07/11/28 交通労働災害防止専門家検討会(第2回)の議事録 第2回 交通労働災害防止専門家検討会 日時 平成19年11月28日(水) 13:30〜 場所 労働基準局第1・第2会議室 照会先:厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課 電話 03-5253-1111(内線5487) ○高橋副主任中央産業安全専門官 開催に先立ちまして、配付資料の確認をさせていただきま す。資料1はこの検討会の開催要綱です。資料2は第1回検討会の議事概要(案)です。資料3は 「検討事項関連資料」です。資料4「新たな交通労働災害防止対策のための検討事項」です。資 料5「トラック事業者及び運転者に対する調査結果概要」で、これは前回提出の資料の修正版で す。その他、委員の先生方には、いくつかの追加資料を配付しています。  ただいまから「第2回交通労働災害防止専門家検討会」を開催いたします。初めに前回ご欠席 された委員のご紹介をさせていただきます。独立行政法人労働安全衛生総合研究所人間工学・リ スク管理研究グループの中村主任研究員です。独立行政法人自動車事故対策機構安全指導部の平 川マネージャーです。 ○根本座長 議事に入ります。初めに「新たな交通労働災害防止対策の検討について」です。前 回議論のあった事項に関して関連資料が資料3として提出されています。これについて、事務局 及び国土交通省からご説明をお願いします。 ○安井技術審査官 資料3です。資料3-1「走行管理関係」です。これについては、前回のご議論 で走行計画の作成・遵守の状況について、「近距離あるいは長距離、そういったものの区分がど うなっているのか」というご質問、「走行計画の作成が困難、あるいは改善基準どおりに実施で きない理由について、もう少し調べるべき」というご指摘をいただきましたので、その関連の資 料です。  図1です。「走行計画の作成・遵守について」です。これは前回資料で示しているものです が、今回は「路線」「区域」に分けて出しています。路線というのは主に中長距離、区域は近距 離とお考えいただければよろしいかと思います。図1によりますと、走行計画の作成率として は、主に路線のほうが若干高いという結果が出ています。また、労働者50人以上、50人未満で見 たところ、50人以上については、路線、区域ともにかなり高いわけですが、労働者50人未満の事 業場については、特に区域のほうで若干低いという結果です。  図2ですが、これは同様の調査で、運転者を対象にしたものの結果です。走行計画の作成率に ついては、路線、区域で比較すると、運転者調査によると、区域のほうが若干作成率が高い結果 です。労働者規模で見ると、労働者50人以上については、路線、区域ともにかなり高いのです が、50人未満については若干少なめです。  図3ですが、業態別・事業場規模別の走行計画の遵守率です。これも運転者調査の結果です が、遵守率としては、主に区域のほうが若干高くなっています。事業場規模については、それほ どの大きな差はありません。  図4ですが、「走行計画の作成が困難な理由」です。理由としていちばん多いのは、「自動車 運転業務において、目的地、時間等が一定でない」というもので、約6割程度でした。「道路状 況等の変動が著しく、走行管理が的確にできない」が4割前後で、この2つが突出して高くなって います。それに関して路線、区域で比較しますと、若干区域のほうが走行計画の作成が困難な理 由の割合が低い傾向は出ていますが、それほど大きな差はありません。  次に、同様の調査を、労働者数、事業場の規模で比較したものが図5です。これについても、 事業場規模別でそれほど大きな傾向の違いはないということです。  次は図6ですが、「走行計画が改善基準に従っていない理由」です。いちばん多いのは「得意 先への納入時間の遵守」が約8割です。次に「荷主の都合」「渋帯など道路事情が悪い」「発注 時間が不特定」という順番になっています。これについては事業場規模をいくつか分けています が、どの事業場の規模が高いという傾向は明確になっておりません。  5頁です。実際に走行計画はどういう形で作成されているのかということでしたので、実際に ある事業場で採用されている運行ダイヤ管理というものを提示しています。これはルート配送と いうもので、基本的には近距離の特定の場所に毎日同じように配達するときに使われるもので、 右下に「標準運行経路」というものがあります。工場のマークになっているAW本社というのがあ りますが、ここを目的地としまして、右下に工場のマークが2つありますが、そちらに配達する ルートになっています。  (1)(2)(3)の数字については、左にあるように、この部分についてはこういう危険があるという危 険マップが盛り込まれていまして、標準運行経路とともに危険マップも兼ねています。  上にあるのがいわゆるダイヤ管理で、それぞれの地点、あるいは運転場所について、どの時間 にどの場所にいるべきかを明確にしています。待機時間や休憩時間についても、それぞれこのよ うな形で管理されています。これが一つのルート配送における標準的な管理方法ということで す。  資料3-2ですが、後ほど国土交通省からご説明いただきますので、資料3-3に進みます。これは 警察庁の安全運転管理者制度というものですが、これについては安全運転管理者の選任が必要な 事業所に関しては、5台以上の自動車を使用する事業所ですが、自動車運送事業者、いわゆる許 可を受けているような事業者については対象としないという制度です。  安全運転管理者の業務としては、交通安全教育、運行計画の作成、交替運転者の配置といった ものです。現状については、選任事業所数は全国で33万強ということです。  次の頁です。「安全運転管理者の育成・指導」については、都道府県公安委員会が実施してい まして、年1回、講習時間は6時間で実施されています。警察と連携した安全運転の取組みとしま して、事故防止コンクール等の開催、体験講習会等の開催を行っているということです。安全管 理者に対する指導ですが、交通死亡事故等が発生した場合の指導、あるいは安全運転管理者等の 解任を命じることができる制度となっています。  次は資料3-4「走行前点呼関係」です。これは前回のご議論で、睡眠時間に関する調査につい て「もう少ししっかりした調査がなければ基準づくりは難しい」というご指摘がありましたの で、それを受けて調査をしたものです。18頁にありますのは、「運転前の睡眠時間と事故等との 関連」に関して行われている先行研究をまとめたものです。いちばん上の欄が、今回我々が実施 した過労運転調査ですが、それ以外にもいくつかの調査において、5時間より短い、6時間より短 いといったところで、参照カテゴリーを1とすると事故率がオッズ比「OR」という形で、2.0、 3.5、4.6というように上がるという結果となっています。  次は19頁です。これはラプスというものを調べたものです。ラプスというのは「視覚刺激に対 して、0.5秒たっても反応できなかった回数」ということで、いわゆる認識エラーの回数です。 このラプスと睡眠時間との相関について見たものです。  上の図では、例えば□の就床6時間、1日6時間しか寝ていない方が、約2週間その状態をずっと 続けますと、ラプスの回数はどんどん上がっていくことがわかります。同様に、就床4時間ある いは就床0時間、これについては3日間しか行われていませんが、明確に睡眠不足日の累積ととも にラプスの回数が上がっていきます。  一方、下の図は主観的な眠気で、これは本人が感じている眠気の度合を示したものですが、ラ プスのように必ずしも直線的に上がっていかないということで、眠気についてはかなり慣れがあ るということです。本人の眠気と、本人の運動能力は必ずしも一致しないという結果です。  20頁です。これも同様の調査ですが、こちらは1週間の睡眠不足について調べているもので す。これについても、上の図で申しますと、就床5時間というのが◇ですが、そういったものに ついて1週間であると、ラプスは若干上昇してきます。就床3時間のグループについては、1週間 続けると如実にラプスが上昇していくということで、睡眠不足日の累積が、運動あるいは反応時 間に与える影響を示しているものです。主観的眠気については先ほどご説明しましたとおり、必 ずしもラプスとは一致しない結果となっています。  21頁です。「睡眠不足のスクリーニング法」です。全部で5つほど挙げていますが、上の2つは ベッドで20分横になって寝つくまでの時間とか、なかなか事業場で実施することは難しいのです が、上から3つ目の反応時間検査は、下に図も出ていますが、視覚刺激に対してボタンを押す等 の反応を見るという検査ですが、事業場でも実施可能であるということです。これについては、 短時間の検査時には強い動機づけ、要は集中してやってしまうと睡眠不足状態でもいい結果が出 るという弱点があるということです。身体活動量については、手首に活動量を検出するモニター を装着するものですが、これについてはモニターが非常に高価だということです。  次は資料3-5「荷役作業関係」です。これについては、前回の議論で「荷役を行うことによっ て事故の発生のオッズ比は上昇することについて、その理由は何か」というご質問があったとこ ろです。先行研究を調査しましたところ、荷役作業の影響について調査している研究はあまりあ りませんでした、この調査が見つかりました。結論としては、荷役作業の身体的活動というのは 非常に複雑な影響を与えます。長期的にはパフォーマンスの低下につながりますが、短期的には 注意力と反応時間を向上させるような場合もあるということですので、一義的に疲労が悪いとい うような、きれいな結果にはなっておりませんが、長期的なパフォーマンスの低下にはつながる ことを示唆するデータは得られています。いずれにしましても、1つの研究事例ですので、これ だけですべてを語るのは難しいという状態です。  次は資料3-6「安全衛生教育関係」です。これについては「具体的にどういった教育を各事業 場で行っているかの事例を調べてほしい」という要望がありましたので、いくつかの事業場につ いて事例を調べています。25頁に関しては、運転者認定制度の実態です。この事業場において は、トラックドライバーを採用した際に、こちらにあるような学科36時間、実技88時間に及ぶ研 修を実施します。この実施内容については、県知事認定の職業訓練としても認められている正式 なものを実施しています。その後に、添乗指導を1カ月か2カ月行って、トラックドライバーの教 育を行っているという事例です。  次の頁が「運転適性診断」です。こちらについては、国土交通省で実施されている制度です が、反応動作あるいは適度な精神緊張等、いくつかの点について診断を行って、それに対して個 別指導という形で、ドライバーにフィードバックするという制度です。  27頁ですが、これはある事業場で行われている安全活動の例です。特徴があるのは安全委員会 です。法定の安全委員会は、労使代表で構成するということですが、こちらは基本的に労働者 7、8人に1人を安全委員と任命して、何と90人にも上る大きな安全委員会を毎月開いている。ま た、自主参加ですが、研修塾というものを開いて、安全についての活動を自主的に行っていると いう例です。  次に「安全意識の高揚関係」です。前回のご議論では「交通危険マップについて、どういった やり方でやっているのか」というご質問をいただきました。これは2000年度に厚生労働省の委託 事業として、陸上貨物運送事業労働災害防止協会において作成した「交通危険箇所マップ」で す。30頁ですが、左上に凡例があります。歩行者・自動車等に注意、あるいは割込み等に注意。 いちばん下には、警察庁・警視庁が指摘する事故多発箇所。そういった凡例に基づいて、それぞ れの交差点などに丸が付いている形で、こういった所には注意しなさいということを日本全国カ バーしているマップがあります。  それから「日常的な点検・改善」の事例ということで、これもさまざまな取組みがあります。 広報活動、運行管理、車両整備といったことを3カ月に1回程度行うようなもの、あるいは年に3 回程度、まとまった形の集合教育をする、協力会社も含めた教育をすることをやっている事業場 がございます。  次の頁が「パトロール」ということで、これもいろいろなやり方があるわけですが、このよう なチェックリストを使って、実際にパトロールを行っているという事業場があるということで す。  資料3-8「安全管理体制関係」です。これについては、後ほど国土交通省から運輸安全マネジ メントシステムについてご説明があると思いますが、厚生労働省としましては、労働安全衛生マ ネジメントシステムというものを実施しています。これについては、交通運輸事業のみならず、 すべての業種で使えるものです。34頁に概要を示しています。いわゆるPDCAサイクル、計画、実 施、評価、改善というものを回しながらやっていくということです。  システムの基本要素としては、労働者の意見の反映、担当者の責任・権限の明確化、手順を明 文化する、記録をきちんと整備するといったことが、基本要素としてあります。  38頁は若干詳しいのですが、厚生労働省の示している「労働安全衛生マネジメントシスム指針 の概要」です。いちばん上にありますが、経営トップによる安全衛生方針を表明していただきま す。それに基づいて、危険性又は有害性等の調査、いわゆるリスクアセスメントを実施していた だいて、事業場における危険性・有害性を洗い出して、それに対する対策を検討していただきま す。それを基に安全衛生目標というものを設定して、その目標を実現するための安全衛生計画を 作成するということです。その後、それを計画的に実施するとともに、日常的な改善を行いなが ら、小さなPDCAサイクルを回す。また、1年に1回システム監査を実施して、計画あるいは目標が きちんと実施されているかをチェックして、改善事項があれば、それを運用の改善という形で次 年度につなげるということを毎年繰り返していくのが、労働安全衛生マネジメントシステム指針 の内容です。  36頁ですが、これはリスクアセスメントの内容について、一般的にご説明をしているもので す。右側に例がありますが、コンベアーを使った積込作業の場合、例えば2台のコンベアーの乗 換え時に落ちる材料パネルを拾うときに手を切る、といった災害が想定されます。まず災害の重 篤度を考えると、これはそれなりに大きな事故になるのではないかということで、S2とします。 次に労働災害の発生確率ですが、こういった作業はかなり頻度が高いこともありますので、P3と します。真ん中にあるマトリクスにS2とP3の場合をあてはめるとIIIということで、かなり高い優 先順位を必要とするリスクと評価されます。このようにリスクを見積りまして、優先順位を定め て、それに見合った形で対策をその順番に実施していくというやり方です。  37頁は事例です。これは先ほど申しました、経営トップによる安全衛生方針について、親会社 と子会社に分かれて、それぞれやっている具体的な例です。「安全と品質は全てにおいて優先す ることを認識する」ということを事業者が宣言するということです。  38頁ですが、具体的な危険性又は有害性の特定の例です。ここに書いてあるように「荷主出荷 の中で、不良パレットの使用が度々ある」という場合に対して、どういう対応を取るか。荷主に 要請、社内で検討、自己防衛、そういった形で対応をとっているということです。私からは以上 です。次に国土交通省からご説明をお願いします。 ○山崎オブザーバー(国土交通省自動車交通局) 国土交通省自動車交通局の山崎と申します。 国土交通省関連部分についてご説明します。第1回検討会のときに労働安全衛生マネジメントの 話が出たときに、国土交通省のほうでも同じようなものがあるという話があり、それぞれの省庁 でやっている施策について、簡単に整理をしておくべきだろうという議論がありました。その観 点で、資料3-2で、国土交通省が運輸事業者に対して、今回の場合はトラック事業者に対してで すが、事業者監督という立場での規定類とともに、簡単な制度紹介をまとめたものが資料3-2で す。  具体的には、まず今回の資料の中にある検討事項に沿った形で関連規定の条文をまとめていま す。あと「安全運行パートナーシップ・ガイドライン」という話が出たかと思っています。こち らは私の課とは別の課になるのですが、そちらで取りまとめたガイドラインになります。これの 概要を示したものです。もう1つが「運輸安全マネジメントの導入について」というもので、こ れもパンフレットですが、こちらは「運輸安全マネジメント」という、先ほどご説明がありまし た労働安全衛生マネジメントシステムと同様のシステムが、運輸事業者を対象にありまして、そ の内容を簡単に事業者に示すために作成したパンフレットです。  もう1つ参考資料として、委員の皆様に「貨物自動車運送事業の運行管理に関する基本的な考 え方」という資料を用意しています。こちらは事業者に対して、運行管理に関する規定類の考え 方を1つにまとめて、わかりやすいようにしてほしいという要望に応えて、こちらで作成しまし た。こちらでは準則と呼んでいます。今年5月に作成されて、通達という形で関連の事業者に渡 して、参考にしていただいています。準則については分量も多ございますので、後日参考にして いただければと思います。  資料3-2に戻っていただきまして、簡単にご説明します。まず初めに規定類のところですが、 こちらについては第1回の検討会のときに、頭出しされているものについては条文ベースで書か せていただいています。そのため、内容としては省略させていただきますが、簡単にまとめます と、選任という観点では、運輸安全マネジメントシステムの関係で「安全統括管理者」という者 を選任することが求められています。これは事業者の会社としての対応を求めるもので、先ほど の話と同じようにPDCAサイクルを会社としてまとめていただくという観点でできているもので す。  もう1つ「運行管理者」という者を選任していただく、運行管理制度というものがあります。 そちらについては、具体的な実務に当たる運行管理、具体的には労務管理の観点からは過労運転 の防止、点呼の実施、運転者に対する指導監督を主に対象としている制度です。  もう1つ指摘しておきたいのは、その中身についてはそれぞれ見ていただくとわかるかと思う のですが、それぞれの交通労働災害防止のためのガイドラインに記載されているものと、基本的 には内容的に整合しているものがほとんどであるということをご理解いただけたらと思っており ます。  条文の中では、8頁の6.のところだけを指摘しておきます。先ほど話のありました安全統括管 理者の選任で、こちらが法16条と書いていますが、貨物でいけば貨物自動車運送事業法になりま すが、そちらで規定されています。安全管理規程、先ほどのPDCAサイクルを事業者としてまとめ るという規定で、これに加えて安全統括管理者の選任に関する事項を定めなければいけないとい う規定になっています。(2)の運行管理者の選任に関しては、同じく法第18条で運行管理者の 選任、あと運行管理者の業務と運行管理規程の作成が規定で入っているものです。  10頁が安全運行パートナーシップ・ガイドラインの話です。トラック事業者については、直接 の事業規定の対象はトラック事業者になりますが、その背後に荷主からの依頼に基づいて行動す るというところがありますので、荷主とトラック事業者の間の連携が非常に大事だという観点で 検討会を開きまして、ガイドラインにまとめたものです。  考え方としては11頁に概要をまとめていますが、荷主側からの荷物の量の話です。急な依頼が あった場合などについても、関係者が協力して取り組む。到着時間の遅延が見込まれる場合に、 これまでペナルティが付与されるという問題がありましたので、こういうものについても柔軟に 対応するといったことも含まれています。以下中身については省略させていただきます。中身に ついては、先ほどの検討事項6の中に、同じ内容が記載されています。  12頁が運輸安全マネジメントシステムの話です。事業者としてPDCAサイクルを回していただく ということで、昨年10月から運輸安全マネジメントシステムを導入しまして、事業者にPDCAサイ クルを回していただくこととなっております。また、貨物の場合は300両以上の車両を保有する 事業者が対象になっていますが、安全管理規程の作成及び安全統括管理者の選任を義務づけまし て、国土交通省側としても監査を行う対象にしているというものです。  事業者側にお願いしているのは、具体的にはPDCAサイクルを回していただくこと、これらの内 容をホームページでも構わないのですが公表していただくこと、輸送の安全に係る処分を受けた 場合について、これらの内容について公表していただくことをお願いしています。簡単ですが以 上です。 ○根本座長 この資料3について、何かご質問があればどうぞ。大まかには制度の説明をしてい ただいたところと、前回科学的データが不足しているところについて、詳しく過去の関連研究を 調べていただきました。  19頁の睡眠の話はわかりやすかったのですが、19頁の8時間寝ているラプスの図を見ると8時間 寝ている日が続く場合もラプスが増えることとなっています。これは何時間寝たら直線は平らに なるのですか。 ○安井技術審査官 ごく簡単に申し上げますと、次の頁に就床9時間のものがありますが、9時間 だと伸びていかないというデータはございます。 ○高橋委員 横軸は布団の中にいる時間です。実際に寝つくまでの時間とか、朝早く目が覚める とか、途中で目が覚めたとか、実際に8時間ベッドの中にいても、健康時であっても正味7時間半 ぐらいしか生理学的には眠っていないのです。となると、ここで生理学的意味での7時間半の睡 眠だと、もしかしたらこういう30歳前後の健康成人では足りないのではないかと思います。次の 頁では9時間ベッドにいる場合であり、8時間半ぐらいは生理学的には寝ている。8時間を超える ぐらいは寝ているので、そのぐらいだったら、ぼんやりミスはほとんどゼロになるだろうという ことです。 ○根本座長 8時間、8時間半ぐらいですね。 ○高橋委員 そうですね。 ○安井技術審査官 2つ目の20頁の図を見ていただきますと、回復というのがありますので、1週 間睡眠不足をしても、それは急速に回復するということもわかっています。 ○高橋委員 ただ、そこで回復日、就床8時間を3日間設けているのですが、統計的には有意では ないそうなのですが、平均値で見ていただくと、9時間のレベルよりもラプスの回数が若干増加 しているということは、このデータから見れば、睡眠のたまった借金のツケは3日間では払いき れていないという結論です。 ○根本座長 あとデータの関係では、23頁の荷役作業は、やってもやらなくてもあまり関係ない という結果が出たのは、これまでの話と矛盾しませんか。荷役作業が悪さをしているのではない かという仮説でやっていましたよね。それがあまり関係ないとなってしまうと、方針が変わって くるような気がするのですが、その辺はどのように判断したらいいですか。 ○安井技術審査官 後ほど詳しくご説明いただきますが、この結論は長期的なパフォーマンスの 低下は出ておりますので、矛盾は特にないと思います。ただ、短期的には、やった直後は集中力 がかえって増強するケースもあるということですので、特に矛盾はないのではないかと思いま す。 ○中村委員 いまご説明いただいたとおり、これは実験のデザインなどによっても、どのように 評価するかは分かれてくると思うのです。今回取り上げていた先行研究の中で行っていたのは、 まず運転課題そのものはシミュレーションで行っているのです。実際の車の運転は危険を伴うと いうことからシミュレーションでやっています。その中で、いくつか荷役作業を行わなかった群 と荷役作業を行った群とで比較を行っているのですが、この研究の中で結論づけている「影響が なかった」といっているのは、1日の中で2回の荷役作業をやって、その1回目のときにはその後 の評価のテストで、非常にパフォーマンスの向上が見られているということです。ただ、午後の 作業の後にはパフォーマンス低下は見られていますので、そういった意味で、必ずしも荷役作業 というのが影響がないとは言えないと思います。 ○根本座長 まだデータを蓄積しなければいけないという分野なのですか。 ○中村委員 そうですね。 ○三井委員 2頁の走行計画の作成・遵守の数字の意味というか、2番目と3番目の図なのです が、3番目の図のパーセントというのは、走行計画をほぼ作成している事業所を100とした場合の パーセントと解釈していいのでしょうか。3番目の図は、走行計画を毎回遵守している割合です よね。上が、走行計画を毎回作成しているのですね。遵守というのは、作成している事業所のう ちのパーセントなのか、あるいは全数のパーセントなのかという話なのですがどちらでしょう か。作成しているものを100としたパーセントであるならば、これは路線と区域は、そんなに使 わないのかなと思います。 ○安井技術審査官 この数値は有効値を分母にしております。有効値というのは記載があった人 だけをカウントしているものです。走行計画を作成しているかどうかというのは分からないので すが、走行計画を作成していない人が、「遵守できない」ということをいちいち書き込むことは ないだろうという推測の下に、基本的には走行計画を作成している人の遵守率であると考えてい ただければと思います。 ○三井委員 例えば作成率が70%で遵守率が70%であれば、全体の事業所から見れば49%という 解釈ですか。 ○安井技術審査官 実際1割以上の欠損値は出ていますので、完全には一致しないかもしれませ んが、大体その通りだと思います。 ○根本座長 これは事業者の方に聞いたほうがいいのかもしれませんが、5頁に運行ダイヤとい う基本ダイヤ表があります。地図などもつけられていて使い勝手のいい計画だと思うのですが、 これがいわゆる走行計画と考えていいのですか。 ○三浦委員 はい。 ○根本座長 そうすると、毎日同じ所へ行くルート配送の場合は計画も作りやすいし、そのとお りいっているか、いっていないかも管理できるし、ほとんど問題がないわけですね。走行計画の 作成が困難なのは、こういうケースではないケースだということですね。こういう図が書けない ケースのほうが多いということでしたでしょうか。 ○三浦委員 これは運行経路ということで、図式にしてあるのですが、図で書けない場合は地点 で追っていくような書き方もします。出発地からどこを経由してどういうふうにして入るという ように書きます。 ○根本座長 地図ではなくて、地点みたいなことですか。 ○三浦委員 はい。何号線を通って、どこへ行くと。 ○安井技術審査官 私からも質問があるのですが、戸別配送の場合はどういう走行計画が作られ ているのでしょうか。 ○三浦委員 戸別配送は非常に難しいです。例えば引越し業務などは、3、4月が繁忙期になるも ので、その作業内容を見ますと、朝出発時の予定がその都度狂ってくることがありまして、走行 計画を作っても守れないことが非常に多いです。あとは消費者に直結した戸別配送についても、 その都度違うものですから、非常に難しい面があると思います。 ○安井技術審査官 例えば5頁の左下にあるように、運行管理の基本項目とかで、それぞれ時間 は指定していますが、こういう時間の指定は戸別配送でもできますよね。 ○三浦委員 できます。 ○安井技術審査官 上にあるようなダイヤグラムは書けないというか、書いてもなかなか守れな いということでしょうか。 ○三浦委員 守れない可能性は高いです。 ○安井技術審査官 もしそういう場合にダイヤグラムを書くにしても、休憩時間を書くとか、地 点とリンクしないようにすれば書けないことはないですか。 ○三浦委員 はい。 ○平野安全課長 逆に言うと、消費者に戸別配送するような場合は、どのルートでどこに行くか というのは、ある意味では運転手任せになっているという理解でいいのですか。 ○三浦委員 かなりの部分でそうだと思います。 ○安井技術審査官 出発する前に、当然配布先のリストは渡されるわけですよね。それをどうい う順番で配るかというのは、かなりドライバーに任されているわけですか。 ○三浦委員 その件数にもよるのですが、宅配業務などを見ますと、そのドライバーが行く順序 を頭の中に描いて、品物の積込みをその順番にして出発するような格好になります。ですから、 事務所で、Aさんはこういう荷物があるのだけれども、こういうルートで行ってくださいとまで 指示していないのではないかと思っています。 ○根本座長 走行計画作成が困難な理由などを書かれていたりするわけですが、安本委員がご覧 になって何かご感想があれば伺わせていただきたいと思います。 ○安本委員 当社単体の場合をとって言えば、路線を持たない部分を担当しているエリアですか ら、路線であればやりやすいのですが、それ以外の部分について、三浦委員がおっしゃったよう なケースが多いです。 ○根本座長 ダイヤをきちんと作れるケースは少ないという感じですね。 ○安本委員 時間の留意点と書いていますが、こういったことの指示は明確にはできませんの で、どうしてもその点がネックになりがちです。 ○三浦委員 路線というか、特積みの事業につきましては、許可申請するときに運行ダイヤを付 けて申請しますので、特積みの事業については100%守られております。一般の、ここでいう区 域という部分では、事業によっては運行ダイヤの作成が難しい部分が出てきているのではないか と思っております。 ○安井技術審査官 疑問があるのですが。調査結果によると走行計画を守ると事故が少ないとい う結果が出ているのですが、走行計画のどういった要素がいちばん事故防止に効果があるのでし ょうか。時間の問題なのでしょうか、ルートどおりに走ることに意義があるのでしょうか。その 辺りは感覚としていかがでしょうか。 ○三浦委員 走行計画を守って事業をしている会社そのものは、安全面にも力を入れて、教育か ら何からしっかりした方向づけができている事業者だということだと思います。こういった発言 がいいのかどうか分からないのですが、そういったことも1つあるかなと思っています。 ○根本座長 走行計画を守ったから、その結果として事故が減ったというのは見かけの相関で、 きちんとした経営をしているところは両方ともちゃんとしているということですね。 ○安井技術審査官 そのような影響は排除しているのですよね。 ○高橋委員 そういう影響は排除してありますが、運転時間や休憩等の1つの項目だけが 決定的に安全に寄与しているとは言えないのかもしれません。それぞれが関与して、 全体的に安全が高まっていると思います。 ○根本座長 前回ですと、いろいろな影響があることを前提に分析して、走行計画の影響を単独 で取り出していましたね。 ○平川委員 走行計画は国交省で運行指示書という言い方をするのですが、走行計画をきちんと 定める会社というのは、安全に対する意識が高い会社です。意識が高い会社ということは、ドラ イバー自身も安全運転に対する意識が高いわけですよね。そういうことから、先ほど三浦委員が おっしゃられたように事故が起こりにくいというのは、当然関連するのではないでしょうか。会 社の土譲というものですね。  走行計画、運行指示書については、ある起点から、道路であればどの道路を走り、どの地点で 休憩、仮に2時間経った時点で10分間取って、それから走行を始めて、どこかへ行って荷を卸し てということをきちんと決めるわけですね。それは会社の意識も高いでしょうし、それを守ろう というドライバーの意識も高いですから、それは自ずと意識の高い会社には意識の高いドライバ ーがいて、それで事故が起こりにくいことは関連するでしょうね。 ○安井技術審査官 前回ご説明を少ししたのですが、企業風土変数というのがありまして、安全 に対する組織レベルの関与とか、安全に対する社内態度というのは調べていまして、一応その影 響は排除してコントロールはしているのです。数字上見えない世界でそういうものはあるのかも しれないのですが、そういうものが影響しないように統計上の処理は一応してはいます。ただ、 おっしゃるように、走行計画にどこまで定めているのかということは一切調査していませんで、 そういうところで差があるのかもしれません。 ○根本座長 大まかに言えば、きちんとした経営をして、安全に配慮しているグループとそうで はないグループと、二群に分かれていて、安全に配慮しているけれども事故が多いとか、安全に 配慮していないけれども事故が少ないとか、の組み合わせは少ないのではないでしょうか。2か ける2の田の字の4つグループに同じサンプル数が入っているわけではなくて、傾向としては、 安全対策を「しっかりしたところ」と「しっかりしていないところ」と大きく2つに分かれるか ら、各変数の影響をコントロールしたと言いながらも、サンプル数が少ないところで特異的な影 響が出ていれば、そこは過大評価してしまうことはあるかなという気がしました。もう一遍デー タを細かく見てもいいかもしれません。 ○安井技術審査官 おっしゃるように平均以上と以下しか分けていませんので、本当はもっと細 かく5段階ぐらいに分けるとか、そうすればもっと正確に出ると思うのです。そういう意味では 大雑把ですから、完全に影響は排除できていないかもしれません。 ○根本座長 制度のことも復習したわけですが、前回よりよりクリアになったということでしょ うか。教えてほしいのですが、国交省の運輸安全マネジメントシステムと、厚労省の労働安全衛 生マネジメントシステムですが、同じようにやりながら改善していこうという仕組みですが、国 交省のほうは300台以上の方にお願いする形になっています。厚労省のほうは、どこか観点が違 うわけです。ほとんど似ているのだけれども、逆に違うところはどこなのかを教えてもらえば理 解が進むと思うのですが、何が違うのですか。 ○安井技術審査官 基本的にマネジメントシステムですので、PDCAサイクルのところは同じなの ですが、強いて違うところを挙げますと、リスクアセスメントという概念が厚労省にしかないで す。実際にハザードを見つけ出して、それをきちんとリスクを見積って、それに対する対応をし てから計画に盛り込んでいくというプロセスは、厚生労働省にしかありません。これは交通労働 災害のみならず、すべての機械にはさまれるとか、そういった労働災害にも使えるシステムにな っていますので、そこは我々のシステムでは強調しています。  その他、労働者の参画とか、厚生労働省という性格上、そういったものはかなり色濃く我々の マネジメントシステム上位置づけられています。 ○山崎オブザーバー 先ほどは語弊があったかもしれませんが、明確に法令上義務づけがかかっ ているのは300両以上ということですが、規定上はすべての運送事業者に指導をしているという 状況です。加えて、先ほど国交省で監査のようなことと言いましたが、運輸安全マネジメント評 価というものを国土交通省ではやっています。それは運輸安全マネジメントシステムの特徴かも しれません。事業者のほうでPDCAサイクルを回していただくのをお願いするとともに、それらが ちゃんとできているかを国で評価を行います。この評価の対象は、先ほど義務づけの対象となっ ている300両以上の運送事業者になっています。 ○高橋委員 運輸安全マネジメントシステムと安全運行パートナーシップガイドラインというの はどういう関係にあるのですか。 ○山崎オブザーバー 運輸安全マネジメントシステムは法令に定められた制度です。安全運行パ ートナーシップ・ガイドラインについては、特に荷主との関係について、役所的に言えば審議会 と私的懇談会ぐらいの差だと思うのですが、まさに課として検討会を開催して、まとめて、公表 したというレベルのものです。  中身としては荷主との関係を整理したものが、安全運行パートナーシップ・ガイドラインであ り、会社としてのマネジメントをどうするかを体系づけたのが、運輸安全マネジメントシステム という違いになります。 ○高橋委員 検討会をお持ちになられたということですが、実際、運輸事業所にとっては過酷な 要求等をちょっと調整してくださいという主張に対して、荷主代表等に受入れの余地等はあるの でしょうか。 ○山崎オブザーバー そこまでは私も直接担当していたものではないので、直接の反応は理解し ていないのですが、こういう会合を開いてまとめたという背景の要因としては、先ほどご指摘の あったようなケースが、事業者側の問題意識としてあったということだと思っております。 ○三浦委員 いま座長からご質問のありました運輸安全マネジメントシステムと労働安全マネジ メントシステム、各事業者から「どこが違うのだ」という質問が結構ありまして、その都度親切 に答えているのですが、現場ではかなり混乱しているように思います。チャンスがあったら、そ の辺りをアナウンスしていただければと思います。 ○安井技術審査官 時点的には厚生労働省のほうが古いので、そのあとに運輸が作られたわけで すが、当然のことながら、ここを作る際には既存の労働安全衛生マネジメントシステムと矛盾の ないように、整合性を持って作られたと聞いているので、基本的に相矛盾する関係にはなってお りません。ですので、労働安全衛生マネジメントシステムをしっかりやっていれば、若干足りな い部分もありますが、運輸安全とは基本的に矛盾しませんし、両方やることも全く可能なので、 あまり対立した概念と捉えないでいただきたいと思います。 ○根本座長 現場では、両方やって改善していって、安全を高めるということでいいのでしょ う。それをどうやっているかと聞かれて、答えるときにはそれぞれの立場で答えればよいと思い ます。ただ、書類を2つ作らなければいけないのは大変かもしれません。書類が1つになって、こ ちらから見るとこう見えるし、あちらから見るとああ見えるとなっていると、もっと便利かもし れません。 ○安井技術審査官 書類に関しても、当然1つで全く問題ありません。それが国土交通省で評価 される観点もありますし、労働基準監督署が見る観点もありますし、両方入っているものが1つ あれば問題ありません。 ○根本座長 だから、リスクのことが気になる厚労省用にリスクが入っているし、国交省が気に なる項目がまた入っている書類を1つ作っておけばいいですね。 ○安井技術審査官 それで全く問題ありません。 ○根本座長 よろしいですか。次の話題に入ります。次は、前回少し頭出ししましたが、資料4 「新たな交通労働災害防止対策のための検討事項」を再度整理しているようです。これは今日の メインなのですが、事務局から論点をご説明いただきます。それに沿って、皆さんからご意見を いただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○安井技術審査官 それでは、資料4についてご説明します。これは前回もお配りしている資料 で、検討事項をまとめているものです。資料の作り方は、いちばん上の欄に「調査結果等」とい うことで、前回ご説明した調査の結果、下線部の部分が今回新しく付け加わった調査結果です。 次の欄に「前回の議論等」をまとめております。それを踏まえ、今回ご議論いただきたい内容を 「論点」でまとめております。次の欄に「参考資料」として、現在あるガイドラインや国土交通 省の省令等が参考資料で入っているという構成になっております。  検討事項1-1は「走行管理(走行計画関係)」です。調査結果については、前回ご説明したと おり走行計画の「遵守」、あるいは走行計画の休憩時間・仮眠時間を定めることについて「負」 の関連性、事故が発生しにくくなることに関連があるということです。走行計画のうち休憩・仮 眠場所を定める、あるいは乗務実態の把握手段が増えるといったものについては、若干事故が発 生しやすくなることと関連があったということです。  追加した資料としては、走行計画作成率においては、主に近距離のほうが中距離よりも若干低 いということです。事業場規模別に言うと、「区域」の50人未満の事業場が特に作成率が低い傾 向があります。遵守率は、区域のほうが若干高くなっております。  走行計画の作成が困難な理由としては、「目的地・時間等が一定でない」「道路状況等の変動 が著しい」という2つが突出して多い状況で、「路線」あるいは「区域」の違いはあまりありま せんでした。  これに関して、前回のご議論では戸別配送と、いわゆるルート配送は相当違って、走行計画を 作成する際には、そういった業態の違いを踏まえて内容のメリハリが必要ではないかというご議 論があったわけです。  今回論点として用意したものについては、走行計画の遵守率向上についての課題ということ で、(1)走行計画の作成・遵守のための課題は何なのか、(2)走行計画を遵守するための具体的な方 策は何なのか、(3)走行計画を定めるべき内容は何かです。これについては、いくつか案を例示し ております。この中で○が付いているものが、2頁のいちばん下の備考欄にありますが、事故等 の発生に対して「負」の関連、つまり事故の抑制的な方向で効果があったと認められるもので す。×が付いているものは逆で、事故が増える可能性があるものです。△は、単変量解析で多少 効果が見込まれるものです。1頁に戻りますが、そういったものがわかっているものについて、 ○や×を各項目ごとに付けております。  (4)としては、走行計画の内容を「路線」と「区域」で区分する場合に、区域においてはどうい った項目を規定すべきかという問題です。また、走行計画は、先ほどのご説明にもあったように なかなか守れない状態があるので、それをどのように変更していくのかという問題があります。  次の頁ですが(6)として、望ましい乗務実態の把握方法は何かです。乗務実態の把握方法が多す ぎると事故が多いという結果が出ているので、必要最低限のものについて把握するのはどういっ たものかということです。走行計画は遵守されているに越したことはないわけですが、現実問題 として遵守できない場合もあるので、そのときにどうするのかという問題についてご議論いただ ければと考えております。  次に、3頁の「走行管理(勤務条件関係)」です。これは、前回の検討会で不規則な勤務や夜 間勤務については有意傾向があったということでした。「13時間以上の拘束時間の割合」の増加 や「8時間以上の勤務間隔」の回数の減少等については、事故が発生しやすくなることに関連が あったということです。追加調査として、平成7年の調査については、走行計画が改善基準に従 っていない理由としては、「納入時間の遵守」「荷主の都合」「道路渋滞」「発注時間不定」と いったものが挙げられております。  前回のご議論としては、こういった勤務条件を守るのは事業者の責任であることを明確にすべ きであるということと、遵守できなかった理由をもう少ししっかり調べて議論すべきではないか とのご指摘がありました。今回の論点としては、こういった拘束時間などの基準の遵守に課題は 何なのかということです。その課題を踏まえて、遵守に向けた自主的な走行管理方策はどういっ たものが考えられるかについて、ご議論いただければと考えております。  次は「走行前点呼」です。前回の検討会では、睡眠時間5時間以上であれば事故の発生に 「負」の関連があるということでしたが、逆に言うと睡眠不足はよろしくないとの結果が出てお ります。走行前点呼をしっかりやればやるほど事故は減る、あるいは点呼で不適当な状況を把握 した場合の改善措置といったことも、十分効果があるということです。今回追加の調査として、 海外文献の調査として運転前の睡眠時間と事故等の有意な関連の追加とラプスの関係の調査を追 加しております。  前回のご議論では、点呼については効果があることがわかったので、点呼の項目を具体的に定 める必要がある。例えば、飲酒運転の問題、睡眠の問題です。睡眠に関しては基準作りが難しい ですが、相当の根拠が必要であるとのご議論がありました。今回の論点は、(1)として先ほどの調 査結果を踏まえ、どういった項目を点呼で確認すべきか。(2)として睡眠の関係を点呼する場合、 どのような方法でどういった基準で点呼すればいいのか。あるいは点呼で問題があった場合にど うすればいいのか。もう1つ睡眠の関係ですが、点呼で駄目だった場合は駄目なわけですが、そ もそもきちんと睡眠を確保させるためには、どういった方策が考えられるのかについてご議論い ただければと考えております。  次は、検討事項3「荷役作業」です。前回の検討会では、荷役作業を毎回実施する、あるいは 中程度の負荷以上の荷役作業を行うと事故が増える傾向があるということでした。今回の調査結 果では、海外文献は数が少ないですが、1つの調査についてはお示ししました。前回のご議論と しては、荷役作業と事故のプロセスがよくわからないとのご指摘があったのと、時間管理と明確 に位置づけるのは難しいのではないかとのご指摘がありました。このようなことを踏まえ、論点 としては、荷役作業を実施させる場合にどういった形で休息時間を考えるか、要は疲労の回復を どのようにするのかということがあります。また、荷役作業そのもの、負荷のない安全な作業を するには一体どのような方策が考えられるかについて、ご議論いただければと考えております。 ○根本座長 論点がたくさんあって大変ですが、これは順番にやっていくのが早道でしょうか。 ○安井技術審査官 重要な順番に並んでおりますので。 ○根本座長 それでは、走行管理の走行計画関係の1頁の論点(1)走行計画の作成・遵守するため の課題は何かについて、いかがでしょうか。質問の趣旨は、ペナルティはこの趣旨に合っている か合っていないかということなのでしょうか。 ○安井技術審査官 今回、走行計画の遵守が難しい理由がいくつか挙がっておりますので、そう いったものの妥当性や、それ以外にも何か理由があれば挙げていただければと思います。 ○根本座長 アンケートの結果で、作るのが難しい理由は明らかになっているわけですが、この 結果を見て、そうではないだろう、もう少し頑張ってほしいと言うのか、仕方ないと判断する か、その辺りの評価の問題ですね。 ○安井技術審査官 具体的に言うと、1頁の(4)の調査結果では、「目的地・時間等が一定でな い」「道路状況等の変動が著しい」という理由があります。また、3頁の調査結果(2)ですが、 「納入時間の遵守」「荷主の都合」「道路渋滞」「発注時間不定」といった、主に荷主関係のも のもあります。それぞれのものについて、これ以外に課題があるのかないのか、(2)と一緒にそれ に対してどのような対応が考えられるかをご議論いただければと思います。 ○高橋委員 論点の(1)から(5)までは、全部関連していると思うのです。個別に1つひとつ議論し ても難しいと思うので、具体的にメッセージを出すという観点から言えば、(3)の具体的に何を盛 り込めばいいか。いろいろ難しいけれど、少なくともここだけは押さえてください、ここだけは 大切にしてくださいと言うほうが分かりやすいかもしれないですね。 ○根本座長 走行計画が事故を減らすのに役に立っていることがわかってきた中で、走行計画の どこが役に立っているのかを改めて確認できれば、そこを重点的に事業者にお願いすることはあ ると思いますが、いかがですか。安本委員、走行計画をこのように活かしながら事業者に啓蒙活 動していったらどうかという観点で、何かご意見があればお願いします。 ○安本委員 業界全般的な、路線を持たない難しい区域での配送等業務における走行計画ができ にくい理由が、難しいという概念に捕われて最初から取り組まない業者も多いと思うので、ピン ポイントで大切な項目だけはやってくださいという形で絞り込めば、切り口になると思います。 ○根本座長 いま、そういう意味で、休憩時間を書いてください、運転に際して注意をする場所 を書いてくださいというのが候補に挙がっていますが。 ○安本委員 できている部分もあるわけですから、全部が全部できないわけではないので、こう いったことで何ができないのかをもう一歩掘り下げれば、できることにつながっていくと思いま す。 ○根本座長 高橋委員、中村委員、このようなことを書いてもらったらどうかということはあり ますか。 ○中村委員 従来どのような形で進めてきたかという項目を、もう一度振り返る必要があるとは 思うのですが、計画を立てなさい、それを守りなさいと言っても、計画をしてもどうせ守れない のがわかっているのなら、立てなくてもいいではないかとなるのが普通ですね。現在、確かな目 的地や時間が一定ではないとしても、ここ数年でいろいろな情報が事務所にいながらにして手に 入れられるようになっていますね。インターネットの道路情報であったり、カーナビゲーション であったり、そういったものが増えていますから、以前よりももっと計画を立てるために利用可 能な情報が増えているのではないかと思うのです。  道路状況の変動が著しいことがあったとしても、ある一定範囲であれば、曜日や天候といった 要件を噛み合わせていけば、まさしくドライバーの経験も入ってくると思うのですが、変動の幅 もかなり予測できるのではないかと思います。そのような意味では、とにかく計画を立てろ、そ れをきっちり守れとだけ言うのではなく、そこにある計画は当然そのときの状況によって変更あ りきであると考えるべきです。変更ありきのときにもポイントが必要になってくるわけです。  守れない計画を立てろとは誰も言いません。守ってほしいから計画を立ててほしいのです。た だ、その計画を立てるときに、守れる計画を立てるためにどんな情報が、これだけ使えるものが あるではないかともっと情報提供していくとか、何らかのモデルケースを示すということが1つ あります。冒頭からお話があるように、計画を立ててそれを遵守することによってこれだけのメ リットがある、具体的には事故がこれだけ減っているといったことがどんどんPRできる、そのよ うなものが必要になるのではないかと思います。  ここで言われている、計画を立ててそれを遵守しようとすることによって、当然そこでいろい ろ手間はかかりますが、それを超えるだけのメリットがこれだけあるといったものを具体的に示 すことができれば、より進められるのではないかと思います。そこが、いまのところはっきり分 からない、あるいは守れなかったらペナルティがあるのではないか、だったらうやむやにしてお いて、守るためのものも作らないほうがいいのではないかという流れになっていくとすれば、計 画は立てないでしょうし、守ろうとしないということになるのではないかと思います。  荷主との関係からいくと、国交省のほうで示していただいている安全運行パートナーシップが あります。運ぶ側からすれば、荷主の要求は、たとえそういったものが示されていても、パート ナーシップがあるからお断りしますとは言えない状況がありますから、パートナーシップを持ち つつも、どうしても不安全なことはできないと説明できるだけの材料は必要になってくると思い ます。 ○根本座長 ありがとうございました。前半にご指摘いただいたのは、ITでリアルタイムで場所 がわかるといった話がある中では、以前よりもっと計画を作ったり、それで運行管理ができやす くなっている、それが計画に活きないでしょうかという話ですね。高級な貨物は、それだけ費用 をかけて管理できるでしょうが、一般的にトラックにはカーナビゲーションのような装備をつけ るのが難しい面もありますね。前よりは、だいぶリアルタイムでの管理は増えているのですか。 ○三浦委員 増えています。論点の(6)にデジタコとアナログタコメーターの項目がありますが、 デジタコを車載機として使った場合、その車の軌跡管理、1日走ったコース、電波を飛ばす装置 をつければ動態管理ができます。あるいは、そのシステムを送配システムにつなげると自然に絵 が描けます。危険地域もデータとして入れておけば、もちろんこれから開発しなければいけない のですが、理論上はすぐできるところまで来ているので、IT化を図る必要が今後出てくるのでは ないかと思います。ただ、初期投資費用がかかるので、事業者がどれだけ負担に耐えられるかで す。しかし、IT化が進んでいけば、こういう帳票がすぐ作れるシステムにはなってくると思いま す。 ○根本座長 曜日や時間帯別の交通状況に関する過去のデータに基づいて、これぐらいかかると いうことがわかるのですか。 ○三浦委員 当日カーナビに条件を入れると、いま出発するとB地点に何時に到着予定で、ルー トは5ルートあって、そのうちのこのルートを選べばというのは出ます。それはデジタコなどの 機能を持たせていけば、IT機器で全部出る仕組みにはできます。業者によっては、拘束時間管理 もある程度車載機により行えるようにしている業者もあります。 ○根本座長 そうすると、運行計画は、例えば午前中に出発する直前、例えば5分前にその日の 交通状況を把握して作る、午後の便は、1時に出るときには12時55分にその日のデータに基づい て走行計画を作ると、そのようなことで、いままでの走行計画とはだいぶ違ってくると思います が、そうなれば守りやすくなるだろうし、管理しやすくなりますね。 ○三浦委員 休憩場所を前もってその事業者のデータの中に入れておけば、時間によって、大体 このぐらいになるから、B地点で休憩を取りなさいといった指示ができます。その日帰ってきて 走行データを見れば、計画どおり走ったかどうかもチェックできます。 ○根本座長 それはすばらしいですね。ただ、それが可能なのは大きな事業所ですね。 ○三浦委員 ですから5、6万社あまりある事業者の中で、そのようなシステムを入れられるとこ ろは限られてくるのではないかと思います。 ○中村委員 ある一定範囲以上の、長距離や中長距離でやる分には、そのような管理は活きてく ると思うのです。ただ、戸別配送やルート配送、ある限られたエリアを同じルートでずっと回っ ているところが、カーナビをつけてリアルタイムで情報を取ることまで本当に必要かとなると、 そこまで要らないのではないかと思います。大体、あそこはこの日のこの時間は大体渋滞すると か、今日こんなイベントがあるからあそこは渋滞するというのは、前もってわかるわけです。そ れは別にカーナビに入れていなくてもいいのであれば、そこでそういった情報を集めた上での運 行管理はあっていいと思うのです。  なおかつ、先ほど戸別配送の場合には運行管理が非常に計画を立てにくいというお話がありま したが、中長距離のものと同じ運行管理の計画を立てようと思うこと自体が、まず無理なので す。戸別配送であれば、営業所を出てから何軒目までの計画はこうだと、何軒目以降、ここから ここまでの計画はこうと、1日に複数の計画が連続してある。その中でいくつかの変更点は当然 入ってくるということを前提にした上で、基本は本日の運送計画は午前、午後、昼過ぎ等で5本 あると。そこで変更があった場合の運行計画はこうと。  計画を立ててそれを守ろうとするほうが手間なのか、計画など立てても仕方がないから、とに かく走ってしまえというほうが楽なのか、いろいろだと思うのです。そこで計画を立てて、そこ で危険予測のポイントなどもやった上で、それに従って変更すべきときがあれば諸手続きを取 る。いわば計画を立てて守ろうとすること以前に、計画を立てようとすることに見通しをはっき りさせようと。その中で、先ほどお話があったリスクアセスメント的な活動も入れていこう、と いったことをやるほうがメリットが大きいのであれば、そこは運送の規模や距離、エリアによっ てやり方を大きく変えていく方法が1つあっていいのではないかと思います。 ○根本座長 そうですね。長距離と域内の宅配とは違うわけで、いまは1つの言葉でいろいろな ものを表現しようとしているから、そこをいくつか分けて、ガイドラインの中で例示する必要が あるかもしれません。長距離はこうで、宅配はこのような決め方が1つのパターンとしてあるか もしれないとか、業務の内容で区別するのもあるでしょう。また、前日に作る場合と5分前に作 る場合など、いろいろな情報の活用の仕方で松竹梅のいろいろなコースがあると。それを全部松 でやれというのは無理でしょうから、いろいろなパターンの取組みがあり得るのではないかとい う示し方をすれば、事業者にとってよりわかりやすくなるかもしれません。それが1つの方向の ような気がします。ここにも、路線と区域で区分けして、両方違った書き方をしたほうがいいの ではないかと書いてありますね。 ○安井技術審査官 おっしゃるように、路線のほうが細かく定めやすいです。路線では定められ るし、定めるべきだと思います。一方、区域はこの中からピックアップして、これはできない、 これはできないと除いていくということではないかと思っております。その1つの例として5、6 点ぐらい出しておりますので、これをご検討いただければと思います。 ○根本座長 6点とは何ですか。 ○安井技術審査官 論点の(3)に、走行計画に定めるべき内容ということで5点ほど挙げておりま す。この2つの○が、データ的に皆さん支持されていたところだと思います。 ○平野安全課長 いままでの議論は、運行の形態によって、走行計画の内容について分けたほう がいいのではないかという議論になっていると思うのですが、そのときに「路線」と「区域」と いう分け方はこれでいいのでしょうか。 ○三浦委員 事業法上は、いまは一般と特積みという分け方になっていると思います。以前は許 認可だったのですが、いまは届出で事業ができるようになっております。 ○平川委員 ここではっきりしたほうがいいかと思います。路線とか区域という言葉を使ってい ないですね。字句なのですが、(4)に「走行計画の内容を、路線と区域で区分する場合」とありま す。いま国交省の方がいらっしゃいますが、「路線」と「区域」という言葉は使っていないです ね。例えば、路線については特積み(特別積合せ)という言葉に変わってきているのです。この 辺りは、人によってはよくわからない部分があるのではないでしょうか。 ○平野安全課長 これにこだわるわけではないので、いまの議論で運行形態によって作れる走行 計画の中身も変わってくるだろうと。そのグループ分けとして、どういうグループ分けがいちば ん適切なのかという問題意識を持ってご質問したのです。 ○平川委員 ですから、路線、これはいま特積みと言いますが、ここで言う区域は分けるべきで しょう。なおかつ、区域の中でも宅配という部分があるわけです。その辺りはいろいろ問題があ るので、分ける必要があるのではないでしょうか。 ○平野安全課長 いまのお話だと、区域といっても宅配のように毎日違う所に配送するのと、同 じ所を毎日行っている場合と、この2つは分けるべきであると。 ○平川委員 特に宅配の場合は、皆さんご承知のように、ドライバーが荷物を見て、今日はこう いう路線で回ろうと仮に決めたとします。しかし、配達に行ったら留守なので、途中で電話を入 れて変更と、こういうことが伴う。そのような意味では、走行計画を決めるのは非常に困難で す。単なるモデル的なものは当日作れますが、常に変更が伴う部分があります。 ○安井技術審査官 特積みは、必ずしも長距離に限らないですね。要するに、行き先が決まって いるものを特定と言うのですね。 ○三浦委員 そうですね。積合せの事業ですね。 ○根本座長 この分け方について、何かご提案があればお願いします。 ○山崎オブザーバー 基本的には、まさにガイドラインの反映の話なので、別に国交省のやり方 を承認してほしいと言うつもりはありませんが、いまの事業法体系の中では、いま議論になって いる特積みと一般に分かれています。一般の中で、実態として先ほど平川委員から話があった宅 配型のものと、それ以外のものとに分かれていると。役所的ですが、それが実態だということに 尽きてしまう気がします。 ○三浦委員 おっしゃるとおり、特積みと言っても近距離の特積みももちろんあります。 ○安井技術審査官 ルートが決まっているという意味では、どちらかというとルート配送に分類 されますね。そうでもないのですか。 ○三浦委員 運送業者にとっては、少しニュアンスが違います。ルート配送とは、例えばビール を工場から出して問屋まで持っていって、問屋からルートに乗せて酒屋を回るといったイメージ で使っております。 ○根本座長 路線とか特積みは、定期貨物列車のように、同じ時間にターミナルからターミナル へ配達に行くものですね。運行ダイヤが毎日確定しているものは、定期便ですね。 ○平野安全課長 では、引越しの荷物を運ぶのは、特積みにはならないのですね。 ○三浦委員 なりません。貸切です。 ○山崎オブザーバー 引越しも、一部は特積みになります。長距離の場合は特積み区間が入るの で。 ○安井技術審査官 走行計画について、論点1の(3)ですが「運転の開始及び終了の時点及び日 時」とありますが、これはないと話にならないと思うのです。主な経過地や発車・到着の日時に ついては、業態によって書けるところとそうでないところがあるというところだと思います。運 転に際して注意を要する箇所も、一般的に書けると言えば書けますが、それと経路を結びつける のは、できるところとできないところがあると思います。休憩時間については、時間ですから、 どのような業態においても定めれば定められるのではないかと思います。休憩場所も、もともと 定めないほうがいいとの結果もあるので、定めるとしても業態によって定められるところと、そ うでないところがあると思います。ほかに、何か定める必要のある事項はありますか。 ○高橋委員 少しずれるかもしれませんが、先ほどの特積みと一般の分け方について、平成6年 のガイドライン上は一運転連続時間4時間とありますね。それを超えるか超えないかというの は、1つのメルクマールになり得ませんか。たぶん、ルートや配送は、一運転時間が4時間を超え ることはほとんどないと思います。 ○根本座長 計画上、それはしないようにしていますね。 ○安井技術審査官 おっしゃるとおり、休憩時間になって、いつどの頻度で休憩時間を取るかは 裏表ですので、休憩時間を定めるときに、当然連続運転時間を超えないように休憩時間を定める 形になりますね。 ○高橋委員 そこを決めれば、ある程度ほかも自動的に決まってしまう部分もあるというか。 ○安井技術審査官 拘束時間はまた別の概念なので、少し違います。連続運転時間でない本当の 運転時間の限度はありますので、それは別の縛り方が必要ですね。 ○根本座長 その話は、1-2の勤務関係のほうですね。1番はそんなところでいいですか。 ○安井技術審査官 はい。 ○根本座長 いま少し2番の話が始まりましたが、「勤務条件関係」では拘束時間と運転時間の 遵守は安全上大切なので、是非ということですね。これまで出された意見としては、荷主の要望 で守れない場合があったと。この課題をはじめ、どうすれば守れるかなど、どのように書き込ん だらよろしいでしょうか。 ○三浦委員 難しいですね。運送事業は季節的な波動があって、繁忙期になると月の293時間は ほとんど守れない状況になります。年間の3,516時間は何とか守らせようと、枠内に収めようと 努力はしているようなのですが、それも難しい状況にはなっております。経済面を優先すること もあって、人を絞って仕事をすることも前提になっていて、本当は遵守しなければいけないので すが、現状としては守られていないのではないでしょうか。 ○安井技術審査官 拘束時間となると、荷積みの時間や待機時間も入るわけですが、そういった ものを合理化するのは難しいのでしょうか。 ○平川委員 聞いた話ですが、待機時間、着地点へ早めに着いて、荷卸しをするのに車の順番が あるのです。ですから、早く届け先に着いて待っているのです。それでなければ、ぎりぎりに行 けば当然遅くなるわけですから、早めに出て早めに目的地に着いて、そこで待機をすることが実 態としては非常に多いのです。だから、拘束時間が長くなってしまうことがあると聞いていま す。 ○根本座長 それは、荷主がもう少し融通を利かせて、多少早く着いてもちゃんと荷受けしても らうとか、荷主にお願いして解決できる部分も多いのですか。 ○平川委員 あります。 ○根本座長 道路混雑が緩和すれば、あらかじめ遅れを見込んで早めに出なければいけないこと が減るから、混雑が減ればそういう無駄な時間も減るのかもしれません。ただ、ここでガイドラ インに書き込むとすれば、どうなるのでしょうか。荷主のことをあまり書いても駄目なのでしょ うね。 ○安井技術審査官 荷主の部分は後ろのほうでも出てくるので、荷主にお願いする事項について も書き込むことは可能です。 ○根本座長 全般的な経済情勢の中でどうしても時間が長くなるのは、少し解決が難しいと思い ます。どのように書けばいいでしょうか。 ○安井技術審査官 要は、できるだけ効率を上げていく方向だと思うのですが、荷主にご協力い ただく側面もあるでしょうし、運送業者で何とかなる事項もあるのではないかと思います。運転 にしても、わざわざ混んでいるときを狙って走るのか空いているときを狙って走るのかによっ て、運転時間は全然違いますし、運転時間や拘束時間を減らすための努力はあり得るとは思うの ですが、そういったことについてお知恵を拝借できればと思います。 ○根本座長 企業努力の中で、そういう合理化はすでにされていますね。わざわざ混んでいる時 間に行くというのは、どういう意味ですか。 ○安井技術審査官 もちろん、荷の指定時間の問題もあるとは思いますが、夜走れば基本的には 運転時間は短くなりますので、そういったことをどこまでできるかだと思います。それは荷主の 協力が必要な部分も当然あると思います。 ○根本座長 ドライバーによっては、夜の空いている時間が好きで、時間指定が緩い場合は夜に 走るドライバーもいるのですか。 ○三浦委員 もちろんいます。 ○安本委員 大体、夜走り、朝着けというのが多いのです。 ○根本座長 距離が稼げますからね。 ○安本委員 荷主からも要望されています。 ○根本座長 朝一で荷物がほしいということですね。そういう意味では、効率的に短い時間で運 べるようにする努力は、すでにかなりしてきている感じですかね。 ○安本委員 考え得ることは、みんなやっているのではないかと思います。 ○中村委員 逆に、最近夜中の高速道路のほうが混雑していることもありますからね。 ○三井委員 過積載すれば、おそらくかなり減るだろうとは思いますが、そういうことは絶対で きませんので、かえってそれを守れ、守れと言うと、業者としては逆にそちらへ行ってしまうの が恐いですね。 ○中村委員 非常に矛盾してしまうのですが、おっしゃるとおり、過積載と速度違反をすれば運 転時間は短くなります。 ○平川委員 高速道路を使えば、当然拘束時間は短くなるわけですね。しかし、そのためには高 速料金がかかり、そのコストをかけられないから、最近は下道を行って拘束時間が長くなるとい うのも、実態としては出ています。 ○根本座長 その辺りは、今度荷主の協力を得て、その部分をご負担願う契約ということです ね。 ○中村委員 いままでの話を伺っていると、すべて計画のほうに一元化されてくるのかなという 気もしなくはないですね。というのは、単にこのトラックは時速100kmまで出るから、1,000km離 れた所は10時間で行けるはずだという計画の立て方は、ちょっと考えればしないはずです。当 然、拘束時間や休憩時間、道路状況、天候などいろいろ考えて計画を立てるわけです。そのとき に、本当にドライバーにとって疲れがなるべくたまらない、より安全に運転できる計画をどう立 てていくかとなった場合、拘束時間や運転時間は考慮せざるを得ない、するのが当然になりま す。となると、その中でやっていくぐらいしか言いようがないのかなという気がするのですが、 あまりここばかりに特化してしまうと、非常におかしなことになってしまう気もするのです。 ○根本座長 これだけで最適化しようと思うと、それは無理ですね。時間の関係もあるので、い まの議論を整理いただいて、次回考えたいと思います。  次に、点呼についてです。点呼に関しても、睡眠をちゃんと取っているかという意味で大事だ ということになってきているわけです。論点が(1)〜(4)とありますが、点呼項目、睡眠不足の把握 の是非、点呼で問題があった場合の措置、必要な睡眠を確保させるための方策、この4つは相互 に関係がありますので、何かご意見があればお願いします。 ○高橋委員 前回の議論では、睡眠のことはプライベートなことだから、事業主がどこまで聞け るか、どこまで踏み込めるかの問題があるという話でしたが、オフの時間に関しては、事業主が それを確保できるような走行計画を立てられないでしょうか。その中で、何時間きちんと睡眠を とればいいのかということになると思いますが、この検討会の中で6時間がいいとか7時間寝なけ ればいけないとは、たぶん言えないのではないかと思います。それだけの保証をする科学的なデ ータがまだ蓄積しておりません。ただ、少なくとも、このぐらい取らないと事故の起こる率が何 倍になっている、ということを周知はできるし、それで啓発は可能だと思います。 ○根本座長 そうですね。その辺りが結論になってくるのかなと思いますが、点呼を具体的にす る中で、睡眠の扱いはどこまで可能でしょうか。 ○三浦委員 ヒアリングですね。朝の点呼時に「休養は十分取れましたか」と聞いて、「十分取 っています」という返答が返ってくれば、健康状態はいいだろうと○をする。アルコールチェッ カーのように数値で出ればいいのですが、それは難しいですから。 ○高橋委員 現状で、何時に寝て何時に起きたのかを記録することは可能ですか。点検ノートみ たいなものはいかがでしょうか。 ○三浦委員 それは、朝、個人に聞くしかないですね。 ○高橋委員 アルコールチェックで何パーセントと出たのは、記録しているのでしょうか。 ○三浦委員 数字で付けています。 ○高橋委員 そこで、ほとんど寝ていないのに7時間寝ていると嘘をついたら、それはある意味 ドライバーの安全に対する無責任な部分ですね。記録するのが1つのツールだと思います。 ○根本座長 抑制効果ですね。 ○安井技術審査官 おっしゃるように、記録をして、1カ月ぐらい経って君は睡眠時間が短いか ら持続的に指導するとか、周知啓発をするというのもあると思います。ただ、我々が気になるの は、睡眠時間3時間とか、極端に短いことを正直に申告したときにどうするかというと、やはり 運転しろと言うべきではないと思うのです。 ○根本座長 それは、データ的には難しかったでしょうね。駄目とは言えないでしょうね。 ○安井技術審査官 ラプステストでは相当リスクが高いという結果が出ています。 ○高橋委員 3、4時間を切るのは、まず間違いないと思いますが。 ○根本座長 間違いないというのは、どういうことですか。 ○高橋委員 間違いなく不安全だということです。いつ事故が起きてもおかしくない。中にはス ーパーマンのような人がいて、安全走行ができる人もいるかもしれませんが、非常に事故のリス クを高めるでしょう。そういうドライバーをトラックに乗せてしまう事業主、乗ってくれと言わ ざるを得ない状況もあるのかもしれませんが、それで事故を起こしてしまったら、自分のトラッ クが転けるだけでも悲劇ですが、人を巻き込んでしまったら誰がどう責任を取るのか。実際、そ ういう事件が起きているわけです。 ○平野安全課長 睡眠の時間に関して、睡眠が短ければ事故につながることは確かですが、その 中で個人の睡眠時間を会社が把握すること、プライベートなことについては十分に議論をいただ く必要があると思います。本人が寝ていないのだと、十分休息していませんと言うのを聞き取る のと、会社のほうで個々人の運転手の睡眠時間を把握しているのとは、だいぶ違う話だと思いま す。  国土交通省の方にお聞きしたいのですが、もっと一般公衆の安全について重い責任を負う電車 の運転手等に関してそこまで鉄道会社で把握をするのでしょうか。 ○山崎オブザーバー 鉄道の状況は私も把握しておりません。参考資料でお渡ししている基本的 考え方の11頁に、点呼の記録簿の記載事項が書いてあります。この中では、運転者の疾病、疲 労、飲酒等の状況ということで、具体的な時間までは求めていないのが現状です。求めるべきか という議論になると、いまのうちの中ではそういう状況まで至っていないのが現状ではないかと いうのが、正直なところです。  これまでの規制緩和の流れの中で、それこそ箸の上げ下ろしの部分まで規定をするべきなのか という観点から言うと、いまの法制度上はまさに状況を把握すること、危い者については運転を しないように、必要な指示をしなければいけないという規定の範囲の中で、あとは事業者の判断 でやっていただいているのが現状だと思います。それを本当に規定すべきではないかというの は、議論していただいて流れに沿うのがラインだと思いますが、なかなか苦しい感じですね。  一方、睡眠時間が短いと安全上危いという話は、定説的には皆さん認識されていると思うので すが、具体的なデータとして出ているのは本当に新しい知見だと思うので、このようなものを講 習や指導の機会に活用して、安全の意識を高めてもらう方向に持っていくのは可能かと思いま す。いまのガイドラインの議論からは離れてしまうかもしれませんが、そのような印象を受けま した。 ○根本座長 国交省は、事業者の判断で、自己責任の範囲の中でそのようなことを気にするのな ら聞いてもいいけれど、それは法律で定める事項ではないだろうというお考えですね。 ○高橋委員 ただ、資料3の20頁の2003年のデータですが、安井技術審査官が指摘された3時間が どのような影響かが如実に現れています。上段のラプスでは、運転のパフォーマンスと関連性が 高いもので、刺激に対して0.5秒経っても反応できない。これは運転で言えば赤信号がともった らブレーキを踏む、前に止まっているトラックがいたら、そこでブレーキを踏むというのは基本 的な機能かと思うのです。  通常ですと、我々は赤信号もしくは前にトラックが止まっているという刺激が出たら、大体 0.15〜0.2秒ぐらいで反応できるのです。これが倍以上の0.5秒経っても反応できないというの は、頭がボヤッとしているか、場合によっては居眠りをしているか、脳が寝ているかということ なのです。その回数を見ると、3時間睡眠の人は平均で5回ぐらい、こういうのが起きてしまうと いうことがデータとして出ている。こういうテストの結果ですから、もちろん、これが本当の運 転能力、運転のパフォーマンスとどれだけ関係するのかはわかりません。しかし、我々の体の中 では、こういう状況になっているということです。 ○安井技術審査官 いまご議論いただいて思うのは、ある程度2つには分かれるのではないか と。要するに、多少の睡眠時間ぐらいあれば、それは事後的に指導するとか、それこそ周知啓発 の世界かと思うのです。ただ、「徹夜しています」とか、自ら申告してきたときにどうするかと いうのは、ちょっと分けて議論をしていいのではないかという気はするのです。  先ほど国土交通省の資料の10頁には「睡眠不足の状況については確認する」と、通達レベルで は書いてありますので、確かに何時から何時まで寝たというのを聞く必要はないと思いますが、 睡眠不足かどうか、要するに何時間寝たかをとりあえず把握した上で、著しく短い場合には何か 特別の措置というようにランクを分けて書くのは、ある程度必要ではないかという気もするので すが。 ○根本座長 なるほどね。この「著しく」というのも、時間を特定しなくてもよいのでしょう か。 ○安井技術審査官 ちょっと数字は難しいかもしれないですね。 ○根本座長 そういう2つの考え方があることは、書いておくということですね。 ○平野安全課長 先ほど具体的に三浦委員がおっしゃった例として、「休息とれましたか」な ど、ヒアリングをするときに、「寝てないんです」とか、「ほとんど寝てないんです」というこ とになったら、健康の欄か何かがペケになって、そうなると乗務させないということになるので すか。 ○三浦委員 ただ、ドライバーも社員なのです。ですから、翌日に乗務しなければならないとな ると、2時間、3時間の睡眠で会社に来るようなのはあまりいないのではないかと思っているので すね、性善説なのですが。例えばアルコールチェッカーで数字が出ました、睡眠不足で乗せられ ませんとなったときに、今日動く車両、荷物は誰が届けるのかというと、代わりのドライバーは いないのです。そのときに、関係先に電話をして、別の運転者を集めて積み替えていくのか、課 題ではその辺が1つ出てくるのではないでしょうか。 ○安井技術審査官 おっしゃるとおり、そういう状況になるのは極めてよろしくないわけです。 それは我々の資料の4頁の(4)にも書いてありますが、必要な睡眠を確保させることがまず第一だ と、それが大前提としてあります。そこは著しい睡眠時間不足がある場合に運転させないという ものとペアで、そういう状況を発生させないためにどうするのかというのは、ここで議論する必 要があると思います。 ○平野安全課長 いまのお話だと、現在の経営状況だと、乗務させてはまずいという人が出てき ても、代わるような人的な配置はもうほとんどできない状況にあることは。 ○三浦委員 事業者によっては、できていないところが多いのではないでしょうか。 ○高橋委員 ちなみに、調査で直近3日間の睡眠と勤務の状況を調べたところ、いちばん直近の 勤務の前24時間に、5時間未満、5時間の睡眠を取っていないのが14%。その平均は、睡眠時間が 2.3時間という状態。 ○根本座長 そういう方もいらっしゃるということかな。 ○中村委員 睡眠時間が非常に事故に関連性が高いということはよくわかりますし、それを自己 申告させるか、させないかという問題はまた別だとは思うのです。例えば「お前さん、昨日はち ゃんとよく眠れたかい」、「いや、実はあまり寝てないんです」。「何やってたんだ」、「い や、好きなテレビがあったので、ずっと見てました」、あるいは「友人が来たので遊びほうけて ました。だから寝てません」。「じゃあ、お前、今日、乗務外すぞ。当然、給料も出さないぞ」 と、これはわかりますよね。もう自業自得だろうと。  中には、例えば「昨日ゆっくり休めたか」、「いや、実はゆっくり休めてないんです」。「ど うしたんだ」、「いや、家族の中に病人が出ちゃって、私がやらなきゃどうしようもなかったん です。ろくに寝れなかったんです。今日は疲れてます」、「じゃあ、お前、乗務外す、給料出さ ねえ」と。「ちょっと待ってください。うちの家族が路頭に迷っちゃいます」というとき、どう しましょうということも、当然出てくると思うのです。そこまで含めて、「でも、ガイドライン にお前、こう書いてあるだろう。だから、お前は給料出さないし、首だ」と言ってしまっていい のかというところは、また別問題だと思うのです。 ○高橋委員 ただ、アルコールの場合は、法定の濃度以上の血中濃度であれば、絶対乗せたらい けないわけですよね。 ○中村委員 アルコールの場合は、飲むか飲まないか、自分で選択できますから。逆に飲んだ状 態で会社に出てくるということは、確信犯ですよね。 ○高橋委員 そうですね。 ○中村委員 例えば、病人がそこで苦しがっているのに、「私は明日、勤務がありますから、私 は睡眠を確実に取らせてもらいます。ごめんなさい。寝てます」というわけにいきませんよね。 ○安井技術審査官 制裁措置の議論をするとちょっと難しくなりますが、もちろんガイドライン で制裁しろなどと書くことは絶対ありません。ただ、そういうやむを得ない事情によって睡眠不 足になっている場合も、多々あるということです。そういう意味では、どのような理由であって も、著しい睡眠不足は事故につながる可能性が高いですから、そこはやはり規制せざるを得ない 側面はあるのではないかとは思うのです。 ○中村委員 例えばガイドラインの中に盛り込んでいくとするのであれば、従来、確かに睡眠不 足は良くないということはさんざん言っていたわけなのですが、もっと具体的に、ここで議論し ているデータの裏付けを出していって、実はこのぐらいの割合でこれだけ確実に良くない影響が あるのだというところを1つと、例えば事業主に何かを求めるとするのであれば、当然そういっ た状況もあり得るでしょう。それに対して、「そうなったら知りません」ではなくて、「事業主 の責任として、何らかの措置を講じる努力をしてください」といったようなことぐらいは、書い てもいいのではないかと思うのです。  もう1つは、それがほかのところもかかわってきますが、ドライバー個人の責任ではなくて、 事業主の管理責任の中にも一部入ってきますというところは、観点があってもいいのではないか と思います。 ○高橋委員 実際、例えば14.3%の5時間未満の人たちが、個人的な理由で、自分のお楽しみで よく寝ていないのか、あるいは仕事上やむを得ず寝ていないのかというのは、これはわからない ですね。これは両方が努力しないと、労使で双方でできるだけ確保するという目標で進んでいか ないと、たぶん解決しない。どちらかだけでは解決しないと思います。 ○根本座長 少なくともだいぶデータが蓄積していく中で、極端に少ない睡眠時間は危ないとい うことを、もうちょっと周知徹底して皆さんに理解してもらう。そういう意味にこのガイドライ ンが使えればいいと思うのです。だから、文言で書いて、プラスアルファのデータを付けるみた いな話が本当は重要かもしれないですね。 (休憩) ○根本座長 再開します。いま休み時間の中で大事な議論が1つあって、ラプスのチェッカーは そんなに高くないかもしれないと。今後、導入を考える事業者、大手の事業者やトラック協会な どというところは、いいかもしれないということは、ちょっと議事録に付け加えておこうかと思 います。  3、4ですが、荷役に関しては、論点が、荷役作業を実施させる場合に休憩時間への配慮を考え るべきか、荷役作業の適正化のための措置として以下のものは適切か、です。いかがでしょう か。 ○安井技術審査官 現状で、荷役をさせるから、させないからということで、何か休息時間など といったことに配慮はされているのでしょうか。 ○根本座長 荷役が前提だと、やはり時間枠を取って、休憩時間を後ろ倒しとか、当然されます よね。 ○安井技術審査官 当然そうですね。特定できない場合もあるのです。行ってみて初めてわか る。 ○根本座長 そのときは、臨機応変に、また休憩時間をそれに合わせて取らなければいけないと いうことですかね。問題は、荷役がどの程度かかるかということが予想できないケースがあっ て、困るということですね。 ○安井技術審査官 やはりきつい荷役作業をしたあとになるので、休まないと集中力はなかなか 持続できないと思うのです。そういうところに何か配慮というと、きつい荷役のあとには休憩時 間を入れるなどというのはあるのでしょうか。 ○安本委員 一例には言いにくいのですが、近年といいますか、どうしてもオペレーターが高齢 化している。前のオペレーターのイメージと、いまは随分と違っているところもありますので、 そういった荷役を含めて全般的な個人に対する配慮というのは、相当していかないといけないよ うな状態になっているのですね。昔に比べて、いま通信機器といいますか、携帯電話にしてもそ うですし、最たるものはユビキタスみたいなものがありますが、いろいろな情報がキャッチでき るといった配慮は、しやすい状態になっていますから。 ○三井委員 助手みたいなものを使うことはないのですか。先ほどの睡眠不足の件もそうなので すが、助手を乗せていて、常に話しかけたりして、あまりひどかったら電話するとか、そんなに 専門的でなくてもいいと思うのですが、あるいは先ほどの荷役についても、半分ずつやって軽減 されるなどという対策はやっていないですか。 ○安本委員 そういう贅沢な配置はなかなかできません。 ○中村委員 そこで人件費を1人分増やすぐらいなら、フォークリフト1台買ったほうがいいとい う話になってくるのではないですか。 ○安本委員 育成期間であるとか、教育期間であるなどという場合はそういったことはありま す。 ○安井技術審査官 バスの場合などは、深夜運転するときは、交代のドライバーを乗せている場 合がかなりあると思いますけれども。 ○安本委員 それは特定の制限があるからです。 ○安井技術審査官 トラックの場合も、そういう規制はあるのですか。 ○安本委員 トラックの制約はないですね。 ○根本座長 ですから、ガイドライン上は、1について言うならば「適切に配慮をしてくださ い」という書き方ですかね。それ以上、具体的に何か書けるかというと。 ○安井技術審査官 書くのはいいのですが、「適切に」というのは何ですかと必ず聞かれますの で、具体的に内容がわかってからでないと書けないのです。結局、休憩時間、あるいは休息時間 に尽きるとは思うのです。あるいは、2にあるように、負荷をいかに小さくしていくかという問 題も当然ある。ある程度具体的に、こういうのが考えられるというご議論をいただきたいです。 ○中村委員 あらかじめ荷役作業が含まれているというのであれば、当然それは計画に反映させ なさいといけません。計画の中では、休憩であったり、休息であったり、時間を十分確保しなさ い。もしあらかじめ計画されていなかったときに荷役作業が入ったのであれば、必ずそこで休憩 のための計画変更をしなさい。変更についての手続きは、こういったものを行いなさい。あと は、荷役作業による負担を減じる措置を講じてください。機械化であったり、あるいはおっしゃ ったように、助手でなくても、荷受人というのが大体いるわけですよね。そういった方々を配備 してもらうなどといった形をとってください、ということになってくるのかと思うのです。 ○根本座長 整理していただいてありがとうございます。短期的には、計画に載っていないもの については、その場で計画を変更して対処してください。そういうことが日常的に起こるようだ ったら、それはちゃんと機械化するとか、荷主の協力を得るなどという抜本的な措置をとりなさ いと。それも二通りの対策が考えられますね。よろしいのではないですかね。次にいきましょう か。安全衛生教育、これについての論点は何ですか。 ○安井技術審査官 検討事項4以降はまだ説明していませんので、検討事項9まで説明させていた だきます。検討事項4は「安全衛生教育」です。前回の検討会では、「運転者認定制度」「運転 者教育」の項目の増、あるいは「安全走行指導」といったものについては、十分効果があること がわかっております。また、反面、ある程度のベテランのトラックドライバーというのは、必ず しも安全ではないといったものもわかっております。  前回のご指摘では、こういった運転者認定制度等に効果があるのであれば、そういったものを 前面に押し出す。あるいは個別具体的にどういうやり方でやっているのかということがありまし たので、事例としていくつかお示しをしたところです。論点としては、安全衛生教育の内容、運 転者認定制度、運転者教育の内容ということです。これについては、(1)はかなり法令で定められ ているものもありますし、あるいは2のように法令あるいは他省庁の国土交通省、あるいは警察 庁のされている制度がありますので、そういったものを参考に利用させていただきたいと思いま す。  次は、検討事項5「安全意識の高揚」です。これについては、災害防止への意識の高揚活動、 注意喚起活動、いずれにとってもやればやるほど事故は減るといった傾向はあるということで す。また、反面、安全に対する会社の態度が低いところについては事故が多い、といったことも わかったわけです。  論点としては、具体的に災害防止への高揚活動、あるいは注意喚起活動というものについて、 新たなアイディアがあるかどうか。参考資料の中にいくつか例示が入っていますが、例えばこう いうものがあるというのが何かあれば。それから、企業内の安全に対する態度向上、いわゆる安 全文化の醸成というものについて、何かアイデア、好事例があればいただきたいと考えていま す。  検討項目6の「荷主との関係」については、前回の検討会の中で、荷主からの要求の受容度が 高いと、どうしても事故が高い傾向があるということですので、国土交通省から説明いただいた 「安全運行パートナーシップ・ガイドライン」といったものの内容をある程度盛り込む、あるい は盛り込むのであれば、どういった程度、どういった内容で盛り込むべきなのかということをご 議論いただければと思います。  検討事項7の「安全管理体制等」については、先ほど説明したマネジメントシステムを導入す ると事故の減少の傾向があるということですので、個別具体的には、マネジメントシステムの仕 組みをどういう形で導入していくのか。あるいは管理者については、国土交通省の運行管理者、 警察庁の安全運転管理者がありますので、管理者をどのように位置づけていくのか。あるいは今 回、もう既に議論が出ておりますが、我々がいろいろ調査でわかったリスク情報、交通事故の発 生に「正」の関連のある項目をいかにして周知していくのか。あるいはこれもリスク情報です が、交通危険マップのように、ここは危ないという情報をいかにして周知していくのかというと ころについても、ご議論いただければと考えております。  検討項目8としては、おそらく今日はご議論いただく時間はないと思いますが、運転を主たる 業務としない方、例えば企業の営業の方の交通事故も大変多いので、そういった方に対してどう いった対策をとれるのかということについても、第3回以降ご議論いただきたいと考えておりま す。  検討項目9については、「その他」の項目で、自動車の点検、異常気象等の際の措置、あるい は自動車の装置について、安全装置、応急用器具などといったところについても、何か変更すべ き付け加える項目があればご議論いただきたいと思っています。説明は以上です。 ○根本座長 検討事項4「安全衛生教育」ということですが、これは既存の制度があるので、そ の経験をうまく活かしながら、このガイドラインでも書き込みをしていくというご説明がありま した。国土交通省、あるいは警察庁のほうから、これまでの取組みで参考になるお話をいただけ れば、こちらのほうにそれを反映させたいと思いますが、いかがでしょうか。警察庁はいかがで しょうか。関係ある制度ということになると、先ほどの安全運転管理者制度などがあるのです か。 ○押切オブザーバー(警察庁交通局交通企画課) 先ほどの資料3-3の15頁に表裏1枚付いていま すが、安全運転管理者制度があります。これは道路交通法に定められている制度なのですが、国 土交通省のほうで運行管理者制度を行っております。そちらが先行して、いわゆる緑ナンバー、 届出の義務等があったのですが、緑ナンバーでない一般の白いナンバーで、車両の運転を業とす る、車を使う業種について安全運転管理をしていく必要性があるということで、始まった制度で す。  選任については法で規定されており、義務とされております。制度の趣旨から必要な事業所 等、ここに書いてあるとおりです。現在、選任事業所33万7,717カ所となっておりますが、これ は全国で選任されている安全運転管理者の数になります。このほかに副安全管理者として、必要 台数が定められておりますが、安全運転管理者を補佐する者が5万8,000人ぐらいおりますので、 40万弱の安全運転管理者と副安全管理者がいます。それで、その下に管理下運転者数、あるいは 管理下車両台数ですが、安全運転管理者の下で運転に携わっている人、あるいは運転に携わって いる車両の台数は、管理下運転者数が650万8,545万人ですから、約651万人ぐらいおります。管 理下台数としては466万8,750台という台数になっております。  いろいろな比較の仕方があると思うのですが、本来であれば選任されている事業所と未選任の 事業所がありますので、未選任の事業所の事故はどのぐらいの発生割合があるのか、比較をすれ ばいちばんいいのでしょうけれども、未選任の事業所はわかっていますが、残念ながら当方でそ の中の実態、そこに車両が何台あって、本来、選任されている安全運転管理者の下に働く人が何 人いるのかがわかっていないものですから、比較ができなかったのです。  では、どういった比較がいいのだろうかということで、通常免許を持っている人、全員と、そ こから1万人当たりを抽出して比較した場合に、1万人当たりの安全運転管理者が選任されている 事業所での事故の発生件数が、平成18年の数で90.55件、全免許取得者1万人当たりが111.79とい うことで、安全運転管理者が選任されている事業者のほうが少ない結果となっております。  次に死亡事故ですが、1万人当たりの死亡事故件数ということで、安全運転管理者選任事業所 は1万人当たり0.699件、全免許取得者1万人当たり0.775という数字になっておりますので、同じ 分母で比較すれば、両方とも安全運転管理者が選任されている事業所のほうが事故の割合が少な いというデータになっております。  裏に書いてありますが、この制度は年に1回、安全運転管理者が講習を受ける制度になってお り、その下の管理下運転者というのは全くこの講習自体を受けていないのですが、管理者が受け て、それを実際に下にやらせてもらっているということで、データ的には一定の効果を上げてい るのではないかと言えると思うのです。以上です。 ○根本座長 管理者を置いたほうが効果的であろうというお話でした。教育内容や教育というこ とで、過去から変遷というのですか、こういうことに教育に重点を置いていたけれども、このよ うにだんだん変えてきている、あるいはこの内容が特に効果的だったなど、何かそんなことはわ かりますか。 ○押切オブザーバー ここに業務を書いているのですが、これは道路交通法施行令、あるいは施 行規則で定められているのですが、ここから下の細かな、先ほどの例えば睡眠時間何時間などと いうようなものは定められていないのです。ある程度、安全運転管理者の自主性に任せていると ころなのですが、最近カリキュラムの中に入れてほしい、あるいは入れるべきだろうというのが 睡眠障害の関係とか、たぶん国土交通省のほうでよく取り組んでおられると思うのですが、ドラ イブレコーダーを活用した交通安全システムの導入など、最近はそういったコンピューター面が 多いかもしれません。 ○根本座長 やはり時代のニーズに合わせて、講習内容というのですか、そういうのも変えてき ている。国土交通省のほうも、そういう指導制度があるのですね。 ○山崎オブザーバー 同類の話ですので、本当に触りだけお話させていただきます。運行管理者 の制度の中で、運行管理者に対する講習という制度があります。いまは一般の方に対しては2年 に1回、それに加えて最近は事故を起こした方、事故惹起者に対して特別な講習を制度化してい ます。具体的な事故の件数ですが、貨物に関しては平成13年からスタートしていますが、統計的 な関連はいまのところはまだちょっと把握はできていないという状況です。  加えて、運転者に対して適性診断という制度があります。こちらについては、どちらかという と平川委員のほうがお詳しいかと思うので、適宜補足をしていただければと思います。運転者に 対する診断をして、安全性の向上、教育という観点でやっている制度があります。いまのガイド ラインの中で、安全衛生教育という教育の重要性が非常に述べられているので、その中にうまく うちの制度というか、教育の一環としてやっていることをうまく入れ込められたらと思います。 ○平川委員 運転適性診断については、基本的には一般診断、初任診断、適齢診断、特定1、特 定2という診断に分かれております。この診断の一般診断というものは、これは特に受診をする という義務はないわけですが、大体プロドライバーの方については、3年に1度は受診をしていた だいております。初任診断は、初めてプロドライバーとなった場合について、運転開始前に受け ていただくということで設けております。適齢診断は、65歳以上のドライバーについて、65歳に なった時点で受けていただくものです。特定1、特定2は、第一当事者として有責の事故を起こし た場合に、事故の種類によって特定1、特定2は変わるわけですが、そういう診断を受けていただ くというシステムがあります。これは心理学に基づく心理適性診断という言い方もしております が、ドライバーの特性を診断して、それをアドバイスすることによって安全運転、いわゆる交通 事故の防止に役立てていただくという診断です。 ○根本座長 安井さんのほうから、厚生労働省としての安全衛生教育も、既存のものを参考にし ながら何かガイドラインを作るということなのでしょうけれども、提案はありますか。 ○安井技術審査官 資料に書いてあるのは、例の△、○が付いているのがあって、例示列挙の中 で「添乗運転等実地指導」については△ということで、単変量解析において効果がある程度あっ たというものです。○が付いているのは、交通安全マップに基づく危険箇所の教示といったもの が効果があるということはわかっております。  もう1つ、制度のほうでは危険予知訓練、これは潜在的危険性を事前に予知して、防止対策を 立てる訓練です。いわゆるKYTと言われているものですが、これについても一定の効果を認めら れております。いちばんはっきり出たのは運転者認定制度です。これは先ほど説明したように、 一定の教育を経ないとドライバーにしないという制度ですが、こういったものについては効果が あるのはわかっております。これは全部、抽象的な項目の名前で、個別具体的にどういった内容 が効果があるとか、そこまではわからないところで、むしろ実地に教育されている方、こちらか ら伺いたいところです。  先ほど警察庁では、SASの話やドライブレコーダーについての要望ということでしたが、国土 交通省のほうで、何かこういう項目について教育してほしいとか、要望などというのは、具体的 に何かあったことはありませんでしょうか。 ○平川委員 ドライバー教育という中で、デジタル式タコグラフであるとかドライブレコーダー というものの結果を用いて、危険予知の訓練をすることは非常に有効であると考えています。デ ジタル式タコグラフについては、ドライブレコーダーとは大きく違うわけですが、デジタル式タ コグラフはそれぞれのドライバーの急発信や急加速など、さまざまな運転状況を診断といいます か、機械がある一定の要件によって判断をして、また運転中であれば警告も発するということが できるシステムです。そしてまた、運転終了後においては、運転状況の記録をしており、それを 解析ソフトにかけると、その人の運転状況、こういう点に注意してくださいよ、こういう点が素 晴らしいですよというのも出るのですが、そういうアドバイスができる機械があり、そういうも のを活用するように私どもは指導をしております。  また、ドライブレコーダーは、運転中に事故が発生した場合はもちろんのこと、急ブレーキ、 ヒヤリ・ハットの瞬間、ある一定の重量加速がかかりますね。その瞬間の1つの例としては、Gが かかった瞬間前15秒、その後10秒の映像等が残っております。そういうものによって、ドライバ ーになぜヒヤリ・ハットが起きたのかという動画による教育をしています。写真や絵ではない、 動画による教育というのは非常に効果的であるということで、ドラレコという言い方をしていま すが、それによる教育も私どもはいま非常に進めているところです。  実際のところ、ドライブレコーダーを付けた事業者においては、活用することによって非常に 事故が減るというデータは出てきております。「活用」とあえて言ったのは、付けることによっ て、カメラが付いていますから、監視をされているということで一時的には減るのです。しか し、人間は慣れるとまた元に戻るというものがあるものですから、そこで活用しなければ駄目で すよということが非常に重要だと言われているということです。このようなことも、教育の中に 入れる必要性もあるのかと思いますね。 ○根本座長 ドライブレコーダーやデジタコなど、具体的な役に立つ機器がはっきりしてきてい る中で、そういうのを言及するというのはいいのでしょうね。あと私は思ったのですが、交通安 全マップや睡眠不足などという話は、どちらかというと走行計画の前のほうで書き込むべき事項 で、その日その日に指導することと、日常的に安全な運転はどうあるべきかというのとは、やは りちょっと項目を分けたほうがいいですよね。上のものは、どちらかというと前のほうに全部送 ってしまったほうがいいのではないですか。(1)はどちらかといえば、そのときそのときの話でし ょう。事前の安全走行指導ですね。 ○安井技術審査官 これはどちらかというと定時教育ですね。主にあるポイントを捉えて行う教 育を書いており、例えば雇入時教育というのは、まさに雇ったときにあります。確かに事前の安 全走行指導のように、随時実施、いつやるのかはっきりしない、そういった項目も入っておりま すので、そういう整理は必要かなと考えております。 ○中村委員 いまのところで出てきた交通安全マップなどは確かに運行計画、走行計画の段階 で、どの辺に危険ポイントがあるか、先ほどの例で示していただいたものに載っています。あれ と似たような状況になってくるとは思うのですが、計画という意味では、ああいった形で走行危 険マップという使われ方がされてもいいでしょう。もう1つ大事なのは、交通安全マップをどこ かの誰かが作って、「はい」と配られて、それを見るだけというものにはあまり効果がなく、む しろ大事なのは、自分がある一定のエリアであったり、ある一定の走行経路であったり、それを 常に通るのであれば、自分でマップを作成することが、1つの教育効果として大きな意味を持っ てくると思うのです。  それこそ、いまリスクアセスメントが非常に推進されていますが、あれも自分で何が危険だろ う、どうなれば危険だろうということを考えた上で、それを評価していくことが大事になってき ますので、誰かが評価したものを「はい」と渡されるよりは、自分で見て、考えて、評価してい くというそのプロセスこそが、教育の意味としては重要になってくると思うのです。そういった 意味では、計画のほうにもマップを入れておいてもいいでしょうし、あるいは教育のほうにマッ プを入れておいてもいいでしょうし、2つに跨がるものがあってもいいような気はします。 ○安井技術審査官 おっしゃるとおりで、9頁の「安全意識の高揚」で、座りがいいかどうかは 別として、意識の高揚等の中に、「交通危険マップの作成」というのがあるのです。これは活動 としてやるという側面もありますし、教育として出来上がったものを教える、あるいは活用する というのもまたある。おっしゃるように両面あります。 ○平川委員 危険マップを作成するに当たって、実際に使われているものとして、ドライブレコ ーダーがそうなのです。ドライブレコーダーはGPSも装備しており、それぞれの地点で、先ほど 申し上げたある一定のGが掛かると映像として記録されますので、結果としてヒヤリ・ハットが 起こる地点というのが特定されるわけです。ということは、タクシーはあるエリアを走っており ますから、その中でどの地点が非常にヒヤリ・ハットが多い地点なのか、また事故が発生する場 所なのかということは、GPSのデータ等によって特定することができるということがあります。  それから、宅配便です。これはトラックですが、これについても、最近GPS付きのドラレコを 付けて、各ドライバー、各社、各営業所において、それぞれ危険マップを作っているという状況 はあります。それを活用しているというところは数多いです。そういうIT機器を活用してマップ を作って、それを教育に使うということは重要だと思います。 ○根本座長 わかりました。マップは使うだけではなくて、作るプロセスが結構教育効果が大き いようです。それは是非、何かわかるようにしておいたらいいかもしれませんね。 ○平川委員 それから、車載機器で、デジタコというのは大体、車載する機械が20万位します。 そして解析のソフトが70万〜80万位です。しかし、ドライブレコーダーはもう少し安くて、車載 機器が4万〜20円位ですね。そして、解析のソフトは5万〜40万位ですね。ということで、ドラ イブレコーダーのほうが、導入するには事業者の負担は少ないという状況にはあります。 ○根本座長 検討事項4はそのぐらいにして、検討事項5です。これはいまの交通危険マップの作 成みたいな話がありますが、ほかはいかがでしょうか。これはどちらかというと、ドライバーだ けではなくて、会社全体という感じですかね。経営者の意識を高めるみたいなことはどうすれば いいのか。これはなかなか難しいところですが、何かアイデアはありますか。例えばいろいろな 協力事業者、下請の方などに対して啓発活動みたいなものを、経営者に対してするなどというの はどんな形でされておりますか。 ○三浦委員 安全会議をやって、その席で都度、そういった啓蒙活動はやっているようですね。 意識の高揚活動、広い意味での宣伝などは抜きにして、事業所でやるには運輸安全マネジメント システムと労働安全衛生マネジメントシステムですね。どちらのマネジメントシステムとも導入 することは安全意識の高揚を図る意味では非常に効果があるのではないかと、私自身はいま思っ ております。全従業員、協力会社を含めた中で、安全のシステムを構築していこうというシステ ムの内容なのですが、そんな中でいままで以上に意識の高揚を図れるのではないでしょうか。 ○根本座長 それは具体的にPDCAでやった結果が見えるからみたいなことですか。 ○三浦委員 そうですね。意思疎通を図るというのは、やはり大きなテーマになっており、トッ プから従業員末端までの意識付けを一定に図ろうかというシステムになっています。あれがうま く回るようになったら、大きな効果が出てくるのではないだろうかと。 ○根本座長 それはいいですね。それは実はむしろ7番目のほうに関係あることだったのです が、7番目と5番目は、そういう意味では相互に関係していますね。 ○安井技術審査官 そうですね。 ○根本座長 7番目で、マネジメントシステムの導入による成功事例などがあるか、などという ところに線が引いてありますが、これがあって、「いいですね。みんなでやりましょう」という ようにだんだんなってくるといいと思いますが、いかがですか。厚生労働省あるいは国土交通省 で、マネジメントシステムの成果事例みたいなもので、何かみんなに示せるようなものは集まっ ているのですか。 ○安井技術審査官 マネジメントシステムに関して、モデル事業場制度があって調べてみたので すが、どうしても厚生労働省としては製造業などといったところのほうがメインになっていて、 運輸業でやっているのはなかなか、残念ながら我々的には事例は見つけられなかったのです。ま た調べて報告できるものがあればお知らせいたします。 ○三浦委員 運輸業については、陸災防のほうで活動の展開を図り始めたところではないでしょ うかね。 ○安井技術審査官 そうですね。これからですね。 ○平川委員 ほかの業種についても、既に成果が発表できるところまでいっています。 ○根本座長 そうですか。トラック事業でないものですか。 ○平川委員 神戸であった今年の全国産業安全衛生大会では、いくつかの発表事例がありました ね。 ○根本座長 トラック事業者ですか。 ○平川委員 トラック事業ではありません。 ○安井技術審査官 これは平成11年に指針自体はできておりますので、他業種といいましょう か、いわゆる製造業を中心にして、あるいは建設業はかなり実績が出ておりますし、事例はいっ ぱいあるのですが、運輸業はまだちょっと把握できていないです。 ○根本座長 近いところで成果が上がったということでも見せてあげれば、それはそれでまた追 い風にはなるのではないかという気がします。国土交通省のほうはいかがですか。 ○山崎オブザーバー いますぐにお話できるような事例を持ち合わせていないというのが1つあ りますが、国土交通省側では2つあります。まず1つは、マネジメントシステムにかかわらずです が、グッドプラクティス事例については、いまホームページで掲載していまして、募集をしてい るという状況です。これまで3件ぐらいですか。ほとんどデジタコやドラレコの活用が多いので すが、そういうのが載っているのがあります。  一方、マネジメントシステムに関しては、運輸安全マネジメントシステムは昨年10月からスタ ートしており、安全マネジメント評価を1年間やってきているのです。その結果については、ち ょっと別の部署ですが、取りまとめて公表しています。私も戻って確認をしてみます。ただ、こ れの場合、すべての運輸業が対象になっていますので、陸上交通がその中でどういう位置づけ で、どのぐらい反映されているかというのは、帰って見てみないとわからないので、それは確認 してみたいと思います。 ○根本座長 その辺はまた次回以降教えていただくということで、5のついでに7も横目で見て議 論してしまいたいと思います。7では、マネジメントシステム関連で、安井さんのほうで皆さん に何かお伺いしたことはありましたか。 ○安井技術審査官 マネジメントシステムについては、もうある程度確立した手法がありますの で、逆に言うと、それをどこまでガイドラインに書くのかという技術的な問題だとは思います。 管理者については、先ほどの国土交通省の制度もありますし、警察庁の制度もありますので、そ れと全く矛盾のないように、あるいはそもそも書く必要がないのかもしれないのですが、それに ついては検討できると思います。  リスク情報については、従来のガイドラインでは全くやっておりません。先ほど説明してきた ように、リスクアセスメントという観点から、行政の持っている事故につながるような情報をど うやって公開していって、なおかつ事業者においていかに活用していくかというところは、何ら かのアイデアがあれば伺いたいと思います。 ○根本座長 これは事業者ごとにマップを作るのがすごく効果的であり、教育効果もあるという お話でした。それを横にお互いに融通して、共有化するみたいなものができるといいですね。 ○平川委員 そうですね。 ○根本座長 それを仕組みとして、導入できますか。 ○平川委員 事業者ごとでそれぞれありますが、仕組みとして、これはまさに国土交通省サイド の関係協会の中で、運用というのは可能だと思います。ただ、バス、タクシー、トラックのそれ ぞれの協会というのがあるのです。 ○根本座長 そういう協会の中から集めるわけですね。 ○平川委員 それは可能でしょうけれども、この厚生労働省の部分だと、その辺はよくわからな いですね。 ○安井技術審査官 交通危険マップを陸災防で作ったときに、細かいのですが、実は事例も全部 集めているのです。ですから、こういうことをまさに陸災防であるとか、そういうところでやる のは可能だと思います。 ○中村委員 業種とか、運んでいる荷によって、全く傾向が異なってくるようなこともあるかも しれないですか。 ○平川委員 あり得ますね。 ○中村委員 同じエリアの中でも、幹線と裏の住宅地と商店街とで、どういった所を走っている かによって変わってくると。 ○平川委員 特に先ほどから出ている宅配の関係は、狭い所に入りますから、そうですね。 ○安井技術審査官 警察庁による事故情報の開示というところもあるかと思います。何か各県警 ごとに取り込まれているのですか。 ○押切オブザーバー そうですね。載っております交通危険マップ等は、各都道府県警ごとに作 っております。各県のホームページ等では容易に引けますので。 ○根本座長 その陸災防は、そういう地図を重ね合わせて、また地図を作ってられたのですか。 ○安井技術審査官 はい、2000年のときは。 ○根本座長 それは良いことですね。いま持っておられるハードコピーは、デジタルデータみた いなものでまた出ているのですか。 ○安井技術審査官 実はソフトウェアもあって。 ○根本座長 事業者が簡単に。 ○安井技術審査官 2000年の当時は配布しております。その後どうなっているのか、権利の関係 もありますので、一般に使えるかどうかは調べてみないとわかりませんが、ソフトウェアもあり ます。デジタルデータもあります。 ○根本座長 アップデートするとか、そういうデータベースというのは管理も大変ですよね。 ○安井技術審査官 そうですね。 ○根本座長 効率的に情報を集めて、アップデートして、事業者が安く使えるような仕組みがみ んなで協力してできるようになるといいですね。時間がだいぶ押してきましたが、まだ残ってい るところがあるのです。残っているのは6です。8は先送りでいいですか。 ○安井技術審査官 はい。 ○根本座長 6だけですね。でも6は大事なことで、荷主との関係をどう書き込むかということな のです。度々で申し訳ないのですが、ここについてはパートナーシップで、国土交通省のほうは 荷主について既に動きをされているので、その経験を活かしてこちらのほうも書き込みたいとい うお話が先ほどありましたが、どんな書き方があり得るのでしょうか。先ほどの説明はパートナ ーシップで、法律ではないのですね。ここでガイドラインで「こうしなさい」と荷主に対して要 求するのは難しいわけですね。 ○山崎オブザーバー そうですね。これをまとめるときも、かなり苦労されているように聞いて おりますので、頑張ってこのレベルになっているのではないかというのが正直な印象です。ここ までまとめたというのが、当時としては相当な進歩だったのではないかというのが正直な気持で す。 ○中村委員 1つあり得るだろうと思うのは、確かにこれまでの調査結果は、荷主からの要求の 受容度と事故の発生は関連があるとなっているのですが、これは単に荷主からの要求を受け入れ るから事故が多いというよりも、荷主からの要求を受け入れると金になるからということなので すよね。仕事がもらえるからということなのです。もし、こういったところで本当にアピールす るとするのであれば、一時的にそこで金になるかもしれないけれども、トータルで見れば実はお 互いにとって、荷主にとっても運送会社にとってもマイナスのほうが大きいですよと。そこで、 お互いにwin-winの関係をつくるのであれば、「ただ安くできるからとか、早くやれるからなど ということだけで、利益追求していても駄目ですよ」というところを、もっと全面的にアピール していく必要があるのかとは考えます。  そういった意味で、国土交通省のほうで出しておられるようなパートナーシップのようなもの を、もっとPRの中に活かしていくとか。もしかすると知らない方もいるのかどうか、よくわから ないのですが、その辺が精一杯できるところなのかという気もしなくはないですね。 ○根本座長 いまのニュアンスを伝えるのは、なかなか難しいですね。片一方では、規制緩和の 中で競争して、良いサービスを供給してくださいということを言っているわけですね。だから、 競争の中にちょっと好ましくない競争があるぞ、という意味をおっしゃりたいわけですね。 ○中村委員 そうです。 ○根本座長 そこがうまく表現できるかどうかですね。 ○高橋委員 荷主については、平成6年のガイドラインのときに何か言及していますか。 ○安井技術審査官 全くないです。パートナーシップ・ガイドラインというのは、事業者におい ては、どのぐらい知られているものなのでしょうか。誰でも知っているものなのでしょうか。 ○安本委員 難しいですけれども、誰でも知っているというところまでいっていないと思います ね。荷主側からこれを見る機会というのは非常に少ないのではないかと思って。 ○安井技術審査官 逆に荷主が知らないのでしょうか。 ○根本座長 本当は荷主に伝えたいメッセージなのに、荷主はあまりこれを意識していただけて いないかもしれない。 ○安本委員 恐れ多くて言えないみたいなところがある。 ○根本座長 実はこんなのがあるのですと周知されているのでしょうか。 ○山崎オブザーバー パートナーシップ自体が、国土交通省は事業者側を持っている業界からつ くっていますから、通達という形でお知らせはしています。事業者団体は当然、それが来たら展 開されるという流れができていますが、荷主の業界に、一応、事務局には渡していますが、それ がどこまでいっているかという問題はあるかもしれませんね。 ○根本座長 しかし、何かちょっとは触れたいですね。先ほどからいろいろ議論している労働時 間の話や荷役の話など、いろいろ関係するところがどうしてもあるわけだから配慮していただき たいわけです。何かちょっと書き方を工夫して、言葉としては残したいですね。 ○高橋委員 2倍近く起こりやすいという、数字が出ていますからね。荷役については、少なく しなさいぐらいのことはありますね。 ○根本座長 ですから、それも荷主の要求で荷役作業を行うことが多いでしょうから、関係して いますよ。 ○高橋委員 荷役作業を少なくしてくださいということだけでしょうか。 ○根本座長 今日は具体的にどう書けという話まで行き着かないのですが、そこは次回以降、宿 題ということでお願いしたいと思います。 ○平川委員 荷主との関係で非常に重なるかと思うのですが、トラックの場合、元請、下請、孫 請というような流れもあるのです。荷主とは違う部分があるのです。その部分と荷主との関係と いう部分と、ある意味重なるかと思うのですが、例えば大手のトラックの運送事業者が元請とし て受けて、それを下請に出す、また孫請に出す。そういう部分で安全を阻害する。安全を阻害す るというのは、下請・孫請がどうのこうのではなくて、そういう中で、運行形態で、中には出て くるものがあるのです。荷主との関係とともに元請の関係といいますか、こういう部分も記述す る必要があるのではないかと思いますね。トラックの事業独特の部分かもしれませんね。 ○根本座長 そうですね。 ○平野安全課長 業界では元請と下請の関係としては、下請から見て元請は荷主という言い方を しているのですか。 ○三浦委員 荷主とは言わないですね。 ○根本座長 荷主というのは、最初の荷物を頼んだ人を言うのですかね。そうすると、やはり荷 主というだけでは全部は表現できないのですね。 ○平野安全課長 元下関係で教えてほしいのですが、元下関係がいちばん強そうなのは建設業な どですが、建設業の場合は元請がその工事を請け負って、その工事の一部を下請にいくつかに下 ろして、その下と続いていくわけです。運送業の場合、元請は荷主から請け負った一部を下請に 出すという感じになるのですか。 ○三浦委員 おっしゃるとおりですね。100%トラックが、大手事業者の支店がどこかにあっ て、100台持っていると。品物は150台、200台分扱う荷物があるのに、自社としては100台しかな いから、残りの分を業者先に発注すると。 ○平野安全課長 そういう形が下請の一般的な形と。 ○三浦委員 はい。 ○中村委員 その場合、例えば安全管理体制などについては、完全に下請に出した側にお任せ と、全く元請のほうはタッチしないということになるわけですか。 ○三浦委員 100%投げるのではないのですが、ほとんどの部分については、その先の管理にな りますね。だから、その下請、業者先も運行管理者がいて、安全については独自に構築している と。 ○平川委員 その部分は、先ほど元請、孫請などいろいろな部分で、運輸安全マネジメントの中 においては、元請が下請に出す場合の安全という部分について、ガイドラインの中では配慮する となっています。私は細かくは覚えていませんが、運輸安全マネジメントシステムの中では、元 請・下請に関連した記述がありますから、それに触れて安全に配慮した運行云々ということは言 っておりますね。 ○根本座長 それは新しいトピックスで、荷主との関係というので今日出てきましたが、次回ま た少し掘り下げて、その問題も考えてみましょうかね。予定した時間を過ぎましたので、今日は この辺で議論を打ち切らせていただきたいと思います。次回また検討事項を皆さんに見ていただ くような形になると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。あと皆さんに宿題という か、何かありましたか。 ○安井技術審査官 宿題ではありませんが、次回は今回の議論を踏まえて、ある程度議論の原 案、ガイドラインの原案のようなものをお示しして、それに対してご議論いただきたいと思いま す。 ○高橋副主任中央産業安全専門官 次回は、年末の大変お忙しいときに恐縮なのですが、12月26 日(水)の13時半に、この同じ会議室で開催いたします。 ○根本座長 今日のところはその辺でよろしいですね。どうもありがとうございました。 68 - -