07/11/21 中央社会保険医療協議会総会平成19年11月21日議事録 07/11/21 中央社会保険医療協議会          第115回総会議事録 (1)日時  平成19年11月21日(水)12:26〜13:20 (2)場所  厚生労働省専用第18〜20会議室 (3)出席者 土田武史会長 遠藤久夫委員 小林麻理委員 白石小百合委員        前田雅英委員 室谷千英委員        対馬忠明委員 小島茂委員 勝村久司委員 丸山誠委員 高橋健二委員        松浦稔明委員        竹嶋康弘委員 鈴木満委員 中川俊男委員 西澤寛俊委員 邉見公雄委員        渡辺三雄委員 山本信夫委員       古橋美智子専門委員 黒崎紀正専門委員       <事務局>       水田保険局長 木倉審議官 原医療課長 他 (4)議題  ○平成20年度診療報酬改定について       ○その他 (5)議事内容  ○土田会長  ただいまより、第115回中央社会保険医療協議会総会を開催いたします。  最初に、委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、石井委員、坂本専門委員 及び大島専門委員が御欠席になっております。  それでは、議事に入らせていただきます。  本日は、「平成20年度診療報酬改定」を議題として取り上げたいと思います。  まず、これに関連して1号側委員より資料が提出されておりますので、説明をお願いい たします。 ○対馬委員  お手元の資料をお目通しいただければと思います。時間を押していますので、すべて読 み上げるのは割愛させていただきまして、ポイントだけにさせていただきたいと思います。  まず、丸の1点目ですけれども、我が国のマクロの経済でありますとか、医療費動向で ありますとか、さらには中長期的な視点に立つということが重要であろうという私どもの 問題意識を記載してございます。  丸の2つ目のところでは、医療提供体制の問題です。都道府県の医療計画の策定等が行 われていますけれども、ここで随分議論された病院勤務医の問題、産科・小児科等々、ま た、医療提供体制にかかわる問題意識を述べているところであります。  丸の3点目が、私どもは随分いろいろ議論もし、また考えたところではあるのですけれ ども、社会経済の実情でありますとか、患者・国民の負担感等々を勘案しますと、20年 度は診療報酬を引き上げる環境にはなく、医療保険の財源を適切に配分することによって、 資源配分のゆがみや無駄を是正していって、前記の問題に対応することを中心課題とすべ きだということで、「具体的には」のくだりでは、先ほどとほぼ同様のことを記載してご ざいます。  次ページの2行目から3行目にかけてですけれども、薬剤・医療材料など、今日も御議 論がありましたけれども、革新的な新薬などを適切に評価すると同時に、市場の実勢をベ ースにした薬価などの引き下げと後発医薬品の使用を促進するということで薬剤費などの 適正化を図るべきだということでございます。  なお、改定に当たりましては、さまざまな留意点があるわけですけれども、最後に書い ていますように、個別項目については今回触れておりませんので、また社会保障審議会の 意見も踏まえて改めて、12月の初旬ぐらいになると思いますけれども、提示したいとい うことでございます。どうぞよろしくお願いしたいと思います。 ○土田会長  ありがとうございました。  ただいまの説明に関する質疑は、ほかの資料に係る質疑とあわせて行いたいと思います。  次に、2号側より資料が提出されておりますので、説明をお願いいたします。 ○竹嶋委員  それでは、全体について私のほうから意見を述べさせていただきたいと思います。  国民の皆さんが望む安心・安全で良質な医療を安定的に提供していくということは、こ れは不可欠なことでありまして、医療提供者の重要な責務と考えております。  しかし、資料もこの中医協に出しましたが、長年にわたる医療費抑制策によりまして、 今地域医療の提供体制が崩壊の危機に直面していると、そういう理解を私どもはしており ます。医療機関の倒産件数についても出しました。過去最悪のペースで増加していると。 それから、1号側委員からも出ました小児科を標榜する医療機関あるいは婦人・産科、分 娩を取り扱う医療機関、この10年間に著しく減少しておるし、さらに救急医療も立ち行 かなくなっている現状があるということです。  これらはもう言うまでもなく、国民の医療、受診といいますか受療といいますか、その アクセスポイントを奪うことになりますので、私どもがこれまで守ってまいりました国民 皆保険制度というものに対するフリーアクセスが阻害されつつあるということを示したも のだと考えております。  よって来たところは、この診療報酬、過去3回連続してマイナス改定が実施されました。 特に平成14年度と平成18年度には技術料である診療報酬本体が引き下げられたという 実態がございます。その結果、病院、診療所、歯科診療所、薬局等の経営は極めて厳しく なり、その存続さえ危ぶまれており、今や地域医療の確保を脅かしているということは私 ども明白だと考えております。国民が望む医療提供体制の維持・発展は、安定した医業経 営基盤の確立があって初めて成り立つものでありまして、そのためには、根拠に基づいた 適切な技術評価を反映した診療報酬改定が必要であると考えております。  以上の状況から、平成20年度診療報酬改定に当たりまして、診療報酬の大幅な引き上 げ実現を強く望むものであります。  そして、あと資料をつけておりますけれども、調剤報酬について、それから歯科診療の 報酬につきまして、そして医科診療報酬につきまして、それぞれ委員よりそのあたりを説 明をさらに追加していただきたいと存じます。 ○中川委員   医科について説明を申し上げます。横にしていただいて右下の5ページをご覧ください。 医療経済実態調査(実調)についての限界と、それから我々が示したTKC医業経営指標、 これに関することを申し上げてきました。  7ページをお願いいたします。その状況において、TKC医業経営指標で、損益分岐点 比率が病院は95%を超えていると。診療所も一部余裕があるという議論もありますが、 94%を超えていると。完全に危険水域に入っているということをぜひ御理解いただきた いと思います。  さらに、右の国公立病院を含む実調にお答えになった病院の単年度の実態ですら、我々 が計算してみると、一般病院は108.5%です。これは大変な問題だということをまず 申し上げたいと思います。  その上で、10ページをお願いいたします。まず、地域医療を支えるためのコスト、こ れが医療費ベースで9,600億円、要望率として3.8%。医療安全対策コスト、2, 200億円が0.9%。医療の質を確保するためのコスト、2,700億円が1.1%と。 合計5.7%の引き上げをお願いしたいというものでございます。  13ページをお願いします。まず、地域医療を支えるコストというのは、医療機関の経 営を最低限守らなければいけないという意味でございます。実調のデータをここではあえ て使わせていただきました。そうすると、国公立病院を含む全医療機関の損益分岐点は、 青いところにありますが、101.7%になります。本来、医療機関だとしても、90% 以下の損益分岐点になりたいのですが、まずは赤字から脱却させていただきたいというこ とで、98%の損益分岐点にしていただきたいと。そのためのコストが0.96兆円、9, 600億円であります。  その次、14ページをお願いします。医療安全対策のコストは、18年度の医療安全に 関するコスト調査業務報告書、中医協のデータから見ますと、患者1人入院1日当たりコ ストが406円、有床診療所で618円かかると出ています。これに延べ患者数を掛けて いきますと、2,217億円必要になります。ところが、現状で診療報酬で手当てしてい るのは、入院初日のみ50点、500円の15.8億円にすぎません。  15ページです。今申し上げた損益分岐点比率と医療安全対策コストに加えて、やはり いい人材を確保する、良質な医薬品と医療機器を整備するという医療機関の必要性があり ますので、それにはやはり物価・賃金上昇率も加味しなければいけないということで、こ のように0.5%の年率ということで計算いたしました。その結果として、2,700億 円でございます。  このように、5.7%の要求を、医科全体として、医科本体5.7%という要望でござ います。  それからその次に、18ページに「病院診療報酬について」という要望でございます。 これはその次に、日本病院団体協議会が今年の10月に、加盟11病院団体を対象に実施 した「病院経営の現況調査」というものがございますが、平成18年度の病院収支は17 年度に比べてさらに悪化しておりまして、調査対象2,778病院中、43.0%が赤字 決算となっております。病院のこのような危機的な状況を打開するためには、診療報酬の 大幅な引き上げ以外は、これを改善する道はないと申し上げたいと思います。後でこの資 料をお読みいただければと思います。  次に、歯科の診療報酬についてお願いします。 ○渡辺委員  では、歯科のほうから御説明申し上げます。23ページをお開きください。「歯科診療 報酬について」であります。  24ページをお開きください。御存じのように、18年度診療報酬改定で歯科だけで7 00億円という前年度比マイナスという大変なマイナスの状態であります。ここは詳しく 資料に説明のあるとおりでありまして、その結果、前年度比の医療経済実態調査からでも 明らかなように、前回比9%のマイナスになったという大幅な削減であります。それから また、過去4回の実態調査の経過を資料に示して既に御説明もかつていたしましたが、そ の中で、経費削減の経営努力はもう極限まで来ております。そういう状態の中で、国民の 歯の保存と口腔機能を維持し、適切な歯科医療を持続的に提供するためには、経営基盤の 回復を図る必要があります。そこで、次期改定においては大幅な引き上げを要求するとこ ろでございます。  25ページに、その要望項目についての参考資料が記載されております。1としては、 「歯科医療の安全確保のための費用」であります。26ページ、2といたしましては、 「歯科医療の質の確保のための費用」でございます。3といたしましては、「後期高齢者 歯科医療の拡充を図るための費用」。4といたしまして、「歯科医療の進歩による質の確 保のための費用」。5といたしまして、「歯科医業経営基盤の安定確保等のための費用」 ということでございまして、以上のある部分だけをまとめても、最低歯科医療費ベースと して5.9%以上の改定率が必要であると考えているところでございます。  歯科は、以上でございます。 ○山本委員   では、調剤報酬に関して私どもの意見を述べさせていただきます。  36ページ、一番最後のページをごらんください。薬剤師の立場では、医薬品の適正使 用を通じて薬局あるいは医療機関の中での良質な医療提供に貢献していると私ども考えて おりまして、その方向で現在も貢献していると信じておりますが、平成14年以降の診療 報酬改定を見ますと、過去3回連続でマイナスもしくは±0という大幅な引き下げをされ ておりまして、実際に調剤報酬の中身を見ますと、全体の技術料の占める割合が3割とい う、大変小そうございますので、そうした改定の影響が大変大きく出ている。加えて、薬 剤費が7割ございまして、報酬改定のたびに同時に行われます薬価改定の影響も大変大き く受ける。それが実は薬局の経営に大きな影響を及ぼしております。  この数字につきましてはさまざまな議論がありましたけれども、今回出されました19 年度の実態調査の速報値を見ても、収入の減に対して人件費を減らすということで、全体 のバランスをとっているということからも、大変経営状況が悪化をしているということが 御理解いただけると思います。  今後、医療安全を当然進めなくてはなりませんし、先ほども御指摘がありましたが、そ れは基本的な責任だろうとは申しましても、さまざまな人的なものが確保できない状況で は、こうしたものについての支障が来すということも考えられますので、これ以上技術料 を下げるということにつきましてはぜひ回避していただきたい。  加えて、後発品の使用促進あるいはそのために伴います在庫の負担あるいは品質の管理 といったコスト増、あるいは在宅医療の推進、さらに言えば、そうしたものに薬局薬剤師 が積極的に推進する、参画することが極めて強く求められておりますし、応需体制の整備 ということにも着実に準備をしなくてはなりません。  これらのことを考えますと、薬剤師としての保険医療あるいは国民医療の中で果たすべ き責務をきちんと果たすために、薬局としての対応が可能となるだけの適切な費用の措置 を、財源的な措置をしていただきたい。あわせまして、改定に当たりましては、医科・歯 科・調剤とそれぞれに技術料がございますので、その技術料比に見合った改定率というこ とをぜひ確保していただきたいということをお願い申し上げます。 ○土田会長  ありがとうございました。  ただいま1号側、2号側から、それぞれ御意見が出ました。1号側のほうは診療報酬を 引き上げる環境にはないという御意見でしたし、2号側からは大幅な引き上げを要望する という御意見でございました。それで、これから議論を進めてまいりますが、公益のほう もまだ打ち合わせしておりませんが、どうぞ遠慮なく意見を述べていただきたいと思いま す。  それでは、どうぞ。 ○勝村委員  質問なのですけれども、ちょっとすぐにこの資料を十分に読み込む時間がない中での質 問ですが、医科のほうでは5.7%のプラスということなのですけれども、これまでの経 済実態調査などを見てきたところでは、例えば病院と診療所とか、さらに病院でも診療所 でも診療科ごととかの格差というのを物すごく感じたわけで、そして、すごくそれは問題 だというふうに感じるわけですけれども、この5.7%というのは、それぞれどの部門は 何%で、そういう格差というものを是正するためにどの部門は何%アップが必要だとか、 そういう根拠のデータを積み上げた計算の結果であるのかどうかということと、もしない のであれば、全体的に一律に同じように5.7%だというと、数学的に考えると格差はま すます広がることになってしまうわけで、それは本当に御苦労されている勤務医の方とか、 医療が本当によくなってほしいという国民の感情からすれば、非常に主張として、ちょっ とおかしいのではないかと思うのですが、そのあたりはどうなのでしょうか。 ○中川委員  まずこの7ページを見ていただきたいのですが、格差という御意見があるのは承知して おります。中医協の実調が6月単月の医療機関の経営状況、そのアンケートにお答えにな った経営状況を把握するということに関しては私は了解します。ところが、経年変化は違 うということも申し上げたと思いますが、ここに示すように、損益分岐点比率、TKCの 定点調査で、かつ通年の決算データ、このようなものでも95%近く行っているのだとい うことをまず御理解いただきたいと思います。  その上で、マクロで、全体としてこのように10ページ以降に、10ページから13ペ ージに内訳を示しております。まず、全体としての医療機関の経営は危機に瀕しています から、それを立て直して、5.7%というのは、医科全体のマクロの引き上げ率で、その 後に、例えば病院が大変である、勤務医が疲弊している、産科・小児科、救急が悪いと、 その後の議論でどのようにそれが配分されるのかということになると思うので、ただ全般 的に格差がもし仮にあるとしたら、そのまま全体を上げるのだということではございませ ん。 ○松浦委員  私もこの今2号側の資料についてちょっとお尋ねしたいのですが、赤字の病院が増えて いる、こういうことですけれども、その赤字の病院の医師、あるいはコメディカル、そう いった人たちの人件費、年収、それから黒字の病院の同じこと、医師及びコメディカルの 人件費、こういったものは当然差が出ておりましょうね。赤字のほうが人件費がうんと少 ないですね。その辺をちょっとお聞かせ願いたいです。この資料に基づいてそういう調査 はされていますか、されていませんか。 ○西澤委員  多分20ページのことだと思うのですが、今回は緊急でもございましたので、そのよう な細かい調査はいたしておりません。これはあくまでも、赤字か黒字か聞きたいわけです。 また、そのような細かい資料は別にございますが、とりあえず緊急に今回出すために、間 に合わせるためにこういう調査をさせていただきました。 ○松浦委員  これは非常に大事なことでして、病院が黒字か赤字かというときに、その肝心の人件費 はこっちの外に置いてしまって、それで赤字になった、黒字になったと、こういうような 議論は、今、通常の企業では許されないのです。だから、私はどうぞひとつその辺を早急 にお調べになって、赤字の病院の例えば医師の給料がこれだけだと、それから黒字の病院 はこうなっていると。そこには当然差があってしかるべきだと思うので、そのあたりをち ょっとデータがあればお示し願いたいと思います。 ○西澤委員  ありがとうございました。今いろいろな調査をやっていますので、そのあたりを調べて みたいと思いますが、おっしゃるとおりだと思っています。やはり、設立母体とかいろい ろなもので違いまして、今、松浦委員が指摘されましたとおり、実調におきましても、民 間は収入が下がっているけれども、経費も下げていて何とか利益を出している。公立は違 うというのは松浦委員が指摘されたと思います。そのあたりを含めた資料を今度提出した いなと思っております。  また、私たちがこれを出したのは、見ていただきたいのは、17年と18年、前回の診 療報酬を間に置いて赤字の病院が6%増えたという事実を示したかった。そういうことは 御理解いただければと思います。 ○松浦委員  病院の経営には、この人件費率というのはかなりのファクターを占めますから、ですか ら、その辺の努力を全くされないで、それで赤字になるのは、これは当然なのです。です から、そのこともしっかり調査なさって、それでもって、赤字の病院もこれだけ人件費を 切り詰めて努力したのだと。その上でなおかつここはいかぬ、だめなのだと、こういうこ とだと非常に聞きよいのですけれども、赤字も黒字も一緒ではないか、こういうことにな りますと非常に聞きにくい話になるのです。説得力があまりなくなりますから、どうぞそ の辺ひとつよろしくお願いします。 ○中川委員  松浦委員は、民間病院と国公立病院との違いということも含めておっしゃっているので すか。 ○松浦委員  もちろん民間もそうですが、国公立もそうですが、全部押しなべてです。民間ですと、 当然経営が悪化すれば、多少幹部の給料からちょっと考えていこうかということになると 思うのですよ。同じようなことが本当は全部に必要なのです。そういうことを全く努力を しないで、それから、この人員の配置等も無駄があるかないか、シビアなこともやらない で、赤字だ赤字だと言われても、これはあまり説得力ないと思います。 ○中川委員  わかりました。それはおっしゃるとおりで、民間の医療法人を例にとると、もう徹底的 な医業費用の削減とそれから人件費、収入が減れば人件費率、給与費率が上がるのは、そ れは御理解いただけると思います。その上で徹底的な経営努力はもうやり尽くしていると いう状態が、TKCは国公立病院は入っていませんから、それで95%を超えているわけ です。その一方で、実調の国公立を含むものでやると108.5%です。ここで申し上げ たいのは、国公立がすべて経営努力していないのではなくて、地域によっては、地域性に よっては人件費も削れないという状況があるわけです。そのことも含めて、我々診療報酬 のマクロの5.7%をお願いしたいという意味なのです。国公立病院が努力は十分だとは、 そこまでは言っていません。 ○丸山委員  今日の段階は、あまりそんな個別具体的な議論をするのかどうか、ちょっと疑問に思う のですが、2号側委員の御意見は御意見として、これ、こういう意見を言っておられるの だということで理解していればいいのではないかと思います。  ただ、今日思いましたのは、小島さんが隣にいて大変あれなのだけれども、春闘の交渉 を思い出しましたね。春闘の交渉のときに僕はいつもどう言っていたかというのをまた思 い出しました。医療側の御意見は単年度、労働組合も非常によく似ているのですが、単年 度のことを非常におっしゃる。だけど、経営側としては単年度の例えば人件費の改定等で も、中長期的な経営の展望をよく理解し合わないと単年度は出てこないといつも言ってき たのを思い出したのです。我々、これは支払側だけではなくて、ここに集まっている関係 者みんなが日本の医療問題で思うのは、中長期的に見て、世界にまれに見るスピードでの 少子高齢化が進む中で、社会保障問題というのは、医療だけではなくて、御存じのとおり いろいろありますが、医療問題をどうするかというある一つの国民的な危機感を持って、 では今年どうしようかということが前提にあると思うのですね。そんなことは診療側の先 生方も全部わかっておられてこう言っていると思うのですが。  私は2号側のご意見で非常に期待していたのは、1号側には一応そういったことのフレ ーズが入っているのですが、中長期的に見て我が国の医療問題、もうこれは必然的にこう いう人口構成、いろいろな社会問題が起こってくることはわかっている、それに対してど う御認識されて、どういう方向で対応なさるのかという意味合いのものが入っていること を期待したのですが、医科も歯科も薬剤のあれも、今年度大幅引き上げ、そればっかりの 御意見では私はこの論議はできないと。そういう共通の土俵に乗っていないと単年度の話 は非常に難しいのではないかと、こういうふうに率直に第一印象を持ちました。 ○土田会長  ちょっと一言だけ申し上げておきますが、確かに今丸山委員が話されましたように、そ の中長期的な視点で国民医療をどうするかという視点で意見書を出していただきたいとい う話は前に申し上げました。ですから、その点でいえば確かに2号側のほうからそういう 明確な視点が見えてこなかったというのは丸山委員のおっしゃるとおりだと思います。  ただ、もう1つ丸山委員に申し上げたいのは、ここは労使交渉ではありませんので。そ れは前の星野会長のときにやはりそういう意見がありまして、星野会長が労使交渉のよう な品のないあれではないという、それで慌てて議事録は消しました。あくまでここはそう いう立場ではありませんので、国民医療をどうするかという立場ですから、したがって、 一定の資金の取り合いというようなイメージでは全くございませんので、そこは誤解のな いようにして議論を進めていただきたいと思います。 ○丸山委員  最近の日本における労使交渉というのは、このように1号側と2号側が、ここまで意見 がかけ離れたようなところから始まらない。もっと共通の理解が促進した中で、ではどう するかという、もっとレベルが高い議論をしています。。 ○土田会長  それはわかっています。 ○西澤委員  今おっしゃることはわかるのですけれども、継続的と言われても、別なところで決めら れて、本当、逆に私たちも中長期的な展望を立てられないということでは丸山委員がおっ しゃるとおりなようになっていただきたいということは共通しております。また、1号側 の意見も、結論は違うにしても、やはり国民が質の高い医療を求めていることにどうこた えるかと、これは認識は同じです。それで今の現状を見ていただきたいのですが、私たち が出したように、赤字病院が非常に増えている、それから医師不足、看護師不足というこ とで、今地域医療が崩壊しかけているのです。これが今までのマイナスの結果なのです。 ですから、それを立て直さなければならないというのは、2号側だけではなくて1号側も 恐らく同じだと思います。そういう思いでぜひ考えていただきたいと思います。  それともう1点ですけれども、最近財政審のほうで3.6%という数字が出て独り歩き してございますが、最初からマイナスありきで議論してはおかしくなるということを1点 と、私は詳しくは見ていないのですけれども、たしか1999年から賃金と物価との比較 ですけれども、どこの年を起点にするかで全く異なるものをデータとして出してきて、こ の3.6%というのは非常にこれはおかしいなと思いますので、そのあたりのことはこの 中医協の中では頭から外してぜひ議論していただきたいなと思っています。 ○土田会長  それはおっしゃるとおりだと思います。それで、ですから、ただここまでで一応一致し ているのは、その病院医療においては非常に状況が悪化して勤務医が非常に厳しい労働条 件の下で働いているということは一応共通の認識だろうと思います。 ○松浦委員  私は事務局にもちょっとお尋ねしたいのですけれども、平成17年10月19日に「医 療制度構造改革試案」というのを出されて、それでこういう将来予測と、経済財政諮問会 議と、それから現在のこの医療費の増嵩の度合いと、それからもう1つ、その真ん中をと って厚労省試案というのを出されていますね。それはやはり守っていこうとされているわ けでしょうね、これからも診療報酬改定。 ○事務局(原医療課長)   医療課長でございます。  財政の将来予測についての再検査をするのかどうかというのは今議論をしていただいて おります。  それから、あと先ほど示された右側に数々の対策というか、医療費の伸びの抑制とか 等々の議論が書いてあると思いますが、その部分につきましては、前回の法改正で対応し ている部分とか、あるいは医療費適正化計画を来年度に向けて各都道府県でつくっていた だいているということで、その対策は着々と実行しているということであります。 ○松浦委員  そういうぐあいに一度決めた一つの方針というのはぐらぐら変わるとなかなかうまくい きませんから、しっかり堅持をして医療費の動向を十分にチェックしていただきたいと思 います。  以上です。 ○小島委員  2号側から出された意見で、医科のほうで5.7%、歯科で5.9%、その中身につい てはこれから少し1号側でも分析したいと思いますけれども、そうはいっても、3つほど 出されておりまして、1つは医療安全コストについて、これは従来からこれまでも何度も 議論してきたところ、それを別個に安全コスト分を診療報酬で見るかどうかというところ、 そこは議論がずっとしているところでありますので、それについてどうするかというのは これからの議論だろうと思います。  もう1つは、地域医療を支えるコストという形で、医科の場合には3.8%。ここで損 益分岐点が悪化しているということで、損益分岐点の中には固定費とまさに変動費、その 内訳をどうするかによっても変わってくると思います。その辺についても少し分析が必要 ではないかと思いますので、今回の5.7%あるいは5.9%をそのまま理解するわけに いかないと思っております。  それと、先ほども出ましたけれども、財政審では診療報酬改定についてマイナス3. 6%、これは過去の人件費・物価とこの間の診療報酬改定の差がマイナス3.6%あると いうことなのですけれども、これについても乱暴な話だというふうに私は思っております し、財政審に私ども連合の高木会長が行っております。その会長の意見書でもそれについ ては問題であるということで、適正な評価が必要だということで意見書を出しているとこ ろであります。  それから、今議論になりましたけれども、単年度あるいは2年の改定ごとの目先のプラ スマイナスではなくて中長期的な医療制度をどうするかという、当然そういう視点は必要 だろうと思っております。ということでいうと、今の日本の国民医療費あるいは医療給付 費の額が高いのか低いのかという議論、これはいろいろなその立場あるいは評価、見方に よって高いとも低いとも言えると。一つOECDのGDPに対する比率からいえば日本は 決して高くない、逆に低いという位置づけがありますので、そういう観点をどう見るかと いうこともありますけれども、そうはいっても今回の来年度診療報酬改定ということから いえば、前回私はどういう言い方をしているといいますと、2年間の物価・賃金の動向を 適正に反映すべきだということで発言をしました。前回については賃金はマイナス基調、 物価はプラマイゼロという状況でしたので、そういう意味では前回についてはプラスの状 況に環境にはないというふうに私は発言しました。  今回、これまで示されているデータの中には、2年間の賃金・物価についてはプラス傾 向というデータも出ておりますので、私の立場から前回言ったことを言えば、今回も同じ く賃金・物価の動向を適切に反映するという、特にそれは診療報酬本体についてはやはり そこは必要だろうと思っております。1号の意見の中で私の名前を連ねておりまして、診 療報酬の引き上げ環境にはないということです。これはもう1つ、薬価調査のデータが出 ていませんので、それらを含めて全体でこういう表現にしているということで、私はこの 意見書を出しているつもりですので、その辺も含めてこれから十分議論をしていけばと思 っています。 ○渡辺委員  今小島委員の5.9%、5.7%という数字、それからまた先ほど1号側の委員の先生 方から出されました給与の問題、あるいは経費、経営努力はどうかという問題、それにつ いては歯科は資料として出させていただいております。ちなみに、これも31ページにあ りますが、ごらんのように、費用についての削減は、この実態調査のずっと経年的なもの を見ていきましても、ずっと大きく経費削減をしてきたと。4回の調査が、ここに数字で あらわれております。また、19年度の今回の調査では1.4%、経費が上がりましたが、 これはもう限界に来たという状態でございます。また、特に保険診療収入の毎回の大幅な 減があるということから、本当に厳しい状況です。  5.9%という形につきましては、パーセントは全体として医療費の中に入るのは当然 でありますが、歯科…… ○土田会長  時間がないので、手短にお願いします。 ○渡辺委員  はい。歯科独自の計算として、先ほど申し上げました費用の1番と2番を合わせても、 それだけでも5.9%になるのだという数値を出させていただいたということであります。  以上です。 ○竹嶋委員  だから、申し上げたように、中医協での議論というのはどこまでやるかということで、 この後御存じのように、社保審の医療部会・医療保険部会がございますね。そこでやはり 松浦委員とか丸山委員とか小島委員とかがおっしゃったようなことを十分議論をまずしな ければいけないと思うので、今日、座長の御指示でこういうものを出しなさいということ で私ども出しました。1つだけは座長の御意向にちょっと沿わない部分があったと。もう 少し全体をということでございました。これは受けさせてもらいます。  その上で、やはりこの医療というのは、先ほどもどなたか言われていたけれども、自由 診療はできないのですね、我々が。ですから、決まったものの中でやりますから、その決 められるところが下がったり上がったりすれば、それは全体に及ぶと、そういう制約をか けられているところなので、そういうことははっきり申し上げておかなければいけないだ ろうと思うのです。全体の政策はやはり違うところでということは何回も言われましたの で、それはまたそういうところで闘わせたいと思います。 ○土田会長  どうもありがとうございます。  この1号・2号側の意見は今日は集約いたしません。次回に公益のほうで、あるいは事 務局と相談しながらまとめて提案をしたいと思います。 ○松浦委員  ちょっとよろしいですか。 ○土田会長  どうしてもですか。簡単にお願いします。 ○松浦委員  よくこの国際的な比較をやるときにOECDがどうのこうのという話が出るのですけれ ども、医療の置かれた市場が本当に日本とよく似ているのか。というのは、国民皆保険の 制度がこれだけ行き届いて、大体7割が保険で見るような、そういう制度がみんなあるの かどうか。そのあたりもちょっと参考までに知らせていただけると、判断するときに、O ECDを議論するときにしやすいと思うのです。 ○土田会長  わかりました。  ほかに。 ○小林委員  今日2号側から出された、特に中川委員から出されたところなのですけれども、損益分 岐点比率というのを出されて説得しようとなさっているのですけれども、やはり固定費の 部分が非常に大きいのです。だから、変動費に分類されている部分というのは非常に少な くて、そこで損益分岐点比率が上がっていると思われます。ですから、逆に言うと、先ほ ど来から出ている給与の問題とか、いろいろな固定費部分をどこまで含めるのかという問 題も含めて、そこの部分はもうちょっと精査しなければいけませんし、先ほど最初に勝村 委員から指摘があったように、非常に産科とか救急とか、そういうところで個別のところ でどうなのかという、そういう状況を出していただいたほうがよろしいのではないかと思 います。 ○土田会長  どうもありがとうございます。 ○中川委員  どうしても、よろしいでしょうか。 ○土田会長  手短にお願いします。 ○中川委員  少し話がかみ合わないというような気もしますが、医療というのは労働集約型のもので、 人件費というのは、これは減らせないということをまず御理解いただきたいと思います。 ○丸山委員  絶対に減らせないなどということはないです。 ○中川委員  いや、ある程度までしか減らせないのです、労働集約型ですから。  それともう1つですけれども、丸山委員がおっしゃった中長期的な議論は我々は望むと ころなのです。ただ、この場はそういうような場になじまないので、来年の直近の改定率 で、医療機関があしたにも倒れそうだということでこういうものを出したということを御 理解いただきたいと思います。 ○遠藤委員  先ほど来御議論されているわけで、別に公益を代表して言うわけではありませんけれど も、私の個人的な率直な意見を述べさせていただきますと、今回は、病院、特にその地方 の病院が非常に疲弊している、あるいは勤務医が非常な厳しい状態にあるということが前 回改定から起きている新しい現象として把握できるわけでありますし、それから、先ほど 来小島委員が言われましたように、人件費・物価が上昇傾向にあって、現時点においても 上昇傾向にあるということでありますので、もちろん医療資源の配分をさらに国民が納得 いくような形でやるということは、これは意味があります。医療資源の中の再配分をする ということは意味があるし、積極的にやる必要がありますけれども、常識的に考えて、今 回は引き上げるのが妥当だろうと私は考えておりました。その意味で、私は小島委員の言 われた意見とほぼ一致しております。ただ、5.何%というのが妥当かどうかというのは また全然話は別でありますけれども、今回は私は引き上げるのが妥当である。  もしそうでないとすると、どういう条件が整えば引き上げたらよろしいのかというとこ ろが私はよくわからない。まさに長期的な議論の中で、これだけ医療の医業収支が、病院 についても診療所についても悪化していて、なおかつ個別具体的ないろいろな問題が出て きて、その中には、医療費がかかるような手当てが必要なものが出てきているという中、 しかも、物価・人件費が上がっているという、この状況で上げないとなると、それはどう いう状況があったときに上げるということになるのかというのは、ちょっと私自身は整理 がつかないところであります。  それから、先ほど来西澤委員がおっしゃいましたように、過去の例から、財政審のあれ ですけれども、これはまさに比較の起点をどこに持ってくるかによって違ってきますので、 そういう問題もありますので、私としては、今回は、常識的に言っても引き上げというの が妥当なのではないかと、このように考えております。 ○土田会長  どうもありがとうございました。 ○松浦委員  あの…… ○土田会長  病院経営の合理化の話はもうわかっておりますので、そのことではなくお願いいたしま す。 ○松浦委員  しかし、そういうことも努力していただかないと…… ○土田会長  それはもう何回も承っておりますので。 ○松浦委員  上げたって意味がないですよ。 ○土田会長  それでは、先ほど申しましたように、1号、2号、それから公益から意見を拝聴しまし たので、次回の総会において大臣のほうに申し上げる意見をまとめて提案しますので、御 審議いただきたいと思います。  それでは、最後の議案が1つ残っております。過日に、混合診療に関する判決が出まし た。  それについて事務局よりちょっと報告がありますので、お願いいたします。 ○事務局(原医療課長)   中医協の総−1の資料をごらんいただきたいと思います。「健康保険受給権確認請求訴 訟事件の概要」ということで、先日、11月7日に、東京地裁で判決があった訴訟事件で ございます。  訴訟の概要でございますが、原告は個人の方で、被告は国でございます。  背景及び請求の趣旨でございますが、原告は平成13年以来、療養の給付の対象ではな いLAK療法(活性化自己リンパ球療法の一技術。当時は高度先進医療に該当)を、保険 診療との併用が認められていない医療機関において、保険診療と併用して受けていた。 (いわゆる「混合診療」に該当)  その後、この医療機関がそのLAK療法の保険診療との併用を行わなくなったというこ とで、そういう指摘を受けて、原告は、そもそも混合診療の禁止によってLAK療法を受 けられなくなったということで、この当該療法を保険診療と併用して受療できる地位の確 認を求めて、訴訟を提起したという経過でございます。  双方の主張は、原告側は、簡単に言いますと、混合診療を行う患者が保険診療をやった 部分も含めて保険給付を受けることができないという、この禁止の部分については、保険 診療のみを受療する患者と比べて不平等である。また、このようなことは法律の根拠がな くて、混合診療について保険給付を認めないということは、租税法律主義に反する、こう いうような主張をしておられます。  それに対して被告(国側)は、混合診療の禁止は、患者の不当な負担拡大の防止、ある いは保険診療と関連して提供される医療技術の安全性等の担保を趣旨とした合理的な目的 の制度であるということ。それから混合診療の禁止は、逆に特定の場合に保険診療と自由 診療の併用を認める、今で言う保険外併用療養費制度、法の86条がありますので、それ の反対解釈から一般的には禁止なのだと、こういうことを主張しております。それからそ の他、患者からの法定一部負担金以上の費用徴収やあるいは特殊療法を禁止するというこ とにつきましては、いわゆる療担規則によって当然書かれていることでございます。その ような主張をした。  それに対しまして、11月7日の判決は、国側が敗訴いたしました。  主文は、ここに書かれているように、原告が、活性化自己リンパ球移入療法と併用して 行われる、本来、健康保険法による保険診療の対象となるインターフェロン療法について、 健康保険法に基づく療養の給付を受けることができる権利を有することを確認するという 結論でございました。  その理由としては、この保険診療といわゆる自由診療を組み合わせた場合に、従来保険 診療であった部分も含めてすべて自由診療になるという解釈は、法律及び下位法令から根 拠を見出すことは難しいということが理由でございました。混合診療を原則として禁止す る取り扱いがいいか悪いかと、そういうような判断ではなくて、法的にはその根拠がない のではないかということが理由として述べられております。  これに対しまして国としましては、先ほどの主張どおり、これが認められないというこ とは問題があるということ、他にも大きな影響があるということで、11月16日に控訴 をしたところでございます。  なお、混合診療につきましては、前回といいますか、16年度以降、議論が進んでいた わけでもありまして、18年度の際にも、ここで示しましたのは、18年8月の総会でお 示しした資料ですけれども、新しく、必ずしも高度でない先進技術を先進医療で入れると か、あるいは国内未承認薬については、その承認の促進を図るための工夫をするとか、そ れから制限回数を超える医療行為については、これを選定療養の一部に導入する、こうい うような工夫の中で、さまざまな御要望にはこたえられる仕組みをつくってきた。診療報 酬についても、先進医療の制度でありますとか、この選定療養の範囲の拡大ということで 対応してきたというところでございます。  3ページ目は、先ほど言いました、これの現在の保険外併用療養費の仕組みといいます か、項目でございまして、現在このような形で診療報酬のほうでは、いわゆる混合診療に ついても、この部分についてはルールの下で認めているという状況であるということを御 報告いたします。 ○土田会長  どうもありがとうございました。  ただいまの報告につきまして御意見などございましたら。 ○前田委員  個人的に、法律をやっているという関係から、ちょっと申し述べさせていただきたいと 思うのですが、国の控訴は、私はある意味で当然だと思います。いや、結論がどうこうと いうことではないのですが。  ただ、その前に一つ強く申し上げておきたいのは、ここにも書いてありますけれども、 混合診療が原則としてだめだといった判決では絶対ないわけです。そこが何か誤解されて いるような気がします。法律の世界というのは、非常に具体的な事案について、これがい いか悪いかだけを絞って議論しておりまして、従来保険診療をやっていたものを併用する ことについて、それを全部自由診療にするということが、ただ、これがまずいという御判 断ですが、それ自体についても、法律家のぎりぎりの判断だと思います。それについて、 法律及び下位法令から根拠を見出すことが難しいということは、論理必然で、そうなるよ うに書いてありますが、法律家というのは、必ず結論を言うときにはこっちがマルである という言い方で説明するわけですけれども、やはり最終的には利益衡量ですから、ここで ずっと議論している、何のために保険を議論しているかと言えば、保険医療による安定的 で低い価格で安心して医療を受けられるというメリットと、いや片一方で、確かに新しい 先進的なものを組み合わせてやれば、患者はいいのですけれども、それをやると今度はデ メリットが出るわけです。自由診療が広がりますと。そのバランスをどうとるかというこ とで、ここで今まで取り組んでこられた、さっき御説明があったような混合診療を部分的 に認めていくと。そういう国民のニーズにもこたえるということを踏まえて、そういう努 力の上で、現にここで行われたこのLAK療法、これについてのこの処置について、地裁 の裁判長は、やはりこれはお金を払うべきであって、診療を受ける権利があるという御判 断ですけれども、それはやはり一つの利益衡量なのです。法律の世界で、マルかバツかど ちらかで決まっているわけではない。  やはり今後の議論としては、ここで非常に真摯に、まさに保険の点数を決めたりなんか というのは、国民全体の利益を考えて、バランスをどうとるかやっているわけで、その議 論を踏まえたものが、だからここのところで具体的にLAK療法に関したものがどうだっ たのかということを、裁判所、高裁でどう受けとめていただけるか。ただ、もう法律の世 界は、当然、どちらが正しいかは、今の係争中のものについて申し上げるべきではないと 思いますけれども、一つはっきりしているのは、混合診療が正しい方向であるみたいな形 で議論が流れていくことは、これは非常にまずいことである。ここで細かい議論をしてい ることがすべて無になるとまでは言いませんけれども、非常にダメージを受けるというこ とだと思います。  時間がないのに長くしゃべって申し訳ございません。 ○土田会長  とんでもございません。どうもありがとうございました。 ○遠藤委員  時間がないので簡単に。前田委員の言われたことは、私は全面賛成でありまして、全く 無制約に、無制限に混合診療を認めるということは、どういう名目で幾らのお金を徴収す るかということから自由になるということでありますから、こういうある意味で一患者の 間の交渉力あるいは情報の非対称性がある中で適切なものができるということはないわけ でありまして、先ほど前田委員が言われましたように、公定価格を一生懸命決めていまし ても、それは全く意味がなくなってくるわけであります。そういう意味も含めまして、前 田委員に私は賛成したいと思います。 ○勝村委員  これだけの資料では、僕も事件の実情がすぐに全部わかるとは思えないので、齟齬があ るといけないので、あまり中身のことには言及したくないのですけれども、ちょっと聞く ところと、今理解した範囲で言うと、この方が受けていた医療は、別の地域の別に認定さ れている高度先進医療の認められている医療機関ではされていた医療だという理解でいい のですね。ということならば、この患者の方には、うちの地域にもそういう病院をつくっ てほしいとか、またはそのための施設要件、そういうものをもう少し変えて普及するよう にすべきではないかとか、またこの治療は、そもそも先進医療ではなくて保険適用すべき ではないかとか、そういうような議論として問題提起していただくほうが本当は中医協の 立場からすればありがたかった、ということではなかったかと思います。  ところが、そうではなくて、そういう中身の議論よりも、外枠のそもそも論で混合診療 について、混合診療がありなのか、なしなのかみたいな議論しか国民が提起できないとい うのは、ある意味僕は理解できるような気がします。というのは、この中医協の議論がや はり国民にわかりにくいのですよね。ふだんからやはり全く中身を教えてもらえていない ので、すべて混合診療禁止が悪いのだというふうに理解されてしまって、中医協の議論に ついてはほとんど知ってもらえていないと思うんですね。これは、やはり中医協の側に責 任があると思うのです。僕は従来ずっと言っていますけれども、もっと意識改革をして、 情報公開をもっと徹底していかないと、やはり国民には先進医療の仕組みを始め、議論が ほとんどわからないと思います。  だから、本当だったらこの件に関しても僕はそういう中身の議論になっていくのが日本 の医療の質とか安全性とか標準化というものを担保する意味で非常に大事だと思うので、 そういう議論や問題提起をしてもらえるように、やはりもっと情報公開とかを国民にして いくべきだというふうに、改めて僕はちょっと今このお話を聞いて感想を持ちました。 ○土田会長  どうもありがとうございました。  この混合診療に関しましては、前回の改定のときに随分長い間議論いたしました。その 過程を通じまして、先進医療制度の創設であるとか、あるいは国内未承認の医薬品につい て、治験に入ってから切れ目なく保険診療の併用を実施するということ、あるいは回数上 限を超えての医療行為の実施、さらには療養の給付とは直接関係のないサービスの明確化 など、この中医協において長年その議論を重ねてまいりました。その結果、現在のような 形になったと記憶しております。  中医協としては、もちろん患者の視点に立って、真に困っている患者さんの切実な声に 具体的におこたえしていくという立場であることをここで改めて表明したいと、確認した いと思います。よろしいでしょうか。              〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 ○土田会長  どうもありがとうございました。  それでは、大変時間が延長してしまいましたが、本日の総会はこれで閉会としたいと思 います。  次回の日程が決まっておりましたら、お願いいたします。 ○事務局(原医療課長)  次回は、来週11月28日水曜日を予定しております。 ○土田会長  どうもありがとうございました。     【照会先】       厚生労働省保険局医療課企画法令第1係       代表 03−5253−1111(内線3288)