07/12/07 診療報酬調査専門組織平成19年度DPC評価分科会 第9回議事録 平成19年度第9回診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会議事録 (1)日時  平成19年12月7日(金)15:00〜16:35 (2)場所  厚生労働省専用第18〜20会議室 (3)出席者 委員:西岡清分科会長、池上直己委員、木下勝之委員        熊本一朗委員、小山信彌委員、齊藤壽一委員、酒巻哲夫委員、        佐藤博委員、武澤純委員、山口俊晴委員、吉田英機委員、        参考人:伏見清秀氏        事務局:原医療課長、宇都宮企画官、中田補佐、他 (4)議題  1.平成19年度MDC毎作業班診断群分類の見直し(案)について        2.その他 (5)議事内容 ○西岡分科会長  ただいまから、平成19年度第9回診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会を開催させ ていただきます。  本日の委員の出欠状況でございますが、伊藤委員、嶋森委員、原委員、松田委員及び山 口直人委員より御欠席との連絡をいただいております。また難波委員、木下委員が少しお くれる旨の御連絡をいただいております。なお、本日はMDC毎作業班にオブサーバーと して御参加いただきました松田研究班の東京医科歯科大学准教授の伏見清秀先生に御出席 いただいておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。  それではまず、資料の確認を事務局からお願いいたします。 ○中田補佐  それでは資料の確認をさせていただきます。議事次第、委員名簿がございまして、続き まして資料D−1「平成19年度MDC毎作業班診断群分類の見直し(案)について」、参 考資料「11月21日及び12月7日基本小委資料」以上2つ資料がございます。 ○西岡分科会長  資料につきましてよろしいでしょうか。それでは議事に移りたいと思います。まず「平 成19年度MDC毎作業班診断群分類の見直し(案)について」でございます。事務局より 御説明をお願いいたします。 ○中田補佐  ではお手元の資料D−1をごらんいただきたいと思います。「平成19年度MDC毎作業 班診断群分類の見直し(案)について」でございます。こちらの検討状況につきましては、 ことしの7月10日に1回目のMDC毎作業班班長会議を開催いたしまして、その後各MD C班で専門家の先生にお集まりいただきながら検討していただきました。その後11月6日 に第2回の班長会議を開催しまして、この内容について検討していただいたといった経緯 でございます。  今回MDC毎作業班におきまして、四角で囲っている4つの項目、こちらを指針として 診断群分類の妥当性の調査、見直しを行ったことでございます。(1)でございますが、医療 資源同等性が担保されていること。(2)でございますが、臨床的類似性が担保されているこ と。(3)でございますが、分類は可能な限り簡素であり、分類のコーディングに際して臨床 現場の負担が少ないこと。(4)でございますが、制度運用上の問題が少ないこと。こちらの 4項目を指針として作業行っていただきました。  平成19年度につきましては、各MDCの作業班の班員の専門家から提出された意見を踏 まえまして平成18年のDPC調査データを用いて集計を行い、その結果に基づきましてM DC毎作業班で検討の上、見直し案を作成しております。特に(1)医療資源同等性と(4)制度 上の問題が少ないことに重点を置き、見直しを行っていただいたという経緯でございます。  続きまして2つ目でございます。平成19年度の主な見直し点ということで、概要を示さ せていただいております。  まず1)でございますが、主要診断群の精緻化でございます。現在の診断群分類では、 MDC16に外傷・熱傷・中毒、精神、その他が含まれておりまして、疾患分野が混在して いるといった指摘がございまして、そういったものを踏まえて今回の見直しでは、MDC 16を3つに分け、以下のように診断群分類の精緻化を行っております。  具体的には、MDC16外傷・熱傷・中毒、MDC17精神疾患、MDC18その他という ことで、元MDC16がこのような3つの診断群分類に分岐したということでございます。  次のページをおめくりいただきたいと思います。こちらにつきましては2)化学療法に よる分岐の見直しでございます。現行の診断群分類では「化学療法あり・なし」で区別し ておりますが、一部の高額薬剤、例えばリツキシマブやトラスツズマブにつきましては、 別に分岐を設定している状況でございます。しかしながら、同一の腫瘍に対する化学療法 でも、使用する抗がん剤の組み合わせ――こちらはいわゆるレジメということでございま すが、それによってコストや在院日数が異なり、ばらつきがあるのではないかといったよ うな指摘がございました。こういった御意見を踏まえまして関係学会等が認めている主要 な標準レジメのうち、特に点数のばらつきの大きい短期間の入院に関して点数の違いが明 らかなレジメについては新たな分岐を行ったところでございます。  具体的には悪性腫瘍の診断群分類ごとに使用症例が10%以上のレジメを抽出いたしま して、各MDC作業班で抽出された抗がん剤のレジメが標準的な治療であるか確認する作 業を行いました。その確認した作業を踏まえまして、さらに1週間以内症例における1日 当たりの薬剤点数平均が、主要レジメ以外の化学療法症例の1週間以内症例における1日 当たり薬剤点数平均の1.5倍を超えるもの、こちらを目安にいたしまして分岐の設定を行 っております。  そういった中で今回見直しの対象となった診断群分類につきましては、040040肺の悪性 腫瘍、060035大腸の悪性腫瘍、060040直腸肛門の悪性腫瘍、090010乳房の悪性腫瘍、こ ちらの4つの診断群分類で化学療法による分岐の見直しを行っております。  例を記載させていただいておりますが、040040肺の悪性腫瘍の場合でございます。左側 の丸で囲っております「手術・処置等2」の中で、人工呼吸器などという形で1から4ま でございますが、その最後の5といたしまして標準レジメとして「カルボプラチン・パク リタキセルあり」といったものを1つこの分岐のツリーとして設定する。右の丸で囲って ある部分がそれに該当いたしまして、1つのツリーとして分岐されるといったものでござ います。  それ以外の主要レジメにつきまして御紹介させていただきます。060035につきましては、 先ほど申し上げた基準によりまして、フルオロウナシル、レボホリナートカルシウム、オ キサリプラチンという3つの薬剤を使った主要レジメ。060040直腸肛門の悪性腫瘍につき ましてはフルオロウラシル、レボホリナートカルシウム、オキサリプラチンという3つの 薬剤を使った標準レジメ。あと乳房の悪性腫瘍につきましてはシクロフォスファミド、塩 酸エピルビシンを含むレジメ、または、パクリタキセルまたはドセタキセルを用いたレジ メという形で分岐をさせていただいております。  次のページをおめくりいただきたいと思います。3)でございます。部位等の違いによ る診断郡分類の整理でございます。こちらは簡素化という観点で、現行の診断群分類にお きまして、病態は同様ですが部位等が異なるために分けられているものについては、在院 日数や1日当たり点数に差がない場合には、部位による区別を残しつつ分類を統合し簡素 化を行うものでございます。また、部位等の違いが臨床的に重要であるものの、一くくり になっている診断群分類については、定義テーブル上で区別することとしております。  下に例がございますが、例えば化膿性関節炎の場合でございます。見直し前ではここに ございます化膿性・結核性股関節炎、化膿性膝関節炎、下肢股関節以外の関節炎という形 で3つの分類で分かれておりましたが、これを見直し後といたしまして07010×化膿性関 節炎ということで、この×の部分に1・2・3という数字を入れることによって、先ほど の化膿性・結核性股関節炎等を分類できつつツリーとしては1本のものとなるといったこ とで、簡素化を図るものでございます。  続きまして4)の副傷病の見直しでございます。副傷病の設定につきましては、平成18 年度の改定と同様に、DPC調査データの集計に基づき検討を行っております。検討に当 たりましては、集計結果から一定程度の件数があり在院日数を延長するような副傷病を抽 出し、新たに定義する副傷病候補としております。それらの副傷病候補のうち、MDC毎 作業班において臨床的に意味があると考えられる副傷病のみ選択しております。  この副傷病を抽出するに当たりまして、現時点では、分岐いたしましても十分な件数、 具体的には40件程度を満たしており、2つ目として在院日数の平均が副傷病を持たないも のと比較して1.5倍以上である、またその在院日数と1日当たりの変動係数が1未満のも のを原則として副傷病として分岐しております。また現行では副傷病として定義されてい るものでも、今回集計したときにそのような差を確認したところ、そういったものが認め られない場合につきましては、各MDC作業班の先生に御確認いただきまして、削除する 方向で検討いたしました。  次のページをおめくりいただきたいと思います。そういった検討の結果、この3番目に 示させていただいているところでございます。12月6日時点での分類数の状況については 以下のとおりでございます。平成18年分類では、516疾患数、診断群分類数が2,347、包 括対象分類数が1,438。改定後では、疾患数が501、診断群分類数は2,496、包括対象分類 数が1,691ということで、包括率は上昇しているところでございます。ちなみに包括率で ございますが、平成18年度分類では61.3%、改定後は67.7%でございます。  なおこの作業につきましては、平成18年度データに基づいて行っておりますが、20年 度改定作業におきましては出来高の改定内容等を反映させる必要がございますので、19年 度調査で収集したデータを用いて最終的な調整を行う予定でございます。したがいまして、 この改定後の暫定案については多少数字が変更される可能性があることを申し添えます。  4番目の今後の課題でございます。1)副傷病における入院時併存症と入院後合併症の 区別でございます。こちらにつきましては、現行の副傷病については、入院時の併存症と 入院後の合併症を区別していないところでございますが、その2つは副傷病としての意義 が異なるのではないか。要は入院時の副傷病と入院後に発生した副傷病ではその意義が異 なるのではないかといったことで、今後はそういったものを区別して取り扱う仕組みを検 討する必要があるのではないかといったものが1番目でございます。  2)でございますが、DPCにおける高額薬剤の取り扱いについてでございます。高額 薬剤に関しましては、今回の見直しについては新規の薬剤について個別に検討した結果、 分岐は増加しております。今後も新たな高額薬剤が保険収載されると考えられますが、同 様の取り扱いを行うのか、中長期的な観点から検討する必要があるのではないか。また今 回の見直しにおきまして、化学療法のレジメ別分岐を導入したところでございますが、今 後もこの仕組みを継続するのか、あるいは新たな仕組みを構築する必要があるのかどうか、 こういったものが検討課題としてあげられております。以上でございます。 ○西岡分科会長  ありがとうございました。ただいまの御説明に関しまして何か御質問、御意見ございま せんでしょうか。齊藤先生の方から何か追加等ございますか。 ○齊藤委員  今御説明のあったとおりですけれども、16のMDC班の班員の先生方もかなり作業に慣 れてきておられまして、平成18年度のデータをもとに、より適切な精緻化と簡素化という 2つの役割を落とし込むことができたかなと思っております。疾病の数としては減ってま いりましたし、診断群分類としてはよりふえて精緻化が進みましたけれども、現場として は双方とも使いやすい格好で展開したのかなと思っております。 ○西岡分科会長  ありがとうございます。伏見先生もこれに関して常に参画されていたと思いますが、何 か追加なりございますでしょうか。 ○伏見氏  研究班といたしましてもいろんなデータ分析などを行いながら、例えばこのプロトコル の分析とか、石川先生の分析とか、MDCの再構築で桑原先生とかのいろんなデータ分析 に基づいていろんな提案を出させていただきまして、それをかなり反映させていただいた と考えています。 ○西岡分科会長  ありがとうございます。山口先生も御意見をお願いします。 ○山口(俊)委員  各グループによってかなり考え方の差が前はありましたけれども、回を重ねるごとにそ の差がなくなってきて、齊藤先生がおっしゃったようにいいものができつつあると思いま す。  今後の課題についてもよろしいですか。やはり今一番大きな問題は化学療法のことでし て、手術の場合は傷病名のときに「手術のあり・なし」ということで同じように見えます が、手術料が出来高になっておりますので、例えば胃の部分切除と全摘術は手術ありでも きちっと分けられているのですけれども、化学療法の場合は、どんな安い薬を使ってもど んな高い薬を使っても一緒になってしまうということです。  普通の薬であればさじかげんということがあって症例に応じてそれぞれ違うということ があるのですが、幸いといいますか、抗がん剤の場合にはそんなに大きな差はなくて、ス ケジュールもそれに対する副作用の防止薬の使い方も一定のものが望まれていますし、そ うあるべきだと思います。最近ガイドラインがたくさん出ていますが、胃がん学会もそう ですが、かつては化学療法が望ましいとかそういう形でしか出ておりませんでしたが、こ のごろは明確にこういうレジメでやりなさいということがファーストライン、セカンドラ インとできつつありますので、一番最後のところに書いてあります化学療法のレジメ別分 岐を導入するか、あるいはレジメ別にそれを手術費と同様に認めて別個に取り扱うか。包 括外という考え方もあるかと思います。 ○西岡分科会長  ありがとうございます。今の山口委員の御意見も踏まえまして御質問、御討議をお願い したいと思いますが。どうぞ、酒巻委員。 ○酒巻委員  1ページのところですが、真ん中あたりに「今回は特に医療資源の同等性と制度運用上 の問題が少ないことに重点を置き」という文言があるのですけれども、1番の医療資源の 同等性というのは最初から非常にしっかりとした形でやられていたと思いますが、4番の 制度運用上の問題という点については、後ろのページをめくってもどれが制度上の運用だ ったのかがよくわからないのですけれども、ちょっと御説明いただけるとありがたいので すけれども。 ○西岡分科会長  齊藤委員お願いします。 ○齊藤委員  この言葉の意味するところは立場によっていろいろ違うかと思いますが、一番はやはり このMDC16が非常にいろいろな病態群の集まりであって、制度運用上の問題であると救 急医学会等で繰り返し指摘されておりますが、今度はそれぞれの病態をしっかり3分類し て外傷と精神疾患が同居するような形はなくなってきた。そういうものに代表されるかと 思いますし、これは資源の同等性ともかかわることですけれども、高額薬品を使ったとき にそれを使った医療機関が非常に出費がかさんで経済的な負担を抱え込むことがないよう な、これも広い意味での制度運用上の問題だと思いますけれども、その辺がかなり是正で きたのかなと理解しております。 ○酒巻委員  もう少し質問してもよろしいでしょうか。このページの新たに制度上でというところで、 MDC16、17、18というふうにお分けになったということで、実は私は精神疾患について 学会から頼まれた件がありまして、つまり樹形図を学会としては提案しているのだけれど も、それがどのように反映されるのかということが1点と、軽度の急性期ということがD PCの条件ですが、例えば慢性期の療養型みたいな形で運用されている精神専用の施設あ るいは病院がどのような扱いになるのかという、この2点について。 ○齊藤委員  これもあるいは事務局からお答えいただくのがいいのかもしれませんが、私も実は精神 学会の方から御依頼を受けまして、今は一般病床と精神病床とあるので一般病床がDPC の対象になっているわけですが、精神病床をDPCの対象に取り入れてもらえないかとい うのが学会の御希望なんです。ところが、それでは精神病床の平均在院日数はどのぐらい ですかと伺ったら、50日ぐらいだというので、もちろん病気を差別するのは必ずしも妥当 ではないのですが、病棟群としてはやはり現行のDPCを対象とした一般病棟とは異質で あると考えざるを得ないと私はそのときお答えし、私もそう考えたのです。  今後いろんな種類の長期化する病態を、あるいは介護療養とか慢性リハビリとかそうい ったものも含めて、どう包括すべきかというのはまた別個の病院医療の包括方式だと思い ますけれども、現行のDPCの中に無理に入れ込むのはちょっと整合性に欠けるかなと、 そういうふうに私は申しました。 ○西岡分科会長  ありがとうございます。事務局の方からこれに関して何かコメントございますでしょう か。 ○中田補佐  先ほど、精神疾患の分岐はどのような形なのかという御質問がございましたけれども、 そこは精神の関係学会等の先生からいろいろ御意見を賜って、そういったものを反映して いるといった状況でございます。 ○熊本委員  関連してですけれども、MDC16の混在がよくなったというのはいいのですけれども、 精神疾患の急性期のことに関しては、今は包括の支払いではないわけですよね。ですから 精緻化するためのデータをどのような形で集めてどのようにされているのかだけ、ちょっ と教えていただければと思います。 ○中田補佐  現在DPCの対象となっているのは一般病床ですので、精神疾患といっても一般病床に かかる精神的な疾患を対象としているところでございます。 ○熊本委員  そうするといろんな病院からデータが出てきているのかどうかということをちょっと知 りたかったものですから。 ○企画官  現在でも精神疾患のツリーは、1本だけですがございますので、そういったデータを活 用して今回の分岐の方に反映ということでございます。今中田補佐が申しましたように、 当初向こう側の要望は、慢性的なものとか、あるいは精神病棟に入るような疾患も提案で 出てきたのですけれども、そういったものは齊藤委員がおっしゃったように、あくまでこ のDPCの対象は一般病床である、急性期を扱うという趣旨に照らし合わせて調整してい るということでございます。 ○小山委員  そうするとちょっとこんがらがってきたのですけれども、精神科病棟は一般病床ではな いので外れるということですけれども、大学病院の場合に持っている精神病棟と、いわゆ る精神病院だけの単科の精神病院と、分ける必要があるのかなと思うんです。ということ は、DPCをせっかく分類しても、例えば自殺企図で入ってきた患者さんが救命センター に入る。それは結局一般病棟では絶対に受けられませんので精神科病棟に入る。ここにな ると出来高に変わってしまうわけですね。そこら辺のところはどういうふうに考えていっ たらいいのでしょうか。 ○企画官  そこのところは、とにかく急性期一般病床ということで今進めておりますので、そこで データを積み重ねた上での次の議論になってくるかと思いますが。 ○小山委員  今回の要望に出したのは、急性期に分類される精神科の患者さんがそこから外れている ので入れてほしいという要望を出してきたつもりなんです。それが全部外れてしまうのだ としたら、少なくとも大学病院レベルですと、精神科の疾患名で入ってきた患者さんが一 般病棟に入るということは余りあり得ない状況ができてしまうと思うんです。つまり、一 般病床を持っている、DPCを持っている、総合病院でもいいですけれどもその中に精神 科病床を持っていた場合と、単科で動いている場合ではちょっと違ってしまうので、そこ ら辺のところはどういうふうに考えたらいいのですか。 ○企画官  小山委員のおっしゃることはよくわかるのですが、今回はあわせましてDPC対象病院 そのものの拡大という議論もしていただきました。そういうものと今回の総合的な病院の 中の精神病床をどうするんだとか、その辺も一緒の議論になると、データも余りそろわな いうちに混乱を来たすのではないかと思いまして、その辺はやはり分けて考えた方がいい かと思いますので、繰り返しになりますが、とりあえず一般病床の方でとれるデータをと った上で検証してからということになると思います。 ○小山委員  一般病床に入る精神科の疾患名というのがあり得るのかということなんですよ。恐らく 一般病床しかなければ入るのでしょうけれども、精神科病棟がある場合には、やはり精神 科病棟に入ってしまいますよね。そうすると施設によっては、DPCに乗れるところと乗 れないところが分かれてしまうという話になってしまいますかね。それはとりあえず仕方 がないと考えるのですか。 ○企画官  一たん一般病床に入院してから精神病院に移られるという方もいるということで、そう いう方のデータもとっておりますが、対象となるのはあくまで一般病床にいる期間だけな のですけれども、データをあわせてとっておりますのでそれを検証させていただくという ことですが、今はまだ移行期というか過渡期ということでその辺は御理解いただけたらと 思います。 ○小山委員  現場はかなり混乱してしまうと思うんです。つまり入院して一般病棟にいて、例えば救 命救急センターなら救命救急センターにいたときはDPCだと。傷が治ったから一般病棟 というときには、精神科の診断名がついた患者さんは精神科に入ってしまう。そうすると そこから出来高になるという考え方でよろしいですか。 ○企画官  そのとおりです。 ○酒巻委員  それが実は制度運用上の問題が少ないことにかかりはしないかというが1点ですね。つ まりDPC制度そのものを運用していく上で、病棟が変わるたびに複雑な運用を迫られる ことになりかねないということがあります。もう一つは、ここにMDC17では分類数が12 と書かれていますけれども、この12については一応認識されている……つまり先ほど1つ ぐらいの診断名ということだったのですが、ここにある12というのはどのような根拠から 出されているのでしょうか。 ○中田補佐  端的に申しますと、先ほど申し上げたとおり関係学会の方から御意見をいただきまして、 それを反映させたら12になっているという状況でございます。 ○酒巻委員  私はもう少しデータがそろうことがとても大事だと思っていますので、今精神病棟に入 院している患者さんのデータはEFとして出しているのでしたか。そこを確認してからに したいのですが。 ○中田補佐  現在データとしてはございます。 ○酒巻委員  精神病棟を通った全退院者のEFファイルがあがっているというふうに理解していいで すか。 ○中田補佐  調査期間が7から12という制限はあるのですが、原則、精神病棟を通った方もあがって きます。 ○酒巻委員  精神病棟のみの入院で、退院した人も含まれているということですか。 ○中田補佐  精神病棟のみを入退院した方も含まれます。 ○酒巻委員  そうしたらそれを使って精緻化をしていただくということで、よろしくお願いしたいと 思います。 ○西岡分科会長  ではこの件に関しましてはこれでよろしいでしょうか。ほかに別のところで、どうぞ池 上委員。 ○池上委員  包括対象分類数が改定後1,691になった経緯については、(1)と(4)つまり医療資源同等性 と制度運用上の観点からこのたび案として1,691にされたという経緯はわかるのですけれ ども、包括対象分類にならない診断群分類数そのものが2,347から2,496になった経緯と いうのはどういうことなのでしょうか。つまり分類に根づけがない分類の意味はどこにあ って、それを変えたとしたら何を基準に変えたかということを教えていただけますか。 ○西岡分科会長  事務局お願いします。 ○中田補佐  今回診断群分類の分岐、また包括対象分類とする考え方につきましては、御質問がちょ っと難しかったのですが、繰り返させていただきますと、副傷病を先ほど申し上げました 十分な件数ということで40件程度を満たして、在院日数の平均が1.5倍以上、変動係数が 1未満ということで分岐する。また包括するものといたしましては、40件以上あって、1.5 倍以上の在院日数があるものについては包括としています。 ○池上委員  そのようにして1,691の包括対象分類群数が出てきたことはわかるのですけれども、実 際には支払いに使わない診断群分類数が800ぐらいあるわけですね。それは何のためにど ういう仕方で見直しを行ったかということですが。 ○中田補佐  これは端的に申し上げまして、包括できるだけの十分な件数がないようなものが今回包 括対象外になっているということでございます。 ○池上委員  そうであるなら見直し作業をする意味はどこにあったかということを伺いたかったので すが。 ○中田補佐  見直し作業につきましては、当然対象病院が拡大していってデータの量も多くなってき ますので、前回改訂時に分岐したときとはまた違った副傷病のデータが出てくる。そうい ったことを反映してこの診断群分類数が変わってくるのではないかと思っております。 ○池上委員  そうしますと、副傷病の出方が違うということだけで診断群分類数が変わったというこ とでよろしいのですか。 ○西岡分科会長  企画官お願いします。 ○企画官  見直しに当たっては、例えば今類似のものとして一緒に包括されているような疾患が、 実際に運用している現場の臨床的な観点から見ると、これは1ページの(2)のところが特に そうですけれども「類似性が担保されていること」と書いてあるのですけれども、実際運 用している現場の先生方から、これとこれは別に分岐を分けた方がいいという声があるも のとか、あるいは先ほどの3ページの化膿性関節炎のように、分かれているけれどもむし ろ一緒にした方がいいとか。これはDPCとして使っている現場の御意見もあるし、デー タ的にも合わせた方がいい分けた方がいいとか、あるいは副傷病として考えた方がいいと か、そういうさまざまな御意見があるところですので、そういうものをできるだけ反映さ せるという観点から見直しを行ったということです。 ○西岡分科会長  なかなか難しいのですけれども、もともとは1つで症例が40例以上あった群があって、 実際にはそれを分けていくと、分けた方が多くなってもともとあったところは少なくなっ て包括対象にならなくなったとか、そういうものもあるということですね。 ○企画官  そういうものもあると思います。さまざまなケースがあると思いますけれども。 ○酒巻委員  補足ですけれども、つまりカットオフのところは40例とあったのでしたか。ちょっと数 を忘れてしまったものですから。 ○企画官  そうです。症例数は40例ということです。 ○西岡分科会長  ほかに御意見よろしいでしょうか。どうぞ熊本委員。 ○熊本委員  単なる確認というかお願いですけれども、毎回2年ごとに診断群の見直しで精緻化され てよくなっていくのですけれども、継続性を考えますと、ちょっとわからなくなることも ありますので、毎回松田先生にお願いしているのですが、きょうも伏見先生にお願いした いのですけれども、リンクづけですね。そういうことも御配慮していただかないと、続け て15年からずっと見るときに難しい点が出ないような御配慮というか、もともとはこうだ ったということを、また別のテーブルをつくるか何かでお願いしたいと思います。いつも のことですけれどもよろしくお願いします。 ○西岡分科会長  伏見先生、何か御意見を。 ○伏見氏  例年確か変換の対応テーブルとか、研究班ではないですけれども、そういうものを提案 させていただいておりますので、今回も同じような形でデータ分析等に支障がない形の継 続性を担保できるものを用意してもらうようにしたいと思います。 ○西岡分科会長  どうぞ池上委員。 ○池上委員  別の観点から。先ほど抗がん剤の問題が出ましたけれども、慢性期包括評価では、末期 がんに関する抗がん剤とモルヒネ系鎮痛剤に関しては別枠の出来高で請求するように、今 そういう仕組みになっていることをお伝えしておきます。 ○西岡分科会長  山口委員どうぞ。 ○山口(俊)委員  末期の場合にはアクティブに化学療法をやる場合と違ってかなりケースのばらつきが大 きいので、まことに妥当なことだと思います。 ○酒巻委員  悪性腫瘍については、見直しの対象になったのはこの4つということでよろしいわけで すか。割と症例数が多いところというと、肝胆道系がかなり多いですよね。それとか、割 と複雑なところだと頭頚部といいますか、頚部あたりの分類はかなり複雑な病態のものを 含んでいるのですが、その2つについてはいかがでしょうか。 ○中田補佐  先ほど御説明申し上げましたが、各診断群分類で使用症例10%以上のレジメをまず抽出 しているといったことを事務局の方で確認作業させていただきましたので、上がっていな いものにつきましては、10%以上ということで抽出されてこなかったということでござい ます。 ○山口(俊)委員  肝胆道系の抗がん剤治療については全く標準的なものが確立されていなくて、今まさに ようやく緒についたばかりですので、今後だと思います。それから頭頚部の腫瘍に関して は、放射線と併用するとかまだ標準化が十分でない点があると思いますが、いずれ決まる と思います。 ○西岡分科会長  ありがとうございます。ほかに御意見ございますでしょうか。今後の課題というところ も含めまして、よろしいでしょうか。ありがとうございました。それではこの件に関しま しては、きょうの御意見を踏まえまして、診断群分類見直しということで中医協基本問題 小委員会の方に報告を行うことにさせていただきたいと思います。余り御修正のところも なかったようでございますが、もし文言等の修正等がございましたら、座長の方に御一任 お願いできたらと思います。  次に報告事項になるのですが、当分科会に付託された事項につきまして、提案書として とりまとめて中医協基本問題小委員会に2回にわたって御報告し、検討していただきまし た。その内容について事務局の方から御説明をお願いいたします。 ○中田補佐  お手元の参考資料でございます。こちらの参考資料に基づいて御説明申し上げたいと思 います。先ほど分科会長から御説明ございましたとおり、基本小委の方で2回の検討が行 われました。その経緯と提案書をとりまとめたことについて御報告申し上げたいと思いま す。  まず1ページ目でございます。当分科会で御議論いただきまして、11月21日基本小委 の方にこのような形で提案書として提案したところでございます。前回御検討いただいて おりますので、簡単に御説明させていただきます。  第1の適切な算定ルール等についてはここにございますとおり、同一疾患での再入院、 それから診断群分類の決定方法について、この2点について提案させていただいていると ころでございます。  ページをおめくりいただきまして2ページ目でございます。こちらはDPC対象病院の あり方についてということでございます。1番目の急性期の考え方でございますが、この 分科会で御検討いただいたとおり、急性期とは患者の病態が不安定な状態から治療にある 程度安定した状態に至るまでといった形で提案させていただいております。  2でございますが、DPC対象病院の基準案といたしまして、平成18年度の基準に関す る考え方ということで、こちらについても今後20年度以降のDPC対象病院に対しても満 たすべき基準とするべきであるという形で提案させていただいております。  また(2)のデータの質に関する考え方についてでございます。こちらは当分科会でも かなり御議論のあったところでございまして、データの質はDPC制度の根幹にかかわる ものであるといったことから、急性期入院医療における治療から退院までの適切なデータ を提出できることと、データの質の確保が極めて重要である。DPCの準備病院は7から 12月までの本体調査に参加して一定期間適切に当該データを提出できること、一定以上の (データ/病床)比があることをDPC対象病院となる要件とすべきである、といった形 で提案させていただいております。  (1)のデータの提出期間でございますが、分科会で御議論がございましたとおり、一定期 間につきましては、19年度のDPC準備病院も対象になり得るようにその1年とするべき という意見もございましたが、通年調査という形になっていない現状では季節変動などの 不安定要素が考えられるといったところでございまして、こういったものを除いてデータ の質・量を確保し安定性を図る観点からは、2年間、10カ月分のデータとするべきである、 といった形で提案させていただいております。  ページをおめくりいただきまして、適切なデータの提出についてでございます。こちら は議論いただいたとおり、適切にデータを提出できることにつきましては、期限の厳守、 正確性等が確保されること。引き続きましてデータの質に重大な疑問等があった場合には、 当分科会でその原因等について調査し改善を求めることとする、といったことでまとめさ せていただいております。  また(3)の(データ/病床)比につきましては、先ほど2年間、10カ月のデータとすると いうことでしたので、そうであれば(データ/病床)比8.75とするという形で、4カ月の 3.75に相当する8.75といった形で提案させていただいております。  5ページ目でございますが、それらを踏まえてDPC対象病院の基準案についてといっ たところでございます。当分科会では以下の2案について御検討いただきましたが、基準 案1が望ましいとする意見も多かったところでございますが、基準案2も望ましいとする 意見も一部にあったという附帯の意見をつけて提案させていただいております。  基準案1につきましては、御存じのとおり軽症の急性期入院医療も含めてDPCの対象 とする案ということでございまして、先ほど述べさせていただきました要件をもってDP C対象病院の基準とする。賛成意見、反対意見はここの分科会で御議論いただいた内容を 記載させていただいております。  基準案2につきましては、ある程度以上の重症の急性期入院医療をDPCの対象とする 案ということでございまして、先ほどの要件に加えて手術、化学療法、放射線、救急搬送 等の指標を例えば使ってDPC対象の基準としてはどうかといったことを提案させていた だきまして、次の6ページ目でございますが、当分科会で議論された賛成意見、反対意見 をあわせて提案させていただいております。  また、既にDPCの対象となっている病院が新たに設けられた基準を満たしていない場 合の取り扱いについては、一定の経過措置を設けた上でその基準を満たすことを求めるべ きである、といったことで提案させていただいております。  次の7ページ目でございます。第3の調整係数の廃止及び新たな機能評価係数の設定と いうことでございまして、20年度改定時までは調整係数は存続することとしておりますが、 それ以降について調整係数を廃止して、それにかわる新たな機能評価係数について検討す ることとなっている。20年度以降速やかに、以下の点を踏まえながら係数の具体案の作成 に向けた検討を行う必要があるといったことでございまして、1番の望ましい要件につき ましては、要件としてではなく係数として評価するべきではないか。医療機関の機能を反 映することのできる係数等について、以下の点を含めて検討すべきではないか。こういっ たものにつきまして基本小委の方に提案させていただいているところでございます。  こちらが11月21日に提出させていただきました資料でございまして、その中で適切な 算定ルール等につきましてはおおむね御了解いただいて、それ以外の部分については若干 議論を積み残した部分がありましたので、引き続いて11ページでございますが、DPCに ついて(2)ということで、まさに本日の午前中にこちらを基本小委で検討していただいてい るところでございます。  このペーパーにつきましては21日の基本小委の整理事項として、21日で合意された事 項といたしまして論点1、18年度基準については20年以降のDPC対象病院も満たさな ければならない。論点2−1の一定期間のデータとしては、データの安定性が重要といっ たことで、現在通年調査になっていないということであればその2年間、合計で10カ月の データとする。論点2−2の適切なデータ提出については、提案のとおり、適切にデータ を提出できるということについて、期限の厳守、データの正確性等を確保する。あとは、 DPC対象病院になっている場合につきましても、データの質に問題があったらその原因 等について調査改善を求めるといったことでございます。  また論点2−3につきましても、先ほどの2年間ということですと(データ/病床)比 8.75とするということで、提案書どおりの提案で合意されたところでございました。  21日に積み残った事項として、第2、検討すべき事項としてここにございますとおり、 1つ目といたしまして、19年度DPC準備病院の取り扱いについて、その2年間分のデー タ提出の後の平成21年度にDCPの対象とするかどうかといったことがございました。こ ちらにつきましては、21年度に対象の検討とするということで今回基本小委の方で検討さ れ、結論されたところでございます。  2番目につきましては、最後の基準案1と2のところで積み残しになっていたものを再 度本日議論いただいております。基準案1につきましては、先ほど申し上げましたとおり、 先ほどの第1に掲げたものをDPC対象病院の基準とするもの。基準案2については、そ れ以外にある程度の重症の急性期入院医療を提供しているものとするといったことでござ いまして、検討いただいた結果、基準案1とすべきではないかということで結論を得られ たところでございます。  また、既にDPC対象病院となっている病院につきまして、20年度DPC対象病院の基 準のうち新たに設けられた事項を満たしていない場合の取り扱いについては、一定の経過 措置を設けた上でその事項を満たすことを求める、ということで合意されております。  また3番目として、20年度以降速やかに検討すべき事項として以下の2点がございまし た。1つ目としては、基準を満たすことのできないDPC対象病院等につきましては、D PCの対象としないこととするなど、その具体的なルールのあり方を検討するべきではな いか。  2つ目といたしましては、DPC制度のあり方、それに加えまして調整係数の廃止に伴 う新たな機能評価係数等、こちらにつきましても提案書にもございましたが、20年度以降 速やかに検討すべきものとして検討いただいて合意されたところでございます。以上でご ざいます。 ○西岡分科会長  ありがとうございます。かなりホットなニュースでございますが、今の御説明につきま して何か御質問、御意見ございますでしょうか。  一応課題になっておりました、19年度に調査に入られた施設に関しては21年度からと いう形で御了承いただいております。それから、これは2号側からの意見でもあったので すが、DPCの制度を守らないところにはペナルティを出してはどうかとか、あるいは自 主的に辞退することを認めてはどうかという御意見なども出ておりました。実際には自主 的に辞退するということになると、いいときはDPCに入って、また出るというふうな変 な話になりますので、これは大問題かなと思っておりますけれども。何か御意見等ござい ますでしょうか。  それと実際には、この12ページの3番のところにございますような宿題を私たちはいた だいたということでございますので、早急にこれにつきましては引き続いて検討しなけれ ばいけないのではないかと思います。  よろしいでしょうか、これはかなり議論していただいたことでございますので。ではあ りがとうございました。  本日予定していたのは以上でございますが、時間がせっかく余っておりますのでフリー ディスカッションをやりたいと思いますが、医療課長の方から何か御提言があると思いま すのでよろしくお願いします。 ○医療課長  医療課長でございます。提言があるわけではないのですけれども、せっかく集まってい ただきましたので。  DPCについては平成15年から導入されてきたわけですけれども、導入される経緯とし て日本の医療の質を向上させる、あるいは標準的な医療を普遍化させるという目的と、請 求支払いの簡素化という観点で包括的な支払い制度になってきたと考えております。  実は支払いの方ばかり着目されているようですが、質の方がどうかということで、質に ついていわゆる粗診粗療になっていないかどうかという観点で、平均在院日数が短縮して きて効率化が図られているが必ずしも粗診粗療が見られるわけではないということで、今 回も評価をいただいているわけですけれども、じゃあ日本の中でこのDPCを使って質を 上げていっているのかどうかという観点で考えますと、それぞれ自主的にいろいろと取り 組んでおられるという話も聞きますけれども、全体として質を向上させる施策とか、ある いは標準的な医療が広がるようにするにはどうするのかという点を、このDPCを使って どうやるのかというのが見えてこない。  そういう意味ではDPCのデータを、私どもの方でもだんだんボリュームが大きくなっ てマネジメントが大変なのですけれども、どういう形で使っていただけるようにすればい いのかとか、あるいは標準的な医療というものをつくってそれを広めるためには、これを うまく使ってどうすればいいのかとか、そのあたり何か先生方で御意見があればお聞かせ 願いたいと思っております。 ○西岡分科会長  ありがとうございます。これは非常に重要な問題で、毎回調査報告をいたしますときに この御質問が出るところでございます。実際にはベンチマーク作業をいろんな病院がおや りになって、質の検討、例えば死亡率がどうであるかといったようなことを検討されては いるのですが、それが全体の形として見えてきていないというところがあるかと思います。 特にこういったことを調べれば質について答えが出るのではないかとか、そういった面で の御意見等をいただければ非常にありがたいと思うのですが。  伏見先生、先生の研究班の方でこれに関してかなり取り組みをされていると思うのです が、いかがでしょうか。 ○伏見氏  医療の評価で、簡単に言うとプロセスを評価するかアウトカムを評価するかといういろ んな議論があると思いますが、例えば死亡率などの評価は直接的なアウトカムのような評 価で確かに重要ではあるのですけれども、個人的な意見も入りますけれども、まだまだ日 本でそういうものを評価する基盤が達成されていないので、うっかりそういうものを出し てしまうと、もともとの患者さんの重症度が違うのか、それとも病院のパフォーマンスが 違うのかというのがわからない状況にあると思います。  その意味でいいますと、余り性急にアウトカム評価に向かうよりは、まだその前段階と して例えば病院ごとのプロセスのばらつきなどが非常に大きいですし、例えば手術前の在 院日数をとってみても病院ごとに全然違う。それから同じDPCであっても手術後の在院 日数も全然違うという、それはある意味でプロセスのデータになりますけれども、そうい うものをもっと出していくとか、あるいはプロセスは多少違いますけれども、どこの病院 がどういう治療をやっているか、あるいはどういう化学療法をやっているかというプロセ ス的なデータを出していく。  特に今回のような病院の実名入りで出すような形になりますと、非常に参考になるデー タになると思いますので、まず基本はその診療プロセスというものがどれほどばらついて いるか。あるいは実際にそれぞれの医療機関がどういう医療サービスを提供しているかと いう、そのような情報を出していく形で情報の透明化を進めていって、ある程度病院の標 準化なりが進んできた段階で、じゃあ現実的にアウトカムがどのぐらい差が出ているのだ ろうかとか、そんなことをやっていく方向で段階的な形で評価を進めていくのがいいので はないかと感じております。 ○齊藤委員  私も、決め手になる、例えば医療の質がどのようによくなったかという結果を鮮明に把 握するのはまだちょっと難しい段階かなと思いますけれども、それぞれの病院が自分は今 どういう立場に立っているのだろうか、どういう状況にあるのだろうかということは、D PCのデータを見ると非常にわかりやすくなります。  そこで病院がすべきことは、ではなぜうちの病院はそういう立場に立っているのだろう かと。そういう手がかりを、考えるきっかけをDPCは与えてくれるわけです。例えば術 後の入院日数が非常に長いという場合に、それが手術の術式によるのか、合併症によるの か、合併症によるとしたら一体どういう合併症がなぜ起こってくるのかと考えるきっかけ があるわけです。DPCが今までなかったときは、皆それぞれ我流で、おれの手術方式で 過去30年間やってきたんだから間違いないんだと強く言い張る外科部長がいれば、ほかの 人は二の句が継げなかったわけです。だけどもそれについて標準的に、なぜうちの病院だ けこんなに術後日数が長いのだろうかと。  そこで決して長いということを非難しないでくださいと僕はいつも言うのですが、なぜ なのでしょうかと。例えば受診者の年齢であるとか、原疾患であるとか、合併症だとか、 そういうものを解析した上で反省するところは反省するということになります。  それから、例えば比較的単純な胆石摘出術というようなときにも、自分の病院で検査と か投薬とか画像検査とか、そういったものがほかと比べてどうなのだろうかと。そうしま すと、非常に出来高に比して効率のよい作業をしている病院では画像とか検体検査などが 非常に絞り込んで行われているわけです。そういうことで、いわゆる医療のむだを省く。 私はこれを吟味と厳選と言うのですが、吟味と厳選を行う手立てが今まではなかったわけ です。またここでもいわゆる長老と言われる先生が「きみ、こんなのはレントゲンをたく さん撮らなければわかりっこないじゃないか」と怒鳴るわけですけれども、ほかと比べれ ば、それによって医療資源のむだが非常にその病院で発生しているということがあり得る わけです。  そういうことでいろんな形でスタンダード、標準化が鮮明になる手立てはDPCでつく られていくと思います。だから、その結果じゃあ患者さんがどういうふうにいい目に遭っ たのかということを開き直って聞かれれば、まだエビデンスはないわけですけれども、医 療資源のむだを省くという点でもとても重要であろう。そういう点で私は、DPCをいわ ゆる特定機能病院以外にも急性期を扱っている病院には広げていくのが、日本の病院医療 にとって重要だろうと考えているわけです。 ○西岡分科会長  ありがとうございます。どうぞ池上委員。 ○池上委員  今おっしゃったことに関連して、このたび提案書の中にありました、参考資料1ページ の2番目の(1)のところに「DPCにおける診療報酬明細書の提出時に包括評価部分に 係る診療行為の内容がわかる情報も加えること」ということでは、もう少し具体的にDP C分類ごとの総点数それから診療行為大分類ごとの画像、投薬、検査といったものの点数 がこの範囲にあるということであれば、ある病院がその範囲より大きく逸脱している場合 には、それが効率なのか粗診疎療なのかというのはよくわかりませんけれども、外来等の データもあわせて見ないとわかりませんが、少なくとも入院部分について、ここでおっし ゃっている包括評価部分に係る診療行為の内容というのをもう少しはっきり診療報酬の大 分類ごとの点数を見ることによって、比較できるのではないかという気がしますけれども。 そういった意図がこの背後にあったのではないかという気がします。  もう一つの観点から、今は医療の質の話をしておりますけれども、もう一つその前に重 要なことは、データコーディングの質ということがありますので、仮に出来高払いで請求 した場合の点数が著しく低い場合には、粗診疎療の可能性と同時にコーディングが正しく 行われていないという両方の可能性がありますので、これによって両方をチェックするこ とが可能になると思いますので、今までは在院日数だけに着目してきましたけれども、出 来高で請求した場合の総点数と大分類の点数もあわせて表示していただければ、コーディ ングの問題と、それから粗診疎療の問題と、両方の点から分析できるのではないかという 気がします。いかがでしょうか。 ○西岡分科会長  ありがとうございます。はい、どうぞ。 ○酒巻委員  今の最後の点ですけれども、つまり出来高で換算したときとDPCとしての点数の差と いうものに余り着目したレセプトなり請求形式をつくってしまうと、後々いわゆる保険者 との軋轢というのが極めて大きくなってしまう。私はそうあってもいいとは思いますけれ ども、オーバーした分については無視されてアンダーであったものだけ激しくやられると いうことにならないように制度設計をしておかないと、大変危険なことになると思います。  升としてその病院がある程度バランスがとれているということを前提にしてこの制度は 運用していると私は思っていますので、どちらかに激しく着目されるようなやり方をして しまうと、大変危険な結果になるのではないかと思います。 ○齊藤委員  今酒巻委員がおっしゃったことと関連するのですが、外れたものが必ずしも悪いものの あらわれでない場合もある。例えば池上委員は出来高部分が非常に少なかったものはコー ディングの誤りか粗診疎療のあらわれかと言うけれども、私の場合には、吟味厳選して非 常に限られた医療で十分な効果を上げている、もって模範とすべき医療の姿がそこにある 場合もあると思うんです。  例えばこの前ヒアリングをしたときに、聖路加で急性心筋梗塞の在院日数が非常に短い ということがあって、短いのはみんなから外れていればだめな人という見方をしていくと、 むしろ手本とすべきグループをつぶしてしまう可能性がある。そういう点でこのDPCの データの読み方、運用の仕方については、今酒巻委員がちょっと関連したようなことを言 われたわけですけれども、慎重にして、なぜそうなのか、そしてそのアウトカムはかえっ ていいようにつながっていることがあるのではないだろうかとか、そういう考え方をぜひ DPCのデータの見方としては使っていく必要があると思っています。 ○小山委員  ちょっと今のところで引っかかるので申しわけありません。この前の聖路加のは、まず いと思うんです。心筋梗塞がたった2日で退院されては困るんです。急性心筋梗塞が2日 で退院するのをここで認めると困るんですよ。あれはアップコーディングだということを はっきり言っていただいた方が僕はいいと思うんです。心筋梗塞という少なくとも心筋に ダメージを与えたようなものが2日とか3日で退院して、それは心筋梗塞で先生のおっし ゃるいい医療だと言われてしまうと、済みません、循環器代表としてはちょっと黙ってい られないので。やはり最低限いろんなことを考えると1週間から2週間ぐらいの入院は絶 対に必要なわけです。これを、2日をいい方に考えられてしまうと困りますので、一言発 言させていただきました。 ○齊藤委員  ではちょっと私も補足させていただきます。小山先生のおっしゃるとおりで、聖路加の 2日を弁護するつもりはさらさらないのですが、例えば糖尿病などでも前は私たちが大学 に行っているときは、1カ月は入院させろと言われていたけれども、何の不都合もなくど んどん短くなって、今は1週間ですよね。場合によるともっと短くして、必要な教育だけ して後は外来でやってもいいかもしれないと。  そういうことからいうと、もう一つはこの前のデータでちょっと気になっていて、治癒 例が特に特定機能病院などでは退院時に少なくなっていますよね。途中で出してしまって いかにも粗診疎療の姿のように見えますけれども、これなども完全に治らなくても外来で 治療すればいいわけですね。だから、入院医療というものが担うべき役割というのをこの DPCのデータをもとにして考える必要があると思うんです。2日で心筋梗塞を出してし まうのがいいと私が言っているわけでは毛頭ないのですが、いろんな中身がそこに含まれ ていることを慎重に考えるべきでしょうと一般論を申し上げているわけです。 ○池上委員  ちょっと誤解されていまして、私はすべて粗診疎療かアップコーディングだと言ってい るわけではなくて、フラッグする意味で重要であるので……例えば再入院率というのは今 まで全く公表されていなかったわけですね。それがこのDPCによるリセットのために再 入院するインセンティブが働く可能性もあるので、再入院率の高い病院がここに来てその 理由を説明していただいたわけです。  それと同じように、仮に出来高払いの点数と差が著しく大きい病院があった場合には、 説明していただくことで、それが正当な理由かそうでないかということが明らかにできる。 ここにわざわざおいでいただかなくても、各保険の審査の段階でもそれは可能であるわけ ですので、少なくともそれがデータとしてないと今のところは在院日数しか外れ値という ことがわからないわけですから、さらにほかのデータを表示すること、そして比較できる ように表示することに意義があるということを申し上げたわけです。 ○西岡分科会長  ありがとうございます。たしか前回のヒアリングのときに、差が大きいところも来てい ただいて御説明をお願いしたと記憶しておりますが、そういった形での分析データをもと にしてヒアリングをしていくことになるかと思います。ただ一つだけ、何となくヒアリン グを繰り返していますと悪い方の話ばかりが前に出てくるのですが、実際にはその裏に非 常に一生懸命やっていらっしゃる医療施設がたくさんあるんだということは、前提として 考えておいていただかないといけないかなと思います。 ○齊藤委員 このDPCのデータから期待することは、いい芽を摘まないでいただきたい ということなんです。 ○酒巻委員  今の池上委員の意見については私も賛成ですので、そういう形でやることがいいと思い ます。  もう一つコーディングについての考え方ですけれども、これまでのコーディングという のは、おおよそ退院時のコーディングということが主体につくられていると思うんです。 退院するときにどうであったかということを観点として見ている。しかし実は医療をやっ ていく上では、入院時のリスクというのがどのぐらい存在しているのかというのが……リ スクが同じでなければ質を測れないということだと思うんです。  例えば入院日数であったり、かかる費用であったりということについても、入院時のリ スクがわかっていないのに同じ土俵の上で比べっこするということは非常に困難なことで して、今度は例えば入院時の併存症と入院後合併症という形で分けるという案が出ていま すけれども、ぜひとも入院時のリスクとは何であるかということにも着目してコーディン グを精緻化していっていただきたいと思います。 ○西岡部会長  どうぞ武澤委員。 ○武澤委員  クオリティインディケーターの話ですけれども、行政が必要とするインディケーターと 各医療機関が必要とするインディケーターというのは、当然目的も違うし中身も違うと思 うんです。このDPCの保険支払い請求の制度の中でクオリティインディケーターをとれ るかというと、私はかなり難しいと思います。  ですから、とれるとすれば在院日数と、お金に関してはDPCで包括されたところの実 際の出来高との比較ですね。それによって標準、つまり入院期間だったら入院期間からど れだけずれているか。1SDずれているか2SDずれているかということによって、例え ばその病院全体の平均在院日数が何SDずれている病院ですかというばらつきは出すこと ができると思います。  それ以外のアウトカム評価は基本的に、あと残っているのは患者満足度とか退院時死亡 率ですから、それは全部リスク調整をしないとまず難しいと思うんです。リスク調整なし に退院時死亡率なんかを測ってもしょうがないし、在院日数も本当はリスク調整しないと いけないと思うのですけれども、それなしにクオリティインディケーターを全部のデータ の中からとってきて、それで平成15年に比べて医療の質がこれだけよくなりましたという のは、私は基本的に難しいのではないかと思います。  ただこのデータは非常に貴重なデータなので、各病院がこのデータをもとにして例えば コストアウトライヤーとか在院日数アウトライヤーを調べて、その要因分析をして改善を 図るという意味では非常にパワフルですし、あるいは私ども国立大学でやっているのは、 心臓外科と耳鼻科のパフォーマンスがどう違うのか。これは平均値から何SDずれている かという診断群分類にそれぞれ全部ありますから、足してやればその診療科が持っている パフォーマンスが出るわけです。同じようにコストもできます。そうするとこの診療科が、 例えば耳鼻科と心臓外科を比べてみたら、どちらの方がコストパフォーマンスがいいのか という比較できるわけです。  そういう意味では、これは各医療機関のクオリティインディケーターとしては非常に大 事なファクターであると思うんです。ただ本当にクオリティのことをやろうと思うのであ れば、この調査項目だけでは不足なので、国立大学では実は400ぐらいのインディケータ ーをつくったわけです。それで今データをとっているわけですけれども、そこから何とか して様式1にくっつけて、医療の質に関する統一的なインディケーター、例えば院内感染 がどのくらい出たかとか、医療事故はちょっと難しいかもしれませんけれども、ほかのイ ンディケーターを見つけて出さないと、今のこの手持ちの資料でやろうとすると、先ほど 言いました病院別の、私たちは調整在院日数と言うのですけれども、調整在院日数のずれ、 あなたのところは2SDプラスですよ、非常に在院日数が長いですね、あなたのところは マイナス1SDですよ、これはいいですね、とベンチマークにできるわけです。  そういう方法しか恐らくこの手持ちのデータではとれないのではないかと思います。そ れ以外はやはり別のリスク調整をしたクオリティインディケーターをとってきて様式1に 足さないと、今のままでは少し限界あるのかなと思いますけれども。 ○吉田委員  今池上先生から御指摘を受けたこのレセプトですね。ちょうどきょう今の時間やってい るんですよ。というのは、DPCレセプトの表示をどうしようかと。前回この包括部分を 全部出せというのですけれども、膨大なんです。そうすると各現場のドクターに相当負担 がかかるので、今疾病を絞ろうかとしています。例えば敗血症とか30ぐらい疾病を絞って、 その疾病の中についてデータを入れなさいと。全部やりますと相当大変なんです。だから そういう方策で今考えています。DPCレセプトを来年度改正しますので、どういう記載 をするかというのでやっています。  それから、実はさっき出ましたように47都道府県に審査委員会があるわけですね。それ をうまく利用することもおっしゃるように必要だと思うんです。ただ、今のところあれは 法によらない指導ですので、カルテを持ってこい、レントゲンを持ってこいという場合は、 一々知事の許可をとって法による面接しかできないんです。あれをもう少し簡素化してあ げれば、47委員会あるわけですから、それをうまく利用してこのDPCに入った医療機関 の監査ができるんです。指導もできます。  言いにくいですけれども、この間ヒアリングをやったものは、前からおかしいというか、 ああいうことはあり得るだろうかと。現に平成17年に入った医療機関の中にも関東近辺で あるんですね。前々から、絶対にこれはDPCに入ったらおかしなものが出るのではない かと。実際にそうなんですね。ですからあの辺のチェックは、厚労省の指導監査室といっ てもマンパワーがありませんから無理ですよ。せっかく社会保険の47審査委員会がありま すので、そこへちょっと何か権限を与えてあげて、すぐに指導監査を行う、面接を行うと いうことにしていただければ、もうちょっと内容がわかると思います。 ○山口(俊)委員  武澤先生の意見と同じ観点なのですけれども、DPCのデータを幾ら集めてもこうある べきだという姿というのは出てこないと思います。例えば在院日数を調べても、手術であ ればリンパ節郭清を十分にやらないで帰した方が合併症も少ないですから在院日数が短く なります。そういうことは化学療法でも起こり得ると思います。例えばフルドースやらな いでちょっと手控えてやれば、副作用も少ないので副作用のお薬も使わない。  ですから、ここでだれがそういうことをやるべきかといったら、私は学会がもっと細か いデータをとって、5年生存率成績とかいろんなことをとって、この疾患についてはこう あるべきだということを示す作業を始めないとだめだと思います。  ですから今後すぐに問題になるのは、この化学療法は入院してやるのかやらないのか。 そのときにどういうデータが必要かといえば、こういう化学療法ではこういう副作用がこ のぐらいの頻度で出るので、これについてはやるべきだ、というデータをどこかが出さな ければいけない。じゃあ今我々が持っているこのDPCのデータから出るかといったら、 いつまでたっても出ない。ですから学会の責任がむしろ大きいと思います。 ○木下委員  私も武澤委員、山口委員と基本的に同じ考えを持っておりまして、本当にDPCの制度 で質の向上とか標準化が得られるかという点においては、今御意見をいただいたようなこ とを基本的に考えております。やはり医療の質とか標準化というのは、本来学会等で本当 に治療法として、あるいは検査も含めましてきちっと了解をとった上で、本当に患者にと っていいことだということを検証しつつやっていくのが本来の質の向上、標準化だと思い ます。  したがってDPCということで、非常に聞こえはいいし大事なことだと思いますが、や はりDPCは支払いの簡素化とおっしゃいましたが、簡素化ということは逆に言うと簡単 にいじれるということでもありまして、実は基本的に支払い方法なんですね。そういう枠 の中ですので、私はむしろ、今までDPCでそれなりのメリットがあったことはよくわか るのですが、本当にこれでいいのかという視点がないのかということ。齊藤委員は積極的 にこれを進めるべきだという御意見ですけれども、問題点はあるだろうなと思います。  そういったことで、それだけの特定機能病院あるいは大学病院、それから齊藤先生のと ころのような大きなそれにふさわしい病院であるならば、それ相応のこととして機能する かと思いますが、この支払い方法とか効果に関しても意味があることはよくわかるのです が、医療制度の中でこれをすべてに行き渡らせようという発想そのものは果たしていいの かということは根底にあると思いますので、その辺である程度枠を考えていくべきではな いかということは我々が常々主張していることでございます。  その意味から、最初に原課長からお話がありましたこのDPCで医療の質の向上にはど うするのかということでは、山口委員がお話しになったようなこととして、ファクターと しては非常に少ないかなと。本来趣旨としてはそういったものではなくて、支払いの方法 として、またその内容に関して厳密にやる以上はどうしていくかという検討であるべきだ と思いますので、いろんな議論として質の向上にどれだけ資するかという点では非常に疑 問を持っております。 ○西岡分科会長  ここで松田先生がいてくださると一番いいのですが、伏見先生、何か松田先生にかわり まして。 ○伏見氏  まず質の向上に関して、診療プロセスをいかに明らかにしていくかというのは重要な課 題だと思いますけれども、1つ心配していることは、DPCがどんどん病院が拡大してい きますと、その集まってきたデータで例えば平均値なり中央値をとってこれが標準だとい うことがだんだんできなくなってきている状況にあるのではないかと思います。  そうしますと例えば先ほど山口委員がおっしゃったように、DPCデータを評価すると きに何が標準なのかというのを学会の責任でちゃんと決めていかなければならないので、 それはまさに私も考えていまして、例えばDPCごとに診療内容についてある程度平均値 ……もちろん参考にするにしても基準となる病院幾つかの、標準となるような治療を行っ ている病院のデータを集めて、それをもとに標準の在院日数を含めて、あるいは場合によ っては診療内容、どういう検査をやっているかとか、どういう出来高点数をとっているか とか、そういうデータを集計してある意味パイロット病院みたいな形のグループをつくっ て、その病院の診療内容から標準的な診療プロセスを決めていくという形にして、そうい うものを参照にほかの病院の診療を評価していくという、そういう方法も1つできるのか なと考えております。  例えば研究班の石川先生がポートフォリオのデータを報告書で出しているのですけれど も、先ほど池上委員がおっしゃった、包括と出来高の点数を比較するデータを出してそれ をもとに審査などに役立てたらいいのではないかという御意見ですけれども、生々しいデ ータを出すよりは、場合によっては診療密度という形で、それぞれの診療区分ごとにどの ぐらいの診療内容を行っているかというのを病院ごとにポートフォリオという形できれい に見えるようなものを作成しておりますので、そういうものを使ってそれぞれの医療機関 の、もちろんDPCごとですけれども、診療内容がどのぐらい違うかというのをある程度 相対的に、この医療機関は例えば検査をたくさんやっている、この医療機関は画像診断が 非常に少ない、というようなものも出るような方法を開発しておりますので、それも1つ 御参考にしていただけたらと思います。  あと3つ目ですけれども、酒巻委員がおっしゃっていました入院時のリスク評価という ことに関係するのですけれども、副傷病のデータというのはこれからますます重要になっ てくると思うんです。入院時の併存症と入院後の発症疾患という2つに分かれているので すけれども、今実は副傷病データを出来高分の審査に使うということも審査委員会で一部 やっているところがありまして、副傷病データの質が少し危ういのではないかということ を危惧しております。  できればその副傷病というもので、例えば入院時のリスク評価というのが一定程度です ができますし、病院ごとの例えば併存症の違いなども評価することができますので、副傷 病の意義というのをきちんと、そういうものが分析対象になるんだということを明らかに して、実際に病院が副傷病を記入する場合にどういう基準で出すのか、これは審査目的で はなくてきちんと患者さんの病態を評価するためのデータなんだということを明らかにし て、そういうデータを集めていくことがこれから重要になるのではないかと考えておりま す。 ○齊藤委員  この診断群分類の作業をするときに、精緻化が重要か、簡素化が重要か、という議論も あるわけですね。確かにいろんな先生が言われたように、参入病院をどんどんふやしてい く普及促進という点では簡素化がとても大事かと思うのですが、今はちょっとその時期を 過ぎているなと。  つまりろくに――ろくにと言っては失礼だけれども、正確なコーディングもできない状 態でどんどん収入がいいから参入しようという病院は、やはりこのシステムから排除され ていかなければならない。そういう点で、いわゆる精緻化でコーディングも難しくなって そういうものにしっかり耐えられる病院がこのDPCにふさわしいのかなと。そういう点 で、上がってきたデータ、精緻化されたデータがコーディングがどのように適切に行われ ているか、それを検証することもこれから参入病院の妥当性を検討する上で大事ではない か。ただ漠然と広げまくればいいというものではなくて、DPCにふさわしい病院という のがおのずと浮かんでくると思うんです。そういうものの中で、しかもみんながやってい れば正しいというよりは、さっき標準化という御意見もありましたけれども、場合による と82特定機能病院を原点とするような標準的なものがそういうものの中から浮かんでく るのかなとも考えています。 ○池上委員  2点申し上げたいのですが、病院ごとのポートフォリオというのは、例えばがんセンタ ー病院同士のポートフォリオを比べるというのは意味があると思いますけれども、異質の 病院のポートフォリオを比較しても、検査が多いとか言っても余り意味がないと思います ので、病院のタイプ別に比較しないといけないのではないかということが1点。だからこ そむしろ頻度の高い分類について見た方が、より精緻な比較ができるのではないかという 気がします。  それから2つ目に、パイロット病院といいますか、その中でモデルとなるような病院の 頻度の高いDPCに対してもしクリニカルパスを使っているのであれば、そのパスの内容 がまさにプロセスの面における標準的な今の望ましい医療のあり方として、モデル的に提 示することは可能だと思います。各病院がそれをどの程度応用するかは別としてですね。 すべてのDPCについてパスを用意するというのは意味がないと思いますけれども、頻度 の高い例えば100のDPCについて、モデル病院におけるパスはどうなっているかという のを幾つか比較するというのは、1つの、それこそモデルになるのではないかという気が します。 ○佐藤委員  今のパスですけれども、私は薬剤師なので、薬の標準化というのはパスが一番使えるの ですが、もう一つ私はやっているのを見て、薬剤経済学的に本当にこの薬が、DPCは集 まっているのでいいのでしょうけれども、評価されているのかというと、実は意外とコス トと検査データとのマッチングをしっかりやっていないので、ただ過剰にやってみて、た だ高いからと、そのとき確かにいろんな薬をやれば治るということをやっていても、その アウトカムを薬ごとに、しっかり一つずつ適応ごとに合わせて評価していることは意外と 少ないんです。  アメリカですと、薬剤指標とか、いろんな委員会のもとで例えば薬剤師とかいろんな人 たちがチェックして、ある程度80%ぐらいの成果があったものを基準にしてパス化すると か、いろいろなことをやりながら適正化して持っていくという場合のデータがこのDPC とかこういうデータに残っていればいいのですが、そういうことはマンパワーの問題とか いろんなことでほとんどないということで、本当にそれが適正な薬剤経済学的な使い方に なっているかというと、質と効率化という面からいきますとまだまだ薬剤については難し いかなと。  そういう点で、パス学会とかそういうところである程度薬剤パスの常に修錬というので しょうか、チェックしながら改良していくという点では参考にはなるのですが、まだその 辺の突っ込みというか、何かが足りないと思っています。感想です。 ○医療課長  貴重な意見を大変ありがとうございました。なかなかほうっておいても勝手によくなら ないなというのはよくわかったのですけれども。要するにみずからそれぞれの病院でいろ いろと参考にできるデータはそれなりに使えるということを聞きましたけれども、それを ちゃんとやってくれる病院ばかりかという問題ももちろんございます。  それから武澤先生、山口先生がおっしゃったのは、多分精密な意味で評価を細かく見て いくとそういう方法をしなければいけないだろうと思いますが、国民や患者さんはそれを 求めているわけではなくて、ランキング本を一生懸命買い集める。だから、それに対抗し ろとは言わないのですけれども、病院全体としてそれにどうこたえていくのか。そうじゃ なくてこういうものが参考になるというもの。例えばそれはもちろん大きな疾患群でいい のだろうと思いますけれども、それぐらいはやはりこの中でつくっていかなければいけな いのかなと。  アウトカムをどう評価するかというのは、初めのリスクの問題が当然あるわけですけれ ども、そのためにDRCもそうだしDPCだって一応疾患群を分けて、そのプロセスごと に一応分けていくというのは、リスク調整ではないわけですけれども、在院日数というも のに対するリスク調整をそこでやっている。その部分が、在院日数だけでなくてもうちょ っとほかの何か質に関係するものを、大ざっぱでいいのだろうけれども、そういうものを 評価に……だからこのDPCの分類で使えないのかなという気がしているんですね。  だから余り厳密に細かくすると当然それは学会でやっていただく必要があると思います けれども、大ざっぱと言ったらあれだけれども、もう少し大きな意味での目の粗い評価み たいなものができやしないかとは思っているのですけれどもね。それは今後またいろいろ と知恵を拝借しながら検討していきたいと思います。 ○西岡分科会長  非常に膨大なデータが蓄積しておりまして、そこをいかに上手に利用していくかという のはこれからの課題かなと思います。確かに医療の質が上がったかどうかという質問をさ れるのですが、下がったという証拠はどこにもないということだけは言えるのですけれど も、上がったとお答えできないところが難しいところでありますが。 ○齊藤委員  ちょっと視点が違うのですが、医学教育にも僕はDPCというのはいい成果をもたらし ているのではないかという気がするんです。僕は大学に行ったときにはDPCがなかった のですけれども、6年生とか研修医などに、どうしてこの検査をするのと言うと、ルーチ ンですからとか、みんなやっていますからとか、そういう返事が返ってくるわけです。だ けども吟味と厳選を求めるDPCの中ではそういうことは許されなくて、一つ一つの検査 の意味と患者の病態の掌握とをしっかり認識した上で行動しないと、DPCの効果が経営 的にも上がらないわけです。  そういうインセンティブとしては、医学生の学習等についても好ましいインパクトを持 ち得るのではないか。今大学におられる先生方はどういう印象を持っておられるかわかり ませんが、僕としてはそういう期待を持っています。 ○西岡分科会長  ありがとうございます。どうぞ。 ○池上委員  さっき課長は厳密でなくていいけれども大ざっぱな評価ということをおっしゃって、そ れはそのとおりでいいと思いますけれども、例えばMDC大分類ごとにいろいろ比較して も全く意味がないので、MDCの6桁までは同じものについての、そして頻度の高いもの、 これは松田先生がなさっているやり方ですけれども、頻度の高い6けたまでの同じものに ついて比較しないと、大分類で比較したら全く意味がないと思いますので、そのことだけ 申し上げたいと思います。 ○西岡分科会長  ありがとうございます。ほかに御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。ま だまだ宿題が残っております。これは、これからまた詰めてやっていきたいと思っており ます。では、非常に貴重な御意見を本当にありがとうございました。これからさらにそれ を詰めてやっていきたいと思っております。それでは本日の議論は以上とさせていただき ます。事務局の方から何か次回以降につきまして連絡事項はございますか。 ○中田補佐  特に御連絡事項はございません。 ○西岡分科会長  それでは平成19年度第9回診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会を終了させていた だきます。本日はお忙しい中どうもありがとうございました。                                     −了−  (了) 【照会先】         厚生労働省保険局医療課包括医療推進係         代表 03−5253−1111(内線3278)