07/12/17 労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会第27回議事録         第27回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会 日時 平成19年12月17日(月)15:00〜 場所 虎ノ門パストラルホテル新館5階ローレル ○平野部会長  ただいまから、第27回労災保険部会を開催します。本日は稲葉委員、金城委員、那須 委員、高松委員、内藤委員、平山委員がご欠席です。  まず前回の部会以降、委員の交替がありましたのでご紹介します。労働者側委員の佐藤 正明委員に代わりまして、林裕司全国建設労働組合総連合書記次長が委員に、また寺田弘 委員に代わりまして、藤田正隆日本化学エネルギー産業労働組合連合会事務局長が委員に なられました。  本日の議事に入ります。1つ目の議題、「通勤災害保護制度」について事務局から説明 をお願いします。 ○労災管理課長  資料1と参考1をご覧ください。通勤災害の件は前回の部会でも若干ご紹介したのです が、今年4月18日に大阪高裁の判決がありまして、義理の父の介護のために通勤経路を 逸脱した労働者に対する休業給付の不支給決定を取り消すという判決がありました。それ を受けて、こういったケースについて、通勤災害保護制度の対象とすることについてご検 討いただくということです。  参考1の家族の介護等を行う労働者に係る通勤災害保護制度についての参考資料をご 覧ください。通勤災害保護制度の概要は1頁です。通勤災害については1の創設の経緯に ありますように、昭和48年12月から労災保険法の一部改正によりまして、労災保険の保 護の対象となったということです。2の「通勤災害」の定義は、労災保険法の第7条第1 項第2号によりまして、「通勤災害とは労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡を いう」ということです。この場合の通勤は、労災保険法第7条第2項によりまして、「労 働者が就業に関し次に掲げる移動を合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の 性質を有するものを除くもの」ということです。  2頁に通勤の形態等を整理しています。(1)の「住居と就業の場所の間の往復」が通常の 通勤ということで、労災保険法第7条第2項第1号で規定されています。(2)は、前回の労 災保険法改正で措置したものですが、「厚生労働省で定める就業の場所から他の就業の場 所への移動」ということで、複数就業者の場合には住居から就業場所への移動、就業場所 から他の就業場所への移動といったものがこの通勤の中に含まれるということです。(3)単 身赴任者の場合ということで、労災保険法第7条第2項第3号ですが、「第1号の往復に 先行し、又は後続する住居間の移動」ということで、赴任先の住居と帰省先の住居と就業 場所との間の移動が、この通勤災害により対象となっているということです。  1頁の「しかし」以下ですが、労災保険法第7条第2項各号に掲げる移動の経路を逸脱 し、又は中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる 移動は、通勤とはされないということです。2頁の2の通勤の範囲は、就業場所から経路 に則っている間は通勤と認められるわけですが、その経路から逸脱しますとそこからあと はすべて認められず、通勤経路上において中断があった場合についても、その中断の間及 びそのあとについては通勤とは認められないということです。ただし、当該逸脱又は中断 が日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるやむを得ない事由により行うた めの最少限度のものである場合には、その当該逸脱又は中断の間を除き通勤とされるとい うことで、これは労災保険の第7条第3項です。ですので、2の下にあるように就業場所 から途中の逸脱、中断について、それが日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で 定めるものであり、それが最も合理的な経路の中に戻った場合、戻ったあとについては通 勤ということで保護の対象となるということです。  日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるものというものが労災保険法施 行規則の第8条の第1号から第4号まで定まっています。第一号は「日用品の購入その他 これに準ずる行為」、第二号は「職業能力開発促進法第15条の6第3項に規定する公共職 業能力開発施設の行う職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育 その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為」、 第三号は「選挙権の行使その他これに準ずる行為」、第四号は「病院又は診療所において 診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為」、こういうものは、日常生活上必要 な行為であって、厚生労働省令で定めるものということです。  3頁は、その関係法令です。  4頁以下は、通勤災害保護制度についての変遷です。昭和48年に労災保険法の改正で、 通勤災害が労災保険の保護対象となったということですが、4頁の下に当時の通達があり ます。「合理的な経路及び方法」ということで、「当該住居と就業の場所との間を往復する 場合に、一般に労働者が用いると認められる経路及び手段等をいう」ということです。例 えば、「他に子供を監護する者がいない共稼労働者が託児所、親せき等に子供をあずける ためにとる経路というものは、そのような立場にある労働者であれば、当然、就業のため にとらざるを得ない経路である」ので、そういった経路は合理的になるということです。 「『逸脱』『中断』及び『日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為をやむを 得ない事由により行うための最少限度のもの』の意義」、昭和48年当時は法律上、そうい う規定になっていました。この具体例として「帰途で惣菜等を購入する場合とか、独身労 働者が食堂に食事に立ち寄る場合、クリーニング店に立ち寄る場合、通勤の途次に病院、 診療所で治療を受ける場合、選挙の投票に寄る場合等」といったものがこれに該当すると いうことで、通達が出ていたということです。  さらに5頁は、昭和62年に日常生活上必要な行為というものを法律上、従来は左にあ りますように日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為という規定であっ たわけですが、昭和61年の法律改正で日常生活上必要な行為であって労働省令で定める ものということで、省令の第8条を新設しまして先ほど説明したような規定で、その行為 を明確にしたということです。その後、平成3年に「週末等を利用して自宅と通勤先を往 復する途上の災害の取扱いについて」認定基準を明確化したとか、6頁は「赴任途上にお ける業務災害の取扱いについて」認定基準を明確化したということです。平成17年に労 働安全衛生法等の一部を改正する法律で、先ほどの複数就業の場合あるいは単身赴任の場 合について第7条の規定を整理したということです。  7頁は今回の裁判の関係です。事件の概要は(1)です。原告が会社からの退勤途中に 原告の妻の兄と同居している義父、つまり原告にとっては妻の父ですが、その介護のため に合理的な通勤経路の外にある義父の家に立ち寄って介護を終えて帰宅する途中に、原付 自転車と衝突して休業を余儀なくされた場合です。これについて、通勤災害として休業給 付の支給を請求したわけですが、監督署で不支給処分にしたということで、それの取消を 求めて裁判となったということです。9頁に通勤の経路図が付いています。いちばん左に 自宅があります。真ん中上に会社があります。往路は自宅から北の方に行ってさらに東に 回って、若松町5丁目交差点というのをさらに北に行くと会社ということです。復路は、 会社から南に下がって若松町2丁目4-6交差点という所まで来て、そこを右折して自宅に 帰るというのが通常の経路であったということです。一方、義父宅というのは右にありま して、会社からの帰りに既に通常の通勤の経路から逸脱して東の方に行って、そこから南 に下って若松町3丁目3-18の義父宅に寄って、義父の介護を一定時間やった上で帰りに コンビニの所を通って元の通勤経路に戻ってきているわけです。事故については、通常の 復路にある交差点の所が本件事故現場です。  7頁の大阪高裁の今年4月18日の判決の内容ですが、結論としては不支給の処分を取 り消したということで、これは大阪地裁の判決を支持しています。認定事実によれば、義 父は85歳の高齢で両下肢機能全廃ということで、食事、入浴、簡易トイレにおける排泄 物の処理といった、日常生活全般についての介護が不可欠な状態であったということです。 被控訴人夫婦はこの義父宅の近隣に居住して、義父とは義兄が同居していたわけですが、 独身で帰宅が遅いということで、なかなか義父の介護を行うことができる親族がほかにい なかったことから、被控訴人が週4日間程度この介護を行っていた。被控訴人の妻も、ほ ぼ毎日食事、世話、リハビリの送迎をしていたという事実関係です。  こういった事情に照らすと、被控訴人の義父に対する上記介護は労働者本人又はその家 族の衣、食、保健、衛生など家庭生活を営む上での必要な行為と言うべきであるから、労 災保険法施行規則第8条第1号所定の「日用品の購入その他これに準ずる行為」に当たる ものと認められるというのが、この判決の判示です。当日、原告が介護のために義父宅に 滞在していた時間は約1時間40分程度ということで、介護のためにやむを得ない最少限 度のものであった。この1時間40分という時間が「日用品の購入」のために要する時間 に比して、特に長時間であるとは認められない。例えば5時間以上を要する透析療法も認 められていることから、この1時間40分の介護行為を労災保険法施行規則第8条第1号 に該当すると認めることには妨げられないということです。あとは、高齢化社会を迎えて 在宅介護の要請がますます大きくなっていることから、通勤災害との関係でも介護等の利 益を立法上考慮すべき時期に来ていることが認められるということも言っています。こう いった判決が出されたわけですが、これが労災保険法施行規則第8条第1号に関する初め ての高裁判決ということです。  これまでの改正経緯や文理解釈から見ますと、そういう解釈ができるかは疑義のあると ころで、上告の申立てを行うことも可能とは考えられるものですが、昨今の社会情勢から 考えますと少子高齢化社会の下で介護の利益を立法上考慮すべき時期に来ているという 判断はなかなか変更されにくいと判断しまして、この高裁判決について上告の申立ては行 わないこととしたということです。こういった高齢化の進展とともに、家族の介護が労働 者の生活に深く関わってきていることを踏まえて、労災保険法施行規則第8条第1号の介 護が日用品の購入その他これに準ずる行為ということで解釈することが適当かどうかに ついて検討する必要があるということです。  資料1の論点です。(1)「通勤途中で家族の介護を行う労働者を通勤災害保護制度の対 象とすることについて」です。先ほど申し上げたように、この介護自体を労災保険法施行 規則第8条第1号の日用品の購入その他これに準ずる行為に該当すると解釈できるかとい うことですが、これは昭和61年の改正以前に病院で短時間の診療を受けるといったもの については、日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為に該当すると考えて いたわけですが、比較的長時間を要する人工透析等についてはなかなかそれでは読めない ということで、昭和61年に法律及び省令改正をして、人工透析等の場合には現在では第 8条第4号で読んでいるということです。こういった解釈からしますと、具体的内容がか なり多岐にわたって1時間40分といった相当長時間を有する介護行為自体が、労災保険 法施行規則第8条第1号の日用品の購入その他これに準ずる行為と解釈することは難しい のではないかというのが私どもの考え方です。  これについて、仮にこのような介護が日用品の購入その他これに準ずる行為と読むとす ると、逆に通勤に伴って行われる様々な多くの行為が本人にとって家庭生活を営む上で必 要な行為ということで請求され、その場合に社会常識に照らして判断されると、第8条第 1号の日用品の購入その他これに準ずる行為が無限定に広がっていって、認定上困難を来 すことが予想されます。現在の労災則第8条第1号の日用品の購入その他これに準ずる行 為というものでこういった介護のものまで読むことにしてしまうと、今後も司法の判断で その対象がどんどん拡大していくことが懸念されるということで、省令でこういった介護 の場合について、保護の対象を明確にする必要があるのではないかと考えています。  検討の前提として、労働者が要介護対象者の家に定期的に通って介護を行うケースにつ いては、通勤災害の「保護の対象となる逸脱・中断」である「日常生活上必要な行為」に 該当すると解することが適当であろうということです。その上で、これは既に過去の考え 方で日常生活上必要な行為というものは、社会通念上日常の生活を営む上で必要な行為で あり、かつ、その態様は日用品の購入と同程度と評価できるものをいい、本人又は家族の 衣、食、保健、衛生、教養のための行為及び公民権の行使に伴う行為等はこれに該当する ものであるということがありますので、そういったものを前提に考える必要がある。その 場合に、どういったものを通勤災害保護制度の対象となる介護として考えるかということ で、例えば介護を受ける対象者の範囲をどうするかとか、介護の具体的内容がどうか。あ るいは、反復継続性がいるのかどうかといったことについて検討する必要があろうかと思 います。  ちなみに、参考として育児・介護休業法で介護休業制度というのがあるわけですが、こ の場合には常時介護を必要とする状態のものに対して介護休業というものができる。その 場合の対象家族は、配偶者、父母、子、配偶者の父母、同居かつ扶養している祖父母、兄 弟姉妹、孫が対象となっているということで、そういったものも参考に対象者の範囲や具 体的な内容等を検討する必要があるのではないかということです。  2頁です。育児・介護休業法で介護との並びで、同じような態様で行われる通勤途中で 育児を行う労働者について、通勤災害保護制度の対象とすることをどう考えるかが2つ目 の論点です。仮に対象とする場合には、どういった内容とすることが適当かということで す。  [検討の前提]です。育児については、従来から通達において他に子供を監護する者が いない共稼ぎ労働者が託児所、親せき等に子供をあずけるためとる経路などは、そのよう な立場にある労働者であれば、当然、就業のためとらざるを得ないということです。まず 合理的な経路という中で、通勤途中に託児所に寄って子供を預けるとか、親戚に寄って子 供を預ける場合には合理的な経路の中で読めるということで、既に通勤災害保護制度の対 象になっているということです。ですので、実際上育児の場合には託児所に預けるとか親 戚に預けるということで、育児そのものまで行うケースはかなり少なくて、既に多くのケ ースは経路の問題としてカバーされていると見られるのが1点です。ただ、今般労働者の 家族の介護について、介護対象者を介護するために介護場所に労働者本人が滞在する必要 がある場合について、この通勤災害保護制度の対象とすることを検討するということで、 それとの並びで育児の場所で労働者本人が滞在して育児を行う必要があるケースも考え られますので、介護の場合との並びで通勤災害の保護制度の対象とすることを検討する必 要があるのではないかというのが論点についての検討の前提です。以上です。 ○平野部会長  ただいまのご説明について、委員の皆さんからのご意見を伺いたいと思います。いかが でしょうか。 ○佐野委員  いま、これと同じような帰宅経路の中で、仮に奥さんががんで入院している。洗濯物等 を含めて病院に届ける。同じ経路で戻ってきて交通事故に遭う。よくあるケースですよね。  義父の家と同じ場所に病院があり、それで、同じ場所で同じ自動車事故に遭った。そう したときに適用になるのですか。 ○労災管理課長  元の通勤経路に復したということであれば、それは対象になると思います。 ○佐野委員  実際にそういう判例はあるのですか。判例というか、実際に適用例はあるのですか。 ○労災管理課長  適用例はあると思います。 ○佐野委員  その場合は、第1号が適用されているのですか。いちばん下の本人が病院等その他に準 ずる行為のどちらが適用されるのですか。1号が適用されているのか4号が適用されてい るのか。 ○労災管理課長  おそらく第1号だと思います。 ○松井委員  いま適用の例について質問がありましたが、加えて通勤災害における財政の収支状況の は具体的にどうなっているのでしょうか。第1号から第4号についてどのような形になっ ているのかというデータについて、事前にご説明があったときから質問しているのですが 回答もないので、実態がどうなっているかまず教えていただきたいと思います。  1つ意見として申し上げるならば、通勤災害は業務上災害ではないけれども、業務と密 接な関連があると認められる労働者の住居と就業の場所の移動に伴う通勤途上の災害を 特別限定的に救済をして、業務災害に準じた保護を与えるという整理になっていると思い ます。今回介護の問題でお国としては上告を断念したというのはわかります。そういう事 実があるということは認識しますが、少し調べてみますとこのケースについて確かにお気 の毒だと思える反面、全部徒歩で行ける範囲ですよね。別の言い方をすると、自転車等に 乗ったら一旦自宅に戻って、義父の所に介護をしに行くことも可能なぐらいの距離。距離 としては1km四方あるいは広くても2km四方内の出来事なのです。そういうものについて、 たまたま会社帰りに寄ったから通勤途上だと見るのか、これが非常に近接しているケース で一旦家に帰ってから義父の所に行ったら、それは通常通勤災害ではないですよね。そう いうものについて、この判決を持ってして施行規則、省令までも変えなくてはいけないの かどうか。その辺についてお国が上告断念した事実は認めるとしても、国としての必要性 については社会的必要性一言ではなくて、この案件そのものにある問題点についての深掘 りや説明をしてもらわないと困ります。  もう1つは、本件の例をよく読んでみますと、通勤経路に0.何メーターくらい戻って いないとまで書いてあります。その程度くらいだから面倒を見てあげなさいというのが地 裁の判決で、高裁もそれを支持した。そのようにしか私としては読めないのです。佐野委 員から質問があったものと私から質問したものについて、まずご回答願えるとありがたい です。 ○労災保険財政数理室長  まず、業務災害、通勤災害の財政収支状況ですが、手元にある数字から申し上げますと 年次がバラバラになりますが、例えば新規受給者数があります。災害の発生状況で申し上 げますと、平成17年度の新規受給者数が全体では60万8,030件でした。そのうち、通勤 災害によるものが5万6,367件で、全体の9.3%です。次に、通勤災害に関して平成17 年度の保険給付額は、799億6,900万円となっています。ちなみに、平成17年度の業務 災害、通勤災害の合計の保険給付額は7,723億400万円です。約1割近い数字が、通勤災 害で支払われているということです。 ○松井委員  号別にはどうなっているのですか。 ○労災管理課長  通常の業務統計上は号別で区別して取っていないので、現時点ではそこはわかりません。 佐野委員の件については、現在は第1号の日用品の購入その他これに準ずる行為で先ほど 言われたケースは扱っています。 ○佐野委員  運用されているわけですね。 ○労災管理課長  はい。いずれにしてもこの1件しかないということですが、これ以外に同じようなケー スで不支給になったのが、今年に入って1件あったようです。それから、仮に今のままで 日用品の購入その他これに準ずる行為という中でこういう場合も読み込んでいくことに なりますと、かなり省令の解釈としては拡大されてしまって、かえってこういったケース 以外のものもどんどん読まれてしまう危険性があるので、むしろどういう場合かというこ とを限定した上で省令で対処するほうが、今後無限定に拡大していくことを防げるのでは ないかと思います。いずれにしても、逸脱・中断については、そのあとに元の経路に戻ら ない限りは対象にならないということです。 ○佐野委員  今回のものは入れるといっても、第1号を外すわけではないのでしょ。 ○労災管理課長  第1号は残したままで、介護などを仮にやるとすれば別途追加するということです。 ○佐野委員  いま心配されていることは、全く解消しないのではないですか。 ○労災管理課長  理屈の問題としてはそうですが、こういう場合というのを特出しすれば第1号というの はむしろ限定されて、解釈すべきであろうということに反射的になるということです。 ○佐野委員  時代の要請というか社会の要請というか、そういう中でここに第1号で順次いろいろな ものがこれからも出てくる可能性が相当数あるのではないですか。 ○労災管理課長  非常に短時間ということであればさらに第1号で読むことも可能かと思いますが、今回 の事例のようなかなりの時間がかかるような介護となりますと、第1号で読むのは無理が あるのではないかというのが私どもの考え方です。 ○佐野委員  第1号の場合だと、何時間以内というある程度の目安があるのですか。 ○労災管理課長  具体的に何分とはっきりしていないですが、例えば先ほどの人工透析は明らかに第1 号ではなかなか読めないということで、別途省令改正して対応したことからすると、今回 のような1時間40分という相当長時間のものまでこの第1号で読むのは無理があるので はないかというのが私どもの考えです。 ○松井委員  確かに介護の必要性が社会的に高まっているといったとしても、人工透析のケースは、 それをしないと本人が生きていられないということですから、それはやむを得ないところ はあると思います。それから、人工透析の技術が上がったので、最近はもっと短くできる 所もあるということですので、それとパラレルに考えることは必要ないと思いますし、今 回の判決の中でも人工透析が長いから1時間40分でも長いとは言えないという理屈がこ こに書いてあるのは知っていますが、それとこれとは違うのではないかと思います。 ○労災管理課長  もちろん、その本人が就業のために不可欠かどうかという点で、そこは違っていること は確かだと思いますが、日常生活上必要な行為というときに家族の介護もそういう中では 昨今の社会行政からいくと、考えていく必要があるのではないかということです。人工透 析と全くパラレルだということではないです。 ○田中委員  いまのは、たぶん介護という言葉が非常にいろいろなものを含んでいるように思いまし て質問したいのですが、どういうことを介護と想定してこの議論を進めようとされている のかを確認させていただけますか。要は、通常親の介護等ですと介護の行為もありますが、 例えばその家の維持生活のための行為であったり、話相手になるという行為であったり。 人工透析というのは1つの行為に関わる時間の議論だと思いますし、例えばいま通達で認 められている保育所への送り迎えみたいなものはそのための行為に限定されてくるので すが、いま議論されている介護の1時間40分の間にいろいろなことをされるケースもあ る。それが1時間半だったらどうか、1時間40分だったらどうかという時間で切れるも のなのかどうか。このあたりが非常に不明確で、議論させていただくときにどこの幅を想 定しておられるかを教えていただけないかと思います。 ○労災管理課長  いま、単身赴任も介護の都合上で別居せざるを得ない場合について、労災保険法の省令 の中でその単身赴任者について先ほどの通勤災害が認められる要件というのがあるわけ ですが、それは育児・介護休業法で常時介護を必要とする状態についての判断基準という のがありまして、そこで日常生活の動作について全部介助あるいは一部介助が複数の項目 あるといったものについて、常時介護を必要とするという判断になっています。いまは労 災保険法でも、先ほどの単身赴任の場合にはそういったものを活用していまして、介護休 業法でいう常時介護を必要とする状態を基本に考えていくことが1つの考え方かなとい うことです。 ○田中委員  いまおっしゃっているのは、その方が要介護状態かどうかの判断ですね。認定されるか されないかという、被災される方が何をしていたかという行為ではないわけですね。 ○労災管理課長  そこで、そういう要介護の状態の方のところで、具体的にどういう介助をするかになる と食事だったり入浴だったりといろいろあると思いますが、そこは実際にどういったこと をやっていたかを個々のケースにおいて見るしかないと思います。まさに、介護をやって いたかどうかをです。 ○松井委員  どういうふうに介護をやっていたかを見ることができるとお考えなのでしょうか。介護 を必要とされる方の自宅に行って、何をしているのかというのはほかの人が証明できる状 況にはないと思います。それで、どういう介護をやっていたかどうかということで見るこ とは、まず現実にできるのかできないのか。私はできないと思いますが、そういう場合は どのように考えるのでしょうか。できるならば、どのようにそれを証明するのか。第三者 がいるならば、なぜほかの人にやってもらえないのかという疑問も起きます。通勤途上か どうかは別として、一旦逸脱・中断してまでやらなくてはいけない理由は何なのか。その 辺に対する行政としての説明は、どういうものがあるのかを教えていただきたいのです。 ほかに人がいない。その人がいても、きちんと正しいことを言うかどうかは別ですが。 ○労災管理課長  一般的には、ほかに介護する方がいらっしゃらないからその人が通勤の帰りに、通勤途 上でそこに行って介護せざるを得ないということなので、第三者が証明することは難しい ケースが多いかと思いますが、そこは一般的にどうであったかということはある程度判断 していくしかないかと思います。要介護状態であることを前提に、通常はどういったこと をやっているかは本人なりから聞くとか。具体的に第三者がいない場合が通常だと思いま すので、そこまで証明できるかというと確かにいまおっしゃるような問題はあると思いま すが。 ○筧委員  一般的に労働災害というのは、私の認識では労働者本人が特定の事業所で労働している 間に受ける災害ということで、それは労災の基本である事業主の負担によって賄うべき。 これは、そういうことだと思います。通勤に関するものというのはおそらく昔にそういう 論議があって、通勤に関するものを取り入れることになったのだろう。それについては別 段いまどうこう言うことはないのですが、そこでその事業主側というのは、そこのところ まで努力して減らすということはできないですよね。そこの部分を努力しても抑えること ができない部分を少しずつ広げていくとか、曖昧な部分を残したまま適用していくことに ついて不安を感じます。事業主側としては、私も個人的にはそう思いますが、そこら辺を 例えば全体の中で本当に限定をしてしまう。おそらく、それしかないだろうと思います。 いまはだんだん一般論のほうへ、曖昧なほうへ引っ張られているような気がしますので、 それはどうお考えになったのですか。 ○野寺委員  介護の中身やその辺の話をするのも結構ですが、問題になっているのは途上の話ですの で、介護の中身にどこまで触れるのかは限界があると思います。もう1つは同様の例が出 た場合に、省令にするのか裁判例に従って今後放っておいて裁判の中で解決していただく のか。それも芸がないのではないか。つまり、全く事業主の皆さんもコントロールできな いところで、裁判所の中で、ある意味で勝手に判断されてしまうほうがいいのか。少しで も省令ということであれば委員の皆さん方である程度限定しながら、明確に書き込むこと もできるのではないかと思います。ですから、省令に書いた途端に余計なものが増えてく ることはあるかもしれませんが、十分に限定するのであればかえって余計な類似の似非事 犯を防ぐ効果もあるのではないかと思います。 ○筧委員  先ほどもありましたが、一例しか出ていない状況のときに趨勢というのはなかなか判断 できない。いままで、おそらく通勤災害そのものはかなり増えてきているので、これに適 用されるような例が増えてくるということではないかと思います。先ほど松井委員がおっ しゃったように数字的な部分がまだ出てきていないし、我々の目の前にもないですから、 その不安はまだ残ることになると思います。いま野寺委員がおっしゃったことは、よくわ かります。 ○平野部会長  難しそうですね。これをどうやって、いずれ数箇月のうちにまとめなければいけないと 思いますが、どう書いたら拡大解釈されないかとか、かなり難しい部分がありますね。特 にそういう点で皆さんのご意見をきちんと伺っておかないと、事務局としてもこれから進 めるときに非常に難しくなります。難しいことはわかったけれども、それではどうしたら いいか。いかがですか。 ○松井委員  省令に規定すれば、それ以上広がらないという1つの考え方がありますが、野寺委員が おっしゃったように省令にまで書くなら、もっと広げてもいいだろうという司法判断はあ り得ると思います。ですから、本当に決めるならばその合理的な範囲は何であるかという ことをきちんとやらないと非常に難しいと思います。それから、介護のこうしたものを省 令に規定することを前提に、育児のことについても保育所に預けるのではなくて、労働者 本人が育児をするときまで含めたらどうかという点については、正直言って悪乗りしすぎ ているのがここの案ではないかと思います。考え方として、少なくともいままで保育所に 預けることや、保育所でなくとも親類縁者に預けるものも含めて、それなりに対応してい るならばそれでいいのではないか。さらに、最低限号別のデータを集めて、どういう実態 になっているかという提示もない中で、この1件をもって広げるというのは賛成したくて も賛成するデータすらないというのが、私ども事業者側の意見です。 ○労災管理課長  データについてできるのかどうかは、もう少し検討はしてみます。いまは少なくとも統 計上はないということなので。 ○田中委員  ご存じのとおり規模によって違いますが、企業は付加給付を持っていまして、通勤災害 についても付加給付を持っている会社が非常に多くなっています。従業員の方がこういっ たケースで被災された場合に、通災と認定されるかされないかで本人なりご遺族なりが受 けるメリットというと言葉が悪いですが、給付額に相当差が出てまいります。そのときに、 認定基準というのはある意味で公平性というか、こちらを通ったら通災だったけれども、 こちらを通ったら違ったとか、いつもだったらこういう経路だから本来だったら通災だけ れども、今日は家へ寄ったから違ったとか、いろいろなバリエーションが考えられるもの だと公平感、納得感を得るのが難しいのかなという懸念を持っています。先ほど先生がお っしゃられたように、もしこれを省令なりで決め込んでいくのであれば、実際にいろいろ なケースを想定して、いろいろなケースであまりアンバランスが出ない、不公平感が出な いようなものにしていかないと、たぶん使用者側はこれをオペレーションしていくのが難 しくなってしまうのではないかという懸念を持っています。ですから、いま松井委員がお っしゃったことに加えて従業員の立場で考えると、あまり曖昧な形での提示というのはか えって混乱を招くのかなという気がします。 ○平野部会長  ありがとうございます。長谷川委員お願いします。 ○長谷川委員  私は、ずっとそもそも出さなかったことがおかしいと思っています。通勤を災害補償に したときに、使用者が聞くと嫌かもしれませんが、それは当たり前だと思っていまして、 今回の介護というのはある意味では非常に社会的な要請もとても大きいと思います。介護 問題というのは単なる個人の問題ではなくて、社会的に全体的に考えなければいけないと いう日本社会の特徴的な問題だと思います。今回の場合、先ほどの図にあるとおりでお父 さんの介護で、自分の経路に戻ってきて災害に遭った例です。介護というのが、松井委員 は介護のどういう内容かとかを言って、介護はたくさんあって事例を出したら大変な話で、 それこそ頭を洗うことからお風呂に入れることからご飯を食べさせることから、単なるい つも言われているようなおむつを取り換えるだけでなくて、介護の内容を言ったら切りが ないほど山のような事例が出てくると思います。そこまで全部を限定できるかといったら それは難しい話で、そうすべき内容ではないと思います。要介護状態にあるここで言われ ている対象者が対象家族とはという形で育児休業法のところで引用してあるわけですが、 おそらく対象者はそれだろうと思います。それ以上の規定の仕方は無理ではないか、つま り、ここで言われている介護の具体的内容というのは決められないのではないかと思いま す。  私は、たまたま夫の母と同居して、もう少し長く介護が必要かなと思っているうちに意 外と早くいなくなってしまったのですが、それでも1年ぐらい一緒に暮らしてみてもわか ったのですが本当に内容がたくさんあって、そんな語り尽くせるようなものではありませ ん。そうすると、これは一例でしかないと言われればそれまでですが、一例だって貴重な 裁判例ですから、これをどう活用するかということだと思いますが、それを使いながら何 か合理的な方法を見出すことが必要ではないか。全部縛るのは非常に難しいと思います。 そこは、今日出てきている対象者の範囲とか、具体的内容というのは難しいなと思ったの ですが、反復継続性はあると思います。例えば、今回のこの裁判例でいくと週に何回行っ ているかで判断できると思うので、この点を見出しながら省令か何かで決めていったほう がいいのではないかと思います。使用者の気持ちはわからないわけではないけれども、し かし労働者というか従業員が介護や育児というのは、その他の問題と一緒にしたら語れな いという我が国の特徴があるわけですから、そこのところは考慮しなければならないので はないか。ただ、もう少し議論してどういうところを要件にするかは、今日のこれだと何 回か議論が必要かなと思いました。 ○松井委員  私自身は、介護というのはいろいろあるということを前提に発言したつもりです。どう いうことをやっているのかと申し上げたのは、行政がどんなことをやっているということ を要件として決めようとして、さらに証人もいなそうなところにそういう要件を決めるの はどういう意味であるかという質問をしたつもりです。反対に介護といっても、介護をす るのではなくて顔を見に行って「元気か」というのだって、認知症を少しでも予防すると いうことぐらいもありますし、いろいろ対応はあると思っています。そういう場合に、本 当にその省令で規定していける内容は何であるかということの問題提起をしたかったつ もりです。 ○長谷川委員  そうだとすると、全く同じ問題意識を持っています。先ほど言ったときは、そうではな く聞こえたので。 ○松井委員  前田課長から、具体的にどういう行為があるかということを決めて何かやるという説明 があったので、それはどうやって決めるのですかと。誰が証人となるのですかというとき に、こんなことをやっていましたということを聞くという話だったので、本当に省令で決 められるのですかという疑問を呈したということです。 ○平野部会長  ありがとうございました。今日のところは、どこが難しいかということをむしろご指摘 いただく。それから、こちらのというか労災補償部のいろいろな工夫や調査をこの次ぐら いにご提示しながらだんだん詰めていくということで、どうも一筋縄ではいきそうもない ですね。先ほど松井委員からこういうデータはないかというお話がありましたが、同じよ うなご意見がもしあったらこんなデータを用意してほしいとか。 ○長谷川委員  やらないと思うと難しいとなってしまうわけで、やりましょうねという前提を確認して、 だとすればどういう方法がありますかというと議論は建設的になると思います。ただ、こ れはどうもやめようというのと、やろうというのでスタンスが違うわけですから、これは 労働者のためにもいいからやりましょうという前提を取り付けておいて、具体的にどうい う方法があるかについて、今日出た意見についても議事録を全部精査してもらって、使用 者側が言っているようないろいろな心配事や懸念について事務局はもう少し精査して、次 の資料を次回までに出してくれということが必要なのではないかと思います。だから、私 はこれは従業員にとって良いことからまずやろうという前提は崩さないでほしいです。 ○平野部会長  ここに出てきた時点で、かなりやろうという方向ではあるのです。 ○松井委員  やろうという前提で議論するのではなく、その前にデータを出してくださいと言ってい る気持だけは汲み取った上で議論をしていただきたい。今日、私から申し上げることは以 上です。 ○平野部会長  どうもありがとうございます。ほかにはありませんか。 ○中窪委員  中身は大変難しそうだというのはよくわかります。先ほど育児については悪乗りではな いかというご意見も出たのですが、今回は介護について判決が出まして、育児は自分の子 供を預けるのとは少し状況が違いますし、実際にも少ないと思います。それでも、定期的 に孫の世話をしに行くということもあり得ますので、やはり論理的には、ここもちゃんと 議論して両者がどこに違いがあるのか、あるいはどういうふうに処理するのが適切かとい うことを含めて検討することは、私は必要だと思います。 ○平野部会長  ありがとうございます。おっしゃるとおりです。 ○松井委員  理論的には、先生のおっしゃるとおりだと思いますが、そういうのは介護の状況につい ても施行規則化するというのが前提の議論ですから、まず違うのではないかと思います。 そもそも私どもは、いま議論しようとしていることについての情報収集の不足のことを申 し上げているわけです。ですから、悪乗りというのは決して悪乗りをして言っているつも りはありません。 ○平野部会長  松井委員、次くらいにここの議論を進めるような資料とかデータはできますか。そうい う言い方はまずいのかもしれませんが、事務局側としても、相当苦労すると思うのです。 一体どういうものをお出ししたらいいのか。 ○労災管理課長  号別というのは、統計的にできるのかというのは若干問題があるので、例えば、どこか の部分でサンプルを取ったりするのはどうかとかいうこともちょっと検討はしたいと思 います。 ○平野部会長  ありがとうございます。ほかにはありませんか。 ○佐野委員  そういう意味では、この「日常生活上必要な行為」で具体的にいままで適用されている ケースの類型別のものは何か作れますか。「日用品の購入その他これに準ずる行為」です か。これで適用しているのですか。先ほど、病院に寄ったのもこれで適用されてますよと いう話でしたから、これ以外にそういう、いわゆる日用品の購入その他これに準ずる行為 で具体的に通災に適用されている内容を類型別にどういうものがあるのか。例えば、いま これが拡大していくということについての議論がいまあったと思いますが、ただ、やはり 社会の要請についてはある程度、制度というのは応えていかなければいけない部分がある でしょうから、ただ、その時に制度そのものの性格が変わってくるのならば、その制度そ のものは、やはり、もう一回根底から変わってきた部分について整理し直す必要があるの だと思います。  この(2)、(3)、(4)については具体的に書いてあるので分かるのですが、(1)について、先ほ どのようなものがいま現実的に運用面で起こっていて、また新たな社会的な要請があって それをこの中に包含していくかしていかないかという問題だと思いますのです。例えば、 今後そういうことが起こるかどうかしりませんが、社会的に要請が強くなったボランティ ア活動みたいなものと一定の時間内だったら認めていきましょうとか、そういうものが現 実にあるのかどうか。これは今後起こる可能性がありますね。  ですから、そういうことまで整理していくと通災そのものの性格は昭和48年に作った 時はかなり限定的で、労働者その者の直接的な行為をみてきましょうという中身の整理の ように見えるのですが、それが広がってくると、いわゆる社会的な日常生活行為そのもの も全部社会的な要請で必要なものについては適用していきましょうというようなところ に入ってくると思います。  現実にいま入りつつあると。そうなるとこの通災そのものの制度というのは、いま労災 保険の一環としてありますが、本当にそういうやり方でいいのかどうか、そこもやはり一 回考えていく必要があるのではないかと思います。 ○平野部会長  ほかにはよろしいでしょうか。 ○松井委員  いまの佐野委員との関連で申し上げますと、いまボランティアという話がありましたが 省令の2号と言うのですか、いわゆる能力開発のところも社会的には要請が高まっている のではないかと思いますが、現実にこれは相当限定されているのか、少し英会話学校に行 って能力を磨くというのも、もう対象となっているのか、そういうことも併せて教えても らえればと思います。  ですから、現行の1号から4号までの「その他これに準ずる行為」というのはどうなる のか、まず一覧表も示していただいて、それで今後の議論の参考にさせてもらえるとあり がたいと思います。 ○平野部会長  佐野委員のご発言、やはり時代とともにどう変わったかと、年代としてどういうふうに 増えていったか減っていったかというデータがいいですね。ただ単に一覧表にして出すよ りは。  もう一つ、例えば通勤途上の労災に入れた経緯などについてももう少し詳しく分かった ほうがここでの議論ではいいのではないでしょうかね、いろいろ変遷してきたのを。今日 ので大体分かりますがもう少し詳しければもっと役に立つような気がするのです。 ○田中委員  事務局のお仕事を増やしてばかりで申し訳ないのですが、パートタイム労働の方も当然 該当になってまいりますね。通常のフルタイムの従業員の方が、ある要介護状態の方の所 に立ち寄るというケースよりも、多分もともと要介護状態の方なりを抱えておられてパー トタイムでお仕事をされている方は現実的には多いと思うのです。  そうするといま、実際、通常の要介護云々は別にして、いま通災の適用を受けてられる 方の中で正社員とパートタイムのある短時間労働者の方の比率等が分かれば、今後のこれ を何らかで規定していった時のボリュームゾーンと言いますか、どのぐらいの影響率があ るのかというのも見えてくるのではないかなと思いますので、もし可能であれば、そうい う給付受けられている方の雇用の形を教えていただけるとありがたいなと思います。 ○平野部会長  こちらのほう、何かご意見があれば。 ○労災保険業務室長  統計上はいまパートタイマーであるか、あるいは常用労働者であるかという形では取っ てません。 ○松井委員  仮に休業給付である場合に、例えば月例賃金が低いとか、少なくとも代理指標的なもの は出せるかどうかを検討してもらえればと思います。休業の時その賃金によって変わって くると思いますので、それぐらいは最低限分かるのではないかと思うのですが、いかがで しょうか。 ○平野部会長  ありがとうございます。もしかしたら事務局ができる範囲を逸脱するほどご意見をいた だいているのではないかという気がするのですが、非常に重要なことであればご指摘いた だければ非常にありがたいのです。  これは、あと何回ぐらいで詰めるのですか。もうなりゆきですか、次1回ぐらいで決め るわけにはいかないと思うのです。事務局の原案では、この次の会合をやったあとぐらい で出してもらうことになるのではないかという気がしているのです。  また、事務局でいろいろなデータが出来上がる途中その他で皆さんもご協力をいただく ことがあるかもしれませんが、その時はひとつよろしくお願いいたします。  最初の議題が非常に難しかったものですから、ついついその案件で申し訳ありません。 それでは、もう一度ご意見を踏まえて事務局に引き続き検討していただいて次回と言うの ですが、次々会もありそうだということです。  次の議題に移りたいと思います。「平成18年度労災保険経済概況」について、事務局か ら説明をお願いいたします。 ○労災管理課長  資料2をご覧ください。平成18年度の決算がまとまって出されましたので、それをご 説明させていただきます。  まず、平成18年度の収入は保険料収納額が1兆318億円程度で前年から比較すると 0.98%、若干の減少です。主な要因としては平成18年に労災保険率の改定で平均が0.4 厘の料率引下げがありましたので、そういった影響で保険料収納が若干減少しているのか と思います。  支出はこの間平成14年からは徐々に減少してきたわけですが、平成18年度は7,806 億円で1.01%、前年から比べると1%ちょっとの増加です。平成18年度は82億円ぐらい の増加ですが、一つは石綿の健康被害に関する特別遺族給付金や通災に関する法律の施行 に伴うもの、あるいは労災本体のほうでの石綿関係の給付も増えたことも一つの要因かと は思います。事務費はずっと削減を図っています。  この結果平成18年度の単年度の収支で見ますと475億円のプラスです。いちばん下に 「積立金の累計」ということでお示ししていますが、平成18年度末で積立金累計額7兆 8,229億円ですが、これは注に書いてありますように年金受給者の将来の年金給付費用に 当てる責任準備金で、平成18年の段階では必要な積立額に対しては98.9%の積立てで、 まだ若干の不足の状況です。説明は以上です。 ○平野部会長  ありがとうございます。この決算経済状況について皆さんからご質問、ご意見をいただ きたいと思います。 ○長谷川委員  最近、永田町周辺を歩いていると何か霞ヶ関に埋蔵金があるとかという話が言われて、 結構いろいろな特別会計が話題になっているわけですが、この労災保険もその対象にもあ るように私は感じているわけです。  やはり、この積立金があたかも余剰金のごとくに勘違いしている人たちが多いので、厚 労省はこの労災保険の積立金というのはどういう時に使うのかというのをきっちりと説 明することが必要なのではないかと思います。将来の支出が決まっている経費であること をちゃんと余剰金ではないことを是非、しっかりと説明してあげていただきたいと思いま す。これに手を付けられることのないように是非、お願いしたいと思います。 ○平野部会長  ありがとうございます。 ○野寺委員  同じことの延長線上ですが、積立金そのものも問題なのですが積立金には利子収入があ るわけです。そちらのほうもちゃんとまともに使われているのだということを一緒に言わ ないと、そういう意味では問題かなと思います。 ○平野部会長  ありがとうございます。 ○小手川委員  同じ話題ばかりであれですが、積立金の累計がいま98.9%とおっしゃられましたが、 それはいま現在の被災者に給付されている年金費用でしょうか、それとも今後被災される であろう被災者に対する年金費用のことでしょうか。 ○労災管理課長  これまでに被災されて既に年金を受けることは決まっていて、ただ、今後ずっと年金の 支給を受けるわけで将来の受給に必要な分までをいまの時点の災害発生時の方に負担し ていただくことにしていますので、現在までに既に受給が決まっている者についての将来 の年金給付にかかる費用ということで積み立てています。 ○小手川委員  そうしますと、これは今後、我々労働災害減少に向けて取り組んでいますが発生具合に よってはまた充足率というのは変動してくる可能性はあるということでよろしいですか。 ○労災管理課長  基本的にはその事故が起きた時点において、その時の事業主の方に負担していただきま すので今後、減っていけば当然下がっていくということです。 ○小手川委員  分かりました。ありがとうございました。 ○松井委員  皆さんが積立金の話をするので、その質問をさせてください。積立金はどういう運用を しているのでしょうか。というのは厚生年金とか公的年金の積立金の額から比べれば小さ な規模ですが、兆の単位での運用をどういう所でどういうふうにやっているのでしょうか。 あまり運用について真剣にやっているとも思えないので実態を教えていただければと思 います。 ○労災管理課長  積立金は法律上、財政融資資金として運用することになっていますのでそちらで運用し ています。 ○松井委員  それでは財投でやっていたから利率は非常に低いわけですね。 ○労災管理課長  結局いまは確かにそういう状況です。 ○松井委員  これからもそうでしょう。 ○労災管理課長  そこは安全性と両にらみの問題になりますが、いずれにしても積立金というのは法律上 そういうことで決まっています。 ○松井委員  それは雇用保険も同じという理解でよろしいのですか。雇用保険のほうが短期ですから、 積立額はそんなに多くないと思いますけれど。 ○労災管理課長  そういうことです。 ○松井委員  分かりました。 ○平野部会長  ほかにご質問はありませんか。 ○松井委員  部会長、要望だけしておきます。先ほど通災の細かい号のところまでは分からないとい う話でしたが、この通災のケースでも年金給付まで至るケースなどがあると思うのです。 今後議論をする時にできる限り通災のケースで、どういうふうに年金給付までいったのか も併せて統計が取れる工夫をしてもらいたいと思います。  というのは、これですと、全部一緒になっています。通災は事業主すべて全く同じ料率 でやっていると思いますので、そういうこともきちっとデータとして併せて提示してもら うようにお願いできればと思います。  それについては統計の取り方そのものも、より今後工夫していかなければいけないのか もしれませんが、それはできる範囲内で工夫をしていただきたいと思います。以上です。 ○平野部会長  ありがとうございます。それでは、よろしいでしょうか。もう少し時間がありますので、 そのほかで、今日の議題とは関係なくても結構ですが、何かありましたら、お願いしたい と思います。 ○中窪委員  政府のほうで行政不服審査制度について見直しを行っているという話を聞いたのです が、もし、それが実現すれば、労災保険のほうに少し影響してくるような気がするので、 そのあたりについて何か情報がありましたら教えてください。 ○平野部会長  それでは事務局から説明させていただきます。 ○労災管理課長  行政不服審査制度の見直しについて一般法であります行政不服審査法について、総務省 で検討会が行われて今年7月に一応報告がまとめられています。そちらで行政不服審査の 一般法の見直しについての検討がなされています。  一応、総務省からは来年の通常国会にその行政不服審査法の改正を提出するということ で聞いているのですが、その検討会の報告が出されて以降具体的に法改正のあり方とか、 その辺がまだ提示されていませんので今日の部会にもちょっと資料は準備できなかった わけですが、行政不服審査制度のその研究会の報告に沿って若干申し上げますと、いまま で行政不服審査で不服申立ての種類が異議申立てと審査請求と大きく2種類あります。異 議申立ては処分を行った処分庁に対して再度不服審査をする、審査請求はその処分庁の上 級官庁に対して不服申立てをする、2つの類型があるわけですが、このうち異議申立てに ついては権利保護のレベルからいきますと弁明手続とかが必ずしも整理されていないと か、権利保護のレベルが審査請求にもとるということで、審査請求に一元化することが一 つの方向性とする報告書がその検討会では出されています。  それに併せて、現在は、審査請求のあとに再審査請求というのがあり得るのですが、再 審査請求についてはこの2段階の手続が必ずしも迅速な救済に結び付いているわけでも ないことから、再審査請求は廃止して審理は1段階だけにするという形の方向が打ち出さ れています。  それとの関係で、処分が大量に行われてその要件事実の認定にかかわるようなものにつ いては審査請求の前の段階で処分庁がもう一度処分について再考するような再調査請求 という類型を特別な類型として設けることができる形でやるとなっています。  あと、不服申立ての期間を延ばすとか標準的な審理期間を定めるように努めるといった 迅速化とか、一部のものについては第三者機関に諮問するといったことで公正さを確保す る見直しが行政不服審査法で検討されています。  それに併せて、その他特別法でやっている不服審査もそれとの整合性を図るように見直 しをするようにという話があって、具体的には労災保険の場合に、いま、この不服申立て については都道府県労働局に審査官がいて、まず、そこで第1段階目の審査請求で申立て があります。さらに、それに対して不服があれば労働保険審査会に対して再審査請求とい う形で、まさに2段階の審査になっているわけですが、先ほどの行政不服審査法で1段階 化するということから、基本的には労働保険審査会に対する審査請求に改めると。ただ、 やはり処分が大量で要件事実の認定にかかわるということがありますので、再調査請求を その審査請求の前段階で行うことを考えています。その他手続についても行政不服審査法 の手続きの見直しに伴って整合性を出す方向で見直しを行うことで考えています。  いずれにしても、行政不服審査法の見直しが明らかになりましたら労災保険法の改正も 必要になりますので、また改めてこの部会でのご審議をいただくことになると考えていま す。以上でございます。 ○平野部会長  それについては、この部会で審査するのではないのでしょ。 ○労災管理課長  行政不服審査法は総務省ですが、それの整理法のような形、特別のものについてまとめ てやることになりますので労災保険法の改正については当部会でもお願いいたします。 ○平野部会長  ありがとうございます。以上のご説明について何かご質問がありましたら、どうぞ。 ○中窪委員  期限はいつですか。 ○労災管理課長  通常国会に法律を出すとなる、期限は予算関連でやると3月上旬ですので、2月とかの 時期に法律改正について通常であればご議論をいただくことになると思います。 ○中窪委員  そうだとすると、この部会でもそういう形で議論をするようになるのですか。 ○労災管理課長  労災保険法の改正については少なくとも部会の事項かと思います。 ○松井委員  雇用保険でもやるということでしょう。 ○労災管理課長  雇用保険も同じくやることになると思います。 ○長谷川委員  もし、この部会でやるとなると私は結構回数が必要になってくると思うのです。という のは私は前にやはり労働委員会の迅速化を図るための部会を経験しているのですが、何回 か会合が行われましたので、そうすると、もし次の国会でやるということではないですね。 ○労災管理課長  いえ、次の国会になる可能性はあります。 ○長谷川委員  そうすると、これは月に3回か4回ぐらいやらないと間に合わないのではないですか。 3月中ぐらいに閣議決定するわけですから、そうすると来年1、2月に何回かこのことを やろうというのは。 ○労災管理課長  最初申し上げたように総務省の見直しの方針がなかなか示されないので、我々のほうも なかなかご審議いただくような資料ができてないのが現状で総務省から、まず、そもそも 行政不服審査法の見直しの方針がもうちょっと明らかになった段階で、また、ご議論いた だければと思います。 ○平野部会長  何かこれからの会の予告。皆さんから相当な時間を拠出してもらわないといけないこと になりますね。  ほかにはよろしいでしょうか。同じような重要な案件はもうないのでしょうね。 ○松井委員  重要な案件かどうかは別なのですが、労災の二次健康診断等給付は労災保険に定められ ていると思うのです。それで、いわゆる安全衛生分科会で検討していた腹囲の問題につい て、おそらく細かいところをもし同じことを続けるならば、その部分も何か合わせなけれ ばいけないと思いますが、それはどのように考えておられるのか、二次健診はそのまま変 えないのか、あるいはこれは通勤災害と同じ形での別立ての料率で合わせて事業主の延べ 単で料率は決めていると思うのですが、それは、どういうことを考えているのでしょうか。 ○労災管理課長  二次健診のほうも安全衛生の省令で腹囲の見直しがあったので、それに伴って二次健診 給付の労災保険法の施行規則の改正が必要と考えており、それについてもまた年明けにご 議論いただくことが必要かと思います。 ○松井委員  それは法改正でやめてしまうという議論もあり得べしではないということですか、それ は医療保険者に責任をもってやってもらうこともあってもいいとは思っています。これは 意見です。以上です。 ○平野部会長  どうもありがとうございます。  それでは、本当にこれで終わりにしたいと思います。今日は本当にありがとうございま した。皆さんお忙しいことも承知しているのですが、皆さんにお集まりいただかないと会 は開きませんので、どうもありがとうございました。  議事録の署名委員を指定することになっておりますが、今日の署名委員は、労働者代表 の藤田委員と、使用者代表の小手川委員にお願いすることになります。よろしくお願いい たします。                 照会先:労働基準局労災補償部労災管理課企画調整係                          03−5253−1111(内線5436,5437)