07/11/19 「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」第4回議事録 第4回これからの地域福祉のあり方に関する研究会             開催日:平成19年11月19日(月)14:30〜16:30 場 所:厚生労働省5階 共用第7会議室       ○大橋座長   それでは時間がまいりましたので、ただいまから第4回これからの地域福祉 のあり方に関する研究会を開催させていただきたいと思います。本日ご報告い ただきます皆さんには、お忙しい中お集まりいただきまして本当にありがとう ございました。また委員の皆さんもありがとうございます。 それでは最初に、 事務局より委員の出席状況の確認をお願いいたします。 ○事務局   本日は今田委員がご欠席でございます。 ○大橋座長  ありがとうございました。それでは事務局より本日のテーマのねらい、進め 方についてご説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○中村企画官  承知いたしました。資料1をお開きください。1ページ目でございますが、 これまでこの研究会におきましては、まず地域福祉が取り組むべき課題として 地域の要支援者像あるいは地域の問題について第2回でご議論いただきまし て、前回の第3回におきましては「地域の要支援者への支援のあり方について」 というテーマのもとで、支援において必要な視点あるいは具体的な方法、次の 2ページでございますが、要支援者を含む地域の人々に対する働きかけ、地域 の活動のあり方についてご議論いただいたところでございます。  そこで3ページ目でございますが、今回の論点といたしましては、まずテー マとして「地域福祉を進めるためのシステムのあり方について、地域福祉をさ らに発展させるためにはどうすればよいか」ということについてご議論いただ ければと存じます。  事務局として論点として考えておりますのは、3ページ目に掲げている5点 でございまして、1つは地域の範囲をどう考えるか。例えば声かけ、見守りが できる範囲としてはどういった地域が適切なのか、あるいは支援の内容によっ て適切な地域の範囲をどのように考えたらいいのかという論点でございます。 2番目といたしましてネットワークをどうつくるか。自治体、町内会、NPO、 ボランティア等地域資源をどのように組み合わせてネットワークをつくって いくかという点でございます。3点目に、見つけにくいニーズをどう発見する か。例えばマンション居住者とか孤立・引きこもりの方、あるいは最近の個人 情報保護という流れの中でニーズをどう発見していくのかという論点でござ います。次に、専門職や事業者との関係はどうあるべきか。専門職によるコー ディネート機能などをどう考えていくかという論点。5番目に、活動の拠点に ついてどう考えるべきか。例えば公民館、空き店舗の活用等についてどう考え ていくかということも含まれるかと存じます。以上が本日のテーマでございま す。  報告者でございますが、お2人お願いしております。まず全国コミュニティ ライフサポートセンター理事長の池田様でございます。全国コミュニティライ フサポートセンターは、誰もが普通に暮らし続けることのできる地域の実現と いう目的で、小中学校区などの小地域で行われている先駆的な取り組みを発掘、 そしてそれらを全国に広めるという活動をしておられます。そこで、理事長で いらっしゃいます池田様に本日おいでいただいたものでございます。  もうひと方でございますが、三重県伊賀市社会福祉協議会事務局長の平井様 でございます。三重県伊賀市では、要支援者の在宅生活をできるだけ継続する という目的で社会福祉協議会を初めとして民生委員、ボランティア、当事者組 織、あるいは近隣の人たちや地域の組織、行政機関、サービス事業者、医療機 関などが連携して地域ケアのシステムをつくっておられます。そこで社協の事 務局長でいらっしゃいます平井様においでいただいたものでございます。以上 でございます。 ○大橋座長   ありがとうございました。それでは早速全国コミュニティライフサポートセ ンター理事長の池田さんからご報告をいただきたいと思います。どうぞよろし くお願いいたします。 ○池田氏   ご紹介いただきました全国コミュニティライフサポートセンターの池田と 申します。よろしくお願いします。通称CLCとも言われております。資料に 基づいてご報告をさせていただきたいと思います。  私どもの団体は先ほどご紹介いただきましたように、住み慣れた地域でその 人らしく普通に暮らし続けたいという思いや願いに応える実践を掘り起こし たり、その実践をネットワークしたり、あるいはそれをフォーラム、セミナー 等を通じて提言したり情報を共有したりすることで、制度に結びつけていただ いたり実践を広げたりということをさせていただいている団体です。そういう 意味では、全国的な支援という視点からこの地域福祉のあり方について考えて いることを報告させていただきたいと思います。  最初2ページのところに「新たな地域ケア実践の解釈と普及」とありますが、 その左側の下の「気づき」というところから見ていただいて、制度外で対応が できないものに「気づき」それを自発的に実践する宅老所という取り組みを10 数年前から支援してきました。当時は措置時代で、社会福祉法人ではない宅老 所は制度に乗ってないで特に認知症の重い方々を支援している自主的な取り 組みでした。制度では対応できないものに気づいて自発的に実践し、それを市 町村や都道府県が理解し制度化して、あるいは国が理解し制度化することによ って対応してきた。しかしながら制度には限りがありますので、また制度外が 生まれてきます。その制度外がにまた気づいて自発的な実践が生まれるという ことで、ある種これが循環していく。ニーズと対応が循環することになると思 いますが、この循環する機能を支援することが地域福祉を発展させるキーポイ ントになるのではないかと考えています。  特にこの「気づき」に気づくということがとても大切です。気づいて行動を 起こすということもとても大切なのです。見つけにくいニーズというのが論点 にありましたが、実際には見つけにくいニーズというのは少ないのではないか と思うんです。新聞でも雑誌でもテレビのニュースでも、いろんな実践者や当 事者の声からもいろんなニーズを関係者はわかっているのではないかと思い ますが、なかなかそのわかったニーズを解決する行動が起こりにくいというこ とがあるのではないかと感じています。  続いて3ページですけれども、私どもCLCでは宅老所の実践を原点にこれ まで10数年取り組んできました。この宅老所というのは民家で介護保険以前 は制度に乗らずに認知症の重い方を支援するということから取り組みが始ま ったわけです。私はその当時社協で働いていたのですけれども、ご本人の思い は、家でずっと暮らし続けたい、この地域で暮らし続けたいというものでした。 その思いや願いに応えようと思っても、住民だけでは応えきれない。かといっ て当時の在宅サービスではそれを叶えるだけのものがないということで、たま たま1990年に宅老所に出会って、私はこれだと思いました。  なぜこれだと思ったかというと、自宅では暮らしにくいけれども自宅と同じ ような環境にあって、しかも自宅で暮らすことにも柔軟に対応して、これまで と変わらぬ人間関係も継続することを支援するという取り組みだったからで す。  これを大規模の施設に取り入れたものが実はユニットケアということにな って、ユニットケアでは逆デイサービスということで特養から地域に帰る、あ るいはサテライトケアということで地域にとどまるということを実現してき ました。もう一方で共生ケアということで、高齢だけではなくて障害者や子供 たちも受け入れるというもので、富山型といわれるように、地域独々のサービ スが生まれてくるというような、地方でいろんな特性のサービスが生まれてき ました。  こういう取り組みの中で見えてきたことは、対象者からの脱皮といいますか、 従来は専門職と利用者というふうな関係だったわけですが、高齢者のところに 子供や障害を持っている方が来ることによって、対象者とされていた高齢者の 方が子供を見たり障害を持っている方を支えたりということで、対象者からの 脱皮、あるいは受け手からの脱皮というのでしょうか、そういうことも生まれ てきたのではないかと考えています。そういう意味では、今までのケアが小地 域の地域福祉に対応する方向へとこの10年間進んできたのではないかと考え ています。  専門職や事業者はその人の思いや願いに徹底して応えて家族や地域社会と 調整の中からこういうものが生まれてきた。ある意味制度を侵してこの取り組 みは生まれてきました。何度も監査で厳しく指導されながらこの制度は生まれ てきました。実は地域福祉の実践というのは制度の枠を超えて生まれてくるも のではないかということでは、制度のあり方とどういうふうに関係をつくって いくかが重要なのかなと思っています。  そういう意味では、近ごろは制度の枠に収めるという方向に介護保険なども 進んでいるのですが、制度の中で収めることと制度の枠を超えたものを別々に 考えるのではなくて一緒に考えていく発想が必要なのではないかと感じてい ます。  続いて4ページを抜いて5ページです。5ページは「新しい地域福祉の場づ くりと持続力」です。これは宅老所を原点にして、宅老所の取り組みは2年前 に小規模多機能型居宅介護という制度として制度化されましたが、制度ができ たのですけれども引き続き制度の枠外が生まれ、あるいは制度に乗らないで小 規模多機能ケアに取り組んでいるところがあります。その延長線上で地域生活 ということで、やっと地域でそのまま暮らし続けるという取り組みが生まれて きました。  さらにそれを地域で支える。校区と書いてありますが、小学校区や中学校区 で支えていくという取り組みが全国で広がってきておりまして、地域では何で もあり。制度というよりは、地域ではいろんな課題にすべて応えていかなけれ ばならないということや、地域には住民の流儀があるということも見えてきて います。  6ページは、私が社協で働き、その後特別養護老人ホームで働いた経験から、 「社協でもできなかった地域ケアの拠点づくり」ということになっていますが、 この「社協でも」というのは私が社協で働いていたからであって、一般の社協 を言ってきたわけではありません。私が社協で働いているときにできなかった 地域ケアの拠点づくりという意味です。  それはケア論だけではどうも地域密着というのはできなくて、ケアと地域に 密着した住民の活動とともに実践が広がらないと地域ケアというのは生まれ にくいということに最近気づいて、さらに地域住民の相談や住民の参加でこの 地域福祉がさらに深められていくということを最近感じています。  7ページに移ります。「小地域福祉の多様な主体と連携」ということですが、 小地域には多様な地域福祉の推進主体が存在します。この中には含まれていま せんが、有限会社や株式会社というような営利法人でも地域福祉を推進してい るような主体もあります。これがそれぞれネットワークをしていくだけではな くて、その地域に合った形でこういった団体が単独あるいは幾つかつながって 地域福祉の推進がされていくのではないかと考えています。枠の外に四角で市 町村名や学区名が書いてあるのは、その活動で主だった、私どもが関わったり 取材させていただいた実践を書かせていただいているものです。この中でボラ ンティア、地区社協などでも自前の拠点を維持しながら活動しているところほ ど活発に動いている。そういう意味では、今回の論点にあります公民館とか公 の建物ではなくて、主体となる団体が自前で建物を持ち、そしてそれを維持継 続することを通して活動も広がっているということが見受けられると感じて います。  続いて8ページの「法律に定められた社協の機能を生かす」ということです が、私どもNPO法人で補助金もなく運営している団体で、いろんなセミナー、 出版を通して収入を得ながら地域福祉の推進に取り組んでいる。そういう中で 法律に定められた社協という機能を生かすためにはどんなことがあるのだろ うかと感じています。  ここに書いてあるのは、一番下に「その人の課題」とあります。その上に校 区の、必ずしも社協に限りませんけれども、活動があります。この活動は「そ の人」の立場に立った支援活動が行われているのだろうと思いますが、市町村 社協においても、それぞれの校区やその人の立場に立った支援、あるいは都道 府県社協においても市町村や校区やその人の課題に立った活動をするという ことだと思います。必要だなと感じるのは、市町村社協においては校区の活動 連合会のようなものが必要なのではないか。都道府県社協においては、市町村 社協連合会のような位置づけが必要なのではないかと感じています。  どういう意味かというと、都道府県を例にとると、都道府県の社協の立場で 市町村社協を支援するのではなくて、市町村社協の立場で市町村の活動を応援 する。市町村もそれぞれ違いますし、それぞれの市町村の活動の中身もそれぞ れ違うと思いますから、そういう意味では、都道府県の立場ではなく市町村の 連合会としてそれぞれの市町村を支援するような視点が必要なのではないか と感じています。またそれは必ずしも社協ではなくて中間支援組織のようなと ころがそういう機能を果たしていくという場合もありで、そこが社協という機 能をうまく生かしていけないだろうかということも常々感じています。  すみません、前の7ページに戻ってもらって、論点の中に専門職と事業者の 関係をどうするかということが出ておりましたが、この中で事業者はあまり出 過ぎない方がいいのではないかと思っています。事業者は地域福祉という視点 を持って取り組んでいただきたいと思いますが、例えば小地域に事業所が生ま れると、今まで隣近所で助け合っていた方々が、新しく事業者ができたからも う私たちはあそこの事業者に託せばいいのではないかとなりがちです。事業者 もサービスを提供していて利用者が少ないと、まだサービスが必要でない方に も利用者として来ていただきたいという心が生まれたりします。そういう意味 では事業者はあまり地域で出過ぎないで、地域の依存関係をつくるよりはきち んと地域福祉を推進するワーカーなり機関と協働していくことが必要なので はないかと感じています。  続いて9ページです。「その人らしさの生活空間と関係の広がり」というこ とで、図としてはあまりいい図ではないのですけれども、地域の範囲というの はどのくらいかということです。その人の暮らしの範囲は、この図の中ではオ レンジ色で左から右下の方に囲った部分で、その人によってそれぞれ大きさは 違うと思います。これまで私が取り組んでくる中では、おおよそ50世帯ぐら いが住民の支え合いとしてはいいのだろうと思っているのですが、一専門職の 担う単位としてはどのぐらいかと考えたときに、7,000〜8,000人ぐらいがいい のではないかと考えています。  ここに、今年の学校数の速報から割り出した1中学校区平均人口と1小学校 区の平均人口がありますが、どうも中学校の1万1,000人というのは大きすぎ て、小学校区の5,600人というのは小さすぎてという感じがしています。あま り小学校区や中学校区で限定するよりは、仮に8,000人とか7,000人とか1万 人という数で示すことも必要なのではないかと感じています。私が生まれ育っ た町は人口3万人で中学校が1つです。そういう市町村では中学校区とすると 1地区となってしまうので、中学校区・小学校区だけではなくてもう一つの考 える基準があるといいのではないかと感じています。  次の10ページと11ページ以降はご覧いただいて、特に11ページの方は、 ライフステージということで一番上にある図が、本当は人生の最後が一番大き な人間関係の図になるはずですが、実際にはこんなに大きくならなくてどんど んしぼんでいくということで、10ページに戻っていただいて、このしぼんだ円 がオレンジの円でありまして、この円を家族や地域や専門職等で支えていく、 広げていくということが求められているのだろうと思っています。  以降は参考資料ということで、以上で報告を終わらせていただきます。あり がとうございました。 ○大橋座長  ありがとうございました。それでは続きまして三重県伊賀市社会福祉協議会 事務局長の平井俊圭さんよりお話をいただきたいと思います。平井さんのお話 が終わった後、少し時間をとって皆さんと論議をしたいと思いますのでよろし くお願いいたします。 ○平井氏  お手元の資料、まず1枚目を開いていただきますと「在宅生活が継続できな い背景」と書いた図がございます。地域の中で施設に入所したいという意向の 方が結構いらっしゃる。1施設大体200人ぐらいの方が、伊賀では申し込みを してある。当然かけ持ちで申し込んでいらっしゃる方が多いので確かにそうい う状況なのですが、なぜだろうと思ったのです。その背景を図にしてみました。  何か問題が起こります。例えば介護が必要になるとか、消費者トラブルに巻 き込まれるとか、生活していく上でいろんな問題が起こってくるわけです。問 題が起こりますとその方の身近な人が、あるいはご本人が試行錯誤したり解決 策を探るのですが、うまく解決方法が見つかれば解決となってそのまま地域で 暮らし続けられます。解決方法がなければ、身近な誰かに相談に乗ってもらう。 多くは家族、親戚、友達、近隣の人たちです。解決方法が見つからなければ諦 めて、在宅で生活するのは無理だなということになりがちです。  これは非常に単純化した図ですから必ず全部がこうだとは言い切れません が、おおよそこのようになる。もし相談に乗る人が見つかれば、ご本人が抱え ていらっしゃる問題の背景を把握して解決方法を一緒に模索して、もし解決方 法がなければつくり出していく。そして解決に結びつけていくというふうにな ると思います。この解決方法がフォーマルやインフォーマルを含む社会資源で す。  この図の中でポイントが2つあります。問題が起こったときにできるだけ早 く探し出すというポイント1。そして探し出したらできるだけ早く相談に乗っ てくれる人にうまくつなげるというポイント2。この2つの仕組みが地域の中 にちゃんと根づいていないと、地域で安心して暮らし続けることは難しいので はないかと考えたわけです。  そこで2ページをご覧いただきたいと思いますが「発見から対応までの仕組 み」とした図です。昭和60年ごろからこんなことをやっているのですが、ま ずは探し出すということに力を入れました。何らかの困り事をお持ちの方を探 し出すために自治会とか地域のさまざまな団体、障害者団体や老人クラブやい ろんな団体の方、さらにはボランティアの方々に、地域の中で何らかの困り事 をお持ちの方がいらっしゃれば民生委員さんにつないでくださいねというこ とをお願いしておきます。また民生委員さんには、自治会や老人クラブやいろ んな団地の人たちに接近して絶えず連絡を取り合って困っている方がおられ ないかどうかを探してもらってくださいねという話をしておきます。こうして 情報が社会福祉協議会に入ってくるようにしました。  すると本当にいろんな情報が入ってまいりました。入ってきたら解決せざる を得ないわけで、個別に民生委員さんと一緒にお家へお邪魔しては相談に乗っ て解決に動く、そんなことをやってきました。右側には、市役所や医療機関あ るいは各種団体と書いてありますが、民生委員さんとの関係が強固になってま いりますと徐々に市や医療機関その他の団体からも直接に社会福祉協議会の 方へ、実はこんな方がいらっしゃるけど何とかならないだろうか、解決方法を 見出せないかなという相談が入ります。これも同じく民生委員さんと一緒に動 くということをやってまいりました。  それだけで解決できればいいのですが、解決できない場合に真ん中の図、検 討というところに入ります。検討には3つのテーブルがありまして、一番左が 生活圏域、真ん中が専門担当者レベル、右側が代表者レベルです。生活圏域と いうのはごく身近な組とか班とか小さな単位の中で、場合によってはご本人も 一緒に入って、これはどうしていこうかという話し合いを持ちます。真ん中の ところは地域ケア会議ですね。右端は、こういった専門職や地域の中で考えて も解決できない、仕組みや制度をつくらないといけないという場合に代表者に 集まっていただいて話し合う。それぞれ話し合った内容に基づいてさらにその 下、対応に移ります。それぞれ書いてあるような、話し合った内容に基づいて 具体的な対応に当たっていくという流れです。これを地域ケアシステムと称し て昭和60年ごろからやり始めて今も動いているわけですが、こんな仕組みで 動かしています。  この部分をまた別の図で表してみました。3ページをご覧いただきたいと思 いますが、先ほど池田さんがお話しになった図と非常によく似ています。楕円 形で書いてあるのが制度による福祉の守備範囲です。どうしても制度には枠が ございます。ところがご本人が持っていらっしゃる困り事というのは、制度が 当てはまらない、はみ出ているところが必ずあるわけです。そこに住民の方と 一緒に働きかけて、多くの人がそれを使ってよかったとなれば制度にしていけ ばいいわけです。  このまさにはみ出ているところに働きかけるのが、住民の方や社会福祉協議 会の役割だろうと考えています。したがいまして、制度でカバーされない部分 を解決する仕組みをつくり出すことが地域福祉の大事なところなのかなと思 うわけです。  さらに4ページをご覧いただきたいと思いますが、こうしたことをより計画 的に進めていこうということで平成18年度に地域福祉計画をつくりました。 地域福祉計画はこれまでの考え方では、行政は地域福祉計画をつくる、社会福 祉協議会は地域福祉活動計画をつくるというふうにばらばらにつくってきて いる経過があるわけです。どうしようかと話し合いました。  もともと伊賀市社協は平成16年の11月に合計6つの市町村が合併してでき 上がっています。合併するに当たって、住民の方々にどういう地域福祉を進め たらいいのかというのを考えていただく「あいしあおう委員会」という委員会 を持っていました。この委員会を母体にしながら地域福祉計画の策定委員会を つくっていったわけです。その中で話し合いましたのは、行政は地域福祉計画、 社協は地域福祉活動計画と分けてつくるのではなくて一緒につくった方がい いのではないかということで、市と社協とさらに住民の方々が一体となって地 域福祉計画をつくっていったものです。  「地域福祉5層と役割」と書いてありますが、伊賀市ではこういう5つの階 層で地域福祉を見ております。一番広い圏域が伊賀市全域です。558平方キロ、 非常に広い市域を持っています。それから第2層と書いてありますのが旧の市 町村単位、合併前の圏域です。  第3層が合併してから新たにつくった圏域ですが、住民自治協議会を中心と した単位。これは先ほどの校区社協、地区社協に該当する部分ですが、住民の 皆さんが一番いきいきと元気にお互いの顔も見えながら活動しやすい圏域と いうのが、恐らくこれぐらいの圏域なのではないかと設定したものです。実は 伊賀市には自治基本条例というのがございまして、市民ができることは市民が やろう、自ら率先して市民がやろう、できない部分について行政と話し合いな がら市は市の役割を果たしていただこうという条例なんです。まさにこの住民 自治協議会というのが、市民ができることは市民がやろうという組織です。  そして第4層が自治会や区、地区社協などの単位。第5層が組や班。世帯数 でいきますと20世帯から50世帯ぐらい。この5つの階層の中で地域福祉を進 めていこうというふうにしているわけです。  下のところに書いてありますが、担い手や拠点はいろんなところがあってい いと思います。第1層のところでは、社会福祉協議会とか地域包括支援センタ ー、障害者の相談支援センターなどがございます。第2層のところでは、ふく し相談支援センターといいまして6つあるのですけれども、それぞれの拠点に 社会福祉士を配置して地域福祉を進めています。それから福祉110番と書いて ありますが、これは住民の方々が相談に乗りますよというレベルです。第4層 は災害対応などですね。特に第5層という身近なところにくるにしたがってよ り身近な見守りをしていこうという流れになっています。  5ページをご覧いただけたらと思いますが、いきなり「安」の重点施策とあ って「安」とは何だということですが、伊賀市の地域福祉計画では、共同の共、 安心の安、参加の参、転ずるの転、連なるという連、「共・安・参・転・連」 という地域福祉五道と呼んでおりますが、忍者五道にもじって地域福祉五道と つけたのです。この5つのキーワードをもとにして地域福祉を進めていこうと しています。  その中で「安」を取り上げて図をお示ししたものです。お手元の資料にはご ざいませんが、伊賀市の地域福祉計画の特徴として先ほどの「共・安・参・転・ 連」の「参」は住民の皆さんがいろいろ話し合いました。高福祉高負担、低福 祉低負担ということがよく言われます。高福祉高負担はなかなか負担するのが 大変だね、だけど低福祉は嫌だ、そうしたら高福祉を維持しながら低負担にで きる方法はないか、これは市民が参加する以外に方法はないんじゃないか。そ れで「市民が参加する」の「参」ということになったわけです。ですから高参 加高福祉というのが「参」のキーワードになっています。  「安」というのは、安心・安全、それからユニバーサルデザインのような安 易といった意味が中に込められております。安心・安全を実現するためには、 先ほど申し上げたように困ったらすぐに見つけられて問題解決につなげられ るという仕組みが必要ですから、ご覧のとおり第1層から第4層まで相談にき ちっと乗れる体制をつくろうよということになっています。  6ページをご覧いただきたいと思いますが、他の計画との関係です。地域福 祉計画は当然他の関連計画と兼ね合った計画になっておりますが、ここのポイ ントは実は地域福祉計画そのものだけで成立するのではなしに、伊賀市の総合 計画に反映されていかないと全く意味がないわけです。  上の橙色の部分は市が担っている計画です。それから下のところ地域まちづ くり計画、これは住民自治協議会がつくる計画です。住民自治協議会がつくる 計画は行く行く総合計画に反映されることになっております。ですから私ども は何を考えたかというと、地域福祉計画が地域まちづくり計画に反映されれば 行く行く総合計画に反映されていくだろう。市民の考え方が行く行く総合計画 を変えていくことになる。そんなことを考えて地域福祉計画をつくりました。 それに対して社会福祉協議会は地域まちづくり計画の策定を支援したり、実践 活動を支援したりするという役割になっております。  以上ざっと伊賀の取り組みについて申し上げてまいりました。  この住民自治協議会というのは、市民の方がそれぞれ役割を担って自らでき ることをやっていこうというものですが、お互いにどこがどういうことをやっ ているかわかりにくいというのがあって、住民自治研修会というのを市の方で 主催してやっていただいています。しかし内容をご覧いただきますと、そのほ とんどが福祉関連、特に災害対策。災害の中でも災害弱者といいますか、障害 をお持ちの方や高齢者が逃げおくれることのないようにするためにどうした らいいかとか、地域の中での小地域の助け合いネットワークをどのようにして いけばいいかというふうに、まさに地域福祉的な課題が住民自治協議会の研修 会の中で話し合われているという状況にございます。  さらには福祉部会、実は地区社協と福祉部会はニアーイコールですけれども、 できたら福祉部会の連絡会も組織化していこうということで今準備をしてお ります。  それから相談に関しては、先ほど「安」のところでさっと触れましたが、相 談に見える方はいろんな課題を背負って相談にお越しになります。必要なとこ ろにうまくつなげれば相談はうまく解決できるのですが、うまく相談に乗れな い場合はうまく紹介できないからたらい回しになってしまうわけで、これを避 けるために相談に乗っていらっしゃる個人のネットワークをつくろうという ことで伊賀相談ネットワークというのが機能したり、その流れの中で悪徳商法 対策とかさまざまな取り組みがございます。 ○大橋座長  どうもありがとうございました。池田さんの発表も今の平井さんの発表もそ うですが、発見から対応までの仕組みと、制度によって対応できない部分をど ういうふうに制度化する動きをつくるかが大事なことでございますが、平井さ んの参考資料をちょっと見ていただきますと、その例として5ページ目に、民 生・児童委員活動を通じて課題を解決すべく実施した事業としてずっとあげて ございます。いかに問題を発見し制度化していったかということが書いてござ います。それから今の相談のことは、14ページに福祉相談支援センターという のがきめ細かく内容も含めて書いてございます。こんなこともご参考にしてい ただければと思います。  それでは池田さんと平井さんの報告をいただきましたので、少しご意見をい ただければと思います。どうぞご自由に、いかがでございましょうか。 ○和田委員  ありがとうございました、大変興味深いお話でした。  池田さんのお話の中で、住民が協働し合える範囲というのが7,000〜8,000 人ぐらいだというのがあって、小学校とか中学校という設定よりもその方がい いのではないかというお話があったのですが、今後地域福祉を進めていくとき にエリアをどういうふうに考えていくのかというのは非常に重要だと思いま すが、これは体験的にそう考えていらっしゃるのか、どんなことをもとにして そういうふうにお話しいただいているのかというのが1つです。  それから平井さんの方でやはり今の問題にも関連するのですが、住民自治協 議会がこれから徐々に広がっていくのではないかと思いますが、下手をすると 上から、今まで自由にやっていた住民の活動をその中に入れていくような感じ になる可能性もあると思うんですね。地域で行われていた例えば地区社協のよ うな活動と住民自治協議会との関係をどういう形でつながりをつけたり、ある いは方向づけをしようとしていらっしゃるかというところをお伺いしたいと 思います。 ○木原委員  和田委員の質問で今7,000〜8,000というのが出てきましたね。もう一つは、 住民は50世帯程度で生きているんだと。住民の側はこの50世帯をいつも視野 に入れ、その中で生活している。一方推進側は7,000〜8,000がいい。両方が どういうふうに折り合うかという問題が1つあると思います。  もう一つ、池田さんの、資料の3ページで、宅老所、ユニットケア、共生ケ ア、そして最後は地域へとなっています。池田さんとは一緒にユニットケアの 研究をしているのだけれども、特養ホームから逆デイ、サテライトから地域へ 利用者を出そうと思っているけど、物すごい壁が特養ホームにある。グループ ホームにしてもどれだけ地域と関係があるかというと、平均的に見ると極めて 少ないですよね。「出口は地域」というのをどう実現したらいいのか。厳しい 言い方をすると、施設を地域福祉の中で位置づけること自体が無理なのか。  もう一つ。平井さん。最初の資料の2ページ、「仕組みづくりを目指して」 というものです。この2ページに「発見」がありますね。自治会長、地域団体、 ボランティアからニーズを発見して、それが民生委員につながって、そこから 社協につながって、社協から各団体へ行くということですけれども、現実論と して、現場の皆さんが嘆いているのは、困っている人のニーズがこの方たちに うまく伝わっていないということです。もしかしたら「困っている人」とこの ルートは合っていないんじゃないか。例えば、困っている人は「あの人がいい」 と言うのだけれども、「いや私に相談しなきゃだめだ」と推進者は言うとか。 そのあたりが平井さんのところはうまくいっているのか。  同じように自治会長、地域団体、ボランティアがつかんだことが民生委員に うまくつながっているのかどうか。次の、民生委員さんから社協へというのも、 うまく伝わっているとはあまり聞かないんですよね。民生委員さんは地域のこ とをすごく知っているけれども、社協は民生委員さんから話を聞いた方がいい よ」なんて僕が時々進言ぐらいです。そして社協からもう一つへ。この4つの パイプが現実には詰まっているような感じがするのだけれども、そちらではど うしているかというのを聞きたいですね。 ○大橋座長  一通りいただいてからでいいですか。では佐藤委員。 ○佐藤委員  似たような質問になるのですけれども、お2人とも結局言われている範域の 問題でまず見ると、非常に狭い50人ぐらいの班みたいなレベルのものが1つ あって、その上に自治会があって、その上にまちづくり協議会とかある意味自 治協議会といわれるようなもう一回り広い、もしくは校区と呼ばれるような広 い組織があって、その上に市長域があるという4層ぐらいの絵をかかれている わけですが、その間のやりとりですね。班が例えば自治会なら自治会とどう連 携するのか。その自治会がまちづくり協議会なり校区とどう連携をしていくの か。先ほどもちょっと出ていましたように、既存組織を位置づけていくような 形で進めていくとなると、このあたりの動きがうまくつながらないと別のもの ができてしまったり別々に動いたりという可能性が出てくるので、そのあたり はどういうふうに連携をとって動くシステムを考えられているか、実際に実践 されているのかというのが1つです。  それと今木原委員が言われたことにつながるのですが、さっき池田さんが言 われたようにそういうところでニーズを見つけて上げていって検討して具体 的な活動に戻してくるというサイクルが起こる、平井さんのところでは矢印で 表しているような部分、そこが具体的にどういう形で動くのかというところが、 今言われているようにうまくいかない非常に大きな部分だと思います。  ニーズを見つけることができても、具体的にそれを解決に結びつける議論が できる場にそのニーズがつながっていかないとか、感じた人が一緒に考えない と、それを誰かに伝えてどこかよそで考えるというシステムではきっと解決に 結びついていかないので、結局は見つけた人たちが一緒になって考えられる場 を設定していく形が必要だと思いますが、そういうのは具体的にこの絵の中で どういうふうにやられているのかということが少しわかれば、具体的にご説明 いただきたいと思います。 ○大橋座長  それでは1つ区切りましょうか。では池田さん。 ○池田氏  すみません、いっぱいあるので漏れるかもしれません。  協働し合える大きさということでご質問がありました。私の資料でいうと20 ページに古い新聞記事ですけれども、10年ぐらい前の記事があります。具体的 な研究成果ということではなくて実体験です。実際に人口が7,000〜8,000人 から1万人ぐらいの市町村に出かけると、行政や社協の職員が、土地と名前を 言うとあの人だねというのがおおよそわかる。それを超えるとどうもわからな い。今100万都市に暮らしていますと、市役所の職員でも地名を言っても出て こないということを考えても、そのぐらいではないか。  その当時デンマークでは7,000人ぐらいに1カ所地区福祉事務所があるとい う話を書物から聞いたのですが、どうもそのぐらいが普通の専門職、一般の住 民でもおおよそ町の中全体が何となくわかるところなのではないかと感じて いるということです。  もう一つの質問で50世帯と8,000人ということですが、やはり住民の支え は原則的には50世帯ぐらいだろうと私も思っているのですが、ここに専門職 がかかわる、この専門職というのは必ずしも本当に専門職なのか、住民リーダ ーのコーディネーターとして採用された人なのかというのはあいまいですけ れども、きちんとした専門職ということで考えても普通の専門職ですと大体 8,000人がいいぐらいの大きさではないかと私は思っています。ただこれも都 市と地方では違うかもしれません。  さらに範囲のところで、私も基本的に何層かにしていますし平井さんの方も 5層となっていますが、図で示すときにはそうかかざるを得ないですけれども、 私はあいまいであった方がいい、はっきりしない方がいいと思っています。隣 近所とは仲がよくなくても、1本筋違いの人と仲がよかったり、子供の小学校 のときの同級生の親と仲がよかったり、病院で出会った自分の息子や娘の年代 の人と仲よかったりというように、地域の中のその人の人間関係をベースに考 えていくことの方が重要で、考える目安として層があると私は認識しています。  もう一つ特養の壁という話がありましたが、10年前に特養で働き出したとき に、90年の八法改正で在宅と聞かされ、その後2000年の社会福祉法で地域福 祉と聞かされていましたが、実際に監査を受けるときには老人福祉法がもとに なって、特養が母体施設で他の在宅サービスは母体施設に併設されるものです とずっと言われ続けました。在宅にしようと思っても、どうやっても監査のと きに絞られて、これ以上やったら取り消すというぐらいまで言われながらも地 域に向けた取り組みを押し通してきました。  そういう意味では、制度の方向と現状の制度をどう緩やかに変えていけるか というのは課題だと考えています。私どもは国の方や都道府県や市町村の方と 一緒に考えなければいけないと思っているのですが、先ほど説明し忘れました が、やはり行政の政策担当の方や制度を運用する担当の方と実際の状況を一緒 に理解して、どのぐらいまでこの制度を緩和して実施できるかということをき ちんと議論できるような場が今最も必要ではないかと思っています。それは平 井さんのご報告でも同じく感じたところです。 ○平井氏  まず自治会それから住民自治協、それから地区社協との関係についてですが、 住民自治協というのは後からできてきたわけです。地区社協の方が先にあった という地域があります。一方、地区社協がなくて住民自治協ができたという地 域もあります。こうした2つの地域によって地区社協と住民自治協の関係がち ょっと違うのですけれども、私たちのスタンスとしては、住民自治協議会の福 祉部会が地区社協なんですよという説明を今しています。  もともと地区社協があって住民自治協が後からできたという地域は、地区社 協の活動が活発であればあるほど、そんなの後からできてきたのに何を言って いるんだ、というところがあります。一方、何もなかった地域に住民自治協が できたところは、すんなり福祉部会として組織化されて動きやすいというとこ ろがあります。いずれにしても時間はかかるだろうと思いますが、恐らくは住 民自治協の福祉部会が地区社協の役割を果たしていくのだろうと私どもは考 えています。  住民自治協と自治会との関係はどうかということですが、実は自治会にとっ ても住民自治協の方が後からできているわけですね。我々は住民の福祉のこと を一生懸命やってきたんだ、住民自治協が福祉部会をつくるというのはどうか、 という思いの方も当然いらっしゃいます。だけど住民自治協議会の役割と自治 会の役割は違うんだ、それから範囲も違うんだと。自治会は住民自治協議会よ りも狭い範囲です。自治会は世帯参加ですけれども、住民自治協議会は個人参 加です。ですから、そういう違いがあるんだということを徐々に認識されて、 自治会長さんが住民自治協議会のメンバーになった、あるいは役員になるとい うスタイルになりつつあります。  まだまだスタートして3年でいろいろ動きがあると思いますが、住民自治協 がちゃんと役割を発揮していくことになれば、住んでいらっしゃる方々が安 心・安全に暮らしていただけるようになるのではないかと期待しています。  それから相談情報の伝達、つながりのことですけれども、困っていらっしゃ る方にどう働きかけていくかというあたりは参考資料の21ページをご覧いた だけたらと思います。ちなみに20ページが地域ケアシステムの概略、先ほど は簡単な図でしたが、より細かく書いてあります。  情報伝達が果たしてどうなのかというお話ですが、民生委員さんは社会福祉 協議会が事務局を担っています。私ももともと民生委員でした。そういう関係 があって民生委員さんとは非常に密接な関係にあります。民生委員さんは厚生 労働大臣から委嘱を受けた特別職の地方公務員ですから守秘義務も負ってい るわけです。そういった方にちゃんと動いていただくことの方がより大事なの ではないかと考えたわけです。  民生委員さんお一人お一人に福祉票という発見のためのカードをお渡しし てあって、民生委員さんはそれを使って社会福祉協議会にいろんな情報を出し ていただける。ただ出すだけでなくて、社会福祉協議会の職員が一緒に訪問し て解決に携わる。問題解決ができれば民生委員さんにとったら、こういう問題 は社協に持ち込んだら何とかなる、地域にある問題は社会福祉協議会に持ち込 めば何とかなるという雰囲気が地域の中に広がればお互いに信頼関係が高ま っていきますから、そんな取り組みをずっとやってきたという流れです。  さらにそれが派生して他の団体や関係機関からも直接に情報が入る。当然私 どもに直接相談にお越しになる方もいらっしゃるし、その方の状況に応じては 民生委員さんと一緒に解決に当たる場合もあるという流れです。そのあたりは 20ページからずっと25ページぐらいまで書いてございますので、またご覧い ただければと思います。以上です。 ○木原委員  私は地区社協や町内会福祉部のアドバイザーをずっとやっているのですけ れども、その担い手たちは地域がつかめないで望洋としているという感じなん です。例えば小学校区からなら地域はほとんど見えませんよね。実態がつかめ ないから何をするかというと、隣の地区社協もパトロールをやっているから 我々もパトロールをやろうかとなる。そこで全国で同じような事業をすること になってしまっている。  町内会についても、500世帯となると町内の実態はあまり見えていない。な らばどうしたらいいのか。我々はまず校区をきちっと押さえて、次に町内会を と、上の方からしくみをつくっている。ところが住民は、池田さんが書いたと おり50世帯の世界なんですよ。その50世帯の中でニーズがわっと出ている。 その中にいればニーズが見える。女性なんかに見えているわけですよ。そのニ ーズが町内から地域へと吸い上げられていない。  だから僕は今ある社協と一緒にご近所社協をつくろうと構想しています。50 世帯で社協をつくってしまおうと。我々は今、上から地区社協ばかり強力にし ようと思っているけれども、逆にご近所のあたりに地区社協や事業所の足場を 持っていく。その足場からご近所力を強めるための支援をする方がいい。そう するとご近所のニーズが上に上がっていく。町内会に、こういうことをやって くださいよと。そこで町内会の福祉部が活性化する。町内会でできないことは 地区社協に「やってくれ」と。これで地区社協も活性化されるのではないかと いう考えを持っています。だからこの8,000と50の関わりをお聞きしたので す。 ○大橋座長  他にはよろしゅうございますか。どうぞ。 ○榊原委員  お2人のお話を聞かせていただいて、先進的な取り組みのお話を伺いながら も実は共通して伺いたいことが1つあります。地域福祉と一般名詞でお2人と も語っていらっしゃるのですけれども、よくお話を伺っているとこれは高齢者 福祉のことですよね。福祉福祉とおっしゃりながら結局は高齢者のための福祉 のケアをどうするかということが論じられていたように思います。  ただ地域に暮らしているのは高齢者だけではないし、特に今の時代、福祉の 支援を必要としているのは高齢者だけではない。言うまでもなく子育て家庭は どこも悲鳴を上げていますし、その中で虐待も起こっている。10年ぐらい前に マスコミなどでも介護地獄と言われていたような事件が相次いで報道されて いたのにかわって、最近は子供が親を、親が子供をというような事件が後を絶 たないような状況がある。もう少し大きくなった子供たちの中でも思春期の段 階や、または社会に出るような段階でさえも引きこもり、ニート、さまざまな 問題を抱えている。  地域の中の福祉ニーズというものが非常に多様化し複雑になっているのに 対して、高齢者の福祉は実はまだ一番進んでいて相当取り組みもいい形になり つつある分野ではないかと思うんです。  例えば平井さんが見せてくださったレジュメの2枚目、発見から対応までの 仕組みの上の方にある図。確かに困っている人に対して自治会、地域団体、ボ ランティア、民生委員さん、社協さん、行政、医療機関、各種団体、さまざま な機能や団体が地域にあると思いますが、子育ての方にはこれはほとんどつな がっていない。私自身子育てをしてきて、または子育てについての取材をして きて、または保育園で父母会の役員なども含めてずっとやってきて7年ぐらい 地域での活動もやっているのですけれども、社協さんとの接点はこれまで一度 もなかったのです。ここに書かれていることは結局高齢者が対象の話であって、 他のニーズに対してはどうしていらっしゃるのか、また今後どのどうしていく べきだとお考えなのか。  池田さんが見せてくださったこのグラフ、すごくおもしろく拝見させてもら ったんです。何がおもしろいかといいますと私にとっておもしろかったのは、 11ページの表ですけれども、赤ちゃんのときは人間関係が小さくておばあちゃ んになったら大きくなっているとつくられているのですけれども、半世紀ぐら い前または1世紀ぐらい前まで、日本人の人生の中での人間のネットワークの 幅の広さって多分赤ちゃんのときから高齢者になるまでそんなに変わらなか ったのではないか。集落の中のすべての人から受け入れられた子供時代を過ご し、そこですべて終える人もいれば都心に出ていったり違う国に行ったりして 暮らした人もいたでしょうけれども、人間のネットワークの広さというのは子 供のときから相当大きかったはずなのに、それが今すごくやせ細って小さくな っているがゆえに、大人になっても、高齢者たちにとっても人間ネットワーク がとても狭くなっているという問題があるのではないか。子供のときから地域 全体がかかわるというところがとても今の福祉に欠けているのではないかと いうところについてどうお考えなのか。お願いします。 ○金井委員  お2人のお話、大変興味深く教えていただきました。1つはニーズの発見か ら制度化に向かうという流れは非常にわかるのですが、自治体の現場で見ると むしろ逆の方向のベクトルの方が強くて行革の中で制度をどんどん減らして いこうという圧力がある。特に単独事業というのは見直しのときに一番ねらわ れるということがあるのですが、そういう逆の流れの中にあるとき、基準を厳 しくしてどんどん対象者を減らしていこうという流れの中でこの地域福祉の メカニズムというのはどういうふうに作用するのか。  特に行革サイドからいえば、行革で単独事業を減らしたその受け皿にむしろ、 悪く言えばただで使ってやろう、あるいは安くつかってやろうという思惑が発 生してくるのですけれども、その中のせめぎ合い。時計回りに回るのと反時計 回りに回るのと両方あるのではないかということについて、どういうふうに対 応されているか教えていただければというのが1つです。  それから2つ目、それにもかかわるのですけれども、伊賀市社協のケースで は高福祉高負担か低福祉低負担かを超えて高参加高福祉というカテゴリーで すが、これもやはり行革サイドからいうと、サービス切り捨てはできないけれ ども負担を求められないからとりあえずはおいしそうな、ひょっとしたら低負 担でできるのではないかと。しかし実際は高参加というのは事実上高動員であ って、要はお金で払うかわりに体で払えということに実態上は近くなる可能性 がありまして、実際問題税金で制度化を賄えない場合、果たしてそういう地域 福祉のメカニズムでどこまで支えることができるのか。  特に人口7,000〜8,000というのは昭和の大合併のときの中学校を維持でき る市町村というイメージで、実は文部科学省も総務省も既にここから撤退し始 めているわけですよね。だから早い話、校区は学校選択制でもう放棄するとい うのが文部科学省サイドの発想ですし、総務省からいえば、合併ということは 端的に言えばどんどん撤収していこうという流れの中で、果たしてこの地域福 祉の分野だけが最後まで地域にとどまり続けることができるのかというのを、 現場で闘っている方のご感想をいただければと思います。 ○大橋座長  かなり難しいかもしれないけれども、それではよろしくお願いします。 ○平井氏  まず最初の、高齢者だけしか考えていないのではないかということについて ですが、ニーズの量からすると高齢者が多かったということなんです。お手元 の参考資料の5ページ、先ほど委員長からもご紹介がございましたが、これら をご覧いただくと必ずしも高齢者だけではないわけです。障害者の作業所であ ったり、あるいは学童保育。これなんかも民生委員さんが父子家庭の子供を見 つけて、しかもその子供さんが長期の休みの間、お父さんが働きに出ていて昼 ご飯を食べていなかったという事例をもとに学童保育が始まるわけです。あと は子育てサロンとか、児童虐待のネットワークづくりとか、要はいかにその地 域にあるニーズに食いついていくかだと私どもは考えています。ですからニー ズがあればそこに動くというものです。  さらに障害関連で申し上げますと、最近では精神障害者の就労支援とか、あ るいは安心していられる居場所づくりとか、あるいは障害をお持ちの方に関わ っていらっしゃる方々のネットワークづくりなどをやっております。実際に地 域の中にはたくさん受け皿がありまして、特に田舎の方では小規模の事業所、 小さなお店ですね。個人商店などで昔は障害をお持ちの方がたくさん雇われて いたんです。お菓子屋さんの職人の後継者がいなかったのです。そのかわりに 精神障害をお持ちの方が働き始めた。だけどフルタイムでは働けません。3人 で1つの工程を1日こなす。これでちゃんと働けている。  こんな取り組みなどをやっていて、さらには最近ではニート対策にも取り組 みはじめました。ニートについて関わっていらっしゃる方は実はお互いにつな がっていなかったというのが最近わかったんです。ニートについてのシンポジ ウムをやって、これからどうしていこうかと今話し合っています。ニーズとい うのは地域によって当然違いますけれども、時代によって大きく変わります。 今まさに我々の地域のニーズが何なのか、そのことにずっとこだわり続けてい るということです。  それから、参加というのは安上がりと違うかというご指摘ですが、ある意味 そうかもしれません。だけど私たちのとらえ方としては、参加することによっ てご自身の自己実現を図ることを目指します。先ほどの和菓子屋さんに勤め始 めた精神障害をお持ちの方も、ご自身は、私が働いていいのだろうかと最初は 思っていらっしゃったんです。今まではしてもらう側ばかりだったから、まさ か他の人の役に立つなんて考えてもいなかったとおっしゃるわけです。それぞ れ市民が他の人たちの役に立つことがきっと何かある。そのことを通してご自 身が自己実現を図っていく。これは非常に自然な姿だと思います。  安上がりのためにとなると問題だと思いますが、そうじゃなくてお一人お一 人が自己実現を図っていくためにどうしたらいいのかというところからスタ ートすべきではないかと考えております。 ○池田氏  最初の質問で言い訳ですが、私どもはセミナーと若干の出版で運営を成り立 たせているものですから、すべてに手を広げるというのがなかなか思いとは別 にできないというところです。ただ、基本的には地域福祉の視点で高齢者中心 にということをさせていただいています。  子供の問題ですけれども、先ほど地域がどんどん小さくなっていくという話 がありましたが、学校選択とか保育園選択というのは本当にいいのかなと私は 思っていて、そうやって地域からどんどん離れていくことをしていいのだろう かと私は思っています。そういう意味では地域の学校を守る、あるいは地域の 商店を守る。本当の公でなくてもその地域においての公共財をみんなで守って いこうという視点が今こそ必要なのではないかという気がしているので、本当 はもっと小さなところで自分たちの問題を考えてほしいなと思っています。  子供の問題で、私はどちらかというと、地域福祉を実現するために特養とか 保育園というサービスが地域福祉になじむように変わっていただけないかと 考えています。保育園も特に3歳ぐらいまでの子供たちにおいては自宅のよう な保育園の建物であってほしいし、今どきどこに行っても2歳児の水洗トイレ はないんですよね。家に帰ったら大人仕様のトイレで子供もトイレを済ませる のに、保育園では子供の国になっているわけです。それで子育て支援をしてい るとは到底思えなくて、やはり子供が家に帰って役立つように保育園のあり方 に変わっていただかないとだめなのではないかと思っています。そういう意味 では全体を今の時代の、あるいは住民が参加してつくる社会に切りかえる視点 が必要なのではないかと思っています。  もう一点、制度を減らそうという時代にという話がありましたが、私は必ず しも制度そのものはもう新しくできなくてもいいと思っています。今ある制度 をどれだけ幅を持って運用できるかという方が大切なのではないかと思って います。ところが制度外は、イコール無認可と言われるんです。無認可はイコ ール悪いものと言われています。今私たちはどちらかというと制度にあぶれた ものをどうやって解決するかというところに取り組んでいるのですが、どうも 無認可、悪いものの支援をしているような気がしてなりません。そういう意味 では、無認可で悪いものを、きちんと自治体や行政と一緒にいいものにしてい くような議論ができる、制度外を一緒に考えるような仕組みが、先ほども申し 上げましたが、必要ではないかと思っています。 ○大橋座長  ありがとうございました。まだまだ意見交換をしたいところでございますが、 次の議題もございますので先へ進めたいと思います。  本当は池田さんの資料の8ページと7ページの関係なども論議しなければ いけないと思うんですね。8ページは下から積み上げて連合会という意味合い と、異なる組織体が多様にあるその組織体間の連絡調整というのをどう考えて いくのかというのはかなり大事な問題で、今日ご欠席の今田委員がこういう組 織をつくるとややもすると囲い込んでしまうのではないかという、先ほどの総 参加の問題も含めて論議をしたい部分があったのですが、残念ながら時間があ りませんので、特に伊賀市は地域福祉プラットフォームなどをつくってきた経 験もありますから聞きたかったのですが、次回ということでお許しをいただけ ればと思います。池田さん、平井さん、お忙しいところ本当にありがとうござ いました。  それでは今日の大きな2番目の課題でございます既存施策のレビューとい うことで、福祉サービス利用援助事業について中村企画官からまずご説明をい ただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○中村企画官  では資料4に基づきましてご説明いたします。  まず1ページ目をお開きください。位置づけでございます。この福祉サービ ス利用援助事業は、平成12年介護保険制度が導入されるとともに社会福祉に 関する一連の法改正が行われたことによって福祉サービスが措置から利用へ と移行する中で、利用者の利益の保護を図る仕組みの一環として第2種社会福 祉事業として規定されたものでございます。  具体的には、判断能力の不十分な人であっても福祉サービスの利用が適切に 行われるよう助け、これに伴う日常的金銭管理等をあわせて行う仕組みでござ います。また、社会福祉法におきましては、全国どこでも対応できる仕組みが 必要であるという考え方のもと、都道府県社協に一定の役割を期待しておりま すので、平成11年11月から地域福祉権利擁護事業――今年度からは日常生活 自立支援事業という名前になっておりますが、そういった名称のもと都道府県 社会福祉協議会を実施主体とした国庫補助事業を開始したところでございま す。  2ページ目をお開きください。そこでこの事業の内容でございますが、平成 18年度末におきまして596ケ所の社協なり、あるいはNPOも含まれておりま すが、そういったところで行われておりまして、対象者といたしまして平成18 年度末実利用者数は2万1,904人となっております。  具体的なサービス内容ですが、この一番下でございます。具体的には、利用 者との契約に基づいて福祉サービス申請の助言や同行、サービスの利用料の支 払い、公共料金の支払い等の日常的金銭管理等を実施しております。  3ページ目をお開きください。その体制でございます。原則常勤になってお ります専門員と非常勤であります生活支援員によって実施しております。現在 866名の専門員、1万847名の生活支援員の方々が配置されております。  それぞれの業務内容について援助のプロセスに即してご説明申し上げます と、同じ3ページの下半分でございます。まず基幹的社協等に多様な経路から の相談がございます。例えば高齢者ですとケアマネジャーあるいは行政機関、 障害者ですと行政、福祉施設や医療機関といったところから相談が入りまして、 申請者の実態把握なりニーズの把握を行いまして支援計画の作成そして契約 締結、ここまでは専門員が対応するところです。そして契約に基づきまして福 祉サービスの利用あるいは行政手続きの同行など、また日常的な金銭管理等を 実際に行うのは生活支援員でございまして、そのモニタリングを専門員が行う という体制でございます。  4ページ目をお開きください。この事業をやっていく中で見えてきた効果で ございますが、左半分でございます。福祉サービス等の利用援助やそれに伴う 日常的金銭管理を実施することにより、個別のサービス利用では問題解決しな い利用者層にアプローチできているのではないか。あるいは、本事業によって 親族による金銭搾取等や消費者被害が発見されていて、副次的効果としての見 守り機能が大きいと考えております。  一方課題点でございますが、全国的に見ますと相談件数、利用契約者数とも 年々増加しておりますけれども、実施主体間の格差が大きい。これは後ほど後 ろの方にグラフ等もついていますのでご参照いただければと存じます。また、 本事業の対象と考えられる在宅でひとり暮らしの認知症高齢者、知的障害者、 精神障害者の数を33万9,000人と推計しますと、平成18年度末の実利用者数 で見ますと、その6.5%に過ぎないという状況でございます。まだまだ不十分 と言わざるを得ないだろう。  5ページ目でございます。最後に私どもの問題意識をここに書かせていただ きました。この事業の現状を見ますと、郵便物の確認・整理や通院の調整など、 福祉サービスの利用や行政手続等にとどまらないいわば日常生活上のさまざ まな判断への支援が行われているのではないか。また本人の判断能力が不十分 であるため、まずは本事業のサービスの必要性について本人の自覚を促すため の相談が必要。あるいは、これは本人が契約しないと実際のサービスが提供さ れないという構造でございますが、契約に至らない場合であってもかかわりを 継続して見守るなど、要支援者の日常生活の継続にとって本事業の相談の果た す役割が重要であるという点が見えてまいりました。  そこで以上のような現状を踏まえますと、福祉サービスの利用や行政手続等 にとどまらず判断能力の不十分な人の日常生活上のニーズを発見し、その判断 を支援することによって要支援者の生活を継続的に支える仕組みとすること が必要ではないかという問題意識を持っているところでございます。以上でご ざいます。 ○大橋座長  ありがとうございました。それではただいまの事務局のご報告を踏まえて現 状はどうなっているかということで、今日は世田谷区社会福祉協議会福祉支援 部権利擁護センター係長の田邉仁重さんに来ていただいております。田邉さん の方から、世田谷区の福祉サービス利用援助事業の現状と課題ということでご 報告をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○田邉氏  ただいまご紹介にあずかりました世田谷区社会福祉協議会福祉支援部権利 擁護センター、愛称で「あんしん世田谷」と言っておりますが、そちらで係長 を務めさせていただいております田邉仁重と申します。よろしくお願いいたし ます。本日は福祉サービス利用援助事業に携わる現場から、事業の実際と課題 についてご報告いたします。  初めに世田谷区社会福祉協議会の取り組みですが、まず経過についてです。 世田谷区社会福祉協議会では、平成12年度地域福祉権利擁護事業――東京都 ではまだこの名称で行われておりますが、開始当時から東京都社会福祉協議会 の委託を受けて基幹的社協として事業を行ってまいりました。翌13年度には 社協内に専任の係として権利擁護センター「あんしん世田谷」を設置いたしま した。17年度には世田谷区社会福祉協議会の5カ所の地域事務所設置に伴いま して、福祉サービス利用援助事業の専門員等を地域に配置し、利用者のより身 近な地域で支援ができる体制をとっております。  続きまして実施体制です。現在権利擁護センターでは、常勤4名、嘱託2名、 計6名のうち3名が専門員として仕事を行っております。初回の利用相談の受 けつけ、アセスメント、支援計画の作成、利用契約、それから生活支援の選定 等を行っております。その他に生活支援員の採用、研修、地域社協事務所専門 員への相談助言、定例会の開催、また委託元であります東京都社会福祉協議会 との連絡調整、それから事業予算計画などを担当しております。また地域事務 所におります専門員は、支援計画に基づいて生活支援員と連絡調整をしながら 利用者の生活支援をより近いところで行っております。  生活支援員につきましては、世田谷では平成13年度より住民からの公募で 行っております。採用に当たっては説明会への参加を必須としておりまして、 事業趣旨を説明した上で、守秘義務等がございますし、職員といっても生活を 支えるほどの謝礼は支払えないので、そういったことをよくよく説明して納得 された方に応募用紙をお渡しします。そして書類審査、面接審査を経て採用、 登録という形になります。また独自に新任研修を受講していただきまして、活 動を始める段階になってから社協と臨時職員の雇用計画を結ぶという形にな っております。現在は28名が活動中で、今年度も8人の登録が予定されてお ります。  また事業主体として東京都社会福祉協議会には専門員及び生活支援員の研 修とか、困難事例の相談助言、苦情の受付窓口として運営適正化委員会など、 バックアップ体制が整っておりますので、そちらとも連絡をとりながら事業を 運営しております。  続きまして財源の概要です。平成19年度の予算につきましては総額で5,846 万3,000円となっております。内訳は、東京都社会福祉協議会の委託費が512 万2,000円。利用料収入が294万2,000円です。ただしこれには、法人と行っ ております後見人の報酬とか独自の財産預かりサービスなどの利用料も会計 上含まれております。その中から福祉サービス利用援助事業だけで利用収入を 見てみますと、約120万円となっております。世田谷区の補助金が4,457万 3,000円、その他寄附金、社協基金からの取り崩し金などを充てながらの事業 運営となっております。  私どもの福祉サービス利用援助事業の現状に移らせていただきます。契約実 績ですが、12年度の事業開始からの累計で90件となっております。現時点の 契約件数は41件となっております。84万の人口を抱える世田谷区の社協とし ては、やはりまだ契約件数が少ないというところがあろうかと思います。  続きまして利用者の属性ですけれども、やはり認知症の高齢者が7割弱とな っておりまして多いです。認知症高齢者の平均年齢といたしましては79.4歳 ということになります。残りの3割の方は精神障害者で、こちらの平均年齢は 60歳ということになります。保護者である親の高齢化または死亡によって利用 開始となるケースが多いので、全体から見ると若いということになります。こ の両者の平均でいきますと現在の利用者さんの平均年齢は76歳ということに なります。また女性の利用者が全体の6割を超えておりまして、やはり女性の 方が多いということになります。  現在の利用者の生活の場所で見てみますと、入院及び入所中の8件を除いて 全員在宅で生活していらっしゃいます。世田谷では在宅の方の支援を原則とし ておりますので、もともと在宅だった方の入院、入所ということになります。 この中で親子で契約されている方が1世帯ありますが、それ以外はすべて独居 世帯となっております。  利用者の85%の方が介護保険サービスを利用されておりまして、多いところ で要介護1、2の方となっております。また精神疾患が認められる方の場合、 手帳を持っていない方というのも数多くいらっしゃいます。支援を行う上では 医療機関、保健師さんとの連携などが必要になるのですが、手帳を取得されて いないということで公的支援が受けられずに、こちらの福祉サービス利用援助 事業の支援だけでは非常に難しく専門員も苦労しているところでございます。  続きまして契約状況になります。2ページ目になります。こちらのサービス の利用申し込みですけれども、申し込みは基本的には利用者さんご本人という ことになりますが、66%が地域包括支援センター、介護支援専門員や行政の保 健福祉課等の窓口からの紹介となります。そちらに至るまでに、地域住民や民 生委員さんがまずは地域包括支援センターとか行政に通報されております。そ こで福祉サービス利用援助事業が必要だと判断されますと、私どものところに お話が来るということが1つの流れとなっております。  また最近ありました印象的な事例としましては、頻繁に通帳の再発行を行っ たり、多額の預金を引き出す高齢のお客さんが金融機関の窓口に来るというこ とで、それを心配した金融機関の職員の方がその方の地元の地域包括支援セン ターに、こういう方がいらっしゃいますよということで通報し、地域包括支援 センターが訪問したところから私どもの福祉サービス利用援助事業につなが ったという事例もございました。  そういった形でご本人からの利用申し込みというよりは、やはり発見するも うちょっと身近な機関というのでしょうか、そういったところからのご相談が 多いということになっております。  最近ではそれでも、利用者の方ご自身が将来に備えたいということで自ら申 し込みをされてくる場合も出てきました。この場合にはまさに福祉サービス利 用援助サービスとして専門員が利用者さんご本人と相談しながら地域包括支 援センターや介護支援専門員につないで、生活支援体制をつくっていっており ます。  続きまして福祉サービスのうち、福祉サービス利用援助として利用計画、利 用料の支払いを行う他に日常的な金銭管理を伴うものが7割を超えておりま す。日常的金銭管理の中身といいますのは、金融機関から年金等の払い出し、 家賃、公共料金の支払いなどライフラインにかかわることが中心となっており ます。第三者の通報により利用契約に至るケースが多いということは、利用者 の生活状況の乱れといいますか、破綻していることが家の外の第三者にもわか るほどになっているということになります。  というわけで、判断能力が不十分な状態がより深刻になってからのサービス 利用ということが言えます。そのせいか平均の契約期間が約2年1カ月となっ ております。在宅生活を支援するサービスの契約期間としてはちょっと短いの が、非常に現場としては残念に思っております。  平均の利用回数は月2回が約半分、月1回というのも40%ちょっと超えたと ころですので、おおむね月1回か月2回の支援ということになります。最も回 数が多い場合は、通帳とか現金の自己管理ができなくて週単位で現金をお渡し しないとすぐに使ってしまうような方がいらっしゃいまして、この方につきま しては最大の週1回の支援ということになっております。この他に生活費を私 どもが預からせていただいているわけですので、やはりなくなってしまったら 緊急支援ということで出かけていって支援をしております。最近この臨時の支 援というのがやはり多いのもちょっと気になるところです。  過去の契約終了件数のうち、利用者の死亡、施設入所、成年後見人等への引 き継ぎということで終了しております。終了のときにはこのような形をとって おります。死亡の場合には預かり財産を相続人へお返しするということが仕事 になります。また施設入所の場合には施設側に管理をゆだねることが多いです。 このあたりは本人契約ということに即した場合に、まだまだ理念と実態の相違 があると思います。また都外の施設に入所して転出した方の場合に、転出先の 社協に契約を引き継いだ例もございます。このような場合には、あまねく全国 の社協でこの事業を行っているメリットを感じる場面でもありました。  成年後見人等へ引き継いだ件数は10件ございます。そのうちの2件は世田 谷区が取り組んでおります区民の成年後見人へバトンタッチをしております。 成年後見人等への引き継ぎにつきましては、申し立ての親族がいない場合には 区長申し立てということにも積極的に取り組んでおります。  続きまして事例です。 ○大橋座長  事例は読んでおいていただくことにしまして、大体わかりますので、課題だ けを簡単に触れてくれますか。 ○田邉氏  わかりました。それでは課題ですけれども、制度の普及啓発ということがま ず課題だと思います。利用者が安心して暮らしていくために役立つサービスだ と私ども専門員たちは自負しておりますが、周知が不足しているためになかな か必要な方に利用いただけていないのが現状ですので、全国的に都道府県社協 であるとか全社協であるとか、そういったところと一体になって周知をしてい くべきだと思います。また判断能力が不十分な方が利用者とうたっております 関係で、当事者の方がこのことを受け入れるにはかなり抵抗もあろうかと思い ます。ただ自立生活の一環として判断能力がなくなっていくということが誰に も起こり得るということは、やはり利用者自身が受けとめていかなければいけ ないことだと思いますので、若いころからの利用者教育なども必要であると考 えております。  次に、本人意思による契約ということの難しさがあげられます。本人が利用 したいと意思表示していただけなければ社会福祉協議会としても契約するこ とができません。また本人が解約したいとおっしゃれば、利用していることが 本人の財産を守ることになるにもかかわらず解約せざるを得ないという状況 もあります。  一方で、判断能力のある大人が自分で決めること、財産がなくなろうがご本 人の大人の判断なのだから無理をして支援していく必要があるのだろうかと いう声も聞こえてまいります。本人意思と制度の限界との間で専門員はとても 悩んでおります。  次に成年後見制度との関係ですが、成年後見制度に移行する際には、申立人 の確保、それから申し立て費用や成年後見人の報酬負担ができないケースの場 合への対応というのがあります。これらが整って初めて福祉サービス利用援助 事業と成年後見制度が車の両輪として、権利擁護の体制が整うと思います。以 上で私の報告を終わります。ご清聴ありがとうございました。 ○大橋座長  ありがとうございました。今の田邉さんの資料の6ページ目に契約終了理由 というのがございまして、そこで49件の契約終了をしているけれども、死亡 が12、施設入所13、成年後見への移行13、本人解約10という、この辺の本人 解約の持つ意味も少し話をしていただければと思いますが。あるいは施設の場 合に、世田谷区の施設に入所しているのに契約を解除してしまう。それは施設 側の論理なのか、ご本人の論理なのかということ、その辺はいかがでしょうか。 ちょっと補足をしてください。 ○田邉氏  まず施設入所につきましては、必ずしも世田谷区内の施設に入所される方ば かりではありません。区外への転出というのもあります。また施設入所になら れるということは判断能力もさらに低下しているということで、本来でしたら 成年後見人がついて解約というのが妥当だろうと思われます。しかしその方の 身上看護は施設側がきちんとされるということ、それから管理すべき財産も少 ないということで、成年後見人をあえてつけるところまで至らず施設側に後の 管理をお願いしているという実態がございます。  それから本人解約につきましては、本人が非常に揺れまして、社会福祉協議 会に通帳等を預けておくこと自体に被害妄想的になられまして、そこでお返し する、またお預かりするという繰り返しをする場合もありますし、いよいよ見 かねたご親族の方がご本人と同居して管理するということで、一応形上は本人 解約ということになっております。 ○大橋座長  ありがとうございました。資料4の中村企画官に説明いただいたところの15 ページの図表で郵便物の内容確認、先ほどお話しいただきましたけれども、そ れから下の方に家族関係の調整というのがありますが、この辺の問題について、 どういう問題があるのでしょうか。あるいは田邉さんのところでどういう問題 があるのか。あるいはもう一つは同じ資料の25ページで、先ほども話が出ま したが、人口10万当たりの相談件数でこんなに差があるというのはどう見た らいいのでしょうか。それでは小林委員。 ○小林委員  今のことと関連しまして。結局15ページのように福祉サービス利用援助事 業は金銭管理の他にこれだけ広範な機能を持っている。これは全国のデータで すよね。そうしますとこれを地域別にみた場合どうなるのだろうか。本日お見 えの世田谷区と伊賀市の場合、このような援助はどうなのだろうか。地域によ ってはもっと金銭管理のところだけに機能が単純化するのか、その辺を1つ伺 いたい。  それからもう一点は、例えば難しい方のケースが幾つかあると思いますが、 職員担当の標準というのはあるのでしょうか。どのくらいの支援員さんがいた らどのくらいのことができるのか、その辺の考えを何かお持ちかどうか伺いた いと思います。 ○木原委員  利用件数が少ないという件ですが、こういう場合「啓発」が必要だというふ うに言われるのですけれども、本当は啓発の問題ではないような気がするんで す。というのは、おばあちゃんがそういう問題を抱えたときに、じゃあ権利擁 護センターに来るかというと、あまりに遠いんですよね。例えば前回出席され た「すずの会」の鈴木さんの場合、会議を開けば、そういうケースがわーっと 出てくる。そこに地域包括支援センターがいれば伝わる。彼女らの普段の活動 で出てきたものは地域包括支援センターに連絡する。ここではそうやって住民 有志から上がってくるんです。  住民は深刻になる前兆の所でかなりつかんでいる。その中で権利擁護のこと を知っている人がいて伝えてくれるわけです。住民の情報ネットワークみたい なものを探って、そこに福祉情報が入っていかないと、結局深刻なところでや っとつかまることになるのではないかという感じがします。そのあたりのこと を考えていないのかというのをお聞きしたいのです。 ○平井氏  私の参考資料の7ページをご覧いただきますと、地域福祉権利擁護事業の目 的評価表がございます。現時点で伊賀地域で契約件数が138件です。相談件数 もご覧いただきますと伊賀が3,312件ということで突出しています。この裏に は先ほど申し上げた発見の仕組みがあったり、あるいは関係者がお互いにネッ トワークを組んでいるわけですね。だから関係者からたくさん上がってくるわ けです。  それから生活支援員に関しては、今およそ30人いらっしゃいます。単純に 138件を割っていただいたらいいわけですが、生活支援員がまだ足りないので 養成講座を開いて成年後見の福祉後見人を養成するのと地域福祉権利擁護事 業の生活支援員の養成を合わせて行いました。今年で2年目です。毎回100人 ぐらいの市民の方にご参加いただきます。非常に関心が高いと思います。 ○大橋座長  田邉さんはいかがですか。 ○田邉氏  郵便物につきましては、訪問しますと未開封の支払い通知書とか、光熱水費 の滞納料金とか、クレジット会社の督促状などがよくあります。実際に電話や 電気がとまってしまっている場合もあります。また年金の振り込み通知書はあ るのですが、通帳がないために本人の手元に現金が来ていないという実態もご ざいました。 ○大橋座長  それ以外のことはどうでしょうか。 ○中村企画官  実施主体間でかなり格差があるという点に関してでございますが、これはま だきちっとした分析ができていない状況でございます。いろんな要因が恐らく あるのだと思いますが、1つはそれぞれの主体の取り組み姿勢の違いというの もあるかもしれないと思います。 ○藤崎地域福祉課長  全国的な数字というまとめをしておりますけれども、全部の都道府県社協で 実施していただいているのですが、基幹的社協ということで市の社協全体にこ の制度をやっていただこうということで今国の補助制度を進めていますけれ ども、段階的にやっておりましてまだ全体に補助制度が行き渡らないという段 階です。毎年要求をして2年後ぐらいには全体に行くようにしたいと思ってい ますが、基幹社協でも1つの市だけでなく複数対象にしていただいても構わな いので、全体的に実施はされていると思っています。  それから資料の15ページに、小林委員からお話がありましたけれども、金 銭管理以外の部分についても全国的な数字をまとめたものがありまして、かな りいろいろな形で実施されていると理解しております。  それから木原委員から、どういう形でつなぐんだということでお話がありま したが、これも資料の23ページに、ご本人、家族、親類、それから各制度の 担当者、福祉機関とか医療機関とか、いろいろな形で高齢者の場合それから障 害者の場合と区分した資料をつけておりますのでご参照いただければと思い ます。 ○大橋座長  ありがとうございました。この日常生活自立支援事業というのは大変重要な 事業だと思うわけで、ある意味では地域福祉の根幹をなす部分になってくるだ ろうと思います。これをどうこれから充実、発展させていくかは大変大きな課 題ですし、特に金銭管理だけではなくて家族関係の調整だとか、そういうとこ ろまで広がってきているというあたりをどう見るかということも今後深めた いのですが、一応これでこの件は終わりにしたいと思います。  それでは続きまして地域福祉計画について論議をいただきたいと思います。 まず事務局の方から資料の説明をいただきたいと思います。よろしくお願いい たします。 ○中村企画官  では資料6に基づきましてご説明いたします。  1ページ目をお開きください。まず位置づけでございます。平成12年の社 会福祉事業法の改正によりまして、社会福祉法に地域福祉の推進が位置づけら れるとともに地域福祉計画の策定が新たに規定されたものでございます。この 地域福祉計画は行政計画でございまして、策定は自治事務となっております。 市町村地域福祉計画と都道府県地域福祉支援計画からなっております。  盛り込むべき内容でございますが、まず市町村地域福祉計画でございますが、 1つは地域における福祉サービスの適切な利用の推進に関する事項。つまり福 祉サービスのニーズや、あるいはサービスの提供に関して目標の提示、あるい はその目標達成のための戦略を規定ということでございます。また、地域にお ける社会福祉を目的とする事業の健全な発達に関する事項。つまり多様なサー ビスの振興なり公私の協働といった点でございます。そして地域福祉に関する 活動への住民の参加の促進に関する事項といたしまして、例えば住民あるいは ボランティア、NPOの活動支援等の内容でございます。  特に次の2ページ目をお開きください。この下半分でございますが、平成19 年今年8月10日に社会・援護局長通知を発出いたしまして、災害時等にも対 応できる要援護者支援方策として、日ごろからの要援護者情報の適切な把握、 また関係機関間の共有が必要でございますので、地域における要援護者に係る 情報の把握・共有及び安否確認方法等を市町村地域福祉計画に盛り込む旨を通 知したところでございます。  1ページ目にお戻りいただきたいと存じます。都道府県地域福祉計画につき ましては、市町村の地域福祉の推進を支援するための基本的方針に関する事項。 社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保または資質の向上に関する事 項。そして基盤整備に関する事項を規定するとされております。  策定手続きにつきましては、事前・事後の両面にわたって住民参加を保障し ているという状況でございます。  3ページ目をお開きください。策定状況でございます。平成18年度末まで の策定済み市町村は3割、策定予定を含めますと6割でございまして、特に町 村部の策定が進んでいないという状況にございます。都道府県につきましては 8割5分が策定済み、7都道府県が策定未定という状況でございます。策定が おくれている理由としてあげられておりますのが、市町村合併と時期が重なっ た。あるいは特に町村部では、体制が確保できなかった。また、これは義務計 画ではないといういこと。あるいは策定による補助金優遇等のメリットがない のではないかというご指摘もございます。  策定の効果でございますけれども、小地域活動のエリア、地域包括センター のエリア等各エリアの設定について調整することができた。あるいは、体制整 備、拠点整備につながったという点など。  また策定の課題といたしましては、方向性については示されていても具体化 方策については明示されていない計画も多い。あるいは、住民の関心の多いひ とり暮らしの安否確認等の高齢者関係の課題が中心になってしまって、孤立死、 あるいは徘徊死、差別偏見等の深刻な問題、あるいは地域の少数者の問題を取 り上げているものは少ないという点だろうと存じます。  次のページをお開きください。今後の課題として私どもが考えております点 を掲げさせていただきました。地域の要支援者、とりわけ少数者の問題の把握 と支援について明確に位置づけ取り組みを進める必要があるのではないかと いう点でございます。住民懇談会や意識調査の実施のみでは把握しにくい少数 者の問題把握と支援を明確に位置づける。この研究会によって明らかになった 地域の要支援者の声なき声をくみ上げるような仕組み、あるいは地域の要支援 者を把握する仕組みづくりと要支援者の日常での生活変化を察知する見守り の仕組みづくりという点でございます。また、これら地域の問題や要支援者の 発見方策を国の支援策として提示できないか。また、要支援者を支援する住民 福祉活動に対して、そうした活動の自立性を損なわないように支援する仕組み が必要ではないかという問題意識をもっているところでございます。以上でご ざいます。 ○大橋座長  ありがとうございました。地域福祉計画につきましては現状の報告者を予定 しておりませんので、ただいまの中村企画官のご報告に基づいて少し意見交換 をいただければと思っております。はい、どうぞ。 ○清原委員  ただいまの地域福祉計画につきまして、ご報告では今後の課題までだったの ですけれども、特に大変大きな特徴は5ページ以降の参考資料の中で、7ペー ジ目の策定手続きにおいて事前・事後の両面にわたって「計画策定における手 続き上の住民参加を保障している」ということです。あわせてこれらを進めて いくときに、8ページ目の盛り込むべき内容の2のところに、「多様なサービ スの振興・参入促進及び公私協働の実現」、あるいは「福祉、保健、医療と生 活関連他分野との連携方策」ということが書かれている点です。  つまり計画策定において住民の皆様あるいは団体の皆様が参加して策定の 手続きを踏むという点については、もちろん介護保険であるとか、あるいは障 害福祉の基本計画についても同様の趣旨の指針が示されているわけですけれ ども、例えば三鷹市の場合ですと、このような計画づくりをするときに審議会 等でも公募の委員の皆様にご参加いただくとか、あるいは先ほど来「声なき声」 という表現がありましたけれども、日常的な団体に属していらっしゃらない方 の声を聞くためには、例えば民生委員さんであるとか、あるいはその他福祉の ボランタリーな活動をしていらっしゃる方が、日常的に小規模のグループ等で 活動されているときに聞いていただいた声などを、代表してそれを反映するよ うにご意見をいただくとか、そのような取り組みを積極的に進めています。  その中で、これからもこの地域福祉計画を改定していく、あるいは補強して いくというときに、このような計画づくりの協働というだけではなくて実践あ るいは推進していくときの協働についてできる限り目標を明示しつつ、これは 三鷹市でも難しいのですが、数値目標的な方向性を示していければいいなと思 っています。  例えばですが、昨年度障害福祉計画についてやはり当事者あるいは当事者支 援団体の皆様にも加わっていただいて計画をつくりましたが、その中ではっき りと委員の皆様から出てきた意見は、計画づくりのときだけの参加では不十分 である。ぜひそれを推進していくための組織を早急につくるべきだということ で、今年度いわゆる障害福祉施策の推進協議会(障がい者自立支援協議会)を 改めて発足させることといたしました。  したがいまして私からの1点目のご提案は、「計画づくりの協働・参加」か ら、「施策・事業の推進への参加」という道筋をこの地域福祉計画に導く必要 があるのではないかということです。  簡単に2つ目のご提案を申し上げますけれども、先ほど冒頭に第4回研究会 の論点の中で、地域の範囲をどう考えるか、ネットワークをどうつくるか、見 つけにくいニーズをどう発見するか、そして活動の拠点についてという点も重 要であるという方向性を示されました。  そういうことで申し上げますと、三鷹市のような人口17万5,000人程度の 基礎自治体の場合ですと、やはり地域の範囲というのは小学校区であったりせ いぜい中学校区であったりするわけです。その中で今までの福祉関係のボラン ティアや組織だけでは、この8月10日に示された通知に副うようなものをつ くることは不十分になりますので、改めて町会、自治会、あるいは防災関係の 組織と、福祉のこうした取り組みをいかに連携することができるかということ が重要になります。  したがいまして、私たちは防災計画等福祉とは違う計画を持っているわけで、 その中で今回地域福祉計画に示された援護者支援の取り組みなどを従前の防 災基本計画などと結びつけながら、いわゆる防災のエリアと福祉のエリアを一 致できるのなら一致させていく。そして1つの取り組みが複数の目的をもって もいいわけですし、むしろその方がより一層日常的な交流や支援が深まるかも しれません。こうして、福祉以外の分野との連携なくしてこの8月に示された 通知の内容は実現できないと思いますので、三鷹市が今年度はじめる災害時要 援護者の支援モデル事業でも、この辺を念頭に置いて福祉以外の団体との連携 を明示していきたいと考えたところです。以上です。 ○長谷川委員  この地域福祉計画はうちの横浜でもそうですが、18区すべてということでは ないのですが私のところでは、先ほども子育てという話があったのですが、保 健ということを入れまして、地域福祉保健計画ということで策定しているんで す。  それによって町内会との関係、社協との関係、行政との関係、それともう一 つ一番重要なことは医師会との関係を非常に強く思っておりまして、それを民 生委員活動の中でうまく組み入れることができるものについては組み入れて いる。また行政で行っている地域福祉保健計画の中でやる。そして社協は社協 でまたつくっております。それとともに、今市長さんから話が出ました地域の 声というものを毎年20選びまして、5年間で100選をつくっていこう。毎年 20の声を発表しながら区民の方々にPR活動をしていく。そういうことを通し て地域福祉保健計画ということで位置づけをしていく。そういった仕組みづく りをきちっとしていくことが私は大切なことなのかなと。  それとともに私たちも災害時一人も見逃さない運動に対応してまいりまし たが、その研修会をやったり、あるいは緊急連絡網をつくったり、マップづく りをしたり、最後のステージ4としまして、いろんな団体と共有してそれをい かに災害時に結びつけていったらいいのか。その共有部分のあり方ということ がこれから大切なことではないかという気がいたしました。 ○和田委員  地域福祉計画をつくられた経験を持っている市町村が随分増えてきている と思いますが、もう少し小さいエリアのところで実際の計画づくりをどういう ふうにしていくのかということが必要で、そのときに例えば自治体は住民にそ のエリアのデータを全部出すということは、もうコンピュータでやっているわ けだから本当はできると思いますが、そういうふうにして自分たちの地域のこ とを住民がかなり本格的に議論できるようにするというのが1つ。  それからもう一つは、この防災の問題は意外にすごい切り口になるのではな いかと思っていまして、自治会の人たちは、一般的に話し合いといってもでき ないけれども防災の問題ならやってもいいよと。これと福祉が完全に今はくっ ついた形になっていますので、これを切り口にすると今日出ていたさまざまな 問題がぐっと見通しができてくる可能性があるのではないかと思っています。 ○大橋座長  今和田委員が言われたように地区レベルの計画を住民参加でつくるという ことの重要性はかなり広がってきたと思いますが、逆に今日の問題提起は実を 言うととても大事なことでして、住民参加でやったときにややもすると気がつ かない部分がたくさんありますよと。例えば、難病の問題とか在住外国人の問 題とかは住民の中からそう簡単には出てこないんですね。ですから計画策定委 員の人たち、とりわけ学識経験者がその辺をきちんと問題提起していかないと、 実はそんなきれいごとに住民の中から意見が上がってくるわけではないとい うことをもっと我々は詰めてみないといけないのではないか。  それから先ほど榊原委員が言われたのですが、高齢者と障害をもった方々の 計画の方に今目が行っていて、子供家庭を支援するシステムがどうしても抜け 落ちるんですね。児童福祉分野というのは点と点を結ぶのですが違うわけで、 家庭内暴力の問題とかを含めてそうですが、相談援助システムなんていうのは どうしても抜けてしまう。  それから合併で随分市町村の規模が大きくなってきたのですが、福祉人材の 養成とか研修とか労働条件の問題というのも、教育行政はかなり自治体レベル でやっているのに、福祉の分野は基礎自治体であまり人材のことについては触 れていないんです。これもかなり行政職員だけでなく業者も含めてそれをやっ ていく必要があるだろうということと、地域福祉計画がつくられたときと時代 状況が大きく変わっていて、やはり福祉サービスの評価をどうするかという具 体的な評価のシステムが実は多くの自治体でほとんどされていないんです。ど こか都道府県レベルでやってくれればいいとか、国のレベルでやってくれれば いいとなって、もっと市町村で福祉サービスの評価ということを考える必要が あるのではないかということですね。あるいはそのサービス事業者だとか法人 の連絡協議会をつくるとか、そうやって網かけをしていかないとなかなかうま くいかない部分がある。  それから先ほど長谷川委員が言われた保健、医療、福祉の連携の協議会の仕 組みをどうつくるかというのは、結構大きな自治体だと、もう医療計画との関 係を相当意識しているんですね。だから保健、医療、福祉の連携のあり方なん ていうのもここに書き込んでおくことはすごく大事なことかなと思っていま す。  それから先ほど清原委員さんが言われたように、条例等で進行管理をきちん と住民参加でやっていくという、そんなことも大事なことかなと思っています。  これもやりはじめますと多分いっぱいあって、私が先取りした形でまとめて しまいましたけれども、今後その辺を少し深めないと、2000年に出たときの地 域福祉計画の位置づけなり地域福祉のとらえ方と、今回のこれからの地域福祉 のあり方を考えるというときの問題とは随分違うわけですから、まさにこれか らの地域福祉のあり方の検討会で論議したことを、例えばNPOの問題とか生 協の問題を含めてどう考えていくかというのがあるわけですので、この計画の 策定のあり方というのはもう一度いつかじっくりと論議してみたいと思って います。  そんなところで座長の越権かもしれませんが取りまとめさせていただいて、 時間ですのでおしまいにしたいと思います。 ○木原委員  これからの進行についてお伺いしたいのですが。 ○大橋座長  前から言っておりますように、前半部分はできるだけ具体的な状況を共通理 解して、後半部分で少し論点を整理して詰めていきましょうということを考え ていますので。 ○木原委員  こういうお勉強会みたいなのはどれぐらい続くわけですか。 ○大橋座長  それでは事務局、何かありましょうか。 ○藤崎地域福祉課長  12月に2回報告を予定しておりますので、そこで一応こういう形は終わりに させていただいて、年明け以降は論点の整理ということです。 ○大橋座長  当初から、13回のうち前半はやや状況認識を共通理解しましょうということ で、後半部分で論点を整理して柱を絞って論議を深めましょうということです ので、今藤崎課長から言われましたようにあと2回ぐらい現状を共通理解する ための作業があるということでございます。それでは事務局の方から何かござ いましょうか。 ○事務局  次回でございますが、12月3日月曜日14時から16時、場所は本日と同じで ございます。 ○ 大橋座長  それでは12月3日ということでございますので、どうぞよろしくお願いい たします。今日はお忙しいところ平井さん、池田さん、田邉さん、どうもあり がとうございました。心からご礼申し上げます。それでは、今日はこれで研究 会をおしまいにしたいと思います。お疲れさまでございました。ありがとうご ざいました。 (終了) 【照会先】           〔これからの地域福祉のあり方に関する研究会事務局〕                 厚生労働省社会・援護局地域福祉課                 TEL 03-5253-1111(内線2859)