案) 資 料 5:委員提出資料(谷内委員) 参考資料1:臨床研究に関連する指針等 参考資料2:平成18年度臨床研究の倫理等に関する特別研究報告書 参考資料3:ヘルシンキ宣言 参考資料4:医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令 参考資料5:臨床研究に関する倫理指針とICH−GCP比較 参考資料6:臨床研究倫理指針の遵守状況チェックシート案 参考資料7:疫学研究に関する倫理指針(平成19年改正後) 参考資料8:各補償制度の概要に関する資料・約款等 参考資料9:外国調査報告(米国)(山本 精一郎 参考人 提出) 参考資料10:外国調査報告(欧州)(山本 晴子 参考人 提出) 参考資料11:米英仏の臨床研究制度比較のまとめ(案) 参考資料12:臨床研究からみた臨床研究・疫学両指針の範囲のイメージ(案) 参考資料13:疫学研究に関する倫理指針Q&A ○事務局 定刻となりましたので、第5回「厚生科学審議会科学技術部会臨床研究の倫理 指針に関する専門委員会」を開催させていただきます。本日は、先生方におかれましては、 新年のご多用中をお集まりいただきましてありがとうございます。委員19名のうち、現在 12名の委員にご出席をいただいております。川上委員、本田委員、永井委員、寺野委員は ご欠席の予定ですが、遅れて到着される先生方が何人かいらっしゃるかと思います。定足 数は満たしておりますので、本会議は成立しておりますことを最初にご報告申し上げます。  なお、本日の会議は公開としておりますのでご了承いただきたいと存じます。本日は、 議題1の特定機能病院の倫理審査の調査に関する参考人として、読売新聞東京本社の増田 弘治記者にご出席をいただいております。以降の議事進行は金澤委員長にお願いいたしま す。 ○金澤委員長 新しい年を迎えての第1回、トータルでは5回目になりますが会を開かせ ていただきます。お寒い中をありがとうございます。冬というのは寒いほうがいいのであ りまして、地球温暖化の中で、冬まで暖かくなってしまっては困ってしまうのでありまし て、そういうわけではよろしいかと思います。  先ほどご紹介がありましたように、本日は読売新聞の増田記者においでいただいており ますので、後でお話を伺いたいと思います。そこで1つ文句があるのですが、参考人とい うのはやめていただきたいのです。これは、前にも私は言ったと思うのですが、考えをま とめるのに参加していただく人という意味では参考人でも悪くないのだろうと思うけれど も、私はどう見ても特別ゲスト以外にないと思っています。 ○事務局 次回からは、スペシャルゲストということに変えさせていただきます。 ○金澤委員長 なぜ、特別をスペシャルと英語にするのかわかりませんが、そのようにお 願いいたします。議事に入りますが、最初に配付資料の確認を簡潔にお願いいたします。 ○事務局 議事次第、座席表、委員名簿、資料1、資料2、資料3、資料4-(1)、資料4-(2)、 資料5で構成されています。参考資料については公開資料ですが、委員のお手元のハード ファイルに収めてあります。このハードファイルは、毎回会議の度に使用いたしますので、 申し訳ございませんがお持ち帰りにならないようにお願いいたします。 ○金澤委員長 議題は、その他を入れると4つありますが、最初の議題から入ります。最 初は、臨床研究に関する倫理指針の運用状況に関する調査です。前回のこの会で、倫理審 査の実施状況について、厚労省から予備的な調査の中間的な報告をいただきました。  それから、先ほど紹介のありました読売新聞の増田さんたちが書かれた記事も一回目の 委員会で参考にさせていただきました。今回は、まさにその調査をなさいました増田さん たちが論文化されたということで、これは資料2として入っておりますが、直接増田さん のお話を伺うことができるということです。この必要性は誰もが認識しているかもしれま せんけれども、それを実際におやりになったわけでありますのでその動機、あるいはそう いうことを通して改善すべき点はどういうところにあるかを考えていると思いますので、 是非お伺いしたいと思います。そして、委員の方々から忌憚のないご意見をいただきたい と思います。  それでは、増田さんから15分ぐらいお話をしていただきます。 ○増田参考人 読売新聞東京本社の科学部におります増田です。昨年8月まで大阪本社の 科学部にいて、9月からこちらに転勤してまいりました。私は、大阪本社の科学部で医療 の担当記者として仕事をしていました。論文の表紙に原昌平という名前を書かせていただ いておりますが、この原というのが大阪本社の科学部でデスクをしております。会社的に は私の上司に当たるのですけれども、長年2人でといいますか、医療担当として医療問題 に関して取材を続けてまいりました。  私は、2002年の秋から科学部にいるのですが、それ以前の社会部とか支局にいた時代か ら、医療問題には興味があって取材を続けてきました。科学部に入ってからは、まず生命 倫理とか医学倫理という分野に出会い、興味を持って取材を続けてきた経緯があります。  生殖補助医療の場面では、着床前診断、出生前診断等々ありますけれども、神戸の産婦 人科医師が、着床前診断を独断で行っていたというケースを報道するなどしました中で、 医学研究、臨床場面での倫理を考えることが最重要課題ではないのかという意識も持ちま した。  国立循環器病センターとか大阪大学では、倫理委員会開催後に記者会見をしていただい ているという状況があり、どのような研究課題が倫理委員会で審査され、どのような研究 課題が承認されているか、は比較的よくわかる状況ではあります。  ところが、それでは、倫理委員会とは何なのかというところがはっきりわかるかという と必ずしもそうではなく、倫理審査委員会がどういう働きをしているか、というのはなか なか見えにくい状況があります。  そういうことですので、現場にいる新聞記者としては、倫理審査委員会がどのような状 況で開催されていて、どのような審査が行われているか、ということに興味を抱くのはご く自然なことだと思います。  倫理委員会に対する調査は、研究者によるものが一部の部門に対するものがあるのです けれども、残念ながら我が国で倫理委員会全体を対象とした調査はあまりありません。そ れならば自分たちで調べてみようではないかというのが調査を行おうとした動機です。  調査自体は2段階に分けて行いました。まず、プレ調査という形で、対象は特定機能病 院と、大学病院でしたら本体であります大学そのものにも調査をお願いしました。プレ調 査という形で、大学及び大学病院、そして特定機能病院で、どのぐらいの数の委員会があ るのかを調査いたしました。  その調査の回収率は100%と高率になり、その結果少なくとも448の委員会が大学及び 大学病院、特定機能病院にあることがわかりました。さすがに448という数に対して本調 査をかけるのはなかなか難しいということもありましたので、薬事法に則ったGCPで行わ れている治験審査委員会、それから本委員会の下の親子関係のある委員会がぶら下がって いるケースがあるのですが、下部組織の委員会を除き、計205委員会に対して本調査とい う形で、182項目のアンケート調査をお願いいたしまして、回収率は86%という高率にな りました。  いままで、新聞社としてはなかった規模かもしれませんが、2年ほどかけた大規模な調 査になりました。東京本社科学部とも協力した結果、回収率がこれほど高くなったという ことだと思います。  調査報道自体は昨年3月に、大阪では見開き2面、東京本社版では1頁で調査結果を報 道いたしました。ただ、新聞は紙幅に限りがあるということで、調査の途上から原と私も 考えていたのですが、新たにいろいろな分析を加えた上で論文化しようということで、臨 床評価誌のご厚意にあずかり、この度論文化することがかないました。  この中で、新聞にはなかった解説・分析もさまざま加えたのですが、今回この場でお話 するにあたり、金澤委員長からご指示のありました点は主に2つあります。なぜガイドラ インが守れないのかということと、どこを改善していけばよいのかという部分だと思いま す。これは、主に調査結果を踏まえた考察というところに書いております。我が国の特定 機能病院の倫理委員会では、傍聴が可能な委員会もあるので、その委員会の傍聴も何度か させていただいた結果を基に、多少その辺に触れたいと思います。  なぜガイドラインが守れないのかという部分ですが、倫理指針の策定に伴い、各機関で は委員会を設けようとするときには、その指針に沿った委員会を設けようという流れはで きているということを調査の中では感じました。一定の努力はなされているのだろうとい う印象を持っています。  この論文の391頁に掲載しましたように、各機関とも指針に沿った要綱を作成するなど 努力はされているのですが、審査の実態は指針には沿っていない。有り体に言いますと、 指針違反だらけであるという結果になっています。現場を見ますと、委員長が施設の長で あったり、委員長席に座っておられる先生方が申請者に早変わりして、申請者席で説明を する、というような場面も見られました。  なぜ指針が守れないのかを考えてみました。一番の問題は、国の指針が乱立していると いうことではないのかと感じます。現在国が策定した指針は、ヒトES細胞の樹立及び使用 に関する指針、ヒトゲノム遺伝子解析研究に関する指針、疫学研究に関する指針、臨床研 究に関する指針、遺伝子治療臨床研究に関する指針、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関す る指針の計6種類があります。  この指針に書かれている中身は、ヘルシンキ宣言を下敷にしているのは先生方もご存じ だと思いますが、指針ごとに要請項目が非常にまちまちで、表現や要請の度合が少しずつ 異なっている。委員構成にしても、女性委員、外部委員が複数必要なのか、もしくは1人 でよいのかということも違います。人文社会科学の有識者か、倫理・法律を含む人文社会 科学の有識者といったような微妙な記述の違いがあるようなことがあります。その指針を 解釈しようとする立場に立つと、理解がしにくいということになっていると思います。あ る指針で必要とされている項目が、別の指針には存在しないということもあります。下敷 は同じはずなのですけれども、出てきたものは違い、それぞれ別個に作られているような ことになっていて、やはり整合性がないという状況があります。そういうことから、指針 を遵守できないという状況が出てきているのではないかと考えました。  もう1つは、指針の内容の把握が、各当事者間で不十分なのではないかということです。 すべての指針に、当該研究者の審議への参加禁止、また多くの指針には機関の長の審議へ の参加禁止を定めておりますけれども、先ほど申しましたように、施設の長が倫理委員長 を務めるような所も少なくありません。情報公開という点につきましても、十分進んでい るとは言えません。現場で、委員長や委員が申請者の席に移り、研究課題の説明をするよ うな場面が見受けられるわけですが、それは常識的な感覚としておかしいのではないかと いう感覚が芽生えても不思議ではないような気がするのです。しかし現場ではそうではな く、1つには指針の内容の把握が不十分であることと、当事者の常識的なと言うとちょっ と語弊があるかもしれませんが、意識があまり高くないところが、指針を守れない原因に なっているのではないかと思います。  もう1つは、国が設けた指針は行政指針ですので、法的根拠はないわけです。ですから、 指針を守らなくてもペナルティはないという状況があることが、遵守が浸透しない1つで はないかと考えます。  それでは、どこを改善すればいいのかということです。1つには統一指針の整備という ことがあると思います。国が設けた指針が6つもあり、しかも今回検討の対象にはしませ んでしたが、厚生労働省が周知している指針としては、手術等で摘出されたヒト組織を用 いた研究開発のあり方等々があります。ですから、現場では6つの指針に加え、さらにた くさんの規定や指針を遵守していかなければならないという現状もあります。分野ごとに バラバラの指針があるという状況をまず改善し、何らかの形で統一の指針を整備すること が重要なのだと考えました。  しかも、対象はより広くするべきだと考えております。抜け穴を防ぐために、全例申請 主義にすべきではないかと思います。病気腎移植に代表されるような、実験的医療に対し ても十分網掛けができるような体制にするべきだと考えます。加えて、法制化という部分 についても考えていくべきではないかと考えます。  法律なくして規制をかけることはできないと思いますし、現在考えているような研究費 の部分で縛りをかけることになりますと、研究費を受けていない研究及び実験的医療の部 分の課題については、検討の蚊帳の外に置かれるわけです。この点についてアメリカでは、 研究費が出ていない研究については、倫理審査もしくは規制の外に置かれてしまうという 状況が起きて問題化しているという指摘もあります。やはり、一部だけ網掛けするような 形ではなく、生命倫理法なり被験者保護法のような形のものを作った上で、全体の網掛け をしていくべきではないかと思います。  もう1つは、中央審査委員会という組織の存在が大事ではないかと感じます。各機関が 申請を審査しているものを、ES細胞でやっているように二重審査にするなどというのも1 つの考え方ではないかと思います。1990年代後半から、ようやく我が国にも倫理委員会の 役割が重要視されるようになりましたが、研究者にもその倫理審査を受けた上で研究をす るという意識も確かに根差しているとは思うのですが、倫理審査を受けたということが1 つの免罪符のような形になっていないかということを、もう一度振り返ってみる必要もあ るように思います。  倫理委員会の公的な役割を1つ明確化するべきだと。単に研究を進める1つのプロセス ではなく、被験者及び患者の権利を守る社会的機関である、という意識からもう一度考え ていくべきではないかと思います。  それから、1人で10何箇所も倫理委員長を掛け持ちしている先生もいらっしゃるのです が、それは倫理委員会を構成する人材そのものが枯渇している、もしくは全く養成してこ なかったという現状もあるということで、ここを如実に示しているということで、やはり 人材育成という面にも十分に気を配っていく必要があるのではないかと考えました。  以上で私からの報告を終わらせていただきます。 ○金澤委員長 短い時間ではありましたが、大変内容の濃いお話をいただきました。大変 サジェスティブなお話でありましたが、どうか自由にご意見を交換していただきたいと思 います。 ○谷内委員 東北大学の谷内です。大変貴重な資料をありがとうございます。早速私たち の倫理委員会の委員に配付させていただき、論文を読ませていただきました。非常によく 調べてあって、外からこのように倫理委員会は見られているのかということが非常によく わかりました。非常にサジェスティブではあるのですけれども、先生の論文でたくさんバ ツが付いている大学の1つとして少し釈明をさせていただきます。  ほとんどの研究者は各倫理指針は読んで、それぞれの研究テーマに合った倫理指針は非 常に参考になっています。臨床研究というのは非常に幅が広いので、それぞれの指針は一 応目を通しています。ただ「望ましい」とか、「そうすべきである」というのを分けて、「そ うすべきである」というところになるべく重点を置いて改善していると思います。それか ら、こういうもので機関の制度を変えていくには時間がかかるということをご理解いただ きたいと思います。臨床研究指針はまだ3年ぐらいですので、その間に努力目標だろうと いうことで、可能な限りこの指針に近づける努力を、私たちも他の大学でもしていたので はないかと思います。そういうことでご理解いただきたいということです。  バツが付いたところで、例えば利益相反のチェックに関しては時間がかかって、やっと 一昨年から対応できました。有害事象報告もバツが付いていたのですけれども、これは倫 理委員会だけですべてを行うことは不可能です。現状では、なるべく倫理委員会は主要な テーマに絞って議論すべきだろうという考え方で、サブコミッティーではなく、並列の委 員会を作ったりしています。有害事象に関し、うちではインシデント委員会で報告を受け る形になっています。また1年に1回必ず全員に報告を求めているということではないの は確かで、利益相反のある場合のみ報告を求めています。  情報公開に関しては、この委員会でも発言させていただきましたが、すべて倫理委員会 の情報を開示していいと我々自身は思っていなくて、ある程度守秘義務が委員会や委員に はあるのではないかと考えています。特許情報なども出る場合がありますので、これまで 全部オープンにされるのかという危惧があります。  そういうことで、我々の考え方というのは、今回の改定でもお願いしているのは、Web への登録を推奨していく方向でお願いできないかと考えております。そういうことを考え ると、△が少し増えて、違反状態というのは、先生の論文よりも少ないのではないかとい うのが私たちの釈明です。この論文に対しては、各委員会、各施設からそういう釈明が出 るのではないかと思っております。貴重な資料であることは間違いないですが。 ○小林委員 聖マリアンナ医科大学の小林です。私は、臨床薬理もやっております。これ を読ませていただきまして、非常にいいことがいっぱい書いてあります。最後のほうは、 同じような考え方のところもあるので、そういう面ではよくこれをまとめていただいたと いう感じを持っています。  ただ、ひとつひとつの資料を見ると例えば387頁の表の上から2番目の聖マリアンナ医 科大学の真ん中辺りに、1開催当たりの件数が65.8件となっていますが、こんなに審査を するはずがないです。この数字だけ出てくると、一般の人は、これはろくな審査をしてい ないのではないかと思ってしまいます。  うちの大学の場合には、生命倫理委員会の中にいろいろな部会があり、エホバの問題も あるし、最近はES細胞などすごく大きな問題もあり、そういう問題を審査する場合もあり、 それから、臨床試験では薬を使った介入試験や、疫学研究なども、各部会に分かれている システムがあります。それを、このアンケートでは言いきれていないところがあります。 その結果として、こういう誤解が出てくるような結果を示されると困ります。  谷内先生がおっしゃったとおり、すごく刺激的なのは「違反」と書かれていることです。 一般的に違反というのは悪いことです。そんな悪いことをしているつもりは全然ないわけ です。ある意味でそういう意識がないのがおかしいと言われているのかもしれないのです けれども、これが誤解のもとです。  私も、こういう医学研究の倫理のことを20年近くやっておりますけれども、20年前に 比べるとすごくよくなっています。各大学の質もすごくよくなっていると思います。ただ、 よくなっているということと、増田さんがおっしゃった限界というのがあります。また臨 床研究というのはいっぱい種類があるわけです。それに同じ網を掛けられるかというと、 これは実際には不可能なことです。そうなってくると、少なくとも基本的なものだけはき ちんと守ろうということになってくるわけです。基本的なものだけはきちんと守ろうとな ると、今度はそれ以上の点でこれはどうするのだ、あれはどうするのだということでいろ いろ考え方に違いが出てきます。その違いが、また多様性であって、それがあっていいの ではないかと思うのですが、それを規則化することは非常に難しいので委員会で話し合う ということなのだと思います。  委員会のことをここで言っていいかどうか、守秘義務があるかもしれませんが、うちの 大学の特徴から言うと、ES細胞の研究はやりにくい面があります。うちの大学はカトリッ ク的なものがあるのでやりにくい面があるのも当然かもしれません。ところが、審議を重 ねる過程において委員会の内容が外に漏れて、宗教的な事情であの大学はやらないという 情報が出、そういう社会的な情報を基にして委員会がゆさぶられました。だから公開とい うのはすごく難しい話で、どこまで公開すべきかというのは非常に難しいところなのです。  ご存じのように、国の法律ではES細胞をやってもいいわけです。このように、規則を決 めればすべて問題はなくなるということでもないと思います。その辺の難しさをおわかり いただきたいと思います。それから、法律には私も反対ではないのです。だけど大前提と してこういう臨床研究が社会的に必要であるという、ある意味で促進法があって次に被験 者保護法があるのならいいのです。でも、最初に被験者保護法ありきで、守れ守れと言っ て、違反がこんなにあるのだというような報道が出てくると、研究者は悪いことばかりし ているみたいだということになってしまい、ますます一般の人々の受け取り方はよくない のではないかということです。  ただ、この論文のいろいろなご提案はアクセプタブルなところがいっぱいあります。中 央審査委員会をつくれば二重になるというのは当たり前のことです。ただ、あくまでも臨 床研究は進めていかなければいけないのだ、という大前提が周知されないと、よくこの委 員会でも出てきますが、ブレーキばかりかけて全然研究が進まなくなってしまうというこ とです。そこは、マスコミの方にも是非ご理解いただきたいと思います。  うちの大学で私も15年間やってきて、15年前と比べると申請件数はものすごく増えて います。これは、いいことだと思うのです。そういう方向の中で、いかに倫理規定を遵守 させていくかが大切です。言葉の上で網を掛けると言っても網は掛からないということに なってしまいますから、そこはうまくお考えいただきたいと思います。特にマスコミの影 響力は大きいですから、その辺はお考えいただきたいと思います。しかし、結論としては すごく参考になる意見がいっぱいありました。どうもありがとうございました。 ○金澤委員長 お二方からご意見をいただきましたが、増田さんから何かありますか。 ○増田参考人 確かに「違反」という文言を使うというのは多少抵抗があるといいますか、 当然暴き出すというイメージでやったわけではありません。まずは実態がわからないと議 論は先に進まないというところがあります。  最終的には法律の世界の中でやるべきだ、というのはこれだけではなくてほかの場面で もいろいろ感じるところではあります。日本人は法律を作らずにやってきたところもあり ますから、谷内先生もおっしゃったように、指針の中身がいかにわかりやすいか、なぜ守 るべきなのかという部分をまず示していくというのが重要なのではないかと感じます。 ○丸山委員 内容的には、いま指摘されたように学ぶところは多いのですが、408頁の冒 頭部分は非常にすっきり書かれているのですが、現状がこういうことで動いているのかと いう点に疑問を感じましたので発言させていただきます。  408頁の冒頭部分ですが、「臨床研究に保険が使えないのは当然だが、現在は研究と同時 期に行われる医療のすべてが自由診療の扱いになる。入院料など、基礎部分に保険を使え る保険外併用医療の形で、新しい医療技術を実施できるのは、薬事法による治験と、一定 数の実績に基づく先進医療制度だけである」ということで現実に動いているのか,疑問に 思います。  いちばん狭く見ても、製造販売承認された薬剤の適応外使用について、混合診療の実態 があるのではないかと思うのです。私の認識が間違っていたらご指摘いただきたいのです が、この実態に法律なり規則なりの文言の根拠があるかというと、たぶんないと思うので す。そういう点では、408頁の冒頭部分に書かれたとおりだと思うのですが、それで現場 が動いているかというとわからないのですがいかがでしょうか。 ○新木課長 具体的な問題はここというよりも、関係審議会の話になろうかと思いますが、 原則をちょっと補足させていただきます。臨床研究といってもいろいろなものがあります。 薬事法承認を通っているものもありますし、全然通っていない適用外みたいなものもあり ます。通っているものは保険の範囲で使えます。したがって、保険が使えないということ ではなくて保険はきちんと使える。  適用外のものについては、これまでいろいろ保険のほうの議論で、やり方はケース・バ イ・ケースでいろいろあるようですけれども、適用外でも広くエビデンスがあって使える ようなものについては保険の範囲で使えるものもあります。これは、併用ではなくて保険 そのもので使えるというものもあります。  もちろん一方で全く使えないものもあり、ここにお書きいただいたのは、そういう典型 についてお書きいただいたのだと思います。この議論は、そういう意味では保険の議論を する場でもありませんので、原則だけ簡単にご説明させていただいたところでございます。 以上のような概要です。 ○井部委員 この研究で私が関心を持ちますのは、394頁の施設ごとに異なる審査対象で す。右端に現場の問題というのがあり、「現場の問題−大半が扱わず」というのが393頁の 見出しに書いてあります。特に、特定機能病院などにおいては、現場が抱える倫理的な問 題というのは山積していると思うのです。特定機能病院でなくてもあるのですが、そうし たものを「扱わず」という施設が大変多いということがわかります。  393頁にも書いてありますように、そうした問題が多いにもかかわらず、こうした倫理 審査委員会では、研究倫理に特化しているといったような書き方になっています。こうし た現場の倫理的な課題を扱う機関が、ここでは「病院内部の委員会や一般組織の中で扱う 施設が多いようだ」と書いてあります。患者の治療などに直結する現場の倫理的な問題と いうのは、そうした倫理審査委員会ではない、どういう所で扱われているかという点につ いては、調査の時点では扱っていないのでしょうか。 ○増田参考人 そこまで細かいことを調べることはできていないのですけれども、倫理委 員会ができたきっかけが、徳島大学のケースでいいますと、特定の患者に対する体外受精 だったわけです。この何年間かと思うのですけれども研究倫理を主に審査してきた、倫理 審査委員会というものが多少様変わりしている部分があると感じます。  それは何かといいますと、先生がおっしゃったように、医療現場が抱えている問題性を 判断する組織というものの、その組立てがなされている最中だと感じています。実際にい くつかの大学病院や医療機関ではそういう形になってきていますので、倫理審査委員会が 抱える問題がもっと増えてくることになると思います。1つの解決策としては、宮崎大学 でなされているような、ベッドサイドの倫理委員会とか、Web上で現場の医師や看護師の 意見や悩みを聞くようなものもできてきていますけれども、これからはそういう役割を倫 理委員会が担っていくことになるということだと思います。  今回の調査の中では、なかなかそこまで実態は把握できていませんが、自由記述の場面 では多少出てきているかとは感じます。 ○前原委員 九大の前原です。私も読ませていただきまして、非常に内容の濃い、意義の ある論文だと思います。387頁に九州大学の項目がありますけれども、現在情報公開に関 しても、審査結果は委員会後すぐにマスコミの方に公開して対応しています。この調査の 期間が、2005年12月から2006年となっていますが、正確を期するためにこれは各大学に 送ったのでしょうか。 ○増田参考人 送っております。 ○前原委員 それに対して反応はありましたか。 ○増田参考人 特にいまのところ中身についてはありません。 ○前原委員 私の想像からすると、送ってきても見ずに、机の上に山積みという所もある でしょうから、各大学の項目のところは、各大学にしっかりと見ていただいて、これに間 違いがないかどうかということを確認していただくことも重要ではないかと思います。  また、いま小林先生からもお話がありましたが、私は第1回の委員会のときに、読売新 聞の記事が資料として出ていたが、見出しの「違反」という言葉が非常に目につきました。 そして「何々すべきではない」とか、「違反だ」ということが見出しに大きく載っていまし た。そのときに、アクセルとブレーキという点から言うと、ブレーキが強調されている印 象があります、ということを発言しました。  実際の医療の現場では、10人の胃がんの患者がいれば、10通りの治療法があって、現実 はそれで動いていっているわけです。医療というのは不確実で、その中でどう確実性を求 めていくかという中で、いろいろな臨床試験をして進めていくことは非常に重要だと思い ます。その中で、法的整備のところではいままで議論がありましたように、かなり慎重に 対応していただきたいと思います。  そこでブレーキだけが前面に出て、一体何ができるのかというところで縛りに縛りが来 て、というような印象も持ちます。そういう形で、臨床の現場の状況もよくご理解いただ いて、指針そして法的な整備ということも考えていくべきではないかと思います。 ○北村委員 倫理委員会の透明性ということで、どこまで公開するか。アンケートを取ら れた特定機能病院の中で、倫理委員会にかかった研究課題と、それの承認ということは、 インターネット上か大学や病院等々で公開は100%行われているのか、メディアの方が見 たらまだ不十分であるということを説明されたのか。  それから、同じような課題が全国でいっぱい倫理委員会にかかると思うのです。倫理委 員会の対応が、結果として70病院の中で大きく違っているのか、そういう分析までは進ん でいるのですか。 ○増田参考人 後半の部分はあまりよくわからないです。比較はできていませんし、なか なか難しいと思います。それは課題ごとに、北村先生がおっしゃったように、同じような ものがかかっていた場合の結果というのは個別に見ていかないといけないので、そこまで は調査はしておりません。 ○北村委員 こういうデータがあって、特定機能病院の倫理委員会はしっかりしなければ いけないと思います。そこで大きな結果の差があるのであれば、中央審議会のようなもの にかけたり、法律をかけたり、二重構造にしたりする。厚生労働省も、非常に重要なES 細胞とか、遺伝子治療とか、再生医療には二重構造を作っているわけです。しかし、いろ いろな多くの過程について、中央審議会、あるいは法的措置をせよというのであれば、こ れだけ違うのですよ、これだけ同じような課題において、各部分でバラバラですよ、とい うようなデータがないと、それは各施設の自主性というようなこともあろうかと思います。  ただ、公開という、透明性ということ、どういう判断をしたかということは、各特定機 能病院の倫理委員会はインターネット上で公開し、皆さんが見ることができる、あるいは 調べられるということにしたほうがいいのではないかと思いますが、実情はどうかという ことです。 ○増田参考人 1つには、承認案件のデータベース登録とか、臨床研究のデータベース登 録ということかと思うのですが、それはなかなか進んでいないようです。情報公開でいう と、公開の進捗率は高くないようです。 ○北村委員 確かに、倫理委員会の終了後に、国立循環器病センターでも、記者の方たち に、どういうことが行われて、どういうのを承認したか、ブリーフィングと言っています が、報告会をもっています。メディアの方と全くうまくいっているかというとそうではな くて、ときどき初期段階の結果のところを、あたかも決まったような記事が先に出たりし ます。内部においては、ああいうことは一切やめたいという委員もいます。  ですから、メディアとの対応においての透明性と、報告することの是非、妥当性の判断 において、世の中を中心にするのか、やはり特定機能病院の倫理委員会が権限を持って自 分たちの審査をして、それがいけないというデータがなければ、直ちに法制化せよ、ある いはすべて二重構造に持っていくというのは難しいと感じます。ものすごい数があります から実務上不可能であろうと思うのです。循環器病センターでも、1カ月に10件以上の審 査が行われています。大変重要なところは既に始まっている部分もあるので、その辺は医 療機関の自主性とか、お任せいただくことができるのかと思うのです。 ○金澤委員長 まだまだいろいろご意見はあろうかと思いますけれども、増田さんには、 我々に対して非常にいい情報をくださいました。また、逆にここでの議論というのは増田 さんにとってもいい議論になればよかったなと思っております。それからお願いなのです が、皆さんがおっしゃいましたけれども、大変重要なことをおやりいただいているので、 乗りかかった船ですので、これからもどうぞウォッチしていただいて、フォローしていた だければと思います。それぞれで進化しておりますので、ブレーキとアクセルという話も ありましたが、いろいろな考え方があろうかと思います。いかんと言って決めつけるだけ ではなくて、少しあたたかい目を含めてウォッチしていただけたらと思います。本日は誠 にありがとうございました。 ○増田参考人 ありがとうございました。 ○金澤委員長 いま議論の一部は議題3に活かしていただければと思います。議題2に移 りまして、各国の臨床研究に関する法制についての追加情報です。追加ですから、佐藤先 生からお願いできますか。 ○佐藤委員 この資料自体は事務局で用意していただいたものです。これは、アメリカの FDAのページに載っていたと伺っています。4頁からは、国際的にどういうものがあるか。 13頁からは、まずヨーロッパ全体としてどういうものがあるか。ご存じのとおりヨーロッ パというのはいろいろな条約を作ったり、EUの司令が出たりということがあります。いく つかの国について少し調べてみました。  33頁のいちばん下からリトアニアが始まりますが、ごくごく新しい法律の中で、これは EU司令を国内法化したものだと書いてありましたが、より詳しく研究というのはこういう ものであるという定義も置いておりました。  同じようなものとして20頁からデンマークがあります。2003年の法律の中で、これも EU司令を国内法化したものだという記述がありました。この中には、生きている人に対す る薬物の投与だけではなくて、生体あるいは死体由来のヒト由来試料、あるいは胚や胎児 を用いた研究も法律の対象となっており、EU司令よりずっと広いものが包括的に法律の対 象になっている、というのが特徴であろうかと思います。  北欧においては、それぞれバイオバンクと言われるものが整備されている、あるいは整 備の途中であるという点があります。この法律のいくつかもバイオバンクに関係している ものだろうと思います。ヒト由来試料が対象になっているというのは、まさにバンクを念 頭に置いたもので、第1回委員会の際に申し上げたとおり、イギリスではバンクだけが、 つまりヒト由来試料だけが対象になっているという点がありました。  45頁からのスウェーデンですけれども、2003年の法律です。この中には、EU司令を国 内法化したものだという記述は見当たりませんでした。専ら個人情報に関し、同意がなく ても医学研究ができるということを定めているようでした。  ここまでは、臨床研究というのはどういう要件の下に行われていいか、というかなり詳 細な要件を定める法律でしたけれども、イタリア、ノルウェーというのは、国の倫理委員 会、先ほど増田さんがおっしゃった中央の倫理委員会ということになるでしょうか、国の 倫理委員会を設置するための法律、ノルウェーの場合は地域の倫理委員会を設置するため の法律ということで、具体的な臨床研究の要件に入らないで、倫理委員会を設置する組織 法だけを定めるものもあるようでした。簡単ですが以上です。 ○事務局 資料3のいちばん最後の頁に、佐藤先生に全体をまとめていただいた解説とい いますか、少し類型を整理していただいた例を暫定版ということで付けさせていただいて おりますので、こちらも参考にしていただければと思います。 ○金澤委員長 法律がある国、必ずしもない国といろいろあるようです。日本は、参考に しながらいろいろ考えなければいけませんから、日本の状況をよく見ながら皆さんのご意 見をまとめていきたいと思います。 ○丸山委員 日本のことが書かれているのは57頁で、疫学研究倫理指針と、57頁の下の ほう、それから58頁にかけてです。57頁の下から2番目のいちばん右のところに、文科 省、厚労省で疫学研究倫理指針が書かれ、その下に厚労省で、まさにこの委員会で取り上 げられている臨床研究指針が書かれているので、信頼が置けることを確認できるのではな いかと思いました。 ○金澤委員長 ほかにないようでしたら、引き続き資料収集を続けていただきたいと思い ます。第3議題は、「臨床研究に関する倫理指針」の改正素案の概要(案)です。前回は、 改正に向けた骨子として、改正の方向性についてご意見をいただきましたけれども、今回 は前回のご議論を踏まえ、事務局が肉付けをした改正の概要の案を出しております。まず 事務局から説明してもらった後、皆さんのご意見を伺いたいと思います。 ○事務局 前回12月の当専門委員会において、いまご紹介いただきましたように、改正の 骨子ということでご議論いただきました。本日は、そういう議論も踏まえ、改正素案の概 要(案)ということで案が2つ付いていて少し見苦しいタイトルで申し訳ございませんが、 肉付けをさせていただいたものを作成いたしました。  資料4-(1)が文章で書かれた部分です。4-(2)はイメージをポンチ絵の形にしたものです。 これは、適宜両方ご参照いただきながら説明をさせていただきます。4-(1)の1の臨床研究 の現状のところは、これからの審議も踏まえて文章を作っていきたいということで、現時 点では作成予定という形にさせていただいております。  2.の臨床研究に関する指針の改正の方向性のところで、大きく4点書いております。1 番は、研究機関、研究者の責務の部分を明確にする。2番は、倫理審査委員会が重要な役 割を担うという部分、それに対する機能の強化。先ほど増田記者にご指摘いただきました ような、倫理審査委員会の機能強化としてのチェック体制、それを支援していくような体 制の強化を主眼に置いてはどうか。3番は、GCP等の薬事制度、臨床研究というか疫学指針 の状況も踏まえたような形で、一定のリスクという部分を考慮に入れたような形での整備 も必要だろう。あと疫学指針等、特に観察研究、侵襲性を有しないような研究についての 整合性という部分の見直しが必要だろう。  具体的な中身は、3.の倫理指針改正の概要についてというところです。一応ここは第1 から第4まで、いまの章立てに沿って改正点についての肉付けしたものを書いています。3 の倫理指針の概要の基本的な考え方という第1の部分ですが、先ほどの方向性を達成して いく上で、定義上介入研究と観察研究というものをこのような形で位置づけています。予 防、診断、治療、看護ケア、リハビリ等ということで、それぞれの介入という部分を(1)で 定義して、(2)では観察研究というものはどうかという部分。2頁の(2)は、医薬品・医療 機器等の承認の範囲内の使用であって、かつランダム化、割付等を行わないようなものに ついて、その記録ですとか結果等を利用するような研究は介入研究ではなくて、観察研究 という考え方を取ってはどうかということが書いてあります。  第2の研究者の責務です。一部(P)と書いてある部分がありますが、このあたりはまだ 主語を何にするかとか、法令文章になっていない段階で、仮置き的な形で案を作っている 部分で、こういった点もご審議の中でいろいろと詰めていただければと思います。一部記 載にそういう部分があります。研究者の責務についてはその補償が(1)のいちばん最初に来 ています。特に介入研究において、これまでは指針全般として補償の有無について説明と いうことでしたが、介入研究の場合は補償の内容というものを保険等の手段等について、 事前に説明をするというところを具体的に書いています。(2)の介入研究の臨床研究につい ては、登録データベースへの登録等により事前に公表する。このあたりの公表に努めるか どうか。現行では努めるという形になっていますが、どのくらいの湯加減で書かせていた だくかという部分は(P)です。あとは、重篤な有害事象に対する報告です。  (2)臨床研究機関の長の責務というところで、基本的には補償等も含めて臨床研究とい うものは、機関の長の責務の下で実施をすることを明確にしていただく。あとは、医薬品・ 医療機器に関する介入研究、これは前回川上委員にご指摘いただいた部分ですが、研究計 画を事前に厚生労働省等に報告をする。ただ、ここは先ほどの研究者の責務のところで、 登録データベースは研究者の責務となっているわけですが、厚労省の報告の部分、機関の 長に主語が書いてありますが、このあたりの調整等については今後議論させていただけれ ばということで、ここも(P)という形で置いています。(2)は、いろいろなフォローアップ について増田記者の論文でもご指摘をいただいていますが、何らかのいろいろな手順やフ ォローアップの体制というものを示していく必要があるのではないか。(3)は、そういう部 分において自己点検というものを研究機関においても、やっていただく必要があるのでは ないか。(4)は、特に重篤な有害事象または重大な指針の不適合というものを知った場合に は、倫理審査委員会に速やかに諮って対処する。そして、それをまた厚生労働省にもご報 告をいただくようなことを求めていってはどうか。(5)は、厚生労働省が行う実地及び書面 等による適合性に関する調査にもご協力をいただく。  第3は、倫理審査委員会の部分です。倫理審査委員会については、いろいろな要件に合 致していること等、厚生労働省に年1回ご報告をいただいてはどうかです。(2)は、実際 にそのご報告いただくような内容が書いてある。(3)は、倫理審査委員会、研究機関が設 置するものというものがこれまでも大原則になってきていましたが、ここは薬事評価の GCPと同様にもう少し倫理審査委員会、外部のものを中央で行われるようなものも含めて という格好になると思いますが、そういうところの倫理審査委員会も利用できるようにす るという部分を明記してはどうか。(4)は調査の協力という部分があります。(5)は、こ れも公表に努める。自ら公表するという部分の公表規定。(6)は委員の研修に努めるとい った部分があります。(7)は、これまで疫学指針には軽易な事項の審査についての迅速審 査規定というのがありまして、こちらの臨床研究指針にも同様の規定を置いてはどうかと いうのがあります。  (8)は、前回こちらの専門委員会でもご審議をいただいた部分ですが、臨床研究機関の 長については、必要に応じて出席することはできるけれども、委員になること並びに審議 及び採決に参加することはできないこととするということです。基本的に、考え方はGCP と同じ考え方としていますということと、先ほど冒頭に申し上げました機関の長の責務と いう部分をより明確にするということで、ここは役割分担という研究機関の長と倫理審査 委員会の役割というものをより明確に分ける形で、このような整理をしようと思っていま す。ただ、この臨床研究機関の長は各機関ごとに、どういう立場の方がなられるかは必ず しも委員長だけではないケースもありますので、そこは各機関でご判断をいただくような 整理でどうでしょう、ということで(8)を書いています。  第4のインフォームド・コンセント以下は文書編をご覧いただくと少しわかりにくい部 分もありますので、4-(2)のイメージのポンチ絵をご紹介しながら説明します。ポンチ絵の 4頁に2×2の表がありまして、委員の先生方はピンク色の表のヘッダーになっていますが、 「介入と侵襲による同意取得」ということで、第4のインフォームド・コンセント以下の 部分をこの表で説明します。こちらは、疫学研究の指針での整理というものを踏まえて、 それをこちらの臨床研究指針に適応する形で整理をしています。基本的には、先ほどご紹 介しました介入研究、観察研究という切り口と、侵襲性を有する行為、採血以上の行為を 想定していますが、それを2×2の表という格好になっています。基本的に介入研究につい ては、侵襲性を有する場合は文書同意で、書面で被験者の方の同意をいただくということ になります。侵襲性を有する行為が含まれないような場合は、文書同意が原則ではありま すが、同意記録でも可という整理になっています。観察研究については、人体試料を有す るようなものについては、文書同意が必要な原則の部分もありますが、カルテ等の記録を お使いになるような、つまり人体試料がなく既存試料を用いるようなケースについては、 必ずしも同意を要しない。これも疫学指針での整理をそのまま準用して、この案を書いて います。  ポンチ絵の5頁です。研究開始前に得られた資料の同意の取扱いです。こちらも前回の ご審議で、いろいろとわかりにくいというご指摘をいただいた部分ですが、基本的には同 意の取得というものが前提にあった上で、同意の取得が困難な場合ということではありま すが、これも同様に疫学研究指針の整理を踏まえて作成をしていますが、人体試料におい て3つのケースがあるだろう。(2)の1つ目は、既に匿名化がされているようなものという ことで、連結可能匿名化であっても対応表を有していないようなケースについては倫理審 査委員会の承認と、研究機関の長の許可があれば資料にできるという要件を定めています。 2つ目は、匿名化はされていないけれども、「当該臨床研究を明示しない同意」という少し わかりにくい文言があります。これは包括同意のことを意図して書いていますが、こうい う場合は基本的に手続は(1)と同じですが、その前提としては利用目的等の公開がされてい ること。そして、もともとの包括同意と相当の合理的関連性のある研究であるという前提 が2つ付け加わっています。3つ目は、匿名化包括同意等がなされていないようなケース というような部分ですが、資料の目的の公開、被験者が拒否できる状態であること。公衆 衛生の向上のために特に必要という前提条件がこの倫理審査委員会の承認と、機関の長の 許可の上にあるというような形です。人体試料以外の資料は、前の頁の同意と考え方は同 じという形でこの案を整理しています。  先ほどの文書編の概要に戻ります。こういった点をこちらの概要には書いていますが、 保存資料については同様に、保存期間等についての規定というものも4頁の上の(3)に追加 することとしまして、これも疫学指針での対応と同じような形にしようという案を記載し ています。同意については以上です。あとは関連する論点として、倫理指針の規定の実効 性の担保というものを先ほど来、研究費の不支給等のペナルティーもありますが、そうい う部分を検討すべきではないか。あとは、指針の周知は非常に大事な部分で、このあたり をどうするか。また、倫理審査委員会の事務局費用の負担等をどうするか。あとは、関係 省庁の連絡体制。また、指針に従わない研究者に対する機関内での処分等をどのように的 確にやっていただくかといった部分についても、これは指針と中身には直接関係するわけ ではないですが、周辺の体制ということでご検討いただく必要がある事項として書いてい ます。今回の改正の概要について、事務局からの説明は以上です。 ○金澤委員長 ありがとうございました。かなりたくさんの話が出ましたが、いかがでし ょうか。皆さん方のご意見を伺って自由討論で結構ですが、またこれをポリッシュして良 いものにしないといけないですが、ご意見をいただきたいと思います。 ○小林委員 よろしいですか。この資料の先ほど表が出ているほうで説明していただいた もので、匿名化という言葉が出てきました。いまのご説明では4頁の上の「匿名化(連結 不可能匿名化又は連結可能匿名化であって対応表を有していない場合)」となります。しか し、連結可能匿名化であっても、対応表を有していないものを連結不可能匿名化と言うの ではないかと思います。つまり、匿名化という問題と連結可能、連結不可能匿名化という のは、同一のステップではないと思うのです。いまのご説明ですと、匿名化イコール連結 不可能匿名化と言われたというような気がするのです。 ○事務局 この部分は、疫学指針の記載が連結不可能匿名化又は連結可能匿名化であって、 対応表を有しないという形になっている部分もありまして。 ○小林委員 指針はそれでいいのですが、今回は全部それを見直すという考えがあるので しょうから、ここがよくわからないのです。 ○金澤委員長 具体的に何なのでしょうか。連結可能匿名化であって、対応表を有してい ないというのは何を意味しているのだろう。 ○小林委員 普通、臨床研究はみんな匿名化にしますよね。例えば、私のように小林真一 だったらそれをS.Kとしたり、記号化番号化して匿名化しますよね。これは匿名化だけの 話ですよね。それと、この小林真一がS.Kであるという表を作って動くと、これが連結可 能の匿名化になるわけですよね。だから、匿名化するという問題と連結可能不可能という 問題はちょっと違う問題を含んでいるのですが、そうなってくるとあくまでも連結不可能 匿名化ということを匿名化と言っているのかという話です。今の説明ですと、治験等でや られているものは全く匿名化ができていないですかね。 ○丸山委員 治験のほうはデータの正確性というか、同一性の確保を重視していますので、 匿名化はできていないという認識ではないかと思います。それから連結可能匿名化、不可 能匿名化については、例えば病院で試料を収集してそれを研究機関に提供される場合、病 院のほうで匿名化がなされてサンプルに番号なりコードなりが振られ、そのコードに対応 する提供者は誰か、患者なり協力者は誰かという対応表を病院は持っているけれども、研 究機関、研究者にサンプルが提供された場合に、研究者は対応表を与えられずにコードだ けを与えられている試料について、研究機関では連結不可能匿名化、病院では連結可能匿 名化という、誰が関わっているかによって、連結可能、不可能を違う呼び方にしていると いうことです。ここで人体試料で匿名化されているものというのは、全く誰も対応表を持 っていないか研究機関で対応表を持っていないけれども、提供医療機関では辿ることがで きるものを念頭に置いているというふうに、私どもは理解しています。 ○小林委員 こういう表記が現場ではわかりにくいことだと思いますが、大学病院でサン プルを用いて研究する場合は、それの匿名化はできますよね。連結可能匿名化も個人情報 管理者がやればいいことだと思いますが、そうすると個人情報管理者、研究者はそれをど うするのかという話です。もしこのような生体サンプルを用いる研究では匿名化というの は連結不可能匿名化だという定義ならばそれでもいいですが、分かり難いですね。 ○丸山委員 それで、追跡情報が追加されない場合でしたらすっきりとしますが、コホー ト研究などで対象者を追跡していくものについては、研究者のほうに誰の試料かというの がわかっては個人情報の保護の点ではまずかろうということですが、しかし試料の提供者 がその後病気を発症したか、あるいはどういう転帰を辿ったかというようなことをサンプ ルの持主の情報として追加できるようにするためには、完全に匿名化するのは研究上難し いであろうということで、そういう場合も研究者の側に対応表がなければ完全な連結不可 能匿名化と同じような扱いを認めていいのではないかということです。 ○小林委員 それは、あくまでも連結可能匿名化と連結不可能匿名化という話をしている わけですよね。可能か不可能という話をしているだけで、匿名化(連結不可能匿名化又は) と書いてくると、これだとすべて連結不可能匿名化しているものを匿名化と取ってしまう わけですよね。そういうことではないですか。私は疫学研究を考えれば、必ず疫学研究と いうのは戻れるものも必要だと思います。けれども、これをやってしまうと匿名化したら 全部戻れなくなりますよということです。 ○丸山委員 いま先生がおっしゃった匿名化は、誰のものかがわからなくなるものですが、 この匿名化の言葉の中にコード化というのも入っているのではないかと。名前に換えて、 番号なりコードを付す。全く識別できないようにするものもあるでしょうし、特定の個人 に一見して帰することができなくなるものもあるのではないかと。 ○金澤委員長 確かに、この問題は少し大きな問題で、本来は匿名化という言葉ではなく て無名化とコード化でよかったのです。ぐちゃぐちゃして分からなくなってしまって、実 際上は小林先生がおっしゃるように、医学の世界のほとんどの例はコード化なのです。そ の辺も、受け取り方がきちんと間違いのないように受け取れるような指針にすべきだと思 うので、この会がそういう方向でやろうということだったらよろしいと思います。ですか ら、いままでの言葉にこだわらずに、きちんとした意見を出していただきたいと思います。  もう1つは最初にやるべきだったのですが、谷内先生から書類をいただいて追加のご意 見があったので、それを済ませてからにしましょう。どうぞ。 ○谷内委員 前回、金澤委員長から言い足りなかったことを追加で述べていいと言われま したので、資料5に事務局に送った資料をコピーしています。包括同意の問題が前回も議 論になったと思いますが、あまり良い言葉ではありませんが、今回は指針の改正案では対 応していただきたく思っております。蛋白、mRNA、あるいは網羅的な解析に関してどう対 応するかに、現場で意見が分かれています。そういうことで、前回は疫学指針で対応した らどうかということを丸山先生におっしゃっていただきましたので、是非、これを書いて いただきたく思います。今回は事務局で対応していただいて、非常に助かっています。私 は研究者ですが、これで良いかどうかが研究者以外の方がアクセプトしていただけるかど うかという点を確認したいと考えています。そういうことで、この問題は非常に大きな問 題です。  2つ目は、研究費ペナルティーの問題です。いままでは一切罰則がないガイドラインで したが、私が関係している厚生科学研究の利益相反に関する委員会では、一応この研究費 ペナルティーを付ける方向で考えています。このときに、委員会で話し合ったことという のは間接経費を手当てしていただいて、事務局体制をきちんとしていただきたいことを確 認して了承してきた経緯があります。そういうことがありますので、可能であれば間接経 費の充実を是非要望として取り上げたいと考えています。これは、かなり難しい問題だと 思いますが、間接経費の充実の必要性というのを確認したいと思います。そうでないと、 厚生科学研究費の利益相反から始まったということで、たぶん各研究機関で相当クレーム が出てくる可能性が高いのではないかと思います。  それから、研究費ペナルティーが機関か個人かというのは、前回の委員会では明確でな かったと思います。利益相反の場合は、私はまだ最終確認をしていませんが、機関責任だ ったと思います。研究公正は個人、あるいは機関と個人ではないかと思います。これはど うあるべきかを一度検討していただきたいと思います。あとは補償措置ということがあり ますが、前回は補償措置の明記と補償措置の有無というのがあって、今回説明がありまし たが保険を使って補償するということで、ただ明記すればいいのかどうか。あるいは、一 部の臨床研究でも補償がある場合があります。例えば数が多いせいか、運動会において調 査研究する場合は補償制度があるのだそうです。大した金額ではなくて、運動会を実施す る場合は補償制度があります。運動学の先生が運動会時に研究を行う場合は補償が付いて いるけれども、一般の臨床研究では補償が付いていないということがあるそうです。私自 身も、補償を付けている場合もあることは知っていますが、通常は対応していません。無 過失責任の補償制度を何らかの形で作ってもらうことが可能かどうか。例えばフランスで はあると書いてあるのが今回の書類でも出ています。もし、そういうのがないのであれば 補償に対する研究費の弾力的な使用です。例えば研究費から健康保険の上乗せ分を支払え るかどうかということで、これもまだ実例がないので私自身も不確かなところがあります が、補償措置のあり方についてご議論をお願いしたく思います。  倫理委員会の構成に関して前回も議論に出ましたが、外部委員の取扱い、特に総合大学 の場合の部局の違う文系、理系の委員に関してある程度定義しておいていただきたい。Q&A でもいいのですが明確にしておいていただくとありがたいと思います。治験では、局長通 知を準用している場合があると思います。  それ以外には、今回の指針改正で、総合大学ではなるべく責任体制を一元化してほしい というのは前から言っていることで、大学のことばかりで申し訳ありませんが、部局が違 う場合に、それぞれ責任体制を総長の下にある程度明確にしていただけないかというのが 私からのお願いです。以上です。 ○金澤委員長 ありがとうございました。いろいろ大事なポイントを述べておられます。 せっかくのご提案ですので、谷内委員のこのことをまずはきっかけにして、ご意見をいた だきたいのです。問いかけられています。包括同意の話、研究費ペナルティーの補償、倫 理委員会の委員の構成は、確かにポイントだと思います。  質問があります。運動会はスポーツ科学のことですか。何のことですか。 ○谷内委員 要するに、競技会です。例えば、大学の中で競技会をすれば、その競技会は 補償措置があります。運動をしているときに突然死する人もいますので、それに合わせて 研究をすれば、それは補償措置が付くという理解です。ちょっと怪しい考え方です。 ○金澤委員長 そういう意味ですか。もう1つ質問ですが、研究費ペナルティーのことと 間接経費の充実がちょっとつながらないので、よくわかりません。そこを説明してくださ い。要するに、間接経費を付けることと研究費ペナルティーはつながっているのですか。 ○谷内委員 違うことですが、研究費ペナルティーの話が出ていたので、そういうことで あればある程度間接経費の充実を含めて、事務局体制を充実させなければいけないと考え ております。 ○金澤委員長 間接経費についてはやっているのでしょ。ちょっと説明してください。 ○事務局 現在、3,000万円以上の研究については間接経費を付けていまして、前回私も 平成20年度からその制限を撤廃するということを申し上げたのですが、それは間違ってい ることを厚生科学課から指摘されまして、平成20年度からこの限度額を下げて2,000万円 以上にするそうで、基本的にはそういった間接経費をこういう倫理審査委員会や利益相反 の委員会の運営に使えるということではあります。 ○金澤委員長 これは、本省がどこまで熱心に考えるかにかかっています。 ○事務局 熱心に考えます。 ○金澤委員長 だから、引き続き下げる方向にね。研究費ペナルティーと結び付けるのは、 ちょっと難しい話ですから。わかりました。ほかにご意見はありませんか。 ○北村委員 2頁の真ん中あたりの(1)の(2)の介入研究の臨床研究計画を事前に公表する ことというのは、先ほどありました透明性の問題とも関係しますが、これは介入時点だけ でよいという意味ですね。そして、その登録データベースへの登録というのが具体的には わからないのですが、私どものところでは公開用のホームページ上に課題名と内容と倫理 委員会の承認程度を載せていますが、登録データベースへの登録というのを教えてくださ い。  もう1つはそれに関係しますが、その下の(2)の(1)「臨床研究機関の長は、医薬品・医 療機器に関する介入研究については、研究計画を事前に厚生労働省等に報告する」と書い てあります。この介入研究の場合には、報告する等というのはどういう意味で、具体的に 何を考えていますか。例えば、各施設の倫理委員会で承認された課題を届けて、厚生労働 省が駄目ですということがあるのかどうか。あるいは審議会を意味しているのかどうか。 ただ単なる届出というのであれば、是非ともそのときに臨床研究研究費のこれは実際は大 変大きな問題で、倫理委員会の中でのマターと少しずれるかもしれませんが、その研究が 例えば保険外併用療養費の使用を認めるのかどうか。そういうことも含めて、厚生労働省 に報告して相談するという意味なのか、もう少し事務局の考え方をきかせてください。 ○事務局 最初の登録データベースは、もともとはICMJEと言いまして、国際的な医学雑 誌の編集者協会がインターネット上などのデータベースに事前に登録したものについては、 論文審査においてアクセプトをするというルールを作りまして、それがいまWHOのルール になってきています。日本国内においては、そのICMJEがいま認めている登録データベー スは東大のUMINが設置しているものがありまして、それ以外に日本医師会が設置している ものや日本医薬情報センター、JAPICが設置しているものと、国内には3つのデータベー スがありまして、こういったものにご登録をいただくことを想定して、そのような記載に なっています。  2つ目の医療機関の長の報告ですが、厚生労働省等の「等」は、いま具体的に申し上げ るのはなかなか難しい部分ですが、厚生労働省または厚生労働省がこういう事務を委託す るような機関がもし発生する場合に、まだ現時点ではどこを想定ということではありませ んが、事務を委託する機関等も念頭に入れて「等」と書いていまして、この報告以上のこ とを何か求めているわけではないというものです。また、保険併用等については冒頭に新 木課長からご紹介を申し上げましたが、一方で臨床研究といいますか、そういう部分での 保険併用については別の審査システムも設置されることも検討しているところで、そこの リンクは追って詰めたいと思っています。以上です。 ○北村委員 そしたら、最初の登録データベースの登録と厚生労働省等の報告とは、どう いう関係になるのでしょうか。両方せよということですか。 ○事務局 ここでは、両方せよという形の案になっています。 ○北村委員 事前というのは、その研究をスタートする時点ですね。ですから、各施設の 倫理委員会では既に承認済みという形になりますね。 ○事務局 そうです。 ○北村委員 わかりました。 ○金澤委員長 いま北村先生がおっしゃった最初のほうは、いまは「努める」になってい るのですね。 ○事務局 はい。 ○金澤委員長 「努める」のほうが良くないですか。 ○事務局 現状は、このデータベースを想定した記載になっていませんので、それにデー タベースを入れたということです。 ○金澤委員長 そういうことがあるので、まずはやってみるほうからいかないと。何でも かんでも強制すればいいというわけではありません。  それと余計なことですが、データベースは先ほど北村先生がおっしゃったけれども、こ れだけは何だかわからないわけです。だから、これを書くならいま3つと言われたけれど も、それを書かないといけない。別のところでもいいから、きちんとわかるようにしてく ださい。ほかにどうでしょうか。 ○藤原委員 がんセンターの藤原です。先ほどの谷内委員のペーパー案に1つ。補償のと ころは非常に大事だと思っていまして、いろいろな先生方は補償を臨床研究に入れなさい ときれいなことをおっしゃいますが、実際にその補償を引き受けてくれる、治験保険とい う治験の中での補償、無過失責任をという話をすればそれを受けてくれる保険会社が片方 ではありますが、この治験を外れる臨床研究について補償を引き受けてくれる企業が本当 にあって、保険の費用はいったいいくらかかるのかが事前にわからない段階で、この倫理 指針が独り歩きしてしまうと制度が破綻してしまうので、損保ジャパンや東京海上でもい いのですが、その人たちに本当に大数の法則でこういう臨床研究が補償でやっていけるの ですかというのを直接聞いてみたいと思いますが、その辺は何かありますか。 ○事務局 そういったご要望もありまして、ここについては少し関係者を呼んだ形での討 論というものも、次回以降に事務局のほうで検討しようと思っています。 ○金澤委員長 ある程度、下地を作っておかなければいけませんね。事例も含めてね。 ○前原委員 4頁の(2)の保存資料で、谷内先生の包括同意とも関わってくるのですが、 資料4-(2)の4枚目のピンクの紙の介入と侵襲による同意取得の(案)の侵襲性というとこ ろでまず確認です。手術のときに採った組織というのは、研究するために採る組織ではな いので、侵襲性を有しない行為であるということはよろしいですか。 ○事務局 そのあたりは少し事例ということで研究をさせていただければと思いますが、 問題点はよく理解しました。 ○丸山委員 その次の表の研究開始前に得られた資料になると思います。手術で採られた サンプルを研究のために使うということですから、研究の段階では既に臓器組織が得られ ているので、こちらの整理でご覧いただいたほうがよろしいかと思います。 ○前原委員 もう1つは、保存資料で(3)に資料の保存期間等のことが文章として規定され ていますが、現実はその組織を採ってそこから包括的に同意を取って、RNAを採取してそ のバンクを各施設で作るわけです。そのバンクというのは、たぶん半永久的な保存である。 そして、その中から実際にいろいろな研究をスタートするときに、倫理委員会にかけて審 査を受ける中で、(3)で試料の保存期間等の臨床研究機関内の規定を整備し、匿名化し、廃 棄することとするとなっていますが、現実はそれが終わってもその検体はそのままバンク として存在して、廃棄することはあり得ない。その規定として、いままでの疫学研究のほ うにも研究期間が終わって保存する場合は、その研究機関の長に試料の名称や保存場所を はっきりさせれば保存できるということが書いてありますので、それで対応できるのかな と思いますが、一方でその保存期間を過ぎた試料については破棄することとするという文 章は、具体的には観察研究についてバンクを使って申請をしてやる研究には現実的にあり 得ないことになりますが、そこはどうですか。 ○丸山委員 ここは、バンクなど永続的な保管機関が設けられる場合は保存期間云々とい うことは考えていません。そうではなく、一定の目的で採取した試料をその目的のために 研究で使う、1回限りというか、回数や期間に限定のある研究を念頭に置いてこの保存期 間は考えています。現実にはバンクのように永続的に保管される場合もありますが、教室 内で保管されていて担当の教授の先生がやめられたら、ちょっと管理が不明確になるとい うようなものもこれまでありましたので、そういうのは研究期間を定めて研究が終われば きちんと廃棄というのを原則にしようということですので、バンクの場合には適用のない 規定というか考え方だと思います。 ○金澤委員長 どうですか。いまのことでも結構です。私は、人から採ったサンプルを廃 棄するのが、ある意味では当然という考え方は反対です。基本的には大事なものですから、 バンクに入れるのが原則ぐらいにしてもらいたいと思っていますが、こうやって並列され てしまう、それから申請書に期限を付けてやってしまうと、廃棄しなければいけないので はないかと思うのが非常に個人的には嫌なのです。同じ比率ではないような形にしてもら えないかな。 ○丸山委員 これも考え方がいろいろあって、提供者の方はどちらを一般に望むかという ことに関わりますが、貴重なサンプルを提供したので、いつまでも使ってほしいと考えて おられるのであればそう処理するのが望ましいでしょうし、一定の研究計画に賛同されて、 そのためになら提供するということで提供された場合であれば、いつまでも保管するとい うのはまずいのではないかというので。 ○金澤委員長 それは、同じ比率で受け取られているのです。それが気になって仕方がな いのです。 ○丸山委員 それで、どちらをデフォルトの扱いにするかも難しくて。 ○金澤委員長 現場の意見を聞いてみたらいいのです。 ○小林委員 私も肝臓をバンクとして研究しているのですが、基本的にICを取るときに、 これはそうやって使いますよというICを取るか、あるいはこれは研究が終わったら廃棄し ますよというICを取っているはずなので、ここのところの項目は保存試料の利用ですから、 あくまでも保存というのを大前提にしたところであるのに、次の頁の(3)のように保存期間 を過ぎた試料については廃棄するというのもおかしな話で、ここは文章的におかしいので す。丸山先生がおっしゃっているのは、一つひとつに完結する試料で試験の同意のときに、 この試験が終わったらこの試料は廃棄しますという同意を取っているものは保存試料では なくて、それは捨てるべき試料であって、もともと包括的なものとか何かで取って置いて 今後使いますよというのが保存試料ということだと思いますから、その場合はこういうふ うに廃棄するのが原則になるのはおかしくて、もともとこういう手続をして取って置く形 にしないと意味がよくわからないように思います。 ○丸山委員 おっしゃることはよくわかりますが、試料などの保存される所がしっかりと 基盤が確立されたバンクであればいいのですが、教室内で設けられたバンクのような場合、 教室の改廃などがあると保管試料の取扱いはどうすべきか、などの点で迷うところがあり、 そのあたりも手当てができるようにという感じなのです。 ○金澤委員長 ほかにいかがですか。 ○北村委員 確認します。先ほどご説明いただいた登録データベースは、世界のトップジ ャーナルに、臨床研究成果を発表する場合の登録システムとしてスタートしているのです が、現状は我が国、私どもの所で臨床研究と称して倫理委員会で検討しているのは、そん なレベルに達しないものもたくさんあります。例えば読売新聞がご指摘されたような手術 支援ロボットを使用した臨床研究というようなものなどは、6つぐらいのトップジャーナ ルに載せるようなものではなく、国際的な意義もほとんどないようなものです。そういう ものも倫理委員会で審査するに当たって、「これを登録すること」としてしまいますと多く が対象に入らないと思います。 ○金澤委員長 そこは「努める」にしましょうと先ほど申し上げました。 ○北村委員 もう決まったのですか。 ○金澤委員長 決まったわけではないのですが、後押しをしてくださったということです ね。 ○北村委員 それは研究者の判断で、そうすべきものはしてもらうという形にしていただ ければね。わかりました。よろしく。 ○金澤委員長 いまのご発言は、あまり大したことのないことをやっているように言われ ると困るけれども、研究は大事なことをやっていらっしゃるということだと思っています。 ○北村委員 6つぐらいのジャーナルですね。 ○金澤委員長 そうです。 ○北村委員 世界のファーストクラスのスタディーではないと駄目ですね。 ○金澤委員長 何か追加はありますか。 ○事務局 ICMJEの基準はWHOの基準になりまして、WHOは被験者保護という観点からもう 少し広範にという感じになっていますので、努めるという部分もありますが、そこもご配 慮いただければと思います。 ○廣橋委員 確かに、トップジャーナルが優れた臨床研究というのは登録して実施すべき だということで始まったのですが、これは倫理性の問題ですから、優れた研究だけを登録 するという趣旨ではないのではないかとも考えられますよね。 ○北村委員 そしたら、全部これを受け取ってもらえるのかな。例えば、1施設で1カ月 に10個ぐらい出てくるような研究でもうけいれられるのでしょうか。 ○新木課長 先ほどからご説明しましたように、いまWHOでは現在進行系で議論されてい ますので、WHOの基準というのが廣橋先生がおっしゃるように1つ大きな倫理の話ですの で、世界的な動向というのは参考にしなければいけないなと。また、登録データベースは その動向を受けて、すべてを登録するという方向で議論があれば、それを受け入れられる キャパシティーというか、能力のあるようなデータベースとして運用するように3つのデ ータベースをご紹介しましたが、我々からも働きかけていく必要があるなとも思っていま す。 ○前原委員 現実に日本の中で全国規模の臨床試験、あるいは地域の臨床試験においても、 いまお話された形で研究をスタートさせることの意義は徐々に浸透しています。私どもが 係わっている地域の小さなスタディーも、公平性をもって実施していこうという認識は次 第に高まっているのではないかと思います。 ○金澤委員長 「努める」が「そうする」となる時期が来ることを望みますが、最初は難 しいと思います。ほかにご意見はありますか。 ○藤原委員 2点ほど。以前、井部先生が看護研究の位置づけを介入試験の中でどう考え るかをおっしゃっていたのですが、当院でも看護師のいろいろな看護研究に対してデザイ ンとかサンプルサイズの設定とか、いろいろな所でアドバイスをする機会が最近増えてき ています。今回は、介入の定義の中で予防、診断、治療、看護ケアと特出ししていますが、 医学研究の中に看護研究も全部含めるように思っていますが、看護研究の臨床研究倫理指 針との関係というか、看護研究であっても臨床研究倫理指針の対象に含まれるのか。それ とも、看護研究というのは医師のやる研究とは少し違うから対象に含まれないのかが、頭 の中で整理できていなかったので、井部先生か事務局でも教えていただきたいのです。こ の表の中での看護研究の位置づけです。 ○事務局 まず、この指針の成り立ちですが、指針のもともとの定義の臨床研究はかなり 広く医学研究を含む形になっていまして、そこでは当然看護研究もこの指針の対象にはな っているということです。あとは、看護研究という場合も本当にケアを行うような看護研 究と、観察的な部分と両方が入っているだろうということで、ここではあえて看護ケアと いう形で治療に並ばせていただいたような例示をしている趣旨です。 ○藤原委員 去年のニューイングランド・ジャーナルの6月28日号の臨床試験登録に関す るエデイトリアルを見てみると、WHOの臨床試験の定義ではヘルスリレイテッド・イン ターベンションのところにプロセス・オブ・ケア チェンジとかダイエタリー・インター ベンションとか、かなり侵襲性の低い、パッと思うと健康食品の投与とか、患者のケアの チェンジもヘルスケアのインターベンション、介入に入るという記載があったので、今こ この臨床研究倫理指針はわりと医薬品とか医療機器を使った介入という侵襲性の高いもの に限っているように思いますが、もう少し広めた定義づけがいいのかなと思ったのでお聞 きしました。 ○金澤委員長 どうですか。確かにそうかもしれない。 ○谷内委員 いまのに関連して、個別の症例研究みたいなものをどう扱うかについて、一 度この倫理指針の中に入れるか、入れないかというのをご議論いただければありがたいで す。 ○金澤委員長 そのとおりですね。実はそれをやろうと思っているのですが、時間がなく なってしまったのでまたにせざるを得ないけれども、いまの点は大変大事なポイントだと 思います。1つは、いま藤原委員が言われたことは看護研究に対して、確かに明らかに介 入の部分があるわけです。それをどうするかは考えないといけないと思います。いままで の中に入っていないでしょ。あまり想定していないのではないのかな。 ○事務局 もともと、臨床研究指針には介入研究という定義はありませんでしたので、分 けていなかっただけです。 ○金澤委員長 それぞれの施設で拡大解釈をしてもらってやるというのでも悪くないのか な。その辺も含めて、また議論していただきましょう。  もう1つは谷内先生がおっしゃったことと関係しますが、2頁のトップ、1頁の続きです が、「疫学研究は集団としてのデータを取り扱うであるのに対して、臨床研究ではより被験 者個別的なデータを扱うものとする」ということだけれども、当然ながら臨床研究でも集 団として扱う場合があるわけですよね。集団というか、複数のね。そういうことと先ほど の谷内先生がおっしゃった、患者1人の個別の研究の議論というのはこれからかなり大事 なところになってくる。ポンチ絵の3頁の度真ん中の(4)「患者のカルテ情報等による個別 的研究」というのがあります。この位置づけが大変難しいと言えば難しいですね。 ○事務局 「個別的」と書いているところが、おそらく味噌なのではないかと思います。 ご議論いただければと思います。 ○金澤委員長 これを我々としては、ある意味では「症例報告を含む」とイメージして持 つけれども、本当にそれでいいのか。では、症例報告を全部審査委員会でやらなければい けないのかとか、いろいろあります。その辺の切り分けというか、それを是非やっていた だきたいけれども、今日はこの問題に入るには時間がなさすぎます。また次の機会という ことにしましょう。ただ、その前ということもないのですが、そのためにもいままでのと ころを、実際に使うのは臨床系の研究者だと思いますが、我々だけがここで議論をしてい て先に行ってしまっても、結局実際の現場の方々が置いてけぼりをくうのはものすごく心 配だし、まずいと思うので、いまこういう議論をここまでしたということを臨床系の学会 に投げかけてみて、いまの時点で少し意見をもらうというのはどうかなと思いますが、い かがでしょうか。指針というのは、ある意味ではお作法みたいなもので、形だけ作っても 守ってもらわなければどうにもならないので、先ほどの増田さんの話ではないけれども、 情報は差し上げておかないと「自分たちは置いてけぼりをくった。あいつらは勝手にやっ ているんだ」と思われても困ると思いますが、いかがでしょうか。少し情報として、いま の時点で中間的ではあるけれどもということです。その後、どういうのを流すかに関して は改めて皆さんに問いかけます。それでいいですね。準備してもらえますね。 ○事務局 そうしましたら、事務局からこれまでの今回の改正の概要の案等について、医 学系の臨床系の学会にこの指針の普及という意味も兼ねてということで、送付をする準備 をしようと思います。 ○金澤委員長 議論が煮詰っていなくて、こういう問題が残されているということを書い てもいいと思います。ここは、これから議論するということでもいいし。「決まった」とい うことではなくても構わないと思いますが、いかがでしょうか。それでご了承願えますか。 ありがとうございました。  事務局から、今後のスケジュールなどについてお願いします。 ○事務局 最後に、今後のスケジュールです。本日はお忙しい中、また遠方よりご参加た だきましてありがとうございました。次回の予定は2月13日、開催時間は夕方で調整をし ています。次回は、指針の改正にかかる案や個別の論点等、宿題をいただいている部分等 についてご審議をお願いしたいと考えています。ありがとうございます。 ○金澤委員長 ちょっと早めですが、第5回をこれで終わります。ありがとうございまし た。