07/10/26 「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」議事録について 第8回 診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会 日時 平成19年10月26日(金)    14:00〜16:00       場所 霞が関東京會舘シルバースタールーム ○医療安全推進室長(佐原)  定刻になりましたので、ただいまより第8回「診療行為に関連した死亡に係る死因究 明等の在り方に関する検討会」を開催させていただきます。委員の皆様方におかれまし ては、ご多用の中、本検討会にご出席をいただき誠にありがとうございます。本日は、 堺委員と辻本委員より欠席のご連絡をいただいております。また、オブザーバーとして ご出席いただいております警察庁で異動がありました。警察庁刑事局刑事企画課の北村 滋課長に新しくオブザーバーとして参加いただくことになりました。北村課長は少々遅 れるということですので、それまでの間、刑事企画課刑事指導室長の白川室長にご出席 いただくことになっております。事務局にも異動がありましたのでご紹介いたします。 医政局長の外口です。医政・医療保険担当審議官の木倉です。  配布資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席表、委員名簿の他に、資料1、 資料2、資料3と参考資料を用意させていただいております。以降の議事進行につきま しては前田座長にお願いいたします。 ○前田座長  議事に入ります前に、本日は参考人をお招きしておりますのでご紹介いたします。国 土交通省航空鉄道事故調査委員会企画調整課長の八鍬隆参考人です。八鍬参考人には、 後ほど議題2のときにご発言いただきたいと思っておりますので、何卒よろしくお願い 申し上げます。  議事に入ります。本検討会においては、4月から計7回の検討を行ってまいりました。 これまでの議論の整理として8月にまとめさせていただきましたけれども、非常に濃密 なご議論をいただいてまいりました。それからしばらく時間が経過したわけですが、取 りまとめたこれまでの議論の整理を踏まえ、今般診療関連死の死因究明を行う組織、診 療関連死等の届出制度の在り方、調査の在り方等について、現時点において厚労省の考 え方を取りまとめていただきました。その「診療行為に関連した死亡の死因究明等の在 り方に関する試案」が10月17日に厚労省より公表されております。  そこで、本日は議題1として試案について事務局より説明をしていただきます。各委 員のご議論を伺った上で議論をしたいと思います。特に、資料1について議論をしてま いります。その後に議題2として、7月に開催された第6回検討会において、加藤委員 から、既存の調査の仕組みである航空鉄道事故調査委員会のヒアリングをしてはどうか というご提案がありましたので、先ほどご紹介申し上げました八鍬参考人より、委員会 の体制、調査の実情等についてご意見を伺ってまいります。まず、事務局から資料1の 説明をお願いいたします。 ○医療安全推進室長  資料1の1頁に死因究明等のイメージ(案)が書いてあります。その次に、10月17 日に厚労省から公表させていただきました第二次試案を付けております。1頁の「はじ めに」のところですが、中身については既に御覧いただいていると思います。1の一番 下の(6)のところにありますが、本年3月に厚労省で「死因究明等の在り方に関する課 題と検討の方向性」を作成し、パブリックコメントをいただきました。本検討会におい ては4月から計7回にわたってご議論いただき、8月には「これまでの議論の整理」を まとめていただきました。これを踏まえ、改めて現時点における厚労省としての考え方 を取りまとめたものです。  3月に出しましたものの主な変更点を中心にかいつまんでご報告させていただきます。  2の死因究明を行う組織についてということですが、この組織として(1)「医療事故調 査委員会」(仮称)を設置する。5行目で、組織の在り方については、行政機関に置かれ る委員会を中心に検討し、ブロック単位での分科会を設置し、検討を進めていく。3頁 で(2)委員会の構成についてということですが、委員会は医療従事者、法律関係者に加 え、これまでの議論も踏まえつつ、遺族の立場を代表する者という文言を新たに入れま した。  3の診療関連死の届出制度の在り方については、(1)で医療機関からの診療関連死の 届出を義務化する。(2)届出先は委員会を主管する大臣とし、大臣が委員会に調査を依 頼することとする。(4)診療関連死については、全ての事例について委員会を主管する 大臣がまず届出を受理し、必要な場合には警察に通報する。  4委員会における調査の在り方についてということで、(1)調査の対象事例は、当面 死亡事例のみとする。(2)ご遺族からの相談の受付、医療機関からの届出がなされてい ない事例であっても調査を開始することがある。(3)調査の手順については大きな変更 はありません。  5頁目で、この検討会の中で院内事故調査委員会の役割は極めて重要であるというご 指摘がありましたので、そのことを書き加えてあります。  6のところで、再発防止のための更なる取組の(2)委員会は医療安全のために講ずべ き施策について、必要に応じて行政庁に対する勧告・建議を行うという一文を加えてお ります。  7の行政処分、民事紛争及び刑事手続との関係ということでは、行政処分、民事紛争 及び刑事手続における判断が適切に行われるよう、これらにおいて委員会の調査報告書 を活用できることとする。(1)行政処分の在り方について、というところでは、(1)医道 審議会等、既存の仕組みに基づいて行う。(2)個人に対する処分のみでなく、医療機関へ の改善勧告等のシステムエラーに対する仕組みを設ける。(2)裁判外の紛争処理につい ては、委員会とは別の民間のADR機関を活用することとし、こうした民間のADR機関相 互の情報・意見交換等を促進していく場を設ける。刑事手続については、委員会から警 察に通報された事例、あるいはご遺族から警察に直接相談があった場合における委員会 の調査との調整を図るための仕組みを設ける。  8として、本制度の開始時期ということで、本制度の実施に当たりましては財政面、 あるいは組織面での検討を加えた上で、必要な法整備を行う必要がありますが、更に施 行に当たっては十分な準備期間を取るものとする。  このような内容の試案を公表させていただきました。 ○前田座長  第二次試案について、各委員から幅広くご意見をいただいて審議をしてまいりたいと 思います。資料2をご提出いただきました加藤委員からも適宜ご発言をいただければと 思います。今までずっと議論してきたことですので、個別に「はじめに」「2 組織につい て」というような形で割って議論を詰めるということではなく、特にお気づきの点で、 今までの議論の流れからいってこうまとめることに問題があるのではないか等ご指摘が あればお伺いしたいと思います。それから全般に関してということで、本日は全委員か らご意見を頂戴したいと考えております。  せっかく資料2を出していただいておりますので、まず加藤委員から資料2の説明を 含めてご意見を頂戴できればと思います。 ○加藤委員  資料2は、今の関連でいうと2頁の組織の在り方についてというところに対応してく るところもあります。厚労省内にこの組織を置くのではない考え方を1つプランとして ご提示するということです。基本的に、事務局でまとめていただいた第二次試案につい て是非実現していきたいという気持ちから、より良くするにはどうしたらいいかという 意味での提案とご理解いただきたいと思います。  「医療安全中央委員会」を内閣府の下に独立行政委員会として設置してはどうか。医 療安全の問題をずっと考えていきますと、例えば自治体病院とか救急医療の分野に関連 すると、総務省の所轄ということもありますし、医学部の定員をどうするのかという問 題、文科省の科研費を使った臨床研究等の中で起きてくる事故なども想定されるので、 省庁をまたがる問題ということもあるだろう。  厚生労働省の場合、厚生労働省が設置している病院が存在しますので、そういう状況 の中で第三者機関的に医療安全の委員会を作るときに、厚生労働省に置くことがどうな のかということだったり、あるいは行政処分の権限を持っているのは厚生労働省になり ますが、こういうところが直接的な、こうした医療安全の委員会を省内に設置するとい う在り方がどうなのかとかいろいろなことが考えられます。1つは、内閣府に設置する というアイディアを提案させていただきました。  このプランは、中央に「医療安全中央委員会」を設け、その具体的な実務的なことは 7つぐらいのブロック単位で、医療安全地方委員会が担うということであります。流れ としては、医療機関から右下の方にある診療関連死の届出を受け、剖検が実施され、そ の事故調査が現実にはなされる。  しかしながらここで1つポイントになるのは、全ての診療関連死を、「医療安全中央委 員会」で1から実施してしまうというのは、マンパワー的にもなかなか大変なことにな りますので、特定機能病院他、病床数でいうと300床以上の規模の医療機関では、独自 に院内に事故調査委員会を開き、そこで診療経過なり、評価なり、改善のための提言な りをまとめていく、というようなことを積極的に指導し、推進していくことを考えてい るわけです。  その際には、公正さを担保するために、調査能力を持つ外部の委員を選任するという ようなことが肝要だと考えます。そういうことで、各医療機関ごとに事故調査を公正に、 自立的に行うという、ある意味ではそうした土壌といいますか、文化というものが豊か に広がっていくことにより、ある意味ではこの「医療安全中央委員会」の本来の活動と いうものがより健全な形で機能するのではないだろうか。そんな思いがあります。  そうしたものを前提にし、「医療安全中央委員会」が、現在はモデル事業として2年ほ ど実施してきた成果を踏まえて報告書作成ということになってきます。それを遺族側に も、医療機関側にもお返しするといいましょうか、報告書をレポートとしてお返しする。 そういうことの機関として構想したものです。全ての診療関連死は、「医療安全中央委員 会」、具体的には地方委員会の方に届出がなされていきますけれども、その中で重大で悪 質な事案というのは捜査機関に速やかに連絡がなされる。そこでスクリーニングを一応 するという形で整理を付けています。とりあえずそんなことでプランを参考までに作っ てみたということで、議論の際に参考にしていただければと思います。 ○前田座長  ありがとうございました。委員相互でのご質問もあろうかと思うのですが、私から一 言ご質問させていただきます。この委員会の議論を踏まえて厚労省がまとめた「医療事 故調査委員会」と「医療安全中央委員会」というのは、置かれる場所が厚労省の下と内 閣府と違うのは理解できたのですが、お話を伺うと、構造的には大体同じものと考えて よろしいのでしょうか。 ○加藤委員  はい。 ○前田座長  あとは、先生がずっとご主張になっておられる、院内の事故調査委員会の重要性とい うのは厚労省も受け止めて、院内の事故調査委員会の重要性というのは1つ入っており ます。ただ、ご指摘のように院内の事故調査委員会と、この中央委員会との関係につい てご議論いただくことも重要かと思います。今のようなことで、できれば加藤委員のご 提案に対してご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。 ○樋口委員  加藤委員の提案も含め、全体として発言させていただきます。今回の取りまとめで、 今までの議論の方向性が改めて確認できました。今回、こういう第三者機関、ここでは 「医療事故調査委員会」を設立しようという話になっています。一体何のためにやるの かというと、まず大きな意味で医療への信頼回復という話だと思うのです。かつて医療 事故に遭って、しかも亡くなられたという人が、自分が医療事故に遭ったときに、例え ばその後の医療機関の対応等が非常にまずくて不審に思ったとします。そのときに、こ ういう第三者機関があってくれたらな、と思うようなものを作りたいと思うわけです。  今回の草案の中には、全体の委員会、中央委員会と呼ぶのかどうか分かりませんが、 遺族の立場を代表する者にもちゃんと入ってもらうし、それぞれの評価をちゃんとやる 地方ブロックの調査チームの中にも遺族を代表するような方に入っていただくというよ うな配慮があるので、そういう方向で制度を作っていくのは非常にありがたいことだ、 いいことだと思っております。  もう1つが加藤委員のご発言に関する話になるのですけれども、医療を主管するとこ ろの厚生労働省への信頼回復というのもあった方がいいような気がするのです。厚生労 働省はやめてしまえというのならともかく、いいこともやっているはずなので、もっと もっといいことをやってもらいたいという意味では、もちろん内閣府に中立的な第三者 委員会を設置するのも1つの考え方で、私自身どこへ置くかという点についてはそんな に強い考え方は持っていないのですが、今のところはどちらかといえば、信頼回復とい う点では、医療全体もそうだし、その主管官庁である厚生労働省の信頼回復というのも 厚生労働省のためというのではなくて、国民にとって重大なのではないかという感想を 持っています。  その上で感じたところを6点申し上げます。1点目は、2頁の一番下のところで、監察 医制度との連携を図るということですが、監察医務院が全国にあるわけでもないし、監 察医務院の働きについて私が十分理解しているわけでもないので、十分な連携というの はどういう形で図っていけばいいのかというイメージが私自身にないのです。もし、十 分な連携を図ることの方向性というのが、この裏に何か事務局としてあるのならお聞き したいと思います。  2点目は、3頁にある届出制度の在り方のところで、第三者機関に届出を義務化するの だという話で、何らかのペナルティを科すという点です。このペナルティの意味なので すが、これは私の意見にすぎませんが、やはり医師法第21条問題というのがあって、そ れに代わるものだというのであれば、単純に刑事罰で脅かすというようなことをやって、 医療への信頼の回復が図れるかというと、そういうことも一部にはあるかもしれません が、全体としてはないと思っています。届出を義務化すれば、やはり何らかのペナルテ ィというのは当然付いてしかるべきだと思っていますが、そのペナルティの科し方につ いては何らかの工夫があってもいいはずであるというコメントです。  3点目は、4頁で、問題の医師法第21条に基づく届出の在り方について整理するとい うことですが、これはどういう形の整理をするかがなかなか難しいです。簡単に私の今 の考え方だけ申し上げると、医師法第21条が医療者の間で非常に大きな問題になってき たことからして、それからこうやっていろいろな形の議論を積み重ねてきたことからす ると、何らかの形で医師法第21条に手を付けていただいた方が、今後の方向性がはっき りする。今後の運用次第でというような形のやり方も1つではあるのですが、ここでは っきりと医療者が自ら責任を持ってやるのだ、という体制を明らかにするためにも、医 師法第21条についても何らかの但し書きを付けるとか、はっきりした枠組みを作った方 が、今後の方向性がはっきりするような気がしております。  4点目は、同じ頁の下の方の(3)(4)で、具体的な医療事故の調査が行われた後の調査報 告書を作成し、個人情報を削除したものについて、もちろん遺族及び医療機関について はお互いにわかっていることですから本当は削除しなくてもいいようなものなのですが、 削除した上でそれを公表してみんなのために使う、というのは賛成です。この委員会と いうのは、当事者のためもあるけれども、先ほど言ったような全体としての医療の信頼 への回復、それから再発防止ということをやってもらうのが、本当は個々の医療機関、 あるいは遺族にとっても共通の願いであるはずなのです。それを、これだけきっちりし た調査報告書そのものをプライバシーに配慮しながら、あるいは医療機関の名前などは 伏せながら公表し、役立てていこうということは大賛成です。  5点目は、5頁の院内事故調査委員会です。最終的には第三者機関で、あらゆる医療事 故の検査をすることは、人的にも、予算的にも、時間的にもできないはずなので、それ ぞれの病院で院内事故調査委員会をきちんとやるという体制を整えることの方が、将来 的には非常に重要なので、外部委員を加える等によりとありますが、さらに第三者機関 が院内事故調査委員会の、言葉としては指導ということになるのかもしれませんが、指 導権限があると明記するのがいいと考えます。実際には助言だと思うのですが、そうい う役割を果たすということをはっきり明記されたらいいのではないかと思っております。  6点目は、行政処分とのつなぎ方です。個人に対する処分のみではなく、医療機関へ の改善報告等のシステムエラーだから、行政処分も単に個人をつかまえて「お前が悪か ったんだ」と悪者を1人つかまえて、もう大丈夫という話では、どうも医療事故の場合 にはないようです。そういう意味では、行政処分の在り方についても、医療事故の実態 に応じた膨らみを持たせるようなことをここで考えていかれるのは非常にいいことでは なかろうかと思っています。  刑事手続の話は、後で航空鉄道事故調査委員会等の話を聞いてから、もしかしたら質 問させていただきます。 ○前田座長  全般にわたるのでどういたしましょうか。整理として、組織、届出制度という、それ ぞれ一番根幹にわたるご指摘をいただきましたので、後で順にそれも踏まえて議論させ ていただきます。初めに、加藤委員から提案されたことに対し、樋口委員の見解が示さ れたわけです。やはり厚労省の下に置いたらいいのではないかということなのですが、 それに関連して他の委員からご意見があれば承ります。それから、事務局に対してこれ はどういう趣旨かというご質問もありましたので、それはこの順にそちらに振らせてい ただきます。「医療安全中央委員会」というのはご指摘のように、厚労省の身内的な部分 もあるので第三者的な内閣という説明も一定の合理性があると思うのです。 ○山口委員  この委員会が、内閣府がいいか、厚労省がいいかという話は私には分かりません。後 で、航空鉄道事故調査委員会の話が伺えると思いますが、実際の数を扱うボリュームを 考えると、医療事故は非常に多いと思います。それから言うと、実際にこのブロックだ けで済むわけがないので、さらにその下の県単位、さらに細かいところまで組織的に手 が届かないといけないと思いますと、現在の厚労省のような、保健所のような組織があ るところの方がよろしいのかと思います。  今回の案をいただいて少し抵抗があるところは、「医療事故調査委員会」の「医療事故」 という言葉に少し抵抗がありました。もちろん医療事故の中には、医療過誤という過失 があるものも、ないものも、予期しないような結果が出た場合も含めて全部指している のだと思いますけれども、一般的なニュアンスとしては、医療事故イコール医療ミスと いう意味合いがかなりあると思います。その意味では、この委員会を活用してというと ころに、実際の現場の医療関係者がこぞって協力できるか、協力する気になるか。  今回、この委員会の目的が「原因究明と再発防止」と明確に書いていただきましたけ れども、そのことは、強いて言えば最終的には医療安全を向上させることにつながる話 だと思います。加藤委員の提案をいただいて、この名前だけというのはちょっと具合が 悪いのかもしれません。医療安全ということでこの委員会を定義していただいた方が、 はるかに医療事故という話と違った意味で、医療関係者も積極的に参加できるニュアン スが出るのではないか。その意味で、「医療事故調査委員会」というよりは、「医療安全 委員会」の方がよろしいのではないかと思います。  独立という点では、後で行政処分の話が出るかもしれませんが、行政処分を担うよう なところが、是非その専門的な医師の集団が積極的に関与してできるのがいいと思うの です。そういう委員会の在り方としては、行政の組織からちょっと離れて独立した委員 会という格好で、「医療審査委員会」のようなものができることがいいのかという感じは していますので、それだけ申し上げたいと思います。 ○前田座長  今の点についても、皆さんのご意見を伺いたいと思います。私も、個人的に内閣府の 仕事を随分することがあるのですが、新たにこういう組織を立ち上げることが可能かと 思うと、事実上非常に難しいというか、寄せ集めていく資源として、厚労省は医療に関 する人材とかいろいろつながりがあります。結局、厚労省から人をいっぱい引き抜いて 内閣府に持っていく以外動かないのではないかという感じがちょっとします。今作らな いと、このタイミングを失してしまうとできないと思います。その意味では、どちらか というと、原案の厚労省の委員会の方ができやすい。  今の山口委員のご意見にちょっと抵抗があるのは、医療安全というと、いろいろな世 界で医療安全委員会というのはいっぱい動いています。今回は遺族の側とか、医療に対 しての不審をどう解消して説明していただくかというときに、「事故」という言葉が抵抗 あるとすると、何か言葉を考えるというところまでは賛成なのですけれども、医療安全 委員会というと、既存の医療安全の委員会は予算を付けていろいろ動いています。そう いうものの大きいもの、国版の医療全体のヒヤリ・ハットなどを取りまとめるものにど んどん特化していくような感じになってしまいます。これは、最終的にまだ委員全体の 総意として組織名は考えていきたいと思うので、本質的な体制ではないと思うのです。 ○加藤委員  どういう名前かということは、実は若干何をこの委員会に期待し、将来像としてどこ までのことを機能として、役割として期待していくのかというところと関連はしてくる ように感じています。つまり、医療事故の死因だけを技術的に究明すると、例えば出血 多量で亡くなったのか、そうではなくて患者の心臓の冠動脈に狭窄があったのか、これ は死因としては解剖して、議論が医学的に相当尽くされるところはあり得るわけです。 そういうことが、医療の安全に非常に大きな示唆を与えてくるとは私にはあまり思えな いのです。例えば、そのときの輸血の遅れだとか、いろいろなチームの中でのことだっ たり、システムの問題だったりというようなところに評価・分析の力を注がなければ、 本質的に安全な医療につながっていかないのではないかという思いがあるわけです。  この医療安全ということを、基本的により高めていく。これは私なりの思い入れとい うかロマンがありまして、国家的な営みでなければならないという考え方があるわけで す。一省庁のレベルでなし得るものでもなさそうだぞと。これは将来の夢を語っている のかもしれませんが、質量を持っているぞと。当然個別の事例を丁寧に分析する中から、 例えば診療報酬の問題だって見直さなければいけないとか、あるいは研修のプログラム だって問題があるのではないか。医療従事者のスタッフの配置の問題だって、かなり影 を落とすのではないだろうか、というようなことを考えますと、これは場合によれば厚 労省の施策が問題ではないか、というところまで言える機関でないと、本質的に医療安 全というものをきっちり提示できないのではないかという思いがあるわけです。  もちろん自治体病院だとか、救急医療体制だとか、先ほど言いましたようないろいろ なところに医療との関わりを持っている部署があります。全ての医療に関連することを 厚労省だけで賄っているわけでもなく、医療事故の諸要素というのはいろいろな場面で、 いろいろに出てくる。もちろん薬に関連することだってあるだろうし、そういうときに は厚労省の医薬品の承認の問題だったり、全ていろいろ関連してくるわけですので、そ こと一線を画して、それぞれの行政機関に対して独立した立場からきちんと政策の改善 も含めてものを言っていけるという権限を、独立行政委員会というのは持つものなので す。  国家行政組織法上のそういう機関として、最初は小さなものかもしれないけれども、 大きく育てていく方向性としてはそうありたいと考えてのことです。ですから、そうい う意味合いを、例えば10年後にどのようにこの委員会が育っているのかと考えますと、 それは一省庁の下に置いておいて育てていくというものではないだろう。やはり内閣府 に付けて、小さいながらもそれはやり出して、大きく育てていくということが本来の筋 ではないかと考えるものです。 ○児玉委員  全体の組織の構造といいますか作りは、今現に行われているモデル事業と少し比較を して、何がしかの意見があるわけではありませんが感想めいたことを申し上げたいと思 います。  2頁のところから「死因究明を行う組織について」ということで、組織の説明をして いただいています。読ませていただいたところ4層になっていると理解しております。1 層目が当該大臣。2層目が委員会、今の「医療事故調査委員会」と呼ぶか「医療安全委 員会」と呼ぶかというご発言もお聞きしました。3層目が、ブロック単位に置かれる分 科会。4層目が、分科会の下に置かれるチーム。1層目、2層目、3層目、4層目それぞ れの関係がどういう関係なのかが、いろいろな読み方ができる状況で、なるほどいろい ろな考え方があろうかと思っております。  例えば、当該大臣と委員会の関係については、3頁の下の方の3の(2)「当該大臣が 委員会に調査を依頼する」という表現になっておりますので、内部にある組織であれば、 これは調査を命じるという関係になるはずです。何らかの第三者性を前提にするニュア ンスの表現かとも思われます。  一方で、2頁の真ん中辺りの2の(1)の(1)では「行政機関(厚生労働省内を想定)に 置かれる委員会」ということで、行政機関内部の委員会であるという位置付けになって いて、この辺の関係を航空鉄道事故調査委員会のような整理にしていくという考え方も あれば、内部の検討会のような位置付けにしていく在り方もあるのだろうと思いました。  委員会と分科会の関係は、(2)の(2)に記載されているように思います。「委員会の下に 設置される」という言葉が使われておりますけれども、個別事例の評価、調査報告書の 作成・決定が分科会の権限とされております。  ちなみに「分科会の下に置かれる」という表現で、2の(2)の(3)で「チーム」という 言葉が使われています。これが「個別事例の評価の原案を作成する」という、「案を作成 する」という立場で記載されているということです。言葉の問題にすぎないのですが、 委員会の下で、分科会というものを置くときには、それぞれが質的に違うものを、まさ に科を分けて検討するというものが一般的であるところ、今回はブロックごとに類似の 組織を全国に置いていくわけですので、「分科会」という言葉が少しなじまないかなと。 むしろ「委員会と地方委員会」、「中央委員会と地方委員会」という言葉の方が分かりや すいのではないかという感想を持ちました。  それから「チーム」ということなのですが、言葉として日本語で言えばどういう役割、 どういう権限のものになるのだろうか。ちなみにモデル事業の現状で私が理解している ところでは、大臣から全体として委嘱を受けているわけではなく、内科学会の事業とし て独立した形で、中央事務局と運営委員会というものがあって、それから各地方に東京 事務所とか神戸事務所、大阪事務所という事務所を置いて、ここが事務局となって、チ ームに相当するところがモデル事業では各地方の評価委員会として、最終的に評価を決 定するということです。チームで作ったものを、地域の委員会で再度内容に立ち入って チェックをするという仕組みは取れていないわけです。今後どれぐらいの数の調査をす るかということももちろん想定に入ってくるわけですけれども、仮にこのチームという ものが実際の調査に当たるものだといたしますと、分科会の承認を得ないと、あるいは 分科会の決定を得ないと説明もできないという形では、数が増えていくとその遅延によ ってご遺族等の不満を招くような事態も生じかねないという懸念が1つあります。  それから、今回の組織について記載を必ずしもはっきりされていないように思います が、現状でのモデル事業において、チームに相当する、各地方の評価委員会は、学会と の緊密な協力関係と連携で成り立っているところであります。もちろん先ほどご指摘が あった監察医制度との関連も重要ではありますが、各学会との連携についても、何らか の形で明文化していくような形が望ましいのではないかと思います。 ○前田座長  明文化というのは、この文章の中でというよりは、将来何か制度を作るときの明文化 ということですか。 ○児玉委員  明文化という言葉がちょっと不適切であれば、明確化していくべきだと思います。 ○前田座長  議論を整理させていただきます。先ほど樋口委員から出された1に関しては、今もち ょっと言葉がありましたけれども、監察医制度との十分な連携というのは、事務局はど ういうイメージなのかというご質問がありました。今児玉委員から3点、位置付けが厚 労省内部なのか、外の委員会的なものなのか。これは言葉ですけれどもブロック、分科 会という言葉は適切ではないのではないかということ。それからチームの中身で、特に 学会との関係。それらについて事務局の方でコメントできる部分があればコメントをい ただき、その後に委員のご議論をいただきたいと思います。 ○医療安全推進室長  ご質問をいただきましたところについて、順不同になりますけれども順次事務局とし ての考え方をお話いたします。監察医制度との関係については、試案の2頁の一番下に 書いてありますとおり、今回の医療事故の調査というのは、解剖に加えて臨床経過の評 価が非常に重要な位置を占めるということなので、監察医制度とは別の制度として運用 してはどうかということです。ただ監察医の制度でも、これまで医療事故を扱うような ケースもあると聞いておりますので、それらの実績等も十分踏まえながらやっていく。 また、地方ブロック分科会の調査チームの一員として、解剖を担う医師として、その点 で十分連携をさせていただくということではないかと思っております。  「医療事故調査委員会」という名称のことですけれども、航空鉄道事故調査委員会と いうのをモデルとして考えてまいりましたので、このような名前を仮称として書かせて いただきましたが、これにこだわるものではありませんので、より良い名前があれば是 非ご議論いただきたいと思っております。  医師法第21条のことについてもご議論がありました。今回の試案では、診療行為に関 連した予期しない死亡については、全ての事例について委員会を主管する大臣へ届出と し、このうち必要な場合には警察に通報するということを提案しております。これに伴 う医師法第21条の改正の問題については、各方面からのご議論も今後踏まえながら関係 省庁とも十分協議をし、引き続きここは検討していきたいと考えております。  児玉委員からご指摘がありました、想定される組織の形態についてであります。モデ ルとなります航空鉄道事故調査委員会の場合は、いわゆる国家行政組織法上の8条委員 会として設置されています。一般的に8条委員会というものは審議会といっているもの と同じものでありますので、通常は大臣が審議会に調査を命じるというよりは、これは 諮問と答申というような言葉もありますが、依頼するという方がニュアンスとしては正 しいのではないかと思って書いております。  その上で、今のモデル事業との対比で申し上げますと、個別の事例の評価を行うとい うのは「チーム」でやっていっていただく必要があると思います。最終的には、委員会 としての議決が必要となります。委員会は合議制の機関でありますので、委員会として の決定をしていただくに当たり、チームではなくてその上の分科会での最終的な決定、 というのが8条委員会として作る場合には必要なのでこのような書き方をさせていただ いております。  最後に、設置する役所として、内閣府としてはどうかというご指摘がありました。私 がおりますのは医療安全推進室ですが、医療安全を相当してまいりましたのは厚労省だ ということで、「厚生労働省を想定」と書かせていただいております。内閣府の方がよい というご意見もあると思いますし、その辺はいろいろなご意見をいただきたいと思って おります。 ○前田座長  3番のことなどについてもコメントをいただいたのですが、できればこの組織のこと についてご議論があればまとめて、次に届出制度の話をやりたいと思います。 ○高本委員  内閣府か厚生労働省かというお話ですが、私も内閣府がどんなものかというのはよく 知りません。我々にとっては、厚生労働省の方が非常に身近であります。もっと卑近に 言えば、保健所みたいなところもありますので、もっと我々にとって身近であります。 医療のいろいろな問題は、身近なところで起こっています。私は内閣府に一度伺ったこ とがあるのですが、入るのに非常に厳重でなかなか入るのが大変なところであったよう な記憶があります。そういうところというのは、国民との間に乖離があってあまりよろ しくないのではないか。  この事業がうまくいくかどうかというのは、先ほど児玉委員が言ったプロフェッショ ンとしての我々学会、医師が一つ一つの事例を評価していくというプロセスが一番大切 なのではないかと思うのです。その辺で協力しやすいという意味では、厚生労働省の方 がいいのではなかろうかという感じがいたします。  この検討会は7回行われて、一番最初は医療不信に対する信頼回復というのが大きな テーマでした。いろいろなお話の中にはひどいものがあるという話もありましたので、 私も東大病院で満足度を調べたものを見てみました。5点満点で、5点が満足、4点がや や満足、3点が普通、2点がやや不満、1点が不満とあります。細かいことはいろいろあ りますが、全体的なところを言いますと、病院に対する総合的な満足度は4.5なのです。 これが、だんだん上がっている。4.5というのは、少なくとも半分は5です。半分5で 半分4のときに4.5で、3を付けると4.5までいかないわけですから、調査している人 に聞きましたら90%以上の人は大方満足。95%の人は普通から3以上の人である。ほん の僅か不満足の方がおられるということで、不審に思うということはどの社会にもある わけです。  例えば警察でも、私はこの2、3カ月の新聞を見ていましたが、医療事故の問題よりは 警察の不祥事に関する報道が多かったと思います。そしたらすべて警察不信になるかと いうとそうではなくて、警察は警察として信頼して、ただ一部不埒なものはどういうと ころにもいますから、それに対する処置というのは別に考えないといけないと国民は考 えるわけです。一部のことを指して全体としての不信となるのはマスコミの報道のやり 方もあったと思いますが、考えすぎではないかと思います。医療不信も医療側に確かに 悪いところもあったと思いますし、我々は十分に反省しなければならないと思いますが、 ここで表れているように多くの方は病気になったら病院に行って治療を受けますし、ほ とんどの人が満足、ほぼ満足できるという状況の中で医療が行われていることをもう一 歩考えていただきたいと思います。性善説でないと社会は基本的なところで動かないと 思います。世の中の医者は全部悪いことをやるという性悪説では医療は絶対に動きませ んし、他の組織も他の機関もそういう形では絶対に動かないわけです。ですから、基本 的なところで医療に関して性善説を取っていただきたいと思いますし、ただ悪いことに 対しては我々のプロフェッションとしてもそれを直そうと思いますし、一部そういうこ とに対して皆さんからの批判も受けて、全体としてより良い形にしたいというのが我々 の願いです。医療不信だということは一部あるでしょうけれども、それを全体に広げて 性悪説でものを語らないでほしいというのが私の基本的なお願いです。  この第2次試案のことでも問題は刑事事件にするかどうかということが大きな問題だ と思いますが、前回に刑事事件というのは下手人を吊し上げるだけで、真相解明になら ないことをお話しましたら、前田先生が下手人を見付けるのも大事なことだと一言で片 付けられて非常に残念でした。刑事処分には真相解明に自ずと限界というのがあるとい うことを私は、もっと議論していただきたかったと思います。システムエラーに対して 刑事事件は全然効力がない。それから、裁判における誤審だとかお巡りさんによる誤認 逮捕だとか、そういう問題に関しては刑法は全く効かないという限界性があるものです。 刑事事件というのは罰を与えれば人間は良くなるよという非常に単純な思想の中ででき ているのではないかと思います。医療というのは、もっと人間としての喜びや悲しみな どのいろいろなものが入って、しかもその中に不確実性もありますし、それを刑事事件 で裁くというのは基本的にはふさわしくないだろうと思います。今回医療事故の中で刑 事事件で裁くために警察に届けるということが大きな問題になっていますが、これは故 意の事例とかに限るべきだろうと考えます。全体的に医療不信と思われる方がいること は事実ですし、我々はそれに何とか対処しなければなりませんが、今述べましたとおり、 医療にすべて悪があるのではなく、多くが善良な医療を行っているということをもう一 度皆さんの中で考え直していただきたいと思います。 ○前田座長  今の後半の点は、またご議論を。ただ、この場でなかなか尽きない話になると思うの で、私も刑事罰で全て安全が回復するとは全く考えませんし、性善説でいくべきだとい うのは先生と同じ考えです。ただ、性善説を国民が取るか取らないかで動くのだと思い ます。今回の仕事というのは、その意味で国民が医療について性善説により立てるよう な制度をどう作るかということを意図してやっていることだけはご理解いただきたい。 それ以上の議論は今回のところではなかなか難しいので、組織の方で今少しあった内閣 府に置くか厚労省に置くかというのは、最終的には国レベルでご判断いただくことです が、本当に法律の世界の感じというより私は行政官庁に出入りすることが多いですから、 予算を取って組織をこれだけのものを立ち上げて来年に動かすことを内閣府で新たにで きるか。それは無理だと思います。ですから、厚労省に小さく生んでそれを育てていく ことは可能であるという感じはしますが、非常にやりやすい方を選ぶ発想のイメージか もしれないし、事実そういうことがあると思いますが、これを内閣府の中で作っていく のはかなり大変なことではないかという感じはします。実感としてです。 ○加藤委員  内閣府に設置するという話で、イメージが湧きにくいというお話もあったので少し補 足しますと、食品の安全に関する委員会がありますね。食品安全委員会と言ったと思い ますが、これは厚生労働省の所轄する部分と農林水産省の所轄する部分にまたがること が大きな理由かと思いますが、内閣府に設置された食品安全委員会というのがあります。 いくつかの省庁に跨がって、きちんと速やかに良い仕事をするということのために、知 恵として内閣府に設置するという考え方があるのだと思っています。この委員会が勧告 とか建議ということをして、実行をあらしめていけるようになっていきたいと考えるわ けで、厚労省の大臣に対してあれこれ言うことのみならず、関連するところにもものが 言えるために内閣府に設置することは十分に考えておくべきことです。 ○木下委員  内閣府に置く、置かないという問題は、全体トータルの構図としては議論してそう変 わるものではありませんので、運用の面で果たしてどういうメリットがあり、またどう いうデメリットがあるかということも踏まえて、今までのご意見を伺いますと私たちが 思っていることは厚労省がここまでやってきているわけですので、その辺のところで事 務局にもう少し整理していただくということで、この議論はこれまでにした方がいいの ではないかと思いますが、いかがでしょうか。まず、それが1つです。  具体的に全体図を見たときに、確かに樋口先生がおっしゃったように信頼回復という のがベースですが、もう一方、国民に対する信頼が当然あるわけです。我々医療界にと りましても、今までの制度と違って新たな制度を作ることの目的というのは、医療事故 の刑事訴追というものに対する不安感をというものが非常に強いわけで、新たな制度と ともにその不安を払拭していくことです。我々のみならず、国民にとっても、医師は、 安心してというか伸び伸びと診療していくことが求められます。という視点からも極め て大事だと思います。そういう視点から考えてまいりますと具体的なことになりますが、 例えば4の(2)にあります。つまり、「遺族の方から相談を受け付け、医療機関からも 届出がなされていない事例であっても、診療関連死が発生したおそれが認められる場合 は調査を開始する」。一方、7の(3)の刑事手続について全く同じことが書いてありま して、「警察に通報された事例や遺族等から警察に直接相談等があった場合における捜査 と委員会の調査との調整を図るための仕組みを設ける」ということを記載しています。 診療科の医師に関しては、原則こういった名前はとにかくとしても第三者調査機関に届 けるという仕組みが作られた段階で、届けるのは当然医療関係者、医院長、当事者かも しれませんが、そういう視点においては届出の方向性は分かりました。しかし、同時に そうは言っても家族の方あるいは遺族の方から届けることになったときに、警察と調査 委員会のどういう動き方をするかで同じような動きをされるのでは全く同じ構造になっ てしまいまして、その辺の役割分担は明確にした方がいいと思います。我々の希望とし ては、せっかくこういった構造ができた以上は仮に届出があったとしても、これだけ明 確大規模に警察に代わるような組織としての調査機関があるわけですから、仮に警察へ 遺族が届け出たとしても、警察ではなくて、中立公平な専門家による第三者機関へ調査 は任せるというそこに任せて動いているということで、具体的に動くというのは第三者 機関に任せるのだという仕組みにしていただきたいと思います。是非作っていただきた いということを通して、先ほど申し上げたような制度としての新たな仕組みというのは 医療界も本当に安心して仕事ができるのだという方向性が、これは決して医療界だけで はなくて国民にとってもその方が本当にふさわしいのではないかという気がしますので、 その辺を是非お考えいただきたいと思います。 ○前田座長  制度論は先ほどおっしゃったようにここで議論を置いて、3の届出制度、委員会の調 査の在り方で刑事との関係の問題に移っていって、今日ここで全部終わらなくてもいい わけですね。ただ、是非特にご発言のなかった委員のご意見をいただいてまいりたいと 思います。  先ほど、樋口委員からお話のあった3の(1)の届出を怠った場合にはペナルティを科 すということですが、これも刑事罰を科すことを前提にして事務局が書かれているわけ でもないわけですね。だから、今のお話のように刑事に替わってここでその真相究明み たいになってしまうと、全部届け出なければいけないし、届け出なければ後から刑罰を 科すことになる。その辺のバランスの取り方で、木下委員がおっしゃったように今日は 随分強く出ていましたが、産科が安心して治療できることが何より大事だと。大野事件 のようなことが起こらないようにする。そのために委員会を作ることは、この委員会全 体の合意ができているわけです。ただ、そのためにもあまりにもひどいものがあって、 先ほど高本先生がおっしゃったその幅をまた詰めなければいけないですが、そういうも のが刑事罰というか他の同じように悪質なものと対等にというか、同等に司法のチェッ クが入る余地がなくなるように取れてしまうと、この案が成り立たなくなってしまうと ころがあると思います。ですから、そこのバランスのところで医療を最大限尊重して、 まずこの委員会に全部回す。そこまでは合意ができているわけです。その後、この委員 会でこの案の趣旨は、特に重大な問題のあるものは警察に回す。そこにどう線を引くか はこれから詰めていかなければいけないところだとは思いますが、そこも全体の合意事 項という感じだと思います。ですから、その中身をどう詰めていくかが、今後大きな課 題ではあると思います。私が申し上げすぎるといけないですが、他の委員の方で届出制 度の在り方、調査の在り方、院内調査委員会との関係は先ほどのご議論の中でも少し出 てきたと思いますが、先ほどのご説明ですと、チームが最終的に決定してということで すか。もちろん、その上に諮って決定しますが、それと院内の調査委員会との関係はど うなるのでしょうか。 ○医療安全推進室長  この検討会のご議論の中で院内事故調査委員会は非常に重要であるというご指摘がた くさんありましたので、今回5の「院内事故調査委員会」を新たに起こしました。各事 案について、より多くの情報を把握して正確かつ迅速に調査することができるというの は、当該事案が発生した医療機関の院内事故調査委員会であり、実際モデル事業で今や っている中でも院内事故調査委員会の活動がきちんとできているところほど、より真相 が早く正確に分かるし、再発防止策も立てやすいところが見えてきていますので、両者 が十分に連携していくことは重要なのではないかと思います。また、この検討会のご議 論の中では院内調査委員会というのは調査だけではなくて、その後の職員に対する処分 のことや患者に対する救済のことなど、もっと幅広くいろいろなことが議論できるとこ ろではないかと。そういう意味でも、役割分担ができるのではないかというご議論があ ったと承知しています。 ○前田座長  全体に関して、他の委員の方はいかがでしょうか。 ○鮎澤委員  お話が既に届出という個別のところに来ていますが、少し全体のところのお話をして よろしいですか。ようやくこういう委員会について議論され、いよいよ出来上がるよう になってきたことがとても嬉しいです。ただ、いよいよ機が熟したと思っていたら、先 ほどの座長のお話によると、今ここを逃したらできなくなるかもしれない。そういう話 でしょうか。 ○前田座長  ちょっとミスリードして申し訳ないですが、ただ、できるときに盛り上がったところ で組織を立ち上げないと、ということだけです。 ○鮎澤委員  わかりました。とにかくこの委員会をきちんと立ち上げる。ここのところをきちんと ゴールにして進めていかなければいけないと思っています。もちろん、個別にはいろい ろと詰めなければいけないことがたくさんありますが、委員会が出来上がることがとに かく大事なのだということを改めてここのスタートラインにしていかなければいけない と思っています。  その上でこの検討会のアウトプットですが、もちろんこの委員会が出来上がっていく ためには法制度もきちんとしなければならないし、準備期間も必要だろうし、組織の在 り方については厚生労働省内で出来上がった委員会で議論をしなければいけないでしょ うが、そこのところでもたもたしていて、いつで出来上がるのかが見えないままでも困 ります。、大体どのくらいに出来上がるのか。それに向かって、必要なことをイメージし ながら、この検討会では、こことここをこう詰めていくべきだとか、こういうオプショ ンがあるとか、そういったことを次に出す取りまとめなり報告書なりには書き込むべき ではないでしょうか。それが、社会、この検討会に注目してくださっている皆さんから の期待に応えることなのだと思います。全てがそこで議論し尽せるわけではないし、す ぐに全部の期待に応えられるような組織がスタートできるわけではないでしょうが、こ れからの在り方についてをきちんと書き込むことをアウトプットとしていかなければい けないと思っています。  届出の問題や21条の問題や刑事訴訟法の問題というのは、今出てきている試案の中で はまだまだいろいろと検討しなければいけないという段階に留まっていると思います。 試案の「必要があれば」とか「・・・というケースも」というあたりに非常にいろいろ な問題が含まれていると思っています。このあたりのことについてそれなりに見える形 で議論をしていくことが、この検討会のこれからの大事な役目ではないかと思っていま す。全体像として、きちんとこの委員会が出来上がっていくという道筋と、それに向か ってこの検討会が具体的にいろいろな提案やオプションなりを示していく報告書を作り 上げることをまずお願いしておきたいと思います。  個別の事項について、もう既にいろいろな意見が出ていますが、何点かお話をさせて ください。少し戻って恐縮ですが、まず委員会の構成について。3頁の委員会の構成が 医療者、法律、遺族の方になっています。もちろん「等々」には他にもいろいろ含まれ ているのでしょうが、この委員会が死因究明だけではなくて再発防止を考えていく、ま た、組織の問題を考えていくのであるならば、もっと幅広いメンバー、例えば工学的な 観点といった、いろいろな事故や安全に関する専門職のような方たちが入るということ も明記しておく必要があるのではないでしょうか。  3頁の診療関連死と届出制度の在り方(4)診療関連死についてですが、2行目には「必 要な場合には通報する」とありますし、3行目には「刑事責任を追及すべき事例もあり 得ることから」とあります。でも、これだと何が必要な場合なのか、何が刑事責任を追 及すべき事例なのか、正直なところよく分かりません。このあたりについても、どうい うことを想定しているのかということが具体的に見えてくれば、不必要にこのあたりに ついて医療側が疑心暗鬼になることも減ってくるのではないかと思いますが、いかがで しょうか。  最後に届出の制度についてですが、現行では届け出なければいけないとするガイドラ インがいろいろと出ています。これらがなくなるのかどうか。つまり、試案による制度 が動くことによって、今までのガイドラインや届出の制度そのものがどうなるのか。そ のあたりも整理しておかなければいけないことの1つだと思います。以上です。長くな ってすみません。 ○前田座長  どうでしょうか。初めにおっしゃったこの全体の流れについて、事務局の方で、今の 段階で何かお答えできることがあったら手短にご説明いただければと思います。 ○総務課長  必要な場合にというところは、基本的にこういった第三者委員会といったようなこと を所管する行政当局になりますので、そういったあたりで具体的なガイドラインといっ たようなものを詰めていくことになるのかなと思っています。現実に、どういったケー スが判例上積み上がっているといったことも、今日も来ておられます警察当局とも相談 をしていますし、そういったようなケースについて明らかにしていく必要があるだろう と思っています。  今の届出というのは、医療事故収集等事業のことかなと思います。こちらの「医療事 故調査委員会」については、一応当面死亡事例のみを扱うといったようなことですので、 遠い将来は分かりませんが、当面のことで言えば趣旨・目的に異なるだろうということ で、そちらの方の事業はそのまま継続をしていくことが必要だろうと思っています。 ○前田座長  言わずもがなかもしれませんが、診療行為に関連した医療事故調査委員会(仮称)を できるだけ早い時期に作り上げていく方向で動かしていることは間違いないということ ですよね。先ほどのご質問の第1の点は。それについて、いつの段階でいつ動き出すか というところは、まだ今日の段階ではお答えはいただけないということですか。 ○総務課長  今後のスケジュールですが、今こういった試案を出しています。今日のこの場で結論 というわけではないですが、方向について言えば、まだ詰めるべき点はもちろんありま すが、概ねのところはそれほど違っていないだろうなと思っています。また、今パブリ ックコメント中でもありますので、そういったご意見も紹介しつつ方向性をお示しをい ただければと思っているわけです。そういったところが順調にいけば、最終的にはこう いった組織を立ち上げるとか、一定の権限を調査委員会に付与しなければいけません。 いろいろな調査権や場合によっては勧告権といったようなものもあるかと思いますので、 当然法律事項になるかと思っています。そういった法律改正あるいは新しい法律かも分 かりませんが、何かの法律的な手当がいるということで、事が順調に運ぶ場合には来年 の通常国会を一応想定しながらの作業ですので、そういった意味で言いますと、そんな に長い時間ではありません。  もう1つは、こういった組織を立ち上げていく場合には、こういった仕組みの必要性 の他に政府全体で行政改革といった問題、あるいは財政面、予算措置といったようなこ ともありまして、そういったところの役所との調整も必要になってまいります。そうい った意味で、最終的に仮に来年の通常国会に法案を出すとしても、できるだけ早いうち にこの骨格を固めていただく。その骨格に関わるような部分に関しては、この検討会の 先生方からご意見を先にいただいておいて、最後はもちろん私どもが詰めさせていただ きますが、そういったようなスケジュール案を想定していただく方がありがたいという ことです。 ○前田座長  よろしいですか。私の不手際で参考人の方に来ていただいているので、次の議事に移 りたいのですが、ご発言いただいていない方でどうしても今日の段階で何かおっしゃっ ておきたいという方があれば、お手を挙げていただければと思います。それ以外の方は 次回にこの続きをやらせていただきますので、もちろんこれで何らかの決着ということ ではありませんが、よろしいですか。  議事の2の航空・鉄道事故調査委員会からのご説明、ご報告をいただきたいと思いま す。冒頭に紹介させていただきました八鍬参考人にご発言をいただいて、その後、ご質 問等をお願いしたいと思います。それでは、お待たせして申し訳ありませんでしたが、 よろしくお願いします。 ○八鍬課長  ご紹介いただきました、国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会で企画調整課長をや っています八鍬と申します。よろしくお願いします。  早速、資料3の航空・鉄道事故調査委員会の概要という資料に基づきまして、ご説明 をします。当組織の前身は航空事故調査委員会ですが、これが発足しましたのが昭和49 年1月11日です。この背景としては、昭和40年代に大きな航空事故が多発しまして、 昭和46年7月には全日空機と自衛隊機が雫石上空で衝突して、多数の犠牲者が出た事故 があり、これを契機として国土交通省の中に、航空事故の原因究明のための常設機関と して、航空事故調査委員会が発足したわけです。その後、平成13年10月に鉄道事故も 取り扱うことになり、名称も航空・鉄道事故調査委員会に変更しています。委員の数も 順次増員をしてきています。  当委員会の主な仕事ですが、ここに5つほど並べています。1つ目は航空並びに鉄道 事故の原因を究明するための調査を行うということです。2つ目は、事故の原因を究明 するだけではなくて、事故に伴い発生した被害の原因についても究明するために調査を 行うことにしています。平成18年4月からこの項目を追加しまして、被害の原因の究明 というのも1つの大きなテーマになっています。3つ目は、事故だけではなくて重大イ ンシデント、日本語ですと事故の兆候ですが、事故には至らないが1つ間違えば事故に つながったものについても、その原因について必要な調査を行っているということです。 平成13年から重大インシデントについても調査の対象にしています。4つ目は、事故の 防止や被害の軽減を図るために講ずべき施策について勧告あるいは建議をしています。 このような業務が主な業務です。  2頁です。現在の組織について簡単にご説明します。航空・鉄道事故調査委員会は、 委員長が1名、委員が9名です。委員9名のうち5名が常勤で、委員会や部会があると きに来ていただいている非常勤の委員が4名います。委員会の下に、航空部会と鉄道部 会の2つの部会を設けていまして、後で出てきますが重大事故と定義付けられている事 故については、委員会で事故の原因等を議決することになっていますが、それ以外のも のについては部会で審議をして、部会の議決をもって委員会の議決となります。それぞ れの委員の所属は赤で示した委員は航空部会、鉄道部会の両方入っておられて、黄色が 鉄道部会のみ、青が航空部会のみとなっており、航空部会、鉄道部会とも6名で構成さ れています。当委員会の委員長及び委員については、独立して職権を行うことになって います。また、任命については国土交通大臣が任命しますが、衆議院と参議院の同意を 得る必要があることになっています。任期は3年です。  実際に調査を実施する事務局の構成は下図に示すとおりであり、事務局長以下、総数 は現在54名になっています。このうち、実際に現地に行って調査をするのは、航空につ いては首席航空事故調査官以下で22名、鉄道については首席以下15名の調査官であり、 事故調査を分担してやっている状況です。  3頁です。どのような事故が調査の対象になるかということです。先ほど申し上げま したように、事故と重大インシデントと大きく2つのカテゴリーに分かれますが、航空 事故等は航空法で、鉄道は鉄道事業法という法律で定められています。具体的には書い てあるとおりで、航空については航空機の墜落、衝突、または火災等、人の死傷や物件 の損壊があったような場合については、全て航空事故として調査するということです。 それから重大インシデントですが、具体的にはニアミス、工事等で閉鎖中の滑走路に他 の飛行機が着陸をしたり、あるいは着陸を試みた場合、それから、滑走路に着陸した飛 行機がオーバーランしたり、滑走路から逸脱して動けなくなった場合、あるいは、飛行 機の中の気圧が急激に下がった場合、これ以外にもたくさんありますが、そういうもの が重大インシデントに当たると決められています。  鉄道の方は、衝突、脱線、火災については全て事故になりますし、それ以外も鉄道事 業法等で決められています。鉄道重大インシデントについては、具体的には例えば工事 中の区間に列車が進入したり、ブレーキが効かないで本線を列車が勝手に走ったとか、 走行中に列車の乗降口扉が開いた場合などが相当します。  4頁です。事故の件数の過去5年間の実態を示しています。航空で申しますと、年に よってだいぶ差がありますが、大体1年間で30数件ぐらい扱っています。鉄道の方は 20数件ぐらいを扱っています。先ほども申しましたが、この中で特に大きい事故につい て重大事故と定義付けていまして、具体的には死亡者若しくは行方不明者が10名以上、 または、死亡者、行方不明者、重傷者を合わせて20名以上の事故を重大事故と位置付け ています。航空の方は、最近幸い重大事故はありませんで、一番最後にあったのは平成 8年6月に福岡空港でガルーダ・インドネシア航空がオーバーランをして3名の方が亡 くなり18名が重症を負ったという事故で、それ以降は重大事故はありません。ただ、ご 覧いただきますと分かりますように、重大インシデントが平成15年から平成17年に多 数発生している状況です。  一方、鉄道についてはご案内のとおり、平成17年4月にはJR西日本の福知山線の列 車脱線事故で107名の方が亡くなり、平成17年12月25日にはJR東日本の山形県の羽 越線で、列車脱線事故が発生して5名が亡くなるという重大事故が発生している状況で す。  5頁です。当委員会で行っている事故調査の流れについて簡単にご説明します。まず、 事故が発生すると事業者は国土交通大臣に報告をする義務があります。これは航空法や 鉄道事業法で決まっています。その中から当委員会が調査すると定められている事故等 について、国土交通大臣から当委員会に通報があります。それを受けて当委員会の調査 が始まるわけですが、最初は担当する主管調査官とサポートする調査官を指名します。 原則的には主管調査官が、最初から最後まで調査の責任者となります。事故の規模によ りましては、主管調査官以外にも担当する調査官が2名、3名と指名されます。主管調 査官は1名です。  指名された調査官は現場に行って、早速現場調査に入ります。現場では関係物件を検 査し、関係資料を収集します。また、関係者から口述の聴取をします。こういう行為は、 当委員会の設置法で権限が認められています。現場調査が一段落したら、委員会に初動 調査の報告をします。そこで調査の方向について、いろいろな指示を受けまして、収集 して持ち帰ったものの解析や試験研究などを通じて、原因を究明していきます。そして、 事故調査報告書案を作成することになります。ある程度の案ができましたら、事務局で の検討を経て委員会の審議に入ります。先ほど申し上げましたように、重大事故は最終 的に委員会の議決が必要ですが、それ以外の一般的な案件ですと部会で審議し議決をす ることになります。なお、必要に応じて重大事故のような場合ですと、意見聴取会をや ります。これは関係者や学識経験者から、いろいろ意見をお聞きするものです。また、 委員会は調査を終える前に原因関係者からの意見を聴取することが義務付けられていま して、それを踏まえた上で委員会や部会が最終的に調査報告書を議決をして国土交通大 臣に提出します。必要に応じて勧告、建議も出すことになります。調査報告書は、ホー ムページで全て公表をしています。  今申し上げました勧告、建議について6頁に記述しています。勧告は、事故の調査報 告書が出来上がった際に国土交通大臣に対して事故の防止のために講ずべき施策等につ いて行うことができることになっています。建議は、これも事故の防止のために講ずべ き施策等について国土交通大臣または関係行政機関の長に対して、行うことができると なっています。建議の方は調査報告書が出る段階だけではなくて、いつの段階でも出せ ます。今まで行った件数はここに書いてありますように、勧告は航空で3件、建議は航 空で17件、鉄道で4件です。この勧告、建議については設置法で定められていますが、 それ以外に国際民間航空条約、通称シカゴ条約と言っていますが、これの航空事故に関 する附属書である第13附属書において、調査実施国は必要があれば安全勧告を出すこと が義務づけられています。例えばアメリカのボーイングに何か改善すべき点があれば、 アメリカの事故調査機関に対して日本から安全勧告を出すことになるのですが、当委員 会では安全勧告を過去9件出している状況です。事故調査委員会の概要については以上 です。  今後の予定です。当委員会では、現在は航空と鉄道の事故調査を扱っていますが、さ らに海難も一緒に取り扱おうということで、国土交通省の外局に海難審判庁という組織 がありますが、ここと当方委員会が統合しまして、航空、鉄道に加えて海難の原因究明 も進めていこうと今考えていまして、所要の要求をしています。以上です。 ○前田座長  どうもありがとうございました。今のご説明、ご報告に関して質疑をお願いします。 ○加藤委員  ご説明ありがとうございました。2頁に実際の実務、調査の任に当たる調査官という 方々が航空事故の場合18名と書いてありますね。この調査官の人たちは、常勤、非常勤 の関係ではどうなっているのかということと、非常勤の場合は日頃どういうことをされ ている方なのかを教えていただけますか。 ○八鍬課長  調査官は、全員常勤です。 ○加藤委員  人は、事故の数との関係でかなり年によってばらつきがあるようですが、人員的には 足りているのでしょうか。 ○八鍬課長  先ほど申し上げましたように、鉄道の方に非常に大きい事故がありまして、福知山線 の事故については既に今年の6月に調査報告書を出しましたが、羽越線の事故について は調査中であり、鉄道の方は非常にタイトな状況です。  航空の方もそれぞれの調査官が多くの事故調査案件を抱えていまして、調査官がもっ と大勢いれば、調査報告書をより早く出せる可能性もあるので、なるべく多い方がいい と思いますが、今は何とか回っている状況です。 ○加藤委員  あと2点ほどお願いします。5頁に事故調査の流れがありますね。この中に警察の捜 査の問題との同時平行と言いましょうか、どんな関係性になっているのでしょうか。 ○八鍬課長  警察との関係については、厚労省が今日もお配りしている参考資料集の中の27頁に図 が出ていますが、当然我々事故調は事故の原因究明と再発防止という目的で取り組んで いるのに対して、警察の方は捜査という観点で取り組んでいます。目的と立場が全く違 いますので、それぞれの立場で調べることになりますが、ただ現場は1つで同じような 調査が重なる部分がかなりあるわけで、そこはそれぞれが全く別々に関わっていたら非 常に効率が悪いので、警察と協力をして進めていくことで協議をして、既に体制が出来 上がっています。  ここにも書いてありますように、例えば航空の場合のフライトレコーダーやボイスレ コーダーは当然回収して解析をしないといけませんが、これは警察の方で押収されて、 解析する技術は当委員会にありますので、これを鑑定嘱託という形で我々が受けまして、 我々の方で解析をすることになります。その回答については、ここにも書いてあります ように、航空事故調査報告書をもって回答に代えているということです。この事故調査 報告書は公表されており、特に秘密にするようなものでもありませんので、これをもっ て回答をしている状況です。 ○加藤委員  6頁に国土交通大臣に勧告、それから関係行政機関の長に対しても建議とありますね。 例えば建議ですが、要するに国土交通省関連以外のところへの建議ということもなされ ているのでしょうかということと、その結果、改善なり何なりのその後のフォローはど うなっているかを教えていただけますか。 ○八鍬課長  勧告については設置法にも書いていますが、勧告された国土交通省がそれを踏まえて 何らかの対策を講じる。その対策は、我々の方で把握することができことにとなってい ます。建議についてはそういう項目はありませんが、福知山の脱線事故のように大きい 事故については調査報告書が出たときと、その前に経過報告を出したときに建議を国土 交通大臣に出していますが、その後、建議に基づき講じた施策の実施状況について国土 交通大臣から報告を受けているところです。なお、建議は、今まで運輸大臣、国土交通 大臣以外に出したことはありません。 ○前田座長  よろしいですか。他の委員の方から、何かご質問はありますか。 ○南委員  ご説明ありがとうございました。先ほど医療の場合、厚労省か内閣府かという議論が ありましたが、管轄の官庁に仕組み上で責任があったりする場合に、内閣府のような第 三者的なところの方がやりやすいのではないかというようなご意見がありましたが、交 通に関してはそういうようなことはありますか。または、勧告、建議とか、そういった ことで十分カバーできるのかも教えてください。 ○八鍬課長  確かに当委員会についても、国土交通省の中にいると言いにくいことがあるのではな いかということを言われることもあります。ただ、先ほども少し申し上げましたが、委 員の方というのはそれぞれが独立して職権を行使することになっています。つまり、委 員の方は国土交通省の意向には左右されず、自分の考えで職権を行使することになって います。また、委員を任命するのは国土交通大臣ですが、衆議院と参議院の承認を得な いといけないということで、委員選出の客観性、透明性というのは担保されていると考 えています。  それから、実際の問題として事故現場に行って調査をやる場合でに、いろいろなデー タを即欲しいということがあります。気象のデータとか飛行機のデータとか。それはど こにあるかというと国土交通省にあるわけで、やはり当委員会は国土交通省の中にあっ た方が、必要なデータをすぐに入手することが可能であるということで、調査の推進に とっては非常に有効ではないかと思っています。 ○鮎澤委員  とても参考になりました。本当にありがとうございました。その上でお伺いします。 もし事実として間違っていたら申し訳ありません。私は何年か前に空港でビラをいただ いたことがあります。それは、これから事故調査報告書が刑事裁判の資料に使われる。 使われるようになったら、私たちは安心して調査には協力できないという内容の、航空 機の関係者たちのビラだったのです。その後、実際、事故調査報告書が使われて判決が 出たと記憶していますが、そのビラのきちんとした中身は覚えていませんが、まず1点 目。資料の27頁にもありますが警察への回答を事故調査報告書をもってされておられる ということは、事故調査報告書は警察に行くわけですよね。事故調査報告書が、刑事訴 訟の関連の資料として使われているというのが事実なのかどうかを確認させてください。  2点目。そのビラの中には欧米ではそういうことをやっていない、こういうことをや っているのは日本だけだという文章がたしかあったように記憶していますが、欧米とい うととても曖昧な言い方ですが、欧米ではそうではないのでしょうか。  3点目。もし欧米でやっていないとするならば、どうして日本だけそういった事故調 査報告書が警察に行って、刑事上の手続の中で資料として使われるようなことになって いるのでしょうか。この3点を教えてください。 ○八鍬課長  我々としては、事故調査報告書を作って一般に広く公表しています。ですから、公表 された報告書を警察がこれはどこでどういうふうに活用するかは警察の判断によるもの であると考えており、我々として言及する立場にありません。ただ、ボイスレコーダー の全記録など調査報告書に載せているもの以外については、先ほどおっしゃられました ようにそういうものが出ると関係の方が一切喋ってくれなくなったりすることも当然考 えられますし、我々はいろいろと関係者から話を聞いたり、その資料を検査したり収集 したりの権限が与えられていますが、設置法にもそれは捜査のためではないですよとい うことが書いてありますから、報告書に出ていること以外については一切出さないとい うことにしています。公表しているものを使っていただくことについては、世界的にも リーズナブルといいますか、問題ないという認識になっています。 ○樋口委員  今のご説明で、随分私も理解が進んだのですが、あえて確認のために。5頁に事故調 査の流れがあって、参考資料の27頁に同じように調査の流れがありますね。27頁は警 察と相互に協力、調整して調査等を進めている。これは釈迦に説法でしょうけれども、 医療事故と航空・鉄道事故では、ここでの議論では先ほども警察への届出という問題が 重要になるけれども、航空機事故や鉄道事故があった場合、実際には届出する必要はな いわけですよね。もはや歴然としているわけです。直ちに、そちらの方は警察側ももち ろん調査に入って我々は違和感がないです。それで、医療事故とどう区別したらいいも のだろうかという話が我々としては大きな課題としてあるわけですが、医療事故の性格 は他の事故とは少し違うのではないかと私自身は思っていますが、なかなか理屈がうま くできない。これは私自身の問題です。そこで、27頁を見ると実況見分その他、現場は 一緒なので協力してやっている部分はあるのだというお話なので、5頁の事故調査の流 れで今お話があった関係者からの口述聴取の部分について、ここは一番センシティブな ので、さすがにこの航空機事故調査委員会の口述聴取に警察官も立ち会ってということ はないということを確認することと、口述聴取は当然記録を取ると思いますが、その記 録を直ちに警察にも提供することもないのだということを確認しておきたいと思ってい ます。そうなのかどうか是非とも確認しておきたいので、ご説明いただければ。 ○八鍬課長  口述聴取は別々にやっていますし、我々が聞いた内容を警察の方にお渡しすることも ないです。それは我々の中だけで利用するということです。 ○前田座長  よろしいですか。他にもしご質問がなければ、これに関して議論ということはなじま ないと思います。非常に理解が進んだと思います。八鍬参考人、本当にありがとうござ いました。非常に勉強になりました。  それでは、今回の2つの議事は済んだということで今日は閉じたいと思います。次回 は11月2日締切りで先ほどもご説明がありましたように、厚労省の第二次試案をパブコ メにかけているということですので、それに寄せられた意見等の報告をできればしてい ただきたいということをお願いしたいと思います。次回の日程等について、事務局から ご説明いただけますか。 ○医療安全推進室長  次回の検討会の日程については現在調整中ですので、決まり次第ご連絡をしたいと思 います。本日はどうもありがとうございました。 ○前田座長  ありがとうございました。 (照会先)  厚生労働省医政局総務課医療安全推進室   03−5253−1111(2579) 24