08/01/09 第49回労働政策審議会職業安定分科会議事録 第49回 労働政策審議会 職業安定分科会 1 日 時 平成20年1月9日(水)17:00〜19:00 2 場 所 厚生労働省職業安定局第1会議室 3 出席者 委 員(公益代表)            大橋分科会長、岩村委員、清家委員、征矢委員 (労働者代表)            有村委員、成瀬委員、長谷川委員、古市委員、堀委員 (使用者代表)            荒委員、石井委員、石原委員、市川委員、            尾崎委員代理(吉村氏)、川本委員代理(輪島氏)       事務局 太田職業安定局長、大槻職業安定局次長、荒井審議官、            岡崎高齢・障害者雇用対策部長、宮野職業安定局総務課長、            三上雇用開発課長、小川雇用政策課長、鈴木需給調整事業課長、            大隈若年者雇用対策室長、山越労働基準局総務課長、            姉崎職業能力開発局総務課長 4 議 題 (1)雇用対策基本問題部会の報告について (2)雇用政策基本方針(仮称)案について (3)労働力需給制度部会の中間報告について 5 議事内容 ○大橋分科会長 定刻になりましたので、ただいまから第49回労働政策審議会職業安定 分科会を開催いたします。 (出欠状況報告)  それでは、議事に入りたいと思います。本日の議題は3つあります。第1は雇用対策基 本問題部会の報告について、第2は雇用政策基本方針(仮称)案について、第3は労働力 需給制度部会の中間報告についてでございます。ところで、本日、議題に入る前に私か らお手元にお配りしている昨年12月21日の労働政策審議会の本審でとりまとめられた建 議「今後の雇用労働政策の基本的考え方について−働く人を大切にする政策の実現に向 けて−」についてご紹介いたします。  この建議は、中長期的に一貫性のある、実効性の高い雇用労働政策を実現するための 基本的考え方について公労使一致でとりまとめられたものであります。各分科会・部会 での議論の基になるものです。この建議の内容につきましては菅野会長から各分科会・ 部会の委員の皆様にお伝えいただきたい旨のお願いがありました。私としましても、今 後、皆様にこの趣旨を踏まえたご議論を是非ともよろしくお願いしたいと思います。今 日はこれはご紹介だけであります。  それでは、議事に移りたいと思います。最初の議題は雇用対策基本問題部会の報告に ついてですが、雇用対策基本問題部会の部会長は私が務めております。ただ、分科会長 という立場でもありますので、事務局から報告をお願いしたいと思います。よろしくお 願いいたします。 ○雇用開発課長 私のほうからは、お手元の資料のNo.1-1、No.1-2「駐留軍関係離職者等 臨時措置法の改正について」及び「国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措 置法の改正について」をご報告申し上げます。  まず、資料No.1-1ですが、2頁目です。「駐留軍関係離職者等臨時措置法の一部改正に ついて」です。この法律の簡単な概要ですが、「目的」にありますように、在日米軍の 撤退等に伴いまして、例えば沖縄等をはじめとする特定の地域におきまして一時的に離 職者が発生するという、こういう状況に対応した特別な立法でございます。「経緯」に もありますように、昭和33年に時限立法として成立しまして、これまで数次にわたり改 正、有効期限を延長してきたものでございます。  隣の頁に横長になっていますが、その施策の概要、流れです。まず、在日米軍が撤退 等を行う。そういったことによりまして在日米軍の関係機関で働いていた労働者の方々 が離職者として発生することになります。その場合、離職の前におきましては、防衛省 において離職前の職業訓練、そしてそれにあわせて特別給付金を支給いたします。離職 者につきましては、駐留軍関係離職者として安定所のほうで認定いたしまして、就職指 導票を交付するという形になります。公共職業訓練、職業指導、右のほうにあります雇 用対策法に基づく職業転換給付金の支給、こういった支援措置を講じて再就職の支援を 行っていくというものでございます。  2頁に戻りますが、改正の内容につきましては、現在、(4)にある法の有効期限が平 成20年5月16日ということで法律の有効期限が失効するのですが、これを、2にあるよう に、平成25年5月16日まで、5年間延長したいというものでございます。3に延長の必要 性について掲げていますが、この駐留軍関係離職者の方々の雇用につきましては、米軍 の安全保障政策、こういったものの変更などによりまして、今後とも離職者として発生 が見込まれるなどの理由によりまして、5年間延長したいというものでございます。  このことにつきましては、11月22日、先ほどお話がありましたように、雇用対策基本 問題部会においてご審議いただきまして、その報告がいちばん最初の頁にあるわけです が、表紙の「記」の部分だけ読み上げさせていただきたいと思います。「駐留軍関係離 職者臨時措置法は平成20年5月16日限り、効力を失うこととなっているが、駐留軍関係 労働者の雇用は、国際情勢の変動に即応する米国の安全保障政策の変更、部隊の撤退・ 縮小等によって影響を受ける本質的に不安定なものであり、今後においても引き続き離 職者の発生が見込まれること、駐留軍関係労働者の従事する職種の細分化等から再就職 が非常に困難な状況にあることから、これらの人たちの生活の安定を図ることは引き続 き重要な課題となっている。このような実情にかんがみ、同法の有効期限を延長するこ とが必要であると認める。」という報告になっております。  続きまして資料No.1-2ですが、「国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措 置法の改正について」でございます。同じく、施策の概要について簡単に申し上げます が、1枚めくっていただいて一部改正についてですが、この法律につきましては国際協 定が締結等されることによりまして、減船を余儀なくされ離職者が発生した場合につき まして、再就職の促進等に向けた支援を行うというものでございます。  これは昭和52年に時限立法として成立いたしまして、これまで何度かにわたって有効 期限を延長してまいりました。この施策の概要につきましては、その隣の横長の図に掲 げておりますが、基本的には、先ほど申し上げた駐留軍法と同じような枠組みになって おります。国際協定の締結等によりまして減船を余儀なくされて離職者が発生すること が見込まれる特定の漁業に関して、実際に減船に伴って離職者が発生する場合に対策を 講じていくというものになります。具体的には、特定の漁業の離職者に漁業離職者求職 手帳を限定的に発給いたしまして、駐留軍関係離職者と同様に、職業訓練、就職指導、 職業転換給付金の支給を行うことによりまして再就職を支援していくという枠組みでご ざいます。  これにつきましても、11月22日に基本問題部会におきましてご審議いただき、その結 果がいちばん最初の頁にあります。これも報告の「記」を読み上げさせていただきます。 「国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法は、平成20年6月30日限り、効 力を失うこととなっているが、最近の我が国の漁業をめぐる国際環境については、引き 続き漁業規制の強化による厳しい状況が見込まれ、今後においても漁業離職者が発生す ることが予想されている。このような実情にかんがみ、同法の有効期限を延長すること が必要であると認める。」ということです。以上でございます。 ○大橋分科会長 それでは、本件につきましてご意見、ご質問がありましたらお願いし ます。この2つの臨時措置法ですが、事態が変わっていないということで延期というこ とだと思います。それでは、当分科会といたしまして、この雇用対策基本問題部会の内 容については了承することといたします。また、事務局においては、この報告を踏まえ まして法律の作成作業を進めていただいた上で、当分科会に対して法律案要綱を諮問し ていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。 (了承) ○大橋分科会長 それでは、そのようにさせていただきます。続きまして、第2の議題 「雇用政策基本方針(仮称)案について」でございます。内容については事務局から説 明をお願いいたします。 ○雇用政策課長 それでは、私のほうから雇用政策基本方針(仮称)案についてご説明 いたします。お手元の資料No.2-1から2-5が関係ですが、No.2-3からNo.2-5につきましては 昨年発表しました雇用政策研究会報告書の概要及び本文ですので後でご覧になっていた だければと思います。まず、資料No.2-1ですが、雇用政策基本方針(仮称)案のイメージ というものがあります。従前の雇用対策法におきましてはこの雇用対策基本計画をつく っておりましたが、今般の改正に伴いまして雇用対策基本計画を廃止することになりま したので、それに代わるものとして雇用対策基本方針をつくるということで、それを今 日ご審議いただくことになっております。これに基づきまして全国指針をつくり、また、 地方においては地方方針をつくっていくというふうになっております。  次の頁に関係条文がありますが、雇用対策法施行規則の第一条で、「厚生労働大臣は、 雇用対策法第四条一項各号に掲げる事項について講じようとする施策に関し、その基本 となる事項を定め、公表するものとする」とあります。そして、十三条につきましては 地方方針についてでございます。雇用対策法の第四条、この頁の下から次の頁に第一号 から第十二号までありますが、安定政策、また、その能開政策、また、その一部雇用状 況の関係等々幅広く入っております。これにつきまして資料2-2で「雇用政策基本方針 案」がありますので、これについてご説明いたします。  まず、目次で全体の構成がありますが、第1章が現状認識ということで、労働市場を 取り巻く変化と課題となっております。第2章が、今後の雇用政策の基本方針というこ とで、基本的考え方、基本的な方向性、具体的な施策の方向性という構成になっており ます。なお、冒頭、大橋分科会長からお話がありましたが、昨年に本審のほうで出され ました建議の中の3本柱、公正の確保、安定の確保、多様性の尊重ですが、これにつき ましては第2章の1の雇用政策の基本的考え方の中に入っているというふうにお考えい ただきたいと思います。  中身についてご説明します。第1頁目ですが、「はじめに」ということで全体的な概 観及び方針の性格について述べております。2005年から人口減少に転じておりまして、 本格的な人口減少社会が到来するという中で、各般の雇用政策が実施されずに、現在の 労働力率と同水準で推移した場合においては、2030年において労働力人口が約1,070万 人減少するということが見込まれております。これは、当然のことながら、供給側の制 約要因でもありますし、需要面で見てもマイナスの影響になってくる。  一方、経済のグローバル化や技術革新の進展に伴いまして、いわゆる低賃金労働者の 増加、不安定な就労形態の者の増加がありますし、また、正社員においても、企業が中 核的人材を絞り込んだ結果、長時間労働が問題化しているというふうなことによって、 働くことの充実感が得にくくなり、また、メリハリの効いた働き方ができないというこ とによって労働生産性が低下する恐れがある。そういう課題を克服するためには、若者、 女性、高齢者、障害者など、働く意欲と能力を持つすべての人々が生涯を通じその能力 を蓄積しつつ十分に発揮し、仕事や地域への社会参加を行うことにより充実感を得るこ とができ、人生の各段階に応じて仕事と生活の調和が図られ、かつ公正で多様性に満ち た豊かな社会を実現することが重要になってくるということがあります。  こうした中で、これがうまくいけば2030年で若者が約90万人増加、女性を中心とした 中年層が約270万人増加、高齢層が240万人増加ということで、全体で600万人増加して、 減少が1,070万人から480万人でとどまることができる。この基本方針案の役割としては、 こうして2030年までの経済社会の姿を展望した上で、当面5年程度の間、我が国が取り組 むべき雇用政策の基本的な方向性とともに、具体的な雇用施策の方向性について明らか にすることになるというのがこの方針案の成果でございます。  以下、2頁にその現状とか、労働市場を取り巻く変化と課題ということで、1がその概 観でありまして、バブル崩壊以後いろいろと問題が起こったという中でありますが、19 90年代末から2000年初めにかけてのリストラの過程を経て、雇用・設備・債務の3つの過 剰が解消した。こういう中で景気も回復したわけですが、雇用失業情勢も、2003年4月に は完全失業率が5.5%になるという厳しい情勢になりましたが、2002年以降回復したわけ で、求人倍率は2006年に1.06倍、完全失業率についても2006年は4.1%と全般的に改善傾 向が続いているというふうに、量的にはここ数年間は改善しているという状況にありま す。  一方、こういった量的に改善している中で、この調整過程を経て、企業側、労働者側 双方に以下のような変化と課題が生じている。まず、企業側としては、グローバル化等 の影響によって企業の将来予測可能性が低下している。また、短期的な需要変動の対応 のために、企業が外部労働市場を通じた雇用量の調整の動きを強めるようになってきて いる。また、株主に対する利益還元を以前より重視する経営がみられるようになってき ているという変化が生じております。また、技術革新、知識経済化の進展に伴って、企 業の中核を担う高付加価値人材や高度技術者、熟練技能者のニーズが高まる一方で、定 型的な業務を担う中間層ホワイトカラーのニーズが相対的に低下している。  また、3頁目ですが、産業構造の変化ということで、消費者の趣向が短期化・多様化 しているということから、多様な消費者の趣向を捉えることができる労働者のニーズが 高まっている。こうした変化を受けて、人材マネジメントも全体に変化しているわけで ありまして、企業の雇用管理の中で、外部人材を含む正社員以外の者を活用することで 正社員の割合が低下している。また、正社員については中核的人材の絞込みを行ってい るというふうな変化が生じています。こうした中で、正社員については長期雇用を基本 的な雇用方針とする企業が多数である一方で、正社員以外の者の積極的な活用を図ろう とする企業も見られるという変化が現在生じております。  一方、労働者側の変化については、長寿化の進展ということで、寿命が、1990年から 2005年、この15年間で男性で75.92歳から78.56歳、女性は81.90歳から85.52歳というよ うに延びております。また、企業側の変化と裏腹でありますが、正社員以外の働き方が 増加しているということで、正社員中心からパート、派遣、契約社員といった多様な就 業形態の増加が目立っておりまして、現在においてはこういう人たちが約3割を占める に至っている。この正社員以外の者のうち、正社員として働く会社がないために現在の 雇用形態で働いている者が約2割強存在しているというふうなことがあります。  また、職業生涯の長期化ということでは、高齢者の就業意欲が高い。男女ともに「い つまでも働きたい」とする割合が最も高く、高齢期になっても働く意欲は持続されてい る。一方、キャリア意識の変化ということについて言えば、労働者のキャリア意識の醸 成の必要性が高まっている中で、学校教育段階でのキャリア教育や職業に接する機会の 確保等の重要性が高まっている。また、入社の動機、生活観の変化ということについて 言えば、自分の能力を活かせることを重視する者が上昇している。また、仕事か生活の どちらか一方のみではなくて、仕事と生活の調和を重視するという者の割合が上昇して いるという変化が起こっております。世帯構造の変化については、妻が専業主婦である 世帯が減少して、1997年以降は共働きの世帯が専業主婦世帯を上回っているという変化 が生じている。  こういった変化に伴って生じた課題として、(2)ですが、まず若者の問題としては、 ニート・フリーター等と所得格差の拡大懸念ということで、フリーターの数は2003年の 217万人をピークとして最近は減少しております。こういうふうにして改善の動きが続 いておりますが、基本的には新規学卒の就職が良くなったということがあるわけであり まして、特に、いわゆる就職氷河期の方、いわゆる年長フリーターについては改善の動 きが鈍い。また、ニートについても改善の動きが鈍いという問題があります。さらに、 日雇派遣労働者については、雇用の不安定さや職業能力の蓄積不足といった点が懸念さ れている。こういった若者の中には、自己啓発もままならず、雇用や将来の見通しにつ いて不安を感じている。また、正社員に比べて結婚することが困難という状況がみられ る。こうした状況を背景として、若者の中には格差の拡大等が固定化、また、少子化の 加速が懸念されている。  女性、高齢者につきましては、女性については古くからの問題ではありますが、就業 継続を希望しながらも、出産、育児等により離職する労働者が依然として多い。また、 いったん退職すると正社員としての再就職・再就業が難しいという問題があります。  また、高齢者につきましては、高い就労意欲を持つ高齢者がいる一方で、雇用・就業 機会が十分でないということから、転職・再就職が難しいということで、こういった職 業生涯の長期化に対応した労働環境の整備が急務になっているという問題があります。  新たな働き方の出現に伴う課題としては、企業の将来予測可能性が低下している影響 を受けて、派遣人材などの外部人材を活用する企業が増加するなどの変化が見られる。 こうした外部人材の中には、特に雇用が不安定な者もおりますし、教育訓練機会の差か ら職業キャリア形成にも差が出るという懸念が指摘されている。  また、正社員の絞込みとその影響について言えば、中核的人材を絞り込んだ結果、週 60時間以上の長時間労働者の割合が増えておりまして、特に30歳代男性の21.7%が長 時間労働となっている。それによって、健康に対する問題とか、男性の家事・育児時間 が長時間労働等により短くなって、結局、女性の負担を高めている。また、正社員間で も能力開発の多寡や質が異なっており、将来の人的資本に差が生じる懸念が指摘されて いる。  また、学校教育や能力開発に対する産業界のニーズとのミスマッチについて言えば、 学校教育が産業界のニーズに合致していないという指摘とか、在学中のキャリア教育が 十分でなく、基礎的な職業能力が形成されていない者や適職選択が行えない者、また職 業意識が十分でない者がいるというふうな問題が指摘されています。また、地域差につ きましては、全般的には改善はしておりますが、雇用情勢の改善に遅れがみられる地域 があるということが現状認識です。 この6頁目以降が第2章ということで、基本的方針で、1が基本的考え方ということです。 人口減少が本格的に2030年に向けて、人材こそが経済社会の発展の礎であるという考え 方の下で、労働者の「雇用・生活の安定」と「生産性の向上による企業競争力の強化」 を同時に実現する。また、労働者一人ひとりの仕事と生活の調和を実現していくという ことによって、働く希望を持つすべての人が自ら希望する働き方により、安心・納得し て働くことを目指すことが重要であるということで、先ほども申し上げましたように、 安定の確保、多様性の尊重、公正の確保、この3つの考え方でやっていくということで ございます。  2に雇用施策の基本的な方向性ということで、当面の話について言えば、いま3本柱 がありますが、1が、誰もが意欲と能力に応じて安心して働くことのできる社会の実現 ということで、若者、女性、高齢者、障害者について就業を阻害している要因を取り除 いて、意欲と能力に応じた働き方を可能にすることによって就業率の向上を図っていく。  「なお」以下ですが、労働力不足について、外国人労働者の受入れ範囲を拡大したら どうかということにつきましては、まずは国内の若者、女性、高齢者の労働参加を実現 というのが先決だろうというふうに考えております。  2点目が、働く人すべての職業キャリア形成の促進ということで、労働者の能力開発 のキャリア形成の基礎となる「雇用・生活の安定、向上」と「職業キャリアの発展、安 定」ということが大事だろうということで、長期雇用が基本であるということが大事で あるとともに、不安定就労者の正規雇用化の支援ということによって、労働者の雇用・ 生活の不安定化を防止するということを考えている。また、労働者が自らのキャリアを 開発・向上することができるように、キャリア支援とか外部労働市場の整備などを通じ て職業キャリアの発展、安定を図っていく。  3点目としては、多様性を尊重する「仕事と生活の調和が可能な働き方」への見直し ということで、労働者の多様な価値観やニーズに的確に対応するとともに、企業側の人 材活用を図る観点から、多様な働き方を主体的に選択できるようにする。そのために、 働き方の普及促進とか、多様かつ公正な働き方に対応した子育て支援などの社会的な基 盤整備を推進していくという3本柱がここにあります。  3ポツ以降が具体的な方向性ということで、当面5年間の方向性を踏まえて考えていく ということで、(1)が就業者の向上ということで、「全員参加型社会」の実現を目指 すということで、8頁目ですが、まず、若者ということですが、若者の将来性とか潜在 能力に着目した応募機会の拡大などの取組を進めていくということで、当面はフリータ ー常用雇用化プランの推進などを行っていくとか、青少年指針などによって若者の応募 機会の拡大等について事業主への周知・啓発、指導を着実に実施していく。  また、ジョブ・カード制度につきましては、産業界とも連携しながら全国的な普及に ついて強力に推進していく。また、いわゆるジョブカフェにおいて、地域の実情に応じ た様々な就職支援を展開するとともに、35歳以上の不安定就労者に対しても一貫した就 職支援を行っていく。また、いわゆるネットカフェ難民、ネットカフェ等で寝泊まりす る不安定就労者についても安定的な雇用機会の確保を図るために、職業相談・職業紹介、 技能講習、住居確保の相談等を行っていくということがあります。  また、若者の職業意識の形成支援としては、キャリア教育とも十分な連携を図るとか、 ジュニア・インターンシップ、あるいはキャリア探索プログラムをやっていく。また、 ニートをはじめとする若者に対しては、「若者自立塾」や地域若者サポートステーショ ンなどの拡充をしていくというふうなことがあります。これらによって若者の就労を促 進していく、雇用の安定を図っていくということがあります。  9頁ですが、女性につきましては、女性の意欲・能力を活かしたキャリアの継続と再 就職・起業の支援ということで、働き続けることを希望する者が意欲を失うことなくそ の能力を伸長・発揮できる環境を整備していく。ということで、仕事と子育ての両立を 可能とする働き方の見直しとか、保育の充実などを行って再就職・起業をすることの可 能性の支援を強化していく。  また、均等法の一層の履行確保とともに、ポジティブ・アクションを推進している企 業を表彰するとともに、ポジティブ・アクションに関する企業の取組を支援していく。 また、継続就業できるように、育児・介護休業だけでなくて、短時間勤務などの柔軟な 働き方の制度の活用とか、安心して働くことができる職場環境づくりを進めていく。ま た、ファミリー・フレンドリー企業の一層の普及促進を図っていく。あわせて、多様な 保育サービスをはじめとする子育て支援サービスの充実、介護サービスの充実など、安 心して働くことができるための環境整備を図っていく。再就職につきましては、マザー ズハローワーク等におけるきめ細かな就労支援を行っていくとともに、その女性につき ましてもジョブ・カード制度を推進していくというふうなことが盛り込まれております。  3点目が高齢者でありまして、いくつになっても働ける社会の実現ということで、201 2年には団塊の世代が65歳に到達するということで、高齢者の能力が活かされるための取 組を早急に進めることが必要であるということから、具体的には65歳までの高齢者雇用 の確保ということで、高年齢者雇用安定法に基づく高年齢者雇用確保措置の導入を着実 に実施する。また、継続雇用制度においても、希望者全員を対象とする企業の増加を図 っていくということがあります。「70歳まで働ける企業」の普及・促進を図るなど、そ の60歳代半ば以降の高齢者が働ける企業を増やしていくとともに、年齢制限禁止の義務 化についての事業主への周知を徹底して、応募の機会の拡大をしていくということがあ ります。  また、高齢期につきましては、雇用だけではなくて、多様な雇用・就業機会の確保が 大事ですから、シルバー人材センターにおいて、地域の多様なニーズに応じた就業機会 の確保・提供を行っていくとともに、その雇用以外の就業・社会参加(ボランティア、 NPO)など、その地域密着型の活動の環境整備を行っていくことによって、意欲と能力の ある限り年齢にかかわりなく働き続けることができる社会の実現を目指すとともに、必 要な雇用のセーフティネットの適切な整備についての検討を行っていくというふうなこ とでございます。  4点目が、障害者等様々な事情・困難を克服し就職を目指す人たちへの支援というこ とで、障害者とその就職の困難な方に対する支援ということで、能力に応じた就職・就 業機会の確保に努めるとともに、就労を通じた社会参加への支援を行っていく。という ことで、障害者につきましては、2006年に採択された「障害者の権利に関する条約」を 受けて、雇用分野におけるさらなる条件整備を早期に図っていく。特に、障害者につき ましては、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づく障害者雇用率制度を中心と して、障害者雇用の一層の促進を図っていく。また、法定雇用率の未達成企業への指導 を引き続き実施するということによって、障害者の雇用機会を拡大していく。また、一 人ひとりずつの障害特性や障害の程度によって生ずる課題に応じて、一人ひとりの希望 に応じた働き方を実現するため、多様な就業形態を選択できるような環境整備を行って いく。  また、職業リハビリテーションの充実・強化等、障害の態様や企業のニーズに対応し た多様な職業能力開発機会の拡充を行っていくということがあります。また、福祉から 雇用への移行の促進のためには、ハローワークを中心としたチーム支援などの各種の施 策を実施していくことにより、福祉・教育・医療機関との連携を進めていくことによっ て、一体的な相談・支援を行う体制の整備を行っていくということがあります。  また、その生活保護受給世帯とか母子世帯については、福祉事務所等とハローワーク とが連携した就労支援チーム体制とかを行っていくとともに、母子世帯の就業に向けた 一貫した支援を行う母子家庭等就業・自立支援センター事業の拡充等を行うことによっ て就業支援をしていく。また、刑務所出所者等についても就労支援を進めていく、児童 養護施設の退所者についてもその支援をしていくというふうなことが盛り込まれており ます。  5点目の地域ですが、地域における雇用創出の推進ということについては、地域の担 い手の創意工夫や発想を最大限尊重した、個性と活力にあふれる地域社会の構築を目指 すということで、地域の特性を活かした自発的な雇用創出の取組を支援するとともに、 雇用情勢が特に厳しい地域における事業所の設置・整備に伴う雇い入れ等を行う事業主 に対し助成を行っていく。  また、ハローワークの相談とか援助、広域職業紹介等の充実・強化を通じたU・Iター ンの促進により、地方における人材の確保を図るということが盛り込まれております。  6点目が、すべての人々の就業意欲を活かす労働力需給調整機能等の強化ということ で、ハローワークと民間の労働力需給調整機関がそれぞれの特性を十分活かしつつ、そ の能力が十分発揮できるようにするということで、ハローワークにつきましては、効率 的な運営や質の向上を図っていくことによってパフォーマンスのさらなる向上を図って いく。また、そのハローワークの需給調整機能を雇用のセーフティネットとして充実、 強化するとともに、こういうことがナショナルミニマムとしての体制を整備していく。  官民のことについては、官民相まった適正な需給調整機能の充実により、外部労働市 場の整備を図っていく。また、派遣事業については、偽装請負など法違反に対する厳正 な指導監督を行い、また、日雇派遣労働者など様々な問題が指摘されていることを踏ま えて、労働者派遣制度を見直し、派遣労働者が安心・納得して就業できるような環境の 整備を図っていくということがあります。  また、会社更正とか、営業譲渡及び会社分割等によって企業組織が再編されていると いうことにつきましては、「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」等に基づ きまして、企業が講ずべき措置や配慮すべき事項等に関する周知・徹底を図るとともに、 もしも離職者が生じた場合には、ハローワークにおいて早期再就職に努めていく。  また、セーフティネットの雇用保険制度については、今後とも、労働者の生活及び雇 用の安定を図っていく。また、基準法また最賃法等の遵守に向けて、引き続き法令の周 知徹底・適切な監督指導等を実施していくというふうなことが盛り込まれております。  2点目が、働く人々すべての職業キャリアの形成の促進ということで、その生産性の 向上につながるようなことですが、(1)が職業キャリアを支援するインフラの充実という ことで、民間企業、中小企業団体・業種別団体等の事業主団体、公益法人、大学・専修 学校等の学校教育を教育訓練の受け皿として活用する。また、企業の人材ニーズの変化 を踏まえて、職業訓練コースの設定や中小企業等に対する職業能力開発に係る支援を進 めていく。  また、職業能力評価制度については、企業等のニーズを踏まえた整備・充実に努めて いく、また、能力開発に関する情報提供に努めていくということがあります。また、キ ャリア形成支援のために、キャリア・コンサルタントの養成や資格試験の統一化の検討、 フォローアップのための仕組みの構築などによって、キャリア・コンサルティングの普 及を図っていくということがあります。  14頁の(2)で、職業生涯を通じたキャリア形成支援ということで、(1)はどちらかという とインフラ整備ですが、(2)は個々人のキャリア形成支援ということで、働く者の職業生 涯を通じた持続的な職業キャリア形成への支援を進めていく。職業訓練システムの充実、 インフラ整備などの労働市場に関する整備を進めていくとともに、個人ベースでいけば、 教育訓練休暇の取得など、企業における各種キャリア支援策の導入促進を図るほか、キ ャリアの見直しを行う機会を確保するなどの施策を検討していく。また、キャリアの中 に失敗したときに再挑戦できるように、年長フリーター向けの企業実習先行型訓練シス テム、日本版デュアルシステム等を推進していく。  3点目が、専門的・技術的分野の外国人の就業促進と外国人の就業環境の改善という ことで、質の高い留学生の確保や就職支援、また、あわせて、外国人労働者の就業環境 の改善を図っていく。ということで、雇用対策法に基づきまして、マッチング機能の強 化や雇用管理の改善を図っていく。また、外国人留学生制度の充実を図るとともに、留 学生向けのインターンシップや企業における雇用管理の改善を進めていく。  さらに、「『生活者としての外国人』に関する総合的対応策」や「雇用対策法」に定 められた外国人指針に基づきまして、外国人労働者の就業環境の改善を図っていく。技 能実習につきましては、技能実習中の研修生の法的保護の在り方を中心に見直しを進め ていくというようなことが書いてあります。  4点目が、中小企業や福祉・介護分野の人材確保ということで、こういった中小企業 や福祉・介護分野は、安定的な労働供給・人材確保が必要ですが、一方で大企業との人 材確保競争とか労働条件の問題により、人材確保が困難となっている現状がある。とい うことで、中小企業につきましては、ものづくり産業の国際競争力を支える人材を育成 するための高度な知識と技能・技術を兼ね備えた実践的技能者を養成する。また、高度 熟練技能者をはじめ団塊世代の指導能力を有する優れた技能者等の情報をデータベース 化していって、中小企業等の技能継承支援や若年技能者の育成支援に活用していく。  また、中小企業労働力確保法に基づきまして、生産性向上に資する人材の確保とか職 場への定着を支援する。また、中小企業が労働者の能力を高め生産性を向上する際の支 援を実施していく。また、その中小企業につきましては、実践型人材養成システムの普 及・定着を推進していく。  福祉・介護につきましては、計画的な人材の育成を図るとともに、給与や労働時間等 の労働環境の改善、IT技術・福祉用具の積極的な活用を通じた業務の省力化、また、 キャリアパスの形成を行っていく。さらに、多様な人材の参入・参画を促進していくと いうふうなことが書いてあります。  3点目が、多様性を尊重する「仕事と生活の調和が可能な働き方」への見直しという ことで、仕事と生活の調和が大事だということは異論がないところだと思いますが、そ の仕事と生活の調和の実現にあたっては、労働者側としては自らの働き方を見直してい くとともに、生涯を通じて自己啓発・能力開発を行っていく。企業側も業務の見直しと か職場風土改革を努めていく、国や地方自治体もその支援をしていくということがあり ます。  基本的に、こういうことについては政府としても強力的に推進していくということが ありますので、この(1)(2)に書いてありますが、(1)が仕事と生活の調和の実現に向けた企 業の取組の促進・支援と労働者に対する意識啓発ということで、基本的には労使の自主 的な取組が基本ではありますが、国においてもそうした取組を支援するとともに、労働 者・企業双方の意識啓発を行っていく。  ということで、労働時間等の設定改善法に基づく、労使による長時間労働の抑制、年 次有給休暇の取得促進など、労働時間等の設定改善等に向けた労使の自主的な取組を促 進するとか、労働時間関係法令が遵守されるように、監督機関において、労働時間管理 の適正化や時間外労働協定の適正化のための監督指導等を重点的に行っていく。  また、企業における次世代育成支援の取組を促進するために、一般事業主行動計画の 公表の推進、中小企業における一般事業主行動計画策定の取組の促進、「次世代育成支 援対策推進法」に基づく認定に向けた企業の取組の促進などを行っていく。また、先進 的企業の情報を周知することによって社会的気運の醸成を図っていく。  過重労働対策につきましては、次の頁ですが、「過重労働による健康障害防止のため の総合対策」に基づいて、事業主に対する指導を実施していく。また、メンタルヘルス につきましても、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」の普及啓発によって、 支援体制を実施していく。また、労働者が中高年に至っても健康を保つために、専門機 関等との連携を図りつつ、メンタル面も含めた労働者の健康確保対策の充実を図ってい くということがあります。  (2)ですが、労働者が多様な働き方を主体的に選択できるような労働環境の整備という ことで、雇用以外の働き方も含め、多様なニーズに対応した働き方を主体的に選択でき、 人生の各段階に応じて様々な働き方の間を行き来できるように、働き方に中立的な豊か な活力ある経済社会にふさわしい公正な労働条件等の確保を図っていくということで、 短時間正社員制度、テレワークなどの制度の整備、また、事業者の職場風土づくりなど を支援していく。  また、在宅就業につきましても、実態把握などを行って、必要な施策の検討を行って いく。また、男性の育児休業の取得促進、男性の仕事と家庭の両立に関する意識啓発の 推進、男性の子育て参加の支援・促進を図っていく。  パート労働者につきましては、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保、通常の労 働者への転換支援、有期契約労働者についても正社員への転換支援を図っていく。さら に、今回できました「労働契約法」の内容の十分な周知を図っていく。また、個別紛争 処理につきましては、都道府県労働局長による助言・指導、紛争調整委員会によるあっ せん等を行うことによって自主的解決を促進するということで、少し長くなりましたけ れども以上でございます。 ○大橋分科会長 それでは、本件につきましてご意見、ご質問をしていただきたいと思 います。 ○市川委員 4点ほど指摘をさせていただきます。第1点目は、これは応援演説という 感じになりますが、8頁の辺りに書いてある実践的な職業訓練ですとかジョブ・カード 制度、あるいはインターンシップ等々、こうしたことは私ども中小企業団体中央会とい たしましても是非進めるべきだということで、毎年やっている全国大会の決議でも推進 を謳っているところですので、是非進めていただきたいと思うわけでございます。  第2点目ですが、13頁の成長力底上げ戦略推進円卓会議の記述があります。これにつ きましては、私どもの佐伯会長がこの円卓会議のメンバーになっておりまして、この会 議において最低賃金の引上げということより前に、それを進めるに際してはその前に、 生産性の向上を図ることが必要なのだということを常々意見を申し述べさせていただい ているところでございますので、その生産性の向上ということを、是非、文言として入 れていただきたいと思っております。1つの案といたしましては、「最低賃金の中長期 的な引上げ」という文言の前に「生産性の向上を踏まえた」ということを入れていただ きますと、円卓会議の議論とちょうどマッチした表現になるのではないかなというふう に思っております。  第3点目ですが、これは15頁のいちばん上の所でございます。外国人研修・技能実習 制度の所の記述ですが、これを素直に読むと、研修生が実質的に低賃金労働者として扱 われている、これがすべてだと。外国人研修制度においては、すべてが低賃金労働者と して扱っているのだと。こういうふうに読めてしまうわけですが、そういった事例は新 聞報道でも度々取り上げられておりますように、現実に、残念ながら、あるといういう ことでございますが、100%すべて低賃金労働者として扱っているのかということになり ますと、これはちょっと書きぶりとして行過ぎがあるのではないかなという気がいたし ます。  それで、これを引いている規制改革推進のための3カ年計画、この基の文章を見てみ ましても、引かれた所の文章の前に「研修生を受け入れる企業等の中には、これを悪用 して研修生を実質的に低賃金労働者として扱っている者も見受けられ」と、こういう文 章がありまして、これはそういうこともあるのだということを、この規制改革3カ年計 画では謳っているわけでございますので、この表現ぶりの案としては、「低賃金労働者 として扱われている事例がある等の実態を改善するため」というような書きぶりがいち ばん事実に即した書きぶりではないかなという気がするわけでございます。  最後、第4点ですが、これも応援演説になりますが、15頁のいちばん下の所から「仕 事と生活の調和」と、いわゆるワークライフバランスについての施策を推進すべきだと いう表現があります。これも、私ども、全国大会の決議でも、是非これを進めるべきだ ということで触れさせていただいているところでございます。進めていただきたいと思 うわけでございます。ただ、1点、昨年の12月18日にワークライフバランス憲章が採択 されているわけですが、これは非常にエポックメーキングな出来事ではないかと思いま すので、是非、この憲章が策定されたと。その憲章を踏まえてこういったことを進めて いくのだという書きぶりを明記していただけないかなと思っているわけでございます。 冒頭、分科会長からご紹介がありました、すべての人々が能力を発揮し、安心して働き、 安定した生活ができる社会の実現という、その文章の本文の中には、「注」といたしま して、本文23頁の「注」の32に「ワークライフバランス憲章」という記述があります。 こちらの基本方針の中では「注」がすべて削除されておりまして、そのためにワークラ イフバランス憲章という文言がどこにも出てこない、こんなことになっているのではな いかという気がいたします。憲章が策定されたということもどこかに是非触れていただ ければというふうに思うわけでございます。以上4点でございます。 ○大橋分科会長 それでは、まとめてご質問をいただいたほうがいいと思いますので、 その他ございませんか。 ○成瀬委員 何点か質問と意見がありますので、ちょっとまとまっていないので何回か に分けて発言するかもしれませんが、ご容赦いただきたいと思います。まず、全体的に 読んで、かついまのご説明を聞いての印象ということになるのですが、6頁、7頁に、基 本的考え方ということで、安定の確保、多様性の尊重、公正の確保という3点が重視す べき点ということで挙げられ、その上で基本的な方向性ということで、6頁から7頁にか けて、3点、こういう社会の実現が必要であるということで出されているということに ついては、大枠として現状の日本社会の実態に非常にマッチしたものということで、今 後の雇用政策の基本方針としては非常に適切なものであると私も思っております。  この点では、本日の分科会の冒頭で、分科会長からご紹介があった労働政策審議会本 審での建議の内容とも基本的にマッチするものであって、本来的にはできれば説明もし ていただきたかったのですが、時間の関係から割愛されたというふうに認識しておりま すので、後ほど熟読をさせていただきたいと思っています。  その上で、意見、質問ということで細かい点もいろいろあるわけなのですが、1つ目 は、7頁の(2)の4行目になります。「そのため、労使の信頼関係に基づく長期的視点 に立った労働条件の調整に柔軟に対応しつつ」という文言がいきなり出てくる印象があ りまして、これが何を言わんとしているのかよくわからないわけですが、普通であれば、 当然ながら、企業の生産性とか業績など、経営状況との調和を図りつつ労働条件の向上 ・改善をしていくというのが、厚生労働行政としてはあるべき姿だと思うのですが、そ ういう諸々の条件との調和を図りながら労働条件を改善するということではなくて、労 働条件の調整という表現になっているところがなぜなのか。これは、もしかすると、そ の雇用にも手を付けざるを得ないぐらいの企業の業績悪化等の、非常に特別な場合のこ とを想定して書いているのかもしれませんが、それをわざわざ挙げることの必要性がな ぜあるのかお聞きしたいと思っています。  それから、その7行ぐらい下なのですが、これは単純な質問なのですが、「職業能力 開発などのキャリア支援や外部労働市場の整備などを通じて職業キャリアの発展、安定 を図っていく」とあります。前者はわかるのですが、外部労働市場の整備を通じて職業 キャリアの発展、安定を図っていくというつながりがよくわからないので教えていただ きたいと思います。  これは、もしかすると、職業キャリアの観点を重視する外部労働市場をつくるという ことが、個々の労働者においても職業キャリアの発展、安定を図っていくことを促して いくということを指しているのかもしれませんが、そういう理解でいいのかどうなのか。  それから、その下4行目ぐらいですが、(3)の1行目になります。「労働者の多様な 価値観やニーズに的確に対応するとともに、企業における有効な人材活用を図る観点か ら労働者が多様な働き方を主体的に選択できるようにする」となっております。この基 本方針(仮称)案につきましては、雇用政策研究会の報告を大部分で踏まえたものとな っているとお聞きしていますが、そういう意味で言うと、雇用政策研究会報告の該当部 分の表現のほうが私としては理解しやすいと思います。そこの該当部分については資料 No.2-5の11頁の下から5行目の「企業が多様な労働者の能力を最大限に活用し、生産性の 向上や競争力の確保を図っていくことができるようにするためには」と。この表現のほ うが、少なくとも私個人としては理解しやすいわけですので、ご検討いただければと思 います。  続いて、8頁の(1)の第2段落目の冒頭ですが、「2010年までにフリーターをピーク時の 8割まで減少させることを目指し」とありますが、8割というのは少し消極的な目標では ないかなという感じがいたします。ただ、労働力市場の状況などから見て8割でも結構 高い目標で難しいのだ、ということであればそういうことなのでしょうけれども、その 辺の状況について教えていただきたいと思います。  続いて、10頁の第3段落目で「また、意欲と能力があれば」の段落ですが、そこの3行 目の「『70歳まで働ける企業』の普及・促進を図るなど」とあります。これは、昨年3 月に高年齢者と職業安定対策基本方針の一部改正がありまして、その中で70歳まで働け る企業の普及・促進ということが入っているということは承知しておりますが、そのと きの報告文書の中でも、「労働者代表委員からは、70歳まで働ける企業の普及・促進に ついてはいろいろな懸念があるという意見があった」と付記されていることでもありま すので、取り立てて例示する必要があるのかどうなのか、ここについてもご検討いただ ければと思います。  それから、12頁の下から7行目ですが、「また、労働者派遣事業については、偽装請 負など、法違反に対する」とあります。偽装請負というのは、私の理解ではそもそも職 業安定法違反だと思っているのですが、労働者派遣法に基づくその適法な派遣のみが労 働者供給から除かれて、残りの労働者供給については特別な場合以外は業として行うこ とが禁止されていると理解しているのですが、この書きぶりで言うと、その偽装請負と いうものが、あたかも労働者派遣事業の一部であるかのようにも読みとられかねないわ けですので、表現ぶりについてはご一考していただいたほうがいいかと思います。  それから、14頁の(3)の1行目で「人材の国際競争力強化を図る観点から、専門的・技 術的分野の外国人について、我が国での就業を積極的に推進するとともに」とあります。 現状でも、専門的・技術的分野の外国人については、我が国で就業することになるため の障害ということでは特段何かあるというふうには私は認識していないのですが、障害 があるのであればどういう障害があるのかということを教えていただきたい。それから、 下から3行目、「『生活者としての外国人』に関する総合的対応策」という、不勉強で 申し訳ないのですが、これを知りませんので、どこの省庁が所管されているものなのか 教えていただければと思っております。  それから、15頁の上から2行目です。「研修生が実質的に低賃金労働者として扱われ ている等の実態を改善するため」という所ですが、もしかしたら、この「等」の中にい ろいろな事例を含めてこの文章が言わんとしているということなのかもしれませんが、 ここで例示で挙げられていることは、あってはならないことですので、一部の業者でそ ういうことが見受けられるのは事実かもしれませんが、それについて改善ということで はないのではないか。あってはならないことと、あってはならないとまでは言わないが あまり望ましくないこと、というものを並べて言おうとしているがために改善という言 葉になっているのだろうとは思うのですが、少し表現をご検討いただいたほうがいいの ではないかと思います。  最後に、17頁ですが、下から2つ目の段落で、「あわせて、有期契約労働者について も正社員への転換支援を図っていく」とあります。もちろん、有期契約労働者について も、正社員への転換をしていくのがいちばん望ましいわけではありますが、必ずしもす べての有期契約労働者が転換できるわけでもないというのも事実でありますので、正社 員への転換ができない、あるいは転換されない有期契約労働者についても、雇用の安定、 当該労働者の雇用不安にならないように適切に行政として対応していく。今度、有期労 働契約基準についての見直しもされるようなのですが、それらも含めて適切な対応をと っていただきたいという趣旨で充実していただければと思います。項目としては少し多 いですけれども、よろしくお願いいたします。 ○大橋分科会長 それでは、ここで事務局からご意見をいただきたいと思います。 ○雇用政策課長 まず、市川委員のご意見ですが、13頁に円卓会議の記述がありますが、 そこの書きぶりについては検討させていただこうと思います。それから、15頁の技能実 習ですが、これは成瀬委員のほうからもご指摘があるところでもありますので、原局と 相談の上、書きぶりについては考えさせてください。ワークライフバランス憲章につき ましても、基本的には入れても特に問題はないと思いますので、何らかの格好で触れる 方向で考えたいと思います。成瀬委員のご質問ですが、7頁の「そのため、労使の信頼 関係に基づく長期的視点に立った労働条件の調整に柔軟に対応しつつ」という、これは その後まで続けて読んでいただければと思うのですが、我々の気持としては、労使の信 頼関係に基づく長期的視点に立った労働条件の調整に柔軟に対応しつつ、雇用安定機能 と人材育成機能を有する長期雇用」という、全部を一まとめで「長期雇用」にかかって いるというつもりで書いております。要するに、基本的には雇用安定機能と人材育成機 能を持つ長期雇用が大事なのですが、それは同時に、こういう長期にわたっての労働条 件の調整というのもあるというのが、労使の信頼関係に基づいてあるというつもりで書 いているということでご理解いただければと思います。それから、外部労働市場の整備 ですが、キャリア支援。キャリアと考えたときに、当然、能力開発もありますが、1つ の企業だけでそのキャリアが行き詰まってしまったらあまりよろしくないだろうと。要 するに、他の企業に行くということも当然オプションとして当然あったほうがいいので はないかということで、外部労働市場の整備ということを入れております。それから、 (3)の「企業における」の書きぶりですが、研究会のほうがよかったというご指摘もあ りますので、これにつきましては研究会報告を踏まえた書き方に変えるように検討した いと思います。それから、8頁は若室のほうから。 ○若年者雇用対策室長 フリーターの目標の8割ということですが、これは再チャレン ジ支援総合プランということで、まさに、2010年までに8割ということで政府としての 目標をすでに立てておりまして、それをここに置いてあるということです。現在、フリ ーターが187万人ということで、ピーク時からいうと86%というところまで減ってきて おります。いずれにしても、目標としては2010年までにピーク時の8割に減少というこ とで置きたいと考えております。なお、仕事と生活の調和の関係の行動指針で、10年後、 2017年までの目標としてピーク時の3分の2というものを置いておりますので、この8割 まで到達すればそれで済むというわけではないですが、ここは当面5年間の目標として の記載ですので、直近の大きな目標である2010年までにピーク時の8割とさせていただ きたいと思っております。 ○雇用政策課長 さらに、事務局として提案ですが、実は、この方針の中でここだけ目 標値が入っているものですから、全体の整合性の中でこれを全部落としてしまうことも 考えておりますので、そこは全体の整理の中で落とすかもしれません。それから、その 次の「70歳まで」について。 ○総務課長 昨年3月のときの担当課長でありまして、経緯は先ほど成瀬委員からあり ましたとおりで、私どもも、昨年の方針についての改正のご議論を踏まえまして、成瀬 委員からお話がありましたように、あくまでも例示という形で、この70歳まで働ける企 業の普及というものを今回入れさせていただいているというところでございます。昨年 3月も議論がありましたように、あくまでも文章にありますように、意欲と能力があれ ば65歳までに限らず、65歳を超えても働けるというところを基本的な政策の目標とし、 その1つの政策の手段として、いま、事実上、私どもとしてこの70歳まで働ける企業の 普及・促進という事業自体を行っているというものでございます。ただ、ご意見をいた だきましたので、表現については少し検討させていただきたいと思います。 ○雇用政策課長 12頁の需給関係について。 ○需給調整事業課長 偽装請負の関係について職業安定法違反ではないかというご質問 なのですが、実は、これはそうではありませんで、労働者供給・労働者派遣と労働者供 給事業・労働者派遣事業と概念が少し違っております。現行の法律の立て方は、安定法 四条に規定する労働者供給から派遣法二条に規定する労働者派遣を分離しまして、労働 者派遣については派遣法で規定をし、その中で、適正な事業の在り方はこうですよ、そ れ以外については違法ですので禁止ですよ、という形をとっております。したがって、 偽装請負が、自己の雇用する労働者を他人の指揮命令において就労させているというこ とであれば派遣法違反になりまして、偽装請負は派遣法違反で指導いたしますので、こ の文章の表現で正しいという形になります。 ○雇用政策課長 次の外国人について。 ○外国人雇用対策課長 まず、14頁の専門的・技術的分野の人たちの話ですが、ご指摘 のとおり、入管法上の制度的な障害という意味で言うと、諸外国と比べても非常に開放 的であって、存在しないというふうに認識しております。ただ、留学生をはじめとして 日本で就職したいと思っている方々が、必ずしも実際に希望どおり就職できていないと いう実態が他方にある。つまり、入管法上の制度とは別のところでミスマッチのような ことがいろいろ起きているのも事実であります。この辺については、今日ご欠席ですが、 白木委員がエキスパートでございまして、私どもも日ごろからご指導いただきながら研 究しているのですが、日本と違った文化、生活習慣、雇用慣行といったものをバックに している人たちが、日本の社会の中で働くということについては、目に見えないところ でいろいろ障害があるようでありまして、そういったことについては我々行政としても やるべきことがあるのではないかということを日ごろからご指摘いただいているところ でございます。  それから、生活者としての外国人に関する総合的対応策ですが、これは平成18年の暮 れにとりまとめられたものでありまして、とりまとめを行ったのは外国人労働者問題関 係省庁連絡会議という横断的な組織で、事務局は内閣官房にあります。当然、メンバー として厚生労働省も入っておりますし、法務省、文科省、総務省、その他、かなり多く の省庁がメンバーとして入っており、横断的にこういった生活者としての外国人、人と してこういう人たちが生活していく上で必要な対応というものをとりまとめたというこ とでございます。あと、研修・技能実習制度についてのご指摘もありましたが、これは 能開局のほうから。 ○雇用政策課長 これは、先ほども言いましたが、書きぶりについてはあわせて検討さ せていただきます。それから、最後に17頁の有期契約労働者ですが、要するにこれ以外 のこともあるだろうというご指摘だと思うのですが、書きぶりについては少し検討させ ていただきます。 ○大橋分科会長 いまの回答についていかがでしょうか。 ○市川委員 私は結構でございます。 ○成瀬委員 1つ確認したいのですが、12頁の労働者派遣事業の所なのですが、いまの 説明では偽装請負は労働者派遣法第二条に定義する労働者派遣である、ただし派遣法違 反であると。これが定まった行政解釈だということで理解すればいいですね。 ○需給調整事業課長 レアケースで自己の雇用していない労働者を派遣しているとか、 そういう場合は安定法四十四条の「労働者供給事業の禁止」に労基法違反になる可能性 がありますが、通常の場合は、請負会社と称している所が雇用して派遣できる仕組みで させているので、これは派遣法二条の労働者派遣に当たりまして、それが例えば労働者 派遣契約を結ばない違法な派遣であるということで、例えば二十六条違反等々が派遣法 違反で生じる。こういうことが現行法の解釈でございます。 ○成瀬委員 わかりました。 ○大橋分科会長 それでは、荒委員、どうぞ。 ○荒委員 まず、5頁ですが、2つ目の段落で、「新たな働き方の出現に伴う課題」にお きまして、細かいことですが、「人件費の変動費化を目的とした派遣労働者」という記 述があります。そうしますと、派遣労働者はすべて人件費の変動費化を目的としたとい うふうにも読める気がいたしますので、表現が訂正できたらなと思います。同じ頁で、 「正社員の絞込みとその影響」という所がありまして、その2段落目で、「さらに正社 員間でも能力開発機会の多寡や質が異なっており、将来の人的資本に差が生じる懸念が 指摘される」という所なのですが、これは全く同じように能力開発の機会を与えること を期待しているかのように読み取れてしまうのですが、基本的には、合理的でない理由 で機会の不平等があるのはよろしくないということを述べているのではないかと思うの です。というのは、能力機会の提供そのものはトータルコンペンセイションというか、 企業にとっては総合的報酬の一種ではないかと考えるわけで、この記述はちょっといか がなものかと思っています。  それから、7頁の最初の段落なのですが、「安易に外国人労働者の受入れ範囲を拡大 して対応するのではなく、まずは」という所でですが、この第2章全体で最初に「2030 年に向けて」とありまして、この文書全体が当面5年の話ではあるのですが、一体いつ まで受入れ拡大の対応はしないということが言い切れるのかというのが大変曖昧になっ ているような気がいたします。  それから、先ほど成瀬委員がおっしゃったように、同じ7頁で(3)の「多様性を尊重 する『仕事と生活の調和の可能な働き方』」の所ですが、ここは「企業における有効な 人材活用を図る観点から、労働者が多様な働き方を主体的に選択できるようにする」と いう表現はいかがなものか。主体的に選択できたからといって人材活用が図れるわけで はないと思います。  それから、12頁の最後のパラグラフなのですが、「官民相まった適正な需給調整機能 の充実等により、専門性の高い人材を中心とした外部労働市場の整備を図る」という所 なのですが、その前段の話からいきまして、ここで急に「専門性の高い人材を中心に」 と表現されたところの理由をお聞きしたい。専門性の高低にかかわらずではないのかな と思う次第であります。以上です。 ○大橋分科会長 では、お願いします。 ○雇用政策課長 まず、5頁目の「人件費の変動費化を目的」という、これは別にそう いうつもりではなかったのですが、派遣労働者はある意味で例示で、人件費の変動費化 を目的とした外部人材の活用というつもりであったのですが、誤解があるような表現ぶ りについては検討したいと思います。それから、この「正社員間でも能力開発機会」と いう、これについても表現ぶりについて検討させてください。それから、外国人労働者 については。 ○外国人雇用対策課長 ご指摘いただいた点につきましては、まさに、この記述が当面 5年間の政策の方向性ということですので、雇用政策の当面5年間の方向性としては、安 易に受入れ拡大ということではなく、それ以前にやることがあるのではないかというこ とを強調して書かせていただいているわけです。ただ、もちろん、検討課題として外国 人の受入れ問題について全く認識がないわけではないわけでありまして、そういうこと まで否定しているわけではない。実は、これのベースになった雇用政策研究会報告の中 では、そういった中長期的な検討課題としてそういうことはありますね、ということは 押さえておりまして、外国人労働者受入れについて幅広い見地からの総合的な検討が課 題になっているということは明記しております。それをベースに、ここではあくまでも 雇用政策として5年間はまずどういうスタンスかということを書いているということで ご理解いただければと思っております。 ○雇用政策課長 7頁の「労働者が多様な働き方を主体的に選択できる」というのは表 現が強すぎるのではないかというご指摘ですが、成瀬委員のご指摘もありましたので、 ここについては表現ぶりについて検討させていただきたいと思います。12頁の「専門性 が高い人材」云々で、限らないのではないかというご指摘だったのですが、これにつき ましても表現については検討をさせていただきたいと思います。 ○大橋分科会長 そのほかにいかがでしょうか。 ○成瀬委員 追加ですが、13頁の第2段落でセーフティネットあるいは労働基準法、最 低賃金法等の遵守の関係が触れられておりますが、ここはもう少し充実した書きぶりに していただいて、今後の厚生労働行政においても、監督指導の強化を是非お願いしてお きたいと思います。私、電機連合の役員でもありますが、私どもの地方組織の役員ある いは役員OBからも、特に登録型派遣労働者については雇用保険の加入漏れが実態として あるという、本当にあるのかどうなのかというのは精査をしないといけないのですが、 そういう意見も聞くことが多々ありますし、マスコミでもときどき報道されるようです が、基本的には、ほとんどの業種、ほとんどの事業で健康保険は強制適用になっている はずではあるのですが、健康保険から脱退して国民健康保険に変えさせているという事 例もマスコミ等から耳にすることでもあります。そういうことがないように、是非セー フティネット、これはすべての働く者に張り巡らされてないとセーフティネットの機能 としては不十分な面が出てくるわけですので是非とも今後の施策の強化をお願いしたい と思っております。 ○輪島氏(川本委員代理) 7頁目の所なのですが、外国人労働者の点ですが、6頁目の 第2章が「2030年に向けて」と書いてあるのと、そこの中での5年間という所の書分けが しっかりわかるようにあったほうがいいのではないかと思います。それから、7頁目の (3)の同じ所ですが、「主体的に選択できる」というのは修正をしていただくという ことなので、その中身について「主体的に」というのは違和感があるなということだけ 申し上げておきたいと思います。それから、8頁目ですが、ジョブ・カードの記述があ りますので、これはお願いということですが、本格的に平成20年度からジョブ・カード 制度が実行に移されていくというふうに認識しておりまして、私ども全体としても協力 をする体制を整えつつやっていきたいと思っておりますが、それは基本的には能力開発 局の仕事なのかもしれませんが、実際にジョブ・カードに基づく研修が始まることにな ると、伺っているところによると、求人票をハローワークに出すことになって、そうい う意味では、職業安定局のハローワークでの実際のマッチングが重要になってくると思 います。そのところで言うと、能開局の仕事というふうに言わないで、職業安定局、特 にハローワークでも、マッチングというような意味合いでは是非ご協力いただきたいと 思っているところです。  それから、12頁目ですが、先ほどの偽装請負の表現というか、理解はそういうふうに 私どもも理解しているつもりですが、ここの偽装請負という表現は、ある意味では派遣 法違反ということでありますから、少し違和感があるので、派遣事業については派遣法 違反に対する厳正な指導監督ということで、偽装請負などといった例示は少なくとも要 らないのではないかと思います。  それから、15頁ですが、先ほど議論が出た点なので追加的な話ですが、研修生と技能 実習生との書分けということが表現の中で必要なのではないかと思います。以上です。 ○長谷川委員 まず、6頁で「雇用政策の基本的考え方」なのですが、全体的にはこれ でいいと思っているのですが、現状があって、これから5年間どうするのかというとき に、非常に特徴的な言葉遣いで言えば、輪島さんは嫌だと言ったけれども、偽装請負と か違法派遣とか、ワーキングプアとか、格差とか、この問題は雇用政策の中で避けて通 れないと思うのです。この時点で、現時点で雇用政策を立てるとき、社会の中でこうい うことが起きている、労働者をめぐる状況の中でこういうことが起きているということ は何らかの形で書く必要がある。それで、5年を過ぎたときにそういうものが解消され ていれば、それは政策の評価として、是正されたとか、ということが必要なのではない か。ここは、だから、起きていることは現実はきっちりと直視するということが、第1 点、必要なのではないか。随分書き込んでありますが、この辺はもう少し欲しいなと思 います。  それから、雇用政策の基本方針で、この(1)(2)で安定と多様性と公正の確保なの ですが、これは公正の確保に入れたほうがいいのかどうなのか少し検討が必要なのです が、労働基準法の遵守とか、法令遵守の問題をきっちりと書きながら、様々な政策が必 要だということが少し見える必要がある。なぜかというと、あまりにも法律を守らない ことが多すぎる。そういう意味では、最低限の法律はきっちり守ることで、その安定と か多様性とか公正というものができるのだということがもう少し国民に見えるように書 くことが必要なのではないか。  それと、これは私どもの意見なのですが、もしかしたら使側の人たちからは違うと言 われそうな気がするのですが、一応、考え方として、雇用政策の基本として職安法では 直雇用が原則になっているわけですが、例えば雇用の原則というのは直雇用で期間の定 めのない雇用であるというような大原則を立てることも必要なのではないか。職安法で 直雇用の原則は導き出すことができると思うのですが、私は、期間の定めのない雇用に ついても、その他の法律を用いらながら、援用しながら、ここで書けるのではないかと 思いまして、やはり、我が国の雇用の原則は何なのかというのを国民や企業にきっちり と示すことが必要なのではないかと思います。  もう1つは、公正の確保というところでは、今回のこの方針のいちばん最後にはパー トの均衡処遇が書いてありますが、それはパートだけではなくて、いろいろな多様性、 雇用・就業形態の多様化に対して、格差を是正するとか、そういうことから見れば、均 等待遇とか均衡処遇というものが必要なのだという視点を何らかの形で入れることが必 要なのではないかと思います。  「若者」の所では、217万の8割というのは173ではないかと思ったのですが、それで なぜ8割なのか。先ほども理由を言われたから何とも言えないのですが、できたら8割で はなくて全部と書いてもいいのではないかと思う。そうでなければ雇用の安定とか若者 の問題が解決しなくなるのではないかと思っています。  それから、10頁に来て、先ほど成瀬委員も言いましたが、私は65歳以降の話は、意欲 と能力のある人はずっと働けばいいと思っているのです。いくらでも働き手は要るのだ から、意欲と能力のある人はずっと働き続ければいいと思っています。80歳で元気な人 がいるし、90歳でも元気に働いている人がいるわけです。だから、ここで鉤括弧をして 「70歳」としていいのかどうなのかなというのは、成瀬委員と同じように、若干の疑問 があります。私は、意欲と能力のある人はずっと働けばいいと、私はずっと働くつもり ですからそんなふうに思っています。  10頁から11頁で、小さい話で申し訳ないのですが、障害者のことが詳しく書かれてい ていいと思うのですが、中途障害者の問題も、触れられたら触れていただきたいなと思 います。次に、13頁で、全体的にセーフティネットの書込みが弱いのではないかと思う ので、セーフティネットの役割について、もう少し書いていただきたいと思います。 事前規制から事後規制にというふうに日本社会が転換したときに、そのときに何が必要 かといったら、事後チェックとセーフティネット機能なわけです。だから、そこのとこ ろはきちんと書いてほしいと思います。  それと、13頁、14頁でキャリア形成の話が書いてあるのですが、私は、いま我が国は 能力開発に対する国の役割をきちっと書かないと本当に抜けていくと思っています。公 共職業訓練はなぜ必要なのかということについて、国民がもう一回考えなければいけな い。訓練の仕方は官民両方あると思うのです。しかし、国が何をするのかということと 公共職業訓練が何をするかということをもう少しきっちりと書かなければならないので はないかと思います。  それと、能力開発は、1つは、現時点で企業の基本的な企業内の能力開発を軸にしな がら、かつ自己啓発で外部でも研修するという、その2つの組合せだと思うのです。こ の間、バブル崩壊後、日本の企業は大変だったから、能力開発費を削減してきたわけで す。それは今までのいろいろなアンケートを見てもそうなわけです。でも、いまこの時 点で見ると、いろいろな能力について、専門的な技術高度な人から中堅的な人、ルーテ ィンの人、どうも能力が劣化しているのではないかと言われているわけです。そうする と、もう一回、企業の能力開発を軸にしながら自己啓発とか企業外の研修のミックスだ ということがもう少しわかるようにここは書き込んでほしいと思います。  もう1つ、14頁の「キャリアの中に失敗があったときに」というのは、一体これは何 を言うのか教えてほしい。キャリアの中の失敗というのは何なのか教えてほしいです。 その次に、16頁の有期労働契約についてなのですが、有期はもう少し何か書いたほうが いい。何年か前に条件分科会で基準法の改正をやったときに、有期は原則1年というの を緩和して3年、5年にしたのです。そのときに中期雇用とか、いろいろなことを言われ たのです。そうすると、有期契約というものをどのように見るのかということがあると 思うので、先ほど成瀬委員は有期であったとしても雇用の安定をどう図るかという話を したのですが、ここはもう少し有期を書いてやらないといけないのではないか。それと 同時に、有期について、ほかの分科会で均等待遇を議論していないから書きにくいと思 うのですが、私は、どんな働き方をしたとしても、それが均衡な処遇をされることによ って皆が納得できるというようなものだとか、そのことによって格差が是正されるのだ ということが見えないと、いま社会で起きていることに対する雇用政策5カ年計画が受 け入れられないと思いますので、全体にはこれでいいですけれども、いま言ったような ことを少し検討してもらえないか。おそらく異見はあると思いますので、これは私の意 見ですので、議論をしていただければと思います。 ○大橋分科会長 時間も来ておりますが、ご意見はもうよろしいですか。いまいろいろ なご議論をいただきましたが、基本的な内容そのものについて根本的に変えろというよ うなご意見ではないと理解しております。ただ、力点の置き方をどうするかとか、ある いは表現をもう少し適切にというご意見、あるいは意味内容をもう少し明確にというご 意見が中心だったと思います。したがって、もしここでさらにご意見がなければ、次回 は本日いただいたご意見を踏まえてこの雇用政策基本方針案の改訂版、全国方針の改訂 版をご提示いただき議論をしていただきたいと思います。今日いただいたご意見、ご指 摘はかなり盛りだくさんでして、うまくこれに対応するのは非常に難しいと思いますが、 できるだけ事務局のほうで頑張っていただきたいというふうに存じます。  それでは、次の議題は「労働力需給制度部会の中間報告について」でございます。労 働力需給制度部会の部会長である清家委員よりご報告をお願いいたします。 ○清家委員 労働力需給制度部会長の清家でございます。この度、労働力需給制度部会 の中間報告をとりまとめましたのでご報告申し上げます。資料No.3をご覧ください。こ の資料No.3の記の1にありますように、労働者派遣制度につきましては、平成17年5月よ り、平成15年の労働者派遣法改正後の施行状況等を踏まえたフォローアップを派遣元事 業主、派遣労働者等の関係者からヒアリングやアンケート等によって行ってきたところ ですが、本年の9月には具体的な検討課題をとりまとめ、精力的に検討を行ってまいりま した。しかしながら、検討課題の一部につきまして、労使の意見の一致が見られるもの もある一方で、登録型の派遣労働、派遣受入期間、派遣労働者への雇用申込義務、派遣 元事業主・派遣先の講ずべき措置等の在り方につきましては、労使それぞれ、根本的な 意見の相違がありまして、隔たりが大きい状況でございます。  記の3に書いてありますが、こうした意見の相違は労働者派遣が原則自由であると考 えるのか、本来は限定的なものであるべきと考えるか、という基本的な考えの違いに起 因するものでございまして、労働者派遣制度の根本的な検討を行うことなく、このまま 議論を続けましても意味のある結論に到達することが困難ではないかと考えたところで ございます。  そこで、記の4ですが、こうしたことから、登録型派遣の考え方と労働者派遣制度の 根幹に関わる問題につきましては、学識者からなる研究会を設けまして、労働者派遣制 度の趣旨、登録型派遣の考え方、派遣先の責任の在り方、派遣労働者の処遇の在り方を 踏まえつつ、部会で出されました検討課題を中心に幅広く、法的、制度的な考え方につ いて整理を行うこととし、部会としてはこの研究会の結果を十分に踏まえつつ、引き続 き審議を深めていくべきだというふうに考えているところでございます。  ただし、記の5ですが、日雇派遣、派遣元事業主の情報公開及び効果的な指導監督の 実施につきましては、一定程度、労使の意見の一致が得られておりますので、これらの うち、早急に対応すべきものにつきましては現行法の下で労働者保護の仕組みがより適 切に機能するよう、必要な省令、指針の整備について、労働力需給制度部会において速 やかに検討を行うこととしております。このような形で中間報告をまとめさせていただ きました。今後は、労働力需給制度部会において、早急に対応すべきものについてはで きるだけ早く部会でとりまとめを行いますとともに、引き続き制度の在り方について検 討を行っていきたいと思っております。以上、ご報告させていただきます。 ○大橋分科会長 それでは、本件につきましてご意見をいただきたいと思います。 ○成瀬委員 労働者派遣制度については、この中間報告にありますとおり、2005年5月 からフォローアップ、関係者へのヒアリング、アンケート実施、具体的な論点を出して のいろいろな審議ということで、部会のほうで精力的な審議をされていることは私も重 々承知しております。私に関係する電機産業の労使、人材派遣業の労使、関係する業界 としての業務請負業の労使、それぞれ非常に関心が高く、私のほうにも、何か知ってい る情報があれば教えてほしいという問合せもあったりすることがあるわけです。精力的 な議論をされてはいるのですが、残念ながら、部会の議事録の公開が多少遅れ気味なよ うで、昨年10月以降かなり改善はされて、昨年の9月27日の第104回までホームページで 公開されているようなのですが、今後も、是非、タイムリーに、どういう議論がされて いるのかということの広報活動といいますか、議事録の掲載等を迅速にお願いしたいと 思っています。ややもすると、国民の中では関心が高いのですが、マスコミ報道だけし か情報源がないということにもなりますし、私自身は審議会委員とか連合から聞くとい うルートは持っているにしても、傘下の労使それぞれから非常に関心が高いということ を言われていますのでよろしくお願いします。それと、今後の予定といいますか、可能 な範囲で何かわかっていることがあれば教えていただきたいと思います。 ○需給調整事業課長 1点目の議事録の問題ですが、大変申し訳ございません、これに つきましては速記を起こしていただく時間、委員の皆さんに見ていただいて署名をいた だく時間等々がありますが、できるだけ早くホームページにアップできるように今後と も努力をしてまいりたいと思います。  それから、今後の状況ですが、この中間報告の中で2つご指摘いただいておりまして、 1つは、研究会を設けるということでございます。これにつきましては、現在、委員の 人選等を行っている段階でありまして、これもできるだけ早く、できましたら来月にも 立ち上げまして精力的にご検討いただきたいと思っております。それから、記の5の部 分で、緊急に対応すべき部分につきましては、部会のほうから私ども事務局に省令なり 指針なりの案を早急に用意した上で部会にお諮りするようにというご指摘をいただいて おりますので、これにつきましても、月内には部会のほうでご議論いただきまして、で きるだけ早く結論をいただきたいという段取りで考えているところでございます。 ○大橋分科会長 その他、ご意見いかがでしょうか。よろしいですか。それでは、労働 力需給制度部会からの中間報告を承ったということにいたしまして、部会におかれまし てはこのような方針で引き続き労働者派遣制度について検討を進めていただきたいと思 います。そのほか、全般に何かご意見はございませんか。特にないようでしたら、本日 の分科会はこれで終了します。次回は1月28日14時からこの職業安定局第1会議室で開催 いたします。 (署名委員指名)  どうもありがとうございました。                      (照会窓口)                        厚生労働省職業安定局総務課総務係                         TEL:03-5253-1111(内線 5711)