07/10/03 「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」第1回議事録 第1回これからの地域福祉のあり方に関する研究会議事録             開催日:平成19年10月3日(水)             場 所:厚生労働省6階 共用第8会議室 ○事務局  おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから「これからの地域福祉の あり方に関する研究会」を開催させていただきます。本日は、誠にお忙しい中お集まり いただきましてありがとうございます。私は進行役を務めさせていただきます地域福祉 課の室橋と申します。よろしくお願いいたします。  初めに、本研究会の開催に当たりまして中村社会・援護局長より挨拶申し上げます。 ○中村局長  皆さんおはようございます。第1回の「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」 を開催させていただきますが、最初でございますので、挨拶をさせていただきたいと思 います。  まずは、このような研究会を立ち上げましたところ、委員の皆様方にはご参加いただ きまして大変ありがとうございます。ご多忙の方が多いと思いますが、何分よろしくお 願いいたします。最初でございますので、このような研究会を開催させていただきまし たいわば設置理由といったことについて、私の方から一言問題意識についてご説明させ ていただきたいと思います。  我が国の福祉については、1990年以降高齢者福祉を中心に改革が行われまして、市町 村が中心になって、それまでの施設福祉が中心であったものを在宅福祉も重視していく ということで、例えば老人福祉については90年代初頭から全国の市町村で老人福祉計画 をつくり数値目標も掲げて計画的に基盤整備するという形で進められてきました。  こういう流れは1997年に介護保険法が制定され2000年から実施されたことによりまし て、いわば高齢者介護のサービス量は1990年ころに比べますと飛躍的に増加したと言っ てよろしいかと思います。この分野では革命的な、地殻変動的な動きがあったと認識し ております。  それに比べると立ち遅れているといわれておりました障害者福祉の分野につきまして も、2000年に入りましてから様々な改革が行われ、特に2005年からは障害者自立支援法 が制定されまして、身体障害者福祉、知的障害者福祉、それから精神障害者福祉の3障 害の福祉を統一的に進めていかなければならないということで、3障害をカバーするよ うな制度が成立しております。  児童福祉は終戦直後から行われており、福祉の中では最初にスタートした福祉でござ いますけれども、今日の少子化の流れの中で、改めて少子化対策の中で様々な児童福祉 の取り組みが行われているという状況にあると思います。  そういう中で政策の方向としては、たとえ障害を持つようになっても要介護になって もできる限り地域で普通の暮らしができるような基盤を整備していくといったことが、 介護保険制度にしろ、障害者自立支援法にしろ、また児童福祉にしろ、基本的な方向に なっております。いわば地域に密着したサービスということが強調されますし、地域移 行ですとか、障害者の地域での自立支援、生活の確保、精神障害者の入院から地域移行、 こういったことが強調されております。  2006年には大きな医療制度改革が行われて、実は現場では来年度あたりから本格的に 実施されようとしておりますけれども、そういった中でも我が国の医療の問題とされて いる入院期間の短縮ということが強く叫ばれておりますし、その受け皿としての在宅医 療の推進ということが基本的な方向で、福祉サイドから見ますと、地域へ地域へという 流れにあると考えております。  しかしながら目を別な方向に転じますと、分野別で発達してきた制度の中で、本当に 多様な困難を抱えている、いろんな問題のあるニーズにうまく対応できているかという こともございますし、ただいま申し上げましたように高齢者制度、障害者制度、児童福 祉とアプローチしていますが、実は共通の問題に対して、例えば虐待の問題についても それぞれ児童虐待だ、ドメスティックバイオレンスだ、高齢者虐待だとアプローチして いて、1つの事象について二元的三元的に対応するという弊害も、あえて言えばあるの ではないか。  また、このように介護保険制度や障害者自立支援法、児童福祉といったいわば公的な、 フォーマルなサービスが行われてきておりますけれども、困難な方が直面しているすべ てのニーズをそういった公的サービスで支えられるものでもないと思いますし、支える べきでない分野もあるのではないか。いわゆるインフォーマルサービスの重要性がある のではないかと考えております。  また、孤立死や虐待、高齢者を対象とした詐欺的商法、災害時の弱者の問題など、地 域においては切実なあるいは深刻な課題、あるいは野宿している人とか、様々な問題も 抱えておるのではないかと思いまして、いわばそういう諸々の課題について、これから の地域福祉のあり方についてご検討いただいたらどうかということで、地域福祉の現状 と課題、既存施策の評価、今後の地域福祉の目指すべき方向についてご議論をいただき たいと思います。  もちろん背景には、私は担当が福祉でございますのでただいまは主として福祉サイド からの問題意識を申し上げましたけれども、もっと幅広い地域社会の変容の問題ですと か、住民の方々の意識変化の問題、特に長い間不況が続きましたことにより、あるいは 様々な構造改革があり近年の社会経済状況に由来する新しい問題もあるのではないかと 思います。また団塊の世代も退職年齢に達しますし、そういった中で改めて住民参加と か自己実現という視点、福祉を通じたコミュニティづくり、まちづくり、あるいは新し い公と申しますか連帯の創造、そういったことも視野を広げればあるのではないかと思 います。  私、様々申し上げましたけれども、こういった問題意識はそもそも正しいのかどうか といった是非をもちろん含めまして、この研究会ではご自由に幅広くご議論いただき、 先ほど申し上げましたように、地域福祉の現状と課題、既存施策の評価、それから今後 の地域福祉の目指すべき方向についてご提言いただければと思います。  私どもとしては、地域福祉については行政的に言いましても1970年代ぐらいからその 重要性が強調されていると思いますし、様々な法制度の改革でも地域福祉地域福祉とい うことが盛り込まれてきておりますが、今申し上げました新しい状況に対応するため地 域福祉のいわば再構築に向けて取り組んでまいりたいと思いますので、そういった意味 でこの研究会で先生方のご指導をお願いしたいと思います。  この研究会は後ほどご紹介する委員の先生方にお願いしておりますが、座長には大橋 日本社会事業大学学長をお願いしたいと考えておりますので、大橋先生、どうかよろし くお願い申し上げます。またこの研究会のスケジュールとしては、今年度中に一応の目 処をつけるということを目標として進めていただきたいと事務局としては思っておりま すので、どうかよろしくお願いいたします。  最初に当たりましてご挨拶させていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。 ○事務局   続きまして委員の皆様方をご紹介させていただきたいと思います。資料の中に資料1 開催要綱がございますが、その3ページに委員名簿をお付けしておりますので、ご覧い ただきながらと思います。五十音順でご紹介させていただきます。  東京工業大学大学院社会理工学研究科教授の今田高俊様でございます。  日本社会事業大学学長の大橋謙策様でございます。  住民流福祉総合研究所所長の木原孝久様でございます。  三鷹市長の清原慶子様でございます。  東洋大学社会福祉学科教授の小林良二様でございます。  読売新聞東京本社生活情報部記者の榊原智子様でございます。  宝塚市社会福祉協議会事務局次長の佐藤寿一様でございます。  立教大学コミュニティ福祉学部教授の三本松政之様でございます。  横浜市民生委員児童委員協議会会長の長谷川正義様でございます。  ルーテル学院大学総合人間学部教授の和田敏明様でございます。  なお、本日都合によりまして横浜市鶴見区平安町町会長の河西英彦様、それから東京 大学大学院法学政治学研究科教授の金井利之様については、ご欠席でございます。  続きまして、事務局の紹介をさせていただきたいと思います。  冒頭挨拶をしました社会・援護局長の中村でございます。  社会・援護局総務課長の藤木でございます。  社会・援護局地域福祉課長の藤崎でございます。  大臣官房企画官の中村でございます。  雇用均等・児童家庭局総務課長、代理で出席ですけれども、太田児童福祉専門官でご ざいます。  なお、本日出席予定でございました雇用均等・児童家庭局の審議官の村木、それから 障害保健福祉部長の中村、同じく障害保健福祉部の企画課長の川尻、それから老健局総 務課長の依田につきましては、急遽国会業務が入りましたので、国会業務終了次第参加 させていただく予定にしております。  続きまして資料の確認をさせていただきます。お手元の資料を確認いただければと思 います。研究会次第、座席表、資料1開催要綱、資料2として当面の論点メモ、それか ら資料3でございます。それから、木原委員より資料の配布がございましたのでお配り してございます。よろしいでしょうか。それでは、以後の進行につきましては大橋座長 にお願いしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。 ○大橋座長   大橋でございます。改めましておはようございます。大変重要な研究会でございまし て、やや属性分野ごとにあった福祉政策を横断的に捉え直したいということと、行政と 住民の活動を協働させていくという、大変大きな21世紀の新たな課題に取り組む研究会 でございまして、その座長と仰せつかりまして大変緊張しております。大変不慣れでご ざいますし、また浅学非才でございますが、一生懸命務めてまいりたいと思いますので どうぞよろしくお願いいたします。  また、年度内に目処を立てるということでございますから大変タイトな日程ですが、 積極的にご発言いただくなり、資料を提供いただければありがたいと思っている次第で ございます。それではご用意いただきました資料を事務局からご説明いただきたいと思 います。どうぞよろしくお願いします。  それでは事務局よろしくお願いいたします。 ○事務局   それでは私の方から資料の説明をさせていただきます。最初に資料1でございます。 開催要綱ということであげております。趣旨は局長のご挨拶のとおりでございます。主 な検討項目として4つあげさせていただいております。地域福祉の意義と役割について、 地域福祉の現状について、諸政策の評価、今後の目指すべき方向ということであげてお ります。開催時期等ということで、年度内に報告書を取りまとめるというスケジュール でやらせていただきたいと思います。  次に資料2、当面の論点についてです。後ほど各委員の方々にご発言いただきますの で、この点についても触れていただければと思っております。  1.現在、地域で問題となっている生活課題や対象はどのようなものか。従来の施策 では十分に捉え切れない問題、地域でなかなか受け容れにくい問題、地域で暮らしてい く上で必要な「生活密着型」の課題。  2.地域を支える関係施策において何が不足しているのか。  3.地域福祉を推進する上で障害やネックとなっている事項はあるか。  4.既存の関係制度・施策をどのように見直せばいいのか。その例といたしまして市 町村地域福祉計画、民生委員・児童委員、市町村社会福祉協議会、ボランティア、生活 福祉資金貸付制度、福祉サービス利用援助事業、権利擁護、共同募金、自治会・町内会、 学校(PTA)、ボランティア、企業等の地域資源の活用、その他必要な施策というこ とであげております。  5.住民がその力をさらに発揮するためには何が必要か。以上が暫定的な論点メモと してあげられている事項でございます。  資料3として参考で資料をお付けしておりますので、適宜ご参照いただければと思い ます。以上でございます。 ○大橋座長   時間があまりないということで事務局は最後の資料3を端折りましたけれども、それ も見ながら少しご意見をいただければということでございます。ややもするとこういう 研究会は、事務局の意見はどうなんだと言われがちでございますが、どちらかといえば 委員の皆さんから積極的にご発言をいただいてそれを事務局でまとめて反映させていた だくという取り組みで進めてみたいと思っておりますので、資料のこの部分は事務局ど うだ、というふうなご質問ではないやり方でご意見をいただければありがたい、こんな 思いでございますのでどうぞよろしくお願いしたいと思います。  資料2として、当面の論点としてそこに書いてございますように、先ほど中村局長の ご挨拶にもございましたように1970年以降それなりに地域福祉というものが意識され 重要視されてきたわけで、それなりのメニューも制度もあるかと思いますが、改めてそ れらの実践を踏まえながら今日的に再検討するというところが大きなポイントになって くるかと思っているわけでございます。その上で改めて、従来のやや属性分野の施策体 系では十分に捉え切れていない問題があるのかないのかということがございますし、あ るいは地域移行ということがかなり強く言われているわけですし、またその必要性も皆 さん考えてはいるわけですが、実際問題としてはなかなか受け入れられない問題がある のではないか。あるいは限界集落ということが言われている中で、地域密着型の生活支 援という問題をどういう考えていくのかという問題とか、改めて地域で起きている問題 はどうなのかということをこの後各委員さんから意見をお出しいただければということ でございます。  2つ目に、そのような地域を支える施策の重要性はわかっているのだけれども、今日 的な関係施策においてどこに問題があるのか。システム上の問題も含めてご意見をいた だければと考えております。多分2と3がそういうことになるかと思います。  それとの絡みで、既存の制度がいろいろあるわけですが、どういう方向で見直してい ったらいいのか、そういうことを今日は1回目でございますので概括的にご意見をいた だければと思っている次第でございます。  事務局から事前にお願いしているかと思いますが、1人5分ぐらいの見当で、資料2 の当面の論点という内容でご発言いただければと思っております。念のため、席上にあ るかと思いますが、宝塚市社協の佐藤委員、民生委員・児童委員の立場から長谷川委員、 そして地方自治体の行政の立場から清原委員、実践と研究をつなげる活動をやってこら れました木原委員、長らく社会福祉協議会で地域福祉推進に尽力されました和田委員、 学者の立場で小林委員、三本松委員、今田委員にお話をいただければと。そして大所高 所から榊原委員にお話をいただきたい。こんな順序になるかと思いますが、よろしゅう ございましょうか。  それではトップバッターで佐藤委員、少し緊張しているかもしれませんが、よろしく お願いいたします。 ○佐藤委員   宝塚市社会福祉協議会の佐藤と申します。まず宝塚市社会福祉協議会、宝塚市の概観 を少しご理解いただいた上で発言させていただきたいと思います。  宝塚市は大阪平野の北西端に位置しておりまして、人口22万、高齢化率が大体20%、 大阪・神戸まで30分ぐらいで通うことができるということで、ベッドタウンとして昭和 40年代以降急速に成長いたしました。逆にインフラ整備に追われたということもあって、 行政の方がコミュニティ施策等を打つのが随分おくれました。平成に入ってからそうい うことを進めるという状況になっています。市内は大体人口3万人規模の7つのサービ スブロックと、20の大体人口1万人、小学校区単位ぐらいのコミュニティ組織が地域活 動を支える基盤になっています。  私ども社会福祉協議会は、そういうコミュニティ施策が進まない中で社会福祉協議会 としての事業を進めるために、昭和50年代の後半から在宅福祉サービス事業、移動入浴 とかヘルパーなどの事業に取り組んでまいりました。介護保険が始まる直前ぐらいには、 全国でも有数の事業型社協と呼ばれるような、訪問介護、訪問看護、デイサービスとい った各種の事業を取りそろえて行うような、サービス事業に非常に強い社会福祉協議会 と言われるようになっておりました。  一方、それこそ先ほど局長のごあいさつの中にもありましたけれども、受けとめる地 域をつくっていかないと、公的なサービスだけがどんどん出ていってもうまくいかない ということで、受けとめる地域をつくっていく、地域起こしを進めるための仕掛けをし ていこうということで、市のコミュニティ施策に合わせて、平成8年以降、地域福祉を 進める活動に取り組んでまいりました。  市内の7つのサービスブロックごとに地域福祉活動支援をするための地区センターと いう拠点を出し、そこに地区担当の職員を1名ずつ配置して、地域福祉活動を推進する ためだけに職員を置いて動かすという取り組みを進めてまいりました。今20のすべての 小学校区の中で、様々な形で地域福祉活動が取り組まれるようになってきております。  そういう活動をしている中で、今回の論点の中でまず第1番目の話として、生活課題 が今どういうふうになっているかということです。従来の施策では十分に捉え切れない ような課題、問題としてどういうことがあるかというと、まず我々が感じている部分で 言うと、例えば短時間のサービス、ごみ出しとかほんのちょっとしたサービスだとして も、やはりだれかの援助がないとできないという部分が制度でいけるかというと、制度 を使っていくと非常に制度に負担がかかる。サービスが足りないという状況が出てくる ということがあると思われます。  それから非常に長時間のサービスですね。認知症の見守りというような長時間のサー ビスを全部制度で対応していくと当然、介護保険の限度額をオーバーするという問題が 出てくる。それから制度狭間の問題で言いますと、例えば、入退院とか一時帰宅時のサ ービスが制度では使えないという様々な問題があります。  あとは、価値判断の差によってなかなかサービスの対象にならないもの、例えば散歩。 生活意欲を向上させるために散歩をしたいと言っても、散歩に対するサービスが提供で きるのかというと、公的なサービスは判断としては難しい。もしくは冠婚葬祭等にどう しても出たいという思いがあっても、それに対する介助、援助というものはサービスの 対象としてはなりにくいということで、本当はご自分にとっては非常に大事な、生活を する上で必然性が高いものであっても、公的なサービスとしてはなかなかフォローがで きないようなものがあります。  それから非常に深刻な課題としては、複合的な問題を抱えたケースということで、こ れも資料の中にも出てきていますけれども、例えば要介護5の状況の親御さんと精神障 害の息子さんの組み合わせのケアというのは結構あるんです。これが、なかなか両方の 制度からうまく寄りつかないので、1つの家庭を支えるという形ではうまく機能しない という場合があったり、同じようなことで言うと、寝たきりの親と知的障害の子供さん が生活されているケースとか、認知症の母親とリストラされた50代ぐらいの息子さんが 生活されているケースがあったり、DV被害の場合ですと、DV被害を持っている母親 と子供さんをどういうふうに支えるかということでは、複雑な制度を組み合わせていく という作業をどこが責任を持ってやるのかという部分では非常に動きにくいケースがあ ります。  時間が来てしまいましたので、あと地域でなかなか受け入れられにくいということで 言うと、排除されやすいケースですね。周りに対して迷惑を及ぼすような、例えば、ご み屋敷ですとか、騒音を出す人とか、テレビで出てくる世界だけかと思われがちですけ れども、宝塚市内にもいらっしゃいまして、近隣とうまくいかないケースというのは非 常にたくさんあります。周りが援助に入るというわけではなくて、どうやって追い出す かということを皆さん一生懸命考えられますから、どういうふうにそういうことを受け とめていただくかということは非常に難しい問題として出てきます。  それから、地域との関係を持つ余裕がなくなっていく事例です。介護の状況がだんだ ん悪くなれば、どんどん介護するために労力が割かれますから、周りの皆さんとお付き 合いをしていくということについては、労力を割くことが難しくなってどんどん孤立す る。周辺からとか専門機関から情報が必要になってくる度合いが高くなればなるほど、 どんどんそういう情報をとる能力がなくなっていく。もしくは近隣に対して手を差し伸 べる力がなくなっていくということが現実にやはり起きています。  それから、サービスが入ることで近隣との関係が切れていっているという話も現実に ありまして、我々はよく言うのですが、例えば、ヘルパーが買い物援助を行うと、これ まで声をかけてくれた近隣の人は声をかけなくなるわけですね。毎日、「買い物に行く けどどう?」という声かけをしていただいていたのが、ヘルパーが週3日訪問すれば別 に声をかける必要がなくなりますから声かけがなくなるわけです。老人会のお仲間が週 に1回訪問されて、「どうですか、お話ししましょうか?」ということで訪問されてい たのが、週に3日デイサービスに行くようになると、デイに行っているならいいかとい う話で足が遠のく。ご家族との関係でもそういうことが起こっていって、サービスが代 替で入ることで、精神的な支えになるような家族の足が遠のくということが現実に起き てきています。  そういうことで、制度がどんどん進めばそれに応じて生活が必ずしもしやすくなるか というと、そこに伴って出てくるような様々な細かな問題というのはどうしてもそのま まになって、それを解決していけるだけの力が地域や周りの家族がなければ、そこの部 分を積み残しただけでどんどん制度だけが先に行くという形が出てきているということ です。  あと不足する部分等々も言いたいことはいっぱいあるのですが、時間が来てしまいま した。すみません、また次の機会にお話しさせていただければと思います。 ○大橋座長   シンポジウムじゃないのであまり突っ込んだ質問をしてはいけないのかもしれません が、少し深めるために話を聞かせてほしいのですが。もう一度、人口がどのぐらいです か。 ○佐藤委員   人口22万人です。 ○大橋座長   22万人で7ブロックで20の小学校区。7ブロックというのは大体中学校区ですか。 ○佐藤委員   中学校区よりやや広い、昭和40年代の合併前の町村単位ぐらいになるのですが。 ○大橋座長   それで社協の方は7ブロックごとに地域推進員を置いているけれども、行政の方も同 じようにタイアップした計画になっているのですか。 ○佐藤委員   行政もサービスブロックとして7ブロックを想定していますので、いろんな資源等の 整備について7ブロックごとに行う形になっています。ただコミュニティを支援する枠 組みとして行政が7ブロックごとに拠点を出して人を置いているかというと、そこまで はちょっといっていないですけれども。 ○大橋座長   それから、今は高齢者の問題を中心に話をされましたけれども、例えば子育てだとか 障害を有している方々のサービスという意味では、その7ブロックの地域推進員の方は かなりご活躍いただいているわけですか。 ○佐藤委員   ええ。そういう意味では私どものコミュニティワーカーですね、地区担当者は総合的 に相談を受ける。例えば、包括支援センターはどうしても高齢者中心になりますので、 よろず相談的にいろんなことに対応する。社協としましても、例えば障害者の部分で言 いますと、自立生活支援センターという部署があって、障害者が1人でも地域の中で生 活していけるような支援をするための相談窓口なり具体的な対応なりをやっております ので、そういうところにつないで解決していくとか、他の機関と協働して解決するよう な形で対応させていただいております。 ○大橋座長   高齢者の場合にはその7ブロックに地域推進員がいて、それを受ける形での地域包括 支援センターがありますよね。障害を持っている方々の場合でも自立生活支援センター 等があって受けられますね。子供の場合はどこが受けるのですか。 ○佐藤委員   子供さんのケースの場合はやはり子ども家庭支援センターと一緒に動くという形で、 市役所と対応していくということになります。あとは、地域児童館が7ブロックごとに 配置されつつあり、そういう児童館との連携等も行っています。 ○大橋座長   もう一つすみません、福祉事務所は1カ所ですか。 ○佐藤委員   はい、1カ所です。 ○大橋座長   今いろいろ事例的にあげられたようなことについて、福祉事務所のソーシャルワーカ ーの方々が十分対応できる状況にあるとお考えでしょうか。 ○佐藤委員   複雑なケースを解決していくということであれば、話し合いの場をつくれば皆さん必 要な方が寄ってきて解決していくことが可能ですけれども、最初にお話ししましたよう な非常に軽い部分をどのように対応していくかということで、対応を考えられるかとい うとこれは制度ではなかなか難しい部分があります。そういうところについては、逆に 住民の皆さんと一緒に話し合う場を、地域の中につくっていっているところです。そう いうところで皆さんと一緒に解決を考えていくという形になると思います。 ○大橋座長   委員の皆さんに今後も深めていただきたいのは、従来はどちらかというと行政がやっ ていてその他社協の地域福祉みたいな捉え方をしていたけれども、今度のあり方という ものは、やや行政のあり方も含めて、行政の活動なり住民の活動のシステムをどういう ふうに横断的に再編成するかということも視野にあった方がいいのかなと、私は個人的 に思っているのです。そういう意味では、社協がやっている7ブロックの地域推進員と 地域包括支援センターの関係とか、障害者自立生活支援センターの関係とか、子供の問 題はどうだとか、福祉事務所の問題はどうだとか、少しウイングを広げながらあり方を 考えていただくとありがたいなと感じております。  とりあえずはよろしゅうございましょうか。それでは長谷川委員さん、今度は民生委 員・児童委員の立場からよろしくお願いいたします。 ○長谷川委員   おはようございます。よろしくお願いいたします。今年、民生委員・児童委員一斉改 選ということで、今各町内会・自治会を中心として一斉改選に向けての新しい推薦等が 行われているところです。私のいる横浜市は、民生委員・児童委員としましては4,420人 ほどの一応の定数があります。これは大体各町内会・自治会ごとで400世帯ぐらいに1人 程度になります。また、地区民児協が252ほどあります。  横浜といいますと港町という印象があるわけですが、私の今住んでいるところはちょ っと外れて川崎寄りで新横浜駅の付近です。新しいまちづくりがされておりまして、い わゆる港北ニュータウンという言葉がありますが、そういうところに住んでおります。 非常に若い区で平均年齢が35.7歳ぐらいです。行政区としても平成6年に分割いたしま して新しく再生になった行政区です。13年ほど前と今と人口を比べますと、当時は11万 人ぐらいだったのが、今は18万6,000人ということで非常に出入りの激しい中で、最終 的には月々500〜600人ぐらいずつ増えているようなところです。  そこで私たちの民生委員・児童委員活動を考えてみますと非常に大きな問題点が多々 あるわけでして、先ほど言いました一斉改選におきましても、月に一度の会議に出れば いいからとお願いされても、実際に中に入ってみますとそういうわけにもいきません。 そんなつもりじゃなかったよということで、横浜市でも3年ほど前の一斉改選の際には、 最初からスタートの段階で116人の欠員があったのですが、いまだに66人という欠員が 埋まらないでいるのが実情でございます。これもやはり、そんなつもりじゃなかったと いうこと、それと同時に今は個人情報のいろんな問題がありますから、やはり最後まで 責任というものがついて回りますと、早々簡単に受けるわけにもいかない。こういうこ とで、75歳定年制の関係もありますが、一斉改選により大体3分の1ぐらいが途中で変 わるということです。  そこでいろんな問題もあるのですが、まず住民意識が非常に希薄化しているというこ とが1点あげられるのではないかと思います。隣の人がどういう人かわからない。まし て救急車が停っても関心がない。関わりを持ちたくないという方が非常に多くなってい るのが今の実情であります。  それから、非常に呼び寄せ高齢者が多いということが言えるわけで、大きなマンショ ン等集合住宅で、単身赴任とかで部屋をそのまま空けてしまうのではということで、田 舎から親なり、あるいはお母さんだけを呼ぶということがあるわけです。我々民生委員 としましても、役所等を通して何号にこういう方がいるのでということで連絡を受けて も、オートロックですからそう簡単に入るわけにもいかない。このような問題も抱えて おりますし、そういうところに来られた方が、急に環境が変わるわけですから、体調を 崩されたり、いわゆる認知症に発展するような可能性も非常に高くなっているというこ とが言えます。  それからもう一つは、町内会・自治会への加入率が非常に低くなってきている。横浜 は平均で80%ぐらいですが、私たちのいるところでは13年ほど前は75%だったのです が、今現在は66%で、非常に町内会への加入率が低くなっている。やはりこういうこと にも関心が非常に乏しくなっているのだなという思いがいたします。  それから、特に我々が仕事をしていく上で一番問題になっているのが個人情報の関係 でして、このプライバシー保護をいかにどうするのかということです。我々も民生委員 の90周年をもとにしまして「災害時に一人も見逃さない運動」というものを展開してま いりましたが、全国的に行ったのですが、私たちの横浜では前は行政的に、いろいろな ひとり暮らしの方とか寝たきりの方とか母子家庭とか――表現は今変わっていますけれ ども、そういう名簿とか情報がどんどん入ってきたのですが、今は全くそういうことが ないわけですから、自分たちで歩いて探す。どういう方かという判断をしなければいけ ない。  そういうひとり暮らしとか寝たきりということはまあまあわかるにしても、障害を持 った方については非常にわかりづらい点があるわけでございますので、横浜市では、い ざ有事の際にはそこですべて名簿を出しますと言うのですが、そういうときに出された ってかえってパニックを起こしてしまって何もならないのではないか。事前にそういう ものをお互いに信頼関係の上に立って共有し合いながらやっていくことが、これからの 地域福祉の基本になってくるのではないかと私は思っております。  いずれにしましても民生委員の欠員問題が、そういう面も非常に幅広く大きなウエー トとしてあるということは、お互いに地域としては考えていかなければいけないし、ま た行政としても考えてもらいたいという思いがいたします。  いろいろと問題はあるのですが、5分という時間の中でかいつまんで申し上げました。 ○大橋座長   ありがとうございました。直近のデータがあるかどうか知りませんが、15年前ぐらい に全国民生委員・児童委員連合会で調査をしたときに、一般の民生委員さんで月に15日 ぐらい、会長さんだと月に25日も活動に出ているという大変驚くべき調査結果があるの ですが、長谷川委員さんの場合は月にどのくらい出ているのですか。 ○長谷川委員   私も半分以上は何らかの形でかかわっていますが、ただ本当の私自身の民生委員活動 ということではそんなでもないかもしれません。しかしながら、町内会からお呼びがか かるとか、町内会の行事にも民生委員として参加しなければならないという、周りから そういう位置づけがされていることを考えますと15日から20日ぐらいは当然出ているの かもしれません。 ○大橋座長   そういうデータは何かありますか。 ○藤崎地域福祉課長   資料3の11ページに民生委員の資料があります。現在13.2日ということです。 ○大橋座長   家庭の主婦のシャドーワークは随分論議になるけど、民生委員さんとか保護司さんの シャドーワークというのは大変なものでしょう。今23万人ぐらいいるんでしたっけ。22 万人ですか。22万人で13日として大変な資源ですよね。だけど社会的にはあまり認めて くれないのですけれども、私は、これがなかったら日本の社会は安定しないのではない かと思うのですが。 ○長谷川委員   ぜひ声を大にしてご指導いただきたいと思います。 ○中村局長   個別の施策について、例えば先ほどもお願いしましたけれども、資料2の暫定的な論 点の中で、既存の関係制度・施策について民生委員・児童委員などをあげておりますが、 それぞれについては我々の方でもテーマごとに詳しいデータは提出し、それはきちんと ご説明した上でディスカッションをしていただきたいと思いますので、いずれ民生委員 ・児童委員につきましても、何コマ目かでトピックとして集中的に議論していただきた いと思っております。 ○大橋座長   とりあえず今日は全般的にどういうところに問題があるのかということの論議ですか ら、やや浅く広くになってしまうかもしれませんが、お互いの共通理解を深めるという ことでご理解いただければと思います。  この資料3の6ページに隣近所の関係が出ていますが、横浜市の長谷川委員さんのと ころの状況は、感覚的にはこんなに親しく付き合っている人が42%もいるなんていう状 況ではないのですか。 ○長谷川委員   これは2つほど考え方があると思うんです。1つは、戸建住宅の地域といわゆるマン ションの多い地域とは全く違いますので、戸建住宅地域であればお互いに向こう三軒両 隣的な考え方があるものですから案外心配ないでしょうけれども、マンションあるいは 大型の集合住宅ですと、全く閉ざされた中での生活ということですから。 ○大橋座長   確かに孤独死の問題、孤立の問題は、集合住宅でかなり深刻な問題になっていますが、 やはりそうでしょうか。 ○長谷川委員   全くそのとおりですね。 ○大橋座長   ただ地域一般というのではなくて、住居形態を少し考えないとなかなか分析しにくい ということでしょうかね。ありがとうございました。  それでは続きまして、清原市長よろしくお願いします。 ○清原委員   皆様おはようございます。よろしくお願いいたします。私は平成15年、2003年の4月 30日から三鷹市長を務めておりまして、今年の4月に再選され2期目に入っております が、市長になる前は大学研究者で、特に障害者の情報バリアフリーの問題など地域に関 わる問題を研究しておりました。その私が市長になりましたその年、平成15年、2003年 に、前の市長のときから多くの市民の皆様に参加していただいて「三鷹市健康福祉総合 計画2010」が策定されました。私はその後の計画や、あるいは実践などに基づきまして、 いくつか問題提起をさせていただきます。  第1点目は、今回地域福祉ということをテーマに厚生労働省で研究会が設置された意 義についてです。「小人のざれごと」とは言わずに市長の意見も聴いていただく機会を与 えていただきましたことを大変嬉しく思っておりまして、なぜならば、今、社会福祉は 自助・共助・公助の特に共助をどのように地域社会の中で、少子長寿社会の中で実現し ていくかという大変重要な時期を迎えております。私たち自治体現場では「協働」と表 現しておりますけれども、その取り組みについて地域福祉という観点から省内では各局 横断的に、地域でもそれぞれの違いを超えて共通のテーマを明らかにしながらより望ま しい国の支援体制を考えていただくこの研究会の意義は、私は大変現実的であり、そし て国民、市民の感覚に近いものだと思います。  その意義を踏まえながら、私もまだ2期目の新人の市長でございますけれども、取り 組みの中の実感から具体的な例をご紹介して、その可能性について問題提起をさせてい ただきます。  まず第1点目は、今市民の皆様との協働というのは、計画づくりから実践へと移行し つつあります。まず三鷹市のことをご紹介いたしますと、偶然にも宝塚市さんと規模的 には大変類似しているのですが、人口は外国籍市民の皆様を含めて約17万5,000人、市 域は狭く16.5k平方メートルそして高齢化率は約19%というところで、都心に近い住宅都市として 昭和25年、1950年に市制施行されまして57年目でございます。  そうした自治体ですが、実はもう既に1970年代からいわゆるコミュニティ行政を推進 してきた地域でございまして、おおよそ中学校区に当たる7つのコミュニティ住区ごと に市民の皆様の提案による設計に基づいたコミュニティ・センターを建設し、それを住 民の皆様が管理、運営をしてきているという自治体です。そうした中で「三鷹市健康福 祉総合計画2010」の策定の最後に、私が市長になる公約として掲げました地域ケアの推 進についても鋭意ご検討いただきまして、それを重要課題としてまとめていただきまし た。  つまり、少子高齢化の進展や核家族化の進行による家族機能が変化する中で、独居高 齢者や高齢者のみの世帯が増加しています。また、子育て支援の孤立化が進み、脆弱化 した家族機能を支援するための地域コミュニティの果たす役割が再確認されます。その 中で、改めて地域コミュニティがどのように一人ひとりの市民と関わりあいながら少子 長寿化を支えていくかというコミュニティのケアが課題になりました。  そこで1970年代から推進してきたコミュニティ行政を基礎としつつ、社会福祉協議会 が主体となって市の全域で展開している「ほのぼのネット」と呼びますが、日常の見守 り活動を中心に地域に密着した活動を尊重し、これに参加していただいている民生委 員・児童委員さん――これは三鷹市からも三鷹市社会福祉委員として委嘱させていただ いておりますが、こうした地域に密着した取り組みにさらにNPOとかボランティア団 体、医療機関、高齢者の介護事業者等々を連携するネットワークを新たに生み出すとい うことが、この地域ケアの推進です。  そこで、理想を掲げるだけではなくて具体的な事例をつくり出していかなければいけ ないということで、平成16年度、2004年度から、私は「高齢者等地域ケアサポート推 進モデル事業」を開始いたしました。3年間モデル事業として1つのコミュニティ住区 で、今申し上げましたような連携の取り組みを実践していただき、検証していただき、 この3月に報告書もまとめていただきました。  私がこのモデル事業を推進していくに当たってお願いしたことは、まず第1点に、高 齢者だけではなくて障害者や子育て世代など、地域に暮らすすべての方々を対象に検討 していただきたいということ。2点目に、自治体主導ではなくボランティア、NPO等 を含めた地域住民、団体と、市との協働作業として進めるに当たっての課題を把握して いただきたいこと。3点目には、ネットワークされた協議会は単なる協議検討だけでは なくて、実際の課題解決に向けた活動や予防的機能を持った活動についても担っていた だくということをお願いいたしました。  そこで2点目ですが、このような計画とモデル事業を進めていただく中で、具体的な サービスが生まれてきました。1つは傾聴ボランティアの取り組みです。これは、当初 は市民の皆様は躊躇されたのですが、普通の人が何か役立つことはないかという問題提 起の中で、NPO法人と連携して「傾聴ボランティア」の養成講座を実施し、既に昨年 度53名の方が応募し全員修了し認定証を受けていただき、昨年度から実際の訪問活動や 施設活動をしてくださっています。  2点目には、コミュニティ・センターに「トークサロン」という日程を用意しまして、 ここには民生委員さんや相談員の方に来ていただいて、具体的に高齢者、障害者、子育 て世代の問題を把握し、それを具体的なサービスにつなぐという取り組みを地域でして いただいています。  さらに、今年の11月からオープンいたしますが「ちょこっとサービス」と命名しまし た。これは宝塚市さんも既に試みていらっしゃる、いわゆるすき間サービスです。例え ば、電球を換えるとか。ごみ出しは実は既に始めているのですけれども、軽易な家具の 移動、組み立てとか、干した布団の取り込みとか、台所や冷蔵庫の整理とか、いわゆる 介護保険のサービス等々に該当しないけれども、10分100円単位でお願いして、はじめ ようとしておりますが、こうしたサービスです。  さらには、三鷹市では子育て支援サービスとしてファミリーサポートという事業をし ておりまして、ボランティアをしたい人とボランティアを求めている人を結びつけるサ ービスもしておりますが、こうしたことを総合的に対応させながら細かい地域福祉のニ ーズにこたえていこうと考えています。  時間がまいりましたので、もう2つだけ簡潔につけ加えます。1つは、高齢者・障害 者の皆様が地域の福祉を求めることができるというのはゆとりのある証拠で、実は住み 続けたいのに住み続けられないという現状があります。ソーシャルインクルージョンや 精神障害者の地域回帰を支援するために、今年度、「高齢者・障害者の入居支援、居住 継続支援サービス」を本格的に開始いたしました。  さらにコミュニティを強くするためには、三鷹市は幸いにも7住区の住民協議会があ りますのと、100以上の町会・自治会が残っています。そこで改めて私は、市長になり まして17年度と18年度に町会・自治会の調査を徹底的にいたしまして、町会・自治会 を強化するための補助制度を拡充いたしました。今年度は集合住宅、マンションの方々 が町会に入っていただく加入促進と、マンションの管理組合が連携するための地域に出 ていく取り組みも、モデル事業として補助金を出すことといたしました。  典型的な都市型都市といいましょうか、住宅都市である三鷹市としては、地域福祉の 取り組みとほかの部門が取り組んでいる「災害時要支援者のモデル事業」とか、今申し 上げました入居支援、居住支援とか、コミュニティの強化策を総合的にしていくことが 必要だと考えております。したがいまして、厚生労働省の内部の連携だけでなく、他の 省庁との連携も視野に入れながらこの地域福祉研究会から発信していただければありが たいと考えております。以上です。 ○大橋座長   ありがとうございました。これからの地域福祉を考えると、従来のような地域コミュ ニティ型組織と、共通関心事で集まるアソシエーション型組織との関係をどうつくるか ということが一番大きな課題になってくると思います。三鷹市と同じように目黒区も19 70年代にコミュニティ構想を始めたのですが、結局目黒は住区協議会、コミュニティセ ンターをやめましたよね。三鷹は継続しているわけです。ほかの区のことを言ってはい けないのかもしれませんが、その違いはどこにあると思いますか。 ○清原委員   7つのコミュニティ・センターでは、いわゆる大きな願いは、古くから三鷹市に住ん でいる人と新しく三鷹市に転居した人がいかに融合、交流するかということを当初から 真剣に考えての取り組みでした。したがいまして運営等にも、新しく転居してきた方あ るいは退職者を積極的に受け入れたり、地域で子育て支援ですとか、今は小中一貫教育 をコミュニティ・スクール型として三鷹市は進めておりますので、そうした子育て世代、 保護者世代をやはり多く住民協議会の運営に、通年の委員でなくても事業のときの1日 だけの実行委員方式という形でかかわっていただくことで、住民協議会の運営の強化を 図ってきたということがあると思います。  ほかの区の事情はよくわかりませんが、三鷹市の場合には、やはり高齢化する役員が 多いということはほかの自治体と同じですが、常に子どもたち、あるいは子育て世代を 巻き込むような事業展開をしてきているということが大変特徴ではないかと考えていま す。 ○大橋座長   三鷹市の場合にはそういう活動がうまくいった1つは、社会教育が活発で住民の学習 というか、そのことが結果的に住民の民度を高めたような評価をしているのですが、そ う理解してよろしいのでしょうか。 ○清原委員   社会教育でも30年以上、総合コースといいまして、住民参加者が企画し、講師も依頼 し、通年でカリキュラム管理をするというような参加型の講座運営を重ねてきています。 そしてそういう方たちが、社会還元すべきだということで、自らの自己実現のためだけ でなくて、町会・自治会や住民協議会の役員を引き受けたり、そうでない場合にはボラ ンティア組織やNPO組織等をつくって、次の地域デビューをもたらすインセンティブ を果たしていただいているということが大変大きいと思います。  今後団塊の世代が大量退職してくるという2007年を迎えておりますので、入り口はい っぱいあった方がいい。いきなり地域福祉のボランティアになるということは難しいか もしれないけれども、今回の傾聴ボランティアの養成講座に多くの高学歴でボランティ ア未経験の方たちも参加してくださいまして、私としては、新たなるボランティア人材 育成を開いていく中で、地域福祉の担い手が増える可能性はたくさん潜在していると認 識しています。 ○大橋座長   あともう一つ、清原委員が言われなかったのですけれども、三鷹市は国の制度ではな い子ども家庭支援センターを人口17万5,000人で2カ所、1つはJRの駅の真ん前という 大変すぐれた実践をしているわけですが、この子ども家庭支援センターの位置づけは、 子育て全体との関わりではどうなのでしょうか。 ○清原委員   今三鷹市では、もちろん子育て支援の第一義的な課題は保育園待機児解消問題です。 これは公設民営の保育園などで、一生懸命国の補助金がカットされた中凌いでおります が、あわせて在宅で育児をされている保護者の皆様の悩みも深く、虐待や、あるいは育 児不安、発達障害の早期発見などのニーズが高まっています。そこで今ご紹介いただき ました子ども家庭支援センターについては国が取り組む前からさせていただいておりま すが、その中でおかげさまで在宅の育児支援が可能になり、あわせて児童相談所等も含 めて地域の機関の連携が強化され、要支援児童のネットワークもいち早く形式ではなく 実質的になされたということと、先ほどご紹介いたしましたファミリーサポート、つま り子育て支援に子育て経験のある方や専門家で退職された方などに参加していただく、 そういう機関にもなっていると思います。  今後ニーズが増える中、いかに支援者を増やしていくかということが課題でございま すけれども、これは繰り返しになりますが、市民の皆様には本当に力のある方がいっぱ い潜在していらっしゃるんです。働いていらっしゃる方でも、空いている時間に何かを したいというニーズがありまして、そうした経験を若いうちにしている方ほど熟年、高 齢になっても活躍していただけますし、ここが大事なポイントなんですが、自分が支援 されるとかサポートされることに対して照れがない。もう「共助」ですから、支援する ことだけに自分があるのではない、やがて高齢者になり支援が必要になる障害者になっ たときに、心を開いて支援を受けられる人を増やしていくということも地域福祉では大 事ではないかと思います。そういう意味で子育て支援は大変有力な、市民の皆様の心を フラットにする効果があると思っています。 ○大橋座長   ありがとうございました。次は木原委員ですが、住民活動の組織化あるいは住民の福 祉教育ということで一貫して活動されてきました。どうぞよろしくお願いいたします。 ○木原委員   効率的に時間を使いたいので、資料をお配りしました。「『支え合いマップ』づくり で見えてきた住民流・地域福祉活動、三大特性」というのを皆さんにお配りしました。  私はずっと現場、地域というか住民の方とずっと接してきて30年ぐらいになるのです が、そこで住民の方の動きが見えるための「住民の支え合いマップ」というものを開発 しまして、10年間ぐらいずっと住民の動きを見てきたのですが、ここで今日3つだけ、 住民ってこういうふうに動いているんだよということを紹介したいと思います。  1ページをごらんください。マップとは何かということが書いてあります。  2ページが、まず1番目ですけれども、我々は地域地域と言いますけれども、住民の 基本単位ってご近所なんですね。ご近所というのはどれぐらいかといいますと、50から 100世帯なんです。北陸に行くと30世帯ぐらいです。世話焼きさんなんかの顔の広い人 に会ってみると、やはり50ぐらいしかわからないと言っていますね。だから我々は地域 と言うと「小学校区」と言いますけれども、もっと小さなご近所というところで人々が 触れ合っているんだということが見えてきました。その中に何人か世話焼きさんがいま して、地域を引っ張っているという状態です。  3ページ。最近柏崎市の地震でもわかってきたことは、ご近所力がどれぐらいあった かによって災害の対応が違ってきているということです。防犯もそうですけれども、泥 棒に聞くと、やはり地域の目があると絶対に入れないということで、小さなご近所を中 心とした防犯、防災、孤独死対策はものすごく効果があるのではないかということです。 これは私が愛知県の安城市で仕掛けているのですけれども、町内会で支援者を要援護者 ごとに2〜3名探しているのですけれども、それだけでは安心ではないということで、 こういう小さなご近所の中の支援者が束になって要援護者にかかわればいいだろうとな りました。  4ページ。ご近所には意外な力があるということがあります。  5ページ。ご近所に我々が入るルールというものがあるということ。  6ページ。私は長野県須坂市にかかわっているのですが、ケアマネ、ヘルパー、デイ サービス等が利用者が住んでいるご近所をまとめて支援していこうと、ご近所支援チー ムみたいなものをつくって動きはじめました。いわゆるケースのケアではなくてご近所 をまとめて力をつけさせていくというやり方をとり始めたのです。ということで、ご近 所って意外といいと。  そうすると7ページのように、地域密着ではなくてご近所密着を基本にしないと、住 民の力というのは引き出せないのではないかということがわかってきました。  8ページ。川崎市宮前区に「すずの会」という優秀なグループがありまして、このお ばちゃんたちと関わっているのですけれども、こういうふうにやるんですね。真ん中に 田中さんという方がいますね。これが世話焼きですけれども、この方が地域の気になる 方をどうやるかというと、ご近所サロンを開くんです。サロンを開きながら、この黒い 印の人が皆要援護者ですけれども、サロンのメンバーの助けを仕掛けていって、要介護 者は「すずの会」が受け持つか地域包括支援センターなどに手渡す。今度は左の方に三 村さんにサロンをつくっていただいて、ここに集まってきた要援護者にも関わっていく。 今度は上の方に三沢さんという世話焼きをつかまえましたので、このサロンでまた要援 護者をつかまえていく。  このようにしてご近所の助け合いを仕掛けながら要介護は地域包括支援センターに渡 していくという、こういういい役割を果たしているんです。川崎市でもご近所をつくれ るんですね。  9ページ。2番目ですけれども、ご近所での活動の主役は世話焼きさんですね。この 地図は西東京市ですけれども、たまたまマップをつくったらつかまえたおばちゃんが世 話焼きでして、大体ひとり暮らしの老人全部にかかわっていましたね。彼女がわかる範 囲がこれぐらいなんです。最近5人いのちのあぶない人を救ったよと言うんだからすご いですけど、大体世話焼きって10数名の面倒を見ていますね。おばちゃんが亡くなった らどうするのと聞いたら、今4人の若い世話焼きを見つけたので英才教育をしていると 言うんです。地域はつまり天性主義なんですね。資格や肩書きはだめということです、 厳しいけどね。  10ページ。世話焼きさんって大体こういう能力を全部持っているんですね。これが本 当のプロじゃないか。世話焼きというのはほとんど女性です。嫌なこと言いますけれど も、男性支配の小地域福祉というのはなかなか機能しにくいと思いますけれどもね。ど うですか。  次に11ページですけれども、こうやって何気なく探ってみると、世話焼きさんがほと んど要援護者に分担して関わっています。社協もびっくり。  12ページ。7つ8つのご近所を束ねたところに超大物世話焼きがいます。やはりニー ズがわかるのは自分のご近所だけなんです。ほかのところは、ニーズがわかる人をつか まえて、その人に連絡させる。自身で関われなかったらどうするかというと、それぞれ そこに小物の世話焼きをつかまえていてその世話焼きにやらせている。こういう超大物 世話焼きの後ろにいて仕掛ける人が欲しいですね。  14ページに行きます。僕が何十年関わってわかってきたのは、地域というのは当事者 が主役ということです。担い手主役ではなくて当事者が主役なんです。この14ページは、 サービスの枠外の資源は私自身が探すということで、実際うまく探しているんですね。 こういうやり方が当事者の本当の願いなんです。セルフケアマネジメントと言いますけ れども。  15ページ。民生委員さんがひとり暮らし老人の見回りボランティアを探そうと思った らなかなか見つからない。じゃあ本人はどうしているのかと思ったら、みんな自分で誰 かを見込んでいたんですね。これでいいじゃないかということなんです。  16ページ。これはものすごい引きこもりといいますか助けられ下手さんですけれども、 (神奈川県の綾瀬市)、やはりマップで探すとこの人とつながっている人を3人見つかり ましたね。どんなに引きこもりでも誰かを見込んでいる。その人を通せば絶対につなが るんです。だからこういうふうに丁寧にマップで探していかないとだめということです。  17ページは、アンケートで「足元で困っている人がいたらあなたはどうしますか」と 聞くとで「頼まれなくてもかかわる」が2割、「頼まれたらかかわる」が7割。9割は助 けてくれる。確かに助けられ上手さんはそう言っているんです。じゃあなぜ助け合いが 始まらないかというと、右のグラフのとおりです。皆さんも同じだと思いますが、「助け て!」と言える人は5%ぐらいなんです。ということは何が必要か。「助けを求める教育」 をやらなきゃいけないのに、私たちは福祉教育でボランティア教育ばかりしている。そ こが大きな間違いじゃなかったかなと思うんですけどね。  18ページ。我々は担い手主導の福祉をつくることに慣れていますけれども、住民はサ ービスを受ける側から福祉をつくりたいんです。  次の19ページ。地域はいわゆる「助けられる一方」の方というのはいないんです。重 度の要介護者をつかまえてみたら、ものすごい世話焼きだったんです。必ず両方持って いる。だからあまり「ケース」と言ってはいけないですね。ご近所内での住民が受け手 になったり担い手になる。そのダイナミックな関わり合いの全体を「ケース」と言うべ きかもしれませんね。  次の20ページ。こういう住民の力を生かす人と生かせない人がいる。超世話焼きに張 りついている民生委員がいますね。世話焼きは全部は解決できないんです。その解決で きないものを民生委員が拾ってあげて関係機関につなげる。この民生委員さんの役をや る人が地域にはいない。またこの民生委員さんに張りついて、この人の問題をもっと一 般化しいてくという、つまり民生委員の後ろにいるべき人もいない。ここのところが大 きなポイントです。  21ページは、これを主任児童委員がやっているマップです。主任児童委員が、地域で 子供に関わっている、つまり子供に見込まれている大人たちを見つけては応援している。 この主任児童委員の後ろにいるべき人がまだいない。ここのところが大きな問題です。  22ページ。例えば自治会の福祉委員会などは、足元のご近所から生まれてくるニーズ に全く関心がない。自分たちで何とかパトロールとかやっているのですけれども、彼ら に足元のニーズをぶつけても無反応であるという、ここをどうするかというのを私は今 悩んでいるんです。  23ページ。ある地区でマップを作ってみたらみんなデイサービスに行っていた。だか ら地区社協は何をしたらいいかわからない、手持ちぶさた。実はデイサービスの利用者 と地区社協の人が右の図のように、みんなご近所ごとにまとまって生きているんです。 これを生かしていくようにしないと。住民の力を全く生かしていないですね。介護保険 制度が悪いのではなくて、これを生かすことをやらないとみんなこうなっちゃう。  最後は24ページ。これはご近所内での人々の付き合いを線で結んだんですけれども、 さっき宝塚市社協の方が言ったとおり、要援護者は切られてしまっている。サービスが 入ると住民は手を切る。  そういうことで、住民の営みをずっと見てきましたけれども、もっともっと丁寧に見 て、そこから仕掛け方を考えていくという研究がもっと必要じゃないかと思います。 ○大橋座長   ありがとうございました。本当に30年の実践の裏づけがあって大変すごいのですがい くつか。1つは先ほど長谷川委員さんが、プライバシー、個人情報の問題でなかなか入 れない、だけど安城市とか、須坂市は地方の農村地域的なところがある、でも川崎市で もやれるじゃないかということですが、この辺のところはどうですか。 ○木原委員   我々がマップをつくるときは、行政の情報は要らない。あるとおっかないからね。つ まりご近所の中でおばちゃんたち4〜5人集めたら全部わかっている。あの人は要介護 2とか3とかみんなわかっていますよ。だから民生委員さんも黙っていていいと僕は言 っている。井戸端会議をやるんです。その結果を地図に載せる。載せたものは情報にな るからきちんとやる。それだけです。みんな情報は要らないって言いますよ。 ○大橋座長   こういうやり方は、例えば兵庫県の宍粟市のヤマモトさんなんかもこういう住宅地図 を使いながらニーズキャッチをしてつなげていくという実践をやっていますけれども、 まさにそういうことなのでしょうね。 ○木原委員   ニーズだけじゃないですね。誰がどうかかわっているかも全部載せていく。 ○大橋座長   ソーシャルサポート・ネットワークを書いていくということですね。もう一つ、後ろ にいて仕掛ける人が見えないと。木原先生が仕掛けているわけだけれども、例えば社協 の職員だとか行政の職員だとかどこかでそういう人がいないといけない。だから一般化 するためにはそこのシステムをどうつくるかが今度の研究会の1つの大きな課題なわけ ですし、概算要求で来年度コミュニティ・ソーシャルワーカー、社会福祉士を中学校区 に配属するというのが始まるというので大変期待しているのですが、どうしたらいいで すか。 ○木原委員  申しわけないけど、若い社会福祉士では無理ですね。というのは、この世話焼きさんた ちって相当優秀なんですよ。この後ろにいてこの人をうまく使うというのは、それだけ の器量がないとだめです。それが誰かというと、例えば、「すずの会」が川崎市宮前区 の2万5,000人の面倒を見ている。今、この人を神奈川県とか研究者が関わって研究し ているんです。そういう腕を持った人がいる。これをうまく掘り起こすよりしょうがな いなと。これは養成してもしょうがないんじゃないかと思うんですけどね。 ○大橋座長   天性主義と言われると大学が要らないと言われてしまいそうで困ってしまうわけです が、佐藤さん、聴いていてどうでしたか。少し感想も含めて。 ○佐藤委員   仕掛けるところに社協がいないと具合が悪いと思ってはいるのですけれども、言われ るように、今のところコミュニティワークはきちっとした形の養成プログラムが確立さ れておらず、ワーカーの感性みたいなところに話がなってしまうんですね。 そういう意味では、どういう要素でそういうことができていくのか、どういう要素が必 要なのか、どういう訓練が必要なのかというところが出てこないと一般化できないと思 うんです。  うちの中でもコミュニティワーカーの養成プログラムを今やっているのですが、今ま では要するに100点のワーカー――全国的にもいますよね、だれだれと名前が出てくる ようなワーカーがいて、そういうワーカーを何とか養成しようということで一生懸命考 えていたのですが、そういう人間を例えば宝塚市内で10人20人そろえるというのは非 常に難しい。そういうことだったら75点のワーカーでやれる仕組みなり仕掛けを考えら れないかということが今の我々のテーマで、何とか75点のワーカーでそういうことが進 めていけるようなプログラムをつくっていけないかというのが我々の今の取り組みです。 ○大橋座長   これから大きな検討課題の1つになるわけで、後ろにいて仕掛ける人をどれだけ標準 的に育てられるか、どういうふうに配属するかということになると思いますが。時間の 関係で、何かありますか、いいですか。 ○木原委員   この2万5,000人の面倒を見ている女性がいるんですけど、どういう経歴の人かという と、両親の重介護をやった。それを地域のみんなと一緒にやってものすごく勉強したら しいね。そこから、難ケースはみんなこっちに持ってこいと地域包括支援センターに言 うくらいになった。そういう力をつけちゃった。彼らを私たちが磨いていくとすごく光 る、もっと光る。だから、そういう「発掘」とか、そこから考えていかないと、養成と か研修になじまない部分があるのです。 ○大橋座長   ありがとうございました。なかなか大きな課題をいただきました。それでは和田委員 さん、ずっとやってきて今のことも含めてお話しいただければと思います。 ○和田委員   最初に、地域で問題になっている課題ということで、今までの経験の中で思うのは、 コミュニケーションが非常に難しい人、例えばなかなか話ができないとか、その人が持っ ている障害も関係するのですけれども、そういう人たちというのはなかなか地域で対応 が難しい。それから、セルフネグレクトみたいに自分で自分の生活を壊していくタイプ の人というのが結構今増えていて、こういう人たちはなかなか対応が難しい。それから もう一つは、自覚とか動機がない人たちというのがかなりいらっしゃるのではないかと 思うのですが、例えば虐待をしていても自分は虐待をしていると全然思っていないよう なタイプの人たちが広がってきていて、こういう従来の考え方ではなかなか対応が難し いという人たちをどうするのかということが1つあるのではないかと思っています。  それから2番目は、地域で暮らしていく上で必要なことで考えると、例えばお医者さ んにかかるときは、かかりつけ医がいていろんな相談をできてそこから専門医につない でもらったり、もう大丈夫だよとか、その人の体の状態をよく知っているというのがあ るのですが、ソーシャルワークという機能も地域の中でそういう主治医のような形でず っと相談できる、そして自分のいろんな今までの経過も知っているような仕組みを考え ていくことがこれから必要になってくるのではないか。  密着型のサービスとかいろんなものが出てきても、さっきから出ているように非常に 複雑な内容が同時に進んでいってどうしていいかわからない。それぞれ専門職がいるけ れども、その人のことを全体でよく見て対応を考えていくとか、あるいはインフォーマ ルなご近所の底力も含めてどうやっていったらいいかということを考えるような仕組み づくりをもっと本格化しないと、サービスを整備するだけではうまくいかないのではな いかと感じています。  3番目は、実際にこれから住民の活動を広げていく上でネックになっているのではな いかと思っていますのは、自治体が今かなり清原市長がおっしゃったようにコミュニテ ィというところに注目するようになってきていますけれども、行政の計画づくりなどに 参加しますと、コミュニティ政策のつくっているエリアと町づくりのためのエリアが違 うし、福祉の中でも、地域包括支援センターのエリアと従来から進めてきた福祉のエリ アが違うとか、社協の計画のエリアが違うとかですね。  全部合わせろというわけではないですけれども、どういう地域をみんなでつくってい くのか。例えば、まちづくりの計画と福祉は今非常に関係してきているということを考 えていくと、あるいは地域の住民が一生懸命つくっている地域づくりの中に突然コミュ ニティ政策が入ってきてエリアが全然違うなんていうと、非常に混乱してしまうわけで す。そういうエリアの問題についてはもっと考えていく必要があるし、よく議論をして、 いくつか のものは重なってもいいし、エリアが違うものがあってもいいのですが、みんなで合意 がある程度図られて、それで進めることができるともっと住民の力を発揮できるのでは ないかと思っています。  それで5分ですね。以上です。 ○大橋座長   多分これから論議をしなければならないエリア設定の問題だとか、やや継続的な支援 のあり方をどう考えるかということかと思います。小林委員さんよろしくお願いします。 ○小林委員   論点メモで話すようにと言われたものに若干沿いながらお話ししたいと思います。  まず第1点ですけれども、今までのご議論にも出ていましたけれども、地域でいろん な問題が起きるときに、どこの地域で起きているかという木原委員がおっしゃったマッ ピングが非常に重要だと思うんです。例えば孤独死のデータをいただきましたけれども、 どこでこれが起きているのか。例えば先ほどの集合住宅かどうかというような、そうい うデータがあるといいのではないかと思います。  2番目ですが、孤独化とか孤立化の問題ですけれども、これは、私は今後の課題と関 連づけますと、中心は男性問題ではないかと思っています。地域での男性介護をみると 2つタイプがありまして、一方では非常に計画的にきちきちとやっているタイプの人が います。 他方で、やはり日常生活がうまく組み立てられない男性がいます。よく食事の問題で、 食事サービスが必要、いや食事サービスじゃなくて調理教室に行った方がいいのではな いかという話があるのですが、その前に日常生活がどういうふうに組み立てられている かというところが問題なのではないか。家事というのは毎日の規則性を持って行われて いるわけですけれども、どうも男性がやりますと家の中での生活をどういうふうに組み 立てるかというところが弱いのではないかと思います。したがって、食事の問題も含め て例えば男性で1人になった場合に、日常生活がどういうふうに組み立てられているか というところが1つの視点になるのではないかと思います。  関連いたしまして、最近食事サービスの研究を学生と一緒にやったのですけれども、 食事サービスの利用というのは、決して身体が弱くなったから利用するだけではないん です。ひとり暮らしになりますと食事サービスの方が経済的だという考え方があります。 いろいろなものを買ってきてつくるというのは大変なことですね。そこで経済的な面が まず第一にあります。それから体が弱くなって火を使うのが恐い。もう一つは習慣性の 問題ですね。今まで食事をつくったことがない、やったことがない、だから嫌だ。この 場合の支援には総合的な把握が必要なので、生活が地域で自立するということの意味を 考えた方がいいのではないか。  あわせて家族との関係を見てみますと、地域と家族の間にはなかなか難しい問題があ ります。さっきどなたかがお話ししていらっしゃいましたが、家族がいると地域が関わ らない。家族の方でも、例えばサービスが入ると親族は関わらないというような問題が あります。  おもしろかったのは、再び食事サービスを例にとると、異世帯で住む家で配食を利用 しながら1階と2階で全然別の食事をするということになります。もっとおもしろいの は、食事サービスをとって一緒に食事をする。これはなぜだろうかという話になりまし て、やはり若い世代の食事と高齢者の世代の食事が違うのではないかということになり ました。このように家族の関係は、同居の場合ですら多様性があるのではないか。こう いうことをサービスの側から見ていくのが大切なことではないかと思います。  3番目4番目あたりですけれども、サービスというのは総合的なものでありまして、 ただ特定のサービスの目的を達成するだけではなく、それが家族、地域に入りますとい ろんな機能を持つことになります。見守りとかいろんな機能を持つことになりますので、 サービスの総合性ということを考える必要があるだろうと思います。  例えば、1つはカギの問題。自治会の会長さんが住民からカギを預かりますと、ずっ と持っていなければいけないのでどこかに行けなくなるとか、旅行に行けなくなるなん ていう話を聞きます。この場合、生活の持っている総合性をどこがキャッチしていくか ということが多分問題なのではないかと思います。  いずれにしましても、地域というのはボランティアや有償型をもう一回見直した方が いいかなと思います。さっき「ちょこっとサービス」とおっしゃっていましたけれども、 これは有償制ですね。サービスをうまく使うという志向をどのように考えるか。いろい ろなサービスの仕組みが考えられると思います。  あとは、このように地域ないしは先ほどのブロックとかで組み立てていくか。これは これからの課題だと思いますので、この研究会で進めていただければいいのではないか と思います。以上です。 ○大橋座長   ありがとうございました。それでは三本松さん、ボランティア論とかソーシャル・キャ ピタル論で少しお話をいただけますか。 ○三本松委員   私は、もともと社会学なのですが、地域研究と福祉との接点というところでずっと研 究をしてまいりました。今使われる言葉で言いますとソーシャル・エクスクルージョン、 社会的排除というような観点での研究を進めてきています。これがそれこそ福祉の課題 と言えるかどうかというのは議論があるところかと思いますけれども、今やっているも のは、外国人労働者の人たちにかかわる問題です。  ご存じのように外国人労働者の方々、特に日系ブラジルの方々はかなりの数の人たち が日本に定住化しています。彼らは家族も一緒に住んでいます。そこに日本の人と同じ ような生活問題、生活課題を抱えながら暮らしていらっしゃる。それから問題面という ところでは、よく彼らの生活マナーの問題が強調されますけれども、今申し上げました ように日常的な生活を営んでいる中で、彼らも生活者として保育や医療の問題を抱えて いる。それからDVの問題なども出てきています。ちょっと違う視点ですけれども児童 労働の問題なども聞きます。  彼らのそういう生活を見ていきますと、労働条件に規定されながらいろんな課題が複 合化している。この複合性というところに1つの特徴があるのではないかと思いますが、 またここから逆に、今日いろいろお話を伺っていても、福祉の問題を考えていく手がか りが出てくるのではないかと思います。  私がやってきましたもう一つの研究、論点のところで言うと、地域でなかなか受け入 れにくい問題というところですけれども、20年近く前の問題ですけれども、社会福祉施 設をつくろうとすると地域から排除される。ここにはつくってくれるなと言われる問題 です。今申しましたように20年ぐらい前からずっと見てきているのですけれども、いま だに基本形は変わっていないと思っています。あるいは、むしろ排除する仕方はうまく なってきているのではないかとさえ思うところがあります。  ただ、その研究の中で我々が得てきたことは、それをコンフリクトと我々は呼びまし たけれども、コンフリクトが生じることは必ずしも悪いことではないということです。 というのは、先ほどの皆さんのお話の中にもありましたように、コンフリクトを解決し ていく中でやはり学びというものがある。反対している人たちも、なぜ自分たちはこれ を反対しているのかというところから学んでいく、そして変わっていくという側面が見 られます。そういう意味では、コンフリクトというのを必ずしも避ける必要はないので はないか。  新しい福祉の課題を考えていくときに、まだまだ我々が気づいていないいろいろな問 題があるのではないかと思います。特に少数者の問題。それなりに注目されてきていま すけれども、お父さんが自殺された自死遺児の問題ですね。自死遺児への支援、あるい は難病家族。これは少数者ゆえに見えにくい問題です。でも、例えば地域の人がそうい う問題を理解して支援してくだされば随分違っていく、生活のしやすさというのが違っ てくるのではないか。こういう問題のもう一つの背景には、やはり差別とか偏見という 問題がありますので、そういうことにも取り組んでいく必要があるのではないかと思い ます。  最後にしますが、やはりこういう問題をいろいろ考えてきますと、それぞれの地域に 経験を通していろいろな蓄積というものがあるのではないかと思います。これも流行の 言葉で言えばソーシャル・キャピタルなんていう言葉になるかと思いますけれども、経 験を通して地域で重ねてきた知恵というもの。前に内閣府の仕事でソーシャル・キャピ タルの調査をしたことがあるのですが、そこでもNHKでやっている「ご近所の底力」 というのを取り上げて、どんなことが課題になっているかということをちょっと勉強し たこともありますけれども、そういったものを通して学んでいくことも大事かと思いま す。 ○大橋座長   ありがとうございました。それでは今田委員さん、よろしくお願いします。 ○今田委員   今田です。そんなに僕は地域福祉を専門にやっているわけではないのですけれども、 今日いろいろお聴かせいただいて、ああすごいんだなと思って感動しており ました。  4〜5点コメントさせていただきたいと思いますが、やはり一番地域福祉で問題にな っている原点は、旧来の個人と社会をつなぐ中間集団がこの20〜30年の間に解体させら れてきた。ここが一番大きな問題で、そうすると個人は何かあるともう国に頼るしかな い。そういう形で福祉みたいなものがなされてきて、そのツケが回ってきて、大きな政 府ではとてもない袖は振れないよとなってくると逆にカットカットという流れがあって、 そして、じゃあこれは大変だというので中間集団を復活させなきゃいけない。昔の町内 会・自治会というのも形骸化していたのですが、最近はもう一つの新しい中間集団のボ ランティア団体とかNPOが出てきて、この新しい中間集団と旧中間集団がうまい連携 関係をつくっていけばコミュニティといいますか共同性というものができ上がってきて 支え合う。国がかなりのところを手を引くと言っているのだから、やむなくせざるを得 ない面もあると思いますけれどもね。  やはり基本的には近代社会、特にこの90年代以降の新自由主義の政策で効率化と市場 競争の圧力がかかって、個人の自己責任、自己決定の論理がかなり強烈に言われてきて、 人とのつながりが薄らいでいった。私は、連帯と信頼をつくることは福祉だと思ってい るんです。さっき、ひとりぼっちで寂しくという話がありましたけれども、それはやは り連帯と相互の信頼関係が失われているからそういうふうになっているのであって、福 祉は何もお金で再分配してサービスを分かち与えるだけではなくて、生きる力を各人が 地域の中で持てるようにするというのは広い意味での福祉だと思っています。連帯なん ていうのは先ほどおっしゃったソーシャル・キャピタルの1つの大きな要因ですけれど も、これがかなり崩れているのでこれを復活させるという施策がとても大事。  大体自由主義でやったら危害原理ぐらいしかない。人に迷惑をかけない限り何をやっ たっていいんだよという、ちょっと素朴ですけれどもそういう論理がありますが、それ ではやはりだめで、お互いに気遣い合って応答し合う、応え合うという仕組みがきちん とでき上がらないといけないというのが1点です。  それから、今日は支援という言葉がよく出てきました。私は10年前にみんなで支援学 という研究会をつくったんです。支援ってそんなに簡単じゃないんです。助けてあげれ ばいいという発想で支援をやると必ず失敗するので、支援のための条件等々が出てくる。 その当時、全国の市町村に生活支援課があるかどうか調べたんです。ないんです。10年 前ですよ。係ぐらいなら何かあった。でも最近は随分そういう名前がぽつぽつと出だし てきて、ほとんどは住民管理課みたいな発想で、住民を管理するのが地方自治体の市役 所その他で、大分最近変わってきて支援課的な発想になっている。これはとてもいいこ とだと思います。支援することが大事。そのためには市民とか住民をエンパワーメント するという、そのためにいろんな情報とかノウハウを提供してあげる。あの市役所に行 けば、こんなことをしたいんだけどと言ったら、情報提供してくれる。こんなことがで きますよ、こういうところに申請すれば助成が受けられるかもしれませんよ、というこ とを言ってくれればみんな助かってありがたい存在だと思うようになるのではないかと いう感じがします。  それからもう一つ福祉のあり方も、ブレア政権の第三の道じゃないですが、ゆりかご から墓場までの手厚い福祉と、自助で自分で勝手に調達しなさいという、この2つの中 間をねらって第三の道というのが出てきたのですが、要するに救済だけ、助けてあげる だけが福祉ではなくて、いろんな事柄にみずからリスクに挑戦することもとても大事と いう発想の延長――ちょっとあれば折衷みたいなのがありましたけれども、生活リスク に対してどうマネジメントするかという発想が今後の福祉にとってはとても大事なので はないかと思いますし、やはり生活リスクという観点から見てそれをどうマネジメント するかという、そのノウハウをしっかりと地域社会の中でつくり上げていく。  大体リスクって今幾つ、どんな生活リスクがどこにどれぐらいあるか。昔は生活の質 の指標をやっていたのですけれども、生活リスク指標をきちんと定式化してアセスメン トして、それをなくすような、うまく管理していくようなことも1つの福祉の大きな課 題ではないか。  やはり身近な問題として、私など17〜18年ぐらい前は新座という田舎に住んでいまし たが、夜11時ごろバスに乗って家まで5分ぐらい歩いて帰っても怖くなかった。今は引 っ越して都心に来ましたけれども、去年引っ越してきましたが、この7〜8年ぐらい夜 10時過ぎて街灯が消えて、住宅街を通って自分の家まで行くのは怖い。この治安の悪さ というのも、ぎすぎすした人間関係が出て、成果を上げなければやっていけないという 圧力がかかり過ぎて、それで負け組の方はおやじ狩りみたいなことまでやり出すという 感じになってきていますので。  基本はやはり、単なる分配、お金で片づけるというのではなくて、地域の人々の総合 支援力ということ。これはこれで随分なされているようなお話を聞きましたので、共助 ということですね。自助か公助ではなくて共助をどうつくり上げて育成するか、支援し ていくか、リスクをマネジメントしていくノウハウをどうするか、そして連帯と信頼関 係をどう取り戻すか、この辺が遠回りのようで即効薬ではないのだけれども地域の福祉 にとってとても重要な課題ではないかと思います。  それから、アマルティア・センというノーベル賞をもらった方が、あの人は昔リベラ ル派だったのですが、リベラルパラドックスといってパラドックスがあるからだめだと 言って福祉のことに関してケーパビリティという概念。10個の生活領域でケーパブルだ から何々ができるという、例えば障害者は自分がやろうとすることをきちんとできる。 そういう能力を培うし、設備、施設を充実させることが大事で、この人は障害者何級だ から補助金を幾らつけるという問題ではない。やはり人間として生活していくためにい くつかあるのですが、10個ぐらいのケーパビリティをリストアップしています。そうい うことがきちんとできるようにする。それはすべてお金で解決できるとは限らない。そ ういう発想の、お金で解決できない問題を考えることも福祉。もちろんそういう流れに なってきていると思いますけれども、ますますそういう方向でやっていったらいいので はないか。  それから最後に一言、NPOとかボランティアが阪神大震災以来日本でも、神のミッ ションじゃなくて自己実現のためにという感じで盛んになってきています。そういう福 祉的なサービスも随分やるようになってきました。ただ、政府と連携関係と言われてい るけれども、ぜひ政府の肩がわりをして紐付きでやっているというイメージにならない ようにやらないといけないのではないか。ボランティアの失敗ということもあって、お 金はない、ノウハウも素人だからあまり知らない、いろんな問題を抱えていますので、 行政も政府もいろいろ失敗し、市場も失敗がある、ボランティアだって失敗があるので、 この3つがうまく失敗を補い合うような形の連携関係を上手につくっていくことが、特 に地域の福祉の領域では大事ではないかと思っています。  ちょっと抽象的過ぎますが、以上のような意見です。 ○大橋座長   それでは最後になりましたが、榊原委員さんよろしくお願いします。 ○榊原委員   読売新聞の榊原と申します。ここまで皆さんのお話を伺ってきて、実はもうそれぞれ の方に、それについては私もそう思いますとか、いろいろ申し上げたいなと刺激される 点が多々あったのですけれども、まずは自己紹介を兼ねて自分が思っている ことをお話しさせていただきたいと思います。  記者生活がちょうど20年ぐらいになるのですけれども、そのほぼ半分ぐらいを中央省 庁や政治政党の取材に割いてきました。2年前から今の、暮らしに密着した生活情報部 というところの記者をしています。その前段のところではマクロの政策を、社会保障政 策を含めていろいろ勉強しながら取材をさせてもらっていたという中で、例えば橋本行 革と当時言われた中央省庁の改革なども担当して、どうも明治維新以来日本がつくって きた国の体制の根幹が今ものすごく行き詰まっているなということを、いろいろなとこ ろで実感することがありました。  その1つが中央省庁の組織体制の見直し。中央省庁、国全体をどういうふうに導いて いくかという政策をどうつくっていくかの体制が制度疲労を起こしているというのは、 もう国家の根幹のあり方を問うているというところを如実にあらわしていたわけで、そ ういうところからも非常にさまざまな点で転換が求められているということを実感し、 その中で今起きている社会保障の様々な課題も転換を求められていると理解しています。  10年前に出産しまして、それまでは24時間好きなだけ働くという仕事大好き人間だ ったのですけれども、泣く泣く地域に戻り、子育てもしてという生活になった結果、久 しぶりに地域ということころで時間を過ごすようになって、私は三重県の田舎町の育ち でがき連中とわーっと野山を駆けめぐって遊んでいた世代ですけれども、自分の子育て をし始めて、自分がイメージしていた地域というものがどこにもないということに愕然 としたことがあります。  10年前なので子育て支援というものもまだあまりなかった。東京という大都市の近郊 であったということもあったと思いますが、あまりの社会の様変わりというものを強烈 に実感したということがあります。今でも記事の中で少子化を含めいろいろな問題が起 きるときに「地域の力が落ちているからである」みたいなことを指摘させてもらうこと もあるのですけれども「地域の力が落ちている」と書いたところで、一体それは誰が何 をすればいいのかということを何も示唆していない。そういうことを指摘したところで、 それは私の問題だ、何とかしようと思う人は、どこにも誰もいないというところで、非 常に虚しさと空回り感を感じながら来ました。  地域の中で1人の母親として、親として子供を育てていくには地域の助けが切実に必 要で、つながりをつくるところも子育てと同時にしながら進めていくという中で、今回 の研究会のテーマ、地域福祉のあり方というものについても考えてきました。まず最初 に2つ申し上げておきたいのが、今は、20世紀に常識と思ってきたものをとにかく見直 さなければいけないところにきている。それは福祉も含め、価値観の大きな転換が求め られているときであろうということが1つです。  それが誰にもわかる形で示されているのが人口構造の転換だと思います。今日配布さ れました資料の15ページにもありますけれども、皆さんご存じのとおり、日本は2005 年から国が予想していたよりも早く人口減少という時代に入りました。それは何を指す かというと、20世紀はわずか1世紀100年の間に日本の人口が3倍になるというかつて ない大きな変化を経験した世紀だったのですけれども、では21世紀はどんな世紀になる かというと、若干人が減るのではなくて、20世紀に経験した人口増を全く逆さまにした 形、100年で多分人口が3分の1になるという、ものすごく激烈な人口減の変化の中を 生き抜いていかなければいけない。だから20世紀の、人は増え続ける、どんどん働けば 働くだけ豊かになるという常識を一刻も早く払拭し新しい常識をつくるということをし ないと、人々の生活の安全保障も地域も守れなくなっているということが1つ。  もう一つは、新聞社なども世論調査を度々するのですけれども、どの世代の人もさま ざまな形で不安を訴える声が高い。その不安とは何なのか。新聞社などは短絡的に、こ れは年金制度の問題であるというふうにすぐ言うのですが、子どもの問題、少子化の問 題などには、特にシニアの世代の方から非常に危機感に満ちた声をいただく。皆さん未 来が先細っていることに対する不安が非常に強い。自分自身が年金をいくらもらえるか 以上に、自分たちの社会はこの先もつながっていくのだろうかという、または自分の周 囲につながりがなくなってきているというような意味の不安を非常に持っている。そこ が実は不安の根幹、そこがまさに福祉の課題にもなっていると思っています。  そうした中、国でも取り組みを始めている新しい動きの1つがワークライフバランス と言われている取り組みです。  例えば、このワークライフバランスという取り組みを進めるときには、職場で使い過 ぎていた時間を削ってライフの方に持っていくことになるわけですが、地域でどう過ご せばいいのかという問題になる。そこで地域に、その人の生活の場にもっとエネルギー や時間をさいて活用できるようにという取り組みとセットでないと、ただ自由時間が増 えたらずっとゲームをやっていたらいいのか、ネットカフェで過ごせばいいのか、とな ってしまいかねない。地域のあり方について戦略的に議論していくということがいろい ろな方面からの要請になっていると思います。  ではその地域の力、地域の力が落ちているのをどう取り戻していくのかというときに、 地域地域と特に年配の政治家などがおっしゃるときに見えてくるイメージというのは、 農村共同体であったり、例えば自営業の人たちが集まった商店街のようなところであっ たり、生活共同体がそのまま生産共同体であったような昔の日本のふるさとの姿を思い 浮かべながら、その地域がない地域がないと言っているように私には聞こえるのですけ れども、もうそんな時代に戻るのは難しいでしょう。  これだけサラリーマンが増え、企業社会が国際競争にさらされている中で、じゃあ新 たな地域というのはどういうイメージで考えなければいけないのかといったときには、 昔のような日本の地域の力を取り戻そうというノスタルジーは一刻も早く諦め、その上 で日本人がもともと持っていた地域の連帯感を新たな形でつなぎ合わせる、つくり変え るというような再構築の発想の方に持っていった方がいいのではないか。  その中で、私も取材の中でヒントになるなと思っていたのが、三鷹市のコミュニティ 作りの取り組みだったのですが、NPOであったり新住民の人たちを取り込んでいく地 域活動のつくり方であったりというところに、1つのヒントがあると思います。  そしてもう一つ思っているのは、地域の人たちみんなを集めて何か一緒につくってい く、共同で活動していく、ご近所力を取り戻していくときの起爆剤になる、核になるも のの一つが次世代育成だろうということです。  というのは、実は少子化の取材をしている中で、出生率が日本の中で最も高い奄美諸 島の徳之島というところに行ったんです。そこには私が1960年代に三重県で過ごしたよ うな昔のものすごく懐かしい地域が残っていたんです。それは、カギをかけなくても安 心して外出できる。子供が生まれたら、地域の人がみんなこぞっておめでとうおめでと うと来てくれて、あなたのところの子供はこれが好きだからねとどさっとソーセージを 置いていってくれる、オクラがとれたよといって届けてくれるというようなつながりが あって、あそこのおばあちゃんが60歳になった70歳になったからみんなで年のお祝い をする、あそこの子が入学したからといって小学校入学のお祝いをするというようなつ ながりが日常的にある。  その中で女性たちになぜ少子化でないのかと聞くと、私は産むだけでいい、産んだら みんなが助けてくれるという安心感があるからここなら産める、ということを名古屋市 でくらしていた時は子供を生む気にならなかったという女性がおっしゃっていました。  そういった徳之島のようなかつてあった古きよき地域コミュニティというものは、私 もノスタルジーは持っているけれども、今の都市化した社会の中で再生できるわけがな い。じゃあどうやってつくっていけばいいのかというときに1つのヒントになるのが、 三鷹市などの取り組みであったり、もう一つ福井県などがヒントになるなと先日の取材 で思いました。  福井県というのはとても地味な、日本海側にあるそんなに自己主張の強くない地域で ありますけれども、日本全体の出生率が落ちていた中で福井県だけが一時的に上がった ということで注目された県でした。上がったといっても全国で最高の出生率ではなくて 1.5ぐらいですけれども、福井県をよくみてみると、実はいろんな意味で社会の運営、 地域の運営で成功しているのではないかという形で新たに今注目されていまして、それ は何かというと、平均賃金は全国の平均賃金を下回るけれども女性が多く働いている。 もちろんお父さんも働いている。おばあちゃんたちも大体働いていたりして、世帯全体 の平均所得は全国一高いんです。  お母さんたちも働くからお父さんが働き過ぎないでいい。飲み屋さんがあまりなくて、 みんなうちに帰って夕飯を食べる。貯蓄は多い。家が大きくておばあちゃんたちおじい ちゃんたちも一緒に住んでいて、育児、家事はシニア世代の仕事。お母さんお父さんは 外で働いてくる。それを世代で回しているんです。だから私もおばあちゃんになったと きには孫の面倒を見てあげようという支え合いでやっている。さすがに最近同居は減っ ているけれども、それを今度は例えばシルバー人材センターのようなところが介在して、 上の世代の人が下の世代の人たちを地域の中で見ているというような、一種これからの 地域づくりにヒントになるような世代間の連帯とか協力というような形が福井県の中に あったと思っています。  長くなってすみません。また引き続き議論に参加させていただきます。 ○大橋座長   ありがとうございました。時間があと5分ぐらいしかないのですが、皆さん方からい ただいた意見を参考にしながらこの後の次回以降の論点を整理させていただきますが、 私なりにまとめさせていただきますと、1つは、地域福祉を推進する上で市町村の社会 福祉行政のあり方とソーシャルワークを展開できるシステムというのはどうあったらい いのかということを大きく考えないといけないかなと思って聴いておりました。  その中には、パーソナルソーシャルサービスを提供できる圏域、あるいはそれを支え るシステムということが1点ありますし、あるいはニーズキャッチ、地域のニーズがな かなかキャッチにしにくくなってきていないか。措置行政時代以上にニーズキャッチが しにくくなっていないか。3つ目には、それに見合うサービスの開発。分権化と言って いるわりにはサービスの開発というものがあまり意識されていないのかなという、そん なことも含めて地域福祉を推進する上で市町村の社会福祉行政のあり方とソーシャルワ ークを展開できるシステム、状況によっては福祉事務所のあり方などもそれに関わって くるのかもしれません。これが大きな1点でございます。  2点目は、地域生活を支援する場合には、生活全体を考えたトータルケアシステムあ るいは包括支援システムが必要なのだろうと思うんですね。広島県庄原市などでは、24 時間365日の安心提供を社協がやっているわけですが、そういうものがないと入院とか 入所に比べて不安になってしまう。あるいは、医療でいう安全と退院後の生活の安心を つなげるとか、そういう生活便利屋的な機能だとか、さっき三鷹市では「ちょこっとサ ービス」がありましたけれども、ちょっとしたことをやることが生活全体を支える上で 大事だという、地域生活を支援する場合には生活全体を考えたトータルケアの仕組みを どう考えていくのかということがあるかと思います。  3つ目には、インフォーマルケアを活性化させるコミュニティ・ソーシャルワーク機 能みたいなことですね。先ほど木原さんが言われたことに絡むわけですが、結構住民は 持っているのではないか。それを再発見して再組織化していく、そういう後ろ盾、後ろ から支える人、そういう人が必要なのではないかということでございます。その中で地 域の住民の持っているソーシャルサポート・ネットワークの活用の仕方が大変大きな課 題になるかと思います。それが3つ目です。  4つ目は、新しい社会哲学としての哲学と寄附の文化、あるいは博愛ということでし ょうか、今田先生が言われたことにもなるわけですが、あるいは榊原さんが言われた20 世紀の哲学、システムではない新しい哲学をやはり問題提起していく。私の言葉では博 愛とか寄附の文化というものをつくっていかないといけないのではないかと思っている わけでして、従来の自然発生でつくられた互酬の中のやりとりではなくて、社会的に寄 附していく共助というもののつくり方、この新しい社会哲学を少し発信していく必要が あるのではないか。戦後、日本は自由と平等だけを享受して、その自由平等の裏側にあ る博愛ということを教えてこなかったのではないかということを少し問題提起する必要 があるかと思います。それが4番目の問題です。  5つ目の問題は、住民参画のシステムになるだろうと思いますが、住民と行政との関 わり方をどう構築していくか。イギリスのコンパクトのようなものだと思いますが、パ ートナーシップとかいろいろ言うわりには、どういう仕組みでやっていったらいいのか というその考え方がまだ十分じゃないと思っているわけでございまして、この住民と行 政との関わり方、住民参画のシステム。  例えば私などはいろいろな地方自治体でやってまいりましたけれども、地域福祉計画 をつくる際に、条例で住民参画の地域福祉審議会だとか市民福祉委員会をつくれという のはあまり出てこないですね。その一方でインフォーマルケアと言われても、ボランテ ィアと言われても、住民の方はなかなか納得しないのではないか。社会福祉協議会も住 民主体と言うけれども、住民参加の手立ては何もないですよね。私も30年来言っている のですが、住民会費を納めているのだけど一度も総会をやってくれないんですよね。学 識者で呼ばれるけれども、参加費を払っている住民としては一度も呼んでくれない仕組 みというのはどうなっているんだとずっと社協に言い続けているのですが、そういうこ とも含めて行政の上でも社協の上でも住民参画というのはかなり大事なことではないだ ろうか。  こんなことをちょっと感じておりまして、時間の関係で十分ではありませんが、今大 きく5つぐらいに私なりに整理しましたけれども、議事録をとってございますので、改 めて事務局と相談をして次回早目に論点を整理してお話ししたいと思います。その際に は、先ほど中村局長が言っていただきましたように、きょうの資料2の4のところであ げてある従来の施策というのを一通り丁寧に、どういう現状にあるのかということを押 さえなければなりませんから、そんな作業もさせていただきたいと思っている次第でご ざいます。 ○大橋座長   どうもありがとうございました。これで終わりにしたいと思いますが、局長何かあり ますか。よろしゅうございますか。それでは事務局、今後の日程も含めてどうぞよろし くお願いします。 ○事務局   次回でございますけれども、10月19日金曜日、時間は10時から12時、場所は大手町に ありますKKRホテル東京で行いますので、よろしくお願いいたします。 ○大橋座長   年度内に目途をつけるということでタイトなスケジュールになるかと思いますが、大 変重要な研究会でございますので時間をやりくりいただければありがたいと思っていま す。それでは3分ほど過ぎましたが、これをもちまして本日の研究会を終わりにしたい と思います。どうもありがとうございました。(終了)              【照会先】              〔これからの地域福祉のあり方に関する研究会事務局〕                    厚生労働省社会・援護局地域福祉課                    TEL 03-5253-1111(内線2859) 1