07/10/29 第1回腎疾患対策検討会作業班資料及び議事録 第1回 腎疾患対策検討会作業班                          平成19年10月29日(月) 経済産業省別館1014号会議室 ○日下課長補佐  それでは、定刻になりましたので、ただいまから第1回腎疾患対策検討会作業班を開 催させていただきます。作業班の皆様方には、お忙しい中お集まりいただきまして、ま ことにありがとうございます。  それでは、会に先立ちまして、疾病対策課長の梅田より、皆様に一言ごあいさつさせ ていただきたいと思います。 ○梅田疾病対策課長  おはようございます。第1回腎疾患対策検討会作業班の開催に当たりまして、一言ご あいさつ申し上げます。班員の皆様方におかれましては、大変御多忙のところを、この 作業班の会議のためにお集まりくださいまして大変ありがとうございます。また、日ご ろから腎疾患対策の推進につきまして多大な御尽力を賜っておりますことを、この場を 借りまして厚く御礼を申し上げます。  さて、我が国では腎不全による死亡が日本人の死亡原因の8位を続けておりまして、 また、慢性腎不全による人工透析を受けておられる患者さんも年々1万人ぐらいずつふ えて、現在26万人を超えているということで、国民にとって腎臓病というのは大変大 きな健康問題であると認識しております。こうした中、近年原因のいかんを問わず、腎 障害を示唆する検査所見、もしくは腎機能の低下が3カ月以上続くものを、まとめて慢 性腎臓病(CKD)という広い概念でとらえ直し、公衆衛生学的な観点から対策を立て る必要があるという考え方が、国際的にも広がっているところでございます。そこで、 慢性腎臓病対策、特にCKD重症化防止という観点から検討するために、本年度新たに 腎疾患対策検討会を設置いたしまして、今後の腎臓病対策のあり方について検討し、そ の方向性を取りまとめるということになりました。その会議、腎疾患対策検討会は、今 月1日に開催したところでございまして、そこでも大変多くの貴重な御意見や論点を提 示していただいたところでございます。  そこで、この当作業班でございますが、腎疾患対策検討会が親委員会としてあります が、そこが今後まとめていく方向性についてのいわば起草委員会といいますか、その内 容についてドラフトを作成し、親委員会に示すというような役割で作業をお願いできれ ばと思っております。本日の会議におきましても、先生方の忌憚のない御発言を期待し ておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。簡単ではございますが、ごあいさ つとさせていただきます。 ○日下課長補佐  それでは、本作業班の構成については、先ほどお話がありましたが、親委員会であり ます腎疾患対策検討会の座長に選定をお願いし、班長については日本医科大学の飯野先 生にお願いすることとしております。本日は第1回に当たりますので、班長及び班員の 先生方の御紹介をさせていただきたいと思います。  まず、飯野班長です。 ○飯野班長  日本医科大学の腎臓内科の飯野です。よろしくお願いいたします。 ○日下課長補佐  秋澤班員です。 ○秋澤班員  昭和大学医学部腎臓内科の秋澤です。よろしくお願いします。 ○日下課長補佐  藤垣班員です。 ○藤垣班員  浜松医科大学腎臓内科の藤垣と申します。よろしくお願いします。 ○日下課長補佐  松川班員です。 ○松川班員  北海道の上川町で保健師をしております松川と申します。よろしくお願いいたします。 ○日下課長補佐  山縣班員です。 ○山縣班員  筑波大学腎臓内科の山縣です。よろしくお願いします。 ○日下課長補佐  本日は参考人として、昭和大学藤が丘病院栄養科の菅野丈夫先生、社団法人全国腎臓 病協議会常務理事の栗原紘隆氏をお呼びしております。  それでは、班員の出席状況を御報告いたします。本日は全員出席でございます。よっ て本会議は成立となります。  それでは、議事進行を飯野先生にお願いしたいと思います。飯野先生、よろしくお願 いいたします。 ○飯野班長  それでは、座らせて進行を務めさせていただきます。まず、事務局より資料の確認を お願いいたします。 ○日下課長補佐  それでは、資料の確認を行わせていただきます。まず資料1、「腎疾患対策検討会作業 班設置要綱」でございます。資料2、「腎疾患対策検討会の検討事項について」でござい ます。資料3、「検討事項に対する主な意見(第1回腎疾患対策検討会)」という2枚紙 でございます。資料4−1、松川班員提出資料の(1)、資料4−2、松川班員提出資料の (2)です。資料5、菅野参考人の提出資料、資料6、栗原参考人の提出資料です。参考資 料として、第1回腎疾患対策検討会の資料を添付しております。  以上、不足しているものや乱丁等がございましたら、事務局までお申しつけください。 ○飯野班長  それでは、議事に入りますが、まず初めに事務局から、資料1〜3の説明をお願いし ます。 ○日下課長補佐  それでは、まず資料1をごらんください。腎疾患対策検討会作業班の設置要綱でござ います。この作業班の目的でございますが、先ほど課長の梅田から御説明があったかと 思いますが、今月1日に腎疾患対策検討会の第1回が開催され、その中で今後の腎疾患 対策の方向性の素案を作成するということで、作業班の設置が検討されました。より具 体的かつ専門的な検討を進めるためには、より詳しい、より実務的な方が適当ではない かということで、この作業班を設けることになっております。  引き続きまして資料2をごらんください。第1回の腎疾患対策検討会の中で、検討す る事項として1)〜6)の項目が挙げられており、この項目について議論がなされたと ころでございます。なお、この腎疾患対策検討会で検討する範囲につきましては、参考 資料1をごらんいただきたいのですが、後ろから2枚目、資料5という青い色の資料で ございます。「腎疾患対策検討会の検討範囲」ということで、CKDのステージ分類が書 かれております。この親委員会である検討会において検討する際に、実際にかかりつけ 医から専門医に橋渡しがされるところはステージ4やステージ5が多くて、透析に導入 する患者の増加に歯どめをかけるためにはなかなか難しいという状況があり、この検討 会としては主にステージ1〜3を中心に検討の範囲としてはどうかというお話がござい ました。  資料3に戻っていただきたいのですが、そこで第1回の腎疾患対策検討会でこの大き な柱、6つについて議論がなされました。これは、まだ固まった意見ではないのですが、 主な意見を示しているのがこの資料でございます。まず、上から御紹介をさせていただ きます。  1番目の一般国民に対する腎疾患に関する普及啓発というところでは、新規に透析導 入される患者数を減らす、心血管合併症を減らす等ターゲットを明確にすべきではない か、という御意見が出されております。また、CKDになりやすいリスク因子等、具体 的なキャンペーンが必要ではないか、という御意見もあります。また、患者に対する普 及啓発が必要ではないかということで、この中では特にインパクトのある訴え方、ター ゲットを明確にしたスローガンが必要ではないか、という御意見をいただいております。 生活習慣病に対する自覚をどのように促すのかという御意見もいただいておりまして、 具体的には自分のデータを知ることが重要ではないかということで、尿蛋白(A)、血圧 (B)、コレステロール(C)、尿糖(D)、eGFR(E)という、こういったデータを 知るべきではないか。また、高血圧や糖尿病とやはり関係があるということで、HbA 1c等についても、データについて自覚をする必要があるのではないか、といった御意 見が出されております。また、こういったデータをもとに、受診に結びつけるようにす べきではないか、という御意見をいただいております。また、有効な普及啓発として、 どこに力点を置くべきかという御意見として、一般国民に置くのか、それとも若年層の 患者及びその家族に置くべきか、あるいはその職域の人に対して置くべきか、という御 意見がございました。また、普及啓発を行う人材としては、保健師や栄養士が挙げられ ると思われますが、どのようにこういった普及啓発を進め、またそこにどのようにこう いった人たちが絡んでいくのを支援したらいいのか、といった御意見が出されておりま す。また、他の分野の取り組みや関連学会(糖尿病学会、高血圧学会等)等との連携に よる普及啓発が重要ではないか、という御意見も出されております。また、マスメディ アを介した普及啓発というのは非常に効果的で、こういった普及啓発も重要ではないか、 という御意見が出されております。  2番目の医療提供体制というところでは、かかりつけ医に対する普及啓発がより重要 ではないか、という御意見をいただいております。また、CKD診療ガイド等を普及さ せるべきではないか、という御意見をいただいております。地域連携の先進的な取り組 みから、他地域に応用できるシステムを検討してはどうか。また、地域連携の先進的な 取り組みについて、取り組み事例を集積してはどうか。地域で連携パスを作成し、取り 組み事例の検討を行うとともに、その結果を勉強会や講習会等で活用してはどうか、と いう意見もいただいております。また、医療提供体制というのは各地域によって異なり ますので、地域の実情に応じた病診連携体制の確立をしないといけないのですが、そう いった病診連携体制の確立には医師会等の協力が不可欠ではないか、という御意見もい ただいております。  また、病診連携といっても、なかなか専門医というのも各地域地域において数やアク セスの問題があると思いますが、これについては例えば診療支援というものをインター ネットやメール等、実態に応じてこういった活用をしてはどうか、という御意見もござ いました。  3番目の診療水準の向上ということでは、医療計画の対象疾患に含めることも考えて はどうかという御意見や、かかりつけ医が簡単に利用できるような小冊子があれば、そ のかかりつけ医で使うのに便利ではないか。また、CKDについて縦割りとならないよ うに、関係する学会と診療ガイドの作成で連携すべきではないか、という御意見もござ いました。また、これに関連し、糖尿病や高血圧等の患者手帳が現在関係学会ごとにバ ラバラにございますが、これを学会ごとにつくるのではなくて統一することが望ましい のではないか、といった御意見もございました。  4番目の人材育成についてですが、かかりつけ医の中で、特にCKD診療を担う人材 を育成するかどうか。また、腎疾患に関して、ある程度対応可能な知識を普及させるべ きではないか、という御意見もございました。保健師を含めたコメディカルについても、 適切な知識を普及させるべきではないか、という御意見もございました。eラーニング 等のインターネットを通じた教材の提供が有用ではないか、という御意見もございまし た。また、これについても上と重なりますが、関係学会との連携が必要ではないか、と いう御意見がございました。教育に際してこういった関係学会等で縦割りとならないよ うな留意が必要ではないか、という御意見もございました。  5番目の研究開発の推進に移りますが、基礎的な研究、臨床的な研究、いろいろござ いますが、重要なのは臨床疫学的な研究で、こういった研究を推進すべきではないか。 特に、診療システムの導入による費用対効果について実証してはどうか。あるいは患者 のフォローアップに際して、尿蛋白やクレアチニン検査の頻度に関するエビデンスの確 立につながる研究が必要ではないか、という御意見をいただいております。また、都市 圏のパターン、農村部のパターンのように、地域の実情に応じた病診連携のモデルにつ いて、こういった臨床研究で検討してはどうか。また、今は糖尿病性腎症や慢性糸球体 腎炎が中心ですが、欧米で多いと言われている腎硬化症について、今後日本でもふえて くることが予測されますので、こういったものについても今後ターゲットとした研究を 行うべきではないか、という御意見をいただいております。また、CVDの発症リスク のマーカーについても、同定するために研究を行うべきではないか、という御意見をい ただいております。  その他の御意見としては、こういった取り組みについて、それぞれ評価してはどうか。 また、この評価に当たっては、評価のためのしっかりしたガイドラインをつくってはど うか。あるいは評価をする項目としては、自己データの認識率がどの程度なのか、受診 率がどの程度なのか、受療率がどの程度なのか、透析患者の減少はどの程度あったのか、 といったようなことを取り上げてはどうか、という御意見がございました。  1〜3の資料については以上です。 ○飯野班長  どうもありがとうございました。班員の方で何か今の資料について質問はございます でしょうか。わからない点や疑問の点がありましたら、言っていただきたいと思います。  なければ、この作業班ですが、今御説明いただきましたように、今後の方向性に関す るペーパーの素案を作成して、腎疾患対策検討会に取りまとめを行って答申するという ことで、第1回の検討会ではいろいろ意見が出たのですがまだ足りないところもある、 保健指導や栄養指導の観点でも足りない、あるいは患者の立場、そういう面でもいろい ろ対策が必要である、ということで今日は参考人の方をお呼びしたわけです。  それから、一つ班長の立場から言っておきたいのは、梅田課長が言いましたように、 CKDというのは非常に重要で、国民の健康を守るために対策が必要なわけです。それ で、やはり医療を動かすためにはよくこういう作業班があるのですが、それを答申して もうまくいかない場合が、単に書いてそれでおしまいというふうになってしまうわけで す。そういうことにならないように、ここはエキスパートが集まっていますので、本当 に具体的にいい案をつくって、日本の医療を動かしてほしいんですね。僕は実は東大の 医療政策人材養成講座(HSP)というのに去年行っていまして、3期生ですが、医療 を動かさなければいけない。そのためにはこういう作業班とか審議会とか、そういうと ころに入っている先生方が、やはり厚労省と対等にいい案を提言して、それで日本の医 療をよくしてほしいということで動いてほしい。だから、忌憚のない御意見をいただき たいということです。  それでは、参考人の御意見をいただくということで、その点についてはよろしいでし ょうか。それでは、最初にヒアリングとして、松川班員から発言をお願いいたします。 ○松川班員  それでは私の方から、住民、患者さんに一番近い立場として、地域で今どのようなこ とが腎疾患対策で具体的に行われているかということを、現状を交えてお話ができたら と思います。私の方で用意させていただいた資料は(1)と(2)があるのですが、(2)の方から 先に説明させていただきたいと思います。  資料4−2と書かれている1ページ目になります。生活習慣病を予防するのが地域の 保健師、栄養士の役割ですので、生活習慣病の中で例えばどのような入院の仕方をして いるのか、治療の仕方をしているのか、というのを確認するためにこういう図表を使う ことがあるのですが、その横軸でいうと一番右側が今回問題になっている腎不全のとこ ろで、私の住んでいるところは北海道ですので、北海道のところに印をつけさせていた だきました。入院外は全国より低いですが、入院が高く、そのうちの腎機能障害がさら に高く、死亡においては男性女性ともトップ5に入るという状況でした。  どうして北海道が高いのかなというところから実は疑問が始まっていくのですが、次 に2ページを開いていただいてよろしいでしょうか。では、腎不全で亡くなっている方 が高い北海道ですが、実際に透析患者さんはどうだろうということで、5年ごとに統計 をとっています。1985年から2005年までの統計で、同じく北海道を黒く塗らせていた だきました。今現在1位の熊本県ですが、一番右側の伸び率を見ていただくと、伸び率 でいくと1位の熊本県が落ちているのに対して、北海道は患者数そのものも右肩上がり ですが、さらに伸び率でいくと第7位ということになって、北海道の中でも大きな課題 になってくるのではないかととらえました。  続いて3ページをよろしいでしょうか。透析になる患者さんのすべてに、地域の保健 師、栄養士は責任を持つことができないのですが、生活習慣病からなる糖尿病がどれぐ らいだろうかということで、一番大きな割合を占める糖尿病性腎症の割合を都道府県別 に見たものです。同じく1990年から入っていくのですが、ここ2年、2000年、2003 年までの統計があるのですが、北海道は31.4%ということで、全国の水準を上回って、 生活習慣病による予防可能な透析患者がふえているということがわかりました。  それでは、北海道の統計だけでは少し遠いので、本当に市町村で見たときにどうだろ うかということで、資料の4ページと5ページが各市町村による人工透析の伸びになり ます。私の所属しています上川町というのは、人口が5,000人弱のとても小さな町です ので、比較にと思いまして、北海道35万都市の人工透析患者の推移もお持ちしました。 上の表で、平成元年から平成19年の今途中経過までですが、実は平成元年、2年でい くと患者さんが23人と非常に少なかったのですが、平成10年、11年ぐらいから急増 しています。  下のグラフは新規導入者の患者ですが、赤く塗られている方が糖尿病性腎症の割合を 示しています。下の棒グラフが、実は新規分は医療費がどれぐらいかかるだろうと。公 衆衛生的に考えるときに、一つには予防可能かどうかというのと、あと医療費の問題が 医療制度改革の中でもとても大きくうたわれておりますので、下は医療費を計上してお ります。ここの市でいきますと、平成18年度は5億9,500万円が新規導入分としてか かっていますが、それまでの患者さんの数を踏まえると、医療費にとっても非常に大き な問題だと思います。  続いて、5ページ目がうちの町の実態になります。小さな町なので1人ずつがわかる ものですから、こういう出し方をしております。星印がついているのが糖尿病性腎症の 方です。左側の上の方を見ていただくと、糖尿病性腎症の割合を載せているのですが、 今年16人のうち糖尿病性腎症が8人。北海道も全国も上回って、うちは5割が糖尿病 性腎症になっております。透析導入の年は約1,000万円ですし、透析の維持に550万円 ぐらいかかっているのが昨年の医療費分析からわかりますので、昨年、18年度でいくと 3人ふえているのです。そうすると約1,500万円の医療費が上がりまして、うちは保険 者が2,000人ぐらいですので、それだけで医療費を非常に圧迫するという状況になって いて、小さな町であればあるほど、透析患者さんが1人ふえるというのは国保財産にと ってとても重要な問題だと認識しております。一番下に伸び率を示しておりますが、平 成2年の患者数を100としたときの2005年までのうちの患者数の伸び率が500ですの で、北海道、全国を上回る勢いで伸びているという、とても残念な状況になっておりま す。  1人ずつが見える小さな町ですので、では人工透析にどのような方がどうやってなっ ていったのだろうということを見るために、その次の6〜10ページまで5人の事例があ ります。人工透析になっていった方で、健診記録のある方を横軸に拾ってみました。検 討会の中の検討事項にありました、住民自身が自分の健診データを知るべきではないか というところに入ってくるのかなと思うのですが、これは保健師、栄養士がこの方がど うして透析になったのだろうか、どこの時点で早期介入ができたのだろうか、というこ とを考えるためにつくりました。  1番目です。資料番号6の方は、尿潜血が長らく続いていました。泌尿器をずっと受 診していましたので、泌尿器の方で経過観察という形を持ちながら、長らく町の健診を 受けていただいたのですが、78歳のときに人工透析が開始になりました。横軸の下の方 に、腎臓の指標をあらわすものとして、血清クレアチニン、尿素窒素等があるのですが、 血清クレアチニンの上昇は平成3年に1.3という形で初めて上がっていっています。今 年出されたCKDの診療ガイドの中にGFRの考え方が入っておりましたので、計算さ せていただくと、やはり1.3に上がったときにGFRでいくと52という形で下がって いって、以後だんだんに下がっていって、最後の77歳の次の年に人工透析というふう になりました。  実は上が健診記録で、下が遺伝の情報と診療記録が入っております。新しく来年から 始まる特定健診・特定保健指導という制度の中で、保健師、栄養士はまた健診の事業を 行うのですが、その中で医療費のレセプトと健診データを突合しなさいというのがあっ て、突合の一つのイメージですが、突合していくことで、例えば高血圧の治療をしなが ら降圧できなかったことが一つの早期介入の要因になったのではないかとか、いろいろ な指標として見えてくるのかなと思っています。  その次、7ページの方をよろしいでしょうか。下の治療状況からいくと、56歳から糖 尿病の治療を続けているのですが、73歳で慢性腎不全、75歳で人工透析が開始されて います。糖尿病の治療をしていながら、コントロールがどうだったのかとか、やはり健 診の中での血清クレアチニンと尿蛋白の出方、GFRがこのときもし計算できたらなと いうふうに考えます。  次に8ページの方です。この方は年齢がとてもお若いです。下の治療状況からいくと、 25歳から糖尿病を治療していて、35歳で症状悪化で入院、46歳で透析開始ということ になっております。血清クレアチニンが46歳の健診を受けていた時点で11.1。25歳で 糖尿が始まってから、46歳のこの健診記録が入る前までの健診経過等がちょっとわから ないのですが、現行の健診でいくと40歳からの健診ということになっているのですが、 こういう若くて受療歴のある方は、40歳からで早期介入が間に合うのだろうかというふ うに思わせる事例です。この方の場合は転入してきていますので、転入先での健診記録 等を続けて御本人が記録を持っていたら、少し早期介入が可能だったのではないかとい うことを考えさせていただく資料です。  次に9ページの方です。この方は腎臓の機能のところの尿蛋白、尿潜血を見ていただ きたいのですが、実はうちの健診を受けているときには尿蛋白も尿潜血も出ませんでし た。この方が透析になったときに、やはり一番保健師がなぜこの方が透析になったのか がわからなかったです。いろいろ勉強させていただいた後で、例えばこの方の場合は御 両親に遺伝歴があるとか、お母様が腎臓病だったとか、あと高血圧の治療をしていたの だけれども中断している時期があって、降圧が不適切だったのではないかと。あとは今 でいうところのメタボリック・シンドロームということで、少し太っていた状況がある ので、そういう様々な要因で腎臓を痛めていったのではないかと思いますが、それでも この方の場合は尿蛋白、尿潜血が出てこなかったので、もしクレアチニンからのGFR を計算できていたら、クレアチニンが1.2に上がった61歳のときに早期介入が可能だ ったのではないかという、非常に残念な方です。  もう一つ、最後の方です。この方の場合は、血圧のところに印をつけさせていただき ましたが、血圧の治療をしているのですが、適切な降圧ができなかった方です。早期か らずっと蛋白は出ていたのですが、血圧の先生に見てもらっているという、かかりつけ 医がいるという状況の中で、そちらでフォローしていただけるのではないかということ で、腎臓を守る視点がまだ当時保健師にはなかったものですから、クレアチニンが1.7 前後を保っていながら、なかなか腎臓専門医を受けることができずに、健診を受けてい ながら人工透析になってしまったという方です。  既に人工透析になった方の実態を見るにつけて、腎臓の悪化を示す指標というのが非 常に少ないなと。蛋白だけでも頼れなくて、クレアチニンでも上がってこない、なかな かクレアチニンの数字だけ見ていても予防できないといったときに、一昨年あたりから 私も学習を始めさせていただいて、GFRという判断基準ができたことは地域にとって はすごくありがたかったです。GFRの指標を使って、GFRを出して、初めてこの経 年表に落としたときに、あ、このときもし腎臓専門医にかかっていたらとか、適切な降 圧の意味ということを御本人がわかっていたらという意味では、GFRが換算できると いうことは、地域にとっては早期介入の一番大きな手助けになるのではないかと感じて おります。  尿蛋白とクレアチニンが実は相関して出るのではないかと言われているのですが、 個々を見たときに尿蛋白が出ないという方もいらっしゃいますし、クレアチニンが透析 導入直後までなかなか上がらないという方が起きてきたものですから、私と同じように 学習をしている保健師、栄養士の仲間が全国に250人ぐらいいるので、11ページと12 ページは22都道府県の保健師、栄養士に協力していただいて、尿蛋白とクレアチニン の状況を確認しました。  2枚目、12ページの右の下側が全国集計ということになって、平成18年度の基本健 診の80万人を超える方たちの実態になっています。これでいくと、尿蛋白が−ですが、 既にクレアチニンでいくと男性が1.2以上、女性が1.0以上を示す方が約1万人いらっ しゃるので、やはり蛋白に出るのか、クレアチニンに出るのかという意味では、こうい うクレアチニンの指標というのも一つとても大事になってくるのだなと考える資料です。  13ページと14ページは、この11ページ、12ページをそれぞれ、クレアチニンだけ で分けて考えたものと尿蛋白だけで分けて考えたものです。  では、実際に今健診を受けてきた方の中で、どのように人工透析を防いでいく試みを するかというのが、15ページと16ページになります。私の町の事例だと余りにも少な いものですから、少し大きな町の事例を借りてきました。15ページと16ページは同じ 県になります。まず健診を受けていただいた方の中で、血清クレアチニンをもとに換算 GFRを出して、低い順番に並べます。左側に腎臓の病気分類が3つ載っていますが、 先ほどでいうステージの5と4と3の方です。こちらのT市でいくと、一番低い方は6.6 という女性の方がいらっしゃいました。このように一覧表に並べて、上から順番に、ま ずステージ4までの方は腎臓内科の専門医の方をきちんと紹介するという形での精密検 査を勧めています。腎臓障害期別でいくと、ステージ3の方はかかりつけ医がいる状況 が多いので、かかりつけ医の先生と連携して腎臓内科を一度勧めるということもします し、あと実際に家庭訪問をして、きちんと降圧目標まで達していないとか、糖を治療し ながらもなかなか糖のコントロールがうまくいっていないという状況もわかってきまし たので、まずそこの原疾患がある方については原疾患がきちっと目標コントロールにな るように、腎臓を守るためによいコントロール指標ができるようにということで、地域 の方でお手伝いをさせていただいています。  右側の危険因子の重なりですが、この方の腎臓を痛めてきた要因は何だろうかという ことを考えていったときに、基準値以上に上がっているものは何だろうということで○ をつけさせていただきました。T市の場合だと、実は高血圧と高尿酸の重なりでGFR が低下している方が一番多かったです。ただ、尿酸についてはどうしても腎臓が悪くな ってくると上がってくる部分もあるので、先に尿酸なのか、後から悪くなってきた尿酸 なのかということは、今後は考えなければいけないということで、研究会の中でも課題 にはなっております。  16ページも同じです。同じ県で、こちらはG市ということになっています。CKDガ イドでも50未満をすごく大事にしていましたので、50未満の方たちについて、今この オレンジの方たちを全国の保健師がまず訪問して、どのような食べ方をしているのか、 どのような治療をしているのかということを、家庭訪問しながら、必要時腎臓内科の先 生に紹介しながら、腎臓を守ることができたらなというふうに取り組んでおります。  資料の17ページですが、1件市町村名が入っていますが、消していただければと思 います。先ほどのがG県ということになると、先ほどの市町村は高血圧と尿酸の重なり が多かったのですが、実はこれは各都道府県で違いまして、O県になりますと圧ではな くて脂質と糖、もしくは内臓脂肪ということで、その県、やはり自分の住んでいる地域 によって、何がもとで腎臓を痛めてくるかというのが、全国的な研究会なものですから 少し違いが出ておりましたので出してみました。  続いて18ページは、クレアチニンが年代によっても上がってくるので、一度年代に よる検証もしなければいけないのではないかということで、先ほど出たG市とT市で、 男女別、年齢別に一体1.3以上がどこに集中するのかということを出してみました。G 市とT市は同じ県ですが、こちらでいくとG市の方がクレアチニン1.3以上の男性の割 合が非常に多いということになってきます。地域ではこういうふうに課題設定をすると、 次になぜそのクレアチニンが上がってくるのだろうかということで、食べ方や生活の方 を住民とともに理解するという作業に入ってきます。  続いて19ページですが、実は来年から始まる特定健診・特定保健指導というのは、 メタボリック・シンドロームを中心としていますが、腎疾患の方の中には必ずしもメタ ボリックではない方がたくさんいらっしゃいます。そこで、やはり慢性腎不全を防ぐ、 医療費の一番のすぐ手前にある方を防ぐためには、特定保健指導以外の方でもきちっと 見ていく必要があるのではないかということで、そこの方たちのGFRが、これは横軸 の心電図の一つ手前に換算GFRがあるのですが、40台の方たちをずっと並べておりま す。特定保健指導の対象ではないのですが、こちらの方たちもきちっと保健指導の対象 としていかなければ、いつまでたっても医療費はなかなか横ばいにならないのではない かということで出させていただきました。こちらも北海道ではありません。  その出したGFRに対して、では一体何が相関するのだろうかということで、クロス 集計して出していただいたのが、20、21、22、23ページです。GFRの計算がとても 面倒で、電卓でできるものではないですし、1人ずつ計算するのもとても大変ですが、 健診分析のソフトがあります。こちらの2つの資料は、そちらの健診分析のソフトに入 れることでGFRごとに並べてくれる、GFRのクロス集計もできるということで、先 ほどの80万人の住民の実態を持っているところには、このソフトが入っている市町村 がたくさんありますので、また全部の市町村で集めたときに、一体何が一番課題になっ てくるのかなということがわかるのではないかと思っています。強く相関したところは オレンジがついています。こういうふうにいろいろな形で、GFRを横軸にしたり、健 診項目を縦軸にしたりしながら、自分の地域で一体何が腎臓を痛めているのだろうかと いうことを考えながら、地域の方の保健活動を進めさせていただきます。  私の方で出させていただいたもう一つの資料(1)の方ですが、これは多分先生方がごら んになる分にはちょっと耐えがたい資料ですが、住民の理解を支えるという意味では、 やはり検討会の中にもありましたが、どうして自分が人工透析になったかがわからない。 自分の何が腎臓を痛めてきたのか。ほとんどの方は病院に行って、「このままいったら人 工透析ですよ」と言われて、初めて自分の腎臓のことを考えるという機会になるもので すから、健診を受けていただいて、今はクレアチニンからGFRが出せるとしたら、も ちろん腎臓の専門の先生と御相談をするのは50以下ですが、どんどん下がってくる、 限りなく50に近い60の方たちと一緒に腎臓を考えていくためには、幾つかの資料が必 要なのかなと思って、私の方でつくらせていただいた資料です。  資料4−1で、この1次予防、2次予防、3次予防という考え方も私どもの研究会の 方の考え方で、50を過ぎたらいわゆる疾患管理として先生方にお任せしたいと。では、 自分たち保健師、栄養士の活躍できるところはどこだろう。50〜60のあたりだと、もし かすると保健師、栄養士の力で行ったり来たりする可逆性のところにあるのではないか と考えています。この資料は今すべてもう実際に住民の方に使っているのですが、住民 が自分の腎臓を痛めてきた原因を自分で丸をつけて理解していく。自分は血圧なのだろ うか、自分は遺伝なのだろうか、ということを自分でわかるために、理解していただく ためにつくった資料で、学術的にはかなり先生方としては頭をひねる部分があるのでは ないかと思いますが、ちょっと容赦していただければいいかなと思っています。  実はここに食事の資料がなくて、食事の資料は今研究会の同じ仲間の栄養士が制作中 になっています。食事のことも必ず連動してきますので、食事のことも含めてまた地域 の中で。先ほど一番初めに出しました経年結果というのは、今健診を受けた方には必ず 経年結果を御本人にお返しして、例えば今年GFRが下がったとして、血圧が上がった として、何が原因だったのだろうかということを御本人と一緒に考えるということをし ておりますので、そういう意味では健診結果を必ず住民のものにするというのが、一つ 公衆衛生の中で保健師、栄養士ができる役割ではないかなと考えています。  私の方からは以上です。 ○飯野班長  ありがとうございます。多くの資料を提出していただきましてありがとうございます。 最初は、北海道で透析患者が増加している、それも糖尿病性腎症が多いということです ね。それから、症状が出にくいので把握するのが非常に難しい。蛋白尿、クレアチニン、 その両者を見ないといけない。特にeGFR、推算GFRが一つのクルーになるという ことが言われているわけです。それから、もう一つ今重要なところは、ドクターだけで は難しいという点もあるのではないか。コメディカルの方がやはりこのCKD対策に重 要な役割を演じているのではないかというところですが、何か御質問、あるいはコメン トはございますでしょうか。 ○秋澤班員  資料1ですが、これは実際に住民の方々に配られて、もう活用されているのですか。 また、全国的に行われているのですか。 ○松川班員  全国ではなくて、私も入っているのですが、保健活動を考える自主的研究会というの がありまして、そこに集合している全国の250人ぐらいの保健師、栄養士のところでは。 先ほどデータに出ていた都道府県は、その学習に入っている保健師、栄養士がいるとい うふうに考えていただいていいのかなと思います。 ○秋澤班員  一般住民の中ではどれぐらいのパーセントにこれが配られているかという意味では、 どうでしょうか。 ○松川班員  GFRが低い方から順に使っていますので、ちょっとそこの数は把握はしていないで す。申しわけありません。 ○飯野班長  秋澤先生、何か御意見はありますか。その点は、全員に配った方がいいと。 ○秋澤班員  こういう大変立派なものがあるのでしたら、全員とはなかなか難しいかもしれないで すが、理解できる方にはなるべく早く普及していただくのは大事だと思います。 ○松川班員  実はこの順番は、来年制度が変わって、また健康手帳という形で、住民が自分の体を 理解するためにどういう手帳をつくったらいいだろうかということになっていまして、 研究会の中ではこの資料をそのまま健康手帳という形にしまして、健診を受けてくれた 住民の方に町村で買い上げて配布という予定にはなっておりますので。 ○飯野班長  ほかにはございますか。はい、藤垣班員。 ○藤垣班員  eGFRが50未満は医師が主に、それから50〜60が保健師さんが介入できる部分だ とおっしゃいましたが、医師というのは専門医のことをおっしゃっているのですね。そ うすると、50〜60でのかかりつけ医と保健師との関係はどのように考えられていますか。 ○松川班員  50〜60の方というのは大体血圧とか糖とか、基本的に原疾患で、基礎疾患でかかって いる方がいらっしゃいますので、健診結果を返すときに基本的には御本人に経年表を返 して、「こんな形で少し腎機能が低下しているので、まずは血圧の薬をもらっている先生 に、この経年表を持っていって御相談してください」というふうに話します。ただ、先 生方の中には、「これくらいは大したことないから気にしなくてもいいよ」というふうに 返ってくる場合も多々あるものですから、そういう場合にはもし御本人が、でもやはり 腎臓が心配なのでというときには、保健師の方が健診の先ほど言った経年表に換算GF Rを出したら、今年ちょっと急激な低下があったので一度診ていただけませんかという 形で、腎臓内科の先生に直接紹介状を書いて、住民が腎臓内科の方に行くということも あります。そこら辺は各地で非常に難しいところです。 ○藤垣班員  ありがとうございます。かかりつけ医の認識というか、その辺がやはり非常に大切で はないかなと思います。 ○飯野班長  そうですね。やはり今かかりつけ医でそういうことを自覚していない先生もたくさん いますからね。チーム医療ですから、保健師さん、あるいは栄養士さん、それからかか りつけ医、そういう方がチームでこういうCKDの対策を練らなければいけないと思い ます。症例でもありましたね。高血圧が非常に。あとステージ2ですか、これもほうっ ておけば腎不全になるというのがわかりきっているのに治療されていない。そういう面 を直していかないといけないですね。そういうシステムが必要です。  山縣先生、何かありますか。健診を大分やっていらっしゃる。 ○山縣班員  まず一つは、最初に出てきたところですが、糖尿病性腎症で腎機能が悪化した人たち の微量アルブミン尿を調べた頻度は、数字がちょっと出ていなかったものですからどう だったのかなと思ったのですが。 ○松川班員  数字では拾っていないですが、うちは実は健診にも微量アルブミンを入れています。 69歳以下の条件の中に入れているものですから、そうすると蛋白に出なくても微量アル ブミンが出ている方については、御本人にお話しするのです。それで糖尿病の方に、「3 カ月に1回糖尿病の検査をしながら、腎症を守るために、微量アルブミンの検査をして いるかどうか先生に聞いてみてください」と言うのですが、残念ながらかかっている病 院によっては、全く微量アルブミンという形の検査をしていないところもあるようなの で。 ○山縣班員  そうです。確かに私たちが見ていても、糖尿病で受診されている患者さんで、微量ア ルブミン尿をはかっておられる患者さんが極めて少ない。これは保険適用もあることで すが、それが早期発見を不可能にしているというか、見落としになっている可能性のあ る部分だと思います。  あともう一つが、尿蛋白がマイナスでありながら腎機能の悪化している人たちという のが結構いますかね。しかも、それは地域差とか何かそういうものがあるのか。あるい は、何か特徴的なものが見えてくるのか。これはすごく重要なことだなという気がする のですが。 ○松川班員  経年表をまとめてみて初めて自分たちも気がついたのですが、最初から割に蛋白が出 てくる方と、本当に直前まで出てこない方がいらっしゃいまして、今それについてはま た全国の仲間にお願いをして、直前まで蛋白や潜血が出てこなかった人の事例を集めて みて、一体何がというあたりを調べてみようというか、どうしてこの方が透析になった のかということは、また地域の保健師として一つ課題設定をして見ていかなければいけ ないかなとは思っていますが、ちょっとまだ頻度等は確認していません。 ○山縣班員  あともう一つが、今透析導入の患者さんは平均年齢が66歳ぐらいですね。でも、こ れは平均年齢で、実際のところはもう70歳とかそのぐらいがピークになっていて、高 齢者、したがって住民の高齢化が進んだ地域ほど、実は透析患者が出る可能性が高くて、 すごく地域差があるのです。これを如実に示していただいたデータかなという気がして、 非常に参考になったというか、おもしろいなと思いながら見ていたのですが、やはりそ れは、さっきお示しになっていましたが、かなり地域によっては財政に大きな影響を与 えて、これは健診によってかなりかかるようなお金も十分賄えるぐらいのものになると いうふうに解釈してよろしいのですか。 ○松川班員  そうですね。そう認識しています。クレアチニンだけはかるのであれば、一般生化の 中、クレアチニンだけ別の料金ということはちょっとあり得ないので、現在の老人保健 法のもとでやっていますので、体制が許す限り同じような形でクレアチニンを出してい って、推算GFRを出すことで、その先行的な予防投資としては、微量アルブミンもそ うですが、2倍も3倍も防げるように研究会の中では試算しています。 ○山縣班員  あと、これは全体にかかることかもしれませんが、今の発表の中でも腎疾患を、CK Dという、大きなくくりで言ってしまうと話はある意味大ざっぱになってくるところが ありまして、IgA腎症、あるいは糖尿病性腎症など個別の疾患ごとに対策を考えてい くなど、ここら辺はなかなか見えにくいのですが、これはどのあたりまで細かくやろう ということですか。 ○飯野班長  皆さんの御意見で決めていいのですが、僕が感じているのはやはりCKDを大きく見 て、それで対策を練っていく。ただし、その対策の中に例えばDM性腎症、あるいは蛋 白尿が出る慢性糸球体腎炎、その辺にかかわってくるようなことがあれば、特定に方針 を示してもいいのではないですか。例えば今蛋白尿がない症例で、それで腎不全になる と。やはりこれは腎炎ではないですよね。ほかの原因だと思います。ですから、そこに 対策を絞るということも一つストラテジーとしてはあると思います。だから、両面でい っていいと思いますが、ベースはCKDではないかなと。 ○山縣班員  わかりました。どうもありがとうございます。 ○飯野班長  何かほかにはございますか。今の御発言でお二人ともそうですが、クレアチニンの測 定というのはやはり必要ですよね。それが特定健診で落ちているのですね。 ○山縣班員  今見事に如実に示していただいたところだと思うのですが、尿蛋白が出ないにもかか わらず腎機能が悪化するものがある以上、全部を拾い上げるためには血清クレアチニン がないと不可能。あるいはもしかするともっとお金がかかるかもしれませんが、微量ア ルブミン尿を調べるのかなともちょっと思うのですが、それよりはクレアチニンの方が よっぽど経済的という気がします。 ○秋澤班員  CKDという定義がeGFRで決まるわけです。クレアチニンをはからずしてeGF Rははかれないですから、クレアチニンをはかるのは最も基本です。 ○飯野班長  そうですね。ありがとうございます。どうですか。厚労省の方に聞いてもいけないで すね。聞いてもいいですか。特定健診ではクレアチニンが外れたのでしたね。 ○日下課長補佐  第1回のときに少しお話があったと思うのですが、検診にクレアチニンを入れる入れ ないという話は、生活習慣病対策室の会議の中でかなり議論があったと聞いております。 結論から申し上げると、今これを変えるといってもなかなか難しい話がありますので、 今後しかるべきところでまた議論がなされて決まる話だと思っています。 ○飯野班長  この作業班でも、やはり結局は日本の国民の健康をよくするという意味で、いいこと はどんどん提言していくという方針でいいのだと思いますが。難しくても将来的な観点 というところですね。ほかにはございませんか。  一応最後にもディスカッションしますので、では次に、引き続き栄養指導の立場から、 昭和大学藤が丘病院栄養科の菅野参考人より御発言をお願いいたします。よろしくお願 いします。 ○菅野参考人  昭和大学藤が丘病院の菅野です。よろしくお願いいたします。これから「慢性腎臓病 (CKD)対策における食事療法の意義とその問題点」ということについて、私見を述 べさせていただくわけですが、最初にちょっとお断りさせていただきたいことがござい ます。私は今日この場に来て初めて、この作業班はCKD1〜3の段階の患者さんが対 象であるということがわかりましたということと、ふだん私が栄養指導を担当している 患者さんというのは、どうしても末期腎不全、いわゆるCKDの分類でいきますと4や 5の患者さんになりますので、今日のお話、それから成績すべてがCKDの4や5の末 期慢性腎不全の患者さんのデータであるということを、まず先にお断りさせていただき ます。  本日、私がお話しさせていただく内容を大きく分けると3つございます。まずは慢性 腎臓病に対して、果たして食事療法は本当に有効なのかどうかということと、その問題 点は何か。最後に、今後の対応をどうすべきかという3つのことについてお話をさせて いただきます。  先ほどもちょっと申し上げましたように、今日のお話の内容は、CKDステージ分類 の4ないし5の患者さんが対象でございます。  まず、慢性腎不全における低たんぱく食療法というのは、どういった治療効果をねら って行うものなのかということをちょっと確認しておきます。まず、何といっても腎機 能の障害進行抑制効果、これを一番大きな指標としております。次に、高窒素血症の抑 制効果、それから高カリウム血症、高リン血症、低カルシウム血症などの血清電解質異 常の抑制効果、それから代謝性アシドーシスの抑制、腎性貧血の抑制、これらが相まっ て自覚症状の改善効果も期待できます。それから、透析導入の遅延効果が期待できます。 これだけのものが、低たんぱく食の治療効果として期待できるものです。  それでは果たして本当にこれだけの治療効果があるのかどうかということですが、こ れは当院での成績です。この0.3、0.4、0.5というのは、標準体重1キログラム当たり のたんぱく質の摂取量を示しております。私は身長165センチメートルで標準体重60 キログラムですが、60キログラムとしますと0.3というのは1日たんぱく約20グラム、 0.4が約25グラム、0.5が約30グラム、0.6が約35グラム、0.7が約40グラム、Cと いうのがコントロールグループで、何も食事療法をしていないグループということで、 クレアチニンが6になった時点から見て、腎機能障害の進展速度をどれだけ抑制できた かということを示したグラフです。見ていただいてわかるとおり、たんぱく摂取量が0.3 〜0.5、すなわち1日たんぱく20〜30グラムという厳しい低たんぱく食を行いますと、 見事にその進行を抑制することができます。しかし、やはり35グラム以上ですと、そ の進行抑制効果は見られませんでした。  次は生化学データですが、まずは高窒素血症を抑制するかどうかということで、BU Nを見てみますと、やはり0.3や0.5、いわゆるたんぱく20グラムや30グラムという 厳しい低たんぱく食において、非常に有効な高窒素血症の抑制効果を認めます。それか ら、重炭酸イオンを見ていただくとわかるとおり、これもやはり1日たんぱく20グラ ムや30グラムというような厳しいrestrictionで、代謝性アシドーシスの有意な抑制効 果を見ております。それから、高カリウム血症、高リン血症、低カルシウム血症という ような血清電解質の異常に対しましても、1日20グラムないし30グラムという厳しい restrictionで、初めて有意な血清電解質の異常抑制効果を見ております。  それから、腎性貧血の抑制効果も、たんぱく制限をすると、一見栄養障害が起きて腎 性貧血が悪化するのではないかと考えられますが、事実は逆でございまして、低たんぱ く食をしっかりやったグループの方が、腎性貧血を有意に抑制しておりました。  この低たんぱく食療法の最も危惧するところは、やはり栄養障害に対する問題です。 やはり低たんぱく食を行うことによって、総たんぱくやアルブミン、それから筋肉量な どの減少が起きるのではないかという懸念が常につきまといますが、これも十分なエネ ルギーをとるということと、それからたんぱく質を制限した内容、特にアミノ酸スコア を良好に保つということをしっかりやりますと、栄養障害がむしろ抑制できます。総た んぱくやアルブミンは、たんぱく制限をした群の方が有意に高いレベルを保っておりま した。  これは、0.3〜0.5と厳しいrestrictionをした患者さんの2年間にわたる栄養状態の推 移を、多周波インピーダンス法による検討で示したものですが、Body Mass Index、す なわち体格ですね、それから体脂肪量、これも厳しい低たんぱく食を行っても、2年間 にわたって変化を見ておりません。  同様に、筋肉量や徐脂肪体重、これらにおいても変化を見ておりません。これらの結 果からも、たんぱく制限をきちんと行えば、栄養障害の低下は来ないという治療成績で ございました。  個々の患者さんの例を少しだけ出しますが、これは47歳の男性の例です。当院に来 た1993年のときに、既にクレアチニンは5.5まで増加しておりました。当院に来るま での経過は、非常な角度で腎機能の低下を見ておりますが、当院に来てからたんぱく20 グラムの食事療法を始めて以降、これは2006年までのデータしかありませんが、今日 現在なおかつクレアチニンは7点台を保っていて、もう14年間にわたってクレアチニ ン5.5から透析導入の遅延を見ております。  これも同じで、49歳の男性の例です。  これも33歳の男性の例で、同じく当院に来たときにはクレアチニン6.1でしたが、 2006年3月の段階でまだクレアチニンは5.4、つい最近も当院に見えましたが6.3でし た。ということは、やはり約4年にわたって腎機能障害の進行を見事に抑制している。 こういった治療効果が食事療法にはあるということでございます。  慢性腎臓病に対して食事療法は有効かということに対しては、これは極めて有効であ る。しかも、恐らくもっと早期から行えば、さらに有効性が高まると思われます。ただ、 ではもっと早期からこれだけ厳しい低たんぱく食が必要かということは、いろいろ議論 があるかもしれません。もっとたんぱく制限が当然緩やかでもいいでしょうし、例えば CKDの2とかそういったような段階であれば、もしかするとたんぱく制限は要らなく て、食塩制限や体重のコントロールで血圧を管理するだけでも大丈夫かもしれません。 その社会的意義も大きいと思います。医療費の大幅な削減効果はもちろん、患者さんの QOLの維持・向上というようなことについても言えると思います。  では、その問題点は何かということですが、これはやはりほとんど普及していないと いうことが一番の大きな問題点であろうと思います。その原因もいっぱいあるのですが、 ここに先生方がたくさんいらっしゃって非常に僭越ですが、やはり食事療法に無関心で ある先生方、医師が多いということも事実です。それから、我々栄養士の資質が低いと いうことも事実です。それから、食事療法に対する誤解と偏見があるということ。それ から、栄養指導に対する診療報酬が余りにも低過ぎるということも大きな問題だと思い ます。  そこの個々の内容をもうちょっとかみ砕いて見てみますと、食事療法に熱心でない先 生方が多いということに対しては、ではその原因は何か。やはり「食事療法は効かない」 と思っていらっしゃる先生方が意外と多い。それから、食事療法は患者さんのQOLを 低下させると思っていらっしゃる先生方が意外と多い。それから、そういったことをも って「食事療法なんか治療じゃない」と思っている先生方が多い。もう一つは、「栄養指 導は栄養士に任せておけばよい」という誤った認識があると思います。  この中で、「食事療法は効かない」と思っているということが、一番大きな原因ではな いかと思います。そこをもうちょっとかみ砕いて見てみたいと思いますが、その思われ る理由ですが、これは多施設共同研究による有効性が確認されていないということが、 やはり一番大きな問題点だろうと思います。しかし、このRCTという手法は、食事療 法にはどうしてもなじまない研究手法であると思います。それは食事には偽薬がござい ませんので、患者さんがどのグループに振り分けられたかということがあらかじめわか ってしまうという点。それから、たんぱく制限をしないグループに振り分けられても、 患者さんみずからが勉強して、たんぱく制限を始めてしまうという点。それから、正し い栄養指導ができる施設が極めて少ないという点。これらにおいて、食事療法というの はRCTではなかなか確認できない、そういった分野であろうと思います。  その結果、初めに設定したたんぱく質量が守れず、違うたんぱく質量での比較検討に なるということで、これは国内で行われたある糖尿病性腎症に対するたんぱく制限の有 効性に関するRCTの結果ですが、本来計画段階ではたんぱく制限群は0.8グラム、通 常たんぱく群は1.2グラムの計画を立てていたものが、実際結果的にはたんぱく制限群 は0.8グラムを守れる患者さんが少なくて、0.946グラムとなってしまって、逆に通常 たんぱく群は患者さんみずからが多分ある程度勉強したのでしょう。その結果、1.078 グラムとなってしまったということです。  それから、次に我々栄養士の問題ですが、やはり栄養士の資質が低いということも事 実です。これは腎疾患の病態についての知識が乏しい。身体所見や検査データが読めな い栄養士が多いです。それから、先生方と一緒に診療をしている、いわゆる臨床経験の ある栄養士が極めて少ないということも問題だと思います。それらの結果、食事の指導 をしましても、正しく説得力のある指導ができないということも、とても大きな問題で あろうと思います。  3番目に、食事療法に対する誤解と偏見ですが、食事療法は患者さんのQOLを低下 させるという意見があります。しかし、これは十分な指導により、むしろ高めることが できるというのが我々の経験です。それから、食事療法は患者さんや御家族への負担が 大きいという指摘がございますが、これはなれることで十分に解決できる問題です。も う一つは、低たんぱく食はどうしてもまずいという問題がありますが、これはこれから 紹介します治療用特殊食品の利用で十分解決できると、そういった問題です。  これから実際の患者さんがふだん家庭で行っている食事のスライドをお見せします。 これは朝食の例です。これは主食に低たんぱくの御飯を使って、副菜はふだんほかの御 家族のものを適宜調整してつくったというようなもので、見ていただいてわかるとおり、 普通の朝食とほとんど変わらないような内容で、食事療法というのは実践できるのです。  これは昼食の例です。これはカボチャのホットケーキとベーコンサラダ。皆さんがふ だん食べる昼食と余り変わらないのではないでしょうか。  これは夕食です。やはり主食は低たんぱくの御飯ですが、シュウマイとかたこの酢の 物とかサラダとか、そういった形で、普通の食事とほとんど変わらないような状態で、 この低たんぱく食というのは今実行できる時代になってきたのです。  これらを可能にするには、ごらんにいれます低たんぱくの御飯やパンなど、そういっ た主食に低たんぱくの食品を利用するということが極めて重要です。  それから、最近はスパゲッティやそばやラーメンまで出てきました。非常においしい ものです。これらを駆使することによって、今は低たんぱく食が無理なく実行できる時 代になってきたということを知っていただきたいと思います。  最後の問題、今後の対応をどうすべきかということですが、まずは日本腎臓学会が中 心となって行っていただきたいと考えることが幾つかあります。それは一つは、食事療 法の治療効果に対する正しい評価を何とかしていただきたい。これはRCTではなかな か難しいということを述べましたので、食事療法に精通して実績を上げている施設の retro-spectiveなスタディーによる評価、検討で、何とか正しい評価をしていただきた い。それから、先生方に対する啓蒙と教育ですが、正しい食事療法のあり方や、先生方 としての患者教育への取り組み方について、啓蒙と教育をしていただきたい。それから、 我々栄養士、看護師、保健師さんも含めて、コメディカルスタッフへの教育。これは今 現在、日本腎臓学会の中にコメディカルスタッフ育成委員会というものが立ち上がって いるのですが、そこが中心となって展開をしているところです。  それから、厚生労働省の皆さん方が中心になって行っていただきたいと考えることは、 これは一つのアイデアですが、まず各都道府県に食事療法のセンター病院を指定する。 例えば食事療法を行うのに必要な診療体制と治療実績。それから、厳しい低たんぱく食 などの高度な食事療法の実践とその普及などができる施設を、センター病院として指定 していただいて、食事療法の研修を行ったり、診療実績に見合った診療報酬を与えてあ げたりというようなことで、そういったところを軸に、どんどんと全国的にこの低たん ぱく食療法が普及できないかと考えました。  それから、先ほど見ました治療用特殊食品の正しい普及と開発ですが、治療用特殊食 品を開発しているような業者さんというのは、やはり非常に零細な企業が多いのです。 そういったところを何とか援助していただきたい。そして、正しくこの食品が普及する ようにバックアップしていただきたいというのが、私からのお願いでございます。  ちょっと論点がずれていたかもしれません。CKD、特に4と5の段階でのお話です が、これで私のお話とさせていただきます。どうもありがとうございました。 ○飯野班長  ありがとうございました。非常に参考になる意見をいただきました。厳しい意見もあ りますが、僕も腎疾患のセンター化というのは必要なのではないかなと思っています。 栄養だけではなくて、透析にしろ、透析に入る前のステージ1〜3ぐらいでも、やはり 各県にセンター病院的なものをつくるべきではないかという考えを前から持っているの ですが、何か御意見はございますでしょうか。食事療法についてですね。軽度期のガイ ドラインでも、食事に関してはエビデンスがあるという、これはステージ4、5になる と思いますが、ステージ1〜3でエビデンスがどれだけあるかというのは、今のスライ ドではもっと強い効果があるのではないかという御意見がありましたが、やはりエビデ ンスがあるかどうかですね。食塩とかたんぱく制限ですね。はい、どうぞ。 ○山縣班員  ちょっと論点がずれるかもしれないですが、まずステージ1〜3にこだわりますと、 カリウム制限、例えばeGFRでどのくらいで始めたらいいのか。よく困るのが、ARB やACEIを使いながら、カリウムが上がったためにACEI、ARBをやめることで尿 蛋白がふえて、腎機能の悪化スピードが加速するというケースがあるものですから、そ こら辺をガイド的に示していただけるといいと思う点が一つ。  それと、第2点が塩分制限。特に今一応CKDのガイド上は1日6グラム未満という ことになっていますが、高血圧がある人たちに対してはよくわかるのですが、例えば少 量の尿蛋白が出ているだけで余り血圧が高くない人たちに塩分制限をした方がいいのか。 塩分制限をすると、蛋白尿の増加抑制力、腎機能の悪化スピードが抑えられるのかどう か。そこら辺はどうでしょうか。栄養指導の効果とはこの点どの様に考えられているの か教えていただければと思います。 ○菅野参考人  まず、カリウムの問題ですが、カリウム制限というのは、やはり高カリウム血症が出 てきてから始めればいいとは思うのです。高カリウム血症が始まる前から予防的にやる のはいかがなものかと思います。そのカリウム制限のやり方もいろいろありますが、例 えば一番手っ取り早くやるには、食品の中にはカリウムを特異的にたくさん含んでいる ものが幾つかあります。例えば芋類。それから果物の中でも数種類。それから乾物類。 そういったようなものを抑えるだけでも、意外と高カリウム血症が緩和することがござ いますので、そういったような方法で、カリウム制限というのはゆでこぼしなどとよく 言われているもの、そこまで厳しくしなくても、意外と高カリウム血症が是正すること を非常に多く経験しています。  それから、高血圧がない場合に食塩制限をすべきかどうかということは、済みません、 私はちょっとよくわかりません。 ○山縣班員  カリウムの摂取をふやすことは血圧を下げる効果もあるというところがあるようで、 したがってある時期、腎機能が正常な方には、たくさん果物を食べろとかカリウムをた くさん摂取しろというふうに言うようなところもありますね。一方、CKDのこのあたり からはカリウムの摂取は気をつけてなどという、栄養士さんからのアセスメントがある とよろしいのではないかなという気がします。ぜひ、御検討いただければなと思いまし た。 ○飯野班長  ありがとうございました。はい、藤垣先生。 ○藤垣班員  山縣先生が言われたように、カリウムに関しては、一般の市民の方たちの誤解みたい なものが非常にあります。カリウムは当然腎疾患ではたくさん食べるのがいいでしょう というふうに、高いカリウムの人でも言われることがあり、この考え方を変えるのがな かなか難しいときがあります。一方、eGFRで見て末期の末期になるまでカリウムは 上がらない、プラスアルファの要因があって初めて上がると一般的には考えられていま すので、ガイドラインでeGFRがどれだけだったらカリウム制限というのも難しかろ うと思います。しかし、何かこのキャンペーンや啓蒙などにより、カリウムに対する考 え方をもうちょっと一般の市民にわかりやすく、なかなか一律には難しいですが、普及 できればと思います。 ○飯野班長  はい。あと松川班員、どうですか、栄養士さんと保健師さんとの連携というのはどの ようにしたらいいかですね。 ○松川班員  今は市町村にも栄養士が配置されていまして、まず主治医の先生から低たんぱくのこ とについて指示があるかないかで変わってくるのですが、指示がなくても、北海道自体 がそもそも高たんぱくなんですよね。この間調べたのですが、30〜60歳の男性も女性も、 全国が65グラムぐらいなのに、北海道は94グラムぐらいとっているのです。その時点 で既にたくさんとっているのに、それがなお低たんぱくというと半分以下になるのです。 それはもう住民にとっては想像できないような低たんぱくなので、まずはふだんの食を バランス食に落としましょうということで、まずふだんの食事を落としていかないと、 そもそも低たんぱくという概念が入っていかないので、一番初めに見ていただいたよう に北海道は腎不全が多いのは、一つにはたんぱく食をたくさんとっていることで痛めて きているのもあるのかなとは思っているのですが。  それで、栄養士さんと一緒に考えるのはカリウムとかたんぱくとか、栄養士さんは栄 養素で考えるのがとても得意ですが、例えば住民にとってはお肉はたんぱく質とわかる のだけれども、御飯はたんぱく質とは想定もしないのです。だから、そういう意味では やはりふだん食べているもの、例えばラーメン、うちはラーメンで実は町おこしもして いるので、町の中にラーメン屋さんがたくさんあります。人口が5,000人のところをラ ーメン屋さんが20軒ぐらいあるのです。そうすると、お客さんが来るとラーメンをも てなすという、ちょっと違った風習があるとすると、やはりうちの町で腎臓が悪くなっ た人にとっては、ラーメンというのは物すごく大きな指導の中身に入ってくるのですが、 これが例えば長野県あたりになると、ラーメン屋さんそのものが探さないとないという ところになると別になってきます。やはり食事は地域性によるものがとても大きいので、 そこも違うのだろうと思います。ふだん何を食べているのか、ふだん食べているものの 中でのたんぱくの制限というのは、やはり地域の中では栄養士と一緒に考えていくよう にはしています。 ○飯野班長  ありがとうございました。あと、ステージ1〜3で、どの程度厳しくたんぱく制限を するかですね。いかがですか。秋澤先生、何かありますか。 ○秋澤班員  班長の質問とはちょっと異なりますが、食事療法で一番大切なことは、先ほど医師の 啓蒙とおっしゃいましたが、医師を啓発するときのエビデンスを明確にすることですね。 私も藤が丘病院に22年半いましたので、今お示しのあったような、低たんぱく食が効 く症例があることは十分認識しています。ただ、藤が丘病院には延べ数千例の患者さん が押しかけてきたわけですね。しかし、提示されたデータは、せいぜい数十例のデータ しか出てきていない。これではやはり医師を納得させるエビデンスにはならないのです。  一方で、低たんぱく食が十分に達成された方でも、腎機能の悪化を抑制することがで きなかった症例もあります。低たんぱく食が大事だということは私はよく理解していま すが、多くの医師に納得させるだけのエビデンスをつくられるのが、皆さんの一番大事 な努めだと思います。先ほどランダマイズのコントロールスタディーが難しいというお 話がありましたが、先生方のところはプロキロ0.3グラムとか0.4グラムとか、ほかの 病院では絶対できない低たんぱく食ができていま。プロキロ0.8グラムとか0.6グラム とか、そのレベルの低たんぱく食のできる施設はほかにもあるはずですので、そういっ たところをぜひ加えられて、医師が納得できるエビデンスをきちっとつくられると、食 事療法に対する評価が大分変わると思います。それが第1点です。  第2点目は、特殊食品の問題です。たくさんの患者さんが藤が丘病院の栄養教室に通 って、この低たんぱく食品、先ほどでん粉米が出てきましたが、患者さんはこれらを紹 介され購入して使っていらっしゃいます。それこそ大変な努力をされて使っていらっし ゃるのはよくわかりますが、これを購入するのにまたたくさんのお金がかかっているの です。選ばれた患者さんでないとそういったことができない。選ばれた患者さんは、そ ういういい機会に恵まれると同時に、これだけの治療をやっているからというので、ほ かの治療に対するコンプライアンスも上がるのです。例えば普通の患者さんだと月に一 遍の来院も十分でない人が、栄養指導を受けているからといって必ず月に一遍、あるい は2週間に一遍来て、栄養士さんと同時に医師の指導を受けていく。これは非常にコン プライアンスが高い。これがまた患者さんの予後をよくする因子となる。そういった様々 な効果がありますので、それを食事療法の効果と区別して見きわめることが大切です。 同時にこれは厚労省の方にもぜひお願いしたいと思いますが、そういった経済的な負担 を何とか緩和できるような方策を考えなければいけないというのが第2点。  第3点目は、最近は患者さんの老齢化から、自分の家では食事をつくれない方がたく さん出てきています。そこで、企業が宅配をやって、低たんぱく食を宅配しているサー ビス、あるいは商売が出てきています。しかし、これに対して、それを検証しているこ とはほとんど行われていないと思います。患者さんに対しては、例えば藤が丘病院が推 奨するプロキロ0.4グラム、あるいは0.5グラム以下のたんぱくですという形で、ある いは食塩は6グラム以下ですといって届けていても、それが本当にそうなのかというこ とはだれも検証していない。だから、もしかすると患者さんがそういったことだけ信じ ていて、全く違うにせものを食べさせられているかもしれない。この点もきちっと検証 されるべきだと思います。  食事療法についてはその効果、経済性、それから今の業者さんの参入が本当に妥当で 安全なものなのかどうか、そういったことがきちっと検証されるべきだと思います。 ○飯野班長  ありがとうございました。問題点をいろいろ指摘されたわけですが、今後ここの方針 としても、やはり食事療法はだめだというわけではなくて、いかにそれが有効かどうか ですね。1〜3で有効かどうか、その辺を検証することと、アベイラビリティーですね。 どうやったら利用がうまくできるか。その辺の方針を立てていくべきではないかと思い ます。 ○秋澤班員  今、菅野さんが示されたような症例があることは事実ですので、それは十分認識され るべきだと思います。 ○飯野班長  どうもありがとうございました。時間もそうないので、次に移りまして、全国腎臓病 協議会(全腎協)の常務理事の栗原参考人に御意見を伺いたいと思います。よろしくお 願いします。 ○栗原参考人  出していただいている間に少し。全国腎臓病協議会というとほとんど透析を中心とし た患者で構成しているものですから、私自身が慢性腎炎で今日まで透析しない役員とし ては1人だけなのです。27歳の9月に入院して、もう62歳になりますので、34年間慢 性腎炎のまま来ているのですが、今お話を聞いていて、そうすると僕のGFRは幾つな のかなと。先日健康診断をやったときに、僕の場合には血清クレアチニンが1.2で、そ うすると松川さんにつくっていただきました表を見ながら、60歳代を見ますと46とい う数字が出てくるのかなというふうに思いました。ただ、よくいろいろ先生方に、どう してこれだけ30数年も慢性腎炎で、蛋白がいまだに3と。この蛋白3というのも発見 されてから今日までいまだに変わらないのです。その間、赤血球が多数だったのが、一 たんは今ほとんどプラス1ぐらいになっているのですが、このまま透析に入らずにいけ たらいいなと願っている一人なんですけれども、やはり僕らみたいに慢性腎炎、糸球体 腎炎と言われた患者が、進行しないようにしていくためにはどうしたらいいのかなと。  ちょっと振り返ってみたら、僕はソニーにいたものですから、ソニーの健康診断で見 つかって、その後、健康管理室に慶応と済生会の先生がいらして、その腎臓病の先生を 中心に月に1回ずっと指導していただいたので、比較的血圧管理や何かにしても、今ニ ューロタンを飲んでいるのですが、蛋白が減らないから、本来だったらもう少し抑えら れてもいいのかなと思いながら、ただ腎機能そのものが悪くならないだけいいのかなと いうふうには思っています。ただ、今日まで来られたのも、きちんと毎月病院に通って 検査をし、担当の看護師さんが僕の血圧やデータを全部グラフにして、膨大な20数年 間の資料をつくっていただいたのを見させていただきましたが、やはりそういう管理が 本当に必要なのかなと。腎臓病の進行を防いでいくには、それは患者自身が自覚しなけ ればならないのですが、やはりきちんと周りのそういうお医者さんに指導していただく。 今おっしゃいましたが、最も大事な食事管理にしても大分気をつけてきたとか、僕らは もう病気になる前はそれこそマージャンも好きで、徹夜もしながらやってきましたが、 それ以来ぴたっと午前様をやめたとか、そういう指導をしていただいたので今日あるの かなと思っています。  これからも透析患者をこれ以上ふやしたくないという私たち全腎協の願いを、やはり もっと多くの人たちに知っていただけたらいいなということで、今日僕は「新・腎疾患 対策」ということで、腎疾患対策を国民的課題にしたいということで、簡単にお話をさ せていただきたい。僕らのお話は、今日は普及啓発をどのようにしていくかというとこ ろに絞ってさせていただけたらいいなと思っています。簡単に全腎協ができるまでの話 を少しだけ宣伝させていただきながら、今の取り組みについてお話をさせていただきた いと思います。  昭和42年に人工透析が健康保険適用になって、本人は10割給付、そのときの家族は 5割給付、国民健康保険の人は7割給付ということで3割負担だったわけです。  当時、1971年に全腎協が結成される前というのは、透析患者の人たちはやはり器械が 少ない。実際には腎不全になって透析に入るときに、ベッドのあきを待っているような 状況があり、またその当時の高額の医療費負担という問題について非常に悩み、やはり 透析をせずに亡くなっていった患者が多かった時代を、35年前の状況を少しお話しさせ ていただきながら、1971年に全腎協ができるのですが、見ていただきたいのは透析患者 数949名、そのときの全腎協の会員というのは1,452名ということで、透析患者ではな くて、僕みたいな慢性の患者さんが当時は病院にいて多かったのです。糸球体腎炎の患 者さんというのは当時4カ月から5カ月の入院で、食事療法や何かをずっと指導されて きたものですから、蛋白が見つかって入院というと、「え、5カ月も入院しなければいけ ないんですか」と。その間、2週間に1回ずつ、ずっと腎臓病についての勉強を含めて させていただきながらやってきたのです。そんなことで全腎協の結成当時というのは、 僕らが病院にいたときにも30人の会員がいましたが、透析をやっている人たちは8人 で、ほとんど慢性患者という状況でした。でもそういった中で、透析をやっている人た ちが非常に大変な思いをして、医療費についてもここの4つについて掲げながら、1971 年に会ができていくのですが、この人工透析の膨大な費用を、ぜひ保険ではなくて全額 国庫負担で見ていただきたい。それから、透析患者については身障法の対象にしていた だきたい。それから、長期療養者の治療の保障、全国各地に腎センターを設置していた だきたいということも含めて、当時の透析患者の人たちを中心として立ち上がったとい う時代です。  この辺についてはちょっと飛ばせていただきます。  全腎協はもともとそういうことで、透析患者を中心にやってきたのですが、当初から やはりこれ以上患者をふやしてはいかんということで始まって、早期発見・早期治療の 必要性を訴えて、3歳児の検尿制度や、また小学校、中学校の検尿制度をぜひ導入して いただきたいということで、早くからこの要求を取り上げていただきながら、早期には 3歳児検尿や、具体的には中・高の検尿制度ができていくのですが、それらにあわせて 今までの経験を生かした上で、全腎協として「腎疾患対策確立のために」と。それで私 たちは“腎臓病の予防から腎移植、患者の社会復帰まで”を基本とした考え方を、この 広島大会でつくり上げました。  その内容については、なにしろ中央に腎疾患対策の専門的な委員会を設置していただ きたい。それとあわせて、中央と都道府県に総合腎センターを設置していただきたい。 その内容としては、腎疾患の予防を推進していくこと。それから、慢性腎疾患対策につ いての強化をしていただきたい。それから、安心して透析ができる条件を全国的につく っていただきたい。まだこの当時、移植が進んでおりませんでしたので、ぜひ臓器移植 の促進のための体制や、移植ができる道筋を強化していただきたい。今社会復帰してい る患者が、当時はまだ平均年齢でも既に30年前というと20歳以上若く、当時は4時間 透析、5時間透析ではなくて、まだ1日8時間、10時間という長い透析をやって生活し ていたのです。医療を受けて。だから、そういった点でいけば、透析してしまうとなか なか社会復帰することができないという状況だったものですから、ぜひ社会復帰の道を 築いていただきたいというようなことで、この腎疾患総合対策を掲げて、戦略的政策課 題として今日まで活動を展開してきました。そういうことで、この間、「これ以上透析患 者をふやさない」「透析に入るのを少しでもおくらせる」ということから、早期発見・早 期治療に力を入れながら、運動に取り組んできたという経過です。  これがその間取り組んできていただいたもので、既に疾病対策課さんで5カ年計画や、 それから1973年から3歳児検尿、1974年から小・中・高校生の検尿制度を含めて、早 期発見・早期治療に国としても力を入れてきていただいたという経過があります。  今日の状況はもう既に透析患者264,473人ということで、何度もこの表が出ています ので飛ばせていただきます。  ここは患者構成の変化ですが、今、後期高齢者の問題等が出されていまして、ここは なぜつくったかといいますと、今65歳以上の患者が129,863人ということで、既に 51.9%です。今回、後期高齢者医療制度の中でも、障害者は65歳が入るということに なると、透析患者は既にもう半分以上の人たちがその後期高齢者医療制度に加入しなけ ればならないということで、ちょっとこの表をつくりながらその辺も追加させていただ きたいなと思っているところです。  この糖尿病性の問題については、もう先ほどから報告されていますので、飛ばせてい ただいて、どちらにしても糖尿病性腎症の患者がふえていますということです。  今後患者がふえる中で、どうしていったらいいのかということについて、少しずつお 話しさせていただきたいのですが、全腎協はちょうど昨年、2006年に35周年を迎え、 法人設立10周年ということで、先ほどは腎疾患対策については、予防から患者の社会 復帰までということで35年間活動してきたのですが、ここでは患者一人一人が命を輝 かせて、さらに生きていきたいということから、新たに腎疾患対策の整備とその専門医 委員会をつくっていただきたいということで、働きかけをしていこうと。そういうこと で僕は、今回厚生労働省の疾病対策課さんを中心に、この検討会や戦略研究をつくって いただいたことは、非常にそういった点での大きな前進だと思っていますし、さらにこ の腎疾患対策を国民的課題にしていくための第一歩が、ようやく踏み出せたのかなと思 っているところです。そんなことで、腎疾患対策を確立するために、これ以上の透析患 者の増加を予防していきたいということ。それから、やはり腎臓病についての治療研究 をより一層進めていただきたい。それから、どこへ行っても安心できる治療を進めてい ただきたい。それから臓器移植推進体制ということで、昨年でも197例という献腎移植 があるのですが、やはりこの移植についても国民の理解を得るための活動をより進めて いきたいと思っています。それと、これはもう患者の願いですが、だれもが安心して生 活ができる社会保障制度を、やはりこれからも守り続けていきたいと思っています。  そんなことで、今後の研究課題についても、腎臓病患者、透析患者の増加を予防する ことや、治療研究にぜひ力を入れていただきたいということを含めてお願いしながら、 私たち自身は今何ができるかということで、私たちはこれ以上もう腎臓病患者をふやし たくないという一つの願いで、これらの腎疾患対策が緊急の国民的課題であるという取 り組みに立ち上がったわけです。  それで、今何をしなければならないかということで、私たち自身が患者であるという ことから、自分たちの療養体験や、透析をやっている生活の状況などを知っていただく ということも含めながら、やはりきちんと自分たちの役割を国民の人たちに知っていた だく。それは、患者でなければできないことを知っていただくことが大事なのではない かと思っています。  そんなこともありまして、もう36年間続けてきております「腎疾患総合対策を求め る」国会請願署名も、毎年100万人を超える署名を集めて、約30人の衆参の議員に今 年の3月も届け、7月14日の国会最終日に一応採択をさせていただいています。  その中身は腎疾患対策の予防と腎不全の治療について、この啓発活動をさらに強めて いただきたいということを中心に、8つの項目を掲げて国会請願に臨み、今行政として、 これらの採択された中身を具体化していただくための取り組みが必要ではないのかと思 っております。  僕らは当事者(患者)として今伝えたいことということで、幾つかの課題を取り上げ ております。  そういった中でようやく、というよりは、今年から取り組んでいただいております、 「腎疾患対策」を国民的課題にしようという中での厚生科学研究、これもほとんど疾病 対策課さんを中心に今年から戦略研究が立ち上がっているわけですが、これが来年度の 概算要求でも3億9,000万円という予算が出ていますので、ぜひこれらの研究は引き続 きやっていっていただきたい。  また、今厚生労働省が出しています慢性腎臓病の問題についても、一応これを全面的 に、透析患者であってもやはりこれ以上患者をふやしたくないという立場から取り組ん でいくにも、日本慢性腎臓病対策協議会さんたちと一緒になって運動していきたいと思 っています。  具体的な形としては、この慢性腎臓病対策協議会さんが3月に結成され、今そこに全 腎協としても加盟させていただいて、これからの中ではそういった点で、全国で慢性腎 臓病(CKD)というものの啓発活動をどのように進めていくのかということで、この 対策協議会さんたちと一緒になって活動を進めさせていただきたいと思っています。  それとあわせて、やはり腎疾患対策を国民的課題にしていくには行政もそうだし、国 の中でもこの問題をきちんと理解していっていただく必要があるだろうということで、 国会の議員さんの中に「腎疾患を考える勉強会」をつくって、まず与党から始めていこ うということで、大村秀章議員を事務局として、今日まで既に3回、今月11月にまた 懇談会を開催する予定でいます。こういった勉強会の中で、昨年2回目には飯野先生に 御出席いただいて、委員の皆さんにCKDについて説明をして、理解を求めました。3 回目には山崎先生に日本の透析事情ということでお話をしていただいて、まずやはり議 員さんたちに今の腎疾患の状況について理解していただくことが重要なのではないかと いうことで、活動を進めています。  今、公明党さんともそういった形で話を進めていますし、これからも野党の議員さん たちに、今の腎疾患の現状についてお話をしていくことが重要なのだろうと思っていま す。  ただ、全腎協がいろいろな活動をしていく上でも、いろいろな形でいけば専門的なエ ビデンスというのは患者自身の要求や、医療を受けている中から出てくる政策もありま すが、基本的な医療の分野でいけば、やはりきちんとした先生方の御援助抜きにはでき ないものですから、一応2月から腎疾患対策懇談会を設けながら、今日いらしています 飯野先生、また秋澤先生からいろいろな形で御支援いただいて、全腎協についてはそう いった点でもう少しきちんとしたものを主張できるようにしていきたいということから、 今透析医会の山崎先生も含めて懇談をしながら、いろいろな運動に取り組んでいるとい う状況です。  中央でようやく戦略研究や検討会ができたので、今全国的には地方で腎疾患対策懇談 会をぜひ立ち上げていただけたらいいなと。毎年全腎協がつくってきました腎不全を考 えるつどいを、今後この腎疾患対策を国民的課題にするために、各地域でCKDに対す る勉強を進めていきたい。それは今年8月に北海道でも新聞社さんや製薬会社の協力を 得て、800人も集まって、この腎疾患を考えるつどいを行ってきましたが、これをやは り各地で展開していきたい。  そういうことで、この慢性腎臓病(CKD)についての理解をより一層深めるために は、これはやはり行政だけではなくて、今日おいでになっているマスコミの皆さんや製 薬会社の皆さんの力も借りながら、全国でこういう展開ができたらやはりそれだけのニ ュースが伝わるし、大きな啓発活動になっていくのではなかろうかと考えまして、今全 腎協としてはこの腎疾患対策を何とかもう少し幅広く、もっと国民の人たちに理解して いただこうと。そういった点からいけば、先週飯野先生が出た「ためしてガッテン」、や はりああいう番組をもっとつくっていただいて、腎臓病というのがどんなものかという ことを、あれだけ易しく、またわかりやすく取り上げていただいたことにすごく感謝し ていますが、ぜひ今後全腎協の立場から、この腎疾患対策を国民的課題にして、1人で もこれ以上の患者をふやさないという私たちの願いとあわせて運動してまいりたいとい うことです。  少し長くなって申しわけありません。私の報告にかえさせていただきます。どうもあ りがとうございます。 ○飯野班長  ありがとうございました。やはり医療を動かすには、患者さんの立場というのは非常 に重要だと思います。栗原さんは非常に努力なさって、日本の透析、あるいは腎疾患の 医療に対して意見を言っていただいております。日本の医療というのは患者さんの声が 聞こえなかったところが非常に多いんですね。これからの医療はやはり患者さんが、自 分自身の健康を守るというのが重要ですから、これからもどんどん意見を言っていただ いて、腎疾患の治療を変えていっていただきたいと思います。  今の栗原さんの発表ですが、何か御意見はございますか。はい、秋澤先生、どうぞ。 ○秋澤班員  実際の医療を受ける患者さんの立場を考慮することは、私はすごく大切だと思ってい ます。本来の全腎協という組織は透析患者さんが主においでになる組織だと思いますが、 そういった透析患者さんの要求を余り表に出されませんでした。栗原さんは国の施政は 透析患者さんをふやさないようにする、これは私は大事だと思いますが、一方で現在27 万人おいでになる透析患者さんをどうやっていくかということも、もう一つ大事な点だ と思います。  御存じだと思いますが、透析患者さんの平均余命は一般人口の半分に達しません。そ れから、SF-36などで測定したQOLも非常に低下しているわけです。特にこれは透 析期間が長くなると悪化していく、こういう状況にありますので、こういった問題につ いても本来は国はちゃんと向上を図るような施策をされるべきだと思います。  もう一つ、この点で私が気になりましたのは、先ほどの資料3のところで、前回の第 1回腎疾患対策検討会で検討された主な意見というのが出ておりました。その6)その 他の最後のところに、評価項目としては幾つか並んでおりまして、「透析患者の減少を用 いてはどうか」と。これは非常に誤解を生む表現だと思います。透析患者さんを減少さ せるのは、国の医療制度を変えてしまって患者さんが生きられないような治療をすれば、 患者さんはあっという間に減ります。でもこれでは困る。ですから、透析への導入患者 さんの数を減らすということにきちっとさせていただきたいと思いますし、今いる患者 さんの予後向上ということもぜひ考えていただきたいと思います。 ○飯野班長  ありがとうございました。では、そこの部分をちょっと変えていただけますか。透析 患者さんを減らすというとやはり問題が起こりますね。その辺を注意していただきたい と思います。  時間が大分過ぎましたが、本日のヒアリングは保健師さん、栄養士さん、患者さんの 立場から言っていただいたのですが、資料2にもありますように、今回の検討事項です が、一般国民に対する腎疾患に関する普及啓発をどういうふうにしたらいいかというこ と。それから、医療提供体制の中でどうやってお医者さんにかかるか、あるいは保健師 さんに相談するか、という患者さんへの指導の部分。それからあとパラメディカルです ね。栄養士さん、保健師さん、薬剤師さん、その他のコメディカルの人材育成をどうい うふうにするか。その辺の3点ぐらいが重要になってくると思います。あと15分ぐら いなので、班員の先生からその立場で一言ずつ御意見を言っていただけますでしょうか。 では、松川さんの方から、国民に対する腎疾患に関する普及啓発をどうするか。あるい は見つかった患者さんにどういうふうに対応するか。それから人材育成をどういうふう にするか。いかがでしょうか。 ○松川班員  一般国民に対する普及啓発という意味では、先ほど栗原さんもおっしゃっていました が、テレビの「ためしてガッテン」等のマスメディアの影響というのはとても大きくて、 実はあの放送の翌日、すぐ住民が自分の健診結果を持って私のところに来て、「私は大丈 夫だろうか。GFRを出してください」と言って来た方がいるぐらいです。やはりマス メディアの影響はとても大きいので、一つには慢性腎臓病という自覚症状のないとても 怖い疾患があるんだということを、まずはお知らせしてほしいというのと、では、それ を自分のものにするためにどうしたらいいのかということで、いろいろな立場の、職域 であったり地域であったり、健診を受けていただきたい。健診を受けてデータがないと、 保健師、栄養士はそこから実際の生活指導や食事指導が始まるので、まずは健診を受け ていただきたいなという意味で、新しい制度の中で保険者に健診が義務づけられたとい うのは、とても大きなことなのだなと思っています。  その次の段階として、やはり専門医の方ですとか。一番残念なのが、残念というと語 弊がありますが、一般内科の先生たちの中にも、慢性腎臓病に対してまだそこまで熱心 でいらっしゃらない方がいる場合には、実はCKDの診療ガイドが出たというのはとて も保健師としてはアプローチがしやすくなりました。新しく出たガイドなので、専門の 先生でなければ御存じないかもしれないですが、こんなふうな形で診療ガイドが出まし たので、それにのっとっていくと、実はこの患者さんもGFRが50を切ったので、ぜ ひ一度腎臓の専門の先生の方に御紹介いただけませんか、というアプローチができるよ うになったのは、地域としては診療ガイドという意味はとてもありがたいなと思ってい ます。 ○飯野班長  ありがとうございます。では、藤垣先生、お願いします。 ○藤垣班員  今現在、腎臓学会の指導のもとに、あるいは私どもで地域のかかりつけ医の先生に対 して、腎臓専門医が今一生懸命CKD対策を普及しているというのが現状かと思います。 やはり市民一般の方に関しては、市民公開講座をやったりしますがなかなか集まってこ ない。ターゲットというか、ぜひわかっていただきたいという仕事をされている若い方 たちは、なかなかそういう機会が得られないため、やはりマスメディアの協力というの は必要だと思います。  それから、ガイドラインですが、蛋白尿が健診で見つかってかかりつけ医にかかった 段階で、今グラムクレアチニンで蛋白尿を見ましょうという基準をガイドとして出して おります。しかし、なかなかそこのところが難しく、わかっていただいた開業医の先生 たちも、実際業者に出す検査のものを見ると、そういう項目としてはないわけです。で すから、何らかの指導として、検査会社に1回つけるだけでグラムクレアチニンの蛋白 尿が出てしまうという、非常にわかりやすい項目づくりをすべきかなと思います。それ からやはり何といってもクレアチニン、これはファーストラインのところではかること ができるようにしてほしいと思います。 ○飯野班長  ありがとうございました。秋澤先生、どうぞ。 ○秋澤班員  先ほど松川先生から大変すばらしい、これから国民に配られるという資料を見せてい ただきました。国民一般に対する啓発活動としては、もちろん飯野先生にも「ためして ガッテン」をあと10回ぐらいやっていただいて、大いに啓発していただきたいと思い ますが、大切なのはクレアチニンが1.3で、医者に紹介されて、その医者がこれを異常 値だととらえない。こういうことが一番の問題なわけです。医師に対する啓発活動、ク レアチニンの値を見てこれが異常なんだ、今eGFRが指標となってきましたが、そう いったことを十分認識させる、これが一番大事なことです。これは医師会の先生方、あ るいは学会の横断的な啓発活動が大事になると思います。  一方で各県に、あるいは国にセンターをつくれという話がございます。確かにこれも 一つの方策だとは思いますが、現在は500万人の患者さんをいかに効率よくみんなで診 ていくかということが課題なわけです。私は3年ほど前まで、近畿圏のある県で6年間 ほど勤務しておりました。その県は全県100万人の人口がありますが、医科大学が1つ、 腎臓学会の専門医はたった26人しかおりません。この医師で全県の腎臓病患者を診る ということは絶対不可能なわけです。行えることは、いかに各地域の方々と連携をとっ て、そしてこの腎臓病の患者さんの進展を食いとめていくか。こういったことを一つの プロトコルにのっとってでき上がるようなシステムを構築する方が、私はセンターをつ くるよりももっともっと効果的ではないかと、そういうふうに考えています。 ○飯野班長  ありがとうございます。そういうアイデアを出していただくと、今後これが進むと思 います。その上にセンターをつくりたいなという気が僕はしますが。では、山縣先生。 ○山縣班員  今日話を聞かせていただいて、まず一番はやはり患者さんの患者会活動や、一般住民 の方への啓蒙活動と、もう一つはかかりつけ医の先生たちへの啓蒙活動が重要というこ とです。かかりつけ医の先生たちには、現在日本腎臓学会が中心となってCKDのキャ ンペーンをやっていることでもわかります。医師会の先生たちを対象にやっているので すが、複数回やっていますけれども、やはり来られる方はだんだん固定してくるのです。 ですから本当に聞いてほしい、ふだんこういう話をお聞きにならない方たちにはなかな か伝わらない。一般住民の方へというと、「ためしてガッテン」が効果的だったかもしれ ないですが、でもこれもテレビを見られる方はやはりかなり限られた方で、それ以外の 人たちにどうやって普及を進めるかということは考えておかなければいけないと思いま す。そうなってくるとやはりもしかするとコメディカルの方なのか、あるいは保健師さ んに一般の住民の方への啓蒙活動を担っていただき、合わせて患者の指導をお願いでき る体制を作る。これをCKDに特化する、あるいはCKDに特化するとやや狭くなり過 ぎるという印象もありますから、現状である糖尿病療法士などを参考にして、メタボリ ック・シンドロームに対する療法士やCKDに対する療法士みたいなものを資格制度と してつくる。あるいは教育制度をつくって、そういう方たちが一般の方への予防活動と 患者の方への指導の2つの活動を行うこと。さらに、かかりつけ医と専門医の橋渡しを する役割を担う。そういうような資格制度でも、もしつくれるのだったら、意味がある のか。という気がしました。 ○飯野班長  ありがとうございます。4人の班員の先生方の意見で、大体方向性は出ていると思い ます。やはりかかりつけ医とコメディカルの方ですね。そういう方が一緒になってチー ム医療的なシステムを構築する。それから、糖尿病あるいは高血圧の学会と何か一緒に やっていくというようなことだと思います。あと、今日参考人の方がお二人いらしてい ますが、まだ少し時間がありますので、一言ずつ御要望などがありましたら。菅野参考 人。 ○菅野参考人  今日は私はエンドステージのところで、特に厳しい低たんぱくのことをお話しさせて いただきましたが、1〜3のもっと緩やかな段階のところに目を向けてみますと、やは り例えば肥満などの生活習慣の改善というのが、非常に大きなウエートを占めているの ではないかと思うところが多々あります。といいますのは、やはり肥満の患者さんは、 やせていただくだけで結構血圧が下がるというようなことも多く経験しておりますので、 そういった生活習慣の改善などが非常に大事なことではないか。  それからやはり先ほど私がお話しした中で、栄養士のレベルがまだまだ十分ではない というところもありますので、今私は実は日本腎臓学会のコメディカルスタッフ育成委 員の委員もやっているものですから、もっともっと本当の意味で患者さんに貢献できる ような栄養士を育てるということに尽力をしたいと思っていますし、学会の先生方にも 御協力を願えればと思っております。  以上です。 ○飯野班長  ありがとうございました。栗原参考人。 ○栗原参考人  今回検討会ができ、作業班の先生方がこれから検討していっていただくのだろうと思 いますが、秋澤先生が最後に言われましたし、松川さんから地方の町に住んでいて、透 析患者が1人ふえることによってその財源を圧迫してしまう。この医療費の問題という のは、僕らも無視できないと思っていますし、今26万人で1兆3,000億円という医療 費を使っているわけです。これがあと3年もすれば、透析患者は30万人にもなろうと しているときに、今度1兆8,000億円、1人今500万円。やはりこれらの中で、その町 に住んだり、小さな会社に行っていても、健康保険組合から医療費がかかるのでやめて いただきたいという話も昔はあったし、今でもそういったこともあります。だから、僕 らはこれ以上の医療費だけではなくて、やはりこれ以上の患者をふやしていかないとい う取り組みは、まさにこれからこの慢性腎臓病を中心として、その抜本対策にぜひ力を 入れていただきたい。  それからもう一つは、戦略研究も進んで5年間でやっていくということになっていま すが、こういった対策ができたことに大きな期待をし、また自分たちは全腎協として患 者としての立場で、これからもいろいろな活動に取り組んでいきたいと思います。これ からもいろいろな面で御指導をよろしくお願いしたいと思います。 ○飯野班長  ありがとうございました。皆さんの御意見を大体お伺いしたのですが、今後の腎疾患 対策の方向性ですね。今御意見が出たように、地域の医療体制をどういうふうにするか ということも重要だと思います。それからあと、糖尿病や循環器、特に高血圧、そうい う学会との関連をどういうふうにするか。そういう面について、次回では医療対策があ る程度うまくいっている事例のところ、あるいはそういう生活習慣病に関する御意見を、 参考人としてお伺いしたいと思います。よろしいでしょうか。  では、もうあと3分ぐらいですので、最後に事務局から、今後のスケジュールについ て教えていただければありがたいと思います。 ○日下課長補佐  今後のスケジュールについてですが、各作業班の先生方には今年中、12月までをめど に、腎疾患対策の今後の方向性の素案をつくっていただくことを予定しております。次 回の日程については11月20日、15〜17時に開催を予定しております。各班員の先生 におかれましては、日程の確保等をよろしくお願いいたします。場所については現在未 定ですが、確定次第御連絡をいたします。次回につきましても、関係者のヒアリングを 予定しておりますが、ヒアリングの御提案等がございましたら事務局までお申しつけく ださい。なお、それ以降の日程については、12月中をめどに調整させていただきたいと 思います。 ○飯野班長  ありがとうございました。これで本日の作業班は閉会といたします。皆様、御協力を ありがとうございました。 <了> 1