07/11/08 第1回労災レセプトの効率的な事務処理に関する検討会議事録 労災レセプトの効率的な事務処理に関する検討会(第1回) 日時 平成19年11月8日(木)10:00〜     場所 厚生労働省労働基準局第1・2会議議室(16階) ○中村医事係長 これより検討会を開催したいと思いますが、検討会を開催する前に傍 聴されている方に何点かお願いがあります。これからはカメラの撮影はできません。事 務局の指定した場所以外に立ち入ることはできません。携帯電話やポケットベルなどの 電源は必ず切ってください。会場における言論に対しては賛否を表明したり拍手をする ことはできません。傍聴中に飲食や喫煙はご遠慮ください。静粛を旨としまして審議の 妨害になるような行為は慎んでください。審議中の入室は慎んでください。危険物を持 っている方、酒気を帯びている方、その他会議の秩序維持のため退室の必要があると認 められる方の傍聴はお断わりいたします。以上の事項に違反したときは退場していただ くこともありますので、よろしくお願いいたします。  では、これより第1回労災レセプトの効率的な事務処理に関する検討会を開催いたし ます。まず、資料のご確認をお願いいたします。本日の資料は、「第1回労災レセプト の効率的な事務処理に関する検討会資料」、資料5「平成18年度医療のIT化に係るコ スト報告書」となっております。資料に不足のある方はいらっしゃいませんでしょうか。  次に、本検討会にご参集いただきました先生方を50音順に紹介いたします。検討会資 料の14頁の資料8「労災レセプトの効率的な事務処理に関する検討会参集者名簿」を ご覧になってください。社団法人日本医師会常任理事の石井正三先生です。 ○石井先生 よろしくお願いします。 ○中村医事係長 独立行政法人労働者健康福祉機構医療事業部医療企画調査役、関東労 災病院医療情報部長の清谷哲朗先生です。 ○清谷先生 よろしくお願いします。 ○中村医事係長 社団法人日本薬剤師会常務理事の森昌平先生です。 ○森先生 よろしくお願いします。 ○中村医事係長 上智大学法学部名誉教授の山口浩一郎先生です。 ○山口先生 よろしくお願いいたします。 ○中村医事係長 続きまして、事務局を紹介いたします。補償課長の明治。 ○明治補償課長 よろしくお願いします。 ○中村医事係長 補償課長補佐の西井。 ○西井補償課長補佐 よろしくお願いします。 ○中村医事係長 補償課長補佐の神保。 ○神保補償課長補佐 よろしくお願いします。 ○中村医事係長 労災医療専門官の中村。 ○中村労災医療専門官 よろしくお願いします。 ○中村医事係長 職業病認定調査官の上村。 ○上村職業病認定調査官 よろしくお願いします。 ○中村医事係長 福祉係長の山崎。 ○山崎福祉係長 よろしくお願いします。 ○中村医事係長 私は、座長選出までの間、司会進行を担当させていただきます医事係 長の中村です。よろしくお願いいたします。  それでは、会議の開催に当たりまして、補償課長より挨拶を申し上げます。 ○明治補償課長 改めまして補償課長の明治でございます。労災レセプトの効率的な事 務処理に関する検討会の開催に当たりまして、一言挨拶を申し上げます。  各先生方におかれましては、日頃より労災補償行政の推進につきまして、格別のご理 解とご協力を賜り、厚く御礼を申し上げます。また、本日はご多忙のところ、本検討会 にご出席を賜り、誠にありがとうございます。  ご案内のように、健康保険及び国民健康保険におきまして、レセプトオンライン請求 が来年の4月1日から、400床以上の病院で義務化をされ、平成23年4月からは、原則、 すべての医療機関におきまして、レセプトがオンラインにより提出されることとなって おります。また、薬局におきましても、一部におきまして、平成21年4月から義務化を され、平成23年4月からは、原則、すべての薬局におきまして、レセプトがオンライン により提出されることとなっております。  今回、先生方にお集まりいただきました目的ですが、このような状況を踏まえまして、 3点ほどございます。1つは、労災保険のレセプトのオンライン請求につきまして、今後 どのように考えていくのかということ。2点目は、オンライン請求を可能とする場合、 どのような点に留意する必要があるのかということ。最後の3点目は、オンライン請求 を可能とする場合、医療機関等は、事務処理の軽減化等がなされるのかということ。以 上3点について、検討を行っていただきたいということでございます。  本検討会の検討結果につきましては、大変短期間で誠に恐縮ではございますが、今年 の12月中旬を目途に取りまとめを行いたいと考えております。先生方におかれまして は、大変ご多忙のところ恐縮に存じますが、ご協力賜りますよう重ねてお願いを申し上 げまして、検討会の開催に当たりましての挨拶とさせていただきます。よろしくお願い いたします。 ○中村医事係長 それでは、早速検討に入るわけですが、その前に、本検討会の座長を 選出願いたいと思います。座長の選出につきまして、先生方からご意見がありますでし ょうか。 ○石井先生 事務局案はございますか。 ○中村医事係長 事務局においては、座長は山口先生にお願いしたいと考えております が、いかがでしょうか。 (了承) ○中村医事係長 先生方のご了承がいただけましたので、山口先生に座長をお願いする ことといたします。大変恐縮ですが、山口先生には座長席にお移りいただきますようお 願いいたします。また、山口先生には以後の進行をお願いいたします。 ○山口座長 ご指名ですので、甚だ僭越でございますが、座長を務めさせていただきま す。どうぞよろしくお願いいたします。  本日はこの検討会の第1回ですので、まず検討会の開催目的等について確認をした上 で、議題に入ります。事務局から簡単に説明してください。 ○中村医療専門官 それでは、労災レセプトの効率的な事務処理に関する検討会の開催 要綱について説明します。検討会資料の12ページの資料6「労災レセプトの効率的な事 務処理に関する検討会開催要綱」をご覧ください。開催目的ですが、医療機関等が審査 支払機関に提出するレセプト及び審査支払機関が保険者に提出するレセプトについて は、平成17年12月の政府・与党医療改革協議会の「医療制度改革大綱」において、「平 成18年度からオンライン化を進め、平成23年度当初から、原則としてすべてのレセプ トがオンラインで提出されるものとする。」とされました。これを受けまして、平成18 年4月に「療養の給付、老人医療及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令」 が改正され、健康保険及び国民健康保険において、医療機関等が審査支払機関に提出す るレセプトのオンライン請求が平成20年4月から400床以上の病院で義務化され、平成 23年4月には原則として全ての医療機関においてオンライン請求を義務化することが決 定されています。  このような中、本検討会は、労災保険のレセプトのオンライン請求の実施について検 討するとともに、オンライン請求の実施による医療機関等の事務処理の軽減化等円滑な 事務について検討することを目的に開催します。検討会の開催は、平成19年11月に第 1回会議を開催し、平成19年度中に3回程度開催するものとしています。検討会の検討 結果は、検討結果報告書として取りまとめることとしています。以上です。 ○山口座長 この検討会の目的を確認しましたので、議題に入ります。まず、議事のア の「検討課題及びスケジュールについて」です。この点についても、事務局から説明し てください。 ○中村医療専門官 検討会資料13ページ、資料7「労災レセプトの効率的な事務処理に 関する検討会開催予定」をご覧ください。  本日の第1回会議では、労災レセプトのオンライン請求の実施について検討し、第2 回会議は、11月29日開催し、オンライン請求による医療機関等の事務処置の軽減化等 円滑な事務について検討することとしています。最後に、第3回を12月中旬ころに開催 し、本検討会の報告書について検討していただき、報告書をまとめていただくこととし ています。以上です。 ○山口座長 スケジュールについて、何かご質問、ご意見等はございますでしょうか。 よろしいでしょうか。 (了承)  では、これで進めさせていただきます。次に進みます。議事のイ「労災レセプトのオ ンライン請求の実施について」です。これは資料1にあるように、検討を進めるに当た っての論点を事務局でまとめていただいていますので、事務局から1点目の論点と、そ れに関する資料のご説明をお願いします。 ○中村医療専門官 検討会資料1ページの資料1「検討の論点」をご覧ください。   検討の論点を大きく2点記載しています。その1番目の論点について説明しますが、 その前に、検討会資料2ページ以降を説明させていただきます。  検討会資料2ページの資料2「健康保険及び国民健康保険のレセプトのオンライン請 求」について説明します。平成17年12月1日に医療制度改革大綱が策定され、検討会 資料5ページにありますとおり、レセプトのIT化の推進等として、「医療保険事務全 体の効率化を図るため、医療機関等が審査支払機関に提出するレセプト及び審査支払機 関が保険者に提出するレセプトについて、平成18年度からオンライン化を進め、平成 23年度当初から、原則としてすべてのレセプトがオンラインで提出されるものとする。」 ことが決定されました。  検討会資料2ページに戻りますが、この医療制度改革大綱を受け、平成18年4月10 日に「療養の給付、老人医療及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令」が改 正され、平成18年4月から、これまでの紙又は電子媒体に加え、オンラインによるレ セプトの請求が可能になりました。  検討会資料6ページをご覧ください。先ほど説明をしました省令では、段階的にオン ライン請求に限定することを規定しており、病院については、規模、コンピュータの機 能・導入状況により順次オンライン請求を義務化することとし、400床以上の医療機関 を平成20年度から、400床未満の病院については、21年度からとしています。診療所に ついては、コンピュータの導入状況により順次オンライン請求を義務化することとし、 レセプトコンピュータを有する診療所を平成22年度から、それ以外は23年度からとし ています。薬局については、コンピュータの導入状況により順次オンライン請求を義務 化することとし、レセプトコンピュータを有する薬局を平成21年度から、それ以外は2 3年度からとしています。資料にありますとおり、平成23年度には、原則として全ての 医療機関、薬局のレセプトのオンライン請求が義務化されることとなります。  システムについてですが、検討会資料7ページをご覧ください。左側が医療機関、薬 局になります。医療機関及び薬局においては、ネットワーク回線に接続するためのオン ライン請求用パソコンを設置する必要があります。そのパソコンには、社会保険診療報 酬支払基金が無償提供する送信用ソフトウェアをインストールして、そのソフトウェア を介してレセプトのオンライン請求を実施することとなります。オンライン請求は、図 の真ん中の上にあります審査支払機関専用の認証局が発行する電子証明書により電子証 明を行います。電子証明書は、有効期間3年、発行事務コスト4,000円としています。 つまり、健康保険においてレセプトのオンライン請求を行おうとする場合、4000円の証 明書発行手数料が必要ということになります。  レセプトは個人情報でありますので、セキュリティに万全を期す必要がありますが、 健康保険、国民健康保険のレセプトのオンライン化のためのセキュリティについては、 検討会資料3ページのとおり、「レセプトのオンライン請求に係るセキュリティに関す るガイドライン」を策定し、医療機関及び薬局においては、ガイドラインに沿ってオン ライン請求システムに係る安全対策の規定を策定することとしています。また、ネット ワーク回線については、ISDN回線又はIP−VPN回線を用い、外部からの不正ア クセスを防止し、さらに、通信中は、レセプトデータのSSL暗号化を行い、セキュリ ティ対策を図っています。  健康保険におけるレセプトのオンライン請求の状況については、社会保険診療報酬支 払基金から資料の提出をいただきました。検討会資料8ページをご覧ください。オンラ イン請求の状況については、カッコ内の数字になります。400床以上の病院については、 42.0%、400床未満の病院については、2.3%、診療所は0.2%、薬局は2.0%において オンライン請求を行っています。また、これをレセプト件数で見た場合、400床以上の 病院においては51.5%、400床未満の病院においては5.2%、診療所においては0.4%、 薬局においては2.8%がオンライン請求を行っていることとなります。次に、オンライ ン請求に移行しやすいレセプトの電算処理を行っているのは、400床以上の病院につい ては、56.5%、400床未満の病院については、19.9%、診療所は11.8%、薬局は61.6% となっています。これも、レセプト件数で見た場合、400床以上の病院においては68.4 %、400床未満の病院においては35.3%、診療所においては17.9%、薬局においては81.5 %がレセプトの電算化を行っており、非常に大きな割合になります。  次に検討会資料4ページをご覧ください。健康保険における既存の請求とオンライン 請求との違いについてです。これはオンライン請求によるメリットと考えられます。1 つ目が、受付時間が延長されることで、夜間まで受付が可能になります。2つ目が、レ セプトの事前チェックができることです。オンライン請求では、受付・事務点検ASPの 利用により、不備のあるレセプトデータを事前にチェックし、修正のうえ、当月のうち に請求することができるようになります。3つ目が安全性の確保です。既存の請求では、 紙レセプト又は電子レセプトが記録された電子媒体を社会保険診療報酬支払基金の窓口 に持参又は送付しているため、搬送時における破損や紛失などの問題が起こりえました が、オンライン請求ではセキュリティを確保したネットワーク回線を使用することから、 安全に請求できます。4つ目が、審査後の増減点連絡書データをダウンロードできるこ とです。社会保険診療報酬支払基金から送付する増減点連絡書については、保険医療機 関・保険薬局で活用できるよう、従前からの紙による連絡書と併せてCSV形式のデータ を提供できます。最後がオンライン請求では確認試験を月に複数回実施できることです。  次に検討会資料9ページ資料3「労災保険のレセプトのオンライン請求の実施に当た っての問題点と必要な対応」をご覧ください。労災保険のレセプトのオンライン請求の 実施に当たっての問題点と考えられるのは、第1に労災レセプトの電算化の状況です。 労災保険においては、平成12年度から医療機関のレセプトの電子媒体による請求を行う ことができるように対応していますが、平成12年度から現在までの状況をみると、非常 に低調であります。また、現在、労災保険においては、調剤に係るレセプトの電子媒体 による請求を行うことができません。このレセプト電算化を進めることがオンライン請 求の第一歩になるわけですが、医療機関で使用するレセプトコンピュータにおいて、労 災レセプトの電子媒体による請求を行うことができるように対応されているものがほと んどないという状況にあり、それは、健康保険及び国民健康保険における電子レセプト の記録方式と労災保険の電子レセプトの記録方式に互換性がないことが原因の1つと考 えられます。第2に、レセプトのオンライン請求のための機器等の整備です。労災指定 医療機関、労災指定薬局においては、レセプト電算処理システムの導入、オンライン請 求用パソコンの設置、オンライン請求するための回線の設置が必要になります。また、 セキュリティ及び個人情報保護について十分な対策が必要になります。  次に検討会資料10ページ資料4「レセプトのオンライン請求によるメリット」をご覧 ください。現在、想定できるレセプトのオンライン請求によるメリットを記載していま す。労災指定医療機関及び労災指定薬局におけるメリットですが、(1)から(3)は先ほど 説明した健康保険と同じメリットになります。そのほか、(4)は、健康保険及び国民健康 保険のレセプトのオンライン請求を実施している医療機関、薬局において、労災保険の レセプトについてもオンライン請求することとなれば、ほとんどの紙レセプトを廃止す ることが可能となります。また、(5)は、診療費の請求に係る増減点データ等を収集し、 労災指定医療機関及び労災指定薬局に対し、参考となるデータを提供することが可能と なります。国としてのメリットは、1つ目が、システムによる事前点検を実施すること により、的確な審査の実施を促進することが可能となること。2つ目が、診療費に係る 増減点データを収集することにより過誤請求の状況を把握し、労災指定医療機関及び労 災指定薬局に対する注意喚起を行い、適正な請求の促進を図ることが可能となること。 3つ目が、レセプトデータを集積することにより、労災保険における事務処理に必要な データを瞬時に取得することができ、迅速な事務処理が可能となることが想定できます。  このような状況を踏まえ、労災レセプトのオンライン請求を行うべきか検討を行って いただきたいのですが、先ほど座長からありましたとおり、検討の論点を示しています ので、これについて説明します。検討会資料1ページの資料1「検討の論点」をご覧く ださい。論点は大きく2点ありますが、1点目のみ説明します。労災保険におけるレセ プトについて、将来にわたってオンライン請求が不可能である状態としておいてよいか。 今後どのような方向を考えるかです。これを検討するに当たっては、次の(1)から(3)を 検討していただくようお願いします。1つ目が、健康保険及び国民健康保険で既にオン ライン請求している医療機関との関係です。これは、健康保険等で既にオンライン請求 している医療機関等において、追加して労災保険のレセプトについてオンライン請求を 可能とするときのデメリットはあるかです。2つ目が、健康保険等におけるレセプトオ ンライン化との関係です。これは、健康保険等において、医療機関等が審査支払機関に 提出するレセプトのオンライン化が進む中で、労災保険のレセプトについては紙による 請求のみとすることは、労災指定医療機関や労災指定薬局の事務を煩雑化させる等の問 題が生じないかです。3点目は、労災保険における業務の適正化等です。これは、労災 保険におけるレセプトのオンライン請求の導入により、国においてどのような業務の適 正化が図られるか。また、適正化の他のメリットとしてどのようなことが考えられるか です。検討をお願いします。以上です。 ○山口座長 ありがとうございました。ただいまの説明について、何かご質問、ご意見 等がありましたらお願いします。また、論点そのものに関するご質問、ご意見がありま したら、あわせてお願いします。 ○森先生 事務局に教えていただきたいのですが、4頁の5の「健康保険における既存 の請求とオンライン請求の違い」の(2)と(5)の違いが、少しわからないのですが。 ○中村医療専門官 (2)は、オンライン請求を行ったあと形式チェックを行って、すぐ に間違いを医療機関や薬局に返すものが事前チェックです。(5)は、オンライン請求を する前に、レセプトコンピュータで作ったデータが社会保険診療報酬支払基金のシステ ムに入力されるか、きちんと判断されるかどうかを確認するためのテストのことです。 いままでフロッピーディスクの試験では月1回だったのですが、オンライン請求の試験 では何回もできます。 ○森先生 (5)の場合は、いわゆる請求としての仕組みの確認と考えればいいでしょう か。 ○中村医療専門官 はい。 ○石井先生 日本医師会もIT化宣言をしておりまして、こういう流れにキャッチアップ することが必要だという認識は当然あるわけですが、問題は、まだ健康保険のレベルで レセプトのオンライン請求が100%ではないという現実があるわけです。なぜそのよう な状態になっているかということを1度検討しないといけません。それは、先ほどお示 しいただいた論点のいくつかの所にありますが、その辺りを検証しながら、労災保険に おけるレセプトのオンライン請求について検討していくのが現実的なのではないかと思 います。細かな論点の問題になるといくつか話すことがありますが、まず、全体から入 れば、一方に社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険中央会が対応しているものがあ り、もう一方に労災保険があるという見方があると思うのです。いちばん大きな違いは、 手挙げ方式の労災指定医療機関と非指定の医療機関があることと、患者はそれを把握し ていないということです。そうすると、労災指定医療機関のレベルで整備をするのか、 それとも全部の医療機関に広げるのか、この辺りのシステムデザインから入らないと、 逆にややこしくなる部分もあると思うのです。  手前味噌でお話しさせてもらうと、ORCAという日本医師会の作ったソフトの中に は労災対応のソフトも入っています。それを導入すると、労災をデジタル情報にするこ とは可能なところまでいっているわけです。それの普及状況もまだ目指せ1万件で、1 万に足りていないのが現実なものですから、それを含めて一緒にやろうとしても、労災 指定医療機関のレベルで考えるのか全部なのか、それぐらいは最初に決めておかなけれ ばならないと思うのです。 ○中村医療専門官 私どもが考えているのは、あくまでも健康保険、国民健康保険が進 んでいる中で、労災だけが全くやらなくていいのかということなのです。あくまでも、 健康保険、国民健康保険のオンライン請求を前提として労災のオンライン請求を考えて いるので、労災保険だけを先行するとは考えておりません。 ○石井先生 ということは、逆に言うと、今回議論の対象にするのは、労災指定医療機 関以外も含めてすべての医療機関ということですか。 ○中村医療専門官 考え方としては労災指定医療機関が対象ということになりますが、 あくまでも健康保険、国民健康保険の保険医療機関よりも、労災指定医療機関のほうが 数が少ないので、保険医療機関が先行することが前提になるかと思います。確かに、対 象は労災のほうは労災指定医療機関と労災指定薬局だけなのですが。 ○石井先生 まずそこから始めるという考え方ですか。 ○中村医療専門官 そうです。 ○石井先生 医療機関には、レセコンを入れている医療機関と入れていない医療機関が あって、2つに分かれるわけです。それに労災指定医療機関か否かというと、2×2で4 とおりの選択肢が出て、どこまでを対象とするかの話になるわけです。 ○中村医療専門官 対象は労災指定医療機関と労災指定薬局です。 ○明治補償課長 労災指定医療機関といっても、新しく指定を受けられる医療機関も当 然あるわけです。労災指定医療機関がいまのままで固まっているわけでは決してないわ けですから、そういう意味では、先に向かっている意味ではほかの医療機関も視野に入 れながらということになると思います。 ○石井先生 全医療機関で労災請求が行われる場合も想定しながら考えようということ ですか。 ○明治補償課長 対象としては労災指定医療機関ですが、現在の労災指定医療機関だけ に限ってということにはならないでしょう。 ○山口座長 先生方は医療の専門家ですからご存じですが、私は素人なので、労災指定 医療機関と労災指定薬局の数はどれぐらいあるのですか。 ○中村医療専門官 労災指定医療機関が約3万6,000、労災指定薬局が約4万1,000です。 ○清谷先生 非常にベーシックな話なのですが、労災指定医療機関は、確実に健康保険、 国民健康保険の保険医療機関であるということでよろしいですか。 ○石井先生 まず、そうでしょう。 ○清谷先生 要は、健康保険、国民健康保険はオンラインで請求できるのに、労災保険 だけ搬送系を健康保険等と別にして、今までどおり紙レセプトを袋に入れて送らないと いけないというなら、効率的ではありませんし、それを全部オンラインで請求できるの だったら、そのほうが効率的なのではないかと考えているというのが私の理解なのです。 ですから、労災保険では、いまのところはオンライン請求を義務化するのではなく、実 際にオンライン請求ができる病院には、労災保険についてもオンライン請求ができるよ うに環境を整え、医療機関側から言うと、搬送系を2つにするよりは1つのほうが便利 だと思います。より効率的に事務作業が行えるようにオンライン請求をできるようにし ませんかというのが、いまの状況ではないかというのが私の理解なのです。それでよろ しいですね。もちろんまずは、健康保険、国民健康保険からスタートすると思うのです が、その更新時にでも、一緒にインストールできるのであれば、そのほうが便利と言え ば便利です。 ○石井先生 さきほど、清谷先生が言及された保険診療をやっていなくて労災保険の請 求をする可能性は、ゼロではないのです。美容整形であるとか、いろいろ特殊な医療を 自由診療枠でやっているので、ないわけではないと思われます。例えば、形成外科も保 険診療の枠が十分あるわけですから、非常に特殊な組合せの中のものであり、ゼロでは ないけれど、それを最初に想定しながら進める必要はないと思います。 ○山口座長 あくまでも、中心は清谷先生がおっしゃった状況を想定しているのだろう と思います。大学病院はどうなっているのですか。 ○中村医療専門官 大部分の大学病院は、ほとんど労災指定医療機関です。 ○森先生 いまレセプトのオンライン化が進んでいる中で、労災についてもオンライン で請求できる環境を整える必要はあると思います。ただ、石井先生がおっしゃったよう に、資料の9頁のいまの問題点の中で、これは2番目の論点で出てくるのかもしれませ んが、(3)で現在互換性の問題があって負担がかかっているという問題があります。そ のようなところを解決しつつ議論を進めないと、これは労災だけということになります し、また薬局が4万1,000件ありますが、請求件数は年間どのくらいになるのですか。 ○中村医療専門官 労災指定薬局が、約52万件です。 ○森先生 そうすると、1薬局当たり年間10件ぐらいの請求ということになるので、義 務化は少し考えていただきたいと思います。また、いろいろな意味で健康保険用、労災 保険用となるとだいぶ負担がかかってくるので、そこは今後配慮していただきたいと思 います。 ○山口座長 事務局から何かありますか。 ○中村医療専門官 今回、論点では義務化ということではなく、レセプトのオンライン 請求をどうするか、環境を整えるべきかという点が論点になるのではないかと思います。 レセプトコンピュータの問題は、我々も大変問題意識を持っていて、それをどのように 解決するかは今後の課題として考えているところです。 ○石井先生 オンライン請求によるメリットの中で、医療機関における入力業務にメリ ットがあるかというと、実際にはあまりないのです。ないと言ってしまうと身も蓋もな いのですが、コンピュータ化ですばらしいのは、データを1回入れることにより非常に 効率的な業務処理ができますし、そろばんと紙ではとてもできない処理もできます。そ のようなメリットは非常に高いと思うのです。即時に世界中どこでもというメリットも あるわけです。  ただ、入力の手間が省けるかというと、そうではないのです。昔は、そのようなもの を導入すれば人件費が省けるなどという話がありましたが、実際はその逆で、それこそ 目の障害や肩こり、腰痛なども含め入力に従事する者が労災となるほどで、入力サイド の少力化はなかなか難しい実情です。もう1つはこの中にある紙レセプトのことで、紙 媒体がなくなるかどうか、(2)と(4)に関わることだと思いますが、いろいろな話を 聞いてみましたが、デジタル化の進展によって紙の需要が減っているかと聞いたところ、 実態としては減っていない、むしろ増えているとのことで、それが現実なのだろうと思 います。どうしてもディスプレイだけで全部を進めることは難しいみたいですね。この 辺りをメインにメリットだと言われると、違和感を感じます。  安全性の意味では確かにレセプトが搬送中に失われたり、破損したといった実例がい くつかあって、非常に大変な話です。日本の搬送システムは世界に完たるセキュリティ を持っていますが、それでもトラブルは起きるのです。個人情報であり、医療情報であ り、しかも金券であるものがそのようなことになっては困ります。ただ、オンラインに すると全部それが解決するかというと、今度はハッキングや漏洩などがあって、しかも データベースセンターを大きくすればするほどトラブルの可能性も大きくなります。昨 今のように停電やメカニカルトラブルで、突然システムコントロールが不能となって鉄 道が止まったり、空港が動かなかったりすることが当然あるわけです。そのときに、サ ブデータをどこかに置いておくのかということになると、これと同じスペースをもう1 つ必ず取らなければいけない。それなら紙のほうがいいのではないかとも思うのです。 議論をあれこれすると、デジタルとオンラインがすべて現行の紙ベースのものよりいい ものかというと、なかなかそれを言い切ることは難しいところもあります。だから、労 災指定医療機関や労災指定薬局におけるメリットはそんなに高くはないと思うのです。 それより、11頁で、国としてデータベースの活用については、どこから見てもメリット が高いと思います。ただし、先ほども言ったようないろいろな問題を解決しながらなの ですが。  時代は、在来線には新幹線が走り、飛行機が飛んでいます。となれば、最も早い飛行 機を利用したほうが便利な点も当然あるわけですから、それにどのように対応していく かが基本的かなと思うのです。国が義務を打ち出していることは承知してますがその切 り口のみではなく、とりあえず便利な方向へ走るだけ走ってみようと、それで問題は相 談しながら対処していこうというほうが現実的ではないかと思います。 ○山口座長 紙全体の消費量については、判断が難しいもので、むしろ増えることもあ ると思います。コンピュータで管理していると会議のときなどには見なくてもいい資料 まで印刷してしまうことがありますから、紙の消費は増えることもあると思います。  学籍簿についてですが、いままで学籍簿の管理は大学は非常に泣いていたわけです。 元は手書きで永久保存になっています。それがコンピュータでやれるようになってから 保管場所は取らなくなったし、出すときもとても簡単なのです。例えば、大学院の学生 が違う大学から来ると、成績証明書を送らせます。昔は郵便で送ってもらっていました から長い時間がかかりましたが、いまは瞬時です。だから、保管や利用の点ではかなり メリットがあるのではないかと思います。それが医療機関にとってどうかですね。 ○中村医療専門官 レセプトオンライン化で、医療機関や薬局でレセプトコンピュータ を導入している所については、確かに違いがあるのかもしれません。紙については、そ の点はなかなか難しいですが、我々としては紙のレセプトがなくなっていくのではない かというところは、大いに可能性はあると考えております。ただ、それ以外のオンライ ン請求のメリットとしては、事前チェックが可能であるとか、いままでレセプトの請求 の修正に数日間かかっていたものが即日にできるという、事務的なメリットはいくつか あるのではないかと考えております。 ○石井先生 他の国の話を聞いても、どうしても普及させたいという場合には、インセ ンティブをつけるという方法があります。現在、医療保険のほうに少しあるのですが、 それで十分なのかどうかの議論は一応あります。また、一般の商売のように、随時請求、 随時振込が実現すると、これはメリットになると思うのです。だから、まだ紙と併存す るいままでのシステムの中で、同様に支払いが2カ月後という形であれば、それほど変 わらないのです。高らかに謳うのであれば、ここまでのメリットがついてくると、普及 度は進むのかなと思います。 ○中村医療専門官 オンライン請求が可能となれば、それをどう普及させるかは次の検 討課題になると思います。 ○山口座長 よろしいですか。それでは、いろいろご意見が出ましたが、健康保険、国 民健康保険において順次レセプトがオンライン化される状況を踏まえると、今後労災レ セプトのオンライン請求を可能とすべきということでよろしいでしょうか。 (了承) ○山口座長 次に、検討の論点の2点目とそれに関する資料について、事務局から説明 してください。 ○中村医療専門官 2つ目の論点について説明します。検討会資料1ページをご覧くだ さい。労災保険におけるレセプトについて、今後オンライン請求を可能とすべきとした 場合、どのような点に留意する必要があるかです。  これを検討するに当たって、資料を少し説明します。検討会資料7ページをご覧くだ さい。健康保険、国民健康保険のオンライン請求のシステムの概要図になりますが、医 療機関、薬局が設置するオンライン用パソコンは、健康保険、国民健康保険の共通で使 用しています。また、ネットワーク及び認証局は、社会保険診療報酬支払基金と国民健 康保険中央会が共同で設置し使用しています。オンライン請求センタは、それぞれが設 置しています。つまり、健康保険、国民健康保険では、システムの一部を共有している わけです。このような状況を踏まえ、論点に戻りますが、1つが、先行する健康保険等 のレセプトのオンライン請求の仕組み等と可能な限り互換性や整合性を確保する必要性 があるか。あるとすればどのような点かです。次に、平成23年度には、原則として全て の医療機関等がオンライン請求を行う予定となっている状況を踏まえ、2点目の導入の 時期をどうするかになります。検討をお願いします。 ○山口座長 ただいまの説明について、ご質問、ご意見等はありますか。 ○石井先生 あえてここに書いていない話から入りますが、1頁の(1)(2)の概念に 書いていないものがあるのではないでしょうか。これは請求ということで、患者さんと いうパラメータが入らないわけです。ところが、医療情報に基づいて請求するわけです から、それとの関連、そして患者サイドの視点はどこにあるのか、医療機関や国がメリ ット、デメリットの議論だけしていると、最終的に患者のメリット、デメリット、こう なってよかったという国民の満足が得られないということになり、好ましくないのでは ないかと思うのです。  本当は電子カルテとの連動と、それに基づいた請求が好ましいわけですが、医療保険 のほうでもDPCといった包括的な評価にしようとしても、従来のものが併存している。 いろいろな病院の形態があって、これがいまも進行中の議論ですから、もう1度戻って そこも入れて考えないとまずいと思います。 ○中村医療専門官 我々で言えば被災労働者になるので、その点の検討については十分 考えなければいけないかと思います。ただ、健康保険、国民健康保険の電子カルテの問 題等いろいろあるので、その状況を踏まえながら、我々としても今後検討課題としてい きたいと思います。 ○山口座長 健康保険、国民健康保険の進行状況を踏まえて、それを見ながらというの が基本的な方針ですから、それはそれでいいと思うのですが、石井先生がご質問になっ たのは、オンライン請求の中身をもう少しはっきりさせたほうがいいということではな いのですか。 ○石井先生 要するに、国民の視点から見てこうだという見え方を、もう少し表現する 必要があると思うのです。 ○清谷先生 それは事務コストが安くなるという被保険者の視点ということですか。 ○石井先生 事務コストは、たぶん安くならないと思います。むしろ、デジタル化、デ ータベースセンターの運営維持、ソフトのバージョンアップなどいろいろなことを考え ると、機器も大体2、3年から長くとも5年ですぐに入れ替わりになりますね。 ○清谷先生 私自身の考えから言うと、できるだけ情報源は1つのほうがいいし、電子 カルテを入れるとそれは一次的な情報としてずっとつながっていき、どこかで打ち出し て、それをレセプトにして送って入力されるというのは、ないほうがいいのではないか というイメージがあるのは事実です。  もう1つは、EHR的なもの、いわゆる電子カルテを非常に簡素化・共有化したものが すべての医療機関から見えるようにするということが、近い将来的にヨーロッパででき るようになりつつありますが、そのような状況が出てくると、例えば労災医療でモデル 的な医療はこうしたらいいのではないかなどという、ある意味、標準的な医療と言った らちょっと言い過ぎかもしれませんが、見えてくるものもあるかもしれない。そういう 方向性に進むということだろうなとは思っているのです。特にいま話をしているのは、 診療報酬の請求と支払いの話なので、そういう意味では、そこで患者あるいは国民のメ リットというと、いまのところエコノミックスの問題ですね。お安くできますよという ことぐらいしかないような気はするのです。その次にあるとすれば、労災医療そのもの に突込む話になってくるので、それはこの検討会のスコープから出てくるのではないか。 それはまた別途検討していただくほうがいいような気がします。 ○石井先生 あえて言っているわけです。例えばこのあいだイスラエルで見てきたので すが、国民の7、8割といういちばん大きい支払側のところで、サーバーも持ち端末もサ ーブする。そして、クリニックと病院と、例えば救急車でどこへ行こうと、即時的にそ の人のデータは全部医療現場からパスワード付きで入れる。だから、そこからすぐ治療 をスタートさせるにも非常に便利。また、支払側にデータベースがありますから、当然、 請求と支払いがそこで即時になされるわけです。医療機関に全部あって、そのうちの何 割かがいまその状態になったと言っていますが、考え方としては素晴らしいことに見え ます。そして患者、国民のメリットはどこにあるかと言うと、本人もパスワードをもら って自分の検査データなど、いろいろな情報に全部アクセスでき、例えば、日中に撮っ てもらったレントゲン写真や血液のデータがあり、夜中にアクセスすると、明日是非お 越しくださいから、様子を見ましょうぐらいまでアラートなどがついて、それも自分の 家からアクセスできる。そういう関係が出来上がっているのを見ますと、これは、その 中のあるパーツをいま一生懸命扱っているなという気はするのです。でも、先ほども言 ったようにこのレセプトデータというのは、紙に書いた瞬間に支払いのための金券でも あります。本人の非常に大事な情報から抽出した金券の情報になるわけですから、いま、 医療側が要望されていますが、説明責任がなされていない、請求書(明細書)を明示し ろなど、いろいろ言われるわけです。でも保険診療の形が非常に複雑化していますから、 窓口で患者が納得できるように全部説明できるかどうか、これはかなり難しいのです。1 回目と2回目とどうして料金が違うのか、いや、それはそういう制度になっているから だとしか言えないとすると、そんなのおかしいじゃないかと目の前で言われてもなかな かうまく説明ができない。これが、例えば請求の話で進むとしても、これは結局、患者 側にどうやって還元して、それをどうやって説明するのかということは、やはりどこま でもついてくる。なにか勝手にやっているのではないか、患者側のメリットは何かとい う話は必ずついてくる。医療保険のほうでは常にそれが議論になっています。 ○山口座長 オンライン化したら患者のほうがもらうレセプトは、様式とか内容とか変 わるのですか。それは変わらないのでしょう。 ○中村医療専門官 患者はレセプトを特にもらうことは通常ありません。 ○石井先生 労災保険の場合には、レセプトの審査が労働局になりますので、労働局が 決定したもので支払いがなされるというちょっと特殊な部分があるのです。そうすると、 逆に言うと説明責任は、医療機関ではなくて労働局側にも出てくる。私のイメージだと そういうように見えるのですけど。それを全部オンラインで集めると、責任もセキュリ ティも、説明責任もそちらにだんだん、集まってくるという考え方もあるのです。だか らそこを今回、視野に入れながら、とりあえず医療機関からこういうオンライン請求の システムの中でどうみていくかということを考えながらやりましょうと言っているわけ です。 ○神保課長補佐 先ほど、石井先生からイスラエルの例をご紹介いただいたのですが、 健康保険のほうでいま進められている話で言えば、オンライン請求との絡みで、レセプ トそのものではないのですが、レセプト類似情報ですね。オンライン化したところにつ いては、本人のほうに渡しましょうというようなことも検討が進められているので、そ ういう意味では、健康保険・国民健康保険並びでは、検討というのもできるのかなと思 います。 ○石井先生 同じレベルでね。 ○神保課長補佐 はい。 ○石井先生 同じレベルだからそれでやりましょうという話になりますね。 ○神保課長補佐 そういうようなこととの関係で、先生がおっしゃった国民あるいは被 災労働者としてのメリットというのは、検討の中には入れられるかなと。それで、先生 がおっしゃったシステム間の話ですとか、あるいは、社会保障カードになるのでしょう か、本人が自在にアクセスできるかということは、かなり大きな問題ですし、こちらの 検討会ではなかなか難しいと思います。そういうご意見があるというようなことで受け 止めさせていただければと思うのですが、いかがでしょうか。 ○石井先生 大体わかりました。それを枕にしたのは、実は労災保険のアフターケアと いう問題があるじゃないですか。これは、そこまでオンラインの中に入れて考えるか、 それとも、とりあえず紙で進めながら、今後考えるのか。これも入り口の話でちょっと 出して。 ○神保課長補佐 診療費のほうを、まずは先行させたいとは思っているのです。労災保 険の中でこのアフターケアは、未来永劫、紙でというような話には当然なっていかない だろうと思います。それで、実はこの今回の検討の論点でも、労災診療費のレセプトで はなくて、労災保険におけるレセプトと書かせていただいたのは、診療費のみならずア フターケアの関係も将来的には当然そういう方向に向かっていく必要があるのではない かということもあり、その点についてもご議論いただきたいと思っております。 ○石井先生 要するに1受診1レセプトというアフターケアの概念がありますよね。だ から入り口では、そこから始まるのではなくて、まず本体のほうに入って、その次にそ れは、というような考え方ということでいいですか。 ○神保課長補佐 はい。 ○石井先生 はい、わかりました。 ○山口座長 それは現実問題としても、そうならざるを得ないでしょう。そう決めなく ても、自然にそうなるような気もします。 ○石井先生 まあ、いずれですね、どのレベルで話をするかになると思うのです。 ○山口座長 労災指定薬局のほうは特に問題ないですか。 ○森先生 問題というか、気になっている部分は、7頁を見ていただければと思います。 患者の視点という話も絡んでくると思うのですが、労災のほうもオンライン請求できる ようになったときに、1つはオンライン接続用のパソコンをどうするのかとか、ネット ワークをどうするのか。認証局の問題もあるかもしれませんが、1つはこういうところ が、共有をできると非常にありがたいということと、国としても、新たにこういうとこ ろを開発するとコストがかかりますので、患者、国民の視点から言えば、コストの点で も共有ができるような形にしていただければと思います。  あとは、薬局で言うと、初回に患者が5号様式と処方せんを持って来局をされて、最 初のレセプト請求のときに5号様式も付けて請求しております。ですから、一部紙が残 るのかなというように思うですが、ある意味では逆に煩雑化するのかなという懸念があ るのですが。 ○中村医療専門官 5号様式、療養補償給付たる療養の給付請求書というのがあります。 その5号様式につきましては、現在でも電子申請は可能になっております。 ○清谷先生 5号様式自体は、一緒にレセプトで送らなくても、いまはいいのですか。 そんなことはないですよね。 ○中村医療専門官 現在は5号様式とレセプトを一緒に送ってもらっています。オンラ イン請求になって、たとえその5号様式が紙であったとしても、それはシステム的にう まく突合することは可能ですので、一緒に提出という形ではなくてもかまわないと思い ます。 ○清谷先生 なにか入力するようなものがあるのですか。レセプトに付けて入れるよう なものではなくて。いま考えておられるのはどういう形ですか。 ○中村医療専門官 大変申し訳ありませんが、5号様式とのリンクについて、まだあま り細かく検討しているものではないものですから、どのようにリンクをさせるかなどと いう点は検討中です。 ○神保課長補佐 森先生から、もう1点、共有の関係ですが、私どもとしてもコストが、 できるだけ低減するようにということで、ネットワークあるいはそのオンライン接続用 パソコンにつきましては、できるだけ健康保険・国民健康保険と共有するような形で、 できるだけ開発コストなり、開発期間を短くしていければと考えております。 ○山口座長 森先生がおっしゃった点は、できるだけ医療機関の負担を軽減するという 観点から言ってますね。非常に重要なことではないかと思います。ほかに何かご意見ご ざいますか。 ○中村医療専門官 時期についてご検討をを願いできればと思います。 ○山口座長 この問題点の(2)が導入の時期ですが、いかがですか。 ○清谷先生 来年度、実行に移すということではどうなのですか難しいですか。 ○中村医療専門官 森先生が言われたとおり共有化ということを進めたとしても、やは り開発期間などもあり、来年やってくれと言われるとなかなか難しい点があります。そ の点を踏まえて、我々としては平成23年度に医療機関、薬局が、健康保険・国民健康保 険において、オンライン請求が義務化されるという点を踏まえて、時期を先生方にご意 見いただければと思っております。 ○山口座長 可能な限り早くということになったら、再来年からということになるでし ょうが、この本来の趣旨が、健康保険・国民健康保険の状況を前提にしてそれに習って いくということだったら、この平成23年という、そこが1つの大きな区切りですね。あ とは年初になるのか年度中になるのかですね。 ○石井先生 ここが悩ましいのだと思うのですよ。というのは、実際、日本医師会で請 求ソフトORCAを作って無償配付している、そういう事業を行っている立場で言うと、 結局、会員には、手挙げした人には無償で配付しますが、無理やり配付することはでき ません。あくまで、希望があったところに配付しています。日本医師会で配付している ソフト以外のいろいろなレセコンの中に、労災診療費のソフトをどうやって入れ込んで いくかが課題になります。レセコン会社に、どうぞ作ってくださいという方式を取らざ るを得ないとすれば、それをどうやって進めるのかということが出てくるわけです。こ のようなクリアするべき問題というのはたぶんあるのだと思いますね。だから、例えば 労災病院を活用し、実際に労災患者の診療もそこで多く行われているとすれば、パイロ ットスタディ的なことをやってみないと、実際に出てくる問題というのもたぶんあるの ではないかと思うのですが、どうですか。 ○清谷先生 ある意味、結局、いますでに配付しているオンライン請求用のソフトウェ アを改修して、ある時期から、ボタンを押せば動くというような形でするのだと思いま す。改修するにしても、レセプトを送る先が1つ増えるだけですから、それほど大きな 改修にはならないと思います。 ○石井先生 そうですか。実は私、日本医師会がORCAソフトを作ったときに、手挙 げして、そのパイロットスタディに参加したのです。大体半年間、バグ拾いをやって、 オッケーになりました。それで、次の年から配付されました。 ○清谷先生 それはどちらかと言うと、いわゆるレセコンとしての問題が多少あったか もしれないのですが、請求部分に関しては、そのメッセージの文章と宛先を作るだけな ので。 ○石井先生 だからそれをいまのバージョンプラスアルファで、このソフトはちゃんと 使えますよという状況を1回確認しないと、次へ行けないと思うのです。いまはないわ けだから、例えば先生の病院で日本医師会のORCAを入れますかと言うと、たぶん別 のソフトを使っていらっしゃるから入れないと思うのです。 ○清谷先生 申し訳ないですが、確かに、オーダリングシステムにつける状況からいう とどうしても、いまのところは大手ベンダーのものになってしまいます。 ○石井先生 なりますよね。となると、そちらでそういうものを作ってくださいから始 まるわけです。 ○清谷先生 確かにそれはそのとおりです。 ○石井先生 そこで誰かが試験的なことをやらないと使えるものにならない可能性があ るのですよ。形の上では、要するに、ビジネス的には使えると言うのですが、ユーザー から見ると非常に使いにくい状態もあるのです。 ○清谷先生 いわゆる、実験的なことをするということは非常に重要なことだろうと思 いますから、それは実態としてやる必要はあるのですが、ただ、今回についてはその部 分というのは、国民健康保険・健康保険のアプリケーションに乗っかる形になると思う のでどうでしょうか。労災病院が、明らかにするというよりは、そのベンダーの中で、 これでいいでしょうねということをもう1回、実験的、モデル的にやるということはあ り得るのかなと思うのですが。 ○石井先生 ベンダーがいて、作って、それを実際にパイロットスタディをする。そこ から始まるのが、たぶん現実的かなという話を言っているわけです。 ○清谷先生 できるだけ手間にならないようなに実態としては、同じベースの点数表を 使い、いわゆるマスターになるコードは基本的に同じコードを使っているので、あとは、 その構文の組み方自体をどうするのかということについては、できるだけ似た形と言い ますか、ほぼ同じ形で、ある部分だけ、これは労災ですよということを宣言させれば、 あとは、そんなに難しくはないと思うのです。 ○石井先生 実際に、労災保険用のレセプトの書式と社会保険、国民健康保険用のレセ プトの書式は違うのです。いきなりは、たぶん無理だと思うのです。あちらが改定にな ったらそれをまたこっちでどう改定するかということになるのではないかと思うので す。 ○山口座長 健康保険・国民健康保険も、実施が段階的になっていて、関東労災病院み たいに非常に大きな所と小さな労災指定病院と実施する時期が違いますよね。 ○清谷先生 私が勤務している関東労災病院は、平成20年の義務化ですから、もう動い ているのですが、そういう意味では、労災レセプトもこの中でやっていくという方向で 予算化しやすいとは思うのです。 ○山口座長 方向は先ほど確認していただいたからいいけれども、要するに、いつから やるかということですね。いつプレイボールにするかということで、石井がおっしゃっ ているのは、かなりリード・オフ・タイムが要るだろうというお話だと思います。 ○清谷先生 実態としては、それこそ通電試験みたいな形で、メッセージがうまく届い ているかどうかということをやりながらやる。あともう1つは、どちらかと言うと、医 療機関側の手間を省くということも1つにはこれのメリットなので、そういう意味では、 メリットがあるという認識をする医療機関側から言うと、口を開けるのはできるだけ早 く開けてほしいと思うだろうと思うのです。だから、オンライン化に魅力を感じている 医療機関からしてみると、可及的速やかに動いてほしいというのが、たぶん正直なとこ ろです。ただ実態としては、いまのところ手挙げ方式ですし、義務化ということには、 将来的な課題というお話なので、検討会としてはいまのところ、可及的に速やかにぐら いの形ではどうなのですかね。ただ、しっかりとした形で間違いのないようにやってほ しい、ということではどうですか。 ○石井先生 だから早くやる医療機関が手挙げをして、トライアルをして、その上で次 のステップをする。ここまできましたから皆さんどうぞというのが、実際、我々の作業 としても、前のときにやっていますから、それと同じことをやられたらどうですかと。 だから、私は例えば労災病院をモデルとしてはどうかと言っているわけです。 ○中村医療専門官 オンライン請求のシステムについては、その稼働時期の問題もあり ますので、その前に試行するということも十分検討していかなければならないと思って います。それが労災病院かどうかは別として、試行ということが必要だということで、 先生のご意見にしていただいてよろしいでしょうか。 ○石井先生 そうです。 ○中村医療専門官 試行をやった上で、本格的なオンライン請求を全国に提供すべきだ というご意見ということでよろしいでしょうか。 ○山口座長 試行期間も要るし、やはり、周知期間も要ると思いますね。ですから、清 谷先生のご意見に、私、別に反対ではないのですが、可及的速やかにとか当分の間とい うのは、少し漠然としすぎていると思います。どの辺を目途とするという位の決め方の ほうがいいのではないでしょうか。石井先生のご意見を伺っていると、健康保険・国民 健康保険の状況をよく見てということです。どうも同じ年初では無理だということなら、 年度中にはという感じかなと思いましたが、どうですか。 ○森先生 メドはやはり平成23年というのが1つになるでしょうか。それにはさまざま な、先ほど言われたような条件をクリアしたり、ソフトの問題等の解決もあると思うの ですね、互換性をきちんとした上で、平成23年というのは1つメドになるのかなとは思 います。 ○山口座長 特にご異議がなければ大体そんなところでどうでしょうか。 ○石井先生 義務という字にこだわるものでなければ決して反対するものではありませ ん。 ○山口座長 他に、ご質問、ご意見ありますでしょうか。ただいまの点、いろいろご意 見を伺いましたが、必要なことは、可能な限り医療機関の負担を軽減するという観点だ ろうと思います。したがって、この労災レセプトのオンライン請求を実現するに当たり ましては、先行する健康保険、国民健康保険における仕組み等と互換性、整合性を可能 な限り確保する。これは、どの先生方からもそういう指摘がありました。また、実施時 期は、平成23年度を目途として実施をしていくということで、よろしいですか。 (了承) ○山口座長 それでは、今日予定しました議事は以上で終了いたしました。今日さまざ まな意見が出ましたので、事務局において、この検討会としてどのようにまとめるか、 検討結果を作成していただきます。それを次回、ここで皆様にお示をして、そのまとめ 方についてもご意見をいただきたいと思っております。事務局のほうから特にあります か。  それでは、本日はこれで検討会を終了したいと思います。どうも早朝からありがとう ございました。 ○神保課長補佐 本日は長時間ご議論いただきましてありがとうございました。ただい ま座長からご指示がありました本日の検討結果につきまして、検討させていただきまし て次回の会議に用意させていただきたいと思います。また、次回の会議までに先生方に はいろいろとご相談をさせていただくこともあるかと思います。その際はどうぞよろし くお願い申し上げます。本日は誠にありがとうございました。 ○中村医事係長 次回の日程は、今月29日(木)、開始時間は午後2時、場所はこの会 議室を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。本日はありがとうございま した。 (照会先) 厚生労働省労働基準局労災補償部補償課医事係 TEL 03−5253−1111(代)内線5565 FAX 03−3502−6488 - 1 -