07/12/25 第3回腎疾患対策検討会作業班資料及び議事録 第3回腎疾患対策検討会作業班 平成19年12月25日(火) 経済産業省別館1028号会議室 ○日下課長補佐  それでは、ただいまから第3回腎疾患対策検討会作業班を開催させていただきます。 作業班の皆様方には、お忙しい中をお集まりいただきましてまことにありがとうござい ます。  それでは、班員の出席状況を御報告いたします。本日は全員出席でございます。よっ て本会議は成立となります。  それでは、議事進行を班長の飯野先生にお願いしたいと思います。飯野先生、よろし くお願いします。 ○飯野班長  皆さん、お集まりいただきましてありがとうございます。それでは、まず事務局の日 下さんの方から、資料の確認をお願いいたします。 ○日下課長補佐  それでは、資料の確認をさせていただきます。資料1「今後の腎疾患対策のあり方に ついて(案)」というものです。資料は以上です。参考として、これまでの第1回作業班、 第2回作業班の資料をつけさせていただいております。不足しているもの等、乱丁等が ございましたら、事務局までお申しつけください。 ○飯野班長  それでは、これより議事に入りたいと思います。今日はクリスマスですから、患者さ んにいいプレゼントになるようなものをつくっていただきたいと思います。まず「今後 の腎疾患対策のあり方について」の報告、ここに案とありますが、素案を作成すること がこの目的ですけれども、当作業班の親元に当たる腎疾患対策検討会に提出することに なっております。今回の作業班に向けて、班員の先生方には原稿を書いていただきまし て、いろいろ貴重な原稿をありがとうございました。また、事務局もお手伝いいただき ましてありがとうございます。では、事務局の方から、資料の説明をお願いいたしたい と思います。 ○日下課長補佐  それでは、資料1「今後の腎疾患対策のあり方について(案)」について、ご説明いた します。まず構成ですが、大きく3つに分かれております。1番目が「慢性腎臓病の現 状」、そして2番目に「腎疾患対策の現状」、3番目に「腎疾患対策の今後」、柱として大 きくこの3つに分かれております。この中で、3番目「腎疾患対策の今後」というとこ ろで、2)普及啓発、3)地域における医療提供体制の整備、4)診療水準の向上、5) 人材育成、6)研究開発の推進、7)その他というところを各先生方に記載していただ いて、提出をしていただいております。事務局の方から、まず概略について1番から御 説明をさせていただきたいと思います。  まず1番目の「慢性腎臓病の現状」ですが、大きく慢性腎臓病とはどういうものか、 疫学はどうか、治療法とその進歩、現状はどうなっているのか、ということを記載させ ていただいております。  慢性腎臓病(CKD)とは、医学的には「尿蛋白陽性などの腎疾患の存在を示す所見」、 もしくは「腎機能低下」が3カ月以上続く状態と定義されております。そのリスクファ クターには、高齢、家族歴、過去の健診における尿異常や腎機能異常等がございます。 また、CKDは糸球体濾過量(GFR)によって1〜5期に分類されております。また、 CKDは、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患のリスクが高いということで知られており ます。  引き続き疫学でございます。腎機能が低下をしている状態を、GFRが 60ml/min/1.73m2以下と定義しておりますが、このGFR60ml/min/1.73m2以下は日本 人においては約1,930万人と推計されております。このうち、日本人の特性を考慮して、 GFRが50ml/min/1.73m2以下の場合がCKD3〜5期に相当すると考えますと、この 3〜5期の患者は総計で約420万人と推計されております。これは日本人の有病率の約 4%に当たり、かなり大きな罹患数を占める疾患だと考えております。  また、慢性腎不全による透析患者の数は毎年増加をしており、この中でも新規に透析 導入される患者についても一貫して増加傾向にあるということ。こうした導入患者の原 疾患としては、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症が多くを占めています。この 中でも特に糖尿病性腎症は大多数を占めております。また、腎不全による死亡者数は、 我が国においては死因の第8位となっておりまして、このように腎疾患は我が国におい て重大な疾患であるというようなことを記載させていただいております。  次に、治療法とその進歩についてでございますが、CKDの原疾患のうち、最大のも のが糖尿病性腎症であるということ。これは十分な血糖管理を行うことにより、その発 症予防や進行の遅延が可能ということ。また、その原因の一つである高血圧による腎硬 化症についても、血圧を適切にコントロールすることによって、発症の予防や進行の遅 延が可能であるということ。また、慢性糸球体腎炎等についても、免疫抑制剤等によっ て、その治療が現在コントロール可能であることでございます。こういった腎機能障害 の進行防止のためには、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテン シン受容体阻害薬(ARB)等による薬物療法や食事療法が現在行われているというこ と。CKDは悪化すると腎不全となり、その治療としては、人工透析や腎移植が行われ るということを記載させていただいております。  2番目「腎疾患対策の現状」というところでございますが、現在の我が国における腎 疾患対策は、これまで健診による腎疾患の早期発見と、実際に末期腎不全になってしま った患者さんへの透析医療の充実及び腎移植を中心に行われてきたということ。例えば 腎疾患の早期発見では、老人保健法に基づく基本健康診査等、法律に基いた健診が実施 されてきたこと。人工透析対策としては、透析の普及を目的として、不足している地域 に設備整備を行うということ。また、患者の負担を軽減するという意味で、高額療養費 制度や自立支援医療による患者の医療費の負担を軽減してきたこと。また、安全性の確 保という意味では、院内感染の防止対策や災害時の対応などが行われてきたことを記載 させていただいております。また、臓器移植対策としては、脳死移植を初めとする死体 腎移植の法的整備と共に、臓器移植ネットワークの構築や、それに伴う移植コーディネ ーター等のシステムを確立するということを行ってきております。また、腎疾患に関す る厚生労働科学研究としては、生活習慣病対策、特定疾患対策、再生医療、医療安全等 に関する研究事業が行われてきたところであります。  このように腎機能に異常が見られた患者の治療や重症化予防については、医療現場に ゆだねられる部分が大きいということ。そして、人工透析が必要となって初めて専門医 に紹介されるという場合もあること。  こういった状況の中、CKDに関する医療水準の向上に関する関係学会の活動が盛ん になり、昨年6月に日本慢性腎臓病(CKD)対策協議会が設立されたほか、これを構 成する学会の一つであります日本腎臓学会において、かかりつけ医がCKDの概念を認 識して、CKD患者の早期発見・病診連携ができることを主眼とした「CKD診療ガイ ド」が作成されているところであります。  3番目「腎疾患対策の今後」ということで、1つ目に対策の目標を立てさせていただ いております。この腎疾患対策の目標は、「腎機能異常の重症化を防止し、慢性腎不全に よる透析導入への進行を阻止することを目標とし、さらに腎疾患に伴う循環器系疾患(脳 卒中、心筋梗塞等)の発症抑制にも資するよう、この報告書に基づき、関係する施策を 推進することにより、目標の実現を図る」ということを目標とさせていただいておりま す。  以下、普及啓発でございますが、大きく普及啓発の対象と内容、方法という形で分け させていただいております。まず普及啓発の対象についてですが、国民に広く普及啓発 を行い、健診の受診を促すなど、腎疾患への意識を高めるということを記載させていた だいております。また、こうした国民の中でも、健診で異常を発見されても医療機関を 受診しない者や、医療機関で治療中のCKD、糖尿病、高血圧等の患者も存在して、こ れらがCKDについての啓発活動の重要な対象であることを記載させていただいており ます。  普及啓発の内容については、1〜5の項目を挙げさせていただいております。1つ目 が、慢性腎疾患が極めて患者数の多い疾患であること。2つ目が、自覚症状に頼ると発 見が遅れるということ。しかし健診等によって発見が可能なこと。3つ目が、腎機能の 低下によって、将来透析に至る可能性があること。心血管病変の進行が早まること。4 つ目が、慢性腎疾患が予防、治療や進行の遅延の可能な疾患であること。5つ目が、特 に、生活習慣病と深くかかわり生活習慣の変容により改善が可能であること。こういっ たことを中心に普及啓発をしてはどうかということを記載させていただいております。  普及啓発の方法についてですが、国による様々な広報媒体や、地方公共団体が発行す る広報等を積極的に活用するほか、マスメディアを活用するなど、広く国民への周知を 図ることが重要であるといったことを記載させていただいております。また、これらの ほかに、地方公共団体や各保険者においては、保健指導の場を活用する、あるいは健康 教育のための講演会、市民公開講座を開催するなどといったことを記載させていただい ております。また、こういった普及啓発に当たっては、医師だけではなくて、保健師や 看護師等のパラメディカルと言われる人材が適切に役割を分担していただくということ も記載させていただいております。  3番目「地域における医療提供体制の整備」ということで、かかりつけ医と専門医療 機関の連携、保健指導、関係機関の役割、このような3つの大きな項目を立てさせてい ただいております。  かかりつけ医と専門医療機関の連携ということころでは、CKDの予防・治療が、医 療機関や診療科の狭間で見過ごされることがないよう、スムーズに診療連携を行うこと が極めて重要であること。必要に応じてかかりつけ医が専門医療機関に紹介を行い、ま た専門医療機関がかかりつけ医に逆紹介を行うようにして、診療を継続していくシステ ムの構築が望ましいこと。また、専門医療機関は地域連携クリティカルパスを策定して、 活用することが望ましいこと。こういったことを記載させていただいております。  保健指導においては、CKDの発症要因の一つとしてメタボリック症候群が含まれる ことから、CKD対策の観点からも、メタボリック症候群の患者に対する保健指導を推 進するべきであるということ。また、健診でeGFRに異常が発見された場合には、早 期にかかりつけ医への受診勧奨を行うことなどを記載させていただいております。  関係機関の役割ということでは、都道府県及び国、学会等の役割について記載をさせ ていただいております。都道府県においては、医療計画等を活用して、慢性腎疾患の診 療体制を確保するべきであるということ。こういった体制を整備するに当たっては、地 方の医師会や関係学会の協力、あるいはパラメディカルや患者の代表等が加わるなどし て、幅広い連携体制を確保すること。  また、国や学会等においては、日本医師会等の協力を得て、医療連携や診療水準の向 上を図るための情報提供や支援を進めること。さらに、こういった健診の情報や診療の 結果についても、何らかの形で共有することが可能な方法について検討するということ を記載させていただいております。  関係学会においては、地域における先進的な活動とその成果を学会誌等で広く周知す ること。また、専門医がかかりつけ医からの相談に的確かつ迅速に答えられるような体 制を整備することを記載させていただいております。  4番目の「診療水準の向上」を説明させていただきます。ガイドラインの作成・普及 ということと関連する疾患の治療との連携という、大きな2つの項目を立てさせていた だいております。  ガイドラインの作成・普及については、かかりつけ医を対象とした「CKD診療ガイ ド」が既に策定されておりますが、こういったものを広く普及させるために、よりわか りやすくした小冊子の作成・普及ができないかということ。また、現在、学会で作成中 であるとお聞きしている「CKDガイドライン」について、完成した暁に、腎臓、糖尿 病、循環器の専門医及びこれらの疾患を診療する機会の多いかかりつけ医へ普及するこ と。また、こういった医師以外にも、保健師、看護師、管理栄養士等が保健指導のスキ ルを高めるための方法の確立及び教材の作成を行うこと。こういったことを記載させて いただいております。  関連する疾患の治療との連携ということでは、CKD患者は糖尿病、循環器疾患、脳 卒中等の疾患を合併することが多いことから、これらの疾患と腎疾患の専門医が共通の 認識の上で診療を行うことが重要である。こういったことを記載させていただいており ます。  5番目の「人材育成」についてですが、大きく2つの柱を立てさせていただいており ます。1つ目が専門医・かかりつけ医の人材育成、2つ目がコメディカルの人材育成と いうことでございます。診療、指導のできる知識と経験を持った人材の育成が行われる べきでありますが、すべての患者に専門医が対応するというのは、人数の関係でも困難 ではないかということで、腎臓を専門とする医師以外にも、CKD患者の診療、指導を 熟知しCKDの診療を担うかかりつけ医等の医師や、CKD診療の補助を行うコメディ カル等の人材育成が必要であるということ。  専門医・かかりつけ医の人材育成という点では、患者の数に比べて専門医が少ないと いうこと。また、その地域によっても数に差があるということ。このために、腎臓専門 医の育成を進めるとともに、CKD診療を行うかかりつけ医の資質向上を目指した取り 組みを行うべきであること。さらに、かかりつけ医に対して積極的な啓発活動を行って、 これらの指針の現場での活用を図ること。こういったことを記載させていただいており ます。  コメディカルの人材育成という点では、腎疾患の指導・管理に精通したコメディカル の育成のためには、関係学会と職能団体が連携した研修会・講演会の開催や、生涯教育 のための教育プログラムの開発等を進めるということを記載させていただいております。  6番目の「研究開発の推進」では、CKD診療を効果的かつ効率的に行うための診療 システムの構築と検証、リスク因子の同定等を進めるとともに、今後我が国での増加が 予測される疾患の病態解明や治療法開発に関する研究などの研究を推進するべきである ということ。そういった意味で、診療のエビデンス確立に関する研究、病態の解明と治 療法開発に関する研究、こういった大きな2つの柱の研究を進めるべきではないか。  診療のエビデンス確立に関する研究としては、1)地域における早期発見と標準的な 診療システムの有効性を検証すること。2)CKD患者管理における検査項目としてど れが有用であるかというような研究。3)CKDの病態別の心血管危険因子を同定する ということ。4)日本人における冠動脈疾患に対する腎機能低下の意議を明確化する。 こういった診療のエビデンス確立に関する研究をやってはどうか。  また、病態の解明と治療法開発に関する研究としては、1)糖尿病性腎症発症予防と 進展阻止法に対する研究、2)我が国における腎硬化症の発症・進展における危険因子 の解明、3)慢性糸球体腎炎の治療法の開発、4)IgA腎症における血管病変進展機 序解明、このような研究の実施してはどうかということを記載させていただいておりま す。  最後に「その他」ですが、これまでに掲げた対策の実現性を高め、効果的に実行する ことが重要であるということ。そのためには、現場の医療関係者や患者等の自発的な取 り組みに加えて、推進を促す何らかのインセンティブがあること。また、腎疾患対策の 効果(アウトカム)を継続的に評価するとともに、そのプロセスについても適切に評価 を行うこと、またその後の実施に反映させること等を記載させていただいております。  事務局からの説明は以上です。 ○飯野班長  ありがとうございました。後で細かくディスカッションしていただきたいと思います が、まず全体的なことで何か御質問はありますか。項目立てなど御意見はございますで しょうか。なければ後で詳しくやります。はい、どうぞ。 ○藤垣班員  一つだけよろしいですか。言葉のことですが、「腎疾患」という言葉と「慢性腎臓病」 という言葉がかなり混在しています。最初のタイトルから「腎疾患」というふうになっ ていますが、急性腎不全が入っておりませんし、「慢性腎臓病」で統一はできないのでし ょうか。 ○日下課長補佐  「慢性腎臓病」で統一したいと思います。 ○飯野班長  ありがとうございます。厚労省では割に「腎疾患」というのは使っているんですね。 腎臓病にしましょうかね。では、ここではすべて、今、藤垣先生がおっしゃったように、 「慢性腎臓病」というふうにしておきます。  ほかの委員の方はいいですか。ほかにはございませんか。なければ、報告書に添付す る参考資料の図や表があるのですが、これは班員の各先生方から提出していただいたも ので、これをつけるのはこちらで、班長一任で選択させていただいてよろしいでしょう か。  それでは、議論していきたいと思いますが、まず3の項目です。前のところは大まか な総論ですからいいと思うのですが。はい、どうぞ、秋澤先生。 ○秋澤班員  1ページの疫学のところですが、「腎機能が低下し、GFRが60ml/min/1.73m2以下」 と書いてありますが、これは「未満」でしょうか。それから、次も「GFRが 50ml/min/1.73m2以下」と書いてありますが、これは「未満」でしょうか。 ○飯野班長  山縣先生、どうですか。 ○山縣班員  そうですね。「未満」ですね。 ○飯野班長  では、「未満」ということでお願いいたします。 ○秋澤班員  それから、もう一遍2ページをよろしゅうございましょうか。2ページの治療法とそ の進歩の最後から4行目ですが、「これらの治療によっても腎機能障害が重症化し慢性腎 不全に至る場合」と書いてありますが、慢性腎不全といいますのは別に重症化した疾患 ではなくて、ここで適切な言葉は「末期腎不全」という言葉ではないかと思いますが。 ○飯野班長  そのとおりですね。では、「末期」を入れてください。「重症化」の前にですね。 ○秋澤班員  「重症化し、末期腎不全」が適切と思います。 ○飯野班長  はい。ほかには気づいたところはございますか。では、なければ3のところ、「腎臓病 対策の今後」というふうに読みかえさせていただきますが、そこの……。いや、まず現 状のところですね。最初から行きましょうかね。では、1ページ目から行きましょう。 「慢性腎臓病の現状」ということで、今、秋澤先生の方からも指摘されましたが、1と 2の「腎臓病対策の現状」、その辺までですね。3の前までで何かございますでしょうか。 ○山縣班員  小さいことですが、「蔵」という字。皆さん、気づいておられると思いますが、慢性腎 臓病の「臓」が「蔵」になっているので直していただきたいと思います。 ○飯野班長  いやいや、重要なことですから、気づいたところはどんどん言ってください。いいで すか。そこの最初の1、2はそんなに問題にならないとは思いますが。  では、「腎臓病対策の今後」というところを、ここが重要だと思いますのでやっていき ましょうか。3ページ目になりますが、1)の対策の目標というところですが、これは いかがでしょうか。 ○藤垣班員  よろしいですか。循環器系疾患が何となくつけ加えのようなニュアンスが見えるので すが、末期腎不全への移行と循環器系疾患の発症抑制、この2つの柱が目標として大き く入るべきではないかと思います。 ○飯野班長  そうですね。では、並列するように書きかえて。この循環器系疾患のところは最初は 入っていなかったのですが、そこをつけ加えたというところですけれども、大きな柱に すると。「腎臓病対策の今後」ということで、やはり腎臓病の対策にはこういう目標があ るということは重要だと思いますので、並列にしていただきたいと思います。その辺は よろしいですか。  では、目標はよろしいとして、2)普及啓発、その中の普及啓発の対象、この辺はい かがでしょうか。執筆いただいたのは松川さんと秋澤先生ですね。その辺でいかがです か。特に医療機関を受診しない方ですね。この辺が重要だと思うのですが。 ○松川班員  普及啓発の対象という形でとらえていいのかどうかわからないのですが、まず普及啓 発する前提の条件として、やはり健診を受けていただかなければいけない。健診を受け て自分の体がわかってくるというところから、自分の腎機能やGFRに入っていくので、 一つにはまず健診を受けていただかなければいけない。そういう意味では、今健診を受 けていないすべての人が普及啓発の対象になります。これから特定健診で行う未受診者 対策というのも、CKDの普及対策に入ると考えます。 ○飯野班長  そうですね。そのとおり。具体的にはどういうふうに。 ○松川班員  具体的にはどうしたらいいでしょうね。普及啓発の対象。 ○飯野班長  特定健診で受けない人。 ○松川班員  そうですね。特定健診は受診率を向こう5年間で80%に上げようとしていますので、 今政管健保や国保の対象者だと40%くらいのところが倍に上がってくるので、これはあ る意味で特定健診・特定保健指導をきちんと各自治体が行っていくということで、クリ アできていく問題だと思います。ただ、特定健診の中でメタボリックだけではなくて、 CKDの方もきちんと見ていくという視点を持たなければいけないと思うので、そのこ とは記載していただければと思います。 ○飯野班長  そうですね。その点についていかがでしょうか。 ○梅田疾病対策課長  先ほど御指摘の点、5ページの保健指導というところに、メタボリック症候群の患者 に対する保健指導を推進と絡めてCKD対策の重要性もというところで、松川班員から いただいた御意見、実は啓発と一緒にこの点も御指摘いただいていたのですが、保健指 導というところに書いた方がより明確になるかと思って、このように書かせていただい ているのですが。 ○飯野班長  松川班員、よろしいですか。 ○松川班員  はい。 ○飯野班長  では、こちらに入っているということですね。ほかにはございますか。はい、どうぞ。 ○山縣班員  特定健診を超える、75歳以上の方たち、実際には透析導入を考えますと圧倒的に多い、 圧倒的というのは言い過ぎですね、でも現実に多くなってきている、どんどん年々ふえ ているという部分がその75歳以上の方たちですので、何か健診を超えた普及啓発の対 象というのを少し盛り込めたらなと思うのですが。 ○飯野班長  どうですか、日下さん、そういうところを高齢者に対して。 ○日下課長補佐  仮に入れるとすれば、この普及啓発の対象というところの上から3行目の「健診未受 診者など」、このあたりでよろしいでしょうか。 ○山縣班員  後期高齢者の問題など、どう表現したらいいのでしょうね。昔ですと、例えば病院に 初診するだけで検尿を無条件でやっているという時期もあったのですね。今はやはりこ れは保険診療の中でということで、病名がつかないとなかなか難しいということから余 りやられなくなってきました。したがって、健診を受けるのと同等な、何かスクリーニ ングがかかるような手だてを高齢者向けにつくれればいいなという気がするのですが、 それを言葉としてどうやって表現するかだと思います。 ○飯野班長  今、老人健診はどういうふうになっているのですか。 ○日下課長補佐  老人健診は前回の作業班でも説明があったと思いますが、特定健診と通常の健保法に 基づく基本健康診査の2つに分かれて実施することとしております。特定健診の対象で ない方はそちら側で拾うことにはなっているのです。 ○山縣班員  ちょっと私の理解がおかしいかもしれないですが、一応確認させていただきたいのは、 後期高齢者も特定健診と同じ内容の健診を受ける機会はすべてある。それはないですよ ね。 ○松川班員  なくはない。私が答えていいのでしょうか。なくはないのですが、恐らく積極的に75 歳以上の方に健診を勧めるという形ではないと思います。というのは、75歳までの方は 既に保健指導を受けてきたであろうという判断で、大方の75歳以上はレセプトの突合 をしたときに既に生活習慣病で治療しているので、そちらの方できちんと診ていただく ことを第一優先にしようという形で、努力義務ということになっていますので、義務化 ではないですよね。だから、各保険者の方たちが75歳以上にその前の年代と同じよう に受診勧奨して、積極的に受診を勧めるかというと、各保険者でかなり格差が出てくる と思います。 ○飯野班長  その辺は藤垣先生、あるいは秋澤先生、何か御意見はございませんか。 ○藤垣班員  特別そこのところはございませんでした。 ○飯野班長  それではどうしましょうか。なるべく対象を広くするという意味で、漏れのないよう な対象とするような書き方にしていただいて。ここでも「患者数が極めて多く、健診未 受診者」ですね。この文の中でもすべて網羅はされていると思いますが、どういう特定 健診、あるいは特定健診で漏れる方とか、そういうような具体的なところも記載してい くとわかりやすくなるかもしれませんね。どうですか、日下さん。 ○日下課長補佐  4ページ目の一番下側、3)のかかりつけ医と専門医療機関の連携というところにあ るのですが、おおむねそういった75歳以上の方は、やはり何らかの基礎疾患を持って いるだろうということがある程度予測されますが、そのような高齢者については既にか かりつけ医に受診しているというようなことが想定されております。 ○飯野班長  ニュアンスであるわけですね。そこも具体的に何か1行でも入れておくといいかもし れないですね。では、またそのように少し考えましょうか。 ○山縣班員  できたら75歳以上の後期高齢者に関しては、腎疾患の存在を否定できないので、通 常外来受診時にも検尿等の確認をした方がよろしい、というような文言を入れていただ けるとよろしいのではないかなと思います。 ○飯野班長  そういうように広く。梅田課長はどうですか。よろしいですか。 ○梅田疾病対策課長  ここの班の意見ということであれば、細かな患者さんのフォローアップの仕方などに ついては、恐らくガイドラインなどでもう一度改めて注意喚起されるものだと思っては いるのですが、特に後期高齢者ということでの例示が必要ということであれば、班長と 言い回し、表現についてまた御相談させていただきたいと思います。 ○飯野班長  そうですね。やはり慢性腎臓病の方は高齢者が多いということで、そういうところも ターゲットにしなければいけないということも考えられます。それでは、後で少しそこ は文言を考えたいと思います。 ○秋澤班員  1点よろしいですか。対象は大きく3つあるとここに書かれていると思います。1つ 目は健診を受けない人。2つ目は健診で異常を発見されても医療機関を受診しない人。 3つ目は現在医療機関を受診中の人。この3つが大きなポイントだと思いますが、これ をこのまま拝見すると、例えば後半の2つは「こうした中には」という形で、健診の受 診が一番であって、それから続いて異常があった方で受診をしない人や診察中の人とい うようなニュアンスにとれるので、3つが同等に重要であるという表現にしていただい た方がよいと感じました。 ○飯野班長  はい。それではここを同等に、幾つか項目を書いてわかりやすく表現するというよう にしましょう。御意見ありがとうございます。ほかにはございませんか。今の対象のと ころが非常に重要だと思います。あとはよろしいですか。  次が普及啓発の内容ですが、そこに5点書いてあります。いかがでしょうか。はい、 どうぞ。 ○松川班員  普及啓発の内容の2番目、「自覚症状に頼ると発見が遅れるが、健診等により発見が可 能なこと」と書かれてあるのですが、腎機能の発見が可能になるためには、まず1点目 としてはクレアチニンの存在は欠かせないと思います。CKD診療ガイドより確定版の 方が先に出てしまったので、検査項目の中に尿検査しか入らなかったという時系列の問 題があると思います。しかし、標準的な健診・保健指導プログラムの健診項目について も、確定版の中で定期的に各学会の最新の知見を踏まえて、検査項目を見直す必要があ るというふうに体制として書かれていますので、定期的というと多分5年後ぐらいには 見直しがかかると思うので、その見直しの際にきちんとGFRが評価できるクレアチニ ンの項目を再検討していただくためには、この段階できちんと表記していただきたいと 考えます。  それから、現在の検査項目の尿蛋白、先生たちが残していただいた尿蛋白ですが、標 準的な健診・保健指導プログラムの判断基準、例えば血圧だとかヘモグロビンA1cだと か、受診判定値と保健指導判定値というふうに分かれているのですが、そちらに尿蛋白 の記載がないのは先生方は御存じでしょうか。肝心の尿蛋白を入れていただいたのです が、尿蛋白をどう判断していいかという記載が実はありません。早急にきちんと判断基 準を示していただきたいと思います。CKD診療ガイドは2+になったときには腎臓専 門医とあります。−と±は翌年の健診とありますが、実は尿蛋白1項目が+のときにど うしたらいいかという明確なものがありません。多分先生方は+はもう既に異常の始ま りなので、かかりつけ医という流れになっていると思うのですが、その時点でかかりつ け医の先生がいらっしゃればいいのですが、かかりつけ医の先生がいない場合、地域で 実際に尿蛋白+という段階で精密検査ということをしていくのであれば、受診勧奨値に +と入れていただきたい。それはCKD予防の立場で申し上げていかないといけないか と思うのですが。 ○飯野班長  山縣先生、どうですか。 ○山縣班員  まず前半の2番の内容についてですが、これは「健診等に」と書いてあるのは、もう ちょっとはっきりストレートに、「発見が遅れるが、尿検査や血清クレアチニン検査を受 けることにより」としてしまえば、間違いがなくなるのではないかと思いますので、慢 性腎臓病はそれで発見できると思います。  それで、後半の特定健診の尿検査に関しては、基本的には従来健診での尿蛋白1+は 要医療、すなわちかかりつけ医に行ってくださいと。そうするとその次はCKDガイド にのっとって、尿蛋白と尿中クレアチニンを同時測定して、0.5 g/gクレアチニン以上で あればさらに専門医、そうでなければかかりつけ医の先生でフォローしてくださいとい うのが診療ガイドだと思いますので、この点を明記することだと思います。 ○飯野班長  よろしいですか。特定健診では最初は尿検査は入っていなかったのですよね。それが 問題の根源なのですが。 ○山縣班員  たしか途中、血清クレアチニンに関しての判断基準を示してくださいというようなこ とを、腎臓学会の方に厚労省から言われて、それを文章を集めて、その後に血清クレア チニンが消えて尿蛋白が入ったという経緯が。 ○飯野班長  そうです。だから、そこは不備だったのでしょうが、腎臓学会の責任でもあるんです けれども、ここで少しそのようなニュアンスのことを入れておきましょう。ほかにはご ざいますか。はい、秋澤先生。 ○秋澤班員  5番ですが、生活習慣は大事だとは思うのですが、「生活習慣の変容」という言葉があ りますが、この「変容」というのは具体的にどういう概念なのか、一般にはちょっとわ かりずらいのではないですか。 ○飯野班長  ここは提案は、秋澤先生の案ではないですか。 ○秋澤班員  「変容」という言葉が。「生活習慣の変化」でもよろしいですか。 ○飯野班長  変容という言葉がわかりにくい。 ○秋澤班員  言葉がうまく理解できるだろうかということですが、いかがでしょうか。 ○日下課長補佐  この「変容」というのは、今までの生活習慣を改めて、例えば油っこいものを食べな いとか、少し歩きましょうとか、そういう今までの生活を改めるという行動変容の意味 合いです。 ○飯野班長  そういう意味で使ったわけですね。秋澤先生、どうですか。わかりやすい言葉に。違 和感があれば直していいと思いますが。 ○秋澤班員  まあ、ちょっとわかりづらいかなという感じがいたします。それからもう1点、「特に」 という言葉が入っているのですが、これが特にではなくて、この5つはみんな大事なこ とだと思われますが。 ○飯野班長  「特に」を取りましょうか。「変容」についてはどうですか。秋澤先生、こだわります か。「変化」にしましょうか。 ○秋澤班員  班長にお任せいたします。 ○飯野班長  ほかの先生、いかがですか。山縣先生、どうですか。厚労省では使うのでしょうね。 我々も使いますか。 ○山縣班員  まず一つは、慢性腎臓病の中には、生活習慣を改めても改善しないものもあるんです よね。そこら辺、表現は難しいなと思いました。ただ、生活習慣病にかかわる慢性腎臓 病については、ということを逆に入れた方が、これは正しいような気がします。それに は生活習慣の、よく私たちは「変容」ではなくて「改善」とするのですが。 ○秋澤班員  生活習慣の改善だけで慢性腎臓病の治療ができない例はたくさんあると思います。生 活習慣病にかかわる慢性腎臓病については可能であるというふうに改めては。 ○飯野班長  なかなか厳しい言葉の問題も。では、この辺は班長に任せていただいて、少し変えて いきます。ほかにはございますでしょうか。その下の方の文章はよろしいですか。  では、次は普及啓発の方法ですね。方法については、これは具体案をそんなに挙げて いるわけではなくて、大きな見方として言っているわけですが、いかがでしょうか。 ○松川班員  普及啓発の方法は、どうしても広報とか見せるものに偏っているのですが、基本的に はまず健診を受けて自分の体を理解することから入ると思うので、普及啓発の方法はま ず健診を受けること。それで腎機能を示すような尿の検査、尿蛋白に異常がないかどう か、そのことから多分自分の腎臓がどうなっているのかなというふうに、自分のことと してとらえる一歩は、やはり自分の体から発見しないと他人事になってしまうと思うの で、健診を受けることがまず第一なのではないかとは思うのですが。 ○飯野班長  日下さん、どうですか。その健診を受ける広報をしようということかもしれないです が。まず、その広報媒体とかそういうものを利用して、マスメディアを利用して、この 慢性腎臓病が重要であるということで健診を受けなさいということだと思うのですが、 いかがですか。まず健診を受けた後のこの普及啓発ですね。 ○日下課長補佐  保健指導の場を使ってという意味でしょうか。 ○松川班員  住民の理解がまず病気を症状で判断するとか、腎臓の自覚症状が出る前に判断する指 標があるのを知らないとか、そもそも健診で何を調べているかよくわからないという事 態があったために、きっと透析突入までわからなかったというのが大きくあると思いま す。GFRを学習してから仲間の保健師が住民さんのところに行って、「実はステージ3 なんです」というお話をしたら、「突然ステージ3になったのか」と言われるんですよね。 そんなことはないですよね。ちゃんと1と2を経て多分3になっていったと思いますが、 でも先生方は4と5を目にされていると思うのです。ステージ3は実は地域の保健師の ところに、健診を受ける多くの住民の中にいるんですよね。そのことをまず本人が知る ためには、健診を受けなければ、わかるということの第一歩の入り口がまず健診を受け るというふうに現場の保健師はとらえるものですから、お知らせとしてCKDという概 念があるとか、そういう自覚症状がなかなか出てこない病気もあるからというよりも、 健診を受けるとそういう腎臓のこともきちんとわかってくるんだよということを。やは り生活習慣病を早期発見する目的で健診を長らくしてきたので、その中に、生活習慣病 の範疇に入れていいのかどうかわからないのですが、新しい慢性腎臓病という概念が入 ってきたことは、きちんとお知らせしていかないと、なかなか住民の中に位置づいてい かない。その一番初めは、やはりこれから80%の国民が受けようとしている特定健診の 中で、わかっていくということを広めていくのが先なのかなと思います。 ○飯野班長  はい、どうぞ、日下さん。 ○日下課長補佐  今の御指摘を踏まえて、普及啓発の方法のところの上から4行目の、「また、地方公共 団体や各保険者は」の後に、「健診で、保健指導の場を活用するほか」という形で、健診 の場も利用するという記載でよろしいでしょうか。 ○飯野班長  それでは、それを加えていただいて、あと具体的にはそういう言葉にかかわらず、こ れを使ってどんどん広げていくといいと思います。よろしいですか。はい、藤垣先生。 ○藤垣班員  普及啓発する対象ですが、今院外処方などもありますし、薬剤師さんたちへの啓発も 必要ではないかと思いますので、ぜひ入れていただきたいと思います。  それから、先ほど松川さんのお話の中で、すべてステージ1、2を経るということで、 もちろんそうだとは思いますが、先ほどから山縣先生も御指摘になっているように、メ タボリック、生活習慣病を背景にしないものもあり、割と速くステージ3まで行ってし まう、そして発見ということもあります。その辺も含めていろいろなことをわかってい ただくということが必要かと思います。 ○飯野班長  はい。ではその辺も入れていただいて。普及啓発とまたその次の医療提供体制にも、 やはり保健師さん、薬剤師さん、栄養士さん、ドクター、看護師さん、すべて入ってく るわけですよね。その辺も記載しておくといいかもしれません。よろしいですか。  それでは次の3)に移らせていただきますが、地域における医療提供体制の整備、○ かかりつけ医と専門医療機関の連携ということですが、ここではいかがでしょうか。こ こも非常に重要だと思うのですが、今までここがうまくいっていなかった可能性は多い と思います。ここではポイントはクリティカルパスを使うということですね。藤垣先生、 何かございますか。 ○藤垣班員  各地域で特別なものができるとは思いません。腎臓学会が出した病診連携ガイドに沿 うもので、少しのマイナーなモディフィケーションがあるかもしれません。一番大事な のは、やはりそこで中心となっていく腎臓専門医、専門医と称する人たちがかなりリー ダーシップをとってやることが大切で、かかりつけ医の先生たちに「どうですか」と言 うぐらいではだめだと思うんですね。ですから山縣先生、先ほどお話にあったように、 その地区の中心の医師がかかりつけ医を集めて、こうするんだ、この体系でお願いしま すという形でやっていかないとだめだと思います。そこのところを強調して欲しいと思 います。 ○飯野班長  どうしますか。1行入れましょうか。 ○山縣班員  恐らくどこまでここに書き込むかだと思いますが、理想とするシステムまで書いたら、 これはすごい量になると思うんですよね。ですから、かなり日本で標準的に同じような システム、専門医とかかりつけ医との間で患者さんのやりとりができるようなシステム を日本全国で広めるというか、構築していくということですよね。そのやり方だと思い ますので。 ○飯野班長  何か入れましょうか。一つ地区での中心的な専門医が何か。 ○山縣班員  この話をしますと、「専門医がいる地域はいいですよね」という話に必ず落ちつきます ので、ちょっとまだ表現が難しい部分があるかなという気がするのですが。秋澤先生、 もし何か御意見があるようでしたらお願いします。 ○秋澤班員  この部分は私が執筆したのですが、正直言って書きようがないんですね。今のところ まだ具体的なパスのサンプルができ上がっているわけでもないので、恐らく学会が一つ 模範的なものをつくって、各地域がいろいろと自分たちの地域の実情に合わせたパスに 改定していくしかないと思います。非常に抽象的な表現になってしまって大変申しわけ ないと思っているのですが、2回のこれまでの会議でも、具体的なクリティカルパスに ついての話は全くなかったということで、これはこれからの課題と認識してこう書かせ ていただきました。 ○飯野班長  では、現時点ではこのままでよろしいですか。 ○松川班員  済みません。基本的な質問になるかもしれませんが、こういう地域を指す場合、先生 たちの地域というのは都道府県単位なのでしょうか。例えば北海道のどこかで立ち上げ るとしたら、どの範囲ですか。 ○山縣班員  私はこれは医師会の単位ぐらいが、あるいは市町村の単位というか。やはり医師会あ るいは市町村程度の単位でシステムができてこないと、なかなかいいものができないの ではないかという気がいたします。 ○飯野班長  そこに専門医がいるかどうかですね。 ○山縣班員  ですからそういうことになってしまうのですね。 ○飯野班長  それよりも大きな範疇で、北海道には腎臓学会はキーパーソンが2人いますね。そう いう人たちが中心になっていくとか、そういうやり方もできるかもしれません。その辺 は具体案になってきますね。 ○山縣班員  恐らく普及啓発の目的であればいいのですが、体制というところまで踏み込んだ場合 に、果たして県だけの単位でできるかどうか。ある程度各県にリーダーとなるような先 生がいらっしゃるので、それが大まかな形をつくっていくことは今後は可能になると思 うのですが。 ○飯野班長  そうですね。やはりせっかく書いたのを有効に利用してほしいですから、その他の最 後にでも、具体的にこういうのをリコメンデーションするというような1行を入れても いいかもしれませんね。はい、藤垣先生。 ○藤垣班員  クリティカルパスに関しては、やはり書きようがないという先ほどからのお話です。 浜松でいうと、今業者さんがつくったようなものに似ているのですが、下敷きをつくり まして、それでこういう状況では紹介してください、こういう状況でお返しします、そ のかわり3カ月置きに来てください、その間にはこういう検査をしてください、という のをつくっているわけです。そうした場合、やはりかかりつけ医もそれをちゃんと持っ ていて、こちらも持っていて、あるところで例えばA(b)というフォローアップでや りましょう。A(b)と書くだけで病診連携ができれば、物すごく楽なわけです。です から、思っていることは一緒ですが、それをどう活用していくかというところでその地 区その地区のやり方というか、あるいは、全体でできれば一番いいですが、そういうと ころを今うまくできないかと思ってやろうとしているのです。 ○飯野班長  文言はここではこのままでいいと思うのですが、あと最後に加えるかどうかというこ とでよろしいでしょうか。  では、次は保健指導の点ですが、この辺は松川班員、いかがでしょうか。 ○松川班員  確認という形になるかもしれないですが、特定健診の中でもクレアチニンを引き続き 検査する市町村はあるんですよね。その中で、eGFRを換算したときに、60までは市 町村の保健師が例えば基礎疾患をきちんと、高血圧や糖尿をきちんと治療しているだろ うか、その治療がきちんとコントロール範囲にあるだろうかという形でかかりつけ医と 連携するだとか、その方の基礎の疾患の中に、問診の中で何か腎疾患を疑うようなもの があるだろうかという形で、おあずかりするというのは変な言い方ですが。GFR60と いう考え方でよろしいのでしょうか。50でしょうか。 ○飯野班長  MDRD式でやると日本では50と。ただ、今度新しくできた式が、日本人用のがあ るのですが、それだと60で、9%入るというようになりますので、そこのところは今。 ここではMDRD式で計算してありますから、それを少し括弧して明記するべきですね。 それで今後新しい式ができた場合には、それにのっとって診断していく。よろしいです か。山縣先生、どうですか。 ○山縣班員  そのとおりだと思います。ただやはり、今のは恐らくCKDハイリスクという人たち の指導をどうするか。CKDになる一歩手前と思われるような人たち。これに関してま ず重要なことは、原疾患をちゃんとかかりつけ医の先生に診ていただいていますか、と いうことを御指導いただく。さっきもかかりつけ医の先生用のもありましたが、保健の 指導の方にもそれなりに統一した、チャートのようなものをお示しする必要があるとい う気がします。 ○松川班員  かかりつけ医の先生のところで、例えばお薬がありますよね。腎保護を考えているお 薬を使われていなかったら。血液検査もできない昔からの地域の小さな病院で、当然尿 検査もしなくて、利尿剤などを出されているようなかかりつけ医の先生を信頼してかか っている住民さんもいらっしゃるのですよね。そういった場合は、具体的にはその次に 私たちはどうしたらいいのでしょうか。もちろんそちらの病院で血液の検査が受けられ ないので、住民さんは75歳過ぎでもきちっと受けていただく。そうすると、年齢相応 のものもあるのですが、例えば80歳、70歳、65歳ぐらいまで毎年きちんと、きちんと 落ちてくるというのは変な言い方ですが、低下してきていたときに、やはり……。 ○飯野班長  それはやはりかかりつけ医のレベルアップをするしかないですよね。日本の医療の問 題点は、ドクターのレベルが、バリエーションが専門医もいいかげんであるというよう なところですから、そこのところをこういうのを契機に変えていくべきではないかなと 僕は思います。それはなかなか難しいところもあるかもしれませんが、そこも目指して。 患者さんとそのドクターが信頼関係で結ばれている場合には、とやかく言うことはない かもしれませんが、ただやはり正確な情報をそのドクターに与えるというのは重要だと 思います。 ○松川班員  そういう意味では、かかりつけ医の先生と腎臓の先生が専門に先ほど言ったパスみた いな形もありますが、地域の保健師が例えばかかりつけ医の先生に、この方は健診をず っと受けていただいて、こういう状態で、こういうふうに新しい指標のGFRが少し落 ちてきて入るんですけれども、ということがわかるような形の何か組織みたいなものが あると、よりわかりやすいということですよね。 ○飯野班長  ですから、僕はドクター、保健師の人というのはプロとプロですから、別に上下関係 があるわけではないと思っています。それはそれぞれのプロが意見を言って、日本の医 療をよくするべきだと思います。そういうシステムに変えていくべきだと思います。は い、秋澤先生。 ○秋澤班員  松川先生にお伺いしたいのですが、この保健指導のところを読みますと、まず2行目、 「メタボリック症候群の患者に対する保健指導を推進するべきである」とあります。ま ずメタボリックの指導をしなさいと書いてあるんですね。それから3行たった最後のと ころで「CKDを意識した保健指導を併せて実施することが望ましい」ということで、 CKDは併せて指導する2番目の項目になっているんですが、これでよろしいのですか。 ○松川班員  恐らく特定健診を意識したので、メタボリック等を解消することで糖尿病等の25%と いうのが目標だったので、多分この順番になったのではないかと思うのですが、こちら の腎疾患の作業班から出す文言としては、恐らくCKDを意識した保健指導という形が 望ましいのではないかと思います。 ○秋澤班員  併せてメタボリックシンドロームと、そうなるべきですよね。 ○松川班員  そうですね。 ○飯野班長  両方並列か、あるいはCKDを中心というふうにちょっと変えましょう。ほかにはご ざいませんでしょうか。  なければ、次の関係機関の役割ということですが、いかがでしょうか。特に重要なの は日本医師会だと思いますが。 ○秋澤班員  済みません。ここは私の分担だったのですが、私が書かなかったことで、5ページの 下から2行目に、「臨床医に負担の少ない形式で整理し共有する」と書いてありますが、 これは具体的にどういうイメージか。 ○飯野班長  秋澤先生の文ではないわけですね。 ○秋澤班員  班長がつけ加えられたのかと思いますが。 ○飯野班長  日下さんの方からどうぞ。 ○日下課長補佐  こういった健診のデータを集めるということは、これは有用なことであるというお話 があったと思います。しかし、仮に集めるとして、例えば開業医の先生方のところに行 かれて定期的に検査をするにしても、負担のある集め方をすると開業医の先生方には負 担が大きいので、データが集まらないこともありえます。これが一体どういう方法なの かというのは、我々もまだ知恵があるわけではないのですが、こういった方法でこうい う結果を蓄積できればという意味合いで書かせていただいた話です。 ○秋澤班員  例えばICカードのような形の診療情報システムみたいなものを、将来的に考えてと いう意味でしょうか。 ○日下課長補佐  これまでのヒアリングの際に御発言があったと思ったのですが。 ○秋澤班員  わかりました。その辺が明確になっていれば結構だと思ったものですから。 ○飯野班長  では、この辺は班長の責任でちょっと考えて。はい、どうぞ。 ○山縣班員  ここは過去の健診データを生かすという部分ですよね。ですから、より実現を図って いただきたい部分だと思いますので、ICカードまでは書けないにしても、少し踏み込 んで書いていただいた方がいいような気がするのですが。方法まで書くといろいろ問題 も生じるのかもしれないですが、本当にいろいろ話がありますよね。保険証のカードに 健診データが入るようになればいいとか、そういうようなことなのだと思いますが、何 らかの方法が行われるように。 ○飯野班長  具体的にここは括弧つきでICとか。 ○秋澤班員  いや、そういうのではなくて、臨床医に負担の少ない形式でという形の配慮が必要か どうかということですね。 ○飯野班長  ここが気になるわけですね。 ○秋澤班員  ええ。これを削除してしまってはいけないだろうかと。 ○飯野班長  秋澤先生が気になるわけですよね。わかるのです。 ○日下課長補佐  それでは削除させていただきます。 ○飯野班長  はい。ここは削除しましょう。ただし方法論は、今、山縣先生が言われたように、い ろいろなものを入れていくべきだと思います。秋澤先生は、臨床医はもっと働くべきだ ということですね。そこはいいですか。  では4)の方に移らせていただいて、診療水準の向上ということです。ここは山縣先 生が中心に書いていただきまして、ガイドラインの作成・普及ということですが、ここ はどうでしょうか。ここの最後のところに「保健師、看護師、管理栄養士等が保健指導 のスキルを高めるための方法の確立及び教材の作成を行うことも重要である」と書いて ありますね。ここは小冊子をつくると。 ○秋澤班員  飯野先生、腎臓学会でつくっているのは「CKDガイドライン」と、正式にそういう 名称になったのですか。 ○飯野班長  今使っているのは「CKD診療ガイド」ですね。 ○秋澤班員  いや、現在、佐々木先生がつくっていらっしゃるのは。 ○飯野班長  佐々木先生がつくっているのはガイドラインということです。 ○秋澤班員  「CKDガイドライン」ですか。 ○飯野班長  「CKDガイドライン」ですね。「診療」は入っていないですね。 ○山縣班員  そうですね。ガイドラインですよね。日本語で診療指針という。 ○梅田疾病対策課長   であれば(仮称)としておきますか。 ○飯野班長  そうですね。(仮称)の方がいいですね。まだ決まっていないです。よろしいですか。  では、次の関連する疾患の治療との連携、これも重要になってくると思いますが、4 行書いてあるわけですね。「学会同士が連携を図りながら」、言葉で言うのは簡単ですが。 ○秋澤班員  よろしいですか。菱田先生からお聞きしたことですが、脳卒中関連の学会に行くと、 蛋白尿はまずはかっていないと、会員の人たちはおっしゃったということです。これは 最たる例ということになりますね。 ○飯野班長  そうですね。蛋白尿をはかっていないドクターはたくさんいますから。この辺も、具 体的なものを出すというわけにはいかないですかね。連携を図るということですね。  次は5)で人材育成についてですが、いかがでしょうか。すべての患者に腎臓専門医 が対応するのは困難であると。かかりつけ医とほかの医師との連携が重要である。具体 的にどこがやるかですね。後でその他のところにでも附則として、腎臓学会が専門医を きちっと育成すると、そういうようなことも具体的に書いてもいいかもしれないですね。 システム的なものを。何か御意見はございますか。 ○山縣班員  そうしますと、例えば海外でいうとCMEコースみたいな、そういうようなものを学 会のたびに設けて、点数を取って、何点を取らないと更新させないなんて、そこまで細 かくやるかどうかですよね。それと、それ以外のコメディカルの方たちも含めてだと思 うのですが。先日も腎臓学会のたしか理事会の方では、そういう制度を設けようかとい う意見までは出ていましたが、そういうのをやはり進めた方がいい。 ○飯野班長  そうですよね。そういうのの後押しになれば。この答申が、この案が、原案、骨子で すかね。はい、秋澤先生。 ○秋澤班員  これからの制度の問題だと思いますが、今の腎臓学会の専門医制度とは別に、例えば 腎臓学会認定かかりつけ医という、そんなものをつくるかどうか。そういう制度の問題 があると思うのです。逆に日本医師会の方で腎臓の例えば認定専門かかりつけ医とか、 そういった形で、育成していただくとか、これは一朝一夕にできることではないと思い ますので。 ○飯野班長  余り具体的ではなく、大まかにその辺の示唆ですね。腎臓学会、あるいは医師会がそ ういうシステムを構築することが望ましいとか、そのようなところもちょっと最後のと ころに入れていきましょうか。具体的に何か刺激しないと動かないと思います。僕も専 門医の研究をちょっとやっていたのですが、専門医の質が、やはりレベルが、認定制度、 システムも余りきちっとしていないですから、日本の弱点だと思います。その辺をきち っとやるべきだと思うのですが、そこまで踏み込むとちょっと問題が起こるかもしれま せん。  では、次のコメディカルの人材育成について、いかがでしょうか。 ○秋澤班員  実際は医師、専門医を育成するよりももっと難しいのがコメディカルの育成ではない かと思うのです。簡単にできることではなくて、看護師さんとか保健師さんとか管理栄 養士さんとか、そういった職能団体の中でそういったものをつくっていこうという、強 い意志がないとなかなかできないと思います。 ○飯野班長  その辺いかがですか。松川さん。 ○松川班員  職能団体のことはちょっとわからないのですが、ただ地域をあずかる保健師としては、 健診の中からCKD予防が可能な項目が、尿蛋白が残っているわけですから、そこはや はり今までと違う視点で見ていかないと。老人保健法は+まで異常なしでしたので、そ の感覚がもし残っているのだとしたら、やはりきちんと新しい特定健診の検査項目で尿 蛋白+をどうとらえるか。尿潜血もなくなってしまいますので、本当に蛋白だけで見て いかなければいけないときには、そこをCKDと結びつけて見ていくという視点をこち らの検討会から特定健診・特定保健指導を担当する部局に向けて、発信しておかなけれ ばいけないことかと。そういう意味では、保健師の中にきちんと意識づけしないと、ま た地域の中で+が長く続いている人を、経過観察という名で放置してしまうという危険 性があると思います。  あともう一つ、実際にCKDのステージ3の方の維持を支援するのは、保健師よりも、 地域の栄養士による栄養指導が大きな役割を示すと思います。第1回の作業班で、低た んぱく食のことが出ていましたが、ステージ4や5に進んだときのエビデンスしかない。 ステージ3の段階では、診療ガイドによると正常時が体重1kg当たり1.2gぐらいです よね。ところが、北海道では、普通に食べている食がそれをはるかに超えているんです よね。そうすると、ステージ3の人でも厚生労働省が示した日本人の摂取基準に戻すこ とが、低たんぱくになってくるのです。各都道府県のたんぱく摂取量は国民栄養調査で 出されていますので、そういう調査結果などをもとにしながら、もしGFRが低下して きたときには、低たんぱくではなくて、まず基準のたんぱくに戻すということだけでも 腎臓への負担は変わってくる、そういう地域の特性をふまえた栄養指導は地域の栄養士 さんが取り組んでいくことが、CKD予防になるのではないかと思います。 ○秋澤班員  書かれていることに異存はないのですが、教育体制だけでは難しいとすれば、例えば 認定システムというようなものをつくって、そういう勉強をなさった方には、コメディ カルの中で専門看護師さんであるとか専門栄養士さんとか、そういった努力が報われる ような形を、一言入れられてはいかがかと思って発言しました。 ○飯野班長  提言ありがとうございました。認定システムの提言。はい、どうぞ、梅田課長。 ○梅田疾病対策課長  先ほど専門医の先生に関しても、あるいは日本医師会のかかりつけ医の先生に関して も、それから今またコメディカルの方々ついても、共通して認定という言葉が出ている かと思いますので、ここは例えばまとめて、関係学会、職能団体等による新たな認定シ ステムの検討が期待されるとか、何かそういうような表現が入ればいいかと思います。 よろしいでしょうか。 ○飯野班長  はい、よろしいです。すばらしいですね。 ○梅田疾病対策課長  それからもう1点、確認で、藤垣先生に先ほど御指摘いただきました薬剤師のかかわ りですが、普及啓発が重要ということで、普及啓発のセクションはどちらかというと広 く国民に対する普及啓発なのですが、薬剤師の方々にもCKDに対して認識を持ってい ただくのは、資質向上という形でこちらの人材育成のところがいいのか。それとも普及 啓発の方がいいのか。ちょっとそこは確認をしたいと思いますが。 ○藤垣班員  薬剤師の方たちも職能団体の方に多分入ると思いますので、人材育成の方に入れて、 そこから患者さんへの普及啓発の一つの団体としてなってほしいなと思いますが。 ○飯野班長  ありがとうございました。では、こちらの方に入れさせていただきます。  それでは次の6)ですが、研究開発の推進、ここは山縣先生に書いていただいたわけ ですが、山縣先生、何かありますか。 ○山縣班員  いや、ここはたしか藤垣先生に。 ○飯野班長  藤垣先生ですか。いかがでしょうか。 ○藤垣班員  私が書いたものほとんどすべてが多分ここに書かれてあるかなと思います。参考人の 方のお話の中にもあった一つ特殊なのが、(1)の4)の日本人における冠動脈疾患に対す る腎機能低下の意議の明確化というもので、慶応の伊藤先生が御指摘になっていまして、 確かにこれが明確化できたらなと思います。ほかは皆さん今まで強く感じられているこ とではないかと思います。糖尿病性腎症あるいは慢性腎炎に関しては、すでに継続的に 行われているわけですが、まだやはり不十分としか言えないと思いますので、これも継 続的なものにしたい。それからIgA腎症、これは慢性腎炎の中で4割ほど占めるもの ですし、しかも間質の血管病変というのも割と進みやすいと言われているかと思います ので、腎臓の中の血管病変が進めば当然全身の血管病変も進んでいるということが考え られますので、その辺も含めて研究の対象にしたらどうかと思いました。 ○飯野班長  ありがとうございます。何かこの辺でいかがでしょうか。はい、秋澤先生。 ○秋澤班員  もっともな研究課題が挙がっていると思うのですが、2つあります。一つは、こうい うような透析導入前のCKDの患者さんに対する介入が行われると、逆に透析に入られ る患者さんの背景と予後が変化する可能性がある。透析導入後にどういう変化が出てく るのかということを調べるアウトカム研究が必要と思います。この腎疾患対策自体が、 透析導入前の患者さんに偏っておりますので、透析に入った患者さんに対して、どうい う意義をもたらしたかということを調べる研究課題が一つあっていいと思います。 ○飯野班長  具体的にはどっちに入れたらいいですか。 ○秋澤班員  これは診療エビデンスというより、病態解明につながる形になると思うのですが、そ れはどちらに入れても私は構わないと思います。それが1点です。  もう一つは、治療法の開発ということで、腎不全の進展阻止ということがメインにな っているのですが、もっとより広い意味でのCKDにおける血管病変の進展阻止という 観点としては、IgA腎症だけは特別出ておりますが、それ以外のCKD全般を含むべ きと思います。この2点を考えていただければと思います。 ○飯野班長  ほかの方はいかがでしょうか。 ○山縣班員  今の話の続きですが、やはり血管病変というのは様々な疾患の血管病変で、どちらか というとIgA腎症はIgA腎症そのものの発症進展に関してがやはり大きなテーマに なるのかなという気がします。  それと(1)の2)ですが、検査項目、これは実は結構大切なことは、血清クレアチニン 等々を含めた検査精度について、やはり施設間、あるいは検査会社間でも、血清クレア チニンはeGFRで計算すると0.幾つの差は結構大きな問題になってきますので、こ ういうところも腎機能を見るという意味では重要なところになるのかなという気がする のですが。 ○飯野班長  そうですね。次の項目に精度とか入れておきましょうか。異常値の定義というところ に何かあるかもしれませんが。 ○山縣班員  そうですね。それとあともう一つが、診療のエビデンス確立に関することです。これ はさっきも申し上げましたが、高齢者の腎機能障害、あるいは薬物投与とか、こういう 部分については大きなテーマとして、特に高齢者は腎機能の予備能がないところで何か 一つのことが加わりますと、一気に末期腎不全まで進行するということから、加えてい ただけたらと思いました。 ○飯野班長  今、秋澤先生の言われた透析に入ってからの研究、それから高齢者について、その辺 を加えていくと。IgA腎症に関してはどうしますかね。血管病変進展機序にするのか。 あるいは発症にするのか。藤垣先生、いかがですか。 ○藤垣班員  私は特別こだわることはないですが、慢性糸球体腎炎の多くをIgA腎症は占めてい ますので、IgA腎症自体の血管病変をと考えました。そうですね、特別こだわること はありません。御判断は任せます。  それから、CKD全体の血管病進展阻止ということですが、(1)の3)の病態別、やは り大きく病態でもかかわってくる、ここにIgA腎症ということも書きましたが、かか わってくる部分は今までも余り検討されていないと思うのです。ですから、危険因子の 同定及び治療法の開発というか、進展抑制というか、そういうことを念頭には置きまし た。 ○飯野班長  はい。秋澤先生、いいですか。3)に入れてくださいということで。 ○秋澤班員  ただ、治療法の開発という意味では、両方に書いていただいてもと思います。 ○藤垣班員  もう一つコメントですが、先ほど山縣先生が言われた検査の精度の問題ですけれども、 蛋白尿に関しては1+、2+というのはまとめられて、精度が確立されているわけです ね。血清クレアチニンに関して先ほど言われたようなことがあるということで、昨年度 静岡県で集めていろいろやってみたんですね。そうするとほとんど変わらないのです。 やる前はかなり違うだろうなと思ったのですが、菱田先生ともお話しして、血清クレア チニンに対しては大丈夫だよということで、全く変わらなかったものですから学会にも 出しませんでした。このような感覚があったのですが。 ○山縣班員  ちょうど私は関東地区の生化学の検討会などで話をさせていただいたことがあるので すが、標準血清というものがまだ確立していないということがありまして、でもそれが 今確立しつつある段階だと思います。毎日数値はぶれてしまうものですから、市販の標 準血清やそれを独自に各病院で持っている標準血清を使ったりしているようですが、日 本全体で標準血清を定め、何が血清クレアチニン1.0だというのが明確にする。そうし ないと海外との比較が不可能になってくるとか、いろいろな問題がありますので、ぜひ 世界的に標準な検査ができるようになったらなということも含めてです。 ○飯野班長  よろしいでしょうか。何かありますか。はい、どうぞ。 ○秋澤班員  ちょっとくどいようですが、CKD患者の心血管病の治療という意味は、いわゆる放 射線的インターベンションといったものを含めた治療法ということです。リスク因子は 大切ですが、それがわかったところでそれをどう治療するかが大事なことですから、つ け加えさせていただきました。 ○飯野班長  はい。そういうふうにつけ加えていきたいと思います。  では7)のその他に移らせていただきますが、ここは最終的なまとめ的なものですが、 いかがでしょうか。何か加えること。先ほど言いましたように、もう1個8)をつくっ てリコメンデーションみたいなものをつけるか。具体案をつけるか。あるいはここの後 ろに何かを書くか。あるいは全然書かなくてこのままにしておくか。いかがでしょうか。 もう最後ですから、では、お一人ずつ言っていただきましょうか。山縣先生から。 ○山縣班員  まず7)に書いてあることですが、実はこれは前に入れてもよかったんだなと思って いるのが、インセンティブという部分ですよね。特に、例えばコメディカルの方が資格 を取るとか、あるいは腎臓専門医が資格を維持するとか、何らかのインセンティブがあ ってこれはやはり励みになりますので、どういう形をとるか。ここはできたら可能な限 り具体化できるような形で示されれば示されるほど、実現性も上がるような気がします ので。 ○飯野班長  なかなかいいアイデアですね。 ○山縣班員  私はここが担当でしたからかなり踏み込んで書いたのですが、やわらかい表現に変え られておりますので。 ○飯野班長  インセンティブをつけるには、具体的にはどうすればいいですか。 ○山縣班員  例えば病診連携をやっているなら地域連携加算という形で、診療報酬の形で認められ る場合もありますし、具体的にはそういうことですよね。あるいは何らかの資格を取っ た方に対して、とにかく具体的な励みになるものを形になるようなことを考えていただ けたらと思いました。  それともう一つが、ここにも書いてあるかと思いますが、患者さんの状況、特に透析 の患者さんの導入数とか、これは日本透析医学会のアンケート調査しか今全国調査はな いはずですよね。これはあくまでも各医療機関に対するアンケート調査でして、本当に それがすべてかというと、恐らく違うはずで、ぜひ何らかの別の形で、患者さんの実態 調査を行った方がいいのではないかという気がします。ちょうど私も透析医学会の統計 調査にも関与しているものですから、よく行政から透析医学会の方に資料提供のお願い が来るのですが、いつも何か逆のような感じがしていまして、私たちが行政からそうい うデータをいただく方が正しいような気がするものですから。 ○飯野班長  それは逆じゃないですか。民間が、学術団体がやって、行政は小さな政府ですよね。 ○山縣班員  いや、何か形があればいいかなという気がします。ですから、正確にサンプル調査を ある地域でするとか、検討していただければと思うのですが。 ○飯野班長  そうですね。秋澤先生、透析に関してどうですか。 ○秋澤班員  山縣先生には大変立派なその他を書いていただいて、特につけ加えることはないので すが、アウトカムの精査という形で透析導入患者数だけでなく、その予後、医療経済、 国民医療費に及ぼす影響、心血管病変有病率の変化など、こういったことが明らかにな るような研究計画を立てていただきたいと思います。  ここに触れていないことで私がつけ加えたいのは、先ほど松川班員からもお話がござ いましたが、例えばクレアチニンが健診の項目から漏れているとか、高血圧の患者さん では尿のアルブミンをはかることが保険診療から漏れているとか、そういった幾つかの 腎臓病を発見ないしは診療していく上で、是正しなければいけない問題点があると思う のです。そういった点をここで指摘しておくのも大事ではないかと思います。 ○飯野班長  具体的にここに入れましょうか。はい、梅田課長。 ○梅田疾病対策課長  保険診療にこういうものを入れた方がいいというのをここに書いたところで、直ちに それが何か効力があるというわけではないので、そのエビデンスをこれから集めていく 必要があるというようなところが、まず段階としてあるのではないかというふうに理解 しています。それなりのエビデンスがあって、学会としての要望をされて、それで保険 の方で手当てされるかどうかが決まっていくというプロセスがあるので、それを無視し て一足飛びにはここに書きにくいところもございますので、例えば先ほどの研究の課題 という中にあるいは読み込める内容なのか、または健診項目であれば、先ほど検査とい うことで尿蛋白とクレアチニンというところを入れておりますし、そのような中で記載 されているというふうに理解できるのかどうか、ちょっと確認したいと思います。 ○秋澤班員  松川さん、いかがですか。そのクレアチニンの問題については。 ○松川班員  私の「CKD診療ガイド」の読み込み方が足りないのかもしれないですが、尿蛋白と クレアチニンを比較したときに、診療ガイドはGFRを重要視しているように私は思う のですが、それは間違いですか。 ○飯野班長  正しいですね。 ○松川班員  正しいですよね。正しいのだとしたら、新しい概念が出てきたのだから、新しい概念 に沿った形で、やはり新しい健診の中の項目も考えていく方向が望ましいのだと思いま す。それで、検査項目の中にクレアチニンをという形で記載していただきたいところで はあるのですが、望ましい方向性としては、やはりeGFRがきちんと換算できる血清 クレアチニンを、検査項目の中に再導入していただけるように検討していただきたいと いう項目を残していただきたいなと、現場は強く思います。 ○秋澤班員  今のは健診のことで、もう1点の尿のアルブミンに関してですが、同じページの(2)病 態の解明と治療法開発に関する研究の項で、我が国における腎硬化症の発症・進展にお ける危険因子の解明、こういったところに、例えば尿のアルブミンを測定して、解析項 目に加える、そんなことは可能かと思います。 ○飯野班長  梅田課長、よろしいですか。秋澤先生には珍しく妥協案が出ましたが。藤垣先生、何 かありますか。 ○藤垣班員  やはり病診連携も含めてやっていく上で、アウトカムをどう評価するかというのは、 厚労省もそうですが、大切なことです。ここに山縣先生がお書きになったCKDのステ ージ移行率、患者の予後、心血管系合併症の発症率等とあります。また、モデル的な地 域とお書きになりましたが、モデル的な地域を決めたとしても、これをどのような形で どういう数字をどのぐらい置きに残してくださいということを決めていただいて、ぜひ これでいきましょうということでやっていくことが必要ではないかと思いました。 ○飯野班長  はい。松川班員、何かありますでしょうか。 ○松川班員  どこに入れていいかわからないのですが、クレアチニンをこれからも特定健診の中で 付加して実施する市町村があります。付加して実施する項目はすべて保険料にはね返っ てくるものなので、住民さんの税金の一部が、必要だと判断して上乗せをして行う市町 村と、特定健診の基準項目のみ実施する市町村がでてきます。こちらの7ページの研究 開発の(1)の1)地域における早期発見というところに入るとしたら、例えば尿蛋白から だけのCKDの発見と、eGFRをやっていてCKDが早期に発見されて、例えばアウ トカムの一番の指標は新規の導入患者の推移になってくると思うのですが、4〜5年先 にそういうクレアチニンをずっと続けていた市町村と、そうではなくて尿蛋白のみで腎 機能を判定していた市町村の新規導入の患者さんがどう推移していったのか等、費用対 効果も含めて、厚生科学研究等で取り扱っていただければ、新しい検査項目を再検討す るときの一つの材料にもなってくるのかなと思います。 ○飯野班長  それは、では考えておいていただいて。皆さんの意見が出たようですので、なるべく 前向きに書いていきたいと思います。ほかにはよろしいですか。大体御意見が出たと思 うので、貴重な意見をいただきましてありがとうございました。  今議論があって、修正をしていただいて、また皆さんの方にお送りして、それでチェ ックをしていただいて、それで成果物として全体の会議に出すというふうにしたいと思 います。文言の修正はこちらでやらせていただきますが、eメールで皆さんの方に送っ て、またつけ加えることがあればつけ加えていただきたいと思います。  それでは、何か事務局の方からございますでしょうか。 ○日下課長補佐  先ほど班長から説明もございましたが、年明けに、作業班でおまとめいただきました 素案を、班長と相談の上、親部会であります腎疾患対策検討会に上げて、御議論をいた だく予定となっております。最後に課長の梅田から一言ごあいさつを申し上げます。 ○梅田疾病対策課長  本日は年末で大変お忙しい中、貴重なお時間をいただきましてありがとうございまし た。それから、今日まで3回にわたり、この作業班として大変貴重な御意見をいただき ました。報告書の素案ということで、おかげさまでほぼでき上がったものいただけたと 思います。本日、御議論いただいたこのペーパーと、この作業班での検討の経緯を記載 させていただいたものが、最終的な報告書になると思っています。それにさらにこの作 業班の中で提出していただいたスライドや図表の中の主なものを、幾つか参考の資料と いうような形で、添付させていただきたいと思っております。今後はこの作業班の親委 員会である腎疾患対策検討会の議論を経て、そこでオーソライズをいただき、そしてそ の報告をもとに、この目標の実現に向けて具体化に取り組む所存でもありますので、今 後とも引き続き御協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。本当にどうもありが とうございました。 ○飯野班長  どうもありがとうございました。では、本日の作業班はこれで閉会いたします。どう もありがとうございました。 <了> 1