07/12/07 第1回救急医療の今後のあり方に関する検討会の議事録について 救急医療の今後のあり方に関する検討会          日時 平成19年12月7日(金)          10:00〜          場所 厚生労働省省議室(9F) ○田邉専門官  定刻となりましたので、ただいまから「救急医療の今後のあり方に関する検討会」を 開催いたします。メンバーの皆様におかれましては、ご多忙中のところご出席いただき まして誠にありがとうございます。会議を始めるに当たり、事務局から資料の確認をさ せていただきます。まず、議事次第1枚、座席表1枚、資料1として「救急医療の今後 のあり方に関する検討会」、資料2として「救急医療の今後のあり方に関する検討会準 備会議事次第」、資料3、4、5は一括してありますが、「今後の救命救急センターの整 備について(論点メモ)」として用意しております。資料の欠落等ございましたら、事 務局までお知らせいただければと思います。  議事に入る前に、本検討会のメンバーの皆様のご紹介をさせていただきます。五十音 順で申し上げます。日本医師会常任理事の石井委員です。石井委員は現在別の会議に参 加しており、後ほど遅れてのご出席と聞いております。茨城県保健福祉部長の泉委員で す。帝京大学医学部救命救急センター教授の坂本委員です。財団法人日本救急医療財団 理事長、杏林大学救急医学教授の島崎委員です。国立循環器病センター内科脳血管部門 医長の豊田委員です。同じく国立循環器病センター心臓血管内科部長の野々木委員です。 大阪府立母子保健総合医療センター総長の藤村委員は本日欠席ですが、代理として総合 南東北病院小児・障害心臓疾患研究所所長の中澤委員が出席されております。山口大学 医学部長の前川委員です。帝京大学医学部整形外科主任教授の松下委員です。日本医科 大学救急医学主任教授の山本委員です。  オブザーバーとして総務省消防庁消防・防災課救急企画室の荒木様です。厚生労働省 雇用均等・児童家庭局母子保健課の阿部様です。なお、厚生労働省保健局医療課にもオ ブザーバー参加していただくことになっておりましたが、現在別の会場で中央社会保険 医療協議会を開催しており、その対応のため欠席との連絡をいただいております。それ では開催に当たりまして、事務局を代表して医政局指導課長の佐藤からご挨拶申し上げ ます。 ○佐藤課長  皆様、おはようございます。厚生労働省医政局指導課課長の佐藤敏信と申します。ど うかよろしくお願いいたします。第1回目ですので、少し長めに挨拶をさせていただき ます。  今般、この会議を開催するに至った経緯や思いといったものを少しお話させていただ きます。たまたま奈良県の妊婦さんの流産と言いますか死産の事件、昨日は姫路でもあ のような事件があり、そのようなあまりよろしくない話が続いた後にこのような会議を 開くことになってしまいましたが、そもそもは救急医療のあり方について、少し見直し をしたいと以前から思っておりました。言うまでもないことですが、救急医療体制は昭 和52年以降に重症度、救急度に応じまして三次、二次、一次という3つの段階を経る形 で体系的に整備をしてきたところでございます。その前後も、いわゆるたらい回しのよ うな事件が起こりまして、私どももその時点では病床の確保ですとか、救急医療情報シ ステムによって応需の体制について明らかにするなど種々の対策を取りまして、その後 しばらくはある程度落ち着いているのではないかと思っていたわけです。昨今、消防と 救急医療の間の情報交換の強化の必要性、あるいは、先ほどから申しておりますが、各 病院に設置されているコンピュータを使った救急医療情報システムの改善の必要性があ るのではないか。また、医療機関間の連携、例えばいま述べた一次、二次、三次とある 救急体制の間で適切に連携が行われているかという問題が出てきたのではないかと思い ます。  一方、社会情勢の変化というものもあろうと思います。言うまでもないことですが、 高齢化ですとか、疾病構造の変化などがありますし、国民や患者さんのニーズや興味、 関心、あるいは要求水準といったものも変わってきております。疾病構造という点で申 し上げるならば、脳卒中や急性心筋梗塞の治療、あるいは診断もあるかもしれませんが、 そうしたものへの迅速な対応がありますし、交通事故死が急減する中で、それでも重度 の外傷というものはあるわけでしょうか、そうしたものへの対応。さらにはQOLの改 善、維持、少子化時代と言われる中で小児救急医療体制をどう確保していくのか。また、 直接は関係ありませんが、おそらくテレビ等を通じて、あるいは東京都の取組みを通じ て少し知られるようになったERといった話もございます。  平成になりましてからは、救急医療に関わる医師の量的質的な確保の問題というのも、 別の話題として浮上してきております。病院勤務医の過重な勤務状況であるとか、臨床 研修の場における救急医療教育などが妥当なのかどうか。こうした問題が、言ってみれ ば山積している状態だったと言えます。私どものお家の事情と申しますか、内部事情だ けで申しますと、今年の前半は、例の医療計画に伴うガイドラインということで、4疾 病5事業を中心に作っていただくことで県に対してガイドラインをお示しするといった 作業、それから緊急臨時的な医師確保といったことで忙殺されていたわけですが、いよ いよ平成20年4月からのガイドラインとそれに基づく医療体制の充実ということになり ますと、4疾病5事業の中の救急医療あるいは小児医療といったもののガイドラインを、 さらに掘り下げる形で議論していかなければならないのではないかと思います。  そのような感じから申しますと、実は通常の審議会、検討会と違いまして、私の個人 的な見解も含めて申しますと、この会議はいつまでに、何を、必ずやらなければいけな いといったような切羽詰まった話で議論していただかなくてもいいのではないかと思っ ております。昭和52年という話を冒頭に申し上げましたが、この10年ないし15年ぐら いの間に起こった変化に応じて、そもそも論から説き起こしていただいても結構ですし、 すぐにできる話があればそれでも結構ですし、片付けられる話があるようであれば、そ れから着手していただいても結構です。そのような意味では、あまりゴールとかスケジ ュールなどを考えずに、いま起こっている問題であって、国民の皆様や患者さん、ある いは現に救急の場面で働いていらっしゃるお医者さん方の喫緊の課題と思われるもの、 重要な課題と思われるものを逐次ご議論いただいて、その中で解決できるものがあれば 解決していく、ということでよろしいのではないかと思います。  ちょっと話が長くなりましたが、この会議を開催するに当たりまして、経緯、あるい は私ども指導課を含めた行政側の思いみたいなものを少しお話させていただきました。 どうかよろしくお願いいたします。 ○田邉専門官  続きまして、本検討会の座長についてお諮りしたいと思います。事前にメンバーの皆 様方にもご相談いたしましたが、座長は日本救急医療財団理事長の島崎委員にお願いし たいと思います。いかがでしょうか。 (了承) ○田邉専門官  委員の皆様のご賛同を得ましたので、島崎委員におかれましては、恐れ入りますが座 長席にお移りいただきたいと思います。座長に一言ご挨拶をいただいた後、以後の議事 運営をお願いいたします。 ○島崎座長  ただいまご紹介いただきました、座長を務めることになりました島崎です。よろしく お願いいたします。いま佐藤指導課長からお話があったように、救急医療と言いますと、 さまざまな非常に幅広い分野の問題を抱えているわけですが、この検討会では、まずは 救急医療の要となります救命救急医療、救命救急センターを中心とした救命救急医療の あり方を今後どのようにしていくかといったことを中心に、委員の方々からさまざまな ご意見をお伺いしたいと考えております。ご協力のほど、よろしくお願いいたします。  ただいまから議事に入ります。事務局から本検討会の設置の趣旨及び当面のスケジュ ール等をお願いいたします。 ○田邉専門官  写真撮影は以上とさせていただきます。それでは資料に基づき、説明いたします。資 料1ですが、本検討会の趣旨は、先ほど指導課長から説明いたしましたので割愛いたし ます。検討内容については「救命救急センターの全国的な整備のあり方」「高度救命救 急センターのあり方」「救命救急センターの評価方法のあり方」という形で提示いたし ましたが、議論の中でさらに他にという形でもいいと考えております。会の位置づけで すが、指導課長による検討会とし、原則として公開とさせていただきます。さらに専門 的な調査や検討を要する場合は、必要に応じて作業部会を開かせていただければと思っ ておりますが、作業部会については非公開とさせていただきたいと考えております。事 務局は医政局指導課にて、第1回検討会については10時から10時45分といたします。 早速ですが、第1回検討会終了後、作業部会を開催させていただければと考えておりま す。開催スケジュールですが、12月より会を数回開催し、可能であれば、年度内に取り まとめが行えればと考えているところです。 ○島崎座長  ただいまの説明について、ご意見、ご質問があればお願いいたします。ないようです ので、引き続き説明をお願いいたします。 ○田邉専門官  資料2の「救急医療の今後のあり方に関する検討会準備会議事次第」を使い、この検 討会に先立ち、10月4日に準備会として開かせていただきました。これは、今後検討会 を行うに当たって、どのような内容について議論していけばいいかを専門家の方にお諮 りするという位置づけで行ったものです。議事次第は1枚目のとおりです。メンバーは 本日出席していただいている方々にも参加していただき、このような中で議論していた だきました。具体的に取り上げられた内容は、準備会後に事務局でまとめました。準備 会の議論の中で指摘された課題としては、「補助金制度のより効果的な活用について」 「救命救急センターの評価と診療報酬との関係について」「救急医の確保、育成の問題」、 あるいは「臨床研修における救急医療教育について」ということで、救急医療を実施し ていない臨床研修指定病院での教育の問題についてご指摘をいただいております。  先ほど指導課長からも説明がありましたが、「救急医療情報システム」の問題として、 情報更新を実効的なものにするための仕組みを考えるべきではないかといった指摘をい ただいております。「高度救命救急センターの見直しについて」ということで、要件に ついて再検討が必要ではないか。ただし、急性中毒、広範囲熱傷、四肢切断については、 どこかで位置づけていく必要があるのではないかといった指摘をいただいております。 「産科救急医療における救命救急センターの関わりについて」では、連携の強化によっ て、まだ改善できる点があるのではないかといった指摘をいただきました。  2の「委員による発表」の中では、いくつかの問題提起をいただきました。1つは新藤 先生より外傷センターについてということで、防ぎ得た外傷死、あるいは防ぎ得た外傷 機能障害が依然として多いことから、患者、医療者双方の立場から外傷患者の集約化が 必要ではないかといった指摘をいただきました。中澤委員からは小児救急医療について ということで、「地域小児科センターの設置を進めてはどうか」、あるいは「♯8000」 (小児救急電話相談事業)に対する研究班を組織し、有効活用について研究すべきでは ないか、あるいは「子ども救命救急センター」の実現を図るべきではないかといった指 摘をいただきました。坂本委員からは救命救急医療全般について、「需要に応じた医療 体制を構築することが重要であろう」、それに応じて救命救急センターの評価案を作っ ていくべきとのことで、案を提示いただいております。  引き続き、資料3、4、5と一括してまとめているものについて説明いたします。事務 局としては、これは議論のたたき台という位置づけで、論点メモという形でまとめまし た。資料3は「今後の救命救急センターの整備について(論点メモ)」ですが、救命救 急医療を担う救命救急センターは、当初100万人を1カ所を目途に整備したところで、 現在、全国に200カ所以上の施設が認定され、人口当たりの数としては十分な整備がな されてきております。また、その質についても、平成11年に定められた診療体制に重点 を置いた充実度評価においては、現在すべてのセンターが一定の評価を得るなど、当時 求められた水準は達成したと言えるかと思います。しかしながら、次に挙げるような点 について指摘されており、これについてはどのように考えるかということで、(1)として、 救命救急センターの地理的配置をみると、最寄りのセンターまで長時間の搬送を要する 地域が依然として残されている。(2)として、高齢化に伴い、今後ますます脳卒中や急性 心筋梗塞等の内因性疾患への対応が求められている。(3)として、センターについては救 命といった生命予後のみならず、救命後の後遺症の軽減といった機能予後についても十 分な対応が求められている。(4)として、これまで重症熱傷、急性中毒、四肢切断につい て診療が可能な施設を高度救命救急センターとして位置づけてきたが、そうでないセン ターでも診療可能な場合がある等、その位置づけが曖昧になっている。  (5)として、地域によっては同一医療圏にセンターが複数設置されており、今後は役割 分担等、こういった地域の整備のあり方について考える必要があるのではないか。(6)と して、従来の重症・重篤患者への診療の他、軽症・中等症の患者も同一窓口で対応する、 いわゆるER型の整備を求める声がある。(7)として、センターに搬送された重症患者へ の診療のみならず、地域の救急医療体制の確保に関し、リーダーシップを発揮するなど、 大きな役割を期待されている。例えば、地域における救急搬送の調整を担うコーディネ ータ等について期待されているのではないか、といった論点を事務局としてメモという 形で挙げております。  次に、資料4の「高度救命救急センターのあり方について(論点メモ)」を説明いた します。平成5年より、救命救急センターに収容される患者のうち、特に広範囲熱傷、 四肢切断、急性中毒等の特殊疾患を受け入れる施設として、高度救命救急センターの整 備がなされてきており、現在21施設あります。しかしながら、高度救命救急センターの みがこれらの疾患の診療を行っているわけではなく、通常の救命救急センターにおいて も同程度の役割を果たす施設もあり、高度センターの位置づけが曖昧であるとの指摘が なされております。こういった状況を踏まえて、高度救命救急センターのあり方につい て、下記のように見直しを検討してはどうかということで、6つほど挙げております。  (1)として、現在の高度救命救急センターの位置づけについてどう考えるか。(2)として、 救命救急医療に係わる医師の確保あるいは診療の質の維持には、医療資源と患者双方の 集約化・重点化が望ましいという意見がある一方で、救命救急医療については、アクセ ス時間の観点から集約化が困難ではないかといった意見があります。これについてどの ように考えるか。(3)として、同一医療圏に複数の救命救急センターがある地域において、 疾患ごとに大まかな役割分担を担うことについてどう考えるか。(4)として、生命予後の 改善のみならず、機能予後の観点から、重症外傷患者の集約化・重点化といったことに ついてどう考えるか。(5)として、今後ますます増大する脳卒中、急性心筋梗塞について の集約化・重点化についてどう考えるか。(6)として、小児に対する救命救急医療のあり 方についてどう考えるか。以上のような論点を挙げております。 ○島崎座長  議論等を含めて、後ほどまとめてやりたいと思いますので、引き続き資料5について 説明をお願いいたします。 ○田邉専門官  資料5は「救命救急センターの評価のあり方について(論点メモ)」です。平成11 年より開始された救命救急センターの充実度評価においては、開始当初低い評価の施設 もあったものの、平成18年にはすべての施設で高評価となっております。これは平成 11年に設定した一定の水準にすべての施設が達したことを示し、各施設、各都道府県の 取組みは高く評価できると考えております。しかしながら、一方でまだ改善すべき課題 は多くなっていることも事実です。こういった状況を踏まえ、一層の質の向上を目的に、 より高度な水準を求める新たな評価方法に改訂すべきではないか。  その際には、(1)として、センターに求められる機能をより明確にする。(2)として、求 められる機能に基づき、構造・過程・結果について評価してはどうか。(3)として、地域 における救命救急医療の確保といった視点からも、地域の実情に応じた評価基準を設定 してはどうか。(4)として、自己申告による評価を基本とするが、必要に応じて検証が可 能な評価方法としてはどうか。(5)として、救急医療に係る医師の過剰な負担の軽減とい った視点を加えてはどうか。(6)として、試行評価を実施した上で、その結果を踏まえて、 実態に応じて適時調整を行ってはどうか。以上、3つの課題に対して、こちらで用意し た論点メモについて説明いたしました。 ○島崎座長  ただいま事務局から資料等についての説明がありましたが、全体を通してご意見なり、 ご質問があればお願いいたします。資料1は今後の方針ですので、よろしいですね。資 料2に関して、特に3枚目ですが、このような課題が準備会で指摘されたところです。 (1)から(7)までと、その後、委員会で2.問題提起として3つ出されております。 これはそれぞれ非常に重要な問題だと思います。指導課長からは、全体を通して中長期 的な方向でという話でしたが、中身を見ると、現場にとっては早く解決してほしい問題 も結構あるように思います。ご意見等を何なりとお願いいたします。細かいところは、 また作業部会等でやりたいと思います。準備会のほうで、このような7つの課題が指摘 されておりますが、それぞれの中身に関するご質問なりご意見、あるいはさらなる課題 といったようなものがありましたらお願いいたします。 ○山本委員  非常にうまくまとめていただきまして、ありがとうございます。救命救急センターの 整備等々のところで、この文章の中には教育、研究というところが1つも入っていない ことについて、少し質問したいと思います。その意味するところは、今後長い視野で見 れば、大学の救命救急センターというのは、学生あるいは研修医、もう少し大きな意味 では、救急医を志慮する若い先生方の場となるのではないかという気がしております。 ですから、同一医療圏のセンターでも、当然大きな都市では大学が相当あるわけですか ら、そのような所の救命救急センターというのは、教育、研究面に多少フォーカスを当 てた救命救急センターでいいのではないかと思っております。この論点メモの中にはそ の視点がどうもないように思いますが、いかがでしょうか。 ○田邉専門官  ご指摘いただき、ありがとうございます。その点も踏まえて作業部会の中でご議論い ただければと考えております。 ○島崎座長  4に「臨床研修における救急医療教育について」というのがありますが、これは主に 臨床研修指定病院での教育の問題という形で取り上げられているようです。 ○佐藤課長  せっかくの機会ですので、逆に山本委員に質問させてください。いま委員が言われた ことは、臨床医たるもの、すべからく救急医療の素養みたいなものが必要なので、救命 救急センターのような場を使って、すべての臨床医にそうした経験を積んでもらうとい う意味での教育研修でしょうか。それとも専門医として、ある程度専門医みたいなもの を睨んだ救急医の養成ということでしょうか。または、その両方でしょうか。 ○山本委員  その両方、プラス学生教育としてのearly exposureとして、この場を借りるということ が非常に重要ではないのかと考えていたわけです。もちろん、先ほどの臨床医誰でもと いう概念と、専門性をより求めた先生方の教育の場はあるかもしれませんが、それプラ ス学生というところにも視点を置いていただきたい、そのような意味です。 ○島崎座長  学生教育ということになると、いまのところは文部科学省とはきっちり一線を引いて やっているのですよね。救命救急センターでの実習の重みづけの今後のあり方といった 辺りはどうなのでしょうか。 ○佐藤課長  一線を引いているわけではないのですが、少なくとも救命救急センターあるいは救急 医療を考える中で、これまで学生教育、卒前教育というものを考えたことがなかったと いうのが正直なところですから、もしそこが非常に重要であるならば、医学教育課なり とも相談をしてみて、議論の過程で出席してもらってということも考えてもいいかもし れません。正直言いまして、そこまでまだ考えておりませんでした。 ○前川委員  学生の教育という意味では、国立大学系はほぼすべての大学に救急医学講座ができま したので、講義はかなりできていると思います。実際の臨床修練(clinical clerkship) のところに進級すると、大学によってある程度の、レベルの差が出ているのは事実だと 思います。それはいずれ整備されていくと思いますが、地方大学では、そのような所が 立ち遅れているというのが現実だと思います。私は卒後の新臨床研修のカリキュラムを 文部科学省サイドで組んだメンバーでして、いま評価(EPOC)のところもやっているの ですが、その中の項目にはきちんと救急医療に関する項目が入っております。しかし、 救命救急の非常に専門性を要求されるところまでは入っておりません。救急の難しいと ころは初期、二次といえども、三次の重傷ケースがこれらの中に入ることがあります。 そのような意味では、やはり救命救急センターで卒後臨床研修を行えれば、いちばんい い形ができると思います。 ○島崎座長  他に何かあればお願いいたします。 ○野々木委員  準備会の議題に入っていないことで取り上げていただきたいのは、これは救命救急セ ンターあるいは高度救命救急という論点で処理されていますが、一次、二次、三次とい う役割の中では、二次の中でかなり高度な専門医療を提供している施設もありますので、 地域の限られた医療資源を活用するという意味では、二次と三次を分けた形ではなく、 国民に対して専門医療を提供するという観点から議論いただければと思います。ここに は救命救急という形でのセンター側の話がずっと入っていますが、是非とも二次も含め た形での検討もしていただければと思います。 ○島崎座長  事務局はその辺をどのようにお考えでしょうか。今回は救命救急に関わるところを中 心にということですが、その周辺も必要ではないかと。 ○田邉専門官  確かに、三次救急医療だけ独立してという議論にはなかなかならないと思います。た だ、一方で救急医療にまつわる課題は非常に多くあるので、焦点は三次救命救急医療に 当てた議論をしていただければと考えております。 ○島崎座長  おそらく一次、二次を含めた中では処理し切れない患者、あるいは二次の地域の救命 救急センターではない救急医療機関があると思うのです。それは今後の新しい救命救急 センターのあり方などといった中で、作業部会のほうで具体的に議論していただきたい と思うのです。そんなところでよろしいでしょうか。 ○前川委員  全然別の観点ですが、救急医療そのものは、もちろん医療サイドということもありま す。山口県で問題になったのですが、小児救急医療に関しては、住民の協力が得られな いと成り立たない。最近は女性が就職して昼間は仕事をしているので、夕方から夜の受 診が多い、つまり準夜帯に多くなっています。それから土日に多いということから、地 方病院の小児科が破綻したのですが、住民の診療科再開の要求は非常に強いものがあり ました。それをどのような形でカバーするかという話になると、住民の協力を得る方向 で再開しないと成り立ちません。今日はマスコミの方々がいらっしゃいますが、この辺 は医療者サイドというよりは、住民との協力というところを強調して報道していただき たいと思います。これがないと、医師サイドも過重労働になっておりますし、このこと をここでディスカッションするのは非常に難しいと思いますが、そのような視点をつけ 加える必要があるのではないかと思います。そこでは市長さんにお願いして、住民の討 論会などを開いていただいた結果、随分変わってきておりますので、この辺は是非マス コミサイドから、医療は現場だけ、医療サイドだけでは成り立たないということを住民 にお伝えいただきたいと思います。 ○中澤委員(藤村委員代理)  小児科の話が出ましたが、いま前川委員が言われたことは非常に大事なことだと思い ます。今後の救命救急、あるいは日本の子どもたちの死亡の原因ということをながめま すと、事故が非常に多いということがあります。これは論点がちょっとずれるかもしれ ませんが、おそらく並行して、少し事故の予防ということまで触れておく必要があるの ではないかと考えております。住民で守ると言われましたが、最近のネルソンの教科書 にも、子どもたちが事故を起こさないようにと。医学の教科書に、例えばプールのフェ ンスを作るところでは鍵をかけておくのだ、といった書き方すらしているということも 含めて、事故の防止という観点もどこかに含みがあればいいかなと考えています。ちょ っと論点がずれたかもしれませんが、前川委員のお話を引き継ぎました。 ○山本委員  中澤委員、前川委員の意見に同調する形でお話させていただきたいと思いますが、こ の種の16病院あるいは奈良等々の話については、マスコミが非常にかち合った報道をす るために、医療サイドばかりが悪いように聞こえがちですが、そもそも医療というのは、 医療サイドと患者サイドの共同作業がなければできないという視点が、国民への救急教 育等々ではないか。ですから、この中に国民への教育、啓蒙という言葉を入れてもいい のではないかと思います。中澤委員が先ほど話された子どものいろいろな予防というこ とですが、最近は文章的にも「予防救急」という言葉ができてきております。いまのフ ェンスの問題もそうです。子どもが薬箱のところに入れないように、大人が4点を手で 開けなければ開かないキットが出ておりますし、チャイルドプルーフの瓶もたくさん出 ております。あのような予防救急という概念はもう言葉としてありますので、その辺の ところも出ていいのではないか。以上2点をお話いたしました。 ○島崎座長  何年か前までは、結構医療サイドの責任寄りのメディアの報道が非常に多かったので すが、最近は医療機関も、中で働く救急に関わる先生方、救急全般の先生方の過剰負担 等を含めて、医療サイドの責任ばかりをガンガンと報道するという感じではちょっとな くなってきたのかなという気はしております。メディアのほうも、少しずつではありま すが、救急医療に関わる医療サイドの事情を少しは理解し出してきたかなとは思ってお ります。  時間もあまりありませんが、資料3、4、5も含めて、何かご意見、問題点等があれば お願いいたします。 ○坂本委員  資料3の(7)にありますが、救命救急センターの評価というものを考えたときに、従来 は自分の病院に搬送されてきた患者に対して、どのような治療ができるかが基本的な病 院の評価であったわけですが、やはり救急医療ということを考え、さらに現在のメディ カルコントロール体制や地域の救急医療体制といったことを考えると、救命救急センタ ーが地域救急医療の核として、地域救急医療全体の質を上げていくということにいかに 寄与しているかを評価していかないと、自分の所の専門の患者だけを診て、これで良し とするというわけにはなかなかいかないと考えております。ただ、地域の救命救急セン ターの医師だけが孤軍奮闘しても、それをバックアップする地域の行政がそれにしっか りとくっ付いて、全体を良くしていくという考えでないと、これは救命救急センターを 1つの窓として地域全体の救急医療体制を評価することになりますから、そのような観 点で少し議論をさせていただければと思います。 ○島崎座長  おっしゃるとおりです。(7)が一部に入っているのでしょうか。地域における救急搬送 の調整といった機能を救命救急センター等が担っているということですが、地域医療全 体のそういったものを、救命救急センターとして今後整備の対象としてやっていっては どうかということだと思います。 ○坂本委員  先ほど野々木委員から出た、二次救急医療機関も含めた急性冠症候群や脳卒中の診療 体制といったものも、おそらく地域の病院前救護の体制にいちばん近いところにいる救 命救急センターが、二次救急医療機関ときちっと協力して体制をつくっていかないと、 なかなか難しいのではないかと思います。 ○松下委員  資料4の(2)では集約化とアクセス時間が長くなるということのジレンマが言われてい ますし、資料3の(1)などでも、長時間の搬送ということが問題となっています。集約化 ということは、どうしてもレベルを上げ、かつ後継者を育てるという意味で先ほどのス ペシャリストの教育、初期の研修医の教育といったことも含めて、集約化は必要です。 別の方法でこれを解決するには、ヘリの搬送システムというのを日本の中できちっと確 立する。これは本来、救命救急の病院ということを離れて、監督官庁も違ったりして難 しい問題になってくるのかもしれませんが、このことは是非一緒に考えていきたい。救 急ヘリと救急車のいまの体制とを一体化して、消防と救急というよりは、ヘリと車の両 方での搬送システムというのも考えていかないと、救急医療は良くなっていかないので はないかと思います。 ○島崎座長  行政のほうはドクヘリ搬送に関わるところの検討会を別にやっているのですが、うま くドッキングさせてシステム全体としてうまくいくようなことを是非とも考えていただ きたいと思います。 ○泉委員  話を1つ戻すようですが、先ほど坂本委員が言われたことに関連して、茨城県でも救 急医療の確保が困難な地域が出てきたので、県の中で、医療サイドである保健福祉と搬 送サイドの消防関係の部局と、全く対等の立場でいま検討を始めております。その中で 出てきたことは、一次と二次の機能が低下していることによって三次への負担が非常に 高まっているということです。先ほど二次医療のお話がありましたが、救急告示の病院 などが大体そこに該当するわけで、そこの機能が低下していると。もちろん、それは医 師不足のためもあるし、患者側がより高度な医療機関へと流れていることもありますが、 トリアージのことも含めて二次のことをきちんと考えないと、三次の機能の議論ができ ないのではないかということが1つあります。  もう1つ、その検討の中でMCのことが両方の間に挟まって宙ぶらりんになってしま ったことがはっきりしてきた、ということがあります。MCの先生方が非常に頑張って 検討していただいた結果が、地域の救急医療を良くするほうに必ずしも反映されていな いということが出てきたので、MCの役割というのもこの検討の中で1つ出てくるかな と思っております。 ○島崎座長  いま泉委員が言われたような問題は、本来はすべて厚生労働省なのでしょうか、地域 救急医療連絡協議会というのがあって、地方の保健所が中心になるのですが、これが全 く機能しておらず、MC教育などは救命救急センター自身が動いているという格好にな っているのです。そのような意味では、それに取って代わる新しい体制が必要だと思い ます。いま泉委員が言われたことで非常によくわかるのは、二次救急医療機関がどんど ん減っていて、ある種逃げ腰になっているということです。医療訴訟や収益性の面で、 救急患者を診れば診るほど収益が落ちるという感じと、リスキーであるといったことで、 それはそのような形になってくると思います。その辺のところを含めて、二次救急医療 機関の受入システム等を含め、もう少しそういった病院へのサポートや連携、救命救急 センターとの連携システムを強く持っていくようなことを考えていく必要があるのでは ないかと思っております。 ○前川委員  いまの点ですが、地方行政の中では「救急業務高度化推進協議会」というのがありま す。これは総務省(消防庁)、厚生労働省、医療の各サイドから委員が集まってやるの ですが、それぞれの県レベルでそのやり方は多少違うと思います。厚生労働省側からす ると、医療審議会、医療協議会といったところとのタイアップがうまくできるかどうか によってかなり違ってきます。その辺は各都道府県の健康福祉部長、総務部長、地域に ある救命救急センター長が話し合いをしていただくと、比較的うまくいくと思います。  もう1点別のことですが、地方では、私の所は国立大学系ですので、救急医療におい て努力しても、地方財政法(地財法)による縛りで、国立大学病院関係の救命救急セン ターには補助金が下りてきません。これは診療報酬とも関係しますが、やればやるほど 赤字になって、いまのところ解決法がありません。補助金はいただけない、赤字は膨ら む、しかし患者さんは来ますので、これは省庁間の関係もあると思いますが、患者さん を見捨てるわけにもいきませんので、是非とも考えていただきたいと思います。 ○島崎座長  よくわかりました。他に何かあればお願いいたします。 ○豊田委員  今日は脳卒中の話をするために呼ばれたと思いますので、救急医療全体の話にはなら ないのですが、脳卒中のことをお話したいと思います。いろいろお話しなくてはいけな いことはあると思いますが、当面、いちばん大事なのは、これだけ患者数の多い疾患で あるのに、一体それをどの医者が診るのか、誰が診るのかというのがはっきり整備され ていない病気であるということです。わかりやすい例で言えば、心筋梗塞に対してCCU の整備、そこで働く医療者の数は確保されているということに比べて、心筋梗塞より遥 かに多い脳卒中に対するSCの整備状況など、そもそも私が脳卒中を診ていると名乗れ る医者がちょっと少ない。脳卒中の患者の数に当面耐えるためには、関わるすべての医 師というか救急の先生方、あるいは神経内科、脳外科を含めて皆が診ることができるよ うにしなければいけないと思います。  いろいろな地方の先生方のお話を聞いて正直に感じるのは、申し訳ないですが、脳卒 中を一線で診ていますと言う先生が、実は脳卒中に関してそれほど詳しくないというこ とで、そのような先生が非常に多いということは大変大きな問題だと思います。今回の 話とはそれますが、最大の解決策は卒前教育で、脳卒中に関して、特に脳卒中の救急に 関してもっと学生に教えて、少なくとも臨床の医師であるならば、脳卒中の初期対応が ある程度できる医師を国が育てなければいけないのだろうと思います。そういったこと を含めて、今回の話し合いの中で何か出てくればと思っております。 ○島崎座長  SICUと救命救急センターとの関わりみたいな感じですか。 ○豊田委員  そうです。 ○中澤委員  皆さんがいらっしゃるうちに少し発言をしておきたいと思いました。エリアの話、地 域という話が出てきました。おそらく、都道府県三次医療圏という話も言外にあったと 思います。地域によっては三次医療圏を越している所がある、そちらのほうが近い所が ある。これを都道府県のレベルだけで論じていいのかどうか。そのような意味では本庁 の方々にもう少し指導力を発揮していただいて、そのboundaryを取るような施策を考え ていただかないといけないと思います。地域も距離と人口という2つの視点があること を考えながらやっていかないと、広いエリアの所では多少人口は少ないかもしれません が、距離が長くて、先ほど松下委員が言われたように、ヘリを飛ばすか、道路を整備す るか。そのようなことを考えていくと、三次の視点からするとそのようなことでいいの ではないか。いろいろな視点があると思いますが、1つは自治体の垣根を取るというこ とを強く指導してほしいと思っております。 ○島崎座長  各論的な問題はこれから作業部会等でお話いただくということで、よろしいですか。 いまの中澤委員のお話ですが、MC協議会などは垣根を越えて、現場の搬送システムに 関わる救急救命士、救急隊と救命救急センターとは結構うまくやっています。厚生労働 省側の話の中で、行政のシステムと地方自治体との間でなかなかうまく合わないところ が確かにあると思います。それも含めて、これから検討させていただきたいと思います。 予定していた時間をだいぶ過ぎましたが、今日は事務局から検討会を行う理由、救命救 急センターに関わる問題点等を説明していただきました。いま議論していただいた点も 含めて、これから作業部会でより具体的に突っ込んで議論していただきたいと思います。 ひとまず検討会は終了いたします。どうもありがとうございました。事務局からお願い いたします。 ○田邉専門官  最初に説明したとおり、引き続いて作業部会に移りたいと思います。作業部会につい ては非公開といたしますので、傍聴の方はご退席ください。