07/10/12 平成19年度第4回雇用政策研究会議事録 平成19年度第4回雇用政策研究会                     日時 平成19年10月12日(金)                        18:00〜                     場所 厚生労働省共用第7会議室(5階) ○樋口座長 定刻となりましたので、ただいまより「第4回雇用政策研究会」を開催い たします。本日及び次回の研究会において、今後の雇用政策の方向性として個別論点に ついて議論していただきたいと思っております。本日は、「能力開発と生産性」、「若 年雇用問題」、「外国人労働者問題」といったテーマについてご議論をお願いしたいと 考えております。19時30分ごろを目処に、前回の研究会でいただいた意見を踏まえて、 労働力需給の再推計結果について事務局から報告を受け、さらにワークライフバランス 行動指針に盛り込むべき厚生労働省の数値目標(案)について議論していただきたいと 考えております。これらの議論については労働市場等への影響を与える可能性が考えら れるため、私の判断によりまして非公開とさせていただきます。非公開議題の際には、 恐縮ですが傍聴の皆様には退席をお願いいたします。また、同議題の資料については、 議題3の議論の際に配付いたしますが、最後に回収いたしますのでよろしくお願いいた します。まず、本日の研究会で議論していただく論点として、能力開発と生産性につい て事務局より説明をお願いいたします。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 配付資料1について説明いたします。ただいま座長からお話 がありましたように、能力開発、若者の雇用問題、外国人労働者問題と大きく分けて3 点の議論をお願いしたいと思っております。それぞれ時間を区切って議論したいと思い ますので、まず、能力開発の部分の論点について説明いたします。  資料No.1ですが、今回の雇用政策研究会の大きな柱は、意欲と能力がある方が全員働 くという話、一人ひとりの生産性のアップ、ワークライフバランスと3つあり、議論し ていただきたい論点は2点目の能力開発についてです。(1)(2)と分けておりまして、 (1)は職業キャリアの形成のための環境整備となっており、インフラ整備的なところ を論点として準備しております。資料にあるように、1点目は安定した職業キャリア形 成を図るために、能力評価制度の整備、キャリア・コンサルティングの高度化、教育訓 練機関の育成等のインフラづくりを具体的にどう進めていくべきかについての意見を伺 えればと思います。2つ目のポツは若干底上げ的なニュアンスですが、キャリア形成の 機会に恵まれない方々への支援をどのように行っていくべきかという論点を立てており ます。  2点目については、人生の各段階に応じた能力開発的なニュアンスを含め、職業生涯 を通じたキャリア支援という論点にしております。4つ立てており、1つ目は過度に企業 に依存する職業キャリアや意識から自立するためにはどのような方策が考えられるかと いう論点です。2点目は職業生涯におけるキャリアの転機ということで、転職や人生の 節目において今後のキャリアを考える機会をどのように担保していくかということです。 例えば休暇制度もあるでしょうし、キャリアの棚卸しということもあると思います。  3点目はキャリアの中に失業などといった失敗があったときに、能力開発により再度 キャリア形成を図れる環境整備をどのように行っていくかということです。4つ目の論 点は、多様な働き方を実現するために、いわゆる正規社員以外の方々への能力開発とい う部分がありますが、企業側の人的資本投資は雇用の安定、正社員だからこそ企業のイ ンセンティブが働くわけで、そうではない方々に対する能力開発のコストは、どこのセ クターが負うべきか。企業か、本人の自助努力か、公共部門のいずれかという論点を準 備しております。能力開発については資料No.2として用意しておりますが、こちらは能 力開発局より説明があります。 ○姉崎職業能力開発局総務課長 能力開発と生産性について、資料No.2で簡単に説明い たします。最初に、労働費用に占める教育訓練費の推移です。黒字が規模の合計の数字 で、1990年代は低い水準で低迷しておりましたが、直近の2006年には少し回復してきて おります。ただ、企業規模別に見ると、30〜99人の中小の所では、依然として低い水準 が継続しているという状況です。2頁は計画的なOJTを実施した事業所の割合ですが、い ちばん上の総数は正社員53.9%、非正社員32.2%ですが、非正社員については低い水準 に留まっております。企業規模別に見ると、規模が小さくなるほど、総じて実施率が低 いという状況にあります。  3頁はOFF-JTを実施した事業所の割合です。総数で正社員72.2%、非正社員37.9%で す。企業規模別で見ると、こちらも規模が小さい事業所ほど実施率が低い状況にありま す。4頁はOFF-JTと自己啓発の支援に対して、1社平均どれぐらいの費用をかけたかとい うことです。OFF-JTには1社平均326万7,000円、自己啓発については約40万円です。5頁 からは自己啓発の関係で、従業員の自己啓発を支援している事業所の割合は正社員8割 弱、非正社員4割弱です。下にはどのような援助をしているかが出ており、いちばん多 いのが「受講料などの金銭的援助」「就業時間の配慮」でした。  6頁は労働者側についてですが、自分で職業生活設計を考えていきたいかどうかとい う問いに対しては、紫は自分で自分の職業生活設計を考えていきたいと答えた人、ピン クはどちらかというと自分で自分の職業生活設計を考えていきたいと答えた人で、どち らかといえばというのも合わせると、正社員は7割弱、非正社員は5割弱でした。この ような人たちが、過去1年間で自己啓発をどのぐらい実施したかを比率で見ると、正社 員46%、非正社員23%という状況にあります。  8頁は団塊の世代の退職等の関係です。退職に伴い、技能の継承問題があるか、ない かという問いには、いちばん上の総数で約3割が「ある」と答えております。業種別で は、建設業、製造業等ものづくり系の所で問題がある、企業規模別では、大きな事業所 ほど問題があると答えております。9頁は、技能の継承問題があると回答した事業所が どのような対応を取っているかということですが、圧倒的に多いのが退職者の中から必 要な人を選抜し、雇用延長、嘱託等により再雇用を行い、指導者として活用するという ものです。  10頁は別の観点から、職業能力評価の実施状況についてです。職業能力評価を実施し ているかどうかということで、規模計としては61.1%となっています。企業規模別に見 てみると、大きな事業所ほど実施率は高くなっております。11頁は職業能力評価を何に 利用しているか、活用しているかで、当然のことながら「人事考課の判断基準」「人材 配置の適正化」ということです。能力評価に問題点を感じているかどうかについてが12 頁で、職業能力評価に問題点を感じているとした事業所は約75%、何が問題かという問 いには、圧倒的に多いのは、全部門・職種で公平な評価項目の設定がなかなか難しいこ と、評価者が評価基準を把握していないために評価内容にばらつきが見られるというこ とで、評価する側の問題を指摘するところが多いようです。  13頁の資料は労働生産性等との関係ですが、さまざまな能力開発制度と労働生産性と の関係がどうなっているかをJILPTが調査したものです。縦に計画的なOJTやOFF-JTが並 んでおり、横の割合はいちばん左側の濃いものが生産性の向上に「大いに役立つ」、そ の横が「役立つ」ということです。計画的なOJTの場合は大いに役立つと役立つの合計が 70%で、それぞれどの項目も大体50〜70%で大いに役立つ、役に立つという回答となっ ております。  14頁は、能力開発によって生産性が高くなったか、低くなったかということですが、 縦軸は能力開発の実施状況で、3年前に比べて増加しているか、変わらないのか、減っ ているかに応じて、生産性が高くなったか、低くなったかを表しています。3年前と比 べ、能力開発の実施状況が「増加」「やや増加」と答えた所では、生産性が「高くなっ た」「どちらかといえば高くなった」と答えた所が6割、5割強という数字になってお ります。  15頁は人材育成投資額と売上高の関係です。人材育成投資の傾向ですが、過去数年の 傾向として人材育成投資が「増えた」「変わらない」「減った」の別に、5年前と比較 して売上げが増加したか、減少したかについて尋ねたものです。過去数年の傾向として 人材育成投資が「増えた」とした所では、売上高が「増加」「やや増加」と答えた所の 割合が高いといった状況です。 ○樋口座長 ただいま説明があった、働くすべての職業能力開発促進について議論して いただきたいと思います。何かご意見、ご質問があればお願いいたします。 ○白木委員 1点確認ですが、13頁、14頁のJILPTの調査について、調査回答者の属性か 何かはわかりますか。つまり、人事担当者あるいは教育訓練担当者は、当然役に立つと 言わざるを得ないポジションにあるわけですから、回答者によって相当違うと思うので す。たぶん、そのような人たちが回答したのだろうと思います。 ○姉崎職業能力開発局総務課長 回答者の属性は、いまはちょっとわかりません。 ○白木委員 我々も海外派遣者の調査で、海外派遣者に対する事前訓練が役に立つかど うかと尋ねられたら、大体役に立つと答えております。ばらつきは若干ありますが、答 えている人たちはコストをかけているわけですから、そうでないと困るという意味で役 に立つと回答している場合があり得るのです。我々も反省しているのですが、この調査 もどうかなと思ったのです。 ○姉崎職業能力開発局総務課長 おっしゃるとおり、どこのセクションが回答したかと いうのは大いにありますから調べてみます。 ○佐藤委員 データのことで、例えば5頁に正社員と非正社員の比較がありますが、正 社員と非正社員の両方を活用している企業と、正社員しかいない会社があります。就業 形態多様化調査でも、データはちょっと忘れましたが、事業所単位で言うと、たぶん4、 5割は非正社員を活用していないのです。つまり、非正社員も活用している会社かどう か。正社員のほうは正社員しかいない会社もありますから、つまり両方とも活用してい る会社だけの集計かどうかということです。つまり、正社員のほうには非正社員がいな い会社が入っているのではないか。企業単位で見るということであれば、それでは比較 の意味がない。 ○姉崎職業能力開発局総務課長 調査票上では、事業所単位で正社員と非正社員の定義 を書いた上で、それぞれ人数、合計という形になっています。 ○白木委員 そうですね。ですから、非正社員がいない会社は正社員しか答えていない のです。 ○姉崎職業能力開発局総務課長 この表を見ると、その可能性があります。 ○鶴委員 いま説明していただいたのですが、能力開発や職業能力開発に対するアンケ ートで、労働者がどのようなタイプか。生産労働者か、管理事務など、管理事務でもど のような所にいる人たちかということによって、職業能力評価などの話というのは意味 合いがだいぶ違ってくる感じがするのですが、そのような情報というのは何かあるので しょうか。 ○姉崎職業能力開発局総務課長 ほとんどの調査の出典が能力開発基本調査ですが、こ こでは職種などで分けておらず、正社員か非正社員かだけです。 ○鶴委員 どちらかで分けられているのですね。 ○姉崎職業能力開発局総務課長 そうです。 ○小杉委員 これは今後分析されるのだと思いますが、調査票自体には個人調査が付い ていて、職種の情報などもあったと思います。以前能力開発調査を貸していただき、黒 澤さんと一緒に特別集計したことがありました。そのときの結果からいくと、OJT、OFF -JTをよくやっている会社、よくやっていない会社といった特徴もあるが、同時に、会 社の中でOJT、OFF-JTをよく受けている人、よく受けていない人の間にかなり違いがあ りました。やはり男性高学歴者に能力開発が集中する傾向があり、女性低学歴者、職種 的にはこのような職種で能力開発の機会に恵まれないといった話が能開基本調査の特別 集計から出てきているのです。たぶん、この先の議論で、キャリアの能力開発の機会に 恵まれない人といった話をするときには、ざっくりと正社員と非正社員ということでは なくて、正社員の中でもあるし、非正社員の中にもある、そのような分析がこれからは 必要ではないかと。いまのところ、この能開基本調査は全体の集計がざっくり出ただけ の段階だと思うので、そこまでの議論はできない。 ○姉崎職業能力開発局総務課長 今日は資料を出していないのですが、小杉委員の意見 に関連して、平成18年7月に能力開発基本調査を発表し、その中で正社員・非正社員別 に、企業の教育訓練の方針として、労働者を選抜してやるのか、それとも全体を考えて やるのか、つまり、いまはどうで、今後どうしたいかということを聞いているのです。 それを見ると、現状では選抜してやる、全体の能力レベルを高めるというのがそれぞれ 大体5割ぐらいと同じですが、今後の方針を聞くと、今回の調査では選抜してやるとい うのが47%から40%に下がり、全体を重視するというのは52%から58%に上がっている という傾向が出ておりました。 ○樋口座長 2007年調査と出ているのですが、これはいつの時点での調査ですか。 ○姉崎職業能力開発局総務課長 平成18年11月から平成19年の2月にかけて実施し、平 成17年度1年間の状況について調べたものです。 ○佐藤委員 小杉委員の意見に関連して、確かに、正社員と非正社員とでは差がありま すが、たぶん、議論すべきなのは非正社員は正社員に比べて能力開発機会が少ない点は、 両者の平均で見れば、それは事実です。もう1つ大事なのは、非正社員でも能力開発が ある、あるいは能力開発をしている会社もたくさんあるわけです。他方で、正社員でも 能力開発機会がない人はいるわけです。大事なのはこの両方を視野にいれることだと思 うのです。正社員でも能力開発機会がない人がいるし、非正社員でも能力会発機会があ る人がいるわけです。両者に差があるというだけでは何の解決にもならない。非正社員 でも能力開発機会があるというのはどのような会社なのかを明らかにすることも大事で す。もう1つは、正社員でも能力開発機会がない人もいるわけだから、この点も明らか にする必要がある。両方とも明らかにして、施策を考えることが大事な点だと思います。 両者の差だけを議論するのでは政策的な対応策が出てこないのではないかという気がし ますから、その辺を少し検討していただければと思います。 ○樋口座長 図表の質問もいろいろ出ていますが、論点として掲げている解説のNo.1の 資料について、どのように考えているかということではいかがですか。 ○諏訪委員 いまいろいろと意見が出て、その点は全くそのとおりだと思います。もう 1つ忘れてはいけないのは、いわゆる非正社員、パートなどが典型的にそうですが、実 は企業規模が小さい所にたくさんいて、ここは正社員であってもあまり訓練されていな い。いわゆる大企業、とりわけ5,000人以上などといった所が、山のような非正社員を 抱えているようなのは業種によってはありますが、一般的にはありませんから、企業規 模、職種といったものを加味し、コントロールしながら比較しないと、確かにそのとお りだが、ポイントを突かない政策提起になる危険があるという感じがしております。 ○樋口座長 他に何かあればお願いいたします。 ○小杉委員 能力開発を誰がすべきかが、たぶん大事なポイントではないかと思います。 細かい要素を入れて、いま能力開発の機会がないのは誰かということも整理する必要が ありますが、能力開発は誰がすべきかということももう一度整理しなければいけないと 思うのです。ある意味、いま既にやっている、放っておいても企業がやるところについ ては放っておいてもいいところですが、放っておいたら企業はやっていないところを整 理し、それについて一体誰がすべきか。公共がやるべきか、労働者個人がやるべきか、 その辺の整理をすべきではないかと思います。一般的な話ですと、どこにでも通用する ような能力は公共でというのがいちばん普通の議論ではないかと思いますが、それが特 徴的になればなるほど、企業ないし労働者で、他の部分についてはある程度公共といっ た整理がいちばん常識的なところだと思うのです。  何が一般的な訓練か非常にわからなくなっている、そう言ったらちょっと変なのです が、午前中は就職状況が非常に悪い県に行き、ハローワーク、企業、高校に行ってヒア リングをしてきたのです。高校では、いま大企業の製造部分は人が足りないので、非常 にいい所がどんどん採ってくれるようになったと。そこは教育訓練も非常にしっかりし ているので、地元に残りたいと言っても残せないというか、そのような所にどんどん送 り出している状態で、ここに入ったほうが、本人もハッピーになると。地元の企業はほ しいと言っているが、そちらに斡旋すると、結局訓練機会もないし、企業のほうも新卒 は全然駄目だと言う。即戦力になるように、高校でもっとやってきてくれ、そうでない と、うちの企業では能力開発はとてもできないからと。もっと即戦力になるように高校 がやれ、つまり公的な部門でやれと。学校とか、あるいは公共の訓練だから、そのよう な所でやれというのが中小企業からたくさん出てくるわけです。高卒はもう採用せず、 一旦どこかで訓練してきた人だけを採用すると地元の中小企業は言う。  そのような流れになったときに、一体どこでというと、やはり学校との接続の部分の 所で中小ができない所、放っておいたら中小はなかなかできないし、その地域に産業を 残すためには、誰かがどこかで訓練しなければならない、このようなところについては 学校との接点がちょっと微妙ですが、学校プラスアルファで訓練的な、中小企業が求め る即戦力に近いところまでの訓練をどこかでやるといった仕組みが必要ではないかと思 いました。たぶん、地域や状況によって公的に持つべきものが少しずつ違うわけで、そ の違いができるような政策が必要なのかなと思っております。 ○樋口座長 例えば、公共が一般的技能形成について、あるいはキャリア形成について 支援するといったときには、いくつかのやり方があるのではないか。国なり自治体が、 学校を建てて、直接教育訓練を実施していくやり方と、金銭的にサポートするが、実施 主体は別といったやり方が考えられるわけです。このように公共が支援といったときは 両方やり方があるのですが、それをどのように考えていけばいいのかということです。 さらに、例えばいろいろな自己啓発ができないといったときにも、制約したものが金銭 的な制約で起こっているのか、それとも時間的な制約、つまりワークライフバランスと の関連などといったことを考えた場合、どちらが大きいかということは個人によってか なり違うわけです。例えばパートの状況を考えたり、あるいは60時間以上働いている人 を考えるのか、そこへの支援の仕方はまた違ってくると思うのですが、こういった点は どうでしょうか。  生産技術者についてのいままでの公共の支援は、どちらかというと施設も講師も用意 し、そこで直接的に教えていくというやり方でしたが、果たしてこれが効率的かどうか といった議論、また専門職やホワイトカラーといったところには、これまでも金銭的な 支援はするが、実際には別の公的機関以外の所を利用してなどという形でやっていたウ エイトが高いわけです。こういったものについての社会市場のニーズを的確に把握し、 それに応じた能力開発ができるかどうか。あるいは誰が必要、不必要かの判断をするの かといったところはどのようになっているのか、能力開発問題をやっている専門家の方 々に是非お話を伺いたいと思いますが、小杉委員はいかがですか。 ○小杉委員 まず、誰がお金を出すのか、直接やるのかという問題ですが、これも物に よると思うのです。以前私どもは、能力開発の機会について、どこで、誰が、どのぐら い提供しているかという能力開発の訓練の市場といったものを調査したことがあるので す。その見方をすると、公共が提供しているものは、基本的に設備投資が非常に要るも のづくりの現場にかなりウエイトが置かれ、例えば専門学校などはその辺の設備投資が 少なく済むIT系などに対しての能力開発の機会がかなり提供されているなど、ものによ ってかなり違いがありました。お金を出して、本人が訓練ができるようにすればいいの ではないかという考え方に立つとしても、教育というのは誰でもすぐにできるわけでは ないし、教育をするためには設備的なインフラもあるし、教育方法をきちんと理解し、 適時に提供するといった教育訓練の体系も作らなければならないわけです。これだけの ことを考えると、それぞれに役割があると思うのです。  公共が担ってきたところで蓄積されてきたものの良いところをどう活かすか、そのよ うな発想で組み立てていったほうがと。直接出すべきか、出さぬべきかというと、これ まであったもので使えるものと言いますか、教育はやってきたことの積み重ねが本当に 大事だと思うのです。例えば、若い人ばかりでやってきた所に、どうやって年齢の高い 人を入れてきて、その人たちに同じ訓練を提供するかというと、やはり全然やり方が違 う。入口の教科書から違って、全部やり直さなければならないなどといった積み重ねが 非常にあるので、何もないところから議論するのではなく、いまあるものを、どうやっ て活用するか、そこから議論したほうがいいのではないかと思っております。 ○諏訪委員 いまの説明のとおりだと思います。この種の調査を読んだときに、前々か ら違和感を感じていることを、ちょっと違った角度から申し上げますと、自己啓発に関 して時間がない、金がないというのは、大昔からあるのですが、グルメとして食べに行 ったり、海外旅行に行ったりしている時間や金はあるのです。そうだとすると、本当の 理由は、そのような自己啓発をやろうとしたときに、何をしたらいいかがわからないと いうことと、どのようにしたらコストパフォーマンスを良くやれるか、つまりベネフィ ットが見えないのではないか。言葉を換えて言うならば、自分でキャリア形成をしてい ったときの、その先が見えない。あるポジションに行こうと思って一生懸命勉強しても、 そこへ会社が回してくれるわけではない、あるいは転職の余地が少ないならば、投資し なくなるのは当たり前です。各種の数字が一貫して時間がない、金がないと言っている のを見ると、そのこと自体は本当かもしれないが、隠れた真の原因は、自己啓発などを したときに、自分に返ってくるものが確率論的に低いというシステムに日本がなってい るからではないか。  例えば、ある有名な外資系のホテルではベルボーイをしている人がフロントや何かの 部門に行くときには、どのように異動していくのかと聞くと、それは「社内インターン シップ」によるそうです。インターンシップをやって移っていくのです。社内インター ンシッブは、インターンシップだからペイは支払いません。仕事が終わった後、その部 門でインターンシップをやらせてくださいと言ってやる。そこでインターンシップをし たら、必ず移れるのかと聞いたら、「いや、そんなことはありません。2、3人に1人」 程度らしいです。そのようにしてインターンシップをやり、クリアして行くことができ れば、タダでもやるのです。同じように、ラーメン屋に行くと、タダで働いている中高 年がたくさんいます。皆、インターンシップをしているのです。結局、金がない、時間 がないと言うが、その先のキャリアにうまくつながる仕組みがないと、人はその種の自 己啓発をやらないのではないだろうか。  日本のキャリア形成の1つの大きな問題点は、ある会社にずっといて、そこでコスト ベネフィットがうまくいくといった組織にとってのインセンティブのほうしか見ていな い。生産性が高まるその他はそのとおりですが、個人にとってのインセンティブがうま く設計されていない、働かないようになっているという部分がかなりの人に出ている。 同様に、非正規の部分で言えば、やったら正規になれる、あるいはその先のキャリアに つながるという部分が見えなければ、乏しいお金の中からは出てこないのではないか、 やる気が起きないのではないか、こんな感じがしているわけです。 ○樋口座長 14頁、15頁から、いまの能力開発の実施状況とそのメリットということで、 ここでは企業にとってのメリットを中心にまとめていると思うのですが、個人について 調査したもの、例えば能力開発を受けたことによるメリットなどといったものは何かあ るのでしょうか。 ○姉崎職業能力開発局総務課長 申し訳ありません、俄には出てきません。どのような 問題があるかなどといったことばかり聞いていて、やったことでどのようなメリットが あるかということは聞いてない状況です。ちょっと調べてみます。 ○白木委員 諏訪委員が言われた点はそのとおりという面も多いと思います。要するに、 働いていても先が見えないと自分に投資しないなどといった話だと思います。同時に、 働かないでではなく、働いて働いて、働きまくっても、自己啓発したりするチャンスが ないということも、専門職の中には相当多いのではないかと思うのです。私がたまたま 近くで見ていたのは学校の先生だったのですが、彼らもそうだと思います。例えば、学 生のとき、ドイツから来たジャーナリストに会ったことがあるのですが、サバティカル を取っていました。30何年前に既にドイツではサバティカル制度が、新聞記者などの専 門職に入っていたわけです。日本でそれが入っている所があるのかどうか知りませんが、 専門職団体でサバティカル制度などを入れることは、これからの日本にとって、広い意 味でのワークライフバランスに非常に貢献するのではないかと思います。  働いて働いて、働きまくって疲弊している専門職がリフレッシュで半年なり、何カ月 か休み、別のことをやったり、あるいは専門的な知識を増やすことによって、いくつか をリフレッシュできると思うのです。まず心身のリフレッシュができる、新しい知識の リフレッシュができる、さらに、人とかいろいろな意味でのネットワークが拡充できる というリフレッシュができると思うのです。このようなことによって、新たに働こうと いう意欲が出たり、もう少し余裕あるキャリア設計ができるのではないかと思うのです が、まだ日本ではそのようなことがあまりないので、議論としては意図的に、このよう なことも先進的に入れたほうがいいのではないかと思います。 ○阿部委員 皆さんの話を聞いて何とか整理をつけようと思ったのですが、ごちゃごち ゃしていて整理がつかないのです。何がごちゃごちゃしているのかと思ったら、キャリ ア形成の場が企業の中の話もあれば、外の話も皆さんいろいろされているからなのです。 やはり、そこは整理をしていかないと、政策にならないのではないかと思うのです。い まの議論を聞いていて、企業の中なのか、外なのか、中の場合は政策対応すべきかどう かと考えたら、あまりしなくてもいいような気がしなくもない。もちろん、中小企業の 問題などを聞くと、そうなのかなとは思うのですが、そうは言ってもあまり必要ないの ではないかと思ったりもします。  一方、企業の外については、キャリア形成上、この人たちがまず優先的に考えられて いくべき問題になるのではないかと思うのです。そのときに、どういった支援が必要か。 先ほど座長が問題提起されていたと思いますが、いままでのようなやり方がいいかどう か、必ずしもいままでのやり方がいいかどうかは私にはわかりません。というのも、従 来型の能力開発が、どうもまだ以前の産業構造を引きずっているような気がするからで す。いま新しく変わりつつある産業構造は、例えばサービス業を中心としたもの、ある いは知識集約型などといったほうに進んでいる気がしますし、仕事の中身も、企業特殊 的なものがむしろ薄くなって、産業横断的であったり、あるいは業界で横断的なもので あったりするようになりつつあるのではないかと思うのです。そのようなものに対応し て、どのようなキャリア能力開発が必要かと考えたときに、インターンシップというこ とも出ていたと思うのですが、そのような形でどこかの職業訓練校でやるのではなく、 企業の中で実際にやるやり方をもう少し考えるべきではないかと最近は思っています。 ○樋口座長 佐藤委員、何かあればお願いいたします。 ○佐藤委員 いま阿部委員が言われたことについてです。企業の中の能力開発と企業の 外の能力開発と言ったときに、OJTや自己啓発というのは企業の中のことですが、問題 なのは、企業に対する調査なのにOJTや自己啓発支援と言っても、実際は現場の管理職 の所で行われています。配属されている職場でのOJTとか、もう少し中期的に見たキャ リア形成がどのように行われているのか。いまの職場でどのような仕事を経験できるか、 3年、4年、5年でどのような仕事を経験できるかということは、別に人事が決めている わけではないのです。それは現場のラインマネージャーが決めているのです。  同じ会社の中でも配属された職場でのOJTに差がある。現場のマネージャーが部下の 育成を考えた仕事の配分やアドバイスができているかどうかが重要です。そこまで政策 的にやるかどうかというと、実際上は難しいのではないかと思っています。企業はOJT や自己啓発支援をやっているというのは誤解で、実は企業も人事もやれてなくて、現場 のラインマネージャーが部下の育成をきちんとやれているかどうかが鍵です。そこにつ いて議論を喚起するというのはいいと思いますが、政策的な対応になるかどうかは別に 考えたほうがいいと思います。 ○山川委員 専門家ではないので、政策的にこのようなアイディアがあるというよりも、 整理の仕方の質問というか感想ですが、先ほどコストベネフィットの、いわばミクロ的 な話があり、しかし政策的観点から言うと、さらにマクロ的なコストベネフィットのよ うな発想があるのではないか。つまり、政策的にどのような目的で能力開発への支援を 行うのかという点です。この論点の案を拝見すると、いろいろ書いてあり、過度に企業 に依存する職業キャリア意識から自立するためという目的が1つあって、再度キャリア 形成を図れるという目的が2つ目にあり、多様な働き方を実現するためというのが3つ目 の目的としてあって、ここでは正規社員以外の人々への能力開発はそれが目的だと読め るのですが、このような整理ですべて尽きるのかどうか。例えばマッチングの状況、失 業の防止ということもあるだろうし、国全体の労働力の質の向上と言いますか、労働供 給の質の向上など、いろいろ目的が整理されそうな気がしますし、その目的に応じてコ ストのかけ方というか手段が決まってくるといった対応関係がはっきりしていると、何 をやるべきかはわからないのですが、少なくとも整理はつきやすいのではないかと思い ます。  もう1つは相場的にやるか、ターゲットを絞るかという点で、いくつかの目的と手段 がはっきりすれば、その中でターゲットを絞っていくかどうか。例えばワークライフバ ランスといったことが主たるターゲットになるかどうかなど、そのような道筋は1つの アシストとして出てくるのかなという気がしています。 ○小杉委員 先ほど阿部委員が言われた、インターンシップなども含めた能力開発のや り方として、就業しながらの能力開発、就業の場での能力開発が効果的であるというの は、ごく一般的にそうだと思うのです。別の調査ですが、どのような場面で能力が身に ついたかを、正社員と非正社員本人に対して調べると、本人の意識の中でも、非正規社 員のほうが職場の中で能力が身についたと答えた比率のほうが高くなっていたのです。 結局、正社員のほうがさまざまな機会が使えて、職場以外での教育訓練は受けられるが、 非正社員ほどそのような機会が少なく、職場の中でやったことが身についたということ です。非正社員は外の労働力ですが、内との境目の所がいちばん能力が身につくとした ら、その機会の設定が非常に効果的な部分だろうし、それにどうやって取り組むかが大 事なことではないかと思います。ただ、それも質によると思うのです。  先ほど分けられたサービスや知識集約型などいくつかバターンはあると思うのですが、 サービス的なものと知識集約型とは違い、知識集約型のようにOFF-JT型の体系的な知識 が非常に重要になってくると、教育訓練というよりは、むしろ高等教育における生涯学 習といったところと結び付いてくる議論だと思います。そのような意味で、場としての 職場との接点をどう設計していくか。また、機会としては職場にあまり固執せず、もっ と幅広く、高等教育まで含めた職業訓練、職業能力開発といった幅広の設定が必要では ないかと思います。 ○鶴委員 先ほど阿部委員からもお話があったのですが、産業構造などいろいろと大き な環境変化の中で、いまキャリア形成では具体的にどのような能力が、昔に比べてより 重要になっているのか、何を伸ばさなければいけないと求められているのかといったこ とを、もう一度考えないと、何をやったらいいのかというところになかなか議論がいか ないと思います。冒頭に私が質問したのは、通常ホワイトカラーと言われるところが相 当変わっている感じがしていたからで、もちろん、それはIT化の影響が大きいからです。 昔は中間管理職が、要は上と下の情報を、右のものを左にしたり、左のものを右にする ことによって給料も非常に稼ぎ、体面も保っていたわけですが、そのような人たちが要 らなくなってきているという状況が実際に出てきているわけです。能力やOJTなどもそ うですが、そのような環境の中で、企業として何が必要なのか。例えば即戦力という話 をした場合、それは具体的にはどのような能力かといったところが、ある意味非常にわ かりやすい技術者、プロフェッショナルといったところと、そうではない通常の管理を やっているようなホワイトカラーのイメージがあるところがわからない。企業にとって もなかなかわからない、労働者にとってもなかなかわからないという状況が今あるので はないか。このような状況だと、企業も何をしたらいいのかわからないし、個人も何を したらいいのかよくわからない、そして大きく環境が違ってきている。そのような中で 政府としてはどのようにすればいいかを考えなくてはいけないと思うのですが、やや根 本のところでなかなか難しくなっている部分があるのではないかと思います。 ○樋口座長 資料No.1には「キャリア形成」という言葉が出ていて、資料No.2では「能力 開発」、どちらかというとテクニック、ノウハウについてどう教えるか、教えています かという話になっていて、両方でちょっと違うのではないか。キャリア形成にもノウハ ウといったことがあるかもしれませんが、例えば自分で必要性を感じるとか、自分を見 直すなどといった教えられない部分は、時間のゆとりがないと感じられない部分だとい うことがあって、そのようなものが相まって、初めて人間、職業能力、キャリア形成が できるのかなという感じがするのです。  余談になりますが、この間フランスに行き、独立した人たちについての調査をやった のです。その中で、いままでは大企業の管理職だった人が、今度は自分で中小企業の経 営者になった、何が大きく変わったかというと、バカンスが取れなくなったことで、そ れが最大の問題だと言うのです。どのような意味で問題なのかと聞いたら、ともかくバ カンスを取ることはリフレッシュするということだが、自分を第三者として客観的にな がめることができた、この1年間何をしてきたか、これから何をしていくのかといった ことをながめることができたのが、中小企業の経営者になって、毎日会社にいることに よって、それができなくなったために、どこに向かおうとしているのか自分でわからな い、それが最大の問題で、キャリアについて考えると、それが重要だと言うのです。聞 いてみると確かにそのような面があり、お金をかける、あるいは教育機会を提供すると いうことだけではなく、それも必要だが、それプラス自分を見直すなどといったことが、 実はキャリア形成では重要なテーマではないかと思うのです。  例えば、キャリア形成の機会に恵まれない者は誰かと思ったときに、教育訓練のチャ ンスに恵まれない者はいて、それはもしかしたら大企業の24時間働いている人が恵まれ ない者に入ってくる可能性もあるわけですから、そこをちょっと分けて考えていかない と、教育訓練を与えればキャリア形成のチャンスに恵まれているということにはならな い面があるのかなと思っておりますので、是非その点を議論していただければと思いま す。 ○阿部委員 諏訪委員が言われた点は、どのようなインセンティブがあるのかというこ とで非常に重要だと思います。キャリア形成の問題を考える上では、いわゆる労働市場 の中での制度補完的な関係、つまり、処遇が今後どのようになっていくか、労働市場そ のものの転職、柔軟性がどうなっていくかといったことに合わせてキャリア形成の方向 性が出てくるのではないか。従来のように、企業の中で終身雇用とまではいかないです が、長期勤続型でいく場合は、やはり外でやるよりも中でやるほうがいいですし、転職 市場が活発になってきて、労働市場が柔軟になれば、外でキャリア形成を図るという方 向に振ってもいいと思うのです。何を言いたいかというと、今後の労働市場がどのよう な方向性になるかが最初にあって、それに伴って職業キャリアというものが考えられな ければ、どうもちぐはぐな政策対応になるのではないかという気がする、ということで す。 ○諏訪委員 いまの点はそのとおりですが、現実にいる労働者というのは、全員が企業 内で長期雇用型でいくわけでもなければ、全員が非正規になるわけでもないわけです。 実際はモザイク状にいろいろな人がいますから、政策の1つの柱を、ある方向を重視す ることによって、ほかはプライオリティがもう少し下がるという議論ならいいのですが、 何かになったら他はいらないといった議論はできない。私は中も外も必要だと思うし、 その間をどう組み立てるかは、やはり業種、職種その他によってかなり違うのではない かと思います。  釈迦に説法ですが、キャリア形成には日々身につけていく部分と、いま座長が言われ たようなキャリアの棚卸しをして、節目節目で考えるという部分と両方が必要で、片方 だけではいけない。しかも、日々の形成の中にはスキル的な部分もあるが、もう1つは もっと一般的な仕事に立ち向かう姿勢、コミュニケーション、仲間とうまくやっていく などといった要素もあるわけです。雇用政策としては、このようなものすべてにそれな りに対応していかざるを得ないのですが、今回の論点で出てきているキャリア形成の機 会に恵まれない人への支援とか、それらの人々に対するコスト分担をどうするかは、い まの議論とは少し違う部分だろうと思います。 ○玄田委員 これだけ多様な論点を整理することは難しいですから原点に戻るという意 味で、今日新聞を見たら白木委員の名前をバチッと見つけました。何をやったのだろう と思ったら、ドーリンジャー、ピオレの本の日本版の改訳をされたようで、大変時期を 得た素晴らしい仕事をなさったと思いました。企業内、企業外という分け方とか、正社 員、非正社員という二分法よりは、同じ内部労働市場でも、私の緩やかな記憶が間違っ ていなければ、そこには非常に多様なものがあって、職人層的なもの、上位層的なもの、 階層的なもの、それぞれにおける立場によって教育訓練やインセンティブが違ってきて いるので、そこをもう少し整理し、しかも政策的に整理するのではなく、先ほどのキャ リア形成の話で言えば、白木委員が印税を儲けるためにも、一体自分はどこにいて、ど こに属するのかという論点をきちんと整理したほうが、たぶん政策的にできることとで きないことが見えてくるのではないかなと思います。  そうすると、もちろん内部労働市場に対して政策をどうするかという問題はあるので すが、おそらく比較的緩やかな防衛ができかけるのは、外部労働市場のあり方について 未整理な面が出てくるのではないか。そこには単に能力評価、開発ができない面と同時 に、能力があっても評価されないということがあると思うのです。特に、評価機能の脆 弱性ということが非常に大きなポイントで、そこにはある程度公的な取組みをしないと、 企業のフリーライズの問題などを招く可能性があるということから整理していかないと 議論がうまく収束しないし、繰り返し申し訳ないですが、正規、非正規とか内外という 分け方よりは、より建設的で収束した議論ができるのではないかというのが大きな1点 です。  もう1点は最初の議論に戻るのですが、能力開発がどのぐらいされているかを当事者 に聞いて評価することも非常に大事だということです。原点に戻って、間接的な評価に なりますが、能力開発がうまくされているとすれば、やはり賃金の伸び方と、特に勤続 年数をよく見ていかないと、佐藤委員が言われたように、いわゆる非正規雇用と言われ ている部分でも、いまどんどん内部化が始まっているので、勤続年数も伸びているし、 賃金も伸びているようなパートさんと、それが全然ないというところに分かれているわ けで、そこを見ていくことに政策的に取り組むヒントもあるわけです。ですから、この ような問題を見るときには、勤続年数も賃金も捨てたものではない、それを含めながら 評価をするといいのではないかと思って聞いておりました。 ○樋口座長 この後の若年雇用問題にもキャリア形成や能力開発が関連してきますので、 そちらのテーマに移ってから、またご意見がありましたら伺いたいと思います。次に、 事務局からこの点についての説明をお願いいたします。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 若年者雇用問題についての資料を説明いたします。資料No.1 ですが、若年関係の論点を3つ用意してあります。若年関係はだいぶ議論されている部 分がありますが、今日は3つ用意いたしました。1つは、学校から職場への円滑な移行を 図っていくために、いわゆる新卒一括採用はある程度残っていくと思いますが、それを 補完するものとしてどのような取組みを行っていくべきかという論点です。2点目は教 育で、初等、中等教育段階から社会性、あるいはコミュニケーション能力など、どのよ うな教育、職業意識の醸成を行っていくべきかという論点です。3点目は、現状でニー ト、フリーターという境遇にいる人たち、最近では若年の日雇い派遣という問題もある ので、このような人たちが1日も早く安定した生活を、職業を通じて行っていくことが できるようにするためには、これまでもだいぶ取組みをしているわけですが、これに加 えてもう一段何か必要なものがあるかといったところを議論していただきたいと思って おります。  資料No.3として、若干、若年者雇用問題に関する資料を用意しております。皆様によく ご覧いただいた資料が多いので、簡潔に説明いたします。1頁目は失業率と就職率の動向 で、最近の景気の動向を反映して、このところ若年の失業率はかなり急速に改善してき ており、就職率も伸びております。2頁は意識の問題、入社の動機で、働く側の入社の 動機を比較的長期に見ていますが、1970年代後半から、自分の能力が活かせるからとい うのが高い水準を保ちつつ、近年で見ると、2000年以降は仕事がおもしろいからという のが増えてきているという資料です。  3頁は若者で失業している人たちが仕事に就けない理由はどうしてかということで、 同丁に詳細結果が出ていますが、ここでいちばん多いのは、15〜25歳、25歳以上を含め て、希望する種類、内容の仕事がないということです。4頁は既によくご存じの七五三 のグラフです。5頁目にいわゆるパート派遣、契約社員等の非正規雇用の比率を男女別 に見たものです。男性の場合は若年もだいぶ伸びているのですが、水準としては高齢者 のほうが多くなっています。女性のほうをご覧いただくと、女性のほうがむしろ若年が 大きく伸びています。15歳から24歳、25歳から34歳層でパート・派遣、契約社員等の比 率の伸びが2001年から2006年にかけて大きくなっています。7頁はよくご存じのフリー ター、ニートの表です。1回目に出した資料と同じです。  8頁目から、フリーターの方々の企業の評価という資料を用意しています。企業がフ リーターを正規雇用に登用するに当たってのフリーターの評価ということですが、「マ イナスに評価する」という企業が3割、プラス評価は3%、やはり厳しい評価を下してい ます。マイナス評価をした企業の中で、どういった理由が多いかを見ています。平成13 年と16年を比較すると、伸びで見ると「年齢相応の技能・知識がない」が大きく、水準 でいくと「根気がなく、いつ辞めるかわからない」が高くなっています。  9頁目はいわゆるパート、派遣、契約社員等の増加による影響です。左側が経済的な 影響、右側が少子化的な影響です。左側のグラフは平成18年度の「経済白書」による資 料ですが、現在の若者の非正規雇用の状態を放置しておくと、将来にわたってGDPで1%、 5兆円以上のロスが生じてしまうという資料です。右側は非正規だと、なかなか結婚し づらいというデータです。  10頁目は正社員の新卒採用比率の推移です。1,000人以上の大企業、300人未満の小 さい所を見てみると、1,000人以上の規模では多少変動はあるのですが、大体60%前後 で新卒を採用しております。逆に300人未満の中小企業では、1990年代初めからだんだ ん傾向的に新卒採用比率が上がってきているというデータでございます。  11頁、今後の正社員の採用方針を聞いています。「今後は新卒採用を増やしていきた い」と回答した企業が半数、一方でフリーター等、いちばん下にある中途採用(学卒後、 正社員としての就業経験がない者)については4.3%と厳しい状況にあります。  12頁、企業がこういった新卒一括採用を行う理由を調べたデータです。よく言われて いることですが、そこに書いてありますように他社の文化に染まっておらず、育てやす い人材を確保できる、あるいは定期的に一定の人材を確保できて、年齢構成にゆがみを 生じさせないという観点から新卒採用を行っているという資料です。  次の頁、若者がパート・アルバイトから正社員へ転職する割合を見ていただきますと、 ブルーのバツが付いている線、「パート・アルバイトから正社員」への転職の割合とい うのは大体3、4%、低い水準で推移しています。  14頁は樋口座長の論文です。「教育訓練がその後の離職率と賃金上昇率に与える影響」 というデータです。家経研のパネル調査を活用した調査です。これを見ていただくと、 左側が「教育訓練が離職率に与える影響」、教育訓練によって離職率が低下し、右側で は賃金が上昇している。1990年代後半で見るとそうなっています。その理由として、そ こに書いてありますように1990年代後半以降、先ほども議論がありましたが、企業が人 材を厳選した結果、訓練の効果は逆に優位に表われるようになった。結果的に課題とし ては、先ほども議論に出ましたが、選抜から漏れた方々の訓練をどうしていくかという のが課題となってきます。  最後、15頁、厚生労働省で8月に発表した「日雇い派遣労働者の実態調査及び住居喪 失不安定就労者の実態に関する調査の概要」を参考で付けています。左側が短期派遣労 働者、1カ月未満の契約で働く派遣労働者の方々です。年齢的に行くと、35歳未満が約 7割です。日雇いとして働く理由は、「働く日時を選べて便利であるため」が半分、「正 社員までのつなぎとして」が24.7%であります。黄色く枠囲みしていますが、年齢別で 見て、今後どういった働き方を希望するかを聞くと、「現在のままでよい」も全体では 45.7%いるのですが、男女別、年齢別を見てみると、男性においては25歳から39歳層で 正社員希望が多く、女性は「現在のままでよい」という数字が多くあります。以上です。 ○樋口座長 ありがとうございました。ただいまの説明に対し、ご質問なりご意見があ りましたらご自由にどうぞ。 ○小杉委員 これは日雇い派遣労働者のデータですが、前にちょっと見たときには主婦 の方とか、学生の方も含まれているようなものだった気がします。ここでは除いていま すか。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 調べます。 ○小杉委員 多分、どういう日雇い派遣かが考えなければならない課題だと思います。 できれば、そこは主婦や学生を除いたデータを見せていただけたらと思います。 ○樋口座長 ほかにいかがでしょうか。 ○玄田委員 これまでの研究会より、あまり新しいことはないのですが、「雇用政策研 究会」なのでやや場違いかもしれませんが、雇用政策単体でできることというのはほぼ 限界になっているのではないかというのが私の大まかな感じです。別の言い方をすれば、 福祉政策・教育政策との融合のあり方を議論しない限り、雇用政策だけで現状の残され た問題を解決するのは極めて難しいのではないかというのが主な主張です。そうなると、 融合というのはどういう内容を意図するかということになりますが、これについても厚 生労働省からの報告にもあるように、対応策としては「個別的・持続的・包括的」とい うキーワードにほぼ集約されていると思います。それができるような、サポートする人 材を育成するきっかけをどう行政として、雇用政策として行い、ひいてはそれがある種 のコミュニティー・ビジネスを作るような状況になるのか。そうするためには、多分雇 用政策には限界がある。そういうビジネスを支えるような仕組みを作るためには、多分 NPOや寄付税制、いろいろな問題が関係してくるでしょう。そういう段階ではないかと 思っています。  そういう面でいくと、いまのキャリア・コンサルタントの育成のあり方をややステッ プアップして、福祉・行政・教育にも精通した人材をどう育成していくのか。おそらく 若年問題に限らず、そういう人材が時間がかかっても育成されたあかつきには、さまざ まな問題で社会的な孤立を抱えているような高齢者の問題などにも大きな効果を持つと 思います。抽象的になりますけれども、そういうサポート人材の育成ということが大事 であって、個人的な理解では自立塾も、地域サポート・ステーションも、そのための1 つのステップであるという認識が重要なのではないかと思います。以上です。 ○樋口座長 狭い意味の雇用政策ではなくて、ほかのところにもまたがってもかまいま せん。 ○鶴委員 いまの玄田委員のお話は本当にそのとおりだと思います。今日のトピックは 特にそうなのかなと思ったのですが、例えば一人ひとりの人間のヒューマン・キャピタ ルを考えると、小さいころから学校に行きその後働きながら、ずっとその蓄積は続いて いるのです。どこかで断絶しているわけではない。そういったことを考えた場合、やは り教育の問題と雇用政策とか、ほかの問題も全部一体的に考えなければいけない。ただ、 霞ヶ関の縦割りの中で、そこは非常に分断化されている印象が非常に強い。キャリアの 問題、特に若者の雇用を考えた場合、ここにお書きになっているように、どういう教育 かなどという話は根本になると思います。  私の目から見ると、どうも教育サイドの話というのはやはり供給側の論理や要因だけ でいろいろなものが決められていて、本当にそのあとの話に対応できているのかなとい う気がします。ある会議でこういう議論で問題になって、私が聞いたのは、先ほど小杉 委員がおっしゃった高校の話です。高校の話はあまり注目されないのですが、いま普通 科のほうにどんどん行っている。先ほどおっしゃった即戦力、職業訓練、そういうとこ ろをもっと多様化してもいいのに、逆にむしろ普通科重視みたいな話になってしまった。 また、大学前入問題みたいな話もある。そういった問題をきちんと、うまくリンクして 考えていかないと、この問題は相当厳しいのかもしれないという印象を持ちました。 ○小杉委員 私も基本的には、玄田委員がおっしゃった教育・福祉政策との連携の中で なければ駄目な段階になっているという認識を持っています。特に日雇い派遣の話など というのは、これは完全に住宅の問題であって、都市部に発生する短期の雇用で食べて いこうとすると、都市部は非常に住宅が高くて、最初の所持金がかなりないと住む所が 得られない。そういう問題だと思います。それは福祉の問題との接点だと思います。そ こまで入り込んで、厚生労働省ですから一緒にできるのではないかと思います。是非、 福祉との連動を考えていただきたいと思います。  いま、高校をいろいろめぐっています。高校生をほしいけど採れない、大阪とかの中 小企業では採れないという話です。地方から来るとやはり寮がどうしても必要で、寮が いま用意できているのは大企業だけ、中小では全くそれが持てなくなっている。これま では企業が寮を自分で用意、それが当然という考えの中で動いていたと思います。果た して、大企業でできるところはいいけれども、また中小等の話になりますが、そうでな いところはある程度住宅というのは福祉との境界領域で、ほかの政策からやってもいい ことなのではないか、やるべきことなのではないかと思います。実際、需要があっても 片方で仕事に就けない人たちがいるのですが、地域間移動をするとそれに伴う住宅コス トがかなりかかる。それは結構、いまのこの状態ですぐ役に立ちそうな気がします。ネ ット・カフェ難民の話も含めて、都市部で労働力の需要が大きい地域における、住宅コ ストが非常に高い状態の中で円滑に暮らすためには、その部分で政策を融合するという のが短期的に役に立つことではないかと思います。  あと、教育政策の話はおっしゃっているとおりです。教育の中で、職業につながる教 育について積極的に発言していくことが大事だと思います。ただ、先ほどの普通科に流 れているという話は、教育政策でそうしているというよりは、結局は進学する人の選択 だったと思います。結果として、高等教育を卒業したほうが収入がいいし、雇用も守ら れている。だから、高等教育につながるほうに選択が流れて、結果として職業高校に人 があまり行かなくなって、その結果として縮小してきた。ただ、ここ数年の話では、職 業高校の中でも工業高校は非常に就職がいい。就職がいいという理由で、いままた良く なってきています。 ○鶴委員 もうちょっと知る部分が必要ですね。ここは就職がすごくいいとか。何も情 報がないまま、みんな高校に行って、「ここに行けば何とかなるか」みたいな感じが多 いのではないか。そこでドロップ・アウトしてしまうことになるよりはいいのでは。 ○諏訪委員 若者の問題は専門家がいらっしゃるので、なかなか発言しにくい部分があ ります。連携が必要だというのは全くそのとおりで、いろいろな連携が必要だと思いま す。例えば、高校段階における盲点の1つが高校生のアルバイトだろうと思います。生 まれて初めて仕事に就く、というのが高校時代のアルバイトという人たちが非常に増え てきている。それもいわゆる普通課等も含めて、進学校でないところの子供は高校に入 ると同時にアルバイトを決めて、働き始める子がずいぶんいるそうです。  そのときに適切なキャリア教育、労働法の教育ということがなされておりません。学 校側は、形式上は「アルバイト禁止」などとしていますから、この部分に直接に触れま せん。また、学校の先生も、十分にそこを指導するだけの知識やスキルがない結果、放 任されていて、ここでかなりよろしくないことが起きているのではないかという気がし ています。  よろしくないものの1つは、こういう高校生たちが例えばものづくりの現場でアルバ イトするということはまずありません。そういう意味ではやはり第三次産業的なもの、 もっと正確に言えば小売、あるいは流通、非常に限られたアルバイト市場のところに入 る。同時にそこで見る店長の姿、つまり正社員というのはかなり悲惨なのです。めちゃ くちゃ労働時間が長くて、訓練を十分受けていなくて転職率も高い。そういうところを 見ると、「正社員になってもいいことないではないか」というファースト・インプリン ティングを受けてしまう。これが全部だとは申し上げませんが問題です。  このような部分に関して適切な対応をする。例えば、高校がアルバイトその他をもう ちょっと正面から認めていいのではないか。一種のインターンシップ的に見て教育をし ていく、あるいはアルバイトをやっていいけれども、その代わり3時間の労働法と5時間 のキャリア教育を受けたあとでないと駄目だ。そのあとも定期的に、「君はアルバイト で何を学んだか、何をしたか」ということを絶えず問いかけながら継続教育をしていく。 このようなことをするだけでずっと変わっていくのではないかという気がしています。  ちなみに、学生たちにアンケートを取ってみました。遅刻をする学生とはどういう学 生か。その中でいちばん遅刻をしないのは、学園内外の生活でどこかといったら「アル バイト」です。アルバイトは遅刻した・しないで変わる。当たり前ですね、したらクビ になってしまいますから。「遅刻をしない」が95%で、本当にごく一部の人を除けばし ていない。  それに対して悲惨なのは選択課目です。50%しかいません。「友だちとの待ち合わせ」 でも6割ぐらいしか時間を守っていないし、「サークル活動」も6割ぐらいしか守ってい ない。というわけで、実はアルバイト等が1つの社会教育の機能、ソーシャル・スキルや ジェネリック・スキルなど、いろいろと若者が身に付ける部分に役立っていますから、 それをもう少し意図的に汲み取っていくと、事実上の「日本版デュアル・システム」に なってしまっているわけです。こういう問題にもそろそろ、正面から手を打つべき時に なっているかなという気がしています。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 先ほど、小杉委員からご質問のあった短期派遣労働者の属性 ですが、全体698人のうち、半分が短期派遣のみという方でした。4分の1が短期派遣以 外にも正社員、自営業で働いているという方です。学生は13%、主婦は約3%でござい ます。それを分けたデータはございません。 ○佐藤委員 いまのお話、大事なのは上の5万3,000人のほとんどが学生ということなの です。例えば、データはないけれども、5万3,000人の7、8割は学生ではないですか。15 頁です。ただ、上の698人を見るとそうなのだけれども、5万3,000人がどうかなのです。 かなりの部分が学生だと思います。つまり、全体としてどうかという議論をした上で、 ネット・カフェも問題が多いと思います。だけど、日雇い派遣のすべてが698人と同じか どうかをきちんと議論したほうがいいということです。上の5万3,000すべてが下と一緒 だという判断は、実態と相当違うと思います。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 資料を整理します。 ○樋口座長 時間もありますので、最後の「外国人労働者問題」について、非常に重い 問題ですがご説明いただきたいと思います。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 3点目の論点である外国人労働者問題についてご説明します。 資料No.1の2枚目、(3)として「外国人労働者問題について」という論点を用意していま す。3つ用意していまして、1点目はいわゆる専門的・技術的分野の方々の積極的な就業 促進という部分であります。今回、雇用対策法を改正し、その辺をきちんと整備したと ころです。実現に向けて、具体的に企業における雇用管理をどう改善していくべきか。 あるいは、マッチング強化のためにどのような法則をやっていけばいいかを1つの論点 としています。  2点目は現状というより、将来、やや専門的・技術的分野に入ってくる労働者の方々、 いわゆる留学生の方々の国内就職の促進です。前々回、白木委員からも「なかなかかん ばしくない」というお話がありました。これを促進していくためにどのような方策が考 えられるかというのが2点目です。3点目はマクロ、基本的な考え方のようなところです が、いわゆる労働力不足への対応として安易に外国人の方の受け入れ範囲拡大という対 応ではなくて、やはりまず現在失業されている方、若者、女性、高齢者の参加をきちん と促進していくことが先ではないかということであります。  資料のほう、外国人労働者関係も用意しています。資料No.4をご覧ください。こちら も若干簡単にご説明いたします。1頁目で用意しているのは、現在我が国で就労する外 国人労働者の方々の人数です。いわゆる専門的・技術的分野の方々が18万人、内訳が右 に詳しく出ています。人文知識・国際業務がいちばん多く、2番目が技術者の方々でご ざいます。  大きな2つ目はいわゆる身分に基づき在留する方々、日系人の方が多くいらっしゃい ます。こちらが37万人、その他特定活動、資格外活動が以下のとおりです。  2頁目はこれらの推移、過去からどのぐらい増えてきているかというデータです。1回 目にも提出した資料ですが、いわゆる合法的な就労をされている方々は平成8年と比べ ると約倍増、直近18年では75万5,000人ということであります。内訳は下に出ていると おりです。下に不法残留の方々の推移があります。こちらは平成8年と比べると3分の2 まで減少して、いまは17万人ということでございます。  3頁目は留学生の方々の就職環境という資料です。こちらはJILPTで6月にシンポジウム をやった際の資料です。企業へのアンケート調査3,000社の調査です。いちばん上の左側、 過去3年間で外国人の留学生を採用した企業というのはまだまだ1割にとどまっています。 業種で見ると、情報通信と一般機械の製造業です。  2番目に、外国人留学生に対するイメージをそこに書いています。見ていただくとわ かりますように、「自己主張が強い」とか「日本語がなかなかうまくできない」といっ たネガティブなイメージが強いのですが、3のところに書いてありますように、実際に 雇ってみた企業の評価を見てみると、「一方」と書いてありますが、一方、外国人留学 生を採用した企業の職場では特に雇ってみると問題はないという企業が半数以上です。  4番目にあるのが外国人留学生の採用枠、あるいは採用理由です。採用枠は「区別な く採用」、あるいは「別枠で採用」とそれぞれありますが、採用した理由のところに書 いてあるのはやはり「国籍に関係なく、優秀な人材の確保」が半数、「国際化に対応し て職務上、外国語の使用が必要なため」、「国際化に対応するため」ということです。  5番目が外国人留学生を雇った効果、メリットです。「周りの日本人社員、あるいは 組織全体に対してどういう効果がありましたか」ということですが、それを見ると「職 場が活性化した」が26%、「社員が国際的視野を持つようになった」が24.7%でござい ます。  最後に、外国人留学生の方々の今後の採用見通しを聞いています。両方に分かれてい て、採用した経験がある企業であれば「今後も採用する」が8割ですが、一方で採用し たことがない企業においても「今後もしない」が8割であり、しない所はしない、する 所はするというように二極化しています。こういった留学生の方々に対する心理的なバ リアを取り払っていくのが今後重要かなと思っています。  次の頁は外国人雇用の状況です。いちばん上は外国人労働者全体、あるいは日系人、 両方ありますが、特に日系人の方々でいわゆる派遣や請負事業所で雇われている間接雇 用の割合が高くなっています。真ん中ですが、こうした方々の社会保険の加入状況です。 日系人を雇っている企業の方々において、特に健康保険、年金関係の加入率が低くなっ ています。いちばん下、生活面における問題として、こうした外国人の方が集まって住 んでおられる集住都市において、子弟の方々の不就学の割合がかなり高くなってきてい るという資料です。  その頁以降は改正雇用対策法によって、この10月1日から施行した施策をいくつか書 いています。基本的な考え方としては、外国人の方々が我が国の在留資格の範囲内でそ の能力を十分発揮していただけるよう、ルールを整備したことであります。1の「国が 講じるべき施策」として、留学生等、専門的な技術を有する方々の就業を促進する。ま た、既に働いていらっしゃる方々の雇用管理をきちんと改善していくことを柱に掲げて います。そのための制度として、(3)に書いてありますが、今回、外国人雇用状況の届出 制度をすべての事業主に義務づけまして、外国人労働者の方を雇い入れるとき、あるい は離職する際にはこの方々の氏名、在留資格、在留期間等についてハローワークへの届 出を義務づけています。  次の頁がその「外国人雇用状況届出」について詳しく書いた資料です。上に書いてあ りますようにこれまでも調査していたわけですが、こちらは50人規模以上の事業所に対 して任意の報告だったということと、雇っている数だけしか把握していませんでしたの で、きめ細かな就職支援、雇用管理指導ができませんでした。今回、1人ひとりの状況 を尋ねるということで、この辺を強力にやっていきたいと思っています。  最後の頁は、大臣の定める雇用管理改善の指針です。以上です。 ○樋口座長 ありがとうございました。よろしくお願いします。外国人労働者数の推移 のところで、「特定活動の技能実習生等が9万5,000人」という数字が出ています。これ は研修生が入っている数字ですか、1年目も。それとも、まさに2年目、3年目の実習生 の数でしょうか。 ○尾形外国人雇用対策課長 研修生は入れていません。 ○樋口座長 労働者ではないからということで入れていないということですか。 ○尾形外国人雇用対策課長 一応、そういうフィクションを前提に入れておりません。 それを入れますと、現時点でプラス7万人となります。ただ、そのすべてが労働者かど うかというのはよくわかりません。 ○樋口座長 ということは、今の説明ですべて、労働者かどうかわからないけれども、 そうだとみなすと、専門的・技術的分野18万人とほぼ匹敵する数に、研修生と技能実習 生でなっていくというように考えてよろしいのですか。 ○尾形外国人雇用対策課長 かなり、きっこうした数字になるのだろうと思います。 ○山川委員 質問なのですが、留学生の就職環境でイメージと実態の乖離というお話が ありました。3の囲みの中で、「特に問題は生じていない」が53.8%とあります。現実 にもし問題が生じているという数字が出てきているとすれば、具体的にどういう問題が あるのかというのはご紹介いただけるのでしょうか。 ○尾形外国人雇用対策課長 ちょっとお待ちいただけますか。詳細なデータはまたのち ほどと思っているのですが、いわゆるトラブルといった類のものについては回答はあま り多くありません。 ○玄田委員 具体的内容というより、論点の立て方について違和感があるというお話を 少しだけさせていただきたいと思います。外国人労働者を3つのポツで書いてあります が、冒頭の「国際競争力の向上を担う」、3番目の「将来の労働力不足の懸念に対する」 という文言というのは、ややうがった見方かもしれませんが、やはりマクロ的な労働市 場の動向に対応するというような文言と読みました。  ただ、現下の外国人労働の問題、特に労働力不足の問題を外国人労働の導入によって 解決するというのは、極めて非現実的というか、超革命的な政策的変更がなければ不可 能な話である。マクロの議論を前提にして論点を立てるのが、もうそろそろ卒業とまで はいいませんが、考え直したほうがいいのではないか。むしろ、いま必要なのは、やは り国民生活の質の安定、維持向上に向けて、一体どの分野にどういう人が不足している かという論点の立て方をしなければ、具体的かつ緊急の問題に対応できない。先ほど山 川委員から伺ったのですが、いちばんの論点は特に介護・福祉の分野における圧倒的人 材不足に対して、いま喫緊に必要としている分野に対してどうするかということが既に 検討中だというように伺いましたので、とやかくは言いません。それを例として、国民 生活上に必要な分野においてということを1個1個つぶすということで、論点を立てるべ きではないかというのが私の意見であります。以上です。 ○岡崎高齢・障害者雇用対策部長 今回、「外国人労働者」という切り分けで論点を設 定したために、玄田先生が言われるような違和感があるのだろうと思います。別の論点 として、マクロで現在の日本の労働力が足りているのか足りていないのか、産業別に見 てどうなのか。ただ、外国人という観点で考えるのではなくて、むしろ我が国の労働市 場全体の中でどういう形でやっていくかという論点なのだろうと思います。それはそれ で、別途またご議論いただいたほうがいいのかなと思います。外国人から焦点を当てて みたらこうなったというように、焦点を挙げましたので、先生のご議論はまた別途ご議 論いただいたほうがいいかと思います。 ○樋口座長 これはどなたに聞くのがいいのかわからないのですが、外国人留学生の採 用の際、外国人枠を設けることというのはやっている所が38%か何パーセントかあるの ですが、これは法的にはどういう扱いになるのでしょうか。私の学生、やはり留学生が 受けたとき、全く日本人と同じ試験を受ける。それは当然ハンディキャップがあるわけ です。実際に配属されるのは、国際部門で中国人の留学生だったわけです。最初から中 国影響をわかっているのですが、形式的にはそこのところは日本人と同じという建前で やっている。法的には別枠を設けて、別枠試験をやるということは問題はないのですか。 ○岡崎高齢・障害者雇用対策部長 法的にはないと思います。国籍による差別禁止にか かわる規定というのはありませんので、分けて採用してもいいし、同じ枠で採用しても いいということだと思います。ただ、外国人の指針の中では、全く同じ枠でやってしま うと、これは白木委員のほうがご専門ですが、むしろ留学生の方が採用されにくくなっ ている部分がある。そこは配慮した採用の仕方もあるのではないかというような、今の 指針ではそういう示唆を逆にしています。 ○樋口座長 微妙な問題がここにはあると思います。留学生だとはっきりしているのだ ろうと思うのですが、どうなのでしょうか。 ○山川委員 いま、岡崎部長が言われたとおり、採用に関しては労基法の第3条の「国 籍差別」というのは労働条件に関することで、採用には適用されない。しかも、いわゆ る逆差別も多分、労働条件については労基法第3条でやっていると思います。採用につ いて禁止されると思います。採用についてはいまのところ、直接法規制にかかっていま せんので、問題はないかと思います。政策的にどのあたりをやるかというのは別かと思 います。  ですが、ただ、アメリカなどですと、逆に逆差別の問題というか、外国人を採用する がために業務上必要性のない資格要件を課すと、それは労働証明が出されないという紛 争が生じています。ただ、日本はそういう段階にまだ達していないということだと思い ます。 ○佐藤委員 論点の3つ目のポツのとこです。今回、どう議論するかなのですが、労働 力不足については、合法で、外国人の受け入れ範囲を拡大するのではなくてという話だ と思います。多分、実態としては研修生のところがかなり単純労働力の代替になってい るわけです。これをどうするのか。  もう1つはいわゆる日本語の研修とか、留学生がアルバイトで入ってきている。アル バイトが事実上、外国人労働力の受け皿になっている部分が相当ある。この辺をどうす るのか。もう1つは、日系人のところは全然コントロールされていないわけです。海外 に日本の労働市場の飛地があるようなものです。数量的なコントロールがされていませ ん。つまり、合法のほうだけどうするかという話だけなのです。つまり実態としてはす ごく大きな量があるわけなので、それは全然議論しないのか、議論するのかというのは 少し考えておいたほうがいいのかなと思います。 ○尾形外国人雇用対策課長 実はお答えになっているかどうかわからないのですが、合 法的に既に入ってきている、いまおっしゃられた技能実習、アルバイト、日系人といっ たものを念頭に置きながら、実は今回の雇用対策法の中でも対応はしているということ です。1ポツの中にある「雇用管理はどう改善されるべきか」という切り口であります。 ここでは高度人材のことしか取り上げていませんが、現にいる人たちの雇用管理の改善、 例えば安い労働力という観点で処偶されたりしているという声が強い。それをどうすべ きか、きちんとやるべきではないか。先ほど紹介しました外国人指針もそういうコンセ プトですが、そういったことについても当然法の中で、既に私ども法改正で対応してい るところですのでご議論いただければと思います。 ○山川委員 いまと関連して、資料の中で社会保険加入状況や不就学者の割合を見ると、 最低限のコンプライアンスの問題等もあるのかなという感じがしています。特に健康保 険、厚生年金保険、制度的な使いにくさもあるかと思いますがずいぶん低い。逆に、国 民健康保険15.1%加入というのは、本当に入れる人というのはどれだけいるのかなとい う感じがしなくもありません。  不就学者についても1回だけ実態調査に参加したことがあるのですが、結構シリアス な状況のところもある。そのような、最低限のコンプライアンスみたいな点からまず確 保していく。例えば、請負企業で注文主が外国人を使っているときに、下請が外国人を 使っている場合、きちんとコンプライアンスをやっているかぐらいのチェックは是非、 法的な問題ではないのかもしれませんが、やっていただきたいなという感じがします。 ○尾形外国人雇用対策課長 日系人のための指針の中でも、まさにそういったことは念 頭に置かれています。現に、日系人を中心に非常に外国人をたくさん雇用しているよう な事業所、その大半は請負派遣のところなのですが、指導に入ったり、社会保険事務局 と連携したりということがあります。 ○樋口座長 前から言っていることになってしまうのですが、専門的・技術的分野がい ま「これだけです」という形で出ているわけです。それに対して単純なのは駄目ですと いう、政府の基本的方針がある。それはそれなりに理解しています。ただ、線をどう引 くか。何をもって専門的・技術的分野と呼ぶのか。その基準なしに何となく、これは専 門的です、これは違いますという話になってきて、すごくグレーゾーンのところがある のだろう。そこの水準、専門的・技術的分野と言ったときの水準をどこに置くか。政府 の方針は方針なりにそれを守るとしても、その範囲の中でどう線を引くかによって受け 入れ人数というのは相当変わってくると思います。いまのところは専門的・技術的分野 というのは、先ほど玄田委員が言った国際競争力に限定して、その中で付けているわけ ですよね。そこはどうもよくわからないのですが、どういうように考えたらいいのです か。 ○尾形外国人雇用対策課長 これはまた制度的なお話になっているのですが、先ほどの No.4の1枚目、「合法的に就労する外国人」のカテゴリー分けの表ですが、まさにご指摘 のあった専門的・技術的分野といういちばん上、黄色の中に、「その範囲は産業国民生 活等に与える影響を総合的に勘案して、個々の職種ごとに決定」と書いてあります。実 は、これは入管法に書かれている法律上の文言です。つまり産業と国民生活、いわゆる 労働市場の問題、社会的にいろいろ与える影響の問題、治安等々も含めて、総合的に判 断せざるを得ないということが現行の入管法の基本的な哲学になっている。  これを個々の職種ごとに考えるというのが、現時点で大変抽象的かもしれませんが線 引きの基準であり、ここはある意味で中核をなすコンセプトになっている。例えば資格 があればとか、いろいろな議論がありますが、資格という単一的な切り口ではなく、い ろいろなことを総合的に考えた上で本当にこの人たちがまさに我が国にとってプラスに なるか・ならないかを考えていただきたいということです。 ○樋口座長 その概念で言うと、例えば超人手不足、あるいは超人口減少ということに なったときに、この概念は維持しながらも具体的な対応で「この仕事はどうなのか」と なったとき、それが往々にして「専門的ですね」と広がりを見せてくることもあり得る わけです。その点、どうも総合的というのはいいのだけれども、誰が何をもって総合的 に判断するのかがどうもすっきりしない。 ○岡崎高齢・障害者雇用対策部長 今、「専門的・技術的」という言い方をしているが ために、レベルで判断しているのではないかと思っている方が皆さん結構多いですが、 資料No.4の1頁を見ていただくと、実はそういうことになっているわけではない。1つは 企業の国際的な活動等を考えており、技術や人文知識、多国籍企業における企業内転勤 というレベルの部分はそういう考え方から出てきています。  もう1つは技能と言っていますが、一定のレベルの技能であれば受け入れる・受け入 れないという判断基準では全くなくて、見ていただいてわかりますように、調理や建築 など、要するに外国人の感性などを含めた意味での技能で見ています。技能レベルがど うこうという議論はいままでしていないのです。  これらを総合的に考えると、我が国における労働力不足をどうするという発想は今の ところ入っていない。今の在留資格の考え方の中には。そうではなくて、むしろ我が国 の企業とか、おいしい本場の食べ物を食べたいとか、そういうニーズの中で何が必要か という観点で議論されてくる。本当に労働力不足問題として議論しようとしたら、これ までの在留資格制度とは全く違う議論になってくるだろうと思います。玄田先生も先ほ ど「全く違う」と言われましたが、そういう話なのだろうと思います。 ○樋口座長 ただ、判断する上で、それこそ労働力不足の状況なのかどうか総合的に判 断して、このコンセプトに基づき「これは認めます」、「これは認めません」という結 果になってくるわけですよね。 ○岡崎高齢・障害者雇用対策部長 なってくるというか、いままでは労働力不足問題と いう観点からは議論していないというか、そういうシステムとしては考えられてきてい なかった。 ○樋口座長 誤解しているかもしれません。私が参加して研究会をやってきた中では、 それはかなり議論してきたと思います。実際の制度がそうなっているかどうかは別とし て、厚生労働省の研究会でも「外国人労働者問題研究会」とかあったとき、スキルド・ ワーカー、アンスキルド・ワーカーと分けられる。その一方、例えばある職種について は今後も需要が見込まれます、にもかかわらず求人倍率が非常に高いままですという話 が出てきたように思ったのです。そのときには、その職種について人材が不足している かどうか意識していた。そう思っていたのですが、そうではないのですか。 ○岡崎高齢・障害者雇用対策部長 そういう議論が例えばバブル期前、人材不足時代の 外国人労働の中でされたのは事実です。事実ですが、結局、今の入管制度の中にその観 点から取り入れられて、物事が変わったことは今のところはなかったという意味で申し 上げました。議論があったのは事実だと思います。 ○樋口座長 そうすると、今度は議論としてそれを考えるべきだと。今後の方向として。 過去の話ではなくて、今後として考えるべきかどうかというのも。 ○岡崎高齢・障害者雇用対策部長 当然議論の対象になります。 ○白木委員 ちょっと違った観点かもしれませんが、2番目のところ、留学生がどれだ け国内で就業しているか。これは別の観点から言うと、日本に留学されて、そこでいろ いろなコストをかけて人材を育てたという人たちなのです。都市からして、その人材に どうやって日本にいてもらうかという観点もあり得ると思います。  そういうことから見ると、来日して留学され、日本の大学や大学院を卒業した人たち がどこに行っているのかというのは非常に重要だと思います。あまり細かい数字は別と して、いま12〜13万人留学生がいます。そのうち、3〜4万人は毎年卒業している。実際 に日本の企業に就職している人というのは、最新のデータで8,000人になっています。 ○尾形外国人雇用対策課長 入管のデータですね。 ○白木委員 入管のデータです。在留資格が変わって、就職したであろうと思われる人 たちが8,000人ぐらいに増えたという状況になっています。 ○尾形外国人雇用対策課長 平成18年1年間を通じて。 ○白木委員 3〜4万人卒業した人の中で、どれだけが日本の企業に就職したいと思って いるかという推計についてはいろいろあるわけです。我々の甘い目の集計でいくと6割 ぐらいが希望している。そうすると2万人ぐらいいるのでしょうか、2万何千人ですか。 あるいは、もうちょっと厳しめの推計でいくと40%という議論もあるようです。それで いくと、比較的したい人ができている状況になっているのかなということにもなるわけ です。  いずれにしてもかなりの数、過半数は日本の企業に就職していないわけです。その理 由はいろいろあり得るわけです。例えば去年秋に調査したら、そこで就職をするべき時 期であって、就職の決まっていない人というのは9割でした。だから、秋の段階で1割だ けが就職が決まっている。日本の大学生から見たら非常に厳しい状況に置かれています。 それが決まらない場合には帰ってしまうかどうかしかなくなるわけです。どちらにして も就職は非常に厳しい。  これにはいろいろな理由があるわけです。1つは企業側、先ほど外国人枠を置くかど うかというお話がありました。大企業はほとんど置いていません。日本人と全く同じ状 況でやっています。ですから、留学生には厳しい。逆に、留学生の意識にも問題がある のです。留学生のほうの意識としては、大企業のものすごく有名な所に入りたいという 人が非常に多い。これもギャップになっています。  同時に、我々もやったことがあるのですが留学生の意識調査を見ると、「わからない」 は除くと短期で働きたい人が大体半分、長期で5年以上働きたい人も半分ぐらいなので す。大体、「短期で」というのは真面目な人でも落とされます。企業としては、建前上、 大企業でいくつか聞いてみると、我が社は短期で働きたい人もオープンにしていますと 言うのですが、実際採った人の数は長期に働く人しか事実上採っていない。だから、そ こでかなりのセレクションがかかっているのではないかと思います。  それから対策でありますけれども、私は留学生に対する就職上のスペシャルな指導が 必要ではないかと思っています。我々の大学でも、留学生だけの就職のサービスという のは年に一回しかやっていませんでした。これだけでは彼らは就職活動に立ち遅れます し、情報不足になります。  もう1つは、先ほど言いましたように大企業で働きたいという気持が非常に強い。で すから、日本では大企業ではなくて中堅企業、中小企業に非常に良いところがあること をよく知ってもらうという、スペシャルな対応をすべきだと思います。企業のほうも短 期で働いて、向こうに帰って、出向として使ってくれという人も結構いるわけです。こ の辺、情報を十分認識していないということですよね。海外派遣者というのは、ご存じ のとおり若い人は行っていない。日本のデータで見ると、45歳で勤続20年の人が海外派 遣に行っています。大学を卒業して2〜3年で、出向で、自分の祖国に入れてくれという こと自体がリアリスティックではない。そういうことも含めてスペシャルな対応をして、 マッチングしやすい状況を作っていく必要があるのではないかという感じがします。 ○佐藤委員 いまの樋口座長と白木委員との話なのですが、私の理解だと専門的・技術 的分野と言ったとき、日本は数量規制していない。ですから留学生で、日本の大学で採 用する企業があればホワイトカラー職種であれば基本的には在留資格を取れるわけです。 ですから、制度的に留学生を排除しているわけではなくて、多分企業と学生の間にミス マッチがある。  逆に言えば、日本は専門的・技術的の受け入れ範囲が非常に広い。その点がかなり誤 解されている。大学卒の資格さえあれば、ホワイトカラー職種で採る企業があれば在留 資格を取れるのです。にもかかわらず、そこが増えないかをきちんと議論したほうがい いのではないかと思います。 ○諏訪委員 いまの外国人労働の関連です。今日の職業キャリアの問題、若者の雇用の 問題、外国人も、実はちょっと別の角度から見るとキャリア形成支援の問題だと思って います。1点目は当然そうです。2点目も若者が袋小路のキャリアに入らずに先へ進む、 このキャリア形成支援をどのように行っていくか。  外国人労働の話、佐藤委員がおっしゃったのはまさにそのとおりです。門戸を開いて いても来ないのには、もちろん言語や文化、企業のいろいろな伝統や雇用慣行もあるの ですが、もう1つはキャリアの展望が持てるかどうかなのです。外国人で非常に優秀な 人だったら、アメリカだって行けるし、イギリスだって行けるし、日本にも来られる。 そのときに参入障壁が低い国はどこか。その先に行ったあと、コストをいろいろかけた だけのベネフィットが返ってくるかどうか。そう考えると、日本では外国人にとっての キャリア形成の展望、あるいはキャリア展開の展望が小さい、少ないとなれば、優秀な 人であればあるほど来なくなるのは当たり前なのです。  実は今日扱った3つの問題、基部にあるのは雇用政策においてこれからキャリア形成 支援をめぐりどのように枠組みを設けるか。キャリア形成支援のポイントはやはり個々 人なのです。組織から見た議論が非常に多い。やはり個人が一生懸命頑張って、元気よ くやろうという感じをどうバックアップしてあげられるか。ただし、それだけがひとり 歩きすることはできません。それは組織のさまざまな行動との間で、あるいは市場のあ り方との間でどういうように調整していくかということではないかという気がします。 ○樋口座長 ありがとうございます。そうするとローテーション方式で、期間限定の受 け入れというのは、その観点から言うと「3年で全員お帰りください」という方式とい うのは問題だということですか。 ○諏訪委員 枠組みから言えば、結局は枠組みと具体的な運用の問題になってきますか ら。具体的政策はまた別のところですが、基本理念としてはやはりキャリア形成支援と いった視点がないと道を誤まるのではないかと思います。 ○白木委員 先生のキャリア形成支援の場合、日本国内だけで閉じている必要はないわ けです。もっと広がるということを考えれば。 ○諏訪委員 そう、そのとおり。 ○白木委員 短期の働き方も十分選択肢としてあり得ると思います。 ○小杉委員 専門ではないのですが、ここに出ている不就学のと問題というのは非常に 重要だと思っています。先ほどの「包括的」とという話になるのですが、人は労働力と してだけ存在しているわけではなくて、生活者であり、家族を引き連れてである。その ように包括的な中で見なければいけないのではないかという意味で、社会的コストも含 めて考えるべきだと思います。以上です。 ○樋口座長 ありがとうございました。予定の時間をだいぶ過ぎました。議題2、「今 後の雇用政策の方向性について」の議論はこのあたりで終了させていただきます。次の 議題3、4の「労働力需給推計」の再集計結果の報告、およびワークライフバランス関係 の数値目標に関する議論に移りたいと思います。まことに恐縮ですが、数値目標関係者 以外の傍聴の方はご退席いただきます。                   (退席)  以下、非公開のため、議事録の掲載なし   (照会窓口)    厚生労働省職業安定局雇用政策課雇用政策係    TEL:03-5253-1111(内線5732)