資料1

(案)

今後の障害者雇用施策の充実強化について
─障害者の雇用機会の拡大に向けて─

目   次

1 多様な雇用形態に対応した障害者雇用の促進

(1)短時間労働への対応

(2)派遣労働への対応

2 中小企業における障害者雇用の促進

(1)雇用支援策の充実強化

(2)事業協同組合等を活用した障害者雇用に対する障害者雇用率制度の適用

(3)障害者雇用納付金制度の適用による経済的負担の調整

3 福祉、教育等との連携による障害者の就労支援の推進

(1)地域の就労支援ネットワークの構築

(2)地域の就労支援機関の役割と今後の在り方

(3)就労支援を担う人材の育成・確保の在り方

4 その他の諸課題

(1)企業グループにおける障害者の雇用促進等

(2)障害者雇用に関する助成金の見直し

(3)除外率の引下げによる障害者雇用の促進

(4)障害者雇用率等の見直し

(5)精神障害者等に対する雇用支援

(6)障害者権利条約の締結に向けた検討

今後の障害者雇用施策の充実強化について
─ 障害者の雇用機会の拡大に向けて ─

近年、障害者の就労意欲が高まるとともに、企業側でも、CSR(企業の社会的責任)への関心の高まりなどを背景とし、積極的に障害者雇用に取り組む企業が増加するなど障害者雇用は着実に進展している。一方で、企業全体では未だに法定雇用率に達しておらず、働くことを希望しながら就職が実現していない障害者も依然として数多く存在している状況にある。

また、障害者自立支援法の下、障害者がその能力や適性に応じて自立した日常生活や社会生活を営むことができるよう支援が行われるとともに、特別支援教育により、障害のある生徒等の自立や社会参加に向けた主体的な取組への支援も行われているところであり、福祉、教育の分野におけるこうした動向を踏まえ、障害者の希望や能力に応じて雇用に結び付けていく必要性が高まっている。

こうした中、政府全体としても、障害者雇用に係る取組の充実が図られているところであり、最近の各種の施策の取りまとめにおいても、障害者雇用に係る取組が重要な位置付けとして盛り込まれているところである。

さらに、昨年12月に国連総会において障害者権利条約が採択されるなど、雇用の分野も含めた障害者の権利に関する国際的な関心も高まっているところである。

このような状況を踏まえながら、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会の理念の下、障害者本人の希望に応じつつ、企業における取組をさらに進め、障害者の雇用機会を拡大していくため、様々な課題に対応した障害者雇用施策の充実強化を図ることが必要である。

1 多様な雇用形態に対応した障害者雇用の促進

近年、短時間労働、派遣労働等雇用形態が多様化しており、障害者のニーズを踏まえつつ、働き方の選択肢を拡大しながら、障害者雇用を進めるため、以下のとおり措置することが必要である。

(1)短時間労働への対応

短時間労働については、障害者のニーズが相当程度あり、また、今後障害者の希望や適性に応じて福祉的就労から一般雇用への移行を進めていく中で、短時間労働は、段階的な就業形態として両者をつなぐ道筋にもなり得ると考えられる。さらに、高齢となった障害者等については、これまでどおりフルタイムで働くことが困難になった場合であっても、短時間労働であれば就業可能なものもいると考えられる。

このため、短時間労働(週所定労働時間20時間以上30時間未満の労働。以下同じ。)については、障害者のニーズ等を踏まえ、雇用義務の対象とする(雇用義務の基礎となる労働者数に短時間労働者を加え、雇用している障害者数に短時間労働の障害者を加える)ことが適当である。

この場合、現行の短時間労働の重度身体障害者及び重度知的障害者、精神障害者の特例や、短時間労働への安易な代替の防止等についても考慮しつつ、短時間労働者、短時間労働の重度以外の身体障害者及び知的障害者について、障害者雇用率及び実雇用率の算定に当たってそれぞれ0.5カウントとすることが適当である。

また、短時間労働を障害者の雇用義務の対象とするに当たっては、短時間労働者の多い企業への影響等を考慮しながら、各企業の円滑な準備・取組を促すため、一定の準備期間を設けることとし、その期間は、短時間労働を障害者の雇用義務の対象とした場合の影響や、障害者雇用率の見直しの在り方(下記4(4))等を考慮しつつ、定めることが適当である。

さらに、短時間労働者を雇用義務の対象とする場合、障害者雇用における短時間労働に対する障害者雇用率制度の適用について、改めて、企業、障害者団体等を始め、関係者に広く周知するとともに、週所定労働時間が30時間以上で働くことができる、あるいは、働くことを希望する障害者が、その希望や適性に応じた働き方ができるようにしていくことや、週所定労働時間が30時間以上の労働から短時間労働に代替されることのないようにすることについても留意する必要がある。

(2)派遣労働への対応

派遣労働については、現在、派遣労働者として働く障害者は少数であるが、派遣労働で働くことを希望する障害者もいることから、働き方の選択肢の一つとして、適切に派遣労働により働くことができるようにすることが必要である。

このため、障害者の場合、職場定着に相当の配慮や時間を要することがあることも踏まえつつ、障害者が派遣労働という形で安心して働き、能力を発揮することができるようにするため、障害者の派遣労働に関して、派遣元事業主と派遣先の双方がともに配慮すべき事項、あるいは、いずれかが配慮すべき事項について、明確化することが適当である。

また、紹介予定派遣については、障害者本人及び派遣先の企業双方が就労の可能性について見極めた上で、派遣先における直接雇用に移行する可能性のあるものであり、これが活用されることにより、障害者雇用が進むことが期待される。

なお、障害のある派遣労働者が働くためには、派遣先が受け入れることが必要であり、派遣先に一定のインセンティブを与えることも考えられるが、現時点では、派遣労働に対する障害者の理解やニーズの動向を慎重に見極める必要がある。

2 中小企業における障害者雇用の促進

我が国において中小企業は雇用の大きな受け皿であり、障害者雇用についても、身近な地域で自立した生活を求める障害者に対し、雇用の場を提供することができる重要な担い手である。

一方、障害者雇用率制度発足以来、全体として障害者雇用が進展している中、ここ十数年、中小企業における障害者の雇用状況は低下傾向、あるいは、低い水準にあるなど、雇用の場を十分に提供することができていない状況にある。

このため、中小企業における障害者雇用が進むよう、以下のとおり、措置を講ずることが必要である。

(1)雇用支援策の充実強化

中小企業における障害者雇用に関する課題に対応するため、障害者を雇用する前提となる理解促進、実際に雇用する場面でのマッチングに関する支援、また、雇用後の職場定着に関する支援等、中小企業における障害者雇用に係る各場面に応じて、障害者雇用の経験のない中小企業等においても積極的に障害者雇用を進めるための支援策を充実させる必要がある。

このため、中小企業における障害者雇用についての理解促進のため、中小企業経営者の理解を進めるため直接の働きかけを強化するとともに、中小企業団体等の自主的な取組、地域の関係機関との交流等を通じて、障害者雇用の経験が乏しい中小企業に対する周知啓発等を進めていくことが適当である。

また、マッチングに関する支援としては、ハローワークによるチーム支援、トライアル雇用等の充実強化のほか、障害者の採用や定着に関する情報やノウハウの提供、中小企業、障害者それぞれの自己評価に資するチェックシートの作成、助成制度の中小企業により重点を置いた実施等、障害者雇用に関する不安の解消、障害者を受け入れやすい環境の整備のための支援を充実することが適当である。

さらに、障害者を雇用している中小企業に対しては、職場定着等に関する雇用管理についての情報、ノウハウの提供等を行うとともに、離職防止等のため障害者の雇用管理について相談することができるよう、障害者就業・生活支援センター事業、ジョブコーチ支援等について、充実することが適当である。

(2)事業協同組合等を活用した障害者雇用に対する障害者雇用率制度の適用

個々の中小企業が職務の分析・再整理を通じて仕事を切り出し、障害者の雇用機会を拡大することのほか、複数の中小企業が事業協同組合等を活用して共同で障害者の雇用機会を拡大することも、中小企業における雇用促進のために有効であると考えられる。また、これは、各地域それぞれの産業の特色をいかしながら、障害者にとって身近な地域において、中小企業が障害者の雇用の場を提供することにもつながると考えられる。

このため、中小企業が、事業協同組合等を活用して共同して事業を行い、当該事業協同組合等において障害者を雇用する場合に、障害者雇用率制度を適用する仕組みを創設することが適当である。また、具体的な制度設計に当たっては、実態上生じ得る課題を把握、整理することが必要である。

さらに、中小企業が導入しやすいその他の制度についても、幅広く検討することとが望まれる。

(3)障害者雇用納付金制度の適用による経済的負担の調整

障害者雇用に伴う経済的負担の調整である障害者雇用納付金制度については、創設以来約30年にわたって企業規模300人以下の中小企業に対する適用(障害者雇用納付金(以下「納付金」という。)の徴収及び障害者雇用調整金(以下「調整金」という。)の支給)を猶予してきた。しかし、本来中小企業も適用対象となるものであること、近年の中小企業における障害者雇用の状況、積極的に障害者の雇用に取り組んでいる企業も多い中で障害者の雇用が進んでいない企業との間での経済的不均衡があること、地域間・企業規模間等で業況における格差が拡大していること、そのため障害者雇用をめぐる環境も異なること、中小企業が厳しい経営環境におかれていること等に配慮しつつ、中小企業に対する適用の在り方について見直す必要がある。

このため、一定の範囲の中小企業(企業規模101人以上)に対し、障害者雇用納付金制度を適用し、経済的負担の調整を行うことが適当である。

この場合、中小企業の中での企業規模別の障害者の雇用状況や経済的負担能力等を考慮し、一定範囲の中小企業のうち、当初は、比較的規模の大きい中小企業(企業規模201人以上)から、障害者雇用納付金制度の適用対象とすることが適当である。

また、中小企業を取り巻く厳しい経営環境や、中小企業の負担能力等に配慮することが適当であることから、中小企業において円滑に障害者雇用が進むために十分な期間、納付金の額を減額するとともに、併せて、調整金の額を減額することとする。

さらに、中小企業における障害者の雇用がより効果的に進むよう、障害者雇用納付金制度の適用と中小企業に対する各種支援策の充実強化とを並行的に実施することが適当である。

3 福祉、教育等との連携による障害者の就労支援の推進

(1)地域の就労支援のネットワークの構築

福祉・教育から雇用への移行を一層促進するためには、障害者の希望や適性に応じた就職を実現し、働く障害者を支えることが重要である。障害者のライフステージやニーズに応じて、長期的な支援を総合的に行うために、雇用、福祉、教育、医療等の各分野の関係機関が連携及び役割分担をしながら、地域ごとに就労支援のネットワークを構築することが適当である。

ネットワークの構築に当たっては、障害者の多様なニーズに的確に対応するために、就労支援に必要な機関がお互いの役割を明確にし、参画するとともに、就労に向けた意識や目標、情報についての共有化を図ることが適当である。

また、こうしたネットワークによる就労支援が地域に根ざすようになるためには、ネットワークを構成する機関の担当者が、地域に定着して活動できるように配慮することが重要である。

さらに、障害者の雇用を促進するためには、障害者本人、保護者、企業等の幅広い層に対して、障害者の職業的自立や一般就労、中途障害等に関して広く理解促進を図ることが重要である。

(2)地域の就労支援機関の役割と今後の在り方

主な各機関ごとの役割と今後の在り方については、以下のとおりである。

ア 第一線の労働行政機関であるハローワークは、障害者に対する職業紹介及び企業に対する指導を一層強化する必要がある。また、ハローワークが中心となって関係機関と連携して支援を行う「チーム支援」を着実に実施するとともに、職場実習、トライアル雇用等の支援策の充実・活用により、障害者と企業のマッチングを効果的に行っていく必要がある。さらに、ハローワークは就労支援の中でも特に重要なマッチングを担う機関であることから、地域のネットワークの構築に中核的な役割を果たすとともに、関係機関と連携して支援を行うために、支援機関等に対するコーディネート力を高めることが適当である。

イ 障害者就業・生活支援センターは、福祉から雇用への円滑な移行を促進するとともに、障害者の身近な地域で職業生活の継続を支えるための支援を生活面も含めて行う機関としての重要な機能を担っている。しかしながら、現在の設置状況は、全障害保健福祉圏域のうち3分の1程度の圏域にとどまっており、今後、計画的かつ早急な設置が必要である。また、地域のネットワークの中で、地域の障害者を広く対象とし、就職準備から職場定着に至るまで必要な支援を生活面も含めて幅広く行うことから、専門性の確保、実施体制の充実・強化を図ることが適当である。

ウ 地域障害者職業センターは、各都道府県における中核的な職業リハビリテーション機関として設置され、障害者職業総合センターを中心に全国ネットワークを形成し、豊富な支援実績に基づくノウハウを蓄積している。地域のネットワークを形成する支援機関において、質の高い就労支援が提供されるようにするためには、地域障害者職業センターの専門性とノウハウをいかして、今後は、(1)地域において就労支援を担う専門的人材の育成、(2)地域の就労支援機関に対する助言・援助の業務を本格的に実施し、地域の就労支援力の向上を図ることが適当である。

また、地域障害者職業センターは、就職等の困難性の高い障害者(精神障害者、発達障害者、難病者等)に対する専門的支援を積極的に実施することが適当である。

エ なお、障害者雇用支援センターは、障害者自立支援法の施行に伴い、目的・機能が類似している就労移行支援事業が創設されたことから、地域の実情を踏まえつつ、就労移行支援事業に移行し、これまで先駆的に蓄積してきた訓練ノウハウや地域において果たしてた機能を継承することが適当である。

(3)就労支援を担う人材の育成・確保の在り方

就労支援の強化が求められる中で、支援の担い手の育成と専門性の確保が追いついていないことから、人材育成を図ることが必要である。人材育成に当たっては、専門的支援を行うジョブコーチを含め、就労支援を担う人材に必要なスキル・能力をレベルごとに明確化するとともに、育成方法や能力評価の仕組み等について幅広い見地から検討することが適当である。

また、こうした育成の機会は全国各地で求められていることから、就労支援のノウハウや研修の実績を有する機関等が率先して専門的な人材の育成に取り組むことが適当である。

さらに、就労支援を担う人材については、就労支援機関における人材の安定的な確保や専門性の向上を図ることが重要であることから、その処遇やキャリア形成について十分に配慮することが必要である。

なお、福祉系の大学の課程や、社会福祉士等の専門資格取得に必要なカリキュラムにおいて職業リハビリテーションが盛り込まれることも重要である。

4 その他の諸課題

(1)企業グループにおける障害者雇用の促進等

障害者雇用率制度においては、個々の事業主ごとに雇用義務が課されているが、現行法上、障害者の雇用に特別の配慮をした特例子会社が設けられている場合に、(1)親会社及び特例子会社、(2)親会社、特例子会社及び特例子会社以外の子会社(関係会社)をまとめて実雇用率を算定する特例が認められている。

一方、企業グループの中には、障害者が就労しやすい業務を行う子会社もそうでない子会社も様々存在し、子会社の業務内容に応じて雇用し、グループ全体で障害者雇用を促進することが期待できる場合がある。

このような場合には、特例子会社がない場合でも、企業グループ全体として実雇用率を算定することができる特例を設けることが適当である。その際、現行の特例と同様、障害者に対する適正な雇用管理が図られるよう、要件を定めることが必要である。

なお、現行の(2)の特例に関し、現行制度では親会社又は特例子会社のいずれかに支給することとされている調整金及び報奨金について、関係会社も相当程度障害者雇用に寄与している場合もあることから、適正かつ合理的な支給事務の確保を図りつつ、親会社、特例子会社又は関係会社のいずれか、又はこれらに対して分割して支給できるようにすることが適当である(企業グループに対する新たな特例を設けた場合には、同様に適用することが考えられる。)。

(2)障害者雇用に関する助成金の見直し

障害者雇用納付金制度に基づく助成金は、障害者雇用に伴う経済的な負担の調整の基本的な仕組みである納付金の徴収及び調整金の支給に加え、障害者雇用に伴い作業施設・設備の設置、支援を行う者の配置等に一時的に多額の費用がかかる場合に支援を行うものであり、障害者雇用の進展の状況、今後の障害者雇用対策の方向等を踏まえつつ、適宜、見直しを行うべきものである。

このため、中小企業により重点を置いた実施、物的支援から人的支援への重点化を図るとともに、助成金制度全体において支給期間、上限額及び対象となる障害者数等の適正化等を図ることが適当である。

一方、個々の助成金の見直しに当たっては、それぞれの趣旨を踏まえつつ、各種支援機関の整備状況、対象となる障害者の障害の種類・程度、事業主の雇用管理の状況等について考慮しつつ、上記のような重点化等を図りつつ、できる限り幅広い事業主が支給対象となり、かつ、きめ細かい対応が継続的にできるよう見直すことが適当である。

なお、今後は、PDCAサイクルによる目標管理の手法等も活用しながら、助成金の見直しを行うことを検討することが適当である。

(3)除外率の引下げによる障害者雇用の促進

除外率制度については、ノーマライゼーションの理念の下、平成14年の障害者雇用促進法の改正により廃止されたが、同法の附則において経過措置として定められ、除外率設定業種における障害者雇用の状況等を考慮しつつ、段階的に縮小することとされている。

したがって、このような法律の規定等に沿って、段階的に引き下げ、廃止を目指すという基本的方向に基づき、今回、一定の引下げを行うことが適当である。

また、この際、社会連帯責任の理念の下、前回(平成16年)は一律10%ポイント引き下げたことを参考にしつつ、具体的な引下げの方法について、検討することが適当である。

(4)障害者雇用率等の見直し

障害者雇用率については、障害者雇用促進法に基づき、少なくとも5年以内に、労働者の総数に対する障害者である労働者の総数の割合を基準として設定することとされている。

今回の障害者雇用率の見直しについては、今後、短時間労働の雇用義務化(上記1(1))や除外率の引下げ(上記4(3))といった制度改正が実施されることを前提とすれば、これらによる障害者雇用率への影響も考慮した上で設定することとし、現行のとおりとすることが適当である。

また、障害者雇用納金制度における調整金の額、納付金の額及び報奨金の額についても、現行のとおりとすることが適当である。

(5)精神障害者等に対する雇用支援

ア 精神障害者については、平成18年4月より、障害者雇用率制度において実雇用率の算定に当たってカウントすることができることとなったが、現時点では、企業における精神障害者の雇用はそれほど進んでいない状況にある。

このため、精神障害者の雇用義務化の環境が早急に整うよう、精神障害者の特性に応じ、予算措置などによる雇用支援の一層の推進、充実を図ることが適当である。

イ 発達障害については、現在の発達障害者の就労支援のための施策を推進しつつ、今後、発達障害者支援法(平成17年4月施行)について、施行後3年経過後の検討が行われる際、併せて、就労支援についても検討を行うことが適当である。

ウ 難病のある者については、当面、在職中発症した者について、雇用継続、職場復帰等を図るため、雇用管理等について企業における理解を深めるとともに、今後、就職支援の在り方について検討していくことが適当である。

エ 視覚障害者等の中途障害者については、就労支援機関等との連携に加え、必要に応じ、医療関係者等との連携も図りながら、視覚障害者に対するロービジョンケアなども含め、継続雇用支援を行うことが適当である。

(6)障害者権利条約の締結に向けた検討

本年9月28日に、「障害者の権利に関する条約」について我が国は署名したところであり、今後、条約の締結に向けて、国内法制の整備等が求められている。

この条約は、障害者の権利及び尊厳を保護・促進するための包括的・総合的な国際条約であり、障害者の自立、非差別、社会への参加等の一般原則のほか、教育、労働等様々な分野において、障害者の権利を保護・促進する規定を設けている。

雇用・労働分野については、公共・民間部門での障害者雇用の促進等のほか、

(1) あらゆる形態の雇用に係るすべての事項(募集、採用及び雇用の条件、雇用の継続、昇進並びに安全・健康的な作業条件を含む。)に関する差別の禁止、

(2) 職場において合理的配慮が提供されることの確保等のための適当な措置をとることにより障害者の権利の実現を保障・促進することとされている。

これらについて、障害者雇用促進法制においてどのような措置を講ずべきかについては、特に、(2)の職場における合理的配慮の提供というこれまで我が国にはない概念が盛り込まれており、十分な議論が必要であることから、労使、障害者団体等を含めて、考え方の整理を早急に開始し、必要な環境整備などを図っていくことが適当である。


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