07/11/30 医療サービスの質の向上等のためのレセプト情報等の活用に関する検討会 第3回議事録 第3回 医療サービスの質の向上等のためのレセプト情報等の活用に関する検討会             開催日:平成19年11月30日(金)             場 所:厚生労働省省議室(9階) ○開原座長   定刻となりましたので、これより、第3回「医療サービスの質の向上等のためのレセ プト情等の活用に関する検討会」を開催いたします。  本日の検討会につきましては、松田委員が少々遅れるとの連絡がありましたが、総勢 19名での開催となります。  また、社会保険診療報酬支払基金で人事異動がありまして、今回より、「角田委員」 から新しく専務理事になられました「足利委員」に交代されておりますので、御紹介申 し上げます。それでは早速ですが、議題に入りたいと思います。  まず、事務局から資料の確認をお願いします。 ○藤澤室長   今回は、資料1から7まで7種類の資料を提出させていただいています。   ・資料1:「現行のレセプトの分析に当たっての留意点について」、健保連からの 資料です。   ・資料2:「現行のレセプトの分析に当たっての留意点について」、井原先生から いただいた資料です。参考として、検討会終了後、回収させていただく 資料があります。   ・資料3:「現行のレセプトの分析に当たっての留意点について」、社会保険診療 報酬支払基金からの資料です。   ・資料4:「レセプト電算処理システム普及率等」という1枚紙です。   ・資料5:「削除予定の項目(案)」というタイトルの1枚紙です。   ・資料6:「レセプト情報、特定診療・特定保健指導情報について同一人物の情報 を追跡出来るようにするための対応方法(案)」です。   ・資料7:「レセプトデータ等の分析と医療サービスの向上」という1枚紙です。  資料は以上ですが、不足などがありましたらおっしゃってください。 ○開原座長   本日の議題は2つございまして、(1)現行のレセプトの分析に当たっての留意点につ いて、(2)レセプトデータ、特定健診・特定保健指導データの収集方法等についてです。  今後、具体的な議論整理をしていくに当たって、まず、皆様方の間で現状等について 共通認識を持っていただけるよう、前回は海外の事例と滋賀県の例について委員の方々 から御発表いただいたところです。  今回は、日本の現状ということで、まず、(1)現行のレセプトをそのまま分析する場 合にはどういう点に留意が必要かについて、以前より、検討会でコメントなさった方々 に御発表いただきたいと思います。  次に、(2)レセプトの電算化の現状のほか、皆様に御検討いただく活用のあり方の入 口部分に当たる情報収集に関して、技術的な点も含めて想定している方法について、事 務局より説明をしてもらいたいと思います。  それでは、最初の議題、「現行のレセプトの分析に当たっての留意点について」に入 りたいと思います。まず、健康保険組合連合会の稲垣委員にお願いいたします。 ○稲垣(恵)委員   資料1「現行のレセプトの分析に当たっての留意点」に基づきまして、私どもが日ご ろ組合の業務を通じて感じておりますレセプトに係る課題について説明させていただき たいと思います。  まず、「1.はじめに」ということで、現状について若干触れさせていただきます。  「(1) レセプト電子化の進展と健保組合の対応」についてです。  レセプトの電子化が徐々に進展しておりまして、病院では50%といわれていますが、 私どもに届きます約4割が電子レセプトという形になっております。  これに対応するため、国からの助成金を活用して支払基金からレセプトを電子媒体で 受け入れる仕組み「レセプト情報管理システム」を構築し、平成18年4月から稼働させ ています。まだ6割ほど紙レセプトが残っていますが、これについては支払基金におい てレセプトデータのうち約60項目をテキストデータ化していただくとともに画像にして 電子媒体でいただくという形をとっています。  全国に約1,500からの組合がありますが、その約半分の780組合がレセプト情報管理シ ステムを導入しています。これを徐々に拡充しようとしておりますが、自分の健保の医 療費動向と全組合集計を比較するとか、そういったことも試みようとしているというの が現状です。  「(2) レセプトオンライン化への対応」についてです。  2011年4月から原則オンライン化されることから、これに対応するため、「レセプト 情報管理システムの拡張版」というものを7月に稼働させています。これによって、従 来はテキストデータ60項目ということでしたが、レセプトの全情報についてCSVデー タで受け入れ可能になります。  来年4月から特定健診・特定保健指導がスタートするわけですが、特定健診等のデー タと合わせて、健保連として全組合のデータを集計して活用していくことを検討してい るところです。  「(3) 現状の課題」です。  このシステムが徐々に導入されており、審査・支払業務の抜本的効率化や保健事業へ の活用等で大きな期待があるわけですが、多くの課題が残っています。  「紙レセプト」時のレセプト様式をそのまま継承していますし、複雑な診療報酬体系 もそのまま継続している。再審査を別にすれば、電子媒体と画面ということでペーパー レス化は実現できていますが、審査・支払面で目視作業が残ったり、データ活用の精度 面でも制約が多く、少なくとも現状では、“中途半端なIT化・レセプトの電子化”と いうのが健保組合からの評価です。  「(4) レセプト様式等の見直しの必要性」は日ごろ強く感じています。  この検討会の場で深く議論するのは難しいかと思いますが、意義あるIT化推進のた めにレセプト様式等の見直しは必須で、今回は絶好の機会と考えています。  健保連としても従来から問題意識を持っていまして、平成12年には「電子請求を視野 に入れたレセプト改革研究」を実施したり、レセプト情報管理システムの構築に当たっ ても、この辺の課題について、提言をしています。また、現場の健保組合からも多くの 改善要望が出されています。  これまで検討してきましたことを再整理して、今回、皆さんに御説明したいというこ とです。  「2.レセプトに求められる基本要件」ですが、我々保険者の立場から次の4つの項 目について触れています。  「(1)請求明細書としての内容の透明性確保」。私どもはレセプトによってのみ審査 ・点検が可能ということですので、その内容が透明であることが保険者にとって必須で あると思います。  「(2)請求・支払業務の効率化」。医療保険制度を構成するプレーヤー(保険者、医 療機関、審査・支払機関)全体の効率化という観点で考えていかなければいけない。わ かりやすさと作成のしやすさが必要で、レセプト電子化の推進の中でいろいろな改善が 必要になってくるかと思います。  「(3)保健指導や健康管理、事業運営への効果的な活用」という観点でレセプトに求 める要件が出てくるということかと思います。  レセプトというのは保険者単位に集約されて、長期にわたって蓄積される保険者にお いてのみ取り組み可能な保健事業というものもありますし、疾病分析、あるいは医療費 と疾病構造の傾向・動態を把握するとか、そういった観点です。  来年4月から特定健診・特定保健指導が始まるわけですが、それを進めるに当たり、 特定保健指導を実施した場合の費用対効果、実績のフォローという意味でも重要になっ てくるということです。  組合がいろいろ事業計画を作っていく中で費用対効果、施策の優先度を決めていく上 でもこういった定量的なものが必要だという認識です。  「(4)医療サービスの質の向上等を目指した取組みへの対応」です。エビデンスに基 づく医療の透明化・標準化、患者の視点に立ったわかりやすい医療の実現、医療の安全 性の確保などが非常に重要であると認識しています。  「3.レセプト様式の見直し等」、レセプト記載要領の見直しを含めて、レセプト情 報を活用していく上で留意していただきたいことを8点ほどまとめております。  「(1) 傷病名表記の統一」。実際のレセプトにはいろいろな病名が入ってきますが、 右側に見直し例がありますように、傷病名表記の統一を図り、傷病名記載の正確性確保 と傷病名記載を徹底する。さらに分析という観点では、「ICD10コード」などの使用 も検討する必要があるのではないかと思います。  「(2) 傷病名と診療内容のリンケージ表記」。複数の傷病名が記載されているレセプ トの場合、傷病名と診療行為の紐付けができていないため、審査の精度や効率面で支障 が生じているとともに、医療費統計や分析の正確性という点でも課題があります。例え ば、高血圧患者が風邪を引いた場合、主傷病が高血圧であれば、医療費はすべて高血圧 のところにカウントされるということで、正確なところを見ることができないというこ とです。  見直し例としては、傷病名と診療行為の対応を明らかにするため、レセプトに傷病名 ごとに記号をつけて対応関係を明確にする。これを従来から提案しております。  「(3) 診療行為の実施日と時系列表記」。初診日と当月の診療日数は記載されていま すが、実際に診療行為のあった日の記載がない。  見直し例としては、各診療明細に、それぞれが行われた日を表記し、リンケージ表記 をした傷病名ごとに日付順に表記する。時系列的に診療プロセスを追うことで審査の正 確性が向上する。  最後のページに参考として、「診療報酬明細書(医科入院外)」の一例を示していま す。傷病名と診療内容のリンケージ表記ということで申し上げますと、「訴え、症状、 疑い」と「確定病名」に分けまして、アレルギー性鼻炎をA、慢性副鼻腔炎をBとする。 下の欄の診療行為のところにA、B別々に表記する。右端に13と書いてありますが、診 療行為があった日で、これを日付順に順次書いていくという形です。  5ページに戻っていただきまして、「(4) 調剤レセプトに医療機関コード表記」。院 外処方の場合、投薬の明細を把握するためには調剤レセプトで確認する必要があります が、医科・歯科レセプトと調剤レセプトの突き合わせに手間がかかります。  見直し例としては、調剤レセプトに医療機関コードを表記することにより、医科・歯 科レセプトとの突き合わせを容易にするということです。  「(5) (入院レセプトに関して)1入院単位ごとの請求」にしてはどうか。現状、請 求は1カ月単位ですが、月をまたがる入院の場合など、情報の単位として必ずしも十分 ではありませんし、2カ月に分けてレセプトを作成する手間もあるかと思います。  見直し例としては、診療のプロファイルが明確となり、透明性の向上のために1入院 単位でまとめる。請求は月締めでの仮請求を認める方式とし、入院が長期になった場合 でも、長期の連続した分析が可能になるのではないかということです。  「(6) 市町村医療費助成に関する情報の記載」。市町村の医療費助成受給の有無をレ セプトで確認できないため、高額療養費を重複して支給しないように健保組合としては 確認作業に手間取っています。国の公費負担の場合はレセプトにコードを入れることが 義務づけられていますが、市町村助成の場合はそういったものがありませんので、レセ プトの中に助成内容を入れていただきたいということです。  「(7) 「転帰」欄記入の必須化と記入要領の整理」。「転帰」欄に記入のないレセプ トが多い。また、記載要領には「治癒」「死亡」「中止」の3例しかない。このため、 疾病の経過がわからず、疾病管理を適切に行うことが難しい。  見直し例としては、特に入院は「繰越」「軽快」「悪化」を加えた計6例を記載例と して表示し、傷病ごとに記載することが必要ではないかということです。  「(8) 確定傷病名と「疑い・訴え」症状の区分明記」。先ほど参考のレセプトで見て いただきましたように、「確定病名」と「訴え・症状・疑い」を区分して表記するとい うことです。実態としては査定等の関係もあって現状の疾病統計には疑いとか訴えに対 応した未確定の傷病名が多くカウントされてしまうという懸念があります。それらの区 分を明確にして、統計の正確性を増す必要があるのではないかと考えています。  以上、様式の見直し等について、私どもが抱いています問題認識を申し上げました。  なお、現在の診療報酬体系はIT化に対応した体系になっていないことから、診療報 酬体系の簡素・合理化を含む電子診療報酬点数表の整備を図る必要があると認識してい ます。 以上、早口でございましたが、健保組合が日ごろレセプトを扱うに当たって感 じている課題について申し上げました。 ○開原座長   ありがとうございました。御質問もあろうかと思いますが、お三方のお話は関連して おりますので、お話を伺ってから、まとめて御質問を受けたいと思います。  続きまして、井原委員にお願いいたします。 ○井原委員   東京都の支払基金で副審査委員長をしております杏林大学の井原でございます。私は 第1回の検討会におきまして、レセプトとは何かということ、レセプトから何が分析で きるのかということ、さらに分析のための基盤整備が重要であるということについて発 言をいたしました。お手元の資料と実際にレセプトを用意しておりますので、それを見 ていただきながら具体的内容について説明していきたいと思います。  資料2の表紙が、これから私がお話ししようとする内容のポイントです。2ページか ら6ページまでが資料2−1、資料2−2、資料2−3となっております。7ページ以 降がレセプトの資料です。  レセプトの資料をごらんいただきますと、レセプトというものは最高級の個人情報と 考えておりますので、実際に提出されましたレセプトを、こちらで作成したフォーマッ トに手入力で転記してあります。こうしますと活字体、印字体で医療機関は特定できな いということになりますので、そうしてあります。また、個人情報に配慮しまして、説 明上不要と思われる部分は空欄にする、あるいは数字を○×等の記号に変更してありま す。さらにレセプトそのものの内容につきましても意図的に病名とか薬剤、検査の順番 を入れかえたり、あるいは回数を変更してみるということをいたしまして、あらゆる工 夫を施してありますので、実際に請求されてきたものとは一部異なっている点がありま すことをあらかじめ御了承いただきたいと思います。それでも慎重を期して、検討会終 了後は回収させていただくことにしております。(当検討会終了後、回収済み)  それでは早速、資料2の表紙に戻りまして、留意点について説明させていただきます。 2つに分けて説明いたしますが、まず初めに「1.現在のレセプトについて」です。  まず第1に、どうしても皆様に御理解いただきたいことは、レセプトはカルテではな いということです。これは私が受けている個人的印象かもしれませんが、一般的にレセ プトを見る、レセプトを開示することによって、あたかもカルテを詳細に点検したかの ごとく、いろいろな医療内容がすべて把握できるのではないか、こうした誤解が一部に あるのではないかと危虞しております。  レセプトというのは医療機関での診療や薬局での調剤処方など、こうした医療行為を、 診療報酬点数表に定められた内容に整理して、その結果を請求様式に従って記載して作 成されたものであります。したがって、データ分析用に作成されているわけではありま せんので、データ分析にぜひとも使用したい、利用すべき、こうしたデータが欠けてし まう場合があります。  インフルエンザを例にとりますと、小児科で外来の包括点数を選択しているレセプト について、後で事例をごらんにいれますが、インフルエンザという病名自体が記載され てない場合があり得ます。使用された治療薬剤、関連して行われた検査、こういったも のもすべて書かれていないということもあり得ます。入院中の患者さんの場合におきま しても、包括点数の種類によりましては、糖尿病とかC型肝炎などデータ集積して分析 すべきと思われる病名を初めとして、昨日もCT検査のX線被曝がアメリカで問題にな っていると出ていましたが、CTやMRIなどの検査、あるいは悪性腫瘍の方への抗が ん剤の治療の内容等々、必要な情報がレセプトに記載されてない場合はいくらでも出て まいります。これも後ほど事例で説明いたします。  この場では発言しにくいので、この点につきましては皆様の御想像にお任せしますが、 いろいろな理由でデータ分析を複雑にしてしまう、あるいは分析するには不必要な内容 がレセプトに記載されている場合もあります。  もう一つ、レセプトの話になりますと審査の問題について全く触れないわけにはまい りませんので、少しお話をさせていただきます。最近、電子レセプトによる請求がふえ てまいりました。電子レセプトですと、前回、外国の例の説明の際にもお話が出ました ように、ICD10という病名コードがレセプトについてきます。ICD10コードという のは病名の集計とか分類をする時には便利なものだと思います。しかし、ICD10コー ドを使って電子レセプトを審査しようとすると、うまくいかない場合が出てきます。  レセプトの審査というのは大きく分けますと、保険証の資格の確認をするなど、ルー ルで当然のように決められていることを単純に点検していけばいいといった機械的・事 務的審査と、診療行為は必要に応じて行うのだということが定められている療養担当規 則や、関連した医療課の運用通知などを考慮して、診療内容に踏み込んで具体的に検討 する医学的審査と呼ぶべきものに大きく分けられると思います。  事務的審査には電子レセプトは有効な部分があるかもしれませんが、医学的審査のと ころで整理しなければならない問題がいくつも出てきます。2つほど例をあげたいと思 います。2ページの資料2−1を見ていただきたいと思います。  現在、我が国では、医療保険で使用する薬剤は原則として薬事法の承認事項に従って 使用するということになっています。薬事法に書かれている多くの薬剤のうち、2つほ ど例をもってまいりました。  「1.アーガメイトゼリー」という薬剤があります。この適応症のところに急性・慢 性腎不全に伴う高カリウム血症と書かれています。急性腎不全、慢性腎不全というのは 病名です。高カリウム血症というのは、その病名に伴った病態といった方がいいと思い ます。こうした場合、腎不全という病名のICD10コードがあればそれでよいのか、あ るいはこの2つのICD10コードが両方ともなければ可としないのかということは、あ らかじめ決めておく必要があります。  「2.シナジス」というのはお子さんによく使われる薬なのですが、右に書いてある 数字は薬価でして、100mgの方は15万円以上もする。50mgでも8万円近い非常に高価な 薬です。  この適応症は、RSウイルス感染流行初期における次の新生児・乳児・幼児のRSウ イルス感染による重篤な下気道疾患の発症抑制、これがすべて適応症の名前です。その 新生児・乳幼児の条件が下に書かれています。  このように大変長い適応症について、どういうICD10のコードがあればこの薬剤の 使用を認めるのかということは、あらかじめ相当な議論の上で決めておきませんと、審 査の現場でこの薬剤が出た時に混乱をきたすことは明らかです。  漢方薬は病名よりも症状で適応症が記載されているものがたくさんあります。これ以 外にもいろいろなケースがありまして、我が国の薬事法承認事項というのは、ICD10 に整理することは困難を極めると思っています。  3ページの資料2−2をごらんいただきたいと思います。糖尿病のICD10コードの 一部を抜粋したものです。  左側の傷病名コードは我が国で振られたコンピュータ用の番号、真ん中に病名が書い てありまして、右側に記号で書いてあるのがICD10コードです。中ほどからE112と いうコードがずらずらと並んでいますが、いずれも糖尿病の腎臓合併症です。ICD10 コードというのは、糖尿病性腎症の1期から5期に至るまですべて同じコードでグルー プ化されていますので、点数表の約束事によっては判断できないケースが出てきます。  例えば、糖尿病性腎症の1期と2期だけで行っていいですよと規定されている検査は、 E112と書かれただけでは、行っていいのかいけないのか判断がつきません。  4ページを見ていただきますと、ICD10に☆印がついたものが3つあります。下の 2つは糖尿病の眼科的な合併症である白内障と網膜症ですが、両方ともE143というコ ードになっています。白内障という病名であれば我々は水晶体再建術といった白内障関 連の手術を認めることになります。糖尿病網膜症であれば網膜の出血等に対して網膜光 凝固術を認めることになりますが、E143というコードだけで来ますと、白内障なのか 網膜症なのか審査上の判断がつかないということになります。  3ページに戻りまして、下から9番目に2型糖尿病性網膜症というのがありますが、 これはE113ですから判断がつきます。  ICD10コードを使って審査をするというのは細部にわたっては難しい問題がたくさ ん出てくるということをお話しいたしました。2つほど例をあげましたが、審査の面か ら見るとICD10コードとの整合性を検討する必要があるという意味です。今回のレセ プトデータの分析とダイレクトに関係することではありませんが、審査に関連した問題 があるということを知っていただくためにお話をさせていただきました。  1ページに戻りまして、「未コード化傷病名」と「疑い病名」の処理の方法、整理に ついて、個人的には何らかのルール化が必要だと思っていますが、後ほどレセプトの事 例をごらんいただく時に触れたいと思います。  本論の2番目、「2.データ分析について」です。  個人情報に関する安全性などの問題は別に議論していただくといたしまして、レセプ トから見ればという視点でお話をさせていただきたいと思います。  まず、集計されるデータの信頼性や公平性をできる限り確保することが最も重要であ る、これは当然のことでありまして、御異論のないところだと思います。  レセプトというのはまず、審査支払機関で受理されて、事務的点検を経て、そして、 1次審査を行い、保険者に送り、その後に再審査が行われる場合がある。レセプト処理 にはこういった流れがありますが、どの時点でデータを集計し分析すればそうした目的 にかなうのか。これはデリケートな問題も含んでいますので、レセプト処理におけるい ろいろな条件を考慮した上で慎重に検討する必要があると思います。  この検討会のテーマでありますレセプト情報の活用、つまりレセプトデータを集計し、 それを分析して活用するには、すぐにでも現行の電子レセプトを使用して行おうと思え ば可能だと思います。ただし、一定の条件を設定することや分析可能な項目を選定する ことが必要条件になります。  なぜかと申しますと、現行の点数表では「包括」と「出来高」が混在しており、「包 括されている項目」は、「包括の種類」ごとに異なっているということが一つの例とし てあげられるからであります。具体的にお話しします。  5ページの資料2−3をごらんいただきたいと思います。  「1.DPC」ですが、上の○印のところに包括評価部分、下の○印のところに出来 高部分と書かれていまして、大変きめ細かく設定されています。  包括評価部分は入院基本料とか、包括で一番大きいのは投薬と注射など薬関係はすべ て、外出しになっているもの以外は包括されているということです。医師の技術を要す る特殊な検査や画像診断以外は包括になっている。  何がDPCレセプトの出来高で出てくるかと申しますと、医師の技術を要する医学管 理であるとかリハビリや精神専門療法の薬剤を除いた技術料であるとか、何より大きい のは手術、麻酔、放射線治療、こういったものはすべて出来高で出てきます。それから 医師の技術を要するカテーテル検査や内視鏡検査、人工腎臓等1,000点以上の高額の処 置、こうしたものはDPCでも外出して出てきますので、集計することは可能です。し かし審査では検査、薬剤は査定が行われやすい項目で、その大部分は包括になっている。 これがDPCの包括と出来高の分け方であります。  一方、「2.小児科外来診療料」というのがあります。これは3歳未満の小児対象の 点数設定でして、全国で小児科を標榜している診療所の約75%がこの点数を採用してい るといわれています。診察料の加算とか往診など点数表のごく一部の項目を除いて、ほ とんどの診療行為が包括です。後でレセプトをごらんにいれますが、大変すっきりした きれいなレセプトになってしまいます。これですとレセプトに記載される項目はほとん どないだろうということが皆さん容易に想像できると思います。  次に、「3.入院基本料」です。  上にいくつか書いてありますが、主なものは療養病棟の包括のされ方です。このあた りが点数表らしいややこしさなのですが、一、二は、これらに含まれる画像診断と処置 ですから、ここに書かれているものはレセプトには出てきません。これ以外の画像診断 や処置は出てくるということになります。  三、四は、これらに含まれない薬剤、注射薬と書いてありますから、ここに書かれて いるものはレセプトには出てきますが、ここに書かれていないものはすべて包括される からレセプトには出てこない。  先ほどのDPCとも違いまして、悪性腫瘍の抗腫瘍薬とか疼痛コントロールの薬剤に ついては包括といえども出来高で認めましょうということですから、DPCのように薬 剤は全部包括というのとは考え方が違うわけです。このように一言で包括と申しまして もその項目はいろいろです。これがずっと続くのであれば項目を限定することができる のですが、DPCの包括項目と出来高項目も点数改定のたびに変更がなされています。  どの点数を算定している医療機関のレセプトからデータを集計したのかという条件を 設定すること、その場合には何の項目を分析の対象にできるのかということを選定する こと、この2つは分析する上で必要最低限の条件になると申しましたのは、レセプトが このようになっているからです。  このあたりでレセプトを見ていただきたいと思います。  事例1がDPCのレセプトです。傷病名のところに左側に日本語病名が書かれて、右 側にICD10コードがD65と書かれています。30日間入院されている。  一番下の点数のところはカード方式で最後の3けたは「×」にしてありますが、19万 2千何百点ということになります。1点10円ですので、19万点ということは、このレセ プトは200万円近い金額ということになります。  内科系のDICという病名ですので、手術等がありません。したがって、診療内容は すべて包括されていますので、とても200万円のレセプトとは思えないすっきりしてい るところがおわかりいただけると思います。領収書を発行していただいても、数字が書 かれているだけだと思います。  この患者さんの診療内容を分析しようと思っても、何ひとつ診療行為が出てきており ませんので分析することはできないということになります。  DPCについては現在検討中ですので、何らかの工夫があるかどうかわかりませんが、 DPCはこのように合計点数はわかるものの、内容は物によっては全く分析できないと いうことがおわかりいただけると思います。  次に事例2ですが、表紙に「特定入院期間超え」と書いてあります。DPCの定めら れた特定入院期間を超えて入院された患者さんのレセプトです。分析する上では幸いな ことに、同一患者さんのレセプトが同一月にDPCと出来高と両方請求されてきていま すので、比較ができるということでお出しした例です。  1枚めくっていただきますと、この患者さんが今回入院した目的が整形外科の病気で あったことがおわかりいただけると思います。腰の骨の病気があって、脊椎の固定手術 もなされている。この手術は前月に行われたと思いますが、DPCの点数で、この患者 さんは特定入院期間が終了した。  同じ患者さんの出来高をごらんいただきますと、(5)に糖尿病であるとか、(6)にC型 肝炎であるとか、それ以外にも胃潰瘍とか心臓の病気とか、実にたくさんの病気を抱え た患者さんであることがおわかりいただけると思います。しかし、この患者さんが仮に DPCの範囲内で退院してしまったら、このレセプトは出てきませんので、判断がつか ないということになります。  次のページをごらんいただきますと、在宅自己注射でインスリンも使用していますし、 内服薬もいろいろな種類をお飲みになっている。出来高を見れば、保健指導やいろいろ なことの対象になる患者さんだと思いますが、1枚目のDPCを見ただけでは、ただ単 に腰が悪くて入院して手術をした方ということになってしまうということです。  次に事例3ですが、事例4とセットでお話ししたいと思います。個人の○○小児科と いうクリニックですが、小児科外来診療料というのを取っています。このお子さんはぜ んそく性気管支炎で5日ほど通院されて、請求点が1,800点程度でしょうか。  次のレセプトをごらんいただきますと、病院では3歳未満のお子さんにこの点数を取 っていない。このお子さんも同じようにぜんそく性気管支炎が2番にありまして、4日 間通信し、請求点数も1,900点ほどで、ほとんど変わりません。  しかし、こちらをごらんいただくと、マイコプラズマの感染症を合併したり、そのほ かにも点滴注射をしたり血液の検査をしたり、いろいろな診療内容が見えてくるわけで す。 事例3のように包括の症例が外来診療料を取っていますと、マイコプラズマの合 併症がおこったり、インフルエンザの合併症があったとしても、ここに書かれてくるか どうかというのはわからないと思える例です。  小児科のクリニックの75%が外来診療料を取っているということで、4分の1ぐらい しか正確なデータが把握できないのではないかと思います。  次に事例5にまいります。この患者さんはいろいろな病気を持っておられて、レセプ トが何枚もあります。病名番号は41番までですが、病名は60以上あります。すべての病 名の頭にアスタリスクがついている。未コード化病名だけで構成されていますから、こ のレセプトを分析しようと思うと病名はゼロということになってしまい、集計上は取り 上げられないということになります。  診療内容をごらんいただきますと、主病名は慢性腎不全と狭心症となっていますが、 審査委員の目で見ますと高額な薬剤としては、手術後に使用する痛みどめの座薬とか、 糖尿病の潰瘍に対する外用薬といったいろいろなものが使われている。点滴にもパルク スのような薬が使われている。それから人工透析が行われている。いろいろな種類の検 査が行われている。当月の入院を分析すれば、医療費を一番多く使っているのは透析と 糖尿病性による壊疽、潰瘍の治療ではなかったのではないかと思われます。  この方は狭心症やいろいろな合併症があるようですから、もしも病態が変われば治療 の中心は大きく変わることになる。毎月のように治療の中心が変わる可能性がある大変 重症の難しい患者さんであると思います。同時に分析するには大変難しいレセプトだと 思います。  最後に事例6です。これは1番から11番まで病名がついていますし、次のページまで いろいろな血液関係の検査がなされていますが、病名の最後にすべて「疑い」とついて います。4日間通院されたのですが、結論は出なかった。すべて「疑い」ですので、確 定病名はないということになります。この病名を見ますと、「膠原病の疑い」と書いて おいていただければ分析はしやすかったのかと思いますが、主治医はきちっと対象病名 を書いてくれたということになるのかと思います。  事例5、6は分析しがたいと申しましたが、これ以外にも高額レセプトで特別審査委 員会が行っているようなものは内容が複雑だと思うのです。こういうものの取り扱いに ついては何らかの基本ルールを決めて、暫定的に行っていけばよいのではないかと思っ ています。数多くのレセプトですので、内容が複雑なものが含まれているのは当然だと 思いますし、全レセプトの中に分析しがたいレセプトがどれだけの割合でどのくらいあ るのかということさえ現状ではデータがないということですので、そうすべきだと思い ます。  最初の表紙に戻りまして、あと2点ほど簡単に説明します。私の仕事の立場上、現在 のレセプトの姿を知っていただこうという意味でいろいろお話をいたしましたが、こう したレセプト自体の問題以外に検討すべき課題はいろいろあろうかと思います。何もし ないでいたのでは物事は進みませんので、データをどう読んで、どのように有効的に使 うのかという視点で、現時点で何ができるのかということを考えてみました。  1つは、分析したいデータをレセプトから抽出する。現在、電子レセプトを審査機関 において画面で審査する場合、集計機能とか抽出機能を利用して効率的な審査を行って いますので、比較的行いやすい方法だと思います。前回の上島先生の方法も、こういっ たベクトルで行ったことだと私は理解いたしました。  できることなら2のように、レセプト内容をすべて病名から集計することによって、 そこからいろいろな分析を正確に行うことが可能であれば、それは理想的だと思います が、そのためにはクリアしなければいけないハードルがいくつかあるというのが現実だ ろうと思います。しかしレセプトの内容に直接関与しないものについては今でも行える ものはあろうかと思います。  現在のところはデータの抽出条件を明らかにして、分析項目もきちっと選定して、目 的によって1と2の方法を適宜選択することが望ましいのではないかと個人的には考え ております。  今までこうした分析は何もなされてこなかったというのが現実ですので、安全性には 最大限、十分に考慮した上でという条件付きですが、まずは何をどこまで分析できるか ということを見極めて、分析するための基本となるルールを決める必要があろうかと思 います。  今後の検討課題といたしましては、より信頼性の高いデータ分析をするためには、レ セプトの様式も含めて、現在の診療報酬の請求、審査、支払のシステムのどこを、何を どのように工夫する必要があるかについて議論を深めていくことが大切ではないかと思 っております。長くなって申しわけありません。以上です。 ○ 開原座長    ありがとうございました。   続きまして、社会保険診療報酬支払基金の足利委員にお願いいたします。 ○足利委員   審査、支払の担当機関といたしまして、現行のレセプトの分析に当たっての留意点に ついて御説明したいと思います。資料3でございます。  これまで稲垣委員、井原委員から御指摘があったところですが、レセプトというのは 本来、請求省令に基づいて保険医療機関等が療養の給付等に関し費用を請求する場合に、 必要な範囲で記載を行うという前提に立って書かれているものです。  レセプト内容についてデータ分析を行う場合、現行、改善が必要と思われるものは以 下のとおりです。  「(1) 処方せんの発行医療機関レセプトと調剤レセプトについて」です。  調剤のレセプトというのは調剤機関から出てくるわけですが、医療機関コードの記載 がありません。医療機関名・所在地はありますが、医療機関コードがありませんので、 処方せん発行医療機関のレセプトと調剤レセプトとの対応関係におけるデータ処理がで きないため、調剤レセプトから医科レセプトの傷病名が把握できないという課題があり ます。  現在、処方せんを発行している医療機関は5割程度ということで、処方せんの半分程 度はこういう形になっているわけです。  1枚めくっていただきまして、「(2) ワープロ入力されている傷病名について」です。  現状として、電子レセプトの傷病名については、レセ電の傷病名マスターというのを 入力することになっていますが、該当する傷病名がない場合、未コード化ということで 「000999」という値を入れまして個別にワープロで入力することになっています。  医療機関によっては、コード化されている傷病名についても、何らかの理由でそのま まワープロで入力してしまうところもあります。  こうしたワープロの傷病名ということですとデータ分析ができないという問題点、課 題があります。現在、私どものレセプトの中で、病名総数に対するワープロ病名の割合 は18%を占めておりまして、ワープロ病名が含まれるレセプトの割合は33.6%となって います。  その他の課題といたしまして、複数の病名が記載されるレセプトが特に入院のレセプ トでは多数ありますが、それを傷病名と治療内容、治療行為の分析に当たっては、傷病 名の選択についてルール化が必要と思われます。  包括されているレセプトデータ(DPC、療養病床、ICU等)については、個々の 診療行為と病名との関連づけは困難なので、補足的なデータ収集・分析手法を整えてい く必要があります。  私ども審査支払機関の立場から見まして、現行のレセプトには以上のような課題があ ると考えているところです。以上です。 ○開原座長   ありがとうございました。3人の委員の方々から現在のレセプトの問題点をお話しい ただきましたが、御質問や御意見がありましたらお願いいたします。 ○上島委員   資料1でCSVデータと言われましたが、これを説明してください。 ○稲垣(恵)委員   レセプトのデータはすべて記号で書かれているわけです。レセプトの場合、それが25 0項目あるそうです。そのデータを我々が受け入れるということです。  CSVというのはComma Separated Valueですから、違った長さのデータの間をコ ンマでつないで並べたデータという意味です。 ○井原委員   医療機関の診療行為をフォーマットやオンラインで送る時に危険性もあるものですか ら、日本語のいろいろな診療行為をコードに変換してフォーマットを作って送るわけで す。医療機関はCSVデータをつくるソフトを持っています。審査支払機関はそのコー ド化されたものを解読して読めるようにするソフトを持っています。僕らの審査が終わ ったものをまたコード化して保険者の皆さんのところにお送りする。皆さんのところは それを解読するソフトを持っておられますので、それでみる。そういうコード変換の方 式です。 ○開原座長   情報処理の世界はいろいろジャーゴンがありまして、わかりにくい言葉がたくさんあ って困りますね。 ○上島委員   井原委員が言われましたことは、僕らは直接審査に携わってはいないのですが、その とおりであると理解していたので、それでやったことは、例えば病名を使わずに、健診 データから見た医療費とか、そういう使い方をした。糖尿病はレセプトの糖尿病ではな く、健診での糖尿病からどれだけ医療費がかかったかという見方をして、医療費の場合 はエンドポイントとしてずっと足していけば、どこに分類されていようと構わないとい うことで、外来とか入院とかいう格好でやりました。  透析したかどうかというのは調べればわかりますので、それは取り出して調べたので、 その例のとおりであります。 ○開原座長   ほかにいかがでございますか。 ○稲垣(明)委員  日本歯科医師会の稲垣でございます。私は歯科の方で具体的にレセプトを提出してい る方として、先ほどの御発表について考えるところを少し述べさせていただきたいと思 います。  レセプトはカルテではないということですが、確かにレセプトは診療報酬の請求のた めに医療機関は出しておりまして、あくまでも支払いのルールに基づいてレセプトで請 求する。支払いにおける妥当性を明らかにするためにレセプトを出しているのであって、 診療行為自体の妥当性は、そのバックにあるカルテが担保しているのだと思うのですね。 医療機関はいろいろな事情をお持ちでありますので、診療報酬請求の簡素化のために、 なるべく簡単なレセプトが求められているのだと思います。  支払い自体を透明化することには何も異論はありませんが、複雑な医療行為自体を透 明化するとか、分析のためにレセプトを現行より複雑化するということは、これから電 子化といっても、おのずと限界があると思います。医療機関の支払い行為における煩雑 化について気をつけていただきたいと思っています。 ○樋口副座長   資料1の5ページから稲垣(恵)先生の御提案がありますが、傷病名表記の統一とか、 診療行為の実施日と時系列表記とか、医療機関コードと調剤レセプトをつないでくれと か、極めて具体的ですね。8項目あって、最後に9番目として診療報酬体系がIT化に 対応した体系になっていないという最も大きな問題がつけてありますが、これらそれぞ れに難易の程度の差異があると思うのですね。この中でも簡単にやれることでやってい ないことがあるというご指摘が簡単にできるものなら、教えていただきたいと思います。  稲垣(明)先生の御意見で、支払いの透明化という観点から簡単なものと、そこをい じることによってさらに診療内容の透明化まで進めればいいのだけれど、そういう観点 の方がここでは入ってきているので、支払いの透明化と診療内容の透明化との関連性も できれば明らかになるといいと思います。分析の目的とか、役割分担との関係でこの8 項目ないし9項目がどういう形で分類できるのかということを補足して説明してくださ るとありがたいと思っているのですが、そのことが井原先生のお話とリンクしているよ うな気がするのですね。私の言い方が悪くて質問の趣旨があいまいかもしれませんが。 ○稲垣(恵)委員   8項目のねらいはまちまちで、羅列しているところがあります。順位はつけづらいと ころですが、1点目の傷病名表記の統一は基本的なところではないかと思っています。 これは様式の問題というよりも、記載要領を徹底していただくことがベースかと思いま す。  2点目、3点目については先ほど様式例で見ていただいたように、それが煩雑化にな るかどうかということなのですが、我々から見れば様式面での改定で対応できる部分で あると考えます。  4点目は支払基金さんからもありましたように、機械的に紐付けするのであれば、医 療機関コードがあれば容易にできるという認識です。  5点目は請求の問題です。6点目は主に健保組合の事務効率の問題であるととらえた らよろしいかと思います。  7番は、今は余り記載されていないということで、必要性はどうなのかということも あるのですが、私どもといたしては今後、保健指導等をやっていく場合に必要だという ことで、これも手間の問題になってくるのかもしれません。  8番目は、先ほど井原先生からもお話がありましたように、疑い症状とかそういった 形でしか表現できないとすれば、健保連の提案の中では明確に区分して表記するという ことで、様式を改めることによって対応する。これが一つの案になっているわけです。 ○樋口副座長   私の質問の仕方がうまくなかったので、井原先生に質問という形に切りかえます。健 保連の方のこの8項目というのは支払い側として支払いの透明化をより一層図るためと いう観点でこういうのが出てきていると理解しているのです。井原先生は、初めにレセ プトはカルテではないけれど、カルテに近いような利用の仕方をするとしたら、レセプ ト自体の考え方を変えなければいけないよという趣旨かと思ったのですね。  この8項目では足りないのですよというのか、この8項目の中で、支払いの透明化プ ラスアルファのところではこういうところが重要ですよという……お二人の報告に相反 するような話ではなくて、プラスアルファの話なのかどうかということを確認しておき たいということなのです。 ○井原委員   私ども審査員の立場から見ますと、患者さんの病態は本当にさまざまだと思いますか ら、それに応じて医師であれ、歯科医師であれ、一生懸命治療しているということを前 提に審査しているということが第一です。書かれている内容が1カ月単位でまとめて書 いてありますので、どういう病態が相前後して起こったかというのは審査員としてはわ かりにくい点があります。  この前、松田先生とDPC分科会で具体的なお話をしたのですが、先ほどの事例1の 場合でも、あのレノックス・ガストー症候群という病名で、どうしてDICになったの かということが私ども審査員には理解しがたいのですね。こうした場合には、なぜそう いう病態になったのか、現在、何の治療を積極的にやっていて、これだけ長きにわたっ ているのかということを、確認する意味からは欲しいところです。  傷病名をICD10コードにするというのは一つの案だと思うのですが、先ほど申し上 げたようにICD10コードだけでは判断がつかない場合がありますので、日本で番号を 振ったコードは1病名について1つずつコードが振られていますから、この方が10コー ドより僕らにとっては使いやすいのです。ただ、このコードは番号ごとにきちっとルー ル化して振ってないものですから、調べるのが大変だという点があります。病名がきち っと把握できないと一歩も先に進まないというのは稲垣(恵)先生たちも同じだと思い ます。  問題なのは、患者さんの病態がどう変わっていったのか、それに対して医師がどう対 応したのかという過程が見えるとか、その内容を我々は知りたいのです。極めて単純な レセプトであれば逐一それを書いていただく必要は全くないわけでして、ある一定の点 数以上であるとか、診療行為がこれでは何が起きたのか、実際に患者さんをみていなか った審査員にはわかりにくいだろうと思われるようなものには、簡単なサマリーという か、患者さんに診療を行っていた手順が見えれば、我々の判断は先生方に近いものにな るというか、誤解に基づく査定みたいなものはなくなるだろうという考えは持っており ます。  まず、その2点をやっていただければ、あとは、稲垣(恵)先生たちがおっしゃるリ ンケージといっても、先ほど私がレセプトを出しましたように、一つの点滴の中にDI Cに対する治療薬や白血病の治療薬や感染症に対する治療薬が入っていればリンケージ させることもないし、そのことは審査員の頭の中に入っていますから、このことは書い ていただいたとしても、さほど僕らの方で有効だとは思いません。  ただ、いつの段階で血小板が減ったのか、よってこういうことをしたのだということ がわからないと使用量とか使い方に我々は判断がつきにくい場合があります。まずは病 名と、判断しがたいものについては診療の過程がわかるということであれば……。転帰 欄というのはあればいいのでしょうが、患者さんが来ない限り、いちいち電話をかけて 「治りましたか」と聞くわけにもいかないと思います。あれば保険者さんは便利だと思 います。あとは疑い病名とか、非常に複雑なレセプトをどう処理するかというのは別個 に検討しなくてはいけないだろうと思います。 ○開原座長   ここではレセプトの改革をやろうというわけでは必ずしもなくて、レセプトがどうい う問題をはらんでいるかということを理解し、後でそれを活用する時に認識しておかな ければいけないということです。いろいろ問題があることはわかりましたが、この検討 会がレセプトを改革しろというのは越権行為です。時間の関係もあるので、次の議題に 移らせていただきたいと思います。  それでは2番目の議題、レセプトデータ、特定健診・特定保健指導テータの収集方法 等について、資料の4から7まで事務局から説明をお願いいたします。 ○藤澤室長   資料4から説明させていただきます。皆様方に御検討いただいている仕組みの中で、 私どもとして収集し分析したいと思っているデータとしては、1回目の検討会でも申し 上げたかと思いますが、電子データを考えております。レセプトに関しては、現在、紙 で御提出いただいているところもありまして、レセプト件数の中で、電子データでいた だいている分がどのくらいかというのをお示ししたのが資料4です。  レセ電普及率と書いてありますが、平成19年10月時点で、医療機関の病院、診療所を 含めて、レセプト件数全体の中で、電子データで出していただいている割合は28.2%に なっています。病院では50%ぐらい、診療所で20%弱となっています。  薬局では80%を超えるレセプトを電子データで出していただいているということにな ります。  歯科については、平成20年度中には、電子データで出していただけるように取り組み を進めているところです。  歯科のレセプト件数も全部含めて、全レセプト件数中、電子データで出していただい ているレセプト件数の割合は概ね4割になっております。  もう一つ収集をしたいと思っております特定健診・特定保健指導の関係につきまして は、この仕組みはこれから始まるものなので、全部電子データで出していただくことに なっておりますので、すべて集められることになるかと思います。  次に資料5ですが、これは分析する項目にかかわってきます。今回、国で保険者から 情報を御提供いただく根拠となっております、高齢者医療確保法におきましては、医療 費適正化計画の作成・実施・評価に資するための調査、分析を行う。それに当たって必 要な情報を保険者から出していたたくことにしておりますが、具体的には医療費に関す る地域別、年齢別、疾病別の状況や医療の提供に関する地域別の病床数の推移の状況に 関する情報などが法令上明記されておりまして、さらに省令の方で、もう少し細かく規 定しています。  そういった分析上必要なデータをすべて保険者から御提供いただきたいと考えており ますが、必要でない情報は、保険者から御提供いただく段階で削除して出していただき たいと思っております。  このペーパーは、削除して提供していただくことを予定している項目の案でございま す。1番目がレセプトデータ、2番目が特定健診・保健指導データです。  レセプトについて5つほど並べておりますが、まず患者の氏名です。  先ほど申し上げた法律上の規定でも年齢別の分析をする必要があるということになっ ていますので、生年月日全部を削除することはできませんが、「日」のレベルまではい らないと思っていますので、「日」の削除を考えています。  それから、保険証の記号・番号。公費負担を受けている方については、公費負担医療 受給者番号を削除していただこうと思っています。  医療機関・薬局の名称。調剤レセプトに書かれる医療機関の名前も含めて、どこの医 療機関あるいは薬局のレセプトかというのは分析上必要ないと思っているので、削除し ていただきたいと思います。  最後に調剤レセプトには保険医師名が記載されることになっていますが、これも分析 上は必要ないので、削除を予定しています。  2番目の特定健診・保健指導データの関係ですが、保険者が社会保険診療報酬支払基 金に提出する実績報告用データに関して、どういう内容でデータを出すかというのが決 められています。特定健診の受診者の氏名・住所等の個人情報を除去した状態で保険者 がデータを送ることになっていますので、同じように受給者の個人情報が除去された状 態でもらうことにしたいと思っています。  「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」上の個人情報、つまり、それ自 体で特定の個人が識別できてしまう情報、あるいは、それ自体では特定の個人が識別で きなくても、ほかの一般的に入手できる情報を突き合わせることで特定の個人が識別さ れてしまう情報は、これらを消していただくことにすれば、国が保険者から提出してい ただくデータの中には個人情報は入らないという整理ができるのではないかと思ってい ます。  次に資料6ですが、「レセプト情報、特定健診・特定保健指導情報について同一人物 の情報を追跡出来るようにするための対応方法(案)」というタイトルです。特定の個 人を識別する情報は必要ないので、個人情報は事前に削除をお願いしたいと思っていま すが、同じ人がどういう変化をたどっていくかという個人の追跡は必要だと思っていま す。それは資料7の方で御説明したいと思いますが、資料6では、一方で個人情報は削 除しつつ、同一人物かどうかを判別できるようにして収集する技術的な方法について説 明したいと思います。  「1.ハッシュ関数について」です。  2回目の検討会において先生方から御紹介いただいたアメリカなどのソーシャルセキ ュリティナンバーのように、制度的に一人一人に固有の番号が振られている仕組みがあ れば別ですが、日本にはありませんので、同一人物かどうかを完全に判断することは困 難です。  ハッシュ関数というのは、ドキュメントや数字などの文字列の羅列から一定の長さの 疑似乱数(ハッシュ値)に変換する関数です。暗号とか電子署名で使われています。  右側に「わたなべ たろう」という3人の情報を書いていますが、異なるデータから は原則として異なるハッシュ値が出来上がります。左端と真ん中の渡辺太郎さんは生年 月日が1日違いますので、出来上がるハッシュ値が違ってきます。左端の渡辺太郎さん と右端の渡邊太郎さんは生年月日も性別も同じですが、“なべ”という漢字が違います。 漢字の表記が1字違うだけでも出来上がるハッシュ値は全く違うものが出来上がります。  特徴の(3)に書いておりますように、生成されたハッシュ値からは元データを再現する ことはできない。ハッシュ関数というのは不可逆的な一方向の関数なので、右の絵にハ ッシュ値から上に向けた矢印に×が書いてありますが、ハッシュ値から上のデータを再 現することはできないというものです。  こういうハッシュ関数の特性を使って、個人情報を削除しつつ、同一人物は原則同一 だと認識できるような工夫ができるのではないかと思っているところです。  下の<イメージ>図にありますように、まず保険者がデータを提供する時に個人情報を もとにハッシュ値を作成していただく。ハッシュ値を作った後は元となった個人情報は 削除して、ハッシュ値のみが付されることになります。個人情報が削除された形でハッ シュ値だけが国のデータベースに入り、同じハッシュ値のものが過去にあれば、同じ人 のものだと認識してつなげていく。そういう使い方ができるのではないかということで す。  「2.ハッシュ関数の具体的な活用方法」です。  転職による保険者の変更、結婚による氏名の変更等のケースを想定して、異なる個人 情報をインプットしてハッシュ値を2つ生成させて、同じハッシュ値であれば同一人物 として紐付けをしたらどうかと考えています。  (1)保険者番号・被保険者証記号番号・生年月日・性別からハッシュ値(1)を作ります。  (2)氏名・生年月日・性別からハッシュ値(2)を作ります。  なぜ、このように2つのハッシュ値を作るのかというと、右の具体的なケースを見て いただきたいと思います。  ケース1は、同じ保険者の下での氏名の変更や、表記の違いがあった場合です。結婚 などで氏名が変更になった場合、氏名の表記が異なる場合等、氏名をインプットしてい ないハッシュ値(1)で紐付けをすれば、大体の場合が紐付けできるということになるかと 思います。  ただし、この場合も極めて例外的なケースとして、「※1」にありますように、双子 とか三つ子の被扶養者がいた場合、本当は別の人間なのに同じハッシュ値がつくという ことが生じます。  ケース2は、レセプトと特定健診・保健指導データの紐付けの関係です。氏名の記載 ルールがレセプトと特定健診では違いまして、氏名については、レセプトでは漢字、健 診の方はカナですので、氏名は突合キーとしては使えません。そのためにこれも氏名を 入れないハッシュ値(1)により、保険者が同じであれば同じ人には同じハッシュ値が振ら れる、そういう活用をすることで対応ができるのではないかと思います。  ケース3は、保険者が変わった場合はハッシュ値(1)は使えないので、そのためにハッ シュ値(2)を使って紐付けをします。この場合も下の「※2」にありますように、氏名・ 生年月日・性別が同じ人がいた場合、本来は別人物であるはずがハッシュ値では同一人 物と判断されることになります。  ケース4は、保険者と氏名が変更になった場合です。例えば、結婚で退職したため保 険者と氏名の両方が変わった場合、ハッシュ値(1)でもハッシュ値(2)でも同じ値はつかな いので、別人物という扱いになります。  以上のようにハッシュ関数を使っても、別の人だけれども同じハッシュ値がついてし まう、あるいは同じ人だけれども別のハッシュ値がついてしまうというケースが生じて しまいます。完全なる一致は、必ずしもできないということを皆さんに御理解いただい た上で、分析の目的に応じてハッシュ値(1)なりハッシュ値(2)を使うことで同一人物は原 則同一ということで判断をして追跡することが技術的には可能ではないかということで す。  最後に資料7です。この仕組みの中でレセプトデータ、特定健診・特定保健指導のデ ータを全数集め、今、申し上げたような技術的なものを活用することで個人を追跡した いと思っています。そういう形でデータ分析をすることで何ができるようになるのかと いうのをまとめてみたペーパーです。  基本的な考え方ですが、レセプトデータ等を全数把握することにより、抽出調査によ る推計ではない、より正確な疾病状況、医療費の状況を把握につながります。また、個 人を追跡することにより、対策の効果がより的確に評価できるようになるということで す。  現状の課題について、レセプトと健診・保健指導を分けて書いています。  レセプトに関しては、現在は、社会医療診療行為別調査の抽出調査によって診療行為 別の医療費などを推計していますが、本来は医療費の実態をより完全かつ正確に把握す ることが必要です。  また、地域別・年齢別の医療費を正確に把握することが必要です。制度改正に伴う医 療費の変化について、個人を追跡した正確な評価ができていない状況にあります。  全数把握し、かつ個人を追跡する効果として、算定数が少ない行為も含めて医療費の 実態を正確に把握できます。地域別、年齢別、診療内容別などいろいろな切り口からの 医療費の状況を正確に把握することができます。  また、個人追跡によって、制度改正等による影響を正確に見ることができることにな ります。  特定健診・保健指導についても、現状としては、糖尿病実態調査等の抽出調査により 生活習慣病の有病者・予備群等を推計していますが、今後は有病者・予備群の実態をよ り正確に把握することが必要です。糖尿病等の生活習慣病の新規発生数については、個 人の追跡ができていないため、把握できていません。来年度からの特定保健指導の効果 を評価するためには、特定保健指導の受診の有無等ごとに、翌年の健診結果等を評価す る必要があります。  全数データを把握・追跡する効果として、生活習慣病の有病者・予備群の数、新規発 生者数を正確に把握することができる。特定保健指導による生活習慣病の予防効果を正 確に把握することができるということになります。  それ以外に、先ほど申し上げた資料6の方法によって、レセプトと特定健診・保健指 導等のデータを突合することができれば、保健指導によって医療費がどのように変わっ ていったかという状況が正確に把握することができるようになると考えられます。  以上をまとめますと、一番下に書いてありますように、全数のデータを集め、個人の 追跡によって政策の効果を見ることができるようになることによって、正確なエビデン スに基づき、効果的・効率的に対策を実施し、医療サービスの質を向上させることがで きると思っております。以上です。 ○開原座長   ありがとうございました。ただいまの説明にはいくつかの問題が入っておりますが、 御質問、御意見がありましたらお願いいたします。 ○尾崎委員   3点ほどコメントさせていただきます。まず、資料7の立論には全面的に反対で賛成 することはできません。第1点目は、その理由を述べます。第2点目は、ハッシュ関数 の使い方がおかしいのではないかと思いますので、若干技術的な観点になりますが、コ メントさせていただきます。第3点目は、セキュリティに対する考え方が根本的に甘い というか、おかしい感じがいたします。  まず1点目ですが、資料7を見ると非常に結構なことが書いてあるのですが、これは、 「何のデメリットも生じないような新たな政策がもし可能であるなら、現状よりもよく なる。」と言っているだけの話です。何事にも新しい政策をやる以上、政策コストもか かりますし、さらにそれ以上にいろいろなデメリットを生むわけで、デメリットとメリ ットをきちんと比較しなければ、安易に結論は出せません。  そして、本件のデメリットは、この検討会の中で毎回言っておりますが、国家の機関 が病歴というプライバシーを集めることによって発生してしまうリスク、セキュリティ 問題、これは非常に大きな問題をはらんでいるわけです。だからといってやめてしまえ と言ってる訳ではなくて、そのデメリットを上回るようなメリットとして、すごい分析 ができるよというのであれば別だ、ということです。しかし、今日の井原先生を初めと する保険者、支払基金さんの御説明を聞いても、びっくりするような成果が出るかとい うと、そうとも思えません。メリットとデメリットを冷静に分析すると、デメリットの 方が大きいのではないかなという感じがいたします。  第2点目。ハッシュ関数の問題です。私は弁護士として参加しているので理科系の話 をするのはおかしいのですが、第1回目で自己紹介をしたとおり、私はもともと数学の 出身で大学院ではコンピュータサイエンスも専攻していましたので、ハッシュ関数につ いて若干説明いたします。ハッシュ関数が有用なのは、資料6のイメージ図で書いてあ るところの左側がパスワードのような秘匿データの場合です。この場合は非常に有効で す。特にワンタイムパスワード、余り長時間使わないようなパスワードをネット上で流 す時は、パスワードそのものは流れずにハッシュデータだけが流れることによって安全 性が高まるという使い方ができます。  ところが、資料6のイメージ図に書いてある赤枠の中、保険証番号、記号・番号、生 年月日、氏名、性別、これはすべて保険証の券面に書いてあるもので、公開情報とはい わないまでも、ちょっと調べればわかってしまう情報なのです。  資料6の説明(3)に「生成されたハッシュ値からは元データを再現することは出来な い。」と書かれており、これはそのとおりでワンタイムパスワードからハッシュ値を計 算して、その計算した値からワンタイムパスワードを当てようと思っても、なかなか当 てることはできません。しかし、左側の入手可能な情報からハッシュ値を計算するのは 極めて簡単であって、一度わかってしまえば単純なテーブルサーチング、表引きになっ てしまうわけなので、これは非常に脆弱なシステムと言わざるを得ません。一般的でな いハッシュ関数を使うとか乱数要素を入れるとかのアイディアは承知していますが、も ともとの発想自体が脆弱な発想であると言わざるを得ないと思います。  第3点目、セキュリティに対する考え方。ハッシュ関数の内容などの秘密情報が漏れ たらどうするのかということに関しては「罰則をかけるから大丈夫」というお話を事前 に伺いました。罰則があるから大丈夫というのは、これだけ技術が進んでネットワーク の匿名化が進んだ中では、第1回目の時に申しましたとおり、セキュリティを守るには 説得的ではないということです。  しかも、罰則が適用になるのは原則として故意の場合のみですね。過失で漏れてしま った場合は罰則の適用はあり得ないわけです。電車の中にノートパソコンを置いてきて しまったとか、ネットワークでウィニーを使って漏れてしまったとか、その手の話が現 実には多いわけです。  今年の9月7日に総務省が国の機関から個人情報が漏れたケースというのを発表して いまして、全体で530件、厚労省単体では漏れた件数第2位なのですが、第1位が社保 庁ですから、厚労省は全部足すと423件で、530件中423件は厚労省から漏れているので すね。その態様をみますと、「誤送付」、「誤送信」、「紛失」、「ネット上の流出」 あるいは「盗難」などです。職員が故意で漏らすことはないでしょうけど、過失によっ て情報が漏れてしまうということについては当然のリスクとして最初から計算しておく べきではないか、デメリットとしてカウントしておくべきではないかと思っています。  以上をまとめますと、「なぜ、今これをやらなければいけないのか」という点につい て説得的な理由が欠けています。診療行為別調査では不十分であるということでしたら、 まず診療行為別調査のサンプル率を上げることによってできることは何なのか、なぜ全 数調査をしなければいけないのか、なぜ個人追跡を可能にしなければいけないのかとい うことについて、もう少し説得的な分析が必要ではないかと思いました。以上です。 ○開原座長   ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。 ○稲垣(明)委員   一つ質問と意見がございます。資料5でレセプトデータから個人情報を省くというこ となのですが、受診医療機関名、薬局名も個人情報だと思うのですね。名称は省かれて いるのですが、7けたの保険医療機関番号も医療機関の名称と全く同じで、だれでもわ かる番号ですので、これも除くべきではないか。これについてお聞かせいただきたいと 思います。  資料7に、レセプトデータの分析と健診・保健指導データの分析を突合分析すると効 果が正確に把握できると書いてあるのですが、レセプトデータに影響を与える因子と、 健診・保健指導データに対して影響を与える因子はそれぞれ独立して違うと思うのです ね。両方を突合して、レセプトデータの方の結果が健診・保健データだということは正 確には言えないと思うのですね。両方とも影響を与える因子が違うのに、両方が相関し て効果を正確に把握できるというのは必ずしも言えないのではないかと思います。 ○藤澤室長   資料5には医療機関・薬局の名称と書いてありますが、コードとは書いてないという ことは、コードの方は収集させていただきたいと考えているからです。なぜかというと、 高齢者医療確保法上も書いてあったかと思うのですが、医療費適正化計画におきまして は国民の健康の保持の推進ということと医療の効率的な提供の推進というのが大きな2 大目標のような形になっておりまして、このために、医療機関の種類別の分析とか病床 の種類別の分析などもしたいと思っています。そういうものはレセプトに具体的に書い てあるわけではないので、何から情報を得るかというと、コードしかない。我々として も個別に特定された医療機関ごとの分析はする必要はないと思っているのですが、分析 の元となるデータを取る先が医療機関コードしかないので、それは取らせていただきた いと考えて、資料5には、名前を削除するところに入っておりますが、コードは削除項 目に入れていないということです。 ○稲垣(明)委員   介護事業者の居宅療養管理指導というのを我々はできますので、介護事業者として情 報を公開しているのですが、ある3けたを入れて、コードにこれを加えるのですね。で すから保険医療番号というのは公開情報だと思うのですね。それをここに入れるという のは個人情報を削除したことにならないと思います。 ○開原座長   ただいまのは御意見として伺っておいて、具体的にどうするかというのは今ここで決 めるわけにはいきませんので、今後、考えていきたいと思います。 ○中川委員   第1回目の時に申し上げたかと思いますが、根本的にナショナルデータベースのアク セスをどの範囲までにするのかという議論と一緒に、セキュリティの問題も非常に大事 だと思うのです。慎重の上にも慎重にやっていかなくてはいけないと思います。レセプ トデータについて井原先生のお話は大変説得力がありましたし、それと健診・保健指導 データを突合することにメリットがあるというのは現時点では幻想だと思います。全体 像がわからないうちに個別の議論に走ってしまって、さらに個人が追跡できるような仕 組みを作っていくということには私は危険性を感じますので、現時点においては日本医 師会としては到底賛成できないということです。 ○上島委員   前回発表した私たちの内容を追跡した成績なので、その成績をお見せしたわけですが、 その意図を少し述べてみたいと思います。追跡するというのは、因果の逆転を避けるた めに疫学調査では基本的な方法として、ベースラインデータから見て追跡するというこ とがなされます。私たちは医療費をエンドポイントにいたしましたので、健診成績から 見て10年間の累積医療費というのを分析したわけです。それによりまして、血圧が高い と脳卒中を起こしやすいというような成績を今まで私たちはたくさん出してきたわけで す。  この前、たばこを吸っていると40歳代の平均余命が3.5年少なくなるというデータを 出しましたが、それに対応する医療費の部分についてはどうかというのは成績が乏しか ったので、私たちは予防活動の一環としての意味も含めて被保険者に情報を返すという 意味で、アルコールを飲み過ぎている人はどのくらい医療費を使うかということを明ら かにして被保険者に知らせていこうと思えば、この前にお話ししたような追跡調査をや って、健診データとレセプトの医療費のデータを突合してやらない限りはできないとい うことで、それをやって、その結果をお返しした。追跡調査は無意味だということに対 ししては反論したいと思います。 ○岡本委員   私は6年ぐらい前まで、大阪府の東大阪市で10年以上、基本健康診査に従事してきま した。診察も判定もし、当時は今のように積極的支援ではなく「要指導」と言っていま したが、あるいは「要医療」という判定を下していたわけです。要医療はむろん「受診 してください」という意味。しかし、受診させても結果的には空振りということもある し、早期発見につながったケースもあるわけですが、それがなかなか把握できない。そ こで、基本健康診査の場合、受診者の6割ぐらいが国保の被保険者ということもありま して、常にレセプトと突合して個人単位でくっつけることによって受診状況を追跡して きました。  その成果は、市の報告書としても公表され、自分にとってはなつかしい10年ぐらい前 のその資料を今日の検討会を前にしげしげと見てきました。当時は、健診の受診率を上 げることばかりに努力が傾注されていましたが、医師の立場からは、健診を受けた後に 正しい受療に結びついたかどうか、の方がより重大な関心事です。そこで、レセプトと 突合した結果、相当数の人が言われたとおり受診していない、という事実が明らかにな りました。健診とレセプトを突合することは、当時としては先駆的な試みだったと思い ますが、健診受診者の事後フォローのため、国保被保険者に関してはレセプトこそ最良 の情報源であると自身の経験で確信しました。  先ほど「レセプトデータの分析と健診・保健指導データの分析を突合分析すると効果 が正確に把握できる。」とする資料7について懐疑的な発言がありましたが「効果を正 確に把握できるとは必ずしもいえない。」と言われると、私としては心外です。自分が 東大阪市で実践したことの報告書は次回に資料として出したいと思います。レセプトと 健診の突合が無意味だとは私は思っておりません。 ○砂原委員   日本経団連の砂原でございます。先ほどから出ておりますように個人情報の保護とい うのは非常に大切なことだと思いますので、今回の方式がいいのか、それを若干修正す る形なのかは別にしても、そのようなものをきちんとやることを考えた上で進めていた だきたいと思っております。まず始めるということが重要なことだと我々も考えており ますので、そういう形での議論が進むといいと思っております。  医療内容の透明化によって質の向上も展望できると思いますので、さきほど、健保連 さんから御提案があったようなレセプトの様式の見直しによる疾病ごとの医療費の収集 ・分析可能性の追求も含めて、今後考えていければということと、社会保障制度はIC T化を進めていくという流れもあるようですので、まず始めたあと見直していくという こともあっていいと考えます。 ○飯倉委員   連合の飯倉でございます。医療費のデータの関係につきましては、例えば、システム 連携を前提に2000年につくられた介護保険のデータ把握と比べても、医療費の場合はそ ういった喫緊のデータを集約するというのはタイムラグというか、大きな労力もかかっ て問題があったということがあります。医療費の動向を的確に把握するという意味での レセプトの電算化に伴うデータ収集というのは非常に意味のあることだろうと思ってお ります。  前半で健保連さんの御提案の中にもICD10コードの話もありましたが、資料5にあ るようなデータを国として収集して、ベースのところの整理ができれば、大くくりのと ころの疾病動向の把握とか、そういったところでは有益なものが期待できるのではない かと思います。  そういう大くくりな疾病の動向を把握するということは問題ないと思うのですが、こ の中で個人は特定しないということであっても、国として個人データを最後まで追いか けていって個人の数字をつかんでいきたいという説明が資料7でありました。保険者が 被保険者のデータを分析していくということであればわかるのですが、1個人のところ まで国のレベルでデータを特定して把握して分析をするということをどう全体化をして いくのかというところのイメージがピンとこないので、こういう形で活用できるみたい な資料があれば提供していただけるとありがたいと思います。 ○開原座長   ありがとうございました。御意見として伺っておきたいと思います。 ○大熊委員 電算化のマイナス面が述べられましたが、プラス面として、かさばらない ので永久保存ができるということがあるのではないか。これによってデータを永久保存 できる。そこから何を得るかというと、例えば、体にとって異物である薬剤であるとか、 そういうデータが蓄積されていく。今回のC型肝炎の資料が倉庫に眠っていたみたいな ことにはならずに、適切な対処ができるか。ただ、井原先生のお話だとマルメ方式では 薬剤はデータとしてあがってこないというので、悲しい思いをしました。  保健指導の効果をレセプトで分析することについてですが、こうやったら保健指導は 効果があるというか健康上いいということは、これからわざわざこんな面倒なことをし なくても、わかっていることが山ほどある。例えば、たばこの値段をうんと上げれば、 あっという間に健康は向上するわけです。そういうことを厚労省はまずやってほしい。 その上でこういうこともするのならいいのですけど、きわめて効果的とわかっているこ とをやらないでおいて、それに比べれば効果が薄そうなことに手間をかけるのは……。 やってはいけないというわけではないのですけれど、その辺のバランスを疑問に思いな がら聞いておりました。 ○石原調査課長   大熊先生から効果があるのかというお話があったので、一言だけ申し上げたいと思い ます。現在、この会合をお願いしておりますのは、医療費適正化計画との関連で、医療 費の分析が緊急の課題だという認識をしております。井原先生がレセプトというのはカ ルテではないから分析しにくいとおっしゃるのはごもっともなお話です。レセプトはカ ルテではないので個々の薬剤がどう投与されたかというのはわからないのですが、わか るものもかなりあります。なぜ医療の地域差があるのかということさえ今はわかってい ないわけで、今後、医療費の適正化に当たっては、その要因が妥当なのかどうかという ことをベースにして、どの程度が適正化なのかというのを分析しないとできない。カル テではないので完全な情報はないのですが、診療行為別に積み上げたのが医療費全体で すから、診療行為ごとの点数があれば、ある程度の分析はできると思っています。  冒頭で尾崎先生から御指摘があった、なんで全数なのかという点ですが、私の感覚で 申し上げますと医療の場合は、ばらつきが大きいものですから、とんでもなく高額な医 療費があれば安いものもある。こういう世界で分析をするとなると全数がないと、ぶれ が大きくて難しいという実感を持っています。そういった意味で、全数で分析していく ことがエビデンスのある分析ということでは重要なことではないかということでござい ます。 ○尾崎委員   先ほど上島委員から御説明がありまして、岡本委員から補足の資料があるから出した いというお話がありましたので一言申し上げます。  前回御発表のあった上島先生の分析ですが、一つの保険者の中でクローズして分析で きたということでした。また、本日話題になった診療の適正化、透明化も一つの保険者 の中でできるお話です。もっとも、保険者が集めることさえ「プライバシーの侵害では ないか。」と考える極端な人もいるのですが、保険者がレセプトを集めなかったら何を するのだという話になりますので、これは正当業務行為ということになります。問題は 保険者をまたいで個人情報を紐付けるべきかどうかです。プライバシー問題やセキュリ ティ上のリスクを負ってまで、個人情報の紐付けまでする必要性が本当にあるのかどう か。「ひとつの保険者内でクローズできる話」と「保険者をまたいで個人情報を紐付け る話」というのは分けて議論をした方が良いと思います。 ○開原座長   時間が過ぎてしまっておりますので、本日の議論はここまでということにさせていた だきたいと思います。事務局より、次回の議事について説明してください。 ○藤澤室長   今日もまたいろいろと御議論ありがとうございました。いろいろ御指摘いただいたこ とで我々が御説明できるものを考えて改めて出させていただきたいと思います。次回は、 1回目にお示しした論点全体について一通り御議論いただくということも含めてお願い したいと思っております。具体的な日程につきましては既に御連絡させていただいてい るかと思いますが、12月26日、水曜日の13時からとなっております。場所は、経済産業 省の別館の会議室になります。また、詳細は御連絡させていただきますので、よろしく お願いいたします。  1回目の検討会では、月1回ぐらいのペースで検討会をさせていただいて、年内をめ どに取りまとめができればというお話をさせていただきましたが、まだ3回目というこ とでございます。次回の4回目で終わるお話ではないので、皆様の机の上に3月までの 日程表を置かせていただきましたので、先に日程調整をさせていただきたく、会議後な り後日、お返事をいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○開原座長   それでは、以上をもちまして第3回目の検討会を終了いたします。どうもありがとう ございました。 終了 33