07/10/31 第3回社会保障審議会医療部会の議事録について 第3回社会保障審議会医療部会議事録            日時 平成19年10月31日(水)15:00〜            場所 弘済会館 ○企画官 ただいまから、社会保障審議会医療部会を開催いたします。委員の 皆様方におかれましてはお忙しい中をご出席いただき、誠にありがとうござい ます。  まず初めに、いままでご欠席のためご紹介できなかった委員をご紹介いたし ます。全国町村会会長(福岡県添田町長)の山本文男委員です。  委員のご出欠についてご報告申し上げます。まず、本日は代理の方にご出席 いただいていますけれども、潮谷義子委員、杉町圭蔵委員、山本信男委員がご 欠席です。また、尾形裕也委員、熊坂義裕委員、田中滋委員、辻本好子委員、 渡辺俊介委員からご欠席とのご連絡をいただいています。  議事に入ります前にお手元の資料の確認をさせていただきます。お手元に議 事次第、座席表、委員名簿、議事次第、資料1-1、1-2、1-3、資料2、参考資 料です。また、佐伯委員、鮫島委員、中川委員、箱崎委員、飯島参考人からご 提出のあった資料をお手元にお配りしていますので、併せてご確認をお願いい たします。本日はご欠席ですが、熊坂委員からご提出のあった資料もお配りし ています。  以下の議事進行は鴨下部会長、よろしくお願いいたします。 ○部会長(鴨下) 議事を進行いたします。まず、委員の欠席の際には、代わ りに出席される方の扱いについて事前に事務局を通じて部会長の了解を得る こと、および当日の部会において承認を得ることにより、参考人として参加し、 発言をいただくことを認めることとしています。本日の会議については、潮谷 義子委員の代理として熊本県健康福祉部次長の東正明参考人、杉町圭蔵委員の 代理として、公立学校共済組合九州中央病院医事課長代行の塩塚康子参考人、 山本信男委員の代理として、社団法人日本薬剤師会常務理事の飯島康典参考人、 この三方の出席をお認めいただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。 (異議なし) ○部会長 ありがとうございました。それでは、本題に入らせていただきます。 前回から平成20年度の診療報酬改定に向けて、診療報酬改定の基本方針を定 めるためのご議論をいただいています。今回はそれがメインになりますがご議 論をお願いしたいと思います。事務局から、「平成20年度診療報酬改定の基本 方針の検討について」につきまして説明をお願いいたします。  また、資料2として、「医療計画について」を事務局で用意しております。 これも併せて報告をいただき、その後、委員の皆様にご議論いただきたいと思 います。毎回申し上げていることですけれども、多くの委員の方にご発言をい ただくために、事務局からの説明はできるだけ要領良く、簡潔にお願いできれ ばと思います。 ○保険局医療課長 保険局医療課長です。診療報酬改定の基本方針の検討につ いて、資料は1-1、1-2、1-3を準備させていただいています。  まず、資料1-3ですが、これは平成18年度に作られました改定の基本方針 です。平成18年度の改定でどのように対応したかについてまとめたものであ ります。2頁をご覧いただくと、2の「4つの視点から見た平成18年度改定の 基本法針」の(1)「患者から見て分かりやすく、患者の生活の質(QOL)を高め る医療を実現する視点」の中に○が2つあります。1つ目の○が状況の説明、 2番目が検討の方針ですが、「このため、診療報酬体系に」と書かれているも のに対し、実際の対応事項としては、簡素化という意味で、老人診療報酬点数 表の見直し、あるいは指導管理料の名称の見直し等を行いました。このように、 それぞれの視点に沿って、各項目について対応した事項について、四角の枠で 書き加えたものが今回の資料1-3です。これにつきましては、前回、委員から、 対応状況はどうかというお話がありましたので準備をいたしました。この説明 は以上にして、のちほど参考にしていただければと思います。  資料1-1、1頁です。基本方針の全体の構成をどうするか。構成としては、 まず1つ目、全体として平成20年度の方針については、平成18年度改定時の 基本的医療政策の方向性を踏まえつつ、継続性を重視する観点から、視点とし ては前回のものを基礎として整理してはどうか。  加えて、今回、地域医療の確保・充実ということが非常に大きな課題だと認 識しています。産科・小児科をはじめとする病院勤務医の現状を踏まえ、平成 20年度診療報酬改定においては、病院勤務医の負担軽減を図ることに特に重 点を置くべきではないかということにしています。その下に書いてあります 「考えられる視点」、これは平成18年度のものと同様のものを中心に、以下ま とめてはどうかと考えています。  まず、論点2にかかわる部分、病院勤務医の負担の状況ということで資料 1-2を準備していますので、そちらを説明いたします。1頁は全体のまとめで す。病院勤務医数そのものは全体として、近年、医師の増加とともに当然なが ら病院勤務医も増加しています。全体に占める割合は約6割程度ということで、 大きな変化はありません。診療科別に見ますと、小児科は横ばいですが特に産 婦人科では減少している。  それから、病院勤務医の勤務時間は、平均しますと週約48時間になる。診 療所の勤務医は週約40時間であることに比べて、約2割ほど長いのではない かという調査結果が出ています。また、勤務医の診療にかかる時間のうち、約 4分の1が外来診療に当たっている。時間外の対応ということで、救急搬走は 18時以降もたくさん来るわけですが、軽症者の割合が近年は約50%程度であ ります。その時間帯、特に夜間に軽症者がたくさん来ているという状況があり ます。  また、病院勤務医の負担の原因については、アンケート調査で、患者や診療 時間の増加に対して、医師が増えていない、あるいは書類が非常に増えている ということがありました。また、現場の医師の意見としては、負担を減らす方 法として、医師を増やしてほしい、あるいは医師以外の職員に業務を移すこと などが求められています。以下、それぞれ細かく出ていますので、時間がかか りますけれども見ていきたいと思います。  2頁、これは医師数の年次推移ということで、昭和34年からプロットして います。順調にずっと増えてきておりまして、大体昭和50年代の半ば前ぐら いから、いわゆる新設医大の卒業者が出てきて、増加の傾向が続いているわけ です。その中で、病院勤務医と診療所勤務医の平成10年と16年の比較をして います。それぞれ、当然増加はしていますけれども、勤務医の割合としては 64.6%から63.8%と若干ながら減少している。ただ、大きな変化ではない。  3頁をご覧ください。都道府県別に見た人口10万人対医師数です。医籍に 載っている総医師数と従事医師数という欄に分けてありますが、両方ともいち ばん少ないのは、人口が近年急増した埼玉県であります。それぞれ、従事医師 数で129.4になっています。従事医師数で最多のところは、東京都の264.2 です。ただ、先ほどと同様に、平成10年から16年の増加率で見ると全国が 107.7%に対し、東京、大坂、愛知を見ますとそれより低いということで、大 都会への集中化が必ずしも進んでいるという傾向は見当たりません。  4頁は各都道府県ごとに、二次医療圏での人口10万人当たりの従事医師数 の最大と最小を書いたものです。多くの都道府県で県内の格差が相当あること がご覧いただけるかと思います。  5頁は診療科別の病院勤務医数の年次推移です。内科・外科はスケールオー バーしますので省いてあります。内科は大体3万4,200人強、外科については 1万8,000人ですが、近年、減少傾向が顕著です。その他、ここに示していま す中では、やはり産婦人科、△のプロットですが、明らかに減少してきている。 それから、問題になっている小児科については、若干の伸びからやや横ばいと いう傾向が最近の状況だと思っています。  6頁は施設別の医師の割合です。病院の従事者は16万人で、60%でありま す。そのうち医育機関付属の病院には4万3,000人、16%が働いています。そ れに対し、診療所の従事者が9万2,000人、34.4%となります。介護老人保健 施設の従事者、これも最近増えていますが2,600人強ということで、1%です。  7頁です。病院の勤務医の負担感という問題を考えるときに、病院の中の診 療の内容を少し考える必要があるだろうということで、この表を作ってみまし た。病院全体は若干減少していますが、一般病床の新入院の患者数を取ると、 ここ3年間、平成14年から17年で3.5%の増になっています。それに対して、 いちばん下の欄が一般病院の医師数であります。ここもほぼ同様の3.4%の増 を示しています。ですから、新入院の患者の数と一般病院の医師の数を見ると パラレルに動いている。ただ、そこに書いてありますように全身麻酔の件数や 手術の実施件数、特に開頭・人工心肺・悪性腫瘍等の手術については2桁の伸 びを示しています。病院の中ではこのようなものが非常にたくさん行われるよ うになってきている。また、平均在院日数がこの3年間でも1割ほど短くなっ ています。そういう意味では、新入院の患者の回転が上がっていることから言 って、病院の勤務医は非常に負担感が増えてきているのは、こういうところに も原因があるのではないかと推察されます。  8頁は施設種別の医師数です。昭和50年と平成16年を書いています。昭和 50年は、まだいわゆる新設医大の卒業生が出る前でしたが、このような分布 をしている。それに対し、平成16年の分布は右のようになっています。全体 としては、数は増えてきています。それぞれの医育機関等、あるいは病院の従 事者等がどのように伸びてきたかというのが下のほうに表で書いてあります。 医育機関を除く病院従事者数は、昭和50年と平成16年を比べると2.9倍、や はり分類別では2.9倍と伸びているのは確かであります。それに対し、診療所 の従事者はこの間に1.4倍しか増えていない。長い目で見るとそういう傾向に なっています。  9頁は女性医師の就業状況です。右側が医学部入学者数に占める女性の割合 で、近年は30%を超える水準が続いています。それに対し、卒業して女性医 師になった方々は、やはり出産・育児の年代のところがM字カーブになるわけ ですが、就業率が30歳代半ばで76.0%と、約4分の1の方が就業しなくなる 状況になっています。ただ、一般の女性の就業率に比べるとまだましなのです が、それにしてもこの部分でかなり落ち込んでいるのがよくわかると思います。  10頁、これは「医師需給に係る医師の勤務状況調査」、平成18年の調査で す。当然ながら病院の勤務と診療所の勤務では勤務の中身が違いますので一概 に比較はできませんが、診療・教育・会議等の時間を合計して、例えば休憩時 間や自己研修・研究などを除いたものを勤務時間として比較をしております。 病院のほうは、若いほど長い時間働いているのがわかりますし、全体として、 診療所よりも病院のほうが若干長い傾向がここで見られると思います。  11頁をご覧ください。病院勤務時間の内訳であります。外来診療にやはり4 分の1程度の時間を費やしている。それに対して、入院診療は約4割となって います。  12頁、病院と診療所との機能分担を考えると、できれば病院では主として 入院医療を中心とし、外来は特に専門的な外来などをやっていただきたいわけ です。これでいくと、100床未満のところは一般の診療所というイメージで非 常に外来が多いわけですが、病床の数が大きくなるにつれ、400床以上のとこ ろもまた逆に外来が増えてくる。入院患者に対する比率から言うと増えてくる ということで、大きな病院にも外来患者が集中してきている傾向が伺えます。  13頁、このような状況の中で勤務医は非常に負担感を感じています。ここ では平成19年の日本病院会の調査が上の段、平成18年の私どもの研究の調査 が下の段であります。いずれも「減った」に比べて、「増えた」と感じる人が 多いということです。理由につきましても、聞き方がちょっと違いますが上の 段では「患者数や診療時間が増えたほど医師は増えていない」あるいは、「書 類を書く時間が増えた」等であります。3番目が「会議その他が増えた」です。 下の段でも「病院内の診療外業務(会議など)」が増えている。あるいは、「教 育・指導」ということが非常に負担になっている。それと、「外来患者数の増 加」などが負担感を感じる原因だと言っています。  さらに14頁、これは日本病院会から夜間当直をどれぐらいしているかとい うものです。5,600人に聞いたところ、夜間当直は7割の医師が「する」と答 えています。その方々の内訳を見ると、大体半分以上の方が週に1回程度で、 5回以上やっておられる方もいるということでした。  15頁、負担をどうしたら減らせるかを病院会では聞いています。1番目に出 てくるのは当然、医師を増やしてほしい、次いで、業務を医師以外の職員に移 せるところは移してはどうか、が大きな理由になっています。  16頁は病院の状況ということで、日本病院団体協議会の調査資料ですが、 平成16年度以降に休止した診療科があるかないかです。「あり」という病院が 16%ありました。特に診療科で聞くと、産婦人科・小児科というところは非常 に多くなっている現況です。  17頁以降ですが、「救急医療について」は場面場面で見ていきたいと思いま す。18頁は救急医療の体系図です。いちばん上の段がいわゆる三次救急、2 段目がいわゆる二次救急、いちばん下の段がいわゆる一次救急と言われるとこ ろです。これらの箇所数についてはまた後ほど出てきますけれども、救命救急 センターを除いてそれほど増えているわけではありません。  19頁の救急医療の現状、先ほどの「まとめ」でも出ましたが、ここは消防 庁の調査から拾いました。平成8年度から17年度、この10年間の間に全搬走 人員が320万人から495万人と、およそ1.6倍強増えています。それに対して、 軽症者の割合が若干増えていますが、ほぼ変わらないということは、重症者と ともに軽症者もたくさん救急車を利用して来ます。また、実際の覚知時刻、特 殊な言い方ですが、消防では「連絡を受けた時間」です。時間別に見ると、午 前8時〜10時がいちばん高く、それから徐々に減ってくる。そこから夜の20 時ぐらいまで高い状況が続くという状況です。もちろん、救急搬走ですので交 通事故や外傷等も含まれますし、病気も含まれるというデータです。  20頁、救急医療については、先ほども申しましたが、平成14年からのデー タですけれども、多くの分類のところでほとんど増えていないというのが現況 であります。中には若干減っているところもあります。いちばん下段の救命救 急センターだけが少し増加という傾向にあります。  22頁は小児科の状況です。先ほど言いましたように、小児科の医師数は若 干増加していたわけですが、小児1万人当たりで見てもやはり増加はしてきて いる。数としてはそうなってきているということが、ここでわかると思います。  23頁、これは指導課のほうで調べたものです。小児の多い小児救急医療拠 点病院での調査であります。常勤の医師数がいちばん少ない所で2名、多い所 では30数名いるわけですが、全体の傾向として常勤医師数が少ないところで 1人当たりの勤務時間が長くなる傾向にある。小児科の場合、全体を平均する と、救急医療拠点病院では1週当たり58時間強働いておられるという状況で した。  産婦人科の状況ですが、25頁です。産婦人科医数は減少してきているわけ なのですが、出生1,000人当たりで見ると、下のグラフで青の横線ですがほぼ 横ばい、あまり減っていないという状況ではあります。けれども、別に調べる と、やはりハイリスクの妊娠が増えています。40歳代以降の初妊婦も増えて いますし、いわゆる未熟児である低出生体重児等も増えてきている傾向は明ら かです。全体としては数的には変わらないけれども、出産の状況としては非常 にハイリスクのものが増えてきている。現にいろいろな状況もあるでしょうが、 帝王切開による出産も増えてきているというのが別のデータでありました。  26頁は病院における産婦人科医の勤務状況です。これは青森県で調べられ たデータです。ここでも週当たりの平均勤務時間は68時間ということで、先 ほどの小児科並みの時間数になっています。また、月当たりの当直回数は8 回程度で、非常に過酷な勤務の状況がわかると思います。  これらを踏まえまして、緊急医師確保対策ということで、28頁は医政局で 作られた資料ですが、今年の5月に政府与党で合意した内容が1から6まであ ります。これについては過去にもご説明があったと思いますので、今回は省略 をさせていただきます。  資料1-1に戻って2頁をご覧ください。各論に盛り込むべき事項ということ で、まず横断的な形になりますので、地域医療の確保・充実を図って勤務医の 負担軽減を図るための項目を、いちばん初めにまとめております。  まず産科・小児科への重点評価です。ご承知のように産科・小児科の状況は 非常に深刻で、各病院で閉鎖をしている診療科の1位、2位が産科と小児科で あります。そういう意味から、このあたりに診療報酬上も手厚い配慮が必要で はないかというのが第1点です。  2点目は、先ほどからの勤務医の負担軽減を図る視点からいくと、応援でき るところは多々ありますけれども、例えば診療所からもう少し応援をしていた だけないか。そういう中で初再診料や入院料等の基本料の部分で対応ができな いか。  それから、外来縮小に向けた取組みということで、先ほど申しましたように、 病院は主として入院機能を担っていくべきであるという視点からいくと、大病 院のほうがより外来患者が集まってくるという状況は何とか軽減していく必 要があるだろう。そこでの入院医療の比重を高めていくような取組みを評価し てはどうか。  院内における事務負担の軽減、これは先ほどの負担感の分析でもありました が、医師でなくてもできる業務については、できるだけサポートする体制を取 ってやる。そのためには、特に急性期の病院などにおいて、このような負担感 を感じるような業務について、事務作業をサポートする人について評価しては どうかと考えています。  3頁をご覧ください。視点1、ここではまず、患者に情報提供するという意 味で、1つ目が明細書の発行です。平成18年度改定において、保険医療機関 に対しては医療費の内容のわかる領収書の発行を義務づけたところです。さら に体制の整ったところから、患者の要請に応じて明細書を発行するようにして はどうかということが第1点目です。  第2点目ですが、患者の生活からいくと、入院ではなく、もし外来治療がで きるなら、そのほうが生活の視点からは良いわけです。特に最近増えているが んの化学療法などは、十分な体制を取れば通院で十分できる。さらにはがんの 場合、放射線療法についても外来でできないか。そのような点で考えていきた いと思っています。  休日・夜間の診療の充実が必要になるわけですが、それとともに院外処方が 非常に増えている状況の中では、保険薬局での時間外対応についても十分配慮 する必要があるのではないか。これによって、患者側からの医療の完結ができ るのではないかと考えています。  4頁は、質の高い医療を効率的に提供する視点ということで、ここでは医療 機能の分化・連携をしてはどうか。大雑把に言うとそういうことです。まず外 来縮小に向けた取組み、これは先ほど述べた重点事項のうちの(3)の項目で す。診療所からの支援、これも重点事項の(2)の視点です。  3番目が質の評価手法の視点ということで、現在まで医療の質については、 診療報酬上はいろいろな施設基準という中で評価してきているわけですが、さ らに、提供された医療の結果が良いか悪いか、そのような視点で医療機関、あ るいは病棟の評価ができないか。そういう評価方法があれば、それについて診 療報酬を考えてはどうか。それから、医療のニーズに着目した評価、真の医療 ニーズに適応するかどうかということで、初期的に意図した形でなくいろいろ と算定されている項目もございますので、本来の目的に沿った形で、算定され るような形に検討する必要があるものもあります。  5頁は在宅医療の推進です。在宅医療については、特にがん患者が増えてく る中で緩和ケアに関するニーズが高まっています。そのほか、在宅療養支援診 療所を中心に、いろいろ連携しながらサービスを提供していくべきだというこ とから、このような連携の推進について検討してはどうか。  産科・小児科への重点評価、これは先ほどの重点事項(1)の再掲です。そ れから歯科医療の充実、いま歯科診療に関する指針の見直しがあります。それ を踏まえて、口腔機能を含めた総合的な管理の面でありますとか、歯や口腔機 能を長期的に維持する技術等について評価してはどうか。  院内における事務負担の軽減は、事務負担を軽減することによって、医師が 本来の医師業務に専念できることから質が向上するだろう。これは重点事項 (4)の再掲です。  視点3ですが、今後我が国で重点的に対応していくべきと思われる領域とい うことで、ここでは1番目にがん対策を述べています。「がん対策推進基本計 画」を閣議決定しており、それに沿ってさまざまな面からがん対策を推進して いますが、診療報酬でも緩和ケアの点、放射線療法、化学療法について重点的 に考えてはどうか。  脳卒中対策です。高齢化がどんどん進みますと、がんのみならず、脳卒中の 発症率が急速に増えてまいります。脳卒中対策については予防対策ももちろん ですけれども、発症後早期の治療、早期のリハビリ、回復期のリハビリ、在宅 医療、さまざまな面で脳卒中対策を推進していく必要があると考えています。 特に医療計画においても、4疾患5事業の中でしっかりと、特にやっていただ きたいのがこの脳卒中であろうと聞いています。そういう中で、地域連携を含 めた医療機関の質の良い医療の提供を評価していきたいと考えています。  7頁をご覧ください。自殺対策であります。平成10年以降、年間の死亡者 数は約3万人を超える水準が続いています。やはり、適切な精神科医療を受け る体制をしっかり作る必要がある。日常、さまざまな疾患で医療機関にかかる わけですけれども、身体症状を訴える患者でもうつ病の可能性がある場合には、 精神科医療に特に結びつけていく。そういうようなことを考えてはどうか。ま た、これは救急の現場でよくあるわけですが、自殺企図の患者の方々が、けが とかお薬を飲んだとかいろいろあるのでしょうが、その処置をしたあとに精神 科領域でのケアが必要になる。そういう部分を評価していきたいと考えていま す。  精神科領域では子どもの心の対策、児童精神科領域がいま非常に手薄な状況 ですので、こういうようなところが充実するような形を考えていきたい。  それから医療安全の推進、これは今年の4月から新たに医療機関に義務を課 したわけですけれども、それに加えて、さらに一層の医療安全の推進のための さまざまなスタッフの充実が必要だろうと思っています。それらについて評価 していきたいと考えています。  また、革新的な新薬・医療機器等については、当然ながらその革新性につい て評価していく。同時に、後発医薬品等の使用促進のための環境整備を促進し ていきたいと考えています。  8頁をご覧ください。医療費の配分の中で、効率化の余地のある領域につい てはしっかりと評価をし直すということです。まず、1点目が新しい技術です。 医療技術の進展と普及で、当然ながら新しい技術はできるだけ療養の給付に入 れていくとともに、相対的に治療効果が低くなった技術については置き換えが 進むような適正化を進めていきたい。  それから、先ほどの革新的医薬品の評価と合わせて、逆に後発医薬品につい ては置き換えが着実に進む方策を考えていきたい。医薬品や医療材料、検査等、 いわゆる「もの代」については市場実勢価格を適正に反映させていく。  真の医療ニーズに着目した評価ということで、医療従事者の配置や医療行為 について、適正化するものは何かを検討していく必要があるという点です。  9頁は後期高齢者医療の体系の骨子です。これについては、後期高齢者医療 のあり方に関する特別部会で骨子を作っていただいています。本日、参考資料 でお付けしています。現在、中医協では、後期高齢者医療の部分については特 別部会の骨子をもとに、いま現在検討を進めている状況です。資料1-1、2、3 の説明は以上です。 ○指導課長 続いて、資料2に基づいてご説明します。1頁、真ん中ほどに平 成18年6月の「改正医療法」の成立とあります。改正医療法の成立に伴い、 新しい医療計画をどのように作っていくかということについては、いろいろな 場で今日お集まりの先生方にもご案内しておりますので概ねご了解いただい ていると思います。改めて、この場を借りて内容をご説明する次第です。  繰り返しになりますが、平成18年6月の改正医療法成立以来、大臣告示、 あるいは局長通知、課長通知といったところを3月から7月にかけて公表しま した。8月には都道府県説明会を開催したところです。平成20年4月からは 新しい医療計画の実施ということで、各都道府県に新しい医療計画を作ってい ただくことになります。  2頁に今回の医療計画の見直しの視点をいくつか書いています。(2)の2つ 目の○にありますように、これまでの医療計画というのは、基本的には総病床 数を管理していくということ、別な言い方をすると、総病床数の規制というこ とが中心でした。その外側に、昔で言うと任意的記載事項と言われる公衆衛生 学的目標や記述があったわけです。  今般は少しその考え方を変え、4疾病5事業という具体的な病気、あるいは 具体的な事業を掲げ、それらについて具体的に書き込んでいただく。その際に は目標を決める、あるいは具体的にどのような医療機関が各都道府県で想定さ れるかも含めて書き込んでいただくということに変えたところです。  3頁、いま申し上げたようなことの繰り返しになります。量的管理ではなく 質を評価していく。4疾病5事業ごとにやる。数値目標を示して、ある程度住 民・患者にわかりやすくする。それから、3頁の下の枠に書いていますけれど も、その際には1つの病院、あるいは1つの診療所で抱え込むのではなくて、 ある程度役割分担をしていただくことが必要になってきます。その上で、例え ば患者が受診する医療機関を選択できるよう、情報提供などについても医療法 の別の枠組みの中で体制整備を図ったところです。  4頁は先ほど申し上げました法律から大臣告示、あるいは局長通知、課長通 知まで、どういう役割分担で公表したかということであります。のちほどゆっ くりご覧ください。  5頁です。4疾病5事業と何度も申し上げましたが、4疾病には何があるか というと、左側にあるような、がんほか4つの疾患で、5事業は救急医療ほか 5つの疾患です。4疾病と5事業ですから、合計すると都合9つの項目につい て、それぞれ都道府県ごとに計画を立てていただくことになります。一挙に9 つと申しますと多いように思われるかもしれませんが、例えば救急とかへき地 というのは既に指導課から、これまで各都道府県で別途計画を立ててください というようにお話をしておりましたから、既存のものがあるので、これらをリ ファインしてもらえばいいということになります。  一方で周産期医療や糖尿病、がんといったところは、医政局ではありません が他の局、例えば健康局、雇用均等・児童家庭局のようなところで別途、既に 計画の骨格はありますので、これらをリファインしてもらうだけでいい。そう やって考えていくと、これまでほとんど計画らしいものがなかったのは脳卒中 と急性心筋梗塞ということになりますので、私どもは、県に対しては、平成 20年4月を迎えるに当たってはほとんど計画らしきものがないと思われる脳 卒中、急性心筋梗塞をまずは中心に作ってください、と。その上で、第1期と 言えるかどうかわかりませんが、平成20年をスタートとすると5年間ぐらい ありますので、その中で9つの項目についてリファインしていただくことにな るのだろうと思います。  6頁、7頁、8頁は脳卒中を例にとって書き並べたものです。具体的にどの ような形で書いていただければいいかがわかるように書いたものです。6頁で 申しますと救急から回復期、療養医療を提供する機能を有する医療機関という ことで、大きく分けると3つぐらいに分かれるのでしょうか。○○病院 、△ △病院と書いていますが、先ほど言ったように各都道府県ごとにどういう病院、 どういう診療所が該当するのか、ある程度想定をしながら計画を立てていただ く。それぞれの役割分担を考えていただくということです。  7頁はいま申し上げたことをもう少し細かく、予防から維持期まで見たもの です。どのような機能が必要とされるか、目標をどこに置くか、医療機関の例 としてどのようなものがあり得るのか、その医療機関で求められる個別具体的 機能、役割にはどのようなものがあるか、その他、指標で現状を把握するとす ると、どういうものがあるのかをマトリックスにして書き並べたのが7頁です。  8頁は、いま申し上げた図を模式図にするとこのような感じでしょうかとい うことで、ちょっと試しに作ってみたものです。X軸が時間の流れ、Y軸が医 療の機能だとすると、発症して救急医療があって、在宅までという流れがこう いうようになるのだろうと思います。今日は時間も限られていますので、とり あえず脳卒中だけをこのような感じで書きましたが、心筋梗塞や5事業と言わ れる救急医療、あるいは小児救急についても似たような考えとなる。全く一緒 というわけにはいきませんけれども、似たような考えに沿って各都道府県で作 っていただく。必要があれば、私どもも個別にご相談に応じながら指導してい くことになると思います。以上です。 ○部会長 どうもありがとうございました。ただいまの説明や資料に関するご 質問等も含め、ご自由に意見交換をお願いできればと思います。なお、資料を 提出いただいている委員もいらっしゃるわけですが、特にご指名はしませんの で。 ○小山田委員 この資料に大きなごまかしがあるので、その点をまず指摘させ ていただきたいと思います。 ○部会長 最後まで聞いてください。お一人当たりの発言はなるべく短く、簡 潔にお願いしたいと思います。どうぞ。 ○竹嶋委員 資料の前に、まず医政局に確認したいと思います。これは医療部 会全体に関係あると思うのですが。医療部会の意義、当然保険局の説明で診療 費開示に向けた検討をやりますが、まず、地域医療提供体制について、ここで は論じる。当然、それを裏打ちする診療報酬も入ります。したがって、財源の ほうに入る前に医療連携の適切な推進、あるいは医師や看護職員の確保策、つ まり医療提供体制の整備・充実をどうやって進めるか、という観点にまず立っ て検討を始めるべきだと思います。  今日の資料にも出ましたし、厚生労働省からもいろいろ出て、地域医療の病 院と診療所という説明をされましたが、もう1つ抜けているものがある。有床 診療所です。これはいま、日本で1万2,500施設あります。病床にして15万 6,000床あります。九州8県、四国4県、中国地方では特に山口県、東北では 特に青森県、この辺りは有床診療所が中小病院を後方支援している。大変大き な意義を持っています。これが出てこない。やはり、医療部会の中でこういう 論点は十分しなければならないと思います。その上で診療報酬をどうするかと なっていかないと、大事なことが抜けていると思います。のちほど、保険局説 明の資料についても、いろいろ疑義がありますので述べますが、まずは基本的 に我々はこの会で何を論ずるのかが最も大事なことかと思います。  最後に申し上げます。「医療計画について」の1頁、「新たな医療計画の実施 まで」にある平成18年6月の改正医療法の成立、ここで有床診療所が初めて、 一般病床は病院同様の基準病床の対象となったのです。これだけ公的に認めら れたのに、これが全然出てこない。それについて、まず医政局にお伺いしたい と思います。その姿勢をまず求めたい。 ○指導課長 今日、資料を出しました指導課という立場から言いますと、特別 に断りはしていませんけれども無床であれ、有床であれ、あるいは病院であれ、 いま申し上げたように、4疾病5事業の中で役割を果たしていただくのであれ ば、この中にはきちんと位置づけられるということで理解をしています。 ○小山田委員 資料の1-2、最初のところです。医師不足についての基本的な 問題であります。2の病院勤務医の勤務時間が週48時間と書いてあるのを見 て大きな怒りを感じます。平成17年2月から昨年の8月まで15回、医師需給 に関する検討委員会が開かれ、そこで緻密な調査をやって、その結果、厚生労 働省のホームページに出されている。それによると、病院勤務医の平均勤務時 間は週63.3時間です。そして、仮に48時間とするならば5万5,000人不足だ ということが明記されているのに、なぜここに48時間と書いてあるのか。こ れはごまかしですよ。日本における、最も重要な審議会ではありませんか。そ こにこんなごまかしが出されて黙っているわけにいかない。国民の前でなぜこ のような嘘をつくのか、部屋に帰ってみればわかりますよ。63.3時間、間違 いないですよ。私はどこでも公言しているし、書いていますから。そして、48 時間にするのには5万5,000人足りないとも書いてある。それを訂正して持っ てきてくれませんか、今日のこの会議で。  もう1つ付け加えますが、労災が認定している80時間、時間外ですよ、月 80時間以上勤めている、過労死の認定時間以上勤めている医師が9,000人い るのです。その人をいま連れてこいと言ってもできないので、それにかかわる 費用は、この前、別の会議で言いましたが1,170億円になります。そうしたこ とを考えて、もう少し医師不足の実際と医師不足の急場をしのぐために、過労 死にならない部分を補う他職種からのお金が最低1,170億は必要だというこ とを是非、頭に置いた上で考えていただきたい。まずは第1に、この会議のう ちにこれを訂正しなければ、私は明日この会議を全国に公表しますよ。 ○部会長 これは医療課長がお答えいただけるのでしょうか。 ○保険局医療課長 10頁と11頁になります。説明のときにも少し言いました けれども、診療所と勤務形態が違いますので、ここでは診療・教育・会議等の 時間を合計して、休憩時間・自己研修・研究を除いたものを勤務時間として表 しています。それを見ますと週48時間となってしまう。  下段になお書きで、「休憩時間や自己研修・研究等に充てた時間を含めた、 病院常勤医師が医療機関に滞在する時間は、平均すると合計で週63.3時間」 と明記しています。11頁に63.3時間の内訳を書いていて、例えば外来診療は 15.3時間(約24%)、入院診療が約24.4時間(約39%)、あと自己研修や教 育・研究、休憩というような分布になっています。先ほど言いましたように、 週48時間というのは自己研修や研究、休憩時間までを含むかどうかという視 点ですので、そういう意味ではそういうものを除いて見ると48時間であると いうことで紹介をさせていただいています。 ○小山田委員 それで納得できるのでしょうか。厚生労働省が調査した結果を 勝手に、これは不要だからとしてしまう。しっかりと、そのあとで検討するの はわかります。63.3時間とここに書いてくださいよ。それはでたらめだとか 問題があると言われるならいいですけれども、もう1年にもなりますよ、ホー ムページに厚生労働省がちゃんと出しているではないですか。  何度も言います。ここを63.3時間に。48時間にするには5万5,000人不足 と。委員長、どうですか。委員長の見解をお願いします。このようなことがま かり通っていいのでしょうか、よくないですよ。 ○村上委員 この点についてもう少し追加します。実は日本病院会でも調査を やっております。その資料は先日の経済財政諮問会議で舛添大臣がお使いにな った資料なのです。それを見ると、勤務医が48時間以上働いているというの が70.1%と出ているわけです。それは救急とか当直を含まない数です。48時 間以上と出ている数字がそれだけあるわけですから、この48時間という数字 は非常におかしな話なのです。普通の世間から見て週48時間と言ったら、ち っとも勤務医は忙しくないではないかという数字になると思います。多分、10 頁の比較は、診療所の医師と比較するために、休憩時間等のことでやられたの ではないかと思いますが、この数値は誤解を受けますので是非撤回していただ きたいと私も思います。いかがでしょうか。  あるいは、少なくとも休憩時間だけを除くという形で、実際に患者の治療に 当たっていろいろ調べたり、あるいは若い医者に教えたりという時間が入って いるはずなのです。それは会議ではなく、この分類に入ってくると思います。 ○医事課長 先ほど医療課長が申しました11頁には、「病院勤務時間の内訳」 と書いてあります。この表では63.3時間となっています。実際、自己研修と か休憩といったものを入れるか入れないかということではいろいろ議論があ ると思います。こういうものをまず除いて考えたらどうかというのは、昨年の 医師需給の検討会で報告された時間、それが48時間です。それと、自己研修 とか研究、あるいは休憩時間すべて含めると63.3時間、両方の数字を使って いますので、こういう場合はこの時間というように明確に示してご議論いただ ければいいのではないかと思います。 ○中川委員 確認なのですが、資料1-2の10頁は、「病院常勤医師が医療機関 に滞在する時間は平均すると63.3時間」と書いてあります。その次、11頁に 勤務時間の内訳で63.3時間と書いてあります。この点、言葉が混乱する大も とだと思うのですが、この整理はどうでしょうか。滞在時間と勤務時間を一緒 にしていますよね。 ○医事課長 含めるか含めないかの要素として、休憩時間・自己研修・研究が あります。一般的に休憩と言えば休憩時間に入らないのですが、自己研修・研 究をどうとらえるか、あるいは、ほかの資料との比較ということを考えると、 勤務時間等とも言えるわけです。確かに、10頁と11頁の整合性というのはち ょっと誤解を招くかもしれませんが、その意味は休憩・自己研修・研究等を入 れるか入れないかによって、48時間と63.3時間の違いが出てくるというよう にご理解いただきたいと思います。 ○中川委員 それだと、11頁のタイトルは「病院滞在時間の内訳」にすれば いいということですか。その辺、重要な問題なのです。 ○医事課長 滞在時間の内訳と言ったほうが正確かもしれません。 ○中川委員 訂正するということですか。 ○保険局医療課長 医政局からいただいた資料なので私があまり言えないの ですが、確かに広い意味での勤務時間という形になっている。多分、原点に戻 らないと。例えば研究を勤務としてやっているのか、そうでないのか、あるい は自己研修も勤務時間として扱っているかわからない部分があります。ただ、 一応勤務時間は終わったけれども、そのあと自分で研究のために残っていると いう意味合いもあると思います。どういう形で聞いているか、もう少し確認し ないと明確には言えません。しかし、10頁で言う勤務時間と、11頁の表で言 っている勤務時間は明らかに違います。そういう意味では、次回以降、もう少 しわかりやすいように直していきたいと思います。 ○竹嶋委員 資料の正確度というのは非常に大事だと思います。同じようなと ころなのですが、ちょっと視点が違います。1頁の「まとめ」に※がしてあり、 但し書きがあります。「勤務時間とは、医師が医療機関に滞在する時間から、 休憩時間・自己研修・研究を除いた時間である」ときちんと明記してあります。 これをそのまま11頁のところに持っていきます。そうすると、この中で「自 己研修・休憩を除いたもの」というように定義してありますので、計算すると 外来にかかる時間が約4分の1と書いてあります。私が計算すると29.7%で、 約30%になる。  なぜ、こういうことを申し上げるかというと、病院の医師が大変だ、外来に 忙殺されて大変だ、という議論におそらく今から入っていくと思います。その 前の大事な入口の資料ですから。私がざっといま計算したところでは、いま言 ったこの定義に沿えば29.7%、約30%になるわけです。非常に大きいと思い ます、5%というのは。そこら辺のところはいかがでしょうか、質問いたします。 ○保険局医療課長 おっしゃるとおりです。ここでは63.3時間に対してパイ チャートを作っていますので、4分の1程度となります。厳密に言うと48.何 時間かもわかりませんが、48時間に相当する分に対して作ると、おそらくそ れぐらいの割合になると思います。その辺、今後資料を作るときには留意して いきたいと思います。 ○佐伯委員 患者や国民にとってわかりやすいことを1番にするのであれば、 いまこれだけ病院が大変であるという印象をまず持っていただく必要がある と思います。例えば、いま大変売れているこういう雑誌にも、山梨大学の医学 部の産婦人科の女性の先生の労働時間は月・火・水・木・金・土・日と出てい ます。これを見て、とても週48時間だと誰も思わないだろう。いまやりたい ことは、病院にこれだけ偏ってしまっている、人がこれしかいない、そこを何 とか変えなくてはならないことを国民に理解を求めることではないかと思い ます。国民が、大変なことであることを踏まえて、何を協力できるか、何を抑 えることができるかを考えられるようにしていく必要があると思います。資料 についてはそういう配慮というか、何のためにこれを出すのかをお考えになっ た上で、ご留意いただければと思います。 ○豊田委員 今日はここで、平成18年度の診療報酬改定を踏まえて、20年度 の基本方針を検討するというわけで、私ども日本病院団体協議会で、平成18 年度の診療報酬改定の後どうなったかについて調査をいたしましたので、これ を簡単に説明いたします。日本病院団体協議会は、国立大学の附属病院長会議 から勤労者健康福祉機構まで11の団体でつくられている協議会です。全国の 8割前後の病院がこの中に入るかと思います。  「病院経営の実況調査報告」の3頁に、どういう対象にどのような調査を行 ったかという調査の概要が出ております。今年の8月27日から9月7日の間 で調査をいたしましたが、その時点で全国の病院数は8,878。そのうち回答数 は2,837で、回答病院の占める割合は32%でした。調査内容は、平成18年度 の診療報酬改定を挟みまして、18年度の入院・外来患者数、病院の医業収支 の状況、医師・看護婦の採用状況、病床・診療科の休止状況、今後の運営方針 等ですが、全部やりますと時間がかかりますので、要点だけ申し上げます。  この資料の11頁をご覧いただきます。まず第1に、平成18年度の診療報酬 改定前と後を比べて病院の医業収支はどのように変わったか、これを赤字の病 院と黒字の病院に分けて統計を出しました。そうしますと、平成17年度の医 業収支では赤字の病院が37.11%でしたが、平成18年度の医業収支ではこれ が43.02%に増えています。すべてのところで赤字が増えているわけですが、 特に500床以上の大きな病院では、赤字の病院が60.14%もあるということが 数字の上から出ております。 ○部会長 わかりやすいのは円グラフのほうだと思いますので、これについて 簡単に、要領よく説明してください。 ○豊田委員 収支が悪化しているということが第1ですが、次は医師の問題で す。平成15年度末と18年度末とを比較しますと、平成18年度末では31.88%、 3分の1の病院で医師数が減少しております。ただ、500床以上の病院では 69.1%の病院で医師数が増加しています。それに対して当然のことながら医師 の募集をかけるわけで、回答した病院の72%の病院が医師の募集を行いまし たが、必要な数を採用できたのは18%。54%の病院が採用数よりも少ない、 あるいは全く採用できなかったということで、医師の採用が非常に困難になっ ているということが数字で出ています。  看護師についても同じでございまして、平成17年度末に比べると、3分の1 の病院で看護師が減少したと答えております。これは医師と同じで、500床以 上の病院では逆に62.95%と増えております。看護師の募集状況ですが、この 円グラフのように、2,731病院のうち96%の病院で看護師を募集しましたが、 予定どおり採用できた病院は3分の1の31%。65%の病院は採用数に達しな かった。これは医師と同じような傾向で、要員の確保に苦労しているという状 況が出ております。  2枚目をご覧いただきます。4、平成16年度以降19年度にかけてのグラフ がここに出ていますが、病床の返還あるいは閉鎖があった所をチェックいたし ますと、約19%の病院が病床の返還あるいは休止を行っております。それが 平成18年度には急激に228病院と、平成18年度の診療報酬改定後に増えてい ます。  先ほどの事務局からの資料にもありましたが、休止した科でどういう科が多 いかといいますと、産婦人科と小児科が断然多くなっています。3頁目をご覧 いただきます。平成16年以降19年度までに、救急指定・輪番をやっていた病 院にどれだけ取り下げがあったかということがここに出ています。全国で109、 パーセンテージでいいますと4%ですが、要員等いろいろな要件によって4% が救急、それから輪番制を辞退しております。  それでは今後それぞれの病院が何を目指すのか、どういうことを考えている のかということですが、診療所に変更する、あるいは介護施設に移る等々、非 常に残念な検討をしている病院も、ここにご覧のとおりの数あるわけです。こ れから明らかになった問題点は、病院経営が非常に悪化しているということ。 それから医師・看護師の採用が非常に困難になったということ。それに従って 病床の休止や返還、診療科の休止、そして救急指定の取り下げなどが出てきて いるということで、まさに長期にわたる社会保障費の削減、つまり診療報酬の 抑制、医師絶対数の不足、看護婦の偏在等がいろいろに組み合わされて病院医 療の崩壊のスパイラルが形成されているということであります。この行きつく 先は医療提供体制の崩壊であり、国民医療の危機を迎えることになります。こ の医療部会でこういった医療提供体制を検討する上で、単に制度だけでなく、 診療報酬というものが収支に関係あるわけです。診療報酬の個々の点数は中医 協で決めるとしても、基本的に、日本の医療費の抑制がどういう結果を生んで いるかということを考えますと、診療報酬については、医療費の抑制をやめ、 医療費を増やすというような提言に向かって議論していただく。その上で今日 提案されたような各論が議論されることを望みます。 ○中川委員 佐伯委員と豊田委員のご意見に私も全く同感です。もう勤務医が 本当に疲弊していて病院も苦しい、苦しいのを通り越しているとも思います。 その上でお聞きしますが、資料1-1の2頁、重点事項の中の「地域医療の確保・ 充実を図り、勤務医の負担を軽減するための項目」のところ、診療所からの支 援の(2)です。そこに「診療所と病院の機能の分担と相互の連携に着目し、 勤務医の負担軽減を図るため、初再診料や入院料等の基本料での対応を検討す る必要があるのではないか」とありますが、これはどういう解釈でしょうか。 医療課長から説明をお願いしたいと思います。 ○保険局医療課長 ここでは大きく勤務医の仕事を分担するという意味で、 (4)で書いたのですが、1つは医療事務者を置き、そういうところで仕事を 減らしていく。もう1つは、医療的にいって分担をしていただけるところはど こかということで、勤務医がやっている部分を診療所の医師に担っていただけ ないかということを考えています。  そうしたときに、今回資料では細かく出せませんでしたが、おおむね夕方の 救急外来というのは非常に増えるということがございます。そういう意味では、 夕方の軽症患者については診療所で担ってもらえないか。そのようなことを想 定しております。ここでいう基本料の中でそういう形がとれないかということ を検討してはどうかというご提案でございます。 ○中川委員 初再診料という記載がありますが、それはどういうお考えですか。 ○保険局医療課長 具体的には中医協で議論していただくことになると思う のですが、ここは患者全体に対してどう対応するかという部分ですので、基本 料の中で、そのような工夫をする点数が考えられないかということをここでは 書いているのです。 ○中川委員 勤務医の疲弊というのは全員の一致した認識だと思います。現場 の先生方はよくおわかりだと思うのですが、勤務医が疲弊しているのは、時間 外の救急とか当直が主ではなくて、診療時間中にたくさんの外来を診て、病棟 も診る。書類に追われ、インフォームドコンセントに追われる。これが疲弊し ている主たる原因なのです。それが、診療所にはある程度余裕があるから勤務 医を助けるべきだという論点のすり替えになっているのではないかという気 がしてなりません。  私ども日本医師会では緊急に勤務医の就業時間の調査をいたしました。そし て、いわゆる就業時間という概念をつくりました。診療時間、学校医だとか産 業医、救急対応、介護保険対応という地域医療活動、それと診療所の管理業務 というのはもちろんありますが、それらを合わせて、30代から50代までの人 が50時間以上をやっているわけで、決して楽ではございません。  日本医師会が提出した「医療経済実態調査の問題点と医業経営の実態につい て」という資料の6頁をご覧ください。  今週の中医協で医療経済実態調査(実調)が公表されましたが、これは定点 でない調査、かつ6月単月のアンケート調査で、客体数も必ずしも多くないと いう調査です。そして、6月の単月調査なので、6月に発生しない費用は年間 の支出を想定して12分の1で割って記載してくれという、非常に難しいもの です。したがって、費用は小さく出るので、利益が大きく出やすいという特徴 があります。その資料をもとに、診療所は余裕があるのではないかという意見 がございます。ところが、日本医師会がお願いしているTKC全国会、これは 9,500人の税理士、公認会計士のネットワークですが、そこからのデータを受 けて毎年分析をしておりますが、ここに書いてあるように、診療所は5,400、 病院は700(国公立病院を除く)で定点調査を行いました。したがって、経年 変化の把握には適しております。これは6月単月調査ではなく、年間を通じた 決算データであり、さらに、会計事務所が毎月指導している非常に信頼性の高 いデータです。これは毎年の比較、実調は2年前の比較というものがあります。  7頁を見てください。このTKC指標によれば、病院の法人・個人、診療所の 法人・個人で医業収入は全部減収です。経常利益も、4つとも全項目で減益で す。  9頁をご覧ください。損益分岐点比率について、90%以上は危険水域である ということはお分かりだと思いますが、病院が93.7%から95.2%に上がりま した。もちろん、これは大変な危険水域です。そして診療所も、全体で92.8% から94.3%に上がっているのです。損益分岐点比率が90%というのは、10% 医業収入が減れば赤字に転落するという大変なものです。こういう状態で、診 療所に余裕があるから勤務医の疲弊を何とかカバーする。まして、技術料のほ とんどである初診・再診料を対応する手だてにするということになれば、これ は勤務医を助けるどころか、診療所を第2の勤務医にするのではないかという 気がしてなりません。この辺のところも我々は強調したいと思います。診療所 が楽をしているわけではなくて、勤務医の手当て、病院の手当てが低すぎるの です。是非、財政中立という考え方から脱却して、新たな財源を手当てして病 院勤務医を支援するという方向で議論していただきたいと思います。 ○古橋委員 いま医師の大変性ということで議論が進んでおります。医師の大 変性は、外来数が多いということもございますが、これからの医療、あるいは 最近見直しが入ってきた医療の質とか安全性ということが病院の中でも大き く展開するようになりまして、医療安全とかインフォームドコンセント(説明 責任)が医療の領域にきちっと入り込み始めたので、そこで、医師が医療のリ ーダーとしてお引き受けにならねばならない業務が非常に増えてきている。  もう1つは、医療技術革新ということが日常の病院の中で非常に増えてきて おります。ですから、技術進歩に対応していくための医療ということが医師の 業務内容を非常に高いものにしていかねばならぬという点で、人力とかそこへ のエネルギーが増えております。  今日の午前中も、医療経済実態調査の結果で、医療提供機関はみんな緊張感 がある、経営的に安泰ではないのだという議論もありました。また、いま中川 委員からも、診療所の経営の緊張感も言われました。ですが私は、みんな大変 なのだけれども、病院の経営が優位性を持って緊迫しているということは明ら かだろうと思います。そういう点では、診療報酬改定の基本方針の中では、病 院の先進医療等を含め、急性期医療等の機能を重視していくという基本的考え が要るのだろうと思います。  そこで人の配置でございます。技術革新の中で、あるいは在院日数短縮の中 で、医師の数はこれ以上少なくては持たない。併せて、看護師が技術革新に沿 って医師とチームを組んでやっておりますので、看護師の数がこれ以上少なく ては、もう持たないのでございます。そういう点では7対1問題は大きな波紋 と大きな変容を医療界に求めましたけれども、人の配置が重要であるという辺 りは、今日の基本方針(案)としてお出しいただいたところにも書かれており ますので、今回改定していく基本方針の中で、特に医師及び看護師の配置が重 視されるという方針であってほしいと願っております。 ○箱崎委員 歯科の立場からも1つ発言させていただきたいと思います。先般 の平成18年度の診療報酬改定における結果につきましては、前回の医療部会 で資料でお示ししました。8月に出た平成18年度医療費の概算によりますと、 平成18年度改定がマイナス1.5%であったものが、歯科において結果的には マイナス2.8%であったと、非常に厳しい数字がこの1年間で出されました。 加えて、今回の中医協の医療経済実態調査、これについても日本歯科医師会と して、それに対する見解ということで資料を出しておりますが、その資料の5 頁を開いていただきたいと思います。端的に申し上げますが、平成17年度に 比較して医業収入の保険診療収入が3%マイナスになっていて、平成18年度 の医療費の概算マイナス2.8%にほぼ近い数値が今回の中医協の医療経済実 態調査でも示されているのです。加えて、収支差額が9ポイント、9%も減少 している、こういう厳しい状況が今の歯科の業界にあります。  4頁に「まとめ」という表現になっていますが、非常に厳しい歯科の経営環 境においては、先ほど発言がございましたが、医療安全とか、感染予防とか、 非常に大事な部分に関わるコストを負担することについても、現状は非常に厳 しい状況になっています。今後、平成20年度の診療報酬改定におきましては、 是非ともこういった部分を緩和していただいて対処をお願いしたいと思いま す。 ○塩塚参考人 杉町から、発言するようにとメモを預かってきましたので代読 させていただきます。  「資料1-2の1頁では、勤務医は近年増加傾向にあると書かれていますが、 多くの市中病院では、全科にわたり医師不足で困っている状況にあります。し かも、最近は、高齢化により患者一人ひとりに多くの時間がかかることもあり、 勤務医の実働時間が増え、過労になっております。  このような状況の中、病院勤務医の過重労働を軽減するため、医師の業務を 補助する医療補助者等の配置の推進は必要と考えますが、診療報酬は下げられ る一方で、多くの病院は経済的に疲弊しており、病院の待遇改善はおろか、新 たに人を雇用することは現実的には困難であります。また、自治体病院や地域 医療支援病院等の地域医療を支える病院への財政支援の充実は重要と考えて おります。先進国の中で最も安い日本の医療費をこれ以上抑えるのではなく、 国民が安心して良質な医療を受けられるよう社会環境を構築していただきた いと思います」以上です。 ○飯島参考人 薬剤師会です。平成20年度の診療報酬改定についての検討に 当たり、薬剤師会の資料を配付させていただき感謝申し上げます。  昨年の医療法の改正により、薬局が医療提供施設として明記されたことを受 けて、薬局が地域医療に貢献するための具体的な取組みを示したものがお手元 に配付されている「新・薬剤師行動計画」の抜粋でございます。この行動計画 は昨年の9月に作成して、10万人弱の会員に対して積極的な取組みを指示し たところです。今後は、取組み状況についてしっかりと検証していく予定です。  2頁をご覧ください。「医療計画を通じた医療連携体制への積極的な参画」 として、3頁に示しているように、休日・夜間における対応、在宅医療への参 加、それから4頁のように、終末期医療における麻薬の供給、災害時における 医薬品の供給といった取組みを行っております。そのほか4〜5頁に薬局機能 情報開示、5〜6頁に安全管理体制の整備、6〜7頁に、後発品を含めた調剤に 当たっての情報提供と相談体制の整備について具体的な取組みを示しており ます。  この行動計画の多くはすでに実施されているものであり、このような取組み が評価される改定になるよう基本方針を示していただきたいと思います。 ○小島委員 資料1-1、来年度の診療報酬改定の基本方針の検討についての全 体的な構成について、それから、いくつかポイントを絞って意見を述べさせて いただきます。  資料1-1の1頁にある全体の構成については論点1で指摘されております。 前回の18年度改定のときに4つの視点が示されましたが、1回の診療報酬改 定でその視点に沿って改善できるということではありませんので、今回指摘さ れているように、引き続いて4つの視点を基本とした対応が必要だろうと思い ます。  その中でも特に、産科・小児科をはじめとした病院勤務医の疲弊、これにつ いては共通認識に立っていると思いますので、そこの負担軽減を図るという論 点2は極めて重要な視点だと思います。  2頁にある各論に盛り込むべき事項ですが、産科・小児科への重点評価から 始まる4つの項目についても、当然必要な措置であろうと思いますので、きち っと位置づけるということは必要だと思います。  具体的には3頁以降の各論について、4つ意見を述べさせていただきます。ま ず3頁にある視点1、患者から見て分かりやすい医療をということで「明細書の 発行」が記載されております。これについては、前回の診療報酬改定のときに 領収書の義務づけが行われ、患者の求めに応じて、明細書の発行についても努 力義務となっております。しかし、私ども連合の調査を見ますと、患者が窓口 で明細書の発行を求めたが、努力義務だということで断られたという事実もあ ります。今回の改定に向けては、明細書の発行の義務づけ、それも原則無料で 行うべきであろうと思います。  4頁目の視点2、質の高い医療を効率的に提供するというところで指摘され ている、病院の入院機能を高めることは、裏返せば病院での外来を少なくする のだということです。これは先ほど中川委員も指摘されたところで、診療所と の連携が必要であります。まずは病院で外来を受け入れなくても済むような診 療報酬ということが1つだろうと思います。夜間・休日等についても、診療所 等で受け入れるというような連携があって初めて、ここで指摘されているよう なことが改善するということですので、そういう視点は是非必要だろうと思い ます。  5頁にある在宅療養の推進と産科・小児科への重点評価。特に(6)の産科・ 小児科への重点評価は、前回の改定でも評価してきたところでありますが、そ れもまだまだ不十分ということがありますので、引き続きここについては重点 評価をすべきだろうと思います。それと、産科医療について、今回、ハイリス クについての評価です。これは正常分娩がいわば現物給付になっていない、点 数が付いていない。私どもとしては従来から、本来であれば、正常分娩を含め て現物給付化が必要だろうと思いますので、そういうことも意見としては述べ ておきたいと思います。  6頁の視点3、がん対策と脳卒中対策です。これも先ほどの医療計画の中で、 きちっと5事業を位置づけるということですので、特に脳卒中対策については、 地域連携をクリティカルパスの対象に位置づけるということで、そういう方向 で広げていくべきだろうと思っています。  最後に8頁の視点4です。ここは(1)新しい技術への評価、それから(2) の後発品の使用促進ですが、これも進めていく必要があり、そのための具体的 な施策も必要になると思います。それから市場実勢価格の反映ということで、 医薬品や医療材料等について、市場の実勢価格を正確に反映した評価。特にそ の点で言えば、医薬品等について、いまの商慣行の見直しも含めて、そういう 視点をはっきりしておく必要があるだろうと思います。 ○山本(文)委員 初めて出てきて質問をするのは非常に悪いと思いますが、 質問せざるを得ないところがありますので、意見と質問と両方併せたことでお 願いを申し上げます。  まず、医師を順調に配置できない原因というのを調べたことがあるのですか。 それがお分かりなら教えていただきたいのですが、私は大学の医学生の教育制 度に問題があると思うのです。例えば、医師国家試験に合格した人たちが2 年間研修医をしますが、昔のインターンのほうがよかったのです。研修医とい うのは大学に残らないで、ばらばらに散ってしまうので、配置をすることがで きない。昔の大学で、みんなインターンで残っていれば、うまくいったのです。 それを今の制度に変えたのですが、これは配置がしにくいのではないかと私は 思いますし、過日、大学の医学部の教授と話をしたら、まさにそれがあるよう です。ですから、その辺りまで検討をしたのですか。いつも厚労省のほうでは、 医師が余っていると言うのですが、余っているのなら、医師の問題がわざわざ 出てくるはずがないのです。数値では余っていると思われるけれども、どこか に固まっているのです。余っているとは言えないという状況ではないかと思う のです。ですから、なぜそういうことになっていったのか、その原因を考えた ことがあるのか、ないのか。あるとするならば、どうしていくのかということ を一言お答えをいただきたいと思います。  次は、医師の診療報酬について、非常にたくさんいただける科と、小児科や 産婦人科のようにトータルでは非常に少ない科がある。そういう状況になるか ら、産婦人科や小児科には行く人が少ないというのが現実です。ですから、そ こら辺りをどのようにしたらいいのか。先ほども少し話が出ておりましたが、 産婦人科や小児科の診療報酬を何らかの形で他の診療と同じような結果が出 てくるようにしてやることができないのかどうか。そこら辺りの検討をしてい ただければと思います。先ほど申し上げたように、診療報酬について、産婦人 科であろうと、小児科であろうと、何科であろうと、皆さんが自分の性格に合 ったような診療科を選ぶことができるようにする、そういう環境をつくってや ることが大事だと思います。  もう1つは、インターン制度のほうが今のような時代をつくらなくて済んだ のだと思います。折角国家試験に合格して、大学の6年間を終えて、あと2 年間さらに研修をやれなどと言ったら、そしてその研修も、大学なら大学とい うところ1カ所でやるのならいいけれど、募集しているところに行くというこ とになりますから支配権がなくなってしまうわけです。だから、若い医師にな ったばかりの人たちには、自分で自分の行き先を探さなければならないという 結果があるのではないかと思われます。その辺りを検討していけば、もう少し 良くなると思います。大学を卒業してから2年間の研修というのをやめて、昔 のインターン制度に切り換えていけば、医師不足は解消できるのではないかと 思います。まだほかに方法はあると思いますが、いまの制度は決して良い制度 とは思われないというのが、私ではなく専門家の意見ですので、そこら辺りを どうお考えになっているかを教えてください。 ○部会長 医師の偏在とか不足について厚労省が調査をしてあるか、それに対 してどうすればいいかについては医事課長から、診療報酬については保険医療 課長から簡潔にお答えいただければと思います。 ○医事課長 医師不足の原因の1つとして、大学の医師派遣機能が低下したと いうことが言われています。そのきっかけの1つとして新しい臨床研修制度の 導入ということがありましたが、実際、医局の人事機能というのは徐々に弱ま っております。もともと大学が医局の医師の人事権について制度的裏付けを持 って権限があったわけではなくて、事実上指示に従っていたというのが、長年 の時代の変化によってそういう力は弱まっていった。そこに新しい研修制度、 特にマッチングによって自由に行けるようになった。いままでも制度上はどこ にでも行けたわけです。卒業後、大学以外の臨床研修を行う病院に就職するこ とは、新しい制度導入前からもできたわけですが、1つのきっかけとして、そ れで自由になったということがあります。研修制度を導入したからその大学が グリップできなくなった、それはタイミング的には確かに符合しているのです が、根本的な原因ではないと思っています。ただ、人事的な機能を持つところ が是非必要ですから、それは医師確保対策の1つとして、地域医療協議会を通 じて、大学病院でなくても、中核的な病院から派遣するとか、いろいろな形で 協議しながら、その機能をどこかが負っていく、そういう機能をこれから再構 築していくことが大切かと思います。 ○保険局医療課長 診療報酬で診療科が誘導されているのではないかという ようなお話でしたが、まず、今の制度の中では、臨床研修の後半になると医師 が自分の専門を決めていくわけです。そのときの意識調査を医事課でやってお られたのを見たことがありますが、必ずしも儲かりそうだからということで決 めている人はそんなに多くはなかったのは事実です。  診療科別の診療報酬については、例えば病院勤務医は診療科ごとに給与が変 わるという体系にほとんどないので、何科を選んでも、病院に勤めている間は たぶん一緒であろうと思います。それから、例えば診療所を開いた場合の件で すが、それについては、主たる診療科別に著しい不均衡がないように、診療科 別の収支状況を見ながら点数の配分をしています。 ○山本(文)委員 何科をやるかということを選ぶときに、私の知っている所 は2桁の人たちが小児科や産婦人科に行っていたのに、いまは行っていないの です。ほとんどゼロに近いのです。それはなぜかと言うと、診療報酬の関係が 引っかかってくるのです。その辺りの何か把握が悪いような気がします。 ○保険局医療課長 産婦人科については、いわゆる自由診療部分のほうが多い わけで、診療報酬で誘導できるというのは、かなり限られています。ですから、 その点で選んでいるということではないと思います。 ○西澤委員 現場として、臨床研修とお金の話です。いままで医局が派遣して いたのがよかったのかということの反省に立って今回の臨床研修制度が出来 たということなので、これはもっと長い目で見ていくべきかと思います。確か に、これがきっかけで一時的には地方の医師不足にかなり拍車をかけたとは思 うのですが、私たちはそれを我慢しながらも、将来的にはもっと良いシステム になる。すなわち、地方において、医局からの派遣で無理やり行かされた医者 によって本当に良い医療がいままで行われていたのか。私たちは、もっと総合 的に患者を診るドクターを地域あるいは地方に育てて、そして医療の質を上げ ようということで始めた。その臨床研修制度の理念というものを是非ご理解い ただきたいと思います。  それから、診療報酬で、ある科に高い金を付ければそっちへ動くというもの では決してない、ということは医師の一人として是非申し上げたいと思います。 やはり、行かないのはそれなりのいろいろな理由があるからなのです。もし、 そういう誤解もあるようであれば、この医療部会で今後、その辺りの議論もす る。診療報酬のことも大事ですが、それ以上に提供体制をどう守るか。ここに いる各界の代表の方の議論の中で、是非日本の医療が崩壊しないように、今後 議論していただければありがたいと思います。 ○樋口委員 今日のいちばんの課題は資料1-1「基本方針の検討について」と いう文章の意味なのです。抽象的なことであれ、具体的なことであれ、ここに 何らかの形で文章化されていることが、中医協かどこか私にはわかりませんが、 ほかのところでやや具体化され、実際の厚生労働省の政策立案のところへ反映 していくのだろう。そういう意味で、この文章は一つひとつ大事なのではない かと思っているのです。  全体として、これは医療の問題ですから、患者のためのものであることは言 うまでもなくて、あらゆる場面は全部患者という話からスタートしているはず なのです。文言だけを見ると、視点1の「患者から見て」というこの部分だけ に全部含意されているのです。そこで、視点1のところだけについて一言。  これは視点をそれぞれに分類してあります。平成20年度においては、いま までの視点4つに1つを加えてそれぞれのところへ分類してあるので、全部分 かっていることだとおっしゃると思うのですが、「重複は害をなさず」だと私 は思っているのです。  視点1を見ると「患者から見て分かりやすく、患者の生活の質を高める医療 を実現する視点」、なるほどそうだと思います。しかし今、患者から見て本当 に重要なのは、これも重要ですが、その前にまず安心・安全な医療をという話 があって、その上で分かりやすく、患者の生活の質を高める医療ということに なるのではなかろうかと思うのです。  いま国民あるいは患者の多くの人にとって心配になっていることが、とりあ えず2つあると私は思っていて、1つは後のところに出てくるのですが、それ でも重複してここに書き込むことに意味があると思っているのです。1つは産 科・小児科、救急体制へのアクセスの確保という話。もう1つは医療安全ある いは医療事故対策。診療報酬体系でどういう形で配慮するとそこへうまくフィ ットするかというのは今後の政策立案の問題だと思いますが、そういうところ もここに書いておくほうが患者にとってはありがたいと感じましたので一言 申し上げました。 ○鮫島委員 2点申し上げます。1つは、最初に竹嶋委員がおっしゃったよう に、医療部会そのものが診療報酬改定でどんな役割を果たすのか、いまひとつ はっきりしないような気がするのです。医療保険部会や中医協等いろいろなと ころで議論されるのでしょうけれども、何かその辺のところがあまり整理され ていないので、ここでの議論が拡散してしまう。前回の診療報酬改定のときも そうだったのですが、1回医療課から説明されただけで、消化不良みたいな議 論の後に何かここが了解したという形になってしまった。もう少し論点を絞っ て、ここでどういう議論をするのかということを明確にして議論をしないとい けないのではないかということが1つです。  もう1つは、資料1-3というのがありまして、これには診療報酬改定の基本 方針にどのように対応したかということが一応書いてあるのです。これはあま り説明がなかったのですが、いま中医協の検証部会でいろいろ検証はされてい ると思うのですが、こういう形でいろいろな対応をした結果がどうだったのか ということをもう少し検証して、それを我々に説明していただきたい。つまり、 診療報酬でいろいろ経済的なインセンティブを与えることで医療そのものが 良くなっていくというのは、必ずしもそうではないと私は思うのです。経済的 なインセンティブを与えることによって医療提供体制そのものが変な形にな っていくことも当然ありうるわけです。あるいは、それがかえって無駄な医療 費の原因になっているということもあると思います。これは厚生労働省の仕事 を我々がどう評価するかということになるのでしょうけれども、その辺をもう 少し明確にしていただきたい。その上で次回の診療報酬改定の議論をしていき たい、そのように提案したいと思います。 ○古橋委員 医療計画と診療報酬改定の基本方針ということについて意見を 述べます。実は、今日資料説明がございました医療計画についてです。先ほど 樋口委員からもありましたように、診療報酬上は、患者から見て分かりやすい ということは非常に重要だと思っておりますが、これは現実にはそうではない 構図だと思うのです。現在、医療計画に基づいて各都道府県が多大なエネルギ ーを注いで地域医療計画を創案している真っ最中だと思います。これは一挙に 都道府県民に理解されるとは思いませんが、情報発信されていく中で、医療は こういうふうに、ここを重点的にということが伝わる中で、そういうことが診 療報酬とつながっているということ辺りになりますと、都道府県民として分か りやすい要素も出てくるだろうと思います。  今日説明を受けました「医療計画について」の6頁、医療連携体制を明示し ていくということで、都道府県の医療計画には3つの領域の医療機能が書かれ ておりますが、在宅における医療機能というものが欠けているのではないかと 思っております。右側の最後のところに、在宅の状態で提供される医療という ことが欠けていることが少し怪訝でございます。脳卒中のところの8頁には 「生活の場における療養支援」ということまで構図として出ておりますが、こ こでも「訪問看護ステーション」という文字はどこにも見当たりません。こう いう点では、訪問看護ステーションは医療提供体制の中では何の意味もないの か、行政の中では訪問看護ステーションは外されてしまっているのかと非常に 懸念いたします。基本方針の5頁には在宅医療のことが書かれておりますが、 要は医療費削減策のメニューとして在宅医療が出されたのでは、国民との合意 形成は難しいと私は思います。在宅医療が暮らしの質としてもより良いことに つながり、かつ、支援を受けて出来なくはないのだということが広く国民に情 報提供されていくと、一挙には広がらないとしても、現在点在している素晴ら しいサービス提供がございますので、そうしたことをしっかり情報提供して、 国民も選択してみたいと思うような関わりが要るのではないか。そういうとき に「訪問看護ステーション」が全く文字に出てこないということは本当に残念 でございます。医療提供体制をお考えくださいます医政局で、この問題はどう なってしまったのだと申し上げたいと思います。その点を是非よろしくご検討 いただきたいと思っております。 ○部会長 指導課長、いまの点について簡単にお答え願います。 ○指導課長 手短に申しますと7頁、維持期の在宅利用の求められる事項の中 に「訪問看護ステーション、薬局と連携した在宅医療」という形で明言してお りますので、ご理解ください。それから4頁のいちばん右下に、4疾病5事業 の指針ということで、言ってみれば、医療計画を作る際のちょっとしたマニュ アルのようなものを作ってお示ししたのですが、この中でも、はっきりと訪問 看護ステーションの役割を明示しておりますので、時間のあるときにご確認い ただければと思います。 ○堤委員 経済界から一言申し述べたいと思います。これまでの説明の中で、 病院の勤務医が非常に大変な状況であるとか、特に小児科や産科が非常に大変 であるといったことは理解できたわけですが、こうした本当に苦労している 方々に手当てをすべきであって、一律に増額というような話ではないと思いま す。これは釈迦に説法ですが、日本の公的医療給付は、自己負担はあるにせよ、 税金なり、税金に近い社会保険料でファイナンスされている。そういった中で、 経済や財政と乖離した形で議論することはなかなか難しいのだろうと思いま す。したがいまして、診療報酬においてはスクラップ・アンド・ビルドという ことが基本になるのではないかと思います。  昨今の政治状況を見ましても、とても負担増ができるという状況ではござい ません。高齢者医療の負担も凍結という話を伺っておりますが、現実的には、 今の医療提供体制の中でメリハリをどうつけていくのかといったところが、医 療界に対して問われているのではないのかと私は思います。  したがって、医療界の分担のあり方なり、連携のあり方なり、診療報酬のあ り方なりといったものを提供側として国民に提示すべきなのではないか。 ○部会長 そろそろ予定の時間が近づいてきましたので議論を終わりにした いと思いますが。 ○村上委員 質問したいことはあるのに時間がないと思って遠慮しているの ですが、この次にも同じ資料を配ってやっていただけるのですか。 ○部会長 まだご意見がいろいろあるのは当然だろうと思いますが、一応予定 の時間が近づいてきましたので、今日はこの程度で終わらせていただきます。 本当に貴重なご意見をいろいろいただきましたので、事務局のほうでも、資料 については訂正すべきところもあったようですが、是非うまくまとめていただ いて、次回もう一回重ねて、本質的な議論も含めて、平成20年度の診療報酬 改定に向けて議論を深めたいと思います。では今後の日程について事務局から お知らせいただきます。 ○企画官 次回についてはあらかじめ委員の皆様方に日程調整をさせていた だいておりまして、11月22日(木)の午前10時から予定しておりますので、 よろしくお願いいたします。場所等の詳細についてはいま調整中ですので、決 まり次第改めてお知らせしたいと思います。 ○部会長 本日はこれで閉会にいたします。大変熱心なご討論をいただきまし てありがとうございました。 照会先 医政局総務課 高島、柳田 連絡先:03−5253−1111(内線2519)